適応合焦する眼球外視力人工器官
要約
視力人工器官は、眼球外レンズと連通したアクチュエータを含む。アクチュエータは、レンズの焦点距離を変化させる焦点調節刺激を与える。距離計が物体への距離を推定し、その推定距離をコントローラに与える。コントローラは、アクチュエータに推定距離に基づいて焦点調節刺激を発生させる。
視力人工器官は、眼球外レンズと連通したアクチュエータを含む。アクチュエータは、レンズの焦点距離を変化させる焦点調節刺激を与える。距離計が物体への距離を推定し、その推定距離をコントローラに与える。コントローラは、アクチュエータに推定距離に基づいて焦点調節刺激を発生させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は視力人工器官に関し、特に、眼球外の視力人工器官に関する。
【背景技術】
【0002】
人は、日常生活を営む上で一般に眼から様々な距離にある物体を眺める。こうした物体に選択的に焦点を合わせるには、眼の水晶体の焦点距離を変更しなければならない。健康な眼では、これは水晶体に物理的に接合された毛様体筋の収縮により達成される。毛様体筋の収縮に合わせて水晶体が変形するので、その焦点距離が変化する。水晶体をこうした様態で選択的に変形させることにより、眼から異なる距離に位置する物体に焦点を合わせることができる。異なる距離に位置する物体に選択的に焦点を合わせるこの機能は、「遠近調節」と呼ばれる。
【0003】
人が老化するにつれ、水晶体はその可塑性を失っていく。結果的に、水晶体を十分に変形させて異なる距離に位置する物体に焦点を合わせることが徐々に困難になる。この機能低下を補償するには、異なる距離にある物体への焦点合わせのための様々な光学補正を行うことが必要である。
【0004】
様々な光学矯正を施す一つのアプローチには、幾つかの眼鏡を持ち歩いて必要なときにそれらを掛け替えるものがある。例えば、読書用の眼鏡と運転用の遠距離眼鏡を別々に持ち歩くこともできよう。これは複数の眼鏡を持ち歩く必要があることと、眼鏡を頻繁に交換する必要があることから不便である。
【0005】
二焦点レンズは同一レンズに2つの異なる光学矯正を組み込んでいるので、遠近調節の助けとなる。このレンズの下方部分は、読書や他の近距離作業に適した矯正をもたらすように研磨されており、一方、レンズの残り部分は遠見視力用の矯正をもたらすように研磨されている。物体を眺めるには、二焦点レンズの使用者は頭を動かすだけで、注視対象の物体と瞳孔との間の光線を、その物体の距離に適した光学矯正を行うレンズ部分を通過させることができる。
【0006】
異なる光学矯正が同一レンズに組み込まれている二焦点レンズの発想は一般化されており、異なる3つの光学矯正を同一レンズに組み込んだ三焦点レンズと、連続した視力矯正を同一レンズに組み込んだ連続勾配レンズとを含むようになっている。しかし、二焦点レンズと同様に、こうした多焦点レンズを用いた異なる距離範囲に関する光学矯正は、瞳孔とレンズとの相対運動に大きく依拠している。
【0007】
発明の概要
本発明は、異なる距離にある複数の物体に焦点を合わせる患者の能力を回復するための視力人工器官を提供する。前記視力人工器官は、その焦点距離が自動的に変化可能なレンズと、患者が焦点を合わせたいと望む物体までの距離を推定する、該レンズに接続された距離計とを含む。
【0008】
一実施形態では、前記視力人工器官の前記可変焦点レンズは、焦点調節刺激に応答して変化する屈折率を持つ。前記レンズと連通したアクチュエータは、前記距離計からの推定距離に基づいて必要な前記の焦点調節刺激を与える。前記距離計と前記アクチュエータとに接続されたコントローラは、前記アクチュエータに、前記推定距離に基づいて焦点調節刺激を発生させる。
【0009】
変化するのは屈折率なので、前記視力人工器官は、前記レンズ又はその一部を機械的に移動させる必要なしで前記レンズの前記焦点距離を制御できる。従って、前記視力人工器官は、運動部分が無く且つ可動システムに関連した複雑さ及び過大な電力消費が無い可変焦点距離レンズを提供する。
【0010】
前記視力人工器官の一実施形態では、前記レンズは、屈折率が可変のネマチック液晶又は他の材料を収容したチャンバを含む。ネマチック液晶の屈折率は印加された電磁界に応答して変化する。屈折率のこの変化は、前記レンズの前記焦点距離の変化を引き起こす。
【0011】
前記レンズの前記アクチュエータは、可変電圧源と、該可変電圧源及び前記レンズの両方に接続された1つ又複数の電極とを含むことができる。或いは、前記アクチュエータは、可変電流源と、該可変電流源及び前記レンズに接続された1つ又複数のコイルとを含むことができる。前記アクチュエータは前者の場合には電界を、後者の場合には磁界を発生し、何れの場合もこれが前記ネマチック液晶と相互作用してその屈折率を選択的に変化させる。
【0012】
前記レンズの前記屈折率は空間的に均等でなくてもよい。前記レンズの異なる局部域に接続された複数の作動要素を設けることにより、前記屈折率はこれら局部域ごとに変化させることができる。これによって、前記レンズは、その物理的形状からは概ね独立した効果的な光学的形状を持つことができる。凸レンズを作成するには、例えば、ネマチック液晶を満たした平面状チャンバにおいて円周部よりは中央部分に強い電界を印加すればよい。これにより、前記屈折率は前記円周部に比べて前記中央部分で大きく変化する。空間的に不均等な屈折率を備えたレンズを実現するには、該レンズの異なる位置に複数の電極を配置すればよい。本発明の一様態では、これら電極は同心電極である。その場合、前記レンズの中心からの距離の関数として前記屈折率を変化させることができる。
【0013】
代替的な一実施形態では、前記屈折率を、複数の空間変数の関数することができる。例えば、前記電極を、前記レンズの表面上に2次元グリッドで配置してもよい。こうしたグリッドは極グリッドでもよいし、直線グリッドでもよい。その主たる機能は、角膜、水晶体、及び眼球媒質の異常による眼の波面収差を修正することである。
【0014】
場合によっては、患者の視力を十分に矯正するほど屈折率を変化させられないことがある。こうした場合、前記レンズには、像に焦点を合わせるため移動可能な1つ又複数のレンズ要素を含めてもよい。こうしたレンズは前記レンズ要素を移動するためのモータも含む。
【0015】
或いは、前記レンズが基準線曲率(原語:baseline
curvature)を持つようにし、且つネマチック液晶又は屈折率を変化させられる材料で満たしてもよい。前記基準線曲率を用いて大まかな修正が可能であり、前記レンズ材料の屈折率を局地的に変化させることで微調整できる。
【0016】
前記視力人工器官の前記距離計は、物体までの距離を推定するのに眼内の構造物の動作に依存する必要がない。例えば、前記距離計は自動焦点システムを含むこともできる。自動焦点システムの一例は、赤外線ビームで物体を照射する赤外線送信機と、該物体からの反射ビームを受信する赤外線受信機と、該反射ビームに基づいて前記物体までの距離を推定する、前記赤外線受信機に接続されたプロセッサとを含む。しかし、他の自動焦点システムも前記視力人工器官で使用するため容易に適合可能である。
【0017】
前記自動焦点システムによる焦点合わせ及び焦点維持を補助するためには、前記自動焦点システムに接続されたフィードバックループを含めるのがしばしば望ましい。フィードバックループの一例は、前記レンズの後方に設けた第1及び第2小型レンズを含む。それぞれの小型レンズは、該小型レンズの後方にある対応した光検出器と光学連通している。前記小型レンズと前記対応した光検出器との間の距離は、前記2つの小型レンズの焦点距離の間である。
【0018】
距離計の種類にかかわらず、患者が前記レンズの焦点を微調整できるようにオプションの手動焦点調節装置を設けるのが便利である。手動焦点調節装置を使えば、患者は、前記自動焦点システムがもたらす信号の僅かな不正確さを正しく補正できる。手動焦点調節装置が備わっていれば、実際には前記距離計は省くことができる。従って、本発明の更に別の実施形態では、本装置は距離計の代わりに手動焦点調節装置を含む。
【0019】
本発明の上記及びその他の特徴及び利点は、次の詳細な説明及び添付図面から明らかとなるはずである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1を参照すると、レンズ12を適応合焦させる眼球外の視力人工器官10はフレーム13に取り付けられており、従来の眼鏡と同じように掛けられるものである。図2に示すように、レンズ12は、コントローラ16によりアクチュエータ14に与えられる焦点調節信号に応答してその屈折率を変化させられるレンズである。アクチュエータ14に与えられる焦点調節信号の性質により、屈折率が変化する程度が制御される。一方、コントローラ16は、その制御信号を距離計18により与えられる距離信号に基づいて発生する。
