説明

遮断機構を有する電力用半導体装置

【課題】低い温度で溶断されかつ抵抗値が小さい温度ヒューズを有する遮断機構を備えた電力用半導体装置を提供する。
【解決手段】遮断機構10は、基板1の上側に設けられ、それぞれが所定の電子回路に接続された一方の主配線導体2および他方の主配線導体2と、電流が流れることによって発熱するように基板1の主表面上に設けられたヒータ導体4とを備えている。さらに、遮断機構10は、一方の主配線導体2と電極膜3とを接続する一方の低融点金属導体5と、他方の主配線導体2と電極膜3とを電気的に接続する他方の低融点金属導体5とを備えている。また、一方の低融点金属導体5および他方の低融点金属導体5のそれぞれが、一方の主配線導体2および他方の主配線導体2のいずれの融点よりも低い融点を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子回路に流れる電流を遮断するための機構を有する電力用半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電力用半導体装置は、IGBT(Insulated Gate Bipolar transistor)およびMOSFET(Metal Oxide Silicon Field Effect Transistor)と呼ばれる複数の半導体スイッチが一体化された電子機器であり、所定のタイミングでオン/オフすることで、所望の周波数の交流電流を発生させ、モータの自在な速度制御などのために用いられる。
【0003】
また、半導体スイッチは、物理的に接続されていない部分を形成することなく、電子回路に流れる電流を遮断することができる。具体的には、半導体スイッチは、半導体基板上に薄い絶縁層を媒介として設けられたゲート電極に微小な電圧信号を与えて、ソース電極とドレイン電極との間に流れる大きな電流の流れを遮断する。したがって、半導体スイッチは、物理的な接触/非接触を切り換えるスイッチに比較して、損傷し難い。
【0004】
しかしながら、この半導体スイッチは、ソース電極とドレイン電極との間を流れる電流の密度が所定値を超えると、局所的に高い密度のエネルギがチャネル領域に与えられ、溶融によって破損する場合がある。この場合、半導体スイッチは、短絡した状態になる、つまり、常時接続された状態になってしまう。このような事態は宇宙線が半導体素子に命中した場合などにも発生すると言われている。
【0005】
通常、電子回路は、ヒューズまたはブレーカ等を有しているため、半導体スイッチの破損によって、その全体が破壊されてしまうことが防止されている。
【0006】
しかしながら、移動体のモータ制御のための電力用半導体装置においては、低コスト化を図るために、ヒューズまたはブレーカを有していない電力用半導体装置が要望されている。言い換えれば、能動的に電気回路に流れる電流を遮断することができる機構を備えたき電力用半導体装置が求められている。より具体的には、定格電流値よりも小さい値の電流しか流れていない場合においても、電子回路に流れる電流を意図的に遮断できる遮断機構を備えた電力用半導体装置が求められている。
【0007】
従来においては、前述のような遮断機構として、たとえば、特許第3552539号に開示されているように、電子回路の所定の部分が所定の温度になると、溶断されて、電流を遮断する温度ヒューズが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−118481号公報
【特許文献2】特開2000−251598号公報
【特許文献3】特開2000−260280号公報
【特許文献4】特開2001−135213号公報
【特許文献5】特開平07−230747号公報
【特許文献6】特許第3552539号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一般に、遮断機構の一例として導体の金属が用いられる。金属は、溶融すると、表面の自由エネルギが最小になるように変形するため、基本的に球形に近づく。2つの電極同士の間に橋渡しされた金属導体への通電によって発熱が生じた場合、その中央部が最も高温になる。融点を超えた温度になっている金属導体は球状になろうとするが、溶融している金属導体の範囲が広がると、その中央部から電極まで向かって溶融金属が移動し、それに従って球形が大きくなる。溶融した金属導体が2つの球に分かれたときのそれぞれの球の直径の合計が、溶融している金属同士の間の距離よりも小さいときには、分離した金属導体のエネルギは、分離していない金属導体のエネルギよりも大きい。このとき、金属導体は分離し易い。
【0010】
そのため、温度ヒューズとして用いられる低融点導体は、幅および厚さに対して数倍程度の長さを有していることが望ましい。したがって、上記の温度ヒューズの材料としては、細長い形状を有する低融点導体が用いられている。一方、低融点導体の電気抵抗値(以下、「単に、抵抗値」と言及される。)は、その断面積に反比例しかつ長さに比例する。このため、細長い低融点導体は、低い温度で切断され易いが、その抵抗値が大きくなってしまう。
【0011】
本発明は、上述の問題に鑑みなされたものであり、その目的は、低い温度で分断され易くかつ抵抗値が小さい温度ヒューズを有する遮断機構を備えた電力用半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一の局面の遮断機構を有する電力用半導体装置は、絶縁性の基板と、基板の一方の主表面上に設けられた電極膜とを備えている。また、その装置は、電流が流れることによって発熱するように基板の他方の主表面上に設けられたヒータ導体と、電極膜に近接して設けられ、それぞれが所定の電子回路に接続された一方の主配線導体および他方の主配線導体とを備えている。さらに、その装置は、一方の主配線導体と電極膜とを接続する一方の低融点導体と、他方の主配線導体と電極膜とを電気的に接続する他方の低融点導体とを備えている。また、一方の低融点導体および他方の低融点導体のそれぞれが、一方の主配線導体および他方の主配線導体のいずれの融点よりも低い融点を有している。
【0013】
上記の構成によれば、基板、電極膜、およびヒータ導体にかかる重力の作用によって、一方の低融点導体および他方の低融点導体のそれぞれの溶断が促進される。したがって、遮断機構は低い温度で分断され易くなる。
【0014】
本発明の他の局面の遮断機構を有する電力用半導体装置は、絶縁性の基板と、基板の一方の主表面上に設けられた電極膜とを備えている。また、その装置は、基板の他方の主表面上に設けられ、電流が流れることによって発熱するヒータ導体と、それぞれが所定の電子回路および電極膜に電気的に接続された一方の主配線導体および他方の主配線導体とを備えている。また、電極膜は、平面的に見て一方の主配線導体と他方の主配線導体との間の領域を横切るように延びる破断線状の複数の貫通孔を有する。
【0015】
上記の構成によれば、破断線状の複数の貫通孔に沿って電極膜および基板が破断し易い。そのため、遮断機構は低い温度で分断され易くなる。
【0016】
本発明のさらに他の局面の遮断機構を有する電力用半導体装置は、絶縁性の基板と、基板の一方の主表面上に設けられた電極膜とを備えている。また、その装置は、基板の他方の主表面上に設けられ、電流が流れることによって発熱するヒータ導体と、それぞれが所定の電子回路および電極膜に電気的に接続された一方の主配線導体および他方の主配線導体とを備えている。さらに、その装置は、一方の主配線導体と電極膜とを電気的に接続す
る一方の導体層と、他方の主配線導体と電極膜とを電気的に接続する他方の導体層とを備えている。また、一方の導体層と他方の導体層とは仮想線の両側に分離して設けられている。
【0017】
上記の構成によれば、一方の導体装置と他方の導体層との間の領域を横切る仮想線に沿って基板および電極膜が破断され易くなる。したがって、一方の低融点導体および他方の低融点導体のそれぞれが溶断し難くなるという不具合の発生が抑制される。
