遠心ポンプ
【課題】構成の簡素化を図り、かつ、気体の排出処理(すなわち、呼び水作用)を迅速におこなうことができる遠心ポンプを提供する。
【解決手段】遠心ポンプ20は、羽根車24の回転でボリュート28内に吸い込んだ流体をボリュート28の排出流路部47から吐出するものである。この遠心ポンプ20は、排出流路部47の内壁に沿って螺旋状に形成された一対の螺旋部材48,49と、一対の螺旋部材48,49の上流側に設けられた一対の連通溝51,52とを備えている。さらに、排出流路部47に送出空間71を有することにより、自吸運転時の気体を送出可能で、かつ定常運転時の流体を送出可能とした。
【解決手段】遠心ポンプ20は、羽根車24の回転でボリュート28内に吸い込んだ流体をボリュート28の排出流路部47から吐出するものである。この遠心ポンプ20は、排出流路部47の内壁に沿って螺旋状に形成された一対の螺旋部材48,49と、一対の螺旋部材48,49の上流側に設けられた一対の連通溝51,52とを備えている。さらに、排出流路部47に送出空間71を有することにより、自吸運転時の気体を送出可能で、かつ定常運転時の流体を送出可能とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボリュート内に羽根車を備え、羽根車を回転することによりボリュート内に吸い込んだ流体をボリュートに沿わせて送り出し、送り出した流体を外部に吐出する遠心ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
遠心ポンプのなかには、ボリュートの内部に回転軸が回転自在に突出され、突出させた回転軸に羽根車が設けられ、羽根車の近傍に小うず形室が設けられたものがある。
この遠心ポンプによれば、羽根車の近傍に小うず形室を設けることで、自吸運転において呼び水作用を好適に奏することが可能になる(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
具体的には、自吸運転の際に、呼び流体(呼び水作用を奏する流体)を遠心ポンプ内に注入し、羽根車を回転させることにより、注入された呼び流体がボリュート内の羽根車で小うず形室に導かれる。
小うず形室に導かれた呼び流体は、自吸水分離室に導かれ、自吸水分離室で螺旋状に案内される。呼び流体が螺旋状に案内されることで、ボリュート内の気体(空気)から呼び流体が遠心分離され、気体のみが遠心ポンプの外部に排出される。
【0004】
一方、気体から遠心分離された呼び流体は、ボリュート内に戻され、羽根車で小うず形室に戻される(循環される)。
このように、呼び流体を循環させることで、呼び流体の再利用が可能になり、ボリュート内から気体を排出する処理(すなわち、呼び水作用)が迅速におこなわれる。
【0005】
ボリュート内から気体を排出することでボリュート内に負圧を発生させ、発生させた負圧でボリュート内に水などの流体(以下、「流体」という)を吸い込む。
自吸運転においてボリュート内に流体を吸い込んだ後、定常運転においてボリュート内の流体を羽根車の遠心力で吐出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第95/012760号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の遠心ポンプは、自吸運転時の呼び水作用を迅速におこなうために、羽根車の近傍に小うず形室を設ける必要がある。
このため、遠心ポンプの構成が複雑になり、遠心ポンプの量産化が難しく、この観点から改良の余地が残されていた。
【0008】
本発明は、構成の簡素化を図り、かつ、気体の排出処理(すなわち、呼び水作用)を迅速におこなうことができる遠心ポンプを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、羽根車の周りにボリュートを備え、前記羽根車を回転することにより前記ボリュート内に吸い込んだ流体をボリュートに沿わせて送り出し、送り出した流体を前記ボリュートの排出流路部から吐出する遠心ポンプであって、前記排出流路部の内壁に沿って前記流体の送出方向に向けて螺旋状に形成された螺旋部材と、前記螺旋部材の上流側で、かつ前記螺旋部材に隣接して設けられ、前記排出流路部の内部および外部を連通可能な連通溝と、を備え、前記排出流路部において前記螺旋部材の半径方向内側に、自吸運転時の気体を送出可能で、かつ定常運転時の流体を送出可能な送出空間を有することを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明は、前記排出流路部は、円筒状に形成され、軸線に沿って二分割されたことを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明は、前記連通溝は、前記螺旋部材に沿って螺旋状に形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明では、排出流路部の内壁に沿って螺旋部材を設け、螺旋部材に隣接して連通溝を設けた。
よって、自吸運転時に、排出流路部に導かれた呼び流体を螺旋部材で螺旋状に案内することができる。
呼び流体とは、遠心ポンプの自吸運転の際に呼び水作用を奏する流体である。
呼び流体が螺旋状に案内されることで呼び流体に遠心力が発生する。
【0013】
ここで、流体は気体より密度が高い。よって、螺旋状に案内された呼び流体は、遠心力で排出流路部の半径方向外側に導かれて気体から分離(遠心分離)される。
分離された呼び流体は、連通溝から排出流路部の外部(すなわち、ボリュートの外部)に排出される。
【0014】
一方、気体は流体より密度が低い。よって、呼び流体が分離された気体は、排出流路部において螺旋部材の半径方向内側に残される。
そこで、排出流路部において螺旋部材の半径方向内側に送出空間を備えた。
よって、排出流路部に残された気体は、送出空間を経て遠心ポンプの外部に排出される。
【0015】
排出流路部からボリュートの外部に排出された呼び流体は、ボリュート内に戻されて呼び流体として再度利用される。
このように、呼び流体を遠心ポンプ内で循環させることで、呼び流体を有効に利用して気体の排出処理(すなわち、呼び水作用)を迅速におこなうことができる。
【0016】
ここで、請求項1は、自吸運転の際に呼び流体をボリュート内に戻して再利用するために、排出流路部の内壁に沿って螺旋部材を設け、螺旋部材に隣接させて連通溝を設けた。
螺旋部材は、一例として、板材を螺旋状に曲げ加工することで簡単に形成可能である。
また、連通溝は、一例として、排出流路部に螺旋状のスリット(溝)を加工することで簡単に形成可能である。
これにより、呼び流体を再利用可能な遠心ポンプの構成を簡素化できる。
【0017】
さらに、請求項1は、排出流路部において螺旋部材の半径方向内側に送出空間を備えた。
よって、遠心ポンプを定常運転する際に、排出流路部に導かれた流体を送出空間を経てボリュートの外部に排出することができる。
これにより、羽根車で送り出された流体の流れを螺旋部材で妨げることなく、送出空間から好適にボリュートの外部に排出することができる。
【0018】
請求項2に係る発明では、排出流路部を円筒状に形成して軸線方向に二分割した。
排出流路部を二分割することで、螺旋部材を排出流路部の内壁に沿って簡単に設けることができる。
このように、螺旋部材を排出流路部に簡単に設けるように構成することで、遠心ポンプのコストを抑えることができる。
【0019】
請求項3に係る発明では、連通溝を螺旋部材に沿わせて螺旋状に形成した。
これにより、自吸運転の際に、気体から遠心分離された呼び流体を連通溝から排出流路部の外部(すなわち、ボリュートの外部)に一層好適に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る遠心ポンプユニットを示す斜視図である。
【図2】図1の遠心ポンプを示す斜視図である。
【図3】図1の3−3線断面図である。
【図4】図3の4−4線断面図である。
【図5】図3の5−5線断面図である。
【図6】図4の6−6線断面図である。
【図7】図5の7部拡大図である。
【図8】本発明に係る排出流路部および一対の螺旋部材を示す分解斜視図である。
【図9】本発明に係る遠心ポンプのケース内に呼び流体を供給する例を説明する図である。
【図10】本発明に係るボリュート内で呼び流体を気体から分離させる例を説明する図である。
【図11】本発明に係る遠心ポンプでボリュート内に負圧を発生させて流体を吸い込む例を説明する図である。
【図12】本発明に係る遠心ポンプでボリュート内の流体をボリュートの外部に排出する例を説明する図である。
【図13】本発明に係る遠心ポンプでボリュートから排出された流体をポンプの外部に吐出する例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0022】
実施例に係る遠心ポンプ20について説明する。
図1に示すように、遠心ポンプユニット10は、略矩形体枠状に形成されたフレーム11と、フレーム11のベース12に設けられたエンジン14と、エンジン14に設けられるとともにベース12に設けられた遠心ポンプ20とを備えている。
【0023】
エンジン14は、ベース12にシリンダブロック15が設けられ、シリンダブロック15に遠心ポンプ20のケース22(図2も参照)が設けられ、シリンダブロック15からケース22内にクランク軸16の端部16a(図3参照)が突出されている。
【0024】
クランク軸16は、図3に示すように、端部16aの近傍部位16bがメカニカルシール17に回転自在に支持され、端部16aが遠心ポンプ20の羽根車24に連結されている。
よって、エンジン14を駆動してクランク軸16を回転することにより、クランク軸16で羽根車24が回転される。
【0025】
図2、図3に示すように、遠心ポンプ20は、シリンダブロック15に仕切部材21を介してボルト止めされたケース22と、ケース22内の空間23に設けられてクランク軸16の端部16aに連結された羽根車24と、羽根車24を覆うボリュート28とを備えている。
【0026】
また、遠心ポンプ20は、ケース22のケース吸込口22bに連通された吸込ノズル32と、ケース22のケース吐出口22cに連通された吐出ノズル33とを備えている。
吐出ノズル33に流体注入口34が形成され、流体注入口34がプラグ35で閉じられている。
流体注入口34はボリュート28の上方に配置されている。
【0027】
流体注入口34からプラグ35が外されることにより流体注入口34が開口される。
流体注入口34を開口した状態で、流体注入口34からケース22内に呼び流体が供給される。
呼び流体とは、遠心ポンプ20の自吸運転の際に呼び水作用を奏する流体である。
【0028】
ケース22は、ケース開口部22aが仕切部材21で閉塞され、仕切部材21に対峙する吸込側壁部37と、吸込側壁部37のケース吸込口22bに連通された吸込通路部38と、空間23の上部を覆う吐出側頂部39とを有する。
【0029】
吸込側壁部37にケース吸込口22bが設けられ、ケース吸込口22bに吸込通路部38が連通されている。
吸込通路部38は、ボリュート28の吸込口(以下、ボリュート吸込口という)44に同軸上に設けられた状態でボリュート吸込口44に連通されている。
ボリュート吸込口44は、吸込通路部38およびケース吸込口22bを経て吸込ノズル32に連通されている。
【0030】
吐出側頂部39にケース吐出口22cが設けられ、ケース吐出口22cに吐出ノズル33が連通されている。
吐出ノズル33の上部に流体注入口34が設けられている。
流体注入口34は、ボリュート28の上方に配置されている。
【0031】
仕切部材21は、クランク軸16と同軸上に支持孔21aが形成され、支持孔21aにメカニカルシール17が同軸上に支持され、メカニカルシール17にクランク軸16(端部16aの近傍部位16b)が回転自在に支持されている。
【0032】
クランク軸16の端部16aは、メカニカルシール17を介してボリュート28内の空間42に突出されている。
クランク軸16(端部16aの近傍部位16b)はメカニカルシール17を用いて回転自在に支持されている。
よって、ボリュート28内の流体が、近傍部位16bから外部に漏れることをメカニカルシール17で機械的に制限可能である。
【0033】
ボリュート28内の空間42に突出されたクランク軸16の端部16aに羽根車24が設けられている。
羽根車24は、クランク軸16の端部16aに設けられたハブ25と、ハブ25に設けられた複数の羽根26とを備えている。
複数の羽根26は、ハブ25のうち、メカニカルシール17の反対側の表面25aに設けられている。
【0034】
この羽根車24は、ボリュート28で覆われることによりボリュート28内に収納されている。
ボリュート28が仕切部材21にボルト(図示せず)で取り付けられている。
【0035】
図4、図5に示すように、ボリュート28は、ケース22内の空間23に収納され、一対の半割体28A,28B(図3も参照)で羽根車24を収納可能に形成されたケーシングである。
このボリュート28は、ケース22の吸込通路部38に連通されたボリュート吸込口44と、ボリュート吸込口44(羽根車24)の周囲に渦巻形に設けられたボリュート本体45とを有する。
【0036】
ボリュート本体45は、羽根車24の周囲に設けられた案内流路部46(図3も参照)と、案内流路部46の下流側端部46bに設けられた排出流路部47と、排出流路部47の内壁47aに沿って形成された一対の螺旋部材(螺旋部材)48,49と、一対の螺旋部材48,49に隣接して設けられた一対の連通溝(連通溝)51,52とを有する。
【0037】
案内流路部46は、上流側端部46aから下流側端部46bに向けて徐々に増加するように渦巻形に形成され、底部46cに開口部54が形成されている。
開口部54は、ケース22内の呼び流体をボリュート28内に導くための開口である。
【0038】
遠心ポンプ20によれば、定常運転の際には、羽根車24を矢印A方向に回転させることにより、ボリュート吸込口44から案内流路部46内に流体が吸い込まれる。
案内流路部46内に吸い込まれた流体は排出流路部47に向けて矢印Bの如く送り出される。
【0039】
一方、自吸運転の際には、羽根車24を矢印A方向に回転させることにより、ボリュート28の外部に蓄えられた呼び流体を開口部54から案内流路部46に吸い込む。
