説明

遮熱性舗装用塗料

【課題】 本発明が解決しようとする課題は、優れた遮熱性を有する遮熱性舗装用塗料を提供することである。
【解決手段】 ラジカル硬化性樹脂(a−1)及び重合性不飽和単量体(a−2)を含むラジカル硬化性樹脂組成物(A)と、顔料(B)とを含有する遮熱性舗装用塗料において、
前記顔料(B)をラジカル硬化性樹脂組成物(A)に混合分散させて顔料分散体を得、次いで、該顔料分散体を、更にラジカル硬化性樹脂組成物(A)で混合分散することで得られることを特徴とする遮熱性舗装用塗料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、アスファルト舗装、コンクリート舗装等に使用できる遮熱性舗装用塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、都市部の気温がその周辺の郊外部に比べて異常な高温を示すヒートアイランド現象の影響が大きくなっており、産業界においてはその緩和策が急務となっている。
【0003】
ヒートアイランド現象の原因としては様々な要素があるが、その1つとして、アスファルトやコンクリートによる光反射率の低下、熱吸収率の増加が挙げられる。
その緩和策としては、例えば、透水性舗装、保水性舗装、遮熱性舗装が近年採用され始めている。
【0004】
前記遮熱性舗装としては、例えば、(A)塗膜形成成分と、(B)可視領域で吸収を示し近赤外領域で反射を示す顔料とを含有し、前記(A)塗膜形成成分が、(A1)アクリル酸アルキルエステルまたはメタクリル酸アルキルエステルと、(A2)前記(A1)成分に可溶なアクリル系重合体と、(A3)前記(A1)成分に可溶な可塑剤と、(A4)1分子中に少なくとも2個の重合性二重結合を有する化合物と、(A5)40℃以上の融点を有するパラフィンまたはワックスとを含有するものであることを特徴とする舗装面用遮熱塗料が知られている(特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、前記舗装面用遮熱塗料は十分な遮熱性能を奏しているとは言えず、産業界からはより向上した遮熱性能を具備し、アスファルトやコンクリート等の路面温度を更に低減できる遮熱性舗装用塗料が強く求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−23277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、優れた遮熱性を有する遮熱性舗装用塗料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意研究を進める中で、ラジカル硬化性樹脂組成物の使用に着目した。しかしながら、顔料をラジカル硬化性樹脂組成物中に単純に混合分散した場合には、塗膜の遮熱性が十分でないことが分かった。
そこで、本発明者等は、顔料分散工程と、塗料化工程とを別々にすることを検討した。
その結果、遮熱性を有する顔料をラジカル硬化性樹脂組成物で混合分散させ、その後で、該顔料分散体をラジカル硬化性樹脂組成物でさらに混合分散することにより、遮熱性に優れる遮熱性舗装用塗料が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意研究を進める中で、ラジカル硬化性樹脂組成物の使用に着目した。しかしながら、顔料をラジカル硬化性樹脂組成物中に単純に混合分散した場合には、塗膜の遮熱性が十分でないことが分かった。
そこで、本発明者等は、顔料分散工程と、塗料化工程とを別々にすることを検討した。
その結果、遮熱性を有する顔料をラジカル硬化性樹脂組成物で混合分散させ、(所望の分散粒径とし)、その後で、該顔料分散体をラジカル硬化性樹脂組成物(舗装用)でさらに混合することにより、遮熱性に優れる遮熱性舗装用塗料が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
即ち、本発明は、ラジカル硬化性樹脂(a−1)及び重合性不飽和単量体(a−2)を含むラジカル硬化性樹脂組成物(A)と、顔料(B)とを含有する遮熱性舗装用塗料において、前記遮熱性舗装用塗料が、前記顔料(B)をラジカル硬化性樹脂組成物(A)に混合分散させて顔料分散体を得、次いで、該顔料分散体を、更にラジカル硬化性樹脂組成物(A)で混合分散することで得られることを特徴とする遮熱性舗装用塗料に関する。
【0011】
また、本発明は、顔料(B)をラジカル硬化性樹脂(a−1)及び重合性不飽和単量体(a−2)を含むラジカル硬化性樹脂組成物(A)に混合分散させて顔料分散体を得、次いで、該顔料分散体を、更にラジカル硬化性樹脂組成物(A)で混合分散することを特徴とする遮熱性舗装用塗料の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の遮熱性舗装用塗料は、優れた遮熱性を有する。従って、アスファルトやコンクリート等に塗布することで、路面温度を効率定期に低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
まず、本発明で使用するラジカル硬化性樹脂組成物(A)について説明する。
【0014】
前記ラジカル硬化性樹脂組成物(A)は、ラジカル硬化性樹脂(a−1)及び重合性不飽和単量体(a−2)を含むものである。
【0015】