【0018】
本発明のまたさらに他の局面の遮断機構を有する電力用半導体装置は、絶縁性の基板と、基板の一方の主表面上に設けられた電極膜とを備えている。また、その装置は、基板の他方の主表面上に設けられ、電流が流れることによって発熱するヒータ導体と、それぞれが所定の電子回路に接続された一方の主配線導体および他方の主配線導体とを備えている。さらに、その装置は、一方の主配線導体と電極膜とを電気的に接続する一方の低融点導体と、他方の主配線導体と電極膜とを電気的に接続する他方の低融点導体とを備えている。また、その装置は、一方の低融点導体と他方の低融点導体の間の位置に設けられ、一方の低融点導体および他方の低融点導体のそれぞれと共晶反応を生じる他の低融点導体とを備えている。
【0019】
上記の構成によれば、共晶反応が生じれば、一方の低融点導体および他方の低融点導体のいずれの融点よりも低い温度で一方の低融点導体および他方の低融点導体が液化する。したがって、一方の低融点導体および他方の低融点導体のそれぞれが低い温度で溶断され易くなる。
【0020】
本発明の別の局面の遮断機構を有する電力用半導体装置は、絶縁性の基板と、基板の一方の主表面上に設けられた電極膜とを備えている。また、その装置は、基板の他方の主表面上に設けられ、電流が流れることによって発熱するヒータ導体と、それぞれが所定の電子回路および電極膜に電気的に接続された一方の主配線導体および他方の主配線導体とを備えている。ヒータ導体は、一方の主配線導体および他方の主配線導体が一方の主表面上に投影された領域の裏側の他方の主表面上の領域内にのみ配置されている。
【0021】
上記の構成によっても、一方の低融点導体および他方の低融点導体のそれぞれが溶断し難くなるという不具合の発生が抑制される。
【0022】
本発明のさらに別の局面の遮断機構を有する電力用半導体装置は、絶縁性の基板と、基板の一方の主表面上に設けられた電極膜とを備えている。また、その装置は、基板の他方の主表面上に設けられ、電流が流れることによって発熱するヒータ導体と、それぞれが所定の電子回路に接続された一方の主配線導体および他方の主配線導体とを備えている。さらに、その装置は、一方の主配線導体および他方の主配線導体のそれぞれに接続され、ヒータ導体の発熱によって溶融する低融点導体を備えている。低融点導体は、両端部の厚さよりも中央部の厚さが大きい。
【0023】
上記の構成によれば、遮断機構は低い温度で溶断され易くかつその抵抗値が小さくなる。
【0024】
本発明によれば、低い温度で分断され易くかつ抵抗値が小さい温度ヒューズを有する遮断機構を備えた電力用半導体装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施の形態1の電力用半導体装置の遮断機構の表面図である。
【図2】実施の形態1の電力用半導体装置の裏面図である。
【図3】図1および図2のIII−III線断面図である。
【図4】実施の形態1の低融点金属導体が溶融して分断された直後の状態を示す図である。
【図5】実施の形態1の電力用半導体装置を示す図であって、遮断機構が電子回路に接続されている状態を示す部分断面図である。
【図6】実施の形態1の電力用半導体装置を示す図であって、遮断機構が電子回路に接続されていない状態を示す部分断面図である。
【図7】実施の形態2の電力用半導体装置の断面図であって、遮断機構が電子回路に接続されている状態を示す部分断面図である。
【図8】実施の形態2の電力用半導体装置の断面図であって、遮断機構が電子回路に接続されていない状態を示す部分断面図である。
【図9】実施の形態3の電力用半導体装置の断面図であって、遮断機構が電子回路に接続されている状態を示す部分断面図である。
【図10】実施の形態3の電力用半導体装置の断面図であって、遮断機構が電子回路接続されていない状態を示す部分断面図である。
【図11】実施の形態4の電力用半導体装置の遮断機構の断面図である。
【図12】実施の形態5の電力用半導体装置の遮断機構の断面図である。
【図13】実施の形態6の電力用半導体装置の遮断機構の表面図である。
【図14】実施の形態6の電力用半導体装置の遮断機構の裏面図である。
【図15】図13および図14のXV−XV線の断面図である。
【図16】実施の形態7の電力用半導体装置の遮断機構の表面図である。
【図17】図16のXVII−XVII線の断面図である。
【図18】実施の形態7の電力用半導体装置の遮断機構が破断した状態を示す断面図である。
【図19】実施の形態8の電力用半導体装置の遮断機構の断面図である。
【図20】実施の形態9の電力用半導体装置の遮断機構の裏面図である。
【図21】実施の形態9の電力用半導体装置の遮断機構の断面図である。
【図22】実施の形態9の電力用半導体装置の遮断機構が破断した状態を示す断面図である。
【図23】実施の形態10の電力用半導体装置の遮断機構の断面図である。
【図24】実施の形態10の電力用半導体装置の遮断機構の2種類の低融点金属導体が一体化した状態を示す断面図である。
【図25】実施の形態11の電力用半導体装置の遮断機構の表面図である。
【図26】実施の形態11の電力用半導体装置の遮断機構の裏面図である。
【図27】図25および図26のXXVII−XXVII線の断面図である。
【図28】実施の形態12の電力用半導体装置の遮断機構の表面図である。
【図29】実施の形態12の電力用半導体装置の遮断機構の裏面図である。
【図30】図28および図29のXXX−XXX線の断面図である。
【図31】実施の形態13の電力用半導体装置の遮断機構の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態の遮断機構を備えた電力用半導体装置が説明される。なお、各実施の形態において、同一の機能を果たす部位には同一の参照符号が付されており、その説明は、特に必要がなければ、繰り返さない。
【0027】
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態の電力用半導体装置の遮断機構の一方の主表面を示す平面図であり、図2は、本実施の形態の電力用半導体装置の遮断機構の他方の主表面を示す平面図である。図3および図4は、それぞれ、遮断機構を構成する温度ヒューズが溶断されていない状態および遮断機構を構成する温度ヒューズが溶断された直後の状態を示す線断面図で
ある。
【0028】
遮断機構10は、電力用半導体装置の主配線導体2を媒介として他の電子回路に直列に接続されている。遮断機構10は、図1〜図3に示されるように、絶縁性の基板1と、基板1の一方の主表面上に形成された電極膜3と、基板1の一方の主表面に対向する他方の主表面上に形成されたヒータ導体4とを備えている。電極膜3は、たとえばAgPd、AgPt、またはタングステン等の厚膜材料からなる。また、遮断機構10の電極膜3の一方端および他方端は、図3に示されるように、それぞれ、一方の主配線導体2の端部および他方の主配線導体2の端部にロウ材としての低融点金属導体5を媒介として接続されている。
【0029】
基板1は、絶縁性および耐熱性の観点において、アルミナ等のセラミック基板からなることが好ましい。したがって、本実施の形態においては、基板1はアルミナ基板である。基板の厚みとしては0.5mm〜1mm程度の値が産業上よく用いられており、この値であれば、十分な強度が得られ易い。基板の大きさとしては10mm角〜20mm角程度の値が望ましい。
【0030】
電極膜3は、ガラス粉末のバインダと金属粉末の混合物を基板表面に、印刷などの方法でパターニングおよび焼成することによって、形成される。そのため、電極膜3は容易に形成され得る。電極膜3の厚みは数μmから数十μm程度である。
【0031】
遮断機構10は、次のような製法によって形成される。
