遮熱シートおよび屋根裏の遮熱構造
【課題】安価であり、遮熱性(断熱性)、取扱性、施工性および結露防止性などに優れた遮熱シートおよび該遮熱シートを用いた屋根裏の遮熱構造を提供すること。
【解決手段】上板紙と下板紙との間に波板紙を挟持してなる段ボール紙の少なくとも一方の面に、アルミニウム箔またはアルミニウム蒸着樹脂フィルムからなる反射層が貼合されている長方形の遮熱シートにおいて、該シートの少なくとも1隅部に、該隅部を内側に向けて角柱状に折り曲げ可能な、シート長手方向に平行な少なくとも2本の折り曲げ線と、シートの長手方向に直交する1本の切り込み線がそれぞれ設けられていることを特徴とする上記の遮熱シート。
【解決手段】上板紙と下板紙との間に波板紙を挟持してなる段ボール紙の少なくとも一方の面に、アルミニウム箔またはアルミニウム蒸着樹脂フィルムからなる反射層が貼合されている長方形の遮熱シートにおいて、該シートの少なくとも1隅部に、該隅部を内側に向けて角柱状に折り曲げ可能な、シート長手方向に平行な少なくとも2本の折り曲げ線と、シートの長手方向に直交する1本の切り込み線がそれぞれ設けられていることを特徴とする上記の遮熱シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮熱シートおよび屋根裏の遮熱構造に関し、さらに詳しくは、安価であり、遮熱性、取扱性および施工性などに優れた遮熱シートおよび該遮熱シートを用いた屋根裏の遮熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、木造住宅における屋根直下の居室は、特に夏期において、屋根裏の熱で天井板が熱くなり、この天井板からの輻射熱で居室の温度が上昇し、冷房効果を減ずるという問題がある。
【0003】
上記の如き夏期における居室の温度上昇を抑える目的で、野地板の裏面に発泡ポリスチレンなどの断熱材を貼り合わせる方法が提案されている。この方法では、日射により高温となった屋根材から上記断熱材へ直接伝熱して、該断熱材が蓄熱し、蓄熱した断熱材からの熱の放射によって天井板が加熱され、断熱効果が不十分であった。このような問題を解決する目的で、野地板と断熱材との間に通気層を確保するために、段ボール紙を通気層確保部材として使用することが特許文献1に記載されている。この通気層確保部材としての段ボール紙は、野地板を支えている垂木間に両端を折り曲げた状態で挟持させて野地板と断熱材との間に空間を設けて、該空間を通気性にして高温の空気を排出させるものである。この通気層確保部材は、安価であり取扱性に優れ、高温になった屋根裏の空気を排出することから、ある程度有効であるものの、夏期の強烈な輻射熱の遮熱性という点では不十分である。
【0004】
また、遮熱シートとしてプラスチック製エアマットの両面に金属箔を貼り付けてなる断熱材が提案されている(特許文献2参照)。また、屋根裏温度の上昇を抑制する断熱材として、板状の無機繊維系断熱材の両面を透湿性の表皮材で被覆してなる屋根用断熱材が提案されている(特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2001−227080公報
【特許文献2】特開平10−280577号公報
【特許文献3】特開平8−027919号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の通気層確保部材は、冬期の結露防止には有効であるものの、遮熱効果が不足し、夏期の遮熱効果という点では不十分である。また、上記特許文献2に記載の断熱材は、夏期の断熱には有効であるものの、冬期には断熱材と天井板との間の空間の温度が、断熱材と野地板との間の空間の温度よりも高くなり、その結果として断熱材(屋根裏側)の表面に結露が発生し、屋根裏側の各部材に黴などが発生し、住宅の寿命を短くするなどの問題がある。また、上記断熱材は、優れた断熱効果を有するものの、エアマットの両面に金属箔を貼合するため、コスト高であるという問題がある。また、上記特許文献3に記載の断熱材は断熱性や耐結露性には優れているが、形状が硬質の板状であることから施工性に劣るという問題がある。
【0006】
従って本発明の目的は、安価であり、遮熱性(断熱性)、取扱性、施工性および結露防止性などに優れた遮熱シートおよび該遮熱シートを用いた屋根裏の遮熱構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、上板紙と下板紙との間に波板紙を挟持してなる段ボール紙の少なくとも一方の面に、アルミニウム箔またはアルミニウム蒸着樹脂フィルムからなる反射層が貼合されている長方形の遮熱シートにおいて、該シートの少なくとも1隅部に、該隅部を内側に向けて角柱状に折り曲げ可能な、シート長手方向に平行な少なくとも2本の折り曲げ線と、シートの長手方向に直交する1本の切り込み線がそれぞれ設けられていることを特徴とする上記の遮熱シートを提供する。
【0008】
上記本発明の遮熱シートにおいては、前記反射層が、アルミニウム蒸着樹脂フィルムであること;前記遮熱シートの短辺(幅)が、100〜1,000mmであり、長辺(長さ)が、200〜3,000mmであり、上記波板紙の山谷方向が該遮熱シートの長辺方向に平行であること;前記反射層が、段ボール紙の両面に貼合されていること;遮熱シート全面に、遮熱シートの端部に対して角度を有する切り取り補助線が設けられていること;および上記折り曲げ線、切り込み線および切り取り補助線が連続した線状孔から形成されたミシン目であることが好ましい。
【0009】
また、本発明は、野地板と該野地板を支える複数本の垂木とからなる屋根裏構造であって、上記複数本の隣接する垂木の間に、前記本発明の遮熱シートが、少なくとも一方の反射層を野地板に対向するように野地板との間に空間を形成して配置されていることを特徴とする屋根裏の遮熱構造を提供する。
【0010】
上記本発明の遮熱構造においては、前記遮熱シートの短辺(幅)が、隣接する垂木の内側側面同士の間隔よりも大であって、該遮熱シートの両端部を、遮熱シートの水平面に対して略直角に折り曲げ、折り曲げ片を隣接する垂木の側面に当接させ、折り曲げられた遮熱シートの折り曲げ反発力により遮熱シートが隣接する垂木の側面間に保持されていること;前記遮熱シートの折り曲げ片を隣接する垂木の側面に当接させ、折り曲げ片を介して遮熱シートが固定具により隣接する垂木の側面間に固定されていること:野地板と垂木によって形成される空間に、垂木を固定する部材が存在し、該部材に対応する遮熱シートの隅部が、折り曲げ線に沿って内側に折り曲げられていること;およびさらに遮熱シートの室内側に断熱材が配置されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
