説明

遮光領域を有する反射型マスク、反射型マスクブランクス及び反射型マスクの製造方法

【課題】反射型マスクのパターンに損傷を及ぼす危険性を解消し、反射型マスク上の遮光領域の遮光性を高めてウェハ上の露光フィールド境界部のオーバー露光を抑制できる遮光領域を有する反射型マスクを提供する。
【解決手段】基板と、EUV光を反射する反射層と、EUV光を吸収する吸収層で形成された吸収体パターンと、を少なくとも備えた反射型マスクであって、吸収体パターンによって形成された転写パターン領域の周囲に、EUV光を遮光するための遮光領域が設けられ、前記遮光領域が反射層と吸収層とを備え、前記遮光領域の反射層が、転写パターン領域の反射層と同一平面上になく、基板の主面に対して所定の角度を有する斜面上にあり、遮光領域に入射したEUV光の反射光を、転写パターン領域に入射したEUV光の反射光とは異なる方向に反射させる反射層であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極端紫外光(Extreme Ultra Violet:以後、EUVと記す)を用いてマスクパターンをウェハ上に転写するためのEUV露光用の反射型マスクに関し、さらに詳しくは、露光フィールド境界におけるオーバー露光を防止するための遮光領域を有する反射型マスク、反射型マスクブランクス及び反射型マスクの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの微細化に伴い、現在、ArFエキシマレーザを用いた光学式の投影露光装置により、フォトマスクを用いてウェハ上にパターン転写する露光方法が行なわれている。これらの光学式の投影露光装置による露光方法では、いずれ解像限界に達するため、電子線描画装置による直描やインプリントリソグラフィやEUVリソグラフィのような新しいパターン形成方法が提案されている。
【0003】
これらの新しいリソグラフィ技術の中でも、紫外線露光の短波長化の極限と見なされているEUV露光は、エキシマレーザよりもさらに短波長である波長13.5nm程度のEUV光を用い、マスクパターンを通常1/4程度に縮小してウェハ上のレジストに転写する露光技術であり、半導体デバイス用の次世代リソグラフィ技術として注目されている。EUV露光においては、短波長のために屈折光学系が使用できないため、反射光学系が用いられ、マスクとしては反射型マスクが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このEUV露光用反射型マスク(以後、反射型マスクとも記す)は、EUV光を反射する多層膜構造の反射層と、この反射層上にEUV光を吸収する吸収層で形成され、露光装置を用いてウェハ等の被転写体に転写されるべきパターン(以下、吸収体パターンと称する)とを、少なくとも備えたマスクである。
【0005】
図12は、このような従来のEUV露光用反射型マスクの一例を示す断面図である。図12に示すEUV露光用反射型マスク120は、基板121上に多層膜構造でEUV光を反射する反射層122を有し、反射層122上にEUV光を吸収する吸収層125からなる吸収体パターンが形成された構造となっている。反射型マスクに入射したEUV光は、反射層122では反射され、吸収層125では吸収され、反射されたEUV光によりウェハ上に縮小転写パターンが形成される。
なお、反射層122上には反射層を保護するキャッピング層123やマスクパターン形成時の反射層122へのエッチングダメージを防止するためのバッファ層124が設けられていてもよい。また、吸収層125上には、検査時の検出感度を上げるために反射防止層126が設けられていてもよい。
【0006】
図8は、図12に示した反射型マスク120を用いたEUV露光の概念図である。EUV露光では、EUV光81(81A;81B)はEUVマスク120面に対し垂直な方向から数度(例えば、6度)傾いた方向から入射される。従って、吸収層125パターンの膜厚が厚いと、パターン自身の影が生じ、露光時に転写されたパターンのエッジ部分がぼけるなどのシャドーイングと呼ばれる現象により鮮明な転写像が得られなくなるため、パターン形成上、吸収層125の厚さは薄い方がより好ましい。この点から、吸収層125は、露光光の波長に対し、吸収係数が大きい方が有利であり、吸収層125の膜厚は、露光光であるEUV光81を十分に吸収できる厚さであって、かつ可能な限り薄い方が望ましい。
【0007】
しかしながら、吸収層125の厚さを薄くした場合、以下のような露光フィールド境界部におけるレジストのオーバー露光の問題が生じる。
図8に示すように、EUV露光では、フォトマスクのステッパー露光と同様に、反射型マスク120上のパターン領域を、反射型マスク120上に設置されるブレード83によって矩形状の露光フィールド85に区切り、ステップアンドリピート方式によりウェハ84に多面付け露光される。ここで、上述のように、吸収層125の膜厚を薄くした場合には、吸収層125からなる転写パターンから放射される第2の反射光82Bの強度が高まり、ブレード83境界近傍に相当する露光フィールド85外周の重なり部において、ウェハ84上のレジストが多重露光により、オーバー露光されてしまう。
【0008】
図9は、EUV露光による上記の問題点の説明図であり、ウェハ84上に4つの露光フィールドが転写された状態を例示している。図9に示すように、ウェハ上のフィールド境界周辺では、露光時の隣り合うショットにより2重あるいは4重に露光が重なり合ってフィールド重なり部87となって多重露光されるために、レジストが不適切に感光しレジストダメージが生じる。例えば、ポジ型レジストを用いた場合、1回の露光ショットでは適正露光であっても、フィールド85が重なり合う部分のレジストは多重露光によりオーバー露光となり、レジスト現像後にレジストの膜減りの問題やパターン仕上がり寸法の変動の問題が生じる。
