説明

適応性熱ギャップパッド

【課題】電子装置のような熱供給コンポーネントから熱を伝導するための熱ギャップパッドにおいて、圧縮荷重を減少させることの出来る熱ギャップパッドを提供する。
【解決手段】熱アセンブリ100は熱供給電子コンポーネント114と、冷却構造130と、第1の表面を有する熱ギャップパッド140と、熱ギャップパッド140の第1の表面に沿って与えられた約500cP以下の粘度を有する潤滑剤142を含んでいる。熱ギャップパッド140は熱供給電子コンポーネント114と冷却構造130との間で圧縮され、それによって熱ギャップパッド140の第1の表面は冷却構造130と熱接触する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子装置のような熱供給コンポーネントとヒートシンクのような冷却構造との間で熱を伝導するための熱ギャップパッドに関し、特に減少された圧縮荷重を有する熱ギャップパッドに関する。
【背景技術】
【0002】
熱ギャップパッドは熱供給コンポーネントとヒートシンクのような冷却構造との間で熱の伝導を行うため種々の装置で使用されている。これらのギャップパッドは熱供給コンポーネントとヒートシンクの間で物理的接触を行い、熱をコンポーネントから排出する。例えばギャップパッドは熱供給コンポーネントが種々のサイズと製造公差を有し、それによってコンポーネントとヒートシンクとの間で小さいギャップを生じることができる装置で有用である。
【0003】
種々のギャップサイズに適合し、動作期間中のヒートシンクと熱供給コンポーネントとの間の熱接触を維持するために、過去においては、熱ギャップパッドはギャップよりも大きい厚さを有するように設計されてきた。装置が組立てられるとき、パッドはヒートシンクと熱供給コンポーネント間で圧縮される。1例として、パッドはパッドの厚さの約50%であるギャップへ圧縮されることができる。この圧縮によって、ヒートシンクに対しておよび熱供給コンポーネントに対して圧縮力がパッドによって与えられる。幾つかのケースでは、圧縮力は過度に大きくなる可能性があり、(電子コンポーネントのような)熱供給コンポーネントまたは接続された構造(例えばはんだ接合)に屈曲または割れを生じ、故障または信頼性の減少につながる可能性がある。別のケースでは、圧縮力は非常に小さく、熱供給コンポーネントとヒートシンクとの間の接触を失わせ、熱伝導の損失を生じる。最小レベルの圧縮がギャップパッドを通る適切な熱伝導を維持することが所望される。さらにこれらのギャップパッドは分解されるように設計されていない装置で使用される可能性があり、したがってギャップパッドは容易に置換されることができない。
【0004】
したがって、熱供給コンポーネントと冷却構造上の圧縮荷重を減少しながら、熱供給コンポーネントと冷却構造との間の接触および熱伝導を維持する熱ギャップパッドの必要性が存在している。
【発明の概要】
【0005】
本発明は電子装置のような熱供給コンポーネントから熱を伝導するための熱ギャップパッドに関し、特に減少された圧縮荷重を有する熱ギャップパッドに関する。1実施形態では、装置は電子コンポーネント又はサブアセンブリのような熱供給コンポーネントと、ヒートシンク又はコールドプレートのような冷却構造を含んでいる。熱ギャップパッドは電子コンポーネントと冷却構造との間のギャップへ挿入される。熱ギャップパッドは冷却構造に接触するパッドの表面に沿って潤滑剤を含んでいる。組立て期間中、コンポーネントは共に移動され、ギャップパッドはギャップ中で圧縮される。パッドの表面に沿った潤滑剤はギャップパッドが圧縮されるときパッドの表面が冷却構造に沿って減少された摩擦で滑動することを可能にする。この表面に沿った減少された摩擦はギャップパッドが圧縮に適合するように滑動し外方向に膨張することを可能にする。その結果として、パッドは減少された圧縮力でギャップ中に圧縮されることができる。本発明の熱ギャップパッドはコンピュータ、センサ、航空機に位置されるその他の装置のような内部電子装置、軍事、産業及び商用装置、及び他の応用を含む種々のタイプの応用で使用されることができる。
【0006】
1実施形態では、熱アセンブリは熱供給コンポーネント、冷却構造、第1の表面を有するギャップパッド、このギャップパッドの第1の表面に沿って与えられた潤滑剤を含んでいる。潤滑剤は約500cP(センチポイズ)またはそれ未満の粘度を有する。ギャップパッドは熱供給コンポーネントと冷却構造との間で圧縮され、それによってギャップパッドの第1の表面は冷却装置と熱接触する。
