遮光機能付き窓構造
【課題】建築物の開口に回転窓の中心軸の周りを回転自在に枢着し、夏期には回転窓の外側に、また冬期には回転窓の内側に位置させることができるように回転窓にブラインドを取り付けた遮光機能付きの窓構造を提案する。
【解決手段】建築物の外壁Wに存する開口部Aに水平な回転軸Oの周りを回転可能に設けた回転窓12を含むとともに、この回転窓から水平方向へ遮光手段20を突出してなる回転ユニット10を具備し、上記遮光手段20は、水平方向に一定の巾を有する遮光体24を含み、かつ上記回転ユニットは、上記回転窓の回転軸周りの回転により、遮光手段が少なくとも建築物の内側へ突出している状態と建築物の外側へ突出している状態とを選択できるように構成した。
【解決手段】建築物の外壁Wに存する開口部Aに水平な回転軸Oの周りを回転可能に設けた回転窓12を含むとともに、この回転窓から水平方向へ遮光手段20を突出してなる回転ユニット10を具備し、上記遮光手段20は、水平方向に一定の巾を有する遮光体24を含み、かつ上記回転ユニットは、上記回転窓の回転軸周りの回転により、遮光手段が少なくとも建築物の内側へ突出している状態と建築物の外側へ突出している状態とを選択できるように構成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮光機能付き窓構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物のぺリメータ部において大きな冷房負荷をもたらす日射をコントロールするため、多くの建築物にブラインドが用いられている。こうしたブラインドは、例えばオフィス空間内に無用な直達光をできるだけ排除する狙いがある。
【0003】
窓用のブラインドは、窓の室内側に多数のスラット状(板状)のルーバーを縦に連ねたものが広く用いられている。こうしたタイプのブラインドは、ルーバーを明るい色にして反射率を高めることで或る程度の日射熱除去効果を発揮するが、室内に侵入する熱も多い。
【0004】
これに対して窓の外側に多数のルーバーを連ねたブラインドも提案されており(特許文献1)、このような構成とすることで、夏季の日射熱の殆どを排除することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3815459号
【特許文献2】特開2003−328654号
【特許文献3】特許第4077765号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のブラインドは、窓の外側に設けたため、冬季に日射が室内に到達しにくく、暖房負荷の増加の原因となる可能性が高い。
【0007】
窓の内外一方にブラインドを設ける技術に対して、内外方向に幅広の窓枠の内部のうち外側にガラス板を嵌め込み、残りの部分にブラインドを設置し、窓枠の上下両辺の中間を縦軸部で内外反転可能に建築物に枢着した窓装置も知られている(特許文献2)。
【0008】
もっともこの構成の目的は高層建築物の窓を安全に清掃することであり、窓ガラス板及びブラインドが一つの窓枠内に配置されているため、内外方向に反転させても日射の遮断状況はあまり変わらない。
【0009】
また中間季の冷涼な外気を取り込んで冷房負荷を低減させるために、建築物の適所に換気口を設けることがある。例えば換気口内に複数の平行な遮光板からなる回転体を装置し、採光兼通風状態と、遮光・遮気状態とを選択できるものが知られている(特許文献3)。但し、こうした機構は、窓からの日射を制限する構造とは別に設けられ、厳寒期や厳暑期には閉鎖される。
【0010】
本願発明の第1の目的は、建築物の開口に回転窓の中心軸の周りを回転自在に枢着し、夏季には回転窓の外側に、また冬季には回転窓の内側に位置させることができるように回転窓にブラインドを取り付けた遮光機能付きの窓構造を提案することである。
【0011】
本発明の第2の目的は、中間季には日射の相当量を遮るとともに、通気を行うことが可能な遮光機能付きの窓構造を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の手段は、
建築物の外壁に存する開口部に水平な回転軸の周りを回転可能に設けた回転窓を含むとともに、この回転窓から水平方向へ遮光手段を突出してなる回転ユニットを具備し、
上記遮光手段は、水平方向に一定の巾を有する遮光体を含み、
かつ上記回転ユニットは、上記回転窓の回転軸周りの回転により、遮光手段が少なくとも建築物の内側へ突出している状態と建築物の外側へ突出している状態とを選択できるように構成している。
【0013】
本手段では、図1に示すように水平な回転軸O回りを回転可能な回転窓12とこの窓から水平方向へ突出した遮光手段20とからなる回転ユニット10を提案している。回転窓の回転軸を水平方向とした理由は、回転窓から突出した遮光手段が、回転途中で他の窓や壁に当たらないようにするためである。遮光手段を建築物の外側に位置させると、日射によって高温となった遮光手段と室内空気とが直接ふれることがないので、室内の環境が改善される。
【0014】
「回転ユニット」は、少なくとも回転窓と遮光手段とからなる回転の一単位である。大きい開口部を、縦方向又は横方向に配置した複数の回転ユニットでカバーすることができる。「遮光手段」は、回転窓の上下方向の一部(好ましくは回転軸付近)から水平方向へ突出したものであり、回転窓の水平方向の巾全長に亘って形成することが望ましい。広い範囲で日射を遮断させるためである。「回転窓」は、回転窓の水平方向の中心軸の周りを回転可能に設けている。仮に垂直方向の中心軸の周りを回転させようとしても、遮光手段が建築物の開口部の側縁に当たって回転させることができにくいからである。「遮光体」は、回転窓に対して一体的なもの及び回転窓に対してさらに回転するものを含む。
【0015】
第2の手段は、第1の手段を有し、かつ
さらに上記回転ユニットは、上記回転窓の回転軸周りの回転により、回転窓が水平であるとともに遮光手段が回転軸の上側又は下側に位置している状態を選択することができるように構成している。
【0016】
本手段では、図4に示す如く回転窓12を水平な状態とすることで、通風作用を確保できるように構成している。
【0017】
第3の手段は、第2の手段を有し、かつ
