説明

適応等化回路および方法、並びに信号処理装置

【課題】簡単な構成で、再生時の読み取りエラーを抑制することができるようにする。
【解決手段】調整モジュール22は、入力された再生信号の波形等化を行い、波形等化された再生信号を、2値化部28およびPLL回路23に出力する。PLL回路23は、波形等化された再生信号の再生信号評価値、再生信号とクロックとの位相誤差、および再生信号の反転間隔を検出し、クロックの位相を、再生信号の位相に同期させるようにVCO回路27を制御する。適応等化制御部24は、PLL回路23により検出されたデータに基づいて、イコライザ41が用いるイコライザ係数を、現在の再生信号に最適な値に調整する。本発明は、記録媒体より読み出される再生信号に対して信号処理を行う信号処理装置に適用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、適応等化回路および方法、並びに信号処理装置に関し、特に、簡単な構成で、再生モジュールの係数値を算出することにより、再生時の読み取りエラーを抑制することができるようにした適応等化回路および方法、並びに信号処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来は、評価の段階で、イコライザなどの再生系調整モジュール係数の最適値を導き出し、再生系調整モジュール係数を、導き出した最適値に固定して出荷していた。
【0003】
しかしながら、再生系調整モジュールを備えた装置やディスクの大量生産によって、市場においては、再生系調整モジュールを備えた装置やディスクにばらつきが発生してしまう。このため、最適値だと思われていた係数値が、装置やディスク、または両方の組み合わせによっては、最適値ではないということがあった。これにより、再生時に読み取りエラーなどが生じてしまうことがあった。
【0004】
例えば、特許文献1には、このような読み取りエラーなどに対して、イコライザの係数を変更する適応等化処理が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開平9−245436号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の提案では、入力信号と出力信号の値を用いて、わざわざ予測誤差を算出し、算出した予測誤差に基づいてイコライザの係数を調整していた。したがって、予測誤差を算出するための手間や時間がかかっていた。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、簡単な構成で、再生時の読み取りエラーを抑制することができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の側面の適応等化回路は、入力信号の波形等化を適応的に行う適応等化回路において、前記波形等化が行われた入力信号から、PLL回路により検出されるデータに基づいて、前記入力信号の波形等化の係数値を調整する係数値調整手段と、前記係数値調整手段により調整された前記係数値を用いて、前記入力信号の波形等化を行う波形等化処理手段とを備える。
【0009】
前記係数値調整手段は、前記波形等化が行われた入力信号から、前記PLL回路により検出される実測最短反転間隔と、目標最短反転間隔との比較結果に基づいて、前記係数値の変更ゲイン量を調整することができる。
【0010】
前記係数値調整手段は、前記波形等化が行われた入力信号から、前記PLL回路により検出される再生信号評価値に基づいて、前記係数値よりも分解能が高い真値が収束するように調整し、調整された前記真値に近い前記係数値を採用することができる。
【0011】
前記PLL回路により検出される実測最短反転間隔と、目標最短反転間隔との差が所定の閾値より大きい場合が、一定区間内で所定の回数以上のとき、前記係数値調整手段は、前記波形等化が行われた入力信号から、前記PLL回路により検出される実測最短反転間隔と、目標最短反転間隔との比較結果に基づいて、前記係数値の変更ゲイン量を調整し、前記PLL回路により検出される実測最短反転間隔と、目標最短反転間隔との差が所定の閾値より大きい場合が、一定区間内で所定の回数未満のとき、前記係数値調整手段は、前記PLL回路により検出される再生信号評価値に基づいて、前記係数値よりも分解能が高い真値が収束するように調整し、調整された前記真値に近い前記係数値を採用することができる。
【0012】
本発明の第1の側面の適応等化方法は、入力信号の波形等化を適応的に行う適応等化回路の適当等化方法において、前記波形等化が行われた入力信号から、PLL回路により検出されるデータに基づいて、前記入力信号の波形等化の係数値を調整し、調整された前記係数値を用いて、前記入力信号の波形等化を行うステップを含む。
【0013】
本発明の第2の側面の信号処理装置は、記録媒体より読み出された信号を処理する信号処理装置において、前記信号を入力する信号入力手段と、波形等化が行われた信号から、PLL回路により検出されるデータに基づいて、前記信号入力手段により入力された信号の波形等化の係数値を調整し、調整された前記係数値を用いて、前記信号の波形等化を行う適応等化回路と、前記適応等化回路により前記波形等化が行われた信号を出力する信号出力手段とを備える。
【0014】
本発明の第1の側面においては、波形等化が行われた入力信号から、PLL回路により検出されるデータに基づいて、前記入力信号の波形等化の係数値が調整され、調整された前記係数値を用いて、前記入力信号の波形等化が行われる。
【0015】
本発明の第2の側面においては、記録媒体より読み出された信号が入力され、前記波形等化が行われた信号から、PLL回路により検出されるデータに基づいて、入力された信号の波形等化の係数値が調整され、調整された前記係数値を用いて、前記信号の波形等化が行われ、前記波形等化が行われた信号が出力される。
【0016】
信号処理装置は、独立した装置であってもよいし、記録再生装置や再生装置の信号処理を行うブロックであってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の第1の側面によれば、簡単な構成で、再生時の読み取りエラーを抑制することができる。
【0018】
本発明の第2の側面によれば、簡単な構成で、常に高い信頼性での記録や再生を可能にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に本発明の実施の形態を説明するが、本発明の構成要件と、明細書または図面に記載の実施の形態との対応関係を例示すると、次のようになる。この記載は、本発明をサポートする実施の形態が、明細書または図面に記載されていることを確認するためのものである。したがって、明細書または図面中には記載されているが、本発明の構成要件に対応する実施の形態として、ここには記載されていない実施の形態があったとしても、そのことは、その実施の形態が、その構成要件に対応するものではないことを意味するものではない。逆に、実施の形態が構成要件に対応するものとしてここに記載されていたとしても、そのことは、その実施の形態が、その構成要件以外の構成要件には対応しないものであることを意味するものでもない。
【0020】
本発明の第1の側面の適応等化回路は、入力信号の波形等化を適応的に行う適応等化回路(例えば、図1のイコライザ41および適応等化制御部24が集積されたチップ)において、前記波形等化が行われた入力信号から、PLL回路(例えば、図1のPLL回路23)により検出されるデータに基づいて、前記入力信号の波形等化の係数値を調整する係数値調整手段(例えば、図1の適応等化制御部24)と、前記係数値調整手段により調整された前記係数値を用いて、前記入力信号の波形等化を行う波形等化処理手段(例えば、図1のイコライザ41)とを備える。
【0021】
前記係数値調整手段(例えば、図8の適応等化制御部24)は、前記波形等化が行われた入力信号から、前記PLL回路により検出される実測最短反転間隔と、目標最短反転間隔との比較結果に基づいて、前記係数値の変更ゲイン量を調整することができる。
【0022】
前記係数値調整手段(例えば、図10の適応等化制御部24)は、前記波形等化が行われた入力信号から、前記PLL回路により検出される再生信号評価値に基づいて、前記係数値よりも分解能が高い真値が収束するように調整し、調整された前記真値に近い前記係数値を採用することができる。
【0023】