【0007】
1実施形態では、熱アセンブリは熱供給コンポーネントと、冷却構造と、熱供給コンポーネンと冷却構造との間で圧縮されたギャップパッドとを含んでいる。ギャップパッドと冷却構造との間の摩擦係数は約0.05以下である。
【0008】
1実施形態では、熱アセンブリの組立て方法は熱供給コンポーネントと冷却構造を設け、ギャップパッドの第1の表面に沿って潤滑剤を有するギャップパッドを設け、ギャップパッドを熱供給コンポーネントと冷却構造との間に挿入し、ギャップパッドの第1の表面は冷却構造に接触させ、熱供給コンポーネントと冷却構造との間のギャップパッドを圧縮するステップを含んでいる。ギャップパッドの圧縮は冷却構造に沿ってギャップパッドの第1の表面を滑動させる。熱供給コンポーネントは電子コンポーネントであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】電子装置及び冷却装置の部分的側面図である。
【図2】本発明の1実施形態による、圧縮荷重前の電子装置、冷却構造、熱ギャップパッドの部分的側面図である。
【図3】本発明の1実施形態による、圧縮荷重下の電子装置、冷却構造、熱ギャップパッドの部分的側面図である。
【図4】本発明の実施形態による種々の熱ギャップパッドの斜視図である。
【図5】本発明の1実施形態による電子装置の組立て方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は電子装置のような熱発生コンポーネントから熱を伝導するための熱ギャップパッドに関し、特に減少された圧縮荷重を有する熱ギャップパッドに関する。1実施形態では、装置は電子コンポーネント又はサブアセンブリのような熱供給コンポーネントと、ヒートシンク又はコールドプレートのような冷却構造を含んでいる。熱ギャップパッドは電子コンポーネントと冷却構造との間のギャップへ挿入される。熱ギャップパッドは冷却構造に接触するパッドの表面に沿って潤滑剤を含んでいる。組立て期間中、コンポーネントは共に移動され、ギャップパッドはギャップで圧縮される。パッドの表面に沿った潤滑剤はギャップパッドが圧縮されるときパッドの表面が冷却構造に沿って減少された摩擦で滑動することを可能にする。この表面に沿った減少された摩擦はギャップパッドが圧縮に適合するように滑動し外方向に膨張することを可能にする。その結果として、パッドは減少された圧縮力でギャップ中に圧縮されることができる。本発明の熱ギャップパッドはコンピュータ、センサ、航空機に位置されるその他の装置のような内部電子装置、軍事、産業及び商用装置、及び他の応用を含む種々のタイプの応用で使用されることができる。
【0011】
電子アセンブリ10が熱供給コンポーネントを有するアセンブリの1例として図1に示されている。電子アセンブリは2つの熱供給コンポーネントまたはサブアセンブリ14、16を有する電子装置12を含んでいる。この特定の実施形態では、2つの熱供給コンポーネントまたはサブアセンブリ14、16は幾つかのはんだ接合20で印刷配線板18に取付けられている。アセンブリはヒートシンク32を含む冷却構造30も含んでいる。ヒートシンク32は冷却構造の他のコンポーネントにより冷却され、装置の動作期間中にこれらのコンポーネントから熱を伝導するため熱供給コンポーネント14、16の近くに位置される。
【0012】
しかしながら、ギャップ34、36は各コンポーネント14、16とヒートシンク32との間に存在する。2つのギャップ34、36は図1に示されているように異なるサイズであってもよく、またはこれらは類似のサイズ或いは同じサイズであってもよい。ギャップは電子アセンブリ10における製造および/または組立て公差のために、または他のコンポーネントの幾何学形状およびパッケージングのために存在する。ギャップは装置の動作中に振動、荷重又は遅延のために存在する可能性もある。ギャップ34、36が空の状態であり、充填されないとき、コンポーネント14、16により発生された熱はシステムを冷却するためにヒートシンク32へ有効に伝導されず、コンポーネント14、16はオーバーヒートし故障する可能性があり、および/または冷却路に沿った他のコンポーネントをオーバーヒートさせ故障させる可能性がある。
【0013】