【0021】
コントローラ16は、典型的には命令が内部に符号化されたマイクロコントローラである。これらの命令はソフトウェアまたはファームウェアとして実装できる。しかし、これら命令は、例えば特定用途向けICなどのハードウェアに直接符号化しても良い。マイクロコントローラに与えられる命令は、距離計18から受信する注視対象20までの距離を示すデータを受信するための命令と、焦点調節信号を得るためそのデータを処理するための命令とを含む。この焦点調節信号はレンズの屈折率を変化させて、注視対象20の像の焦点を網膜に合わせる。
【0022】
電源(図示しない)が、コントローラ16、距離計18、及びアクチュエータ14に電力を供給する。単一の電源がこれら3つの構成要素全てに電力を供給できる。しかし、この視力人工器官10は、電力を必要とするこれら構成要素の任意組合せのために別個の電源を含んでいてもよい。適切な電源としては充電式電池がある。
【0023】
レンズ及びアクチュエータ
レンズ12は、アクチュエータ14に応答する全体的な焦点距離を備えた1つ又は複数の屈折要素を任意に組み合わせたものである。
【0024】
幾つかの実施形態では、レンズ12は、その屈折率が印加した電界に応答して変化するネマチック液晶に光を通過させる。その場合、アクチュエータ14は、レンズ12と電気的に連通した1つ又は複数の電極を含む。
【0025】
レンズ12の一実施形態では、図3の分解組立図に示したように、ネマチック液晶を満たした第1及び第2湾曲チャンバ38a及び38bが透明プレート40で分離されている。この実施形態では、アクチュエータ14は、湾曲チャンバ38a及び38bそれぞれの外表面に配置された2つの透明電極42a及び42bに接続された可変電圧源41を含む。可変電圧源41は、コントローラ16からの命令に応答して可変電圧を発生する。第1及び第2透明外層44a及び44bが、それぞれ電極42a及び42bを覆っている。
【0026】
可変電圧源41が電圧を印加すると、第1及び第2電極42a及び42bがネマチック液晶において電界を発生する。この電界はネマチック液晶のディレクタの方向を変えることとなり、結果的にその屈折率が変化する。この種のレンズ集成体は米国特許第4,190,330号に記載されており、その内容はここに引用して援用する。
【0027】
図4に示した別の実施形態では、レンズ12は、ネマチック液晶を満たした薄肉チャンバ46を含んでいる。この場合、アクチュエータ14は可変電圧源48と、薄肉チャンバ46の対向平面に設けられた第1及び第2組50a及び50bの電極52a乃至52cとを含む。電極52a乃至52cそれぞれはコントローラ16により個別にアドレス可能である。第1組50aからの電極52aと第2組の電極50bからの対応した電極間に電圧を維持すると、これら電極に隣接したネマチック液晶の局部領域において電界が発生する。この電界はディレクタの方向を変えるので、その領域内で屈折率を変化させる。結果として、レンズ12の異なる点において屈折率を変化させることができる。
【0028】
図4は、同心電極52a乃至52cを備えたレンズ集成体を示す。この種のレンズ集成体は米国特許第4,466,703号に記載されており、その内容はここに引用して援用する。この実施形態では、レンズ12の中心からの距離の関数として屈折率を変化させることができる。しかし、個別アドレス可能電極52a乃至52cは、レンズ12の表面上に2次元アレーで配列してもよい。この場合、屈折率は2つの空間変数の関数として変化させうる。電極52a乃至52cのグリッドは図4に示したような極グリッドでもよいし、図5に示したような直線グリッドでもよい。電極52a乃至52cはグリッド上に均等に配置させてもよいし、レンズ12の一定領域には疎に配置し、レンズ12の他の領域にはより密に配置させてもよい。
【0029】
ネマチック液晶の屈折率の変化には限界がある。一旦、ネマチック液晶内の全てのディレクタが分極されてしまうと、発生した電界の大きさを強めてもそれ以上何の効果も得られない。この状態のネマチック液晶は飽和状態にあるという。ネマチック液晶の飽和点を超えて焦点距離を変化させるには、微小機械モータ(図示しない)によって互いに相対移動する1つ又は複数のレンズ要素をレンズ12に含めることができる。
【0030】
或いは、レンズ12が基準線曲率を持つようにし、且つレンズ12をネマチック液晶で満たしてもよい。基準線曲率を用いて大まかな修正が可能であり、レンズ材料の屈折率を局地的に変化させることで微調整できる。
【0031】
別の実施形態では、レンズ12は図5に示したように多数の小型レンズからなり、それぞれが固有の基準線曲率を持ち、且つネマチック液晶で満たされている。又、個別アドレス可能電極がこれら小型レンズそれぞれに接続されている。この実施形態では、レンズの曲率及び屈折率を2つの空間変数の関数として局所的に変化させうる。
【0032】
しかし、他の実施形態では、レンズ12は、印加した磁界に反応してその屈折率が変化する材料に光を通過させてもよい。その場合、アクチュエータ14は、レンズ12と磁気的に連通した通電コイルなどの磁界源である。
【0033】
更に別の実施形態では、レンズ12はカメラのズームレンズに似たレンズである。こうしたレンズ12は、互いに相対的に移動する1つ又は複数の屈折要素を含む。こうした場合、アクチュエータ14はこれらレンズ要素を移動させる小型電気モータである。
【0034】
他の実施形態は、変形可能な液体充満レンズバッグを屈折要素として備えたレンズ12を含む。これらレンズバッグでは内部の流体の量がその形状を制御し、従ってレンズバッグの焦点調節特性を制御する。これら実施形態では、流体のレンズバッグからの出し入れには、引用して本明細書に援用する2004年7月21日付けの同時係属中の米国特許出願第10/895,504号に記載されている種類の人工筋アクチュエータを使用できる。或いは、こうした人工筋アクチュエータを適合して、レンズの変形又は移動に使用できる。
【0035】
図6を参照すると、レンズ12は様々な物体の像を含む視野22を画定する。これら物体像の1つは、レンズ装着者が焦点を合わせようとする注視対象20の像である。レンズ12の正しい焦点合わせは2つの段階を含む。第1の段階は、焦点を合わせる目標領域24を視野22内で特定することである。正しく特定されていれば、この目標領域24は注視対象20の像を含む。目標領域24を特定すると、次の段階は、目標領域24内の注視対象20までの距離の割り出しである。この第2段階は距離計18により実行される。第1段階は、図7に示したように距離計18と通信するオプションの目標識別システム26により実行される。
【0036】
アクチュエータとレンズの別の組合せは、引用して本明細書に援用するGich, et al., "High-coercivity ultralight Transparent Magnets(高保磁度且つ超軽量の透明磁石),"
Applied Physics Letters, vol. 82 (24), pp. 4307-4309 June 16, 2003に記載された透明磁石を含むことができる。こうした磁石では、エーロゲル内の鉄製ニードルが、磁界に反応する配向を備えている。これらニードルはエーロゲルの光学特性に影響を与える。結果として、磁界を印加することでエーロゲルを組み込んだレンズの光学特性を制御できる。
【非特許文献1】Gich, et al., "High-coercivity ultralight TransparentMagnets(高保磁度且つ超軽量の透明磁石)," Applied PhysicsLetters, vol. 82 (24), pp. 4307-4309 June 16, 2003
【0037】
ニードルの配向は異なる偏光に対して異なった反応を示すので、透明磁石を組み込んだレンズを使用すれば眼に入る光の偏光状態を適応制御できる。
【0038】
この種の透明磁石を眼内レンズで用いてもよい。その場合、フレームは、眼内レンズ内で鉄製ニードルの配向を適応制御するのに使用可能な磁界源を含むことができる。こうした制御には眼内レンズの屈折特性の制御又は眼内レンズの偏光透過特性の制御が含まれる。
【0039】
距離計
距離計18の一例としては自動焦点カメラで使用されるものがある。こうした距離計は放射線ビームを送出し、反射したビームを検出し、その反射ビームに基づいて物体までの距離を推定する。
【0040】
距離計18の出力はコントローラ16に直接送信できる。この場合、目標領域は、視野の例えば中央スポットのような所定の領域と推定される。この種の距離計18は、それが装着されるフレーム13の姿勢すなわち配向のみに基づいて注視対象19までの距離を測定するので、「姿勢依存」距離計18である。