【0009】
上記の露光フィールド境界での遮光の問題を解決するために、マスクの転写パターン領域の周辺に遮光領域を設けた反射型マスクが提案されている(特許文献2参照)。ここで、上記の転写パターン領域とは、ウェハ等の被転写体に転写される露光フィールドに対応した反射型マスク上のパターン領域のことであり、上記の遮光領域とは、転写パターン領域の周囲に設けられたEUV光の反射を低減させた領域のことであり、遮光領域を設けることにより、ウェハ上で隣り合う露光フィールドの境界部におけるレジストのオーバー露光を防止する。
【0010】
特許文献2には、遮光領域を設けたEUV露光用反射型マスクの代表的な例として、図10および図11に示すような2つの方式が開示されている。図10に示す反射型マスク100は、転写パターン領域107の周囲の遮光領域108の吸収層を2段構造に積層(以後、吸収層積層方式とも言う)した反射型マスクであり、第1の吸収層103の上に、第2の吸収層106を設けて破線内に示す遮光領域108としている。図11に示す反射型マスク110は、転写パターン領域117の周囲の遮光領域の反射層112をエッチング加工で除去して破線内に示す遮光領域118とした反射層加工方式の反射型マスクである。
【0011】
なお、図10および図11には図示してないが、吸収層103および吸収層113からなる転写パターンの上には、反射型マスクの欠陥検査をより精度良く行うために、反射防止層が設けられていても良い。また、反射層102、112の表面には、反射層を保護するためのキャッピング層が設けられていてもよく、キャッピング層と吸収層103、113の間には、吸収層加工時のエッチングから反射層を保護するためのバッファ層が設けられていてもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開昭和63−201656号公報
【特許文献2】特開2009−212220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、従来、EUV用の遮光領域を形成するために、図10に示す吸収層を積層させて作成する上述の吸収体積層方式、あるいは図11に示す反射層を掘り込んで除去して作成する反射層加工方式による遮光領域を有する反射型マスクを製造するには、以下のような問題があった。
【0014】
図10に示すような吸収体積層方式の反射型マスクの製造方法については、特許文献2において、吸収体パターンを構成する第1の吸収層103の上に、遮光領域108を構成する第2の吸収層106を積層し、第2の吸収層106の上に形成したレジストパターンをエッチングマスクにして、第2の吸収層106と第1の吸収層103をエッチング加工して、第2の吸収層106と第1の吸収層103の両方の厚さの転写パターンと遮光領域パターンを形成し、次いで、転写パターン領域107の第2の吸収層106からなる転写パターンのみを除去して上記のような吸収体積層方式の反射型マスクを得る方法が提案されている。
【0015】
しかし、上記のように、第2の吸収層106と第1の吸収層103の両方をエッチング加工して転写パターンを形成することは、第1の吸収層のみをエッチング加工して転写パターンを形成することに比べて厚膜のエッチングとなり、エッチング時のレジストダメージによるマスクパターンの劣化が生じ、精度良く転写パターンを形成することは困難であった。また、第1の吸収層の転写パターンに損傷を与えずに、転写パターン領域107の第2の吸収層からなる転写パターンのみを除去することも困難であった。また、転写パターン領域107に転写すべきメインパターンを作成後に上部吸収層を作成する製造方法では、製造途中の洗浄プロセスで使用した硫酸イオンなどが基板上に残留して吸収体パターン作成時のレジストプロセスに影響し、寸法精度に悪影響を及ぼす問題が発生していた。
【0016】
一方、図11に示す反射層を除去する反射層加工方式の反射型マスクについては、Mo層とSi層を交互に設けて一組の層とした40層(例えば、厚さ274nm)に及ぶ多層膜構造の反射層112を深掘りエッチングして、遮光領域118の反射層112を除去する必要があるが、この反射層の除去は容易ではなく、工程が長くなるという問題を生じていた。さらに、反射層加工方式の反射型マスクにおいては、反射層112を構成するMo層とSi層を交互に積層した多層膜の側面が、遮光領域118において露出した構造となるため、マスク洗浄時に露出している多層の反射層112の側面が損傷してしまう恐れや、多層の反射層112の一部が側面から溶出して転写パターンに欠陥が生じてしまうという問題があった。
【0017】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、EUV露光用の反射型マスクのパターンに損傷を及ぼす危険性を解消しつつ、反射型マスク上の遮光領域の遮光性を高めてウェハ上の露光フィールド境界部のオーバー露光を抑制できる遮光領域を有する反射型マスク、反射型マスクブランクス、および反射型マスクの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者は、種々研究した結果、遮光領域における反射層を傾けて成膜することで遮光領域からの反射光をマスクパターン部の反射光とは異なる角度で反射し、良好な遮光特性を得ることにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成したものである。
