説明

遮水材の継手部の施工方法及び継手構造

【課題】遮水パネルの打設時に、遮水パネルの継手部内への土砂の侵入を防止して、止水材が所定の止水性能を発揮することを可能にし、かつ、継手部の止水性能を容易に、かつ迅速に確認することを可能とする継手部の施工方法及び継手構造を提案する。
【解決手段】まず、雌継手部102bの底部を塞ぐ蓋112を取り付けるとともに、雌継手部102bのスリットSを覆うように鉄板105を溶接して取り付けた第1の遮水パネル102を地盤内に打設する。次に、第2の遮水パネル102が鉄板105を切断しつつ、スリットSを通過するように第2の遮水パネルの雄継手部102cを雌継手部102b内に挿入して、雌継手部102bと雄継手部102cとを係合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮水材の連結時における遮水性を有する継手部の施工方法及び継手構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
廃棄物処分場における汚染水の漏洩防止や港湾施設建設時における遮水材として鋼管矢板、遮水パネル等が多く用いられている。特に、廃棄物処分場で遮水性護岸構造等に用いられる場合には、鋼管矢板、遮水パネル等の遮水材の継手部を介して処分場から外部への汚染水の浸出を防止することが必要である。
【0003】
遮水材の継手部内には、モルタル、アスファルト混合物等の止水材が充填されており、この止水材により汚染水が継手部を通過して場外に浸出しないように構成されている。この止水材の止水性能を高めるために、止水材を充填する前に、遮水材の打設時に継手部内に侵入した土砂をウォータージェット、エアーリフト等の除去方法により除去し、洗浄することが一般的である。
【0004】
しかし、継手部は径が小さいために、土砂の除去及び洗浄作業の作業性が悪く、時間を要するという問題点があった。また、遮水材の打設深度が深くなるとウォータージェット、エアーリフト等の効率が低下するために、土砂の除去が困難となり、多大な時間を要するという問題点があった。
【0005】
そこで、特許文献1には、打設時の継手部内への土砂の侵入を防止する方法として、図13に示すように、鋼管矢板の雌継手1のスリットS部分に予めポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニール等からなる土砂侵入防止板2を嵌合させるとともに、雌継手1の底部を鋼板等で蓋をして鋼管矢板を打設する方法が提案されている。
【0006】
また、特許文献2には、打設時の継手部内への土砂の侵入を防止する方法として、鋼管矢板の雌継手のスリット部分に予め布、紙、樹脂、金属箔製等の粘着テープを張り付けるとともに、雌継手の真下で鋼管矢板の下方側部に雌継手への土砂の侵入を防止するための土砂侵入防止部材を取り付けて遮水材1を打設する方法が提案されている。
【特許文献1】実開平7−29017
【特許文献2】特開平9−78569
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されているスリットS部分にポリエチレン等からなる土砂侵入防止板2を嵌合させる方法は、鋼管矢板を地盤内に打設すると大きな土圧及び水圧が土砂侵入防止板2に作用するために、土砂侵入防止板2が変形してスリットSと土砂侵入防止板2との間に隙間が生じて土砂が侵入してしまうという問題点があった。さらに、このようにして生じた隙間に石や砂が入り込んで噛み込んでしまい、土砂の侵入を全く防止することができなくなる場合があるという問題点があった。さらに、土砂侵入防止板2をスリットSに嵌合するように加工する作業は、手間と時間がかかり、材料費のコストが高くなるという問題点があった。
【0008】
また、特許文献2に記載されているスリット部分に布、紙、樹脂、金属箔製等の粘着テープを張り付ける方法は、鋼管矢板を地盤内に打設すると大きな土圧及び水圧が粘着テープに作用するために、粘着テープが変形して接着が剥がれてしまうという問題点があった。また、鋼管矢板の打設中に地盤内の礫や細長い石で粘着テープが破断する場合があるという問題点があった。