【0041】
姿勢に依存する距離計は任意の放射を使用できるが、便利な例としては電磁放射及び音響放射が含まれる。電磁放射の場合は赤外線波長が適しており、それは赤外線波長の伝播特性及び適切な送信機や送信機が容易に入手可能だからである。音響放射の場合は、超音波放射について同じことが言える。
【0042】
図8に示した姿勢依存距離計18の別の例は、互いからずれた位置にあるセンサ28a及び28b又は受信機から得られる2つの測定値間の視差差を利用する。視野22内の特定領域24に関し、視差に依存した距離計18は、その領域に関連付けられた視差差に基づいてその領域24内の物体までの距離を推定する。
【0043】
視差に依存した距離計18の一例は、フレーム13の両側に取り付けたレンズ28a及び28bを特徴とする。これらレンズ間の視差差を最大化するため、レンズ28a及び28bは互いに可能な限り離間して取り付けられている。各レンズ28aは、レンズがデジタルカメラで像を形成するのと概ね同様の方法でCCD(電荷結合素子)上に像を形成する。
【0044】
こうして形成した2つの像を表す画像信号は差分素子30に与えられ、この差分素子30が2つの画像信号間の差を示す2次元地形図32を作成する。これら2つの画像信号の差の程度は地形図32上で変動があり、最大の差は、近くの物体に対応した地形図32の部分に位置する。この場合、「地形」図32という用語は適切である。その理由は、無限遠の物体は仮想「海水面」に位置していると見なすことができ、近くの物体はこの仮想「海水面」から装着者に向かって延びる仮想「山脈」に位置していると見なすことができるからである。
【0045】
装着者の視野が変化すると共に、地形図32は定期的に更新される。これにより、装着者が頭を回したり、ある物体は装着者の視野に進入したりしても、地形図32は正確性を維持できる。
【0046】
別の種類の距離計18は、物体までの実際の距離を推定するバイオフィードバック・システムを含む。こうしたシステムの1つは、内側輻輳を注視する一対の眼球トラッカー32を含む。人が近い物体に眼の焦点を合わせるときは瞳孔が内側に動き、遠くの物体に眼の焦点を合わせるときは瞳孔がまっすぐ前を向くことはよく知られている。従って、適切な較正を行えば、内側輻輳を検出し数量化する距離計18は注視対象20までの距離を推測できる。
【0047】
別の種類の距離計18は、特定の距離で合焦しようとする装着者の試みを推測するのに連合運動反射に依拠するバイオフィードバック・システムを含む。こうしたシステムは、瞳孔サイズ及び/又は瞳孔間距離を観察する眼球トラッカー32と、環境光を測定する光センサとを含む。この種のバイオフィードバック・システムは、様々な照明条件下で装着者が遠近調節試行の際の瞳孔反応及び/又は瞳孔間分離を記録し、グラフ化する較正段階を一般に必要とする。
【0048】
例えば、装着者が無限遠での遠近調節時にボタンを押すことによるシステムの零点調整を行う方法を提供すれば一層の正確さが達成できる。この較正によって、交感神経及び/又は副交感神経解放の増減状態に関連した瞳孔サイズの変動や、装着者の疲労時の内斜視又は外斜視の増減状態に関連した瞳孔サイズの変動に起因する誤差を回避できる。
【0049】
人が近くの物体に眼の焦点を合わせる場合、虹彩26が拡張することで瞳孔60が収縮することも知られている。従って、バイオフィードバック・システムの別の実施形態は、眼球トラッカー32を使用してこの収縮を測定し、この測定から注視対象までの距離を示す情報を提供する。
【0050】
目標識別システム
姿勢に依存する距離計及び視差に依存する距離計の欠点は、図11に示したように、これらがフレームの姿勢と人の凝視方向との間の不一致に起因する誤差を受けやすいことである。例えば、装着者がまっすぐ前を凝視しているにもかかわらず、発汗などの理由で眼鏡フレーム13が鼻から滑り落ちてしまう場合、注視対象がまっすぐ前方に位置していても、レンズ12に垂直なベクトルは下方に向いてしまう。この場合、距離計18は、目標領域24が視野22内の下の方にあると誤って結論づけてしまう。或いは、装着者が眼の縁からこっそりと横方向を見ても、レンズ12に垂直なベクトルはまっすぐ前を向くこともある。フレーム13の姿勢だけに頼って物体までの距離を測定すると、これら2つのシナリオでは目標領域24の識別誤差をもたらし、従って焦点誤差となるはずである。
【0051】
この問題を緩和する1つのアプローチでは、レンズ12を十分小さくして、眼鏡を介した装着者の凝視方向とフレームの姿勢との誤差をある閾値未満とする。本質的に、これは視野24を縮小する作用があり、従って目標領域24を不正確に識別することが困難になる。こうした眼鏡の装着者が横目使いで見ようとしても光学矯正は得られないので、装着者は落胆するであろう。
【0052】
この問題を緩和する別のアプローチでは、図7に示したように、目標識別26を視力人工器官10に組み込む。
【0053】
目標識別システム26の一例は、図12に示したゴニオメーター・フィードバックシステム34である。代表的なゴニオメーター・フィードバックシステム34は、眼が向けられている方向を特定しようとする眼球トラッカー32を含む。こうした眼球トラッカー32は、装着者の凝視方向を推測する基となる、簡略式の虹彩、角膜縁、及び/又は瞳孔検出器を利用するものを含む。眼球トラッカー32はプルキンエ像を利用して凝視方向を推測することもできる。この場合、プルキンエ像の分離及び相対配向が凝視方向を示す情報を与えることになる。
【0054】
更に、眼球トラッカー32は、瞳孔の見かけの形状から凝視方向を推測可能である。例えば、眼球トラッカー32の視点にもよるが、凝視方向がまっすぐ前であれば瞳孔は円形に見え、凝視方向が周辺視野に向かうにつれより楕円形に見える傾向がある。楕円の偏心率及び楕円の長軸の方向が、凝視方向を特定する手がかりとなるはずである。
【0055】
ゴニオメーター・バイオフィードバックシステム34の別の実施形態は、眼の運動部分に埋め込まれた磁石の位置から凝視方向を推測するものがあり、これは、引用して本明細書に援用する2004年5月17日付けの同時係属中の米国特許出願第10/847,515号に記載されている。この実施形態では、磁石の位置は、眼鏡フレームに取り付けられた1つ又複数の誘導コイル又は近接センサにより追跡される。
【0056】
凝視方向を特定するゴニオメーター・バイオフィードバックシステム34は、距離計と協働して物体までの距離をそれぞれが別個で行うより正確に推定する。例えば、ゴニオメーター・バイオフィードバックシステム34は人の凝視方向を推定し、その情報を姿勢依存距離計18に与えることもできる。すると、距離計18は、赤外線トランシーバーを眼球トラッカー32が推定した方向に向けることができる。この赤外線トランシーバーを向ける動作実行には、眼球トラッカーによる推定凝視方向と一致した方向に赤外線送信機を旋回させる小型モータを駆動すればよい。
【0057】
ゴニオメーター・バイオフィードバックシステム34は、視差に依存した距離計とも協働できる。例えば、眼球トラッカー32が、装着者の凝視方向を、特定の角度で延伸する光線に沿ったものであると判断したとする。すると、単純な幾何学的変換により、その光線と地形図32との交差点を求めることができる。この交差点には、2つの像間の視差差に基づいて求められる距離が関連付けられている。次に、この視差から導かれた距離をコントローラ16に与えると、装着者からその距離に位置した物体を最適に目視するため、コントローラ16はアクチュエータ14にレンズ12の焦点調節を行わせる。
【0058】
距離計18の別の実施形態には、注視対象20に合焦し、焦点を維持する視力人工器官の能力を向上させるフィードバック機構を含めるものがある。
【0059】
図13に示したフィードバック機構では、第1及び第2小型レンズ62a及び62bが眼内レンズ12の後方に配置されている。
第1及び第2小型レンズ62a及び62bは、装着者の視界との干渉を避けるためレンズ12の周縁部近くに配置するのが好ましい。第1光検出器64aが第1小型レンズ62aの後方に選択した距離で配置され、第2光検出器64bが第2小型レンズ62bの後方に同一選択距離で配置されている。第1小型レンズ62aの焦点距離はこの選択距離よりわずかに長いが、第2小型レンズ62bの焦点距離はこの選択距離よりわずかに短い。
【0060】
第1及び第2光検出器64a及び64bは、これらの出力間の差を評価する差分素子66に接続されている。差分素子66の出力がゼロであれば、レンズ12の焦点は合っている。差分素子66の出力がゼロでなければ、この出力の符号がレンズ12の焦点距離を増加或いは減少させるべきかを示す。又、出力の大きさは、像に焦点を合わせるためにレンズ12の焦点距離をどの程度変化させるべきかを示す。この種のフィードバック機構は米国特許第4,309,603号に記載されており、その内容はここに引用して援用する。
