説明

遮音パネル

【課題】既存住宅の隣室間の遮音性を向上させるため、あるいは家庭内でピアノその他の楽器を演奏しても、屋外への騒音を遮断することができる遮音性に優れた遮音パネルを提供することである。
【解決手段】枠材を枠組みして形成された枠体1の表面と裏面とに板材21、22を固設して中空パネル3を形成し、多数の貫通孔411、421を設けた有孔板41、42を該中空パネル3内に複数枚納装してなるとともに、該複数枚の有孔板41、42と表裏面に固設された板材21、22および有孔板41、42どうしは間隔を設けて平行に配設され、上記複数枚の有孔板41、42の端縁部を上記枠体1に保持せしめてなることを特徴とする遮音パネルA。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は遮音パネルに関する。さらに詳しくは、枠材を枠組みして形成された枠体とこの枠体の内部に納められた遮音部材と、上記枠体の表面と裏面とをそれぞれ覆う表層材とからなる遮音パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、マンション等の集合住宅において、生活上発生する騒音を巡る問題が増えつつあり、壁を隔てた隣家へ騒音を漏らさないように配慮することが求められている。上記騒音を遮音するためには、境の壁の厚さを大きくすることが最善の策であるが、コンクリートの躯体の壁の部分を重く、厚くする必要があるため、建築費用が増大するという問題がある。
【0003】
そこで、既存住宅の隣室間の遮音性を向上させるため、壁面に遮音シートや吸音パネル等の遮音部材を貼り付けることが行われている。しかしながら、上記遮音シート等を1枚だけ貼着することによって得られる遮音効果は十分ではなく、そのため、遮音部材をパネル化して既存壁に貼着することが提案されている。
【0004】
例えば、本願図3(a)に示すように、枠材から形成された枠体9とこの枠体9の表面と裏面とをそれぞれ覆う表層材81、82とからなり、パネル内部を中空化して軽量化を図るとともに、遮音性能を向上させた遮音パネルCが知られている。しかしながら、中空の二重壁にした上記遮音パネルCは中高音域での遮音性の向上がみられるが、低音域では太鼓状の共鳴透過現象が生じるため、特定の低音周波数帯の遮音性は十分であるとはいえない。
【0005】
そこで、上記特定の低音周波数帯の遮音性を向上させる目的で本願図3(b)に示すように、グラスウールなどの繊維状吸音材、ウレタンフォームなどの多孔質吸音材等からなる遮音材7を上記二重壁内に充填して低音域の透過を減じ、中高音域と低音域の遮音性を向上させた遮音パネルDが知られている。
【0006】
上記遮音パネルDを製造するためには、本願図3(b)に示す表層材81と表層材82と枠体9とを接合する必要がある。このとき、例えば、グラスウールのような繊維状の遮音材7を内部に充填して枠体9と表層材81、82とを接着する際、接着面にグラスウールが混入して接着性を阻害するという問題が生じる。
【0007】
そこで、上記した遮音材7に替えてパンチングボードを吸音材として用いる技術が開示されている。特公昭63−62614号公報には、縦横に第1の孔を形成した第1のパンチングボードと、この第1のパンチングボードに重ね合わされて前記第1の孔に対して位置がずれるように縦横に第2の孔を形成した第2のパンチングボードと、前記第1のパンチングボードおよび第2のパンチングボードの間に介在されて前記第1の孔および第2の孔に連通する長孔を縦横に形成した第3のパンチングボードとを備え、前記第1のパンチングボードおよび第2のパンチングボードの外側をそれぞれ無孔の表層材で被覆したことを特徴とする遮音建材が開示されている。
【0008】
そして、上記技術によれば、一連の孔により一種のダクトが形成され、進行平面波の前進が妨げられるので音の減衰効果があるとともに、単一膨張空洞型の消音器を構成するので減音効果もあり、遮音性を発揮するとその効果が述べられている。
【0009】