【0009】
そこで、本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、その目的は、遮水パネルの打設時に、遮水パネルの継手部内への土砂の侵入を防止すると共に、止水材が所定の止水性能を発揮することを可能とし、さらに、止水材が止水効果を発現した後の継手部内に形成される空洞に水、泥水等の液体を貯留して、この液体の液位又は電気伝導度等の性状をモニタリングすることにより継手部の止水性能を容易に、かつ迅速に確認することが可能な遮水性を有する継手部の施工方法及び継手構造を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、本発明の遮水性を有する継手部の施工方法は、スリットを有する管状雌継手部を縦方向に沿って一体的に端部に形成してなる第1の遮水材と、凸状部を有する雄継手部を縦方向に沿って一体的に端部に形成してなる第2の遮水材とを用い、前記雄継手部の前記凸状部を前記管状雌継手部内に挿入して係合する遮水材の継手部の施工方法において、前記管状雌継手部の底部を塞ぐ蓋を取り付けるとともに、前記スリットを覆うように前記管状雌継手部の外周面に鉄板を溶接して取り付けた前記第1の遮水材を地盤内に打設し、前記第2の遮水材の前記凸状部の外面に水膨潤性の止水材を取り付けた後、前記第2の遮水材が前記鉄板を切断しつつ、前記スリットを通過するように前記凸状部を前記管状雌継手部内に挿入して、前記管状雌継手部と前記雄継手部とを係合すると共に前記スリット周辺と前記凸状部の前記外面との間を前記止水材で充填してなることを特徴とする(第1の発明)。
【0011】
本発明による遮水性を有する継手部の施工方法によれば、管状雌継手部のスリットを覆うように鉄板を溶接にて取り付けた遮水材を地盤内に打設するために、打設時に地盤中の礫や細い石等が鉄板に接触したり、打設後に大きな土圧及び水圧が鉄板に作用しても、鉄板は破損したり、管状雌継手部から剥がれたりすることがない。さらに、管状雌継手部の底部を塞ぐ蓋を取り付けて遮水材を打設するので、雌継手部内への土砂の侵入を確実に防止することが可能となる。
【0012】
また、第2の遮水材が鉄板を切断しつつ、第1の遮水材のスリットを通過するように凸状部を管状雌継手部内に挿入するために、切断された鉄板と第2の遮水材との間に隙間が形成されるが、この隙間は小さいために土砂の通過量は少なく、また、この隙間を通過することができる土砂の粒径は小さいので、エアーリフト等による洗浄により管状雌継手部内から容易に除去することができる。これにより、管状雌継手部内の土砂を容易に除去でき、止水材をスリット周辺と凸状部の外面とに完全に密着して充填することができるので、確実に継手部内を止水することが可能となる。
【0013】
第2の発明は、第1の発明において、前記スリットと対向する前記管状雌継手部の内面と前記凸状部との間に空洞を形成し、前記空洞に液体を貯留して液位又は電気伝導度等の性状をモニタリングして前記止水材の止水性を確認することを特徴とする。
【0014】
本発明による遮水性を有する継手部の施工方法によれば、止水材を充填した後の継手部内に形成される空洞に水、泥水等の液体を貯留し、液体の液位又は電気伝導度等の性状をモニタリングすることにより、継手部の止水性能を容易に、かつ迅速に確認することが可能となる。
【0015】
第3の発明の遮水材の継手構造は、スリットを有する管状雌継手部を縦方向に沿って一体的に端部に形成してなる第1の遮水材と、凸状部を有する雄継手部を縦方向に沿って一体的に端部に形成してなる第2の遮水材とを用い、前記雄継手部の前記凸状部を前記管状雌継手部内に挿入して係合してなる遮水材の継手構造であって、前記管状雌継手部の底部を塞ぐ蓋を取り付けるとともに、前記スリットを覆うように鉄板を溶接して取り付けた前記第1の遮水材を地盤内に打設する工程と、前記第2の遮水材の前記凸状部の外面に水膨潤性の止水材を取り付けた後、前記第2の遮水材が前記鉄板を切断しつつ、前記スリットを通過するように前記凸状部を前記管状雌継手部内に挿入して、前記管状雌継手部と前記雄継手部とを係合すると共に前記スリット周辺と前記