説明

遮熱合わせガラス用中間膜の改質方法

【課題】不活性物質により被覆された遮熱性微粒子を用いた場合であっても、優れた光学性能を発揮できる遮熱合わせガラス用中間膜を得ることができる遮熱合わせガラス用中間膜の改質方法、合わせガラス用中間膜、及び、合わせガラスを提供する。
【解決手段】不活性物質により被覆された遮熱性微粒子、マトリックス樹脂、及び、液状可塑剤を含有する遮熱合わせガラス用中間膜に対して、3.0eV以上のエネルギーを有する電磁波を含む高エネルギー線を照射することにより、波長380〜780nmの可視光透過率を向上させると同時に、波長780〜2100nmの近赤外線透過率を低下させる遮熱合わせガラス用中間膜の改質方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不活性物質により被覆された遮熱性微粒子を用いた場合であっても、優れた光学性能を発揮できる遮熱合わせガラス用中間膜を得ることができる遮熱合わせガラス用中間膜の改質方法、遮熱合わせガラス用中間膜、及び、合わせガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
合わせガラスは、外部衝撃を受けて破損してもガラスの破片が飛散することが少なく安全であるため、自動車等の車輌、航空機、建築物等の窓ガラス等として広く使用されている。上記合わせガラスとしては、少なくとも一対のガラスの間に、例えば、可塑剤により可塑化されたポリビニルブチラール樹脂等のポリビニルアセタール樹脂からなる、合わせガラス用中間膜を介在させ、一体化させたもの等が挙げられる。
【0003】
しかしながら、このような合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスは、安全性に優れているものの、遮熱性に劣るという問題があった。光線の中でも可視光より長い780nm以上の波長を持つ赤外線は、紫外線と比較するとエネルギー量が約10%程度と小さいものの、熱的作用が大きく、一度物質に吸収されると熱として放出され温度上昇をもたらすことから、一般に熱線と呼ばれている。従って、例えば、自動車のフロントガラスやサイドガラスから入射してくる光線のうち、熱的作用の大きな赤外線(熱線)を遮断できるようにすれば、遮熱性が高まり、自動車内部の温度上昇を抑えることができる。近年の傾向として、自動車等におけるガラス開口部面積が増大しており、合わせガラスの遮熱性を高くし、ガラス開口部に熱線カット機能を付与する必要性が増大している。
【0004】
これに対して、特許文献1には、遮熱性能を有する錫ドープ酸化インジウム微粒子(以下ITO微粒子ともいう)や、アンチモンドープ酸化錫微粒子等の遮熱粒子をポリビニルアセタール樹脂に分散させてなる合わせガラス用中間膜が開示されている。このような合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスは、遮熱性、電磁波透過性に優れたものとなる。
【0005】
しかし、ITO微粒子やアンチモンドープ酸化錫微粒子等の遮熱性微粒子が、樹脂等の有機物との複合材料として用いられた場合、微粒子が有する光触媒活性、熱活性、表面酸活性、及び、表面塩基性活性等が原因となり、マトリックス樹脂等の有機物を劣化させることがある。また、微粒子表面の活性が原因となり、スーパーUV光やスーパーXe光といった高エネルギー線照射下でマトリックス樹脂等の有機物の劣化が促進され、可視光透過率が低下するといった問題もあった。すなわち、不活性物質により被覆された遮熱性微粒子、マトリックス樹脂、及び、液状可塑剤を含有する遮熱合わせガラス用中間膜においては、熱、光等による耐候性試験において、耐候性試験時間と可視光透過率の低下とが比例関係にあり、ITO微粒子やアンチモンドープ酸化錫微粒子を含まない中間膜を用いたものに比べて、可視光透過率が大きく低下し、黄色味の指標であるイエローインデックス値、及び、CIE1976L*a*b*表示系におけるb*値が大きく増加してしまうという問題があった。
【0006】
この問題を解決するために、例えば、特許文献2には、光触媒性を有する金属酸化物微粒子の表面を、ポリシロキサンで薄層コート処理することにより、金属酸化物微粒子の光触媒活性を抑制する技術が開示されている。
【0007】
しかしながら、このように不活性物質により被覆された遮熱性微粒子を用いた中間膜では、耐候試験における樹脂の劣化や、光学品質の劣化は抑えることができたものの、表面処理を施していない遮熱性微粒子を用いた場合に比べ、合わせガラスの可視光透過率の低下やヘイズ値(曇り価)の上昇が生じるという新たな問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO01/25162号公報
【特許文献2】特開2000−264632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、不活性物質により被覆された遮熱性微粒子を用いた場合であっても、優れた光学性能を発揮できる遮熱合わせガラス用中間膜を得ることができる遮熱合わせガラス用中間膜の改質方法、合わせガラス用中間膜、及び、合わせガラスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は不活性物質により被覆された遮熱性微粒子、マトリックス樹脂、及び、液状可塑剤を含有する遮熱合わせガラス用中間膜に対して、高エネルギー線を照射することにより、波長380〜780nmの可視光透過率を向上させると同時に、波長780〜2100nmの近赤外線透過率を低下させることを特徴とする遮熱合わせガラス用中間膜の改質方法である。
以下に本発明を詳述する。
【0011】
本発明者らは、鋭意検討の結果、不活性物質により被覆された遮熱性微粒子を用いた遮熱合わせガラス用中間膜であっても、高エネルギー線を照射することにより、可視光透過率を向上させ、かつ、近赤外線透過率を低下させることができるということを見出し、本発明を完成させるに至った。
これにより、中間膜樹脂の劣化に伴う合わせガラスの黄変化を生じることなく、可視光に対する高い透明性と、優れた遮熱性能を同時に有する合わせガラス用中間膜を得ることができる。
【0012】
本発明において高エネルギー線とは3.0eV以上のエネルギーを有する電磁波を意味する。このような高エネルギー線としては特に限定されないが、例えば、スーパーUV光(岩崎電気社製)、UV線、可視光線、スーパーXe光(岩崎電気社製)、Xe光、レーザー光、電子線、マイクロ波等が好ましい。これらの高エネルギー線は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、高エネルギー線が波長300〜450nmの光を含む際は、可視光透過率増加と赤外光透過率低下の効果が大きくなるので好適である。
【0013】
高エネルギー線の照射方法としては、中間膜の状態で照射してもよいし、合わせガラスにした状態で照射してもよいが、高エネルギー線照射による中間膜樹脂の熱変形を防ぐためには合わせガラスの状態にて照射することが望ましい。ただし、湿度の高い環境にて高エネルギー線を照射した場合、水分の影響により樹脂に気泡が生じてしまうことがあるので、乾燥した雰囲気下で作業を行うことが好ましい。なお、不活性物質により被覆された遮熱性微粒子に直接高エネルギー線を照射して、改質された遮熱性微粒子を得てもよい。
中間膜の状態で高エネルギー線を照射する場合、湿気や熱による樹脂の劣化や状態変化を防ぐために、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムを中間膜に圧着させ水分との接触を防ぐ、また、熱変形を防ぐためには、高強度にて短時間照射するのではなく、低強度にて長時間照射する等、充分な注意が必要である。
また、合わせガラスにした状態で高エネルギー線を照射する場合、シェードガラスやグリーンガラスを用いた場合には高エネルギー線の透過を妨げ、充分なエネルギーを遮熱性微粒子に与えられない場合があるため、衝撃強度を保持した状態で、高エネルギー線の全てが吸収されない程度に薄いものを用いる、若しくは中間膜の状態で高エネルギー線を照射した後に合わせガラスを作製すればよい。