まず、グリーンシートと呼ばれるアルミナ微粉末とバインダの混合物とを固めたものが準備される。これが焼成され、アルミナからなる基板1が形成される。次に、ヒータ導体4および電極膜3は、AgPd、AgPt、またはタングステンなどからなり、これらは、ガラス粉末のバインダと金属粉末の混合物とを基板表面に、印刷などの工法を用いてパターニングおよび焼成によって形成される。したがって、基板1は容易に形成される。基盤の厚さは、数μmから数十μm程度であれば、実現され得る。その後、基板1が、約千数百度以上の高温で数時間程度焼き固められる。これにより、タングステン等の金属導体が、基板1の表面および裏面のそれぞれに所望の形状に形成される。つまり、電極膜3およびヒータ導体4が、それぞれ、一方の主表面上および他方の主表面上に形成された基板1を得ることができる。
【0032】
たとえば、電極膜3およびヒータ導体4のそれぞれのパターンの幅は、100μmから数mm程度であり、それぞれのパターンの部分同士の間隔の最低値は、100μm以上である。さらに、Niめっき等が電極膜3を構成する金属材料およびヒータ導体4を構成する金属材料のそれぞれ上に施されることによって、パターンの厚さが所望の厚さに調整されてもよい。
【0033】
前述の方法の代わりに、MoMn法と呼ばれる方法によって、前述のパターンが形成されてもよい。MoMn法は、Moと酸化マンガンとの混合物が印刷された基板1を焼成することによって、所望のパターンを形成する方法である。この方法においては、たとえば、200μm以上の幅のパターンを形成することが可能であり、200μm程度の最低間隔を有するパターンを形成することが可能である。
【0034】
また、ヒータ導体4は、たとえば、パターン幅100μmかつパターン間隔100μmであり、また、図2に示されるように、複数の折り曲げ部を有する形状であれば、ヒータ導体4の全長を大きくかつ幅を小さくすることができる。たとえば、ヒータ導体4は、長さ10mmの直線部が50個の折り曲げ部を媒介として接続された形状を有していれば、長さ500mmという細長い導体が小さな領域内に形成され得る。また、たとえば、パタ
ーンの厚さが10μm程度であれば、ヒータ導体4の抵抗値は100Ω程度になり得る。
【0035】
一般に、ヒータ導体4の抵抗値は高いことが望ましいが、電極膜3の抵抗値は低いことが望ましい。これは、遮断機構の機能を短時間で発揮させながら、電力用半導体装置の発熱量を低減することができるためである。たとえば、電極膜3に数100Aもの大きな電流が流れる場合に、電極膜3の抵抗値が0.1Ωであれば、電極膜3において100Aあたり10Vの電位差が生じる。そのため、電極膜3における発熱量が1000Wにもなってしまう。このような大きな発熱が生じることは電力用半導体装置にとって好ましくない。
【0036】
また、幅0.1mmでかつ長さ500mmの電極膜3の抵抗値が100Ωであるということは、幅10mmで長さ1mmの電極膜3の抵抗値は0.002Ωということになる。電極膜3を流れる電流の値が100Aであれば、電極膜3における電位差は0.2Vであり、発熱量は20Wになる。この値は、かろうじて許容される値である。
【0037】
このように電極膜3に要求される抵抗値とヒータ導体4に要求される抵抗値とは異なっており、電極膜3の抵抗率は小さくかつヒータ導体4の抵抗率は大きいことが望ましい。たとえば、ヒータ導体4がカーボン系の導電性を有する材料からなっていてもよい。
【0038】
本実施の形態においては、電極膜3の長さが1mmであるが、これは電極膜3の両端部に接続された1対の主配線導体2同士の間隔が1mmであれば、容易に実現され得る。
【0039】
主配線導体2は、たとえば、厚さ1mmから2mm程度の銅または銅合金からなることが望ましい。これによれば、主配線導体2の抵抗値を低くすることができる。このような主配線導体2が電極膜3にたとえば、はんだなどのロウ材からなる低融点金属導体5を媒介として電気的に接続されている遮断機構10によれば、主配線導体2同士の間の経路における抵抗値を小さくすることができる。したがって、電極膜3の抵抗値が小さくかつヒータ導体4の抵抗値が大きな遮断機構を得ることができる。
【0040】
次に、遮断機構10の動作が説明される。
遮断指令が図示されてない整流機構から出力されると、図示されていないヒータ導体4に接続された配線を通じて、電流がヒータ導体4に流れる。たとえば、200Vのバッテリからヒータ導体4へ電流が流れると、100Ωの抵抗値のヒータ導体4においては、2Aの電流が流れ、400Wの熱が発生する。この熱によって基板1の温度が上昇する。このとき、基板1の温度は、数秒間で300℃以上に上昇し、数10秒で700℃程度まで上昇する。
【0041】
低融点金属導体5が、たとえば、はんだからなる場合には、その融点はほぼ200℃であるため、基板1および電極膜3上において溶融する。本実施の形態においては、基板1は主配線導体2の下側に配置されているため、基板1、電極膜3、およびヒータ導体4は一体となって重力にしたがって落下する。
【0042】
本実施の形態においては、はんだが低融点金属導体5の一例として用いられているが、他の低融点金属がはんだの代わりに用いられてもよい。低融点金属導体5は、電気伝導性を有し、かつ主配線導体2、基板1、電極膜3、およびヒータ導体4よりも低い融点を有していれば、いかなる材料からなっていても、温度ヒューズとして機能することができる。
【0043】
前述のように、本実施の形態の遮断機構10においては、電極膜3およびヒータ導体4がそれぞれ基板1の一方の主表面上および他方の主表面上に設けられており、かつ電極膜
3が一方の低融点金属導体5および他方の低融点金属導体5のそれぞれを媒介として一方の主配線導体2および他方の主配線導体2に電気的に接続されている。この構成によれば、遮断機構10は、非常に小型され得るものとなり、かつ、その抵抗値を非常に小さくすることができるものとなる。
【0044】
次に、図5および図6を用いて、本実施の形態の遮断機構10が用いられている電力用半導体装置が説明される。
【0045】
本実施の形態の電力用半導体装置においては、図5に示されるように、図示されていない電力用半導体素子が内蔵された樹脂封止型のパワーモジュール6がベースプレート7上に配置されている。パワーモジュール6は信号端子8および主端子9を備えている。主端子9の延長部分は、遮断機構10の一方の主配線導体2を構成している。
【0046】
また、他方の主配線導体2の延長部分は、外部接続用の端子台11を形成している。このとき、遮断機構10は、蓋を有する樹脂製の筐体12に内装され、それにより、外部空間に露出しないように保護されている。
【0047】
遮断機構10が動作したときには、低融点金属導体5が、筐体12の内部の空間において、ヒータ導体4の発熱によって溶融するため、基板1を支持するものがなくなる。そのため、図6に示されるように、基板1が重力に従って落下し、パワーモジュール6の主端子9と端子台11との間を流れる電流が遮断される。
【0048】
なお、端子台11は、主配線導体2に設けられた貫通孔に挿入されたボルト13によって、遮断機構10を内蔵する筐体12の樹脂の所定の位置に固定されている。このように遮断機構10と端子台11とが一体化されているため、電力用半導体装置は小型化されかつ軽量化されている。
【0049】
図示されていないが、たとえば、遮断機構10および端子台11を備えた樹脂製の筐体12がパワーモジュール6に一体化されていてもよい。この場合、放熱性等の性能の低下がなければ、電力用は導体装置はベースプレート7を有していないくてもよい。また、電力用半導体装置は、ベースプレート7の代わりに、冷却用のヒートシンクを有していてもよい。樹脂製の筐体12の材質としては、PPS(ポリフェニレンサルファイド)またはエポキシなどの耐熱性を有する樹脂が用いられることが好ましい。
【0050】