しかしながら、上記公報に記載の技術においては、第1のパンチングボードと第2のパンチングボードと第3のパンチングボードとが接触して重ね合わされているため、一連の孔により形成されたダクトによって進行平面波の前進が妨げられたとしても、3枚のボードが物理的に接触しているため、伝導による音波の振動を遮断することは困難であり、必ずしも遮音性に優れたものとはいえない。
【0010】
一方、上記のように構成された公知の遮音パネルは、表層材として一般的に木質ボード、石膏ボード、ケイカル板等の板材を用いられることが多く、完成した複数のパネルどうしは実結合等の方法によって結合して使用される。しかしながら、上記木質ボード、石膏ボード、ケイカル板等の板材は音波の入射によって振動し、遮音パネル相互に振動を伝達し合って複雑な振動モードを形成するため遮音性が低下するという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特公昭63−62614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本願発明はこのような問題を解決するためになされたものであり、その目的は、マンション等において、壁を隔てた隣家へ騒音を漏らさないように壁面に貼着する等して用いられるとともに、家庭内で本格的なホームシアターを楽しんだり、ピアノその他の楽器を演奏したりしても、屋外への騒音を遮断することが可能な遮音性に優れた遮音パネルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本願請求項1に記載の発明に係る遮音パネルは、枠材を枠組みして形成された枠体の表面と裏面とに板材を固設して中空パネルを形成し、多数の貫通孔を設けた有孔板を該中空パネル内に複数枚納装してなるとともに、該複数枚の有孔板と表裏面に固設された板材および有孔板どうしは間隔を設けて平行に配設され、上記複数枚の有孔板の端縁部を上記枠体に保持せしめてなることを特徴とする。
【0014】
本願請求項2に記載の発明に係る遮音パネルは、本願請求項1に記載の発明において、上記枠体の側枠を制振素材で形成するとともに、該制振素材の外側面に隣接パネル連結用の係合凹凸部を形成してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本願請求項1記載の発明に係る遮音パネルにおいては、枠体の表面と裏面とに板材を固設して中空パネルを形成し、この中空パネル内に多数の貫通孔を設けた複数枚の有孔板を、表面と裏面とに固設された板材および有孔板どうしが間隔を設けて平行に配設されているため、すなわち互いに接触重合されていないため、表面の板材から裏面の板材に伝導する音波の振動を防止でき、有効に遮音することができる。
【0016】
また、例えば、長尺のあるいは大きなサイズの木質素材からなるパンチングボード等から所定の寸法のものを切り出して有孔板を製造するとき、切断寸法誤差等でそれぞれの有孔板に穿たれた貫通孔が完全に同一位置になることはなく、また複数の有孔板を互いに平行して納装するとき、施工取り付け寸法誤差等によってそれぞれの貫通孔が互いに正確に上下方向に相対向することがないため、中空パネル内の空気振動による音伝達が有効に抑制されて遮音効果を高めることができる。
【0017】
また、使用される有孔板が複数であるため、その貫通孔の形状や孔径、ピッチ等を必要に応じて選択して採用でき、遮音パネルの設置場所で発生する音を遮断するのに最も適した遮音パネルを有孔板の組み合わせを調節するだけで、簡単に準備することができる。
【0018】
本願請求項2記載の発明に係る遮音パネルにおいては、上記枠体の側枠がゴム製あるいは軟質プラスチック製等の制振素材で形成されているため、例えば、室外側からの騒音によって表面側板材が振動しても、制振素材がその振動をクッション的に吸収することによって振動が中空パネル内を伝播することを防ぎ、裏面側板材を共振させることなく遮音性能を向上させることができる。
【0019】
また、有孔板の端縁部をゴムあるいは軟質プラスチック等からなる枠体の側枠の内側面に設けたスリット等で保持するとき、予め、上記スリット等の保持手段の形状を側枠成形時の金型に設けることにより、正確かつ容易に大量生産することができる。
【0020】
