説明

道路管理システム

【課題】目的地点の画面の背景が車両の通過による変化を伴いながら急激に変化する場合にも、背景画像を正しく更新できる道路管理システムを提供する。
【解決手段】検査用データ(撮影映像)と第一比較用データ(背景画像)の差分の絶対値(第一演算値)が第一閾値以下であれば、該第一比較用データを検査用データで更新する。該第一演算値が該第一閾値より大きければ、該検査用データと第二比較用データ(直前の撮影映像)の差分の絶対値が変異閾値より大きい場合に、変異フラグを有効とし、該第一演算値が割増閾値以下であれば無効とする。該変異フラグが無効の場合、変異終了条件を満たした時点で該第一比較用データを該検査用データで更新し、満たさなければ該第一比較用データを維持する。有効の場合、該第一比較用データを維持し、該第一演算値が、第二閾値より大きく、かつ変異終了条件を満たした時点で異常事態が発生したと判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、事故や落下物の存在等、道路において発生した異常事態をリアルタイムで検知することのできる道路管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
道路の異常等を非接触で検知する方法として、静止した単一カメラの画像を処理する背景差分法が知られている。この方法では、落下物等の存在しない状態で移動物体を含まない背景画像を予め用意しておき、この背景画像と現在の画像の差分をとることにより、背景に含まれていない静止物体等の存在の有無を判断することができる。ただし、この背景差分法では、天候や時間による明るさや見え方の変化によって背景画像が変化する場合、静止物体のみを抽出することは困難であった。そこで、天候、時間等により変化する背景画像を適宜更新することによって、背景変化を静止物体等の存在として誤って検知する確率を低減する方法が提案されている。そして、そのような方法は、例えば、特開2002−24808号に開示されている。また、このように適宜更新される背景を利用した背景差分法は、静止物体のみならず移動する車両の存在の判別にも応用でき、その応用例として、例えば、特開2000−149181号公報に開示されている交通流計測システムがある。
【特許文献1】特開2002−24808号公報
【特許文献2】特開2000−149181号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の背景画像を更新する方法では、目的地点の画面の背景が車両の通過による変化を伴いながら急激に変化する場合、例えば、数台の車両が連続して通過している最中に大雨が突然降り出したような場合には、背景画像を更新できないという問題があった。
【0004】
そこで、本発明の目的は、目的地点の画面の背景が車両の通過による変化を伴いながら急激に変化する場合にも、背景画像を正しく更新できる道路管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る道路管理システムは、撮像手段と演算手段とを備える。該撮像手段は、一定の時間間隔で管理目的地点の映像を撮影する。該演算手段は、背景画像の輝度分布統計量を第一比較用データとして記憶しており、該映像について輝度分布統計量を検査用データとして算出するとともに第二比較用データとして記憶し、該検査用データと該第一比較用データの差分の絶対値を第一演算値として求める。そして、第一演算値が第一閾値以下であれば、該第一比較用データを検査用データで更新し、該第一演算値が該第一閾値より大きければ、以下の処理を行う。
まず、該検査用データと該第二比較用データの差分の絶対値が変異閾値より大きい場合に、初期値が無効に設定される変異フラグを有効とし、該第一演算値が該第一閾値に基づいて算出される割増閾値以下であれば、変異フラグを無効とする。
次に、該変異フラグが無効の場合、該変異終了条件を満たした時点で該第一比較用データを該検査用データで更新し、該変異終了条件を満たさなければ、該第一比較用データを維持する。
一方、該変異フラグが有効の場合、該第一比較用データを維持し、該第一演算値が、該割増閾値より大きい第二閾値より大きく、かつ変異終了条件を満たした時点で異常事態が発生したと判断する。
なお、本発明において、輝度分布統計量とは、画像の輝度分布の平均及び標準偏差のことをいうものとする。
【0006】
