説明

遮水地中壁の構築方法

【課題】 遮水パネルの雌継手と雄継手とは密に係合せずに互いに係合し得る構造を有し、かつ継手間隔の長い(幅広い)遮水パネルを使用し、継手部の止水性を確保しながら、止水部の挿入作業時にソイルセメント部に欠陥が生じることがないソイルセメント地中連続壁を構築するための方法を提供する。
【解決手段】 ソイルセメントの地中連続壁を構築後、ソイルセメントが未硬化で流動性を有する間に、遮水パネルを打設用フレームに装着した状態でソイルセメント中に沈設させつつ、または沈設した後に、雌継手内に充填材を充填し、この雌継手に係合する雄継手を有する次の遮水パネルを打設用フレームに装着した状態でソイルセメント中に沈設させつつ、または沈設した後に、次の遮水パネルの雌継手内に充填材を充填するという工程を繰り返し、その後に遮水パネル1をソイルセメント地中壁中に残置したまま、打設用フレームを、そのグラウト注入路18からグラウトを注入しながら地上に引き上げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮水パネルを有するソイルセメント地中連続壁を構築するための方法に関し、特に、雌雄の継手を有する幅が広くて薄肉の遮水パネルを打設用フレームと共にソイルセメント地中連続壁中に沈設する遮水地中壁の構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地震その他の自然現象によりソイルセメント地中連続壁にクラックなどが発生して止水性が失われた場合でも止水できるように、ソイルセメント連続壁中に板状やシート状の止水部材を挿入することが知られていた(例えば、特許文献1参照)。
ソイルセメント地中壁中に合成樹脂製のシートを貫入フレームと共に沈設させ、貫入フレームを引き上げることにより合成樹脂製のシートを有するソイルセメント地中連続壁とすることも知られていた(例えば、特許文献2参照)。
又、空掘りした溝中に板状やシート状の止水材料を挿入した後に、若しくは溝を掘ることなく直接地中に、合成樹脂製のシートを貫入フレームと共に沈設させることも知られていた(例えば、特許文献3参照)。
一方、互いの雌継手と雄継手を密に係合し得る形状とすることにより、継手部においても止水状態とすることが知られていた(例えば、特許文献4参照)。
【特許文献1】特開平5−272132号公報(図2,段落番号0006)
【特許文献2】特開2000−319872号公報(図2,段落番号0018)
【特許文献3】特開2001−90087号公報(図8,段落番号0022)
【特許文献4】実公平7−35860号公報(第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記の特許文献1においては、使用される止水部材は、貫入フレームを使用することなくソイルセメント壁中に沈設され、その剛性が高く、かつ図面に示されるように幅が狭いものであり、継手同士は密に接合され、連続壁中に継手による連結部を多数有するものである。
また、上記特許文献2においては、貫入フレームが使用されているものの、使用される止水部材は、その図3や図4に示されて文中に説明があるように、有孔幅Wが約1〜1.5mと幅狭のものであり、互いの雌継手と雄継手を密に係合し得る形状のものである。
特許文献3において使用される止水部材は、その文中の記載より、特許文献4に記載されたもの、即ち、互いの雌継手と雄継手を密に係合し得る形状のものであり、特許文献2と同様に、幅狭のものであり、互いの雌継手と雄継手を密に係合し得る形状のものである。
【0004】
継手間隔が短いと、継手間隔の長い止水部材に比べると、継手を除く部材部よりも継手部の加工賃が高価となり、それ故、高価な止水材となるばかりでなく、一定長さの連続壁状とするには、継手間隔が短いと、継手間隔の長い止水部材に比べると多数の止水材が必要になる。このため一定長さの連続壁状にする際に多数回の沈設作業が必要となり、施工に要する手間と時間が必要になる。
また、互いの雌継手と雄継手を密に係合し得る形状のものであると、継手同士を接合する際に、互いに正確に位置決めする必要があるばかりでなく、互いに密接した状態で嵌合して次の止水材を沈設させるために、自沈させることは不可能であり、圧入貫入方式や高周波振動機による貫入方式を採らざるを得ない。
【0005】
本発明は、このような点に鑑み、雌継手と雄継手とは密に係合せずに互いに係合し得る構造を有し、かつ継手間隔の長い止水部材を使用することにより、これら従来技術の欠点を解決すると共に、このような止水部材を使用しても、継手部の止水性を確保しながら、止水部の挿入作業時にソイルセメント部に欠陥が生じることがないソイルセメント遮水地中壁を構築するための方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のソイルセメント遮水地中壁の構築方法は、ソイルセメントの地中連続壁を構築後、ソイルセメントが未硬化で流動性を有する間に、雌雄の継手を有する幅が広くて薄肉の遮水パネルを打設用フレームと共にソイルセメント中へ挿入し、地中連続壁中で前記遮水パネルの両面側にソイルセメント壁が存在する遮水地中壁を構築する方法であって、打設用フレームは、遮水パネルの継手部を除く部分よりも幅狭であって、肉厚の鋼製のものであり、その下方に遮水パネルを支える手段を備え、その上方に遮水パネルを保持開放自在な手段を備えると共に、該打設用フレームの遮水パネルを支える面の反対側にはグラウト注入路が装備されたものであり、前記遮水パネルが広幅薄肉鋼製パネルであり、片方に雌継手、他方に雄継手を有し、雌継手は最下端が封鎖されたものであり、かつ雌継手と雄継手とは密に係合せずに互いに係合し得る構造のものであり、上記遮水パネルの雌継手の側面に設けられた側面開口部(スリット部)を、ソイルセメントに挿入される前に、雄継手の上方からの挿入により破断される強度の材料で封鎖し、前記遮水パネルを打設用フレームに装着した状態でソイルセメント中に沈設させつつ、または沈設した後に、雌継手内に充填材を充填し、この雌継手に係合する雄継手を有する次の遮水パネルを打設用フレームに装着した状態でソイルセメント中に沈設させつつ、または沈設した後に、次の遮水パネルの雌継手内に充填材を充填するという工程を繰り返し、その後に打設用フレームを、そのグラウト注入路からグラウトを注入しながら地上に引き上げることを特徴とする遮水地中壁の構築方法である。
【0007】
この構築方法によると、遮水パネルの下端部は、打設用フレームの支え手段に保持されて、遮水パネルの上端が打設用フレームの上方の保持開放自在な手段で保持された状態で、ソイルセメントが未硬化で流動性を有する間に、打設用フレームと共にソイルセメント中へ自重で沈設させる(即ち、自沈させる)ことも可能になる。
なお、遮水パネルの雌継手における側面開口部(スリット部)を、ソイルセメントに挿入される前に、雄継手の上方からの挿入により破断される強度の材料で封鎖する材料は特に限定しないが、裏面に粘着材が塗布された布製や合成樹脂製のテープ材などが例に挙げられる。
【0008】
また、遮水パネルの雌継手における側面開口部(スリット部)を封鎖する材料として織布を使用する場合は、経糸もしくは緯糸をスリット方向に沿うように配置させて使用すると、雄継手による切断が容易になる。勿論、遮水パネルは打設用フレームに装着されて沈設されるので、遮水パネルは打設用フレームに装着された状態で自沈させた場合でも、上記の封鎖材料は雄継手の上方からの挿入により破断される。また、敢えて記載するまでもなく、ソイルセメントへの挿入時におけるソイルセメントの圧力では、破断したり剥離したりしない強度を有するものであることは当然のことである。
【0009】
雌継手内に充填する充填材としては、雄継手の挿入が可能である材料であればよく、例えばセメントミルクやモルタル,およびこれらに硬化遅延剤が混和され遅延性とされたもの、アスファルト、ポリマー、ベントナイトが混合された土など高粘性のものなどが例として挙げられる。中でもベントナイトが混合された土など硬化性のない充填材は、地震時等に継手部で遮水パネルの変形に追従可能であり、継手部に歪みを受けても止水性を失わないので好ましい充填材である。但し、アスファルトやポリマー等は雌継手内への充填時に流動性を有するものであることが必要である。
【0010】
雌継手内に充填する充填材としては、ソイルセメントの液比重と同じ液比重の充填材でもよいが、配合ミスにより液比重が低くなる危険性を少なくする点から、ソイルセメントの液比重よりも重くした充填材を使用することが、更に好ましい。次の遮水パネルにおける雄継手の挿入により、雌継手のスリットを封鎖していた封鎖材は破断されることになるが、このように液比重を変えることにより、ソイルセメント壁のソイルセメントが雌継手内に混入する(即ち、充填材とソイルセメントの液圧差により雌継手内に混入する)ことが防止でき、ソイルセメントが硬化した状態で、継手内に最初に充填した充填材を残存させることができる。
【0011】
また、雌継手内に充填材を充填する時期は、打設用フレームに装着した状態でソイルセメント中に沈設しつつ充填しても良く、ソイルセメント中への沈設が済んでから行ってもよい。後者のソイルセメント中への沈設が済んでから行う場合は、充填材を注入する雌継手の上端部が地面に近い位置に来ているので、充填材の注入が容易であるので特に好ましい充填時期である。
【0012】
なお、構築すべきソイルセメント地中連続壁の深度が大きい場合は、当然に使用する遮水パネル等の長さも大となるが、充填材が充填されていない状態で深くまで沈設する際には、雌継手の側面開口部を封鎖している部分の両側の圧力差は大きくなり封鎖材料の一部が剥がれたり、損傷を受けたりする可能性が無いとはいえない。かかる危険性が予想される場合は、打設用フレームに装着した状態でソイルセメント中に沈設しつつ充填することが好ましい。この場合、ある程度沈設した後に充填材の注入を開始することにより、雌継手の上端は地面よりも高い位置ではあるが、より低い位置で注入を開始することができる。このような場合でも充填された充填材の最上端位置とソイルセメントの上端面位置は、ほぼ同じ位置として両者の圧力差を小さくすることが好ましい。
【0013】
更に、打設用フレームを地上に引き上げる際に注入するグラウトとしては、セメントミルクや土と混合されたソイルセメント液等のグラフウト材が使用され、構築されたソイルセメントが固化した場合の強度と同程度となるグラウト材であることが最も好ましい。水セメント比が小さいセメントミルク、例えば水セメント比が80%であるセメントミルクなどがこの例である。
【0014】