さらに、上記制振素材からなる側枠の外側面には隣接パネル連結用の係合凹凸部を形成しているため、上記係合凹部と係合凸部とがゴム弾性を有して実結合することによって、複数の遮音パネルを隙間が生じることなくぴったりと連接して設けることが可能で、音漏れを防いで効果的に遮音することができる。
【0021】
このようにして、家庭内で本格的なホームシアターを楽しんだり、趣味や習い事としてピアノその他の楽器を演奏したりしても室内の音が外に漏れるのを防ぎ、かつ屋外からの騒音を有効に遮断する遮音パネルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】(a)は本願発明の第1実施形態に係る遮音パネルの構成を模式的に示す断面説明図、(b)は上記第1実施形態に係る有孔板を模式的に示す平面図である。
【図2】本願発明の第2実施形態に係る遮音パネルの構成を模式的に示す断面説明図である。
【図3】(a)は公知の遮音パネルを模式的に示す断面説明図、(b)は他の公知の遮音パネルを模式的に示す断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本願発明に係る遮音パネルの実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1(a)は、上記発明の第1実施形態にかかる遮音パネルAの構成を模式的に示す断面説明図である。
【0024】
図1(a)に示すように、上記遮音パネルAは、枠材を枠組みして形成された枠体1の表面側に木質素材からなる板材21、裏面側に同じく木質素材からなる板材22を固設して中空パネル3を形成するとともに、上記中空パネル3内には同じく木質素材からなる有孔板41が表面側に、有孔板42が裏面側に納装されている。
【0025】
上記した2枚の有孔板41と有孔板42とは表面側板材21と裏面側板材22とに間を開けて平行で、かつ互いに間隔dを隔てて設けられ、2枚の有孔板41、42の端縁部は枠体1に保持されている。このように、表面側板材21と一方の有孔板41とは隔てて設けられ、同様に裏面側板材22と他方の有孔板42とは隔てて設けられているため、表面側板材21と裏面側板材22と2枚の有孔板41、42とは相互に非接触状態とされている。
【0026】
図1(b)は、上記有孔板41(42)を模式的に示す平面図である。図1(b)において、上記有孔板41(42)の板厚は3mm〜12mmとされ、有孔板41(42)には直径略4mm〜15mmの貫通孔411(421)が設けられている。
【0027】
ここで、上記表面側の有孔板41と裏面側の有孔板42とは、長尺のあるいは大きなサイズのパンチングボード等から所定の寸法のものを切り出して製造するため、製造時の切断寸法誤差のため有孔板41、42の貫通孔411、421のそれぞれの貫通位置が互いに多少ずれており全く同一の貫通位置ではない。従って、2枚の有孔板41、42を表面側板材21と裏面側板材22とに平行に納装したとき、貫通孔411と貫通孔421とは上下方向に正確に相対向することはなく、また施工時の取り付け寸法誤差等によって貫通孔411と貫通孔421とが上下方向に正確に相対向することは実際にはあり得ない。
【0028】
そのため、中空パネル3内においては、空気の振動による音波の伝達が抑制され、さらに表面側板材21と裏面側板材22とは2枚の有孔板41、42を介して非接触状態とされているため、遮音効果の大きい遮音パネルとなっている。
【0029】
ここで、例えば表面側板材21を室外に、裏面側板材22を室内に配設したとき、室外側からの騒音、例えば自動車の排ガス騒音等、中音、低音域の騒音を遮音したいときは、有孔板41の板厚、貫通孔411の孔径、貫通孔411の形成ピッチ等を選択することにより室外側からの中音、低音域の騒音を効果的に遮音することができる。
【0030】
一方、室内の騒音、例えばピアノの演奏音等、中高音域の音が外に漏れるのを防ぐためには、有孔板42の板厚、貫通孔421の孔径、貫通孔421の形成ピッチ等を選択することにより室内側から周囲に漏れる騒音を効果的に遮音することができる。このように、2枚の有孔板41、42の特質を変えて調節することにより、遮音パネルAの設置場所における外部からの遮音、室内からの音漏れ等の遮音対策を有効に、かつ効率的に行うことができる。