【0019】
本発明の請求項1の発明に係る反射型マスクは、基板と、前記基板の主面上に形成されたEUV光を反射する反射層と、前記反射層上に前記EUV光を吸収する吸収層で形成された吸収体パターンと、を少なくとも備えたEUV露光用の反射型マスクであって、前記吸収体パターンによって形成された転写パターン領域の周囲に、前記EUV光を遮光するための遮光領域が設けられており、前記遮光領域が前記反射層と前記吸収層とを備え、前記遮光領域の前記反射層が、前記転写パターン領域の前記反射層と同一平面上になく、前記基板の主面に対して所定の角度を有する斜面上にあり、前記遮光領域に入射した前記EUV光の反射光を、前記転写パターン領域に入射した前記EUV光の反射光とは異なる方向に反射させる反射層であることを特徴とするものである。
【0020】
また、本発明の請求項2の発明に係る反射型マスクは、請求項1に記載の反射型マスクにおいて、前記遮光領域の前記反射層がある斜面が、前記転写パターン領域の前記反射層がある平面から前記基板側と反対の方向に向けて形成された斜面であることを特徴とするものである。
【0021】
また、本発明の請求項3の発明に係る反射型マスクは、請求項1に記載の反射型マスクにおいて、前記遮光領域の前記反射層がある斜面が、前記転写パターン領域の前記反射層がある平面から前記基板側の方向に向けて形成された斜面であることを特徴とするものである。
【0022】
また、本発明の請求項4の発明に係る反射型マスクは、請求項1に記載の反射型マスクにおいて、前記遮光領域における前記反射層が、鋸歯状であることを特徴とするものである。
【0023】
また、本発明の請求項5の発明に係る反射型マスクは、請求項1から請求項4までのうちのいずれか1項に記載の反射型マスクにおいて、前記遮光領域及び前記転写パターン領域の前記反射層と前記吸収層が、それぞれ同一材料で形成されていることを特徴とするものである。
【0024】
また、本発明の請求項6の発明に係る反射型マスクブランクスは、基板と、前記基板の主面上に形成されたEUV光を反射する反射層と、前記反射層上に設けられた前記EUV光を吸収する吸収層と、を少なくとも備えたEUV露光用の反射型マスクブランクスであって、前記反射型マスクブランクスが、転写パターンを形成する領域と、該転写パターンを形成する領域の周囲に前記EUV光を遮光するための遮光領域と、を設けており、前記遮光領域が前記反射層と前記吸収層とを備え、前記遮光領域における前記反射層が、前記転写パターン領域の前記反射層と同一平面上になく、前記基板の主面に対して所定の角度を有する斜面上にあることを特徴とするものである。
【0025】
また、本発明の請求項7の発明に係る反射型マスクの製造方法は、基板と、前記基板の主面上に形成されたEUV光を反射する反射層と、前記反射層上に前記EUV光を吸収する吸収層で形成された吸収体パターンと、を少なくとも備え、前記吸収体パターンによって形成された転写パターン領域の周囲に、前記EUV光を遮光するための遮光領域が設けられているEUV露光用の反射型マスクの製造方法であって、前記基板の主面上の前記遮光領域となる領域の基板表面を加工し、前記基板の主面に対して所定の角度を有する斜面を形成する工程と、前記斜面を含む前記基板の主面上に、前記反射層、前記吸収層を順に設けて反射型マスクブランクスを形成する工程と、前記反射型マスクブランクス上に前記吸収体パターンを形成するためのレジストパターンを形成する工程と、前記レジストパターンをマスクとして前記吸収層をエッチングして吸収体パターンを形成する工程と、を含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0026】
本発明のEUV露光用の反射型マスクによれば、遮光領域における反射層を基板の主面に対して所定の角度を有する斜面上に成膜することで、遮光領域に入射したEUV光の反射光を、転写パターン領域に入射したEUV光の反射光とは異なる方向に反射させ、良好な遮光特性を得ることができる。そのため、従来の吸収層を2段構造に積層した遮光領域や反射層をエッチング除去して作成した遮光領域を形成することによるメインパターンの加工精度低下や、欠陥を生じるなどの問題を発生せずに、良好な遮光特性を持つ反射型マスクを得ることができる。
【0027】
本発明のEUV露光用の反射型マスクブランクスによれば、反射型マスクブランクスにすでに遮光領域が形成されているので、このブランクスを用いることにより遮光領域形成工程が不要になり、良好な遮光特性を持ち高品質の反射型マスクを容易に作製することが可能となる。
【0028】
本発明のEUV露光用反射型マスクの製造方法によれば、遮光領域を有するEUV露光用の反射型マスクの製造において、従来の吸収層を2段構造に積層した遮光領域や反射層をエッチング除去して作成した遮光領域を形成することによるメインパターンの加工精度低下や、欠陥を生じるなどの問題を発生せずに、良好な遮光特性を持つ高品質の反射型マスクを作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る反射型マスクの一例を示す図であり、図1(a)はマスク全体の平面模式図、図1(b)は図1(a)のA−A線における断面模式図、図1(c)は図1(b)における遮光領域の部分拡大図である。
【図2】本発明に係る反射型マスクの実施形態の例を示す概略断面図であり、遮光領域を拡大して示してある。