また、この際のグラウトの注入路は、鋼製の筒体として引き上げ時や挿入時に変形することがないようにすることが好ましい。変形するとグラウト材の注入が困難になることがある。グラウトの注入を更に容易にするには、この筒状態の中にホースを挿入し、グラウトポンプを使用してグラウトを圧送することが特に好ましい。
そして、グラウト注入路からグラウトを注入しながら打設用フレームを地上に引き上げる時期は、打設用フレームを引き上げても、ソイルセメント中に残置される遮水パネルが移動しなくなる時期に行うのが最も好ましく、例えば、ソイルセメントが流動性を失った時期以降で、打設用フレームの引き上げが可能な時期に行われる。この引き上げを容易にするために、打設用フレームは離形材(もしくは離形剤)が塗布されたものであることが好ましい。
【0015】
特に好ましい打設用フレームは、遮水パネルを支える面の反対側にリブを有し、このリブにフックが設けられていると共に、このリブに沿ってグラウト注入路が装備されているものである。
打設用フレームのリブに設けられたフックは、打設用フレームを上方より吊り下げるために使用される。そのために打設用フレームの上端よりも低い位置に、遮水パネルを保持開放自在な手段を備えたものであることが特に好ましい。
また、雌雄の継手部を除く部分で遮水パネルを保持するために、打設用フレームは、遮水パネルの継手部を除く部分よりも幅狭とされている。
【0016】
なお、使用する遮水パネルは、雌雄の継手部を有するが、パネル幅が広くて薄肉の遮水パネルであり、鋼製のパネルであってもそれ自体としては剛性が低いものであり、例えば、幅が1.8〜2.5mで、肉厚が5〜9mmのパネルである。長さは特に限定しないが、例えば、5〜40m程度である。
また、使用する打設用フレームは、遮水パネルの継手部を除く部分よりも幅狭であって、肉厚の鋼製のものであり、剛性の高いものであり、例えば肉厚が15〜35mmで幅が1.5mを超え2.3m程度までである鋼製のものである。
【0017】
また、本発明の遮水地中壁の構築方法において使用される遮水パネルとして更に好ましいのは、雌継手が筒状形態(特に好ましくは円筒形)の管状継手であり、雄継手がT字型のT字型継手である。
なお、雄継手は、T字における上の棒の部分が曲面になっていてもT字における上の棒の部分が断面円形又は長円形にかわっているものでも、雌継手と雄継手とは密に係合せずに互いに係合し得る構造のものである構造であれば使用できる。しかし、充填材が充填された雌継手内での沈設し易さの点で、雄継手はT字型であるのが最も好ましい。
【0018】
更に、本発明において地中連続壁としてのソイルセメント壁を構築する方法は、いかなる構築方法でもよいが、壁厚が均等で、かつ上下部にも均等なソイルセメントを地中に築造するためには、掘削刃を有する無端チェーンをカッターポストの周囲で循環させながら、カッターポストを地中に挿入したまま横行させると同時に、カッターポストの下端部、もしくは地表面付近からセメント系固化材を吐出する装置を使用する方法によることが特に好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の遮水地中壁の構築方法に従うと、雌継手と雄継手とは密に係合せずに互いに係合し得る構造の継手を有し、かつ継手間隔の長い幅が広くて薄肉の遮水パネルを使用し、継手部に充填材が充填されることになる。
上層部が軟弱な地盤であり下層部が硬質地盤であるような場所において、両地盤に跨って地中壁を構築すると、地震時にその上下地盤の境界面で大きな変形が起こり、ソイルセメント部にクラックなどが発生する恐れがあるが、長く幅が広くて薄肉の遮水パネルが使用されるが故に継手部の数が少なく、かつ継手部は充填材が充填された状態になっているので、継手部からの漏水も防止することができ、汚染土壌の防止壁や廃棄物処分所などの汚染地下水の漏洩が許されない場所での遮水地中壁の構築方法として有用である。
【0020】
更に、本発明では、継手間隔の長い遮水パネルを使用するので、継手間隔が短いパネルに比べると、一定長さの連続壁状とする際において、継手を除く部材部よりも加工賃が高価となる継手部の存在比率を少なくすることができ、一定長さの連続壁状とする際に使用する総パネル数が少なくなり、それ故、材料費として安価になるばかりでなく、一定長さの連続壁状とするために少ない沈設作業で済み、施工に要する手間と時間を短縮できる。
【0021】
また、本発明では、雌継手と雄継手とは密に係合せずに互いに係合し得る構造のものであり、遮水パネルを互いに直線状に打設する場合などに、雌継手の開口空間と雄継手の間には隙間が生じ、既に埋設された遮水パネルに、次の遮水パネルを挿入する際に継手部における両継手の係合が平滑に行われつつ、容易に次の遮水パネルを沈下させることができる。
【0022】
このような構造としても、雌継手を最下端が封鎖された構造とし、雌継手における側面開口部(スリット部)を、ソイルセメントに挿入される前に、雄継手の上方からの挿入により破断される強度の材料で封鎖して、遮水パネルを沈設した後に、雌継手内に充填材を充填する際に開口部(スリット部)等からの充填材の漏洩を防止することができると共に、後から挿入する遮水パネルの雄継手でこのスリット封鎖材を切断しながら係合させると共に、継手部に充填材が充填された状態とすることができる。それ故、雌継手の開口空間と雄継手の間には隙間が生じても継手部からの水漏れを防止することができる。
