説明

遮蔽板及び電解メッキ装置

【課題】電流密度を均一にすることができ、尚且つメッキ液の流動効率を高めることができる遮蔽板及び電解メッキ装置を提供する。
【解決手段】本発明の電解メッキ装置は、メッキ液が収容されるメッキ槽10と、メッキ槽内にメッキ液を供給するマニホールド40と、メッキ槽内に配置された陽極20と、陽極20に対向して配置され、基板35を固定する陰極30と、陽極20と陰極30とに電気的に接続された電源部60と、電流密度を均一にするために陽極20と陰極30との間に介在し、ハニカム状の複数の孔55が形成された遮蔽板50とを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は遮蔽板及び電解メッキ装置に係り、メッキ液の流れを円滑にしながら電流密度を均一にすることができる遮蔽板及び電解メッキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷回路基板(Printed Circuit Board;PCB)は、電子部品相互間の電気配線を回路設計に基づいて絶縁基板上に形成したプリント配線板である。通常、印刷回路基板は、フェノール樹脂絶縁板またはエポキシ樹脂絶縁板などの表面に配線パターンに応じて必要な銅箔回路を構成し、その上にIC、コンデンサ、抵抗などの様々な電気電子部品を稠密に搭載できるようにした絶縁平板である。絶縁板上に銅箔回路を形成するためには、数回の電解メッキが繰り返し行われる。このとき、基板内におけるメッキの厚さを均一に形成することが要求される。
【0003】
図1は、従来技術によって印刷回路基板にメッキを行うために用いられる電解メッキ槽の斜視図を示している。マニホールド4を介してメッキ槽1内にメッキ液が供給され、メッキ液に陽極2(Anode)と被メッキ物である基板3(Cathode)を浸し、両極間に電気を通すと、供給された金属イオンが電場によって陽極2から基板3に移動する。このとき、基板3の表面では金属イオンと電子が結合して金属メッキが行われる。
【0004】
メッキの厚さを均一にするためには、第1に、被メッキ物である基板3の表面周囲でメッキ金属のイオン濃度を一定水準以上に維持しなければならない。このために、メッキ液を攪拌するか、メッキ液を所定の速度で供給することによって、基板3周囲のメッキ液の濃度を一定に維持している。
【0005】
第2に、電流密度を均一に維持しなければならない。電流密度が高くなるとメッキの速度が速くなって、メッキの厚さが基板3の位置に応じて異なって形成される。メッキ槽内の電気力線は、基板3の中心部では電気力線の密度がほぼ均一であるが、基板3の周辺部ではエッジ効果(edge effect)などによって電気力線が集中する傾向がある。これにより、メッキの成長速度は基板3の中心部より基板3のエッジ部分で速くなり、その結果、基板3の周辺部でメッキの厚さが厚くなってしまうという問題点があった。
【0006】
電流密度を均一にするために、図1に示すように、陽極2と基板3との間に基板3のエッジ部分を遮る遮蔽板5を設けて基板3周辺部へのメッキを妨げる方法がある。しかし、この方法ではメッキ液の流れを妨げてしまうため、遮蔽板5によって遮られる部分Aにメッキ液が停滞してしまい、メッキ液の濃度を一定に維持することが困難になるという問題点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
こうした従来技術の問題点を解決するために、本発明は、メッキ液の流れを円滑にしながら電流密度を均一にすることができる遮蔽板及びこれを用いた電解メッキ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態によれば、電解メッキ時に電気力線を遮断するプレートと、プレートに形成されたハニカム(honeycomb)状の複数の孔とを含むことを特徴とする遮蔽板を提供する。このとき、プレートには中央に開口部を有する額縁状の四角い板材を用いることができる。
【0009】
本発明の他の実施形態によれば、基板をメッキするための電解メッキ装置であって、メッキ液が収容されるメッキ槽と、メッキ槽内にメッキ液を供給するマニホールドと、メッキ槽内に配置された陽極と、陽極に対向して配置され、基板を固定する陰極と、陽極と陰極とに電気的に接続された電源部と、電流密度を均一にするために陽極と陰極との間に介在し、ハニカム状の複数の孔が形成された遮蔽板とを含むことを特徴とする電解メッキ装置を提供する。
【0010】
ここで、遮蔽板には中央に開口部を有する額縁状の四角い板材を用いることができる。また、マニホールドは陽極から基板の方向に向かってメッキ液を噴射し、陽極はメッシュ(mesh)状のものを用いることが好ましい。特に、陽極はメッシュ状のバスケットに金属球が収容されている形状であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、遮蔽板を多孔性ハニカム構造にすることによって、電流密度を均一にすることができ、尚且つメッキ液の流動効率を高めることができる。
【0012】
なお、上述した発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】従来の電解メッキ装置を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る遮蔽板の形状を示す平面図である。