上記本発明によれば、安価であり、遮熱性、取扱性、施工性および結露防止性などに優れた遮熱シートおよび該遮熱シートを用いた屋根裏の遮熱構造を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に図面に示す好ましい実施の形態に基づいて本発明をさらに詳しく説明する。
本発明の1実施形態の遮熱シートAは、図1に示す一部省略全体斜視図およびその一部の拡大図に示すように、上板紙1と下板紙2との間に波板紙3を挟持してなる段ボール紙の少なくとも一方の面に、アルミニウム箔またはアルミニウム蒸着樹脂フィルムからなる反射層4が貼合されている長方形の遮熱シートにおいて、該シートの少なくとも1隅部に、該隅部を内側に向けて角柱状に折り曲げ可能な、シート長手方向に平行な少なくとも2本の折り曲げ線と、シートの長手方向に直交する1本の切り込み線がそれぞれ設けられていることを特徴としている。
【0013】
上記の段ボール紙は、従来各種包装材料として広く使用されている段ボール紙であり、特に限定されず、従来公知の段ボール紙はいずれも本発明で使用することができる。また、上記の段ボール紙の少なくとも一方の面に貼設する反射層4は、アルミニウム箔またはアルミニウム蒸着樹脂フィルムから構成されている。上記反射層4を段ボール紙の片面のみに設ける場合には、後述の遮熱構造において、反射層4が野地板と対向するように配置する。このようにすることにより、夏期においては野地板5側から放射されてくる熱線を良好に反射遮断して屋根裏の温度上昇を抑えることができ、後述の断熱材を配置する場合にも断熱性を低下させることがない。なお、上記反射層4は段ボール紙の両面に設けてもよい。上記反射層4が室内側または居室の天井側に配置されていることにより、冬期において、外気温度よりも温度の高い室内側から放射されてくる熱線を反射して、室内側の温度低下を抑えることができる。
【0014】
また、反射層4はアルミニウム箔でもよいが、より安価で段ボール紙に対する貼設作業が容易であるアルミニウム蒸着樹脂フィルムが好ましい。これに使用する樹脂フィルムとしては各種のプラスチックフィルムが使用できるが、コストの面からポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどのフィルムが好ましい。このようなアルミニウム蒸着樹脂フィルムは市販のものがいずれも使用でき、アルミニウム蒸着層および樹脂フィルムの厚さは特に限定されない。また、当該アルミニウム蒸着樹脂フィルムは、段ボール紙に対して樹脂フィルムが外側になるように貼設されていることが好ましい。このように貼設することにより、水分によって変質し易いアルミニウム蒸着層が、樹脂フィルムとの貼設に使用する接着剤とにより挟持された状態になり、アルミニウム蒸着層の耐久性が向上する。
【0015】
上記本発明の遮熱シートAの形状は、長方形であり、その短辺(幅)が、100〜1,000mmであり、長辺(長さ)が、200〜3,000mmであることが好ましく、また、波板紙3によって形成されている山谷方向が遮熱シートの長辺方向に平行であることが好ましい。上記の長方形の形状は後述する遮熱構造において、野地板と垂木によって形成される空間の長さ方向とほぼ同一の長さで、隣接する垂木側面同士の内側間隔をXmmとした場合、その短辺の幅はXの1.05倍〜1.5倍、例えば、X×1.05mmからX×1.5mmとすることが好ましい。その理由は後述する。
【0016】
本発明の遮熱シートAは上記構成に加えて、上記遮熱シートAにおいて、該シートの少なくとも1隅部に、該隅部を内側に向けて角柱状に折り曲げ可能な、シート長手方向に平行な少なくとも2本の折り曲げ線と、シートの長手方向に直交する1本の切り込み線がそれぞれ設けられている。さらに図1の遮熱シートAのように、4隅部にそれぞれ折り曲げ線と切り込み線とを設けることが、該遮熱シートの施工時に4隅の部分のいずれかに垂木を固定するための部材が位置されても、遮熱シートを簡便に垂木間に施工することができることから好ましい。また、折り曲げ線が2本である場合には、折り曲げて形成される角柱状は三角柱状になり、3本である場合には四角柱状になり、4本である場合には、図7に示されるような、折り返しのある四角柱状となる。上記折り曲げ線は、折り曲げて形成される角柱状が形状を保持し易いことから、図示のように4本であることが好ましい。また、切り込み線の作用効果は後述する。
【0017】
また、本発明の別の実施形態である遮熱シートAは、図9にその全体図を示すように遮熱シートAの両面または片面の全面に、遮熱シートAの端部に対して角度を有する多数の切り取り補助線15が設けられている。この切り取り補助線15は好ましくは交差するように設け、遮熱シートAの任意の個所で約45度の角度を有し、例えば、取り取り補助線15に沿って、鋏やカッターナイフで容易に切り取れるようにしておく。この実施形態の遮熱シートAの使用方法は後述する。
【0018】
以上の如き本発明の遮熱シートは、屋根裏の遮熱シートとして有効であり、後述のように本発明の遮熱シートを用いて屋根裏を遮熱施工した場合、夏期に野地板を通して侵入してくる熱を有効に反射・遮断して、屋根裏の温度上昇をより効率的に抑えることができる。また、本発明の遮熱シートは、屋根裏の遮熱に限定されず、建物の壁面、床面、天井などの各種の遮熱シートとして使用でき、さらに建築部材に限定されず、クッション材、梱包材、その他の用途の遮熱シートとしても使用できる。
【0019】
本発明の屋根裏の遮熱構造は、図3および図4に示す如く、野地板5と該野地板5を支える複数本の垂木6,6,6・・・とからなる屋根裏構造であって、上記複数本の垂木6,6,6・・・の間に、野地板5との間に空間7を形成して前記本発明の遮熱シートAが、図3の拡大図に示すように、その反射層4を野地板5に対向するように配置されている。
【0020】
また、上記遮熱構造において、遮熱シートAの固定方法にも本発明の特徴があり、好ましくは図2に示すように遮熱シートAを長方形に形成し、その長さを両側の垂木と野地板によって形成される空間の長さ方向と略同一とし、かつその幅を隣接する垂木同士の相対する側面間の間隔Xより大にし、該遮熱シートの両端部を、遮熱シートの水平面に対して略直角に折り曲げ、折り曲げ片8を隣接する垂木の側面に当接させて垂木間に保持させる。この目的のために遮熱シートAの幅を上記の間隔Xの1.05倍から1.5倍とすることが好ましい。特に両端部の折り曲げをそれぞれ図2に示すように二つ折りとして山bを形成することにより、この山の頂部を図3に示すように野地板5に突き当てることにより野地板5との間に適当な空間7を形成することができる。