凸状部の前記外面との間を前記止水材で充填する工程とを備え、前記スリットと対向する前記管状雌継手部の内面と前記凸状部との間に水などの液体が貯留されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、管状雌継手部の底部を塞ぐ蓋を取り付けるとともに、スリットを覆うように管状雌継手部の外周面に鉄板を溶接して取り付けた第1の遮水材を地盤内に打設し、雄継手部の凸状部の外面に水膨潤性の止水材を取り付けた第2の遮水材で第1の遮水材の鉄板を切断しつつ、スリットを通過するように第2の遮水材の凸状部を第1の遮水材の管状雌継手部内に挿入して、管状雌継手部と雄継手部とを係合することにより、遮水材の打設時における継手部内への土砂の侵入を防止することができる。
【0017】
また、遮水材の打設時における継手部内への土砂の侵入がほとんどないために、止水材が所定の止水性能を充分に発揮し、スリットと対向する管状雌継手部の内面と凸状部との間に形成される空洞部内への土砂及び水の浸入を確実に防止することができる。
【0018】
さらに、空洞に水、泥水等の液体を貯留し、この液体の液位又は電気伝導度等の性状をモニタリングすることにより、継手部の止水性能を容易に、かつ迅速に確認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の第一実施形態に係る遮水材の設置状況を示す側面図である。図1に示すように、廃棄物処分場100とその周囲地盤101との間の遮水壁を構成する遮水材として、例えば、遮水パネル102の列が不透水性地層103に至る深さまで打設されている。不透水性地層103の上には、透水性地層104が存在する。
【0020】
図2は、本実施形態に係る遮水パネルの設置状況を示す平面図である。図2に示すように、板状の遮水材である遮水パネル102は、パネル本体102aと、その一方の側面にパネル本体の縦方向、つまりパネル本体を打設する方向に沿って一体に固定され、スリットSを有する丸形管状の雌継手部102bと、他方の側面にパネル本体の縦方向に沿って一体に固定され、断面C字形状(=凸状部)の雄継手部102cと、スリットSを覆うように雌継手部102bの外周面に取り付けられた弧状の鉄板105と、雌継手部102bの底部を塞ぐように取り付けられた蓋112とを備える。
【0021】
また、第1の遮水パネル102の雌継手部102bと、この雌継手部102b内に挿入されている第2の遮水パネル102の断面C字形状の雄継手部102cとは、スリットS周辺と雄継手部102cとの間に充填されている止水部115を介して係合している。
【0022】
そして、雄継手部102cの止水面102eと、スリットSと対向する雌継手部102bの内周面102fとの間に水などの液体を貯留可能な空洞107が形成され、遮水パネル102の遮水性を有する継手部106が構築される。
【0023】
この遮水性を有する継手部106の施工方法を遮水パネル102の設置手順にしたがって以下に示す。
【0024】
図3は、本実施形態に係る遮水パネルの設置手順を示すフロー図である。また、図4〜図9は、本実施形態に係る遮水パネルの設置手順を示す図である。
【0025】
まず、図3のS10において、図4に示すように、遮水パネル102の雌継手部102bの底部を塞ぐ蓋112を、雌継手部102bのスリットSを覆うように雌継手部102の外周面に弧状の鉄板105を取り付ける。
【0026】
蓋112は、雌継手部102bと同じ径を有する円形の鉄板からなり、雌継手部102bに溶接にて取り付けられる。
【0027】
弧状の鉄板105は、遮水パネル102のパネル本体102aで切断可能な程度の厚さからなり、雌継手部102bに溶接にて取り付けられる。なお、本実施形態においては、例えば、弧状の鉄板105は厚さ0.2mmのものを用い、遮水パネル102は遮水パネル本体102aの厚さが6.0mmのものを用いた。例えば、0.2mm程度の厚さを有する鉄板105は、打設時に地盤中の礫や細い石等が接触したり、打設後に大きな土圧及び水圧が作用しても破損することがない。なお、鉄板105の厚さは、施工現場の地盤状況等に応じて適宜変更する。
