説明

遮熱性塗料および遮熱板

【課題】クロムをまったく含まず安全で、しかも、遮熱効果に優れた遮熱性塗料および遮熱板を提供することを目的としている。
【解決手段】ルチル型のMnSrO3等の酸化マンガンストロンチウムを黒色顔料としてバインダー樹脂中に分散させた塗料を、アルミニウム、鉄、ステンレス鋼等の金属材料、スレート瓦(たとえば、クボタ社製の商品名コロニアル等)、モルタル、ガラス等の無機材料、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等の有機材料、アスファルト板等からなる基板に塗装するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮熱性塗料および遮熱板に関する。
【背景技術】
【0002】
人類は金属を使用することにより飛躍的に生産を拡大し発展を続けてきた。特に近代から現代にかけ資本主義社会のもと大量生産、大量消費の風潮の中で資源乱開発、工場排水による河川、湖沼、海の水質汚染や地質汚染が深刻な問題となった。また工業地帯での排煙、自動車からの排気ガスなどの大気汚染も依然として続いている。さらに化石燃料の燃焼により生じる炭酸ガスが地球温暖化の元凶とされ、その削減が深刻な問題となっている。
太陽光を利用したり、風力、潮位、地熱などから自然エネルギーを用いた発電など炭酸ガス削減への努力は始まっている。
【0003】
また、都市部におけるヒートアイランド現象を防ぐためのビル屋上への緑化を行ったり、太陽光中の赤外線をカットし、建造物の室温上昇を抑える遮熱性塗料を塗布するなどの方策が採用され冷房効率をあげる省エネルギー対策が浸透しつつある。
ところで、日本の家屋は、瓦屋根を伝統的に用い屋根の色としては黒色またはグレー色が好まれており最近のプレハブ住宅と呼ばれる工場生産の家屋の屋根においても暗いグレーやブラウンなどの彩度、明度の低い色が主流であるが、従来、黒色顔料として使用されているカーボンブラックには、遮熱効果がほとんどない。
【0004】
そこで、太陽光による室内温度の上昇を抑える目的で金属酸化物からなる黒色顔料を含む遮熱性塗料が塗布された遮熱板が既に提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
ところで、上記先に提案された遮熱板の場合、金属酸化物としてFe23とCr23とを併用した50%前後の高い日射反射率を有する黒色顔料を用いている。
【0005】
しかしながら、6価クロムは、水質汚濁法、土壌汚染有害物質として厳しく規制されている。3価クロムであっても6価への変化は条件により起こりうることであり全クロムとして判断すべきである。労働安全衛生面でも特定化学物質等予防規則でもクロム酸およびその円として0.1mg/リットル、0.05mg/m2が管理濃度である。
【0006】
【特許文献1】特許第3513149号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みて、クロムをまったく含まず安全で、しかも、遮熱効果に優れた遮熱性塗料および遮熱板を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明にかかる遮熱性塗料は、クロム非含有で、酸化マンガンストロンチウムを黒色顔料として含むことを特徴としている。
【0009】
本発明の遮熱性塗料において、酸化マンガンストロンチウムとしては、MnSrO3、MnSrO4が挙げられ、中でも、ルチル型のMnSrO3が好適である。
酸化マンガンストロンチウムの粒径は、特に限定されないが、0.7μm〜1.3μm程度が好ましく、1.03μmの15%前後の粒径とすることがより好ましい。
【0010】
本発明の遮熱性塗料において、酸化マンガンストロンチウムの配合量は、特に限定されないが、たとえば、黒色塗料の場合、全塗料中の20重量%〜50重量%、グレー塗料の場合、全塗料中の0.5重量%〜20重量%程度が好ましい。
なお、グレー塗料の場合、酸化マンガンストロンチウム以外に白色顔料も添加されるが、白色顔料としては、酸化チタンが好ましい。
【0011】
バインダー成分としては、特に限定されないが、たとえば、アクリル樹脂、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。
【0012】
さらに、本発明の遮熱性塗料中には、本発明の黒色顔料以外のクロムを含まない、公知の塗料に使用されている顔料、助剤、分散剤、充填剤等を適宜添加することができる。
【0013】
一方、本発明にかかる遮熱板は、上記本発明の遮熱性塗料が基板表面に塗布されていることを特徴としている。
【0014】
基板材料としては、特に限定されないが、たとえば、アルミニウム、鉄、ステンレス鋼等の金属材料、スレート瓦(たとえば、クボタ社製の商品名コロニアル等)、モルタル、ガラス等の無機材料、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等の有機材料、アスファルト板等が挙げられる。
遮熱性塗料の塗布方法としては、特に限定されないが、たとえば、スプレー塗布、ロールコーター、ダイコーター等が挙げられる。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかる遮熱性塗料は、以上のようにクロム非含有で、酸化マンガンストロンチウムを黒色顔料として含むので、クロムによる環境汚染などもなく安全で、しかも、酸化マンガンストロンチウムにより優れた遮熱効果を発揮する。
【0016】
本発明にかかる遮熱板は、本発明の遮熱性塗料が金属製基板表面に塗布されているので、屋根等に葺設することによって、太陽光を反射して、熱線による室内の温度上昇を防ぐことができ、省エネルギー効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明の実施例を詳しく説明する。
【0018】
(実施例1)
以下の配合の本発明の遮熱性塗料Aを得た。
MnSrO3(ルチル型) 40.0重量%
アクリルエマルション(固形分50%) 32.0重量%
溶剤 11.5重量%
分散剤 2.5重量%
助剤 3.0重量%
水 11.0重量%
上記のようにして得られた遮熱性塗料Aをそれぞれ20μmの厚みとなるように、アルミニウム板(300×225×0.5mm)にバーコーターで塗布して、遮熱板サンプルを得た。
【0019】
(比較例1)
顔料としてMnSrO3に代えてFe3O4を用いて塗料Bを得たのち、この塗料Bを用いて実施例1と同様にして遮熱板サンプルを得た。
【0020】
(比較例2)
顔料としてMnSrO3に代えてCoFeCr系のものを用いて塗料Cを得たのち、この塗料Cを用いて実施例1と同様にして遮熱板サンプルを得た。
【0021】
(比較例3)
顔料としてMnSrO3に代えてFe(FeCr)2O4を用いて塗料Dを得たのち、この塗料Dを用いて実施例1と同様にして遮熱板サンプルを得た。
【0022】
つぎに、図1に示すように、発泡スチロール製の試験箱11と、300Wブロムランプ12と、温度センサ13、14と、記録計15とを備える測定装置1を用意した。
【0023】
そして、上記実施例1および比較例1〜3で得られた遮熱板サンプル2をそれぞれ図1に示すように、遮熱板サンプル2の塗装面側が外側に向いた状態で試験箱11の上部開口を塞ぐようにセットし、遮熱板サンプル2から30cm離れた位置に配置した300Wブロムランプ12から光線を照射し、温度センサ13、14によって試験箱11内と遮熱板サンプル2表面の温度の経時変化を調べるとともに、分光光度計(日立製作所製U-3410型自記分光光度計)を用いて各遮熱板サンプル2の日射反射率をJIS A 5759の方法に従って測定し、その結果を図2、3に示した。また、表1に平均日射反射率、15分後、30分後の試験箱11内温度、15分後、30分後の遮熱板サンプル2表面温度および各塗料中の全クロム量をJIS K 0102の方法により測定した結果を合わせて示した。
なお、図2中、実線は、実施例1、比較例1〜3の遮熱板サンプル2表面温度の経時変化をそれぞれあらわし、点線は、実施例1、比較例1〜3の試験箱11内温度をそれぞれあらわしている。
【0024】
【表1】

