遷移金属含有ゼオライト
【課題】高温水熱耐久性の高い、遷移金属含有シリコアルミノホスフェートゼオライトを、簡便にかつ効率よく製造する。
【解決手段】少なくとも骨格構造にケイ素原子、リン原子及びアルミニウム原子を含むゼオライトに遷移金属を含有させてなる遷移金属含有ゼオライトを製造する方法であって、ケイ素原子原料、アルミニウム原子原料、リン原子原料、遷移金属原料及びポリアミン(但しジアミンを除く)を含む水性ゲルから水熱合成することを特徴とする遷移金属含有ゼオライトの製造方法。ゼオライト原料と共に、遷移金属原料及びポリアミンを含む水性ゲルの水熱合成で製造された遷移金属含有シリコアルミノホスフェートゼオライトは、高い高温水熱耐久性を示し、かつ高い触媒活性を有する。
【解決手段】少なくとも骨格構造にケイ素原子、リン原子及びアルミニウム原子を含むゼオライトに遷移金属を含有させてなる遷移金属含有ゼオライトを製造する方法であって、ケイ素原子原料、アルミニウム原子原料、リン原子原料、遷移金属原料及びポリアミン(但しジアミンを除く)を含む水性ゲルから水熱合成することを特徴とする遷移金属含有ゼオライトの製造方法。ゼオライト原料と共に、遷移金属原料及びポリアミンを含む水性ゲルの水熱合成で製造された遷移金属含有シリコアルミノホスフェートゼオライトは、高い高温水熱耐久性を示し、かつ高い触媒活性を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遷移金属を含むシリコアルミノホスフェートゼオライト、並びに該遷移金属含有ゼオライトを含む排ガス処理用触媒、及び水蒸気吸着材に関する。
【背景技術】
【0002】
遷移金属を含むゼオライトを製造するには、合成したゼオライトを遷移金属塩溶液に含浸するか、或いはイオン交換することにより遷移金属をゼオライトに担持させる工程が必要であり、この担持工程において、以下のような課題があった。即ち、ゼオライトの含浸に用いる遷移金属塩溶液としては、一般に遷移金属塩の水溶液が用いられているが、遷移金属塩は水酸化物を形成し易く、浸漬液中で生成した遷移金属水酸化物がゼオライト担体の細孔内ではなく、粒子表面上に多量に付着するという現象がみられ、遷移金属をゼオライトの細孔内に均一に担持させることが困難である。また、この遷移金属担持工程から排出される大量の廃液の処理の問題、ゼオライト浸漬スラリーの濾過、洗浄など、工程数が多いといった課題もある。
【0003】
これに対して、特許文献1及び非特許文献1に、遷移金属原料である遷移金属酸化物や遷移金属塩をゼオライト合成工程のゲルに導入することにより、遷移金属を含むシリコアルミノホスフェートゼオライトを一工程で合成するワンポット合成方法が提案された。しかし、この方法で合成された遷移金属を含むシリコアルミノホスフェートゼオライトは、遷移金属がゼオライト骨格元素の一部と置き換えられることにより導入されたものとなるので、触媒や吸着材として使用された場合の性能が十分ではなく、高温水熱処理を行うと、ゼオライトの劣化が起きる課題があった。また、この方法で合成した遷移金属を含むゼオライトには、非結晶物など不純物が含まれているので、触媒性能が低いという問題があった。
【0004】
特許文献2にもCuをゼオライト合成出発ゲルに仕込んでCuを含むシリコアルミノフォスフェートゼオライトを合成する方法が提案されているが、この方法で合成された遷移金属を含むゼオライトも水熱安定性が低いという問題がある。
【0005】
特許文献3には、シリコアルミノフォスフェートゼオライトを合成した後、Cuを担持することで、Cuを含むシリコアルミノフォスフェートゼオライトを合成する方法が提案されている。この方法で合成した遷移金属を含むゼオライトは、高い触媒活性及び水熱安定性を有する。さらに、水の吸脱着に対する高い耐久性を有することが記載されている。しかし、この特許文献3で得られたゼオライトは、水蒸気繰り返し吸脱着耐久試験後でも、ゼオライト構造を維持することができるが、低温(例えば200℃)での触媒性能の低下が見られ、特に水蒸気繰り返し吸脱着耐久試験後の低温触媒活性が不十分であるという欠点があった。
【0006】
遷移金属を含むシリコアルミノホスフェートゼオライトを触媒や吸着材として使用する時、ゼオライト上では水の吸脱着を頻繁に行っている場合がある。例えば、自動車に使用されている場合は、自動車を駐車する時、ゼオライト触媒が空気中の水分を吸い込む。一方、自動車を走行するとき、自動車排気ガスの温度の上昇とともにゼオライト触媒は吸い込んだ水分を空気中に排出する。このようにゼオライト触媒上では水の吸脱着を行っている。また、特許文献3に提案された遷移金属を含むゼオライトは、水の吸脱着による骨格元素結合Si−O−Alの結合角や結合長の変化によるSi−O−Al結合サイトに固定化された遷移金属が凝集され、高分散遷移金属触媒活性点の減少による触媒活性が低下することが考えられる。
【0007】
非特許文献2に記載のシリコアルミノフォスフェートゼオライトは、水の吸脱着により骨格元素結合Si−O−AlやP−O−Al結合角や結合長が変化する。水の吸着、脱着が繰り返されれば、骨格元素結合Si−O−AlやP−O−Alが分解され、ゼオライト骨格の構造が破壊されていく。ゼオライト骨格の構造が破壊されれば、触媒表面積の低下によるさらなる触媒活性の低下を招く。
【0008】
また、特許文献4に記載のシリコアルミノホスフェートゼオライトは、水を吸着又は脱着することにより、ゼオライトの格子定数が変化し、収縮又は膨張する。特許文献4にはこの収縮又は膨張のために、シリコアルミノホスフェートゼオライトを含むハニカムユニットを有するハニカム構造体は、水の吸脱着でハニカムユニットが破損しやすいという問題があることが記載されており、このため、AlとPの物質量の和に対するSiの物質量の比と酸点を特定量に調整したシリコアルミノフォスフェートにすることが記載されている。しかし、特許文献4に記載される調整のみでは、高温水熱耐久性、及び水蒸気繰り返し吸脱着耐久試験後の排ガス処理用としての触媒活性や水蒸気吸着性能が不充分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国公開特許2010/0310440A1明細書
【特許文献2】中国公開特許102259892明細書
【特許文献3】国際公開第2010/084930A公報
【特許文献4】国際公開第2012/029159A1公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Journal of Catalysis, 217(2003)100−106
【非特許文献2】Microporous and Mesoporous Materials 57(2003)157−168
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、遷移金属を含むシリコアルミノホスフェートゼオライトであって、触媒や吸着材としての性能に優れており、高温水熱耐久性が高い遷移金属含有ゼオライトを、簡便にかつ効率よく製造することができる方法を提供することを課題とする。
さらに本発明は、水の吸脱着に対する高い安定性、かつ高い触媒性能を有する遷移金属含有アルミノホスフェートゼオライトの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、鋭意検討の結果、ゼオライト原料と共に、遷移金属原料及びポリアミンを含む水性ゲルから水熱合成された遷移金属含有シリコアルミノホスフェートゼオライトが、従来のワンポット合成方法によって合成された遷移金属含有シリコアルミノホスフェートゼオライトに比べて、高い高温水熱耐久性を示し、かつ高い触媒活性を有するものとなることを見出した。
さらに、本発明者らは、低湿度での水吸着量が多く、かつ高湿度での水吸着量が一定範囲以内になる遷移金属含有ゼオライトは触媒性能が高く、さらに、水の吸脱着に対する高い安定性を有することを見出した。
【0013】
本発明はこのような知見に基づいて達成されたものであり、以下を要旨とする。
【0014】
すなわち、本発明の第一の要旨は、少なくとも骨格構造にケイ素原子、リン原子及びアルミニウム原子を含むゼオライトに遷移金属を含有させてなる遷移金属含有ゼオライトを製造する方法であって、ケイ素原子原料、アルミニウム原子原料、リン原子原料、遷移金属原料及びポリアミン(但しジアミンを除く)を含む水性ゲルから水熱合成することを特徴とする遷移金属含有ゼオライトの製造方法、及びこの製造方法により得られた遷移金属含有ゼオライト、に存する。
【0015】
本発明の第二の要旨は、25℃で測定した水蒸気吸着等温線において、相対蒸気圧0.01における吸着量が1.3mol/mol−Si以上、相対蒸気圧0.7における吸着量が150mg/g以上、300mg/g以下であり、少なくとも骨格構造にケイ素原子、リン原子及びアルミニウム原子を含むゼオライトに遷移金属を含有させてなる遷移金属含有ゼオライト、に存する。
本発明の第三の要旨は、上記第一の要旨の製造方法により得られ、第二の要旨のような水吸着性能を有する遷移金属含有ゼオライト、に存する。
本発明の第四の要旨は、上記第一〜第三の要旨に記載された遷移金属含有ゼオライトを用いた排ガス処理用触媒、特には自動車用排ガス処理用触媒、に存する。
本発明の第五の要旨は、上記第一〜第三の要旨に記載された遷移金属含有ゼオライトを用いた水蒸気吸着材、に存する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ゼオライト原料と共に、遷移金属原料及びポリアミンを含む水性ゲルを水熱合成することにより、ゼオライトの水熱合成工程でゼオライトの合成と共にゼオライト細孔内への遷移金属の高分散化を行って、高温水熱耐久性が高く、触媒活性に優れた遷移金属含有シリコアルミノホスフェートゼオライトを、簡便にかつ効率よく製造することができる。
【0017】
また、本発明によれば、25℃で測定した水蒸気吸着等温線において、相対蒸気圧0.01における吸着量が1.3mol/mol−Si以上、相対蒸気圧0.7における吸着量が150mg/g以上、300mg/g以下であり、少なくとも骨格構造にケイ素原子、リン原子及びアルミニウム原子を含むゼオライトに遷移金属を含有させてなる遷移金属含有ゼオライトが得られる。
従来の遷移金属含有ゼオライトと比べ、本発明の遷移金属含有ゼオライトは、触媒活性及び水熱耐久性が高く、さらに、水蒸気繰り返し吸脱着耐久試験後でも触媒活性が高く、水の吸脱着に対して優れた安定性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例1で製造したゼオライト1のXRDの測定結果を示すチャートである。
【図2】実施例6で製造したゼオライト6の水蒸気吸着等温線を示すグラフである。
【図3】実施例4で製造したゼオライト4のXRDの測定結果を示すチャートである。
【図4】実施例4で製造したゼオライト4の水蒸気吸着等温線を示すグラフである。
【図5】実施例11で製造したゼオライト11の水蒸気吸着等温線を示すグラフである。
【図6】比較例3で製造したゼオライトCの水蒸気吸着等温線を示すグラフである。
【図7】比較例5で製造したゼオライトEの水蒸気吸着等温線を示すグラフである。
【図8】比較例6で製造したゼオライトFの水蒸気吸着等温線を示すグラフである。
【図9】比較例7で製造したゼオライトGの水蒸気吸着等温線を示すグラフである。
【図10】実施例における水蒸気繰り返し吸脱着耐久試験−2(90℃−60℃−5℃)に用いた試験装置の構成を示す模式図である。
【図11】実施例9で製造したゼオライト9のXRDの測定結果を示すチャートである。
【図12】実施例9で製造したゼオライト9の水蒸気吸着等温線を示すグラフである。
【図13】実施例2で製造したゼオライト2の水蒸気吸着等温線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、以下の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はこれらの内容に特定はされない。
【0020】
[遷移金属含有ゼオライトの製造方法]
本発明の遷移金属含有ゼオライトの製造方法は、少なくとも骨格構造にケイ素原子、リン原子及びアルミニウム原子を含むゼオライトに遷移金属を含有させてなる遷移金属含有ゼオライトを、ケイ素原子原料、アルミニウム原子原料、リン原子原料、遷移金属原料及びポリアミン(但し、ジアミンを除く。以下、本発明においては、単に「ポリアミン」と称した場合は、特に断らない限り、「ジアミンを除くもの」とする)を含む水性ゲルから水熱合成することにより製造することを特徴とする。
【0021】
即ち、本発明の方法は、水熱合成に供する水性ゲルが、遷移金属源とポリアミンを含有することに特徴を有する。
本発明において、水熱合成に供する水性ゲルが、遷移金属源とポリアミンを含有すること以外のその他の製造条件は特に限定されず、公知のゼオライトの水熱合成方法に従うことができる。通常、アルミニウム原子原料、ケイ素原子原料、リン原子原料、遷移金属原料、及びポリアミンを混合して水性ゲルを調製し、得られた水性ゲルを水熱合成に供する。なお、この水性ゲルに、更に公知のテンプレートを添加しても良い。該水性ゲルから通常の方法で水熱合成を行い、その後焼成等によりポリアミンや他のテンプレートを除去して遷移金属含有ゼオライトを得る。
【0022】
本発明の方法によると、高温水熱耐久性の高い遷移金属含有シリコアルミノホスフェートゼオライトを製造することができる理由の詳細は明らかではないが、以下のようなことが推察される。
即ち、水性ゲル中に遷移金属原料と共にポリアミンを含むため、ゼオライトを合成する際に、水性ゲル中の遷移金属がポリアミンと強く相互作用して安定化すると共に、ゼオライト骨格元素と反応しにくくなる。このため、特許文献1及び非特許文献1に記載されるような従来の遷移金属含有シリコアルミノホスフェートゼオライトの合成法とは異なり、遷移金属がゼオライトの骨格に入りにくく(ゼオライト骨格元素が遷移金属によって置換されにくく)、ゼオライトの骨格外、主としてゼオライトの細孔に遷移金属を分散させて存在させることができる。このようなことから、本発明によれば、高い触媒性能と吸着性能、並びに高い高温水熱耐久性を有する遷移金属含有シリコアルミノホスフェートゼオライトを合成できることが考えられる。
【0023】
以下、本発明の遷移金属含有ゼオライトの製造方法の一例を説明する。
【0024】
{原料}
本発明に係る水性ゲルの調製に用いられる各原料について説明する。
【0025】
<アルミニウム原子原料>
本発明におけるゼオライトのアルミニウム原子原料は特に限定されず、通常、擬ベーマイト、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムトリエトキシド等のアルミニウムアルコキシド、水酸化アルミニウム、アルミナゾル、アルミン酸ナトリウム等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。取り扱いが容易な点及び反応性が高い点で、アルミニウム原子原料としては擬ベーマイトが好ましい。
【0026】
<ケイ素原子原料>
本発明におけるゼオライトのケイ素原子原料は特に限定されず、通常、fumed(ヒュームド)シリカ、シリカゾル、コロイダルシリカ、水ガラス、ケイ酸エチル、ケイ酸メチル等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。高純度で、反応性が高い点で、ケイ素原子原料としてはfumedシリカが好ましい。
【0027】
<リン原子原料>
本発明におけるゼオライトのリン原子原料は、通常、リン酸であるが、リン酸アルミニウムを用いてもよい。リン原子原料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0028】
<遷移金属原料>
本発明において、ゼオライトに含有させる遷移金属原料は特に限定されず、通常、遷移金属の硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、塩化物、臭化物等の無機酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩等の有機酸塩、ペンタカルボニル、フェロセン等の有機金属化合物などが使用される。これらのうち、水に対する溶解性の観点からは無機酸塩、有機酸塩が好ましい。場合によってはコロイド状の酸化物、あるいは微粉末状の酸化物を用いても良い。
【0029】
遷移金属としては、特に限定されるものではないが、吸着材用途や触媒用途での特性の点から、通常、鉄、コバルト、マグネシウム、亜鉛、銅、パラジウム、イリジウム、白金、銀、金、セリウム、ランタン、プラセオジウム、チタン、ジルコニウム等の周期表3−12族の遷移金属が挙げられ、好ましくは鉄、コバルト、銅などの周期表8、9、11族、より好ましくは周期表8、11族である。ゼオライトに含有させる遷移金属は、これらの1種であってもよく、2種以上の遷移金属を組み合わせてゼオライトに含有させてもよい。これらの遷移金属のうち、特に好ましくは、鉄及び/又は銅であり、とりわけ好ましくは銅である。
【0030】
本発明において、遷移金属原料は好ましくは酸化銅(II)又は酢酸銅(II)であり、より好ましくは酸化銅(II)である。
【0031】
遷移金属原料としては、遷移金属種、或いは化合物種の異なるものの2種以上を併用してもよい。
【0032】
<ポリアミン>
本発明で用いるポリアミンとしては、一般式H2N−(CnH2nNH)x−H(式中、nは2〜6の整数、xは2〜10の整数)で表されるポリアミンが好ましい。
【0033】
上記式において、nは2〜5の整数が好ましく、2〜4の整数がより好ましく、2又は3がさらに好ましく、2が特に好ましい。xは2〜6の整数が好ましく、2〜5の整数がより好ましく、3又は4がさらに好ましく、4が特に好ましい。
【0034】
このようなポリアミンとしては、中でもジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンが安価であり、好ましく、中でもトリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンが特に好ましい。これらのポリアミンは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を含んでいてもよい。また、分岐状のポリアミンを含んでいても良い。
【0035】
<テンプレート>
本発明に係る水性ゲルには、ゼオライト製造の際のテンプレートとして一般に使用される、アミン、イミン、四級アンモニウム塩等を更に含んでいてもよい。
【0036】
テンプレートとしては、好ましくは
(1)ヘテロ原子として窒素原子を含む脂環式複素環化合物
(2)アルキル基を有するアミン(アルキルアミン)
(3)シクロアルキル基を有するアミン(シクロアルキルアミン)
及び
(4)テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド
からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を用いることが好ましい。これらは入手しやすく安価であり、さらに、製造されたシリコアルミノホスフェートゼオライトの取り扱いが容易で構造破壊も起きにくいという点において好適である。中でも(1)ヘテロ原子として窒素原子を含む脂環式複素環化合物、(2)アルキルアミン、及び(3)シクロアルキルアミンが好ましく、これら3つの群のうち、2つ以上の群から各群につき1種以上の化合物を選択して用いることがより好ましい。
【0037】
(1)ヘテロ原子として窒素原子を含む脂環式複素環化合物
ヘテロ原子として窒素原子を含む脂環式複素環化合物の複素環は通常5〜7員環であって、好ましくは6員環である。複素環に含まれるヘテロ原子の個数は通常3個以下、好ましくは2個以下である。窒素原子以外のヘテロ原子は任意であるが、窒素原子に加えて酸素原子を含むものが好ましい。ヘテロ原子の位置は特に限定されないが、ヘテロ原子が相互に隣り合わないものが好ましい。
【0038】
また、ヘテロ原子として窒素原子を含む脂環式複素環化合物の分子量は、通常250以下、好ましくは200以下、さらに好ましくは150以下であり、また通常30以上、好ましくは40以上、さらに好ましくは50以上である。
【0039】
このようなヘテロ原子として窒素原子を含む脂環式複素環化合物として、モルホリン、N−メチルモルホリン、ピペリジン、ピペラジン、N,N’−ジメチルピペラジン、1,4−ジアザビシクロ(2,2,2)オクタン、N−メチルピペリジン、3−メチルピペリジン、キヌクリジン、ピロリジン、N−メチルピロリドン、ヘキサメチレンイミンなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらのうち、モルホリン、ヘキサメチレンイミン、ピペリジンが好ましく、モルホリンが特に好ましい。
【0040】
(2)アルキルアミン
アルキルアミンのアルキル基は、通常、鎖状アルキル基であって、アルキルアミンの1分子中に含まれるアルキル基の数は特に限定されるものではないが、3個が好ましい。
また、アルキルアミンのアルキル基は一部水酸基等の置換基を有していてもよい。
アルキルアミンのアルキル基の炭素数は4以下が好ましく、1分子中の全アルキル基の炭素数の合計は5以上30以下がより好ましい。
また、アルキルアミンの分子量は通常250以下、好ましくは200以下、さらに好ましくは150以下である。
【0041】
