説明

遠隔検知装置及び遠隔検知システム

【課題】RFIDタグ(子機)の残響信号の送信時間がわずかであっても、残響信号の周波数を判定できる遠隔検知装置及び遠隔検知システムを提供する。
【解決手段】遠隔検知装置2は、送信部11で送信信号Stを例えば10μ秒間送信する。子機3は、送信信号Stにより励振されて短時間、周波数fsの残響信号Ssを送信する。遠隔検知装置2は、測定部15で、それぞれ異なる周波数f1〜fnの比較用信号S1〜Snを一斉に発生させて、残響信号Ssと比較用信号S1〜比較用信号Snとの周波数を個別に比較し、比較結果に基づいて残響信号Ssの周波数範囲を判定する。制御部16は、周波数の情報を対応する温度範囲に変換して、報知部19に報知させる。遠隔検知システム1では、送信信号Stを送信してから約15μ秒後には残響信号Ssの周波数がわかるので、親機2は、子機3で検知した温度をきわめて短時間で検知できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、RFIDタグが送信した残響信号の周波数を検出する遠隔検知装置と遠隔検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近時、RFID(Radio Frequency Identification)システムの利用が増加している。
【0003】
RFIDシステムには、センサを備えた子機(RFデバイス)に対して親機(リーダ)が信号を送信すると、子機が応答信号を親機に送信し、親機がセンサの検出値を取得できるものがある(特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−281768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
RFIDシステムの子機をさらに小型化して、子機を取り付ける対象物の範囲を拡大させたいというニーズがある。このニーズに対して、電池を搭載せずに回路構成を簡略化したパッシブ型の子機が新たに開発されている。このような子機は、親機からの送信信号を受信したときに共振し、親機からの送信信号が停止した後は共振信号の減衰振動の信号(以下、残響信号と称する。)を送信する。親機は、送信信号を停止後に、子機がわずかな時間(例えば約10μ秒)だけ送信する残響信号(電波)を受信して、子機の情報を取得する。
【0006】
一方、従来のRFIDシステムにおいて、アクティブ型の子機から送信された応答信号を親機が受信可能な時間は、上記のようなパッシブ型の子機の残響信号を受信可能な時間に比べて十分長かった。また、従来のRFIDシステムの親機は、アクティブ型の子機から送信された応答信号のように受信時間の長い信号を受信できるように構成されていた。そのため、従来のRFIDシステムの親機を使用すると、上記のようなパッシブ型の子機が送信する、受信時間がわずかな残響信号を受信できないという問題があった。
【0007】
そこで、この発明は、RFIDタグ(子機)が送信した残響信号の受信時間がわずかであっても、残響信号を受信して子機の情報を取得できる遠隔検知装置及び遠隔検知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、無線通信によりRFIDタグへ電波を送信し、RFIDタグが送信する残響信号を受信する遠隔検知装置に関するものである。この発明の遠隔検知装置は、送信部と、受信部と、比較用信号生成部と、周波数比較部と、周波数判定部と、を備えている。遠隔検知装置は、RFIDタグの残響信号の周波数を含む所定の帯域幅の送信信号を、RFIDタグへ送信部から送信する。RFIDタグは、この送信信号を受信すると共振し、送信信号が停止すると残響信号を送信する。遠隔検知装置は、残響信号の受信時に、又はそれ以前に、複数の比較用信号を比較用信号生成部で生成し、残響信号を受信部で受信すると、複数の比較用信号の周波数と残響信号の周波数とを周波数比較部で比較する。そして、周波数比較部の比較結果に基づいて残響信号の周波数範囲を周波数判定部で判定する。
【0009】
比較用信号と残響信号との周波数の比較は、残響信号を受信すると直ちに行うことが可能である。そのため、RFIDタグが送信した残響信号の受信時間が短時間であっても、残響信号と比較用信号との周波数の比較を行って、残響信号の周波数が、いずれの比較用信号の周波数の間になるかを判定できる。したがって、残響信号の受信時間にかかわらず、残響信号の周波数範囲を確実に判定できる。
【0010】
上記発明において、比較用信号生成部は、複数の比較用信号を一斉に生成する。また、周波数比較部は、残響信号の周波数と複数の比較用信号の周波数とを個別に比較する。
【0011】
この構成により、遠隔検知装置は、残響信号の周波数と複数の比較用信号の周波数とを一斉に比較できる。また、残響信号の周波数と複数の比較用信号の周波数とを個別に比較するので、周波数の高低の判定やすべての判定結果の確認を短時間で完了できる。したがって、残響信号の受信時間が短時間であっても、残響信号の周波数範囲を判定できる。また、残響信号の周波数を短時間で判定できる。
【0012】
上記発明において、送信部は送信信号を繰り返し送信し、比較用信号生成部は受信部が残響信号を受信する毎に、前回と異なる周波数の比較用信号を生成する。
【0013】
この構成により、比較用信号生成部が一度に生成できる比較用信号が1個乃至数個であっても、周波数が毎回異なる比較用信号と残響信号との周波数比較を、残響信号を受信する毎に繰り返すことで、比較結果に基づいて残響信号の周波数範囲を判定できる。したがって、残響信号の受信時間が短時間であっても、残響信号の周波数を確実に判定できる。また、一度に生成する比較用信号の数は少なくても良いので、比較用信号生成部及び周波数比較部の構成を簡素化することが可能となる。
【0014】
上記発明において、周波数比較部は、比較用信号と残響信号の位相差に応じたデューティ比のパルス信号を出力する位相周波数比較器を備えている。
【0015】
位相周波数比較器は、信号が入力される時間がわずかであっても、確実に信号の位相差や周波数差を比較して、その結果に応じた信号を出力する。そのため、周波数比較部に位相周波数比較器を用いることで、残響信号の受信時間がわずかであっても、残響信号の周波数範囲を確実に判定できる。
【0016】
