説明

選択可能な直交結合を用いる位相配列コイル

磁気共鳴映像装置は、試験領域(14)でメイン磁場を発生するメイン磁石(12)と、該メイン磁場に磁場傾斜を作る複数の傾斜コイル(22)と、該試験領域に配置された対象で磁気共鳴を励磁するようにRF信号を該試験領域に送信するRF送信コイルと、該対象からRF信号を受けるRF受信コイル(16)とを有する。該RF受信コイルは、第一のループ(101)及び第二のループ(102)を有し、該第一及び第二のループは、実質的に同様な面(x-z)に配置される。該第一及び第二のループによって受けられた該信号を直交して結合する信号結合器(120)が更に含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴技術に関する。それは、医療診断画像に関して特定の用途を見出し、それに関して記述される。しかし、本発明は、特性制御検査、分光法、等で更なる用途を見出しうることが理解されるべきである。
【背景技術】
【0002】
近年の磁気共鳴映像(MRI)スキャナにおいて、共鳴信号は、患者の表面に隣接する直線的に分極された無線周波数(RF)コイルを配置することによって受信される。該直線的に分極されたコイルは、磁気共鳴信号の一つの成分のみを、一般に、水平又は垂直方向どちらかの成分を受信する。対照的に、対象から発せられる磁気共鳴信号は、一つの面で回転する、即ち、二つの直交成分を有するベクトルによって更に正確に決定される。従って、直線的に分極されたコイルは、二つの直交成分の一つのみを受ける。
【0003】
直交コイルは、環状に分極された磁場を有し、回転ベクトルの直交成分を受ける。直交コイルは、水平及び垂直に作られた両電流分布を指示しうる。従って、該直交コイルは、直線的に分極されたコイルに比べて、回転ベクトルから二倍の信号を抽出する。これは、2の平方根又は約41%だけ大きい信号対雑音比をもたらす。しかし、従来技術の直交コイルは、一般に、表面コイルではなく容積コイルである。例えば、幾つかの容積直交コイルは、互いに90度ずれた二つのくら型コイルを有している。画像化されるべき患者の部分は、該くら型コイルの内部で決められた容積内に置かれる。同じように、他のコイルは、環状に分極された領域の周りの容積を決めるように使用されている。
【0004】
従って、脊髄映像のような用途に対する直交型の表面又は平面コイルの好ましさが認められてきた。例えば、メーディザデーエ等の米国特許4,918,388を見よ。メーディザデーエの表面コイルは、その一つの表面上に定められた第一の又はループのコイル、及びその反対の面上に定められた第二の又はヘルムホルツのコイルを有する薄膜誘電シートを有する。該第一及び第二のコイルは、対称な軸又は面に対称的に配置される。該第一のコイルは、y軸に沿って関連する磁場を有し、該第二のコイルは、x軸に沿って関連する磁場を有する。
【0005】
対称な軸又は面に対称的に配置された該第一及び第二のコイルを有する米国特許4,918,388で開示されたコイルによって、空間的な強さの分離は、容易に達成可能ではない。これは、SENSEのような用途でのこのようなコイルの使用を制限する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の問題及び他の事柄を解決するような新しい、改善されたRFコイルを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
当業者は、以下の記述を読み、理解することで、本発明の様相が上記及び他の問題を扱うことを十分に理解するであろう。
【0008】
本発明の一つの様相によれば、磁気共鳴映像装置が提供される。磁気共鳴映像装置は、試験領域でメイン磁場を発生するメイン磁石と、該メイン磁場に磁場傾斜を作る複数の傾斜コイルと、該試験領域に配置された対象で磁気共鳴を励磁するようにRF信号を該試験領域に送信するRF送信コイルと、実質的に同様な面に配置された第一のループ及び第二のループを有し、該対象からRF信号を受けるRF受信コイルと、直交モードで該第一及び第二のループによって受けられた信号を結合する信号結合器とを有する
本発明の更に限定された様相によれば、該第一及び第二のループの幾何学的中心は、該メイン磁場に対して垂直な方向で互いに動かされる。
【0009】
本発明の更に限定された様相によれば、該第一及び第二のループは、該両ループ間の相互インダクタンスを減少させるように重なり合う。
【0010】
本発明の更に限定された様相によれば、前記第一及び第二のループによって受けられた前記RF信号は、第一及び第二の方向での成分を有し、該第一及び第二の方向は、前記メイン磁場に対して垂直である。
【0011】
本発明の更に限定された様相によれば、前記信号結合器は、該第一の方向での該第一及び第二のループに関連する該RF信号を、互いに位相を180度ずらされた該信号を足し合わせることによって結合し、該信号結合器は、該第二の方向での該第一及び第二のループに関連する該RF信号を、同相である該信号を足し合わせることによって結合する。
【0012】