前記ラジカル硬化性樹脂(a−1)としては、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂等が挙げられ、これらは単独又は2種以上を併用してもよい。
【0016】
前記ラジカル硬化性樹脂(a−1)の数平均分子量としては、遮熱性、引張り物性等の観点から、100〜100000であることが好ましい。なお、前記ラジカル硬化性樹脂(a−1)の数平均分子量は、ゲルパーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により、溶離液;テトラヒドロフラン、示差屈折法、ポリスチレン換算により測定した値を示す。
【0017】
前記重合性不飽和単量体(a−2)としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ジビニルベンゼン、t−ブチルスチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、ジアリールフタレ-ト、トリアリールシアヌレ-ト、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノブチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノヘキシルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノ2ーエチルヘキシルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ2ーエチルヘキシルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノヘキシルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ2ーエチルヘキシルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコ-ルジ(メタ)アクリレ-ト、PTMGのジメタアクリーレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ1,3ジメタクリロキシプロパン、2,2−ビス〔4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタクリロキシ・ジエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル〕プロパン、テトラエチレングリコールジアクリレート、ビスフェノールAEO変性(n=2)ジアクリレート、イソシアヌル酸EO変性(n=3)ジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレートモノステアレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌルアクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは単独又は2種以上を併用してもよい。
【0018】
前記ラジカル硬化性樹脂組成物(A)中における、前記ラジカル硬化性樹脂(a−1)と前記重合性不飽和単量体(a−2)との質量割合は、(a−1)/(a−2)=90/10〜10/90であることが好ましい。
【0019】
次に、本発明で使用する顔料(B)について説明する。
【0020】
前記顔料(B)としては、遮熱性を有する顔料を使用することが好ましい。具体的には、可視領域では吸収を示し、近赤外領域で反射を示す顔料を使用することが好ましい。
【0021】
前記顔料(B)としては、有機顔料と白色無機顔料とを組合せ使用することが好ましい。
【0022】
前記有機顔料としては、アゾ系黄色顔料、フタロシアニン系青色顔料、キナクリドン系赤色顔料を混合することが好ましい。
【0023】
前記顔料(B)の使用量としては、前記ラジカル硬化性樹脂組成物(A)100質量部に対し、0.1〜1000質量部であることが好ましい。
【0024】
次に、本発明の遮熱性舗装用塗料について説明する。
【0025】
本発明の遮熱性舗装用塗料は、前記ラジカル硬化性樹脂組成物(A)、前記顔料(B)、及び必要によりその他の添加剤を含有するものである。
【0026】
前記その他の添加剤としては、有機過酸化物等の硬化剤、硬化促進剤、充填材、紫外線吸収剤、触媒、増粘剤、低収縮剤、老化防止剤、可塑剤、骨材、難燃剤、安定剤、補強材、チキソ性付与剤、溶剤等を使用することができる。
【0027】
次に、本発明の遮熱性舗装用塗料の製造方法について説明する。
【0028】
前記遮熱性舗装用塗料の製造方法としては、前記顔料(B)をラジカル硬化性ラジカル硬化性樹脂組成物(A)に混合分散させて顔料分散体を得(=分散工程)、次いで、該顔料分散体を、更にラジカル硬化性樹脂組成物(A)で混合分散する(=塗料化工程)ことが、本発明の課題を解決するうえで必須である。前記分散工程を経ない場合には、特に十分な遮熱性が得られない。
【0029】
前記混合分散する方法は特に限定されないが、例えば、ディスパー分散、ビーズミル分散等が挙げられる。
【実施例】
【0030】
以下、本発明を実施例により、一層具体的に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例のみに限定されるものではない。
また、本発明では、特に断りのない限り、「部」は「質量部」、「%」は「質量%」である。
【0031】