また、遮断機構10が内蔵された筐体12は、蓋を有し、外気から遮断されているため、塵埃などから保護されているだけでなく、遮断機構10が動作したときに発生するアーク放電から筐体12の周辺の部品が保護されている。筐体12の蓋の材質としては、パワーモジュール6の主端子9などの導体と接する部分は絶縁性を有している必要があり、たとえば、PPSなどの耐熱性を有する樹脂などが用いられることが好ましい。
【0051】
このように、本実施の形態の電力用半導体装置によれば、外部の端子台11とパワーモジュール6の主端子9との間に遮断機構10が設けられかつ外部からその発熱の制御によって低融点導体5を溶かすことができるヒータ導体4が設けられているため、過電流が遮断機構10に流れた場合だけでなく、故障が発生したときにおいてもまた、ヒータ導体4に電流を流すことによって、遮断機構10を能動的に機能させることが可能である。
【0052】
なお、本実施の形態の電力用半導体装置においては、遮断機構10は、パワーモジュール6の側方であってベースプレート7の上方に配置されているが、外部接続端子を有する端子台11と電力用半導体素子の主端子9との間に設けられていれば、その配置としていかなる配置が採用されてもよい。
【0053】
多くの場合には、パワーモジュール6の主端子9とプリント配線基板に電子部品が実装された制御基板とが固定されているが、本実施の形態の電力用半導体装置のように、それらが水平方向において並んで配置されている場合には、プリント配線板の面積の制約がないため、電力用半導体装置の設計の自由度が高い。一方、パワーモジュール6の主端子9とプリント配線基板に電子部品が実装された制御基板とが垂直方向において並んで配置されている場合には、電力用半導体装置の平面的な面積は小さく、かつ、プリント配線基板を配置することができる領域の制約がないという利点がある。
【0054】
本実施の形態においては、パワーモジュール6の主端子9が遮断機構10の主配線導体2を構成するものとされているが、それぞれが別個独立した部品からなっていてもよい。パワーモジュール6の主端子9と遮断機構10の主配線導体2とが一体的な部品であれば、電力用半導体装置を小型化かつ軽量化することができる。一方、パワーモジュール6の主端子9および遮断機構10の主配線導体2のそれぞれが別個独立した部品であれば、遮断機構10から熱が逃げることを抑制し易くなるため、電力用半導体装置の設計の自由度が増加する。
【0055】
(実施の形態2)
次に、図7および図8を用いて、本発明の実施の形態3の電力用半導体装置が説明される。本実施の形態の電力用半導体装置は、実施の形態1の半導体装置とほぼ同様であるため、以下において、本実施の形態の電力用半導体装置と実施の形態1の半導体装置との相違点が主に説明される。
【0056】
図7および図8に示されるように、本実施の形態の電力用半導体装置においては、基板1が一方の主配線導体2および他方の主配線導体2から離れるように、基板1を押圧する押圧機構が、筐体12の蓋の下面に設けられている。押圧機構の一例としてばね16が用いられている。押圧機構は、ばね16以外に、ゴムなどの弾性体であってもよい。また、弾性体は、延びた状態で、基板1の下面と筐体12の底面とに接続され、基板1を引っ張ることによって、基板1が一方の主配線導体2および他方の主配線導体2から離れさせるものであってもよい。
【0057】
筐体12の蓋は、絶縁性を要求されるため、樹脂などの絶縁材料によって金属の表面が被覆された部材であることが望ましい。本実施の形態においては、低融点金属導体5が溶融すると、ばね16が伸張しようとする力によって、基板1が下方に押される。そのため、低融点金属導体5に与えられる熱量が小さくても、容易に基板1上の電極膜3を主配線導体2から離れさせることができる。
【0058】
図示されていないが、珪砂などの絶縁性の材料が遮断機構10の周囲の空間に充填されていてもよい。その場合、通常、ばね16の力は珪砂から反力を受けるため、過度に大きな力が低融点金属導体5に働かない。そのため、低融点金属導体5がばね16から受ける力のみによって破断してしまうという不具合の発生を抑制することができる。そのため、電力用半導体装置の信頼性を保証することができる期間を長くすることができる。
【0059】
言い換えると、上記の構成によれば、重力以外に、押圧機構が絶縁性の基板1を一方の主配線導体2および他方の主配線導体2から離れるように押圧する力によって、一方の低融点金属導体5および他方の低融点金属導体5のそれぞれの溶断が促進される。
【0060】
前述のことがより具体的に説明される。
一般に、金属材料は絶対温度で標記された融点の半分程度の温度以上で再結晶を起こす材料であることが知られている。たとえば、Pdフリーはんだの融点は217℃程度であ
ることが知られている。これは、絶対温度で標記されると、は約490Kである。したがって、245K=零下28℃以上の温度で、Pbフリーはんだの再結晶が生じる。再結晶が生じる温度の範囲内においては、Pbフリーはんだは容易に変形する。そのため、力がPbフリーはんだに常に加えられていると、Pbフリーはんだがその力によって除々に変形してしまうおそれがある。したがって、力が常にPbフリーはんだに加えられている場合には、電力用半導体装置の遮断機構の信頼性を保証できる期間が短い。
【0061】
そのため、本実施の形態の電力用半導体装置のように、遮断機構10が珪砂等によって封止されていることが好ましい。前述の説明においては、遮断機構10が珪砂に内包されている電力用半導体装置が挙げられているが、難燃性および絶縁性の材料であれば、珪砂の代わりに他の材料が用いられても、電力用半導体装置の信頼性を保証することができる期間を長くすることができるという効果が得られる。
【0062】
(実施の形態3)
次に、図9および図10を用いて、実施の形態3の電力用半導体装置が説明される。本実施の形態の電力用半導体装置は、実施の形態1の半導体装置とほぼ同様であるため、以下において、本実施の形態の電力用半導体装置と実施の形態1の半導体装置との相違点が主に説明される。
【0063】
図9および図10に示されるように、本実施の形態の電力用半導体装置においては、樹脂14aおよび14bが筐体12内の遮断機構10の周囲の空間に充填されている。遮断機構10の上側の空間が樹脂14aによって満たされ、遮断機構10の下側の空間が樹脂14bによって満たされている。
【0064】
本実施の形態においては、遮断機構10の上側の樹脂14aの熱膨張率が、遮断機構10の下側の樹脂14bの熱膨張率よりも大きい。たとえば、難燃性の耐熱樹脂として普及しているエポキシの熱膨張率は15×10-6/℃程度であるのに対して、PPS(ポリフェニレンサルファイド)の熱膨張率は22×10-6/℃程度である。したがって、遮断機構10の上側の樹脂14aがPPSからなり、遮断機構10の下側の樹脂14bがエポキシ樹脂からなっていれば、遮断機構10の上側の樹脂14aの熱膨張率が遮断機構10の下側の樹脂14bの熱膨張率よりも大きい構成を実現することができる。
【0065】
本実施の形態においては、PPS樹脂およびエポキシ樹脂が、それぞれ、樹脂14aおよび14bとして用いられているが、他の樹脂がそれぞれ樹脂14aおよび14bとして用いられてもよい。
【0066】
本実施の形態においては、前述のように、遮断機構10の上側、すなわちヒータ導体4が設けられていない側の樹脂14aの熱膨張率が樹脂14bの下側、すなわちヒータ導体4が設けられている側の樹脂14bの熱膨張率よりも大きい。そのため、電流をヒータ導体4に流すことによって遮断機構10を動作させるときに、樹脂14aの膨張の度合が樹脂14bの膨張の度合よりも大きくなる。その結果、樹脂14aと樹脂14bとの間の膨張の度合の相違に起因して、基板1が主配線導体2から離れるように、力が作用する。したがって、遮断機構10が確実に機能する。つまり、図9に示される状態から図10に示される状態へ変化し、一方の主配線導体2と他方の主配線導体2との間の電流の流れが遮断される。電力用半導体装置は、前述のような2種類の樹脂14aおよび14bだけではなく、実施の形態2において説明されたばね16もまた備えていてもよい。