【0031】
図2は本願発明の第2実施形態に係る遮音パネルBの構成を模式的に示す断面説明図である。上記遮音パネルBは、枠体1の左右の側枠11がゴム製部材等の制振素材で形成されている。このように左右側枠11が制振素材で形成されているため、室外側からの騒音(音圧)が表面側板材21を振動させてもゴム製部材がその振動をクッション的に吸収するため、振動が中空パネル3内を伝播して裏面側板材22を共振させることを防ぐ。
【0032】
また、左右側枠11の内側面にはスリット111が設けられ、このスリット111に有孔板41、42の端縁部が嵌入されて中空パネル3内に2枚の有孔板41、42はしっかりと保持される。このとき、室外側あるいは室内側からの音波が表面側板材21と裏面側板材22を振動させ、その振動が有孔板41、42に伝播しても、有孔板41、42の端縁部がスリット111によって弾性的に保持されているため、共振や共鳴することなく効果的に遮音効果を発揮することができる。
【0033】
さらに、左右側枠11の外側面には隣接パネル連結用の係合凹部5と係合凸部6が形成されている。上記係合凹部5と係合凸部6とはゴム弾性を有しているため、圧縮されて実結合し、隙間を生じることなくぴったりと複数の遮音パネルBを連接して設けることが可能であり、効果的に遮音することができる。
【0034】
さらに、一部の遮音パネルBに振動が生じても、左右側枠11が振動を吸収して隣接する遮音パネルBに伝播しにくく騒音の拡大を効果的に遮音することができる。また、左右の側枠11がゴム弾性を有しているため圧縮性があり、遮音パネル設置時にパネル自身の寸法誤差や建物や躯体の変形による誤差も吸収して、隙間のない美しい仕上がりとすることができる。
【0035】
なお、上記した実施形態は有孔板が2枚の場合について説明したが3枚ないしそれ以上の枚数を中空パネル内に納装してもよい。また、中空パネルの中空部にフェルト等の吸音材を充填してもよい。
【0036】
さらに、本願発明の遮音パネルを遮音目的に使用するのみならず、遮音パネルそのものをオフィスや一般住宅の遮音パネルを兼用した間仕切りパネルとして用いてもよい。このように本願発明は設計変更自在であり、特許請求の範囲を逸脱しない限り、本願発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0037】
A 本願第1実施形態発明に係る遮音パネル
B 本願第2実施形態発明に係る遮音パネル
C 公知の遮音パネル
D 他の公知の遮音パネル
d 有孔板の設置間隔
1 枠体
11 側枠
111 スリット
21 表面側板材
22 裏面側板材
3 中空パネル
41 有孔板
411 貫通孔
42 有孔板
421 貫通孔
5 係合凹部
6 係合凸部
7 公知の遮音パネルにおける遮音材
81 公知の遮音パネルにおける表層材
82 公知の遮音パネルにおける表層材
9 公知の遮音パネルにおける枠体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠材を枠組みして形成された枠体の表面と裏面とに板材を固設して中空パネルを形成し、多数の貫通孔を設けた有孔板を該中空パネル内に複数枚納装してなるとともに、該複数枚の有孔板と表裏面に固設された板材および有孔板どうしは間隔を設けて平行に配設され、上記複数枚の有孔板の端縁部を上記枠体に保持せしめてなることを特徴とする遮音パネル。
【請求項2】
上記枠体の側枠を制振素材で形成するとともに、該制振素材の外側面に隣接パネル連結用の係合凹凸部を形成してなる請求項1に記載の遮音パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−23962(P2013−23962A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161578(P2011−161578)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】