【0023】
なお、前述したように、雌継手を最下端が封鎖された構造とし、雌継手における側面開口部を、ソイルセメント壁に挿入される前に、雄継手の上方からの挿入により破断される強度の材料で封鎖してあるから、ソイルセメント壁中に沈設してもソイルセメントが雌継手中に浸入することがない。逆に、雌継手を最下端が封鎖されてない構造としたり、雌継手部における側面開口部をそのままにしたりすると、ソイルセメント壁中に沈設した場合に、雌継手中にソイルセメントが浸入する。一度浸入したらソイルセメントを完全に除去することが困難であり、除去作業をしても多くのソイルセメントが雌継手中に残存することになる。このようにソイルセメントが残存した状態で、後から雌継手内に充填する充填材の充填度が不充分になる。本発明のように、遮水パネルの雌継手における側面開口部を、ソイルセメント壁に挿入される前に、雄継手の上方からの挿入により破断される強度の材料で封鎖すると、本発明中の工程のように、遮水パネルを打設用フレームに装着した状態でソイルセメント壁中に沈設させ、雌継手内に充填材を充填する工程が採用できるのである。
雌継手内に充填する充填材として、ソイルセメントの液比重よりも重くした充填材を使用した場合は、次の遮水パネルにおける雄継手の挿入により、雌継手のスリット部(開口部)を封鎖していた封鎖材は破断されることになるが、このように液比重を変えることにより、ソイルセメント壁のソイルセメントが雌継手内に混入する(即ち、充填材とソイルセメントの液圧差により雌継手内に混入する)ことが防止でき、ソイルセメントが硬化した状態で、継手内に最初に充填した充填材を残存させることができる。
【0024】
また、本発明で使用する遮水パネルは広幅薄肉鋼製パネルであり、それ自体は剛性が低く、撓み易いものである故に、打設用フレームを使用するが、遮水パネルが広幅であるが故に、打設用フレームも幅が狭い遮水パネルを打設する場合よりも幅が広くて厚みがあるものとしなければならなくなり、かつ打設用フレームを早期に引き上げると遮水パネルが幅方向に変形する恐れがあるので、遮水パネルを打設用フレームに保持させた状態で、次の遮水パネルを打設用フレームに保持させて沈設する必要がある。このように打設用フレームは剛性が大なるものとする必要があり、そのために打設用フレームがソイルセメント中に占める容積が大なるものとならざるを得ない。このような容積の大きい打設用フレームを単に引き上げると、打設用フレームが以前に存在した場所にソイルセメントが移動しようとしてソイルセメント部に亀裂が発生する恐れがある。しかしながら本発明に従うと、打設用フレームを、そのグラウト注入路からグラウトを注入しながら地上に引き上げることにより、ソイルセメントの亀裂を発生させることがなくなり、ソイルセメント部に欠陥が生じることがないソイルセメント地中連続壁とすることができる。
【0025】
このように本発明に従えば、雌継手と雄継手とは密に係合せずに互いに係合し得る構造を有し、かつ継手間隔の長い遮水パネルを使用することにより、従来技術の欠点を解決できると共に、継手部の止水性を確保しながら、作業時にソイルセメント部に欠陥が生じることがないソイルセメント地中連続壁を構築することができる。
【0026】
なお、容積の大きい打設用フレームを単に引き上げようとすると、打設用フレーム下方に空洞部を発せさせないような力(即ち、負圧)が生じ、打設用フレーム引き上が困難になったり、場合によっては遮水パネルが上方に浮き上がったり、横方向に移動したりすることがある。しかし、容積の大きい打設用フレームであっても、グラウト注入路からグラウトを注入しながら打設用フレームを地上に引き上げることにより、これらの悪現象の発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明を実施するために使用する遮水パネルを図1に示した例で説明する。図1は、本発明に使用する遮水パネルの一例を示す斜視図である。
図1に示した遮水パネル1は、長方形であり、その片方には雄継手2を、他方には側面縦方向にスリット(開口部)4が設けられた雌継手3を、縦方向(長手方向)に備える。本例の遮水パネル1は図2に示すように肉厚t6mm、幅2.12m、長さ8mであり、雄継手2は、図2に示すように肉厚t6mm、幅h65mmのT字型継手であり、雌継手3は、円筒形(肉厚t6mm)で、内径(空隙部の直径)hが102.3mmで、開口幅30mmのスリット(開口部)4を側面縦方向に有する管状継手である。この雌継手3の下端は、図2に示すように下端部は封鎖されている。なお、この図では封鎖部3aは斜面状とされているが水平な封鎖部でもよい。雌継手3の下端が斜面状に封鎖されている場合は、図1に示すように、雄継手2の下端部は雌継手3のスリット4が存在する長さまでとしている。
【0028】
なお、スリット4部は、遮水パネル1をソイルセメント壁中へ沈設する前に、例えば図2に例示すように、樹脂テープ5で封鎖する。封鎖する時期は、ソイルセメント壁中に沈設する前であればよいが、置き場に遮水パネル1が水平に置かれている場合に行うことが最も好ましい。更に、図2に示すように、雌継手3のスリット4の上方を幅広として、このV字状の部分を雄継手の挿入用ガイド4aとすることが好ましい。図2では、スリット4を明示するために樹脂テープ5がスリットを封鎖してない分離した状態の図としているが、図3に示すようにスリット4は樹脂テープ5で封鎖されているのである。