本発明に係る道路管理システムにおいて、該変異終了条件は、使用状況に最適なものを適宜選択すればよいが、例えば、該検査用データの算出される前に記憶された該第二比較用データに対する許容変化範囲内で該検査用データが一定時間維持されることとしてもよい。また、その他の例としては、基準時に記憶された該第二比較用データに対する許容変化範囲内で、該検査用データが一定時間維持されることとしてもよく、或いは、一定時間内における検査用データの複数が、所定の比率で、基準時に記憶された該第二比較用データに対する許容変化範囲に収まることとしてもよい。更に、これらの条件を組み合わせて利用しても良く、例えば、変異フラグが無効の場合と有効の場合とで、変異終了条件を変えてもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明にかかる道路管理システムによれば、背景画像に対する許容値である第一閾値を利用することで、背景画像のある程度の変化を許容し、車両の通過による変化を伴いながらの急激な変化を、異常事態の発生による変化として誤認することを防止できる。また、第一閾値に基づいて算出される割増閾値を利用することで、異常事態の発生を伴う画像の変化(以下、異常変化という)と、通常状態に生じる画像の変化(以下、通常変化という)とを区別して判断することができる。これは、車両の通過等の通常状態に生じる画像の変化であれば、変化前の背景画像に完全に戻らなくとも、ある程度近い状態に戻る性質を利用したものである。すなわち、車両が通過している間の背景変化を割増閾値として表現することで、目的地点の画面の背景が車両の通過による変化を伴いながら急激に変化する場合を判別できる。そして、変化の間、すなわち変異終了条件を満たさない間は比較用データを更新することなく、その変化を起こす直前のものに維持し、変異終了条件を満たした場合を変化が終了した状態とし、検査用データを比較用データとして更新することで、車両が通過した後の変化した背景を正しく更新できる。
【0008】
ただし、実際の現象においては、車両の通過等の通常状態に生じる画像の変化であっても、変化前の背景画像に近い状態にまで戻らない場合もあり、割増閾値を利用しても、異常変化と通常変化とを区別して判断することができないこともある。そこで、割増閾値に加え、変異フラグをあわせて使用することにより、異常変化と通常変化の判別精度を高めることとしている。
【0009】
すなわち、検査用データと第二比較用データの差分の絶対値が変異閾値より大きい場合に、変異フラグを有効とし、この変異フラグが有効であることを、異常変化と判断する際の条件としている。これは、異常変化が、直前の状態よりも大きく変化する性質を利用したものである。
【0010】
本発明に係る道路管理システムにおいて、変異終了条件は、既述のように、システムが使用される状況に応じて最適なものとすればよい。例えば、検査用データの算出される前に記憶された第二比較用データに対する許容変化範囲内で検査用データが一定時間維持されること、或いは、基準時に記憶された該第二比較用データに対する許容変化範囲内で、検査用データが一定時間維持されることとすれば、簡単な比較演算で、変異終了の判断ができる。
【0011】
一方、判断の精度をより高めたい場合は、一定時間内における検査用データの複数が、所定の比率で、基準時に記憶された該第二比較用データに対する許容変化範囲に収まることとしてもよい。例えば、連続する数画像中の幾つかの画像が許容変化範囲内に納まると、変異終了の判断がなされる、とすることができる。この際、連続する数画像中の幾つの画像が許容変化範囲内に収まることを条件とするかは、システムが使用される状況に応じて適宜調整すればよい。例えば、6画像中5画像、10画像中9画像等としてもよい。なお、6画像中5画像が許容変化範囲内に納まることとは比率でいえば約83パーセント、また、10画像中9画像が許容変化範囲内に納まることとは比率でいえば90パーセントということになる。また、本発明において基準時とは、任意の、ある時点に決めればよい。例えば、第一比較用データが検査用データで更新されていない状態にあるときは、ある時点の第二比較用データを基準として、その時点から所定数の連続画像について上記許容範囲内に納まっているかどうかの判断を行い、収まっていない場合は、次の連続画像の最初の時点の第二比較用データを新たな基準とすることとしてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明にかかる道路管理システムの具体例を、図1〜3を参照しながら説明する。図1は同道路管理システムにおける画像輝度分布の標準偏差の時間経過に対する推移の一例を検査用データと比較用データを対比して示すグラフ、図2は図1に示す推移をする検査用データに対し従来の方法で背景画像を更新した場合における比較用データの時間経過に対する推移を検査用データと対比させて示すグラフ、図3は、通常状態に生じる画像の変化が変化前の背景画像に近い状態にまで戻らない場合の、同道路管理システムにおける画像輝度分布の標準偏差の時間経過に対する推移の一例を検査用データと比較用データを対比して示すグラフである。
【0013】