【0061】
上述した実施形態の距離計18の何れにおいても、装着者が焦点調節信号を微調整できるように手動調節装置を設けてもよい。こうすれば、距離計18は装着者が施す修正を用いてその距離推定を較正できるので、次に距離推定を行うときには装着者が微調整をする必要はない。これにより視力人工器官10は自己較正式となる。
【0062】
電源装置
この視力人工器官に適した電源装置は、図14に示したようにフレーム13に目立たないよう取り付けた充電式電池66である。ヒンジ機構70に組み込まれた電気接点が、電池66の接続を切るスイッチ68として作用する。装着者がこの眼鏡を掛けていないときは、つる72は一般にたたまれており、スイッチ68は開いている。装着者がこの眼鏡を掛けているときは、つる72は一般に開いており、スイッチ68は閉じている。このように、スイッチ68がヒンジ72に組み込まれているので、視力人工器官10が使用されていないときは電力を節約できる。
【0063】
つる72が折りたたまれると、スイッチ68の接点は、電池66を充電する電力を供給するドック74の対応する接点と接続するよう適合されている。
【0064】
図15に示したように、視力人工器官10はフレーム13に取り付けた太陽電池セル76から電力供給を受けてもよいし、図16に示したように、つる72に取り付けた太陽電池セル78のアレー78から電力供給を受けてもよい図16に示した構成の1つの利点は、装着者がまぶしい光の方を向かなくてもかなりの発電が可能となることである。
【0065】
この電源は、日中は太陽電池セル76が電力供給し、薄明かりでは電池66が電力供給するハイブリッド電源でもよい。こうしたハイブリッドシステムでは、太陽電池セル76からの余分な電力を電池66に分流できるので、明るい環境光の下では電池66の充電が可能となる。
【0066】
本発明をその詳細な説明に関連して記載してきたが、上述の説明は例示を意図したものであり、本発明の範囲を限定するものではない。又、本発明の範囲は、添付した特許請求の範囲によって定義される。他の局面、利点、及び変更も次の特許請求の範囲に入る。
【0067】
本発明及びその好適な実施形態を説明してきたが、新規であると主張し且つ特許証により確保するものは以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】眼鏡フレームに取り付けられた眼球外の視力人工器官を示す。
【図2】図1に示した眼球外の視力人工器官のブロック図である。
【図3】図2に示した視力人工器官のレンズ及びアクチュエータの2つの実施形態を示す。
【図4】図2に示した視力人工器官のレンズ及びアクチュエータの2つの実施形態を示す。
【図5】図2に示した視力人工器官のレンズ及びアクチュエータの2つの実施形態を示す。
【図6】レンズの視野及び目標領域を示す。
【図7】目標識別システムを備えた眼球外の視力人工器官のブロック図である。
【図8】視野の地形図作成に関連して用いられる一対のセンサが取り付けられた眼鏡フレームを示す。
【図9】図8のセンサから信号を受信する距離計のブロック図である。
【図10】眼球トラッカーを含む視力人工器官を示す。
【図11】姿勢に依存する距離計に関連して発生することがある焦点調節誤差の原因を示す。
【図12】目標域を識別するためのバイオフィードバック・システムを備えた視力人工器官のブロック図である。
【図13】注視対象に焦点を維持するためのフィードバックループの略図である。
【図14】電源装置を充電する姿勢に保持されたフレームを示す。
【図15】太陽電池電源を備えたフレームを示す。
【図16】太陽電池電源を備えたフレームを示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は視力人工器官に関し、特に、眼球外の視力人工器官に関する。
【背景技術】
【0002】
人は、日常生活を営む上で一般に眼から様々な距離にある物体を眺める。こうした物体に選択的に焦点を合わせるには、眼の水晶体の焦点距離を変更しなければならない。健康な眼では、これは水晶体に物理的に接合された毛様体筋の収縮により達成される。毛様体筋の収縮に合わせて水晶体が変形するので、その焦点距離が変化する。水晶体をこうした様態で選択的に変形させることにより、眼から異なる距離に位置する物体に焦点を合わせることができる。異なる距離に位置する物体に選択的に焦点を合わせるこの機能は、「遠近調節」と呼ばれる。
【0003】
人が老化するにつれ、水晶体はその可塑性を失っていく。結果的に、水晶体を十分に変形させて異なる距離に位置する物体に焦点を合わせることが徐々に困難になる。この機能低下を補償するには、異なる距離にある物体への焦点合わせのための様々な光学補正を行うことが必要である。
【0004】
様々な光学矯正を施す一つのアプローチには、幾つかの眼鏡を持ち歩いて必要なときにそれらを掛け替えるものがある。例えば、読書用の眼鏡と運転用の遠距離眼鏡を別々に持ち歩くこともできよう。これは複数の眼鏡を持ち歩く必要があることと、眼鏡を頻繁に交換する必要があることから不便である。
【0005】
二焦点レンズは同一レンズに2つの異なる光学矯正を組み込んでいるので、遠近調節の助けとなる。このレンズの下方部分は、読書や他の近距離作業に適した矯正をもたらすように研磨されており、一方、レンズの残り部分は遠見視力用の矯正をもたらすように研磨されている。物体を眺めるには、二焦点レンズの使用者は頭を動かすだけで、注視対象の物体と瞳孔との間の光線を、その物体の距離に適した光学矯正を行うレンズ部分を通過させることができる。
【0006】
異なる光学矯正が同一レンズに組み込まれている二焦点レンズの発想は一般化されており、異なる3つの光学矯正を同一レンズに組み込んだ三焦点レンズと、連続した視力矯正を同一レンズに組み込んだ連続勾配レンズとを含むようになっている。しかし、二焦点レンズと同様に、こうした多焦点レンズを用いた異なる距離範囲に関する光学矯正は、瞳孔とレンズとの相対運動に大きく依拠している。
【0007】
発明の概要
本発明は、異なる距離にある複数の物体に焦点を合わせる患者の能力を回復するための視力人工器官を提供する。前記視力人工器官は、その焦点距離が自動的に変化可能なレンズと、患者が焦点を合わせたいと望む物体までの距離を推定する、該レンズに接続された距離計とを含む。
【0008】
一実施形態では、前記視力人工器官の前記可変焦点レンズは、焦点調節刺激に応答して変化する屈折率を持つ。前記レンズと連通したアクチュエータは、前記距離計からの推定距離に基づいて必要な前記の焦点調節刺激を与える。前記距離計と前記アクチュエータとに接続されたコントローラは、前記アクチュエータに、前記推定距離に基づいて焦点調節刺激を発生させる。
【0009】
変化するのは屈折率なので、前記視力人工器官は、前記レンズ又はその一部を機械的に移動させる必要なしで前記レンズの前記焦点距離を制御できる。従って、前記視力人工器官は、運動部分が無く且つ可動システムに関連した複雑さ及び過大な電力消費が無い可変焦点距離レンズを提供する。
【0010】
前記視力人工器官の一実施形態では、前記レンズは、屈折率が可変のネマチック液晶又は他の材料を収容したチャンバを含む。ネマチック液晶の屈折率は印加された電磁界に応答して変化する。屈折率のこの変化は、前記レンズの前記焦点距離の変化を引き起こす。
【0011】
前記レンズの前記アクチュエータは、可変電圧源と、該可変電圧源及び前記レンズの両方に接続された1つ又複数の電極とを含むことができる。或いは、前記アクチュエータは、可変電流源と、該可変電流源及び前記レンズに接続された1つ又複数のコイルとを含むことができる。前記アクチュエータは前者の場合には電界を、後者の場合には磁界を発生し、何れの場合もこれが前記ネマチック液晶と相互作用してその屈折率を選択的に変化させる。
【0012】
前記レンズの前記屈折率は空間的に均等でなくてもよい。前記レンズの異なる局部域に接続された複数の作動要素を設けることにより、前記屈折率はこれら局部域ごとに変化させることができる。これによって、前記レンズは、その物理的形状からは概ね独立した効果的な光学的形状を持つことができる。凸レンズを作成するには、例えば、ネマチック液晶を満たした平面状チャンバにおいて円周部よりは中央部分に強い電界を印加すればよい。これにより、前記屈折率は前記円周部に比べて前記中央部分で大きく変化する。空間的に不均等な屈折率を備えたレンズを実現するには、該レンズの異なる位置に複数の電極を配置すればよい。本発明の一様態では、これら電極は同心電極である。その場合、前記レンズの中心からの距離の関数として前記屈折率を変化させることができる。