前記PLL回路により検出される実測最短反転間隔と、目標最短反転間隔との差が所定の閾値より大きい場合が、一定区間内で所定の回数以上のとき、前記係数値調整手段(例えば、図3の適応等化制御部24)は、前記波形等化が行われた入力信号から、前記PLL回路により検出される実測最短反転間隔と、目標最短反転間隔との比較結果に基づいて、前記係数値の変更ゲイン量を調整し、前記PLL回路により検出される実測最短反転間隔と、目標最短反転間隔との差が所定の閾値より大きい場合が、一定区間内で所定の回数未満のとき、前記係数値調整手段(例えば、図3の適応等化制御部24)は、前記PLL回路により検出される再生信号評価値に基づいて、前記係数値よりも分解能が高い真値が収束するように調整し、調整された前記真値に近い前記係数値を採用することができる。
【0024】
本発明の第1の側面の適応等化方法は、入力信号の波形等化を適応的に行う適応等化回路の適当等化方法において、前記波形等化が行われた入力信号から、PLL回路により検出されるデータに基づいて、前記入力信号の波形等化の係数値を調整し(例えば、図6のステップS16)、調整された前記係数値を用いて、前記入力信号の波形等化を行う(例えば、図6のステップS12)ステップを含む。
【0025】
本発明の第2の側面の信号処理装置は、記録媒体より読み出された信号を処理する信号処理装置(例えば、図1の信号処理装置1)において、前記信号を入力する信号入力手段(例えば、図1の入力端子11)と、波形等化が行われた信号から、PLL回路(例えば、図1のPLL回路23)により検出されるデータに基づいて、前記信号入力手段により入力された信号の波形等化の係数値を調整し、調整された前記係数値を用いて、前記信号の波形等化を行う適応等化回路(例えば、図1のイコライザ41および適応等化制御部24が集積されたチップ)と、前記適応等化回路により前記波形等化が行われた信号を出力する信号出力手段(例えば、図1の出力端子12)とを備える。
【0026】
以下、図を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0027】
図1は、本発明を適用した信号処理装置の構成例を示している。図1において、信号処理装置1は、例えば、光ディスク等の記録媒体からのデータを再生する再生システムに構成され、記録媒体より読み出される再生信号に対して信号処理を行う装置である。
【0028】
信号処理装置1は、入力端子11、および出力端子12、並びに、AD(analog-to-digital)変換器21、調整モジュール22、PLL(phase locked loop)回路23、適応等化制御部24、DA(digital-to-analog)変換器25、ローパスフィルタ(LPF:low pass filter)26、VCO(voltage controlled oscillator) 回路27、2値化部28、同期検出部29、復調部30、および誤り訂正部31などにより構成されている。
【0029】
なお、これらの構成要素のうち、例えば、AD変換器21、調整モジュール22、PLL回路23、適応等化制御部24、DA変換器25、ローパスフィルタ26、VCO回路27、および2値化部28は、1つのチップに集積化されている。
【0030】
信号処理装置1の入力端子11を介して入力された再生信号は、AD変換器21に入力される。AD変換器21は、VCO回路27より出力されるクロックによりタイミングを制御されて、入力端子11からの再生信号をデジタル化し、調整モジュール22に出力する。
【0031】
調整モジュール22は、イコライザ41、AGC(automatic gain control circuit)42、およびアシンメトリ補正回路43により構成され、入力された再生信号の波形等化を行い、波形等化された再生信号を、2値化部28およびPLL回路23に出力する。
【0032】
イコライザ41は、適応等化制御部24により調整されたイコライザ(EQ)係数を用いて、AD変換器21によりデジタル化された再生信号の周波数特性を調整し、周波数特性が調整された再生信号をAGC42に出力する。すなわち、イコライザ41は、適応等化制御部24とともに、再生信号の波形等化を適応的に行っている。
【0033】
AGC42は、イコライザ41により周波数特性が調整された再生信号のレベル調整を行い、レベル調整が行われた再生信号を、アシンメトリ補正回路43に出力する。
【0034】
アシンメトリ補正回路43は、AGC42によりレベル調整が行われた再生信号の波形の上下非対称歪み(アシンメトリ)を補正し、アシンメトリが補正された再生信号を、2値化部28およびPLL回路23に出力する。
【0035】
PLL回路23は、調整モジュール22により波形等化された再生信号の再生信号評価値、再生信号とクロックとの位相誤差、および再生信号の反転間隔を検出する。そして、PLL回路23は、検出した位相誤差や反転間隔に基づいて、クロックの位相を再生信号の位相に同期させるようにVCO回路27を制御する制御情報を、周波数情報として、DA変換器25に出力する。また、PLL回路23は、このとき検出した再生信号評価値および反転間隔のデータ(再生信号評価値および反転間隔の情報とも称する)を、適応等化制御部24に供給する。
【0036】
適応等化制御部24は、PLL回路23により検出されたデータに基づいて、イコライザ41が用いるイコライザ係数を、現在の再生信号に最適な値に調整する。そして、適応等化制御部24は、調整したイコライザ係数をイコライザ41に供給することで、イコライザ41に、再生信号の波形等化を、適応的に行わせる。
【0037】
DA変換器25は、PLL回路23からの周波数情報をアナログ化し、ローパスフィルタ26に出力する。ローパスフィルタ26は、周波数情報のノイズ(高周波成分)を除去し、VCO制御電圧としてVCO回路27に出力する。VCO回路27は、VCO制御電圧に相当する周波数で発振を行うことで、クロックを生成し、生成したクロックを、AD変換器21に供給する。
【0038】
2値化部28は、調整モジュール22により波形等化された信号に対して、例えば、パーシャルレスポンス(PR: partial response) (1,2,2,2,1)方式と最尤検出(ML:maximum likelihood sequence detection)方式を組み合わせたビタビ復号を行うことにより、0と1の2値であるチャネルビット列を検出することで、2値化を行い、同期検出部29に出力する。
【0039】
同期検出部29は、チャネルビット列から、所定の同期パターンを検出し、検出した同期パターンを復調部30に出力する。復調部30は、同期検出部29により検出された同期パターンに基づいて、チャネルビット列を所定の位置から復号し、誤り訂正部31に出力する。誤り訂正部31は、復調部30により復号された信号に対して、誤り訂正を行い、誤り訂正後の信号を出力端子12に出力する。出力端子12からの信号は、例えば、図示せぬデコード部などに出力され、画像や音声などのデータに復号される。
【0040】
図2は、図1の適応等化制御部24による制御モードを説明する図である。適応等化制御部24は、ゲイン(G)モード制御と位相(P)モード制御の2つの制御モードを有しており、それらの組み合わせにより、適応等化制御部24は、図2に示される4通りの制御での動作を行うことができる。
【0041】
例えば、ゲインモード制御および位相モード制御の両方がオフ(G-Off,P-Off)の場合、適応等化制御部24は、従来のように、イコライザ41に、固定のイコライザ係数での動作を行わせる。ゲインモード制御だけがオン(G-On,P-Off)の場合、適応等化制御部24は、ゲインモード制御で、イコライザ41に動作を行わせる。すなわち、適応等化制御部24は、イコライザ41に、ゲインモード制御で調整されたイコライザ係数での動作を行わせる。
【0042】
位相モード制御だけがオン(G-Off,P-On)の場合、適応等化制御部24は、位相モード制御で、イコライザ41に動作を行わせる。すなわち、適応等化制御部24は、イコライザ41に、位相モード制御で調整されたイコライザ係数での動作を行わせる。
【0043】
ゲインモード制御および位相モード制御の両方がオン(G-On,P-On)の場合、適応等化制御部24は、所定の条件の判定結果に応じて、ゲインモード制御と位相モード制御の切り替えを行う。すなわち、適応等化制御部24は、イコライザ41に、所定の条件の判定結果に応じた制御で調整されたイコライザ係数での動作を行わせる。
【0044】
図3は、図1のPLL回路23の構成例を示している。なお、図3の例においては、図1の各部のうち、1つのチップに集積化されているAD変換器21、調整モジュール22、PLL回路23、適応等化制御部24、DA変換器25、ローパスフィルタ26、VCO回路27、および2値化部28のみが示されている。
