説明

遠心分離方法

【課題】スキミングパイプ挿入時の分離液層部の流れの乱れを充分に抑制して、固体と液体および/または2種類の液体の分離を効率的に行い得る遠心分離方法を提供すること。
【解決手段】バスケット型遠心分離機においてバスケットの回転により形成された分離液層中にスキミングパイプを挿入して該液層を外部に排出する遠心分離方法であって、該スキミングパイプの先端部の挿入角度が0〜60°、該スキミングパイプの先端部の端面の角度が60〜120°、かつ該スキミングパイプの先端開口部の形状が扁平型であることを特徴とする、遠心分離方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バスケット型遠心分離機を用いる遠心分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
処理液を固体と液体および/または2種類の液体(相互に非溶解性のもの;以下、同様)に分離する装置として、バスケット型遠心分離機が知られている。バスケット型遠心分離機は、通常、少なくとも軸線方向の一端側に開口部を有する籠型のバスケットと、該バスケットを回転駆動する回転駆動装置と、バスケットの開口部を通して該バスケット内に処理液を供給する供給装置とを備えており、バスケット内に供給された処理液は、バスケットの回転によって生じる遠心力により、液分と固形分、および/または2種類の液体に分離される。バスケットタイプの遠心分離機の操作では、バスケットが回転して形成された分離液層中にスキミングパイプを挿入し該液層を外部に排出することが行なわれる。このときに挿入したスキミングパイプが液層部に渦流を発生させて液層の流れを乱すため、該液の飛散、分離効率の低下、遠心分離機の回転動力の増加、遠心分離機の振動の増加、あるいは液層部の泡立ちを起こすことがある。
【0003】
そこで、スキミングパイプ挿入時に分離液層部の流れをスムーズにするため、スキミングパイプの断面を流線型や扁平形状にすることが行われている(たとえば、特許文献1、特許文献2)。
【0004】
またスキミングパイプを分離液層部の流れに対し下流側へ傾斜させて渦流の発生を少なくし、排出液へのエアーの吸込を減らし、液層の排出量を安定させることが行われている(特許文献3)。
【特許文献1】特開昭52−136473号公報
【特許文献2】特開昭53−76470号公報
【特許文献3】特開平5−192610号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記技術でスキミングパイプによる液層部の渦流の発生は、ある程度抑制することはできる。しかし、たとえば、遠心効果(Z)が300以上、液層部の回転速度が20m/秒以上、または液層部が水や溶剤のように粘度が低く渦流を起こし易い系では抑制が充分でない場合があった。
【0006】
本発明は、以上のような条件下においてもスキミングパイプ挿入時の分離液層部の流れの乱れを充分に抑制して、固体と液体および/または2種類の液体の分離を効率的に行い得る遠心分離方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明の要旨は、
〔1〕 バスケット型遠心分離機においてバスケットの回転により形成された分離液層中にスキミングパイプを挿入して該液層を外部に排出する遠心分離方法であって、該スキミングパイプの先端部の挿入角度が0〜60°、該スキミングパイプの先端部の端面の角度が60〜120°、かつ該スキミングパイプの先端開口部の形状が扁平型であることを特徴とする、遠心分離方法、並びに
〔2〕 有機顔料、無機顔料および疎水性染料からなる群より選ばれた少なくとも1種の着色剤、ポリマー分散剤、および水を含有してなる原液を前記〔1〕に記載の遠心分離方法に供して固体と液体とに分離する工程を有する着色剤水分散体の製造方法、
