説明

遠心分離機の振動制御機構

【課題】
本発明は、小型軽量の遠心分離機の駆動に際しての振動を除去するための振動制御機構であって、特に均等に配されたコイルバネによってバランスよく振動を吸収すると共に騒音を防止し、更には低廉で使い勝手の良い遠心分離機の振動制御機構の提供を課題とする。
【解決手段】
係る課題を解決するため、軽量及び小型の遠心分離機であり、平面状の板体からなる振動制御板の裏面にモーターを配置し表面に回転軸に連動する試料採取容器係止部を有し、該振動制御板には少なくとも6箇所以上のコイルバネを該バネ同士の間隔を等間隔に振動制御板上にその一端を連設すると共に該コイルバネの他端によって本体に連設し、本機器の振動を該コイルバネによって均等に制御する遠心分離機の振動制御機構を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心分離機に関し、特に軽量及び小型の遠心分離機に関する振動制御機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より遠心分離機は大型の機器を中心として用いられてきており、そもそも遠心分離器機の重量が重いことから、遠心分離に際する回転に伴う振動やモーター類の駆動振動をその重量で抑えることができるものであった。
例えば特開2006‐255549号(特許文献1)や特開2007‐111577号(特許文献2)に示す遠心分離機であり、遠心分離機自体の重量及び遠心分離すべき試料の量によって遠心回転時の振動はこれを極力押さえなければならない程度のものではなく、一定程度機械自体の野重量などによる特性より制御可能である。
更に、モーターを本体に設置する際に機械自体に対する衝撃緩和のためのダンパを用いて設置する特開2004‐267858号(特許文献3)に示す遠心分離機も存在する。
【0003】
これらの他、高い回転数や騒音の低減を図るためにモーター駆動ではなく磁気によって遠心分離する機構も特開2001−129437号(特許文献4)として示されている。
しかし、 近年この遠心分離機に関しては小型の遠心分離機が出始めており、小型ゆえ重量も軽く、更には小型ゆえ構造が極めて簡単かつシンプルに構成されているものであった。
従って、係る小型ゆえにモーターの配設構造もモーターの軸にそのまま直結するものであり、本体自体にモーターを配設するものである構造が特開2004‐333219号(特許文献5)に示すように用いられてきたものである。
【特許文献1】特開2006‐255549号
【特許文献2】特開2007‐111577号
【特許文献3】特開2004‐267858号
【特許文献4】特開2001−129437号
【特許文献5】特開2004‐333219号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上の様に、血液や体液或いは採取試料について、試験試料或いは検査試料を入手するために遠心分離を行なうことは現在多用されており、係るため前記した特許文献1や特許文献2に示す大型の遠心分離機は特に実験機関や検査機関或いは病院或いは大学などにおいて多用されているものである。
この場合、これらは何れも極めて重量のある機器であって、機器内部においモーターが駆動しロータを回転させるものであるが、自重が大きいことから本体が不必要に振動することは極めて少なく、かつ騒音もそれほど高いものではない。
更にロータの回転自体もモーター類が本体にきっちりと装着されていることから不必要に偏心回転することは無く、スムーズな回転を行なうことができるものである。
【0005】
しかし、これは機器自体が大型であり、重量があることから機器内部でのロータの回転程度の遠心力では機器自体の重量によって抑えられるものである。
更にモーター自体の振動を制御するために特許文献3に示す本体とモーター間をダンパで連設する例もあるが、その構造自体もモーターの一部をダンパに連設するものであり、これはモーターの大きな振動自体を機器に伝えないようにするためのものであって、大型機器であるがゆえに強力な大型のダンパを例えば二箇所にのみ設置するよう形式がとられているものである。
【0006】
係る状態の図は該特許文献3の図1に示されているものであり、これはモーターの振動の低減を図るものであって、大型機器ゆえにその重量をもってしても低減しにくい大きなモーター自体の振動を低減するものであって、これには振動を低減する能力の高いダンパを用いるものであった。
更に前記文献の図1に示す通り、 例えば二箇所程度配置するものであって、このダンパだけでモーターと本体が連設しているのではなく、モーターと本体は連設していると共に他の箇所でダンパとも連設しているものである。
更に、これらの構造とは異なり、モーターを用いずにモーター音や振動を低減するために特許文献4に示す磁気による回転を行なうべき遠心分離機も存在する。
【0007】
以上のように大型機器においては、そもそも振動もあるが機器自体の重量で制御でき、更にはより高度の振動の制御や騒音の低減には大型や高精度のダンパを用いるものであった。
従って各種大型の遠心分離機とは異なり、出先機関や家庭或いは個々人によっても検査試料類を簡単にかつどこでも遠心分離が可能になるように軽量で小型の遠心分離機も多用され始めており、例えば前記特許文献5などが存在する。
係る場合、小型ゆえに遠心分離されるモーター類は例えば乾電池などで駆動可能な小型のモーターであり、機器自体が極めて軽量であると共に遠心分離すべき試料も極めて微量のものとなる。