【0045】
PLL回路23は、位相検出部51、反転間隔検出部52、位相拡張部53、セレクタ54、およびループフィルタ(loop filter)55により構成されている。
【0046】
位相検出部51は、調整モジュール22により波形等化された再生信号の位相を検出し、検出した位相の情報を反転間隔検出部52に出力する。このとき、位相検出部51は、調整モジュール22により波形等化された再生信号の再生信号評価値(例えば、ジッタ)も検出し、図2を参照して上述した制御モードに応じて、検出した再生信号評価値を適応等化制御部24に供給している。
【0047】
また、位相検出部51は、調整モジュール22により波形等化された再生信号の位相とクロックの位相から、位相誤差を検出し、検出した位相誤差の情報を位相拡張部53に出力する。
【0048】
反転間隔検出部52は、位相検出部51により検出された位相に基づいて、波形等化された再生信号の反転間隔を検出し、そのうちの最長反転間隔(以下、実測最長反転間隔とも称する)を、ある固定値(以下、TMAX固定値とも称する)で、目標の理想最長反転間隔(以下、目標最長反転間隔とも称する)に合わせるように制御する。
【0049】
すなわち、反転間隔検出部52は、実測最長反転間隔を目標最長反転間隔に合わせるためのTMAX固定値を、VCO回路27に対する制御情報としてセレクタ54に出力する。なお、再生中の記録媒体がDVDの場合、理想最長反転間隔は、14Tとされる。反転間隔が14Tとは、14クロック(=14T)で1回の反転があることを表す。
【0050】
反転間隔検出部52は、実測最長反転間隔と目標最長反転間隔とのずれがほぼ落ち着いた場合(すなわち、実測最長反転間隔が目標最長反転間隔に合ってきた場合)、セレクタ54を、位相拡張部53側の端子に切り替えさせ、再度、実測最長反転間隔と目標最長反転間隔とのずれが生じた場合には、セレクタ54を、自分(反転間隔検出部52)側の端子に切り替えさせる。
【0051】
また、反転間隔検出部52は、図2を参照して上述した制御モードに応じて、検出された再生信号の反転間隔のうちの最短反転間隔(以下、実測最短反転間隔とも称する)の情報を適応等化制御部24に供給する。例えば、再生中の記録媒体の理想最短反転間隔は、再生中の記録媒体がDVDの場合、3Tとされる。すなわち、3クロック(=3T)で1回の反転がある間隔が、理想最短反転間隔とされている。この場合、適応等化制御部24に供給される実測最短反転間隔は、理想最短反転間隔の±0.5T(すなわち、2.5T乃至3.5T)とされる。
【0052】
位相拡張部53は、位相検出部51からの位相誤差(例えば、128ビット)を、位相誤差(例えば、512ビット)に拡張し、拡張した位相誤差を、制御情報としてセレクタ54に出力する。
【0053】
セレクタ54は、反転間隔検出部52および位相拡張部53の制御のもと、接続する端子を、反転間隔検出部52または位相拡張部53側の端子に切り替え、接続された端子からの制御情報を、ループフィルタ55に出力する。ループフィルタ55は、セレクタ54からの制御情報に対して、周波数偏差を計算し、計算結果の周波数情報を、DA変換器25に出力する。
【0054】
適応等化制御部24は、図2を参照して上述した制御モードに応じて、位相検出部51からの再生信号評価値および反転間隔検出部52からの実測最短反転間隔の情報の少なくとも一方を用いて、イコライザ41のイコライザ係数を最適に調整する。
【0055】
図4は、図1のイコライザ41の構成例を示す図である。なお、図4の例においては、5タップ−2Tブースト(Boost)の場合のイコライザ41が示されている。イコライザ41は、4つの遅延素子71−1乃至71−4、乗算器72乃至74、および加算器75により構成されている。
【0056】
AD変換器21からの信号は、遅延素子71−1および乗算器72に入力される。遅延素子71−1乃至71−4は、入力される信号をそれぞれ1クロック(=1T)遅延させる。
【0057】
乗算器72は、AD変換器21からの信号に、イコライザ係数Bを乗算し、加算器75に出力する。乗算器73は、遅延素子71−1および71−2により2クロック遅延された信号に、イコライザ係数Cを乗算し、加算器75に出力する。乗算器74は、遅延素子71−1乃至71−4により4クロック遅延された信号に、イコライザ係数Aを乗算し、加算器75に出力する。
【0058】
加算器75は、乗算器72乃至74によりイコライザ係数が乗算された信号を加算して、後段のAGC42に出力する。
【0059】
ここで、イコライザ係数AおよびBは、適応等化制御部24により調整される係数であり、イコライザ係数C(=1−(A+B))は、イコライザ係数AおよびBに基づいて求められる係数である。
【0060】
すなわち、図4のイコライザ41においては、適応等化制御部24により調整されたイコライザ係数AおよびBに応じて、点P1を中心に、信号の±2T成分(±2クロック分の信号)をブーストすることで、信号の周波数特性を適応的に調整する。これにより、信号の波長等化が適応的に行われる。
【0061】
なお、イコライザ41は、図4の場合に限らず、例えば、図5に示す7タップ−3Tブーストのイコライザを用いることもできる。
【0062】
図5は、図1のイコライザ41の構成例を示す図である。なお、図5の例においては、7タップ−3Tブースト(Boost)の場合のイコライザ41が示されている。イコライザ41は、6つの遅延素子81−1乃至81−6、乗算器82乃至84、および加算器85により構成されている。
【0063】
AD変換器21からの信号は、遅延素子81−1および乗算器82に入力される。遅延素子81−1乃至81−6は、入力される信号をそれぞれ1クロック(=1T)遅延させる。
【0064】
乗算器82は、AD変換器21からの信号に、イコライザ係数Bを乗算し、加算器85に出力する。乗算器83は、遅延素子81−1乃至81−3により3クロック遅延された信号に、イコライザ係数Cを乗算し、加算器85に出力する。乗算器84は、遅延素子81−1乃至81−6により6クロック遅延された信号に、イコライザ係数Aを乗算し、加算器85に出力する。
【0065】
加算器85は、乗算器82乃至84によりイコライザ係数が乗算された信号を加算して、後段のAGC42に出力する。
【0066】
ここで、図4の場合と同様に、イコライザ係数AおよびBは、適応等化制御部24により調整される係数であり、イコライザ係数C(=1−(A+B))は、イコライザ係数AおよびBに基づいて求められる係数である。
【0067】
すなわち、図5のイコライザ41は、適応等化制御部24により調整されたイコライザ係数AおよびBに応じて、点P2を中心に、信号の±3T成分(±3クロック分の信号)をブーストすることで、信号の周波数特性を適応的に調整する。これにより、信号の波長等化が適応的に行われる。
【0068】
次に、図6のフローチャートを参照して、図1の信号処理装置1の信号処理について説明する。記録媒体より読み出される再生信号は、入力端子11を介して、AD変換器21に入力される。
【0069】
ステップS11において、AD変換器21は、入力端子11を介して、アナログの再生信号を入力し、ステップS15において後述するようにしてVCO回路27から供給されるクロックに基づいて、デジタル信号に変換する。デジタルに変換された再生信号は、調整モジュール22のイコライザ41に出力される。
【0070】
ステップS12において、イコライザ41は、ステップS16において後述するようにして適応等化制御部24により調整されるイコライザ係数を用いて、AD変換器21によりデジタル化された再生信号の周波数特性を調整し、周波数特性が調整された再生信号をAGC42に出力する。すなわち、イコライザ41は、適応等化制御部24とともに、再生信号の波形等化を適応的に行っている。
【0071】
ステップS13において、AGC42は、イコライザ41により周波数特性が調整された再生信号のレベル調整を行い、レベル調整が行われた再生信号を、アシンメトリ補正回路43に出力する。
【0072】
ステップS14において、アシンメトリ補正回路43は、AGC42によりレベル調整が行われた再生信号の波形の上下非対称歪み(アシンメトリ)を補正し、アシンメトリが補正された再生信号を、2値化部28およびPLL回路23に出力する。
【0073】
すなわち、ステップS12乃至S14において、記録媒体から読み出された再生信号は、イコライザ41、AGC42、およびアシンメトリ補正回路43からなる調整モジュール22により波形等化される。