案内流路部46内に吸い込まれた流体は、ボリュート28内の気体とともに排出流路部47に向けて矢印Bの如く送り出される。
【0040】
排出流路部47は、案内流路部46の下流側端部46bに設けられている。
この排出流路部47は、案内流路部46の下流側端部46bからケース吐出口22cに向けて斜め上向きに設けられている。
よって、排出流路部47のボリュート吐出口56がケース吐出口22cの下方に配置されている。
【0041】
図6、図7に示すように、排出流路部47は、一対の半割部位61,62が組み合わされることにより円筒状に形成されている。
一方の半割部位61は、一方の半割体28Aの先端部を形成する部位であり、断面略湾曲状に形成されている。他方の半割部位62は、他方の半割体28Bの先端部を形成する部位であり、断面略湾曲状に形成されている。
一対の半割部位61,62が一体に組み付けられることにより、排出流路部47が円筒状に形成されている。
【0042】
図7、図8に示すように、排出流路部47の内壁47aに沿って一対の螺旋部材48,49(一方の螺旋部材48、他方の螺旋部材49)が備えられている。
一方の螺旋部材48は、一例として、上流端48aから下流端48bまで360°の範囲で螺旋状に形成されている。
他方の螺旋部材49は、一例として、上流端49aから下流端49bまで略360°の範囲で螺旋状に形成されている。
【0043】
一対の螺旋部材48,49は、軸線58方向(流体の送出方向)に向けて螺旋状に形成され、各々の部材が略180°位相がずれた状態で設けられている。
一対の螺旋部材48,49を位相を略180°ずらして設けることで、一対の螺旋部材48,49を軸線58方向に対して重ね合わせた状態に配置できる。
【0044】
このように、一対の螺旋部材48,49を略180°位相をずらして設けることで、一方の螺旋部材48の全長Lの範囲内に他方の螺旋部材49を組み合わせることができる。
よって、一対の螺旋部材48,49の全長を、一方の螺旋部材48の全長Lと同じに短く抑えることが可能になる。
これにより、排出流路部47の長さ寸法を必要以上に大きく確保する必要がないので、遠心ポンプ20が大型化することを抑えることができる。
【0045】
さらに、排出流路部47に一対の螺旋部材48,49を設けることで、自吸運転の際に、排出流路部47に導かれた呼び流体を一対の螺旋部材48,49で螺旋状の流れに矢印D(図6も参照)の如く効率よく変えることができる。
排出流路部47の呼び流体74(図9(b)参照)を螺旋状に案内することで呼び流体に遠心力を発生させて、呼び流体を気体から分離(遠心分離)させることができる。
【0046】
ところで、前述したように、排出流路部47は一対の半割部位61,62に二分割されている。このように、排出流路部47を二分割することで、排出流路部47の内壁47aに沿って一対の螺旋部材48,49を簡単に設けることができる。
【0047】
さらに、排出流路部47はボリュート本体45の先端部に設けられている。よって、排出流路部47を組み付ける際に、排出流路部47の外部から一対の螺旋部材48,49を支えることが可能である。
これにより、一対の螺旋部材48,49の取付作業を容易におこなうことができる。
【0048】
このように、排出流路部47を二分割し、かつ排出流路部47をボリュート本体45の先端部に設けることで、一対の螺旋部材48,49の組付作業が容易になり、遠心ポンプのコストを抑えることができる。
【0049】
ここで、図6に示すように、一対の螺旋部材48,49の高さ寸法Hは、排出流路部47の半径Rに対して十分に小さく設定されている。
よって、排出流路部47は、一対の螺旋部材48,49の半径方向内側に送出空間71を大きく確保することができる。
【0050】
送出空間71は、自吸運転時の気体をボリュート吐出口56(図7参照)に向けて送出(案内)可能な空間である。
よって、自吸運転の際に、呼び流体から分離された気体を送出空間71を経てボリュート吐出口56からボリュート28の外部に排出することができる。
【0051】
さらに、送出空間71は、定常運転時の流体をボリュート吐出口56(図7参照)に向けて送出(案内)可能な空間である。
よって、定常運転の際に、排出流路部47に導かれた流体を送出空間71を経てボリュート吐出口56からボリュート28の外部に排出することができる。
【0052】
図7、図8に示すように、排出流路部47には、一方の螺旋部材48の上流側で、かつ一方の螺旋部材48に隣接して一方の連通溝51が連続的に設けられている。
一方の連通溝51は、一方の螺旋部材48に沿って螺旋状に形成され、排出流路部47の内部および排出流路部47の外部を連通するスリット状の溝である。
【0053】
また、排出流路部47には、他方の螺旋部材49の上流側で、かつ他方の螺旋部材49に隣接して他方の連通溝52が連続的に設けられている。
他方の連通溝52は、他方の螺旋部材49に沿って螺旋状に形成され、排出流路部47の内部および排出流路部47の外部を連通するスリット状の溝である。
【0054】
図6に示すように、排出流路部47に一対の螺旋部材48,49を設けることで、自吸運転の際に、一対の螺旋部材48,49で呼び流体を螺旋状に矢印Dの如く案内することで、呼び流体を気体から遠心分離することができる。
さらに、排出流路部47に一対の連通溝51,52を設けることで、気体から遠心分離された呼び流体を排出流路部47の外部に矢印E(図7も参照)の如く排出することができる。
【0055】
ここで、一対の連通溝51,52を螺旋部材に沿わせて螺旋状に形成した。
これにより、自吸運転の際に、気体から遠心分離された呼び流体を一対の連通溝51,52から排出流路部47の外部(すなわち、ボリュート28の外部)に一層好適に排出することができる。
【0056】
ここで、図8に示すように、一対の螺旋部材48,49は、一例として、板材を螺旋状に曲げ加工することで簡単に形成可能である。
また、一対の連通溝51,52は、一例として、排出流路部47に螺旋状のスリット(溝)を加工することで簡単に形成可能である。
これにより、呼び流体を再利用可能な遠心ポンプ20の構成を簡素化できる。
【0057】
つぎに、遠心ポンプ20を自吸運転する例を図9〜図11に基づいて説明する。
図9(a)に示すように、遠心ポンプ20の羽根車24を停止させた状態で、ボリュート28内の空間42に気体(一例として、空気)が蓄えられている。
この状態において、流体注入口34からプラグ35を外して流体注入口34を開口する。
流体注入口34を開口した状態で、流体注入口34からケース22内の空間23に呼び流体74(図9(b)参照)を矢印Fの如く供給する。
【0058】
図9(b)に示すように、ケース22内の空間23に供給された呼び流体74が、ケース22内の底部に矢印Gの如く導かれる。
ケース22内の底部に呼び流体74が導かれることにより、ケース22内の底部で、かつボリュート28の外部に呼び流体74が蓄えられる。
【0059】
この状態で、遠心ポンプ20をエンジン14(図1参照)で駆動して羽根車24を矢印Hの如く回転する。
羽根車24を矢印Hの如く回転することで、ボリュート28の外部に蓄えられた呼び流体74を、開口部54を経て案内流路部46に矢印Iの如く導く。
