説明

遮音パネル

【課題】軽量かつ薄型で、低音域から高音域に亘って高い遮音性能が得られ、しかも、安価に製造できる遮音パネルを提供する。
【解決手段】一方のパネル部材1と、一方のパネル部材1と間隔をあけて配された他方のパネル部材2とからなり、一方のパネル部材1および他方のパネル部材1は、表面板3と表面板3の内面側に設けられた吸音材4とを備え、吸音材4は、保護シート6で覆われたグラスウール等の不定形吸音材からなり、一方のパネル部材1の吸音材4の内面側には、鉄板等の金属板5が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、遮音パネル、特に、軽量かつ薄型で、低音域から高音域に亘って高い遮音性能が得られ、しかも、安価に製造できる遮音パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
遮音パネルの遮音量を上げる場合、パネルの板厚を2倍にしてパネル重量を2倍にしても、約5dB程度しか大きくならないが、図6に示すように、パネル部材11間に空気層(S)を設けてパネルを二重構造にすると、質量則により遮音量を約2倍に上げることができる。
【0003】
しかし、このような二重壁構造の従来遮音パネルの場合、下記式(1)で表される周波数領域(fr)で、板材m1(kg/m2)と板材m2(kg/m2)との間の空気層の共鳴によって、遮音量が低下する。
fr≒(1/2π)・√[[(m1+m2)/m1・m2]・(ρC2/L)] ----(1)
但し、ρ:空気密度(kg/m2
C:音速(m/s)
L:空気層の厚さ(m)
【0004】
ここで、m1 =5kg/m2
2 =5kg/m2
L=0.02m
の場合の周波数(Hz)と透過損失TL(dB)との関係を図7に示す。
【0005】
図7に示すように、275Hzで遮音量の低下が生じていることが分かる。
【0006】
また、二重壁構造では、パネル部材11間の空気層(S)の厚みをある程度広く取らないと所望の遮音効果が得られない。
【0007】
そこで、fr領域での遮音量の低下を防止する技術が、特許文献1(特開2002−321952号公報)や特許文献1(特開2004−308178号公報)に開示されている。この技術は、図8に示すように、パネル部材11間の空気層(S)にグラスウール等の吸音材12を挿入するものである。以下、この技術を従来技術1という。
【0008】
また、両側のパネル部材11の一方の物性や重量あるいは板厚を変えてfr領域を一致させない技術は、従来から知られている。例えば、図9に示すように、一方のパネル部材11Aの内面に鉄板13を貼り付けたもの、あるいは、図10に示すように、一方のパネル部材11Aの板厚を他方のパネル部材11Bの板厚より厚くしたもの等が知られている。以下、この技術を従来技術2という。
【0009】
【特許文献1】特開2002−321952号公報
【特許文献2】特開2004−308178号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した従来技術1によれば、パネル部材11間の空気層(S)の厚みをある程度狭くすることができ、且つ、fr領域での遮音量の低下を防止することができるが、空気層(S)全体にグラスウール等の吸音材12を挿入する必要があり、製造コスト高となる。
【0011】
一方、従来技術2によれば、遮音量の低下の防止は望めるが、パネル部材11A、11Bの両側が空間になるので、それぞれ単体での強度が要求され、パネル重量が増加すると共に、製造コストも高くなる。
【0012】
従って、この発明の目的は、特に、軽量かつ薄型で、低音域から高音域に亘って高い遮音性能が得られ、しかも、安価に製造できる遮音パネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明は、上記目的を達成するためになされたものであって、下記を特徴とするものである。
【0014】
請求項1記載の発明は、一方のパネル部材と、前記一方のパネル部材と間隔をあけて配された他方のパネル部材とからなり、前記一方のパネル部材および前記他方のパネル部材は、表面板と前記表面板の内面側に設けられた吸音材とを備え、前記吸音材は、グラスウール等の不定形吸音材からなり、前記一方のパネル部材の前記吸音材の内面側には、金属板が設けられ、前記他方のパネル部材の前記吸音材の内面側には、保護シートが設けられていることに特徴を有するものである。
【0015】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記他方のパネル部材の前記吸音材の内面側には、保護シートが設けられていることに特徴を有するものである。
【0016】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記金属板および前記保護シートの少なくとも一方には、開口が形成されていることに特徴を有するものである。
【0017】
請求項4記載の発明は、一方のパネル部材と、前記一方のパネル部材と間隔をあけて配された他方のパネル部材とからなり、前記一方のパネル部材および前記他方のパネル部材は、板材と前記板材の内面側に設けられた吸音材と、前記吸音材の内面側に設けられた金属板とからなり、前記吸音材は、グラスウール等の不定形吸音材からなることに特徴を有するものである。