【0074】
ステップS15において、PLL回路23、DA変換器25、ローパスフィルタ26、およびVCO回路27は、調整モジュール22により波形等化された再生信号の位相を検出し、クロックを生成する。この位相検出およびクロック生成処理は、図7を参照して後述する。
【0075】
ステップS15の処理により、PLL回路23により、波形等化された再生信号の再生信号評価値、再生信号とクロックとの位相誤差、および再生信号の反転間隔が検出され、クロックの位相を、再生信号の位相に同期させるようにVCO回路27が制御されて、VCO回路27により、クロックが生成され、AD変換器21に供給される。このクロックにより、次回のステップS11のデジタル化のタイミングが制御される。
【0076】
また、このとき、PLL回路23は、図2を参照して上述した制御モードに応じて、検出したデータ(例えば、再生信号評価値および反転間隔の情報の少なくとも一方)を、適応等化制御部24に供給している。
【0077】
ステップS16において、適応等化制御部24は、イコライザ係数調整処理を実行する。このイコライザ係数調整処理は、図9を参照して後述するが、ステップS16の処理により、PLL回路23により検出されたデータに基づいて、イコライザ係数が現在の再生信号に最適な値に調整され、調整されたイコライザ係数は、イコライザ41に供給される。このイコライザ係数により、次回のステップS12の周波数特性の調整が適応的に行われる。
【0078】
ステップS17において、2値化部28は、調整モジュール22により波形等化された再生信号を2値化し、同期検出部29に出力する。例えば、2値化部28は、再生信号に対して、パーシャルレスポンス (1,2,2,2,1)方式と最尤検出方式を組み合わせたビタビ復号を行うことにより、0と1の2値であるチャネルビット列を検出することで、2値化を行う。
【0079】
ステップS18において、同期検出部29は、2値化された信号(チャネルビット列)から、所定の同期パターンを検出し、復調部30は、同期検出部29により検出された同期パターンに基づいて、チャネルビット列を所定の位置から復号し、誤り訂正部31に出力する。
【0080】
ステップS19において、誤り訂正部31は、復調部30により復号された信号に対して、誤り訂正を行い、誤り訂正後の信号を出力端子12に出力する。
【0081】
以上のように、図1の信号処理装置1においては、PLL回路23により検出されたデータに基づいて現在の再生信号に最適な値に調整されたイコライザ係数が用いられて、再生信号の波形等化が適応的に行われる。したがって、信号処理装置1が搭載された再生システムなどの生産や市場でのばらつきが抑制されるとともに、イコライザ係数の調整時間の短縮やコストの削減が可能となる。
【0082】
次に、図7のフローチャートを参照して、図6のステップS15の位相検出およびクロック生成処理について説明する。
【0083】
ステップS31において、位相検出部51は、調整モジュール22により波形等化された再生信号の位相および再生信号評価値(例えば、ジッタ)を検出する。例えば、ジッタは、ゼロクロスに対してどのくらいずれているかを基に検出される。
【0084】
また、位相検出部51は、検出した位相の情報を反転間隔検出部52に出力し、図2の制御モードに応じて、検出された再生信号評価値を、適応等化制御部24に供給する。すなわち、制御モードが、位相モード制御、およびゲインモード制御と位相モード制御の切り替えの場合、再生信号評価値が、適応等化制御部24に供給される。
【0085】
ステップS32において、位相検出部51は、再生信号の位相とクロックの位相から、位相誤差を検出し、検出した位相誤差の情報を位相拡張部53に供給する。
【0086】
ステップS33において、反転間隔検出部52は、位相検出部51により検出された位相に基づいて、波形等化された再生信号の反転間隔を検出する。このとき、反転間隔検出部52は、図2の制御モードに応じて、検出された再生信号の反転間隔のうちの実測最短反転間隔の情報を適応等化制御部24に供給する。すなわち、制御モードが、ゲインモード制御、およびゲインモード制御と位相モード制御の切り替えの場合、実測最短反転間隔が、適応等化制御部24に供給される。
【0087】
ステップS34において、反転間隔検出部52は、検出された再生信号の反転間隔のうちの実測最長反転間隔を目標最長反転間隔に合わせるためのTMAX固定値を、VCO回路27に対する制御情報としてセレクタ54に出力する。
【0088】
ステップS35において、位相拡張部53は、位相検出部51からの位相誤差(例えば、128ビット)を、位相誤差(例えば、512ビット)に拡張し、拡張した位相誤差を、制御情報としてセレクタ54に出力する。
【0089】
ステップS36において、セレクタ54は、最長反転間隔の落ち着き(すなわち、実測最長反転間隔が目標最長反転間隔に合ってきたか否か)に応じた制御情報を選択し、ループフィルタ55およびDA変換器25を介して、VCO回路27に出力する。
【0090】
すなわち、セレクタ54は、反転間隔検出部52および位相拡張部53の制御のもと、実測最長反転間隔と目標最長反転間隔とのずれが生じている場合、接続する端子を、反転間隔検出部52側の端子に切り替え、接続された端子からの制御情報を、ループフィルタ55に出力する。また、セレクタ54は、実測最長反転間隔と目標最長反転間隔とのずれがほぼ落ち着いた場合、接続する端子を、位相拡張部53側の端子に切り替え、接続された端子からの制御情報を、ループフィルタ55に出力する。
【0091】
ループフィルタ55は、セレクタ54からの制御情報に対して、周波数偏差を計算し、計算結果の周波数情報を、DA変換器25に出力する。DA変換器25は、PLL回路23からの周波数情報をアナログ化し、ローパスフィルタ26に出力する。ローパスフィルタ26は、周波数情報のノイズ(高周波成分)を除去し、VCO制御電圧としてVCO回路27に出力する。
【0092】
ステップS37において、VCO回路27は、PLL回路23からの制御情報に基づいて、クロックを生成し、生成したクロックを、AD変換器21に供給する。すなわち、VCO回路27は、VCO制御電圧に相当する周波数で発振を行うことで、クロックを生成する。
【0093】
以上のように、PLL回路23においては、位相や位相誤差などを検出する際に、再生信号評価値や最短反転間隔が検出され、検出された再生信号評価値や最短反転間隔の情報が適応等化制御部24に供給される。
【0094】
すなわち、適応等化制御部24においては、イコライザ係数の調整に、PLL回路23の位相検出処理においてもともと検出されるデータが用いられているので、わざわざ調整を行うためのデータを生成することなく、簡単な構成で、再生時の読み取りエラーなどを抑制することができる。これにより、記録や再生に高い信頼性のあるシステムを構築することができる。
【0095】
次に、図8を参照して、ゲインモード制御の場合のイコライザ係数調整処理について説明する。
【0096】
図8は、ゲインモード制御の場合の図1のPLL回路23の構成例を示している。なお、図8の例においては、位相検出部51から適応等化制御部24に対して再生信号評価値が供給されていない点のみが図3の例と異なるだけであり、その他は、図3のPLL回路23と共通しているので、その説明は繰り返しになるため省略する。
【0097】
すなわち、ゲインモード制御の場合、適応等化制御部24は、反転間隔検出部52からの実測最短反転間隔に基づいて、イコライザ係数を調整する。具体的には、適応等化制御部24は、目標の理想最短反転間隔(以下、目標最短反転間隔とも称する)と実測最短反転間隔とを比較し、それらがずれている場合、実測最短反転間隔を、目標最短反転間隔に近づけるように、イコライザ41が用いているイコライザ係数を調整する。
【0098】
このゲインモード制御の場合のイコライザ係数調整処理について、図9のフローチャートを参照して詳しく説明する。なお、図9に示される処理は、図6のステップS16のイコライザ係数調整処理の例である。
【0099】
まず、ゲインモード制御の場合、図8に示されるように、反転間隔検出部52から、適応等化制御部24に実測最短反転間隔が供給されている。
【0100】
ステップS51において、適応等化制御部24は、反転間隔検出部52から供給される実測最短反転間隔と、目標最短反転間隔(すなわち、再生中の記録媒体の理想最短反転間隔)を比較し、実測最短反転間隔が目標最短反転間隔より大きいか否かを判定する。例えば、再生中の記録媒体がDVDの場合の理想最短反転間隔は、3Tとされるので、実測最短反転間隔が3.3Tの場合、ステップS51において、実測最短反転間隔が目標最短反転間隔より大きいと判定され、処理は、ステップS52に進む。