【0014】
また、高エネルギー線の照射時間は、光源の強度にもよるが、少なくとも50時間の照射が必要である。ただし、高エネルギー線の照射エネルギーが過剰量になった場合、樹脂や有機物系の添加剤の劣化につながり、可視光透過率が低下する原因ともなるので、必要最小限にとどめる必要がある。
【0015】
上記高エネルギー線の照射により、遮熱合わせガラス用中間膜のイエローインデックス値変化(ΔYI)が0%以下、かつ、CIE1976L*a*b*表示系におけるb*値変化(Δb*)が0%以下であることが好ましい。すなわち、過剰な高エネルギー線の照射により、合わせガラスの透明性が低下しないようにしなければならない。
なお、上記イエローインデックス値(YI)、及び、上記CIE1976L*a*b*表示系におけるb*値は、可視光透過率の測定における測定データから求めることができる。また、イエローインデックス値変化(ΔYI)、及び、b*値変化(Δb*)とは、下記式(1)及び(2)で示される、高エネルギー線照射後の値から、高エネルギー線照射前の値を減ずることにより求まる値とする。
ΔYI=YI(高エネルギー線照射後)−YI(高エネルギー線照射前) (1)
Δb*=b*(高エネルギー線照射後)−b*(高エネルギー線照射前) (2)
【0016】
高エネルギー線を放射する光源としては、高圧水銀灯型紫外光、超高圧水銀灯型紫外光、メタルハライド型紫外光、キセノンアークランプ、サンシャインカーボンアーク光源、高出力型蛍光灯等が挙げられる。また、太陽光を利用することも可能であるが、充分な効果が発現するまでにかなりの時間を要するので現実的ではない。
【0017】
本発明の改質方法の対象となる遮熱合わせガラス用中間膜は、遮熱性微粒子、マトリックス樹脂、及び、液状可塑剤を含有するものである。
【0018】
上記遮熱性微粒子としては特に限定されず、例えば、錫ドープ酸化インジウム(ITO)微粒子、アンチモン錫ドープ酸化錫(ATO)微粒子、アルミニウムドープ酸化亜鉛微粒子、インジウムドープ酸化亜鉛微粒子、ガリウムドープ酸化亜鉛微粒子、六ホウ化ランタン微粒子、六ホウ化セリウム微粒子等が挙げられる。これらの遮熱性微粒子は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
上記遮熱性微粒子は、表面が不活性物質により被覆されている。上記不活性物質としては特に限定されるものではないが、例えば、5.0eV以上の大きなバンドギャップを有する絶縁性金属酸化物が好適に用いられる。より好ましくは、7.0eV以上の大きなバンドギャップを有する絶縁性金属酸化物である。このような絶縁性金属酸化物としては、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化カルシウム等が挙げられる。
【0020】
また、上記不活性物質としては、例えば、(含水)リンモリブデン酸アンモニウム、(含水)リンバナジウム酸アンモニウム、(含水)リンタングステン酸アンモニウム、(含水)リン酸アンモニウムのようなリン酸アンモニウム塩も好適に用いられる。
【0021】
また、上記不活性物質としては、例えば、水酸アパタイト、炭酸アパタイト、フッ化アパタイト、リン酸三カルシウム、リン酸八カルシウムのようなリン酸塩も好適に用いられる。
【0022】
また、上記不活性物質としては、例えば、有機シラン素化合物、有機チタン化合物、有機アルミニウム化合物、有機ジルコニウム−アルミニウム化合物のようなカップリング剤も好適に用いられる。
【0023】
また、上記不活性物質としては、例えば、粒子表面と反応しうるアルコール系水酸基を有する化合物、フェノール系水酸基を有する化合物、イソシアネート基を有する化合物、四塩化炭素、第四アンモニウム塩化合物、Mo(η−C錯体、Cr(η−C錯体、Co(CO)クラスター、Ru(CO)12クラスター等も好適に用いられる。
【0024】
更に、遮熱性微粒子をアモルファスITO、アモルファスアンチモンドープ酸化錫、アモルファス酸化インジウム、アモルファス酸化錫、アモルファス酸化アンチモン、アモルファス酸化ケイ素、アモルファス酸化アルミニウム、アモルファス酸化ジルコニウム、アモルファス酸化カルシウム、アモルファス酸化チタン、アモルファス酸化亜鉛、及び、アモルファス酸化セリウム等のアモルファス状金属酸化物で被覆することによっても表面を不活性化することができる。
【0025】
上記不活性物質による被覆の形態としては、遮熱性微粒子の活性な表面を保護し、中間膜樹脂の劣化を抑制できる程度であればよく、表面を完全に被覆するような状態であってもよいし、あるいは、縞状に被覆されて、部分的に被覆されていない部分があってもよい。また、遮熱性微粒子表面上に、不活性物質が吸着、担持、堆積されていてもよい。また、遮熱性微粒子の表面に、不活性物質を固溶あるいはドープしてもよい。
【0026】
また、樹脂中や可塑剤中における遮熱性微粒子の分散性を高めるために、遮熱粒子の表面を疎水化剤や分散剤で処理してもよい。このような疎水化剤や分散剤としては特に限定されず、例えば、有機シラン素化合物、有機チタン化合物、有機アルミニウム化合物、有機ジルコニア−アルミニウム化合物、有機クロム化合物等のカップリング剤、粒子表面と反応しうるアルコール系水酸基及び/又はフェノール系水酸基を有する化合物;イソシアネート基を有する化合物、四塩化炭素、第四アンモニウム塩化合物、Mo(η−C錯体、Cr(η−C錯体、Co(CO)クラスター、Ru(CO)12クラスター等が挙げられる。
【0027】
上記疎水化剤としては特に限定されないが、遮熱性微粒子の表面処理を行う際に微粒子の凝縮が起こりにくく、それゆえに溶液のヘイズ上昇を抑えることができ、また、長期保存した際の分散安定性にも優れ、光学性能への影響が小さいことから、加水分解性シリル基を有する有機シラン化合物が好ましい。
【0028】
上記加水分解性シリル基を有する有機シラン化合物は、加水分解性を有する官能基がケイ素原子に1〜3個結合した分子骨格を有する。なお、有機シラン化合物は1種類で用いてもよく、複数種類を併用してもよい。また、加水分解性基がシラン素原子に1〜3個結合した分子骨格とは、同じシラン素原子を介して加水分解性基が複数個結合してもよいし、1分子中にケイ素原子が2個以上ある場合にあっては、各ケイ素原子に少なくとも1個の加水分解性基が結合していてもよい。
【0029】
上記加水分解性シリル基は、ケイ素原子と加水分解性基との結合が加水分解反応により切断されうる官能基である。上記加水分解性基としては特に限定されず、公知の官能基を用いることができ、例えば、アルコキシ基、オキシム基、アルケニルオキシ基、アセトキシ基;塩素、臭素等のハロゲン基等が挙げられる。加水分解性基はすべて同じ種類であってもよいし、すべて種類が異なっていてもよい。
【0030】
上記アルコキシ基としては特に限定されず、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基等が挙げられる。ジアルコキシシリル基、又は、トリアルコキシシリル基の場合には、同じアルコキシ基を用いてもよいし、異なるアルコキシ基を組み合わせて用いてもよい。また、種類の異なる官能基を組み合わせて用いてもよいし、異なる有機シラン素化合物を複数個組み合わせて用いてもよい。
【0031】