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、スキミングパイプ挿入時の分離液層部での渦流発生を充分に抑制して、該液層の飛散、分離効率の低下、遠心分離機の回転動力の増加、遠心分離機の振動の増加、あるいは液層部の泡立ちの発生を防止し、固体と液体および/または2種類の液体の分離を非常に効率的に行うことができる。また、排出される分離液層中への気泡の混入量を充分に低く抑えることができるので、泡による嵩アップが少ないため、排出液の回収容器を必要以上に大きくする必要がないという利点が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の遠心分離方法における基本的操作はバスケット型遠心分離機を用いる公知の遠心分離方法と同様であるが、本発明においては、その先端部の挿入角度が0〜60°、その先端部の端面(先端開口部の開口面)の角度が60〜120°、かつその先端開口部の形状が扁平型である、所定のスキミングパイプを用いる。本発明は、かかるスキミングパイプを用いることを1つの大きな特徴としており、かかる構成を有することから前記の通りの所望の効果が奏される。
【0010】
本明細書において分離液層(単に液層という場合がある)とは、バスケットの回転により形成された系外に排出される液体の層をいう。
【0011】
本発明に用いられるバスケット型遠心分離機としては、特に限定はないが、たとえば、特開2003−93811号公報などに記載の遠心分離機が好ましく用いられる。
【0012】
なお、本発明の遠心分離方法は、当該方法と同様の原理により固液分離等が行われる遠心沈降方法・装置(機)にも適用できる。
【0013】
バスケット型遠心分離機のバスケットのタイプにも特に限定はないが、主に微小な固形分が液体中に分散してなる処理液から粗大粒子を分離する場合に用いられる液層部を保持できる容量が大きく、周壁部に透過孔を有しない無孔タイプのバスケットが好ましく用いられる。そのようなバスケットを備えた無孔バスケット型遠心分離機としては、たとえば、(株)関西遠心分離機製作所製 KBS型の遠心分離機、タナベウィルテック(株)製 S型の遠心分離機等が挙げられる。
【0014】
また、遠心分離機の運転方法としては、特に限定はないが、処理対象の原液を供給しながら分離液層を排出する連続式、および原液を供給した後、分離液層が形成されたところで該液層を排出するバッチ式のいずれの運転方法であってもよい。
【0015】
本発明のスキミングパイプは、その先端部が前記の通りの所定の挿入角度を有するものである。スキミングパイプの先端部の挿入角度につき図1を参照して説明する。図1に、バスケット型遠心分離機における回転中のバスケットをその開口部の側より眺めた場合のスキミングパイプ先端部付近の概略図を示す。
【0016】
図1において、本発明のスキミングパイプの挿入角度をAとして示す。挿入角度Aは、バスケットをその開口部の側より眺めた場合に看取される、遠心分離機の回転中心点Oとスキミングパイプ先端部の端面の中心点Sとを結ぶ直線Lと、スキミングパイプ先端部の中心線Cとのなす角度であって、中心線Cの直線Lを基準として回転上流側の角度をいう。ここで、回転上流側とはある位置における回転の向きと逆向きの側をいう。
【0017】
なお、本明細書においては、挿入角度Aに関し、図1に示す状態において、直線Lを基準として回転上流側の角度を正の値で、一方、回転下流側の角度を負の値で、それぞれ示す。
【0018】
スキミングパイプの先端部の挿入角度Aは0〜60°であるが、スキミングパイプ挿入時の分離液層部の流れの乱れ抑制をより向上させる観点から、0〜45°が好ましく、10〜40°がより好ましい。
【0019】
また、本発明のスキミングパイプは、その先端部の端面が前記の通りの所定の角度を有するものである。スキミングパイプの先端部の端面の角度につき図1を参照して説明する。
【0020】
図1では、スキミングパイプ先端部の端面の角度をBで表わす。当該角度Bは、直線Lとスキミングパイプ先端部の端面との、図1に示す状態においてなす角度をいう。
【0021】
スキミングパイプの先端部の端面の角度Bは、ポンプ等の排出手段を用いずに分離液を排出したい場合には0°を超え120°未満が好ましい。また、液の乱れを少なくする観点から、60°以上180°未満が好ましく、この場合に分離液の自然排出が困難であればポンプ等の排出手段を用いてもよい。以上を両立させる観点から角度Bは60〜120°であり、好ましくは70〜110°である。