【0060】
図10(a)に示すように、案内流路部46に導かれた呼び流体74が、ボリュート28内の気体とともに案内流路部46に沿って排出流路部47に向けて矢印Jの如く導かれる。
排出流路部47に呼び流体74が導かれることで、導かれた呼び流体74が一対の螺旋部材48,49で矢印Kの如く螺旋状の流れに案内される。
【0061】
図10(b)に示すように、排出流路部47において呼び流体74(図10(a)参照)が矢印Kの如く螺旋状に案内されることで呼び流体74に遠心力が発生する。
ここで、呼び流体74は気体より密度が高い。
【0062】
よって、螺旋状に案内された呼び流体74が、遠心力で排出流路部47の半径方向外側に導かれて気体から分離(遠心分離)される。
分離された呼び流体74が、一対の連通溝51,52から排出流路部47の外部(すなわち、ボリュート28の外部)に矢印Lの如く排出される。
【0063】
一方、呼び流体74が分離された気体は、呼び流体74より密度が低い。
よって、呼び流体74が分離された気体が、排出流路部47において一対の螺旋部材48,49の半径方向内側の送出空間71に残される。
【0064】
図11(a)に示すように、送出空間71(図10(b)参照)に残された気体が、送出空間71を経てボリュート吐出口56からケース吐出口22cに向けて矢印Mの如く導かれる。
ケース吐出口22cに導かれた気体が、吐出ノズル33を経て遠心ポンプ20の外部に矢印Nの如く排出される。
【0065】
一方、排出流路部47の一対の連通溝51,52から呼び流体74がボリュート28の外部に矢印Lの如く排出されることによりケース22内の空間23に戻される。
ケース22内の空間23に戻された呼び流体74が、ケース22内の底部に矢印Oの如く導かれる。
ケース22内の底部に導かれた呼び流体74が開口部54を経てボリュート28内に矢印Pの如く戻される。
【0066】
このように、呼び流体74を遠心ポンプ20内で循環させることで、呼び流体74を有効に利用して気体の排出処理(すなわち、呼び水作用)を迅速におこなうことができる。
これにより、ボリュート28内に負圧を発生させて、発生させた負圧でボリュート28内に流体を吸い込む自吸運転による流体の吸込性を確保できる。
【0067】
図11(b)に示すように、ボリュート28内の案内流路部46は、ボリュート吸込口44、吸込通路部38およびケース吸込口22bを経て吸込ノズル32に連通されている。
よって、ボリュート28内に負圧を発生させることにより、吸込ノズル32、ケース吸込口22b、吸込通路部38およびボリュート吸込口44に定常運転用の流体が矢印Qの如く吸い込まれる。
【0068】
ボリュート吸込口44に吸い込まれた流体がボリュート吸込口44を経てボリュート28の案内流路部46に矢印Rの如く吸い込まれる。
ボリュート28内の案内流路部46に流体を吸い込むことで遠心ポンプ20を定常運転に切り替える。
【0069】
ついで、遠心ポンプ20を定常運転する例を図12、図13に基づいて説明する。
図12(a)に示すように、定常運転において、ボリュート28の案内流路部46に吸い込まれた流体が羽根車24の回転方向に矢印Sの如く送り出される。
【0070】
図12(b)に示すように、羽根車24の回転方向に送り出される流体が案内流路部46に沿って排出流路部47に向けて矢印Sの如く導かれる。
ここで、排出流路部47において一対の螺旋部材48,49の半径方向内側に送出空間71を有する。
【0071】
よって、排出流路部47に導かれた流体が送出空間71に矢印Tの如く導かれる。
送出空間71に導かれた流体が、送出空間71を経てボリュート吐出口56からボリュート28の外部に矢印Uの如く排出される。
これにより、排出流路部47に導かれた流体の流れを一対の螺旋部材48,49で妨げることなく、ボリュート吐出口56からボリュート28の外部に排出することができる。
【0072】
図13に示すように、ボリュート吐出口56から排出された流体がケース吐出口22cに向けて矢印Vの如く案内される。
ケース吐出口22cに向けて吐出された流体が、吐出ノズル33を経て矢印Wの如く遠心ポンプ20の外部に吐出される。
【0073】
なお、本発明に係る遠心ポンプは、前述した実施例に限定されるものではなく適宜変更、改良などが可能である。
例えば、前記実施例では、一対の連通溝51,52を一対の螺旋部材48,49に沿わせて連続的に形成して螺旋状の溝とした例について説明したが、一対の連通溝51,52はこれに限定するものではない。
例えば、一対の連通溝51,52を一対の螺旋部材48,49に沿わせて不連続的に形成することも可能である。
【0074】
一対の連通溝51,52を不連続的に形成することで、排出流路部47、すなわち半割部位61や半割部位62を不連続部で一体に形成することが可能になり、排出流路部47の取扱いを容易にできる。
さらに、半割部位61や半割部位62を不連続部で一体に形成することで部品点数の増加を抑えることも可能になる。
【0075】
また、前記実施例では、排出流路部47と一対の螺旋部材48,49とを別部材で形成して各々の部材47,48,49を組み付ける例について説明したが、排出流路部47および一対の螺旋部材48,49を鋳造などで一体に成形することも可能である。
【0076】
さらに、前記実施例では、排出流路部47には一対の螺旋部材48,49を設けた例について説明したが、排出流路部47に設ける螺旋部材の個数は任意に選択することが可能である。
【0077】
また、前記実施例では、排出流路部47を二分割した例について説明したが、これに限らないで、排出流路部47を一体に形成することも可能である。
【0078】
さらに、前記実施例で示した遠心ポンプユニット10、遠心ポンプ20、羽根車24、ボリュート28、排出流路部47、一対の螺旋部材48,49、一対の連通溝51,52および送出空間71などの形状や構成は例示したものに限定するものではなく適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、ボリュート内の羽根車を回転してボリュート内に吸い込んだ流体をボリュートに沿わせて送り出し、送り出した流体を吐出する遠心ポンプへの適用に好適である。
【符号の説明】
【0080】
10…遠心ポンプユニット、20…遠心ポンプ、24…羽根車、28…ボリュート、47…排出流路部、47a…排出流路部の内壁、48,49…一対の螺旋部材(螺旋部材)、51,52…一対の連通溝(連通溝)、58…軸線、71…送出空間。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボリュート内に羽根車を備え、羽根車を回転することによりボリュート内に吸い込んだ流体をボリュートに沿わせて送り出し、送り出した流体を外部に吐出する遠心ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
遠心ポンプのなかには、ボリュートの内部に回転軸が回転自在に突出され、突出させた回転軸に羽根車が設けられ、羽根車の近傍に小うず形室が設けられたものがある。