【0067】
(実施の形態4)
次に、図11を用いて、実施の形態4の電力用半導体装置が説明される。本実施の形態の電力用半導体装置は、実施の形態1の半導体装置とほぼ同様であるため、以下において
、本実施の形態の電力用半導体装置と実施の形態1の半導体装置との相違点が主に説明される。
【0068】
図11に示されるように、本実施の形態の電力用半導体装置の遮断機構10においては、電極膜3上にはたとえばCuまたはAlからなる導体層15が設けられている。導体層15は電極膜3よりも電気抵抗値が小さい。低融点金属導体5と電極膜3とは導体層15を媒介として電気的に接続されている。
【0069】
本実施の形態の遮断機構10の製造方法は、次のようなものである。
たとえば、鋳ぐるみ法と呼ばれる手法が用いられる場合には、まず、基板1が導体層15の形状に対応するキャビティを有する金型に装着される。次に、溶融したアルミニウム等の金属導体材料がキャビティ内に射出される。その後、金属導体材料が冷却される。次に、金型が開かれる。その後、金属導体材料が導体層15として成形された遮断機構10が、金型から取り出される。
【0070】
また、活性金属ロウ付け法と呼ばれる方法が用いられる場合には、Ag−Cu−Ti系、Cu−Sn−Ti系、Co−Ti系、Ni−Ti系、またはアルミニウム合金系等のロウ材を用いて、基板1にたとえばCuなどの金属層がロウ付けされることにより、金属層が導体層15として形成された遮断機構10が得られる。
【0071】
このような手法によれば、基板1が大きく反ってしまう。しかしながら、電力用半導体装置の遮断機構10の部品として基板1が用いられる場合には、その反りは遮断機構10の機能を低下させてしまうようなものではない。したがって、基板1が多少反ったとしても、前述のような手法が採用されることが望ましい。
【0072】
また、導体層15と主配線導体2とが低融点金属導体5によって電気的に接続されるため、前述の各実施の形態の遮断機構10と同様に、遮断機構10が動作した場合には、ヒータ導体4の発熱によって低融点金属導体5が溶断され、主配線導体2と導体層15とが電気的に分離されるため、電子回路を流れる電流が遮断される。
【0073】
本実施の形態によれば、導体層15を用いることによって、遮断機構10における抵抗値が、導体層15を用いない遮断機構10の抵抗値の10分の1から数10分の1まで低減される。たとえば、抵抗値が0.1mΩに低減されると、100Aの電流が電子回路に流れる場合には、遮断機構10における電圧ドロップは、0.01V程度になる。したがって、遮断機構10において生じる電力のロスは1W程度という非常に小さな値になる。
【0074】
上記の構成によれば、一方の主配線導体2と他方の主配線導体2との間の電気抵抗値が電極膜3の電気抵抗値に依存せずに、電極膜3よりも電気抵抗値が小さい導体層15に依存する。そのため、一方の主配線導体2と他方の主配線導体2との間の電気抵抗値をさらに低減することができる。また、ヒータ導体4が発した熱は導体層15を経由して主配線導体2へ伝導される。したがって、導体層15が設けられていない場合に比較して、ヒータ導体4が発した熱の逃げが抑制される。故に、小さいエネルギで低融点金属導体5を溶断させることができる。
【0075】
(実施の形態5)
次に、図12を用いて、実施の形態5の電力用半導体装置が説明される。本実施の形態の電力用半導体装置は、実施の形態1の半導体装置とほぼ同様であるため、以下において、本実施の形態の電力用半導体装置と実施の形態1の半導体装置との相違点が主に説明される。
【0076】
図12に示されるように、電極膜3上に導体層15が固着されている。一方の低融点導体5および他方の低融点導体5は、それぞれ、一方の主配線導体2の側端面上および他方の主配線導体2の側端面上おいて、それぞれの側端面に沿って垂直方向に延びるように設けられている。このような構成によれば、ヒータ導体4が発した熱は、導体層15から一方の低融点導体5および他方の低融点導体5を経由して一方の主配線導体2の側端面および他方の主配線導体2の側端面へ伝達される。そのため、ヒータ導体4から主配線導体2までの熱伝導を抑制することができる。
【0077】
主配線導体2を構成する主材料は、銅または銅合金であり、その熱伝導率は金属の中でも非常に大きい。一般的に、熱伝導率が高い金属は電気抵抗率が低い。主配線導体の材料としては、電気抵抗率が低いことが望ましい。なせならば、主配線導体2と低融点金属導体5との接合部を通ってヒータ導体4の熱が逃げてしまうからである。ヒータ導体4の熱が逃げてしまうと、ヒータ導体4の温度の上昇の速度が遅くなる傾向がある。この傾向は、主配線導体2の断面積が大きくなるほど、顕著になる。この場合、数100Aという大きな電流が遮断機構10を流れれば、非常にヒータ導体4の温度の上昇速度が小さくなってしまう。
【0078】
これに対して、本実施の形態の遮断機構10によれば、極めて厚さが小さい主配線導体2の端面にのみ低融点導体5が接触している。したがって、主配線導体2の下面と低融点導体5の上面とによって面積が大きな接合部が形成される実施の形態1の遮断機構等との比較において、ヒータ導体4から主配線導体2までの熱の逃げを抑制することができる。
【0079】
(実施の形態6)
次に、図13〜図15を用いて、実施の形態6の電力用半導体装置が説明される。本実施の形態の電力用半導体装置は、実施の形態1の半導体装置とほぼ同様であるため、以下において、本実施の形態の電力用半導体装置と実施の形態1の半導体装置との相違点が主に説明される。
【0080】
図13〜図15に示されるように、本実施の形態の電力用半導体装置の遮断機構10においては、主配線導体2と電極膜3とが、リボン状の低融点金属導体5を媒介として電気的に接続されている。リボン状の低融点金属導体5は、たとえば、アルミニウム(Al)またはアルミニウム(Al)合金の箔からなり、1mm〜2mm程度の幅および100μm〜200μm程度の厚さを有している。また、リボン状の低融点金属導体5は、超音波接合によって、主配線導体2および電極膜3のそれぞれに接合される。
【0081】
一般に、Alの融点は660℃である。したがって、ヒータ導体4が放出する熱によって、Alからなるリボン状の低融点金属導体5のうちの電極膜3との接合面が溶断される。それにより、電子回路を流れる電流が遮断される。
【0082】
本実施の形態においては、リボン状の低融点金属導体5が用いられているが、その代わりに、AlまたはAl合金からなる直径数100μm程度の線(ワイヤ)状の低融点金属導体5が用いられてもよい。この場合においても、線状の低融点金属導体5は、超音波接合によって、主配線導体2および電極膜3のそれぞれに接合される。
【0083】
本実施の形態において用いられる超音波接合は、固相接合である。一方、前述の各実施の形態において用いられたはんだ接合は、液相接合である。はんだ接合によれば、常温において、はんだの再結晶が進行する。一般的に、再結晶温度以上の温度雰囲気で金属材料が用いられる場合、疲労寿命が短い傾向がある。そのため、はんだが、長時間、熱応力に晒される環境下で用いられる場合には、電力用半導体装置の信頼性を保証することが可能な期間が短くなる。したがって、はんだに大きな熱応力が発生することを抑制するために、はんだと主配線導体2との接合面積を大きくする必要がある場合がある。この場合には、はんだと主配線導体2との接合部の金属疲労が大きいため、遮断機構の信頼性を保証する期間を短く設定する必要が生じる。
【0084】