上記加水分解性シリル基を有する有機シラン素化合物としては、例えば、ジメトキシジメチルシラン、シクロヘキシルジメトキシメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、ジメトキシメチルオクチルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、クロロメチル(ジイソプロポキシ)メチルシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、ジエトキシジフェニルシラン、メチルトリメトキシシラン、トリメトキシプロピルシラン、イソブチルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、(3−クロロプロピル)トリメトキシシラン、クロロメチルトリエトキシシラン、トリス(2−メトキシエトキシ)ビニルシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ジエトキシ(3−グリシドキシプロピル)メチルシラン、トリメトキシ[2−(7−オキサビシクロロ[4.1.0]−ヘプト−3−イル)エチル]シラン、クロロトリメトキシシラン、クロロトリエトキシシラン、クロロトリス(1,3−ジメチルブトキシ)−シラン、ジクロロジエトキシシラン、3−(トリエトキシシリル)−プロピオニトリル、4−(トリエトキシシリル)−ブチロニトリル、3−(トリエトキシシリル)−プロピルイソシアネート、3−(トリエトキシシリル)−プロピルチオイソシアネート、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、1,3,5,7−テトラエトキシ−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラプロキシシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトライソプロポキシ−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラブトキシ−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタエトキシ−1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ヘキサフェニルシクロトリシロキサン、オクタフェニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラフェニルシクロテトラシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルシクロトリシラザン、1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルシクロテトラシラザン、1,7−ジアセトキシオクタメチルテトラシロキサン、1,7−ジクロロオクタメチルテトラシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ジクロロトリシロキサン、1,3−ジクロロテトライソプロピルジシロキサン、1,3−ジエトキシテトラメチルジシロキサン、1,3−ジメトキシテトラメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジクロロジシロキサン、1,2−ビス(メチルジクロロシリル)エタン、ジアセトキシジフェニルシラン、メチルトリス(エチルメチルケトオキシム)シラン、メチルトリス(N,N−ジエチルアミノキシ)シラン、ビス(エチルメチルケトオキシム)メチルイソプロポキシシラン、ビス(エチルメチルケトオキシム)エトキシメチルシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシルエチル)トリメチルシラン、トリス(1−メチルビニロキシ)ビニルシラン、メチルトリイソプロペノキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、ジアセトキシジメチルシラン、トリアセトキシビニルシラン、テトラアセトキシシラン、ジアセトキシメチルフェニルシラン、ジメトキシエチルメチルケトオキシムメチルシラン等が挙げられる。
【0032】
上記加水分解性シリル基を有する有機シラン素化合物としては、可塑剤との親和性が特に高いフェニル基やスチリル基といった芳香環を分子中に有する化合物が好ましい。芳香族系官能基は1分子中に複数個含まれていてもよいが、一つ含まれていれば充分な効果がある。また、芳香環は分子中の疎水性部位においてどの部分に結合していてもよいが、ケイ素と芳香環の間に鎖長の長すぎないアルキル鎖やポリオキソアルキレン鎖を介在している場合に特に良好な分散性が得られる。これは芳香環の有する可塑性との高い親和性に、更にアルキル鎖やポリオキシアルキレン鎖の立体障害効果により遮熱微粒子同士が凝集するのが妨げられるためであると推測される。有機シラン化合物のもつ芳香環と可塑剤の持つ不飽和結合との親和安定化により優れた分散性が得られるため、トリエチレングリコール−ジ−エチルブチラート、トリエチレングリコール−ジ−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコール−ジ−ブチルセバケート等を可塑剤として用いることがより好ましい。更には、一般に用いられるアクリルシラン、アミノシラン、エポキシシラン、ビニルシラン、メルカプトシラン、イソシアネートシランといった高い反応性を有する有機シラン化合物と比較して遮熱微粒子表面と反応を起こす加水分解性シリル基以外に活性な官能基を持たないフェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェネチルトリメトキシシラン、3−(p−メトキシフェニル)プロピルメチルジクロロシラン、3−(p−メトキシフェニル)プロピルトリクロロシラン、フェネチルトリクロロシラン、3−フェノキシプロピルトリクロロシラン、p−トリルトリメトキシシラン等が、特に車輌用等長期間使用される中間膜において製品性能安定性や安全性の観点からも望ましい。加水分解性有機シリル化合物は一般に無機微粒子の表面疎水化剤として用いられるが、他の種類の加水分解性有機シラン化合物と比べて、芳香環含有有機シラン化合物とトリエチレングリコール−ジ−エチルブチラート、トリエチレングリコール−ジ−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコール−ジ−ブチルセバケートとの組み合わせは、はるかに高い分散性と光学性能に関する長期安定性を得る。また、芳香環は他の添加剤や、空気や湿度といった外界成分と化学反応を起こすことがないので、製造ラインにおいて安全性が保障され、最終製品の状態にも影響を及ぼすことがない。
【0033】
その他の疎水化剤としては有機チタネート化合物を用いることができる。有機チタネート化合物としては特に限定されるものではないが、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ−n−ドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルピロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスフィト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルピロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルピロホスフェート)エチレンチタネート、ビス(ジオクチルピロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリロイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノメチル)チタネート等が挙げられる。特に中間膜可塑剤との親和性を考えると、構造内に芳香環を有するイソプロピルトリ−n−ドデシルベンゼンスルホニルチタネートが分散性に優れている。
【0034】