この遠心ポンプによれば、羽根車の近傍に小うず形室を設けることで、自吸運転において呼び水作用を好適に奏することが可能になる(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
具体的には、自吸運転の際に、呼び流体(呼び水作用を奏する流体)を遠心ポンプ内に注入し、羽根車を回転させることにより、注入された呼び流体がボリュート内の羽根車で小うず形室に導かれる。
小うず形室に導かれた呼び流体は、自吸水分離室に導かれ、自吸水分離室で螺旋状に案内される。呼び流体が螺旋状に案内されることで、ボリュート内の気体(空気)から呼び流体が遠心分離され、気体のみが遠心ポンプの外部に排出される。
【0004】
一方、気体から遠心分離された呼び流体は、ボリュート内に戻され、羽根車で小うず形室に戻される(循環される)。
このように、呼び流体を循環させることで、呼び流体の再利用が可能になり、ボリュート内から気体を排出する処理(すなわち、呼び水作用)が迅速におこなわれる。
【0005】
ボリュート内から気体を排出することでボリュート内に負圧を発生させ、発生させた負圧でボリュート内に水などの流体(以下、「流体」という)を吸い込む。
自吸運転においてボリュート内に流体を吸い込んだ後、定常運転においてボリュート内の流体を羽根車の遠心力で吐出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第95/012760号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の遠心ポンプは、自吸運転時の呼び水作用を迅速におこなうために、羽根車の近傍に小うず形室を設ける必要がある。
このため、遠心ポンプの構成が複雑になり、遠心ポンプの量産化が難しく、この観点から改良の余地が残されていた。
【0008】
本発明は、構成の簡素化を図り、かつ、気体の排出処理(すなわち、呼び水作用)を迅速におこなうことができる遠心ポンプを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、羽根車の周りにボリュートを備え、前記羽根車を回転することにより前記ボリュート内に吸い込んだ流体をボリュートに沿わせて送り出し、送り出した流体を前記ボリュートの排出流路部から吐出する遠心ポンプであって、前記排出流路部の内壁に沿って前記流体の送出方向に向けて螺旋状に形成された螺旋部材と、前記螺旋部材の上流側で、かつ前記螺旋部材に隣接して設けられ、前記排出流路部の内部および外部を連通可能な連通溝と、を備え、前記排出流路部において前記螺旋部材の半径方向内側に、自吸運転時の気体を送出可能で、かつ定常運転時の流体を送出可能な送出空間を有することを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明は、前記排出流路部は、円筒状に形成され、軸線に沿って二分割されたことを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明は、前記連通溝は、前記螺旋部材に沿って螺旋状に形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明では、排出流路部の内壁に沿って螺旋部材を設け、螺旋部材に隣接して連通溝を設けた。
よって、自吸運転時に、排出流路部に導かれた呼び流体を螺旋部材で螺旋状に案内することができる。
呼び流体とは、遠心ポンプの自吸運転の際に呼び水作用を奏する流体である。
呼び流体が螺旋状に案内されることで呼び流体に遠心力が発生する。
【0013】
ここで、流体は気体より密度が高い。よって、螺旋状に案内された呼び流体は、遠心力で排出流路部の半径方向外側に導かれて気体から分離(遠心分離)される。
分離された呼び流体は、連通溝から排出流路部の外部(すなわち、ボリュートの外部)に排出される。
【0014】
一方、気体は流体より密度が低い。よって、呼び流体が分離された気体は、排出流路部において螺旋部材の半径方向内側に残される。
そこで、排出流路部において螺旋部材の半径方向内側に送出空間を備えた。
よって、排出流路部に残された気体は、送出空間を経て遠心ポンプの外部に排出される。
【0015】
排出流路部からボリュートの外部に排出された呼び流体は、ボリュート内に戻されて呼び流体として再度利用される。
このように、呼び流体を遠心ポンプ内で循環させることで、呼び流体を有効に利用して気体の排出処理(すなわち、呼び水作用)を迅速におこなうことができる。
【0016】
ここで、請求項1は、自吸運転の際に呼び流体をボリュート内に戻して再利用するために、排出流路部の内壁に沿って螺旋部材を設け、螺旋部材に隣接させて連通溝を設けた。
螺旋部材は、一例として、板材を螺旋状に曲げ加工することで簡単に形成可能である。
また、連通溝は、一例として、排出流路部に螺旋状のスリット(溝)を加工することで簡単に形成可能である。
これにより、呼び流体を再利用可能な遠心ポンプの構成を簡素化できる。
【0017】
さらに、請求項1は、排出流路部において螺旋部材の半径方向内側に送出空間を備えた。
よって、遠心ポンプを定常運転する際に、排出流路部に導かれた流体を送出空間を経てボリュートの外部に排出することができる。
これにより、羽根車で送り出された流体の流れを螺旋部材で妨げることなく、送出空間から好適にボリュートの外部に排出することができる。
【0018】
請求項2に係る発明では、排出流路部を円筒状に形成して軸線方向に二分割した。
排出流路部を二分割することで、螺旋部材を排出流路部の内壁に沿って簡単に設けることができる。
このように、螺旋部材を排出流路部に簡単に設けるように構成することで、遠心ポンプのコストを抑えることができる。
【0019】
請求項3に係る発明では、連通溝を螺旋部材に沿わせて螺旋状に形成した。
これにより、自吸運転の際に、気体から遠心分離された呼び流体を連通溝から排出流路部の外部(すなわち、ボリュートの外部)に一層好適に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る遠心ポンプユニットを示す斜視図である。
【図2】図1の遠心ポンプを示す斜視図である。
【図3】図1の3−3線断面図である。
【図4】図3の4−4線断面図である。
【図5】図3の5−5線断面図である。
【図6】図4の6−6線断面図である。
【図7】図5の7部拡大図である。
【図8】本発明に係る排出流路部および一対の螺旋部材を示す分解斜視図である。
【図9】本発明に係る遠心ポンプのケース内に呼び流体を供給する例を説明する図である。
【図10】本発明に係るボリュート内で呼び流体を気体から分離させる例を説明する図である。
【図11】本発明に係る遠心ポンプでボリュート内に負圧を発生させて流体を吸い込む例を説明する図である。
【図12】本発明に係る遠心ポンプでボリュート内の流体をボリュートの外部に排出する例を説明する図である。
【図13】本発明に係る遠心ポンプでボリュートから排出された流体をポンプの外部に吐出する例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0022】
実施例に係る遠心ポンプ20について説明する。
図1に示すように、遠心ポンプユニット10は、略矩形体枠状に形成されたフレーム11と、フレーム11のベース12に設けられたエンジン14と、エンジン14に設けられるとともにベース12に設けられた遠心ポンプ20とを備えている。