それに対して、本実施の形態のように、Al系の材料が低融点金属導体5として用いられる場合には、その再結晶温度が200℃であるため、信頼性を保証することができる期間を長く設定することができる。ただし、Alからなる低融点金属導体5の融点は660℃であるため、図1〜図4を用いて説明された実施の形態1の遮断機構10のような構造を採用すると、高熱を発生させるために極めて大きな設備が必要となり、生産効率の観点からは望ましくない。より具体的には、主配線導体2の材料として用いられたCuまたはCu合金は熱伝導率が大きく、また、低融点金属導体5のみを局所的に加熱することが困難であるため、低融点金属導体5の温度とともに主配線導体2の温度を少なくともAl系ロウ材の溶融温度である600℃以上に上昇させなければ、主配線導体2と電極膜3とを低融点導体5によってロウ付けすることができない。したがって、600℃以上に加熱するための大型の加熱装置が必要になってしまう。
【0085】
これに対して、本実施の形態の遮断機構10の製造において用いられているAl系のリボンまたはワイヤの超音波接合技術によれば、基本的には加熱なしに、主配線導体2および電極膜3のそれぞれと低融点金属導体5とを接合することが可能である。
【0086】
そのため、遮断機構10の信頼性を保証することが可能な期間を十分に長くすることができるとともに、上記のような生産効率の低下を招くことなく、設計自由度を向上させることができる。
【0087】
WまたはMoMnなどの材料がヒータ導体の材料として用いられれば、ヒータ導体4の融点は、低融点金属導体5を構成するAlの融点よりも高くなるため、Alが溶融する温度まで低融点金属導体5が加熱されても、遮断機構10の機能に支障が生じることはない。
【0088】
(実施の形態7)
次に、図16〜図18を用いて、実施の形態7の電力用半導体装置が説明される。本実施の形態の電力用半導体装置は、実施の形態1の半導体装置とほぼ同様であるため、以下において、本実施の形態の電力用半導体装置と実施の形態1の半導体装置との相違点が主に説明される。
【0089】
なお、本実施の形態の遮断機構10は、上記実施の形態1〜6の遮断機構のように、低融点金属導体5が溶融して、基板1等が下方へ移動することにより、一方の主配線導体2と他方の主配線導体2との電気的な接続を遮断するものではない。本実施の形態の遮断機構10は、電極膜3および基板1の破断によって、一方の主配線導体2と他方の主配線導体2との電気的な接続を遮断するものである。
【0090】
図16〜図18に示されるように、本実施の形態の電力用半導体装置の遮断機構10においては、複数の貫通孔16が、平面的に見て、電極膜3に破断線状に設けられている。複数の貫通孔16のそれぞれは、平面的に見て矩形の形状を有しており、導体膜3を貫通している。
【0091】
このような破断線状の複数の貫通孔16を有する電極膜3が、アルミナなどのセラミックからなる基板1上に焼成によって形成された場合には、その複数の貫通孔16の近傍において、電極膜3の線膨張率と基板1の線膨張率との差に起因して大きな残留応力が生じている。このため、たとえば、衝撃、機械的荷重、または急激な温度変化によって、セラ
ミックからなる基板1を破断線状の複数の貫通孔16に沿って割ることができる。
【0092】
基板1の一部の厚みを薄くするために、基板1の表面に、電極膜3に設けられた貫通孔16の連なる線に重ねて、レーザなどによって、スクライブ加工を行うと、基板1は破断され易くなり、それにより、好ましい結果を得ることができる。
【0093】
したがって、本実施の形態の電力用半導体装置の遮断機構10によれば、基板1を構成するセラミックが破断線に沿って分断され易い。また、電極膜3も破断線に沿って分断され易い。つまり、一方の主配線導体2と他方の主配線導体2とが確実に電気的に分離される。このような方法によっても、遮断機構10は、一方の主配線導体2と他方の主配線導体2との間の電流の流れを遮断することができる。
【0094】
(実施の形態8)
次に、図19を用いて、実施の形態8の電力用半導体装置が説明される。本実施の形態の電力用半導体装置は、実施の形態5の半導体装置とほぼ同様であるため、以下において、本実施の形態の電力用半導体装置と実施の形態1の半導体装置との相違点が主に説明される。
【0095】
なお、本実施の形態の遮断機構10も、実施の形態5の遮断機構と同様に、上記実施の形態1〜6の遮断機構のように、低融点金属導体5が溶融して、基板1等が下方へ移動することにより、一方の主配線導体2と他方の主配線導体2との電気的な接続を遮断するものではない。本実施の形態の遮断機構10は、電極膜3および基板1の破断によって、一方の主配線導体2と他方の主配線導体2との電気的な接続を遮断するものである。
【0096】
図19に示されるように、本実施の形態の電力用半導体装置の遮断機構10においては、一方の導体層25および他方の導体層25が、1つの電極膜3上において、仮想線の両側に分離して配置されている。一方の主配線導体2および他方の主配線導体2は、それぞれ、一方の導体層25および他方の導体層25に一方の低融点金属導体5および他方の低融点金属導体5を媒介として電気的に接続されている。
【0097】
本実施の形態の遮断機構10によれば、一方の導体層25および他方の導体層25が分分離して配置されているため、基板1に生じる大きな内部応力を利用して、基板1および電極膜3を一方の導体層25と他方の導体層25との間の領域に延びる仮想線に沿って破断させることができる。
【0098】
(実施の形態9)
次に、図20〜図22を用いて、実施の形態9の電力用半導体装置が説明される。本実施の形態の電力用半導体装置は、実施の形態1の半導体装置とほぼ同様であるため、以下において、本実施の形態の電力用半導体装置と実施の形態1の半導体装置との相違点が主に説明される。
【0099】
なお、本実施の形態の遮断機構10も、実施の形態5の遮断機構と同様に、上記実施の形態1〜6の遮断機構のように、低融点金属導体5が溶融して、基板1等が下方へ移動することにより、一方の主配線導体2と他方の主配線導体2との電気的な接続を遮断するものではない。本実施の形態の遮断機構10は、電極膜3および基板1の破断によって、一方の主配線導体2と他方の主配線導体2との電気的な接続を遮断するものである。
【0100】
図20から分かるように、本実施の形態の電力用半導体装置の遮断機構10においては、ヒータ導体が、それぞれが独立して電子回路に接続された一方のヒータ導体4aおよび他方のヒータ導体4bからなっている。つまり、一方のヒータ導体4aおよび他方のヒー
タ導体4bのそれぞれが独立した電子回路を構成している。なお、本実施の形態においては、一方のヒータ導体4aと他方のヒータ導体4bとの間において延びる仮想線に沿って基板1および電極膜3が破断されるものとする。
【0101】
本実施の形態においては、ヒータ導体が1つの回路からなっている場合に比較して、基板1および電極膜3の破断のときにヒータ導体が分断されてしまうことが防止されている。したがって、ヒータ導体に電流が流れずに基板1および電極3が完全には破断されないという不具合の発生が防止されている。
【0102】
また、本実施の形態においては、低融点金属導体5は、AlまたはAl合金のリボン導体またはワイヤからなっている。一方の低融点金属導体5および他方の低融点金属導体5は、それぞれ、電極膜3および主配線導体2に超音波接合によって接合される。本実施の形態の遮断機構10によっても、実施の形態7および8の遮断機構10と同様に、基板1は内部応力によって、図21に示される状態から図22に示される状態へ変化する。すなわち、基板1および電極膜3が分断される。その結果、一方の主配線導体2と他方の主配線導体2との間の電流の流れが遮断される。
【0103】
(実施の形態10)
次に、図23および図24を用いて、実施の形態10の電力用半導体装置が説明される。本実施の形態の電力用半導体装置は、実施の形態1の半導体装置とほぼ同様であるため、以下において、本実施の形態の電力用半導体装置と実施の形態1の半導体装置との相違点が主に説明される。
【0104】