【0101】
ステップS52において、適応等化制御部24は、実測最短反転間隔が目標最短反転間隔に近づく(すなわち、実測最短反転間隔を小さくする)ように、イコライザ係数(例えば、図4のイコライザ係数AおよびB)を、そのゲイン量が小さくなるように調整し、調整されたイコライザ係数をイコライザ41に供給する。
【0102】
なお、このゲイン量の調整の加減は、略一定の割合であってもよいし、実測最短反転間隔が目標最短反転間隔にかなり離れている場合には、大きい割合で行い、実測最短反転間隔が目標最短反転間隔に近づいた場合には、小さい割合で行うこともできる。
【0103】
ステップS51において、実測最短反転間隔が目標最短反転間隔より大きくはないと判定された場合、処理は、ステップS53に進む。ステップS53において、適応等化制御部24は、実測最短反転間隔が目標最短反転間隔より小さいか否かを判定する。例えば、実測最短反転間隔が2.7Tの場合、ステップS53において、実測最短反転間隔が目標最短反転間隔より小さいと判定され、処理は、ステップS54に進む。
【0104】
ステップS54において、適応等化制御部24は、実測最短反転間隔が目標最短反転間隔に近づく(すなわち、実測最短反転間隔を大きくする)ように、イコライザ係数(例えば、図4のイコライザ係数AおよびB)を、そのゲイン量が大きくなるように調整し、調整されたイコライザ係数をイコライザ41に供給する。
【0105】
ステップS53において、実測最短反転間隔が理想最短反転間隔より小さくはない、すなわち、実測最短反転間隔が理想最短反転間隔と一致すると判定された場合、処理は、ステップS55に進む。
【0106】
ステップS55において、適応等化制御部24は、イコライザ41が用いていたイコライザ係数をそのままにして、イコライザ41に供給する。すなわち、イコライザ係数は、調整されることなく、イコライザ41に使用される。
【0107】
以上のように、ゲインモード制御の場合、適応等化制御部24は、実測最短反転間隔が目標最短反転間隔に近づくように、例えば、図4のイコライザ係数AおよびBのゲイン量を調整する。これにより、イコライザ41においては、現在の再生信号に最適なゲイン量での波形等化が行われる。
【0108】
なお、ゲインモード制御の場合、イコライザ係数AおよびBは同じ値に調整される。これに対して、次に説明する位相モード制御の場合、イコライザ係数AおよびBは、例えば、値をずらして調整される。すなわち、位相モード制御の場合、一方の係数を大きくして、他方の係数を小さくするように調整される。
【0109】
次に、図10を参照して、位相モード制御の場合のイコライザ係数調整処理について説明する。
【0110】
図10は、位相モード制御の場合の図1のPLL回路23の構成例を示している。なお、図10の例においては、反転間隔検出部52から適応等化制御部24に対して実測最短反転間隔が供給されていない点のみが図3の例と異なるだけであり、その他は、図3のPLL回路23と共通しているので、その説明は繰り返しになるため省略する。
【0111】
すなわち、位相モード制御の場合、適応等化制御部24は、位相検出部51からの波形等化された信号の再生信号評価値(例えば、ジッタ)をフィードバックして、ウォブリングのパラメータとして用いて、イコライザ係数を調整する。
【0112】
ウォブリングとは、ある軸足となる係数または係数組と、軸足から位相方向にずらした係数または係数組(以下、フリーフットと称する)とでそれぞれ得られるパラメータ(すなわち、再生信号評価値)を比較して、パラメータが改善する方向に、イコライザ係数を調整する方法である。このウォブリングでは、実際の係数値よりも分解能の高い真値をベースに処理が行われる。
【0113】
図11および図12を参照して、ウォブリングについて詳しく説明する。図11の例においては、図中上から順に、5つの状態101乃至状態105が示されている。各状態において、縦ラインは、イコライザ係数の分解能を表しており、それらは、例えば、位相方向に値が小さい順に、イコライザ係数の候補である係数E1乃至E5(すなわち、E1<E2<E3<E4<E5)である。
【0114】
わかりやすく具体化するに、例えば、係数E1を0(基準)とすると、係数E2は、+1(係数E1+1)、係数E3は、+2(係数E1+2)、係数E4は、+3(係数E1+3)、係数E5は、+4(係数E1+4)とされる。
【0115】
また、図12の例においては、横軸が係数E1乃至E5を表し、縦軸が再生信号評価値を表すグラフが示されている。なお、図12の場合、再生信号評価値が小さい値の方が、評価が高いとされる(よいと評価される)例が示されている。
【0116】
図11の状態101においては、まず、係数E1が軸足とされており、軸足の再生信号評価値が保持される。このとき、真値111は、係数E1と係数E2の略中央に位置するので、真値111より値が大きい一番近い係数E2がイコライザ係数とされて、イコライザ41に供給される。そして、このイコライザ係数とされた係数E2がフリーフットとされる。
【0117】
次に、保持された軸足の再生信号評価値と、フリーフットの再生信号評価値が比較される。状態101においては、図12に示されるように、軸足(係数E1)の再生信号評価値が、フリーフット(係数E2)の再生信号評価値よりも大きいので、フリーフットの再生信号評価値の評価が高いとされる。この場合、適応等化制御部24は、真値111を、再生信号評価値の評価が高いとされたフリーフット側(すなわち、値が大きくなる方向)に、あるゲイン量だけ移動させる。
【0118】
これにより、例えば、状態102に示されるように、真値112は、係数E2と係数E3の間の、係数E2寄りに移動される。このとき、真値112より値が小さい一番近い係数E2がイコライザ係数とされて、イコライザ41に供給される。そして、このイコライザ係数とされた係数E2が、次の軸足とされる。
【0119】
状態102においては、まず、軸足とされた係数E2の再生信号評価値が保持される。このとき、真値112は、係数E2と係数E3の間の、係数E2寄りに位置し、真値112より値が大きい一番近い係数E3がイコライザ係数とされて、イコライザ41に供給される。そして、このイコライザ係数とされた係数E3がフリーフットとされる。
【0120】
次に、保持された軸足の再生信号評価値と、フリーフットの再生信号評価値が比較される。状態102においては、図12に示されるように、軸足(係数E2)の再生信号評価値が、フリーフット(係数E3)の再生信号評価値よりも大きいので、フリーフットの再生信号評価値の評価が高いとされる。この場合、適応等化制御部24は、真値112を、再生信号評価値の評価が高いとされたフリーフット側(すなわち、値が大きくなる方向)に、あるゲイン量だけ移動させる。なお、移動のゲイン量は、例えば、真値111から真値112への移動の際のゲイン量と同じであってもよいし、段々小さくなるように可変とすることもできる。
【0121】
これにより、例えば、状態103に示されるように、真値113は、係数E2と係数E3の間の、係数E3寄りに移動される。このとき、真値113より値が小さい一番近い係数E2がイコライザ係数とされて、イコライザ41に供給される。そして、このイコライザ係数とされた係数E2が、次の軸足とされる。
【0122】
状態103においては、再度、軸足とされた係数E2の再生信号評価値が保持される。このとき、真値113は、係数E2と係数E3の間の、係数E3寄りに位置し、真値111より値が大きい一番近い係数E3がイコライザ係数とされて、イコライザ41に供給される。そして、このイコライザ係数とされた係数E3がフリーフットとされる。
【0123】
次に、保持された軸足の再生信号評価値と、フリーフットの再生信号評価値が比較される。状態103においては、図12に示されるように、軸足(係数E2)の再生信号評価値が、フリーフット(係数E3)の再生信号評価値よりも大きいので、フリーフットの再生信号評価値の評価が高いとされる。この場合、適応等化制御部24は、真値113を、再生信号評価値の評価が高いとされたフリーフット側(すなわち、値が大きくなる方向)に、あるゲイン量だけ移動させる。
【0124】
これにより、例えば、状態104に示されるように、真値114は、係数E3と係数E4の間の、略中央寄りに移動される。このとき、真値114より値が小さい一番近い係数E3がイコライザ係数とされて、イコライザ41に供給される。そして、このイコライザ係数とされた係数E3が、次の軸足とされる。