【図3】本発明に係る反射型マスクの他の実施形態示す概略断面図であり、遮光領域を拡大して示してある。
【図4】本発明に係る反射型マスクの別な実施形態を示す概略断面図であり、遮光領域を拡大して示してある。
【図5】本発明に係る反射型マスクブランクスの実施形態の一例を示す概略断面図であり、遮光領域を拡大して示してある。
【図6】本発明の反射型マスクの製造方法の一例を説明する工程断面模式図である。
【図7】図6に続く本発明の反射型マスクの製造方法の一例を説明する工程断面模式図である。
【図8】反射型マスクを用いたEUV露光の概念図である。
【図9】EUV露光の露光フィールド境界部における多重露光の説明図である。
【図10】従来の遮光領域を有する吸収体積層方式の反射型マスクの例を示す断面図である。
【図11】従来の遮光領域を有する反射層加工方式の反射型マスクの例を示す断面図である。
【図12】従来の反射型マスクの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の遮光領域を有する反射型マスク、反射型マスクブランクス、および反射型マスクの製造方法について、図面を参照しながら実施形態を説明する。
【0031】
<反射型マスク>
(実施形態)
図1は、遮光領域を有する本発明の反射型マスク10の実施形態の一例を示す図であり、図1(a)はマスク全体の平面模式図、図1(b)は図1(a)のA−A線における断面模式図、図1(c)は図1(b)における破線で示した枠内の遮光領域15の部分拡大図である。図1に示すように、反射型マスク10の一方の主面(表面)上には、転写パターン領域14と遮光領域15が形成されている。ここで、転写パターン領域14は、ウェハなどの被転写体に転写される露光フィールドに対応した反射型マスク10上のパターン領域であり、破線で示す枠内の遮光領域15は、転写パターン領域14の周辺に設けられたEUV光の反射を低減させた領域で、EUV露光時に多重露光となる領域に設けられている。例えば、外形6インチ角の反射型マスクにおいて、転写パターン領域14の面積は100mm×130mm程度であり、遮光領域15の幅は概ね3mm〜25mm程度である。なお、遮光領域15よりもさらに外側は、露光時に露光装置に備えられているブレードを用いて遮光することができる。
【0032】
図1に示すように、本実施形態の反射型マスク10は、基板11の一方の主面(表面)上にEUV光を反射する多層の反射層12と、その反射層12上にEUV光を吸収する吸収層13で形成された吸収体パターン13aと、を少なくとも備え、吸収体パターン13aによって形成された転写パターン領域14の周囲に、EUV光を遮光するための遮光領域15が設けられている。遮光領域15は、上記の反射層12と吸収層13とを備え、遮光領域15の反射層は、転写パターン領域14の反射層と同一の平面上になく、基板11の主面に対して所定の角度(θ)を有して斜めに形成された斜面上にあり、遮光領域15に入射したEUV光の反射光を、転写パターン領域14に入射したEUV光の反射光とは異なる方向に反射させるものである。なお、本発明の遮光領域を構成する斜面は、遮光領域のみに限定されず、基板外周部の末端にまで延長されていてもよい。
【0033】
遮光領域の反射層を基板主面に対して斜めに形成するには、あらかじめ遮光領域とする基板表面に、主面に対して所定の角度(θ)に傾けた斜面を形成しておき、転写パターン領域における反射層及び吸収層を成膜形成するときに、同時に遮光領域とする基板斜面上に反射層及び吸収層を形成することにより得ることができる。
【0034】
(作用効果)
本発明のEUVマスクにおいては、上記の従来の遮光領域のように、追加の吸収体を積層させたり、反射層をエッチング除去したりせずに遮光領域を作成する。図1(c)に基づいて、本発明の反射型マスク10の遮光領域の作用効果について更に詳しく説明する。
【0035】
EUV露光では反射層によってEUV光を反射するが、本発明においては、図1(c)に示すように、遮光領域15の反射層12が、転写パターン領域14の反射層12と同一平面上になく、基板11の主面に対して所定の角度(θ)を有して斜めに形成された斜面上にあり、遮光領域12に入射したEUV光16の反射光17を、転写パターン領域14に入射したEUV光16の反射光18とは異なる方向に反射させる。
【0036】
本発明のEUVマスクを用いることにより、遮光領域のEUV反射光は露光光学系には入射せず良好な遮光特性を得ることができる。遮光領域のEUV反射光は、ウェハ面にその反射光が入らないように露光装置内の適切な位置に設けた受光装置で受光し、露光光学系に影響を及ぼさないようにする。
【0037】
例えば、図1(c)に示すように、遮光領域15の基板11の主面に対する角度(θ)が10度、EUV光の入射角度(α)が6度であるとすると、転写パターン領域14は6度でEUV光が反射するのに対し、遮光領域15はEUV光の入射角度(β)が16度となり、EUV光は16度で反射するため、転写パターン領域14の反射光18と反射方向が異なり、遮光領域15の反射光17は露光光学系に入射せず遮光領域として作用し、ウェハ上のパターン形成には影響しなくなる。
【0038】
したがって、基板の主面に対する遮光領域の斜面の角度(θ)は、EUV光の反射型マスクへの入射角度に依存するが、遮光領域に入射したEUV光が転写パターン領域に入射したEUV光と異なる方向に反射し、さらに遮光領域からの反射光が迷走してウェハ上に入射しない方向および角度範囲であり、角度を有する遮光領域が幅3mm〜25mm程度の範囲で作製できる角度範囲から任意の所定の角度を選定すればよい。例えば、斜面の角度(θ)として、5度〜30度程度の範囲が挙げられる。