上記発明において、遠隔検知装置はさらに比較用信号設定部を備えている。比較用信号設定部は、複数の比較用信号の周波数を設定する。
【0017】
この構成により、残響信号の周波数がそれぞれ異なる複数のRFIDタグから残響信号を受信する場合には、RFIDタグに応じて複数の比較用信号の帯域を変更することで、各RFIDタグの残響信号の周波数がどの周波数範囲に入るかを判定できる。また、あるRFIDタグから残響信号を受信する場合に、残響信号の周波数が、粗く定めた周波数範囲のうちどの周波数範囲に入るかを判定し、その結果に基づいて比較用信号生成部に複数の比較用信号の周波数帯域及び周波数間隔を狭くすることで、残響信号の周波数範囲を高精度に判定できる。
【0018】
上記発明において、遠隔検知装置は、さらに周波数変換部を備えている。周波数変換部は、受信部が受信した残響信号の周波数を別の周波数に変換する。
【0019】
この構成により、例えば、残響信号の周波数が比較用信号生成部や周波数比較部が取り扱うことができない周波数の場合、比較用信号生成部や周波数比較部が取り扱い可能な周波数に変換するように設定することで、遠隔検知装置が取り扱うことができる残響信号の周波数範囲を拡大できる。
【0020】
上記発明において、周波数変換部は、局部発振器と発振周波数設定部と混合器を備えている。局部発振器は発振周波数が可変であり、出力信号を混合器に出力する。発振周波数設定部は局部発振器の発振周波数を設定する。混合器は、局部発振器の出力信号と残響信号とを混合する。
【0021】
この構成によると、混合器は残響信号と局部発振器の出力信号を混合して、残響信号とは周波数の異なる信号を出力する。したがって、発振周波数設定部により残響信号の周波数を任意の値に設定できるので、例えば、複数のRFIDタグにおいて残響信号の周波数が異なる帯域の場合に、同じ帯域に変換されるように設定することで、比較用信号生成部で生成する複数の比較用信号の周波数を変更しなくても良くなり、処理を簡略化できる。
【0022】
上記発明において、遠隔検知装置はさらに状態判定部を備えている。状態判定部は、周波数判定部が判定する残響信号の周波数の変動を監視して、その監視結果を出力する。
【0023】
この構成によると、状態判定部は、周波数判定部がノイズ等の雑音信号の影響を受けずに残響信号の周波数を判定できるか否かを知ることができる。例えば、周波数判定部が判定する残響信号の周波数範囲が一定の場合には、雑音信号の影響を受けていないので、判定した周波数範囲を出力するように設定する。一方、周波数判定部が判定する残響信号の周波数範囲が時間の経過とともに変動する場合には、雑音信号の影響を受けているので、周波数範囲を判定できない旨を出力するように設定する。これにより、周波数測定の信頼性を高めることができる。
【0024】
上記発明において、遠隔検知装置はさらに検知量変換部を備えている。検知量変換部は、周波数判定部が判定した周波数範囲を、RFIDタグがセンサで検知した検知量に変換して出力する。
【0025】
この構成によると、残響信号の周波数範囲に対応するセンサの検知量を把握できる。したがって、遠隔検知装置から離れた場所に設置されたRFIDタグからの残響信号の受信時間が短時間であっても、RFIDタグがセンサで検知した検知量を速やかに把握できる。
【0026】
本発明の遠隔検知システムは、RFIDタグと、上記のいずれかの遠隔検知装置と、を備えている。また、RFIDタグは、アンテナと、このアンテナに共振器として接続された表面弾性波共振子と、を備えている。
【0027】
この構成によれば、表面弾性波共振子は、周囲温度や素子に加わる圧力などの検知量に応じて共振周波数が変化するので、センサとして使用できる。また、表面弾性波共振子は、数十MHz〜数GHzのような高周波帯域の信号を、アンテナを介して送信させることができるので、RFIDタグの共振子として利用できる。これにより、センサを別途設けることなく、構成を簡素化したRFIDタグにより検知した検知量を、離れた位置に設置した遠隔検知装置で把握できる。また、RFIDタグからの残響信号の受信時間が短時間であっても、遠隔検知装置で残響信号の周波数を確実に判定できる。
【発明の効果】
【0028】
この発明によれば、RFIDタグ(子機)が送信する残響信号の受信時間がわずかであっても、残響信号の周波数を判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】遠隔検知システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】RFIDタグの具体的な構成図である。
【図3】遠隔検知システムにおいて、遠隔検知装置とRFIDタグが送受信する信号の周波数の概念図である。
【図4】遠隔検知装置の送信波及び受信波のタイミングチャートである。
【図5】本発明の第1実施形態に係る遠隔検知装置の構成を示すブロック図である。
【図6】図6(A)は残響信号と比較用信号の周波数の例を示す図である。図6(B)は各周波数比較器の出力信号の例を示す表である。
【図7】図7(A)は周波数比較器に用いる位相周波数比較器のブロック図である。図7(B)は位相周波数比較器の入出力信号のタイミングチャートである。
【図8】遠隔検知システムの概略構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る遠隔検知装置のブロック図である。
【図10】遠隔検知装置の送信信号及び受信信号のタイミングチャートである。
【図11】図11(A)及び図11(B)は残響信号と比較用信号の周波数の例を示す図である。
【図12】本発明の第3実施形態に係る遠隔検知装置のブロック図である。
【図13】本発明の第4実施形態に係る遠隔検知装置のブロック図である。
【図14】本発明の第5実施形態に係る遠隔検知装置のブロック図である。
【図15】本発明の第5実施形態に係る遠隔検知装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
[第1実施形態]
図1は、遠隔検知システムの概略構成を示すブロック図である。図2は、RFIDタグの具体的な構成図である。図3は、遠隔検知システムにおいて、遠隔検知装置とRFIDタグが送受信する信号の周波数帯を示す図である。図4は、遠隔検知装置の送信信号及び受信信号のタイミングチャートである。
【0031】
