説明

遠心分離ユニット

【課題】小型化が可能であり、試料に電気的に直接接続することができる遠心分離ユニットを提供する。
【解決手段】電気接続部材200は、ホイール40に位置決めされた試料100に対して電気的に接続し、コイルバネ204は、ホイール40の検査位置Mに位置決めされた試料100側に電気接続部材200を付勢する。電気接続部材200は、ホイール40の検査位置Mにある試料100に対して電気的に接続するためのプローブ部材230と、プローブ部材230を保持している板状部材240を備え、板状部材240は、ホイール40側に対して保持された保持部250と、試料100が検査位置M側に向けて移動される際に、コイルバネ204の力に抗して押し下げられる移動操作部251と、保持部250と移動操作部251の中間にプローブ部材230を固定する中間部252を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料に遠心力を与えて試料の内容物を分離する遠心分離ユニットに関し、特に小型の遠心分離ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
小規模な診療所などや個人等でも使用可能な遠心分離機が提案されている。この遠心分離機は、本体と蓋体を有しており、本体内には試験管状の試料採取容器を斜めに保持する回転軸部と、この回転軸部とともに試料採取容器を回転するモータが配置されている。本体から蓋体を開けて回転軸部に対して試料採取容器をはめ込んで、蓋体を閉じてモータを駆動することで試料採取容器の試料に遠心力を与えるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−333219号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、特許文献1に記載されている遠心分離機では、試験管状の試料採取容器を斜めに保持して、モータにより回転させる構造であるので、大型化が避けられない。そして、モータの作動を止めて、蓋体を開けて本体内から試料採取容器を取り出した後に、後工程において試料採取容器内において分離された成分を測定する。
【0004】
試料採取容器には電気的に接続して試料に関するデータを直接得ることができず、例えば試料採取容器内の試料の分離された成分量に関する測定データを電気的に得ることができない。
【0005】
このため、遠心分離した後に、試料採取容器は遠心分離機から外して、試料採取容器の試料は別の測定装置に移して、例えば試料採取容器内の試料の分離された成分量に関する測定データを得る必要がある。
そこで、本発明は上記課題を解消するために、小型化が可能であり、試料に対して電気的に直接接続することができる遠心分離ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解消するために、本発明の遠心分離ユニットは、試料に遠心力を与えて前記試料の内容物を分離するための遠心分離ユニットであって、
ケースと、
前記ケース内に配置されて前記試料を搭載した状態で連続回転して前記試料に遠心力を与えるためのホイールであって、前記試料を移動することで固定位置に位置決め可能な前記ホイールと、
前記ホイールに位置決めされた前記試料に対して電気的に接続するための電気接続部材と、
前記ホイールの前記固定部に位置決めされた前記試料側に、前記電気接続部材を付勢するための付勢部材と、を有し、
前記電気接続部材は、
前記ホイールの前記固定位置にある前記試料に対して、電気的に接続するためのプローブ部材と、
前記プローブ部材を保持している板状部材と、を備え、
前記板状部材は、
前記ホイール側に対して保持された保持部と、
前記試料が前記ホイールの前記固定位置側に向けて移動される際に、前記付勢部材の力に抗して押し下げられる移動操作部と、
前記保持部と前記移動操作部の中間に位置に前記プローブ部材を固定するための中間部と、を有することを特徴とする。
【0007】