【0039】
(実施形態の例)
上記のように、本発明のEUVマスクは、遮光領域の反射層を基板主面に対して斜めに形成し、遮光領域の反射光が転写パターン領域の反射光と反射方向が異なるようにして、露光光学系に入射しないようにするので、種々のマスク構造を適用することができる。
以下に図面を用いて、代表的なマスク構造を説明する。なお、各図面において、遮光領域を含めて同じ部位を示す場合には、同じ符号を用いている。
【0040】
図2の(a)〜(c)は、本発明に係る反射型マスクの実施例を示す概略断面図であり、遮光領域を拡大して示してある。図2に示す反射型マスク20a、20b、20cは、遮光領域15の反射層12がある基板11の斜面が、転写パターン領域14の反射層12がある基板11の平面から基板11側と反対の方向(紙面上部方向)に向けて形成された斜面である反射型マスクの例である。
【0041】
図2(a)は、遮光領域15の外周部が最も基板11主面から離れている例であり、 図2(c)は、遮光領域15の内周部が最も基板11主面から離れている例であり、図2(b)は、断面図の左右で異なり左側の外周部が最も基板11主面から離れ、右側の内周部が最も基板11主面から離れている例である。
図2は断面図なので、紙面に直交する方向の組み合わせも含めれば、さらに多くの断面形状を例示することができる。
【0042】
図3は、本発明に係る反射型マスクの他の実施例を示す概略断面図であり、遮光領域を拡大して示してある。図3に示す反射型マスク30は、遮光領域15の反射層12がある基板11の斜面が、転写パターン領域14の反射層12がある基板11平面から基板11側の方向(紙面下部方向)に向けて形成された斜面である反射型マスクの例である。図3に示す反射型マスク30は、断面形状が台形のメサ構造を示すマスクである。
【0043】
図4は、本発明に係る反射型マスクの別な実施例を示す概略断面図であり、遮光領域を拡大して示してある。図4に示す反射型マスク40は、遮光領域15の反射層12がある基板11の斜面が、転写パターン領域14の反射層12がある基板11の平面から基板11側と反対の方向(紙面上部方向)に向けて、鋸歯状(ノコギリ形状)に形成された斜面である反射型マスクの例である。
【0044】
上記の実施形態の例において、図2〜図4の遮光領域断面に直交する方向(紙面に垂直方向)の遮光領域断面における斜面は、図示していないが、図2〜図4の場合と同様の形状に対称的に設けるのが、マスク設計及び製造が容易となって好ましい。
【0045】
(反射型マスクの構成要素と材料)
本発明の反射型マスクは、従来の反射型マスクの構成要素、材料を適用することが可能であるが、図1を用いて以下に説明する。
【0046】
(基板)
図1に示す本発明の反射型マスク10の基板11としては、パターン位置精度を高精度に保持するために低熱膨張係数を有し、高反射率および転写精度を得るために平滑性、平坦度が高く、マスク製造工程の洗浄などに用いる洗浄液への耐性に優れたものが好ましく、石英ガラス、SiO2−TiO2系の低熱膨張ガラス、β石英固溶体を析出した結晶化ガラスなどのガラス基板、さらにはシリコンを用いることもできる。マスクブランクスの平坦度としては、例えば、パターン領域において50nm以下が求められている。
【0047】
(反射層)
図1に示す多層の反射層12は、EUV露光に用いられるEUV光を高い反射率で反射する材料が用いられ、MoとSiからなる多層膜が多用されており、例えば、2.74nm厚のMoと4.11nmのSiを各40層積層した多層膜よりなる反射層が挙げられる。それ以外には、特定の波長域で高い反射率が得られる材料として、Ru/Si、Mo/Be、Mo化合物/Si化合物、Si/Nb周期多層膜、Si/Mo/Ru周期多層膜、Si/Mo/Ru/Mo周期多層膜およびSi/Ru/Mo/Ru周期多層膜なども用いることができる。ただし、材料によって最適な膜厚は異なる。MoとSiからなる多層膜の場合、DCマグネトロンスパッタ法により、まずSiターゲットを用いて、Arガス雰囲気下でSi膜を成膜し、その後、Moターゲットを用いて、Arガス雰囲気下でMo膜を成膜し、これを1周期として、30〜60周期、好ましくは40周期積層されて、多層の反射層が得られる。上記のように、EUV光を高い反射率で反射させるために、13.4nmのEUV光を入射角6.0度で入射したときの多層の反射層12の反射率は、通常、60%以上を示すように設定されている。
【0048】
(吸収層)
図1に示すように、マスクの転写パターン領域14において吸収体パターン13aを形成し、EUV光を吸収する吸収層13の材料としては、Ta、TaB、TaBNなどのTaを主成分とする材料、Cr、Crを主成分としN、O、Cから選ばれる少なくとも1つの成分を含有する材料などが、膜厚30nm〜100nm程度の範囲、より好ましくは50nm〜85nmの範囲で用いられる。
【0049】
(他の構成要素)
本発明の反射型マスクは、上記の構成要素に加えて、他の構成要素が用いられていてもよい。すなわち、本発明の反射型マスクは、吸収体パターン13aを形成する吸収層13が必ずしも多層の反射層12に直接に接していなくてもよい。吸収層13をパターン状にドライエッチングする時に下層の多層の反射層12に損傷を与えるのを防止するために、通常、反射層12と第1の吸収層13との間にバッファ層(不図示)が設けられる。さらに必要に応じて、多層の反射層12の上に反射層の酸化防止などのために、キャッピング層(不図示)を設けることがある。また、マスク検査時の検査光の反射コントラストを上げるために、吸収層13の上に反射防止層(不図示)を設ける場合もある。以下に、上記の他の構成要素の材料について説明する。