遠隔検知システム1は、RFIDシステムの一種であり、遠隔検知装置(以下、親機と称する。)2と、パッシブ型のRFIDタグ(以下、子機と称する。)3と、を備える。親機2と子機3は、50MHz〜3GHzのうちの任意の帯域において無線通信する。子機3の小型化や製造の容易性を考慮すると、通信帯域を300MHz〜1GHzのうちの任意の帯域に設定すると良い。
【0032】
以下、遠隔検知システム1の一例として、親機2が子機3へ送信信号(電波)Stを送信し、子機3が送信信号Stにより励振して、センサで検知した検知量に応じた周波数の残響信号(電波)Ssを送信する構成を説明する。
【0033】
図1に示すように、親機2は、送信部11、アンテナ共用器12、アンテナ13、受信部14、測定部15、制御部16、操作部17、記憶部18、及び報知部19を備えている。
【0034】
子機3は、アンテナ31及びセンシング共振器32を備えている。図2に示すように、センシング共振器32は、水晶またはリチウムタンタレートを素材とする圧電基板321と、この圧電基板321の表面に形成されたIDT電極(櫛歯状電極)322と、を備えたSAW(Surface Acoustic Wave:表面弾性波)共振子から成る。IDT電極322は、アンテナ(ダイポールアンテナ)31に接続されている。センシング共振器32は、温度センサと共振子を兼ねた素子であり、親機2からの送信信号Stをアンテナ31で受信すると、この送信信号Stにより励振されて、測定温度(測定対象物の温度、周囲温度等)に応じた周波数fsで共振する。また、センシング共振器32は、送信信号Stが停止すると、測定温度に応じた周波数fsでわずかな時間(例えば10μ秒程度)残響して、アンテナ31から残響信号Ssを送信する。つまり、子機3は、センシング共振器32が測定可能な温度範囲に対応する周波数範囲の残響信号であって、測定温度に応じた周波数fsの残響信号Ssを送信する。
【0035】
なお、子機3の応答周波数(残響信号の周波数)は、基本的にはセンシング共振器32の共振周波数により決まるが、詳細にはアンテナの長さや設置環境の影響を受ける。
【0036】
なお、外部から圧力(気圧、タイヤの空気圧)や磁力が加えられると、この圧力や磁力に応じてセンシング共振器32に圧縮応力または引張応力が加わるように構成すると、センシング共振器32の共振周波数が変化するので、センシング共振器32を気圧センサ、圧力センサ、または磁気センサとしても使用できる。
【0037】
なお、センシング共振器32としては、複数のSAW共振子を1つの容器(パッケージ)に組み込んだものを用いても良い。また、SAW共振子が測定量に対して感度に差がある場合には、校正(較正)を行いながら測定する手法を用いると良い。これにより、共振子を安価かつ精度良く実現できる。
【0038】
親機2では制御部16が各部を制御する。制御部16は、操作部17においてユーザの操作を受け付けたとき、または予め設定された所定のタイミングにおいて、送信部11に制御信号を出力する。送信部11は、制御信号が入力されると、図3に示すような所定の帯域幅ft(周波数ft1〜周波数ft2)の送信信号(電波)Stをアンテナ共用器12及びアンテナ13を介して送信する。
【0039】
送信信号Stの帯域ftは、センシング共振器32の残響信号Ssの周波数範囲を含むように設定されている。例えば、センシング共振器32は、検出可能な温度範囲が0℃〜100℃であり、0℃のときには残響信号Ssの周波数がfs1で、温度の上昇に比例して周波数が上昇し、100℃のときには残響信号Ssの周波数がfs2とする。この場合、図3に示したように、子機3が出力可能な残響信号Ssの周波数範囲(周波数fs1〜周波数fs2)は、帯域ft(周波数ft1〜周波数ft2)に含まれる。帯域幅ftは、例えば数百kHzに設定する。
【0040】
図4に示すように、制御部16は、送信部11に送信信号Stを例えば10μ秒間送信させる。親機2が送信信号Stを送信している間、子機3は、センシング共振器32が検知した測定温度(検知量)に応じた共振周波数fsで共振して共振信号を送信する。前記のように、子機3が出力可能な残響信号Ssの周波数範囲は、親機2の送信信号Stの帯域ftに含まれる。また、親機2が送信する送信信号Stの信号強度(電波強度)に対して、子機3の残響信号Ssの信号強度(電波強度)は非常に弱い。これらの理由により、送信信号Stの送信中に、子機3が送信する共振信号を抽出するのは困難である。そのため、本発明では、残響信号Ssの周波数を検知する。
【0041】
制御部16は、送信信号Stが停止すると、続いて受信部14に制御信号を出力して、受信部14がアンテナ13及びアンテナ共用器12を介して残響信号Ssを受信可能な状態にする。また、制御部16は、測定部15に制御信号を出力して、残響信号Ssの周波数を測定可能な状態にする。
【0042】
子機3のセンシング共振器32は、送信信号Stが停止してもきわめて短時間、共振周波数fsで共振を継続する(残響する)。このとき、子機3は、共振周波数fsの残響信号Ssを、アンテナ31を介して送信する。センシング共振器32にはQ値の高いもの(例えばQ=10000程度)が使用されているが、子機3は共振器とアンテナだけの構成であり増幅器を備えていないため、残響信号Ssの送信時間はわずかである。例えば、図4に示すように、子機3は、一例として約10μ秒間残響信号Ssを出力するが、残響信号Ssは急速に減衰して環境雑音以下になる。そのため、親機2が残響信号を受信して周波数を測定できるのは5μ秒間程度と、わずかな時間である。
【0043】
受信部14は、アンテナ13及びアンテナ共用器12を介して残響信号Ssを受信すると、残響信号Ssを測定部15に出力する。
【0044】
測定部15は、残響信号Ssの周波数fsを測定して、測定結果を制御部16へ出力する。制御部16は、本発明の検知量変換部に相当し、記憶部18から読み出した所定の演算式またはチャートを用いて、測定部15が測定した周波数fsを対応する温度に変換する。そして、制御部16は、報知部19に、子機3が検知した温度を音声または画像により報知させる。なお、報知部19は、音声出力部や表示部の機能を備えている。
【0045】
なお、親機2において、アンテナ共用器12に代えて、アンテナ切替器を設けても良い。また、アンテナ共用器12やアンテナ切替器を設けずに、送信部11と受信部14の各々にアンテナを接続するように構成しても良い。