本発明の更なる限定された様相によれば、前記磁気共鳴映像装置は、前記信号結合器を傾斜モードから位相配列モードへ切り替える切り替え手段を更に有する。
【0013】
本発明の更に限定された様相によれば、前記第一及び第二のループは、互いに類似な形状を有する。
【0014】
本発明の他の様相によれば、磁気共鳴映像装置が提供される。該磁気共鳴映像装置は、試験領域でメイン磁場を発生するメイン磁石と、該試験領域に配置された双極子で磁気共鳴を励磁するように該試験領域に関して置かれたRF送信コイルと、該RF送信コイルを駆動するRF送信器と、互いに非直交な面で配置された複数のループコイルを有し、該共鳴する双極子から磁気共鳴信号を受けるRF受信コイルと、直交結合モード又は位相配列モードで選択的に該複数のループコイルによって受けられた該信号を結合する信号結合器とを有する。
【0015】
本発明の更に限定された様相によれば、該RF受信コイルは、該メイン磁場に対して垂直に、且つ該メイン磁場に対して平行に延びるループコイルのn×mの配列を有する。
【0016】
本発明の更に限定された様相によれば、前記複数のループコイルは、互いに類似な形状を有する。
【0017】
本発明の更に限定された様相によれば、前記複数のループコイルによって受けられた前記RF信号は、第一及び第二の方向での成分を有し、該第一及び第二の方向は、前記メイン磁場に対して垂直である。
【0018】
本発明の更に限定された様相によれば、前記信号結合器は、該第一の方向での該複数のループコイルの少なくとも該第一及び第二のループに関連する該RF信号を、互いに位相を180度ずらされた該信号を足し合わせることによって結合し、該信号結合器は、該第二の方向での該第一及び第二のループに関連する該RF信号を、同相である該信号を足し合わせることによって結合する。
【0019】
本発明の更に限定された様相によれば、前記磁気共鳴映像装置は、前記信号結合器を傾斜モードから位相配列モードへ切り替える切り替え手段を更に有する。
【0020】
本発明の他の様相によれば、磁気共鳴RFコイル組立部が提供される。該RFコイル組立部は、第一の面に配置された第一のループと、該第一の面と非直交である第二の面に配置された第二のループと、該第一のループに関連するRF信号を該第二のループに関連するRF信号と直交結合する信号結合器とを有する。
【0021】
本発明の更に限定された様相によれば、該第一及び第二のループは、実質的に同一な面で互いに隣接して配置される。
【0022】
本発明の更に限定された様相によれば、前記RFコイル組立部は、該ループ間の相互インダクタンスを減少させる手段を更に有する。
【0023】
本発明の更に限定された様相によれば、前記第一及び第二のループは、両方とも、第一及び第二の方向での成分を有するRF信号に反応し、該第一及び第二の方向は、互いに直交する。
【0024】
本発明の更に限定された様相によれば、前記信号結合器は、該第一の方向での該第一及び第二のループに関連する該RF信号を、互いに位相を180度ずらされた該信号を足し合わせることによって結合し、該信号結合器は、該第二の方向での該第一及び第二のループに関連する該RF信号を、同相である該信号を足し合わせることによって結合する。
【0025】
本発明の更に限定された様相によれば、前記RFコイル組立部は、前記信号結合器を傾斜モードから位相配列モードへ切り替える切り替え手段を更に有する。
【0026】
本発明の更に限定された様相によれば、前記第一及び第二のループは、互いに類似な形状を有する。
【0027】
本発明の一つの利点は、空間的な強さの識別を有する二次元配列にある。
【0028】
本発明の他の利点は、該配列内のコイルが直交結合されうることである。
【0029】
本発明の他の利点は、該配列内の該コイルの出力が位相配列として選択的に取られうることである。
【0030】
本発明の他の利点は、該コイルの製造を容易にするRFコイル構造にある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明の更なる利点は、好ましい実施例に関する以下の記述を読み、理解すると、当業者にとって明白となる。
【0032】
本発明は、様々な部品及び部品配置、並びに様々な動作ステップ及び動作ステップの配置で形を成す。図面は好ましい実施例を図解する目的にのみ用いられ、本発明はこの限りではない。
【0033】
図1を参照すると、MRIスキャナが示される。メイン磁場制御10は、例えば超電導又は常電導の磁石であるメイン磁石12を制御する。メイン磁石12は、試験される目的で配置された試験区間又は領域14で所望の力(例えば1.5テスラ)を有し、十分に均一で安定したメイン磁場B0を発生するように制御される。示されるように、試験区間14は、円筒穴の形を取っているが、オープンフィールド試験区間のような他の形も検討される。通常、B0は、試験区間14の中心縦軸であるz軸の方向に作られる。
【0034】