【0125】
状態104においては、軸足とされた係数E3の再生信号評価値が保持される。このとき、真値114は、係数E3と係数E4の間の、略中央寄りに位置し、真値114より値が大きい一番近い係数E4がイコライザ係数とされて、イコライザ41に供給される。そして、このイコライザ係数とされた係数E4がフリーフットとされる。
【0126】
次に、保持された軸足の再生信号評価値と、フリーフットの再生信号評価値が比較される。状態104においては、図12に示されるように、軸足(係数E3)の再生信号評価値が、フリーフット(係数E4)の再生信号評価値よりも小さいので、軸足の再生信号評価値の評価が高いとされる。この場合、適応等化制御部24は、真値114を、再生信号評価値の評価が高いとされた軸足側(すなわち、値が小さくなる方向)に、あるゲイン量だけ移動させる。
【0127】
これにより、例えば、状態105に示されるように、真値115は、係数E2と係数E3の間の、係数E3寄りに移動される。このとき、真値115より値が小さい一番近い係数E2がイコライザ係数とされて、イコライザ41に供給される。そして、このイコライザ係数とされた係数E2が、次の軸足とされる。
【0128】
状態105においては、軸足とされた係数E2の再生信号評価値が保持される。このとき、真値115は、係数E2と係数E3の間の、係数E3寄りに位置し、真値115より値が大きい一番近い係数E3がイコライザ係数とされて、イコライザ41に供給される。そして、このイコライザ係数とされた係数E3がフリーフットとされる。
【0129】
以上のように、各係数時の再生信号評価値を比較して、再生信号評価値の評価が高いとされる側に移動させることで、図12に示されるように、真値は、だんだんと、再生信号評価値が小さく、評価が高い方(図12のグラフにおける谷)へと収束する。したがって、真値に基づいて求められるイコライザ係数も、だんだんと、最適になるように調整される。
【0130】
すなわち、位相モード制御においては、イコライザ41において用いられているイコライザ係数値と、イコライザ係数値から位相をずらしたイコライザ係数値の再生信号評価値を比較し、再生信号評価値の評価が高くなる方のイコライザ係数に近づけるように、イコライザ41が用いているイコライザ係数が調整されるので、最適なイコライザ係数が求められる。
【0131】
なお、位相モード制御の場合、イコライザ係数AおよびBは同じ量だけ増減されて、調整される。例えば、時間的に前側のイコライザ係数Aが調整により+aされた場合、時間的に後ろ側のイコライザ係数Bは調整により−aされる。
【0132】
すなわち、図11および図12においては、時間的に前側のイコライザ係数Aを例にウォブリングの説明がなされており、図11および図12の処理の結果、イコライザ係数Aが、係数E1を基準に、位相方向に+2された係数E3に調整される場合、時間的に後ろ側のイコライザ係数Bは、係数E1を基準に、位相方向に−2された係数に調整される。
【0133】
なお、上記説明においては、再生信号評価値が小さい値の方が評価が高いとされる例を説明したが、大きい値が評価が高いとされる評価値を用いることも可能である。
【0134】
この位相モード制御の場合のイコライザ係数調整処理について、図13のフローチャートを参照して詳しく説明する。なお、図13に示される処理は、図6のステップS16のイコライザ係数調整処理の例である。
【0135】
まず、位相モード制御の場合、図10に示されるように、位相検出部51から、適応等化制御部24に波形等化された信号の再生信号評価値(以下、単に評価値とも称する)が供給される。
【0136】
ステップS71において、適応等化制御部24は、ウォブカウントが1であるか否かを判定する。
【0137】
このウォブカウントは、前回のウォブリング処理(後述するステップS78)で設定される次回の処理状態を示すものであり、適応等化制御部24は、フリーフットの状態と軸足の状態の2つの処理状態を有している。適応等化制御部24においては、処理状態がフリーフットの状態である場合、軸足の係数(以下、単に軸足時とも称する)の評価値が保持されて、フリーフットを設定する処理が行われ、処理状態が軸足の状態である場合、軸足時の評価値と、フリーフットの係数(以下、フリーフット時とも称する)の評価値との比較結果に基づいて真値が調整されて、軸足を設定する処理が行われる。
【0138】
なお、前回のウォブリング処理において、次回の処理状態が軸足の状態である場合、ウォブカウントは0と設定され、次回の処理状態がフリーフットの状態である場合、ウォブカウントは1と設定されている。
【0139】
例えば、前回のウォブリング処理において、次回の処理状態はフリーフットの状態であるとされ、ウォブカウントが1と設定されている場合、ステップS71において、ウォブカウントは1であると判定され、処理は、ステップS72に進む。この場合、前回の処理で設定された軸足時の評価値が位相検出部51より供給されるので、ステップS72において、適応等化制御部24は、軸足時の評価値を保持し、処理は、ステップS78に進む。
【0140】
ステップS78において、適応等化制御部24は、ウォブリング処理を実行する。処理状態がフリーフットの状態である場合のウォブリング処理を、図14のフローチャートを参照して説明する。
【0141】
ステップS91において、適応等化制御部24は、ウォブカウントが1であるか否かを判定する。処理状態がフリーフットの状態であるので、ステップS91において、ウォブカウントが1であると判定され、処理は、ステップS92に進む。ステップS92において、適応等化制御部24は、真値より値が大きく一番近い係数値を、イコライザ係数として、イコライザ41に供給する。このとき、また、適応等化制御部24は、このイコライザ係数をフリーフットとして設定する。
【0142】
そして、ステップS93において、適応等化制御部24は、ウォブカウントを0(次回の処理状態を軸足の状態)に設定し、ウォブリング処理を終了する。
【0143】
一方、上述したように、前回のウォブリング処理において、次回の処理状態は軸足の状態であるとされ、ウォブカウントが0と設定されている場合、ステップS71において、ウォブカウントは1ではないと判定され、処理は、ステップS73に進む。
【0144】
この場合、前回の処理で設定されたフリーフット時の評価値が位相検出部51より供給されるので、ステップS73において、適応等化制御部24は、フリーフット時の評価値と、ウォブカウントが0の場合のステップS72において保持された軸足時の評価値を比較し、フリーフット時の評価値よりも軸足時の評価値が小さいか否かを判定する。ステップS73において、フリーフット時の評価値よりも軸足時の評価値が小さいと判定された場合、処理は、ステップS74に進む。ステップS74において、適応等化制御部24は、真値が、値が小さくなる方に、あるゲイン分だけ移動させる。その後、処理は、ステップS78に進む。
【0145】
ステップS73において、フリーフット時の評価値よりも軸足時の評価値が小さくはないと判定された場合、処理は、ステップS74に進む。ステップS74において、適応等化制御部24は、フリーフット時の評価値よりも軸足時の評価値が大きいか否かを判定する。
【0146】
ステップS74において、フリーフット時の評価値よりも軸足時の評価値が大きいと判定された場合、処理は、ステップS75に進む。ステップS75において、適応等化制御部24は、真値が、値が大きくなる方に、あるゲイン分だけ移動させる。その後、処理は、ステップS78に進む。
【0147】
ステップS73において、フリーフット時の評価値よりも軸足時の評価値が大きくはないと判定された場合、すなわち、フリーフット時の評価値よりも軸足時の評価値が一致すると判定された場合、処理は、ステップS77に進む。ステップS77において、適応等化制御部24は、真値をそのままにする。ステップS77の後、処理は、ステップS78に進む。
【0148】
すなわち、上述したステップS73乃至S77までは、真値を最適に移動させる処理が行われている。そして、次のステップS78のウォブリング処理において、移動された真値に基づいて、イコライザ係数を調整する処理が実行される。
【0149】
ステップS78において、適応等化制御部24は、ウォブリング処理を実行する。処理状態が軸足の状態である場合のウォブリング処理を、図14のフローチャートを参照して説明する。
【0150】