したがって、ギャップパッドは加熱供給コンポーネントと冷却構造との間のギャップに挿入される。本発明の1実施形態による圧縮荷重前の熱アセンブリ100がギャップパッド140と共に図2に示されている。この例では熱アセンブリ100は、はんだ接合120において印刷配線板118上に取付けられている熱供給電子コンポーネントまたはサブアセンブリ114を備えた電子装置112を含んでいる。示されている例では、サブアセンブリ114ははんだ接合126において基板124に取付けられているプロセッサチップ122をカバーまたはハウジング128内に含んでいる。はんだ接合120、126は電子コンポーネントを基板又は回路板へ取付けるための接続パッケージの1例として示されている。はんだ接合は例えばプロセッサチップのための表面取付けとして使用されるボールグリッドアレイを形成するはんだボールであることができる。ピングリッドアレイ、カラムグリッドアレイ又はその他のような他の表面取付けパッケージが使用されることができる。電子サブアセンブリ114は電子コンポーネントと呼ばれ、電子装置112は回路カードアセンブリと呼ばれることができる。ボールグリッドアレイとプロセッサチップを有するサブアセンブリは熱供給電子コンポーネント114の1例として図2に示されている。他の実施形態はトランジスタ、集積回路、種々のプロセッサチップのような他のタイプの熱供給コンポーネントおよび、ピングリッドアレイ、カラムグリッドアレイ、その他のような他の表面取付けパッケージを含むことができる。
【0014】
さらに、熱供給コンポーネントは電子装置に限定されない。種々のタイプの電子および非電子熱供給コンポーネントが熱アセンブリ100で使用されることができる。例えば熱供給コンポーネントは熱を冷却システムの別の部分へ伝える熱ストラップであることができる。別の例として、熱供給コンポーネントはブレーキパッドのような摩擦コンポーネントであることができる。熱供給電子コンポーネントまたはサブアセンブリ114を備えた電子装置112は熱供給コンポーネントの単なる1例として図2に示されている。ここで使用されている「熱供給」は熱伝導と熱発生コンポーネントを含んでいる。
【0015】
アセンブリはヒートシンク132のような冷却構造130も含んでいる。熱ギャップパッド140は熱供給コンポーネント114とヒートシンク132の間のギャップ134へ挿入される。冷却構造130は短い又は長い伝導路を通して熱を伝導するための機構を含むことができる。例えば冷却構造130は熱を伝導するため冷却システムの遠隔部へ接続されている熱ストラップまたは他のコンポーネントを含むことができる。構造130はコンポーネント112から離れて位置されているコールドプレートへ接続する1以上の熱ストラップを含むことができる。構造130はギャップパッドに隣接するコールドプレートを含むことができる。多くのタイプの冷却システムが意図され、ギャップパッドが熱供給コンポーネントと冷却構造の表面の間に挿入される。
【0016】
図2を再度参照すると、潤滑剤142が熱ギャップパッド140とヒートシンク132との間に与えられる。図2の実施形態では、潤滑剤142はヒートシンクの下部表面133に面するギャップパッドの上部表面144に沿った被覆として設けられる。潤滑剤142はギャップパッドが圧縮されるとき表面133に沿ってギャップパッドの滑動動作を促すためギャップパッド140とヒートシンク132との間の摩擦係数を減少する。1実施形態では、ヒートシンクの下部表面133は実質的に平滑または平坦であり、ここで潤滑剤とギャップパッドが接触する。
【0017】
2つの表面144と133との間の摩擦係数が高いとき、表面間の摩擦は圧縮期間中にヒートシンク132の表面133に沿ったギャップパッドの動きに抵抗する。その結果として、熱アセンブリ100が組み立てられ、ギャップパッド140がヒートシンク132と電子コンポーネント114との間で圧縮されるとき、ギャップパッドの上部表面144はヒートシンクの下部表面133に沿った動きに抵抗する。ギャップパッドと電子コンポーネント114との間の摩擦は同様に、ギャップパッドの下部表面146と電子コンポーネントの上部表面115との間の境界面における動きに対して抵抗を起こす可能性がある。結果として、圧縮期間中、ギャップパッドは(側面140a、140bのような)露出側面で外方向に隆起し、表面133、115に沿った動きに抵抗する。大きい圧縮力はギャップパッドにギャップ134へ圧縮するのに十分な量を外方向に隆起させるため組み立て期間中に使用される。
【0018】