【図3】本発明の他の実施形態に係る電解メッキ装置を示す斜視図である。
【図4】本発明の他の実施形態に係る電解メッキ装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は多様な変換を加えることができ、様々な実施例を有することができるため、本願では特定の実施例を図面に例示して詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の実施形態に限定するものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれるあらゆる変換、均等物及び代替物を含むものとして理解されるべきである。本発明を説明するに当たって、公知技術に対する具体的な説明が本発明の要旨をかえって不明にすると判断される場合には、その詳細な説明を省略する。
【0015】
本願で用いた用語は、ただ特定の実施例を説明するために用いたものであって、本発明を限定するものではない。単数の表現は、文の中で明らかに表現しない限り、複数の表現を含んでいる。本願において、「含む」または「有する」などの用語は明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組合せたものの存在を指定するものであって、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組合せたものの存在または付加可能性を予め排除するものではないと理解しなくてはならない。
【0016】
以下、本発明に係る遮蔽板及び電解メッキ装置の好ましい実施例を、添付した図面を参照して詳細に説明する。本発明を説明するに当たって、同一または対応する構成要素には同一の図面符号を付し、これに対する重複した説明は省略する。
【0017】
図2は、本発明の一実施形態に係る遮蔽板の形状を示す平面図であって、遮蔽板50は、電気力線を遮断するためのプレート53と、プレート53に形成された六角形のハニカム構造をした複数の孔55とを含んでいる。
【0018】
通常、基板のエッジ部分でメッキが多く行われるので、図2に示すように、プレート53の形状は、基板のエッジ部分だけを遮る目的で中央に大きい開口部が形成された額縁状の四角い形状となる。しかし、場合によっては、エッジ以外の部分に電流密度が高く形成されることもあるので、このような場合には電流密度が高く形成される部分を遮ることができるような形状のプレート53を用いるようにする。
【0019】
上述したメッキ液の流動性を確保するために、本実施例の遮蔽板50はプレート53に六角形の孔が複数形成されたハニカム状となっている。プレート53に孔55を形成しても電気力線を遮断する効果はあるため、遮蔽板50を使用しない場合に比べて、孔55を形成した遮蔽板50を使用した場合には遮蔽板50によって遮られる部分の電流密度は低くなる。
【0020】
また、メッキ液は孔55を通過できるので、従来技術の問題点であったメッキ液の停滞を解消することができる。特に、孔55の形状がハニカム構造の六角形であると、流体の流れを均一にする効果がある。これは、メッキ液がハニカム構造を通過するときに流速の低下が最小化され、尚且つ通過方向以外の方向では空間的制約によって乱流が減少するためであり、ハニカム状の孔55を通過したメッキ液の流れは均一になる。したがって、ハニカム構造の孔55は一般の孔に比べてメッキ液の濃度を一定に維持する効果がある。
【0021】
メッキ液がハニカム構造の孔55を通過する方向の厚さ、すなわちプレート53の厚さが厚いほど乱流を減らす効果はあるが、流速が減少するので、孔55のサイズや数及びプレート53の厚さは必要に応じて変形すればよい。例えば、電流密度の分散がより重要である場合には、孔55の数やサイズを小さくし、メッキ液の流動性の確保がより重要である場合には、孔55のサイズを大きくすればよい。
【0022】
図3は、本発明の他の実施形態に係る電解メッキ装置を示す斜視図であり、本発明の電界メッキ装置は、メッキ槽10と、陽極20と、陰極30と、基板35と、マニホールド40と、遮蔽板50と、電源部60とを含んでいる。
【0023】
メッキ槽10は、メッキ液が収容される水槽であって、陽極20と陰極30とを収容している。
【0024】
陰極30は、メッキ対象物である基板35に接続され、陽極20と対向するように配置されている。基板35のメッキされる部分には金属層が形成されており、この金属層が陰極30と電気的に接続される。
【0025】
陽極20は、陰極30に接続された基板35と対向して配置され、基板35をメッキする金属物質で構成されている。陽極20に電流が流れると、陽極20を構成する金属イオンがメッキ液に分離されて電場が形成される。特に、図3に示すように、陽極20がメッシュ構造であればメッキ液の流動性の側面から有利であり、メッキ液と陽極20の接触面積が広くなってメッキ効率を高めることができる。
【0026】
電源部60は、陽極20と陰極30に電気的に接続され、電源部60から電流を流すことによって陰極30に接続された基板35の表面に陽極20の金属をメッキすることができる。
【0027】
マニホールド40は、メッキ液をメッキ槽内に供給する装置であって、従来ではメッキ槽の下部に配置されていたが、図3に示すように、本発明では側面に配置して陽極30から基板35の方向に向かってメッキ液を噴射するようにしたことによって、メッキ効率を高め、メッキ液の濃度を一定に維持することができる。陽極20から基板35、すなわち陰極30の方向に噴射するマニホールド40を用いる場合、陽極20にはメッキ液が通過できるように開口部が形成され、特にメッシュ形態であることが好ましい。