【0013】
代替的な一実施形態では、前記屈折率を、複数の空間変数の関数することができる。例えば、前記電極を、前記レンズの表面上に2次元グリッドで配置してもよい。こうしたグリッドは極グリッドでもよいし、直線グリッドでもよい。その主たる機能は、角膜、水晶体、及び眼球媒質の異常による眼の波面収差を修正することである。
【0014】
場合によっては、患者の視力を十分に矯正するほど屈折率を変化させられないことがある。こうした場合、前記レンズには、像に焦点を合わせるため移動可能な1つ又複数のレンズ要素を含めてもよい。こうしたレンズは前記レンズ要素を移動するためのモータも含む。
【0015】
或いは、前記レンズが基準線曲率(原語:baseline
curvature)を持つようにし、且つネマチック液晶又は屈折率を変化させられる材料で満たしてもよい。前記基準線曲率を用いて大まかな修正が可能であり、前記レンズ材料の屈折率を局地的に変化させることで微調整できる。
【0016】
前記視力人工器官の前記距離計は、物体までの距離を推定するのに眼内の構造物の動作に依存する必要がない。例えば、前記距離計は自動焦点システムを含むこともできる。自動焦点システムの一例は、赤外線ビームで物体を照射する赤外線送信機と、該物体からの反射ビームを受信する赤外線受信機と、該反射ビームに基づいて前記物体までの距離を推定する、前記赤外線受信機に接続されたプロセッサとを含む。しかし、他の自動焦点システムも前記視力人工器官で使用するため容易に適合可能である。
【0017】
前記自動焦点システムによる焦点合わせ及び焦点維持を補助するためには、前記自動焦点システムに接続されたフィードバックループを含めるのがしばしば望ましい。フィードバックループの一例は、前記レンズの後方に設けた第1及び第2小型レンズを含む。それぞれの小型レンズは、該小型レンズの後方にある対応した光検出器と光学連通している。前記小型レンズと前記対応した光検出器との間の距離は、前記2つの小型レンズの焦点距離の間である。
【0018】
距離計の種類にかかわらず、患者が前記レンズの焦点を微調整できるようにオプションの手動焦点調節装置を設けるのが便利である。手動焦点調節装置を使えば、患者は、前記自動焦点システムがもたらす信号の僅かな不正確さを正しく補正できる。手動焦点調節装置が備わっていれば、実際には前記距離計は省くことができる。従って、本発明の更に別の実施形態では、本装置は距離計の代わりに手動焦点調節装置を含む。
【0019】
本発明の上記及びその他の特徴及び利点は、次の詳細な説明及び添付図面から明らかとなるはずである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1を参照すると、レンズ12を適応合焦させる眼球外の視力人工器官10はフレーム13に取り付けられており、従来の眼鏡と同じように掛けられるものである。図2に示すように、レンズ12は、コントローラ16によりアクチュエータ14に与えられる焦点調節信号に応答してその屈折率を変化させられるレンズである。アクチュエータ14に与えられる焦点調節信号の性質により、屈折率が変化する程度が制御される。一方、コントローラ16は、その制御信号を距離計18により与えられる距離信号に基づいて発生する。
【0021】
コントローラ16は、典型的には命令が内部に符号化されたマイクロコントローラである。これらの命令はソフトウェアまたはファームウェアとして実装できる。しかし、これら命令は、例えば特定用途向けICなどのハードウェアに直接符号化しても良い。マイクロコントローラに与えられる命令は、距離計18から受信する注視対象20までの距離を示すデータを受信するための命令と、焦点調節信号を得るためそのデータを処理するための命令とを含む。この焦点調節信号はレンズの屈折率を変化させて、注視対象20の像の焦点を網膜に合わせる。
【0022】
電源(図示しない)が、コントローラ16、距離計18、及びアクチュエータ14に電力を供給する。単一の電源がこれら3つの構成要素全てに電力を供給できる。しかし、この視力人工器官10は、電力を必要とするこれら構成要素の任意組合せのために別個の電源を含んでいてもよい。適切な電源としては充電式電池がある。
【0023】
レンズ及びアクチュエータ
レンズ12は、アクチュエータ14に応答する全体的な焦点距離を備えた1つ又は複数の屈折要素を任意に組み合わせたものである。
【0024】
幾つかの実施形態では、レンズ12は、その屈折率が印加した電界に応答して変化するネマチック液晶に光を通過させる。その場合、アクチュエータ14は、レンズ12と電気的に連通した1つ又は複数の電極を含む。
【0025】
レンズ12の一実施形態では、図3の分解組立図に示したように、ネマチック液晶を満たした第1及び第2湾曲チャンバ38a及び38bが透明プレート40で分離されている。この実施形態では、アクチュエータ14は、湾曲チャンバ38a及び38bそれぞれの外表面に配置された2つの透明電極42a及び42bに接続された可変電圧源41を含む。可変電圧源41は、コントローラ16からの命令に応答して可変電圧を発生する。第1及び第2透明外層44a及び44bが、それぞれ電極42a及び42bを覆っている。
【0026】
可変電圧源41が電圧を印加すると、第1及び第2電極42a及び42bがネマチック液晶において電界を発生する。この電界はネマチック液晶のディレクタの方向を変えることとなり、結果的にその屈折率が変化する。この種のレンズ集成体は米国特許第4,190,330号に記載されており、その内容はここに引用して援用する。
【0027】
図4に示した別の実施形態では、レンズ12は、ネマチック液晶を満たした薄肉チャンバ46を含んでいる。この場合、アクチュエータ14は可変電圧源48と、薄肉チャンバ46の対向平面に設けられた第1及び第2組50a及び50bの電極52a乃至52cとを含む。電極52a乃至52cそれぞれはコントローラ16により個別にアドレス可能である。第1組50aからの電極52aと第2組の電極50bからの対応した電極間に電圧を維持すると、これら電極に隣接したネマチック液晶の局部領域において電界が発生する。この電界はディレクタの方向を変えるので、その領域内で屈折率を変化させる。結果として、レンズ12の異なる点において屈折率を変化させることができる。
【0028】
図4は、同心電極52a乃至52cを備えたレンズ集成体を示す。この種のレンズ集成体は米国特許第4,466,703号に記載されており、その内容はここに引用して援用する。この実施形態では、レンズ12の中心からの距離の関数として屈折率を変化させることができる。しかし、個別アドレス可能電極52a乃至52cは、レンズ12の表面上に2次元アレーで配列してもよい。この場合、屈折率は2つの空間変数の関数として変化させうる。電極52a乃至52cのグリッドは図4に示したような極グリッドでもよいし、図5に示したような直線グリッドでもよい。電極52a乃至52cはグリッド上に均等に配置させてもよいし、レンズ12の一定領域には疎に配置し、レンズ12の他の領域にはより密に配置させてもよい。
【0029】
ネマチック液晶の屈折率の変化には限界がある。一旦、ネマチック液晶内の全てのディレクタが分極されてしまうと、発生した電界の大きさを強めてもそれ以上何の効果も得られない。この状態のネマチック液晶は飽和状態にあるという。ネマチック液晶の飽和点を超えて焦点距離を変化させるには、微小機械モータ(図示しない)によって互いに相対移動する1つ又は複数のレンズ要素をレンズ12に含めることができる。
【0030】
或いは、レンズ12が基準線曲率を持つようにし、且つレンズ12をネマチック液晶で満たしてもよい。基準線曲率を用いて大まかな修正が可能であり、レンズ材料の屈折率を局地的に変化させることで微調整できる。
【0031】
別の実施形態では、レンズ12は図5に示したように多数の小型レンズからなり、それぞれが固有の基準線曲率を持ち、且つネマチック液晶で満たされている。又、個別アドレス可能電極がこれら小型レンズそれぞれに接続されている。この実施形態では、レンズの曲率及び屈折率を2つの空間変数の関数として局所的に変化させうる。
【0032】
しかし、他の実施形態では、レンズ12は、印加した磁界に反応してその屈折率が変化する材料に光を通過させてもよい。その場合、アクチュエータ14は、レンズ12と磁気的に連通した通電コイルなどの磁界源である。
【0033】
更に別の実施形態では、レンズ12はカメラのズームレンズに似たレンズである。こうしたレンズ12は、互いに相対的に移動する1つ又は複数の屈折要素を含む。こうした場合、アクチュエータ14はこれらレンズ要素を移動させる小型電気モータである。
【0034】