本発明の遠心分離ユニットは、好ましくは前記付勢部材は、コイルバネであり、前記付勢部材の一端部は前記板状部材の前記保持部側の部分に配置され、前記付勢部材の他端部は前記ホイールに配置されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の遠心分離ユニットは、好ましくは前記プローブ部材は、前記板状部材の前記中間部に固定された電気絶縁性の本体と、前記本体に固定されて前記試料に電気的に接続される接点部と、を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の遠心分離ユニットは、好ましくは前記ホイールは、前記試料を半径方向に沿って直線移動させるためのガイド溝と、前記試料を前記固定位置に固定するための固定部と、を有しており、
前記試料が前記ガイド溝に沿って直線移動される際に、前記試料は、前記移動操作部を、前記ガイド溝から前記付勢部材の付勢力に抗して押し下げて前記ホイールの前記固定部に当てることで、前記試料を、前記付勢部材の付勢力により押し上げられた前記移動操作部と前記固定部との間に位置決めして固定されることを特徴とする。
【0010】
本発明の遠心分離ユニットは、好ましくは前記試料が、前記移動操作部と前記固定部の間に位置決めされた状態で、前記接点部が、前記試料に対して電気的に接続されることを特徴とする
【発明の効果】
【0011】
本発明の遠心分離ユニットによれば、小型化が可能であり、試料に対して電気的に直接接続することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の遠心分離ユニットの好ましい実施形態を示す斜視図である。図2は、図1の遠心分離ユニットの内部構造を示す斜視図である。図3は、図1の遠心分離ユニットの内部構造を示す断面を有する斜視図である。
【0013】
図1〜図3に示す遠心分離ユニット1は、小型の装置であり、寸法としては例えば長さが220mm、幅が220mm、そして高さが100mmである。遠心分離ユニット1は、遠心分離処理を行おうとする図2に示す試料100を検査用のホイール40に装着して高速で回転することにより、試料100内のサンプル(内容物)に対して大きな遠心力を与えて比重差を増幅させて、試料100内のサンプル液体の分散質を異なる複数の相に分離する。
【0014】
この試料100に収容された内容物は、遠心分離しようとする例えばサンプル液体である。試料100は、例えば薄い板状のカプセルであり、試料100の内部には、センサーが配置されている。センサー100Sは、遠心分離ユニット1側から電気接続用の接点部を通じて、電源供給を受ける。電源供給を受けたこのセンサー100Sは、遠心力により分離された測定目的物である成分量を検知して、その成分量の測定データを、電気接続用の接点部を通じて、遠心分離ユニット1側に電気的に出力するようになっている。
【0015】
図2に示すように、試料100の大きさは、ケース10の大きさに比べてかなり小さく、予め試料100内には、内容物の液体として例えば血液が収容されている。このセンサーには例えば血液内のグルコース(ぶどう糖)の量を検出するための酵素が配置されており、センサー100Sの酵素はグルコースの反応によりグルコースの量に応じた血糖値の測定データを電気回路基板50側に電気的に出力する。これにより、遠心分離ユニット1は、例えば小型で高精度な携帯型の血糖値測定装置として使用できる。
【0016】
図1に示すように、遠心分離ユニット1は、ケース10と、カバー20と、表示部21を有している。ケース10は、例えば金属あるいはプラスチックにより作られた容器であり、上側ケース11と下側ケース12を有している。
【0017】
図2では、カバー20が除去されており、ケース10の内には、遠心分離ユニット1の各要素が収容されており、図1〜図3に示す例では、ケース10はほぼ円筒形を有している。図2に示すように、ケース10は、ホイール40と、取付部材45と、電気回路基板50と、回転駆動用のモータ41を収容している。電気回路基板50は取付部材45に固定されている。
【0018】
図1と図2に示すホイール40と表示部21と操作ボタン22,23は、上側ケース11に配置されている。図2に示すように、電気回路部41と、回転駆動用のモータ41は、下側ケース12内に配置されている。
【0019】
図1と図2に示すように、ホイール40は、上側ケース11の円形の開口部43内に配置されており、カバー20はこの開口部43を開閉可能に覆うことができる。カバー20はこの開口部43を覆うことで、遠心分離ユニット1を使用する際にあるいは保管しておく際に、開口部43からケース10内に埃などの異物が侵入するのを防ぐことができる。カバー20は、ホイール40などが外部から見えるようにするために、好ましくは透明あるいは半透明のプラスチックにより円形状に作られている。