図23に示されるように、本実施の形態の電力用半導体装置の遮断機構10においては、一方の電極膜3および他方の電極膜3が基板1上の一方の位置および他方の位置に分割して設けられている。また、一方の電極膜3と他方の電極膜3とは低融点金属導体17を媒介として電気的に接続されている。
【0105】
本実施の形態の遮断機構10においては、ヒータ導体4が発熱すると、低融点金属導体17が溶融する。前述のように、低融点金属導体17は、表面積が最小となるように変形する。そのため、低融点金属導体17は、一方の主配線導体2および他方の主配線導体2のそれぞれに近づき、2つに分割される。その結果、図24に示されるように、一方の低融点金属導体17および他方の低融点金属導体17は、それぞれ、一方の低融点導体5および他方の低融点金属導体5に一体化される。つまり、融点が低い低融点導体17が、溶融した後、相対的に融点が高い低融点導体5に向かって流れ、低融点導体5に一体化される。本実施の形態においては、低融点金属導体17の融点が低融点金属導体5の融点よりも低いため、低融点金属導体17が低融点金属導体5へ向かって流れているが、低融点金属導体5の融点が低融点金属導体17の融点よりも低ければ、低融点金属導体5が溶融して低融点金属導体17へ向かって流れ、低融点導体5が低融点導体17に一体化される。
【0106】
なお、遮断機構10の動作時には、低融点金属導体5と低融点金属導体17とが接触すると、その接触位置で低融点金属導体5および17の溶融反応が一気に進む。このとき、溶融金属の表面積を低減させるように、低融点金属導体5および17が変形する。その結果、図24に示されるように、低融点金属導体17が低融点金属導体5に一体化される。したがって、遮断機構10は確実にその機能を発揮することができる。
【0107】
また、前述のような一体化が確実に実現されるためには、図23に示される状態において、低融点金属導体17と低融点金属導体5との間の距離は小さいことが望ましい。
【0108】
また、低融点金属導体17と主配線導体2または低融点金属導体5とが、たとえば、S
nおよびZn、またはSnおよびIn等のような互いに共晶反応を生じる組成からなっていることが望ましい。これによれば、共晶反応を利用して、低融点金属導体5,17が液化する温度を、低融点金属導体5または17のそれぞれの融点よりも低くすることができる。したがって、より低い温度で遮断機構10の機能を発揮させることができる。
【0109】
また、本実施の形態の遮断機構10によれば、低融点金属導体5,17のうちの融点が高い方を一方の電極膜3および他方の電極膜3に接続した後で、低融点金属導体5,17のうちの融点が低い方を一方の電極膜3および他方の電極膜3に接続することができる。したがって、製造方法の自由度が向上する。
【0110】
(実施の形態11)
次に、図25〜図27を用いて、実施の形態11の電力用半導体装置が説明される。本実施の形態の電力用半導体装置は、実施の形態5の半導体装置とほぼ同様であるため、以下において、本実施の形態の電力用半導体装置と実施の形態1の半導体装置との相違点が主に説明される。
【0111】
なお、本実施の形態の遮断機構10も、実施の形態5の遮断機構と同様に、上記実施の形態1〜6の遮断機構のように、低融点金属導体5が溶融して、基板1等が下方へ移動することにより、一方の主配線導体2と他方の主配線導体2との電気的な接続を遮断するものではない。本実施の形態の遮断機構10は、電極膜3および基板1の破断によって、一方の主配線導体2と他方の主配線導体2との電気的な接続を遮断するものである。
【0112】
図25〜図27に示されるように、本実施の形態の電力用半導体装置の遮断機構10においては、ヒータ導体4aおよび4bと基板1とが接触している領域が主配線導体2と電極膜3とが接触している領域よりも小さい。すなわち、ヒータ導体4aおよび4bのすべてが、平面視において、主配線導体2と電極膜3とが接触している領域に内包されている。言い換えれば、ヒータ導体4aおよび4bは、主配線導体2および電極膜3が基板1上に投影された場合に、その影に対応する領域の中に設けられている。
【0113】
一般に、基板1のヒータ導体4の反対側の主表面に何も形成されていない場合においては、ヒータ導体4が発した熱が基板1を通じて外部へ伝達される。一方、基板1のヒータ導体4の反対側の主表面に電極膜3および主配線導体2が設けられていれば、基板1の温度は、電極膜3および主配線導体2が接触している領域から離れるほど高なる。たとえば、電極膜3および主配線導体2が基板1上の2つの位置に接触している場合には、その2つの位置のそれぞれから等距離にある位置の温度が最も高くなる。
【0114】
前述のような事項を踏まえると、低融点金属導体5(ロウ材)を溶融させるために、ヒータ導体4に熱を発生させた場合には、ヒータ導体4の温度が臨界温度(ヒータ導体4の融点等)を超えると、ヒータ導体4の一部が溶融してしまう場合があると考えられる。この場合には、ヒータ導体4には電気を流すことができなくなる。そのため、前述の例のような場合には、ヒータ導体4を用いて供給することができる熱量を、基板1のうちのヒータ導体4が形成されている主表面の裏側の主表面のすべてが電極膜3および主配線導体2に覆われている遮断機構に比較して、小さくする必要がある。
【0115】
前述のような例に比較して、本実施の形態の遮断機構10によれば、ヒータ導体4から発せられた熱が、主配線導体2および低融点金属導体5を通じて容易に外部へ放出される。そのため、ヒータ導体4の温度が極端に大きくならない。その結果、ヒータ導体4の発熱量が大きくなっても、ヒータ導体4が溶融し難い。したがって、ヒータ導体4の設計の自由度が増加し、遮断機構の機能が発揮され易くなる。
【0116】
また、主配線導体2および低融点金属導体5などが複数に分断されている場合には、ヒータ導体4のうちの主配線導体2と低融点金属導体5とが重なっている部分に対応する部分のみの抵抗を高くするとともに、主配線導体2同士の間に位置する電極膜3の抵抗値を低くすることが望ましい。また、抵抗率が高いヒータ導体4を、主配線導体2および低融点金属導体5が基板1に投影されたときに影が存在する領域のみに設けるが望ましい。
【0117】
これによれば、ヒータ導体4の溶融を考慮する必要がないため、遮断機構10の設計の自由度が増加する。たとえば、ヒータ導体4の発熱量を大きくすることによって、電気回路が遮断されるまでの時間を短縮することができる。
【0118】
上記の構成によれば、ヒータ導体4の温度上昇に起因する悪影響が及ぼされる領域を極力小さくしながら、ヒータ導体4の発熱を効率的に一方の低融点金属導体5および他方の低融点金属導体5に伝達することができる。
【0119】
なお、実施の形態5と同様の複数の貫通孔16は必ずしも設けられていなくて、前述の本実施の形態の遮断機構の機能を発揮することは可能であるが、複数の貫通孔16が電極膜3に破断線状に設けられていれば、電極膜3および基板1を破断線に沿って破断させ易くなる。
【0120】
(実施の形態12)
次に、図28〜図30を用いて、実施の形態12の電力用半導体装置が説明される。本実施の形態の電力用半導体装置は、実施の形態1の半導体装置とほぼ同様であるため、以下において、本実施の形態の電力用半導体装置と実施の形態1の半導体装置との相違点が主に説明される。
【0121】
図28〜図30に示されるように、本実施の形態の電力用半導体装置の遮断機構10においては、他の配線が接続され得る接続パッド14aおよび14bが、それぞれ、ヒータ導体4aの両端およびヒータ導体4bの両端に設けられている。接続パッド14aおよび14bは、それぞれ、主配線導体2の基板1上への投射影に内包される領域内であって、かつヒータ導体4aおよび4bの最も外側の位置に設けられている。
【0122】
