説明

遠心噴霧装置

【課題】 遠心噴霧装置において、次の3つの課題がある。一つは、滴下された液滴が固着して回転体のアンバランスとなり、高速回転が困難になる。二つ目は、円盤上での液滴の粘度が変化して、微粒のサイズの制御が困難である。3つ目は、滴下以前に液温を過剰に上げる必要がある。
【解決手段】凹状の上面を有する回転円盤がガス軸受で支持された回転軸の上部に設けられ、回転円盤の下部に設けられたヒータで加熱されることにより、回転軸に内蔵された永久磁石が外周のステータで発生される磁界で高速回転されることにより、回転円盤上面に滴下される液滴が固着することなく遠心力で放出され、微粒化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
液化された物体を回転円盤に滴下、遠心噴霧で微細粒子を生成する技術分野
蒸発性液体の高精度流量蒸発機能を有する機器に関する技術分野
高速回転体の負荷を精密に計測又は精密負荷付与に関する分野
【背景技術】
【0002】
電子部品及び構成回路の微細化に伴って、回路を形成する線幅の微細化が望まれている。線の形成方法の一つに、基盤にのりで描いた回路に微細なロー粉末、付着させ、基板上に配置された部品とともに、炉内で高温化、ロー粉末が溶融して配線される。各種の情報機器等の高度化、小型化のためには、集積密度を向上させる必要があり、線幅を小さくすることが要求され、前記のロー粉末の微細化が必須となっている。液滴の微粒化の方法として、高圧化して、高速で噴射して微粒化する方法が一般的である。この方法では、高速化に限界があり、微粒化にも限界がある。遠心噴霧法は、回転円盤の表面に液を滴下して、液滴を加速高速にすることで微粒化を行うものである。回転円盤の外周縁から噴出する液滴の速度は、回転円盤の周速に比例するので、回転数又は回転円盤の径を大きくすることで、速くすることができ、微粒化が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5-171288
【特許文献2】特開平6-155457
【特許文献3】特開平6-264116
【特許文献4】特開平6-306415
【特許文献5】特開平6-340905
【特許文献6】特開平7-54018
【特許文献7】特開2001-108777(P2001-10877A)
【特許文献8】特開2009-62573(P2009-62573A)
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】ハイブリッド噴霧法による均質な金属微細球状粉末の創製、独立行政法人 物質・材料研究機構、新構造材料センター 軽量材料グループ 皆川和己 垣澤秀樹 大澤嘉昭 高森晋 原田幸明
【非特許文献2】超微細 鉛フリーはんだボール 日立金属(ホームページ)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
回転円盤の駆動方法として、高速モータ、タービン等が使用される。これらの軸受には、一般に潤滑油が使用され、製造される微粒子に付着する問題がある。ハンダ等の常温では個体の物質を、液体にするために加熱された液体が回転円盤に滴下されるが、円盤の温度が低い場合は、滴下された液滴の一部が冷却されて円盤に付着するなどで、回転体のアンバランス問題が生じる。
回転円盤周辺の雰囲気温度は、微粒の固化のために、低い温度に保たれており、円盤が高速で回転する場合、円盤の表面及び表面の液体と雰囲気との間での熱伝達率が高く、温度低下が大きくなる。
回転円盤上の液体の温度が所定の値に保たれない場合、円盤上の液体の流動状況が変化するため、所期の粒径が得られなくなる。また、所期の粒径の生産管理が困難になる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
駆動モータの軸受として動圧型ガス軸受を用いる。
回転円盤の下部で回転軸周りにヒータを設け、上向きに加熱する。
セラミック又は耐熱合金にセラミックなどの絶縁耐熱材料をコーティングしたヒータ支持器を設ける。
【発明の効果】
【0007】
回転円盤1100の上部中心が凹状に形成されることによって、滴下ノズル6000から滴下された液状物質が中心部に集まり易く、回転円盤1100の各半径位置で十分に遠心力を受けて、外縁1110で均一に放出され、液滴の粒径が均一になる。
【0008】
回転円盤1100の下面に近接して設けられたヒータ2000で、回転円盤1100に向けて加熱されることで、回転円盤1100の温度を一定に維持可能となる。
【0009】
回転円盤1100が加熱されているので、滴下ノズル6000から滴下された液滴の初期の温度低下が少なくなる。
【0010】
回転円盤1100上に滴下された液滴とともに回転による相対速度が発生するために周辺の雰囲気との間で熱交換が促進され、液滴の温度低下が抑制され、液滴温度や溶融温度の適正化が容易となる。
【0011】
回転円盤1100を加熱することなく、計量された液を滴下することにより、液量と回転数(液滴の放出速度)で正確な動力を算出可能である。
【0012】
回転円盤1100を加熱することなく、計量された液を滴下することに液滴にエネルギーが与えられるので、完全蒸発が行われ、正確な量の上記の生成が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】回転円盤装置の実施例1の断面図
【図2】回転円盤の外観図
【図3】ヒータの構成図
【図4】ヒータ断面図と発熱体配置