【0022】
さらに、本発明のスキミングパイプの先端開口部の形状は扁平型である。本明細書において扁平型とは、具体的には、先端開口部の長軸長さと短軸長さの比率(長軸長/短軸長)が1.5〜10、好ましくは1.5〜8、より好ましくは1.5〜6を満たす形状をいう。液乱れを少なくする観点から、長軸は液の流れ方向と平行であることが好ましい。なお、開口部の断面積(開口面積)としては、特に限定はないが、排出液の回収容器での発泡を抑制する観点から、排出時の流速(ポンプ不使用の状態)が0.5〜2.5m/秒となる面積が好適である。
【0023】
前記扁平型の具体的態様としては、特に限定はないが、たとえば、楕円形または対称円弧形が好適である。楕円形のものは、たとえば、パイプをプレス成形することにより製造することができる。また、対称円弧形のものは、円弧形状をした部分を対称となるようにパイプから切り取り、それらを張り合わせ(溶接)ることにより製造することができる。
【0024】
スキミングパイプの接液部(分離液層中に挿入される部分)は、表面部分に対しバフ仕上げなどで鏡面仕上げを施し、流れ抵抗を少なくすることが望ましい。さらに通液部分もバフ仕上げなどで鏡面仕上げを施しておくと、排出抵抗を抑えることができるので、望ましい。
【0025】
スキミングパイプの先端部の端面には、液層表面をスキミングする際に気体の巻き込みを抑える観点から、曲率をもたせてもよい。この曲率半径は液層表面の曲率半径〜バスケット内壁面の曲率半径の範囲が望ましい。
【0026】
なお、スキミングパイプ先端部の端面に曲率を持たせた場合の角度Bは、図1において、スキミングパイプ先端部の端面の中心点Sにおける接線と直線Lとのなす角度である。
【0027】
本発明のスキミングパイプは、前記の通りの構成を有する以外は公知のスキミングパイプと同様のものであり、公知の方法に従って適宜製造することができる。
【0028】
スキミングパイプはケーシング本体などに固定して設置しても良く、電動式または油圧式またはエアー式のアクチェーターなどを用いた移動式としても良い。固定式では、スキミングパイプは遠心分離時より液層に挿入されることになり、一方、移動式では、スキミングパイプは液層排出時のみ液層に挿入されることになる。移動式の場合のスキミングパイプの移動速度としては、特に限定はないが、通常、1〜10cm/分程度が好適である。
【0029】
なお、スキミングパイプが分離液層に挿入されている状態においては、通常、図1に示す状態において、スキミングパイプの先端部の最末端はバスケット内壁面より0.3〜1cm程度離れた位置にあるのが好適である。
【0030】
遠心分離終了後、液層排出時のバスケットの回転数を低くすれば、スキミングパイプによる液層部の渦流の発生をより低減することができる。具体的には、液層排出時のバスケット回転速度を遠心分離時のバスケット回転速度以下にするのが好ましい。スキミングパイプを移動させて分離液層中に挿入する場合、そのようにしてバスケット回転速度を低下させた状態で行うのが好ましい。
【0031】
分離液層の排出はバスケットの回転による運動エネルギーを利用して行っても良く、排出ラインに設置したポンプなどにより吸引して行っても良い。
【0032】
また、スキミングパイプからの分離液層の排出に関しては、スキミングパイプから排出液出口までの間に、途中、バルブなどによる仕切りを設け、スキミングパイプの先端部が分離液層に挿入された状態(少なくとも先端開口部が分離液層に挿入された状態)で仕切りを開放するようにすれば、分離液層中にスキミングパイプを挿入する過程(スキミングパイプが固定式である場合と移動式である場合の両者を含む)での気泡の混入を最小限に抑えることができ、また、分離液層が泡立ちし易い場合には、スキミングパイプ挿入の際に分離された液分表面に発生し易い泡部分を除外した排出が可能となる。従って、スキミングパイプから排出液出口までの間に、途中、バルブなどによる仕切りを設けておく態様は、本発明の遠心分離方法を実施する際の具体的態様として好適である。
【0033】