ステップS91において、適応等化制御部24は、ウォブカウントが1であるか否かを判定する。処理状態が軸足の状態であるので、ステップS91において、ウォブカウントが1ではないと判定され、処理は、ステップS94に進む。ステップS94において、適応等化制御部24は、真値より値が小さく一番近い係数値を、イコライザ係数として、イコライザ41に供給する。このとき、また、適応等化制御部24は、このイコライザ係数を軸足として設定する。
【0151】
そして、ステップS95において、適応等化制御部24は、ウォブカウントを1(次回の状態をフリーフットの状態)に設定し、ウォブリング処理を終了する。
【0152】
以上のように、位相モード制御の場合、適応等化制御部24は、真値が、再生信号評価値が小さく、評価が高い方(図12のグラフにおける谷)へと収束するように、例えば、図4のイコライザ係数AおよびBを調整する。これにより、イコライザ41においては、現在の再生信号に最適な位相(サンプリングポイント)での波形等化が行われる。
【0153】
次に、ゲインモード制御と位相モード制御の切り替えの場合のイコライザ係数調整処理について説明する。この場合、ゲインモード制御から位相モード制御への切り替えと、位相モード制御からゲインモード制御への切り替えの2種類の切り替えが行われる。
【0154】
上述したように、ゲインモード制御においては、ゲイン量が調整され、位相モード制御においては、位相が調整される。ここで、調整の度合いとしては、ゲイン量を調整する方が位相を調整するよりもエラーレートに対する効果がより大きい。すなわち、先に、位相をちょっとずらす(サンプリングポイントを変える)よりも、ゲインが落ち着いてから、位相をちょっとずらす方が効果的であるので、このゲインモード制御と位相モード制御の切り替えの場合には、まず、ゲインモード制御でイコライザ係数値の大まかな(粗い)調整を行う。
【0155】
その後、ゲインが落ち着いてから、すなわち、実測最短反転間隔と目標最短反転間隔の差がある閾値αよりも大きいと判定される場合が、一定区間i(例えば、10秒間や、何クロック間)内でn回未満であれば、ゲインモード制御から位相モード制御への切り替えが行われ、位相モード制御でイコライザ係数値の微調整を行うという手順で処理が実行される。
【0156】
また、位相モード制御時に、実測最短反転間隔と目標最短反転間隔の差がある閾値αよりも大きいと判定される場合が、一定区間i内でn回以上であれば、位相モード制御からゲインモード制御への切り替えが行われ、再度、調整効果が大きい、ゲインモード制御によりイコライザ係数値の調整が行われる。
【0157】
すなわち、ゲインモード制御と位相モード制御の切り替えの場合には、実測最短反転間隔は、ゲインモード制御のときのみでなく、位相モード制御のときにも計算される。なお、このゲインモード制御と位相モード制御の切り替えの頻度は、上述した閾値α、区間i、n回数を変更することで調整可能である。この区間iは、最短反転間隔の差が落ち着くぐらいの時間が設定される。
【0158】
このゲインモード制御と位相モード制御の切り替えの場合のイコライザ係数調整処理を、図15のフローチャートを参照して説明する。
【0159】
なお、図15に示される処理は、図6のステップS16のイコライザ係数調整処理の例であり、図3のPLL回路23および適応等化制御部24により実行される。また、図15のイコライザ係数調整処理においては、まず、ゲインモード制御(モードカウント:0)から処理が開始される。
【0160】
ステップS111において、適応等化制御部24は、区間カウンタがiであるか否かを判定し、区間カウンタがiではないと判定した場合、処理は、ステップS112に進む。
【0161】
適応等化制御部24は、ステップS112において、区間カウンタを1インクリメントし、ステップS113において、実測最短反転間隔と目標最短反転間隔の差の絶対値が閾値αよりも小さいか否かを判定し、実測最短反転間隔と目標最短反転間隔の差の絶対値が閾値α以上であると判定した場合、ステップS114において、オーバーカウンタを1インクリメントする。その後、処理は、ステップS110に進む。
【0162】
ステップS113において、実測最短反転間隔と目標最短反転間隔の差の絶対値が閾値αよりも小さいと判定された場合、処理は、ステップS114をスキップし、ステップS110に進む。
【0163】
一方、ステップS111において、区間カウンタがiであると判定された場合、処理は、ステップS115に進み、適応等化制御部24は、オーバーカウンタがn回よりも少ないか否かを判定する。ステップS115において、オーバーカウンタがn回以上であると判定された場合、処理は、ステップS116に進む。ステップS116において、適応等化制御部24は、モードカウントを0(すなわち、ゲインモード制御)に設定する。
【0164】
また、ステップS115において、オーバーカウンタがn回よりも少ないと判定された場合、処理は、ステップS117に進む。ステップS117において、適応等化制御部24は、モードカウントを1(すなわち、位相モード制御)に設定する。
【0165】
ステップS116またはS117の後、適応等化制御部24は、ステップS118において、区間カウンタを0にリセットし、ステップS119において、オーバーカウンタを0にリセットする。その後、処理は、ステップS110に進む。
【0166】
ステップS110において、適応等化制御部24は、モードカウントが1であるか否かを判定する。ステップS110において、モードカウントが1ではない、すなわち、ゲインモードであると判定された場合、処理は、ステップS111に進む。ステップS111において、適応等化制御部24は、図9を参照して上述したゲインモード制御の場合のイコライザ係数調整処理を実行する。
【0167】
一方、ステップS110において、モードカウントが1である、すなわち、位相モードであると判定された場合、処理は、ステップS112に進む。ステップS112において、適応等化制御部24は、図13を参照して上述したゲインモード制御の場合のイコライザ係数調整処理を実行する。
【0168】
以上のように、一定区間iにおいて、実測最短反転間隔と目標最短反転間隔の差がある閾値αよりも大きくなる回数が、n回以上であるか否かを判定しておき、その判定結果に基づいて、ゲインモード制御と位相モード制御を切り替えるようにしたので、ゲインモード制御の場合の大まかな調整と、位相モード制御の場合の微調整の両方を行うことができる。これにより、ゲインモード制御または位相モード制御単独の場合よりも、さらに、エラーレート改善に効果を発揮することができる。
【0169】
すなわち、図2の制御モードにおいては、ゲインモード制御と位相モード制御の切り替えの場合、ゲインモード制御の場合、位相モード制御の場合、および、従来の固定イコライザ係数の場合の順に、よりエラーレート改善に対して効果がある。
【0170】
図16は、ゲインモード制御および位相モード制御の場合のイコライザ係数の帰還ゲイン量の違いによる動作例を説明する図である。図16における帰還ゲイン量とは、イコライザ係数に帰還させるゲイン量、すなわち、ゲインモード制御により調整される係数のゲイン量、および位相モード制御により真値を近づける際のゲイン量を示している。
【0171】
図16の例においては、X軸は、時間の経過、Y軸はイコライザ係数値を表し、さらに、X軸上は、イコライザ係数の最適値を表している。点線151は、帰還ゲイン量が小さい場合のイコライザ係数値の変化を表し、実線152は、帰還ゲイン量が大きい場合のイコライザ係数値の変化を表している。すなわち、点線151は、イコライザ係数値を小さい割合で調整した場合であり、実線152は、イコライザ係数を大きい割合で調整した場合を表している。
【0172】
また、収束時間差tは、帰還ゲイン量が大きい場合と、帰還ゲイン量が小さい場合の最適値に収束する時間の差を示しており、ばたつきQ1は、帰還ゲイン量が小さい場合の収束後のばたつきを示しており、ばたつきQ2は、帰還ゲイン量が大きい場合の収束後のばたつきを示している。
【0173】
ゲインモード制御および位相モード制御の場合のイコライザ係数の帰還ゲイン量は、可変であるが、通常は、イコライザ係数値が頻繁に変化するのを避けたいので、点線151に示されるように、係数値よりも小さい値(小数値)を帰還してできるだけ線形的に変化することが望ましい。これは、収束時間差tに示されるように、最適値に収束するのが少し遅いが、ばたつきQ1およびばたつきQ2に示されるように、収束した後のばたつきが少ない。
【0174】
一方、逆に早急に最適値に収束させたい場合は、実線152に示されるように、帰還ゲイン量を大きくすれば、収束時間差tに示されるように、早く最適値に収束するが、ばたつきQ1およびばたつきQ2に示されるように、収束した後のばたつきが大きくなってしまう。