【0050】
(キャッピング層)
多層の反射層12の反射率を高めるには屈折率の大きいMoを最上層とするのが好ましいが、Moは大気で酸化され易くて反射率が低下するので、酸化防止やマスク洗浄時における保護のための保護膜として、スパッタリング法などによりSiやRuを成膜し、キャッピング層を設けることがある。例えば、キャッピング層としてSiは反射膜12の最上層に11nmの厚さに設けられる。また、Ruをキャッピング層とした場合には、後述のバッファ層を用いない構造とすることができる。
【0051】
(バッファ層)
EUV露光に用いられるEUV光を吸収する吸収層13をドライエッチングなどの方法でパターンエッチングして吸収体パターン13aを形成するときに、下層の多層の反射層12に損傷を与えるのを防止するために、必要に応じてCrNなどを用いてバッファ層が設けられる。
【0052】
(反射防止層)
また、マスクパターン検査時の検出感度を上げるために、吸収層13上に検査光(波長250nm)に対して低反射とした反射防止層を設ける場合もある。反射防止層の材料としては、例えば、タンタルの窒化物(TaN)、酸化物(TaO)、酸窒化物(TaNO)、タンタルホウ素酸化物(TaBN)、タンタルホウ素窒化物(TaBN)などが挙げられ、膜厚5nm〜30nm程度の範囲で用いられる。
【0053】
(導電層)
EUV露光用の反射型マスクでは、マスクを露光装置に設置する場合、通常、マスクのパターンと反対側の主面(裏面)上に設けた導電層を用いて静電チャックで行われる。導電層の材料としては、導電性を示す金属や金属窒化物などの薄膜を設けたものであり、例えば、クロム(Cr)や窒化クロム(CrN)などを厚さ20nm〜150nm程度に成膜して用いられる。
【0054】
本発明のEUV露光用の反射型マスクによれば、遮光領域における反射層を基板の主面に対して所定の角度を有する斜面上に成膜することで、遮光領域に入射したEUV光の反射光を、転写パターン領域に入射したEUV光の反射光とは異なる方向に反射させ、良好な遮光特性を得ることができる。そのため、従来の吸収層を2段構造に積層した遮光領域や反射層をエッチング除去して作成した遮光領域を形成することによるマスクパターンの加工精度低下や、欠陥を生じるなどの問題を発生せずに、良好な遮光特性を持つ反射型マスクを得ることができる。
次に、本発明のEUV露光用の反射型マスクブランクスについて説明する。
【0055】
<反射型マスクブランクス>
図5は、遮光領域を備えた本発明の反射型マスクの作成に用いる本発明の反射型マスクブランクスの一例としての断面模式図である。図5において、図1と同じ部位と材料を示す場合には、図1と同じ符号を用いている。
【0056】
図5に示すように、本発明の反射型マスクブランクス70は、基板11と、基板の主面上に形成されたEUV光を反射する反射層12と、反射層12上に設けられたEUV光を吸収する吸収層13と、を少なくとも備え、転写パターンを形成する領域14と、該転写パターンを形成する領域の周囲にEUV光を遮光するための遮光領域15と、を設けており、上記遮光領域15が前記の反射層12と吸収層13とを備え、遮光領域15における反射層12が、転写パターン領域14の反射層12と同一平面上になく、基板11の主面に対して所定の角度を有して斜めに形成された斜面上にある反射型マスクブランクスである。
【0057】
上記の反射型マスクブランクス70は、図2(a)に示した反射型マスク20aのマスクブランクスであるが、図2(b)、図2(c)、図3及び図4の反射型マスク20b、20c、30、40のマスクブランクスも、図5と同様にして、基板11を所定の形状に加工して得ることができる。
【0058】
図5に示す反射型マスクブランクス70の構成要素である基板11、反射層12、吸収層13は、上記の反射型マスク10と同じなので、説明を省略する。また、本発明の反射型マスクブランクスは、上記の構成要素に加えて、上記の反射型マスク10で述べたような他の構成要素が用いられていてもよい。他の構成要素は、上記の反射型マスク10と同じなので、説明は省略する。
【0059】
本発明のEUV露光用の反射型マスクブランクスによれば、反射型マスクブランクスにすでに遮光領域が形成されているので、このブランクスを用いることにより遮光領域形成工程が不要になり、良好な遮光特性を持ち高品質の反射型マスクを容易に作製することが可能となる。
次に、本発明のEUV露光用の反射型マスクの製造方法について説明する。
【0060】
<反射型マスクの製造方法>
本発明の反射型マスクの製造方法において、遮光領域とする基板の主面に対して所定の角度を有する斜面の形成は、反射層を成膜する前に、遮光領域とする基板主面に基板と同質の材料を用いて斜面を積み上げて形成するか、あるいは基板主面を斜面状に除去加工することにより形成することができる。
以下、図2(a)に示す本発明のEUV露光用の反射型マスクの製造方法について、基板主面を斜面状に除去加工する製造方法の実施形態の一例について説明する。
【0061】
図6及びそれに続く図7は、図2(a)に示す遮光領域を有する本発明の反射型マスクの製造工程の一例を示す断面模式図である。図6及び図7において、図1と同じ部位と材料を示す場合には、同じ符号を用いている。なお、本発明の製造方法における反射型マスクの各構成要素、材料は、上記の反射型マスクに記載した内容と同様であるので、説明は省略する。
【0062】