また、疎水化剤を用いた遮熱性微粒子の表面処理方法としては、アルコール系水酸基やフェノール性水酸基により遮熱性微粒子表面に存在する水酸基を置換する方法がある。アルコール系水酸基やフェノール性水酸基を有する化合物としては特に限定されるものではないが、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、n−ヘプチルアルコール、n−オクチルアルコール、n−デシルアルコール、n−ドデシルアルコール、n−テトラデシルアルコール、n−ヘキサデシルアルコール、n−オクタデシルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソペンチルアルコール、(−)−2−メチル−1−ブタノール、tert−ペンチルアルコール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、アリルアルコール、クロチルアルコール、メチルビニルカルビノール、ベンジルアルコール、α−フェニルエチルアルコール、β−フェニルアルコール、ジフェニルカルビノールトリフェニルカルビノール、シンナミルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、グリセリン、ペンタエリトリトール、カテコール、アミノフェノール、メチルフェノール、p−エチルフェノール、p−オクチルフェノール、o−メトキシフェノール、o−エトキシフェノール、p−ドデシルフェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、α−ナフトール、β−ナフトール、p−ニトロフェノール、o−ニトロフェノール、ノニルフェノール、ハイドロキノン、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−オキシ安息香酸メチル、β−オキシナフトエ酸、サリチル酸、1,4−ジヒドロキシナフタレン、o−フェニルフェノール、m−フェニルフェノール、p−フェニルフェノール、フェノール、4−フェノキシフェノール、4−t−ブチルカテコール、2−tert−ブチルヒドロキノン、p−t−ブチルフェノール、プロトカテキュ酸、ヘプチルパラベン、2−メチル−6−t−ブチルフェノール、レゾルシン等が挙げられる。また、これらは単独で用いてもよいし、複数個を組み合わせて用いてもよい。また、一分子中に2個以上のアルコール性水酸基を有する多価アルコール、又は、ポリオールを用いてもよい。特に中間膜可塑剤との親和性を考えると、構造内に芳香環を有する化合物が分散性に優れている。
【0035】
疎水化剤及び分散剤を用いた遮熱性微粒子の表面処理方法としては特に限定されず、従来公知の方法を用いることができ、流動床法、スプレー法等の乾式法;水や有機溶剤を用いた湿式法;有機溶剤に上記反応性表面処理剤を直接添加するインテグラルブレンド法;オートクレーブ法、超臨界流体を用いた処理、還流法等を用いることができる。
【0036】
上記疎水化剤及び分散剤は、不活性物質が芳香族化合物である場合に、樹脂や可塑剤への分散性が良好となるので好適に用いることができる。
【0037】
上記不活性物質と、疎水化剤又は分散剤として同じ種類の化合物が記載されている箇所があるが、これは不活性物質が疎水化効果や分散性を併せ持つ場合である。
【0038】
可視光に対する透明性を高めるために、不活性物質の好ましい厚みは1〜10nm、より好ましくは1〜5nmである。また、不活性物質の屈折率は、屈折率が遮熱性微粒子よりも小さく、マトリックス樹脂及び液状可塑剤よりも大きいことが好ましい。
【0039】
上記遮熱性微粒子は、上記遮熱合わせガラス用中間膜中に一次粒子として存在してもよく、一部凝集体として存在してもよい。上記遮熱性微粒子の平均一次粒子径としては、表面が不活性物質で保護された状態で好ましい下限が5nm、好ましい上限が30nmであり、その凝集体の好ましい平均粒子径は、表面が不活性物質で保護された状態で10〜100nmである。これらの範囲を下回った場合には、粒子が更に凝集を起こしヘイズ値等が悪化することがあり、これらの範囲を上回った場合には、本発明の効果である高エネルギー線の照射による可視光透過率の増加と、赤外線透過率の低下の充分な効果が得られないことがある。
【0040】
上記遮熱合わせガラス用中間膜における遮熱性微粒子含有量の好ましい下限は、ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して0.1重量部、好ましい上限は3.0重量部である。0.1重量部未満であると、赤外線カット効果が得られないことがある。また、3.0重量部を超えた場合には、高エネルギー線のエネルギーが、中間膜中の全ての遮熱性微粒子に対して均一に与えられないことがあり、効果の低下や可視光透過率の低下が起こることがある。
【0041】
上記マトリックス樹脂としては特に限定されないが、例えば、ポリビニルアセタール樹脂が好ましい。なかでも、ポリビニルブチラールが特に好ましい。
【0042】
また、必要な物性を考慮した上で、複数のポリビニルアセタール樹脂を併用してもよい。更に、アセタール化時に複数種類のアルデヒドを組み合わせて反応させた共ポリビニルアセタール樹脂も用いることができる。上記ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度の好ましい下限は40%、好ましい上限は85%であり、より好ましい下限は60%、より好ましい上限は75%である。
【0043】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールをアルデヒドによりアセタール化することにより調製することができる。
上記原料となるポリビニルアルコールは、通常、ポリ酢酸ビニルをケン化することにより得られる、ケン化度80〜99.8モル%のポリビニルアルコールが一般的に用いられる。
また、上記ポリビニルアルコールの重合度の好ましい下限は200、好ましい上限は3000である。200未満であると、得られる合わせガラスの耐貫通性が低下することがあり、3000を超えると、樹脂膜の成形性が悪くなり、また、樹脂膜の剛性が大きくなり過ぎ、加工性が悪くなることがある。より好ましい下限は500、より好ましい上限は2000である。
【0044】
上記アルデヒドとしては特に限定されず、一般に、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−バレルアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド、n−ノニルアルデヒド、n−デシルアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等、炭素数が1〜10のアルデヒドが用いられる。なかでも、n−ブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、n−バレルアルデヒドが好ましく、より好ましくは炭素数が4のブチルアルデヒドである。
【0045】
上記液状可塑剤としては特に限定されず、例えば、一塩基性有機酸エステル、多塩基性有機酸エステル等の有機系可塑剤、有機リン酸系、有機亜リン酸系等のリン酸系可塑剤等が挙げられる。
上記一塩基性有機酸エステル系可塑剤としては、例えば、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコールと、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2−エチル酪酸、ヘプチル酸、n−オクチル酸、2−エチルヘキシル酸、ペラルゴン酸(n−ノニル酸)、デシル酸等の一塩基性有機酸との反応によって得られたグリコール系エステルが挙げられる。なかでも、トリエチレングリコール−ジカプロン酸エステル、トリエチレングリコール−ジ−2−エチル酪酸エステル、トリエチレングリコール−ジ−n−オクチル酸エステル、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキシル酸エステル等のトリエチレングリコール等が好適である。
【0046】
上記多塩基性有機酸エステル系可塑剤としては、例えば、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等の多塩基性有機酸と、炭素数4〜8の直鎖状又は分枝状アルコールのエステル等が挙げられる。なかでも、ジブチルセバシン酸エステル、ジオクチルアゼライン酸エステル、ジブチルカルビトールアジピン酸エステル等が好適である。
上記有機リン酸系可塑剤としては、例えば、トリブトキシエチルホスフェート、イソデシルフェニルホスフェート、トリイソプロピルホスフェート等が挙げられる。
【0047】