【0028】
次に、図3のS11において、図5に示すように、蓋112及び鉄板105を有する第1の遮水パネル102にバイブロハンマー等にて振動を与えるか又はディゼルハンマーや油圧ハンマーにて打撃振動を与えながら(図示せず)所定の地盤108内にこの遮水パネル102を打設する。打設する際は、遮水パネル102の雌継手部102bに蓋112及び鉄板105が取り付けられているために雌継手部102b内に土砂は侵入しない。
【0029】
次に、図3のS12において、図6に示すように、第1の遮水パネル102の雌継手部102bの上方から、第2の遮水パネル102にバイブロハンマー等にて振動を与えるか又はディゼルハンマーや油圧ハンマーにて打撃振動を与えて、第2の遮水パネル102のパネル本体102aの下縁により鉄板105を切断しつつ、スリットSを通過するように雄継手部102cを雌継手部102b内に挿入して、雄継手部102cと雌継手部102bとが係合してなる継手部106を形成する。
【0030】
また、雄継手部102cの外周面には左右両側にそれぞれ止水部115が設けられている。止水部115は、一対の丸鋼110と、水膨潤性を有し、一対の丸鋼110間に配置される止水材111とから構成され、一対の丸鋼110は溶接等により固定され、止水材は接着材等により貼付されている。止水材111は、本実施形態においては、例えば、水膨潤性を有するゴムを用いる。なお、止水材111は、これに限定されるものではなく、ウレタン樹脂等の水膨潤性を有するものであればよい。
【0031】
図3のS13において、パネル本体102aと鉄板105の切断面とにより形成される隙間109から雌継手部102bへ侵入した地下水や粒径の小さい土砂を、継手部106内を洗浄することにより土砂を除去する。
【0032】
具体的には、図7に示すように、ウォータージェット113の注水管114を継手部106内の孔底まで挿入し、管先端から継手部106内に泥水等の加圧水を噴射し、継手部106内に存在する土砂を除去する。継手部106内を洗浄後、暫くすると図8に示すように、雄継手部102cの外周面102gに塗布された止水材111は泥水中にて徐々に膨張し、第1の遮水パネル102の雌継手部102bの内周面102fと第2の遮水パネル102の雄継手部102cの外周面102gとの両面に挟着して雌継手部102bと雄継手部102cとを係合する。
【0033】
膨張した止水材111は、両面102f、102gに挟着することによって継手部106内の漏水経路をすべて遮断し、所定の時間が経過した後に止水性を確保する。
また、止水材111は雌継手部102bの内周面102fと雄継手部102cの外周面102gとの間のみに充填されるために、雄継手部102cの内周面102eと、スリットSと対向する雌継手部102bの内周面102fとの間に、孔底まで貫通する液体が貯留可能な空洞107が形成される。
【0034】
そして、この空洞107内に水、泥水、ベントナイト泥水等の液体を貯留し、この液体の液位又は電気伝導度等の性状をモニタリングすることにより、止水材111の止水性能を確認することが可能である。
【0035】
なお、本実施形態においては、雄継手部102cの左右両側部に水膨潤性を有する止水材111を予め貼付する方法を用いたが、これに限定されるものではなく、例えば、雌継手部102bの内周面102fと雄継手部102cの外周面102gとの間に水膨潤性及び所定の硬化遅延性を有する止水材111を塗布、又は充填する方法でもよい。また、本実施形態に用いた水膨潤性を有する止水材111は、弾性体であるので継手部106の変形に対する追従性を有しているために、地震等の変形時にも止水性能を維持する。
【0036】
次に、本発明における遮水パネルの継手部形状の異なる実施形態を示す。以下の説明において、第一実施形態に対応する部分には同一の符号を付して説明を省略し、主に相違点について説明する。
【0037】
図9は、本発明の第二実施形態に係るP−T継手遮水パネルの継手部を示す図である。図9に示すように、遮水パネル202は、パネル本体102aと、雌継手部102bと、他方の側面にパネル本体の縦方向に沿って一体に固定され、断面T字形状(=凸状部)を有する雄継手部202cと、鉄板105と、蓋112とを備える。