このようなアルキルアミンとしては、ジ−n−プロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−イソプロピルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、ジ−n−ブチルアミン、ネオペンチルアミン、ジ−n−ペンチルアミン、イソプロピルアミン、t−ブチルアミン、エチレンジアミン、ジ−イソプロピル−エチルアミン、N−メチル−n−ブチルアミン等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらのうち、ジ−n−プロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−イソプロピルアミン、トリエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、イソプロピルアミン、t−ブチルアミン、エチレンジアミン、ジ−イソプロピル−エチルアミン、N−メチル−n−ブチルアミンが好ましく、トリエチルアミンが特に好ましい。
【0042】
(3)シクロアルキルアミン
シクロアルキルアミンとしては、アルキル基の炭素数が4以上10以下であるものが好ましく、中でもシクロヘキシルアミンが好ましい。シクロアルキルアミンは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0043】
(4)テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド
テトラアルキルアンモニウムヒドロキシドとしては、4個のアルキル基が炭素数4以下のアルキル基であるテトラアルキルアンモニウムヒドロキシドが好ましい。テトラアルキルアンモニウムヒドロキシドは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0044】
テンプレートとして2種以上のものを組み合わせて用いる場合、その組み合わせは任意であるが、モルホリン、トリエチルアミン及びシクロヘキシルアミンのうちの2種以上、中でもモルホリンとトリエチルアミンを併用することが好ましい。
【0045】
これらのテンプレート各群の混合比率は、条件に応じて選択する必要がある。2種のテンプレートを混合させるときは、通常、混合させる2種のテンプレートのモル比が1:20から20:1、好ましくは1:10から10:1、さらに好ましくは1:5から5:1である。3種のテンプレートを混合させるときは、通常、3種目のテンプレートのモル比は、上記のモル比で混合された2種のテンプレートに対して1:20から20:1、好ましくは1:10から10:1、さらに好ましくは1:5から5:1である。
【0046】
本発明においては、このような公知のテンプレートを使用しなくても良いが、使用した方が、高温水熱耐久性が優れた遷移金属含有アルミノホスフェートゼオライトを製造することができ、好ましい。
【0047】
{水性ゲルの調製}
水性ゲルは、上述のケイ素原子原料、アルミニウム原子原料、リン原子原料、遷移金属原料、及びポリアミン、必要に応じて用いられるその他のテンプレートを水と混合して調製される。
【0048】
本発明で用いる水性ゲルの組成は、ケイ素原子原料、アルミニウム原子原料、リン原子原料、及び遷移金属原料を酸化物として表したときのモル比で、以下のような組成となることが好ましい。
【0049】
SiO2/Al2O3の値は、通常0より大きく、好ましくは0.1以上であり、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.6以下、更に好ましくは0.4以下、特に好ましくは0.3以下である。
また、P2O5/Al2O3の値は、通常0.6以上、好ましくは0.7以上、さらに好ましくは0.8以上であり、通常1.3以下、好ましくは1.2以下、さらに好ましくは1.1以下である。
MaOb/Al2O3(ただし、a及びbはそれぞれMとOの原子比を表す)の値は、通常0.01以上、好ましくは0.03以上、さらに好ましくは0.05以上であり、通常1以下、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.4以下、さらに好ましくは0.3以下である。
【0050】
SiO2/Al2O3が上記上限よりも大きいと、結晶化しにくかったり、水熱耐久性が不十分である。
P2O5/Al2O3が上記下限よりも小さいと結晶化しにくかったり、水熱耐久性が不十分であったりし、上記上限よりも大きいと同様に結晶化しにくかったり、水熱耐久性が不十分である。
水熱合成によって得られるゼオライトの組成は、水性ゲルの組成と相関があり、従って、所望の組成のゼオライトを得るためには、水性ゲルの組成を上記の範囲において適宜設定すればよい。
【0051】
また、MaOb/Al2O3が上記下限よりも小さいとゼオライトに遷移金属の導入量が不十分であり、上記上限よりも大きいと結晶化しにくかったり、水熱耐久性が不十分である。
【0052】
水性ゲル中のポリアミンの量は、テンプレートを使用する場合には、遷移金属原料を安定化させるに足りる量にすれば良いが、テンプレートを使用しない場合は、ポリアミンがテンプレートの作用も兼ねるので、テンプレートとして機能するための量にする必要がある。
【0053】
具体的には、以下のような使用量とすることが好ましい。
【0054】
<テンプレートを使用する場合>
テンプレートを使用する場合は、水性ゲル中のポリアミンとテンプレートの総量は、水性ゲル中のアルミニウム原子原料の酸化物換算のAl2O3に対するポリアミン及びテンプレートの合計のモル比で、通常0.2以上、好ましくは0.5以上、さらに好ましくは1以上であって、通常4以下、好ましくは3以下、さらに好ましくは2.5以下である。
ポリアミンとテンプレートの総量が上記下限より少ないと結晶化しにくかったり、水熱耐久性が不十分であり、上記上限より多いとゼオライトの収率が不十分である。
また、ポリアミンは、遷移金属原料の酸化物換算のMaObに対するポリアミンのモル比で、通常0.1以上、好ましくは0.5以上、さらに好ましくは0.8以上であって、通常10以下、好ましくは5以下、さらに好ましくは4以下となる量で用いることが好ましい。
水性ゲル中のポリアミンの量が上記下限よりも少ないとポリアミンを用いることによる本発明の効果を十分に得ることができず、上記上限よりも多いとゼオライトの収率が不十分である。
【0055】
<テンプレートを使用しない場合>
テンプレートを使用しない場合は、上記と同様の理由から、水性ゲル中のポリアミンの量は、水性ゲル中のアルミニウム原子原料の酸化物換算のAl2O3に対するポリアミンのモル比で、通常0.2以上、好ましくは0.5以上、さらに好ましくは1以上、通常4以下、好ましくは3以下、さらに好ましくは2.5以下であって、遷移金属原料の酸化物換算のMaObに対するポリアミンのモル比で、通常1以上、好ましくは5以上、さらに好ましくは10以上で、通常50以下、好ましくは30以下、さらに好ましくは20以下となる量で用いることが好ましい。
【0056】
なお、前述の如く、テンプレートは条件に応じて適宜選ぶ必要があるが、例えば、テンプレートとしてモルホリンとトリエチルアミンを併用する場合、モルホリン/トリエチルアミンのモル比は0.05〜20、特に0.1〜10、とりわけ0.2〜9となるように用いることが好ましい。
前記2つ以上の群から各群につき1種以上選択されたテンプレートを混合する順番は特に限定されず、テンプレート同士を混合した後その他の物質と混合してもよいし、各テンプレートをそれぞれ他の物質と混合してもよい。
【0057】
また、水性ゲル中の水の割合は、合成のし易さ及び生産性の高さの観点から、アルミニウム原子原料を酸化物で表したとき、Al2O3に対する水のモル比で、通常3以上、好ましくは5以上、さらに好ましくは10以上であって、通常200以下、好ましくは150以下、さらに好ましくは120以下である。
【0058】
水性ゲルのpHは通常5以上、好ましくは6以上、さらに好ましくは6.5以上であって、通常11以下、好ましくは10以下、さらに好ましくは9以下である。
【0059】
なお、水性ゲル中には、所望により、上記以外の成分を含有していてもよい。このような成分としては、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物や塩、アルコール等の親水性有機溶媒が挙げられる。水性ゲル中のこれらの他の成分の含有量としては、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物や塩は、アルミニウム原子原料を酸化物で表したとき、Al2O3に対するモル比で、通常0.2以下、好ましくは0.1以下であり、アルコール等の親水性有機溶媒は、水性ゲル中の水に対してモル比で通常0.5以下、好ましくは0.3以下である。
【0060】
水性ゲルの調製の際の各原料の混合順序は制限がなく、用いる条件により適宜選択すればよいが、通常は、まず水にリン原子原料、アルミニウム原子原料を混合し、これにケイ素源、及びテンプレートを混合する。遷移金属原料、ポリアミンは、これらを混合する際の何れのタイミングで添加しても良いが、遷移金属原料とポリアミンを予め混合すると、ポリアミンによる遷移金属原料の錯体化による安定化の効果が有効に発揮され、好ましい。
また、少量の水及びリン酸等のリン原子原料に、遷移金属原料を溶解させた後、他の原料を加える方法も採用することができる。この方法は、水の量を減らすことにより、収率を挙げることができ、遷移金属量を増やすことができるので、遷移金属量を遷移金属含有ゼオライトの4重量%以上とする場合の製造方法として好ましい。また得られる遷移金属含有ゼオライトを触媒や吸着材として使用した場合の性能にも優れるものとなるので好ましい。ここで「少量の水」とは、Al2O3換算のアルミニウム原子原料に対する水のモル比で、50以下であることが好ましく、より好ましくは40以下、さらに好ましくは35以下である。
【0061】
{水熱合成}
水熱合成は、上記のようにして調製された水性ゲルを耐圧容器に入れ、自己発生圧力下、又は結晶化を阻害しない程度の気体加圧下で、攪拌又は静置状態で所定温度を保持する事により行われる。
【0062】
水熱合成の際の反応温度は、通常100℃以上、好ましくは120℃以上、さらに好ましくは150℃以上であって、通常300℃以下、好ましくは250℃以下、さらに好ましくは220℃以下である。反応時間は通常2時間以上、好ましくは3時間以上、さらに好ましくは5時間以上であって、通常30日以下、好ましくは10日以下、さらに好ましくは4日以下である。反応温度は反応中一定でもよいし、段階的又は連続的に変化させてもよい。
【0063】
{テンプレート等を含有したゼオライト}
水熱合成後、生成物であるポリアミン及び必要に応じて用いられたテンプレート(以下、ポリアミン又はポリアミンとテンプレートとを「テンプレート等」と称す。)を含有したゼオライトを水熱合成反応液より分離する。水熱合成反応液からのテンプレート等を含有したゼオライトの分離方法は特に限定されない。通常、濾過又はデカンテーション等により分離し、水洗後、室温から150℃以下の温度で乾燥して生成物であるテンプレート等を含有したゼオライトを得ることができる。
【0064】
次いで、通常、水熱合成反応液から分離されたテンプレート等を含有したゼオライトからテンプレート等を除去する。テンプレート等の除去方法は特に限定されない。通常、空気又は酸素含有の不活性ガス、あるいは不活性ガスの雰囲気下に300℃から1000℃の温度で焼成したり、エタノール水溶液、HCl含有エーテル等の抽出溶剤による抽出等の方法により、含有される有機物(テンプレート等)を除去することができる。
好ましくは製造性の面で焼成によるテンプレート等の除去が好ましい。この場合、焼成温度については、好ましくは、400℃から900℃、より好ましくは450℃から850℃、さらに好ましくは500℃から800℃である。
【0065】
[遷移金属含有ゼオライト]
次に、本発明の第二の要旨である、特定の水吸着性能を有する本発明の遷移金属含有ゼオライトについて説明する。
【0066】
例えば、遷移金属を含むゼオライトを排ガス処理用触媒として使用する場合は、自動車などのディーゼルエンジンの排ガスは5〜15体積%の水を排ガス中に含む。自動車では走行中、排ガスが200℃以上の高温となり、相対湿度は5%以下に低下し、触媒は水分を脱着した状態になる。しかし、停止時に空気の相対湿度が30%以上、特に夏には空気の相対湿度が50%以上となり、触媒は空気中の水を吸着する。このように自動車の走行と駐停車により、遷移金属含有ゼオライト触媒ではゼオライトが水の吸脱着を行っている。
【0067】
これに対して、低湿度(5%以下)での水吸着量が多く、高湿度(50%以上)での水吸着量が少ないゼオライトは、5%の時水吸着量が少なく、50%の時の水吸着量が多いゼオライトに比べ、使用環境の湿度変化により吸脱着する水の量が少ないということが言える。従って、水の吸脱着による骨格元素結合Si−O−Al及びAl−O−Pの結合角や結合長の変化が少なくなる。これによって、ゼオライトの安定性が高くなると共に、水の吸脱着によるゼオライトの格子定数の変化やゼオライトの体積変化を抑制することができる。従って、シリコアルミノホスフェートゼオライトを含むハニカムユニットにおいて、水の吸脱着によるハニカムユニットの破損の問題も解決することができる。
【0068】
25℃で測定した水蒸気吸着等温線において、相対蒸気圧0.01(相対湿度1%)における水の吸着量は、ゼオライト中のSiの量により大きく影響を受ける。通常、Siが多くなると、相対蒸気圧0.01における水の吸着量が多くなる。相対蒸気圧0.01での水吸着は、ゼオライト中のSiに由来するSi−O(H)−Al結合中のHと水分子との水素結合による生じる水吸着と考えられる。そのため、本発明の遷移金属含有ゼオライトの相対蒸気圧0.01での水吸着量は、ゼオライト中の1molのSiに対してゼオライトに吸着された水のモル数を規定する(mol/mol−Si)、すなわち、相対蒸気圧0.01(相対湿度1%)における水の吸着量が1.3mol/mol−Si以上であることが好ましく、1.4mol/mol−Si以上であることがさらに好ましい。相対蒸気圧0.01における水の吸着量の上限は特に制限はない。この吸着量が上記下限より少ないと、ゼオライトは低湿度での水脱着が激しいために、ゼオライト骨格元素結合の安定性が低くなる。
【0069】
また、25℃で測定した水蒸気吸着等温線において、相対蒸気圧0.7(相対湿度70%)におけるゼオライトの水吸着はほぼ一定になり、水吸着の飽和状態になると言われる。この飽和状態でのゼオライトの水吸着量は、ゼオライト中のSiの量と関係なく、ゼオライトの細孔容積や表面の親水性などによって定まる。
【0070】
本発明の遷移金属含有ゼオライトの相対蒸気圧0.7での水吸着量は、1gのゼオライトに対して150mg/g以上、300mg/g以下が好ましく、より好ましくは200mg/g以上であり、260mg/g以上、290mg/g以下がさらに好ましい。
相対蒸気圧0.7(相対湿度70%)における遷移金属含有ゼオライトの水の吸着量が上記上限より多いと、使用環境が高湿度から低湿度に転換する時、ゼオライト上での水脱着が激しく、ゼオライト骨格元素結合の安定性が低くなる。
【0071】
また、水の吸脱着によるゼオライトの格子定数の変化やゼオライトの体積変化が大きい、シリコアルミノホスフェートゼオライトを含むハニカムユニットは、水の吸脱着により破損しやすい。一方、ゼオライト結晶中にメソ孔などを形成する場合は、相対蒸気圧0.7におけるゼオライトの水の吸着量は上記上限より多い場合があるが、この場合はゼオライトの水熱安定性が低い恐れがある。相対蒸気圧0.7(相対湿度70%)における遷移金属含有ゼオライトの水の吸着量が上記下限より少ないと、ゼオライトの結晶性が低く、触媒性能が不十分である。
【0072】
以上、自動車排ガス処理への適用を前提に説明したが、上記の特性を満足するものであれば、本発明の遷移金属含有ゼオライトは、定置用、即ち、定置発電・船舶・農業機械・建設機械・二輪車・航空機用の各種ディーゼルエンジン、ボイラー、ガスタービン等から排出される多種多様の排ガスに含まれる窒素酸化物の浄化にも十分適用可能であることは言うまでもない。
また、本発明の遷移金属含有ゼオライトを適用する排ガスとしては、NOx(窒素酸化物)を含有するものが好ましく、該排ガスには窒素酸化物以外の成分が含まれていてもよく、例えば炭化水素、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、窒素、酸素、硫黄酸化物、水が含まれていてもよい。また、炭化水素、アンモニア、尿素等の窒素含有化合物等の公知の還元剤を使用してNOx(窒素酸化物)を浄化する場合、これらは排ガス中に含まれていてもよい。
【0073】
このような本発明の遷移金属含有ゼオライト及び前述の本発明の遷移金属含有ゼオライトの製造方法より製造された本発明の遷移金属含有ゼオライト(以下、これらをまとめて「本発明の遷移金属含有ゼオライト」と称す。)は、ゼオライト骨格構造のアルミニウム原子、リン原子、及びケイ素原子のモル比が下記の存在割合のゼオライトに、以下の割合で遷移金属を含む遷移金属含有シリコアルミノホスフェートゼオライトであることが好ましい。
【0074】
本発明の遷移金属含有ゼオライトの骨格構造に含まれるアルミニウム原子、リン原子及びケイ素原子の存在割合は、下記式(I)、(II)及び(III)を満たすことが好ましい。
0.001≦x≦0.3 ・・・(I)
(式中、xは骨格構造中のケイ素原子とアルミニウム原子とリン原子の合計に対するケイ素原子のモル比を示す)
0.3≦y≦0.6 ・・・(II)
(式中、yは骨格構造中のケイ素原子とアルミニウム原子とリン原子の合計に対するアルミニウム原子のモル比を示す)
0.3≦z≦0.6 ・・・(III)
(式中、zは骨格構造中のケイ素原子とアルミニウム原子とリン原子の合計に対するリン原子のモル比を示す)
【0075】
xの値としては、通常0.001以上、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.03以上であり、通常0.3以下、好ましくは0.2以下、より好ましくは0.18以下である。xの値が上記下限値より小さいと、ゼオライト結晶化しにくい場合がある。xの値が上記上限値より大きいと、合成時に不純物が混入しやすくなる傾向がある。
さらに、yは通常0.3以上、好ましくは0.35以上、より好ましくは0.4以上であり、通常0.6以下、好ましくは0.55以下である。yの値が上記下限値より小さい又は上記上限値より大きいと、合成時に不純物が混入しやすくなる傾向がある。
さらに、zは通常0.3以上、好ましくは0.35以上、より好ましくは0.4以上であり、通常0.6以下、好ましくは0.55以下、より好ましくは0.50以下である。zの値が上記下限値より小さいと、合成時に不純物が混入しやすくなる傾向があり、zの値が上記上限値より大きいと、ゼオライト結晶化しにくい場合がある。
【0076】
遷移金属としては、特に限定されるものではないが、吸着材用途や触媒用途での特性の点から、通常、鉄、コバルト、マグネシウム、亜鉛、銅、パラジウム、イリジウム、白金、銀、金、セリウム、ランタン、プラセオジウム、チタン、ジルコニウム等の周期表3−12族の遷移金属が挙げられ、好ましくは鉄、コバルト、銅などの周期表8、9、11族、より好ましくは周期表8、11族である。ゼオライトに含有させる遷移金属は、これらの1種であってもよく、2種以上の遷移金属を組み合わせてゼオライトに含有させてもよい。これらの遷移金属のうち、特に好ましくは、鉄及び/又は銅であり、とりわけ好ましくは銅である。
【0077】
また、本発明の遷移金属含有ゼオライト中の遷移金属原子の存在割合は、下記式(IV)を満たすことが好ましい。
0.001≦m≦0.3 ・・・(IV)
(式中、mはゼオライト骨格構造のケイ素原子とアルミニウム原子とリン原子の合計に対する遷移金属のモル比を示す)
mの値としては、通常0.001以上、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、さらに好ましくは0.08以上、特に好ましくは0.1以上であり、通常0.3以下、好ましくは0.25以下、より好ましくは0.2以下である。mの値が上記下限値より小さいと、活性点が少なくなる傾向があり、触媒性能を発現しない場合がある。mの値が上記上限より大きいと、遷移金属の凝集が著しくなる傾向があり、触媒性能が低下する場合がある。
【0078】
本発明の遷移金属含有ゼオライトは、アルミニウム原子、ケイ素原子、リン原子、及び遷移金属を酸化物として表したときのモル比で、以下のような組成となることが好ましい。
【0079】
SiO2/Al2O3の値は、通常0より大きく、好ましくは0.1以上であり、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.6以下、更に好ましくは0.4以下、特に好ましくは0.3以下である。
また、P2O5/Al2O3の値は、通常0.6以上、好ましくは0.7以上、さらに好ましくは0.8以上であり、通常1.3以下、好ましくは1.2以下、さらに好ましくは1.1以下である。
MaOb/Al2O3(ただし、a及びbはそれぞれMとOの原子比を表す)の値は、通常0.01以上、好ましくは0.03以上、さらに好ましくは0.05以上であり、通常1以下、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.4以下、さらに好ましくは0.3以下である。
【0080】
SiO2/Al2O3が上記上限よりも大きいと、結晶化しにくかったり、水熱耐久性が不十分である。
P2O5/Al2O3が上記下限よりも小さいと結晶化しにくかったり、水熱耐久性が不十分であったりし、上記上限よりも大きいと同様に結晶化しにくかったり、水熱耐久性が不十分である。
【0081】