上記遮熱合わせガラス用中間膜における上記液状可塑剤の含有量の好ましい下限は、熱可塑性樹脂100重量部に対して20重量部、好ましい上限は100重量部である。20重量部未満であると、耐貫通性が低下することがあり、100重量部を越えると、可塑剤のブリードアウトが生じて透明性や接着性が低下し、得られる合わせガラスの光学歪みが大きくなることがある。より好ましい下限は30重量部、より好ましい上限は60重量部である。
【0048】
上記遮熱合わせガラス用中間膜は、更に、接着力調整剤を含有することが好ましい。
上記接着力調整剤としては特に限定されないが、アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩が好適に用いられる。上記アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩としては特に限定されず、例えば、カリウム、ナトリウム、マグネシウム等の塩が挙げられる。上記塩を構成する酸としては特に限定されず、例えば、オクチル酸、ヘキシル酸、酪酸、酢酸、蟻酸等のカルボン酸の有機酸、又は、塩酸、硝酸等の無機酸が挙げられる。
【0049】
上記アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩の中でも、炭素数2〜16の有機酸のアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩がより好ましく、炭素数2〜16のカルボン酸マグネシウム塩及び炭素数2〜16のカルボン酸カリウム塩が更に好ましい。
【0050】
上記炭素数2〜16の有機酸のカルボン酸マグネシウム塩、又は、カリウム塩としては特に限定されないが、例えば、酢酸マグネシウム、酢酸カリウム、プロピオン酸マグネシウム、プロピオン酸カリウム、2−エチルブタン酸マグネシウム、2−エチルブタン酸カリウム、2−エチルヘキサン酸マグネシウム、2−エチルヘキサン酸カリウム等が好適に用いられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0051】
上記遮熱合わせガラス用中間膜における上記アルカリ金属塩、及び/又は、アルカリ土類金属塩の含有量としては特に限定されないが、好ましい下限はポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して0.001重量部、好ましい上限は1.0重量部である。0.001重量部未満であると、高湿度雰囲気下で合わせガラス用中間膜周辺部の接着力が低下することがあり、1.0重量部を超えると接着力が低くなりすぎるうえに合わせガラス用中間膜の透明性が失われることがある。より好ましい下限は0.01重量部、より好ましい上限は0.2重量部である。
【0052】
上記遮熱合わせガラス用中間膜は、更に、紫外線吸収剤を含有することが好ましい。
上記紫外線吸収剤としては、Propanedioc acid,[(4−methoxyphenyl)−methylene]−dimethyl ester(Clariant社製:Hostavin・PR−25)等のマロン酸エステル系紫外線吸収剤、及び/又は、2−Ethyl,2’−ethoxy−oxalanilide(Clariant社製:Sanduvor・VSU)等のシュウ酸アニリド系紫外線吸収剤が好適である。
【0053】
上記紫外線吸収剤としては、この他にも従来公知のベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、トリアジン系、ベンゾエート系の紫外線吸収剤を併用してもよい。
上記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアール(Tinuvin P、チバガイギー社製)、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール(Tinuvin 320、チバガイギー社製)、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアール(Tinuvin 326、チバガイギー社製)、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール(Tinuvin 328、チバガイギー社製)等や、LA−57(アデカアーガス社製)等のヒンダードアミン系のものが挙げられる。
上記ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、オクタベンゾン(Chimassorb81、チバガイギー社製)等が挙げられる。
上記トリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(ヘキシル)オキシトフェノール(Tinuvin 1577FF、チバガイギー社製)等が挙げられる。
上記ベンゾエート系としては、例えば、2,4−ジ−tert−ブチルフェニル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート(Tinuvin 120、チバガイギー社製)等が挙げられる。
【0054】
上記遮熱合わせガラス用中間膜における上記紫外線吸収剤の含有量としては特に限定されないが、好ましい下限はポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して0.01重量部、好ましい上限は5.0重量部である。0.01重量部未満であると、紫外線吸収の効果がほとんど得られないことがあり、5.0重量部を超えると、樹脂の耐候劣化を引き起こすことがある。より好ましい下限は0.05重量部、より好ましい上限は1.0重量部である。
【0055】
また、高エネルギー線照射による樹脂の色変化を抑制するために、例えばブルーインク剤のような色調調整剤を添加してもよい。
【0056】
上記遮熱合わせガラス用中間膜は、更に必要に応じて、酸化防止剤、光安定剤、接着力調整剤として変性シリコーンオイル、難燃剤、帯電防止剤、接着力調整剤、耐湿剤、熱線反射剤、熱線吸収剤等の添加剤を添加してもよい。
【0057】
上記酸化防止剤としては特に限定されず、フェノール系のものとして、例えば、2,6−Di−tert−butyl−P−Cresol(BHT)(住友化学社製「スミライダーBHT(商品名)」)、テトラキス−[メチレン−3−(3’−5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(イルガノックス1010、チバガイギー社製)等が挙げられる。
【0058】
上記光安定剤としては、ヒンダードアミン系のものとして、例えば旭電化社製「アデカスタブLA−57(商品名)」等が挙げられる。
【0059】
上記変性シリコーンオイルとしては特に限定されず、例えば、特公昭55−29950号公報で開示されているようなエポキシ変成シリコーンオイル、エーテル変性シリコーンオイル、エステル変性シリコーンオイル、アミン変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル等が挙げられる。これらの変性シリコーンオイルは一般に、ポリシロオキサンに変性すべき化合物を反応させて得られる液体である。
上記変性シリコーンオイルは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
上記変性シリコーンオイルの分子量の好ましい下限は800、好ましい上限は5000である。800未満であると、表面への局在化が低下することがあり、5000を超えると、樹脂との相溶性が不良となり、得られる合わせガラス用中間膜の表面にブリードアウトしてガラスとの接着力が低下することがある。より好ましい下限は1500、より好ましい上限は4000である。
【0060】
上記遮熱合わせガラス用中間膜における上記変性シリコーンオイルの含有量の好ましい下限はポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して0.01重量部、好ましい上限は0.2重量部である。0.01重量部未満であると、吸湿による白化の防止効果が不充分となることがあり、0.2重量部を超えると、樹脂との相溶性が不良となり、得られる合わせガラス用中間膜の表面にブリードアウトしてガラスとの接着力が低下することがある。より好ましい下限は0.03重量部、より好ましい上限は0.1重量部である。