この道路管理システムは、図示しない撮像手段と演算手段とを備える。撮像手段は、一定の時間間隔で管理目的地点の映像を撮影するものであり、その映像データは演算手段に送信され、後述の演算処理が行われるものである。一方、演算手段は、背景画像の輝度分布統計量を第一比較用データとして記憶しており、映像について輝度分布統計量を検査用データとして算出するとともに第二比較用データとして記憶し、検査用データと第一比較用データの差分の絶対値を第一演算値として求め、所定の処理を行うものである。この撮像手段と演算手段の組合せには、公知のもの、例えば、公知のITVシステムに市販のPCを接続したものを利用すればよい。
【0014】
以下に、撮像した画面の輝度分布の標準偏差を輝度分布統計量とした場合の演算手段の処理を、図1に示す時間に対する推移の一例に基づいて説明する。
【0015】
図1において正方形で示されている点は撮像手段により撮像した計測画像輝度分布の標準偏差であり、検査用データOD或いは第二比較用データBD2となる。検査用データODは、計測直後の時間領域1では背景画像に変化はなく、続く時間領域2以降で天候変化による背景画像の変化が継続している。また、点A、点B及び点Cでは一台の車両が、時間領域3では車列が通過し、車両の通過毎に輝度が変化している。なお、車両が通過している間も、背景画像の変化は継続している。
【0016】
検査用データODは、第二比較用データBD2として、その算出がなされる毎に記憶更新されている。例えば、点A(左から2番目の点)の検査用データODが算出される時点においては、その直前(左から1番目の点)の検査用データが第二比較用データBD2となる。
【0017】
図1において丸で示されている点は、演算手段に記憶される背景画像輝度分布の標準偏差であり、第一比較用データBD1となる。なお、図1においては、それぞれのデータの推移を明確にするため、検査用データODは第一比較用データBD1を示す丸の大きさだけ大きい値側にずらして表示することとしている。従って、例えば、点Aを除き計測画像が変化しない時間領域1においては、検査用データODと第一比較用データBD1は全く同じ値となるが、両データを示す点が重ならないよう、検査用データODは標準偏差の正方向にずらして表示されている。
【0018】
この具体例において、計測が開始された直後の時間領域1では、検査用データODが突出している点Aを除き、演算手段が第一比較用データBD1として記憶している当該計測直前の背景画像輝度分布の標準偏差と検査用データODとが同じとなっている。そのため、点A以外の計測点では検査用データODと比較用データBD1の差分の絶対値である第一演算値は0となり、背景画像に対する許容値である第一閾値以下と判断される。そして、第一比較用データBD1が検査用データODで更新される。なお、この具体例において第一閾値は3とされているが、その値はこの道路管理システムが採用される状況等に応じ、適宜決めればよい。
【0019】
一方、点Aにおいては、第一演算値が、前記第一閾値より大きくなっている。そこで、検査用データODと第二比較用データBD2の差分の絶対値が算出される。この点Aにおいては、その差分の絶対値が変異閾値よりも小さいため、変異フラグは無効と判断され、まず、第一比較用データBD1が維持される。そして、変異終了条件が満たされるかどうかの判断がなされることになるが、第一演算値は、点Aの次の計測地点で直ぐに第一閾値以下に戻るため、変異終了条件が満たされたかどうかに関係なく、その時点で第一比較用データBD1が検査用データODで更新されることになる。なお、この具体例において変異閾値は9とされているが、その値は第一閾値と同様に、この道路管理システムが採用される状況等に応じ、適宜決めればよい。
【0020】
時間領域2では、第一演算値が0よりも大きくなっているがその値は第一閾値よりも小さくなっている。そのため、時間領域1と同様、比較用データBDが随時検査用データODに更新される処理が行われる。なお、検査用データODが突出している点Bにおいても、前記点Aと同様の処理が行われる。
【0021】
時間領域3では、その領域の最初の点3aにおいて、前記点Aと同様、第一演算値が前記第一閾値より大きくなっている。そこで、検査用データODと第二比較用データBD2の差分の絶対値が算出される。この点3aにおいては、その差分の絶対値が変異閾値よりも大きいため、変異フラグが有効と判断され、まず、第一比較用データBD1が維持される。そして、第一演算値が第二閾値より大きいかどうか、及び変異終了条件を満たしているかどうかの判断がなされる。変異終了条件は、この道路管理システムが使用される状況に応じ最適なものとすれば良いが、ここでは、基準時に記憶された第二比較用データに対する許容変化範囲CR2内で一定時間T2維持されることとした場合を例に説明する。
【0022】
この具体例では、第二比較用データに対する許容変化範囲CR2はプラスマイナス5、維持が必要とされる一定時間T2は計測間隔の4倍(4回連続で計測された場合)とされており、時間領域3における検査用データODが最高値となる点Dを基準時として破線で示す推移をした場合は変異が終了し、異常事態が発生したと判断される。しかしながら、この時間領域3では、変異終了条件が満たされることはなく、比較用データBD1を時間領域3の始めの値に維持する処理が行われる。なお、この具体例において第二閾値は9とされているが、その値は第一閾値や変異閾値と同様に、この道路管理システムが採用される状況等に応じ、適宜決めればよい。