他の実施形態は、変形可能な液体充満レンズバッグを屈折要素として備えたレンズ12を含む。これらレンズバッグでは内部の流体の量がその形状を制御し、従ってレンズバッグの焦点調節特性を制御する。これら実施形態では、流体のレンズバッグからの出し入れには、引用して本明細書に援用する2004年7月21日付けの同時係属中の米国特許出願第10/895,504号に記載されている種類の人工筋アクチュエータを使用できる。或いは、こうした人工筋アクチュエータを適合して、レンズの変形又は移動に使用できる。
【0035】
図6を参照すると、レンズ12は様々な物体の像を含む視野22を画定する。これら物体像の1つは、レンズ装着者が焦点を合わせようとする注視対象20の像である。レンズ12の正しい焦点合わせは2つの段階を含む。第1の段階は、焦点を合わせる目標領域24を視野22内で特定することである。正しく特定されていれば、この目標領域24は注視対象20の像を含む。目標領域24を特定すると、次の段階は、目標領域24内の注視対象20までの距離の割り出しである。この第2段階は距離計18により実行される。第1段階は、図7に示したように距離計18と通信するオプションの目標識別システム26により実行される。
【0036】
アクチュエータとレンズの別の組合せは、引用して本明細書に援用するGich, et al., "High-coercivity ultralight Transparent Magnets(高保磁度且つ超軽量の透明磁石),"
Applied Physics Letters, vol. 82 (24), pp. 4307-4309 June 16, 2003に記載された透明磁石を含むことができる。こうした磁石では、エーロゲル内の鉄製ニードルが、磁界に反応する配向を備えている。これらニードルはエーロゲルの光学特性に影響を与える。結果として、磁界を印加することでエーロゲルを組み込んだレンズの光学特性を制御できる。
【非特許文献1】Gich, et al., "High-coercivity ultralight TransparentMagnets(高保磁度且つ超軽量の透明磁石)," Applied PhysicsLetters, vol. 82 (24), pp. 4307-4309 June 16, 2003
【0037】
ニードルの配向は異なる偏光に対して異なった反応を示すので、透明磁石を組み込んだレンズを使用すれば眼に入る光の偏光状態を適応制御できる。
【0038】
この種の透明磁石を眼内レンズで用いてもよい。その場合、フレームは、眼内レンズ内で鉄製ニードルの配向を適応制御するのに使用可能な磁界源を含むことができる。こうした制御には眼内レンズの屈折特性の制御又は眼内レンズの偏光透過特性の制御が含まれる。
【0039】
距離計
距離計18の一例としては自動焦点カメラで使用されるものがある。こうした距離計は放射線ビームを送出し、反射したビームを検出し、その反射ビームに基づいて物体までの距離を推定する。
【0040】
距離計18の出力はコントローラ16に直接送信できる。この場合、目標領域は、視野の例えば中央スポットのような所定の領域と推定される。この種の距離計18は、それが装着されるフレーム13の姿勢すなわち配向のみに基づいて注視対象19までの距離を測定するので、「姿勢依存」距離計18である。
【0041】
姿勢に依存する距離計は任意の放射を使用できるが、便利な例としては電磁放射及び音響放射が含まれる。電磁放射の場合は赤外線波長が適しており、それは赤外線波長の伝播特性及び適切な送信機や送信機が容易に入手可能だからである。音響放射の場合は、超音波放射について同じことが言える。
【0042】
図8に示した姿勢依存距離計18の別の例は、互いからずれた位置にあるセンサ28a及び28b又は受信機から得られる2つの測定値間の視差差を利用する。視野22内の特定領域24に関し、視差に依存した距離計18は、その領域に関連付けられた視差差に基づいてその領域24内の物体までの距離を推定する。
【0043】
視差に依存した距離計18の一例は、フレーム13の両側に取り付けたレンズ28a及び28bを特徴とする。これらレンズ間の視差差を最大化するため、レンズ28a及び28bは互いに可能な限り離間して取り付けられている。各レンズ28aは、レンズがデジタルカメラで像を形成するのと概ね同様の方法でCCD(電荷結合素子)上に像を形成する。
【0044】
こうして形成した2つの像を表す画像信号は差分素子30に与えられ、この差分素子30が2つの画像信号間の差を示す2次元地形図32を作成する。これら2つの画像信号の差の程度は地形図32上で変動があり、最大の差は、近くの物体に対応した地形図32の部分に位置する。この場合、「地形」図32という用語は適切である。その理由は、無限遠の物体は仮想「海水面」に位置していると見なすことができ、近くの物体はこの仮想「海水面」から装着者に向かって延びる仮想「山脈」に位置していると見なすことができるからである。
【0045】
装着者の視野が変化すると共に、地形図32は定期的に更新される。これにより、装着者が頭を回したり、ある物体は装着者の視野に進入したりしても、地形図32は正確性を維持できる。
【0046】
別の種類の距離計18は、物体までの実際の距離を推定するバイオフィードバック・システムを含む。こうしたシステムの1つは、内側輻輳を注視する一対の眼球トラッカー32を含む。人が近い物体に眼の焦点を合わせるときは瞳孔が内側に動き、遠くの物体に眼の焦点を合わせるときは瞳孔がまっすぐ前を向くことはよく知られている。従って、適切な較正を行えば、内側輻輳を検出し数量化する距離計18は注視対象20までの距離を推測できる。
【0047】
別の種類の距離計18は、特定の距離で合焦しようとする装着者の試みを推測するのに連合運動反射に依拠するバイオフィードバック・システムを含む。こうしたシステムは、瞳孔サイズ及び/又は瞳孔間距離を観察する眼球トラッカー32と、環境光を測定する光センサとを含む。この種のバイオフィードバック・システムは、様々な照明条件下で装着者が遠近調節試行の際の瞳孔反応及び/又は瞳孔間分離を記録し、グラフ化する較正段階を一般に必要とする。
【0048】
例えば、装着者が無限遠での遠近調節時にボタンを押すことによるシステムの零点調整を行う方法を提供すれば一層の正確さが達成できる。この較正によって、交感神経及び/又は副交感神経解放の増減状態に関連した瞳孔サイズの変動や、装着者の疲労時の内斜視又は外斜視の増減状態に関連した瞳孔サイズの変動に起因する誤差を回避できる。
【0049】
人が近くの物体に眼の焦点を合わせる場合、虹彩26が拡張することで瞳孔60が収縮することも知られている。従って、バイオフィードバック・システムの別の実施形態は、眼球トラッカー32を使用してこの収縮を測定し、この測定から注視対象までの距離を示す情報を提供する。
【0050】
目標識別システム
姿勢に依存する距離計及び視差に依存する距離計の欠点は、図11に示したように、これらがフレームの姿勢と人の凝視方向との間の不一致に起因する誤差を受けやすいことである。例えば、装着者がまっすぐ前を凝視しているにもかかわらず、発汗などの理由で眼鏡フレーム13が鼻から滑り落ちてしまう場合、注視対象がまっすぐ前方に位置していても、レンズ12に垂直なベクトルは下方に向いてしまう。この場合、距離計18は、目標領域24が視野22内の下の方にあると誤って結論づけてしまう。或いは、装着者が眼の縁からこっそりと横方向を見ても、レンズ12に垂直なベクトルはまっすぐ前を向くこともある。フレーム13の姿勢だけに頼って物体までの距離を測定すると、これら2つのシナリオでは目標領域24の識別誤差をもたらし、従って焦点誤差となるはずである。
【0051】
この問題を緩和する1つのアプローチでは、レンズ12を十分小さくして、眼鏡を介した装着者の凝視方向とフレームの姿勢との誤差をある閾値未満とする。本質的に、これは視野24を縮小する作用があり、従って目標領域24を不正確に識別することが困難になる。こうした眼鏡の装着者が横目使いで見ようとしても光学矯正は得られないので、装着者は落胆するであろう。
【0052】
この問題を緩和する別のアプローチでは、図7に示したように、目標識別26を視力人工器官10に組み込む。
【0053】
目標識別システム26の一例は、図12に示したゴニオメーター・フィードバックシステム34である。代表的なゴニオメーター・フィードバックシステム34は、眼が向けられている方向を特定しようとする眼球トラッカー32を含む。こうした眼球トラッカー32は、装着者の凝視方向を推測する基となる、簡略式の虹彩、角膜縁、及び/又は瞳孔検出器を利用するものを含む。眼球トラッカー32はプルキンエ像を利用して凝視方向を推測することもできる。この場合、プルキンエ像の分離及び相対配向が凝視方向を示す情報を与えることになる。