【発明を実施するための形態】
【0014】
本考案は、ハンダの微細粒子製造、焼結合金の微細粒子製造などの製造機械の主要部として製品化される。また、高精度量の水分等の蒸発に使用される。高速モータの出力計測装置として製品化可能である。
【実施例】
【0015】
実施例1の構成を図1に示す。回転体1000の上端には回転円盤1100、中間部には永久磁石1200、下端には止めネジ1300、回転軸の中心部にはテンションボルト1400が設けられている。回転体1000は、上部の円盤状のスラスト軸受1500で上下方向の動きを抑制され、上部ジャーナル軸受と下部ジャーナル軸受で前後左右への動きが抑制されている。
【0016】
スラスト軸受は、上部スラスト軸受1510、下部スラスト軸受1520、スラストカラー1530で構成され、回転体1000に組み込まれた円盤状のスラストカラー1530の上方部への動きは、上部スラスト軸受1510で、下方への動きは、下部スラスト軸受1520で抑制される。
【0017】
回転円盤1100、スラストカラー1530、スペーサ1540、上部ロータ1550、外筒1560、磁石1200、下部ロータ1570は、テンションボルト1400と止めネジ1300で一体化されている。
【0018】
回転体1000の外周部のステータ3100に供給される電力により発生する磁場で磁石1200すなわち回転体1000が回転される。
【0019】
ステータ3100等で発生する熱は、ケーシング3200に設けられた冷却部3210に導かれた水等の低温流体で冷却される。
【0020】
スラスト軸受1500の冷却、遮蔽部4200の熱シールドや冷却は、管路3220を通る空気などの流体で行われる。
【0021】
水や空気等の流体、電気等の配線は、下部ケーシング5100に設けられたネジ孔等から導入される。
【0022】
図2に回転円盤1100の形状の1例を示す。回転円盤1100は、上部に凹状受部1120、外縁1110を有し、下部には、円周溝1130、ネジ付センター孔1140をもつ突起円柱1150が形成されている。
【0023】
図3にヒータ2000の構成を示す。本実施例のヒータ2000は、外溝2100、内溝2200を有し、両溝にニクロム線2700と2800が嵌め込まれ、外溝2100内の外溝内発熱体2700の両端は線取出孔2400から、内溝2200内の内溝内発熱体2800は線取出孔2500から取り出されている。図4に外溝内発熱体2700及び内溝内発熱体2800としてニクロム線ヒータを使った場合の配置例を示す。
【0024】
回転体1000は、中心に設けられた貫通孔2600を通り、ヒータ2000の上部に位置するように配置されている。
【0025】
ヒータ2000の下面には、空間2900、止めネジ孔2950が設けられている。ヒータ2000の下部には、2枚の円板1700でスペース1710が形成されている。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本考案は、ハンダの微細粒子製造、焼結合金の微細粒子製造などの製造機械の主要部として製品化される。また、高精度量の水分等の蒸発に使用される。高速モータの出力計測装置として製品化可能である。
【符号の説明】
【0027】
1000 回転体
1100 回転円盤
1110 外縁
1120 凹円部
1130 円周溝
1140 ネジ付センター孔
1150 突起円柱
1200 磁石
1300 ナット
1400 テンションボルト
1500 スラスト軸受
1510 上部スラスト軸受
1520 下部スラスト軸受
1530 スラストカラー
1610 上部ジャーナル軸受
1620 下部ジャーナル軸受
2000 ヒータ
2100 外溝
2200 内溝
2300 内壁
2400 線取出孔
2500 線取出孔
2600 貫通孔
2700 外溝内発熱体
2800 内溝内発熱体
2900 空間
2950 止めネジ孔
3100 ステータ
3200 主ケーシング
3210 冷却部
3220 空気孔
4100 上部ケース
4200 遮蔽部
5100 下部ケース
5200 センサ取付部
6000 滴下ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融可能な物質が液化され、滴下ノズルから回転円盤上に滴下された液滴が回転円盤外周から遠心力により噴霧されることにより、液滴の微粒化が行われる遠心噴霧装置において、回転軸がガス軸受で支持され、永久磁石式モータで駆動されることを特徴とする遠心噴霧装置。
【請求項2】
請求項1において、回転円盤の下部にヒータが設置されていることを特徴とする遠心噴霧装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、回転円盤の上面が凹面とされていることを特徴とする遠心噴霧装置。
【請求項4】
請求項2において、回転円盤とヒータの最短距離が0.2から10ミリメートルである遠心噴霧装置。
【請求項5】
請求項2において、ヒータを形成する発熱体が少なくとも1条の溝に収められ、セラミックなどの耐熱絶縁材、上面に絶縁耐熱物質が溶射された部材で構成されることを特徴とする遠心噴霧装置。
【請求項6】
請求項5において、ヒータ下面に断熱部材や空間が設けられていることを特徴とする遠心噴霧装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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