【0023】
図1において許容変化範囲CR2は、基準時を点Dとした場合のみが示されているが、点Aや点B以降の推移についての変異終了判断のための許容変化範囲は、点Aや点Bが基準時となる。
【0024】
時間領域3で変異終了条件を満たさないまま第一閾値に基づいて算出される割増閾値より大きい値を維持し続けた第一演算値は、その領域の最後の点3bにおいて割増閾値よりも小さな値となり、変異フラグが無効とされる。そして、この点3b以降の時間領域4では、変異フラグが有効の場合とは異なる変異終了条件を満たしているかどうか、すなわち、その点での検査用データODが算出される前に記憶された第二比較用データBD2に対する許容変化範囲CR1内で検査用データODが一定時間T1維持される変異終了条件を満たしているかどうかが判断される。なお、この場合の第二比較用データに対する許容変化範囲CR1はプラスマイナス5、また維持が必要とされる一定時間T1は、計測間隔の4倍とされている。また、図1において許容変化範囲CR1は、点3bにおける検査用データODを第二比較用データBD2とした場合を示すものである。
【0025】
時間領域4の最初の数点においては、この変異終了条件が満たされていないので、第一比較用データBD1を時間領域3の始めの値に引き続き維持する処理が行われる。しかしながら、検査用データが第二比較用データに対する許容変化範囲内に収まる状態が4回続いたとき、変異終了条件が満たされることとなり、第一比較用データBD1を検査用データODで更新する処理が行われる。なお、この具体例において割増閾値は第一閾値の1.5培(4.5)とされているが、その値はこの道路管理システムが採用される状況等に応じ、適宜決めればよい。
【0026】
これに対し、従来の方法で背景画像を更新した場合は、図2に示すように、時間領域3の最後の点3bにおいても第一比較用データBD1と検査用データODには大きな差異が認められ、時間領域4における第一比較用データBD1の更新は行われることなく、それ以降、時間領域3の始めの値に維持されることになる。そのため、時間領域4以降も背景画像が変化し続けた場合、その第一演算値は拡大し、背景画像の変化が止まり一定の状態が続くことになる時間領域5において、異常事態が発生したものと誤って判断されることになる。
【0027】
このように、この道路管理システムによれば、車両が通過している間の背景変化を割増閾値として表現することで、目的地点の画面の背景が車両の通過による変化を伴いながら急激に変化する場合を判別できる。そして、変化の間、すなわち第一演算値が第二閾値以上となっている間は比較用データを更新することなく、その変化を起こす直前のものに維持し、第一演算値が割増閾値以下となり、検査用データが算出される前に記憶された第二比較用データに対する許容変化範囲内で検査用データが一定時間維持される変異終了条件を満たした場合を変化が終了した状態とし、検査用データを比較用データとして更新することで、車両が通過した後の変化した背景を正しく更新できる。
【0028】
次に、生じた画像変化が変化前の背景画像に近い状態まで戻らない場合の処理を、図3を参照しながら説明する。
まず、計測が開始された直後の時間領域5では、第一比較用データBD1と検査用データODとが同じとなっている。そのため、第一演算値は0となり、第一演算値が比較用データBD1に基づいて算出される第一閾値以下と判断される。そして、第一比較用データBD1が検査用データODで更新される。
【0029】
時間領域5に続く時間領域6では、その領域の最初の点Eにおいて、撮影された画像が変化し、第一演算値が第一閾値よりも大きくなる。ただし、その変化はあまり大きくなく、第二演算値は変異閾値よりも小さいため、変異フラグは無効となる。そして、撮影された画像はその後も少しずつ変化を続け、変異終了条件を満たさないまま、検査用データODと第一比較用データBD1が徐々に乖離する。また、変異フラグは無効のまま推移する。
【0030】
時間領域6に続く時間領域7では、撮影された画像の変化が止まり安定した状態となる。そして、検査用データODが算出される前に記憶された第二比較用データBD2に対する許容変化範囲CR1内で検査用データODが一定時間T1維持される変異終了条件を満たすこととなり、時間領域7の最後の点Fにおいて、第一比較用データBD1を検査用データODで更新する処理が行われることになる。
【0031】
変異終了条件は、既述の通り、このシステムが使用される状況に応じて最適なものとすればよく、上記具体例とは異なるものとしてもよい。以下に、変異フラグが有効な場合の変異終了条件として、上記具体例とは異なる変異終了条件を採用した道路管理システムの他の具体例について、図1を参照しながら説明する。なお、上記具体例と処理が同じ部分の説明は省略する。