【0054】
更に、眼球トラッカー32は、瞳孔の見かけの形状から凝視方向を推測可能である。例えば、眼球トラッカー32の視点にもよるが、凝視方向がまっすぐ前であれば瞳孔は円形に見え、凝視方向が周辺視野に向かうにつれより楕円形に見える傾向がある。楕円の偏心率及び楕円の長軸の方向が、凝視方向を特定する手がかりとなるはずである。
【0055】
ゴニオメーター・バイオフィードバックシステム34の別の実施形態は、眼の運動部分に埋め込まれた磁石の位置から凝視方向を推測するものがあり、これは、引用して本明細書に援用する2004年5月17日付けの同時係属中の米国特許出願第10/847,515号に記載されている。この実施形態では、磁石の位置は、眼鏡フレームに取り付けられた1つ又複数の誘導コイル又は近接センサにより追跡される。
【0056】
凝視方向を特定するゴニオメーター・バイオフィードバックシステム34は、距離計と協働して物体までの距離をそれぞれが別個で行うより正確に推定する。例えば、ゴニオメーター・バイオフィードバックシステム34は人の凝視方向を推定し、その情報を姿勢依存距離計18に与えることもできる。すると、距離計18は、赤外線トランシーバーを眼球トラッカー32が推定した方向に向けることができる。この赤外線トランシーバーを向ける動作実行には、眼球トラッカーによる推定凝視方向と一致した方向に赤外線送信機を旋回させる小型モータを駆動すればよい。
【0057】
ゴニオメーター・バイオフィードバックシステム34は、視差に依存した距離計とも協働できる。例えば、眼球トラッカー32が、装着者の凝視方向を、特定の角度で延伸する光線に沿ったものであると判断したとする。すると、単純な幾何学的変換により、その光線と地形図32との交差点を求めることができる。この交差点には、2つの像間の視差差に基づいて求められる距離が関連付けられている。次に、この視差から導かれた距離をコントローラ16に与えると、装着者からその距離に位置した物体を最適に目視するため、コントローラ16はアクチュエータ14にレンズ12の焦点調節を行わせる。
【0058】
距離計18の別の実施形態には、注視対象20に合焦し、焦点を維持する視力人工器官の能力を向上させるフィードバック機構を含めるものがある。
【0059】
図13に示したフィードバック機構では、第1及び第2小型レンズ62a及び62bが眼内レンズ12の後方に配置されている。
第1及び第2小型レンズ62a及び62bは、装着者の視界との干渉を避けるためレンズ12の周縁部近くに配置するのが好ましい。第1光検出器64aが第1小型レンズ62aの後方に選択した距離で配置され、第2光検出器64bが第2小型レンズ62bの後方に同一選択距離で配置されている。第1小型レンズ62aの焦点距離はこの選択距離よりわずかに長いが、第2小型レンズ62bの焦点距離はこの選択距離よりわずかに短い。
【0060】
第1及び第2光検出器64a及び64bは、これらの出力間の差を評価する差分素子66に接続されている。差分素子66の出力がゼロであれば、レンズ12の焦点は合っている。差分素子66の出力がゼロでなければ、この出力の符号がレンズ12の焦点距離を増加或いは減少させるべきかを示す。又、出力の大きさは、像に焦点を合わせるためにレンズ12の焦点距離をどの程度変化させるべきかを示す。この種のフィードバック機構は米国特許第4,309,603号に記載されており、その内容はここに引用して援用する。
【0061】
上述した実施形態の距離計18の何れにおいても、装着者が焦点調節信号を微調整できるように手動調節装置を設けてもよい。こうすれば、距離計18は装着者が施す修正を用いてその距離推定を較正できるので、次に距離推定を行うときには装着者が微調整をする必要はない。これにより視力人工器官10は自己較正式となる。
【0062】
電源装置
この視力人工器官に適した電源装置は、図14に示したようにフレーム13に目立たないよう取り付けた充電式電池66である。ヒンジ機構70に組み込まれた電気接点が、電池66の接続を切るスイッチ68として作用する。装着者がこの眼鏡を掛けていないときは、つる72は一般にたたまれており、スイッチ68は開いている。装着者がこの眼鏡を掛けているときは、つる72は一般に開いており、スイッチ68は閉じている。このように、スイッチ68がヒンジ72に組み込まれているので、視力人工器官10が使用されていないときは電力を節約できる。
【0063】
つる72が折りたたまれると、スイッチ68の接点は、電池66を充電する電力を供給するドック74の対応する接点と接続するよう適合されている。
【0064】
図15に示したように、視力人工器官10はフレーム13に取り付けた太陽電池セル76から電力供給を受けてもよいし、図16に示したように、つる72に取り付けた太陽電池セル78のアレー78から電力供給を受けてもよい図16に示した構成の1つの利点は、装着者がまぶしい光の方を向かなくてもかなりの発電が可能となることである。
【0065】
この電源は、日中は太陽電池セル76が電力供給し、薄明かりでは電池66が電力供給するハイブリッド電源でもよい。こうしたハイブリッドシステムでは、太陽電池セル76からの余分な電力を電池66に分流できるので、明るい環境光の下では電池66の充電が可能となる。
【0066】
本発明をその詳細な説明に関連して記載してきたが、上述の説明は例示を意図したものであり、本発明の範囲を限定するものではない。又、本発明の範囲は、添付した特許請求の範囲によって定義される。他の局面、利点、及び変更も次の特許請求の範囲に入る。
【0067】
本発明及びその好適な実施形態を説明してきたが、新規であると主張し且つ特許証により確保するものは以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】眼鏡フレームに取り付けられた眼球外の視力人工器官を示す。
【図2】図1に示した眼球外の視力人工器官のブロック図である。
【図3】図2に示した視力人工器官のレンズ及びアクチュエータの2つの実施形態を示す。
【図4】図2に示した視力人工器官のレンズ及びアクチュエータの2つの実施形態を示す。
【図5】図2に示した視力人工器官のレンズ及びアクチュエータの2つの実施形態を示す。
【図6】レンズの視野及び目標領域を示す。
【図7】目標識別システムを備えた眼球外の視力人工器官のブロック図である。
【図8】視野の地形図作成に関連して用いられる一対のセンサが取り付けられた眼鏡フレームを示す。
【図9】図8のセンサから信号を受信する距離計のブロック図である。
【図10】眼球トラッカーを含む視力人工器官を示す。
【図11】姿勢に依存する距離計に関連して発生することがある焦点調節誤差の原因を示す。
【図12】目標域を識別するためのバイオフィードバック・システムを備えた視力人工器官のブロック図である。
【図13】注視対象に焦点を維持するためのフィードバックループの略図である。
【図14】電源装置を充電する姿勢に保持されたフレームを示す。
【図15】太陽電池電源を備えたフレームを示す。
【図16】太陽電池電源を備えたフレームを示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼球外レンズと連通したアクチュエータであって、該レンズの焦点距離を変化させる焦点調節刺激を与えるアクチュエータと、
物体までの距離を推定する距離計と、
前記距離計と前記アクチュエータとに接続されたコントローラであって、前記アクチュエータに前記推定距離に基づいて前記焦点調節刺激を発生させるよう構成されたコントローラとを含む、視力人工器官。
【請求項2】
前記視力人工器官の装着者により与えられる手がかりに少なくとも部分的に基づいて前記物体への凝視方向を特定するバイオフィードバック・システムを更に含む、請求項1に記載の視力人工器官。
【請求項3】
前記バイオフィードバック・システムが、前記装着者の眼の特徴を検出し且つ該特徴に少なくとも部分的に基づいて前記凝視方向を推定するよう構成されている、請求項2に記載の視力人工器官。
【請求項4】
前記距離計が、
前記物体を照射するよう配向された放射源と、
前記物体からの反射を検出する放射検出器とを含む、請求項1に記載の視力人工器官。
【請求項5】
前記距離計が、
前記物体の第1像を形成する第1センサと、
前記物体の第2像を形成する第2センサと、
前記第1像と前記第2像との差を示す差データを生成する差分素子とを含む、請求項1に記載の視力人工器官。
【請求項6】
前記距離計が、前記視力人工器官の装着者により与えられる手がかりに基づいて前記距離を推定するバイオフィードバック・システムを更に含む、請求項1に記載の視力人工器官。
【請求項7】
眼鏡であって、
フレームと、
前記フレームに取り付けられた可変焦点レンズと、