【0175】
以上のように、帰還ゲイン量の大小により、収束時間や収束後のばたつきが異なるので、適応等化制御部24においては、状況や仕様によって、どちらが最適であるかを選択可能なように構成される。
【0176】
図17は、ゲインモード制御の場合の目標最短反転間隔とシンボルエラーレートの関係を示す図である。なお、図17の例においては、2.4<目標最短反転間隔[T]<3.3とし、図5の7タップのイコライザ41で、EFM (eight to fourteen modulation)+変調方式で構成される場合の、PRML(PR: partial response, ML:maximum likelihood sequence detection)方式のPR(1,2,2,2,1)方式を用いた場合の2値化部28によるエラーレート161、PRML方式のPR(3,4,4,3)方式を用いた場合の2値化部28によるエラーレート162、およびコンパレータ(comparator)方式を用いた2値化部28によるエラーレート163が示されている。
【0177】
エラーレート161乃至163に示されるように、どの2値化方式を用いた場合であっても、最短反転間隔が略3Tのあたりがエラーレートのボトムとなっている。したがって、ゲインモード制御の場合の目標最短反転間隔を略3Tにすることで、エラーレートが一番低くなることがわかる。
【0178】
なお、図示されないが、各方式においてイコライザ係数の調整が行われない場合のエラーレートは、各エラーレート161乃至163の平均値である。すなわち、ゲインモード制御の場合の目標最短反転間隔を略3Tにすることで、イコライザ係数の調整が行われない場合よりも、エラーレートが低くなることがわかる。
【0179】
以上のように、信号処理装置1において、PLL回路23の位相検出処理においてもともと検出されているデータに基づいて、イコライザ係数の調整が行われるので、わざわざ調整を行うためのデータを生成することなく、簡単な構成で、再生時の読み取りエラーなどを抑制することができる。
【0180】
これにより、生産や市場におけるばらつきを抑制し、記録や再生に高い信頼性のあるシステムを構築することができる。また、これは、調整時間の短縮やコストの削減にもつながる。
【0181】
なお、上述した信号処理装置1は、例えば、楽曲や映像などの信号を再生する再生装置、楽曲や映像の信号を再生する再生ブロックが含まれる記録再生装置などに適用することができる。
【0182】
また、上記説明においては、例えば、記録媒体が、DVDなどの光ディスクの場合の例を説明したが、記録媒体は、光ディスクに限らず、例えば、MD(mini-disk)などの光磁気ディスクやハードディスクなど、アナログの信号が書き込まれる記録媒体とすることができる。
【0183】
なお、本明細書において、フローチャートを参照して説明した各ステップの処理は、必ずしもフローチャートに記載された順序に沿って時系列に行う必要はなく、また、可能であれば、並列的に行ってもよい。
【0184】
また、本明細書において、システムとは、複数の装置により構成される装置全体を表すものである。
【0185】
なお、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0186】
【図1】本発明を適用した信号処理装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】図1の適応等化制御部による制御モードを説明する図である。
【図3】図1のPLL回路の構成例を示すブロック図である。
【図4】図1のイコライザの構成例を示すブロック図である。
【図5】図1のイコライザの他の構成例を示すブロック図である。
【図6】図1の信号処理装置の信号処理について説明するフローチャートである。
【図7】図6のステップS15の位相検出およびクロック生成処理について説明するフローチャートである。
【図8】ゲインモード制御の場合の図1のPLL回路の構成例を示すブロック図である。
【図9】図8の場合の図6のステップS16のイコライザ係数調整処理を説明するフローチャートである。
【図10】位相モード制御の場合の図1のPLL回路の構成例を示すブロック図である。
【図11】位相モード制御におけるウォブリングについて説明する図である。
【図12】位相モード制御におけるウォブリングについて説明する図である。
【図13】図10の場合の図6のステップS16のイコライザ係数調整処理を説明するフローチャートである。
【図14】図13のステップS78のウォブリング処理を説明するフローチャートである。
【図15】図3の場合の図6のステップS16のイコライザ係数調整処理を説明するフローチャートである。
【図16】イコライザ係数の帰還ゲイン量の違いによる動作例を説明する図である。
【図17】ゲインモード制御の場合の理想最短反転間隔とシンボルエラーレートの関係を示す図である。
【符号の説明】
【0187】
1 信号処理装置, 11 入力端子, 12 出力端子, 21 AD変換器, 22 調整モジュール, 23 PLL回路, 24 適応等化制御部, 25 DA変換器, 26 ローパスフィルタ, 27 VCO回路, 28 2値化部, 29 同期検出部, 30 復調部, 31 誤り訂正部, 41 イコライザ, 42 AGC, 43 アシンメトリ補正回路,51 位相検出部, 52 反転間隔検出部,53 位相拡張部, 54 セレクタ, 55 ループフィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号の波形等化を適応的に行う適応等化回路において、
前記波形等化が行われた入力信号から、PLL回路により検出されるデータに基づいて、前記入力信号の波形等化の係数値を調整する係数値調整手段と、
前記係数値調整手段により調整された前記係数値を用いて、前記入力信号の波形等化を行う波形等化処理手段と
を備える適応等化回路。
【請求項2】
前記係数値調整手段は、前記波形等化が行われた入力信号から、前記PLL回路により検出される実測最短反転間隔と、目標最短反転間隔との比較結果に基づいて、前記係数値の変更ゲイン量を調整する
請求項1に記載の適応等化回路。
【請求項3】
前記係数値調整手段は、前記波形等化が行われた入力信号から、前記PLL回路により検出される再生信号評価値に基づいて、前記係数値よりも分解能が高い真値が収束するように調整し、調整された前記真値に近い前記係数値を採用する
請求項1に記載の適応等化回路。
【請求項4】
前記PLL回路により検出される実測最短反転間隔と、目標最短反転間隔との差が所定の閾値より大きい場合が、一定区間内で所定の回数以上のとき、前記係数値調整手段は、前記波形等化が行われた入力信号から、前記PLL回路により検出される実測最短反転間隔と、目標最短反転間隔との比較結果に基づいて、前記係数値の変更ゲイン量を調整し、
前記PLL回路により検出される実測最短反転間隔と、目標最短反転間隔との差が所定の閾値より大きい場合が、一定区間内で所定の回数未満のとき、前記係数値調整手段は、前記PLL回路により検出される再生信号評価値に基づいて、前記係数値よりも分解能が高い真値が収束するように調整し、調整された前記真値に近い前記係数値を採用する
請求項1に記載の適応等化回路。
【請求項5】
入力信号の波形等化を適応的に行う適応等化回路の適当等化方法において、
前記波形等化が行われた入力信号から、PLL回路により検出されるデータに基づいて、前記入力信号の波形等化の係数値を調整し、
調整された前記係数値を用いて、前記入力信号の波形等化を行う
ステップを含む適応等化方法。
【請求項6】
記録媒体より読み出された信号を処理する信号処理装置において、
前記信号を入力する信号入力手段と、
波形等化が行われた信号から、PLL回路により検出されるデータに基づいて、前記信号入力手段により入力された信号の波形等化の係数値を調整し、調整された前記係数値を用いて、前記信号の波形等化を行う適応等化回路と、
前記適応等化回路により前記波形等化が行われた信号を出力する信号出力手段と
を備える信号処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−103021(P2008−103021A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−284604(P2006−284604)
【出願日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】