【0018】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明において、少なくとも一方の前記金属板には、開口が形成されていることに特徴を有するものである。
【0019】
請求項6記載の発明は、一方のパネル部材と、前記一方のパネル部材と間隔をあけて配された他方のパネル部材とからなり、前記一方のパネル部材および前記他方のパネル部材は、表面板と前記表面板の内面側に設けられた吸音材とを備え、前記吸音材は、ウレタン等の定形吸音材からなり、前記一方のパネル部材の前記吸音材の内面側には、金属板が設けられていることに特徴を有するものである。
【0020】
請求項7記載の発明は、一方のパネル部材と、前記一方のパネル部材と間隔をあけて配された他方のパネル部材とからなり、前記一方のパネル部材および前記他方のパネル部材は、表面板と前記表面板の内面側に設けられた吸音材と、前記吸音材の内面側に設けられた金属板とからなり、前記吸音材は、ウレタン等の定形吸音材からなることに特徴を有するものである。
【0021】
請求項8記載の発明は、請求項6または7記載の発明において、前記一方のパネル部材および前記他方のパネル部材の少なくとも一方には、凹陥部が形成されていることに特徴を有するものである。
【0022】
請求項9記載の発明は、請求項1から8の何れか1つに記載の発明において、前記一方のパネル部材の前記表面板および前記他方のパネル部材の前記表面板の少なくとも一方は、波状に形成されていることに特徴を有するものである。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、二重壁構造において、一方のパネル部材と、一方のパネル部材と間隔をあけて配された他方のパネル部材との間に形成された空気層全体に吸音材を挿入するのではなく、ある程度の厚さでグラスウールやウレタン等の吸音材を設け、さらに、少なくとも一方の吸音材の内面側に鉄板等の金属板を設けることによって、軽量かつ薄型で、低音域から高音域に亘って高い遮音性能が得られ、しかも、安価な遮音パネルを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
この発明の遮音パネルの一実施態様を、図面を参照しながら説明する。
【0025】
図1は、この発明の遮音パネルを示す断面図、図2は、この発明の別の遮音パネルを示す断面図、図3は、この発明の更に別の遮音パネルを示す断面図、図4は、この発明の更に別の遮音パネルを示す断面図である。
【0026】
図1において、1は、一方のパネル部材、2は、一方のパネル部材1と間隔をあけて配された他方のパネル部材であり、両パネル部材1、2間には、空気層(S)が形成されている。一方のパネル部材1および他方のパネル部材2は、それぞれ表面板3と表面板3の内面側に設けられた吸音材4とを備えている。吸音材4は、グラスウール等の不定形吸音材からなっている。一方のパネル部材1の吸音材4の内面側には、鉄板等の金属板5が設けられている。他方のパネル部材2の吸音材4の内面側には、強度向上、形状保持および耐候性向上等のために保護シート6が設けられている。保護シート6は、ガラスクロスやアルミニウム箔等からなっている。なお、保護シート6は、設けなくても良い。
【0027】
このような構造にすることによって、図8に示した従来技術1の利点、すなわち、二重壁構造においても空気層(S)に吸音材4を挿入することによって、空気層(S)の厚みを狭くすることができ、且つ、fr領域での遮音量の低下を防止することができるといった利点を有し、しかも、空気層(S)全体にグラスウール等の吸音材2を挿入する必要がないので、その分、製造コストが低減するといった利点を有する。
【0028】
図1に示す遮音パネルにおいては、空気層(S)の両側が金属板5と保護シート6とによる反射面になって、内部共鳴が起こり、特に、高音域での遮音量が低下する恐れがある。
【0029】
そこで、図示しないが、金属板5および保護シート6の少なくとも一方に孔またはスリット等の開口を多数、形成すれば、内部共鳴を防止することができる。
【0030】
吸音材4は、ウレタン等の定形吸音材であっても良い。この場合には、形状保持の必要はないので、保護シート6は不要であるが、強度向上および耐候性向上等のために設けても良い。吸音材4をウレタン等の定形吸音材にすることによって、パネル強度が向上する。
【0031】
この構造の遮音パネルにおいて、内部共鳴を防止するには、図2に示すように、他方のパネル部材2の吸音材4に多数の凹陥部7を形成する。凹陥部7の形状を変えることによって、有効な周波数領域を変えることができる。すなわち、図3に示すように、凹陥部7の深さを深くすることによって、有効な周波数領域をより低音域にすることができる。
【0032】
凹陥部7は、一方のパネル部材1の吸音材4にも形成しても良い。この場合、金属板5に開口を形成することは言うまでもない。また、凹陥部7は、一方のパネル部材1の吸音材4にのみ形成しても良い。
【0033】
図4に示すように、両パネル部材1、2の表面板3を波状に形成すれば、さらに、パネル強度が向上するので、その分、ウレタン等の定形吸音材の量を少なくすることができ、軽量化が図れる。