【0046】
次に、測定部15の具体的な構成について説明する。図5は、本発明の第1実施形態に係る遠隔検知装置の構成を示すブロック図である。図6(A)が残響信号と比較用信号の周波数の例を示す図である。図6(B)は、各周波数比較器の出力信号の例を示す表である。図7(A)は、周波数比較器に用いる位相周波数比較器のブロック図である。図7(B)は、位相周波数比較器の入出力信号のタイミングチャートである。
【0047】
第1実施形態に係る親機2Aは、残響信号Ssを受信すると、周波数がそれぞれ異なるn個の比較用信号S1〜Snと、残響信号Ssと、を個別に比較する構成である。
【0048】
図5に示すように、測定部15Aは、波形整形部21、基準信号発生部22、比較用信号生成部23、周波数比較部24、及び周波数判定部25を備えている。比較用信号生成部23は、n個の周波数発生器23−1〜23−nを備え、周波数比較部24は、n個の周波数比較器24−1〜24−nを備えている。
【0049】
測定部15Aは、制御部16から所定のタイミングで制御信号が入力されると、基準信号発生部22に基準信号を発生させる。この基準信号は、測定部15Aの各周波数発生器23−1〜23−nに入力される。周波数発生器23−1〜23−nは、入力された基準信号を用いて、それぞれ異なる周波数f1〜fnの比較用信号S1〜Snを発生させて、周波数比較器24−1〜24−nに出力する。
【0050】
測定部15Aの周波数発生器23−1〜23−nは、生成する比較用信号の周波数が予め設定されている。比較用信号の周波数は、子機3が出力可能な残響信号Ssの周波数範囲(周波数fs1〜周波数fs2)を含むようにすると良い。すなわち、f1<fs1<…<fs2<fnとすると良い。また、周波数発生器23−1〜23−nが生成する比較用信号S1,S2,S3〜S(n−1),Snは、f1<f2<f3<…<f(n−1)<fnで、周波数間隔が一定である。なお、x番目の比較用信号を比較用信号Sxと称する。周波数発生器23−1〜23−nは、制御部16からの制御信号が入力されると、n個の比較用信号を一斉に生成する。
【0051】
周波数発生器としては、分周器や、PLL,DDSなどの信号合成器を用いると良い。周波数発生器が出力する周波数が予め決まっており、信号を常に発生させていても良いので、残響信号Ssの受信時間が短くても、安定して比較用信号を出力することができる。周波数発生器としてPLLを使用する場合、例えば1kHzステップといった細かい周波数間隔で複数の比較用信号を生成できる。比較用信号の周波数は、例えば100.001MHz、100.002MHz、100.003MHz…のように設定すると良い。
【0052】
なお、残響信号Ssの受信時間は5μ秒程度と短時間であるため、残響信号Ssを受信すると周波数比較部24で直ちに周波数の比較ができるように、比較用信号生成部23は、送信信号Stを出力する前から比較用信号を発生して周波数比較部24に出力するように設定しておくと良い。
【0053】
波形整形部21は、受信部14から残響信号Ssが入力されると、残響信号Ssの波形を整形して、周波数比較器が動作するのに適した振幅の信号を出力する。波形整形部21は、周波数比較部24をデジタル回路で構成した場合には、残響信号Ss(アナログ信号)を論理レベルの信号に変換して出力する。残響信号Ssは周波数比較部24の各周波数比較器24−1〜24−nに入力される。
【0054】
周波数比較器24−1〜24−nは、残響信号Ssと、比較用信号S1〜Snと、の周波数をそれぞれ個別に比較して、比較結果に応じた信号を周波数判定部25に出力する。周波数比較器24−xは、残響信号Ssの周波数fsが比較用信号Sxの周波数fx未満(fs<fx)であれば信号0を出力し、残響信号Ssの周波数fsが比較用信号Sxの周波数fx以上(fs>fx)であれば信号1を出力する。
【0055】
周波数比較器をデジタル回路で構成する場合には、位相周波数比較器(Phase Frequency Comparator)や、排他論理和(Exclusive-OR)型位相比較器を使用するのが好ましい。また、周波数比較器をアナログ回路で構成する場合には、アナログ乗算器や周波数弁別回路の使用が好ましい。
【0056】
また、位相周波数比較器は、2つの入力信号の位相差に応じたデューティ比のパルス信号を出力し、位相差だけでなく周波数の違いも検出できるので、残響信号Ssの周波数をより確実に判定できる。また、広い位相・周波数範囲の信号に対して、速い応答速度で測定が可能となる。そのため、周波数比較器としては、特に位相周波数比較器の使用が好ましい。位相周波数比較器としては、例えば図7(A)に示すTC5081AP(株式会社東芝製)が知られている。
【0057】
周波数比較器24−1〜24−nとしてTC5081APを使用する場合には、Sin(7)端子に比較用信号を入力し、Rin(8)端子に残響信号Ssを入力すると、上記のようにPDout(3)端子から信号0または信号1が出力される。
【0058】
なお、図7(B)に示すように、PDout(3)端子の出力はハイインピーダンスになるので、これを防止するために、PDout(3)端子にローパスフィルタ(LPF)を接続すると良い。出力がハイインピーダンスになるのを防止するためには、PDout(3)端子にラッチ(Latch)回路を接続しても良く、その場合はローパスフィルタを使用した場合に特有の時定数の影響を受けない。
【0059】
周波数判定部25は、周波数比較器24−1〜24−nから出力された信号(信号0または信号1)に基づいて、残響信号Ssの周波数範囲を判定する。周波数判定部25は、残響信号Ssの周波数がどの比較用信号の周波数の間であるかを確認する。すなわち、各周波数比較器24−1〜24−nから出力された信号を確認して、信号0を出力した周波数比較器のうち比較用信号の周波数が最大の周波数比較器24−xと、信号1を出力した周波数比較器のうち比較用信号の周波数が最小の周波数比較器24−(x+1)と、を選出する。そして、これら2つの周波数比較器に入力された比較用信号の周波数を確認して、残響信号Ssの周波数範囲を判定する。
【0060】