【0061】
ただし、これらの添加剤が本発明で用いられる高エネルギー線の一部、若しくは、全てを吸収するような性質である場合は、本発明の効果を阻害することがあるので、必要最小限にとどめる必要がある。
【0062】
上記遮熱合わせガラス用中間膜の膜厚としては特に限定されないが、合わせガラスとして最小限必要な耐貫通性を考慮すると、実用的には、0.1〜1.0mmであることが好ましい。より好ましくは、0.3〜0.8mmである。この範囲よりも大きい場合には、遮熱性微粒子への高エネルギー線照射によるエネルギー量が小さくなりすぎて、本発明の効果が得られない場合がある。また、耐貫通性の向上を目的として、必要に応じて本発明の中間膜に他の中間膜を積層してもよいが、この場合も、遮熱性微粒子への高エネルギー線のエネルギーが妨げられない程度にする必要がある。
【0063】
上記遮熱合わせガラス用中間膜は、10MHzにおける比誘電率が4.2以下、及び/又は、誘電正接tanδが0.08以下、100MHzにおける比誘電率が3.8以下、及び/又は、誘電正接tanδが0.08以下、1GHzにおける比誘電率が3.3以下、及び/又は、誘電正接tanδが0.08以下であることが好ましい。これにより、電磁波吸収性能が優れたものとなる。
【0064】
本発明の遮熱合わせガラス用中間膜の改質方法によれば、不活性物質により被覆された遮熱性微粒子を用いた場合であっても、高エネルギー線を照射することにより、優れた光学性能を発揮できる遮熱合わせガラス用中間膜を得ることができる。
本発明の遮熱合わせガラス用中間膜の改質方法により得られる遮熱合わせガラス用中間膜(以下、改質中間膜ともいう)もまた、本発明の1つである。
【0065】
改質中間膜は、透明性の指標となる可視光透過率が70%以上、可視光透過率変化ΔTvが1.0%以上、波長300〜2100nmの波長領域での日射透過率が可視光透過率の85%以下、かつ、ヘイズ値が1.0%以下である。
【0066】
上記可視光透過率とは、380〜780nmの波長領域を持つ光の透過率を意味し、JIS Z 8722(2000)「色の測定方法−反射及び透過物体色」、及び、JIS R 3106(1998)「板ガラス類の透過率・反射率・放射率・日射熱取得率の試験方法」に準拠して求めた380〜780nmの波長領域での可視光透過率である。また、可視光透過率変化とは、下記式(3)で示される、高エネルギー線照射後の可視光透過率から、高エネルギー線照射前の可視光透過率を減ずることで求まる値とする。
可視光透過率変化(ΔTv)=Tv(高エネルギー線照射後)
−Tv(高エネルギー線照射前) (3)
【0067】
改質中間膜は、波長領域300〜2500nmの日射透過率積分値Tのうち、波長領域1200〜1400nmの透過率積分値の割合Taが15.0%以上、及び/又は、波長領域1400〜1600nmの透過率積分値の割合Tbが10.0%以下、及び/又は、波長領域1600〜1800nmの透過率積分値の割合Tcが3.0%以下、及び/又は、波長領域1800〜2000nmの透過率積分値の割合Tdが2.0%以下、及び/又は、波長領域2000〜2400nmの透過率積分値の割合Teが2.0%以下である。
これにより、可視光領域においては高い透明性が得られ、更に、熱的作用の原因となる赤外線、特に、皮膚への吸収が高くなる波長領域が上記範囲にあることで、皮膚温度の上昇を抑えることができる。
【0068】
改質中間膜の遮熱性能は、JIS Z 8722 及びJIS R 3106記載の重価係数を用い、規格化することにより求めることができる波長領域780〜2100nmの赤外線透過率Tirによって評価することとする。また、赤外線透過率とは、下記式(4)で示される、高エネルギー線照射後の赤外線透過率から、高エネルギー線照射前の赤外線透過率を減ずることで求まる値とする。
赤外線透過率変化(ΔTir)=Tir(高エネルギー線照射後)
−Tir(高エネルギー線照射前) (4)
【0069】
不活性物質により被覆された遮熱性微粒子に対して、3.0eV以上のエネルギーを有する電磁波を含む高エネルギー線を照射してなる改質された遮熱性微粒子もまた、本発明の1つである。
上記改質中間膜を用いてなる合わせガラスもまた、本発明の1つである。
【0070】
上記合わせガラスに使用されるガラスとしては特に限定されず、一般に使用されている透明板ガラスを使用することができ、例えば、フロート板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入りガラス、線入り板ガラス、着色された板ガラス、熱線吸収ガラス等の有機ガラスが挙げられる。なかでも、熱線吸収ガラスを用いることが好ましい。
【0071】
上記熱線吸収ガラスとしては特に限定されないが、なかでもグリーンガラスが好適である。また、上記熱線吸収ガラスのなかでも、可視光透過率75%以上、波長領域900〜1300nmにおいて透過率が65%以下である熱線吸収ガラスを用いれば、遮熱性微粒子の赤外線カット性が1300nmより長波長側で大きく、900〜1300nmの領域では比較的小さいことから、同じ可視光光線透過率に対しても、日射透過率を低くすることができ、日射カット率を向上させることができる。このような熱線吸収ガラスは、中間膜を挟み込む1対のガラスのうち、両側に用いてもよいし、片側のみに用いてもよい。
【0072】
上記ガラスの厚みとしては、用途によって適宜選択されればよく、特に限定されるものではないが、本発明で用いる高エネルギー線を吸収する性質である場合には、高エネルギーのエネルギーが遮熱性微粒子に与えられる程度に薄くなければならない。
【0073】
本発明の合わせガラスは、本発明の合わせガラス用中間膜を用いていることにより、樹脂の劣化が抑制され、極めて遮熱性、透明性に優れていることから、例えば、自動車のフロントガラス、サイドガラス、リアガラス、ルーフガラス;航空機や電車等の乗り物のガラス部位、建築用ガラス等に好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0074】
本発明により、不活性物質により被覆された遮熱性微粒子を用いた場合であっても、優れた光学性能を発揮できる遮熱合わせガラス用中間膜を得ることができる遮熱合わせガラス用中間膜の改質方法、合わせガラス用中間膜、及び、合わせガラスを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0075】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0076】
(実験例1)
(1)遮熱性微粒子の表面処理
脱水処理したエタノール(ナカライテスク社製)に、不活性物質としてテトラエトキシシラン(信越シリコーン社製、KBE04)を2重量%となるように溶解させ、あらかじめ100℃にて1時間熱処理したITO粉末(三井金属社製)を20重量%となるように懸濁させた溶液を調製した。得られた調製溶液をビーズミルを用いて充分に撹拌することにより、ITO微粒子の表面に酸化ケイ素を被覆すると同時に微粉砕化した。続いて分散液中の粒子を遠心分離機により回収した。その後回収した粒子を150℃で熱処理することにより、酸化ケイ素で表面が処理されたITO微粒子を得た。
【0077】
(2)遮熱性微粒子含有可塑剤溶液の作製
2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノール(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製 TINUVIN326)、高分子フェノール系酸化防止剤(チバガイギー社製、イルガノックス 1010)、2−エチルヘキサン酸(ナカライテスク社製)を溶解させたトリエチレングリコールビス(2−エチルヘキサノエート)(協和発酵工業社製 3GO)に対して、酸化ケイ素により表面処理されたITO微粒子をポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル(第一工業社製、プライサーフA210G)を溶解させたエタノール(ナカライテスク社製)を分散液として、ペイントシェーカーを用いて分散させることにより、ITO微粒子含有可塑剤溶液を得た。