本発明の遠心分離方法が適用される処理対象としては、たとえば、固体と液体および/または相互に溶解しない2種類の液体からなるものが挙げられる。本発明は、特に限定するものではないが、固体と液体との混合物を固体と液体とに分離するのに好適に用いられ、液体の遠心分離時の液温での動粘度が2×10−5/秒以下の場合に特に有効であり、中でも水系着色液のようにポリマーや分散剤が含まれていて泡立ちし易いものにより好適に用いられる。具体的には、インクジェット記録用の着色剤水分散体の製造の際の、有機顔料、無機顔料および疎水性染料からなる群より選ばれた少なくとも1種の着色剤、ポリマー分散剤、および水を含有してなる原液の処理に特に好適に用いられる。従って、本発明の一態様としては、かかる原液を本発明の遠心分離方法に供して固体と液体とに分離する工程を有する着色剤水分散体の製造方法が提供される。なお、かかる方法における、インクジェット記録用の着色剤水分散体の原料、製法等は、公知の原料、製法等が適用される。
【実施例】
【0034】
製造例1
〔ポリマーの調製〕
反応容器内に、メチルエチルケトン20重量部及び重合連鎖移動剤(2- メルカプトエタノール)0.03 重量部を入れ、モノマーとして、スチレンマクロマー〔東亜合成(株)製、商品名:AS-6S、数平均分子量:6000 、重合性官能基:メタクロイルオキシ基〕10重量部、ポリエチレングリコールモノメタクリレート〔エチレンオキシド9モル付加、新中村化学(株)製、商品名:NK エステルM-90G 〕10重量部、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート〔アルドリッチジャパン(株)製、数平均分子量:375〕10重量部、メタクリル酸12重量部及びスチレンモノマー58重量部のそれぞれの10重量%ずつを入れて混合し、窒素ガス置換を充分に行い、混合溶液を得た。一方、滴下ロートに、前記各モノマーの残りの90重量%の量を仕込み、重合連鎖移動剤(2- メルカプトエタノール)0.27 重量部、メチルエチルケトン60重量部及び2,2'- アゾビス(2,4- ジメチルバレロニトリル)1.2重量部を入れて混合し、充分に窒素ガス置換を行い、混合溶液を得た。
【0035】
窒素雰囲気下、反応容器内の混合溶液を攪拌しながら65℃まで昇温し、滴下ロート中の混合溶液を3時間かけて徐々に滴下した。滴下終了から65℃で2時間経過後、2,2'- アゾビス(2,4- ジメチルバレロニトリル)0.3重量部をメチルエチルケトン5重量部に溶解した溶液を加え、更に65℃で2時間、70℃で2時間熟成させ、ポリマー溶液を得た。
【0036】
得られたポリマー溶液の一部を、減圧下、105 ℃で2時間乾燥させ、溶媒を除去することによってポリマーを単離した。標準物質としてポリスチレン、溶媒として60mmol/Lのリン酸及び50mmol/Lのリチウムブロマイド含有ジメチルホルムアミドを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、ポリマーの重量平均分子量を測定したところ、74000であった。
【0037】
〔顔料の調製〕
粗製キナクリドン顔料〔大日本インキ工業(株)製、C.I.ピグメント・レッド122 〕300 重量部、塩化ナトリウム3000重量部、及びジエチレングリコール〔和光純薬工業(株)製〕200重量部をステンレス鋼製の5L容量のニーダーに入れ、80℃で5時間混練した。得られた混練物を取り出し、温水30Lに投入し、攪拌した。約1時間攪拌を行った後、濾過を行った。その後、それと同様にして水洗を5回行い、塩化ナトリウム及びジエチレングリコールを除去した含水率が50重量%の顔料を得た。得られた顔料を真空乾燥機で乾燥した。得られたマゼンタ顔料の平均一次粒径をレーザー粒子解析システム(大塚電子(株)製、ELS−6100)により測定したところ、約70nmであった。
【0038】
〔着色剤水分散体の調製〕
上記で得られた塩生成基を有する水不溶性ポリマーのメチルエチルケトン溶液(非蒸発成分濃度:30重量%)10重量部、マゼンタ顔料9重量部、5規定の水酸化ナトリウム水溶液0.7 重量部、及びイオン交換水34重量部をディスパーで混合した後、高圧ホモジナイザー〔マイクロフルイディクス(Microfluidics) 社製、商品名:マイクロフルイダイザー〕を用いて圧力200MPa、処理数10回の条件下で分散処理した。
