説明

道路用視線誘導標識

【課題】 ヘッドライトからの入射光を視線誘導標識の全面から再帰反射させて顕著な注意喚起機能を有する標識を得ること。
【解決手段】 ベースおよび標識本体柱の表面に自己反射機能を有するガラスビーズの保持用凹部を無数に形成し、その凹部中に透明なバインダーでくるまれた状態の前記自己反射機能を有するガラスビーズを嵌着保持すると共に、その表面を防汚機能を有する透明な光触媒層で被覆したこと。ガラスビーズの粒径は45〜60μm(平均径50μm)である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、車道のセンターライン、車線変更線、分離帯などを示すものとして道路上に設置される視線誘導標識に関するものである。もっとも、本発明は、前記道路設置用のみに限定されるものではなく、工場の屋内,外に設置する誘導標識や公園などに設置する誘導標識としても利用することができる。
【背景技術】
【0002】
前記の視線誘導標識は、一般に、路面に固定されるベースと、そのベースから起立された標識本体柱とから構成され、その本体柱を視認性が良好な橙色,緑色などの色調にすると共に、その本体柱に複数の再帰反射シートを上下多段に貼り付け、昼間は本体柱の色により、夜間は標識本体柱に貼りつけた反射シートが車輌のライトからの光を反射することにより車輌を誘導すべくなしたもので、現在、高速道路を始めとして一般道路においても広く設置されている。
【0003】
なお、前記反射シートに加えて、ベースに反射材を組み付けたものもあるが、コスト高のため、ベースには反射材がないものが一般的である。また、道路への設置後、排気ガスなどにより標識本体柱や反射材が汚れてその性能が低下するため、この対策として防汚装置を取り付けた製品もある。
【0004】
前記の従来技術により得られた製品は、通常の設置条件下においてはその機能を十分発揮することができるが、交通量が多く、かつ、夜間の事故が多い道路においては、より反射面積が大で、標識本体柱や反射材が汚れ難い製品が望まれている。
【0005】
この要望を満すため、標識本体柱として金属柱を使用し、その全面に反射塗料を塗布して視認性を高めたものがあるが、車輌接触などによる事故発生の危険性があると云う課題を残している。
【0006】
なお、本発明は、後述のように、自己反射機能を有するガラスビーズを使用し、かつ、外層として光触媒を含有する透明塗料を塗布するものであるが、そのこと自体は下記特許文献に示すように公知である。
【特許文献1】特開平9−78541号公報
【特許文献2】特開平10−102437号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記の如き従来技術の問題点を改善し、特に夜間における再帰反射光の出射面積を拡大して視認性を向上せしめることができる道路用視線誘導標識を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記の如き目的を達成するため、道路上に固定されるベースと、該ベースから起立された柔軟な標識本体柱とからなる道路用視線誘導標識において、前記ベース及び標識本体柱の表面に自己反射機能を有するガラスビーズの保持用凹部を無数に形成せしめ、その凹部中に透明なバインダーでくるまれた状態の前記自己反射機能を有するガラスビーズを嵌着保持するあと共に、その外層を防汚機能を有する透明な光触媒層で被覆したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の道路用視線誘導標識は、前記の如く、ベースおよび標識本体柱の表面に自己反射機能をもつガラスビーズの保持用凹部を無数に形成させ、その凹部中に透明なバインダーでくるまれた状態の前記自己反射機能を有するガラスビーズを嵌着保持するようにしたので、自己反射機能を有するガラスビーズを凹部中に強固に固定させて車輌との接触による屈曲や衝撃を受けてもガラスビーズが脱落してその反射機能を損なうおそれを少なくすると共に、反射シートの貼りつけや反射材の取付けに制約があったベースに対しても容易に再帰反射機能を付与することができ、このため、ヘッドライトからの入射光はベースおよび標識本体柱の全面から反射されて車輌に対し顕著な注意喚起機能を発揮させることができる。また、本発明によれば、外層の防汚作用(光触媒)によりその機能維持が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、添付図面について本発明の一実施例を説明する。
図1(a)は本発明の一実施例を示す道路用視線誘導標識の斜視図で、道路に固定的に設置するベース1と、該ベースから起立された標識本体柱2とから構成されている。3は発泡ウレタン材を注入して形成させた頭部である。
【0011】
前記本体柱2は、これに車輌が衝突すると屈曲し、車輌が通過すると復元し得る材質のもの、例えば、硬度88〜95度(JIS A)で引張り強度35〜55MPa、伸び450〜650%の視認性が良好な色調に着色したウレタンゴムを用いて押出し成形法または射出成形法により成形された円筒状の部材であって、その表面に自己反射機能を有するガラスビーズ保持用の微細な凹部4をその表面積の約1/2を占めるように形成する。
【0012】