上記回転窓は、周辺部に窓枠を有し、かつ当該回転窓の垂直状態において窓枠の両側部の上下方向中間部分に、上記開口部側へ枢着した回転軸を付設しており、
上記遮光手段は、上記回転窓の垂直状態で回転窓の両側部の回転軸付近から水平方向へ突出した一対のアームを有するとともに、
これらアームの先部に、その水平方向の一定巾を有する平面視帯状の遮光体の両端の巾方向中間部に回転自在に枢着している。
【0018】
本手段では、図7に示す如く、遮光手段20を、回転窓から水平方向へ突出するアーム22の先部に、遮光体24を取り付けて構成することを提案している。これにより、建築物の開口部Aに対して回転窓12が回転し、かつ回転窓に対して遮光体24が回転することが可能となる。好適な一例として、図7の構成において遮光体の重心を枢着箇所の真下に位置させることで、回転窓の回転状況に関わらず、遮光体の一面が常に上方を向くように構成できる。
【0019】
第4の手段は、第3の手段を有し、かつこれらアームの先部を、遮光体の両端の巾方向中間部よりも建築物外方又は内方の何れか一方に偏心した箇所に枢着し、アームの水平状態で上方からみて遮光体と窓ガラスとの間隙のほぼ全部を覆うように一対のアームの間に補助遮光材を架け渡すとともに、上記枢着箇所よりもさらに上記一方寄りの遮光体部分に錘を取り付け、
この枢着箇所より外側の遮光体部分と枢着箇所より内側の遮光体部分とがバランスするように構成している。
【0020】
本手段では、アームの先部への遮光体の枢着箇所を内外偏心位置に設定することを提案する。図14では、遮光体が建築物内方へ突出している状態において、上記枢着箇所を遮光体の建築物外寄りへ偏心させている。そして枢着箇所よりもさらに外側の遮光体部分に枢着箇所の両側の重量をバランスさせるための錘を設ける。また1対のアームの間には窓ガラスと遮光体との間隙を覆う補助遮光材を設ける。これにより図14の冬季モードでは建築物内方への遮光体の突出長を長く、また図18の夏季モードでは建築物外方への遮光体の突出長を短くすることができる。図面は省略するが、遮光体が建築物内方へ突出している状態において、上記枢着箇所を建築物内寄りへ偏心させ、その枢着箇所よりもさらに内側の遮光体部分に同様の錘を設けてもよい。枢着箇所の両側のバランスを微調整するために遮光体における錘の位置を内外方向にずらすことが可能に形成してもよい。
【0021】
第5の手段は、第3の手段又は第4の手段を有し、かつ上記遮光体は、回転軸の方向に長く、かつ観賞植物などの物品の収納に適した上面開口の収納ボックスであり、
この収納ボックスの両端壁をアームの先部に回転可能に枢着し、かつ収納ボックスの開放面が、回転軸の向きに関わらず、収納ボックスの重量により常に上方に向くように構成している。
【0022】
本手段では、遮光体を上面開放の収納ボックスとすることを提案している。
【0023】
第6の手段は、第3の手段から第5の手段のいずれかを有し、かつ
上記開口部内に、複数の回転ユニットを、その回転ユニットの回転窓同士が垂直状態で連なるようにかつこの垂直状態で遮光手段が同一方向へ突出するように設置するとともに、
これらの回転ユニットを連動して回転させるための回転制御部を設けている。
【0024】
本手段では、開口部に複数の回転ユニットを設けたから、比較的広い開口部に本発明の窓機構を適用できる。
【発明の効果】
【0025】
第1の手段に係る発明によれば、遮光手段が建築物の内側にある状態と建築物の外側にある状態とを選択することができ、夏季に遮光手段を建築物の外側におくと、太陽光により高温となった遮光手段が室内側の空気を直接温めることがないので、室内環境が改善される。
【0026】
第2の手段に係る発明によれば、回転窓を水平な状態にできるので、好適に通風機能を発揮する。
【0027】
第3の手段に係る発明によれば、遮光手段は、アームの先部を、遮光体の両端の巾方向中間部に枢着したから、図4に示す通気モードで完全な通気層が形成される。
【0028】
第4の手段に係る発明によれば、遮光体に錘を付けたから、遮光手段の建築物外方の突出長さを建築物内方への突出長さよりも短くすることができ、夏季の高い位置からの太陽光の光線を確実に遮断できる。
【0029】
第5の手段に係る発明によれば、遮光体である収納ボックスの開放面が常に上方に向くので、回転窓の回転により建築物に対して出し入れするときに物品を移し替える手間が必要ではなく、便利である。
【0030】
第6の手段に係る発明によれば、開口部に複数の回転ユニットを設けたから、比較的広い開口部に本発明の窓機構を適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1実施形態に係る窓構造の冬季用モードでの縦断面図である。
【図2】図1の窓構造を内側から見た正面図である。
【図3】図1の窓構造を上方から見た一部切欠き断面図である。
【図4】図1の窓構造の中間季用(通気)モードでの縦断面図である。
【図5】図1の窓構造の夏季用モードでの縦断面図である。
【図6】図1の窓構造のシール部の縦断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る窓構造の夏季(ないし冬季)用モードでの縦断面図である。
【図8】図7の窓構造の中間季(通気)モードでの縦断面図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係る窓構造の冬季用モードでの縦断面図である。
【図10】図9の窓構造を前方から見た一部切欠き断面図である。
【図11】図9の窓構造を上方から見た一部切欠き断面図である。
【図12】図9の窓構造の中間季用(通気)モードでの縦断面図である。
【図13】図9の窓構造の夏季用モードでの縦断面図である。
【図14】本発明の第4実施形態に係る窓構造の冬季用モードでの縦断面図である。
【図15】図14の窓構造の一部断面平面図である。
【図16】図14の窓構造の中間季用(通気)モードでの縦断面図である。
【図17】図16の窓構造の夏用モードでの縦断面図である。
【図18】図17の窓構造の一部断面平面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
図1から図6は、本願第1の実施形態に係る窓構造を示している。この窓構造2は、建築物Bの外壁Wに設けた開口部A内に構成される。
【0033】
上記窓構造2は、開口部の左右両側に設けられた軸受部4と、複数の回転ユニット10とで構成されている。