本発明の1実施形態では、潤滑剤142は表面144と133との間の摩擦係数を減少し、図3に示されているように、圧縮期間中にギャップパッド140が表面133に沿って滑動することを可能にする。図3では、圧縮荷重150はコンポーネントを共に所望のパッケージへ組み立てるため矢印により示されているように与えられる。潤滑剤142は圧縮期間中にヒートシンクの下面に沿ってギャップパッドの上面が滑動することを可能にする。表面144は滑動し、圧縮を適合するように外方向に膨張する。結果として、パッド140をギャップ134へ圧縮するための組立てプロセス期間中に与えられる圧縮力は減少される。
【0019】
1実施形態では、潤滑剤142はギャップパッドの表面144とヒートシンク132の接面133との間に設けられるが、ギャップパッドの表面146と(ハウジング128の上部表面のような)電子コンポーネント144の接面115との間では省略される。結果として、1実施形態ではギャップパッドとヒートシンクとの間の摩擦係数はギャップパッドと電子コンポーネント114との間の摩擦係数よりも小さい。この摩擦係数の差はギャップパッドが電子コンポーネント114から滑り落ちることを防止するために望ましい。圧縮期間中、電子コンポーネントに接触するギャップパッドの表面146は反対側の表面144よりも高いレベルの摩擦を維持し、パッドを電子コンポーネント上の位置に維持する。潤滑剤はさらに電子コンポーネント114が湿度または潤滑剤に敏感であるならば、潤滑剤が電子コンポーネント114へ漏洩することを防止するためにこのインターフェースで省略される。ギャップパッドとヒートシンク間の対向する表面144に与えられた潤滑剤142は増加された滑動動作と減少された圧縮力を可能にする。
【0020】
しかしながら、他の実施形態では、潤滑剤は表面146と115の間、および表面144と133の間に与えられることができる。2つの潤滑剤は同じ潤滑剤であってもよく、またはこれらは異なる潤滑剤でもよい。潤滑剤は2つのインターフェースにおける摩擦係数が異なるように調節されることができる。例えば表面144、133よりもそのインターフェースで高い摩擦係数を与えるように、粘性が低いか高い潤滑剤が表面146と115で使用されることができる。
【0021】
1実施形態では、潤滑剤142により、潤滑剤を与えられたギャップパッド140とヒートシンク132の間の摩擦係数は約0.01以下であり、別の実施形態では、約0.02以下であり、別の実施形態では約0.05以下である。
【0022】
図2−3に示されているように、ギャップパッドとヒートシンクとの間の潤滑剤142はギャップパッドの上部表面144が圧縮期間中に外方向へ滑動することを可能にする。圧縮荷重150に適合するため、ギャップパッドは実際に外方向に膨張し表面133に沿って滑動する。潤滑剤はパッドの端部140a、140bがヒートシンク132との摩擦により限定されるのではなく、パッドがヒートシンクと接触する場所で拘束されないことを可能にし、それによってパッド140は滑動し膨張できる。結果として、ヒートシンクと接触するギャップパッドの表面積は圧縮期間中に増加する。即ち図2では、圧縮前、ギャップパッドはヒートシンク132と接触する第1の表面積SA1を有する。図3では、圧縮後、ギャップパッドはヒートシンク132と接触する第2の表面積SA2を有する。第2の圧縮された表面積SA2は第1の圧縮されていない表面積SA1よりも大きい。1実施形態では、表面積SA2は表面積SA1よりも約20%大きい。表面積の膨張量はギャップパッドの初期サイズに基づくことができる。1実施形態では表面積SA2は電子装置と接触するギャップパッドの表面積よりも大きい。
【0023】
前述したように、潤滑剤142はギャップパッドとヒートシンクの間の摩擦係数を減少させ、ギャップパッドが滑動し、ヒートシンクの表面に沿って膨張し、それによってギャップパッドをギャップへ圧縮するための電子アセンブリに与えられる圧縮荷重を減少させる。1実施形態では、圧縮荷重は約50%以上減少され、別の実施形態では約60%以上減少される。即ちより小さい力がギャップパッドを所定のギャップサイズへ圧縮するために与えられる。特に1実施形態では、60ミル(0.060インチ)の厚さを有するギャップを30ミル(0.030インチ)のギャップへ圧縮するために与えられる荷重は潤滑剤なしでは約80psiであり、潤滑剤有りでは30psiである。
【0024】