すなわち、図1(b)は前記押出し成形法により多数の凹部4が形成された本体柱2の横方向拡大断面図、図1(c)は同じく縦方向拡大断面図であって、これらの図に示すように、幅Wが60〜70μm、深さHが20〜50μmの凹部4が縦方向に表面積の約1/2を占めるように無数に形成されている。
【0013】
射出成形法により本体柱2を成形するとき、図示を省略したが直径60〜70μmで、深さ30〜50μmの凹部を本体柱2の表面に無数に形成する。
【0014】
また、ベースは、標識本体柱2と同等の注型ウレタン材を使用し、その表面に同様の凹部を無数に形成させる。例えば、成形用型の表面にショットブラストをかけて直径60〜70μm、深さ30〜50μmの凹部を無数に形成する。その場合に得られる凹部の形状は、ガラスビーズを正確に保持できる形状ではない場合も含むが、ベースは車輌と接触しても屈曲することがないので、実用上何等差支えない。
【0015】
次に(株)ユニオン製の粒径45〜60μm(平均径50μm)の自己反射機能を有するガラスビーズ(屈折率1.92〜2021)dをアクリル樹脂,ウレタン樹脂を含有するバインダー剤に分散させた懸濁液をつくり、この懸濁液を専用スプレーにより本体柱2およびベース1の基材に塗布して前記バインダーbにくるまれたガラスビーズdを凹部4に嵌合保持させ、そのバインダーbの厚み(凹部以外の厚み)を2〜4μmとして凹部4に入らなかったガラスビーズをブラシで取り除いた後バインダーを硬化させてガラスビーズdを凹部4中に強固に保持させる。
【0016】
ガラスビーズdは図2に示すように、その半球部分に反射層d′を形成させたもので、スプレー塗布により凹部4に嵌入された反射層の向きはランダムであるが、本発明に使用するガラスビーズdはその粒径が45〜60μmと微細なため、再帰反射機能を有する向きのものが無数に存在しており、そのため夜間ヘッドライトの光が入射するとその光を効果的に再帰反射させて図4に示すようにベース1や本体柱2を含む標識全体を明るく輝かせることができる。なお、バインダーbは、無色透明で全光線透過率が85%以上、好ましくは90%以上のものを使用する。尚、本発明による道路用視線誘導標識は、昼間においても図3に示す如く、本体柱2やベース1全体が注意喚起色として作用し、運転者からの視認性が良いものである。
【0017】
バインダーの硬化後、光触媒コーティング剤(日本曹達製の商品名ビストレーターL)をスプレーで塗布し、100℃×10分間放置して厚さ0.5〜1.5μmの透明な光触媒層Cを形成させる。なお、この光触媒層においても、全光線透過率が80%以上、好ましくは85%以上になるようにする。
【0018】
本発明による道路用視線誘導標識は、前記の如く、ベースおよび標識本体柱の表面に自己反射機能をもつ微細なガラスビーズの保持用凹部を多数形成させ、その凹部中に透明で柔軟性のあるバインダーでくるまれた状態の前記自己反射機能を有するガラスビーズを嵌着保持するようにしたので、自己反射機能を有するガラスビーズを凹部中に強固に固定させて車輌との接触による屈曲や衝撃を受けてもガラスビーズが脱落してその反射機能を損なうおそれをなくすと共に、反射シートの貼りつけや反射材の取付けに制約があったベースに対しても簡単かつ容易に再帰反射機能を付与することができ、このため、ヘッドライトからの入射光をベースおよび標識本体柱の全面から再帰反射させて顕著な注意喚起機能を奏させることができる。また本発明によれば、外装の防汚作用(光触媒)によりその注意喚起機能を長期に亘って維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の一例による道路用視線誘導標識の全体斜視と横方向拡大断面と縦方向拡大断面の各図。
【図2】自己反射機能を有するガラスビーズの説明図。
【図3】昼間における視認性の説明図。
【図4】夜間における視認性の説明図。
【符号の説明】
【0020】
1・・・ベース、2・・・標識本体柱、3・・・頭部、4・・・ガラスビーズ嵌着用の微細な凹部、a・・・基材、b・・・バインダー、c・・・光触媒層、d・・・自己反射ガラスビーズ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路上に固定されるベースと該ベースから起立された柔軟な標識の本体柱とよりなる道路用視線誘導標識において、前記ベースおよび本体柱の表面に自己反射機能を有するガラスビーズの保持用凹部を無数に形成し、その凹部中に透明なバインダーでくるまれた状態の前記自己反射機能を有するガラスビーズを嵌着保持すると共に、その表面を防汚機能を有する透明な光触媒層で被覆したことを特徴とする道路用視線誘導標識。
【請求項2】
自己反射機能を有するガラスビーズとして粒径45〜60μm(平均径50μm)のものを使用し、これを嵌着保持する凹部の深さがガラスビーズ径の1/3以上の高さを有するものであることを特徴とする請求項1に記載の道路用視線誘導標識。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−9290(P2006−9290A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−184475(P2004−184475)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【出願人】(502145313)ユニマテック株式会社 (169)
【Fターム(参考)】