【0034】
図5に、吸音材4をウレタンとした図3に示した遮音パネル(凹陥部なし)の透過損失(図中、点線で示す。)と、図2に示した遮音パネル(凹陥部あり)の透過損失(図中、実線で示す。)の測定結果を示す。
【0035】
図5から明らかなように、凹陥部7を設けることによって、1000Hz以上の周波数域における遮音性能が優れることが分かる。
【0036】
以上のように、この発明によれば、二重壁構造において、一方のパネル部材と、一方のパネル部材と間隔をあけて配された他方のパネル部材との間に形成された空気層全体に吸音材を挿入するのではなく、ある程度の厚さでグラスウールやウレタン等の吸音材を設け、さらに、少なくとも一方の吸音材の内面側に鉄板等の金属板を設け、特に、吸音材をウレタン等の定形吸音材とすると共に、パネル部材を構成する板材を波状にすることによって、従来技術1および2の利点はそのままで、これらの問題点を解決した遮音パネルを得ることができる。すなわち、軽量かつ薄型で、低音域から高音域に亘って高い遮音性能が得られ、しかも、安価な遮音パネルを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】この発明の遮音パネルを示す断面図である。
【図2】この発明の別の遮音パネルを示す断面図である。
【図3】この発明の更に別の遮音パネルを示す断面図である。
【図4】この発明の更に別の遮音パネルを示す断面図である。
【図5】凹陥部がある場合とない場合の透過損失の結果を示すグラフである。
【図6】従来の二重壁構造の遮音パネルを示す断面図である。
【図7】従来の二重壁構造による周波数(Hz)と透過損失TL(dB)との関係を示すグラフである。
【図8】従来技術1の遮音パネルを示す断面図である。
【図9】従来技術2の遮音パネルを示す断面図である。
【図10】従来技術2の別の遮音パネルを示す断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1:一方のパネル部材
2:他方のパネル部材
3:表面板
4:吸音材
5:金属板
6:保護シート
7:凹陥部
11、11A、11B:パネル部材
12:吸音材
13:鉄板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方のパネル部材と、前記一方のパネル部材と間隔をあけて配された他方のパネル部材とからなり、前記一方のパネル部材および前記他方のパネル部材は、表面板と前記表面板の内面側に設けられた吸音材とを備え、前記吸音材は、グラスウール等の不定形吸音材からなり、前記一方のパネル部材の前記吸音材の内面側には、金属板が設けられていることを特徴とする遮音パネル。
【請求項2】
前記他方のパネル部材の前記吸音材の内面側には、保護シートが設けられていることを特徴とする、請求項1記載の遮音パネル。
【請求項3】
前記金属板および前記保護シートの少なくとも一方には、開口が形成されていることを特徴とする、請求項2記載の遮音パネル。
【請求項4】
一方のパネル部材と、前記一方のパネル部材と間隔をあけて配された他方のパネル部材とからなり、前記一方のパネル部材および前記他方のパネル部材は、表面板と前記表面板の内面側に設けられた吸音材と、前記吸音材の内面側に設けられた金属板とからなり、前記吸音材は、グラスウール等の不定形吸音材からなることを特徴とする遮音パネル。
【請求項5】
少なくとも一方の前記金属板には、開口が形成されていることを特徴とする、請求項4記載の遮音パネル。
【請求項6】
一方のパネル部材と、前記一方のパネル部材と間隔をあけて配された他方のパネル部材とからなり、前記一方のパネル部材および前記他方のパネル部材は、表面板と前記表面板の内面側に設けられた吸音材とを備え、前記吸音材は、ウレタン等の定形吸音材からなり、前記一方のパネル部材の前記吸音材の内面側には、金属板が設けられていることを特徴とする遮音パネル。
【請求項7】
一方のパネル部材と、前記一方のパネル部材と間隔をあけて配された他方のパネル部材とからなり、前記一方のパネル部材および前記他方のパネル部材は、表面板と前記表面板の内面側に設けられた吸音材と、前記吸音材の内面側に設けられた金属板とからなり、前記吸音材は、ウレタン等の定形吸音材からなることを特徴とする遮音パネル。
【請求項8】
前記一方のパネル部材および前記他方のパネル部材の少なくとも一方には、凹陥部が形成されていることを特徴とする、請求項6または7記載の遮音パネル。
【請求項9】
前記一方のパネル部材の前記表面板および前記他方のパネル部材の前記表面板の少なくとも一方は、波状に形成されていることを特徴とする、請求項1から8の何れか1つに記載の吸音パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−291557(P2008−291557A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−139306(P2007−139306)
【出願日】平成19年5月25日(2007.5.25)
【出願人】(000221351)JFE建材フェンス株式会社 (30)
【Fターム(参考)】