説明

道路橋用遮音部材

【課題】構造が簡易であって製造及び施工が容易な道路橋用遮音部材を提供する。
【解決手段】伸縮継手6で接続された接続部5を有する道路橋における伸縮継手6下方の遊間9に設置される道路橋用遮音部材を、独立気泡を有する板状の発泡体11を上下方向に複数積層することで構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は道路橋用遮音部材に関し、更に詳しくは、伸縮継手で接続された道路橋の遊間を下方へ伝播する騒音を遮へいする道路橋用遮音部材に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、高架の道路や橋梁(以下、「道路橋」という。)においては、温度変化などによる上部工の伸縮・変形を吸収するために、主桁間や主桁と橋台間を伸縮継手を介して接続することが行われている。そのため、道路橋上を走行する車両が、主桁間や主桁と橋台間の接続部を通過する際に発する騒音(いわゆる叩き音)が、接続部の遊間を下方へ伝播して拡散し、周辺住民に騒音被害を与えるという問題があった。
【0003】
このような問題を解決するため、特許文献1は、伸縮可能な袋体内にゲル状物質を注入してなる遮音構造体を遊間の下方に設置することを提案している。
【0004】
しかし、上記の特許文献1の遮音構造体では、構造が複雑であるため、製造及び施工にかかるコストが増加するという問題がある。
【特許文献1】特開2006−125130号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、構造が簡易であって製造及び施工が容易な道路橋用遮音部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成する本発明の道路橋用遮音部材は、伸縮継手で接続された接続部を有する道路橋における前記伸縮継手下方の遊間に設置される道路橋用遮音部材であって、前記道路橋用遮音部材は、独立気泡を有する板状の発泡体を上下方向に複数積層してなることを特徴とするものである。
【0007】
複数積層された板状の発泡体の側面と、遊間における道路橋の端面との間には、連続気泡を有する発泡体を介在することが望ましく、その連続気泡を有する発泡体は、プラスチックフォームから構成するのがよい。
【0008】
また、板状の発泡体は、ゴムスポンジ又はプラスチックフォームから構成することが望ましく、その密度は0.025〜0.3g/cmとするのがよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の道路橋用遮音部材によれば、伸縮継手で接続された接続部を有する道路橋における伸縮継手下方の遊間に設置される道路橋用遮音部材を、独立気泡を有する板状の発泡体を上下方向に複数積層することで構成したので、遊間を下方へ伝播する車両からの騒音を、構造が簡易であって製造及び施工が容易な道路橋用遮音部材により遮音することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態からなる道路橋用遮音部材(以下、単に「遮音部材」という。)を設置した例を示す。
【0012】
道路橋の上部工である主桁1及び床版2は、支承3を介して橋台4により支持されると共に、それらの接続部5の上部には、伸縮継手6が設けられている。伸縮継手6は、例えば鋼製のフェイスプレート7と、その下方に配置された可撓性部材8とから構成され、上部工の伸縮を吸収すると共に、車両等の通行を円滑にすることを目的としている。この伸縮継手6の下方の遊間9には、遮音部材10が設置されている。
【0013】
この遮音部材10は、図2に示すように、独立気泡を有する板状の発泡体11を複数積層することで構成されている。発泡体11の形状は矩形になっており、短尺方向が道路橋の橋軸方向に、長尺方向が道路橋の幅方向に、それぞれ対応する。発泡体11の材料としては、ゴムスポンジ又はプラスチックフォームを用いることが望ましい。ゴムスポンジとしては天然ゴムスポンジやクロロプレンゴムスポンジが、プラスチックフォームとしてはポリエチレンフォームやウレタンフォームが、それぞれ例示される。発泡体11の寸法及び積層枚数は特に限定するものではないが、短尺方向の寸法dは、伸縮継手6がカバーする遊間9の最大幅(例えば、冬季寒冷期における主桁の収縮により発生)と同等以上の長さにすることが好ましい。
【0014】
上記の遮音部材10は、長尺方向の両側面を主桁1と橋台4の対向する端面12a、12bにそれぞれ接着することにより、あるいは底面を端面12a、12bに固定された受け具で支持することにより、伸縮継手6の下方の遊間9に容易に設置することができる。
【0015】
このように、遮音部材10を伸縮継手6の下方の遊間9に設置することで、車両が伸縮継手6上を通過する際に発する騒音(叩き音)は、その大部分が遮音部材10の上面で反射されることで遮音される。特に、発泡体11にゴムスポンジを用いた場合には、発泡体11表面に形成されるスキン層により反射効率が高くなる。反射されなかった騒音は、積層された発泡体11内で吸音されるため、遮音効果が高くなる。
【0016】
また、発泡体11は独立気泡を有しているので塑性変形しにくいため、上部工が伸縮しても、遮音部材10と端面12a、12bとの間に隙間が生じることはない。更に、遮音部材10を軽量化することができるため、施工箇所への運搬や交換作業を容易に行うことができる。
【0017】
発泡体11の密度は、0.025〜0.3g/cmとすることが望ましい。密度が0.025g/cm未満であると遮音性能が低下し、0.3g/cm超だと弾性変形しにくくなったり、重量が増加したりするため、施工が困難になる。
【0018】
遮音装置10と主桁1及び橋台4の端面12a、12bとの間には、図3に示すように、プラスチックフォームからなる連続気泡を有する発泡体13を介在させることが望ましい。連続気泡を有する発泡体13は、独立気泡を有する発泡体11よりも弾性変形しやすいため、遊間9への設置が更に容易になると共に、上部工の伸縮に十分に対応することができるようになる。また、遮音部材10を構成する発泡体11の短尺方向の寸法精度に余裕を与えることができるため、製造コストを更に低減することができる。
【0019】
上記の例においては、主桁1と橋台4との接続部5に遮音部材10を設置した場合を示したが、これに限られるものではなく、伸縮継手6を用いた他の接続部にも同様に設置できることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態からなる道路橋用遮音部材を設置した例を示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態からなる道路橋用遮音部材の斜視図である。
【図3】本発明の別の実施形態からなる道路橋用遮音部材を設置した例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 主桁
2 床版
3 支承
4 橋台
5 接続部
6 伸縮継手
7 フェイスプレート
8 可撓性部材
9 遊間
10 道路橋用遮音部材
11 独立気泡の発泡体
12a、12b 端面
13 連続気泡の発泡体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮継手で接続された接続部を有する道路橋における前記伸縮継手下方の遊間に設置される道路橋用遮音部材であって、
前記道路橋用遮音部材は、独立気泡を有する板状の発泡体を上下方向に複数積層してなる道路橋用遮音部材。
【請求項2】
前記複数積層された板状の発泡体の側面と、前記遊間における前記道路橋の端面との間に、連続気泡を有する発泡体を介在した請求項1に記載の道路橋用遮音部材。
【請求項3】
前記連続気泡を有する発泡体がプラスチックフォームからなる請求項2に記載の道路橋用遮音部材。
【請求項4】
前記板状の発泡体が、ゴムスポンジ又はプラスチックフォームからなる請求項1〜3のいずれかに記載の道路橋用遮音部材。
【請求項5】
前記板状の発泡体の密度が0.025〜0.3g/cmである請求項1〜4のいずれかに記載の道路橋用遮音部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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