先ず、EUV露光用の反射型マスクブランクスを作製するための基板11を準備し、基板の一方の主面上に基板加工用のレジストを塗布し、レジスト膜61を形成する(図6(a))。基板加工用のレジストとしては電子ビームレジストまたは感光性レジストが用いられる。
【0063】
次に、電子ビーム露光あるいはレーザ露光によりレジスト膜61の遮光領域15とする部分に露光量を変えて階調露光を行い、現像し、基板平面に対して角度(θ)の斜面を有するレジストパターン61aを形成する(図6(b))。
【0064】
次に、レジストパターン61aを形成した基板11表面をドライエッチングによりエッチバックし、基板11の遮光領域に予定している箇所に、基板主面に対して角度(θ)の斜面62を有する基板60を形成する(図6(c))。
【0065】
次に、斜面62を有する基板60上に反射層12を成膜して形成し(図6(d))、続いて吸収層13を成膜して形成して、図7(e)に示す反射型マスクブランクス70を作製する。
【0066】
次に、上記の反射型マスクブランクス70を用い、吸収層13上に電子ビームレジストを塗布し、電子ビーム露光して転写パターン領域14にレジストパターン71を形成する(図7(f))。
【0067】
次に、吸収層13をドライエッチングして転写パターン領域14に吸収体パターン13aを形成し、レジストパターンを剥離し、本発明のEUV露光用の反射型マスク20aが得られる(図7(g))。
【0068】
本発明のEUV露光用反射型マスクの製造方法によれば、遮光領域を有するEUV露光用の反射型マスクの製造において、従来の吸収層を2段構造に積層した遮光領域や反射層をエッチング除去して作成した遮光領域を形成することによるメインパターンの加工精度低下や、欠陥を生じるなどの問題を発生させずに、良好な遮光特性を持つ高品質の反射型マスクを作製することができる。
【0069】
上記の本発明の製造方法においては、遮光領域を斜面とする基板の製造方法としてレジストパターンを用いたエッチバック方法について説明したが、本発明の製造方法はこれに限定されることなく各種の方法が適用できる。例えば、図3に示すような遮光領域の断面形状が台形のメサ構造をなす場合には、基板をCMP(化学機械研磨:Chemical Mechanical Polishing)法などで台形状に研磨する方法を用いれば、製造が容易となり好適である。
以下、実施例により、本発明をさらに詳しく述べる。
【実施例】
【0070】
(実施例1)
基板として、光学研磨された大きさ6インチ角(厚さ0.25インチ)の合成石英基板を用い、基板の一方の主面上に基板加工用の感光性レジストIP5700(東京応化)を塗布し、厚み1500nmのレジスト膜を形成した。
【0071】
次に、I線を用いたレーザビーム露光によりレジスト膜の遮光領域とする部分に露光量を変えて階調露光を行い、現像し、遮光領域とする基板平面に対して斜め部分の角度が15度、周期が5umとなるノコギリ形状のレジストパターンを形成した。露光された遮光領域のレジストパターンは転写パターンとする領域の周囲に設けられ、基板中心に対して幅5mmの矩形トラック状である。
【0072】
次に、上記のレジストパターンを形成した基板表面の全面をCF4とCHF3の混合ガスを用いたドライエッチングによりエッチバックした後、レジストパターンを剥膜し、基板の遮光領域の予定している箇所に基板主面に対して角度12度の斜面を有する基板を形成した。
【0073】
次に、上記の斜面を有する基板の表面に、イオンビームスパッタ法により、Siターゲットを用いてSi膜を4.2nm成膜し、続いてMoターゲットを用いてMo膜を2.8nm成膜し、これを1周期として40周期積層してMoとSiの多層膜よりなる反射層を形成した後、最表面のMo膜の上にRu膜を2.5nm成膜してキャッピング層を形成した。Ru膜はバッファ層を兼ねるものである。
【0074】
次に、上記のRu膜上に、DCマグネトロンスパッタ法によりTaターゲットを用いて、Arと窒素の混合ガス雰囲気下で、TaN膜を50nmの厚さで成膜し吸収層を形成した。次いで、上記のTaN膜上に、マスク検査時の検査光の反射コントラストを上げるために、DCマグネトロンスパッタ法により、Taターゲットを用いて、Arと酸素の混合ガス雰囲気下で、TaO2膜を15nmの厚さで形成して反射防止層とし、反射型マスクブランクスとした。
【0075】
次に、上記のエッチングマスク層を形成するTaO2膜の上に電子ビーム用レジストを塗布し、電子ビーム描画装置を用いて転写パターン領域にマスクパターンを描画し、現像してレジストパターンを形成した。
【0076】
次に、上記のレジストパターンの開口部から露出するエッチングマスク層TaO2膜をCF4ガスでドライエッチングした。次いで、吸収層のTaN膜をCl2ガスでドライエッチングして、転写パターン領域に吸収体パターンを形成し、レジストパターンを剥離し、図4に示すように、転写パターン領域14の周囲に遮光領域15を有する反射型マスク40を得た。
【0077】
(実施例2)
基板として、光学研磨された大きさ6インチ角(厚さ0.25インチ)の合成石英基板を用い、その一方の主面(表面)をCMP法により化学機械研磨し、マスクパターンを形成する予定の転写パターン領域はメサ構造とし、遮光領域に予定している基板外周部に基板主面に対して角度8度の斜面を有する基板を形成した。
【0078】
次に、実施例1と同様にして、イオンビームスパッタ法により、Siターゲットを用いてSi膜を4.2nm成膜し、続いてMoターゲットを用いてMo膜を2.8nm成膜し、これを1周期として40周期積層してMoとSiの多層膜よりなる反射層を形成した後、最表面のMo膜の上にRu膜を2.5nm成膜してキャッピング層を形成した。Ru膜はバッファ層を兼ねるものである。