例えば、図6(A)に示したように、残響信号Ssの周波数が、比較用信号S2の周波数f2と比較用信号S3の周波数f3の間である場合には、周波数比較器24−1〜24−nは図6(B)に示す信号を出力する。すなわち、周波数比較器24−1と周波数比較器24−2は信号0を出力し、周波数比較器24−3〜周波数比較器24−nは信号1を出力する。この場合、信号0を出力した周波数比較器のうち比較用信号の周波数が最大なのは周波数比較器24−2であり、入力された比較用信号S2の周波数はf2である。また、信号1を出力した周波数比較器のうち比較用信号の周波数が最小なのは周波数比較器24−3であり、入力された比較用信号S3の周波数はf3である。したがって、周波数判定部25は、残響信号Ssの周波数(範囲)fsが周波数f2〜周波数f3であると判定する。
【0061】
周波数判定部25は、残響信号Ssの周波数fsが周波数f2と周波数f3の間であるという情報を制御部16へ出力する。
【0062】
制御部16は、前記のように、周波数の情報を対応する温度範囲に変換して、子機で検知した温度範囲を報知部19に報知させる。
【0063】
このように、遠隔検知システム1では、図4に示した例の場合、送信信号Stを送信してから約15μ秒後には残響信号Ssの周波数がわかるので、親機2Aは、子機3で検知した温度をきわめて短時間で検知できる。
【0064】
以上のように、本発明の遠隔検知装置では、従来の構成のようにPLLの帰還ループが収束するのに必要な時間を要さず、子機3が送信する残響信号のように周波数を測定可能な時間が約5μ秒といった短時間の信号に対して、瞬時(数十サイクル以内)に残響信号の周波数(周波数範囲)を判定することができる。また、遠隔検知装置2は、比較用信号生成部23で発生させる複数の周波数、及び周波数比較部24の位相比較器の数に応じた分解能で、短時間に周波数を判定できる。
【0065】
なお、周波数比較器や周波数発生器として、すべてデジタル論理回路を用いて形成する場合には、PLD(Programmable Logic Device)を用いることで、遠隔検知装置を小型、軽量、安価に実現できる。
【0066】
また、周波数比較器としては、周波数弁別器も使用可能である。周波数弁別器は、無線周波数帯(数MHz〜数百MHz)で動作する、ある種のf−V変換器であり、ある帯域において、入力周波数に対して出力電圧が比例するので、周波数を容易に判定できる。
【0067】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る遠隔検知装置(親機)の構成を説明する。図8は、遠隔検知システムの概略構成を示すブロック図である。図9は、本発明の第2実施形態に係る遠隔検知装置のブロック図である。図10は、遠隔検知装置の送信信号及び受信信号のタイミングチャート、図11(A)及び図11(B)は、残響信号と比較用信号の周波数の例を示す図である。
【0068】
第2実施形態に係る親機2Bは、比較用信号生成部23で発生させる比較用信号Sxの周波数fxを変更できるように構成されている。
【0069】
図9に示す親機2Bは、図5に示した親機2Aの測定部15Aに、比較用信号設定部26が追加されている。比較用信号設定部26は、周波数発生器23−1〜23−nに発生させる比較用信号S1〜Snの周波数を設定(変更)する。また、周波数発生器23−1〜23−nは、比較用信号設定部26により比較用信号S1〜Snの周波数を変更できるように、プログラム可能な分周器、またはプログラム可能なPLLやDDSなどの信号合成器を使用している。その他の各部は、親機2Aと同じ構成である。以下の説明では相違点について説明する。
【0070】
測定部15Bは、比較用信号生成部23で発生させる複数の比較用信号S1〜Snの周波数(帯域)を比較用信号設定部26により変更できるので、任意の帯域での周波数測定が可能となる。例えば、遠隔検知システム1が親機2Bと複数の子機3−1〜3−nを備えている場合、各子機の残響信号Ssの帯域をそれぞれ重複せずに異なる値に設定する。そして、親機2Bから、各子機の残響信号Ssの帯域を含む送信信号St1〜Stnを切り換えながら順番に送信させることで、子機3−1〜3−nの検知量を短時間で取得できる。
【0071】
次に、親機2Bの動作の一例を説明する。図8に示す遠隔検知システム1Bは、親機2Bと子機3Aと子機3Bを備えた構成である。図11(A)に示すように、子機3Aの残響信号Ss1の周波数が変化する範囲を帯域fa(周波数f11〜周波数f1n)、子機3Bの残響信号Ss2の周波数が変化する範囲を帯域fb(周波数f21〜周波数f2n)とする。帯域faと帯域fbは重複しない。子機3Aは物品Aに取り付けられ、子機3Bは物品Bに取り付けられているものとする。なお、faやfbの帯域幅は100kHz〜数百kHzに設定し、faの中心周波数とfbの中心周波数の間隔は1MHz〜数MHzに設定すると良く、例えば、帯域faは101MHz帯、帯域fbは102MHz帯といった帯域に設定する。
【0072】
図10に示すように、親機2Bは、まず、帯域faの送信信号St1を10μ秒間送信し、子機3Aからの残響信号を受信可能な状態を10μ秒間継続する。続いて、帯域fbの送信信号St2を10μ秒間送信し、子機3Bからの残響信号を受信可能な状態を10μ秒間継続する。
【0073】
子機3Aは、送信信号St1により励振されて、送信信号St1が停止すると、物品Aの温度に応じた周波数fs1の残響信号Ss1を送信する。
【0074】
親機2Bの制御部16は、送信部11に送信信号St1の出力を停止させると、比較用信号設定部26に制御信号を出力する。比較用信号設定部26は、制御信号が入力されると、周波数発生器23−1〜23−nにそれぞれ周波数f11〜周波数f1nの比較用信号S11〜S1nを生成させる信号を出力する。周波数発生器23−1〜23−nは、比較用信号設定部26により設定された周波数の比較用信号S11〜S1nを生成して出力する。周波数比較部24は、比較結果に応じた信号を出力し、周波数判定部25は、残響信号Ss1の周波数fs1が周波数f12と周波数f13の間であると判定して、制御部16に判定結果を出力する。
【0075】
また、親機2Bの制御部16は、送信部11に送信信号St2の出力を停止させると、周波数f21〜周波数f2nの比較用信号S21〜S2nを生成させて、上記処理と同様に処理を行って、子機3Bからの残響信号Ss2の周波数fs2が周波数f23と周波数f24の間であると判定する。
【0076】
そして、制御部16は、上記の各周波数を対応する温度に変換して、報知部19に音声または表示により子機3Aと子機3Bで検知した温度を報知させる。