また、図1に示すように、遮水パネル1の下端部には、逆U字状のフック6が多数付けられ、先端部が閉じた状態になっている。なお、このフック6を遮水パネル1へ取り付けるために、補強板7が遮水パネル1の下端部に溶接され、この補強板7に前記したフック6が取り付けられる。このフック6は後述する打設用フレーム11の下端の遮水パネル支え手段に引っ掛けるためのものである。
図1に示すように、遮水パネル1の左右上端部には、水平な穴を有する金具8が突設されている。この金物8も遮水パネル1に溶接された補強板9の上に取り付けられている。
【0029】
この遮水パネル1をソイルセメント壁中へ沈設する際に使用される打設用フレーム11の例を図3に示す。この図3に示した打設用フレーム11は、幅が1.9mであり、遮水パネル1の継手部2、3を除く幅の2.06mよりも幅が狭い。しかし、長さは9mであり、長さ8mの遮水パネル1を装着した状態で、遮水パネル1が存在していない部分の長さが上方に1m存在する。なお、この例では打設用フレーム11の肉厚は、28mmである。
打設用フレーム11の上端には、ボルト14を挿通可能な孔を有する金具13が存在する。この金具13は、遮水パネル1の上方を保持するための金具であり、遮水パネル1の上方の金具8を、図3に示すように、ターンバックル15を介して遮水パネル1の上方を保持するのである。即ち、図4に要部を示すように、ターンバックル15の上端の孔部と打設用パネル11の金具13の孔にボルト14を挿通しナットを締めることにより固定し、ターンバックル15の下端側部分であるコの字状に分岐した部分に開けられた穴と遮水パネル1の上方の金具8とにボルト14を挿通し、ナットを締めることにより固定するのである。
上記したように、遮水パネル1は、その下端のフック6が打設用フレーム11のピン6に引っかかっているので、ターンバックル15を締め付けることにより、遮水パネル1が上方に引っ張られて、図5に示したように遮水パネル1が打設用パネル11に添った状態で装着することが可能になる。
【0030】
また、打設用フレーム11の遮水パネル1を装着しない裏面には、図6に示すように、補強リブ16が設けられ、この補強リブ16の最上部には、打設用フレーム11を吊り下げるための吊りフック17が取り付けられている。更に補強リブ16に沿って上下に貫通する四角い筒状の通路18が設けられ、この中にグラウトを該通路18の下端より吐出できるように、該通路18の中にグラウトホース19が挿入されている。
【0031】
なお、図3に示した打設用フレーム11の上方2箇所と下方2箇所に示した吊りフック20は、打設用フレームに設けたネジ穴21に着脱自在にネジ止めされるものであり、図3のように遮水パネル1を装着する場合は、遮水パネル1を装着する面に取り付けられた吊りフック20は外されている。
遮水パネル1を装着する前や、遮水パネル1の沈設が終了した後などにおいて、打設用フレーム11を保管場所に移動させるときや、保管場所から移動させる際には、打設用フレーム11に吊りフック20を取り付けて打設用フレーム11を水平な状態で吊り下げて移動させる。
この打設用フレーム11は、ソイルセメント壁中に遮水パネル1と共に沈設され、後で遮水パネル1をソイルセメント壁中に残置させて地上に回収されるものであるから、打設用フレーム11には、遮水パネル1を保持しない状態で剥離材(もしくは剥離剤)を事前に塗布しておくことが望ましい。
【0032】
次ぎに、本発明におけるソイルセメントの地中連続壁を構築するための装置の一例を、図7に示す。図7(a)は、ソイルセメントを構築している状態の装置を示し、図7(b)に装置の要部拡大図を示す。
このソイルセメントの地中連続壁を構築するための装置22は、掘削刃23を有する無端チェーン24が駆動ローラ25とアイドルローラ26により、カッターポスト27の周囲を回転できるようにされている構造を要部とする装置であり、このカッターポスト27はマスト28に沿って上下移動可能とされていると共に、マスト28の横移動と共に、カッターポスト27は横移動できる構造になっている。このマスト28は油圧シリンダー29により、ベースマシンのフレーム30に対し横移動可能となっていると共に、ベースマシンのクローラ31によっても横移動することが可能になっている。また、この装置22には図5(b)に示すように、下端部にセメント系固化材液の吐出口32を有するものであり、セメント系固化材液を吐出しながら、無端チェーン24を回転しながらカッターポスト27を横行させることにより、地盤を掘削しながら、掘削土とセメント系固化材液を撹拌混合してソイルセメントとするものである。このようにしてソイルセメント地中連続壁を構築できる。また、掘削刃23により掘削できる幅を、例えば550mmとすると、幅550mmで均一な幅のソイルセメント地中連続壁を構築でき、ソイルセメント地中連続壁の深さは、そのカッターポスト27の長さを構築する深さに対応できるようにすることにより、所望深さのソイルセメント地中連続壁が構築できる。
この例では、地盤の不透水層に至る深さ20mまで、幅550mmのソイルセメント遮水地中壁を構築した。