[合成例1]ラジカル硬化性樹脂(a−1−1)の合成
ジエチレングリコール3モル、トリエチレングリコール7モル、オルソフタル酸5モル、PMAA5モル、トルハイドロキノン50ppmを200〜220℃で加熱縮合し、その後140℃まで冷却し、次にグリシジルメタクリレート2モルを仕込み140℃で10時間反応しラジカル硬化性樹脂(a−1−1)としてポリエステルメタクリレート樹脂を得た。
【0032】
[合成例2]ラジカル硬化性樹脂(a−1−2)の合成
ジエチレングリコール3モル、トリエチレングリコール7モル、オルソフタル酸10モ
ル、トルハイドロキノン50ppmを200〜220℃で加熱縮合し、その後140℃まで冷却し、次にグリシジルメタクリレート2モルを仕込み140℃で10時間反応しラジカル硬化性樹脂(a−1−2)としてポリエステルメタクリレート樹脂を得た。
【0033】
[合成例3]ラジカル硬化性樹脂(a−1−3)の合成
ジエチレングリコール10モル、オルソフタル酸8モル、マレイン酸2モル、トルハイドロキノン50ppmを200〜220℃で加熱縮合し、その後140℃まで冷却し、次にグリシジルメタクリレート1モルを仕込み140℃で10時間反応しラジカル硬化性樹脂(a−1−3)としてポリエステルメタクリレート樹脂を得た。
【0034】
[合成例4]ラジカル硬化性樹脂(a−1−4)の合成
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口および還流冷却器を備えた三口フラスコにビスフェ
ノールAとエピクロルヒドリンとの反応により得られたエポキシ当量が185なるエピク
ロン850(DIC(株)製)1850g、メタクリル酸860g、ハイドロキノン1.36gおよびトリエチルアミン10.8gを仕込み、120℃まで昇温させ、同温度で10時間反応させ、ラジカル硬化性樹脂(a−1−4)として酸価3.5のエポキシメタクリレート樹脂を得た。
【0035】
[ラジカル硬化性樹脂組成物の調整]
合成例1〜4で得られたラジカル硬化性樹脂(a−1−1)〜(a−1−4)を用い、表1に示す割合で混合し、ラジカル硬化性樹脂組成物A−1、A−2、A−3を得た。なおラジカル硬化性樹脂組成物A−3は舗装用に用いられる樹脂組成物である。
【0036】
【表1】

重合禁止剤:BHT
消泡剤:BYK A−555
ワックス:融点が125、130、135、140°Fの4種のポリエチレンワックス等量混合品
【0037】
[実施例1]
100ml容のポリ瓶に、
黄色有機顔料 3.4部 (「SYMULER Fast Yellow 4192」、DIC(株)製)
赤色有機顔料 1.2部 (「FASTOGEN Super Magenta RH」、DIC(株)製)
青色有機顔料 0.4部 (「FASTOGEN Blue 5485」、DIC(株)製)
白色無機顔料 20.0部 (「JR−701」、テイカ(株)製)
ラジカル硬化性樹脂組成物A−1 16.0部
溶剤(メタクリル酸メチル) 16.5部
3mm径ガラスビーズ 100部
を仕込み、ペイントコンディショナーで分散させた後、この分散液に
ラジカル硬化性樹脂組成物A−3(舗装用) 42.5部
を加えて、ペイントコンディショナーで混合して遮熱性舗装用塗料を得た。
【0038】
[実施例2]
1回目のペイントコンディショナー分散におけるラジカル硬化性樹脂組成物A−1をラジカル硬化性樹脂組成物A−2に変えた以外は実施例1と同様にして遮熱性舗装用塗料を得た。
【0039】
[比較例1]
1回目のペイントコンディショナー分散におけるラジカル硬化性樹脂組成物A−1 16.0部をラジカル硬化性樹脂組成物A−3(舗装用)58.5部に変え、2回目のペイントコンディショナー操作を省いた以外は実施例1と同様にして遮熱性舗装用塗料を製造した。
【0040】
[遮熱性の評価方法]
遮熱性は、明度(L*)及び日射反射率により評価した。
【0041】
(明度(L*))
実施例及び比較例で得られた塗膜を、コニカミノルタ(株)製分光測色計 CM−3500dを用いてD65光源、10度視野の条件にて測定した。
【0042】
(日射反射率)
実施例及び比較例で得られた塗膜を、JIS K5602に準拠して、分光光度計UV−3600により測定、算出した。
【0043】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジカル硬化性樹脂(a−1)及び重合性不飽和単量体(a−2)を含むラジカル硬化性樹脂組成物(A)と、顔料(B)とを含有する遮熱性舗装用塗料において、
前記顔料(B)をラジカル硬化性樹脂組成物(A)に混合分散させて顔料分散体を得、次いで、該顔料分散体を、更にラジカル硬化性樹脂組成物(A)で混合分散することで得られることを特徴とする遮熱性舗装用塗料。
【請求項2】
顔料(B)をラジカル硬化性樹脂(a−1)及び重合性不飽和単量体(a−2)を含むラジカル硬化性樹脂組成物(A)に混合分散させて顔料分散体を得、次いで、該顔料分散体を、更にラジカル硬化性樹脂組成物(A)で混合分散することを特徴とする遮熱性舗装用塗料の製造方法。

【公開番号】特開2013−91681(P2013−91681A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232854(P2011−232854)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】