【0077】
以上のように、第2実施形態に係る遠隔検知装置では、複数の子機の検知量を短時間で連続的に測定できる。
【0078】
次に、上記構成において、残響信号Ssと複数の比較用信号とを比較する毎に、比較用信号生成部23で発生させる複数の比較用信号の帯域幅と周波数間隔を狭くする(絞り込む)ことで、残響信号Ssの周波数の高精度な測定が可能となる。
【0079】
例えば、図11(A)に基づいて説明したように、残響信号Ss1の周波数fs1が周波数f12と周波数f13の間であると判定した場合、比較用信号設定部26は以下のような信号を出力する。すなわち、図11(B)に示すように、比較用信号設定部26は、制御部16からの制御信号が入力されると、周波数f12〜周波数f13をn等分した比較用信号S12、S122〜S12(n−1)、S13を周波数発生器23−1〜23−nにそれぞれ生成させる信号を出力する。この場合、親機2は、残響信号Ss1の周波数fs1が周波数f124と周波数f125の間であると判定する。
【0080】
このような処理を繰り返すことで、本来は測定精度の低い小規模な回路により、高精度な測定が可能となる。
【0081】
なお、上記の説明では、送信信号を送信する子機に応じて比較用信号生成部23で発生させる比較用信号の周波数を変更したが、これに限るものではなく、比較用信号の周波数を設定する帯域を、複数の子機が送信する残響信号の帯域を含むように設定することも可能である。例えば、図11(A)に示した構成では、比較用信号が帯域faと帯域fbを含むように、つまりf11〜f2nをn等分した各周波数を比較用信号の周波数とすることも可能である。また、この場合、図11(A)と図11(B)に示したように、複数回測定を行い、比較用信号の帯域幅と周波数間隔を、測定する毎に狭くすると良い。これにより、残響信号Ssの周波数の精度を高くすることができる。
【0082】
なお、比較用信号設定部26を設けずに、周波数発生器23−1〜23−nに対して制御部16が比較用信号の周波数を直接設定する構成であっても良い。
【0083】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係る遠隔検知装置(親機)について説明する。図12は、本発明の第3実施形態に係る遠隔検知装置のブロック図である。
【0084】
第3実施形態に係る親機2Cは、残響信号Ssの周波数を別の周波数に変換して測定部に出力するように構成されている。
【0085】
図12に示す親機2Cは、図5に示した親機2Bの受信部14Bの構成が変更されている。その他の各部は、親機2Bと同じ構成である。以下の説明では相違点について説明する。
【0086】
受信部14Cは、発振周波数設定部141、局部発振器142、及び混合器143を備えている。
【0087】
発振周波数設定部141は、局部発振器142が出力する局部発振周波数fkを、任意の値に設定する。
【0088】
局部発振器142は、基準信号発生部22が出力する基準信号を用いて、発振周波数設定部141が設定した局部発振周波数fkの信号を発生して、混合器143に出力する。
【0089】
混合器143は、アンテナ共用器12が出力した(受信)周波数fsの残響信号Ssを、局部発振器142が出力した局部発振周波数fkの信号を用いて、残響信号Ssを中間周波数fssの信号に変換して波形整形部21に出力する。中間周波数fss=fs−fkである。
【0090】
混合器143は、例えば、周波数を10MHz〜100MHzに変換して比較を行う。これは、1GHz程度の周波数の比較を高速で行う比較器はあまり一般的ではないからである。残響信号の周波数(受信周波数)fssが1.1GHzの場合、局部発振周波数fkを1.0GHzとすると、中間周波数fssは100MHzである。
【0091】
親機2をこのような構成にすることで、残響信号Ssの周波数が、周波数比較部24で生成する比較用信号の周波数範囲(帯域)外や、周波数比較部24が動作可能な周波数帯域外であっても、周波数変換によって周波数比較部24で生成する比較用信号の周波数範囲内や、周波数比較部24が動作可能な周波数帯域内に、残響信号の周波数を変換することができる。これにより、親機2Cが測定可能な帯域(周波数範囲)を拡大できる。
【0092】
また、第2実施形態で説明したように、比較用信号設定部26により、比較用信号生成部23に発生させる比較用信号の帯域を絞り込みながら所定時間毎に複数回発生させることができるので、比較用信号設定部26と受信部14Cの組み合わせにより、残響信号Ssの帯域が広範囲であっても高精度な測定が可能となる。
【0093】
また、発振周波数設定部141により、局部発振器142の周波数を任意に設定して周波数変換するように構成することで、任意の周波数帯における測定が可能となる。
【0094】
なお、発振周波数設定部141を設けずに、局部発振器142の局部発振周波数の値を固定値となるように構成しても良い。この構成でも、上記の効果が得られる。
【0095】
また、発振周波数設定部141を設けずに、制御部16が局部発振器142に局部発振周波数の値を直接設定するように構成しても良い。
【0096】
なお、親機2Cにおいて、比較用信号設定部26を設けずに、周波数発生器23−1〜23−nが生成する比較用信号の周波数を予め設定しておくことも可能である。
【0097】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態に係る遠隔検知装置(親機)を説明する。図13は、本発明の第4実施形態に係る遠隔検知装置のブロック図である。
【0098】
第4実施形態に係る親機2Dは、周波数の測定時に雑音信号の影響を受けていないか否かを判定できるように構成されている。
【0099】
図13に示す親機2Dは、図12に示した親機2Cの測定部15Bに状態判定部27が追加されている。また、周波数判定部25に代えて状態判定部27が制御部16に周波数測定結果を出力する。その他の各部は、図12に示した親機2Cと同じ構成である。以下の説明では相違点について説明する。
【0100】
状態判定部27は、周波数判定部25の出力を時間の経過に伴い、出力が安定しているか、または変動しているかを監視して、子機3が送信した残響信号Ssであるか、または周囲の機器から発生するノイズ等の雑音信号であるかを判定(監視)し、判定結果(監視結果)を制御部16に出力する。雑音信号は、時間の経過に伴い周波数が頻繁に上下する信号である。