なお、前述した遮水パネルを上端の8mの深さまで沈設する予定である。上端の8mにのみに遮水パネルを存在させるのは、地震時にその上下で大きな変形が起こり得る地盤の境界面は上端の8mよりも浅い部分にしか存在せず、8mより深い部分には係る境界層が存在しない地盤であったためである。このように、この例で施工した地盤は、8mを超える部分に遮水パネルが存在しなくとも、地震時にクラックなどが発生する恐れがない地盤であり、ソイルセメントのみで遮水性が確保できる。
【0033】
このようにソイルセメントの地中連続壁を構築した後、ソイルセメントが未硬化で流動性を有する時点で、前述したように遮水パネル1を打設用フレーム11に装着してソイルセメント中へ挿入するのである。
この挿入時に遮水パネル1がソイルセメントの幅の中心部に位置させるために、図8に一例を示すような挿入定規部材33を使用することが好ましい。
図8に示したように、H形鋼からなる定規受け材34をソイルセメント壁に沿って両側に設置し、挿入定規部材33が定規受け材34に沿って移動可能で、かつ任意位置で固定可能であって、ソイルセメント壁方向に張り出した部材35の先端にローラ36を有する構造となっている。このような構造を持つ一対の挿入定規部材33におけるローラ36間の幅は、打設用フレーム11と共に遮水フレーム1が通過できるようにされていると共に、遮水パネル1がソイルセメント壁の幅の中心部に位置するように調整されている。図8(a)はセットした状態を示し、(b)は遮水パネルを打設用フレームと共にソイルセメント壁中に挿入している施工状態を示している。
【0034】
このような挿入用定規部材33を使用し、遮水パネル1を装着した打設用フレーム11は、その最上端の吊りフック17により吊り下げた状態でソイルセメント中にその自重により沈設される。このように本発明では自沈が可能である。また、単独の沈設では、沈設作業時の曲げ剪断などにより変形しやすい薄肉幅広の遮水パネル1でも、打設用フレーム11を使用することにより変形させずに沈設できる。通常のソイルセメントでは、その部分のソイルセメント壁が構築した後、通常、2〜3時間程度まで自沈することが可能である。
この例では、沈設が完了した状態で、図9に示すように、グラウトミキサー37で混練され、グラウトポンプ38により圧送されるグラウト材がグラウトホース19を経て遮水パネル1の雌継手3内に充填される。
なお、図9に示すように遮水パネル1がソイルセメント地中壁内に入ってしまっても、打設用フレーム11の上部は地上に突出している。しかしながらソイルセメント地中壁のこちら側、即ち、打設用フレーム11が存在していないこちら側の地面に作業者が立つことができるので、作業者はグラウトポンプからのグラウトホースと打設用フレームのグラウトホースを地表面で連結することができる。
【0035】
使用するグラウト材としては、その密度がソイルセメント壁のソイルセメントの密度と同じかそれ以上であるもの等、ソイルセメント壁のソイルセメントが雌継手3内に混入することが防止できものであることが好ましく、例えば、セメント量に対し3〜5重量比のベントナイト等の粘土系材料と少量の砂とセメントと(更には、フライアッシュや流動性とさせるための混和剤等を加えて)を共に水と混練して、ポンプ注入時に砂等が分離しないようにしたものが使用される。更に硬化遅延剤を混練してグラウトの硬化を遅延させ、次の遮水パネル1の挿入可能時間を長くしたものでもよい。
また、上記のグラウト材の代わりに、土とベントナイトを水と共に混練したベントナイト混合土を充填材として使用してもよい。この場合、ベントナイト混合土は固化しないので、設置した遮水パネル1が地震時にその継手部で少し変形することを許容すると共に、継手部で変形しても充填材が破損されることがなく遮水性能を保持することができる。
【0036】
このように雌継手3内に充填材を充填させた後に、次ぎに連結すべき遮水パネル1を打設用フレーム11と共にソイルセメント中に沈設する。
この場合、図10に示すように、遮水パネル1の充填材が充填された遮水パネル1の雌継手3に、次の遮水パネル1におけるT字状の雄継手2が入るようにして沈設される。図10においては中央の遮水パネル1が次に挿入された遮水パネルである。
図11(a)(b)(c)は施工工程における雌継手3を示す拡大平面説明図である。
図11(a)においては、挿入済みの遮水パネル1の充填材が充填された遮水パネル1の雌継手3と、次ぎに挿入される遮水パネル1の雄継手2を破線で示している。
次の遮水パネル1における雄継手の挿入により、雌継手3のスリット4を封鎖していた封鎖材(この例では樹脂テープ5)は破断されることになるが、図11(b)に示すように雌継手3内に充填された充填材は、ソイルセメント壁のソイルセメントの密度と同じかそれ以上にすることにより、ソイルセメント壁のソイルセメントが雌継手3内に混入する(即ち、充填材とソイルセメントの液圧差により雌継手3内に混入する)ことが防止でき、ソイルセメントが硬化した状態での継手部2、3の状態を図11(c)に示したように、継手3内に最初に充填した充填材を残存させることができる。
このようにして構築したソイルセメントの地中連続壁中に次々に連結すべき遮水パネル1を打設用フレーム11と共にソイルセメント中に沈設する工程と雌継手3内へのグラウト材の注入を繰り返す。
【0037】