ギャップパッドの種々の構造はギャップパッドとヒートシンクとの間に潤滑剤を与えるために使用されることができる。幾つかの例が図4の(A)乃至(E)に示されている。例えば図4の(A)の実施形態では、潤滑剤242aがギャップパッド240aの上部表面244に沿って均一な被覆252として与えられる。被覆252は均一な厚さで上部表面244を横切って延在する。1例として、ギャップパッド240aは約60ミル(0.06インチ)の厚さを有することができ、被覆252は約3ミル(0.003インチ)の厚さを有することができる。ギャップへのパッドの圧縮中(図2−3参照)、潤滑剤242aはギャップパッドの上部表面244が(コールドプレートまたは他の冷却構造のような)ヒートシンクに沿って滑動することを可能にする。ギャップパッド240aはギャップパッドの組み立て準備がされるまで、即ちこのとき解除ライナーが剥がされギャップパッドから除去され、被覆252の上部表面を露出するまで被覆252をカバーする別の解放ライナー(図示せず)を含んでいる。解放ライナーはギャップパッドの使用準備がされるまでギャップパッドで潤滑剤を保持し保護する。解放ライナーは例えばシリコーンを被覆された紙または薄いプラスティックシートであってもよい。解放ライナーはさらに以下説明する構造に設けられることもできる。
【0025】
図4の(B)で、ギャップパッド240bはギャップパッドの上部表面244とパッドからパッドの下部表面246へ貫通する穴254を含んでいる。これらの穴254は潤滑剤242bで充填される。電子コンポーネントと冷却装置間のギャップパッドの圧縮中、ギャップパッドは穴254へ隆起し膨張し、潤滑剤を穴254外へ、ギャップパッドと冷却構造間の構造244へ流出させる。潤滑剤はギャップパッドと冷却構造の間を流れ、2つの表面間の摩擦を減少し、それによってギャップパッドが圧縮期間中に滑動および外方向に膨張することを可能にする。随意選択的に、ギャップパッド240bは圧縮中に穴外から電子コンポーネントへ流れる潤滑剤の量を減少するため、穴254がない固体の中心域256を含むことができる。電子コンポーネントは図2の中心チップ122からの適切な/より良好な熱伝導を維持するため固体の中心域256下に位置されることができる。
【0026】
図4の(C)では、ギャップパッド240cはギャップパッドの上部表面244に窪み258を含んでいる。窪み258は上部表面244で細長い平行の溝260として示されている。他の実施形態では、窪み258は間隔を有する凹みのような他の形状を取ることができる。潤滑剤242cは窪み258で受けられる。圧縮期間中、ギャップパッドは伸張し膨張し、窪み258をより浅くさせる。これによって潤滑剤242cは窪み外へパッドの上部表面244に沿って窪み間を流れ、ギャップパッドと冷却構造間の摩擦係数を減少させる。
【0027】
図4の(D)で、ギャップパッド240dはギャップパッド内に埋設されたポケットまたは穴262を含んでおり、潤滑剤242dはポケットまたは穴262を充填する。圧縮期間中、ギャップパッドはポケット262へ伸張し、それを圧迫し、潤滑剤をギャップ外へ上部表面244へ流出させる。
【0028】
図4の(E)で、ギャップパッド240eは潤滑剤242e量をそれぞれ含むドームまたは泡264を有する上部表面244を含んでいる。ドームは薄膜で密封されることができる。圧縮中に、圧縮力は膜を破り潤滑剤を解放し、潤滑剤はその後、上部表面244を覆って流れる。膜は例えばパラフィンであってもよい。
【0029】
種々の材料がギャップパッドの利用可能である。例えばギャップパッドはシリコーンから作られることができる。ギャップパッドは窒化ホウ素又は酸化アルミニウム(Al)球体を混入されたシリコンベースの重合体懸濁液であってもよい。ギャップパッドはゴム材料または適切な重合鎖であってもよい。別の実施形態では、パッドはパテまたは粘土タイプの材料であってもよい。種々の実施形態では、ギャップパッドは熱伝導性であり、それによって電子コンポーネントからヒートシンクへ熱を伝導できる。種々の実施形態ではギャップパッドは弾性体であり、圧縮から跳ね返る傾向があり、それによって装置の動作または移動期間にギャップを横切って電子装置と冷却装置との接触を維持する。ギャップパッドは圧力下で変形可能であり、弾性的であり変形後にその形状を回復する傾向がある。
【0030】