【0021】
上記両端部の二つ折りに際しては、山bの高さαを約20mmから70mmとすることにより、野地板5との間に適当な空間7を容易に形成することができる。また、垂木6の側面に接する折り曲げ片8の下端部が遮熱シートの水平部分より約10mmから50mm(β)下方に位置するように折り曲げることにより、該折り曲げ片8と垂木6の側面との接触面が大きくなり、上記の如く折り曲げた遮熱シートAを垂木間に押し込むのみで、上記折り曲げ部の反発力により、何らの固定具を用いなくても遮熱シートAを垂木間に保持することができ、著しく作業性が向上する。勿論、折り曲げ片8の下方を利用してステープルやタッカーなどの各種の固定具により遮熱シートAを垂木6の側面に固定してもよい。
【0022】
上記遮熱シートAの折り曲げに際しては、折り曲げる線が、波板紙によって形成されている山谷方向と一致していることから、容易に折り曲げることができる。さらに連続した線状孔から形成されるミシン目を折り曲げ線と同一位置に設けたり、上記のミシン目が折り曲げ線を兼ねたりすることにより、折り曲げの作業性を改善することができる点でより好ましい。また、隣接する垂木の間隔が異なっていても、上記山谷の間隔が5mmから10mm程度と狭いことから、折り曲げ線を任意に選択でき、垂木の間隔が多少変動してもそれらの垂木の間隔に応じて施工現場において、容易に折り曲げ線位置を決定することができる。
【0023】
以上の説明は、図1に示す遮熱シートAを、図5に示す屋根構造において垂木6と桁17(または頭つなぎ)と野地板5とで形成される空間が矩形13である場合に有用である。しかし、各種屋根構造においては、図6に示すように、屋根構造の端部においては、垂木6と桁17と野地板5とで形成される空間が、略矩形であるものの、垂木6と桁17との関係において、図6に示すように垂木6を桁17に固定するために、天井根太18が設けられている場合がある。この場合には、垂木6と桁17と野地板5とから構成される空間内に前記遮熱シートAを施工する場合、その隅部が天井根太18にかかり、遮熱シートAを施工することができない。本発明の遮熱シートAは図6に示す垂木6と桁17と野地板5とから構成される如き空間に施工することができる。
【0024】
上記空間に図1に示す如き本発明の遮熱シートAを施工する場合には、図7に示すように、折り曲げ線L1〜4および切り取り線L5が設けられている遮熱シートAの4隅の、天井根太18に対応する隅部を、折り曲げ線L1〜4および切り取り線L5を用いて内側に角柱状に折り曲げ、切り欠き部19を設けておく。このような切り欠き部19を設けた遮熱シートAであれば、図6に示す如き空間に遮熱シートAを容易に施工することができる(図8)。なお、上記の角柱状の折り曲げ部20の形成、すなわち、切り欠き部19の形成に使用する折り曲げ線L1〜4の長さは通常約50〜300mmであり、各折り曲げ線L1〜4の間隔については、W1およびW3が約20〜150mmであり、W2およびW4が約10〜100mmであることが好ましい。また、切り取り線L5は、折り曲げ線L1〜4と直交し、その長さはW1+W2+W3+W4に等しいことが好ましい。
【0025】
また、各種屋根構造においては、図5に示すように、屋根構造の端部においては、垂木6と桁17と野地板5とで形成される空間またはその一部が台形14や三角形になる場合がかなり発生する。このような空間14に前記図1に示す遮熱シートAはそのままで施工することはできない。そこで本発明の好ましい実施形態では、図9に示すように遮熱シートAの両面または片面の全面に切り取り補助線15を設け、該補助線15に沿って任意の位置で、例えば、切り取り線16の位置で切り取り、遮熱シートAを前記台形部分14と同様の形状にする。このような形状の遮熱シートAであれば、該遮熱シートAは前記台形部分14に容易に施工することができる。この切り取り補助線15は任意の印刷で形成してもよいし、任意の切り込みで形成してもよい。切り取り補助線15は遮熱シートAを任意の個所で端縁に対して略45度の角度で鋏やカッターナイフで切り取れるように、例えば、図9の遮熱シートを立てて正面から見た状態で、遮熱シートの両側端に対してそれぞれ略45度の角度で設けることが好ましい。例えば、垂木6と桁17と野地板5とで形成される空間が、図5に示す符号14である場合には、図9の切り取り線16に示すように切り取り、以下図1に示す遮熱シートAの場合と同様にして端部を折り曲げることで、前記と同様にして図10に示すように垂木6と隅木21と野地板(不図示)とで形成される空間14の台形部分に遮熱シートAを施工することができる。さらに切り取り補助線15は、連続した線状孔から形成されるミシン目であることが、切り取りの作業性を改善できることからより好ましい。また、冬期において、室内側の湿度が高くなっても凝結した水分は、段ボール紙に形成したミシン目状の切り取り補助線15から通気層に移動することから、結露に至ることがなく、後述の断熱材を配置する場合にも断熱性を低下させることがない。また、上記切り取り補助線15をミシン目で設けた場合には、該遮熱シートが潰れて施工性が損なわれないように、その交点付近においてはミシン目が存在しないように設けることが好ましい(不図示)。
【0026】
また、本発明の実施形態では、図4に示すように上記遮熱シートAの室内側にグラスウール、ロックウールまたは発泡体などからなる通常の断熱材9を設置してもよい。このような本発明の遮熱構造は、特に夏期において野地板を通して侵入してくる熱線を効率的に反射・遮断して熱が屋根裏から居室内に侵入するのを防止することができる。また、本発明の遮熱シートAと野地板5との間には適当な空間7が形成されることから、遮熱シートA自体の温度が高くならず、遮熱シートAから屋根裏から居室内への熱の輻射も低く抑えることができる。また、施工性に関しては本発明の遮熱シートを単に垂木間に挿入するのみでよいことから、施工性が非常に向上している。
【実施例】
【0027】
次に実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
実施例1