請求項1に記載の視力人工器官とを含む、眼鏡。
【請求項8】
患者が物体に焦点を合わせるのを補助するための方法であって、
可変焦点距離を備えると共に前記患者が見通すレンズを与える段階と、
前記レンズの視野内にある物体までの距離を推定する段階と、
前記推定に応答して前記焦点距離を変化させる段階とを含む、方法。
【請求項9】
物体までの距離を推定する前記段階が、
眼の特徴を検出する段階であって、該特徴が該眼の凝視方向に依存するよう選択されている検出する段階と、
前記特徴に少なくとも部分的に基づいて凝視方向を推定する段階と、
前記物体が前記凝視方向沿いに存在するように選択する段階とを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
特徴を検出する前記段階が、前記眼に埋め込まれた磁石の位置を検出する段階を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
特徴を検出する前記段階が、瞳孔の見かけの形状を検出する段階を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
特徴を検出する前記段階がプルキンエ像を検出する段階を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記特徴を既知の凝視方向で較正する段階を更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
距離を推定する前記段階が眼の特徴を検出する段階であって、該特徴が該眼の遠近調節試行に依存するよう選択されている検出する段階を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
特徴を検出する前記段階が瞳孔間距離を検出する段階を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
特徴を検出する前記段階が、瞳孔の直径を検出する段階を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
視力を矯正するための装置であって、
物体までの距離を推定する手段と、
前記推定距離に基づいて眼球外レンズの焦点距離を変化させる手段とを備えた、装置。
【請求項18】
距離を推定する前記手段が、少なくとも1つの眼の特徴に基づいて距離を推定する手段を含む、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記物体への方向を特定する手段を更に含む、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
距離を推定する前記手段が、方向を特定する前記手段により特定された方向に位置する物体までの距離を推定するよう構成されている、請求項19に記載の装置。
【請求項1】
眼球外レンズと連通したアクチュエータであって、該レンズの焦点距離を変化させる焦点調節刺激を与えるアクチュエータと、
物体までの距離を推定する距離計と、
前記距離計と前記アクチュエータとに接続されたコントローラであって、前記アクチュエータに前記推定距離に基づいて前記焦点調節刺激を発生させるよう構成されたコントローラとを含む、視力人工器官。
【請求項2】
前記視力人工器官の装着者により与えられる手がかりに少なくとも部分的に基づいて前記物体への凝視方向を特定するバイオフィードバック・システムを更に含む、請求項1に記載の視力人工器官。
【請求項3】
前記バイオフィードバック・システムが、前記装着者の眼の特徴を検出し且つ該特徴に少なくとも部分的に基づいて前記凝視方向を推定するよう構成されている、請求項2に記載の視力人工器官。
【請求項4】
前記距離計が、
前記物体を照射するよう配向された放射源と、
前記物体からの反射を検出する放射検出器とを含む、請求項1に記載の視力人工器官。
【請求項5】
前記距離計が、
前記物体の第1像を形成する第1センサと、
前記物体の第2像を形成する第2センサと、
前記第1像と前記第2像との差を示す差データを生成する差分素子とを含む、請求項1に記載の視力人工器官。
【請求項6】
前記距離計が、前記視力人工器官の装着者により与えられる手がかりに基づいて前記距離を推定するバイオフィードバック・システムを更に含む、請求項1に記載の視力人工器官。
【請求項7】
眼鏡であって、
フレームと、
前記フレームに取り付けられた可変焦点レンズと、
請求項1に記載の視力人工器官とを含む、眼鏡。
【請求項8】
患者が物体に焦点を合わせるのを補助するための方法であって、
可変焦点距離を備えると共に前記患者が見通すレンズを与える段階と、
前記レンズの視野内にある物体までの距離を推定する段階と、
前記推定に応答して前記焦点距離を変化させる段階とを含む、方法。
【請求項9】
物体までの距離を推定する前記段階が、
眼の特徴を検出する段階であって、該特徴が該眼の凝視方向に依存するよう選択されている検出する段階と、
前記特徴に少なくとも部分的に基づいて凝視方向を推定する段階と、
前記物体が前記凝視方向沿いに存在するように選択する段階とを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
特徴を検出する前記段階が、前記眼に埋め込まれた磁石の位置を検出する段階を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
特徴を検出する前記段階が、瞳孔の見かけの形状を検出する段階を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
特徴を検出する前記段階がプルキンエ像を検出する段階を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記特徴を既知の凝視方向で較正する段階を更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
距離を推定する前記段階が眼の特徴を検出する段階であって、該特徴が該眼の遠近調節試行に依存するよう選択されている検出する段階を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
特徴を検出する前記段階が瞳孔間距離を検出する段階を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
特徴を検出する前記段階が、瞳孔の直径を検出する段階を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
視力を矯正するための装置であって、
物体までの距離を推定する手段と、
前記推定距離に基づいて眼球外レンズの焦点距離を変化させる手段とを備えた、装置。
【請求項18】
距離を推定する前記手段が、少なくとも1つの眼の特徴に基づいて距離を推定する手段を含む、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記物体への方向を特定する手段を更に含む、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
距離を推定する前記手段が、方向を特定する前記手段により特定された方向に位置する物体までの距離を推定するよう構成されている、請求項19に記載の装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2008−537608(P2008−537608A)
【公表日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−505408(P2008−505408)
【出願日】平成18年4月3日(2006.4.3)
【国際出願番号】PCT/US2006/012204
【国際公開番号】WO2006/107817
【国際公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(596114853)マサチューセッツ・アイ・アンド・イア・インファーマリー (11)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月3日(2006.4.3)
【国際出願番号】PCT/US2006/012204
【国際公開番号】WO2006/107817
【国際公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(596114853)マサチューセッツ・アイ・アンド・イア・インファーマリー (11)
【Fターム(参考)】
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