【0008】
したがって、大型機器において大型の駆動装置たとえばモーターを用い大量の試料を一度に遠心分離する場合と全く異なるものとなる。
即ち大型の遠心分離機においては大型ゆえ自重によって振動や騒音を防止できるものであり、さらにそれ以上の振動の軽減や騒音の防止には大型の高性能のダンパなどを用いるものである。
これに対して軽量で小型の遠心分離機はそもそも自重を軽くすることが前提であると共にできる限りコンパクトにかつシンプルに構成することが必要であって、遠心分離すべき試料類も微量ゆえ特段の振動や騒音はそれほど大きいものではない。
したがって従来小型の遠心分離機に際してはモーターの回転軸に直結するロータを用いて遠心分離するものが使用されていた。
【0009】
しかし、小型といえども例えば机上等において行なうものであり、不必要な微振動は机との接触部位の振動音を生じさせるものであり、又機器自体が遠心回転時に不必要にずれ動きうるものであった。
これは特に極めて不快なものとはいかないまでも、できる限り振動の阻止及び音の制御を行なうことが要望されるに至ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
係るため、該課題を解決するために請求項1に係る発明は、少なくとも本体とモーターとモーターの回転軸によって回転する試料採取容器係止部とを有し、該試料採取容器係止部に試料採取容器を装着してモーターの回転によって遠心分離を行なう軽量及び小型の遠心分離機であって、平面状の板体からなる振動制御板の裏面に該遠心分離機のモーターを配置すると共に表面にモーターの回転軸に連動する試料採取容器係止部を有し、該振動制御板を該モーターの回転軸が貫通してモーターの回転の回転を試料採取容器係止部に伝えるものであって、該振動制御板には少なくとも6箇所以上のコイルバネを該コイルバネ同士の間隔を等間隔に振動制御板上にその一端を連設すると共に該コイルバネの他端によって本体に連設し、モーターとこのモーターによって連動する試料採取容器係止具の振動を該コイルバネによって均等に制御する遠心分離機の振動制御機構からなるものであり、係る発明によって前記課題を解決できるものである。
【発明の効果】
【0011】
以上のように構成したことから、小型軽量である遠心分離機であるがゆえにモーターの回転による機器自体の振動や、この回転に伴う試料採取容器係止部の回転による本体の振動が多大に影響を遠心分離機に与え、例えば遠心分離機の振動に伴う可動や、振動による回転効率の低下、或いはこれらの騒音や振動を抑えることが必要であるのに対して、これらを全て解決するものであり、まずコイルバネによって振動を吸収するものであると共に特に該コイルバネ同士の間隔を等間隔に振動制御板上に配設していることから振動制御板をバランスよく均等にそこに係る振動を制御することができ、極めてバランスよくかつ効果的に振動や騒音類を防止できるものとなる。
特に少なくとも6本以上のコイルバネを用いているものであって、制御板の各所に係る微細なかつ異なる位置に対しての微妙な振動類を効率的に制御するものである。
更にコイルバネを用いるものであって、軽量化に基づく恩恵を引き続き得ることができると共に製造が容易であり、更にはコスト的にも低廉に抑えられるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、本発明に係る遠心分離機の振動制御機構を用いた一例の遠心分離機を示す図であり、本図に示すように特に乾電池を用いて(乾電池は図示せず)持ち運び自在の小型の遠心分離機に振動制御機構を有するものである。
まず、本体1には蓋体2を有しており、該蓋体2の中には試料採取容器係止部3であるロータを有している。
該試料採取容器係止具は略円盤形状であって、該中央部の軸心部分は凹部30となり、外周部において鍔部31を有しており、円盤形状から傾斜面をもった立ち上がり部32を有しているものである。
該立ち上がり部32には、本図の実施例では六箇所の方向にそれぞれ孔33を有しており、該孔33にはそれぞれ試料採取容器Aが装着されている。
【0013】
該立ち上がり部32が傾斜面によって構成されていることから該面の孔33に挿入される試料採取容器Aも斜めに装着されることとなり、該採取容器Aの先端部は斜め下方向に向いて設置されることとなる。
次に該試料採取容器係止部3は、モーターMの回転軸の回転に伴って回転するものであって該モーターMの回転軸と同軸に連動するが、該軸部分はボールベアリング軸受け部4によって回転自在に軸支されているものである。 次に蓋部2は本図では開披されているが蓋2は開閉自在に形成されているものである。
さらに、ボールベアリング軸受け部4はさらに振動制御板5に固着しており、該振動制御板5にはモーターMが配設されている。 その上で、該振動制御板5は、コイルバネ6によって本体1に連結しているものである。
【0014】
以上よりモーターMとこの回転軸に連動する試料採取容器係止部3は振動制御板5に固着されており、該振動制御板5は本体1とコイルバネ6で繋がっているものである。
この様に構成することによって、モーターMの振動及び試料採取容器係止部3の回転に伴うそれぞれの振動は全てこの振動制御板5と本体1とを連設するコイルバネ6によって吸収され、本体1自体の振動をなくすことができる。
さらにこの不必要な振動がなくなることによって、振動に由来する騒音を防止できることとなる。