【0034】
軸受部4は、図示例では、開口部の左右両辺に沿って長く延びるとともに、上下方向に適所に好ましくは等間隔に軸受穴6を有する。
【0035】
図示の軸受部は中空であり、内部に複数の回転ユニットを一律に回転させることが可能な駆動装置8を有する。図示例の駆動装置は、後述の回転窓の軸部と連携するためのチェーンを軸受部内に垂直方向に掛け渡している。もっともこれらの構成は適宜変更することができる。また図示しない制御部により回転ユニットの回転量を調整できるようにするとよい。
【0036】
回転ユニット10は、回転窓12と遮光手段20とで形成している。回転ユニット10とは、一つの回転軸の周りで回転する回転体であり、主としてある程度の広さの開口部を複数の回転体で覆うときの一つの回転単位である。広い開口部Aを大きな一つの回転体でカバーしようとすると回転モーメントが大きくなり、大きな駆動力が必要だからである。もっとも開口部がそれほど広くないときには、一つの回転ユニットだけを設けてもよい。
【0037】
上記回転窓12は、好適な図示例では、長方形状の透明板13の周りに窓枠14を取り付けてなり、この窓枠の縦枠部14aの上下方向中間部から水平方向へ突出した軸部15を上記軸受穴内へ挿入し、枢支させている。また少なくとも一方の軸部を駆動装置8に連携させている。軸受部4,4間の開口部分には、複数の回転窓12をほぼ隙間なく配置させている。
【0038】
なお、上記窓枠14の横枠部14bと開口部Aの上下両辺部とには、相互に気密にかつ回転窓の回転を妨げないように接するシール部16に設ける。シール部16は、例えば図6に示すように横枠部同士の対向面、或いは横枠部と開口部の辺部の対向面に、内外2重のシール条18A、18Bを設けるとよい。また図示例の窓枠14の構成では、その縦枠部の上下方向中間部で後述の遮光手段の重量を支えることになるが、強度が不足する場合には、それら中間部間に中枠部を架設し、この中枠部から遮光手段を突出させるような構成としてもよい。
【0039】
上記遮光手段20は、回転窓12の上下方向の一部から水平方向室内側へ突出させている。好適な図示例では、遮光手段20は、上記窓枠の縦枠部14aの上下方向中間部から水平方向室内側へ突出する一対の剛性のアーム22と、これらアームの間に架設する遮光体24とで構成する。
【0040】
上記遮光体24は、遮光材料で形成されており、水平方向に一定の巾を有する。遮光体24は、冬季の日射を受ける第1の受光面26Aと夏季の日射を受ける第2の受光面26Bとを水平状態での表側及び裏側に有する。例えば第1の受光面26Aは、冬季の弱い日射光を高効率で室内へ反射する高反射率の反射面(好ましくは拡散反射面)とし、また第2の受光面26Bは、夏季の強い日射光を、なるべく室内側へ照り返さないように吸収する低反射率の反射面とすることができる。
【0041】
上記遮光体24は、遮光作用の他に冬季に遮光体が吸収した太陽光の熱エネルギーを放熱する機能も有する。
【0042】
上記遮光体24の形態は遮光機能を発揮すればどのようなものでもよいが、図示例では水平な遮光板に形成されている。この遮光板の上に例えば観賞植物の鉢植えなどを載置できるように遮光体を剛体で形成してもよい。
【0043】
図示例の遮光体24は、図1、図4、図5に実線で示す通り、その板材の巾方向とアーム22の突出方向とが常に一致するように板材の両端部とアーム22とを接合させた固定板タイプとしている。そして、この固定板タイプでは回転窓の片側にだけ遮光体を設けることが望ましい。回転窓の両側に固定板である遮光体を設けると、図4に示す通風状態において十分な通風量が得られないからである。また夏季と冬季とで機能を切り替わる(例えば冬季に放熱手段を兼ねる遮光体を室内に取り込むなど)ことが本発明の大きなメリットである。但し、それらの構成は適宜変更することができる。
【0044】
上記遮光手段20の突出長さは、例えば夏季の正午の日射を全て遮ることが可能な下限長と等長以上に長く、かつ回転窓の回転操作時に遮光手段が開口部の上下各縁部や他の回転窓にぎりぎりで接触しない長さ、すなわち上限長さと等長又以下に短く定めることができる。上限長さは、軸部と回転窓の上下各縁との間の距離のうち短いものである。故に遮光手段の突出長を長く設計するためには窓枠の縦枠部の中間部から遮光手段を突出することが好適である。
【0045】
仮に遮光手段の突出長さをL、回転窓の上下巾をHとすると、図1又は図5の状態において、遮光手段によって日射を完全に遮断できる太陽高度(水平面に対して日射がなす角度)θは数式1で表わされ、H=2Lとすると、θ≧63.5となる。これよりも太陽高度が低い時間帯の日射を遮るためには、遮光手段の実質的な突出長をさらに長くする工夫が必要であるが、これに関しては後述する。(※1)
[数式1]tanθ≧H/L
【0046】
上記構成において、冬季には、図1に示すように遮光手段20を室内への突出状態とする。太陽光は、透明板を通過した後に遮光体24で遮られる。太陽光で温められた遮光体24からの放熱によって、室内環境を改善する。
【0047】
中間季になると、駆動装置8を作動させて、図4に示すように回転窓12が水平な状態とする。これにより通風が可能となる。
【0048】
夏季には、さらに駆動装置8を作動させて、図5に示すように遮光手段20を室外への突出状態にする。太陽光は、透明板13に到達する前に遮光体24によって遮られる。遮光体が高温となって放熱しても、遮光体が建築物の外にあるため、室内環境を悪化させない。
【0049】
以下、本発明の他の実施形態を説明する。これらの実施形態において第1の実施形態と同じ構成については同一の符号を付することで説明を省略する。
【0050】
図7〜図8は、本発明の第2の実施形態であり、第1実施形態の板状の遮光体24をアーム22の先端部に回転可能に枢着した回動板としている。この枢着部28は、遮光体24の巾方向中間部に、枢着部の真下に遮光体24の重心が位置するように設ける。上記回転板はアームの先端部に対して着脱自在とすることができる。
【0051】
上記構成から導かれる第1の作用として、板状の遮光体が常に水平であるために、通風のための大きな開口面積が確保できる。さらに遮光体が窓を垂直に塞ぐことによる閉塞感も低減する。
【0052】