また、MaOb/Al2O3が上記下限よりも小さいとゼオライトに遷移金属の導入量が不十分であり、上記上限よりも大きいと結晶化しにくかったり、水熱耐久性が不十分である。
【0082】
本発明の遷移金属含有ゼオライトの製造方法で製造される遷移金属含有ゼオライトについても、前述の如く、好ましくは上記と同様の組成でアルミニウム原子原料、ケイ素原子原料、リン原子原料及び遷移金属原料を含む水性ゲルから製造されるため、この場合には上記の割合でアルミニウム原子、ケイ素原子、リン原子及び遷移金属を含むものとなる。
【0083】
なお、上記のゼオライト骨格構造の原子や遷移金属Mの含有量は、元素分析により決定されるが、本発明における元素分析は、試料を塩酸水溶液で加熱溶解させた後誘導結合プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)発光分光分析により、或は試料を打錠成形した後蛍光X線分析法(XRF)により、ゼオライト骨格構造の原子や遷移金属Mの含有量W1(重量%)を求め、一方、熱重量分析(TG)により試料中の水分WH2O(重量%)を求め、下記式(V)で、無水状態下での遷移金属含有ゼオライト中の骨格構造の原子や遷移金属Mの含有量W(重量%)を算出したものである。
W=W1/(1−WH2O) ・・・(V)
【0084】
また、本発明の遷移金属含有ゼオライトを排ガス浄化用触媒や水蒸気吸着材として用いる場合には、本発明の遷移金属含有ゼオライトのなかでも、以下の構造及びフレームワーク密度を有するものが好ましい。
【0085】
ゼオライトの構造は、XRD(X線回折法:X−ray diffraction)により決定するが、International Zeolite Association(IZA)が定めるコードで示すと、AEI、AFR、AFS、AFT、AFX、AFY、AHT、CHA、DFO、ERI、FAU、GIS、LEV、LTA、VFIであり、AEI、AFX、GIS、CHA、VFI、AFS、LTA、FAU、AFYが好ましく、CHA構造を有するゼオライトが最も好ましい。
【0086】
また、フレームワーク密度は結晶構造を反映したパラメータであるが、IZAがATLAS OF ZEOLITE FRAMEWORK TYPES Fifth Revised Edition 2001において示してある数値で、好ましくは10.0T/1000Å3以上であって、通常16.0T/1000Å3以下、好ましくは15.0T/1000Å3以下である。
【0087】
なお、フレームワーク密度(T/1000Å3)は、ゼオライトの単位体積1000Å3あたりに存在するT原子(ゼオライトの骨格構造を構成する酸素原子以外の原子(T原子))の数を意味し、この値はゼオライトの構造により決まるものである。
ゼオライトのフレームワーク密度が上記下限値未満では、構造が不安定となる場合があったり、耐久性が低下する傾向があり、一方、上記上限値を超過すると吸着量、触媒活性が小さくなる場合があったり、触媒としての使用に適さない場合がある。
【0088】
本発明の遷移金属含有ゼオライトの粒子径について特に限定はないが、通常0.1μm以上であり、さらに好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上であり、通常30μm以下であり、好ましくは20μm以下であり、より好ましくは15μm以下である。
なお、本発明における遷移金属含有ゼオライトの粒子径とは、電子顕微鏡で遷移金属含有ゼオライトを観察した際の、任意の10〜30点のゼオライト粒子の一次粒子径の平均値をいい、前述の本発明の遷移金属含有ゼオライトの製造方法においては、テンプレート等を除去した後の粒子径として測定される。
【0089】
本発明の第二の要旨に係る遷移金属含有ゼオライトは、前述の特徴的な水蒸気吸着等温線を有するものであれば、いずれの方法で得られたものでも良いが、前述の本発明の遷移金属含有ゼオライトの製造方法によって製造するのが簡便かつ効率よく製造することができるので好ましい。
【0090】
[遷移金属含有ゼオライトの用途]
本発明の遷移金属含有ゼオライトの用途としては特に制限はないが、耐水性及び高温水熱耐久性が高く、触媒活性にも優れ、水蒸気繰り返し吸脱着後の触媒活性の安定性にも優れることから、自動車等の排ガス浄化用触媒及或いは水蒸気吸着材として特に好適に用いられる。
【0091】
<排ガス処理用触媒>
本発明の遷移金属含有ゼオライトを自動車排気浄化触媒等の排ガス処理用触媒として用いる場合、本発明の遷移金属含有ゼオライトはそのまま粉末状で用いてもよく、また、シリカ、アルミナ、粘土鉱物等のバインダーと混合し、造粒や成形を行って使用することもできる。また、塗布法や、成形法を用いて所定の形状に成形して用いることもでき、好ましくはハニカム状に成形して用いることができる。
【0092】
本発明の遷移金属含有ゼオライトを含む触媒の成形体を塗布法によって得る場合、通常、遷移金属含有ゼオライトとシリカ、アルミナ等の無機バインダーとを混合し、スラリーを作製し、コージェライト等の無機物で作製された成形体の表面に塗布し、焼成することにより作成され、好ましくはこの際にハニカム形状の成形体に塗布することによりハニカム状の触媒を得ることができる。
【0093】
本発明の遷移金属含有ゼオライトを含む触媒の成形体を成形する場合、通常、遷移金属含有ゼオライトをシリカ、アルミナ等の無機バインダーやアルミナ繊維、ガラス繊維等の無機繊維と混練し、押出法や圧縮法等の成形を行い、引き続き焼成を行うことにより作成され、好ましくはこの際にハニカム形状に成形することによりハニカム状の触媒を得ることができる。
【0094】
本発明の遷移金属含有ゼオライトを含む触媒は、窒素酸化物を含む排ガスを接触させて窒素酸化物を浄化する自動車排気浄化触媒として有効である。該排ガスには窒素酸化物以外の成分が含まれていてもよく、例えば炭化水素、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、窒素、酸素、硫黄酸化物、水が含まれていてもよい。また、炭化水素、アンモニア、尿素等の窒素含有化合物等の公知の還元剤を使用しても良い。具体的には、本発明の排ガス処理用触媒により、ディーゼル自動車、ガソリン自動車、定置発電・船舶・農業機械・建設機械・二輪車・航空機用の各種ディーゼルエンジン、ボイラー、ガスタービン等から排出される多種多様の排ガスに含まれる窒素酸化物を浄化することができる。
【0095】
本発明の遷移金属含有ゼオライトを含む触媒を使用する際の、触媒と排ガスの接触条件としては特に限定されるものではないが、排ガスの空間速度は通常100/h以上、好ましくは1000/h以上であり、通常500000/h以下、好ましくは100000/h以下であり、温度は通常100℃以上、好ましくは150℃以上、通常700℃以下、好ましくは500℃以下で用いられる。
【0096】
<水蒸気吸着材>
本発明の遷移金属含有ゼオライトは、優れた水蒸気の吸・脱着特性を示す。
その吸・脱着特性の程度は、条件により異なるが、一般的に、低温から、通常水蒸気の吸着が困難な高温領域まで吸着可能であり、また高湿度状態から、通常水蒸気の吸着が困難な低湿度領域まで吸着可能であり、かつ比較的低温の100℃以下で脱着が可能である。
【0097】
このような水蒸気吸着材の用途としては、吸着ヒートポンプ、熱交換器、デシカント空調機等が挙げられる。
【0098】
本発明の遷移金属含有ゼオライトは、特に水蒸気吸着材として優れた性能を示すが、本発明の遷移金属含有ゼオライトを水蒸気吸着材として用いる場合に、シリカ、アルミナ、チタニア等の金属酸化物や粘土等のバインダー成分や、熱伝導性の高い成分と共に使用することができる。本発明の遷移金属含有ゼオライトをこれらの他の成分と共に用いる場合、水蒸気吸着材中の本発明の遷移金属含有ゼオライトの含有量が、60重量%以上であることが好ましく、70重量%以上であることがより好ましく、80重量%以上であることがさらに好ましい。
【実施例】
【0099】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0100】
以下の実施例及び比較例において得られた遷移金属含有ゼオライト(以下、単に「ゼオライト」と記載する。)の分析及び性能評価は以下の方法により行った。
【0101】
[XRDの測定]
以下の方法で調製した試料を用いて、以下の条件で測定した。
<試料の調製>
めのう乳鉢を用いて人力で粉砕したゼオライト試料約100mgを同一形状のサンプルホルダーを用いて試料量が一定となるようにした。
<測定条件>
X線源:Cu−Kα線
出力設定:40kV・30mA
測定時光学条件:
発散スリット=1°
散乱スリット=1°
受光スリット=0.2mm
回折ピークの位置:2θ(回折角)
測定範囲:2θ=3〜50度
スキャン速度:3.0°(2θ/sec)、連続スキャン
【0102】
[Cu含有量とゼオライト組成の分析]
ゼオライト骨格構造のケイ素、アルミニウム、リン原子と遷移金属銅原子における元素分析は、試料を塩酸水溶液で加熱溶解させた後誘導結合プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)発光分光分析によりゼオライト骨格構造のケイ素、アルミニウム、リン原子とCuの含有量W1(重量%)を求める。或は、試料を打錠成形した後蛍光X線分析法(XRF)により、ゼオライト骨格構造のケイ素、アルミニウム、リン原子とCuの含有量W1(重量%)を求める。
一方、熱重量分析(TG)により試料中の水分WH2O(重量%)を求め、下記式(V)で、無水状態下での遷移金属含有ゼオライト中の骨格構造の各原子とCuの含有量W(重量%)を算出した。
W=W1/(1−WH2O) ・・・(V)
【0103】
[水蒸気吸着等温線の測定]
調製したゼオライト試料を120℃で5時間、真空排気した後、25℃における水蒸気吸着等温線を水蒸気吸着量測定装置(ベルソーブ18:日本ベル(株)社製)により以下の条件で測定した。
空気恒温槽温度 :50℃
吸着温度 :25℃
初期導入圧力 :3.0torr
導入圧力設定点数:0
飽和蒸気圧 :23.755torr
平衡時間 :500秒
【0104】
[触媒活性の評価]
調製したゼオライト試料をプレス成形後、破砕して篩を通し、0.6〜1mmに整粒した。整粒したゼオライト試料1mlを常圧固定床流通式反応管に充填した。ゼオライト層に下記表1の組成のガスを空間速度SV=100000/hで流通させながら、ゼオライト層を加熱した。150℃、175℃、200℃の各温度において、又は150℃、175℃、200℃、300℃、400℃、500℃の各温度において、出口NO濃度が一定となったとき、
NO浄化率(%)
={(入口NO濃度)―(出口NO濃度)}/(入口NO濃度) ×100
の値によって、ゼオライト試料の窒素酸化物除去活性を評価した。
【0105】
【表1】
【0106】
[水熱耐久試験]
調製したゼオライト試料をプレス成形後、破砕して篩を通し、0.6〜1mmに整粒したゼオライトを800℃、10体積%の水蒸気に、空間速度SV=3000/hの雰囲気下、5時間通じ、水熱処理を行った。試験後回収した試料をプレス成形後、破砕して篩を通し、0.6〜1mmに整粒した。上記触媒活性の評価方法でNO浄化率を評価した。
【0107】
[水蒸気繰り返し吸脱着耐久試験−1(90℃−80℃−5℃の水蒸気繰り返し吸脱着試験)]
調製したゼオライト試料0.5gを90℃に保たれた円盤型の真空容器内に保持し、5℃の飽和水蒸気雰囲気と80℃飽和水蒸気雰囲気にそれぞれ90秒曝す操作を繰り返した。このとき80℃の飽和水蒸気雰囲気に曝されたときに試料に吸着した水は、5℃の飽和水蒸気雰囲気で一部が脱着し、5℃に保った水だめに移動する。m回目の吸着からn回目の脱着で、5℃の水だめに移動した水の総量(Qn;m(g))と試料の乾燥重量(W(g))から一回あたりの平均吸着量(Cn;m(g/g))を以下のようにして求めた。
[Cn;m]=[Qn;m]/(n−m+1)/W
上記の水蒸気繰り返し吸脱着耐久試験において、1回から1000回の平均吸着量に対する1001回から2000回の平均吸着量の比を百分率で求め、吸脱着試験の維持率とした。(以下、「90-80-5耐久」と表示する。)
【0108】
[水蒸気繰り返し吸脱着耐久性試験−2(90℃−60℃−5℃の水蒸気繰り返し吸脱着試験)]
実装条件に近い繰り返し吸脱着試験条件として、図10に示す試験装置を用いて、触媒の「90℃−60℃−5℃の水蒸気繰り返し吸脱着耐久試験」(以下「90-60-5耐久」と表示する)を実施した。
図10において、1は60℃に保持された恒温室、2は90℃に保持された恒温室、3は5℃に保持された恒温室である。恒温室1内には飽和水蒸気の容器4が設けられ、恒温室2内には試料を保持した真空容器5が設けられ、恒温室3内には水だめとなる容器6が設けられている。容器4と真空容器5とはバルブaを有する配管を介して連結されており、容器6と真空容器5はバルブ6を有する配管を介して連結されている。
試料を90℃に保たれた真空容器5内に保持し、5℃の飽和水蒸気雰囲気(90℃の相対湿度1%)と60℃の飽和水蒸気雰囲気(90℃の相対湿度28%)にそれぞれ90秒曝す操作を繰返す。すなわち、60℃の飽和水蒸気雰囲気に曝す操作は、図10中、バルブaを開く(バルブbは閉じたまま)。この状態で90秒保持した後、バルブaを閉じると同時にバルブbを開ける。このとき、60℃の飽和水蒸気雰囲気に曝されたときに試料1に吸着した水は、5℃の飽和水蒸気雰囲気で一部が脱着し、5℃に保った水だめの容器6に移動する。この状態で90秒保持する。
以上の吸着、脱着を2000回繰り返し行う。
試験後回収した試料について上記触媒活性の評価方法の条件に基づきNO浄化率を評価した。
車などのディーゼルエンジン排ガスは5〜15体積%の水を排ガス中に含む。車では走行中、排ガスが200℃以上の高温となり、相対湿度は5%以下に低下し、触媒は水分を脱着した状態になる。しかし、停止時に90℃近辺で相対湿度が15%以上となり、触媒は水を吸着する。本条件により、90℃の吸着時には相対湿度が28%となる。この実条件に近い状態での繰り返し耐久性が実装時には重要となる。
【0109】
[実施例1]
水10gに85重量%リン酸8.1g及び擬ベーマイト(25重量%水含有、コンデア社製)5.4gをゆっくりと加え、1時間攪拌した。さらに、fumedシリカ(アエロジル200、日本アエロジル社製)0.6g及び水10gを加え、1時間攪拌した。その後、モルホリン3.4g、トリエチルアミン4.0gをゆっくりと加え、1時間攪拌した。これをA液とした。
A液とは別に、CuSO4・5H2O(キシダ化学社製)1.0gを水13.4gに溶解した後、テトラエチレンペンタミン(キシダ化学社製)0.8gを添加、混合してB液を調製した。
B液をA液にゆっくりと加えた。これを1時間攪拌し、以下の組成を有する水性ゲルを得た。
【0110】
<水性ゲル組成(モル比)>
SiO2:0.25
Al2O3:1
P2O5:0.875
CuO:0.1
テトラエチレンペンタミン:1
モルホリン:1
トリエチルアミン:1
水:50
【0111】
こうして得られた水性ゲルをフッ素樹脂内筒の入った100mlのステンレス製オートクレーブに仕込み、15rpmで攪拌しながら190℃で24時間反応させた。水熱合成後冷却して、デカンテーションにより上澄みを除いて沈殿物を回収した。沈殿物を水で3回洗浄した後濾別し、100℃で乾燥した。その後550℃で空気気流下焼成を行い、有機物を除去し、ゼオライト1を得た。
【0112】
こうして得られたゼオライト1のXRDを測定したところ、CHA構造(フレームワーク密度=14.6T/1,000Å3)であった。また、SEMを測定したところ、平均粒子径が10μmであった。
ゼオライト1のXRDの測定結果を図1に示す。
また、このゼオライト1について、水熱耐久試験前後の触媒活性の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0113】
[実施例2]
実施例1と同様にしてA液を調製した。
A液とは別に、CuSO4・5H2O(キシダ化学社製)1.0gを水13.4gに溶解した後、トリエチレンテトラミン(キシダ化学社製)0.6gを添加、混合してB液を調製した。
B液をA液にゆっくりと加えた。これを1時間攪拌し、以下の組成を有する水性ゲルを得た。
【0114】
<水性ゲル組成(モル比)>
SiO2:0.25
Al2O3:1
P2O5:0.875
CuO:0.1
トリエチレンテトラミン:1
モルホリン:1
トリエチルアミン:1
水:50
【0115】
得られた水性ゲルを用いて、実施例1と同様にして水熱合成、生成物の分離、乾燥及び焼成を行って、ゼオライト2を得た。
こうして得られたゼオライト2のXRDを測定したところ、実施例1のゼオライト1と同じようにCHA構造であった。また、SEMを測定したところ、平均粒子径が12μmであった。
また、ゼオライト2の25℃における水蒸気吸着等温線を図13に示す。
得られたゼオライト2について、水熱耐久試験前後の触媒活性の評価を行った。評価結果を表2に示す。
また、このゼオライト2について、水蒸気繰り返し吸脱着耐久試験−1(90-80-5耐久)を行ったところ、吸脱着試験の維持率は100%であった。
【0116】
[実施例3]
水10gに85重量%リン酸6.5g及び擬ベーマイト(25重量%水含有、コンデア社製)5.4gをゆっくりと加え、1時間攪拌した。さらに、fumedシリカ(アエロジル200、日本アエロジル社製)1.4g及び水10gを加え、1時間攪拌した。その後、モルホリン3.4g、トリエチルアミン4.0gをゆっくりと加え、1時間攪拌した。これをA液とした。
A液とは別に、CuSO4・5H2O(キシダ化学社製)1.0gを水13.7gに溶解した後、トリエチレンテトラミン(キシダ化学社製)0.6gを添加、混合してB液を調製した。
B液をA液にゆっくりと加えた。これを1時間攪拌し、以下の組成を有する水性ゲルを得た。
【0117】
<水性ゲル組成(モル比)>
SiO2:0.6
Al2O3:1
P2O5:0.7
CuO:0.1
トリエチレンテトラミン:0.1
モルホリン:1
トリエチルアミン:1
水:50
【0118】
得られた水性ゲルを用いて、実施例1と同様にして水熱合成、生成物の分離、乾燥及び焼成を行って、ゼオライト3を得た。
こうして得られたゼオライト3のXRDを測定したところ、実施例1のゼオライト1と同じようにCHA構造であった。
また、ゼオライト3について、水熱耐久試験前後の触媒活性の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0119】
[実施例4]
実施例1と同様にしてA液を調製した。
A液とは別に、Cu(CH3COO)2・5H2O(キシダ化学社製)0.8gを水13.4gに溶解した後、トリエチレンテトラミン(キシダ化学社製)0.6gを添加、混合してB液を調製した。
B液をA液にゆっくりと加えた。これを1時間攪拌し、以下の組成を有する水性ゲルを得た。
【0120】
<水性ゲル組成(モル比)>
SiO2:0.25
Al2O3:1
P2O5:0.875
CuO:0.1
トリエチレンテトラミン:0.1
モルホリン:1
トリエチルアミン:1
水:50
【0121】
得られた水性ゲルを用いて、実施例1と同様にして水熱合成、生成物の分離、乾燥及び焼成を行って、ゼオライト4を得た。
こうして得られたゼオライト4のXRDを測定したところ、CHA構造(フレームワーク密度=14.6T/1,000Å3)であった。ゼオライト4のXRDの測定結果を図3に示す。
このゼオライト4のXRF分析によるCu含有量(W1)は3.6重量%であった。また、XRFによるゼオライトの組成分析を行ったところ、骨格構造のケイ素原子とアルミニウム原子とリン原子の合計に対する各原子の構成割合(モル比)は、ケイ素原子が0.09、アルミニウム原子が0.50、リン原子が0.41であった。
また、ゼオライト4について25℃における水蒸気吸着等温線を測定したところ、相対蒸気圧0.01における吸着量が1.93mol/mol−Siであり、相対蒸気圧0.7における吸着量が283mg/gであった。ゼオライト4の水蒸気吸着等温線を図4に示す。
また、ゼオライト4について触媒活性の評価を行った。評価結果を表2及び表3に示す。
【0122】
[実施例5]
水10gに85重量%リン酸8.1g及び擬ベーマイト(25重量%水含有、コンデア社製)5.4gをゆっくりと加え、1時間攪拌した。さらに、fumedシリカ(アエロジル200、日本アエロジル社製)0.6g及び水10gを加え、1時間攪拌した。これをA液とした。
A液とは別に、CuSO4・5H2O(キシダ化学社製)1.0gを水13.4gに溶解した後、テトラエチレンペンタミン(キシダ化学社製)7.6gを添加、混合してB液を調製した。
B液をA液にゆっくりと加えた。これを1時間攪拌し、以下の組成を有する水性ゲルを得た。
【0123】
<水性ゲル組成(モル比)>
SiO2:0.25
Al2O3:1
P2O5:0.875
CuO:0.1
テトラエチレンペンタミン:1
水:50
【0124】
得られた水性ゲルを用いて、実施例1と同様にして水熱合成、生成物の分離、乾燥及び焼成を行って、ゼオライト5を得た。
こうして得られたゼオライト5のXRDを測定したところ、実施例1のゼオライト1と同じようにCHA構造であった。また、SEMを測定したところ、平均粒子径が12μmであった。
また、得られたゼオライト5について、水熱耐久試験前の触媒活性(初期活性)の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0125】
なお、以下の表2には、実施例1〜5で得られたゼオライト1〜5の各々のCu含有量W1(含水状態)及びW(無水状態)を示す。
【0126】
【表2】
【0127】
[実施例6]
実施例1と同様にしてA液を調製した。