併せて回転がスムーズに行われることから回転時の不必要な騒音も低減できることとなる。
【0015】
図2は、本遠心分離機の振動制御機構の部分を抽出した部分拡大図の一例を示す図である。本図に示すように、本体1と振動制御板5とは計6本のコイルバネ6によって連結しているものであり、振動制御板5にはモーターMとこのモーターMの回転軸と軸通する試料採取容器係止部3を有する。
この振動制御板5は一例として略円盤状で平板状に構成されており、この外周端部近傍において均等即ち等間隔で計6箇所コイルバネ6が配置しているものである。
このコイルバネ6は本体1内の空洞部を有するドーナツ状鍔部においてその一端が連結しているものである。
即ちコイルバネ6の一端は振動制御板5に繋がっており、コイルバネ6の他端は本体1の例えばドーナツ状鍔部と繋がっているものである。
【0016】
従って、本体1とモーターM及び試料採取容器係止部3とはこのコイルバネ6によって弾力性をもって連設しており、振動制御板5における振動はコイルバネ6によって制御されて本体1にはその振動を伝えないものである。
本図の構成は一例であり、例えばコイルバネ6を6箇所配置してこれによって本体と振動制御板5を連設するが、例えば4箇所、5箇所或いは6ヶ所以上の複数乃至多数箇所で連設するものであってもよい。
従って、この箇所に等間隔或いは均等にコイルバネ6を配したものであればよい。
例えば六箇所以上等間隔にコイルバネ6を配したものが最適である。
即ち、制御板5全体をバランスよく維持でき、各所の振動を効率よく制御できるからである。
【0017】
以上より、少なくとも振動制御板5と本体1との連設においてコイルバネ6を均等例えば等間隔に配設することが必要である。
例えば本図においては等間隔にバランスよく配置しているが、例えばこのほか振動制御板5全面に亘ってそれぞれバランスよく全体的に均等に分配して配置するものであってもよい。
即ち、外周上に等間隔均等にコイルバネ6を順次配置するほか、制御板5の面積割合に応じてそれぞれ均等になるように等間隔に配置するものであってもよい。
尚、振動制御板5は平板状で円盤状の一例を示すがこの形状に限定されるものではなく少なくともモーターMを配置できると共にコイルバネ6を均等に複数配置できるものであればよい。
【0018】
更に、本図においてはコイルバネ6を一例として明示するが他の弾性部材たとえば軟質ゴムや軟質樹脂材或いは他のバネ部材を用いるものであってもよい。
この様に簡易なコイルバネや樹脂材を用いることによって特段特殊なダンパ等を用いなくとも充分に振動の制御を可能とする。
特にコイルバネを用いた場合には軽量化が図り易く、更には設置が容易で低廉であるという効果を有する。
【0019】
該コイルバネ6を配設している振動制御板5にはモーターMがその一面方向に装着しており、該モーターMの回転軸部が該振動制御板5を貫いて他面方向に試料採取容器係止部3が該軸と軸着しているものである。
従って、モーターの回転に伴ってモーターの回転軸が回転するが、この軸部が連結する試料採取容器係止部3も回転するものであり、該試料採取容器係止部3の孔33に装着した試料採取容器Aが回転することとなり遠心分離を可能とする。
尚、該振動制御板5をモーター回転軸が貫通する部分或いはこの近傍において例えばボールベアリング軸受け部を有し回転自在にモーターの回転軸を軸支しているものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る遠心分離機の振動制御機構を用いた遠心分離機の一例を示す図
【図2】本発明に係る遠心分離機の振動制御機構の一例を示す遠心分離機の一部拡大図
【符号の説明】
【0021】
1 本体
2 蓋体
3 試料採取容器係止部
30 凹部
31 鍔部
32 立ち上がり部
33 孔
4 ボールベアリング軸受け部
5 振動制御板
6 コイルバネ
A 試料採取容器
M モーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも本体1とモーターMとモーターMの回転軸によって回転する試料採取容器係止部3とを有し、該試料採取容器係止部3に試料採取容器Aを装着してモーターMの回転によって遠心分離を行なう軽量及び小型の遠心分離機であって、
平面状の板体からなる振動制御板5の裏面に該遠心分離機のモーターMを配置すると共に表面にモーターMの回転軸に連動する試料採取容器係止部3を有し、
該振動制御板3を該モーターMの回転軸が貫通してモーターMの回転の回転を試料採取容器係止部3に伝えるものであって、
該振動制御板5には少なくとも6箇所以上のコイルバネ6を該コイルバネ6同士の間隔を等間隔に振動制御板上5にその一端を連設すると共に該コイルバネ6の他端によって本体に連設するものであり、
モーターMとこのモーターMによって連動する試料採取容器係止具3の振動を該コイルバネ6によって均等に制御することを特徴とする遠心分離機の振動制御機構。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−290016(P2008−290016A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−138825(P2007−138825)
【出願日】平成19年5月25日(2007.5.25)
【出願人】(392018805)株式会社サガミ (2)
【Fターム(参考)】