【0039】
得られた分散処理品50重量部にイオン交換水23重量部を加え、撹拌した後、減圧下、60℃でメチルエチルケトンを除去し、さらに一部の水を除去することにより、固形分濃度が25重量%の着色剤水分散体を得た。この着色剤水分散体の動粘度は20℃において3.6×10−6/秒であった。
【0040】
この水分散体の濾過性を平均孔径が5μmのフィルター〔アセチルセルロース膜、外径:2.5cm 、富士写真フイルム(株)製〕を取り付けた容量25mLの針なしシリンジ〔テルモ(株)製〕で濾過し、フィルター1個が目詰まりするまでの通液量を測定して評価したところ、その通液量は70g であった。
【0041】
なお、実施例1〜4及び比較例1〜4は排出仕切り(バルブ)を閉として分離液の排出は行わなかった。
【0042】
実施例1
製造例1の着色剤水分散体4kg(比重は1.088)を無孔バスケット型遠心分離機((株)関西遠心分離機製作所製 型番:KBS−10型、バスケットの内径26cm、高さ16cm)に仕込んだ。バスケット回転状態での分離液層の厚さは計算上では約3.2cmであった。
【0043】
使用したスキミングパイプの先端開口部の形状は対称円弧形であり、外面の長軸29.7mm、短軸17.5mm、長短軸比1.7、断面積7.9cm2、また内面(開口部)の長軸23.2mm、短軸12mm、長短軸比1.9、断面積4.3cm2であった。スキミングパイプの挿入角度Aは30°、先端部の端面の角度Bは90°であった。
【0044】
スキミングパイプは、その先端部の最末端が、バスケット内壁面より0.5cm離れた位置にくるように固定され、該先端部はバスケットの回転により形成された分離液層中に、その長手方向での長さで約2.7cm浸漬した。
【0045】
バスケットが停止状態から設定回転数1860rpm(503G)になるまでの液層の乱れをバスケット残液率で評価した。なお、バスケット残液率は以下の式:

バスケット残液率(%)=
〔(仕込んだ水分散体の重量(kg)−飛散した水分散体の重量(kg))÷
仕込んだ水分散体の重量(kg)〕×100

により求めた。
【0046】
以上の結果、バスケット残液率は92%であった。
【0047】
実施例2
製造例1の着色剤水分散体の仕込み量を3.5kgとした他は実施例1と同条件で遠心分離を行った。バスケット残液率は100%であった。
【0048】
実施例3
スキミングパイプを移動式とした他は実施例1と同条件で遠心分離を行った。バスケットが設定回転数に到達してから、スキミングパイプを移動速度6cm/分で、その先端部の最末端がバスケット内壁面より0.5cm離れた位置にくるように移動させて、液層部へ挿入した。バスケット残液率は91%であった。
【0049】
実施例4
スキミングパイプの挿入角度Aを0°とした他は実施例3と同条件で遠心分離を行った。バスケット残液率は81%であった。
【0050】
比較例1
スキミングパイプの挿入角度Aを−30°とした他は実施例1と同条件で遠心分離を行った。バスケット残液率は22%であった。
【0051】
比較例2
先端開口部の形状が円形である、SUS製10A(外径17.3mm(表面研磨し17mmとした)、内径14mm)のスキミングパイプを用いた他は実施例1と同条件で遠心分離を行った。バスケット残液率は30%であった。
【0052】
比較例3
スキミングパイプの挿入角度Aを−30°とした他は比較例2と同条件で遠心分離を行った。バスケット残液率は25%であった。
【0053】
比較例4
比較例2のスキミングパイプを用いた他は実施例3と同条件で遠心分離を行った。バスケット残液率は33%であった。
【0054】
実施例5
製造例1の着色水分散体3.5kg(比重は1.088)を実施例1と同じ無孔バスケット型遠心分離機に仕込んだ。バスケットの回転により形成された分離液層の厚さは計算上では約2.75cmであった。
【0055】
なお、実施例1と同じスキミングパイプを使用したが、移動式とした。
【0056】