A液とは別に、CuSO4・5H2O(キシダ化学社製)0.3gを水13.4gに溶解した後、トリエチレンテトラミン(キシダ化学社製)0.6gを添加、混合してB液を調製した。
B液をA液にゆっくりと加えた。これを1時間攪拌し、以下の組成を有する水性ゲルを得た。
【0128】
<水性ゲル組成(モル比)>
SiO2:0.25
Al2O3:1
P2O5:0.875
CuO:0.03
トリエチレンテトラミン:0.1
モルホリン:1
トリエチルアミン:1
水:50
【0129】
得られた水性ゲルを用いて、実施例1と同様にして水熱合成、生成物の分離、乾燥及び焼成を行って、ゼオライト6を得た。
こうして得られたゼオライト6のXRDを測定したところ、実施例1のゼオライト1と同じようにCHA構造であった。
また、このゼオライト6の25℃における水蒸気吸着等温線を測定したところ、相対蒸気圧0.04から0.09においての吸着量変化量は0.15g−H2O/gであった。また、25℃における水蒸気吸着等温線を測定したところ、相対蒸気圧が0.2の時の水吸着量は0.26g−H2O/gであった。ゼオライト6の水蒸気吸着等温線を図2に示す。
【0130】
[実施例7]
実施例1と同様にしてA液を調製した。
A液とは別に、FeSO4・7H2O(キシダ化学社製)1.1gを水13.4gに溶解した後、テトラエチレンペンタミン(キシダ化学社製)2.4gを添加、混合してB液を調製した。
B液をA液にゆっくりと加えた。これを1時間攪拌し、以下の組成を有する水性ゲルを得た。
【0131】
<水性ゲル組成(モル比)>
SiO2:0.25
Al2O3:1
P2O5:0.875
FeO:0.1
テトラエチレンペンタミン:0.3
モルホリン:1
トリエチルアミン:1
水:50
【0132】
得られた水性ゲルを用いて、実施例1と同様にして水熱合成、生成物の分離、乾燥及び焼成を行って、ゼオライト7を得た。
こうして得られたゼオライト7のXRDを測定したところ、実施例1のゼオライト1と同じようにCHA構造であった。
【0133】
[実施例8]
実施例1と同様にしてA液を調製した。
A液とは別に、FeSO4・7H2O(キシダ化学社製)1.1gを水13.4gに溶解した後、テトラエチレンペンタミン(キシダ化学社製)7.7gを添加、混合してB液を調製した。
B液をA液にゆっくりと加えた。これを1時間攪拌し、以下の組成を有する水性ゲルを得た。
【0134】
<水性ゲル組成(モル比)>
SiO2:0.25
Al2O3:1
P2O5:0.875
FeO:0.1
テトラエチレンペンタミン:1
モルホリン:1
トリエチルアミン:1
水:50
【0135】
得られた水性ゲルを用いて、実施例1と同様にして水熱合成、生成物の分離、乾燥及び焼成を行って、ゼオライト8を得た。
こうして得られたゼオライト8のXRDを測定したところ、実施例1のゼオライト1と同じようにCHA構造であった。
【0136】
以上の結果より、本発明の遷移金属含有ゼオライトの製造方法によれば、遷移金属含有ゼオライトを簡便かつ効率的に製造することができ、製造された遷移金属含有ゼオライトは、触媒活性及び水蒸気の吸・脱着性能に優れ、また、高温水熱耐久性にも優れることが分かる。
【0137】
[実施例9]
水20gに85重量%リン酸8.1g及び酸化銅(II)0.5gを加え、酸化銅(II)が完全に溶解するまで攪拌した。その後、擬ベーマイト(25重量%水含有、コンデア社製)5.4gをゆっくりと加え、1時間攪拌した。さらに、fumedシリカ(アエロジル200、日本アエロジル社製)0.6g及び水13.4gを加え、1時間攪拌した。その後、モルホリン3.4g、トリエチルアミン4.0gをゆっくりと加え、1時間攪拌した。さらに、テトラエチレンペンタミン(キシタ化学社製)1.1gを添加した後、1時間攪拌して以下の組成を有する水性ゲルを得た。
【0138】
<水性ゲル組成(モル比)>
SiO2:0.25
Al2O3:1
P2O5:0.875
CuO:0.15
テトラエチレンペンタミン:0.15
モルホリン:1
トリエチルアミン:1
水:50
【0139】
こうして得られた水性ゲルをフッ素樹脂内筒の入った100mlのステンレス製オートクレーブに仕込み、15rpmで攪拌しながら190℃で24時間反応させた。水熱合成後冷却して、デカンテーションにより上澄み及び銅粉を除いて沈殿物を回収した。沈殿物を水で3回洗浄した後濾別し、100℃で乾燥した。その後550℃で空気気流下焼成を行い、有機物を除去し、ゼオライト9を得た。
【0140】
ゼオライト9のXRDを測定した結果、CHA構造であった。ゼオライト9のXRDの測定結果を図11に示す。
また、ゼオライト9のXRF分析によるCu含有量(W)は4.3重量%であった。また、XRFによるゼオライトの組成分析を行ったところ、骨格構造のケイ素原子とアルミニウム原子とリン原子の合計に対する各原子の構成割合(モル比)は、ケイ素原子が0.097、アルミニウム原子が0.49、リン原子が0.41であった。
また、ゼオライト9について、25℃における水蒸気吸着等温線を測定したところ、相対蒸気圧0.01における吸着量が3.52mol/mol−Siであり、相対蒸気圧0.7における吸着量が267mg/gであった。ゼオライト9の水蒸気吸着等温線を図12に示す。
また、このゼオライト9について触媒活性の評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0141】
[実施例10]
実施例9と同様に水熱合成し、800℃で空気気流下焼成を行い、有機物を除去して、ゼオライト10を得た。
こうして得られたゼオライト10のXRDを測定したところ、CHA構造(フレームワーク密度=14.6T/1,000Å3)であった。XRF分析によるCuの担持量(W)は4.3重量%であった。また、XRFによるゼオライトの組成分析を行ったところ、骨格構造のケイ素原子とアルミニウム原子とリン原子の合計に対する各原子の構成割合(モル比)は、ケイ素原子が0.097、アルミニウム原子が0.49、リン原子が0.41であった。
このゼオライト10について25℃における水蒸気吸着等温線を測定したところ、相対蒸気圧0.01における吸着量が3.52mol/mol−Siであり、相対蒸気圧0.7における吸着量が267mg/gであった。
【0142】
[実施例11]
水217gに75重量%リン酸95g及び酸化銅(II)7.2gを加え、酸化銅(II)が完全に溶解するまで攪拌した。その後、擬ベーマイト(25重量%水含有、コンデア社製)61.8gをゆっくりと加え、2時間攪拌した。さらに、fumedシリカ(アエロジル200、日本アエロジル社製)16.4g及び水153.2gを加え、10分間攪拌した。その後、モルホリン39.6g、トリエチルアミン46gをゆっくりと加え、1時間攪拌した。さらに、テトラエチレンペンタミン(キシタ化学社製)17.2gを添加した後、0.5時間攪拌して以下の組成を有する水性ゲルを得た。
【0143】
<水性ゲル組成(モル比)>
SiO2:0.6
Al2O3:1
P2O5:0.8
CuO:0.2
テトラエチレンペンタミン:0.2
モルホリン:1
トリエチルアミン:1
水:50
【0144】
こうして得られた水性ゲルをフッ素樹脂内筒の入った1Lのステンレス製オートクレーブに仕込み、200rpmで攪拌しながら190℃で24時間反応させた。水熱合成後冷却して、濾過し、得られた生成物をイオン交換水で洗浄した後、100℃で乾燥した。その後550℃で空気気流下焼成を行い、有機物を除去し、ゼオライト11を得た。
【0145】
こうして得られたゼオライト11のXRDを測定したところ、CHA構造であった。また、XRF分析によるCu含有量(W)は5.1重量%であった。また、XRFによるゼオライトの組成分析を行ったところ、骨格構造のケイ素原子とアルミニウム原子とリン原子の合計に対する各原子の構成割合(モル比)は、ケイ素原子が0.16、アルミニウム原子が0.50、リン原子が0.34であった。
このゼオライト11について25℃における水蒸気吸着等温線を測定したところ、相対蒸気圧0.01における吸着量が1.68mol/mol−Siであり、相対蒸気圧0.7における吸着量が275mg/gであった。ゼオライト11の水蒸気吸着等温線を図5に示す。
また、このゼオライト11について触媒活性の評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0146】
[実施例12]
実施例11と同様に水熱合成し、800℃で空気気流下焼成を行い、有機物を除去してゼオライト12を得た。
こうして得られたゼオライト12のXRDを測定したところ、CHA構造(フレームワーク密度=14.6T/1,000Å3)であった。またXRF分析によるCu含有量(W)は5.1重量%であった。また、XRFによるゼオライトの組成分析を行ったところ、骨格構造のケイ素原子とアルミニウム原子とリン原子の合計に対する各原子の構成割合(モル比)は、ケイ素原子が0.16、アルミニウム原子が0.50、リン原子が0.34であった。
このゼオライト12について25℃における水蒸気吸着等温線を測定したところ、相対蒸気圧0.01における吸着量が2.09mol/mol−Siであり、相対蒸気圧0.7における吸着量が275mg/gであった。
また、このゼオライト12について触媒活性の評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0147】
[比較例1]
特開2003−183020号公報の実施例2に開示されている方法により、ゼオライトXを合成した。得られた乾燥ゼオライトXをジェットミルで3〜5μmに粉砕し、その後700℃で空気気流下焼成を行い、テンプレートを除去した(ゼオライトA)。
得られたゼオライトAのXRDを測定したところ、CHA構造(フレームワーク密度=14.6T/1,000Å3)であった。また、XRF分析によるゼオライトの組成分析を行ったところ、骨格構造のケイ素原子とアルミニウム原子とリン原子の合計に対する各原子の構成割合(モル比)は、ケイ素原子が0.092、アルミニウム原子が0.50、リン原子が0.40であった。
また、ゼオライトAについて25℃における水蒸気吸着等温線を測定したところ、相対蒸気圧0.01における吸着量が0.42mol/mol−Siであり、相対蒸気圧0.7における吸着量が314mg/gであった。
【0148】
[比較例2]
水1484kg、75%リン酸592kg、及び擬ベーマイト(25重量%水含有、サソール社製)440kgを混合し、3時間攪拌した。この混合液にfumedシリカ(アエロジル200、日本アエロジル社製)117kgと水1607kgを加え、10分間攪拌した。この混合液にモルホリン285kgとトリエチルアミン331kgを加え、1.5時間攪拌して以下の組成を有する水性ゲルを得た。
【0149】
<水性ゲル組成(モル比)>
SiO2:0.6
Al2O3:1
P2O5:0.7
モルホリン:1
トリエチルアミン:1
水:60
【0150】
得られた水性ゲルを5m3のステンレス製オートクレーブに仕込み、攪拌しながら最高到達温度190℃まで昇温時間10時間で昇温し、190℃で24時間保持した。反応後冷却して、濾過、水洗の後90℃で減圧乾燥した。得られた乾燥粉体をジェットミルで3〜5μmに粉砕し、その後750℃で空気気流下焼成を行い、テンプレートを除去した後、ゼオライトBを得た。
【0151】
ゼオライトBのXRDを測定したところ、CHA構造(フレームワーク密度=14.6T/1000Å3)であった。また、XRF分析により元素分析を行ったところ、骨格構造のケイ素原子とアルミニウム原子とリン原子の合計に対する各成分の構成割合(モル比)は、ケイ素原子が0.17、アルミニウム原子が0.52、リン原子が0.31であった。
また、ゼオライトBについて25℃における水蒸気吸着等温線を測定したところ、相対蒸気圧0.01における吸着量が0.69mol/mol−Siであり、相対蒸気圧0.7における吸着量が262mg/gであった。
【0152】
[比較例3]
比較例1で得られたゼオライトAに対し国際公開第2010/084930号公報の実施例2Aに開示されている方法により、銅を3重量%担持し、800℃で2時間焼成して、ゼオライトCを得た。
ゼオライトCについて、25℃における水蒸気吸着等温線を測定したところ、相対蒸気圧0.01における吸着量が1.22mol/mol−Siであり、相対蒸気圧0.7における吸着量が246mg/gであった。ゼオライトCの水蒸気吸着等温線を図6に示す。
また、このゼオライトCについて触媒活性の評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0153】
[比較例4]
比較例1で得られたゼオライトAに対し国際公開第2010/084930号公報の実施例2Aに開示されている方法により、銅を4重量%担持し、800℃で2時間焼成して、ゼオライトDを得た。
ゼオライトDについて、25℃における水蒸気吸着等温線を測定したところ、相対蒸気圧0.01における吸着量が29mg/g(1.22mol/mol−Si)であり、相対蒸気圧0.7における吸着量が217mg/gであった。
また、このゼオライトDについて触媒活性の評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0154】
[比較例5]
比較例2で得られたゼオライトBに対し国際公開第2010/084930号公報の実施例2Aに開示されている方法により、銅を3.8重量%担持し、800℃で2時間焼成して、ゼオライトEを得た。
ゼオライトEについて、25℃における水蒸気吸着等温線を測定したところ、相対蒸気圧0.01における吸着量が0.94mol/mol−Siであり、相対蒸気圧0.7における吸着量が225mg/gであった。ゼオライトEの水蒸気吸着等温線を図7に示す。
また、このゼオライトEについて触媒活性の評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0155】
[比較例6]
中国公開特許102259892A明細書の実施例1に開示されている方法により、ゼオライトFを合成した。
ゼオライトFについてXRF分析により元素分析を行ったところ、Cu含有量(W)は5.8重量%であった。また、ケイ素原子とアルミニウム原子とリン原子の合計に対する各原子の構成割合(モル比)は、ケイ素原子が0.17、アルミニウム原子が0.46、リン原子が0.37であった。
ゼオライトFについて、25℃における水蒸気吸着等温線を測定したところ、相対蒸気圧0.01における吸着量が3.16mol/mol−Siであり、相対蒸気圧0.7における吸着量が341mg/gであった。ゼオライトFの水蒸気吸着等温線を図8に示す。
また、このゼオライトFについて触媒活性の評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0156】
[比較例7]
米国公開特許2010/0310440A1明細書の実施例4に開示されている方法により、ゼオライトGを合成した。
ゼオライトGについて25℃における水蒸気吸着等温線を測定したところ、相対蒸気圧0.01における吸着量が0.98mol/mol−Siであり、相対蒸気圧0.7における吸着量が139mg/gであった。ゼオライトGの蒸気吸着等温線を図9に示す。
また、このゼオライトGについて水熱耐久試験前の触媒活性(初期活性)の評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0157】
【表3】
【0158】
以上の結果より、25℃で測定した水蒸気吸着等温線において、相対蒸気圧0.01における吸着量が1.3mol/mol−Siより低い遷移金属含有シリコアルミノホスフェートゼオライトは触媒活性が低いか、或は水蒸気繰り返し吸脱着耐久試験後の触媒低温活性が低いことがわかる。また、相対蒸気圧0.7における吸着量が150mg/gより低い遷移金属含有シリコアルミノホスフェートゼオライトは触媒活性が低い。相対蒸気圧0.7における吸着量が300mg/gを超える遷移金属含有シリコアルミノホスフェートゼオライトは、水熱耐久性が低い。
これに対して、25℃で測定した水蒸気吸着等温線において、相対蒸気圧0.01における吸着量が1.3mol/mol−Si以上、相対蒸気圧0.7における吸着量が150mg/g以上、300mg/g以下で、少なくとも骨格構造にケイ素原子、リン原子及びアルミニウム原子を含むゼオライトに遷移金属を含有させてなる本発明の遷移金属含有ゼオライトは、触媒活性及び水熱耐久性が高く、さらに、水蒸気繰り返し吸脱着耐久試験後の触媒活性が高く、水の吸脱着に対する安定性も高い。
【産業上の利用可能性】
【0159】
本発明の遷移金属含有ゼオライトの製造方法は、高い高温水熱耐久性を有する遷移金属含有シリコアルミノホスフェートゼオライトを、簡便かつ効率的に製造することができる方法である。
本発明の遷移金属含有ゼオライトの製造方法で製造した遷移金属含有ゼオライトを用いれば、ディーゼルエンジン等から排出される排ガス中に含まれる窒素酸化物を効率よく浄化することができ、また高温排ガス中でも劣化することがないため触媒量を軽減することができる。
また、本発明の遷移金属含有ゼオライトの製造方法で製造した遷移金属含有ゼオライトを用いれば、ゼオライト水蒸気吸着材として、100℃以下の比較的低温の熱源で駆動する吸着ヒートポンプを提供することができる。
【符号の説明】
【0160】
1,2,3 恒温室
4,5,6 容器
a,b バルブ
【技術分野】
【0001】
本発明は、遷移金属を含むシリコアルミノホスフェートゼオライト、並びに該遷移金属含有ゼオライトを含む排ガス処理用触媒、及び水蒸気吸着材に関する。
【背景技術】
【0002】
遷移金属を含むゼオライトを製造するには、合成したゼオライトを遷移金属塩溶液に含浸するか、或いはイオン交換することにより遷移金属をゼオライトに担持させる工程が必要であり、この担持工程において、以下のような課題があった。即ち、ゼオライトの含浸に用いる遷移金属塩溶液としては、一般に遷移金属塩の水溶液が用いられているが、遷移金属塩は水酸化物を形成し易く、浸漬液中で生成した遷移金属水酸化物がゼオライト担体の細孔内ではなく、粒子表面上に多量に付着するという現象がみられ、遷移金属をゼオライトの細孔内に均一に担持させることが困難である。また、この遷移金属担持工程から排出される大量の廃液の処理の問題、ゼオライト浸漬スラリーの濾過、洗浄など、工程数が多いといった課題もある。
【0003】
これに対して、特許文献1及び非特許文献1に、遷移金属原料である遷移金属酸化物や遷移金属塩をゼオライト合成工程のゲルに導入することにより、遷移金属を含むシリコアルミノホスフェートゼオライトを一工程で合成するワンポット合成方法が提案された。しかし、この方法で合成された遷移金属を含むシリコアルミノホスフェートゼオライトは、遷移金属がゼオライト骨格元素の一部と置き換えられることにより導入されたものとなるので、触媒や吸着材として使用された場合の性能が十分ではなく、高温水熱処理を行うと、ゼオライトの劣化が起きる課題があった。また、この方法で合成した遷移金属を含むゼオライトには、非結晶物など不純物が含まれているので、触媒性能が低いという問題があった。
【0004】
特許文献2にもCuをゼオライト合成出発ゲルに仕込んでCuを含むシリコアルミノフォスフェートゼオライトを合成する方法が提案されているが、この方法で合成された遷移金属を含むゼオライトも水熱安定性が低いという問題がある。
【0005】
特許文献3には、シリコアルミノフォスフェートゼオライトを合成した後、Cuを担持することで、Cuを含むシリコアルミノフォスフェートゼオライトを合成する方法が提案されている。この方法で合成した遷移金属を含むゼオライトは、高い触媒活性及び水熱安定性を有する。さらに、水の吸脱着に対する高い耐久性を有することが記載されている。しかし、この特許文献3で得られたゼオライトは、水蒸気繰り返し吸脱着耐久試験後でも、ゼオライト構造を維持することができるが、低温(例えば200℃)での触媒性能の低下が見られ、特に水蒸気繰り返し吸脱着耐久試験後の低温触媒活性が不十分であるという欠点があった。
【0006】
遷移金属を含むシリコアルミノホスフェートゼオライトを触媒や吸着材として使用する時、ゼオライト上では水の吸脱着を頻繁に行っている場合がある。例えば、自動車に使用されている場合は、自動車を駐車する時、ゼオライト触媒が空気中の水分を吸い込む。一方、自動車を走行するとき、自動車排気ガスの温度の上昇とともにゼオライト触媒は吸い込んだ水分を空気中に排出する。このようにゼオライト触媒上では水の吸脱着を行っている。また、特許文献3に提案された遷移金属を含むゼオライトは、水の吸脱着による骨格元素結合Si−O−Alの結合角や結合長の変化によるSi−O−Al結合サイトに固定化された遷移金属が凝集され、高分散遷移金属触媒活性点の減少による触媒活性が低下することが考えられる。
【0007】
非特許文献2に記載のシリコアルミノフォスフェートゼオライトは、水の吸脱着により骨格元素結合Si−O−AlやP−O−Al結合角や結合長が変化する。水の吸着、脱着が繰り返されれば、骨格元素結合Si−O−AlやP−O−Alが分解され、ゼオライト骨格の構造が破壊されていく。ゼオライト骨格の構造が破壊されれば、触媒表面積の低下によるさらなる触媒活性の低下を招く。
【0008】
また、特許文献4に記載のシリコアルミノホスフェートゼオライトは、水を吸着又は脱着することにより、ゼオライトの格子定数が変化し、収縮又は膨張する。特許文献4にはこの収縮又は膨張のために、シリコアルミノホスフェートゼオライトを含むハニカムユニットを有するハニカム構造体は、水の吸脱着でハニカムユニットが破損しやすいという問題があることが記載されており、このため、AlとPの物質量の和に対するSiの物質量の比と酸点を特定量に調整したシリコアルミノフォスフェートにすることが記載されている。しかし、特許文献4に記載される調整のみでは、高温水熱耐久性、及び水蒸気繰り返し吸脱着耐久試験後の排ガス処理用としての触媒活性や水蒸気吸着性能が不充分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国公開特許2010/0310440A1明細書