【0020】
図2に示す操作ボタン22を押すことで、モータ41を駆動して試料100の遠心分離動作を開始できる。操作ボタン23を押すことで、遠心分離ユニット1の動作を終了する。
【0021】
図1と図2に示す表示部21としては、例えば液晶表示パネル(LCD)を用いることができる。表示部21は、例えば試料100において分離された成分(例えばグルコース)量の測定データなどを表示する。
【0022】
図3に示すように、モータ41は下側ケース12の内底面12Aに対して固定されている。モータ41は、電気回路部50のCPU(中央処理装置)400の指令に基づいて、モータドライバ410からの駆動電流により、連続動作をする。取付部材45がケース10内に配置されており、取付部材45には軸受部46が固定されている。ケース10内には一次電池あるいは二次電池(図示せず)を配置するか、あるいは外部電源に接続する接続コードを有している。これにより、電気回路部50は、電池あるいは外部電源から電源供給を受ける。
【0023】
図3に示すホイール40の下部には筒状部分48が、ホイール40の回転中心軸CLに沿って、モータ41側に向けて突出して形成されている。この筒状部分48の先端部分内には、モータ41の出力軸44が挿入して固定されている。筒状部分48は、取付部材45に対して軸受部46により回転可能に支持されている。
【0024】
その他に、図1に示す下側ケースには、USB(ユニバーサル・シリアル・バス)端子と外部電源端子49が設けられている。操作ボタン22を押すと、遠心分離ユニット1の主電源がオンして、予め設定されているセット動作が開始されて、ホイール40が、高速でR方向に沿って連続回転して、試料100内の内容物を遠心分離するようになっている。
【0025】
図4は、遠心分離ユニットのホイールの構造例を示す斜視図であり、図5は、図4のホイールの構造例を示す分解斜視図である。
図4と図5において、検査用のホイール40は、円盤状の部材であり、ガイド溝部101と、凹部102と、楕円状の開口部103を有している。ガイド溝部101は、ホイール40の半径方向であるT方向に沿って、回転中心軸CLを含むホイール40の中心領域から外周部40G側に向けて形成されている。ガイド溝部101は、試料100を手動で直線移動させるために形成されている案内溝である。凹部102と開口部103は、ガイド溝部101内に形成されており、凹部102は回転中心軸CL付近に形成され、開口部103は凹部102と外周部40Gの間に形成されている。凹部102の長手方向は、T方向に沿っており、開口部103の長手方向もT方向に沿っている。
【0026】
図5に示すように、ホイール40のガイド溝部101には、板状の押さえ部材110がはめ込まれており、押さえ部材110は複数本のねじ111によりホイール40に対して固定されている。
【0027】
押さえ部材110は、開口部112と開口部113を有している。開口部112と開口部113は、T方向に沿って連続して形成されており、開口部112の幅W1は開口部113の幅W2に比べて大きい。開口部112の長さL1は試料100の長さL2に比べてやや大きく、開口部112の幅W1は試料100の幅W3に比べてやや大きい。これにより、試料100は開口部112からホイール40のガイド溝部101の挿入位置Dに挿入して配置できる。
【0028】
試料100がガイド溝部101においてT方向に沿って直線移動されることで、試料100は開口部112に対応する挿入位置Dから開口部113に対応する検査位置Mに達する。しかし、開口部113の幅W2は試料100の幅W3よりも小さく設定されていることから、試料100が開口部113からは出ないようになっている。
これにより、試料100が検査位置Mに固定された状態で、ホイール40が高速で連続回転しても、試料100は検査位置Mにおいて押さえ部材110により確実に固定できる。
【0029】
図5に示すように、ホイール40の内面40M側には、電気接続部材200と、付勢部材としてのコイルバネ204が、装着部材201を用いて保持されている。この装着部材201は、複数本のねじ202を用いてホイール40の内面40M側において固定されている。装着部材201は、T方向に沿って配置されており、装着部材201は、長い溝部分205と、孔部206と、コイルバネ装着用の孔部207を有している。
【0030】