【0078】
(3)遮熱性微粒子含有中間膜の作製
得られたITO微粒子含有可塑剤溶液をプラスト機にてポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業社製 エスレック BH−8)と混練し、押出機により金型よりシート状に押し出して、厚さ760μmの合わせガラス用中間膜を得た。それぞれの成分の仕込み組成は表1に示す通りである。
【0079】
(4)合わせガラスの作製
得られたITO微粒子含有中間膜を、その両端から透明なフロートガラス(縦30cm×横30cm×厚さ2.5mm)で挟み込み、これをゴムバック内に入れ、20torrの真空度で20分間脱気した後、脱気したままオーブンに移し、更に90℃で30分間保持しつつ真空プレスした。このようにして予備圧着された合わせガラスをオートクレーブ中で135℃、圧力12kg/cmの条件で20分間圧着を行い、合わせガラスを得た。
(5)高エネルギー線の照射
得られた合わせガラスに、高エネルギー線としてスーパーUV光、及び、スーパーXe光を以下に示す条件にて照射し、未照射のものと比較を行った。
【0080】
(スーパーUV光照射試験)
5cm×10cmの照射サンプルを作製し、以下の条件で本発明の方法の実施を行った。
試験装置 :アイスーパーUVテスター(岩崎電気社製、SUV−F11型)
UV強度 :100mW/cm
限定波長 :295〜450nm
ブラックパネル温度:63℃
装置内相対温度 :50%
照射距離 :235mm
照射時間 :300時間
【0081】
(スーパーXe光照射試験)
5cm×10cmの照射サンプルを作製し、以下の条件で本発明の方法の実施を行った。
試験装置 :SuperXenonWeatherMeter S×2−75(スガ試験機株式会社製)
UV強度 :180W/m
ブラックパネル温度:63℃
装置内相対温度 :50%
照射時間 :300時間
【0082】
(実験例2)
不活性物質として、テトラエトキシシランの代わりに、テトラノルマルブトキシジルコニウム(松本製薬工業社製、オルガチックスZA60)を用いた以外は実験例1と同様の方法により、合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを作製し、高エネルギー線を照射した。
【0083】
(実験例3)
不活性物質として、テトラエトキシシランの代わりに、アルミニウムsec−ブチレート(川研ファインケミカル社製、ASBN)を用いた以外は実験例1と同様の方法により、合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを作製し、高エネルギー線を照射した。
【0084】
(実験例4)
めのう乳鉢にて2時間粉砕することにより表面をアモルファス化したITO微粒子を得た。次に、実験例1と同様の方法により、ITO微粒子含有可塑剤溶液を作製し、合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを作製し、高エネルギー線を照射した。
【0085】
(実験例5)
リン酸の5%水溶液にてITO粉末(三井金属社製)を超音波照射しながら、懸濁・撹拌させ、続いて回収した粉末を100℃にて乾燥させることにより、リン酸の吸着したITO粉末を得た。これを更にモリブデン酸アンモニウムの5%硝酸酸性水溶液にて超音波照射しながら、懸濁・撹拌させ、続いて回収した粉末を100℃にて乾燥させることにより、リンモリブデン酸アンモニウムで被覆されたITO粉末を得た。次に、実験例1と同様の方法により、ITO微粒子含有可塑剤溶液を作製し、合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを作製し、高エネルギー線を照射した。
【0086】
(実験例6)
リン酸の5%水溶液にてITO粉末を超音波照射しながら、懸濁・撹拌させ、続いて回収した粉末を100℃にて乾燥させることにより、リン酸の吸着したITO粉末を得た。これを更に蒸留水、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、塩化カリウム、リン酸−水素カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、トリスヒドロキシメチルアミノメタンにより、Na=142mM、K=5mM、Mg2+=1.5mM、Ca2+=2.5mM、Cl=148.8mM、HPO2−=1.0mM、SO2−=0.5mM、となるように調整したリン酸水溶液にて、ジェットミルを用いて表面処理及び微粉砕化させた。続いて回収した粉末を100℃にて乾燥させることにより水酸アパタイトで表面が被覆されたITO粉末を得た。次に、実験例1と同様の方法により、ITO微粒子含有可塑剤溶液を作製し、合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを作製し、高エネルギー線を照射した。
【0087】
(実験例7)
不活性物質として、テトラエトキシシランの代わりに、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製、KBM503)を用いた以外は実験例1と同様の方法により、合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを作製し、高エネルギー線を照射した。
【0088】
(実験例8)
不活性物質として、テトラエトキシシランの代わりに、2−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製、KBM303)を用いた以外は実験例1と同様の方法により、合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを作製し、高エネルギー線を照射した。
【0089】
(実験例9)
不活性物質として、テトラエトキシシランの代わりに、フェニルメトキシシラン(信越シリコーン社製、KBM103)を用いた以外は実験例1と同様の方法により、合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを作製し、高エネルギー線を照射した。
【0090】
(参考例1)
表面を不活性物質にて保護していないITO微粒子を用いた以外は実験例1と同様の方法により、ITO微粒子含有可塑剤溶液を作製し、合わせガラス用中間膜及び合わせガラスを作製し、高エネルギー線を照射した。
【0091】
<評価>
実験例1〜9及び参考例1で作製した合わせガラスについて以下の方法により評価した。結果を表1〜3に示した。
【0092】
(6)中間膜中における遮熱性微粒子の粒子径確認
中間膜の超薄片作成後、以下の透過型電子顕微鏡(TEM)を使用して、以下の測定条件でITO微粒子の分散状態を撮影、観察した。なお、撮影は3μm×4μmの範囲を×20000倍で撮影し、写真の焼付けで3倍に引き伸ばした。
ITO微粒子の粒子径は、上記撮影により得られた写真中の微粒子の最も長い径とした。また、上記撮影範囲3μm×4μm中の全微粒子の粒子径を測定し、体積換算平均により、平均粒子径を求めた。
観察装置 :透過型電子顕微鏡(日立製作所株式会社製 H−7100FA型)
加速電圧 :100kV
切片作製装置:ウルトラミクロトーム(ライカ株式会社製 EM−ULTRACUT・S)
:REICHERT−NISSEI−FCS(凍結切削システムライカ株式会社製 FC−S型)
ナイフ :DIATOME ULTRA CRYO DRY(DIATOME株式会社製)
【0093】
(7)合わせガラスの可視光透過率の測定
直記分光光度計(島津製作所社製、U−4000)を使用して、JIS Z 8722及びJIS R 3106に準拠して、380〜780nmの波長領域での可視光透過率Tv、300〜2500nmの日射透過率Ts、イエローインデックス値、及び、CIE1976L*a*b*表示系におけるb*を求めた。