【0023】
エンジン14は、ベース12にシリンダブロック15が設けられ、シリンダブロック15に遠心ポンプ20のケース22(図2も参照)が設けられ、シリンダブロック15からケース22内にクランク軸16の端部16a(図3参照)が突出されている。
【0024】
クランク軸16は、図3に示すように、端部16aの近傍部位16bがメカニカルシール17に回転自在に支持され、端部16aが遠心ポンプ20の羽根車24に連結されている。
よって、エンジン14を駆動してクランク軸16を回転することにより、クランク軸16で羽根車24が回転される。
【0025】
図2、図3に示すように、遠心ポンプ20は、シリンダブロック15に仕切部材21を介してボルト止めされたケース22と、ケース22内の空間23に設けられてクランク軸16の端部16aに連結された羽根車24と、羽根車24を覆うボリュート28とを備えている。
【0026】
また、遠心ポンプ20は、ケース22のケース吸込口22bに連通された吸込ノズル32と、ケース22のケース吐出口22cに連通された吐出ノズル33とを備えている。
吐出ノズル33に流体注入口34が形成され、流体注入口34がプラグ35で閉じられている。
流体注入口34はボリュート28の上方に配置されている。
【0027】
流体注入口34からプラグ35が外されることにより流体注入口34が開口される。
流体注入口34を開口した状態で、流体注入口34からケース22内に呼び流体が供給される。
呼び流体とは、遠心ポンプ20の自吸運転の際に呼び水作用を奏する流体である。
【0028】
ケース22は、ケース開口部22aが仕切部材21で閉塞され、仕切部材21に対峙する吸込側壁部37と、吸込側壁部37のケース吸込口22bに連通された吸込通路部38と、空間23の上部を覆う吐出側頂部39とを有する。
【0029】
吸込側壁部37にケース吸込口22bが設けられ、ケース吸込口22bに吸込通路部38が連通されている。
吸込通路部38は、ボリュート28の吸込口(以下、ボリュート吸込口という)44に同軸上に設けられた状態でボリュート吸込口44に連通されている。
ボリュート吸込口44は、吸込通路部38およびケース吸込口22bを経て吸込ノズル32に連通されている。
【0030】
吐出側頂部39にケース吐出口22cが設けられ、ケース吐出口22cに吐出ノズル33が連通されている。
吐出ノズル33の上部に流体注入口34が設けられている。
流体注入口34は、ボリュート28の上方に配置されている。
【0031】
仕切部材21は、クランク軸16と同軸上に支持孔21aが形成され、支持孔21aにメカニカルシール17が同軸上に支持され、メカニカルシール17にクランク軸16(端部16aの近傍部位16b)が回転自在に支持されている。
【0032】
クランク軸16の端部16aは、メカニカルシール17を介してボリュート28内の空間42に突出されている。
クランク軸16(端部16aの近傍部位16b)はメカニカルシール17を用いて回転自在に支持されている。
よって、ボリュート28内の流体が、近傍部位16bから外部に漏れることをメカニカルシール17で機械的に制限可能である。
【0033】
ボリュート28内の空間42に突出されたクランク軸16の端部16aに羽根車24が設けられている。
羽根車24は、クランク軸16の端部16aに設けられたハブ25と、ハブ25に設けられた複数の羽根26とを備えている。
複数の羽根26は、ハブ25のうち、メカニカルシール17の反対側の表面25aに設けられている。
【0034】
この羽根車24は、ボリュート28で覆われることによりボリュート28内に収納されている。
ボリュート28が仕切部材21にボルト(図示せず)で取り付けられている。
【0035】
図4、図5に示すように、ボリュート28は、ケース22内の空間23に収納され、一対の半割体28A,28B(図3も参照)で羽根車24を収納可能に形成されたケーシングである。
このボリュート28は、ケース22の吸込通路部38に連通されたボリュート吸込口44と、ボリュート吸込口44(羽根車24)の周囲に渦巻形に設けられたボリュート本体45とを有する。
【0036】
ボリュート本体45は、羽根車24の周囲に設けられた案内流路部46(図3も参照)と、案内流路部46の下流側端部46bに設けられた排出流路部47と、排出流路部47の内壁47aに沿って形成された一対の螺旋部材(螺旋部材)48,49と、一対の螺旋部材48,49に隣接して設けられた一対の連通溝(連通溝)51,52とを有する。
【0037】
案内流路部46は、上流側端部46aから下流側端部46bに向けて徐々に増加するように渦巻形に形成され、底部46cに開口部54が形成されている。
開口部54は、ケース22内の呼び流体をボリュート28内に導くための開口である。
【0038】
遠心ポンプ20によれば、定常運転の際には、羽根車24を矢印A方向に回転させることにより、ボリュート吸込口44から案内流路部46内に流体が吸い込まれる。
案内流路部46内に吸い込まれた流体は排出流路部47に向けて矢印Bの如く送り出される。
【0039】
一方、自吸運転の際には、羽根車24を矢印A方向に回転させることにより、ボリュート28の外部に蓄えられた呼び流体を開口部54から案内流路部46に吸い込む。
案内流路部46内に吸い込まれた流体は、ボリュート28内の気体とともに排出流路部47に向けて矢印Bの如く送り出される。
【0040】
排出流路部47は、案内流路部46の下流側端部46bに設けられている。
この排出流路部47は、案内流路部46の下流側端部46bからケース吐出口22cに向けて斜め上向きに設けられている。
よって、排出流路部47のボリュート吐出口56がケース吐出口22cの下方に配置されている。
【0041】
図6、図7に示すように、排出流路部47は、一対の半割部位61,62が組み合わされることにより円筒状に形成されている。
一方の半割部位61は、一方の半割体28Aの先端部を形成する部位であり、断面略湾曲状に形成されている。他方の半割部位62は、他方の半割体28Bの先端部を形成する部位であり、断面略湾曲状に形成されている。
一対の半割部位61,62が一体に組み付けられることにより、排出流路部47が円筒状に形成されている。
【0042】
図7、図8に示すように、排出流路部47の内壁47aに沿って一対の螺旋部材48,49(一方の螺旋部材48、他方の螺旋部材49)が備えられている。
一方の螺旋部材48は、一例として、上流端48aから下流端48bまで360°の範囲で螺旋状に形成されている。
他方の螺旋部材49は、一例として、上流端49aから下流端49bまで略360°の範囲で螺旋状に形成されている。
【0043】
一対の螺旋部材48,49は、軸線58方向(流体の送出方向)に向けて螺旋状に形成され、各々の部材が略180°位相がずれた状態で設けられている。
一対の螺旋部材48,49を位相を略180°ずらして設けることで、一対の螺旋部材48,49を軸線58方向に対して重ね合わせた状態に配置できる。
【0044】
このように、一対の螺旋部材48,49を略180°位相をずらして設けることで、一方の螺旋部材48の全長Lの範囲内に他方の螺旋部材49を組み合わせることができる。