図5に示す電気接続部材200は、ホイール40の検査位置Mに固定された試料100の接点部に対して電気的に接続するために用いられる。コイルバネ204は、電気接続部材200を、検査位置Mに固定された試料100側に付勢する役目を有する。
この電気接続部材200は、プローブ部材230と、板状部材240とを有している。プローブ部材230は、複数の接点部233を有している。各接点部233は、検査位置Mに固定された試料100の各接点部290に対して電気的に接続されるようになっている。
【0031】
図5に示す板状部材240は、金属やプラスチックなどの弾性部材により形成されており、保持部250と移動操作部251と中間部252を有している。保持部250は、ホイール40側の装着部材201に対してピン270を用いて保持されている。
移動操作部251は、突起部280を有している。試料100がガイド溝部101に沿ってT方向に移動されると、この突起部280は、試料100の通過により押されることで、コイルバネ204の付勢力に抗して押し下げられるようになっている。
【0032】
図5に示す中間部252は、保持部250と移動操作部251の中間に位置において、プローブ部材230を固定する。このように、プローブ部材230を固定するために、中間部252には、プローブ部材230を挿入して固定するための楕円状の孔部256を有している。装着部材201の孔部206は、プローブ部材230の下部が挿入できる大きさを有している。
【0033】
図5に示すコイルバネ204の一端部は、板状部材240の保持部250の付近の下面側に当接して配置され、コイルバネ204の他端部は、コイルバネ装着用の孔部207内に当接して配置されている。
【0034】
図6と図7及び図8を参照しながら、図5に示す電気接続部材200と、コイルバネ204と、装着部材201と、ホイール40を、さらに詳しく説明する。
【0035】
図6は、試料100がホイール40の挿入位置Dに装着される状態を示す側面図である。図7は、試料100がホイール40の半径方向(T方向)に沿って移動されている状態を示す側面図である。図8は、試料100がホイールの検査位置Mにおいて位置決めして固定された状態を示す側面図である。
【0036】
図6に示すように、電気接続部材200の保持部250は、ほぼL字形を有しており、保持部250は、装着部材201に対してピン270を用いて回転可能に保持されている。
電気接続部材200の中間部252は、平板状の部分であり、ガイド溝部101にほぼ沿って配置されている。プローブ部材230の下部は装着部材201の孔部206内にあり、プローブ部材230の複数の接点部233は、Z2方向(上方向)に向けて孔部256内に位置されている。
【0037】
図6に示すように、電気接続部材200の移動操作部251は、ほぼL字形を有しており、移動操作部251の途中には突起部280が設けられている。この突起部280はガイド溝部101内においてZ2方向に向けて突出している。Z1方向(下方向)とZ2方向(上方向)は、T方向に直交する方向であり、Z1方向とZ2方向は互いに逆方向である。
【0038】
図6に示すように、使用者が試料100を指で持って、この試料100をホイール40のガイド溝部101の挿入位置Dに挿入すると、試料100の先端部100Sが突起部280をZ1方向に沿って押し下げることができる。
【0039】
次に、図6〜図8を参照して、試料100をホイール40に挿入してガイド溝部101においてT方向に沿って直線移動して、ホイール40において位置決めして固定する作業例を説明する。
【0040】
図6に示すように、試料100を挿入位置Dに挿入する状態では、ホイール40のガイド溝部101内には、複数の接点部233と突起部280が、ガイド溝部101内にZ2方向に向けて突出している。使用者が指で試料100を持って、この試料100をガイド溝部101の挿入位置Dに対してZ1方向に挿入すると、試料100の先端部100Fが突起部280をZ1方向に押し下げることができるので、板状部材240は図7に示すようにコイルバネ204の力に抗してZ1方向にわずかに弾性変形する。図6の試料100の挿入位置Dに挿入された状態は、図9の斜視図で示しており、試料100がガイド溝部101の挿入位置Dに配置されている。
【0041】