アルミニウム蒸着ポリエチレンフィルムのアルミニウム蒸着層の表面に、ドライラミネート用ウレタン系接着剤を塗布し、段ボール紙の上板紙にラミネートした。このラミネート紙を上板紙として使用し、常法に従って厚さ5mmの段ボール紙を作製した。この段ボール紙を、該段ボール紙の波板紙によって形成された山谷に平行な側を長さ方向として、幅560mmで、長さ850mmに裁断して本発明の遮熱シートとした。
【0028】
実施例2
次に図11に示すように棟木10の上に38mm×89mm×4,000mmの垂木6を、その側面間の距離を417mmとして多数固定し、該垂木6群の上に野地板5を張り、その上にアスファルトルーフィングシートを張りアスファルトシングル材の屋根材11を敷設して屋根裏構造とした。この屋根裏構造の内側(室内側)から、実施例1の遮熱シートAを以下のようにして嵌め込んだ。遮熱シートAをその長手方向に沿って中心から200mmの位置で両端を図2に示すように二つ折りして折り曲げた。図2に示す山bの高さ(α)を30mmとし、折り曲げ片8の下端と遮熱シート本体との差(β)を20mmとした。このように両端部を二つ折りにした遮熱シートを前記垂木間に挿入し、手を離したところ、遮熱シートは折り曲げ部の反発力により垂木間に固定された。次に居室の天井に密度10kg/m3で厚み100mmのグラスウール断熱材9を施工し、本発明の遮熱構造を構築した。なお、熱流量計12は屋根裏側の遮熱シートに設置した。
【0029】
比較例1
図11に示す構造において、本発明の遮熱シートAを用いずに実施例1と同様に屋根裏構造を構築した。なお、熱流量計12は屋根裏側の野地板5に設置した。
【0030】
試験例1
上記実施例2および比較例1の屋根裏構造において、居室内を27℃、相対湿度50%に保持し、屋根材方向から真夏の東京都の条件の温度(27℃から34℃で、平均30.06℃)および日射量を与えて24時間放置し、屋根裏空間の中心部分の温度および設置した熱流量計12により屋根裏への熱流量を測定した。屋根裏空間の時間ごとの温度変化を図12に示した。図12に示すように実施例2の屋根裏構造は比較例1の屋根裏構造と比較して、屋根裏空間の温度は最も熱い時間帯で約9.7℃低くなり、本発明の屋根裏構造は優れた遮熱効果を示した。また、屋根裏における時間ごとの熱流量の推移を図13に示す。図13に示すように実施例2の屋根裏構造の場合には比較例1の場合に比べて、屋根裏への熱侵入量を約70%削減できることが分かり、本発明の遮熱シートと遮熱構造の優れた遮熱効果が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0031】
以上の如き本発明によれば、安価であり、遮熱性、取扱性、施工性および結露防止性などに優れた遮熱シートおよび該遮熱シートを用いた屋根裏の遮熱構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の遮熱シートを説明する斜視図。
【図2】本発明の遮熱シートの使用を説明する図。
【図3】本発明の遮熱構造を説明する図。
【図4】本発明の遮熱構造を説明する図。
【図5】垂木と桁と野地板との関係を説明する図。
【図6】垂木と根太と野地板との関係を説明する図。
【図7】本発明の遮熱シートの使用方法を説明する図。
【図8】本発明の遮熱シートの使用方法を説明する図。
【図9】本発明の遮熱シートの別の実施形態を説明する図。
【図10】図9の遮熱シートの使用方法を説明する図。
【図11】本発明の遮熱構造を説明する図。
【図12】本発明の遮熱シートおよび屋根裏構造の遮熱効果を説明する図。
【図13】本発明の遮熱シートおよび屋根裏構造の遮熱効果を説明する図。
【符号の説明】
【0033】
A:遮熱シート
1:上板紙
2:下板紙
3:波板紙
4:反射層
5:野地板
6:垂木
7:空間
8:折り曲げ片
9:断熱材
10:棟木
11:屋根材
12:熱流量計
13,14:垂木と桁との野地板によって形成される空間
15:切り取り補助線
16:切り取り線
17:桁(または頭つなぎ)
18:天井根太
19:切り欠き部
20:角柱状折り曲げ部
21:隅木
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮熱シートおよび屋根裏の遮熱構造に関し、さらに詳しくは、安価であり、遮熱性、取扱性および施工性などに優れた遮熱シートおよび該遮熱シートを用いた屋根裏の遮熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、木造住宅における屋根直下の居室は、特に夏期において、屋根裏の熱で天井板が熱くなり、この天井板からの輻射熱で居室の温度が上昇し、冷房効果を減ずるという問題がある。
【0003】
上記の如き夏期における居室の温度上昇を抑える目的で、野地板の裏面に発泡ポリスチレンなどの断熱材を貼り合わせる方法が提案されている。この方法では、日射により高温となった屋根材から上記断熱材へ直接伝熱して、該断熱材が蓄熱し、蓄熱した断熱材からの熱の放射によって天井板が加熱され、断熱効果が不十分であった。このような問題を解決する目的で、野地板と断熱材との間に通気層を確保するために、段ボール紙を通気層確保部材として使用することが特許文献1に記載されている。この通気層確保部材としての段ボール紙は、野地板を支えている垂木間に両端を折り曲げた状態で挟持させて野地板と断熱材との間に空間を設けて、該空間を通気性にして高温の空気を排出させるものである。この通気層確保部材は、安価であり取扱性に優れ、高温になった屋根裏の空気を排出することから、ある程度有効であるものの、夏期の強烈な輻射熱の遮熱性という点では不十分である。
【0004】
また、遮熱シートとしてプラスチック製エアマットの両面に金属箔を貼り付けてなる断熱材が提案されている(特許文献2参照)。また、屋根裏温度の上昇を抑制する断熱材として、板状の無機繊維系断熱材の両面を透湿性の表皮材で被覆してなる屋根用断熱材が提案されている(特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2001−227080公報
【特許文献2】特開平10−280577号公報