よって、一対の螺旋部材48,49の全長を、一方の螺旋部材48の全長Lと同じに短く抑えることが可能になる。
これにより、排出流路部47の長さ寸法を必要以上に大きく確保する必要がないので、遠心ポンプ20が大型化することを抑えることができる。
【0045】
さらに、排出流路部47に一対の螺旋部材48,49を設けることで、自吸運転の際に、排出流路部47に導かれた呼び流体を一対の螺旋部材48,49で螺旋状の流れに矢印D(図6も参照)の如く効率よく変えることができる。
排出流路部47の呼び流体74(図9(b)参照)を螺旋状に案内することで呼び流体に遠心力を発生させて、呼び流体を気体から分離(遠心分離)させることができる。
【0046】
ところで、前述したように、排出流路部47は一対の半割部位61,62に二分割されている。このように、排出流路部47を二分割することで、排出流路部47の内壁47aに沿って一対の螺旋部材48,49を簡単に設けることができる。
【0047】
さらに、排出流路部47はボリュート本体45の先端部に設けられている。よって、排出流路部47を組み付ける際に、排出流路部47の外部から一対の螺旋部材48,49を支えることが可能である。
これにより、一対の螺旋部材48,49の取付作業を容易におこなうことができる。
【0048】
このように、排出流路部47を二分割し、かつ排出流路部47をボリュート本体45の先端部に設けることで、一対の螺旋部材48,49の組付作業が容易になり、遠心ポンプのコストを抑えることができる。
【0049】
ここで、図6に示すように、一対の螺旋部材48,49の高さ寸法Hは、排出流路部47の半径Rに対して十分に小さく設定されている。
よって、排出流路部47は、一対の螺旋部材48,49の半径方向内側に送出空間71を大きく確保することができる。
【0050】
送出空間71は、自吸運転時の気体をボリュート吐出口56(図7参照)に向けて送出(案内)可能な空間である。
よって、自吸運転の際に、呼び流体から分離された気体を送出空間71を経てボリュート吐出口56からボリュート28の外部に排出することができる。
【0051】
さらに、送出空間71は、定常運転時の流体をボリュート吐出口56(図7参照)に向けて送出(案内)可能な空間である。
よって、定常運転の際に、排出流路部47に導かれた流体を送出空間71を経てボリュート吐出口56からボリュート28の外部に排出することができる。
【0052】
図7、図8に示すように、排出流路部47には、一方の螺旋部材48の上流側で、かつ一方の螺旋部材48に隣接して一方の連通溝51が連続的に設けられている。
一方の連通溝51は、一方の螺旋部材48に沿って螺旋状に形成され、排出流路部47の内部および排出流路部47の外部を連通するスリット状の溝である。
【0053】
また、排出流路部47には、他方の螺旋部材49の上流側で、かつ他方の螺旋部材49に隣接して他方の連通溝52が連続的に設けられている。
他方の連通溝52は、他方の螺旋部材49に沿って螺旋状に形成され、排出流路部47の内部および排出流路部47の外部を連通するスリット状の溝である。
【0054】
図6に示すように、排出流路部47に一対の螺旋部材48,49を設けることで、自吸運転の際に、一対の螺旋部材48,49で呼び流体を螺旋状に矢印Dの如く案内することで、呼び流体を気体から遠心分離することができる。
さらに、排出流路部47に一対の連通溝51,52を設けることで、気体から遠心分離された呼び流体を排出流路部47の外部に矢印E(図7も参照)の如く排出することができる。
【0055】
ここで、一対の連通溝51,52を螺旋部材に沿わせて螺旋状に形成した。
これにより、自吸運転の際に、気体から遠心分離された呼び流体を一対の連通溝51,52から排出流路部47の外部(すなわち、ボリュート28の外部)に一層好適に排出することができる。
【0056】
ここで、図8に示すように、一対の螺旋部材48,49は、一例として、板材を螺旋状に曲げ加工することで簡単に形成可能である。
また、一対の連通溝51,52は、一例として、排出流路部47に螺旋状のスリット(溝)を加工することで簡単に形成可能である。
これにより、呼び流体を再利用可能な遠心ポンプ20の構成を簡素化できる。
【0057】
つぎに、遠心ポンプ20を自吸運転する例を図9〜図11に基づいて説明する。
図9(a)に示すように、遠心ポンプ20の羽根車24を停止させた状態で、ボリュート28内の空間42に気体(一例として、空気)が蓄えられている。
この状態において、流体注入口34からプラグ35を外して流体注入口34を開口する。
流体注入口34を開口した状態で、流体注入口34からケース22内の空間23に呼び流体74(図9(b)参照)を矢印Fの如く供給する。
【0058】
図9(b)に示すように、ケース22内の空間23に供給された呼び流体74が、ケース22内の底部に矢印Gの如く導かれる。
ケース22内の底部に呼び流体74が導かれることにより、ケース22内の底部で、かつボリュート28の外部に呼び流体74が蓄えられる。
【0059】
この状態で、遠心ポンプ20をエンジン14(図1参照)で駆動して羽根車24を矢印Hの如く回転する。
羽根車24を矢印Hの如く回転することで、ボリュート28の外部に蓄えられた呼び流体74を、開口部54を経て案内流路部46に矢印Iの如く導く。
【0060】
図10(a)に示すように、案内流路部46に導かれた呼び流体74が、ボリュート28内の気体とともに案内流路部46に沿って排出流路部47に向けて矢印Jの如く導かれる。
排出流路部47に呼び流体74が導かれることで、導かれた呼び流体74が一対の螺旋部材48,49で矢印Kの如く螺旋状の流れに案内される。
【0061】
図10(b)に示すように、排出流路部47において呼び流体74(図10(a)参照)が矢印Kの如く螺旋状に案内されることで呼び流体74に遠心力が発生する。
ここで、呼び流体74は気体より密度が高い。
【0062】
よって、螺旋状に案内された呼び流体74が、遠心力で排出流路部47の半径方向外側に導かれて気体から分離(遠心分離)される。
分離された呼び流体74が、一対の連通溝51,52から排出流路部47の外部(すなわち、ボリュート28の外部)に矢印Lの如く排出される。
【0063】
一方、呼び流体74が分離された気体は、呼び流体74より密度が低い。
よって、呼び流体74が分離された気体が、排出流路部47において一対の螺旋部材48,49の半径方向内側の送出空間71に残される。
【0064】
図11(a)に示すように、送出空間71(図10(b)参照)に残された気体が、送出空間71を経てボリュート吐出口56からケース吐出口22cに向けて矢印Mの如く導かれる。
ケース吐出口22cに導かれた気体が、吐出ノズル33を経て遠心ポンプ20の外部に矢印Nの如く排出される。
【0065】
一方、排出流路部47の一対の連通溝51,52から呼び流体74がボリュート28の外部に矢印Lの如く排出されることによりケース22内の空間23に戻される。
ケース22内の空間23に戻された呼び流体74が、ケース22内の底部に矢印Oの如く導かれる。
ケース22内の底部に導かれた呼び流体74が開口部54を経てボリュート28内に矢印Pの如く戻される。