その後、図7と図8に示すようにして、使用者が、指で試料100をT方向に沿って押して、試料100を挿入位置Dから検査位置Mまで直線移動させる、すなわち、押さえ部材110の開口部112、113を通じて指で試料100の上面100Hを押してT方向に沿って直線移動させると、図8と図10の斜視図で示すように、試料100は検査位置Mにおいて、突起部280と固定部80により位置決めして固定される。
【0042】
図8に示すように、試料100が検査位置Mに位置決めされると、試料100の後端部100Rは突起部280を押し下げた状態を開放することができる。このため、板状部材240はZ2方向に弾性復帰するので、プローブ部材230の複数の接点部233は、試料100の対応する電気的な接点部290に対して、電気的に機械的に接続することが出来る。試料100の先端部100Fは固定部80により固定されるとともに、試料100の後端部100Rは突起部280により固定される。
【0043】
これにより、図8に示すように、試料100の電気的な接点部290と電気回路部50のCPU(中央処理装置)400と電源部480を電気的に直接接続することができる。試料100のセンサー100Sに対して電気回路部50の例えば二次電池である電源部480から電源供給をすることができ、しかも例えば試料100内の遠心分離された成分量を電気的に検知するセンサー100Sが、CPU400に対して電気的に接続できるので、センサーが検知する例えば血液中に含まれるグルコースの量を、測定データとして電気的にCPU400に対して送ることができる。電源部480は、一次電池あるいは外部電源であってもよい。
【0044】
図8と図10において、試料100は検査位置Mにおいて、突起部280と固定部80により位置決めして固定されている。すなわち、図8と図10に示すように、試料100の先端部100Fは、スプリング状の固定部80により保持され、試料100の後端部100Rは突起部280により保持され、しかも試料100の上面100Hは、押さえ部材110により検査位置MからZ2方向に浮き上がらないように保持されている。
【0045】
このため、図2に示すホイール40がモータ41の作動により高速で連続回転しても、試料100は検査位置MにおいてT方向に移動することがなく、しかもZ2方向に浮き上がることもない。これにより、試料100は検査位置Mにおいて確実に保持することができ、プローブ部材230の複数の接点部233と試料100の対応する電気的な接点部290との電気的に機械的に接続された状態を確実に維持することができる。
【0046】
従って、ホイール40が停止している場合はもちろんのこと、ホイール40が高速で連続回転している場合であっても、プローブ部材230の複数の接点部233と試料100の対応する電気的な接点部290との電気的に機械的に接続された状態を、確実に維持できる。これにより、例えば試料100のセンサーに対して電気回路部50から電源供給を確実にすることができ、試料100内の遠心分離された成分量を電気的に検知するセンサーがCPU400に対して確実に電気的に送ることができる。
【0047】
ところで、ホイール40が停止して試料100の遠心分離が終了した後に、試料100を取り外す場合には、図5に示す押さえ部材110の開口部113、112を通じて指で試料100の上面100Hを押してT1方向に沿って直線移動することで、図8に示す検査位置Mに位置決めされている試料100は、図8の検査位置Mの状態から図7に示す移動途中の状態及び図6に示す挿入位置Dの状態にスムーズに戻すことができる。
そして、試料100は挿入位置Dから指でつかんで容易に取り外すことができる。これにより、試料100をホイール40の装着する動作およびホイール40から取り外す動作を簡単かつ確実に行うことができ、試料100の遠心分離作業の効率化が図れる。
【0048】
本発明の実施形態の遠心分離ユニット1は、ケース10と、ホイール40と、電気接続部材200を有している。ホイール40は、ケース10内に配置されて試料100を搭載した状態で連続回転して試料100に遠心力を与え、試料100を移動することで固定位置である検査位置Mに位置決め可能である。
【0049】
電気接続部材200は、ホイール40に位置決めされた試料100に対して電気的に接続する。付勢部材としてのコイルバネ204は、ホイール40の固定位置としての検査位置Mに位置決めされた試料100側に、電気接続部材200を付勢する。
【0050】