上記構成から導かれる第2の作用として、遮光体24は、水平方向に対する回転窓12の回転角度と関係なく、常に水平に保たれる。アーム22が水平であるときには、アームの先部から遮光体24の巾方向一半部が先方へ突出し、アーム22が垂直状態にあるときには、アームに対して遮光体24は直角となる。
【0053】
この作用によれば、アームの突出長さをLa、遮光体の巾をDとすると、遮光体の突出長さLは、水平方向にはLa+(D/2)となり、また垂直方向にLaとなる。仮にH=2×La、La=(D/2)とすると、数式1から太陽高度が45°以上のときの日射を全て遮ることができる。さらに図面は省略しているが、窓枠の遮光手段突出箇所から、遮光手段20と同じ構成の第2の遮光手段を反対向き(建築物外側)に突出すると、日射を遮ることができる太陽高度の範囲が更に広がる。
【0054】
上記構成から導かれる第3の作用として、遮光体24の表裏2面のうち片面のみが常時受光面26として上を向くことになる。この性質は、次の実施形態で述べるように遮光体を、軽量の物品を収納するためのラック手段として用いるときに利用できる。
【0055】
図9〜図13は、本発明の第3の実施形態を示している。この実施形態は、第2の実施形態における板状の遮光体24を、上面開口の凹部を有する、観賞植物Gを栽培するためのプランターに形成した例である。具体的には、遮光体は、半筒形の樋状部30とこの樋状部の両端を閉塞する半円形の端板32とで構成される。そしてこの端板の上縁の巾方向中間部にアームとの枢着部を形成している。
【0056】
本実施形態によれば、植物は夏季には強い日射を浴びて大きく育成するので、日射を遮る作用が高まる。なお、上記遮光体をプランター以外の物品収納部とすることもできる。
【0057】
図14〜図18は、本発明の第4の実施形態を示している。本実施形態は、第3の実施形態の構成に比べて次の点で異なる。
【0058】
第1に、枢着部28を形成する位置を、遮光体24である収納ボックスの端板32のうち巾方向中間部から建築物外方へΔdだけずらしている。
【0059】
第2に、一対のアーム22の間に図15に示す平面視矩形の補助遮光材33を架設する。補助遮光板は、遮光板又は遮光シートとして形成することができる。また一対のアームと補助遮光材を合成樹脂材などで一体成形することもできる。補助遮光材33は、アームの水平状態において、上方から見て窓ガラスと遮光体との間隙のほぼ全部を覆うように設けるものとし、また好適な図示例では上方から見て補助遮光材と遮光体とが重なるように設けている。
【0060】
第3に、上記枢着部よりも建築物の外方側の遮光体24部分に錘34を付設している。この錘の重量及び配置は、遮光体24の重心が回動軸28の真下にくるように設定する。錘の重量は、遮光体である収納ボックスが空の状態を想定して設定してもよく、収納物の重量を想定して設定してもよい。
【0061】
また図示例のような半円筒形の収納ボックスでは錘を配置する位置の自由度が小さいが、例えば収納ボックスを側面から見て横長矩形として、収納ボックス内での錘の位置を適宜選択できるようにしてもよい。
【0062】
上記の構成によれば、回転窓12からの遮光体の突出長さLは、図14に示す内方突出状態ではLa+(D/2)+Δdとなり、図16に示す垂直状態ではLa+(D/2)となり、図17に示す外方突出状態では、La+(D/2)−Δdとなる。(※1)
【0063】
ただし、冷暖房負荷を考慮して、夏季は遮光をより強化し、冬季はむしろ日射熱を室内に呼び込む設計もありうる。この場合は逆に枢着部28を形成する位置を建物内側にずらし、かつその枢着箇所よりも建物内側に錘を設置することで対応が可能である。
【符号の説明】
【0064】
2…窓構造 4…軸受部 6…軸受穴 8…駆動装置
10…回転ユニット 12…回転窓 13…透明板 14…窓枠 14a…縦枠部
14b…横枠部 15…軸部
16…シール部 18A、18B…シール条 20…遮光手段 22…アーム
24…遮光体 26、26A、26B…受光面 28…枢着部 30…樋状部
32…端板 33…補助遮光材 34…錘
B…建築物
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮光機能付き窓構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物のぺリメータ部において大きな冷房負荷をもたらす日射をコントロールするため、多くの建築物にブラインドが用いられている。こうしたブラインドは、例えばオフィス空間内に無用な直達光をできるだけ排除する狙いがある。
【0003】
窓用のブラインドは、窓の室内側に多数のスラット状(板状)のルーバーを縦に連ねたものが広く用いられている。こうしたタイプのブラインドは、ルーバーを明るい色にして反射率を高めることで或る程度の日射熱除去効果を発揮するが、室内に侵入する熱も多い。
【0004】
これに対して窓の外側に多数のルーバーを連ねたブラインドも提案されており(特許文献1)、このような構成とすることで、夏季の日射熱の殆どを排除することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3815459号
【特許文献2】特開2003−328654号
【特許文献3】特許第4077765号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のブラインドは、窓の外側に設けたため、冬季に日射が室内に到達しにくく、暖房負荷の増加の原因となる可能性が高い。
【0007】
窓の内外一方にブラインドを設ける技術に対して、内外方向に幅広の窓枠の内部のうち外側にガラス板を嵌め込み、残りの部分にブラインドを設置し、窓枠の上下両辺の中間を縦軸部で内外反転可能に建築物に枢着した窓装置も知られている(特許文献2)。
【0008】
もっともこの構成の目的は高層建築物の窓を安全に清掃することであり、窓ガラス板及びブラインドが一つの窓枠内に配置されているため、内外方向に反転させても日射の遮断状況はあまり変わらない。
【0009】
また中間季の冷涼な外気を取り込んで冷房負荷を低減させるために、建築物の適所に換気口を設けることがある。例えば換気口内に複数の平行な遮光板からなる回転体を装置し、採光兼通風状態と、遮光・遮気状態とを選択できるものが知られている(特許文献3)。但し、こうした機構は、窓からの日射を制限する構造とは別に設けられ、厳寒期や厳暑期には閉鎖される。