【0094】
(8)赤外線透過率の測定、及び、遮熱性能の評価
波長領域780〜2100nmの近赤外線領域の赤外線透過率TirをJIS Z 8722及びJIS R 3106記載の重量係数を用い、規格化することにより求めた。得られたTirの大小により、合わせガラスの遮熱性能を評価した。
【0095】
(9)合わせガラスのヘイズ値の評価
高エネルギー線照射後の合わせガラスのヘイズ値(曇り価)をJIS K 6714(1995)「航空機用メタクリル樹脂板」に準拠して測定した。
【0096】
(10)合わせガラスの耐候性、及び、耐光性の評価
上記イエローインテックス値、及び、上記CIE1976L*a*b*表示系におけるb*値は、可視光透過率の測定における測定データから求め、その変化値から耐候性、及び、耐光性を評価した。
【0097】
なお、耐候性、耐光性とは、上記イエローインデックス値変化、b*値変化、及び、可視光透過率変化にて評価するものとする。すなわち、マトリックス樹脂の劣化に伴う、可視光透過率低下、イエローインデックス値の上昇、b*値の上昇の度合いが低い場合を、耐候性、耐光性のよい状態とする。
【0098】
【表1】

【0099】
【表2】

【0100】
【表3】

【0101】
表1〜3の実験例1〜9の結果より、ITO微粒子はナノスケールで微分散していることが分かる。また、スーパーUV光、及び、スーパーXe光の照射により、可視光透過率が増加し、かつ、赤外線透過率が低下している。更に、イエローインテックス値とb*値の上昇が抑えられており、樹脂の劣化に伴う合わせガラスの黄変が防がれていることが分かる。
【0102】
参考例1より、ITO微粒子の有する表面活性を有するために、高エネルギー線の照射によりマトリックス樹脂が劣化し、その結果、合わせガラスの可視光透過率が低下し、また、YI値及びb*値が上昇していることか分かる。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明によれば、不活性物質により被覆された遮熱性微粒子を用いた場合であっても、優れた光学性能を発揮できる遮熱合わせガラス用中間膜を得ることができる遮熱合わせガラス用中間膜の改質方法、合わせガラス用中間膜、及び、合わせガラスを提供することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
不活性物質により被覆された遮熱性微粒子、マトリックス樹脂、及び、液状可塑剤を含有する遮熱合わせガラス用中間膜に対して、3.0eV以上のエネルギーを有する電磁波を含む高エネルギー線を照射することにより、波長380〜780nmの可視光透過率を向上させると同時に、波長780〜2100nmの近赤外線透過率を低下させることを特徴とする遮熱合わせガラス用中間膜の改質方法。
【請求項2】
高エネルギー線は、スーパーUV光、UV線、可視光線、スーパーXe光、Xe光、レーザー光、電子線及びマイクロ波からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載の遮熱合わせガラス用中間膜の改質方法。
【請求項3】
高エネルギー線は、波長300〜450nmの光を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の遮熱合わせガラス用中間膜の改質方法。
【請求項4】
高エネルギー線の照射の前後において、下記式(1)で示される遮熱合わせガラス用中間膜のイエローインデックス値変化(ΔYI)が0%以下であり、かつ、下記式(2)で示されるCIE1976L*a*b*表示系におけるb*値変化(Δb*)が0%以下である範囲で高エネルギー線を照射することを特徴とする請求項1、2又は3記載の遮熱合わせガラス用中間膜の改質方法。
ΔYI=YI(高エネルギー線照射後)−YI(高エネルギー線照射前) (1)
Δb*=b*(高エネルギー線照射後)−b*(高エネルギー線照射前) (2)
【請求項5】
遮熱性微粒子の表面をアモルファス(非晶質)金属酸化物で保護することにより遮熱性微粒子の表面を不活性化することを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の遮熱合わせガラス用中間膜の改質方法。
【請求項6】
アモルファス金属酸化物はアモルファス酸化インジウム、アモルファス酸化錫、アモルファス酸化アンチモン、アモルファス錫ドープ酸化インジウム、アモルファス酸化アンチモンドープ酸化錫、アモルファス酸化ケイ素、アモルファス酸化アルミニウム、アモルファス酸化ジルコニウム、アモルファス酸化カルシウム、アモルファス酸化チタン、アモルファス酸化亜鉛、及び、アモルファス酸化セリウムからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項5記載の遮熱合わせガラス用中間膜の改質方法。
【請求項7】
遮熱合わせガラス用中間膜は、平均粒子径が100nm以下である表面を保護された錫ドープ酸化インジウム(ITO)微粒子を、マトリックス樹脂100重量部に対して、3.0重量部以下含有することを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の遮熱合わせガラス用中間膜の改質方法。
【請求項8】
遮熱性微粒子は、錫ドープ酸化インジウム(ITO)微粒子、アンチモンドープ酸化錫(ATO)微粒子、アルミニウムドープ酸化亜鉛微粒子、インジウムドープ酸化亜鉛微粒子、ガリウムドープ酸化亜鉛微粒子、6ホウ化ランタン微粒子及び6ホウ化セリウム微粒子からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の遮熱合わせガラス用中間膜の改質方法。
【請求項9】
マトリックス樹脂は、ポリビニルアセタール樹脂であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の遮熱合わせガラス用中間膜の改質方法。
【請求項10】
液状可塑剤は、ジヘキシルアジペート、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、テトラエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、テトラエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、テトラエチレングリコール−ジ−2−ヘプタノエート、及び、トリエチレングリコール−ジ−ヘプタエートからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8又は9記載の遮熱合わせガラス用中間膜の改質方法。
【請求項11】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10記載の遮熱合わせガラス用中間膜の改質方法により改質された遮熱合わせガラス用中間膜であって、
不活性物質により被覆された遮熱性微粒子、マトリックス樹脂、及び、液状可塑剤を含有し、波長380〜780nmの可視光透過率が70%以上、かつ、波長300〜2100nmにおける日射透過率が85%以下、かつ、ヘイズ値が1.0%以下である
ことを特徴とする遮熱合わせガラス用中間膜。
【請求項12】
請求項11記載の遮熱合わせガラス用中間膜を用いてなることを特徴とする合わせガラス。
【請求項13】
不活性物質により被覆された遮熱性微粒子に対して、3.0eV以上のエネルギーを有する電磁波を含む高エネルギー線を照射してなることを特徴とする改質された遮熱性微粒子。



【公開番号】特開2012−236767(P2012−236767A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−186760(P2012−186760)
【出願日】平成24年8月27日(2012.8.27)
【分割の表示】特願2006−531559(P2006−531559)の分割
【原出願日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】