【0028】
遮蔽板50は、基板35と陽極20との間に介在し、上述したように複数のハニカム状の孔55が形成されている。 遮蔽板50は、陰極30から見たとき、基板35にメッキが厚く形成される部分を遮るように配置され、電気力線を遮断することによって特定の部分の電流密度が高く形成されることを防止する。通常、基板35のエッジ部分に電流密度が高く形成されるので、図3に示すように、基板35のエッジ部分を遮るように、四角形の額縁状に形成することが好ましい。遮蔽板50については上述したので、詳しい説明は省略する。
【0029】
図4は、本発明の他の実施形態に係る電解メッキ装置を示す斜視図であり、本発明の電解メッキ装置は、メッキ槽10と、陽極25と、バスケット26と、金属球27と、陰極30と、基板35と、マニホールド40と、遮蔽板50とを含んでいる。
【0030】
本実施例の陽極25は、上述した実施例の陽極20の形状とは異なり、メッシュ状のバスケット26にメッキする金属で形成された金属球27を収容した形状をしており、金属球27を交換することによって陽極25を使用し続けることができる。バスケット26はメッシュ構造であるため、上述したようにメッキ液の流動性に優れている。バスケット26の形状は、図4に示すような柱状に限定されるわけではなく、平板状で形成するなど多様に変形可能である。
【0031】
電源部60は各陽極25ごとに接続されているが、図4では図面の便宜上一つの陽極25にだけ接続しているように図示している。
【0032】
上述したように、遮蔽板50を多孔性のハニカム構造で製作したことにより、電流密度を均一にした遮蔽効果を得ることができ、尚且つメッキ液の流動効率を高めることができた。
【0033】
以上、本発明を実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載した範囲に限定されない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることは、当業者には明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれることは、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0034】
特許請求の範囲、明細書及び図面中において示した装置及び方法における動作、手順、ステップ及び工程等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また前の処理の出力を後の処理で用いる場合でない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書及び図面中の動作フローに関して、便宜上「先ず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0035】
10 メッキ槽
20、25 陽極
26 バスケット
27 金属球
30 陰極
35 基板
40 マニホールド
50 遮蔽板
53 プレート
55 孔
60 電源部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電界メッキ装置の陽極と陰極との間に設置される遮蔽板であって、
電解メッキ時に電気力線を遮断するプレートと、
前記プレートに形成されたハニカム状の複数の孔と
を含むことを特徴とする遮蔽板。
【請求項2】
前記プレートは、中央に開口部が形成された額縁状の四角い板材であることを特徴とする請求項1に記載の遮蔽板。
【請求項3】
基板をメッキするための電解メッキ装置であって、
メッキ液が収容されるメッキ槽と、
前記メッキ槽内にメッキ液を供給するマニホールドと、
前記メッキ槽内に配置された陽極と、
前記陽極に対向して配置され、前記基板を固定する陰極と、
前記陽極と前記陰極とに電気的に接続された電源部と、
電流密度を均一にするために前記陽極と前記陰極との間に介在し、ハニカム状の複数の孔が形成された遮蔽板と
を含むことを特徴とする電解メッキ装置。
【請求項4】
前記遮蔽板は、中央に開口部が形成された額縁状の四角い板材であることを特徴とする請求項3に記載の電解メッキ装置。
【請求項5】
前記マニホールドは前記陽極から前記基板の方向に向かってメッキ液を噴射し、前記陽極はメッシュ状であることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の電解メッキ装置。
【請求項6】
前記陽極は、メッシュ状のバスケットに金属球が収容されている形状であることを特徴とする請求項5に記載の電解メッキ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−138483(P2010−138483A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−168658(P2009−168658)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(591003770)三星電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】