【特許文献2】中国公開特許102259892明細書
【特許文献3】国際公開第2010/084930A公報
【特許文献4】国際公開第2012/029159A1公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Journal of Catalysis, 217(2003)100−106
【非特許文献2】Microporous and Mesoporous Materials 57(2003)157−168
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、遷移金属を含むシリコアルミノホスフェートゼオライトであって、触媒や吸着材としての性能に優れており、高温水熱耐久性が高い遷移金属含有ゼオライトを、簡便にかつ効率よく製造することができる方法を提供することを課題とする。
さらに本発明は、水の吸脱着に対する高い安定性、かつ高い触媒性能を有する遷移金属含有アルミノホスフェートゼオライトの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、鋭意検討の結果、ゼオライト原料と共に、遷移金属原料及びポリアミンを含む水性ゲルから水熱合成された遷移金属含有シリコアルミノホスフェートゼオライトが、従来のワンポット合成方法によって合成された遷移金属含有シリコアルミノホスフェートゼオライトに比べて、高い高温水熱耐久性を示し、かつ高い触媒活性を有するものとなることを見出した。
さらに、本発明者らは、低湿度での水吸着量が多く、かつ高湿度での水吸着量が一定範囲以内になる遷移金属含有ゼオライトは触媒性能が高く、さらに、水の吸脱着に対する高い安定性を有することを見出した。
【0013】
本発明はこのような知見に基づいて達成されたものであり、以下を要旨とする。
【0014】
すなわち、本発明の第一の要旨は、少なくとも骨格構造にケイ素原子、リン原子及びアルミニウム原子を含むゼオライトに遷移金属を含有させてなる遷移金属含有ゼオライトを製造する方法であって、ケイ素原子原料、アルミニウム原子原料、リン原子原料、遷移金属原料及びポリアミン(但しジアミンを除く)を含む水性ゲルから水熱合成することを特徴とする遷移金属含有ゼオライトの製造方法、及びこの製造方法により得られた遷移金属含有ゼオライト、に存する。
【0015】
本発明の第二の要旨は、25℃で測定した水蒸気吸着等温線において、相対蒸気圧0.01における吸着量が1.3mol/mol−Si以上、相対蒸気圧0.7における吸着量が150mg/g以上、300mg/g以下であり、少なくとも骨格構造にケイ素原子、リン原子及びアルミニウム原子を含むゼオライトに遷移金属を含有させてなる遷移金属含有ゼオライト、に存する。
本発明の第三の要旨は、上記第一の要旨の製造方法により得られ、第二の要旨のような水吸着性能を有する遷移金属含有ゼオライト、に存する。
本発明の第四の要旨は、上記第一〜第三の要旨に記載された遷移金属含有ゼオライトを用いた排ガス処理用触媒、特には自動車用排ガス処理用触媒、に存する。
本発明の第五の要旨は、上記第一〜第三の要旨に記載された遷移金属含有ゼオライトを用いた水蒸気吸着材、に存する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ゼオライト原料と共に、遷移金属原料及びポリアミンを含む水性ゲルを水熱合成することにより、ゼオライトの水熱合成工程でゼオライトの合成と共にゼオライト細孔内への遷移金属の高分散化を行って、高温水熱耐久性が高く、触媒活性に優れた遷移金属含有シリコアルミノホスフェートゼオライトを、簡便にかつ効率よく製造することができる。
【0017】
また、本発明によれば、25℃で測定した水蒸気吸着等温線において、相対蒸気圧0.01における吸着量が1.3mol/mol−Si以上、相対蒸気圧0.7における吸着量が150mg/g以上、300mg/g以下であり、少なくとも骨格構造にケイ素原子、リン原子及びアルミニウム原子を含むゼオライトに遷移金属を含有させてなる遷移金属含有ゼオライトが得られる。
従来の遷移金属含有ゼオライトと比べ、本発明の遷移金属含有ゼオライトは、触媒活性及び水熱耐久性が高く、さらに、水蒸気繰り返し吸脱着耐久試験後でも触媒活性が高く、水の吸脱着に対して優れた安定性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例1で製造したゼオライト1のXRDの測定結果を示すチャートである。
【図2】実施例6で製造したゼオライト6の水蒸気吸着等温線を示すグラフである。
【図3】実施例4で製造したゼオライト4のXRDの測定結果を示すチャートである。
【図4】実施例4で製造したゼオライト4の水蒸気吸着等温線を示すグラフである。
【図5】実施例11で製造したゼオライト11の水蒸気吸着等温線を示すグラフである。
【図6】比較例3で製造したゼオライトCの水蒸気吸着等温線を示すグラフである。
【図7】比較例5で製造したゼオライトEの水蒸気吸着等温線を示すグラフである。
【図8】比較例6で製造したゼオライトFの水蒸気吸着等温線を示すグラフである。
【図9】比較例7で製造したゼオライトGの水蒸気吸着等温線を示すグラフである。
【図10】実施例における水蒸気繰り返し吸脱着耐久試験−2(90℃−60℃−5℃)に用いた試験装置の構成を示す模式図である。
【図11】実施例9で製造したゼオライト9のXRDの測定結果を示すチャートである。
【図12】実施例9で製造したゼオライト9の水蒸気吸着等温線を示すグラフである。
【図13】実施例2で製造したゼオライト2の水蒸気吸着等温線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、以下の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はこれらの内容に特定はされない。
【0020】
[遷移金属含有ゼオライトの製造方法]
本発明の遷移金属含有ゼオライトの製造方法は、少なくとも骨格構造にケイ素原子、リン原子及びアルミニウム原子を含むゼオライトに遷移金属を含有させてなる遷移金属含有ゼオライトを、ケイ素原子原料、アルミニウム原子原料、リン原子原料、遷移金属原料及びポリアミン(但し、ジアミンを除く。以下、本発明においては、単に「ポリアミン」と称した場合は、特に断らない限り、「ジアミンを除くもの」とする)を含む水性ゲルから水熱合成することにより製造することを特徴とする。
【0021】
即ち、本発明の方法は、水熱合成に供する水性ゲルが、遷移金属源とポリアミンを含有することに特徴を有する。
本発明において、水熱合成に供する水性ゲルが、遷移金属源とポリアミンを含有すること以外のその他の製造条件は特に限定されず、公知のゼオライトの水熱合成方法に従うことができる。通常、アルミニウム原子原料、ケイ素原子原料、リン原子原料、遷移金属原料、及びポリアミンを混合して水性ゲルを調製し、得られた水性ゲルを水熱合成に供する。なお、この水性ゲルに、更に公知のテンプレートを添加しても良い。該水性ゲルから通常の方法で水熱合成を行い、その後焼成等によりポリアミンや他のテンプレートを除去して遷移金属含有ゼオライトを得る。
【0022】
本発明の方法によると、高温水熱耐久性の高い遷移金属含有シリコアルミノホスフェートゼオライトを製造することができる理由の詳細は明らかではないが、以下のようなことが推察される。
即ち、水性ゲル中に遷移金属原料と共にポリアミンを含むため、ゼオライトを合成する際に、水性ゲル中の遷移金属がポリアミンと強く相互作用して安定化すると共に、ゼオライト骨格元素と反応しにくくなる。このため、特許文献1及び非特許文献1に記載されるような従来の遷移金属含有シリコアルミノホスフェートゼオライトの合成法とは異なり、遷移金属がゼオライトの骨格に入りにくく(ゼオライト骨格元素が遷移金属によって置換されにくく)、ゼオライトの骨格外、主としてゼオライトの細孔に遷移金属を分散させて存在させることができる。このようなことから、本発明によれば、高い触媒性能と吸着性能、並びに高い高温水熱耐久性を有する遷移金属含有シリコアルミノホスフェートゼオライトを合成できることが考えられる。
【0023】
以下、本発明の遷移金属含有ゼオライトの製造方法の一例を説明する。
【0024】
{原料}
本発明に係る水性ゲルの調製に用いられる各原料について説明する。
【0025】
<アルミニウム原子原料>
本発明におけるゼオライトのアルミニウム原子原料は特に限定されず、通常、擬ベーマイト、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムトリエトキシド等のアルミニウムアルコキシド、水酸化アルミニウム、アルミナゾル、アルミン酸ナトリウム等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。取り扱いが容易な点及び反応性が高い点で、アルミニウム原子原料としては擬ベーマイトが好ましい。
【0026】
<ケイ素原子原料>
本発明におけるゼオライトのケイ素原子原料は特に限定されず、通常、fumed(ヒュームド)シリカ、シリカゾル、コロイダルシリカ、水ガラス、ケイ酸エチル、ケイ酸メチル等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。高純度で、反応性が高い点で、ケイ素原子原料としてはfumedシリカが好ましい。
【0027】
<リン原子原料>
本発明におけるゼオライトのリン原子原料は、通常、リン酸であるが、リン酸アルミニウムを用いてもよい。リン原子原料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0028】
<遷移金属原料>
本発明において、ゼオライトに含有させる遷移金属原料は特に限定されず、通常、遷移金属の硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、塩化物、臭化物等の無機酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩等の有機酸塩、ペンタカルボニル、フェロセン等の有機金属化合物などが使用される。これらのうち、水に対する溶解性の観点からは無機酸塩、有機酸塩が好ましい。場合によってはコロイド状の酸化物、あるいは微粉末状の酸化物を用いても良い。
【0029】
遷移金属としては、特に限定されるものではないが、吸着材用途や触媒用途での特性の点から、通常、鉄、コバルト、マグネシウム、亜鉛、銅、パラジウム、イリジウム、白金、銀、金、セリウム、ランタン、プラセオジウム、チタン、ジルコニウム等の周期表3−12族の遷移金属が挙げられ、好ましくは鉄、コバルト、銅などの周期表8、9、11族、より好ましくは周期表8、11族である。ゼオライトに含有させる遷移金属は、これらの1種であってもよく、2種以上の遷移金属を組み合わせてゼオライトに含有させてもよい。これらの遷移金属のうち、特に好ましくは、鉄及び/又は銅であり、とりわけ好ましくは銅である。
【0030】
本発明において、遷移金属原料は好ましくは酸化銅(II)又は酢酸銅(II)であり、より好ましくは酸化銅(II)である。
【0031】
遷移金属原料としては、遷移金属種、或いは化合物種の異なるものの2種以上を併用してもよい。
【0032】
<ポリアミン>
本発明で用いるポリアミンとしては、一般式H2N−(CnH2nNH)x−H(式中、nは2〜6の整数、xは2〜10の整数)で表されるポリアミンが好ましい。
【0033】
上記式において、nは2〜5の整数が好ましく、2〜4の整数がより好ましく、2又は3がさらに好ましく、2が特に好ましい。xは2〜6の整数が好ましく、2〜5の整数がより好ましく、3又は4がさらに好ましく、4が特に好ましい。
【0034】
このようなポリアミンとしては、中でもジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンが安価であり、好ましく、中でもトリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンが特に好ましい。これらのポリアミンは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を含んでいてもよい。また、分岐状のポリアミンを含んでいても良い。
【0035】
<テンプレート>
本発明に係る水性ゲルには、ゼオライト製造の際のテンプレートとして一般に使用される、アミン、イミン、四級アンモニウム塩等を更に含んでいてもよい。
【0036】
テンプレートとしては、好ましくは
(1)ヘテロ原子として窒素原子を含む脂環式複素環化合物
(2)アルキル基を有するアミン(アルキルアミン)
(3)シクロアルキル基を有するアミン(シクロアルキルアミン)
及び
(4)テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド
からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を用いることが好ましい。これらは入手しやすく安価であり、さらに、製造されたシリコアルミノホスフェートゼオライトの取り扱いが容易で構造破壊も起きにくいという点において好適である。中でも(1)ヘテロ原子として窒素原子を含む脂環式複素環化合物、(2)アルキルアミン、及び(3)シクロアルキルアミンが好ましく、これら3つの群のうち、2つ以上の群から各群につき1種以上の化合物を選択して用いることがより好ましい。
【0037】
(1)ヘテロ原子として窒素原子を含む脂環式複素環化合物
ヘテロ原子として窒素原子を含む脂環式複素環化合物の複素環は通常5〜7員環であって、好ましくは6員環である。複素環に含まれるヘテロ原子の個数は通常3個以下、好ましくは2個以下である。窒素原子以外のヘテロ原子は任意であるが、窒素原子に加えて酸素原子を含むものが好ましい。ヘテロ原子の位置は特に限定されないが、ヘテロ原子が相互に隣り合わないものが好ましい。
【0038】
また、ヘテロ原子として窒素原子を含む脂環式複素環化合物の分子量は、通常250以下、好ましくは200以下、さらに好ましくは150以下であり、また通常30以上、好ましくは40以上、さらに好ましくは50以上である。
【0039】
このようなヘテロ原子として窒素原子を含む脂環式複素環化合物として、モルホリン、N−メチルモルホリン、ピペリジン、ピペラジン、N,N’−ジメチルピペラジン、1,4−ジアザビシクロ(2,2,2)オクタン、N−メチルピペリジン、3−メチルピペリジン、キヌクリジン、ピロリジン、N−メチルピロリドン、ヘキサメチレンイミンなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらのうち、モルホリン、ヘキサメチレンイミン、ピペリジンが好ましく、モルホリンが特に好ましい。
【0040】
(2)アルキルアミン
アルキルアミンのアルキル基は、通常、鎖状アルキル基であって、アルキルアミンの1分子中に含まれるアルキル基の数は特に限定されるものではないが、3個が好ましい。
また、アルキルアミンのアルキル基は一部水酸基等の置換基を有していてもよい。
アルキルアミンのアルキル基の炭素数は4以下が好ましく、1分子中の全アルキル基の炭素数の合計は5以上30以下がより好ましい。
また、アルキルアミンの分子量は通常250以下、好ましくは200以下、さらに好ましくは150以下である。
【0041】
このようなアルキルアミンとしては、ジ−n−プロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−イソプロピルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、ジ−n−ブチルアミン、ネオペンチルアミン、ジ−n−ペンチルアミン、イソプロピルアミン、t−ブチルアミン、エチレンジアミン、ジ−イソプロピル−エチルアミン、N−メチル−n−ブチルアミン等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらのうち、ジ−n−プロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−イソプロピルアミン、トリエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、イソプロピルアミン、t−ブチルアミン、エチレンジアミン、ジ−イソプロピル−エチルアミン、N−メチル−n−ブチルアミンが好ましく、トリエチルアミンが特に好ましい。
【0042】
(3)シクロアルキルアミン
シクロアルキルアミンとしては、アルキル基の炭素数が4以上10以下であるものが好ましく、中でもシクロヘキシルアミンが好ましい。シクロアルキルアミンは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0043】
(4)テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド
テトラアルキルアンモニウムヒドロキシドとしては、4個のアルキル基が炭素数4以下のアルキル基であるテトラアルキルアンモニウムヒドロキシドが好ましい。テトラアルキルアンモニウムヒドロキシドは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0044】
テンプレートとして2種以上のものを組み合わせて用いる場合、その組み合わせは任意であるが、モルホリン、トリエチルアミン及びシクロヘキシルアミンのうちの2種以上、中でもモルホリンとトリエチルアミンを併用することが好ましい。
【0045】
これらのテンプレート各群の混合比率は、条件に応じて選択する必要がある。2種のテンプレートを混合させるときは、通常、混合させる2種のテンプレートのモル比が1:20から20:1、好ましくは1:10から10:1、さらに好ましくは1:5から5:1である。3種のテンプレートを混合させるときは、通常、3種目のテンプレートのモル比は、上記のモル比で混合された2種のテンプレートに対して1:20から20:1、好ましくは1:10から10:1、さらに好ましくは1:5から5:1である。
【0046】
本発明においては、このような公知のテンプレートを使用しなくても良いが、使用した方が、高温水熱耐久性が優れた遷移金属含有アルミノホスフェートゼオライトを製造することができ、好ましい。
【0047】
{水性ゲルの調製}
水性ゲルは、上述のケイ素原子原料、アルミニウム原子原料、リン原子原料、遷移金属原料、及びポリアミン、必要に応じて用いられるその他のテンプレートを水と混合して調製される。
【0048】
本発明で用いる水性ゲルの組成は、ケイ素原子原料、アルミニウム原子原料、リン原子原料、及び遷移金属原料を酸化物として表したときのモル比で、以下のような組成となることが好ましい。
【0049】
SiO2/Al2O3の値は、通常0より大きく、好ましくは0.1以上であり、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.6以下、更に好ましくは0.4以下、特に好ましくは0.3以下である。
また、P2O5/Al2O3の値は、通常0.6以上、好ましくは0.7以上、さらに好ましくは0.8以上であり、通常1.3以下、好ましくは1.2以下、さらに好ましくは1.1以下である。
MaOb/Al2O3(ただし、a及びbはそれぞれMとOの原子比を表す)の値は、通常0.01以上、好ましくは0.03以上、さらに好ましくは0.05以上であり、通常1以下、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.4以下、さらに好ましくは0.3以下である。
【0050】
SiO2/Al2O3が上記上限よりも大きいと、結晶化しにくかったり、水熱耐久性が不十分である。
P2O5/Al2O3が上記下限よりも小さいと結晶化しにくかったり、水熱耐久性が不十分であったりし、上記上限よりも大きいと同様に結晶化しにくかったり、水熱耐久性が不十分である。
水熱合成によって得られるゼオライトの組成は、水性ゲルの組成と相関があり、従って、所望の組成のゼオライトを得るためには、水性ゲルの組成を上記の範囲において適宜設定すればよい。
【0051】
また、MaOb/Al2O3が上記下限よりも小さいとゼオライトに遷移金属の導入量が不十分であり、上記上限よりも大きいと結晶化しにくかったり、水熱耐久性が不十分である。
【0052】
水性ゲル中のポリアミンの量は、テンプレートを使用する場合には、遷移金属原料を安定化させるに足りる量にすれば良いが、テンプレートを使用しない場合は、ポリアミンがテンプレートの作用も兼ねるので、テンプレートとして機能するための量にする必要がある。
【0053】
具体的には、以下のような使用量とすることが好ましい。
【0054】
<テンプレートを使用する場合>
テンプレートを使用する場合は、水性ゲル中のポリアミンとテンプレートの総量は、水性ゲル中のアルミニウム原子原料の酸化物換算のAl2O3に対するポリアミン及びテンプレートの合計のモル比で、通常0.2以上、好ましくは0.5以上、さらに好ましくは1以上であって、通常4以下、好ましくは3以下、さらに好ましくは2.5以下である。
ポリアミンとテンプレートの総量が上記下限より少ないと結晶化しにくかったり、水熱耐久性が不十分であり、上記上限より多いとゼオライトの収率が不十分である。