本実施の形態の遮断機構10によれば、電流がヒータ導体4に流れているときに、接続パッド14aおよび14bの温度を他の領域の温度よりも低くすることができる。これは、本実施の形態の遮断機構10においてはヒータ導体4が発した熱が主に主配線導体2へ伝達されることによって、接続パッド14aおよび14bの温度上昇が抑制されるためである。
【0123】
つまり、主配線導体2が基板1上へ投影されたときに影になる領域の温度が他の領域に比較して低くなっている。そのため、接続パッド14aおよび14bの温度を最も低減することができるようにするために、接続パッド14aおよび14bが設けられている領域が、基板1の主配線導体2が投影された領域に包含され、かつ、最も基板1の外側に設けられている。これにより、接続パッド14aおよび14bの温度を基板1のうちで最も低い値に維持することができる。
【0124】
前述のように、接続パッド14aおよび14bの温度を低減することによって、電流がヒータ導体4に流れて、たとえば、400℃以上にヒータ導体4が発熱した場合においても、接続パッド14aおよび14bの温度を200℃以下に抑えることが可能である。そのため、接続パッド14aおよび14bと他の配線との接続の信頼性を向上させることができる。したがって、遮断機構10が動作するまでに、接続パッド14aおよび14bから他の配線が外れてしまうことが防止される。
【0125】
(実施の形態13)
次に、図31を用いて、実施の形態13の電力用半導体装置が説明される。本実施の形態の電力用半導体装置は、実施の形態1の半導体装置とほぼ同様であるため、以下において、本実施の形態の電力用半導体装置と実施の形態1の半導体装置との相違点が主に説明される。
【0126】
なお、本実施の形態の遮断機構は、実施の形態1〜6の遮断機構と同様に、低融点材料17の溶融および分断によって一方の主配線導体2と他方の主配線導体2とが電気的に分離されるものである。なお、遮断機構10は、低融点金属導体17が基板1よりも下側に配置されていれば、つまり、図31に示される遮断機構10が上下逆さまに配置されていれば、低融点金属導体17は、溶融したときに、重力によって落下する。そのため、より容易に一方の主配線導体2と他方の主配線導体2との電気的な接続を遮断することができる。このような重力の作用を利用して低融点金属導体17を落下させることは、たとえば、基板1が鉛直方向に沿って延びるように配置されている場合にも、実現される。
【0127】
図31に示されるように、本実施の形態の電力用半導体装置の遮断機構10においては、低融点金属導体17が、基板1が介在する状態で、ヒータ導体4に対向するように配置されている。また、低融点金属導体17は低融点導体5の融点よりも低い融点を有している。さらに、低融点金属導体17は厚み分布を有する。本実施の形態の低融点金属導体17においては、主配線導体2に接触している両端部において厚みが小さく、かつその中央部において厚みが大きい。
【0128】
一般に、低融点金属粉末が、バインダとしての粉末金属に混合され、基板1上に印刷され、焼成されることによって、低融点金属導体が形成される。一方、本実施の形態の低融点金属導体17は、溶融したはんだを、はんだに対する漏れ性が低い材料の枠の中に流し込む等の方法によって形成され得る形状を有している。
【0129】
前述の本実施の形態の低融点金属導体17によれば、その中央部の断面積がその両端部に接続されている主配線導体の断面積よりも大きいため、主配線導体2同士の間の抵抗値を非常に小さくすることができる。つまり、本実施の低融点金属導体17の形状は、大電流が流れる回路の遮断に適している。
【0130】
一般に主配線導体2から外部へ放出される熱が、ヒータ導体4が発した熱による低融点金属導体17の温度上昇の妨げになるが、本実施の形態の遮断機構10の低融点金属導体17のように主配線導体2に接触している部分の厚みが中央部の厚みよりも小さくなっていれば、低融点金属導体17から主配線導体2への熱の流れが、低融点金属導体17の厚みが均一の場合に比較して抑制される。そのため、低融点金属導体17の温度が上昇し易い。その結果、電子回路を遮断するまでの時間が短縮される。したがって、ヒータ導体4の発熱のために消費されるエネルギを小さくすることができる。これは、遮断機構10の設計の自由度の増加につながる。
【0131】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0132】
1 基板、2 主配線導体、3 電極膜、4,4a,4b ヒータ導体、6 パワーモジュール、7 ベースプレート、8 信号端子、9 主端子、10 遮断機構、11 端
子台、12 筐体、14a,14b 接続パッド、5,17 低融点金属導体、15,25 導体層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性の基板と、
前記基板の一方の主表面上に設けられた電極膜と、
前記基板の他方の主表面上に設けられ、電流が流れることによって発熱するヒータ導体と、
それぞれが所定の電子回路および前記電極膜に電気的に接続された一方の主配線導体および他方の主配線導体と、
前記一方の主配線導体と前記電極膜とを電気的に接続する一方の導体層と、
前記他方の主配線導体と前記電極膜とを電気的に接続する他方の導体層とを備え、
前記一方の導体層と前記他方の導体層とは仮想線の両側に分離して設けられた、遮断機構を有する電力用半導体装置。
【請求項2】
絶縁性の基板と、
前記基板の一方の主表面上に設けられた電極膜と、
前記基板の他方の主表面上に設けられ、電流が流れることによって発熱するヒータ導体と、
それぞれが所定の電子回路に接続された一方の主配線導体および他方の主配線導体と、
前記一方の主配線導体と前記電極膜とを電気的に接続する一方の低融点導体と、
前記他方の主配線導体と前記電極膜とを電気的に接続する他方の低融点導体と、
前記一方の低融点導体と前記他方の低融点導体の間の位置に設けられ、前記一方の低融点導体および前記他方の低融点導体のそれぞれと共晶反応を生じる他の低融点導体とを備えた、遮断機構を有する電力用半導体装置。
【請求項3】
絶縁性の基板と、
前記基板の一方の主表面上に設けられた電極膜と、
前記基板の他方の主表面上に設けられ、電流が流れることによって発熱するヒータ導体と、
それぞれが所定の電子回路および前記電極膜に電気的に接続された一方の主配線導体および他方の主配線導体とを備え、
前記ヒータ導体は、前記一方の主配線導体および前記他方の主配線導体が前記一方の主表面上に投影された領域の裏側の前記他方の主表面上の領域内にのみ配置されている、遮断機構を有する電力用半導体装置。
【請求項4】
前記ヒータ導体の両端のそれぞれには接続パッドが設けられており、
前記接続パッドのいずれもが、前記ヒータ導体の最も外側に設けられている、請求項3
に記載の遮断機構を有する電力用半導体装置。
【請求項5】
絶縁性の基板と、
前記基板の一方の主表面上に設けられた電極膜と、
前記基板の他方の主表面上に設けられ、電流が流れることによって発熱するヒータ導体と、
それぞれが所定の電子回路に接続された一方の主配線導体および他方の主配線導体と、
前記一方の主配線導体および前記他方の主配線導体のそれぞれに接続され、前記ヒータ導体の発熱によって溶融する低融点導体とを備え、
前記低融点導体は、両端部の厚さよりも中央部の厚さが大きい、遮断機構を有する電力用半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2012−212689(P2012−212689A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−162509(P2012−162509)
【出願日】平成24年7月23日(2012.7.23)
【分割の表示】特願2010−251956(P2010−251956)の分割
【原出願日】平成19年1月19日(2007.1.19)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】