【特許文献3】特開平8−027919号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の通気層確保部材は、冬期の結露防止には有効であるものの、遮熱効果が不足し、夏期の遮熱効果という点では不十分である。また、上記特許文献2に記載の断熱材は、夏期の断熱には有効であるものの、冬期には断熱材と天井板との間の空間の温度が、断熱材と野地板との間の空間の温度よりも高くなり、その結果として断熱材(屋根裏側)の表面に結露が発生し、屋根裏側の各部材に黴などが発生し、住宅の寿命を短くするなどの問題がある。また、上記断熱材は、優れた断熱効果を有するものの、エアマットの両面に金属箔を貼合するため、コスト高であるという問題がある。また、上記特許文献3に記載の断熱材は断熱性や耐結露性には優れているが、形状が硬質の板状であることから施工性に劣るという問題がある。
【0006】
従って本発明の目的は、安価であり、遮熱性(断熱性)、取扱性、施工性および結露防止性などに優れた遮熱シートおよび該遮熱シートを用いた屋根裏の遮熱構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、上板紙と下板紙との間に波板紙を挟持してなる段ボール紙の少なくとも一方の面に、アルミニウム箔またはアルミニウム蒸着樹脂フィルムからなる反射層が貼合されている長方形の遮熱シートにおいて、該シートの少なくとも1隅部に、該隅部を内側に向けて角柱状に折り曲げ可能な、シート長手方向に平行な少なくとも2本の折り曲げ線と、シートの長手方向に直交する1本の切り込み線がそれぞれ設けられていることを特徴とする上記の遮熱シートを提供する。
【0008】
上記本発明の遮熱シートにおいては、前記反射層が、アルミニウム蒸着樹脂フィルムであること;前記遮熱シートの短辺(幅)が、100〜1,000mmであり、長辺(長さ)が、200〜3,000mmであり、上記波板紙の山谷方向が該遮熱シートの長辺方向に平行であること;前記反射層が、段ボール紙の両面に貼合されていること;遮熱シート全面に、遮熱シートの端部に対して角度を有する切り取り補助線が設けられていること;および上記折り曲げ線、切り込み線および切り取り補助線が連続した線状孔から形成されたミシン目であることが好ましい。
【0009】
また、本発明は、野地板と該野地板を支える複数本の垂木とからなる屋根裏構造であって、上記複数本の隣接する垂木の間に、前記本発明の遮熱シートが、少なくとも一方の反射層を野地板に対向するように野地板との間に空間を形成して配置されていることを特徴とする屋根裏の遮熱構造を提供する。
【0010】
上記本発明の遮熱構造においては、前記遮熱シートの短辺(幅)が、隣接する垂木の内側側面同士の間隔よりも大であって、該遮熱シートの両端部を、遮熱シートの水平面に対して略直角に折り曲げ、折り曲げ片を隣接する垂木の側面に当接させ、折り曲げられた遮熱シートの折り曲げ反発力により遮熱シートが隣接する垂木の側面間に保持されていること;前記遮熱シートの折り曲げ片を隣接する垂木の側面に当接させ、折り曲げ片を介して遮熱シートが固定具により隣接する垂木の側面間に固定されていること:野地板と垂木によって形成される空間に、垂木を固定する部材が存在し、該部材に対応する遮熱シートの隅部が、折り曲げ線に沿って内側に折り曲げられていること;およびさらに遮熱シートの室内側に断熱材が配置されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
上記本発明によれば、安価であり、遮熱性、取扱性、施工性および結露防止性などに優れた遮熱シートおよび該遮熱シートを用いた屋根裏の遮熱構造を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に図面に示す好ましい実施の形態に基づいて本発明をさらに詳しく説明する。
本発明の1実施形態の遮熱シートAは、図1に示す一部省略全体斜視図およびその一部の拡大図に示すように、上板紙1と下板紙2との間に波板紙3を挟持してなる段ボール紙の少なくとも一方の面に、アルミニウム箔またはアルミニウム蒸着樹脂フィルムからなる反射層4が貼合されている長方形の遮熱シートにおいて、該シートの少なくとも1隅部に、該隅部を内側に向けて角柱状に折り曲げ可能な、シート長手方向に平行な少なくとも2本の折り曲げ線と、シートの長手方向に直交する1本の切り込み線がそれぞれ設けられていることを特徴としている。
【0013】
上記の段ボール紙は、従来各種包装材料として広く使用されている段ボール紙であり、特に限定されず、従来公知の段ボール紙はいずれも本発明で使用することができる。また、上記の段ボール紙の少なくとも一方の面に貼設する反射層4は、アルミニウム箔またはアルミニウム蒸着樹脂フィルムから構成されている。上記反射層4を段ボール紙の片面のみに設ける場合には、後述の遮熱構造において、反射層4が野地板と対向するように配置する。このようにすることにより、夏期においては野地板5側から放射されてくる熱線を良好に反射遮断して屋根裏の温度上昇を抑えることができ、後述の断熱材を配置する場合にも断熱性を低下させることがない。なお、上記反射層4は段ボール紙の両面に設けてもよい。上記反射層4が室内側または居室の天井側に配置されていることにより、冬期において、外気温度よりも温度の高い室内側から放射されてくる熱線を反射して、室内側の温度低下を抑えることができる。
【0014】
また、反射層4はアルミニウム箔でもよいが、より安価で段ボール紙に対する貼設作業が容易であるアルミニウム蒸着樹脂フィルムが好ましい。これに使用する樹脂フィルムとしては各種のプラスチックフィルムが使用できるが、コストの面からポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどのフィルムが好ましい。このようなアルミニウム蒸着樹脂フィルムは市販のものがいずれも使用でき、アルミニウム蒸着層および樹脂フィルムの厚さは特に限定されない。また、当該アルミニウム蒸着樹脂フィルムは、段ボール紙に対して樹脂フィルムが外側になるように貼設されていることが好ましい。このように貼設することにより、水分によって変質し易いアルミニウム蒸着層が、樹脂フィルムとの貼設に使用する接着剤とにより挟持された状態になり、アルミニウム蒸着層の耐久性が向上する。
【0015】
上記本発明の遮熱シートAの形状は、長方形であり、その短辺(幅)が、100〜1,000mmであり、長辺(長さ)が、200〜3,000mmであることが好ましく、また、波板紙3によって形成されている山谷方向が遮熱シートの長辺方向に平行であることが好ましい。上記の長方形の形状は後述する遮熱構造において、野地板と垂木によって形成される空間の長さ方向とほぼ同一の長さで、隣接する垂木側面同士の内側間隔をXmmとした場合、その短辺の幅はXの1.05倍〜1.5倍、例えば、X×1.05mmからX×1.5mmとすることが好ましい。その理由は後述する。