【0032】
この具体例での時間領域3における変異終了条件、すなわち、変異フラグが有効な場合の変異終了条件は、一定時間内における検査用データが、所定の比率で、基準時に記憶された該第二比較用データに対する許容変化範囲に収まることとなっている。そして、所定の比率として一定時間内の6つの検査用データの内5つの検査用データが許容変化範囲内であること、すなわち、83パーセントであることが条件とされている。また、許容変化範囲は、上記具体例と同様に、第二比較用データに対しプラスマイナス5とされている。
【0033】
時間領域3では、その領域の最初の点3aにおいて、この点での検査用データODが算出される前に記憶された第二比較用データBD2(図1の左から12番目の点の検査用データOD)と点3aの検査用データの差分の絶対値である第二演算値が、変異閾値よりも大きな値となる。そこで、まず、この点3aにおいて変異フラグが有効とされる。そして、点3aの次の点から破線で示す推移をした場合は、点3aから連続する6画像中5画像で許容変化範囲内となり、変異が終了して異常事態が発生したと判断されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明にかかる道路管理システムにおける画像輝度分布の標準偏差の時間経過に対する推移の一例を検査用データと比較用データを対比して示すグラフである。
【図2】図1に示す推移をする検査用データに対し従来の方法で背景画像を更新した場合における比較用データの時間経過に対する推移を検査用データと対比させて示すグラフである。
【図3】通常状態に生じる画像の変化が変化前の背景画像に近い状態にまで戻らない場合の、同道路管理システムにおける画像輝度分布の標準偏差の時間経過に対する推移の一例を検査用データと比較用データを対比して示すグラフである。
【符号の説明】
【0035】
BD1 第一比較用データ
BD2 第二比較用データ
OD 検査用データ
T1、T2、T3 一定時間
CR1、CR2 許容変化範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像手段と演算手段とを備え、
該撮像手段は、一定の時間間隔で管理目的地点の映像を撮影し、
該演算手段は、背景画像の輝度分布統計量を第一比較用データ(BD1)として記憶し、該映像について輝度分布統計量を検査用データ(OD)として算出するとともに第二比較用データ(BD2)として記憶し、該検査用データ(OD)と該第一比較用データ(BD1)の差分の絶対値を第一演算値として求め、
該第一演算値が第一閾値以下であれば、該比較用データ(BD1)を該検査用データ(OD)で更新し、
該第一演算値が該第一閾値より大きければ、
該検査用データ(OD)と該第二比較用データ(BD2)の差分の絶対値が変異閾値より大きい場合に、初期値が無効に設定されている変異フラグを有効とし、該第一演算値が該第一閾値に基づいて算出される割増閾値以下であれば、該変異フラグを無効とし、
該変異フラグが無効の場合、変異終了条件を満たした時点で該第一比較用データ(BD1)を該検査用データ(OD)で更新し、該変異終了条件を満たさなければ、該第一比較用データ(BD1)を維持し、
該変異フラグが有効の場合、該第一比較用データ(BD1)を維持し、該第一演算値が、該割増閾値より大きい第二閾値より大きく、かつ変異終了条件を満たした時点で異常事態が発生したと判断することを特徴とする道路管理システム。
【請求項2】
該変異終了条件が、該検査用データ(OD)の算出される前に記憶された該第二比較用データ(BD2)に対する許容変化範囲(CR1)内で該検査用データ(OD)が一定時間(T1)維持されることとなっている請求項1に記載の道路管理システム。
【請求項3】
該変異終了条件が、基準時に記憶された該第二比較用データ(BD2)に対する許容変化範囲(CR2)内で、該検査用データ(OD)が一定時間(T2)維持されることとなっている請求項1又は2に記載の道路管理システム。
【請求項4】
該変異終了条件が、一定時間(T3)内における該検査用データ(OD)の複数が、所定の比率で、基準時に記憶された該第二比較用データ(BD2)に対する許容変化範囲(CR2)に収まることとなっている請求項1、2又は3のいずれか一つの項に記載の道路管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−242932(P2008−242932A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−84135(P2007−84135)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(505398941)東日本高速道路株式会社 (66)
【Fターム(参考)】