【0038】
また、第1の遮水パネル202の雌継手部102bと、この雌継手部102b内に挿入されている第2の遮水パネル202の断面T字形状の雄継手部202cとは止水材111を介して係合している。そして、かかる係合状態に雄継手部202cの外周面202eと、スリットSと対向する雌継手部102bの内周面102fとの間に、孔底まで貫通する液体が貯留可能な空洞207が形成され、遮水パネル202の遮水性を有する継手部206が構築される。
【0039】
この遮水性を有する継手部206の施工方法を遮水パネル202の設置手順にしたがって以下に示す。
【0040】
第一実施形態と同様に、遮水パネル202の雌継手部102bの底部を塞ぐ蓋112を取り付け、スリットSを覆うように雌継手部102bの外周面に弧状の鉄板105を溶接にて取り付けて第1の遮水パネル202を地盤108内に打設する。次に、第2の遮水パネル202のパネル本体102aが第1の遮水パネル202の雌継手部102bの鉄板105を切断しつつ、スリットSを通過するように雄継手部202cを雌継手部102b内に打設して挿入する。この雄継手部202cの外面であるパネル本体側面の両側部には止水材111が予め貼付されている。そして、膨張した止水材111は継手部206内の漏水経路である雌継手部102b内のスリットSの近傍部と雄継手部202cとの間を遮断し、止水性を確保する。
【0041】
また、止水材111は雌継手部102b内のスリットSの近傍部と雄継手部202cとの間のみに充填されるために、雄継手部202cの外周面202eと、スリットSと対向する雌継手部102bの内周面102fとの間に、孔底まで貫通する液体が貯留可能な空洞207が形成される。
そして、この空洞207内に水、泥水等の液体を貯留し、この液体の液位又は電気伝導度等の性状をモニタリングすることにより、止水材111の止水性能を確認することが可能である。
【0042】
図10は、本実施形態に係るP−ストッパ付きT継手遮水パネルの継手部を示す図である。図10に示すように、遮水パネル212は、パネル本体102aと、雌継手部102bと、雄継手部202cと、雌継手部102b内への入り込みを防止するストッパ212gと、雌継手部102bからの抜け出しを防止するストッパ212hと、鉄板105と、蓋112とを備える。
【0043】
また、第1の遮水パネル212の雌継手部102bと、この雌継手部102b内に挿入されている第2の遮水パネル212の断面T字形状の雄継手部202c及びストッパ212hとは止水材111を介して係合している。そして、かかる係合状態に雄継手部202cの外周面202eと雌継手部102bの内周面102fとの間に液体が貯留可能な空洞207が形成される。
【0044】
遮水パネル212の雌継手部102bの底部を塞ぐ蓋112を取り付け、スリットSを覆うように雌継手部102bの外周面に弧状の鉄板105を溶接にて取り付けて第1の遮水パネル212を打設した後、第2の遮水パネル212を打設する際に、地盤の硬さの違いなどの影響によって、第2の遮水パネルが垂直に打ち込まれず、第2の遮水パネル212の先端部が、第1の遮水パネル212から離れる、あるいは近付く方向に移動する場合がある。このとき、雌継手部102b内への入り込みを防止するストッパ212g、及び雌継手部102bからの抜け出しを防止するストッパ212hの働きにより第2の遮水パネル212を所定の位置に打設することが可能となる。
【0045】
図11は、本実施形態に係る角形−T継手遮水パネルの継手部を示す図である。図11に示すように、遮水パネル222は、パネル本体102aと、その一方の側面にパネル本体の縦方向に沿って一体に固定され、スリットSを有する角形管状の雌継手部222bと、雄継手部202cと、スリットSを覆うように雌継手部222bの外周面に取り付けられた帯状の鉄板205と、雌継手部222bの外周とほぼ同じ形の角形形状を有し、雌継手部222bの底部を塞ぐように取り付けられた蓋204とを備える。
【0046】