【0010】
本願発明の第1の目的は、建築物の開口に回転窓の中心軸の周りを回転自在に枢着し、夏季には回転窓の外側に、また冬季には回転窓の内側に位置させることができるように回転窓にブラインドを取り付けた遮光機能付きの窓構造を提案することである。
【0011】
本発明の第2の目的は、中間季には日射の相当量を遮るとともに、通気を行うことが可能な遮光機能付きの窓構造を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の手段は、
建築物の外壁に存する開口部に水平な回転軸の周りを回転可能に設けた回転窓を含むとともに、この回転窓から水平方向へ遮光手段を突出してなる回転ユニットを具備し、
上記遮光手段は、水平方向に一定の巾を有する遮光体を含み、
かつ上記回転ユニットは、上記回転窓の回転軸周りの回転により、遮光手段が少なくとも建築物の内側へ突出している状態と建築物の外側へ突出している状態とを選択できるように構成している。
【0013】
本手段では、図1に示すように水平な回転軸O回りを回転可能な回転窓12とこの窓から水平方向へ突出した遮光手段20とからなる回転ユニット10を提案している。回転窓の回転軸を水平方向とした理由は、回転窓から突出した遮光手段が、回転途中で他の窓や壁に当たらないようにするためである。遮光手段を建築物の外側に位置させると、日射によって高温となった遮光手段と室内空気とが直接ふれることがないので、室内の環境が改善される。
【0014】
「回転ユニット」は、少なくとも回転窓と遮光手段とからなる回転の一単位である。大きい開口部を、縦方向又は横方向に配置した複数の回転ユニットでカバーすることができる。「遮光手段」は、回転窓の上下方向の一部(好ましくは回転軸付近)から水平方向へ突出したものであり、回転窓の水平方向の巾全長に亘って形成することが望ましい。広い範囲で日射を遮断させるためである。「回転窓」は、回転窓の水平方向の中心軸の周りを回転可能に設けている。仮に垂直方向の中心軸の周りを回転させようとしても、遮光手段が建築物の開口部の側縁に当たって回転させることができにくいからである。「遮光体」は、回転窓に対して一体的なもの及び回転窓に対してさらに回転するものを含む。
【0015】
第2の手段は、第1の手段を有し、かつ
さらに上記回転ユニットは、上記回転窓の回転軸周りの回転により、回転窓が水平であるとともに遮光手段が回転軸の上側又は下側に位置している状態を選択することができるように構成している。
【0016】
本手段では、図4に示す如く回転窓12を水平な状態とすることで、通風作用を確保できるように構成している。
【0017】
第3の手段は、第2の手段を有し、かつ
上記回転窓は、周辺部に窓枠を有し、かつ当該回転窓の垂直状態において窓枠の両側部の上下方向中間部分に、上記開口部側へ枢着した回転軸を付設しており、
上記遮光手段は、上記回転窓の垂直状態で回転窓の両側部の回転軸付近から水平方向へ突出した一対のアームを有するとともに、
これらアームの先部に、その水平方向の一定巾を有する平面視帯状の遮光体の両端の巾方向中間部に回転自在に枢着している。
【0018】
本手段では、図7に示す如く、遮光手段20を、回転窓から水平方向へ突出するアーム22の先部に、遮光体24を取り付けて構成することを提案している。これにより、建築物の開口部Aに対して回転窓12が回転し、かつ回転窓に対して遮光体24が回転することが可能となる。好適な一例として、図7の構成において遮光体の重心を枢着箇所の真下に位置させることで、回転窓の回転状況に関わらず、遮光体の一面が常に上方を向くように構成できる。
【0019】
第4の手段は、第3の手段を有し、かつこれらアームの先部を、遮光体の両端の巾方向中間部よりも建築物外方又は内方の何れか一方に偏心した箇所に枢着し、アームの水平状態で上方からみて遮光体と窓ガラスとの間隙のほぼ全部を覆うように一対のアームの間に補助遮光材を架け渡すとともに、上記枢着箇所よりもさらに上記一方寄りの遮光体部分に錘を取り付け、
この枢着箇所より外側の遮光体部分と枢着箇所より内側の遮光体部分とがバランスするように構成している。
【0020】
本手段では、アームの先部への遮光体の枢着箇所を内外偏心位置に設定することを提案する。図14では、遮光体が建築物内方へ突出している状態において、上記枢着箇所を遮光体の建築物外寄りへ偏心させている。そして枢着箇所よりもさらに外側の遮光体部分に枢着箇所の両側の重量をバランスさせるための錘を設ける。また1対のアームの間には窓ガラスと遮光体との間隙を覆う補助遮光材を設ける。これにより図14の冬季モードでは建築物内方への遮光体の突出長を長く、また図18の夏季モードでは建築物外方への遮光体の突出長を短くすることができる。図面は省略するが、遮光体が建築物内方へ突出している状態において、上記枢着箇所を建築物内寄りへ偏心させ、その枢着箇所よりもさらに内側の遮光体部分に同様の錘を設けてもよい。枢着箇所の両側のバランスを微調整するために遮光体における錘の位置を内外方向にずらすことが可能に形成してもよい。
【0021】
第5の手段は、第3の手段又は第4の手段を有し、かつ上記遮光体は、回転軸の方向に長く、かつ観賞植物などの物品の収納に適した上面開口の収納ボックスであり、
この収納ボックスの両端壁をアームの先部に回転可能に枢着し、かつ収納ボックスの開放面が、回転軸の向きに関わらず、収納ボックスの重量により常に上方に向くように構成している。
【0022】
本手段では、遮光体を上面開放の収納ボックスとすることを提案している。
【0023】
第6の手段は、第3の手段から第5の手段のいずれかを有し、かつ
上記開口部内に、複数の回転ユニットを、その回転ユニットの回転窓同士が垂直状態で連なるようにかつこの垂直状態で遮光手段が同一方向へ突出するように設置するとともに、
これらの回転ユニットを連動して回転させるための回転制御部を設けている。
【0024】
本手段では、開口部に複数の回転ユニットを設けたから、比較的広い開口部に本発明の窓機構を適用できる。
【発明の効果】
【0025】
第1の手段に係る発明によれば、遮光手段が建築物の内側にある状態と建築物の外側にある状態とを選択することができ、夏季に遮光手段を建築物の外側におくと、太陽光により高温となった遮光手段が室内側の空気を直接温めることがないので、室内環境が改善される。