その後にソイルセメントの凝結が進み、打設用フレーム11を引き上げても、ソイルセメント中に残置される遮水パネル1が厚さ方向に移動しなくなるようになる(通常はソイルセメントの築造後3時間を超え4時間程度でこの状態になる)と、図12に示すように、打設用フレーム11を、そのグラウト注入路18からグラウトを注入しながら順次地上に引き上げる。即ち、グラウトミキサー37で混練され、グラウトポンプ38により圧送されるグラウト材が、打設用フレーム11の通路18の中に存在するグラウトホース19を経て、打設用フレーム11が引き上げられた容積分のグラウト材が、打設用フレーム11の下方先端部から吐出さる。
この例の場合、グラウト材として調達しやすいセメントミルクが使用される。このセメントミルクは固化後の強度が固化後のソイルセメントの強度と同等であるかそれ以上になるものであることが好ましい。
このようにして全ての打設用フレーム11を引き上げることにより、図13に示すように、継手部に充填材が存在する状態で、互いに連接された幅が広くて薄肉の遮水パネル1を幅方向中央部に存在させたソイルセメント地中連続壁を構築することができる。
【0038】
なお、昼休みなど施工中断時間が短い場合は、その直前に沈設した打設用フレーム11を引き上げることなく、この打設用フレーム11に装着された遮水パネル1の雌継手3内に充填材を入れた状態でソイルセメント中に残存させて、再開時に次の遮水パネル1を打設用フレーム11と共に沈設した後に、中断前に沈設した打設用フレーム11を先端からグラウト材を吐出しつつ引き上げることも可能である。
なお図14にはクレーンにて打設用フレーム11を引き上げる状態を示している。図14には明視されていないが、この場合でも図12に示したように、打設用フレーム11の下端からグラウト材を吐出しつつ引き上げるのである。
更に、次の工程が翌日になるなどの理由で、中断前に沈設した打設用フレーム11を工事再開後に引き上げることが困難になる場合は、中断前に全ての打設用フレーム11を全て引き上げる。勿論、この際、打設用フレーム11を先端からグラウト材を吐出しつつ引き上げるのである。
【0039】
このように、次の工程が中断する場合は、図14に示すように、ソイルセメントの当日分の地中連続壁を構築した後、図7(a)(b)に示した装置22からセメント系固化材液の代わりに水を加えたベントナイトの泥状物を吐出しながら無端チェーン24を循環させて横行させることにより、退避掘削を行う。この固化することがないベントナイトと掘削土が混合された退避掘削内に装置22を位置させておくことにより、翌日のソイルセメント地中連続壁の施工が可能になる。なお、この退避掘削を行う直前に沈設した打設用フレーム11は遮水パネル1と共にソイルセメント中に残存させ、退避掘削が進んだ段階で最後の打設用フレーム11を引き上げることが好ましい。
このように全ての打設用フレーム11を引き上げても、翌日以降に施工を再開するまでに、ソイルセメントの固化が進み、遮水パネル1が翌日以降の施工再開時に、変形を受けなくなる。
そこで装置22を、セメント系固化材液を吐出させながら無端チェーン24を循環させながら前に構築済みのソイルセメント地中連続壁方向に横行させることにより、前のソイルセメント地中連続壁に連続したソイルセメントとし、その後、逆方向に装置22を、セメント系固化材液を吐出させながら無端チェーン24を循環させながら横行させることにより、前に構築したソイルセメント地中連続壁に連続するソイルセメント地中壁を構築し、前述した工程により、打設用フレーム11を使用して、遮水パネル1を沈設する。
【0040】
以上に示したように、本発明方法によって、、即ち、ソイルセメントの地中連続壁を構築後、ソイルセメントが未硬化で流動性を有する間に、雌雄の継手部を有する幅が広くて薄肉の遮水パネルを打設用フレームと共にソイルセメント中へ挿入し、地中連続壁中で前記遮水パネルの両側にソイルセメント壁が存在する遮水地中壁を構築する方法であって、打設用フレームは、遮水パネルの継手部を除く部分よりも幅狭であって、肉厚の鋼製のものであり、その下方に遮水パネルを支える手段を備え、その上方に遮水パネルを保持開放自在な手段を備えると共に、該打設用フレームの遮水パネルを支える面の反対側にはグラウト注入路が装備されたものであり、前記遮水パネルが広幅薄肉鋼製パネルであり、片方に雌継手、他の片方に雄継手を有し、雌継手は最下端が封鎖されたものであり、かつ雌継手と雄継手とは密に係合せずに互いに係合し得る構造のものであり、上記遮水パネルの雌継手部における側面開口部を、ソイルセメントに挿入される前に、雄継手の上方からの挿入により破断される強度の材料で封鎖し、前記遮水パネルを打設用フレームに装着した状態でソイルセメント中に沈設させ、雌継手内に充填材を充填し、この雌継手側に雄継手を有する遮水パネルを打設用フレームに装着した状態でソイルセメント中に沈設させ、この後から挿入した雌継手内に充填材を充填するという工程を繰り返し、その後に打設用フレームを、そのグラウト注入路からグラウトを注入しながら地上に引き上げることにより、遮水パネルを有する遮水地中壁を構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】この発明に使用する遮水パネルの一例を示す斜視図である。
【図2】図1に示した遮水パネルの要部拡大斜視図である。
