説明

遠心可変式渦電流型速度リミット装置

【課題】本発明はマグネットと対面するブレーキディスクを弾性変形する材料で形成し、ブレーキディスクとマグネットとの間の間隔を回転数の増加に連動して狭くすることを目的とする。
【解決手段】本発明による遠心可変式渦電流型速度リミット装置は、マグネット(3)に対面するブレーキディスク(6)を弾性変形可能とし、回転速度が増加した時に、弾性変形することにより、ブレーキディスク(6)とマグネット(3)間の間隔(D)が小さくなり、ブレーキ力が増大する構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心可変式渦電流型速度リミット装置に関し、特に、マグネットと対面するブレーキディスクを弾性変形する材料で形成し、ブレーキディスクとマグネットとの間の間隔を回転数の増加に連動して狭くするための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種の遠心可変式渦電流型速度リミット装置としては、社内製作のみで特許出願を行っていないため、特許文献等を開示していないが、マグネットと対面するブレーキディスクは、硬質金属で形成され、回転数が増加した場合でも、マグネットとブレーキディスクとの間隔は一定であった。
【0003】
また、特許文献1で示されるブレーキ付きモータにおいては、電磁石によってブレーキディスクを磁気吸着する構成であるため、ロータの回転数の増減に拘わらず、ブレーキディスクと電磁石との間の間隔は一定であった。
【0004】
【特許文献1】特開2000−50569号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の遠心可変式渦電流型速度リミット装置は、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、ブレーキディスクが硬質金属で構成されていたため、ブレーキディスクとマグネットとの間の間隔は、ブレーキディスクの回転数に拘わらず一定であり、例えば、回転速度のリミット値を可変とするような要求に応えることは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による遠心可変式渦電流型速度リミット装置は、固定軸及びマグネットを有する固定体と、前記固定体に設けられ前記固定軸の外周側に位置する一対の軸受と、前記各軸受を介して回転自在に設けられた筒状回転体と、前記筒状回転体の内端に設けられブレーキディスクを有するブレーキ体と、を備え、前記ブレーキディスクは、前記マグネットに対して間隔を介して対面し、かつ、遠心力によって弾性変形する弾性磁性体で形成されている構成であり、また、前記ブレーキディスクは、弾性磁性金属よりなる構成であり、また、前記ブレーキディスクは、弾性磁性樹脂よりなる構成である。
【発明の効果】
【0007】
本発明による遠心可変式渦電流型速度リミット装置は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、固定軸及びマグネットを有する固定体と、前記固定体に設けられ前記固定軸の外周側に位置する一対の軸受と、前記各軸受を介して回転自在に設けられた筒状回転体と、前記筒状回転体の内端に設けられブレーキディスクを有するブレーキ体と、を備え、前記ブレーキディスクは、前記マグネットに対して間隔を介して対面し、かつ、遠心力によって弾性変形する弾性磁性体で形成されていることにより、筒状回転体とブレーキディスクの回転が増大すると、ブレーキディスクが遠心力によってマグネット側へ曲って変形し、ブレーキディスクとマグネット間の間隔が狭くなり、渦電流によるブレーキ力が増大する。従って、渦電流によって生じるブレーキ力は、回転速度、マグネットとブレーキディスク間の間隔によって変化するため、ブレーキディスクの可変により、回転速度のリミット値の設定ができる。
また、前記ブレーキディスクは、弾性磁性金属よりなるか、又は、前記ブレーキディスクは、弾性磁性樹脂よりなることにより、回転速度増加時のブレーキディスクとマグネットとの間の間隔を自在に変えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、マグネットと対面するブレーキディスクを弾性変形する材料で形成し、ブレーキディスクとマグネットとの間の間隔を回転数の増加に連動して狭くするようにした遠心可変式渦電流型速度リミット装置を提供することを目的とする。
【実施例】
【0009】
以下、図面と共に本発明による遠心可変式渦電流型速度リミット装置の好適な実施の形態について説明する。
図1において符号1で示されるものは長手形状の固定軸2を有する固定体であり、この固定体1の環状部1a内には、複数のマグネット3が環状に配設されている。
【0010】
前記固定体1の前記固定軸2に沿って延設された筒状延設部1bの外周には、一対の軸受4、4aが設けられ、各軸受4、4aには、全体形状が筒状をなす筒状回転体5が前記固定軸2の外周側でこの固定軸2と同軸状に回転自在に配設されている。
【0011】
前記筒状回転体5の内端5aには、ブレーキディスク6を有するブレーキ体7が設けられており、前記ブレーキディスク6は前記マグネット3に対面しており、このブレーキディスク6とマグネット3との間には、間隔Dが形成されている。
【0012】
前記ブレーキディスク6は、回転時の遠心力によって、図2の点線で示されるように、弾性変形するような弾性磁性体又は弾性金属等で形成されており、例えば、銅鋼、燐青銅、導電性樹脂等を適用することができる。
【0013】
従って、渦電流によって生じるブレーキ力は、ブレーキディスク6の回転速度及び前記マグネット3とブレーキディスク6間の間隔Dによって変化するため、前述のように、ブレーキディスク6が所定の回転速度に達すると、図2のように実線から点線のようにブレーキディスク6がマグネット3側へ曲がるため、前記間隔Dが大幅に小さくなり、渦電流によるブレーキ力が大幅に増大し、前記所定の回転速度で筒状回転体5の回転にブレーキをかけることができる。
従って、前記ブレーキディスク6の材質を選定して、所望の回転数に対してブレーキディスク6が弾性変形する状態を設定することにより、筒状回転体5の回転速度のリミット値の最適設定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明による遠心可変式渦電流型速度リミット装置を示す断面図である。
【図2】図1の要部の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0015】
1 固定体
1a 環状部
1b 筒状延設部
2 固定軸
3 マグネット
D 間隔
4、4a 軸受
5 筒状回転体
5a 内端
6 ブレーキディスク
7 ブレーキ体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定軸(2)及びマグネット(3)を有する固定体(1)と、前記固定体(1)に設けられ前記固定軸(2)の外周側に位置する一対の軸受(4,4a)と、前記各軸受(4,4a)を介して回転自在に設けられた筒状回転体(5)と、前記筒状回転体(5)の内端(5a)に設けられブレーキディスク(6)を有するブレーキ体(7)と、を備え、
前記ブレーキディスク(6)は、前記マグネット(3)に対して間隔(D)を介して対面し、かつ、遠心力によって弾性変形する弾性磁性体で形成されていることを特徴とする遠心可変式渦電流型速度リミット装置。
【請求項2】
前記ブレーキディスク(6)は、弾性磁性金属よりなることを特徴とする請求項1記載の遠心可変式渦電流型速度リミット装置。
【請求項3】
前記ブレーキディスク(6)は、弾性磁性樹脂よりなることを特徴とする請求項1記載の遠心可変式渦電流型速度リミット装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−93896(P2010−93896A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−259695(P2008−259695)
【出願日】平成20年10月6日(2008.10.6)
【出願人】(000203634)多摩川精機株式会社 (669)
【Fターム(参考)】