また、第1の遮水パネル222の雌継手部222bと、この雌継手部222b内に挿入されている第2の遮水パネル222の断面T字形状の雄継手部202cとは止水材111を介して係合している。そして、かかる係合状態に雄継手部202cの外周面202eと雌継手部222bの内周面222fとの間に空洞207が形成される。
【0047】
図12は、本実施形態に係る角形−ストッパ付きT継手遮水パネルの継手部を示す図である。図12に示すように、遮水パネル232は、パネル本体102aと、雌継手部222bと、雄継手部202cと、ストッパ212gと、ストッパ212hと、鉄板205と、蓋204とを備える。
【0048】
また、第1の遮水パネル232の雌継手部222bと、この雌継手部222b内に挿入されている第2の遮水パネル232の断面T字形状の雄継手部202c及びストッパ212hとは止水材111を介して係合している。そして、かかる係合状態に雄継手部202cの外周面202eと雌継手部222bの内周面222fとの間に液体が貯留可能な空洞207が形成される。
【0049】
以上説明した各実施形態における継手部の施工方法によれば、雌継手部102b、222bのスリットSを覆うように鉄板105、205を取り付けた遮水パネル102、202、212、222、232を地盤内に打設するために、打設時に地盤中の礫や細い石等が鉄板105、205に接触したり、打設後に大きな土圧及び水圧が鉄板105、205に作用しても、鉄板105、205は破損したり、剥がれたりすることがない。さらに、雌継手部102b、222bの底部を塞ぐ蓋112、204を取り付けて遮水パネル102、202、212、222、232を打設するので、雌継手部102b、222b内への土砂の侵入を確実に防止することが可能となる。
【0050】
また、第2の遮水パネル102、202、212、222、232が鉄板105、205を切断しつつ、第1の遮水パネル102、202、212、222、232のスリットSを通過するように雄継手部102c、202cの凸状部を雌継手部102b、222b内に挿入するために、切断された鉄板105、205と第2の遮水パネル102、202、212、222、232との間に隙間109が形成されるが、この隙間109は小さいので、雌継手部102b、222b内に侵入する土砂の量は少なく、また、その粒径は小さい。このため、エアーリフト等による洗浄により継手部106、206内から容易に除去することができる。これにより、継手部106、206内の土砂が完全に無くなり、止水材111をスリットS周辺と凸状部の外面102g又は凸状部202cとに完全に密着して充填することができるので、確実に継手部106、206内を止水することが可能となる。
【0051】
また、止水材111を充填した後の継手部106、206内に形成される空洞107、207に水、泥水等の液体を貯留し、この液体の液位又は電気伝導度等の性状をモニタリングすることにより、継手部106、206の止水性能を容易に、かつ迅速に確認することができる。
【0052】
なお、上述した各実施形態において、板状の遮水材である遮水パネル102、202、212、222、232の接続方法について示したが、これに限定されるものではなく、例えば、管状の遮水材である鋼管矢板でもよい。
【0053】
また、上述した各実施形態において、遮水パネル102、202、212、222、232を地盤内に打設する方法について示したが、これに限定されるものではなく、例えば、ソイルセメント内に打設することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の第一実施形態に係る遮水材の設置状況を示す側面図である。
【図2】本実施形態に係る遮水パネルの設置状況を示す平面図である。
【図3】本実施形態に係る遮水パネルの設置手順を示すフロー図である。
【図4】本実施形態に係る遮水パネルの雌継手部に鉄板を取り付けた状態を示す図である。
【図5】本実施形態に係る第1の遮水パネルを地盤内に打設した状態を示す図である。
【図6】本実施形態に係る第2の遮水パネルを地盤内に打設した状態を示す図である。
【図7】本実施形態に係る継手部内を洗浄する状態を示す図である。