【0016】
本発明の遮熱シートAは上記構成に加えて、上記遮熱シートAにおいて、該シートの少なくとも1隅部に、該隅部を内側に向けて角柱状に折り曲げ可能な、シート長手方向に平行な少なくとも2本の折り曲げ線と、シートの長手方向に直交する1本の切り込み線がそれぞれ設けられている。さらに図1の遮熱シートAのように、4隅部にそれぞれ折り曲げ線と切り込み線とを設けることが、該遮熱シートの施工時に4隅の部分のいずれかに垂木を固定するための部材が位置されても、遮熱シートを簡便に垂木間に施工することができることから好ましい。また、折り曲げ線が2本である場合には、折り曲げて形成される角柱状は三角柱状になり、3本である場合には四角柱状になり、4本である場合には、図7に示されるような、折り返しのある四角柱状となる。上記折り曲げ線は、折り曲げて形成される角柱状が形状を保持し易いことから、図示のように4本であることが好ましい。また、切り込み線の作用効果は後述する。
【0017】
また、本発明の別の実施形態である遮熱シートAは、図9にその全体図を示すように遮熱シートAの両面または片面の全面に、遮熱シートAの端部に対して角度を有する多数の切り取り補助線15が設けられている。この切り取り補助線15は好ましくは交差するように設け、遮熱シートAの任意の個所で約45度の角度を有し、例えば、取り取り補助線15に沿って、鋏やカッターナイフで容易に切り取れるようにしておく。この実施形態の遮熱シートAの使用方法は後述する。
【0018】
以上の如き本発明の遮熱シートは、屋根裏の遮熱シートとして有効であり、後述のように本発明の遮熱シートを用いて屋根裏を遮熱施工した場合、夏期に野地板を通して侵入してくる熱を有効に反射・遮断して、屋根裏の温度上昇をより効率的に抑えることができる。また、本発明の遮熱シートは、屋根裏の遮熱に限定されず、建物の壁面、床面、天井などの各種の遮熱シートとして使用でき、さらに建築部材に限定されず、クッション材、梱包材、その他の用途の遮熱シートとしても使用できる。
【0019】
本発明の屋根裏の遮熱構造は、図3および図4に示す如く、野地板5と該野地板5を支える複数本の垂木6,6,6・・・とからなる屋根裏構造であって、上記複数本の垂木6,6,6・・・の間に、野地板5との間に空間7を形成して前記本発明の遮熱シートAが、図3の拡大図に示すように、その反射層4を野地板5に対向するように配置されている。
【0020】
また、上記遮熱構造において、遮熱シートAの固定方法にも本発明の特徴があり、好ましくは図2に示すように遮熱シートAを長方形に形成し、その長さを両側の垂木と野地板によって形成される空間の長さ方向と略同一とし、かつその幅を隣接する垂木同士の相対する側面間の間隔Xより大にし、該遮熱シートの両端部を、遮熱シートの水平面に対して略直角に折り曲げ、折り曲げ片8を隣接する垂木の側面に当接させて垂木間に保持させる。この目的のために遮熱シートAの幅を上記の間隔Xの1.05倍から1.5倍とすることが好ましい。特に両端部の折り曲げをそれぞれ図2に示すように二つ折りとして山bを形成することにより、この山の頂部を図3に示すように野地板5に突き当てることにより野地板5との間に適当な空間7を形成することができる。
【0021】
上記両端部の二つ折りに際しては、山bの高さαを約20mmから70mmとすることにより、野地板5との間に適当な空間7を容易に形成することができる。また、垂木6の側面に接する折り曲げ片8の下端部が遮熱シートの水平部分より約10mmから50mm(β)下方に位置するように折り曲げることにより、該折り曲げ片8と垂木6の側面との接触面が大きくなり、上記の如く折り曲げた遮熱シートAを垂木間に押し込むのみで、上記折り曲げ部の反発力により、何らの固定具を用いなくても遮熱シートAを垂木間に保持することができ、著しく作業性が向上する。勿論、折り曲げ片8の下方を利用してステープルやタッカーなどの各種の固定具により遮熱シートAを垂木6の側面に固定してもよい。
【0022】
上記遮熱シートAの折り曲げに際しては、折り曲げる線が、波板紙によって形成されている山谷方向と一致していることから、容易に折り曲げることができる。さらに連続した線状孔から形成されるミシン目を折り曲げ線と同一位置に設けたり、上記のミシン目が折り曲げ線を兼ねたりすることにより、折り曲げの作業性を改善することができる点でより好ましい。また、隣接する垂木の間隔が異なっていても、上記山谷の間隔が5mmから10mm程度と狭いことから、折り曲げ線を任意に選択でき、垂木の間隔が多少変動してもそれらの垂木の間隔に応じて施工現場において、容易に折り曲げ線位置を決定することができる。
【0023】
以上の説明は、図1に示す遮熱シートAを、図5に示す屋根構造において垂木6と桁17(または頭つなぎ)と野地板5とで形成される空間が矩形13である場合に有用である。しかし、各種屋根構造においては、図6に示すように、屋根構造の端部においては、垂木6と桁17と野地板5とで形成される空間が、略矩形であるものの、垂木6と桁17との関係において、図6に示すように垂木6を桁17に固定するために、天井根太18が設けられている場合がある。この場合には、垂木6と桁17と野地板5とから構成される空間内に前記遮熱シートAを施工する場合、その隅部が天井根太18にかかり、遮熱シートAを施工することができない。本発明の遮熱シートAは図6に示す垂木6と桁17と野地板5とから構成される如き空間に施工することができる。
【0024】
上記空間に図1に示す如き本発明の遮熱シートAを施工する場合には、図7に示すように、折り曲げ線L1〜4および切り取り線L5が設けられている遮熱シートAの4隅の、天井根太18に対応する隅部を、折り曲げ線L1〜4および切り取り線L5を用いて内側に角柱状に折り曲げ、切り欠き部19を設けておく。このような切り欠き部19を設けた遮熱シートAであれば、図6に示す如き空間に遮熱シートAを容易に施工することができる(図8)。なお、上記の角柱状の折り曲げ部20の形成、すなわち、切り欠き部19の形成に使用する折り曲げ線L1〜4の長さは通常約50〜300mmであり、各折り曲げ線L1〜4の間隔については、W1およびW3が約20〜150mmであり、W2およびW4が約10〜100mmであることが好ましい。また、切り取り線L5は、折り曲げ線L1〜4と直交し、その長さはW1+W2+W3+W4に等しいことが好ましい。
【0025】