また、ポリアミンは、遷移金属原料の酸化物換算のMaObに対するポリアミンのモル比で、通常0.1以上、好ましくは0.5以上、さらに好ましくは0.8以上であって、通常10以下、好ましくは5以下、さらに好ましくは4以下となる量で用いることが好ましい。
水性ゲル中のポリアミンの量が上記下限よりも少ないとポリアミンを用いることによる本発明の効果を十分に得ることができず、上記上限よりも多いとゼオライトの収率が不十分である。
【0055】
<テンプレートを使用しない場合>
テンプレートを使用しない場合は、上記と同様の理由から、水性ゲル中のポリアミンの量は、水性ゲル中のアルミニウム原子原料の酸化物換算のAl2O3に対するポリアミンのモル比で、通常0.2以上、好ましくは0.5以上、さらに好ましくは1以上、通常4以下、好ましくは3以下、さらに好ましくは2.5以下であって、遷移金属原料の酸化物換算のMaObに対するポリアミンのモル比で、通常1以上、好ましくは5以上、さらに好ましくは10以上で、通常50以下、好ましくは30以下、さらに好ましくは20以下となる量で用いることが好ましい。
【0056】
なお、前述の如く、テンプレートは条件に応じて適宜選ぶ必要があるが、例えば、テンプレートとしてモルホリンとトリエチルアミンを併用する場合、モルホリン/トリエチルアミンのモル比は0.05〜20、特に0.1〜10、とりわけ0.2〜9となるように用いることが好ましい。
前記2つ以上の群から各群につき1種以上選択されたテンプレートを混合する順番は特に限定されず、テンプレート同士を混合した後その他の物質と混合してもよいし、各テンプレートをそれぞれ他の物質と混合してもよい。
【0057】
また、水性ゲル中の水の割合は、合成のし易さ及び生産性の高さの観点から、アルミニウム原子原料を酸化物で表したとき、Al2O3に対する水のモル比で、通常3以上、好ましくは5以上、さらに好ましくは10以上であって、通常200以下、好ましくは150以下、さらに好ましくは120以下である。
【0058】
水性ゲルのpHは通常5以上、好ましくは6以上、さらに好ましくは6.5以上であって、通常11以下、好ましくは10以下、さらに好ましくは9以下である。
【0059】
なお、水性ゲル中には、所望により、上記以外の成分を含有していてもよい。このような成分としては、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物や塩、アルコール等の親水性有機溶媒が挙げられる。水性ゲル中のこれらの他の成分の含有量としては、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物や塩は、アルミニウム原子原料を酸化物で表したとき、Al2O3に対するモル比で、通常0.2以下、好ましくは0.1以下であり、アルコール等の親水性有機溶媒は、水性ゲル中の水に対してモル比で通常0.5以下、好ましくは0.3以下である。
【0060】
水性ゲルの調製の際の各原料の混合順序は制限がなく、用いる条件により適宜選択すればよいが、通常は、まず水にリン原子原料、アルミニウム原子原料を混合し、これにケイ素源、及びテンプレートを混合する。遷移金属原料、ポリアミンは、これらを混合する際の何れのタイミングで添加しても良いが、遷移金属原料とポリアミンを予め混合すると、ポリアミンによる遷移金属原料の錯体化による安定化の効果が有効に発揮され、好ましい。
また、少量の水及びリン酸等のリン原子原料に、遷移金属原料を溶解させた後、他の原料を加える方法も採用することができる。この方法は、水の量を減らすことにより、収率を挙げることができ、遷移金属量を増やすことができるので、遷移金属量を遷移金属含有ゼオライトの4重量%以上とする場合の製造方法として好ましい。また得られる遷移金属含有ゼオライトを触媒や吸着材として使用した場合の性能にも優れるものとなるので好ましい。ここで「少量の水」とは、Al2O3換算のアルミニウム原子原料に対する水のモル比で、50以下であることが好ましく、より好ましくは40以下、さらに好ましくは35以下である。
【0061】
{水熱合成}
水熱合成は、上記のようにして調製された水性ゲルを耐圧容器に入れ、自己発生圧力下、又は結晶化を阻害しない程度の気体加圧下で、攪拌又は静置状態で所定温度を保持する事により行われる。
【0062】
水熱合成の際の反応温度は、通常100℃以上、好ましくは120℃以上、さらに好ましくは150℃以上であって、通常300℃以下、好ましくは250℃以下、さらに好ましくは220℃以下である。反応時間は通常2時間以上、好ましくは3時間以上、さらに好ましくは5時間以上であって、通常30日以下、好ましくは10日以下、さらに好ましくは4日以下である。反応温度は反応中一定でもよいし、段階的又は連続的に変化させてもよい。
【0063】
{テンプレート等を含有したゼオライト}
水熱合成後、生成物であるポリアミン及び必要に応じて用いられたテンプレート(以下、ポリアミン又はポリアミンとテンプレートとを「テンプレート等」と称す。)を含有したゼオライトを水熱合成反応液より分離する。水熱合成反応液からのテンプレート等を含有したゼオライトの分離方法は特に限定されない。通常、濾過又はデカンテーション等により分離し、水洗後、室温から150℃以下の温度で乾燥して生成物であるテンプレート等を含有したゼオライトを得ることができる。
【0064】
次いで、通常、水熱合成反応液から分離されたテンプレート等を含有したゼオライトからテンプレート等を除去する。テンプレート等の除去方法は特に限定されない。通常、空気又は酸素含有の不活性ガス、あるいは不活性ガスの雰囲気下に300℃から1000℃の温度で焼成したり、エタノール水溶液、HCl含有エーテル等の抽出溶剤による抽出等の方法により、含有される有機物(テンプレート等)を除去することができる。
好ましくは製造性の面で焼成によるテンプレート等の除去が好ましい。この場合、焼成温度については、好ましくは、400℃から900℃、より好ましくは450℃から850℃、さらに好ましくは500℃から800℃である。
【0065】
[遷移金属含有ゼオライト]
次に、本発明の第二の要旨である、特定の水吸着性能を有する本発明の遷移金属含有ゼオライトについて説明する。
【0066】
例えば、遷移金属を含むゼオライトを排ガス処理用触媒として使用する場合は、自動車などのディーゼルエンジンの排ガスは5〜15体積%の水を排ガス中に含む。自動車では走行中、排ガスが200℃以上の高温となり、相対湿度は5%以下に低下し、触媒は水分を脱着した状態になる。しかし、停止時に空気の相対湿度が30%以上、特に夏には空気の相対湿度が50%以上となり、触媒は空気中の水を吸着する。このように自動車の走行と駐停車により、遷移金属含有ゼオライト触媒ではゼオライトが水の吸脱着を行っている。
【0067】
これに対して、低湿度(5%以下)での水吸着量が多く、高湿度(50%以上)での水吸着量が少ないゼオライトは、5%の時水吸着量が少なく、50%の時の水吸着量が多いゼオライトに比べ、使用環境の湿度変化により吸脱着する水の量が少ないということが言える。従って、水の吸脱着による骨格元素結合Si−O−Al及びAl−O−Pの結合角や結合長の変化が少なくなる。これによって、ゼオライトの安定性が高くなると共に、水の吸脱着によるゼオライトの格子定数の変化やゼオライトの体積変化を抑制することができる。従って、シリコアルミノホスフェートゼオライトを含むハニカムユニットにおいて、水の吸脱着によるハニカムユニットの破損の問題も解決することができる。
【0068】
25℃で測定した水蒸気吸着等温線において、相対蒸気圧0.01(相対湿度1%)における水の吸着量は、ゼオライト中のSiの量により大きく影響を受ける。通常、Siが多くなると、相対蒸気圧0.01における水の吸着量が多くなる。相対蒸気圧0.01での水吸着は、ゼオライト中のSiに由来するSi−O(H)−Al結合中のHと水分子との水素結合による生じる水吸着と考えられる。そのため、本発明の遷移金属含有ゼオライトの相対蒸気圧0.01での水吸着量は、ゼオライト中の1molのSiに対してゼオライトに吸着された水のモル数を規定する(mol/mol−Si)、すなわち、相対蒸気圧0.01(相対湿度1%)における水の吸着量が1.3mol/mol−Si以上であることが好ましく、1.4mol/mol−Si以上であることがさらに好ましい。相対蒸気圧0.01における水の吸着量の上限は特に制限はない。この吸着量が上記下限より少ないと、ゼオライトは低湿度での水脱着が激しいために、ゼオライト骨格元素結合の安定性が低くなる。
【0069】
また、25℃で測定した水蒸気吸着等温線において、相対蒸気圧0.7(相対湿度70%)におけるゼオライトの水吸着はほぼ一定になり、水吸着の飽和状態になると言われる。この飽和状態でのゼオライトの水吸着量は、ゼオライト中のSiの量と関係なく、ゼオライトの細孔容積や表面の親水性などによって定まる。
【0070】
本発明の遷移金属含有ゼオライトの相対蒸気圧0.7での水吸着量は、1gのゼオライトに対して150mg/g以上、300mg/g以下が好ましく、より好ましくは200mg/g以上であり、260mg/g以上、290mg/g以下がさらに好ましい。
相対蒸気圧0.7(相対湿度70%)における遷移金属含有ゼオライトの水の吸着量が上記上限より多いと、使用環境が高湿度から低湿度に転換する時、ゼオライト上での水脱着が激しく、ゼオライト骨格元素結合の安定性が低くなる。
【0071】
また、水の吸脱着によるゼオライトの格子定数の変化やゼオライトの体積変化が大きい、シリコアルミノホスフェートゼオライトを含むハニカムユニットは、水の吸脱着により破損しやすい。一方、ゼオライト結晶中にメソ孔などを形成する場合は、相対蒸気圧0.7におけるゼオライトの水の吸着量は上記上限より多い場合があるが、この場合はゼオライトの水熱安定性が低い恐れがある。相対蒸気圧0.7(相対湿度70%)における遷移金属含有ゼオライトの水の吸着量が上記下限より少ないと、ゼオライトの結晶性が低く、触媒性能が不十分である。
【0072】
以上、自動車排ガス処理への適用を前提に説明したが、上記の特性を満足するものであれば、本発明の遷移金属含有ゼオライトは、定置用、即ち、定置発電・船舶・農業機械・建設機械・二輪車・航空機用の各種ディーゼルエンジン、ボイラー、ガスタービン等から排出される多種多様の排ガスに含まれる窒素酸化物の浄化にも十分適用可能であることは言うまでもない。
また、本発明の遷移金属含有ゼオライトを適用する排ガスとしては、NOx(窒素酸化物)を含有するものが好ましく、該排ガスには窒素酸化物以外の成分が含まれていてもよく、例えば炭化水素、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、窒素、酸素、硫黄酸化物、水が含まれていてもよい。また、炭化水素、アンモニア、尿素等の窒素含有化合物等の公知の還元剤を使用してNOx(窒素酸化物)を浄化する場合、これらは排ガス中に含まれていてもよい。
【0073】
このような本発明の遷移金属含有ゼオライト及び前述の本発明の遷移金属含有ゼオライトの製造方法より製造された本発明の遷移金属含有ゼオライト(以下、これらをまとめて「本発明の遷移金属含有ゼオライト」と称す。)は、ゼオライト骨格構造のアルミニウム原子、リン原子、及びケイ素原子のモル比が下記の存在割合のゼオライトに、以下の割合で遷移金属を含む遷移金属含有シリコアルミノホスフェートゼオライトであることが好ましい。
【0074】
本発明の遷移金属含有ゼオライトの骨格構造に含まれるアルミニウム原子、リン原子及びケイ素原子の存在割合は、下記式(I)、(II)及び(III)を満たすことが好ましい。
0.001≦x≦0.3 ・・・(I)
(式中、xは骨格構造中のケイ素原子とアルミニウム原子とリン原子の合計に対するケイ素原子のモル比を示す)
0.3≦y≦0.6 ・・・(II)
(式中、yは骨格構造中のケイ素原子とアルミニウム原子とリン原子の合計に対するアルミニウム原子のモル比を示す)
0.3≦z≦0.6 ・・・(III)
(式中、zは骨格構造中のケイ素原子とアルミニウム原子とリン原子の合計に対するリン原子のモル比を示す)
【0075】
xの値としては、通常0.001以上、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.03以上であり、通常0.3以下、好ましくは0.2以下、より好ましくは0.18以下である。xの値が上記下限値より小さいと、ゼオライト結晶化しにくい場合がある。xの値が上記上限値より大きいと、合成時に不純物が混入しやすくなる傾向がある。
さらに、yは通常0.3以上、好ましくは0.35以上、より好ましくは0.4以上であり、通常0.6以下、好ましくは0.55以下である。yの値が上記下限値より小さい又は上記上限値より大きいと、合成時に不純物が混入しやすくなる傾向がある。
さらに、zは通常0.3以上、好ましくは0.35以上、より好ましくは0.4以上であり、通常0.6以下、好ましくは0.55以下、より好ましくは0.50以下である。zの値が上記下限値より小さいと、合成時に不純物が混入しやすくなる傾向があり、zの値が上記上限値より大きいと、ゼオライト結晶化しにくい場合がある。
【0076】
遷移金属としては、特に限定されるものではないが、吸着材用途や触媒用途での特性の点から、通常、鉄、コバルト、マグネシウム、亜鉛、銅、パラジウム、イリジウム、白金、銀、金、セリウム、ランタン、プラセオジウム、チタン、ジルコニウム等の周期表3−12族の遷移金属が挙げられ、好ましくは鉄、コバルト、銅などの周期表8、9、11族、より好ましくは周期表8、11族である。ゼオライトに含有させる遷移金属は、これらの1種であってもよく、2種以上の遷移金属を組み合わせてゼオライトに含有させてもよい。これらの遷移金属のうち、特に好ましくは、鉄及び/又は銅であり、とりわけ好ましくは銅である。
【0077】
また、本発明の遷移金属含有ゼオライト中の遷移金属原子の存在割合は、下記式(IV)を満たすことが好ましい。
0.001≦m≦0.3 ・・・(IV)
(式中、mはゼオライト骨格構造のケイ素原子とアルミニウム原子とリン原子の合計に対する遷移金属のモル比を示す)
mの値としては、通常0.001以上、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、さらに好ましくは0.08以上、特に好ましくは0.1以上であり、通常0.3以下、好ましくは0.25以下、より好ましくは0.2以下である。mの値が上記下限値より小さいと、活性点が少なくなる傾向があり、触媒性能を発現しない場合がある。mの値が上記上限より大きいと、遷移金属の凝集が著しくなる傾向があり、触媒性能が低下する場合がある。
【0078】
本発明の遷移金属含有ゼオライトは、アルミニウム原子、ケイ素原子、リン原子、及び遷移金属を酸化物として表したときのモル比で、以下のような組成となることが好ましい。
【0079】
SiO2/Al2O3の値は、通常0より大きく、好ましくは0.1以上であり、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.6以下、更に好ましくは0.4以下、特に好ましくは0.3以下である。
また、P2O5/Al2O3の値は、通常0.6以上、好ましくは0.7以上、さらに好ましくは0.8以上であり、通常1.3以下、好ましくは1.2以下、さらに好ましくは1.1以下である。
MaOb/Al2O3(ただし、a及びbはそれぞれMとOの原子比を表す)の値は、通常0.01以上、好ましくは0.03以上、さらに好ましくは0.05以上であり、通常1以下、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.4以下、さらに好ましくは0.3以下である。
【0080】
SiO2/Al2O3が上記上限よりも大きいと、結晶化しにくかったり、水熱耐久性が不十分である。
P2O5/Al2O3が上記下限よりも小さいと結晶化しにくかったり、水熱耐久性が不十分であったりし、上記上限よりも大きいと同様に結晶化しにくかったり、水熱耐久性が不十分である。
【0081】
また、MaOb/Al2O3が上記下限よりも小さいとゼオライトに遷移金属の導入量が不十分であり、上記上限よりも大きいと結晶化しにくかったり、水熱耐久性が不十分である。
【0082】
本発明の遷移金属含有ゼオライトの製造方法で製造される遷移金属含有ゼオライトについても、前述の如く、好ましくは上記と同様の組成でアルミニウム原子原料、ケイ素原子原料、リン原子原料及び遷移金属原料を含む水性ゲルから製造されるため、この場合には上記の割合でアルミニウム原子、ケイ素原子、リン原子及び遷移金属を含むものとなる。
【0083】
なお、上記のゼオライト骨格構造の原子や遷移金属Mの含有量は、元素分析により決定されるが、本発明における元素分析は、試料を塩酸水溶液で加熱溶解させた後誘導結合プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)発光分光分析により、或は試料を打錠成形した後蛍光X線分析法(XRF)により、ゼオライト骨格構造の原子や遷移金属Mの含有量W1(重量%)を求め、一方、熱重量分析(TG)により試料中の水分WH2O(重量%)を求め、下記式(V)で、無水状態下での遷移金属含有ゼオライト中の骨格構造の原子や遷移金属Mの含有量W(重量%)を算出したものである。
W=W1/(1−WH2O) ・・・(V)
【0084】
また、本発明の遷移金属含有ゼオライトを排ガス浄化用触媒や水蒸気吸着材として用いる場合には、本発明の遷移金属含有ゼオライトのなかでも、以下の構造及びフレームワーク密度を有するものが好ましい。
【0085】
ゼオライトの構造は、XRD(X線回折法:X−ray diffraction)により決定するが、International Zeolite Association(IZA)が定めるコードで示すと、AEI、AFR、AFS、AFT、AFX、AFY、AHT、CHA、DFO、ERI、FAU、GIS、LEV、LTA、VFIであり、AEI、AFX、GIS、CHA、VFI、AFS、LTA、FAU、AFYが好ましく、CHA構造を有するゼオライトが最も好ましい。
【0086】
また、フレームワーク密度は結晶構造を反映したパラメータであるが、IZAがATLAS OF ZEOLITE FRAMEWORK TYPES Fifth Revised Edition 2001において示してある数値で、好ましくは10.0T/1000Å3以上であって、通常16.0T/1000Å3以下、好ましくは15.0T/1000Å3以下である。
【0087】
なお、フレームワーク密度(T/1000Å3)は、ゼオライトの単位体積1000Å3あたりに存在するT原子(ゼオライトの骨格構造を構成する酸素原子以外の原子(T原子))の数を意味し、この値はゼオライトの構造により決まるものである。
ゼオライトのフレームワーク密度が上記下限値未満では、構造が不安定となる場合があったり、耐久性が低下する傾向があり、一方、上記上限値を超過すると吸着量、触媒活性が小さくなる場合があったり、触媒としての使用に適さない場合がある。
【0088】
本発明の遷移金属含有ゼオライトの粒子径について特に限定はないが、通常0.1μm以上であり、さらに好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上であり、通常30μm以下であり、好ましくは20μm以下であり、より好ましくは15μm以下である。
なお、本発明における遷移金属含有ゼオライトの粒子径とは、電子顕微鏡で遷移金属含有ゼオライトを観察した際の、任意の10〜30点のゼオライト粒子の一次粒子径の平均値をいい、前述の本発明の遷移金属含有ゼオライトの製造方法においては、テンプレート等を除去した後の粒子径として測定される。
【0089】
本発明の第二の要旨に係る遷移金属含有ゼオライトは、前述の特徴的な水蒸気吸着等温線を有するものであれば、いずれの方法で得られたものでも良いが、前述の本発明の遷移金属含有ゼオライトの製造方法によって製造するのが簡便かつ効率よく製造することができるので好ましい。
【0090】
[遷移金属含有ゼオライトの用途]
本発明の遷移金属含有ゼオライトの用途としては特に制限はないが、耐水性及び高温水熱耐久性が高く、触媒活性にも優れ、水蒸気繰り返し吸脱着後の触媒活性の安定性にも優れることから、自動車等の排ガス浄化用触媒及或いは水蒸気吸着材として特に好適に用いられる。
【0091】
<排ガス処理用触媒>
本発明の遷移金属含有ゼオライトを自動車排気浄化触媒等の排ガス処理用触媒として用いる場合、本発明の遷移金属含有ゼオライトはそのまま粉末状で用いてもよく、また、シリカ、アルミナ、粘土鉱物等のバインダーと混合し、造粒や成形を行って使用することもできる。また、塗布法や、成形法を用いて所定の形状に成形して用いることもでき、好ましくはハニカム状に成形して用いることができる。
【0092】
本発明の遷移金属含有ゼオライトを含む触媒の成形体を塗布法によって得る場合、通常、遷移金属含有ゼオライトとシリカ、アルミナ等の無機バインダーとを混合し、スラリーを作製し、コージェライト等の無機物で作製された成形体の表面に塗布し、焼成することにより作成され、好ましくはこの際にハニカム形状の成形体に塗布することによりハニカム状の触媒を得ることができる。
【0093】
本発明の遷移金属含有ゼオライトを含む触媒の成形体を成形する場合、通常、遷移金属含有ゼオライトをシリカ、アルミナ等の無機バインダーやアルミナ繊維、ガラス繊維等の無機繊維と混練し、押出法や圧縮法等の成形を行い、引き続き焼成を行うことにより作成され、好ましくはこの際にハニカム形状に成形することによりハニカム状の触媒を得ることができる。
【0094】