前述したように、ギャップパッドの種々の形態は潤滑剤を受けるためにギャップパッドの上部表面244の穴、窪み、溝、その他の構造を含んでいる。1実施形態では、これらの構造はギャップパッドが組立て期間中に圧縮されるとき、その構造がギャップパッドにより圧縮され閉じられ潤滑剤をギャップパッドから出させるように寸法を定められ、相互に間隔を隔てられている。ギャップパッド材料は穴または溝中へ移動し、これらを閉じる。圧縮後、冷却構造と熱接触しているギャップパッドの上部表面244に沿った表面積は穴、窪み、溝、又は他の表面特性により縮小されない。その理由はこれらの構造が圧縮中にギャップパッド自体により充填されているからである。圧縮後、上部表面244は接触が行われないこれらの穴または窪みが組み入れられるのではなく実質的に冷却構造と連続的に熱接触している。圧縮後、ギャップパッドと冷却構造との間に潤滑剤が残る可能性があることを理解すべきである。ギャップパッドと冷却構造との間の熱接触についての言及はここでも潤滑剤の存在を除外することを意図していない。圧縮後、幾つかの穴、溝または他の表面構造は圧縮されたギャップパッドにより完全に充填されない可能性があり、幾つかの穴または浅い溝が残る可能性があることも理解すべきである。しかしながらこれらの構造は実質的に充填される。潤滑剤はこれらの残った穴を占有し、ギャップパッドと冷却構造との間で熱伝導を行い、これらを相互に接触させる。したがって圧縮後、弾力的なギャップパッドは、ギャップパッドが存在しないギャップまたはスペースを含めるのではなく、ギャップパッドの周辺内の実質的に全ての表面区域を横切って冷却構造と電子装置との間に存在する。
【0031】
潤滑剤は種々の選択肢から選択されることができる。種々の実施形態では、潤滑剤はシリコーン潤滑剤、水性のシリコーン、重合体潤滑油、ペルフルオロ流体、シリコーンエステル、合成潤滑剤、ポリテトラフルオロエチレン、セラミックパウダー、グラフェンおよび/または他の適切なオイル、グリース、潤滑剤である。1実施形態では、潤滑剤は約30−100℃で約100cP(センチポイズ)の範囲の粘度を有し、別の実施形態では、潤滑剤は約500cPよりも小さい粘度を有する。潤滑剤は熱グリースよりも低い粘度を有し、これは10^5cP程度の粘度を有することができる。さらに低い粘度はせん断力および滑動動作に対してより低い抵抗を与え、それによって潤滑剤はより粘度のある熱グリースとは異なって、ギャップパッドが前述したように滑動することを可能にできる。ここで用語「グリース」はこれらのより粘度のある化合物を指し、「潤滑剤」は粘度の少ない化合物を指すことに使用される。適切な潤滑剤の例は(Castrol(商標名)からの)Braycote 600 EFとBraycote 815Zであり、対照的に、より粘度のあるグリースの例は(Tuniq Co.Ltd.からの)TX−2熱化合物と、(Parker Chomerics, Parker Hannifin Corporationからの)T650、T660、T670の熱グリースを含んでいる。1実施形態では、潤滑剤はギャップパッドのように、弾性的または弾性的ではない。
【0032】
選択された潤滑剤はギャップパッドと冷却構造との間で熱を伝導することができなければならない。1実施形態では、潤滑剤は約0.2W/m−K(ワット・パー・ケルビン・パー・メートル)またはそれ以上の熱伝導性を有する。1実施形態では、ギャップパッドは約1.5W/m−K以上の熱伝導性を有し、別の実施形態では約15W/m−Kよりも大きい熱伝導性を有する。
【0033】
幾つかの潤滑剤が50%の応力を実現するのに必要な圧縮荷重を決定するため試験された。1つの無潤滑の熱ギャップパッド(以下、「乾燥」サンプル)と5つの潤滑にされたギャップパッドが以下の試験条件下で試験された。ギャップパッドは0.05インチの初期厚さを有するLaird T-Flex 650ギャップパッドである。圧縮された試験面積は1.3インチ(3.3cm)×1.3インチ(3.3cm)の寸法である。各パッドは毎分0.02インチ(0.05cm)の圧縮率で圧縮された。圧縮機はInstron(商標名)試験機であり、アルミニウムの圧縮表面を有し、試験は室温で行われた。各ギャップパッドの1乃至5のサンプルが以下に示されているように試験された。
【0034】
この試験の結果が以下、表1に示されている。
【表1】

【0035】
これらの結果は潤滑剤が通常、ギャップパッドの50%の圧縮を実現するのに必要な圧縮力を減少したことを示している。1実施形態では、Braycote 600 EFの潤滑剤では、50%の張力に到達するための圧縮力は乾燥サンプルと比較して約65%減少された。
【0036】