【0026】
第2の手段に係る発明によれば、回転窓を水平な状態にできるので、好適に通風機能を発揮する。
【0027】
第3の手段に係る発明によれば、遮光手段は、アームの先部を、遮光体の両端の巾方向中間部に枢着したから、図4に示す通気モードで完全な通気層が形成される。
【0028】
第4の手段に係る発明によれば、遮光体に錘を付けたから、遮光手段の建築物外方の突出長さを建築物内方への突出長さよりも短くすることができ、夏季の高い位置からの太陽光の光線を確実に遮断できる。
【0029】
第5の手段に係る発明によれば、遮光体である収納ボックスの開放面が常に上方に向くので、回転窓の回転により建築物に対して出し入れするときに物品を移し替える手間が必要ではなく、便利である。
【0030】
第6の手段に係る発明によれば、開口部に複数の回転ユニットを設けたから、比較的広い開口部に本発明の窓機構を適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1実施形態に係る窓構造の冬季用モードでの縦断面図である。
【図2】図1の窓構造を内側から見た正面図である。
【図3】図1の窓構造を上方から見た一部切欠き断面図である。
【図4】図1の窓構造の中間季用(通気)モードでの縦断面図である。
【図5】図1の窓構造の夏季用モードでの縦断面図である。
【図6】図1の窓構造のシール部の縦断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る窓構造の夏季(ないし冬季)用モードでの縦断面図である。
【図8】図7の窓構造の中間季(通気)モードでの縦断面図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係る窓構造の冬季用モードでの縦断面図である。
【図10】図9の窓構造を前方から見た一部切欠き断面図である。
【図11】図9の窓構造を上方から見た一部切欠き断面図である。
【図12】図9の窓構造の中間季用(通気)モードでの縦断面図である。
【図13】図9の窓構造の夏季用モードでの縦断面図である。
【図14】本発明の第4実施形態に係る窓構造の冬季用モードでの縦断面図である。
【図15】図14の窓構造の一部断面平面図である。
【図16】図14の窓構造の中間季用(通気)モードでの縦断面図である。
【図17】図16の窓構造の夏用モードでの縦断面図である。
【図18】図17の窓構造の一部断面平面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
図1から図6は、本願第1の実施形態に係る窓構造を示している。この窓構造2は、建築物Bの外壁Wに設けた開口部A内に構成される。
【0033】
上記窓構造2は、開口部の左右両側に設けられた軸受部4と、複数の回転ユニット10とで構成されている。
【0034】
軸受部4は、図示例では、開口部の左右両辺に沿って長く延びるとともに、上下方向に適所に好ましくは等間隔に軸受穴6を有する。
【0035】
図示の軸受部は中空であり、内部に複数の回転ユニットを一律に回転させることが可能な駆動装置8を有する。図示例の駆動装置は、後述の回転窓の軸部と連携するためのチェーンを軸受部内に垂直方向に掛け渡している。もっともこれらの構成は適宜変更することができる。また図示しない制御部により回転ユニットの回転量を調整できるようにするとよい。
【0036】
回転ユニット10は、回転窓12と遮光手段20とで形成している。回転ユニット10とは、一つの回転軸の周りで回転する回転体であり、主としてある程度の広さの開口部を複数の回転体で覆うときの一つの回転単位である。広い開口部Aを大きな一つの回転体でカバーしようとすると回転モーメントが大きくなり、大きな駆動力が必要だからである。もっとも開口部がそれほど広くないときには、一つの回転ユニットだけを設けてもよい。
【0037】
上記回転窓12は、好適な図示例では、長方形状の透明板13の周りに窓枠14を取り付けてなり、この窓枠の縦枠部14aの上下方向中間部から水平方向へ突出した軸部15を上記軸受穴内へ挿入し、枢支させている。また少なくとも一方の軸部を駆動装置8に連携させている。軸受部4,4間の開口部分には、複数の回転窓12をほぼ隙間なく配置させている。
【0038】
なお、上記窓枠14の横枠部14bと開口部Aの上下両辺部とには、相互に気密にかつ回転窓の回転を妨げないように接するシール部16に設ける。シール部16は、例えば図6に示すように横枠部同士の対向面、或いは横枠部と開口部の辺部の対向面に、内外2重のシール条18A、18Bを設けるとよい。また図示例の窓枠14の構成では、その縦枠部の上下方向中間部で後述の遮光手段の重量を支えることになるが、強度が不足する場合には、それら中間部間に中枠部を架設し、この中枠部から遮光手段を突出させるような構成としてもよい。
【0039】
上記遮光手段20は、回転窓12の上下方向の一部から水平方向室内側へ突出させている。好適な図示例では、遮光手段20は、上記窓枠の縦枠部14aの上下方向中間部から水平方向室内側へ突出する一対の剛性のアーム22と、これらアームの間に架設する遮光体24とで構成する。
【0040】
上記遮光体24は、遮光材料で形成されており、水平方向に一定の巾を有する。遮光体24は、冬季の日射を受ける第1の受光面26Aと夏季の日射を受ける第2の受光面26Bとを水平状態での表側及び裏側に有する。例えば第1の受光面26Aは、冬季の弱い日射光を高効率で室内へ反射する高反射率の反射面(好ましくは拡散反射面)とし、また第2の受光面26Bは、夏季の強い日射光を、なるべく室内側へ照り返さないように吸収する低反射率の反射面とすることができる。
【0041】
上記遮光体24は、遮光作用の他に冬季に遮光体が吸収した太陽光の熱エネルギーを放熱する機能も有する。
【0042】
上記遮光体24の形態は遮光機能を発揮すればどのようなものでもよいが、図示例では水平な遮光板に形成されている。この遮光板の上に例えば観賞植物の鉢植えなどを載置できるように遮光体を剛体で形成してもよい。
【0043】