【図8】本実施形態に係る継手部内で止水材が膨張した状態を示す図である。
【図9】本発明の第二実施形態に係るP−T継手遮水パネルの継手部を示す図である。
【図10】本実施形態に係るP−ストッパ付きT継手遮水パネルの継手部を示す図である。
【図11】本実施形態に係る角形−T継手遮水パネルの継手部を示す図である。
【図12】本実施形態に係る角形−ストッパ付きT継手遮水パネルの継手部を示す図である。
【図13】従来の実施例を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
100 廃棄物処分場
101 周囲地盤 102 遮水パネル
102a パネル本体 102b 雌継手部
102c 雄継手部 102e 内周面
102f 内周面 102g 外周面
103 不透水性地層 104 透水性地層
105 鉄板 106 継手部
107 空洞 108 地盤
109 隙間 110 丸鋼
111 止水材 112 蓋
113 ウォータージェット 114 注水管
115 止水部 202 遮水パネル
202c 雄継手部 202e 外周面
204 蓋 205 鉄板
206 継手部 207 空洞
212 遮水パネル 212g ストッパ
222 遮水パネル 222b 雌継手部
222f 内周面 232 遮水パネル
S スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スリットを有する管状雌継手部を縦方向に沿って一体的に端部に形成してなる第1の遮水材と、凸状部を有する雄継手部を縦方向に沿って一体的に端部に形成してなる第2の遮水材とを用い、前記雄継手部の前記凸状部を前記管状雌継手部内に挿入して係合する遮水材の継手部の施工方法において、
前記管状雌継手部の底部を塞ぐ蓋を取り付けるとともに、前記スリットを覆うように前記管状雌継手部の外周面に鉄板を溶接して取り付けた前記第1の遮水材を地盤内に打設し、
前記第2の遮水材の前記凸状部の外面に水膨潤性の止水材を取り付けた後、前記第2の遮水材が前記鉄板を切断しつつ、前記スリットを通過するように前記凸状部を前記管状雌継手部内に挿入して、前記管状雌継手部と前記雄継手部とを係合すると共に前記スリット周辺と前記凸状部の前記外面との間を前記止水材で充填してなることを特徴とする遮水性を有する継手部の施工方法。
【請求項2】
前記スリットと対向する前記管状雌継手部の内面と前記凸状部との間に空洞を形成し、
前記空洞に液体を貯留して液位又は電気伝導度等の性状をモニタリングして前記止水材の止水性を確認することを特徴とする請求項1記載の継手部の施工方法。
【請求項3】
スリットを有する管状雌継手部を縦方向に沿って一体的に端部に形成してなる第1の遮水材と、凸状部を有する雄継手部を縦方向に沿って一体的に端部に形成してなる第2の遮水材とを用い、前記雄継手部の前記凸状部を前記管状雌継手部内に挿入して係合してなる遮水材の継手構造であって、
前記管状雌継手部の底部を塞ぐ蓋を取り付けるとともに、前記スリットを覆うように鉄板を溶接して取り付けた前記第1の遮水材を地盤内に打設する工程と、
前記第2の遮水材の前記凸状部の外面に水膨潤性の止水材を取り付けた後、前記第2の遮水材が前記鉄板を切断しつつ、前記スリットを通過するように前記凸状部を前記管状雌継手部内に挿入して、前記管状雌継手部と前記雄継手部とを係合すると共に前記スリット周辺と前記凸状部の前記外面との間を前記止水材で充填する工程とを備え、
前記スリットと対向する前記管状雌継手部の内面と前記凸状部との間に水などの液体が貯留されていることを特徴とする遮水材の継手構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−14004(P2008−14004A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−185888(P2006−185888)
【出願日】平成18年7月5日(2006.7.5)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【出願人】(000133881)株式会社テノックス (62)
【Fターム(参考)】