【0101】
状態判定部27は、残響信号Ssの周波数を判定可能な受信時間である5μ秒間において、周波数判定部25が判定した周波数の値が常に同じ値の場合には、残響信号Ssを測定していると判断して、周波数の値を制御部16に出力する。一方、周波数判定部25が判定した周波数の値が常時変化する場合には、残響信号Ssではなく雑音信号を測定していると判断して、雑音信号の影響で残響信号Ssの周波数を測定できない旨を制御部16に出力する。制御部16は、入力された信号(情報)に応じて、報知部19(不図示)に周波数範囲または周波数を測定できない旨を報知させる。
【0102】
したがって、残響信号と雑音信号のいずれを測定しているかを判別できるので、高信頼性とすることができる。
【0103】
なお、周波数比較部24の各周波数比較器は、残響信号Ssの1周期毎に周波数の判定が可能である。残響信号Ssの周波数が100MHzの場合、1周期が0.01μ秒なので、親機2Dは5μ秒間において最大500回周波数を判定することが可能である。
【0104】
なお、周波数比較部24では、短時間に周波数を複数回判定できるので、周波数の判定結果の大半が同じであり、数回〜十数回程度異なる場合には、残響信号Ssの周波数を正確に判定できていると判定することも可能である。この場合には、異なる値の回数が何回程度であると、雑音信号の影響を受けずに残響信号Ssの周波数の周波数を測定できているものとするかは、実験等を行って決定すると良い。
【0105】
なお、状態判定部は、図5に示した親機2Aや図9に示した親機2Bにも、当然設けることが可能である。
【0106】
[第5実施形態]
次に、本発明の第5実施形態に係る遠隔検知装置(親機)を説明する。図14は、本発明の第5実施形態に係る遠隔検知装置のブロック図である。
【0107】
第5実施形態に係る親機2Eは、残響信号Ssの周波数を1つの比較用信号と比較する構成である。親機2Eは、不図示の子機3に対して所定の周期で同じ帯域の送信信号を送信し、残響信号Ssを受信する毎に比較用信号の周波数を変更し、前回と異なる周波数の比較用信号と残響信号Ssの周波数を比較する。これをn回繰り返すことで、残響信号Ssの周波数を判定する。
【0108】
図14に示す親機2Eは、図5に示した親機2Aの測定部15Aにおいて、比較用信号生成部23と周波数比較部24の構成が変更されている。また、周波数判定部25と比較用信号設定部26の動作が異なる。その他の各部は、親機2Aと同じ構成である。以下の説明では相違点について説明する。
【0109】
比較用信号生成部23Eは、1つの周波数発生器23−1を備え、周波数比較部24は、1つの周波数比較器24−1を備えている。比較用信号設定部26は、周波数発生器23−1に対して、周波数が毎回異なる比較用信号を生成させる。周波数判定部25Eは、周波数比較器24−1が出力した判定結果を制御部16に出力する。なお、親機2Eには周波数判定部25Eを設けずに、周波数比較器24−1の出力を制御部16に直接入力するように構成しても良い。
【0110】
親機(遠隔検知装置)2Eは、以下のように動作する。一例として、図6(A)に示したように、残響信号Ssの周波数fsがf2とf3の間である場合について説明する。図15は、本発明の第5実施形態に係る遠隔検知装置の動作を説明するためのフローチャートである。なお、以下の説明において、カウンタhは、制御部16が内蔵している。
【0111】
ユーザは、子機3を取り付けた物品の温度を知るために親機2Eの操作部17を操作する。制御部16は、操作部17の操作を検出すると(S1)、カウンタhの値をh=1にリセットする(S2)。そして、送信部11に送信信号Stを一定時間(例えば10μ秒間)送信させ(S3)、送信信号Stの送信が完了すると、受信部14に残響信号Ssを受信させ、測定部15Eに測定を開始させる(S4)。
【0112】
測定部15Eの比較用信号設定部26Eは、カウンタhを確認し(S5)、カウンタの値に対応する周波数の比較用信号を生成する(S6)。例えば、カウンタがh=1のときには周波数発生器23−1に対して、周波数f1の比較用信号S1を生成させる。また、h=xのときには周波数発生器23−1に対して、周波数fxの比較用信号Sxを生成させる。
【0113】
周波数比較器24−1は、残響信号Ssと比較用信号S1の周波数を比較し(S7)、比較結果に応じた信号を出力する(S8)。比較用信号がS1の場合、残響信号Ssの方が周波数は高いので、信号0を出力する。一方、比較用信号がS3の場合、残響信号Ssの方が周波数は低いので、信号1を出力する。周波数判定部25は、判定結果を制御部16に出力する。
【0114】
制御部16は判定結果が入力されると、カウンタhの数と判定結果とを関連づけて記憶する(S9)。また、制御部16は、カウンタh=nでなければ(S10)、カウンタhの数を1だけ上昇させて(S11)、カウンタh=nになるまでステップS3〜ステップS11の処理を繰り返し行う。
【0115】
制御部16は、ステップS10において、カウンタh=nであれば、最後に入力された信号0のカウンタhの数と、最初に入力された信号1のカウンタhの数と、を確認する。また、比較用信号設定部26Eに設定した比較用信号の初期値及び周波数間隔の情報を確認する(S12)。そして、これらの情報に基づいて残響信号Ssの周波数範囲を判定する(S13)。制御部16は、判定した残響信号Ssの周波数範囲を報知部19(不図示)に報知させる(S14)。
【0116】
このような構成により、子機の残響信号の受信時間がわずかであっても、親機は繰り返し残響信号Ssを送信させることで、センサの検知量を取得できる。
【0117】
なお、上記の処理において、ステップS10ではカウンタh=nであるか否かを判定するが、別の処理を行うことも可能である。例えば、周波数比較器24−1の出力が1であれば、つまり、比較用信号が残響信号Ssよりも周波数が低くなれば、ステップS12の処理を行うように設定すると良い。このように設定することで、周波数の比較をn回行わなくても周波数の範囲を判定できることが多くなるので、処理時間を短縮できる。
【0118】
[その他の実施形態]