【図3】この発明に使用する遮水パネルと打設用フレームを示す斜視図である。
【図4】遮水パネルと打設用フレームの上部固定状態を示す要部拡大斜視図である。
【図5】遮水パネルを打設用フレームに取り付けた状態を遮水パネル側から見た正面図である。
【図6】遮水パネルを打設用フレームに取り付けた状態を、打設用フレーム側から見た斜視図である。
【図7】ソイルセメント連続壁を築造する装置の一例を示す正面図(a)および要部拡大図(b)である。
【図8】遮水パネルをソイルセメント連続壁(地中壁)の幅方向中心部に位置させるための挿入定規部材の一例を示す平面図(a)および施工中の平面図(b)である。
【図9】ソイルセメント連続壁中に沈設された遮水パネルの雌継手内に充填材を充填する工程を示す正面説明図である。
【図10】遮水パネルが打設用フレームと共にソイルセメント連続壁中に挿入した状態を示す平面図である。
【図11】雌継手部を施工工程別(a)(b)(c)に示す拡大平面説明図である。
【図12】ソイルセメント連続壁中から打設用フレームを引き上げる工程を示す正面説明図である。
【図13】完成された遮水パネル入りの連続地中壁の平面図である。
【図14】退避掘削部内に連続地中壁を構築する装置を置いた状態での打設用フレームを引き上げる工程を示す正面説明図である。
【符号の説明】
【0042】
1 遮水パネル
2 雄継手
3 雌継手
3a 雌継手下端の封鎖部
4 雌継手の側面開口部(スリット)
4a 挿入用ガイド
5 樹脂テープ
6 フック
7、9 補強板
8 金具
11 打設用フレーム
12 ピン
13 金具
15 ターンバックル
16 補強リブ
17 吊りフック
18 通路(グラウト注入路)
19 グラウトホース
22 ソイルセメントの地中連続壁を構築する装置
23 掘削刃
24 無端チェーン
27 カッターポスト
32 吐出口
33 挿入定規部材
36 ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソイルセメントの地中連続壁を構築後、ソイルセメントが未硬化で流動性を有する間に、雌雄の継手を有する幅が広くて薄肉の遮水パネルを打設用フレームと共にソイルセメント中へ挿入し、地中連続壁中で前記遮水パネルの両面側にソイルセメント壁が存在する遮水地中壁を構築する方法であって、
打設用フレームは、遮水パネルの継手部を除く部分よりも幅狭であって、肉厚の鋼製のものであり、その下方に遮水パネルを支える手段を備え、その上方に遮水パネルを保持開放自在な手段を備えると共に、該打設用フレームの遮水パネルを支える面の反対側にはグラウト注入路が装備されたものであり、
前記遮水パネルが広幅薄肉鋼製パネルであり、片方に雌継手、他方に雄継手を有し、雌継手は最下端が封鎖されたものであり、かつ雌継手と雄継手とは密に係合せずに互いに係合し得る構造のものであり、
上記遮水パネルの雌継手の側面に設けられた側面開口部を、ソイルセメントに挿入される前に、雄継手の上方からの挿入により破断される強度の材料で封鎖し、
前記遮水パネルを打設用フレームに装着した状態でソイルセメント中に沈設させつつ、または沈設した後に、雌継手内に充填材を充填し、この雌継手に係合する雄継手を有する次の遮水パネルを打設用フレームに装着した状態でソイルセメント中に沈設させつつ、または沈設した後に、次の遮水パネルの雌継手内に充填材を充填するという工程を繰り返し、
その後に打設用フレームを、そのグラウト注入路からグラウトを注入しながら地上に引き上げることを特徴とする遮水地中壁の構築方法。
【請求項2】
前記打設用フレームは、遮水パネルを支える面の反対面にリブを有し、このリブの上端にフックが設けられていると共に、このリブに沿ってグラウト注入路が装備されていることを特徴とする請求項1記載の遮水地中壁の構築方法。
【請求項3】
前記遮水パネルは、雌継手が円筒形で側面軸方向にスリットが設けられた管状継手であり、雄継手がT字型に形成されたT字型継手であることを特徴とする請求項1または2記載の遮水地中壁の構築方法。
【請求項4】
地中連続壁の構築に使用するソイルセメントの液比重を雌継手内への充填材の液比重以上にしたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の遮水地中壁の構築方法。
【請求項5】
前記ソイルセメントの地中連続壁は、掘削刃を有する無端チェーンをカッターポストの周囲で循環させながら、カッターポストを地中に挿入したまま横行させると同時に、カッターポストの下端部、もしくは地表面付近からセメント系固化材を吐出する装置を使用して構築することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の遮水地中壁の構築方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−9242(P2006−9242A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−183176(P2004−183176)
【出願日】平成16年6月22日(2004.6.22)
【出願人】(000133881)株式会社テノックス (62)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】