また、各種屋根構造においては、図5に示すように、屋根構造の端部においては、垂木6と桁17と野地板5とで形成される空間またはその一部が台形14や三角形になる場合がかなり発生する。このような空間14に前記図1に示す遮熱シートAはそのままで施工することはできない。そこで本発明の好ましい実施形態では、図9に示すように遮熱シートAの両面または片面の全面に切り取り補助線15を設け、該補助線15に沿って任意の位置で、例えば、切り取り線16の位置で切り取り、遮熱シートAを前記台形部分14と同様の形状にする。このような形状の遮熱シートAであれば、該遮熱シートAは前記台形部分14に容易に施工することができる。この切り取り補助線15は任意の印刷で形成してもよいし、任意の切り込みで形成してもよい。切り取り補助線15は遮熱シートAを任意の個所で端縁に対して略45度の角度で鋏やカッターナイフで切り取れるように、例えば、図9の遮熱シートを立てて正面から見た状態で、遮熱シートの両側端に対してそれぞれ略45度の角度で設けることが好ましい。例えば、垂木6と桁17と野地板5とで形成される空間が、図5に示す符号14である場合には、図9の切り取り線16に示すように切り取り、以下図1に示す遮熱シートAの場合と同様にして端部を折り曲げることで、前記と同様にして図10に示すように垂木6と隅木21と野地板(不図示)とで形成される空間14の台形部分に遮熱シートAを施工することができる。さらに切り取り補助線15は、連続した線状孔から形成されるミシン目であることが、切り取りの作業性を改善できることからより好ましい。また、冬期において、室内側の湿度が高くなっても凝結した水分は、段ボール紙に形成したミシン目状の切り取り補助線15から通気層に移動することから、結露に至ることがなく、後述の断熱材を配置する場合にも断熱性を低下させることがない。また、上記切り取り補助線15をミシン目で設けた場合には、該遮熱シートが潰れて施工性が損なわれないように、その交点付近においてはミシン目が存在しないように設けることが好ましい(不図示)。
【0026】
また、本発明の実施形態では、図4に示すように上記遮熱シートAの室内側にグラスウール、ロックウールまたは発泡体などからなる通常の断熱材9を設置してもよい。このような本発明の遮熱構造は、特に夏期において野地板を通して侵入してくる熱線を効率的に反射・遮断して熱が屋根裏から居室内に侵入するのを防止することができる。また、本発明の遮熱シートAと野地板5との間には適当な空間7が形成されることから、遮熱シートA自体の温度が高くならず、遮熱シートAから屋根裏から居室内への熱の輻射も低く抑えることができる。また、施工性に関しては本発明の遮熱シートを単に垂木間に挿入するのみでよいことから、施工性が非常に向上している。
【実施例】
【0027】
次に実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
実施例1
アルミニウム蒸着ポリエチレンフィルムのアルミニウム蒸着層の表面に、ドライラミネート用ウレタン系接着剤を塗布し、段ボール紙の上板紙にラミネートした。このラミネート紙を上板紙として使用し、常法に従って厚さ5mmの段ボール紙を作製した。この段ボール紙を、該段ボール紙の波板紙によって形成された山谷に平行な側を長さ方向として、幅560mmで、長さ850mmに裁断して本発明の遮熱シートとした。
【0028】
実施例2
次に図11に示すように棟木10の上に38mm×89mm×4,000mmの垂木6を、その側面間の距離を417mmとして多数固定し、該垂木6群の上に野地板5を張り、その上にアスファルトルーフィングシートを張りアスファルトシングル材の屋根材11を敷設して屋根裏構造とした。この屋根裏構造の内側(室内側)から、実施例1の遮熱シートAを以下のようにして嵌め込んだ。遮熱シートAをその長手方向に沿って中心から200mmの位置で両端を図2に示すように二つ折りして折り曲げた。図2に示す山bの高さ(α)を30mmとし、折り曲げ片8の下端と遮熱シート本体との差(β)を20mmとした。このように両端部を二つ折りにした遮熱シートを前記垂木間に挿入し、手を離したところ、遮熱シートは折り曲げ部の反発力により垂木間に固定された。次に居室の天井に密度10kg/m3で厚み100mmのグラスウール断熱材9を施工し、本発明の遮熱構造を構築した。なお、熱流量計12は屋根裏側の遮熱シートに設置した。
【0029】
比較例1
図11に示す構造において、本発明の遮熱シートAを用いずに実施例1と同様に屋根裏構造を構築した。なお、熱流量計12は屋根裏側の野地板5に設置した。
【0030】
試験例1
上記実施例2および比較例1の屋根裏構造において、居室内を27℃、相対湿度50%に保持し、屋根材方向から真夏の東京都の条件の温度(27℃から34℃で、平均30.06℃)および日射量を与えて24時間放置し、屋根裏空間の中心部分の温度および設置した熱流量計12により屋根裏への熱流量を測定した。屋根裏空間の時間ごとの温度変化を図12に示した。図12に示すように実施例2の屋根裏構造は比較例1の屋根裏構造と比較して、屋根裏空間の温度は最も熱い時間帯で約9.7℃低くなり、本発明の屋根裏構造は優れた遮熱効果を示した。また、屋根裏における時間ごとの熱流量の推移を図13に示す。図13に示すように実施例2の屋根裏構造の場合には比較例1の場合に比べて、屋根裏への熱侵入量を約70%削減できることが分かり、本発明の遮熱シートと遮熱構造の優れた遮熱効果が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0031】
以上の如き本発明によれば、安価であり、遮熱性、取扱性、施工性および結露防止性などに優れた遮熱シートおよび該遮熱シートを用いた屋根裏の遮熱構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の遮熱シートを説明する斜視図。
【図2】本発明の遮熱シートの使用を説明する図。
【図3】本発明の遮熱構造を説明する図。
【図4】本発明の遮熱構造を説明する図。
【図5】垂木と桁と野地板との関係を説明する図。
【図6】垂木と根太と野地板との関係を説明する図。
【図7】本発明の遮熱シートの使用方法を説明する図。
【図8】本発明の遮熱シートの使用方法を説明する図。
【図9】本発明の遮熱シートの別の実施形態を説明する図。
【図10】図9の遮熱シートの使用方法を説明する図。
【図11】本発明の遮熱構造を説明する図。
【図12】本発明の遮熱シートおよび屋根裏構造の遮熱効果を説明する図。
【図13】本発明の遮熱シートおよび屋根裏構造の遮熱効果を説明する図。
【符号の説明】