本発明の遷移金属含有ゼオライトを含む触媒は、窒素酸化物を含む排ガスを接触させて窒素酸化物を浄化する自動車排気浄化触媒として有効である。該排ガスには窒素酸化物以外の成分が含まれていてもよく、例えば炭化水素、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、窒素、酸素、硫黄酸化物、水が含まれていてもよい。また、炭化水素、アンモニア、尿素等の窒素含有化合物等の公知の還元剤を使用しても良い。具体的には、本発明の排ガス処理用触媒により、ディーゼル自動車、ガソリン自動車、定置発電・船舶・農業機械・建設機械・二輪車・航空機用の各種ディーゼルエンジン、ボイラー、ガスタービン等から排出される多種多様の排ガスに含まれる窒素酸化物を浄化することができる。
【0095】
本発明の遷移金属含有ゼオライトを含む触媒を使用する際の、触媒と排ガスの接触条件としては特に限定されるものではないが、排ガスの空間速度は通常100/h以上、好ましくは1000/h以上であり、通常500000/h以下、好ましくは100000/h以下であり、温度は通常100℃以上、好ましくは150℃以上、通常700℃以下、好ましくは500℃以下で用いられる。
【0096】
<水蒸気吸着材>
本発明の遷移金属含有ゼオライトは、優れた水蒸気の吸・脱着特性を示す。
その吸・脱着特性の程度は、条件により異なるが、一般的に、低温から、通常水蒸気の吸着が困難な高温領域まで吸着可能であり、また高湿度状態から、通常水蒸気の吸着が困難な低湿度領域まで吸着可能であり、かつ比較的低温の100℃以下で脱着が可能である。
【0097】
このような水蒸気吸着材の用途としては、吸着ヒートポンプ、熱交換器、デシカント空調機等が挙げられる。
【0098】
本発明の遷移金属含有ゼオライトは、特に水蒸気吸着材として優れた性能を示すが、本発明の遷移金属含有ゼオライトを水蒸気吸着材として用いる場合に、シリカ、アルミナ、チタニア等の金属酸化物や粘土等のバインダー成分や、熱伝導性の高い成分と共に使用することができる。本発明の遷移金属含有ゼオライトをこれらの他の成分と共に用いる場合、水蒸気吸着材中の本発明の遷移金属含有ゼオライトの含有量が、60重量%以上であることが好ましく、70重量%以上であることがより好ましく、80重量%以上であることがさらに好ましい。
【実施例】
【0099】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0100】
以下の実施例及び比較例において得られた遷移金属含有ゼオライト(以下、単に「ゼオライト」と記載する。)の分析及び性能評価は以下の方法により行った。
【0101】
[XRDの測定]
以下の方法で調製した試料を用いて、以下の条件で測定した。
<試料の調製>
めのう乳鉢を用いて人力で粉砕したゼオライト試料約100mgを同一形状のサンプルホルダーを用いて試料量が一定となるようにした。
<測定条件>
X線源:Cu−Kα線
出力設定:40kV・30mA
測定時光学条件:
発散スリット=1°
散乱スリット=1°
受光スリット=0.2mm
回折ピークの位置:2θ(回折角)
測定範囲:2θ=3〜50度
スキャン速度:3.0°(2θ/sec)、連続スキャン
【0102】
[Cu含有量とゼオライト組成の分析]
ゼオライト骨格構造のケイ素、アルミニウム、リン原子と遷移金属銅原子における元素分析は、試料を塩酸水溶液で加熱溶解させた後誘導結合プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)発光分光分析によりゼオライト骨格構造のケイ素、アルミニウム、リン原子とCuの含有量W1(重量%)を求める。或は、試料を打錠成形した後蛍光X線分析法(XRF)により、ゼオライト骨格構造のケイ素、アルミニウム、リン原子とCuの含有量W1(重量%)を求める。
一方、熱重量分析(TG)により試料中の水分WH2O(重量%)を求め、下記式(V)で、無水状態下での遷移金属含有ゼオライト中の骨格構造の各原子とCuの含有量W(重量%)を算出した。
W=W1/(1−WH2O) ・・・(V)
【0103】
[水蒸気吸着等温線の測定]
調製したゼオライト試料を120℃で5時間、真空排気した後、25℃における水蒸気吸着等温線を水蒸気吸着量測定装置(ベルソーブ18:日本ベル(株)社製)により以下の条件で測定した。
空気恒温槽温度 :50℃
吸着温度 :25℃
初期導入圧力 :3.0torr
導入圧力設定点数:0
飽和蒸気圧 :23.755torr
平衡時間 :500秒
【0104】
[触媒活性の評価]
調製したゼオライト試料をプレス成形後、破砕して篩を通し、0.6〜1mmに整粒した。整粒したゼオライト試料1mlを常圧固定床流通式反応管に充填した。ゼオライト層に下記表1の組成のガスを空間速度SV=100000/hで流通させながら、ゼオライト層を加熱した。150℃、175℃、200℃の各温度において、又は150℃、175℃、200℃、300℃、400℃、500℃の各温度において、出口NO濃度が一定となったとき、
NO浄化率(%)
={(入口NO濃度)―(出口NO濃度)}/(入口NO濃度) ×100
の値によって、ゼオライト試料の窒素酸化物除去活性を評価した。
【0105】
【表1】
【0106】
[水熱耐久試験]
調製したゼオライト試料をプレス成形後、破砕して篩を通し、0.6〜1mmに整粒したゼオライトを800℃、10体積%の水蒸気に、空間速度SV=3000/hの雰囲気下、5時間通じ、水熱処理を行った。試験後回収した試料をプレス成形後、破砕して篩を通し、0.6〜1mmに整粒した。上記触媒活性の評価方法でNO浄化率を評価した。
【0107】
[水蒸気繰り返し吸脱着耐久試験−1(90℃−80℃−5℃の水蒸気繰り返し吸脱着試験)]
調製したゼオライト試料0.5gを90℃に保たれた円盤型の真空容器内に保持し、5℃の飽和水蒸気雰囲気と80℃飽和水蒸気雰囲気にそれぞれ90秒曝す操作を繰り返した。このとき80℃の飽和水蒸気雰囲気に曝されたときに試料に吸着した水は、5℃の飽和水蒸気雰囲気で一部が脱着し、5℃に保った水だめに移動する。m回目の吸着からn回目の脱着で、5℃の水だめに移動した水の総量(Qn;m(g))と試料の乾燥重量(W(g))から一回あたりの平均吸着量(Cn;m(g/g))を以下のようにして求めた。
[Cn;m]=[Qn;m]/(n−m+1)/W
上記の水蒸気繰り返し吸脱着耐久試験において、1回から1000回の平均吸着量に対する1001回から2000回の平均吸着量の比を百分率で求め、吸脱着試験の維持率とした。(以下、「90-80-5耐久」と表示する。)
【0108】
[水蒸気繰り返し吸脱着耐久性試験−2(90℃−60℃−5℃の水蒸気繰り返し吸脱着試験)]
実装条件に近い繰り返し吸脱着試験条件として、図10に示す試験装置を用いて、触媒の「90℃−60℃−5℃の水蒸気繰り返し吸脱着耐久試験」(以下「90-60-5耐久」と表示する)を実施した。
図10において、1は60℃に保持された恒温室、2は90℃に保持された恒温室、3は5℃に保持された恒温室である。恒温室1内には飽和水蒸気の容器4が設けられ、恒温室2内には試料を保持した真空容器5が設けられ、恒温室3内には水だめとなる容器6が設けられている。容器4と真空容器5とはバルブaを有する配管を介して連結されており、容器6と真空容器5はバルブ6を有する配管を介して連結されている。
試料を90℃に保たれた真空容器5内に保持し、5℃の飽和水蒸気雰囲気(90℃の相対湿度1%)と60℃の飽和水蒸気雰囲気(90℃の相対湿度28%)にそれぞれ90秒曝す操作を繰返す。すなわち、60℃の飽和水蒸気雰囲気に曝す操作は、図10中、バルブaを開く(バルブbは閉じたまま)。この状態で90秒保持した後、バルブaを閉じると同時にバルブbを開ける。このとき、60℃の飽和水蒸気雰囲気に曝されたときに試料1に吸着した水は、5℃の飽和水蒸気雰囲気で一部が脱着し、5℃に保った水だめの容器6に移動する。この状態で90秒保持する。
以上の吸着、脱着を2000回繰り返し行う。
試験後回収した試料について上記触媒活性の評価方法の条件に基づきNO浄化率を評価した。
車などのディーゼルエンジン排ガスは5〜15体積%の水を排ガス中に含む。車では走行中、排ガスが200℃以上の高温となり、相対湿度は5%以下に低下し、触媒は水分を脱着した状態になる。しかし、停止時に90℃近辺で相対湿度が15%以上となり、触媒は水を吸着する。本条件により、90℃の吸着時には相対湿度が28%となる。この実条件に近い状態での繰り返し耐久性が実装時には重要となる。
【0109】
[実施例1]
水10gに85重量%リン酸8.1g及び擬ベーマイト(25重量%水含有、コンデア社製)5.4gをゆっくりと加え、1時間攪拌した。さらに、fumedシリカ(アエロジル200、日本アエロジル社製)0.6g及び水10gを加え、1時間攪拌した。その後、モルホリン3.4g、トリエチルアミン4.0gをゆっくりと加え、1時間攪拌した。これをA液とした。
A液とは別に、CuSO4・5H2O(キシダ化学社製)1.0gを水13.4gに溶解した後、テトラエチレンペンタミン(キシダ化学社製)0.8gを添加、混合してB液を調製した。
B液をA液にゆっくりと加えた。これを1時間攪拌し、以下の組成を有する水性ゲルを得た。
【0110】
<水性ゲル組成(モル比)>
SiO2:0.25
Al2O3:1
P2O5:0.875
CuO:0.1
テトラエチレンペンタミン:1
モルホリン:1
トリエチルアミン:1
水:50
【0111】
こうして得られた水性ゲルをフッ素樹脂内筒の入った100mlのステンレス製オートクレーブに仕込み、15rpmで攪拌しながら190℃で24時間反応させた。水熱合成後冷却して、デカンテーションにより上澄みを除いて沈殿物を回収した。沈殿物を水で3回洗浄した後濾別し、100℃で乾燥した。その後550℃で空気気流下焼成を行い、有機物を除去し、ゼオライト1を得た。
【0112】
こうして得られたゼオライト1のXRDを測定したところ、CHA構造(フレームワーク密度=14.6T/1,000Å3)であった。また、SEMを測定したところ、平均粒子径が10μmであった。
ゼオライト1のXRDの測定結果を図1に示す。
また、このゼオライト1について、水熱耐久試験前後の触媒活性の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0113】
[実施例2]
実施例1と同様にしてA液を調製した。
A液とは別に、CuSO4・5H2O(キシダ化学社製)1.0gを水13.4gに溶解した後、トリエチレンテトラミン(キシダ化学社製)0.6gを添加、混合してB液を調製した。
B液をA液にゆっくりと加えた。これを1時間攪拌し、以下の組成を有する水性ゲルを得た。
【0114】
<水性ゲル組成(モル比)>
SiO2:0.25
Al2O3:1
P2O5:0.875
CuO:0.1
トリエチレンテトラミン:1
モルホリン:1
トリエチルアミン:1
水:50
【0115】
得られた水性ゲルを用いて、実施例1と同様にして水熱合成、生成物の分離、乾燥及び焼成を行って、ゼオライト2を得た。
こうして得られたゼオライト2のXRDを測定したところ、実施例1のゼオライト1と同じようにCHA構造であった。また、SEMを測定したところ、平均粒子径が12μmであった。
また、ゼオライト2の25℃における水蒸気吸着等温線を図13に示す。
得られたゼオライト2について、水熱耐久試験前後の触媒活性の評価を行った。評価結果を表2に示す。
また、このゼオライト2について、水蒸気繰り返し吸脱着耐久試験−1(90-80-5耐久)を行ったところ、吸脱着試験の維持率は100%であった。
【0116】
[実施例3]
水10gに85重量%リン酸6.5g及び擬ベーマイト(25重量%水含有、コンデア社製)5.4gをゆっくりと加え、1時間攪拌した。さらに、fumedシリカ(アエロジル200、日本アエロジル社製)1.4g及び水10gを加え、1時間攪拌した。その後、モルホリン3.4g、トリエチルアミン4.0gをゆっくりと加え、1時間攪拌した。これをA液とした。
A液とは別に、CuSO4・5H2O(キシダ化学社製)1.0gを水13.7gに溶解した後、トリエチレンテトラミン(キシダ化学社製)0.6gを添加、混合してB液を調製した。
B液をA液にゆっくりと加えた。これを1時間攪拌し、以下の組成を有する水性ゲルを得た。
【0117】
<水性ゲル組成(モル比)>
SiO2:0.6
Al2O3:1
P2O5:0.7
CuO:0.1
トリエチレンテトラミン:0.1
モルホリン:1
トリエチルアミン:1
水:50
【0118】
得られた水性ゲルを用いて、実施例1と同様にして水熱合成、生成物の分離、乾燥及び焼成を行って、ゼオライト3を得た。
こうして得られたゼオライト3のXRDを測定したところ、実施例1のゼオライト1と同じようにCHA構造であった。
また、ゼオライト3について、水熱耐久試験前後の触媒活性の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0119】
[実施例4]
実施例1と同様にしてA液を調製した。
A液とは別に、Cu(CH3COO)2・5H2O(キシダ化学社製)0.8gを水13.4gに溶解した後、トリエチレンテトラミン(キシダ化学社製)0.6gを添加、混合してB液を調製した。
B液をA液にゆっくりと加えた。これを1時間攪拌し、以下の組成を有する水性ゲルを得た。
【0120】
<水性ゲル組成(モル比)>
SiO2:0.25
Al2O3:1
P2O5:0.875
CuO:0.1
トリエチレンテトラミン:0.1
モルホリン:1
トリエチルアミン:1
水:50
【0121】
得られた水性ゲルを用いて、実施例1と同様にして水熱合成、生成物の分離、乾燥及び焼成を行って、ゼオライト4を得た。
こうして得られたゼオライト4のXRDを測定したところ、CHA構造(フレームワーク密度=14.6T/1,000Å3)であった。ゼオライト4のXRDの測定結果を図3に示す。
このゼオライト4のXRF分析によるCu含有量(W1)は3.6重量%であった。また、XRFによるゼオライトの組成分析を行ったところ、骨格構造のケイ素原子とアルミニウム原子とリン原子の合計に対する各原子の構成割合(モル比)は、ケイ素原子が0.09、アルミニウム原子が0.50、リン原子が0.41であった。
また、ゼオライト4について25℃における水蒸気吸着等温線を測定したところ、相対蒸気圧0.01における吸着量が1.93mol/mol−Siであり、相対蒸気圧0.7における吸着量が283mg/gであった。ゼオライト4の水蒸気吸着等温線を図4に示す。
また、ゼオライト4について触媒活性の評価を行った。評価結果を表2及び表3に示す。
【0122】
[実施例5]
水10gに85重量%リン酸8.1g及び擬ベーマイト(25重量%水含有、コンデア社製)5.4gをゆっくりと加え、1時間攪拌した。さらに、fumedシリカ(アエロジル200、日本アエロジル社製)0.6g及び水10gを加え、1時間攪拌した。これをA液とした。
A液とは別に、CuSO4・5H2O(キシダ化学社製)1.0gを水13.4gに溶解した後、テトラエチレンペンタミン(キシダ化学社製)7.6gを添加、混合してB液を調製した。
B液をA液にゆっくりと加えた。これを1時間攪拌し、以下の組成を有する水性ゲルを得た。
【0123】
<水性ゲル組成(モル比)>
SiO2:0.25
Al2O3:1
P2O5:0.875
CuO:0.1
テトラエチレンペンタミン:1
水:50
【0124】
得られた水性ゲルを用いて、実施例1と同様にして水熱合成、生成物の分離、乾燥及び焼成を行って、ゼオライト5を得た。
こうして得られたゼオライト5のXRDを測定したところ、実施例1のゼオライト1と同じようにCHA構造であった。また、SEMを測定したところ、平均粒子径が12μmであった。
また、得られたゼオライト5について、水熱耐久試験前の触媒活性(初期活性)の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0125】
なお、以下の表2には、実施例1〜5で得られたゼオライト1〜5の各々のCu含有量W1(含水状態)及びW(無水状態)を示す。
【0126】
【表2】
【0127】
[実施例6]
実施例1と同様にしてA液を調製した。
A液とは別に、CuSO4・5H2O(キシダ化学社製)0.3gを水13.4gに溶解した後、トリエチレンテトラミン(キシダ化学社製)0.6gを添加、混合してB液を調製した。
B液をA液にゆっくりと加えた。これを1時間攪拌し、以下の組成を有する水性ゲルを得た。
【0128】
<水性ゲル組成(モル比)>
SiO2:0.25
Al2O3:1
P2O5:0.875
CuO:0.03
トリエチレンテトラミン:0.1
モルホリン:1
トリエチルアミン:1
水:50
【0129】
得られた水性ゲルを用いて、実施例1と同様にして水熱合成、生成物の分離、乾燥及び焼成を行って、ゼオライト6を得た。
こうして得られたゼオライト6のXRDを測定したところ、実施例1のゼオライト1と同じようにCHA構造であった。
また、このゼオライト6の25℃における水蒸気吸着等温線を測定したところ、相対蒸気圧0.04から0.09においての吸着量変化量は0.15g−H2O/gであった。また、25℃における水蒸気吸着等温線を測定したところ、相対蒸気圧が0.2の時の水吸着量は0.26g−H2O/gであった。ゼオライト6の水蒸気吸着等温線を図2に示す。
【0130】
[実施例7]
実施例1と同様にしてA液を調製した。
A液とは別に、FeSO4・7H2O(キシダ化学社製)1.1gを水13.4gに溶解した後、テトラエチレンペンタミン(キシダ化学社製)2.4gを添加、混合してB液を調製した。
B液をA液にゆっくりと加えた。これを1時間攪拌し、以下の組成を有する水性ゲルを得た。
【0131】
<水性ゲル組成(モル比)>
SiO2:0.25
Al2O3:1
P2O5:0.875
FeO:0.1
テトラエチレンペンタミン:0.3
モルホリン:1
トリエチルアミン:1
水:50
【0132】
得られた水性ゲルを用いて、実施例1と同様にして水熱合成、生成物の分離、乾燥及び焼成を行って、ゼオライト7を得た。
こうして得られたゼオライト7のXRDを測定したところ、実施例1のゼオライト1と同じようにCHA構造であった。
【0133】
[実施例8]
実施例1と同様にしてA液を調製した。
A液とは別に、FeSO4・7H2O(キシダ化学社製)1.1gを水13.4gに溶解した後、テトラエチレンペンタミン(キシダ化学社製)7.7gを添加、混合してB液を調製した。
B液をA液にゆっくりと加えた。これを1時間攪拌し、以下の組成を有する水性ゲルを得た。
【0134】
<水性ゲル組成(モル比)>
SiO2:0.25
Al2O3:1
P2O5:0.875
FeO:0.1
テトラエチレンペンタミン:1
モルホリン:1
トリエチルアミン:1
水:50
【0135】
得られた水性ゲルを用いて、実施例1と同様にして水熱合成、生成物の分離、乾燥及び焼成を行って、ゼオライト8を得た。
こうして得られたゼオライト8のXRDを測定したところ、実施例1のゼオライト1と同じようにCHA構造であった。
【0136】
以上の結果より、本発明の遷移金属含有ゼオライトの製造方法によれば、遷移金属含有ゼオライトを簡便かつ効率的に製造することができ、製造された遷移金属含有ゼオライトは、触媒活性及び水蒸気の吸・脱着性能に優れ、また、高温水熱耐久性にも優れることが分かる。
【0137】
[実施例9]
水20gに85重量%リン酸8.1g及び酸化銅(II)0.5gを加え、酸化銅(II)が完全に溶解するまで攪拌した。その後、擬ベーマイト(25重量%水含有、コンデア社製)5.4gをゆっくりと加え、1時間攪拌した。さらに、fumedシリカ(アエロジル200、日本アエロジル社製)0.6g及び水13.4gを加え、1時間攪拌した。その後、モルホリン3.4g、トリエチルアミン4.0gをゆっくりと加え、1時間攪拌した。さらに、テトラエチレンペンタミン(キシタ化学社製)1.1gを添加した後、1時間攪拌して以下の組成を有する水性ゲルを得た。
【0138】
<水性ゲル組成(モル比)>
SiO2:0.25
Al2O3:1
P2O5:0.875
CuO:0.15
テトラエチレンペンタミン:0.15
モルホリン:1
トリエチルアミン:1
水:50
【0139】
こうして得られた水性ゲルをフッ素樹脂内筒の入った100mlのステンレス製オートクレーブに仕込み、15rpmで攪拌しながら190℃で24時間反応させた。水熱合成後冷却して、デカンテーションにより上澄み及び銅粉を除いて沈殿物を回収した。沈殿物を水で3回洗浄した後濾別し、100℃で乾燥した。その後550℃で空気気流下焼成を行い、有機物を除去し、ゼオライト9を得た。
【0140】
ゼオライト9のXRDを測定した結果、CHA構造であった。ゼオライト9のXRDの測定結果を図11に示す。
また、ゼオライト9のXRF分析によるCu含有量(W)は4.3重量%であった。また、XRFによるゼオライトの組成分析を行ったところ、骨格構造のケイ素原子とアルミニウム原子とリン原子の合計に対する各原子の構成割合(モル比)は、ケイ素原子が0.097、アルミニウム原子が0.49、リン原子が0.41であった。
また、ゼオライト9について、25℃における水蒸気吸着等温線を測定したところ、相対蒸気圧0.01における吸着量が3.52mol/mol−Siであり、相対蒸気圧0.7における吸着量が267mg/gであった。ゼオライト9の水蒸気吸着等温線を図12に示す。
また、このゼオライト9について触媒活性の評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0141】
[実施例10]
実施例9と同様に水熱合成し、800℃で空気気流下焼成を行い、有機物を除去して、ゼオライト10を得た。
こうして得られたゼオライト10のXRDを測定したところ、CHA構造(フレームワーク密度=14.6T/1,000Å3)であった。XRF分析によるCuの担持量(W)は4.3重量%であった。また、XRFによるゼオライトの組成分析を行ったところ、骨格構造のケイ素原子とアルミニウム原子とリン原子の合計に対する各原子の構成割合(モル比)は、ケイ素原子が0.097、アルミニウム原子が0.49、リン原子が0.41であった。