図示例の遮光体24は、図1、図4、図5に実線で示す通り、その板材の巾方向とアーム22の突出方向とが常に一致するように板材の両端部とアーム22とを接合させた固定板タイプとしている。そして、この固定板タイプでは回転窓の片側にだけ遮光体を設けることが望ましい。回転窓の両側に固定板である遮光体を設けると、図4に示す通風状態において十分な通風量が得られないからである。また夏季と冬季とで機能を切り替わる(例えば冬季に放熱手段を兼ねる遮光体を室内に取り込むなど)ことが本発明の大きなメリットである。但し、それらの構成は適宜変更することができる。
【0044】
上記遮光手段20の突出長さは、例えば夏季の正午の日射を全て遮ることが可能な下限長と等長以上に長く、かつ回転窓の回転操作時に遮光手段が開口部の上下各縁部や他の回転窓にぎりぎりで接触しない長さ、すなわち上限長さと等長又以下に短く定めることができる。上限長さは、軸部と回転窓の上下各縁との間の距離のうち短いものである。故に遮光手段の突出長を長く設計するためには窓枠の縦枠部の中間部から遮光手段を突出することが好適である。
【0045】
仮に遮光手段の突出長さをL、回転窓の上下巾をHとすると、図1又は図5の状態において、遮光手段によって日射を完全に遮断できる太陽高度(水平面に対して日射がなす角度)θは数式1で表わされ、H=2Lとすると、θ≧63.5となる。これよりも太陽高度が低い時間帯の日射を遮るためには、遮光手段の実質的な突出長をさらに長くする工夫が必要であるが、これに関しては後述する。(※1)
[数式1]tanθ≧H/L
【0046】
上記構成において、冬季には、図1に示すように遮光手段20を室内への突出状態とする。太陽光は、透明板を通過した後に遮光体24で遮られる。太陽光で温められた遮光体24からの放熱によって、室内環境を改善する。
【0047】
中間季になると、駆動装置8を作動させて、図4に示すように回転窓12が水平な状態とする。これにより通風が可能となる。
【0048】
夏季には、さらに駆動装置8を作動させて、図5に示すように遮光手段20を室外への突出状態にする。太陽光は、透明板13に到達する前に遮光体24によって遮られる。遮光体が高温となって放熱しても、遮光体が建築物の外にあるため、室内環境を悪化させない。
【0049】
以下、本発明の他の実施形態を説明する。これらの実施形態において第1の実施形態と同じ構成については同一の符号を付することで説明を省略する。
【0050】
図7〜図8は、本発明の第2の実施形態であり、第1実施形態の板状の遮光体24をアーム22の先端部に回転可能に枢着した回動板としている。この枢着部28は、遮光体24の巾方向中間部に、枢着部の真下に遮光体24の重心が位置するように設ける。上記回転板はアームの先端部に対して着脱自在とすることができる。
【0051】
上記構成から導かれる第1の作用として、板状の遮光体が常に水平であるために、通風のための大きな開口面積が確保できる。さらに遮光体が窓を垂直に塞ぐことによる閉塞感も低減する。
【0052】
上記構成から導かれる第2の作用として、遮光体24は、水平方向に対する回転窓12の回転角度と関係なく、常に水平に保たれる。アーム22が水平であるときには、アームの先部から遮光体24の巾方向一半部が先方へ突出し、アーム22が垂直状態にあるときには、アームに対して遮光体24は直角となる。
【0053】
この作用によれば、アームの突出長さをLa、遮光体の巾をDとすると、遮光体の突出長さLは、水平方向にはLa+(D/2)となり、また垂直方向にLaとなる。仮にH=2×La、La=(D/2)とすると、数式1から太陽高度が45°以上のときの日射を全て遮ることができる。さらに図面は省略しているが、窓枠の遮光手段突出箇所から、遮光手段20と同じ構成の第2の遮光手段を反対向き(建築物外側)に突出すると、日射を遮ることができる太陽高度の範囲が更に広がる。
【0054】
上記構成から導かれる第3の作用として、遮光体24の表裏2面のうち片面のみが常時受光面26として上を向くことになる。この性質は、次の実施形態で述べるように遮光体を、軽量の物品を収納するためのラック手段として用いるときに利用できる。
【0055】
図9〜図13は、本発明の第3の実施形態を示している。この実施形態は、第2の実施形態における板状の遮光体24を、上面開口の凹部を有する、観賞植物Gを栽培するためのプランターに形成した例である。具体的には、遮光体は、半筒形の樋状部30とこの樋状部の両端を閉塞する半円形の端板32とで構成される。そしてこの端板の上縁の巾方向中間部にアームとの枢着部を形成している。
【0056】
本実施形態によれば、植物は夏季には強い日射を浴びて大きく育成するので、日射を遮る作用が高まる。なお、上記遮光体をプランター以外の物品収納部とすることもできる。
【0057】
図14〜図18は、本発明の第4の実施形態を示している。本実施形態は、第3の実施形態の構成に比べて次の点で異なる。
【0058】
第1に、枢着部28を形成する位置を、遮光体24である収納ボックスの端板32のうち巾方向中間部から建築物外方へΔdだけずらしている。
【0059】
第2に、一対のアーム22の間に図15に示す平面視矩形の補助遮光材33を架設する。補助遮光板は、遮光板又は遮光シートとして形成することができる。また一対のアームと補助遮光材を合成樹脂材などで一体成形することもできる。補助遮光材33は、アームの水平状態において、上方から見て窓ガラスと遮光体との間隙のほぼ全部を覆うように設けるものとし、また好適な図示例では上方から見て補助遮光材と遮光体とが重なるように設けている。
【0060】
第3に、上記枢着部よりも建築物の外方側の遮光体24部分に錘34を付設している。この錘の重量及び配置は、遮光体24の重心が回動軸28の真下にくるように設定する。錘の重量は、遮光体である収納ボックスが空の状態を想定して設定してもよく、収納物の重量を想定して設定してもよい。
【0061】
また図示例のような半円筒形の収納ボックスでは錘を配置する位置の自由度が小さいが、例えば収納ボックスを側面から見て横長矩形として、収納ボックス内での錘の位置を適宜選択できるようにしてもよい。
【0062】
上記の構成によれば、回転窓12からの遮光体の突出長さLは、図14に示す内方突出状態ではLa+(D/2)+Δdとなり、図16に示す垂直状態ではLa+(D/2)となり、図17に示す外方突出状態では、La+(D/2)−Δdとなる。(※1)
【0063】
ただし、冷暖房負荷を考慮して、夏季は遮光をより強化し、冬季はむしろ日射熱を室内に呼び込む設計もありうる。この場合は逆に枢着部28を形成する位置を建物内側にずらし、かつその枢着箇所よりも建物内側に錘を設置することで対応が可能である。