第5実施形態の説明では、親機2Eが周波数発生器23−1と周波数比較器24−1を1つずつ備えた構成について説明したが、図5に示したように、周波数発生器と周波数比較器をそれぞれn個備えた構成にすることも可能である。この構成においても、異なる周波数の比較用信号を一定時間毎に発生させると良い。例えば、n個の周波数発生器に、1回目にはf1〜fnの比較用信号を発生させ、2回目にはf(n+1)〜f(2n)の比較用信号を発生させ、m回目にはf(m+1)〜f(mn)の比較用信号を発生させることで、mn個の比較用信号と残響信号Ssとを比較できる。
【0119】
このとき、周波数判定部25は、各周波数比較器24−1〜24−nから出力された信号を確認し、信号が0から1に切り替わる点において隣接する2つの周波数比較器の番号と、何回目に切り替わったかの情報と、を制御部16へ出力する。すなわち、信号0を出力した周波数比較器のうち比較用信号の周波数が最大の周波数比較器24−xを特定する情報と、信号1を出力した周波数比較器のうち比較用信号の周波数が最小の周波数比較器24−(x+1)を特定する情報と、何回目に検出したかの情報と、を制御部16に出力する。
【0120】
制御部16は、x回目に周波数比較器24−xと、周波数比較器24−(x+1)とが出力した比較用信号の周波数を確認することで、残響信号Ssの周波数fs(周波数範囲)を判定する。
【0121】
このように構成することで、周波数がそれぞれ異なるmn個の比較用信号を生成できるので、残響信号Ssの帯域が広い場合でも、短時間で周波数を判定できる。また、残響信号Ssの帯域が狭い場合には、比較用信号の周波数間隔を狭くすることで、残響信号Ssの周波数を短時間で高精度に判定できる。
【0122】
また、図14に示した親機2Eには、第3実施形態のように、残響信号Ssの周波数を変換する構成(局部発振器142と混合器143)や変換周波数を任意の値にする構成(発振周波数設定部141)を設けることが可能である。これにより、第3実施形態と同様、測定できる周波数範囲(帯域)を広げることができる。
【0123】
また、図14に示した親機2Eには、第4実施形態のように、状態判定部を設けることが可能である。これにより、親機が残響信号Ssを測定する際に、雑音信号の影響を受けているか否かを判定できる。
【0124】
また、第1実施形態乃至第5実施形態の説明では、子機がセンシング共振器32を備えた構成を説明したが、これに限るものではなく、子機は判定の周波数で共振・残響する共振器を備えた構成であっても良い。この場合、例えば第2実施形態で説明したように、複数の子機を用意し、各子機の残響信号Ssの周波数を所定の間隔で離して設定しておく。また、各子機を、普段携行する物品等に取り付ける。このように構成することで、物品の検出や管理ができ、例えば忘れものの確認ができる。
【符号の説明】
【0125】
1,1B…遠隔検知システム
2,2A,2B,2C,2D,2E…遠隔検知装置(親機)
3,3A,3B…RFIDタグ(子機)
14,14B,14C…受信部
15,15A,15B,15C,15E…測定部
16…制御部
22…基準信号発生部
23,23E…比較用信号生成部
23−1〜23−n…周波数発生器
24…周波数比較部
24−1〜24−n…周波数比較器
25,25E…周波数判定部
26,26E…周波数設定部
27…状態判定部
32…センシング共振器
141…発振周波数設定部
142…局部発振器
143…周波数変換部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
RFIDタグへ電波を送信し、該RFIDタグが送信する残響信号を受信する遠隔検知装置であって、
前記残響信号の周波数を含む所定の周波数帯域幅の送信信号を送信する送信部と、
前記残響信号を受信する受信部と、
前記残響信号の周波数を含む周波数帯域の信号であって、周波数がそれぞれ異なる複数の比較用信号を生成する比較用信号生成部と、
前記残響信号の周波数と前記複数の比較用信号の周波数とを比較して、比較結果を出力する周波数比較部と、
前記周波数比較部の比較結果に基づいて前記残響信号の周波数範囲を判定する周波数判定部と、
を備えたことを特徴とする遠隔検知装置。
【請求項2】
前記比較用信号生成部は、前記複数の比較用信号を一斉に生成し、
前記周波数比較部は、前記残響信号の周波数と前記複数の比較用信号の周波数とを個別に比較する、請求項1に記載の遠隔検知装置。
【請求項3】
前記送信部は、前記送信信号を繰り返し送信し、
前記比較用信号生成部は、前記受信部が前記残響信号を受信する毎に、前回と異なる周波数の比較用信号を生成する、請求項1または2に記載の遠隔検知装置。
【請求項4】
前記周波数比較部は、前記比較用信号と前記残響信号の位相差に応じたデューティ比のパルス信号を出力する位相周波数比較器を備えた、請求項1乃至3のいずれかに記載の遠隔検知装置。
【請求項5】
前記複数の比較用信号の周波数を設定する比較用信号設定部を備えた、請求項1乃至4のいずれかに記載の遠隔検知装置。
【請求項6】
前記受信部は受信した残響信号の周波数を別の周波数に変換する周波数変換部を備えた、請求項1乃至5のいずれかに記載の遠隔検知装置。
【請求項7】
前記周波数変換部は、発振周波数が可変の局部発振器と、前記局部発振器の発振周波数を設定する発振周波数設定部と、前記局部発振器の出力信号と前記残響信号とを混合する混合器と、を備えた、請求項6に記載の遠隔検知装置。
【請求項8】
前記周波数判定部が判定する残響信号の周波数の変動を監視して、その監視結果を出力する状態判定部を備えた請求項1乃至7のいずれかに記載の遠隔検知装置。
【請求項9】
前記周波数判定部が判定した周波数範囲を、前記RFIDタグがセンサで検知した検知量に変換して出力する検知量変換部を備えた請求項1乃至8のいずれかに記載の遠隔検知装置。
【請求項10】
アンテナと、このアンテナに共振器として接続された表面弾性波共振子と、を備えたRFIDタグと、
請求項1乃至9のいずれかに記載の遠隔検知装置と、
を備えた遠隔検知システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−180799(P2011−180799A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−43707(P2010−43707)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】