図5は本発明の1実施形態による熱アセンブリの組立て方法を示している。この方法は熱供給コンポーネントと冷却構造を設け(501)、熱供給コンポーネントと冷却構造との間にギャップパッドと潤滑剤を挿入する(502)ステップを含んでいる。1実施形態では、潤滑剤はギャップパッドの第1の表面に沿った被覆として与えられ、ギャップパッドの挿入は(コールドプレートのような)冷却構造と接触する潤滑剤の被覆を備えたギャップパッドの挿入を含んでいる。他の実施形態では、潤滑剤は他の構造で与えられる。例えば潤滑剤はギャップパッドの第1の表面の1以上の窪み内に与えられることができ、ギャップパッドは窪みを有する表面が冷却構造と接触するように挿入される。
【0037】
方法はその後、熱供給コンポーネントと冷却構造の表面との間のギャップパッドを圧縮する(503)ステップを含んでいる。1実施形態では、ギャップパッドの圧縮は約200psiの圧縮圧力を与えることを含んでいる。圧縮力は温度のような多くの変数にしたがうことを理解すべきである。1実施形態では、ギャップパッドの圧縮は、0.06インチ(0.15cm)から約0.03インチ(0.076cm)へのような、ギャップパッドをパッドの厚さの約50%であるギャップへ圧縮するためには、潤滑剤なしでは約80psiの圧縮圧力を与え、潤滑剤有りでは約40psiの圧縮圧力を与える。
【0038】
方法はまた冷却構造の表面に沿ってギャップパッドを滑動する(504)ステップを含んでいる。圧縮中、潤滑剤はギャップパッドと冷却構造との間の摩擦係数を減少させ、ギャップパッドを冷却構造の表面に沿って滑動することを可能にする。
【0039】
随意選択的に、方法はまた圧縮後に潤滑剤を除去する(505)ステップも含んでいる。例えば圧縮荷重が与えられ、ギャップパッドがコンポーネント間で所望の寸法へ圧縮された後、アセンブリは潤滑剤を蒸発または硬化するように加熱されることができる。加熱後、潤滑剤は除去されるかより粘度のある形態へ硬化されるので、ギャップパッドと冷却構造との間の摩擦係数は増加される。別の選択肢として、潤滑剤は潤滑剤を除去するための真空を与えるか、または潤滑剤を除去するためCOのようなガスの流動を与えることにより除去されることができる。
【0040】
この除去または硬化ステップは、潤滑剤が圧縮期間中には有用であるが、動作期間中には所望ではない応用では望ましい。例えば動作期間中に電子コンポーネントを潤滑剤から隔離することが望ましい可能性がある。別の例では、コンポーネントを位置に設置し、装置の動作期間中にさらに移動することを防止するために、圧縮後にギャップパッドと冷却構造との間の摩擦係数を増加することが望ましい可能性がある。例えばアセンブリは動作期間中に力、荷重、他の遅延を受ける可能性があり、増加された摩擦係数はギャップパッドを位置に保持し、動作期間中に冷却構造および熱供給コンポーネントの両者と接触することを助ける。
【0041】
1実施形態では、潤滑剤は水性の潤滑剤であり、これは例えばアセンブリを加熱し、潤滑剤を蒸発させることによって圧縮後にアセンブリから除去されることができる。別の実施形態では、潤滑剤は組立て後に潤滑剤を加熱することによりギャップパッドへ吸収される。
【0042】
1実施形態では、組立て方法はギャップパッドを与え、ギャップパッドを潤滑剤で被覆し、その後加熱供給コンポーネントとヒートシンクとの間にギャップパッドを挿入するステップを含んでいる。別の実施形態では、方法はヒートシンクの表面を潤滑剤で被覆し、その後ギャップパッドをギャップへ挿入するステップを含んでおり、ギャップパッドの1表面は潤滑剤に接触している。
【0043】
明瞭にする目的で寸法が図面では誇張されており、必ずしも実寸大ではないことに注意すべきである。
【0044】
設置後、1実施形態では、圧縮されたギャップパッドは最大の許容可能な荷重規準よりも小さい力を熱供給コンポーネントへ加えることができる。1実施形態では、熱供給コンポーネントは最大の許容可能な荷重規準が約40psi程度のボールグリッドアレイであり、別の実施形態では熱供給コンポーネントは約70psi程度の最大の許容可能な荷重規準を有する。他の構造の最大の許容可能な荷重規準はコンポーネント及び応用に応じて変化する。
【0045】
本発明を例示的な実施形態に関して説明し示したが、これはこのように限定されないで、請求項で請求されているように本発明で意図されている全体的な技術的範囲内で変化及び変形が行われることが理解されよう。例えばギャップパッドは種々の寸法及び形状を有することができ、可変のタイプの電子またはその他の熱供給コンポーネントを備えた異なる応用で使用されることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱供給コンポーネントと、