【符号の説明】
【0064】
2…窓構造 4…軸受部 6…軸受穴 8…駆動装置
10…回転ユニット 12…回転窓 13…透明板 14…窓枠 14a…縦枠部
14b…横枠部 15…軸部
16…シール部 18A、18B…シール条 20…遮光手段 22…アーム
24…遮光体 26、26A、26B…受光面 28…枢着部 30…樋状部
32…端板 33…補助遮光材 34…錘
B…建築物
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の外壁に存する開口部に水平な回転軸の周りを回転可能に設けた回転窓を含むとともに、この回転窓から水平方向へ遮光手段を突出してなる回転ユニットを具備し、
上記遮光手段は、水平方向に一定の巾を有する遮光体を含み、
かつ上記回転ユニットは、上記回転窓の回転軸周りの回転により、遮光手段が少なくとも建築物の内側へ突出している状態と建築物の外側へ突出している状態とを選択できるように構成したことを特徴とする、遮光機能付き窓構造。
【請求項2】
さらに上記回転ユニットは、上記回転窓の回転軸周りの回転により、回転窓が水平であるとともに遮光手段が回転軸の上側又は下側に位置している状態を選択することができるように構成したことを特徴とする、請求項1記載の遮光機能付き窓構造。
【請求項3】
上記回転窓は、周辺部に窓枠を有し、かつ当該回転窓の垂直状態において窓枠の両側部の上下方向中間部分に、上記開口部側へ枢着した回転軸を付設しており、
上記遮光手段は、上記回転窓の垂直状態で回転窓の両側部の回転軸付近から水平方向へ突出した一対のアームを有するとともに、
これらアームの先部に、その水平方向の一定巾を有する平面視帯状の遮光体の両端の巾方向中間部に回転自在に枢着したことを特徴とする、請求項2に記載の遮光機能付き窓構造。
【請求項4】
これらアームの先部を、遮光体の両端の巾方向中間部よりも建築物外方又は内方の何れか一方に偏心した箇所に枢着し、
アームの水平状態で上方からみて遮光体と窓ガラスとの間隙のほぼ全部を覆うように一対のアームの間に補助遮光材を架け渡すとともに、
上記枢着箇所よりも建築物外方寄りの遮光体部分に錘を取り付け、
この枢着箇所より外側の遮光体部分と枢着箇所より内側の遮光体部分とがバランスするように構成したことを特徴とする、請求項3記載の遮光機能付きの窓構造。
【請求項5】
上記遮光体は、回転軸の方向に長く、かつ観賞植物などの物品の収納に適した上面開口の収納ボックスであり、
この収納ボックスの両端壁をアームの先部に回転可能に枢着し、かつ収納ボックスの開放面が、回転軸の向きに関わらず、収納ボックスの重量により常に上方に向くように構成したことを特徴とする、請求項3又は請求項4に記載の遮光機能付き窓構造。
【請求項6】
上記開口部内に、複数の回転ユニットを、その回転ユニットの回転窓同士が垂直状態で連なるようにかつこの垂直状態で遮光手段が同一方向へ突出するように設置するとともに、
これらの回転ユニットを連動して回転させるための回転制御部を設けたことを特徴とする、請求項3から請求項5のいずれかに記載の遮光機能付き窓構造。
【請求項1】
建築物の外壁に存する開口部に水平な回転軸の周りを回転可能に設けた回転窓を含むとともに、この回転窓から水平方向へ遮光手段を突出してなる回転ユニットを具備し、
上記遮光手段は、水平方向に一定の巾を有する遮光体を含み、
かつ上記回転ユニットは、上記回転窓の回転軸周りの回転により、遮光手段が少なくとも建築物の内側へ突出している状態と建築物の外側へ突出している状態とを選択できるように構成したことを特徴とする、遮光機能付き窓構造。
【請求項2】
さらに上記回転ユニットは、上記回転窓の回転軸周りの回転により、回転窓が水平であるとともに遮光手段が回転軸の上側又は下側に位置している状態を選択することができるように構成したことを特徴とする、請求項1記載の遮光機能付き窓構造。
【請求項3】
上記回転窓は、周辺部に窓枠を有し、かつ当該回転窓の垂直状態において窓枠の両側部の上下方向中間部分に、上記開口部側へ枢着した回転軸を付設しており、
上記遮光手段は、上記回転窓の垂直状態で回転窓の両側部の回転軸付近から水平方向へ突出した一対のアームを有するとともに、
これらアームの先部に、その水平方向の一定巾を有する平面視帯状の遮光体の両端の巾方向中間部に回転自在に枢着したことを特徴とする、請求項2に記載の遮光機能付き窓構造。
【請求項4】
これらアームの先部を、遮光体の両端の巾方向中間部よりも建築物外方又は内方の何れか一方に偏心した箇所に枢着し、
アームの水平状態で上方からみて遮光体と窓ガラスとの間隙のほぼ全部を覆うように一対のアームの間に補助遮光材を架け渡すとともに、
上記枢着箇所よりも建築物外方寄りの遮光体部分に錘を取り付け、
この枢着箇所より外側の遮光体部分と枢着箇所より内側の遮光体部分とがバランスするように構成したことを特徴とする、請求項3記載の遮光機能付きの窓構造。
【請求項5】
上記遮光体は、回転軸の方向に長く、かつ観賞植物などの物品の収納に適した上面開口の収納ボックスであり、
この収納ボックスの両端壁をアームの先部に回転可能に枢着し、かつ収納ボックスの開放面が、回転軸の向きに関わらず、収納ボックスの重量により常に上方に向くように構成したことを特徴とする、請求項3又は請求項4に記載の遮光機能付き窓構造。
【請求項6】
上記開口部内に、複数の回転ユニットを、その回転ユニットの回転窓同士が垂直状態で連なるようにかつこの垂直状態で遮光手段が同一方向へ突出するように設置するとともに、
これらの回転ユニットを連動して回転させるための回転制御部を設けたことを特徴とする、請求項3から請求項5のいずれかに記載の遮光機能付き窓構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−57304(P2012−57304A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−198744(P2010−198744)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】
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