【0066】
このように、呼び流体74を遠心ポンプ20内で循環させることで、呼び流体74を有効に利用して気体の排出処理(すなわち、呼び水作用)を迅速におこなうことができる。
これにより、ボリュート28内に負圧を発生させて、発生させた負圧でボリュート28内に流体を吸い込む自吸運転による流体の吸込性を確保できる。
【0067】
図11(b)に示すように、ボリュート28内の案内流路部46は、ボリュート吸込口44、吸込通路部38およびケース吸込口22bを経て吸込ノズル32に連通されている。
よって、ボリュート28内に負圧を発生させることにより、吸込ノズル32、ケース吸込口22b、吸込通路部38およびボリュート吸込口44に定常運転用の流体が矢印Qの如く吸い込まれる。
【0068】
ボリュート吸込口44に吸い込まれた流体がボリュート吸込口44を経てボリュート28の案内流路部46に矢印Rの如く吸い込まれる。
ボリュート28内の案内流路部46に流体を吸い込むことで遠心ポンプ20を定常運転に切り替える。
【0069】
ついで、遠心ポンプ20を定常運転する例を図12、図13に基づいて説明する。
図12(a)に示すように、定常運転において、ボリュート28の案内流路部46に吸い込まれた流体が羽根車24の回転方向に矢印Sの如く送り出される。
【0070】
図12(b)に示すように、羽根車24の回転方向に送り出される流体が案内流路部46に沿って排出流路部47に向けて矢印Sの如く導かれる。
ここで、排出流路部47において一対の螺旋部材48,49の半径方向内側に送出空間71を有する。
【0071】
よって、排出流路部47に導かれた流体が送出空間71に矢印Tの如く導かれる。
送出空間71に導かれた流体が、送出空間71を経てボリュート吐出口56からボリュート28の外部に矢印Uの如く排出される。
これにより、排出流路部47に導かれた流体の流れを一対の螺旋部材48,49で妨げることなく、ボリュート吐出口56からボリュート28の外部に排出することができる。
【0072】
図13に示すように、ボリュート吐出口56から排出された流体がケース吐出口22cに向けて矢印Vの如く案内される。
ケース吐出口22cに向けて吐出された流体が、吐出ノズル33を経て矢印Wの如く遠心ポンプ20の外部に吐出される。
【0073】
なお、本発明に係る遠心ポンプは、前述した実施例に限定されるものではなく適宜変更、改良などが可能である。
例えば、前記実施例では、一対の連通溝51,52を一対の螺旋部材48,49に沿わせて連続的に形成して螺旋状の溝とした例について説明したが、一対の連通溝51,52はこれに限定するものではない。
例えば、一対の連通溝51,52を一対の螺旋部材48,49に沿わせて不連続的に形成することも可能である。
【0074】
一対の連通溝51,52を不連続的に形成することで、排出流路部47、すなわち半割部位61や半割部位62を不連続部で一体に形成することが可能になり、排出流路部47の取扱いを容易にできる。
さらに、半割部位61や半割部位62を不連続部で一体に形成することで部品点数の増加を抑えることも可能になる。
【0075】
また、前記実施例では、排出流路部47と一対の螺旋部材48,49とを別部材で形成して各々の部材47,48,49を組み付ける例について説明したが、排出流路部47および一対の螺旋部材48,49を鋳造などで一体に成形することも可能である。
【0076】
さらに、前記実施例では、排出流路部47には一対の螺旋部材48,49を設けた例について説明したが、排出流路部47に設ける螺旋部材の個数は任意に選択することが可能である。
【0077】
また、前記実施例では、排出流路部47を二分割した例について説明したが、これに限らないで、排出流路部47を一体に形成することも可能である。
【0078】
さらに、前記実施例で示した遠心ポンプユニット10、遠心ポンプ20、羽根車24、ボリュート28、排出流路部47、一対の螺旋部材48,49、一対の連通溝51,52および送出空間71などの形状や構成は例示したものに限定するものではなく適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、ボリュート内の羽根車を回転してボリュート内に吸い込んだ流体をボリュートに沿わせて送り出し、送り出した流体を吐出する遠心ポンプへの適用に好適である。
【符号の説明】
【0080】
10…遠心ポンプユニット、20…遠心ポンプ、24…羽根車、28…ボリュート、47…排出流路部、47a…排出流路部の内壁、48,49…一対の螺旋部材(螺旋部材)、51,52…一対の連通溝(連通溝)、58…軸線、71…送出空間。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
羽根車の周りにボリュートを備え、前記羽根車を回転することにより前記ボリュート内に吸い込んだ流体をボリュートに沿わせて送り出し、送り出した流体を前記ボリュートの排出流路部から吐出する遠心ポンプであって、
前記排出流路部の内壁に沿って前記流体の送出方向に向けて螺旋状に形成された螺旋部材と、
前記螺旋部材の上流側で、かつ前記螺旋部材に隣接して設けられ、前記排出流路部の内部および外部を連通可能な連通溝と、を備え、
前記排出流路部において前記螺旋部材の半径方向内側に、自吸運転時の気体を送出可能で、かつ定常運転時の流体を送出可能な送出空間を有することを特徴とする遠心ポンプ。
【請求項2】
前記排出流路部は、円筒状に形成され、軸線に沿って二分割されたことを特徴とする請求項1記載の遠心ポンプ。
【請求項3】
前記連通溝は、前記螺旋部材に沿って螺旋状に形成されたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の遠心ポンプ。
【請求項1】
羽根車の周りにボリュートを備え、前記羽根車を回転することにより前記ボリュート内に吸い込んだ流体をボリュートに沿わせて送り出し、送り出した流体を前記ボリュートの排出流路部から吐出する遠心ポンプであって、
前記排出流路部の内壁に沿って前記流体の送出方向に向けて螺旋状に形成された螺旋部材と、
前記螺旋部材の上流側で、かつ前記螺旋部材に隣接して設けられ、前記排出流路部の内部および外部を連通可能な連通溝と、を備え、
前記排出流路部において前記螺旋部材の半径方向内側に、自吸運転時の気体を送出可能で、かつ定常運転時の流体を送出可能な送出空間を有することを特徴とする遠心ポンプ。
【請求項2】
前記排出流路部は、円筒状に形成され、軸線に沿って二分割されたことを特徴とする請求項1記載の遠心ポンプ。
【請求項3】
前記連通溝は、前記螺旋部材に沿って螺旋状に形成されたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の遠心ポンプ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−57277(P2013−57277A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195479(P2011−195479)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]