【0033】
A:遮熱シート
1:上板紙
2:下板紙
3:波板紙
4:反射層
5:野地板
6:垂木
7:空間
8:折り曲げ片
9:断熱材
10:棟木
11:屋根材
12:熱流量計
13,14:垂木と桁との野地板によって形成される空間
15:切り取り補助線
16:切り取り線
17:桁(または頭つなぎ)
18:天井根太
19:切り欠き部
20:角柱状折り曲げ部
21:隅木
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上板紙と下板紙との間に波板紙を挟持してなる段ボール紙の少なくとも一方の面に、アルミニウム箔またはアルミニウム蒸着樹脂フィルムからなる反射層が貼合されている長方形の遮熱シートにおいて、該シートの少なくとも1隅部に、該隅部を内側に向けて角柱状に折り曲げ可能な、シート長手方向に平行な少なくとも2本の折り曲げ線と、シートの長手方向に直交する1本の切り込み線がそれぞれ設けられていることを特徴とする上記の遮熱シート。
【請求項2】
反射層が、アルミニウム蒸着樹脂フィルムである請求項1に記載の遮熱シート。
【請求項3】
遮熱シートの短辺(幅)が、100〜1,000mmであり、長辺(長さ)が、200〜3,000mmであり、上記波板紙の山谷方向が該遮熱シートの長辺方向に平行である請求項1に記載の遮熱シート。
【請求項4】
反射層が、段ボール紙の両面に貼合されている請求項1に記載の遮熱シート。
【請求項5】
遮熱シート全面に、遮熱シートの端部に対して角度を有する切り取り補助線が設けられている請求項1に記載の遮熱シート。
【請求項6】
折り曲げ線および切り込み線が、連続した線状孔から形成されたミシン目である請求項1に記載の遮熱シート。
【請求項7】
切り取り補助線が、連続した線状孔から形成されたミシン目である請求項5に記載の遮熱シート。
【請求項8】
野地板と該野地板を支える複数本の垂木とからなる屋根裏構造であって、上記複数本の隣接する垂木の間に、請求項1〜7のいずれか1項に記載の遮熱シートが、少なくとも一方の反射層を野地板に対向するように野地板との間に空間を形成して配置されていることを特徴とする屋根裏の遮熱構造。
【請求項9】
遮熱シートの短辺(幅)が、隣接する垂木の内側側面同士の間隔よりも大であって、該遮熱シートの両端部を、遮熱シートの水平面に対して略直角に折り曲げ、折り曲げ片を隣接する垂木の側面に当接させ、折り曲げられた遮熱シートの折り曲げ反発力により遮熱シートが隣接する垂木の側面間に保持されている請求項8に記載の遮熱構造。
【請求項10】
遮熱シートの折り曲げ片を隣接する垂木の側面に当接させ、折り曲げ片を介して遮熱シートが固定具により隣接する垂木の側面間に固定されている請求項8に記載の遮熱構造。
【請求項11】
野地板と垂木によって形成される空間に、垂木を固定する部材が存在し、該部材に対応する遮熱シートの隅部が、折り曲げ線に沿って内側に折り曲げられている請求項9または10に記載の遮熱構造。
【請求項12】
さらに遮熱シートの室内側に断熱材が配置されている請求項9〜11の何れか1項に記載の遮熱構造。
【請求項1】
上板紙と下板紙との間に波板紙を挟持してなる段ボール紙の少なくとも一方の面に、アルミニウム箔またはアルミニウム蒸着樹脂フィルムからなる反射層が貼合されている長方形の遮熱シートにおいて、該シートの少なくとも1隅部に、該隅部を内側に向けて角柱状に折り曲げ可能な、シート長手方向に平行な少なくとも2本の折り曲げ線と、シートの長手方向に直交する1本の切り込み線がそれぞれ設けられていることを特徴とする上記の遮熱シート。
【請求項2】
反射層が、アルミニウム蒸着樹脂フィルムである請求項1に記載の遮熱シート。
【請求項3】
遮熱シートの短辺(幅)が、100〜1,000mmであり、長辺(長さ)が、200〜3,000mmであり、上記波板紙の山谷方向が該遮熱シートの長辺方向に平行である請求項1に記載の遮熱シート。
【請求項4】
反射層が、段ボール紙の両面に貼合されている請求項1に記載の遮熱シート。
【請求項5】
遮熱シート全面に、遮熱シートの端部に対して角度を有する切り取り補助線が設けられている請求項1に記載の遮熱シート。
【請求項6】
折り曲げ線および切り込み線が、連続した線状孔から形成されたミシン目である請求項1に記載の遮熱シート。
【請求項7】
切り取り補助線が、連続した線状孔から形成されたミシン目である請求項5に記載の遮熱シート。
【請求項8】
野地板と該野地板を支える複数本の垂木とからなる屋根裏構造であって、上記複数本の隣接する垂木の間に、請求項1〜7のいずれか1項に記載の遮熱シートが、少なくとも一方の反射層を野地板に対向するように野地板との間に空間を形成して配置されていることを特徴とする屋根裏の遮熱構造。
【請求項9】
遮熱シートの短辺(幅)が、隣接する垂木の内側側面同士の間隔よりも大であって、該遮熱シートの両端部を、遮熱シートの水平面に対して略直角に折り曲げ、折り曲げ片を隣接する垂木の側面に当接させ、折り曲げられた遮熱シートの折り曲げ反発力により遮熱シートが隣接する垂木の側面間に保持されている請求項8に記載の遮熱構造。
【請求項10】
遮熱シートの折り曲げ片を隣接する垂木の側面に当接させ、折り曲げ片を介して遮熱シートが固定具により隣接する垂木の側面間に固定されている請求項8に記載の遮熱構造。
【請求項11】
野地板と垂木によって形成される空間に、垂木を固定する部材が存在し、該部材に対応する遮熱シートの隅部が、折り曲げ線に沿って内側に折り曲げられている請求項9または10に記載の遮熱構造。
【請求項12】
さらに遮熱シートの室内側に断熱材が配置されている請求項9〜11の何れか1項に記載の遮熱構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−278026(P2007−278026A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−109022(P2006−109022)
【出願日】平成18年4月11日(2006.4.11)
【出願人】(000116792)旭ファイバーグラス株式会社 (101)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月11日(2006.4.11)
【出願人】(000116792)旭ファイバーグラス株式会社 (101)
【Fターム(参考)】
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