【0079】
次に、上記のRu膜上に、吸収層として、DCマグネトロンスパッタ法により、Taターゲットを用いて、Arと窒素の混合ガス雰囲気下で、Ta膜を60nmの厚さで形成した。
【0080】
次いで、上記のTa膜上に、マスク検査時の検査光の反射コントラストを上げるために、DCマグネトロンスパッタ法により、Taターゲットを用いて、Arと酸素の混合ガス雰囲気下で、TaO2膜を15nmの厚さで形成し、反射防止層とした。
【0081】
次に、上記のTaO2膜の上に電子ビーム用レジストを塗布し、電子ビーム描画装置を用いて転写パターン領域にマスクパターンを描画し、現像してレジストパターンを形成した。
【0082】
次に、上記のレジストパターンの開口部から露出するエッチングマスク層TaO2膜をCF4ガスでドライエッチングした。次いで、吸収層を形成するTa膜をCl2ガスプラズマでドライエッチングし、転写パターン領域に吸収体パターンを形成し、レジストパターンを剥離し、図3に示すように、転写パターン領域14の周囲に遮光領域15を有するメサ構造の反射型マスク30を得た。
【符号の説明】
【0083】
10、20a、20b、20c、30、40 反射型マスク
11 基板
12 反射層
13 吸収層
13 吸収体パターン
14 転写パターン領域
15 遮光領域
60 斜面を有する基板
61 レジスト膜
61a レジストパターン
62 斜面
70 反射型マスクブランクス
71 レジストパターン
80 反射型マスク
81A、81B EUV入射光
82A、82B EUV反射光
83 ブレード
84 ウェハ
85 フィールド
86 転写パターン
87 フィールド重なり部
100、110、120 反射型マスク
101、111、121 基板
102、112、122 反射層
103、113、125 吸収層
107、117 転写パターン領域
108、118 遮光領域
123 キャッピング層
124 バッファ層
126 反射防止層




【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板の主面上に形成されたEUV光を反射する反射層と、前記反射層上に前記EUV光を吸収する吸収層で形成された吸収体パターンと、を少なくとも備えたEUV露光用の反射型マスクであって、
前記吸収体パターンによって形成された転写パターン領域の周囲に、前記EUV光を遮光するための遮光領域が設けられており、
前記遮光領域が前記反射層と前記吸収層とを備え、
前記遮光領域の前記反射層が、前記転写パターン領域の前記反射層と同一平面上になく、前記基板の主面に対して所定の角度を有する斜面上にあり、前記遮光領域に入射した前記EUV光の反射光を、前記転写パターン領域に入射した前記EUV光の反射光とは異なる方向に反射させる反射層であることを特徴とする反射型マスク。
【請求項2】
前記遮光領域の前記反射層がある斜面が、前記転写パターン領域の前記反射層がある平面から前記基板側と反対の方向に向けて形成された斜面であることを特徴とする請求項1に記載の反射型マスク。
【請求項3】
前記遮光領域の前記反射層がある斜面が、前記転写パターン領域の前記反射層がある平面から前記基板側の方向に向けて形成された斜面であることを特徴とする請求項1に記載の反射型マスク。
【請求項4】
前記遮光領域における前記反射層が、鋸歯状であることを特徴とする請求項1に記載の反射型マスク。
【請求項5】
前記遮光領域及び前記転写パターン領域の前記反射層と前記吸収層が、それぞれ同一材料で形成されていることを特徴とする請求項1から請求項4までのうちのいずれか1項に記載の反射型マスク。
【請求項6】
基板と、前記基板の主面上に形成されたEUV光を反射する反射層と、前記反射層上に設けられた前記EUV光を吸収する吸収層と、を少なくとも備えたEUV露光用の反射型マスクブランクスであって、
前記反射型マスクブランクスが、転写パターンを形成する領域と、該転写パターンを形成する領域の周囲に前記EUV光を遮光するための遮光領域と、を設けており、
前記遮光領域が前記反射層と前記吸収層とを備え、
前記遮光領域における前記反射層が、前記転写パターン領域の前記反射層と同一平面上になく、前記基板の主面に対して所定の角度を有する斜面上にあることを特徴とする反射型マスクブランクス。
【請求項7】
基板と、前記基板の主面上に形成されたEUV光を反射する反射層と、前記反射層上に前記EUV光を吸収する吸収層で形成された吸収体パターンと、を少なくとも備え、
前記吸収体パターンによって形成された転写パターン領域の周囲に、前記EUV光を遮光するための遮光領域が設けられているEUV露光用の反射型マスクの製造方法であって、
前記基板の主面上の前記遮光領域となる領域の基板表面を加工し、前記基板の主面に対して所定の角度を有する斜面を形成する工程と、
前記斜面を含む前記基板の主面上に、前記反射層、前記吸収層を順に設けて反射型マスクブランクスを形成する工程と、
前記反射型マスクブランクス上に前記吸収体パターンを形成するためのレジストパターンを形成する工程と、
前記レジストパターンをマスクとして前記吸収層をエッチングして吸収体パターンを形成する工程と、
を含むことを特徴とする反射型マスクの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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