冷却構造と、
第1の表面を有するギャップパッドと、
前記ギャップパッドの第1の表面に沿って与えられ、約500cP以下の粘度を有する潤滑剤とを具備し、
前記ギャップパッドは前記ギャップパッドの前記第1の表面は前記冷却構造と熱接触するように前記熱供給コンポーネントと前記冷却構造との間で圧縮されている熱アセンブリ。
【請求項2】
前記潤滑剤は前記ギャップパッドの前記第1の表面に沿って被覆を有している請求項1記載の熱アセンブリ。
【請求項3】
前記ギャップパッドの前記第1の表面は複数の溝を具備し、ここで前記潤滑剤は前記溝中に受入れられている請求項1記載の熱アセンブリ。
【請求項4】
前記ギャップパッドは前記ギャップパッドの前記第1の表面を通る複数の穴を具備し、前記潤滑剤は前記穴に受入れられている請求項1記載の熱アセンブリ。
【請求項5】
前記ギャップパッドの前記第1の表面は複数の窪みを具備し、前記潤滑剤は前記窪みに受入れられている請求項1記載の熱アセンブリ。
【請求項6】
前記ギャップパッドは前記ギャップパッド内に複数のポケットを具備し、前記潤滑剤は前記ポケット中に受入れられている請求項1記載の熱アセンブリ。
【請求項7】
前記潤滑剤は前記ギャップパッドの前記第1の表面上の膜内に密封されている請求項1記載の熱アセンブリ。
【請求項8】
前記圧縮されたギャップパッドは実質的に前記ギャップパッドには開口または空洞がない請求項1記載の熱アセンブリ。
【請求項9】
前記潤滑剤はシリコーンで構成されている請求項1記載の熱アセンブリ。
【請求項10】
前記熱供給コンポーネントは電子コンポーネントを含んでいる請求項1記載の熱アセンブリ。
【請求項11】
前記ギャップパッドの前記第1の表面と前記冷却構造との間の摩擦係数は約0.05以下である請求項1記載の熱アセンブリ。
【請求項12】
前記ギャップパッドの前記第1の表面は第1の圧縮されていない表面領域と第2の圧縮された表面領域とを有し、前記第2の圧縮された表面領域は第1の圧縮されていない表面積よりも20%大きい請求項1記載の熱アセンブリ。
【請求項13】
熱供給コンポーネントと、
冷却構造と、
前記熱供給コンポーネントと前記冷却構造との間で圧縮されているギャップパッドとを具備し、
前記ギャップパッドと前記冷却構造との間の摩擦係数は約0.05以下である熱アセンブリ。
【請求項14】
さらに、前記ギャップパッドと前記冷却装置との間に潤滑剤を具備している請求項13記載の熱アセンブリ。
【請求項15】
前記潤滑剤は約500cP以下の粘度を有し、前記ギャップパッドは約1.5W/m−K以上の熱伝導性を有している請求項14記載の熱アセンブリ。
【請求項16】
前記熱供給コンポーネントは電子コンポーネントを含んでいる請求項15記載の熱アセンブリ。
【請求項17】
熱供給コンポーネントと冷却構造を設け、
ギャップパッドの第1の表面に沿って潤滑剤を有するギャップパッドを設け、
前記ギャップパッドを前記熱供給コンポーネントと前記冷却構造との間に挿入し、前記ギャップパッドの前記第1の表面は前記冷却構造に接触させ、
前記熱供給コンポーネントと前記冷却構造との間の前記ギャップパッドを圧縮するステップを含んでおり、前記ギャップパッドの圧縮は前記冷却構造に沿って前記ギャップパッドの前記第1の表面を滑動するステップを含んでいる熱アセンブリの組立て方法。
【請求項18】
さらに、圧縮後前記潤滑剤を除去するステップを含んでいる請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記ギャップパッドは約1.5W/m−K以上の熱伝導性を有し、前記ギャップパッドの圧縮は約40psi以下の圧縮力を与える請求項17記載の方法。
【請求項20】
前記ギャップパッドの圧縮は前記冷却装置との熱接触において前記ギャップパッドの表面積を増加させる請求項17記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−134501(P2012−134501A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−278348(P2011−278348)
【出願日】平成23年12月20日(2011.12.20)
【出願人】(503455363)レイセオン カンパニー (244)
【Fターム(参考)】