このゼオライト10について25℃における水蒸気吸着等温線を測定したところ、相対蒸気圧0.01における吸着量が3.52mol/mol−Siであり、相対蒸気圧0.7における吸着量が267mg/gであった。
【0142】
[実施例11]
水217gに75重量%リン酸95g及び酸化銅(II)7.2gを加え、酸化銅(II)が完全に溶解するまで攪拌した。その後、擬ベーマイト(25重量%水含有、コンデア社製)61.8gをゆっくりと加え、2時間攪拌した。さらに、fumedシリカ(アエロジル200、日本アエロジル社製)16.4g及び水153.2gを加え、10分間攪拌した。その後、モルホリン39.6g、トリエチルアミン46gをゆっくりと加え、1時間攪拌した。さらに、テトラエチレンペンタミン(キシタ化学社製)17.2gを添加した後、0.5時間攪拌して以下の組成を有する水性ゲルを得た。
【0143】
<水性ゲル組成(モル比)>
SiO2:0.6
Al2O3:1
P2O5:0.8
CuO:0.2
テトラエチレンペンタミン:0.2
モルホリン:1
トリエチルアミン:1
水:50
【0144】
こうして得られた水性ゲルをフッ素樹脂内筒の入った1Lのステンレス製オートクレーブに仕込み、200rpmで攪拌しながら190℃で24時間反応させた。水熱合成後冷却して、濾過し、得られた生成物をイオン交換水で洗浄した後、100℃で乾燥した。その後550℃で空気気流下焼成を行い、有機物を除去し、ゼオライト11を得た。
【0145】
こうして得られたゼオライト11のXRDを測定したところ、CHA構造であった。また、XRF分析によるCu含有量(W)は5.1重量%であった。また、XRFによるゼオライトの組成分析を行ったところ、骨格構造のケイ素原子とアルミニウム原子とリン原子の合計に対する各原子の構成割合(モル比)は、ケイ素原子が0.16、アルミニウム原子が0.50、リン原子が0.34であった。
このゼオライト11について25℃における水蒸気吸着等温線を測定したところ、相対蒸気圧0.01における吸着量が1.68mol/mol−Siであり、相対蒸気圧0.7における吸着量が275mg/gであった。ゼオライト11の水蒸気吸着等温線を図5に示す。
また、このゼオライト11について触媒活性の評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0146】
[実施例12]
実施例11と同様に水熱合成し、800℃で空気気流下焼成を行い、有機物を除去してゼオライト12を得た。
こうして得られたゼオライト12のXRDを測定したところ、CHA構造(フレームワーク密度=14.6T/1,000Å3)であった。またXRF分析によるCu含有量(W)は5.1重量%であった。また、XRFによるゼオライトの組成分析を行ったところ、骨格構造のケイ素原子とアルミニウム原子とリン原子の合計に対する各原子の構成割合(モル比)は、ケイ素原子が0.16、アルミニウム原子が0.50、リン原子が0.34であった。
このゼオライト12について25℃における水蒸気吸着等温線を測定したところ、相対蒸気圧0.01における吸着量が2.09mol/mol−Siであり、相対蒸気圧0.7における吸着量が275mg/gであった。
また、このゼオライト12について触媒活性の評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0147】
[比較例1]
特開2003−183020号公報の実施例2に開示されている方法により、ゼオライトXを合成した。得られた乾燥ゼオライトXをジェットミルで3〜5μmに粉砕し、その後700℃で空気気流下焼成を行い、テンプレートを除去した(ゼオライトA)。
得られたゼオライトAのXRDを測定したところ、CHA構造(フレームワーク密度=14.6T/1,000Å3)であった。また、XRF分析によるゼオライトの組成分析を行ったところ、骨格構造のケイ素原子とアルミニウム原子とリン原子の合計に対する各原子の構成割合(モル比)は、ケイ素原子が0.092、アルミニウム原子が0.50、リン原子が0.40であった。
また、ゼオライトAについて25℃における水蒸気吸着等温線を測定したところ、相対蒸気圧0.01における吸着量が0.42mol/mol−Siであり、相対蒸気圧0.7における吸着量が314mg/gであった。
【0148】
[比較例2]
水1484kg、75%リン酸592kg、及び擬ベーマイト(25重量%水含有、サソール社製)440kgを混合し、3時間攪拌した。この混合液にfumedシリカ(アエロジル200、日本アエロジル社製)117kgと水1607kgを加え、10分間攪拌した。この混合液にモルホリン285kgとトリエチルアミン331kgを加え、1.5時間攪拌して以下の組成を有する水性ゲルを得た。
【0149】
<水性ゲル組成(モル比)>
SiO2:0.6
Al2O3:1
P2O5:0.7
モルホリン:1
トリエチルアミン:1
水:60
【0150】
得られた水性ゲルを5m3のステンレス製オートクレーブに仕込み、攪拌しながら最高到達温度190℃まで昇温時間10時間で昇温し、190℃で24時間保持した。反応後冷却して、濾過、水洗の後90℃で減圧乾燥した。得られた乾燥粉体をジェットミルで3〜5μmに粉砕し、その後750℃で空気気流下焼成を行い、テンプレートを除去した後、ゼオライトBを得た。
【0151】
ゼオライトBのXRDを測定したところ、CHA構造(フレームワーク密度=14.6T/1000Å3)であった。また、XRF分析により元素分析を行ったところ、骨格構造のケイ素原子とアルミニウム原子とリン原子の合計に対する各成分の構成割合(モル比)は、ケイ素原子が0.17、アルミニウム原子が0.52、リン原子が0.31であった。
また、ゼオライトBについて25℃における水蒸気吸着等温線を測定したところ、相対蒸気圧0.01における吸着量が0.69mol/mol−Siであり、相対蒸気圧0.7における吸着量が262mg/gであった。
【0152】
[比較例3]
比較例1で得られたゼオライトAに対し国際公開第2010/084930号公報の実施例2Aに開示されている方法により、銅を3重量%担持し、800℃で2時間焼成して、ゼオライトCを得た。
ゼオライトCについて、25℃における水蒸気吸着等温線を測定したところ、相対蒸気圧0.01における吸着量が1.22mol/mol−Siであり、相対蒸気圧0.7における吸着量が246mg/gであった。ゼオライトCの水蒸気吸着等温線を図6に示す。
また、このゼオライトCについて触媒活性の評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0153】
[比較例4]
比較例1で得られたゼオライトAに対し国際公開第2010/084930号公報の実施例2Aに開示されている方法により、銅を4重量%担持し、800℃で2時間焼成して、ゼオライトDを得た。
ゼオライトDについて、25℃における水蒸気吸着等温線を測定したところ、相対蒸気圧0.01における吸着量が29mg/g(1.22mol/mol−Si)であり、相対蒸気圧0.7における吸着量が217mg/gであった。
また、このゼオライトDについて触媒活性の評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0154】
[比較例5]
比較例2で得られたゼオライトBに対し国際公開第2010/084930号公報の実施例2Aに開示されている方法により、銅を3.8重量%担持し、800℃で2時間焼成して、ゼオライトEを得た。
ゼオライトEについて、25℃における水蒸気吸着等温線を測定したところ、相対蒸気圧0.01における吸着量が0.94mol/mol−Siであり、相対蒸気圧0.7における吸着量が225mg/gであった。ゼオライトEの水蒸気吸着等温線を図7に示す。
また、このゼオライトEについて触媒活性の評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0155】
[比較例6]
中国公開特許102259892A明細書の実施例1に開示されている方法により、ゼオライトFを合成した。
ゼオライトFについてXRF分析により元素分析を行ったところ、Cu含有量(W)は5.8重量%であった。また、ケイ素原子とアルミニウム原子とリン原子の合計に対する各原子の構成割合(モル比)は、ケイ素原子が0.17、アルミニウム原子が0.46、リン原子が0.37であった。
ゼオライトFについて、25℃における水蒸気吸着等温線を測定したところ、相対蒸気圧0.01における吸着量が3.16mol/mol−Siであり、相対蒸気圧0.7における吸着量が341mg/gであった。ゼオライトFの水蒸気吸着等温線を図8に示す。
また、このゼオライトFについて触媒活性の評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0156】
[比較例7]
米国公開特許2010/0310440A1明細書の実施例4に開示されている方法により、ゼオライトGを合成した。
ゼオライトGについて25℃における水蒸気吸着等温線を測定したところ、相対蒸気圧0.01における吸着量が0.98mol/mol−Siであり、相対蒸気圧0.7における吸着量が139mg/gであった。ゼオライトGの蒸気吸着等温線を図9に示す。
また、このゼオライトGについて水熱耐久試験前の触媒活性(初期活性)の評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0157】
【表3】
【0158】
以上の結果より、25℃で測定した水蒸気吸着等温線において、相対蒸気圧0.01における吸着量が1.3mol/mol−Siより低い遷移金属含有シリコアルミノホスフェートゼオライトは触媒活性が低いか、或は水蒸気繰り返し吸脱着耐久試験後の触媒低温活性が低いことがわかる。また、相対蒸気圧0.7における吸着量が150mg/gより低い遷移金属含有シリコアルミノホスフェートゼオライトは触媒活性が低い。相対蒸気圧0.7における吸着量が300mg/gを超える遷移金属含有シリコアルミノホスフェートゼオライトは、水熱耐久性が低い。
これに対して、25℃で測定した水蒸気吸着等温線において、相対蒸気圧0.01における吸着量が1.3mol/mol−Si以上、相対蒸気圧0.7における吸着量が150mg/g以上、300mg/g以下で、少なくとも骨格構造にケイ素原子、リン原子及びアルミニウム原子を含むゼオライトに遷移金属を含有させてなる本発明の遷移金属含有ゼオライトは、触媒活性及び水熱耐久性が高く、さらに、水蒸気繰り返し吸脱着耐久試験後の触媒活性が高く、水の吸脱着に対する安定性も高い。
【産業上の利用可能性】
【0159】
本発明の遷移金属含有ゼオライトの製造方法は、高い高温水熱耐久性を有する遷移金属含有シリコアルミノホスフェートゼオライトを、簡便かつ効率的に製造することができる方法である。
本発明の遷移金属含有ゼオライトの製造方法で製造した遷移金属含有ゼオライトを用いれば、ディーゼルエンジン等から排出される排ガス中に含まれる窒素酸化物を効率よく浄化することができ、また高温排ガス中でも劣化することがないため触媒量を軽減することができる。
また、本発明の遷移金属含有ゼオライトの製造方法で製造した遷移金属含有ゼオライトを用いれば、ゼオライト水蒸気吸着材として、100℃以下の比較的低温の熱源で駆動する吸着ヒートポンプを提供することができる。
【符号の説明】
【0160】
1,2,3 恒温室
4,5,6 容器
a,b バルブ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも骨格構造にケイ素原子、リン原子及びアルミニウム原子を含むゼオライトに遷移金属を含有させてなる遷移金属含有ゼオライトを製造する方法であって、ケイ素原子原料、アルミニウム原子原料、リン原子原料、遷移金属原料及びポリアミン(但しジアミンを除く)を含む水性ゲルから水熱合成することを特徴とする遷移金属含有ゼオライトの製造方法。
【請求項2】
前記水性ゲルが、少なくともヘテロ原子として窒素原子を含む脂環式複素環化合物、アルキルアミン、シクロアルキルアミン、及びテトラアルキルアンモニウムヒドロキシドよりなる群から選ばれる少なくとも一つを更に含む請求項1に記載の遷移金属含有ゼオライトの製造方法。
【請求項3】
前記ポリアミンが、一般式H2N−(CnH2nNH)x−H(式中、nは2〜6の整数、xは2〜10の整数)で表されるポリアミンである請求項1又は2に記載の遷移金属含有ゼオライトの製造方法。
【請求項4】
前記遷移金属が鉄及び/又は銅である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の遷移金属含有ゼオライトの製造方法。
【請求項5】
前記水性ゲルの組成におけるアルミニウム原子原料、ケイ素原子原料、リン原子原料及び遷移金属(M)原料を酸化物で表したときのモル比が、
SiO2/Al2O3の値が0.1以上0.8以下であり、
P2O5/Al2O3の値が0.6以上1.2以下であり、
MaOb/Al2O3の値が0.05以上1以下(ただし、a及びbはそれぞれMとOの原子比を表す)である
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の遷移金属含有ゼオライトの製造方法。
【請求項6】
前記水性ゲルにおいて、前記遷移金属原料及びポリアミンの少なくとも一部が錯体を形成している請求項1ないし5のいずれか1項に記載の遷移金属含有ゼオライトの製造方法。
【請求項7】
前記遷移金属原料及びポリアミンの少なくとも一部を予め混合した後、他の原料を混合して水性ゲルを調製する請求項1ないし6のいずれか1項に記載の遷移金属含有ゼオライトの製造方法。
【請求項8】
遷移金属原料とリン原子原料を予め混合した後、他の原料を混合して水性ゲルを調製する請求項1ないし5のいずれか1項に記載の遷移金属含有ゼオライトの製造方法。
【請求項9】
前記遷移金属が銅である請求項1ないし8のいずれか1項に記載の遷移金属含有ゼオライトの製造方法。
【請求項10】
前記遷移金属原料が酸化銅(II)及び/又は酢酸銅(II)である請求項1ないし9のいずれか1項に記載の遷移金属含有ゼオライトの製造方法。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか1項に記載の製造方法により得られた遷移金属含有ゼオライト。
【請求項12】
25℃で測定した水蒸気吸着等温線において、相対蒸気圧0.01における吸着量が1.3mol/mol−Si以上、相対蒸気圧0.7における吸着量が150mg/g以上300mg/g以下であり、少なくとも骨格構造にケイ素原子、リン原子及びアルミニウム原子を含むゼオライトに遷移金属を含有させてなる遷移金属含有ゼオライト。
【請求項13】
請求項1ないし10のいずれか1項に記載の製造方法により得られた請求項12に記載の遷移金属含有ゼオライト。
【請求項14】
アルミニウム原子、ケイ素原子、リン原子及び遷移金属(M)を酸化物で表したときのモル比が、
SiO2/Al2O3の値が0.1以上0.8以下であり、
P2O5/Al2O3の値が0.6以上1.2以下であり、
MaOb/Al2O3の値が0.05以上1以下(ただし、a及びbはそれぞれMとOの原子比を表す)である
請求項11ないし13のいずれか1項に記載の遷移金属含有ゼオライト。
【請求項15】
前記遷移金属が鉄及び/又は銅である請求項11ないし14のいずれか1項に記載の遷移金属含有ゼオライト。
【請求項16】
ゼオライトがInternational Zeolite Association(IZA)が定めるゼオライト構造においてフレームワーク密度が10.0T/1000Å3以上16.0T/1000Å3以下である請求項11ないし15のいずれか1項に記載の遷移金属含有ゼオライト。
【請求項17】
ゼオライトがInternational Zeolite Association(IZA)が定めるゼオライト構造においてCHAである請求項11ないし16のいずれか1項に記載の遷移金属含有ゼオライト。
【請求項18】
請求項11ないし17のいずれか1項に記載の遷移金属含有ゼオライトを含む排ガス処理用触媒。
【請求項19】
請求項11ないし17のいずれか1項に記載の遷移金属含有ゼオライトを含む水蒸気吸着材。
【請求項1】
少なくとも骨格構造にケイ素原子、リン原子及びアルミニウム原子を含むゼオライトに遷移金属を含有させてなる遷移金属含有ゼオライトを製造する方法であって、ケイ素原子原料、アルミニウム原子原料、リン原子原料、遷移金属原料及びポリアミン(但しジアミンを除く)を含む水性ゲルから水熱合成することを特徴とする遷移金属含有ゼオライトの製造方法。
【請求項2】
前記水性ゲルが、少なくともヘテロ原子として窒素原子を含む脂環式複素環化合物、アルキルアミン、シクロアルキルアミン、及びテトラアルキルアンモニウムヒドロキシドよりなる群から選ばれる少なくとも一つを更に含む請求項1に記載の遷移金属含有ゼオライトの製造方法。
【請求項3】
前記ポリアミンが、一般式H2N−(CnH2nNH)x−H(式中、nは2〜6の整数、xは2〜10の整数)で表されるポリアミンである請求項1又は2に記載の遷移金属含有ゼオライトの製造方法。
【請求項4】
前記遷移金属が鉄及び/又は銅である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の遷移金属含有ゼオライトの製造方法。
【請求項5】
前記水性ゲルの組成におけるアルミニウム原子原料、ケイ素原子原料、リン原子原料及び遷移金属(M)原料を酸化物で表したときのモル比が、
SiO2/Al2O3の値が0.1以上0.8以下であり、
P2O5/Al2O3の値が0.6以上1.2以下であり、
MaOb/Al2O3の値が0.05以上1以下(ただし、a及びbはそれぞれMとOの原子比を表す)である
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の遷移金属含有ゼオライトの製造方法。
【請求項6】
前記水性ゲルにおいて、前記遷移金属原料及びポリアミンの少なくとも一部が錯体を形成している請求項1ないし5のいずれか1項に記載の遷移金属含有ゼオライトの製造方法。
【請求項7】
前記遷移金属原料及びポリアミンの少なくとも一部を予め混合した後、他の原料を混合して水性ゲルを調製する請求項1ないし6のいずれか1項に記載の遷移金属含有ゼオライトの製造方法。
【請求項8】
遷移金属原料とリン原子原料を予め混合した後、他の原料を混合して水性ゲルを調製する請求項1ないし5のいずれか1項に記載の遷移金属含有ゼオライトの製造方法。
【請求項9】
前記遷移金属が銅である請求項1ないし8のいずれか1項に記載の遷移金属含有ゼオライトの製造方法。
【請求項10】
前記遷移金属原料が酸化銅(II)及び/又は酢酸銅(II)である請求項1ないし9のいずれか1項に記載の遷移金属含有ゼオライトの製造方法。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか1項に記載の製造方法により得られた遷移金属含有ゼオライト。
【請求項12】
25℃で測定した水蒸気吸着等温線において、相対蒸気圧0.01における吸着量が1.3mol/mol−Si以上、相対蒸気圧0.7における吸着量が150mg/g以上300mg/g以下であり、少なくとも骨格構造にケイ素原子、リン原子及びアルミニウム原子を含むゼオライトに遷移金属を含有させてなる遷移金属含有ゼオライト。
【請求項13】
請求項1ないし10のいずれか1項に記載の製造方法により得られた請求項12に記載の遷移金属含有ゼオライト。
【請求項14】
アルミニウム原子、ケイ素原子、リン原子及び遷移金属(M)を酸化物で表したときのモル比が、
SiO2/Al2O3の値が0.1以上0.8以下であり、
P2O5/Al2O3の値が0.6以上1.2以下であり、
MaOb/Al2O3の値が0.05以上1以下(ただし、a及びbはそれぞれMとOの原子比を表す)である
請求項11ないし13のいずれか1項に記載の遷移金属含有ゼオライト。
【請求項15】
前記遷移金属が鉄及び/又は銅である請求項11ないし14のいずれか1項に記載の遷移金属含有ゼオライト。
【請求項16】
ゼオライトがInternational Zeolite Association(IZA)が定めるゼオライト構造においてフレームワーク密度が10.0T/1000Å3以上16.0T/1000Å3以下である請求項11ないし15のいずれか1項に記載の遷移金属含有ゼオライト。
【請求項17】
ゼオライトがInternational Zeolite Association(IZA)が定めるゼオライト構造においてCHAである請求項11ないし16のいずれか1項に記載の遷移金属含有ゼオライト。
【請求項18】
請求項11ないし17のいずれか1項に記載の遷移金属含有ゼオライトを含む排ガス処理用触媒。
【請求項19】
請求項11ないし17のいずれか1項に記載の遷移金属含有ゼオライトを含む水蒸気吸着材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−32268(P2013−32268A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−137981(P2012−137981)
【出願日】平成24年6月19日(2012.6.19)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年6月19日(2012.6.19)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】
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