バスケット回転数3215rpm(1504G)で2時間処理した後、回転数を1860rpm(503G)に低下させ、スキミングパイプを、移動速度6cm/分で、その先端部の最末端がバスケット内壁面より0.5cm離れた位置にくるように移動させて液層部へ挿入し、分離液層を系外に排出した。
【0057】
製造例1と同じフィルターで該排出液を濾過し、フィルター1個が目詰まりするまでの通液量を測定した(遠心分離で得られた排出液の通液量(g))。該通液量を、製造例1の水分散体の通液量70gで除し、得られた値を濾過倍率とした。本実施例での濾過倍率は4.6であった。
【0058】
実施例6
排出仕切りを設け、スキミングパイプが液層に1cm挿入されてから排出仕切りを開にした他は実施例5と同条件で遠心分離を行った。得られた排出液の濾過倍率は5.5であった。
【0059】
比較例5
比較例2と同じスキミングパイプを用いた他は実施例5と同条件で遠心分離を行った。得られた排出液の濾過倍率は1.4であった。
【0060】
比較例6
スキミングパイプの移動速度を3cm/分とした他は比較例5と同条件で遠心分離を行った。得られた排出液の濾過倍率は2であった。
【0061】
以上の結果を表1にまとめて示す。
【0062】
【表1】

【0063】
表1に示すように、実施例1〜4ではバスケット残液率が高く、分離液層中にスキミングパイプを挿入した際、液層の飛散が非常に少なく、液層の乱れが充分に抑制されていることが分かる。また、実施例5と6から、排出液の濾過性も良好であることが分かる。一方、比較例1〜6より、本発明のスキミングパイプとは挿入角度または先端開口部の形状の点で異なるものを使用した場合には、液層の乱れ抑制、排出液の濾過性の向上効果が得られないことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明により、スキミングパイプ挿入時の分離液層部の流れの乱れを充分に抑制して、固体と液体および/または2種類の液体の分離を効率的に行い得る遠心分離方法が提供される。かかる方法は、たとえば、インクジェット記録用の着色剤水分散体の製造等に非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】バスケット型遠心分離機における回転中のバスケットをその開口部の側より眺めた場合のスキミングパイプ先端部付近の概略図である。
【符号の説明】
【0066】
O 遠心分離機の回転中心点
S スキミングパイプ先端部の端面の中心点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バスケット型遠心分離機においてバスケットの回転により形成された分離液層中にスキミングパイプを挿入して該液層を外部に排出する遠心分離方法であって、該スキミングパイプの先端部の挿入角度が0〜60°、該スキミングパイプの先端部の端面の角度が60〜120°、かつ該スキミングパイプの先端開口部の形状が扁平型であることを特徴とする、遠心分離方法。
【請求項2】
固体と液体とを分離する請求項1記載の遠心分離方法。
【請求項3】
扁平型が楕円形または対称円弧形である請求項1または2記載の遠心分離方法。
【請求項4】
バスケットが無孔タイプのバスケットである請求項1〜3いずれか記載の遠心分離方法。
【請求項5】
液層排出時のバスケット回転速度を遠心分離時のバスケット回転速度以下にする請求項1〜4いずれか記載の遠心分離方法。
【請求項6】
有機顔料、無機顔料および疎水性染料からなる群より選ばれた少なくとも1種の着色剤、ポリマー分散剤、および水を含有してなる原液を請求項1〜5いずれかに記載の遠心分離方法に供して固体と液体とに分離する工程を有する着色剤水分散体の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−7077(P2006−7077A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−186981(P2004−186981)
【出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】