【0025】
図2、3および表1から本発明の遮熱性塗料および遮熱板は、遮熱効果が高く、しかもクロムを含まず安全であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明にかかる遮熱性塗料は、特に限定されないが、たとえば、建築物の屋根や外壁、車両、船舶、プラント、物置、畜舎等の塗装に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】遮熱板サンプルの遮熱効果を調べるための測定装置を模式的にあらわす断面図である。
【図2】実施例1、比較例1〜3の遮熱板サンプル表面温度の経時変化、および、実施例1、比較例1〜3の試験箱内温度の経時変化をあらわすグラフである。
【図3】実施例1、比較例2、比較例3の遮熱板サンプルの分光分析計を用いて測定した分光反射率曲線を対比してあらわすグラフである。
【符号の説明】
【0028】
1 試験装置
11 試験箱
12 300Wブロムランプ
13 温度センサ
14 温度センサ
15 記録計
2 遮熱板サンプル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロム非含有で、酸化マンガンストロンチウムを黒色顔料として含むことを特徴とする遮熱性塗料。
【請求項2】
請求項1に記載の遮熱性塗料が基板表面に塗布されていることを特徴とする遮熱板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−16118(P2007−16118A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−198564(P2005−198564)
【出願日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(598119153)株式会社大高商会 (1)
【Fターム(参考)】