この電気接続部材200は、ホイール40の固定位置である検査位置Mにある試料100に対して、電気的に接続するためのプローブ部材230と、プローブ部材230を保持している板状部材240と、を備える。
【0051】
板状部材240は、ホイール40側に対して保持された保持部250と、試料100がホイール40の固定位置である検査位置M側に向けて移動される際に、付勢部材であるコイルバネ204の力に抗して押し下げられる移動操作部251と、保持部250と移動操作部251の中間に位置にプローブ部材230を固定するための中間部252と、を有する。
【0052】
これにより、遠心分離ユニットの小型化が可能であり携帯して持ち歩くことができ、遠心分離ユニット1は試料100に対して電気的に直接接続することができる。このため、ホイール40が停止している場合はもちろんのこと、ホイール40が高速で連続回転している場合であっても、プローブ部材230の接点部233と試料100の対応する電気的な接点部290との電気的に機械的に接続された状態を確実に維持できる
【0053】
コイルバネ204の一端部は、板状部材240の保持部250側の部分に配置され、コイルバネ204の他端部はホイール40側に配置されている。
これにより、コイルバネ204は、電気接続部材200を検査位置Mの試料100に対して確実に押し付けることができ、ホイール40が停止している場合はもちろんのこと、ホイール40が高速で連続回転している場合であっても、プローブ部材230の接点部233と試料100の対応する電気的な接点部290との電気的に機械的に接続された状態を確実に維持できる
【0054】
プローブ部材230は、板状部材240の中間部252に固定された電気絶縁性の本体230と、本体230に固定されて試料100に電気的に接続される接点部233と、を有する。
【0055】
これにより、接点部233は、本体230により保持された状態で、プローブ部材230の接点部233と試料100の対応する電気的な接点部290との電気的に機械的に接続された状態を確実に維持できる。
【0056】
ホイール40は試料100を半径方向に沿って直線移動させるためのガイド溝部101と、試料100を固定位置である検査位置Mに固定するための固定部80と、を有している。試料100がガイド溝部101に沿って直線移動される際に、試料100は、移動操作部251を、ガイド溝部101からコイルバネ204の付勢力に抗して押し下げてホイール40の固定部80に当てることで、試料40を、コイルバネ40の付勢力により押し上げられた移動操作部251と固定部80との間に位置決めして固定される。
【0057】
これにより、ホイール40が停止している場合はもちろんのこと、ホイール40が高速で連続回転している場合であっても、プローブ部材230の接点部233と試料100の対応する電気的な接点部290との電気的に機械的に接続された状態を確実に維持できる。
【0058】
試料100が移動操作部251と固定部40の間に位置決めされた状態で、接点部233が、試料100に対して電気的に接続される。
これにより、プローブ部材230の接点部233と試料100の対応する電気的な接点部290との電気的に機械的に確実に接続して試料100の測定データを得たり、あるいは試料100のセンサー100Sに対して電源の供給を行うことができる。
【0059】
ところで、本発明は、上記実施形態に限定されず種々の変形例を採用できる。
試料100内の内容物(試料)としては、例えば血液に限らず、細胞や汗や唾液など生体から出る液体、あるいはその他の種類のものであっても良く、特に限定されない。
ケース10の形状は、ほぼ円筒状であるが、これに限らず他の形状であっても良い。
【0060】
試料100は、図示例では長方形の小さなパッケージであるがこれに限らず他の形状を採用できる。表示部21は、液晶表示パネルに代えて、例えば有機ELディスプレイパネルやプラズマディスプレイパネルなどを使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の遠心分離ユニットの好ましい実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1の遠心分離ユニットの内部構造を示す斜視図である。
【図3】図1の遠心分離ユニットの内部構造を示す断面を有する斜視図である。
【図4】遠心分離ユニットのホイールの構造例を示す斜視図である。
【図5】図4のホイールの構造例を示す分解斜視図である。
【図6】試料がホイールの挿入位置に装着される状態を示す側面図である。
【図7】試料がホイールの半径方向に沿って移動されている状態を示す側面図である。
【図8】試料がホイールにおいて位置決めして検査位置に固定された状態を示す側面図である。
【図9】図4のホイールにおいて試料がホイールの挿入位置に挿入された状態を示す斜視図である。
【図10】図9に示す試料がホイールの半径方向に沿って外側に移動して検査位置Mに位置決めして固定された状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0062】
1 遠心分離ユニット
10 ケース
11 上側ケース
12 下側ケース
20 カバー
21 表示部
40 ホイール
41 駆動部
43 開口部
46 軸受部
50 電気回路部
80 固定部
100 試料(検体)
101 ホイールのガイド溝
103 開口部
110 押さえ部材
112,113 開口部
200 電気接続部材
201 装着部材
204 コイルバネ(付勢部材)
230 プローブ部材
233 接点部
240 板状部材
251 移動操作部
270 ピン
280 突起部
290 試料の電気接点
D 挿入位置
M 検査位置(固定位置に相当)
CL 回転中心軸
P 試料の固定位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料に遠心力を与えて前記試料の内容物を分離するための遠心分離ユニットであって、
ケースと、
前記ケース内に配置されて前記試料を搭載した状態で連続回転して前記試料に遠心力を与えるためのホイールであって、前記試料を移動することで固定位置に位置決め可能な前記ホイールと、
前記ホイールに位置決めされた前記試料に対して電気的に接続するための電気接続部材と、
前記ホイールの前記固定部に位置決めされた前記試料側に、前記電気接続部材を付勢するための付勢部材と、を有し、
前記電気接続部材は、
前記ホイールの前記固定位置にある前記試料に対して、電気的に接続するためのプローブ部材と、
前記プローブ部材を保持している板状部材と、を備え、
前記板状部材は、
前記ホイール側に対して保持された保持部と、
前記試料が前記ホイールの前記固定位置側に向けて移動される際に、前記付勢部材の力に抗して押し下げられる移動操作部と、
前記保持部と前記移動操作部の中間に位置に前記プローブ部材を固定するための中間部と、を有することを特徴とする遠心分離ユニット。
【請求項2】
前記付勢部材は、コイルバネであり、前記付勢部材の一端部は前記板状部材の前記保持部側の部分に配置され、前記付勢部材の他端部は前記ホイールに配置されていることを特徴とする請求項1に記載の遠心分離ユニット。
【請求項3】
前記プローブ部材は、前記板状部材の前記中間部に固定された電気絶縁性の本体と、前記本体に固定されて前記試料に電気的に接続される接点部と、を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の遠心分離ユニット。
【請求項4】
前記ホイールは、前記試料を半径方向に沿って直線移動させるためのガイド溝と、前記試料を前記固定位置に固定するための固定部と、を有しており、
前記試料が前記ガイド溝に沿って直線移動される際に、前記試料は、前記移動操作部を、前記ガイド溝から前記付勢部材の付勢力に抗して押し下げて前記ホイールの前記固定部に当てることで、前記試料を、前記付勢部材の付勢力により押し上げられた前記移動操作部と前記固定部との間に位置決めして固定されることを特徴とする請求項3に記載の遠心分離ユニット。
【請求項5】
前記試料が、前記移動操作部と前記固定部の間に位置決めされた状態で、前記接点部が、前記試料に対して電気的に接続されることを特徴とする請求項4に記載の遠心分離ユニット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2009−216640(P2009−216640A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−62660(P2008−62660)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(394000493)ヒーハイスト精工株式会社 (76)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】