パルス系列は、系列メモリ32に保存され、系列制御30によって実行される。系列制御30は、傾斜パルス増幅器20並びに第一及び第二のRF送信器24、25を必要に応じて制御する。更に具体的には、系列制御30は、最終的に受信され、サンプリングされるMR信号を発生し、傾斜符号化(即ち、スライス、位相及び/又は周波数の符号化)する複数のMRIパルス系列を作るように、傾斜パルス増幅器20及び送信器を制御する。
【0035】
傾斜パルス増幅器20は、試験領域14に直交する軸に沿って磁場傾斜を作るように、選択された傾斜コイル22に電流パルスを印加する。これらの磁場は、B0と同じ方向で十分に広がるが、夫々x、y及び/又はz方向での傾斜を有する。
【0036】
デジタル無線周波数送信器24は、RFパルスを試験領域に送信するように、例えばホールボディ・バードケージRFコイルのような第一のRFコイル26に無線周波数パルス又はパルスパケットを送信する。典型的な無線周波数パルスは、互いに共に要する短い期間を有する直ぐ隣のパルス区間のパケットから構成され、加えられた傾斜はどれも、選択された磁気共鳴操作を達成する。これらRFパルスは、磁場の強さ及び興味のある磁気双極子の種類の幾何学定数によって決められるラーモア周波数で、試験区間14に磁場B1を作る。通常、この周波数は、1.5テスラの強さを有する磁場に対して約63.8MHzである。RFパルスは、試験領域の選択された部分において、飽和させ、共鳴を励磁し、磁性を反転させ、共鳴に再び焦点を合わせ、あるいは共鳴を操作するように使用される
第二のRFコイル組立部16は、試験領域に配置され、試験領域14で選択的にRF信号を作るように第二のRF送信器25によって任意に制御される。図1で示されるように、第二のRFコイル16は、表面コイル配列である。第一のRFコイル26と同様に、これらのRFパルスは、試験区間に磁場B1を作る。
【0037】
RF送信器が使用されるにも関わらず、典型的なRFパルスは、互いに共に要する短い期間の直ぐ隣のパルス区分のパケットから成り、加えられた傾斜はどれも、選択された磁気共鳴操作を達成する。任意に用いられるMRIパルス系列は、二次元(2D)又は三次元(3D)のどちらかのMR信号を発生する。任意に用いられるMRIパルス系列は、複数のシングルエコー又はマルチエコーの画像化系列の幾つかを有する。画像化は、多数の既知のMRI技術、例えばフィールドエコー(FE)画像化、スピンエコー(SE)画像化、エコープラナー画像化(EPI)、エコー容積画像化、傾斜及びスピンエコー(GSE)画像化、高速スピンエコー(FSE)画像化、単発FES画像化、三次元容積FSE画像化、平行画像化技術(例えば、感度符号化(SENSE)、空間調和の同時取得(SMASH)、等)、及び/又は同様なものを用いて、実行されても良い。2D画像化の場合、興味のある領域は、画像化された対象の2次元断面スライスを表示する。3D画像化の場合、興味のある領域は、画像化された対象の3次元容積を表示する。
【0038】
試験領域14から生じる磁気共鳴信号は、試験領域に近接して配置されたRF受信コイルによって受けられる。RF受信コイルは、任意に主部RFコイル26又は局部RFコイル16でありうる。第一の受信器38は、全体的なRFコイル26から磁気共鳴信号を受け、該信号を複数のデータ列に復調する。受信器がアナログである場合、第一のアナログ/デジタル変換器40は、夫々のデータ列をデジタル形式に変換する。あるいは、アナログ/デジタル変換器は、無線周波数受信コイル26とデジタル受信器用受信器38との間に配置される。
【0039】
第二の受信器34は、局部RFコイル組立部16から磁気共鳴信号を受け、該信号を複数のデータ列に復調する。受信器34がアナログである場合、局部的なアナログ/デジタル変換器36は、局部的な受信器からの夫々のデータ列をデジタル形式に変換する。先と同様に、アナログ/デジタル変換器は、デジタル受信器より前にありうる。受信器38、34からのデータ列は、データメモリ42に配置され、保存される。
【0040】
あるいは、局部RFコイル16並びにそれに結合された送信及び受信ハードウェアは、システムにおいて単なるRF送受信ハードウェアであっても良い。
【0041】
局部コイル16は、夫々が第二の受信器34に接続されうる多数の区分又はループに細分されることが理解されるべきである。それによって、第二の受信器34は、多数の受信器及び結合されたアナログ/デジタル変換器、例えば局部コイル16の夫々の区分の一つを有しても良い。あるいは、単一の多重チャネル受信器が用いられうる。他の実施例は、局部コイル区分からの結合された信号を受信する単一チャネル受信器を有する。
【0042】
データ列は、逆フーリエ変化又は他の適切な再構成アルゴリズムを適用する再構成処理装置50によって画像表示に再構成される。画像は、患者の平面スライス、平行な平面スライスの配列、三次元容積、又はそれらと同様のものを表わしても良い。次に、電子画像表示は、人間が読み取り可能な合成画像表示を提供するモニタ56のような表示装置に対して、スライス、投影、又は画像表示の他の部分を適切な形式に変換する映像処理装置54によって選択的にアクセスされる画像メモリ52に保存される。
【0043】
図2を参照すると、局部コイル組立部16は、第一のループコイル101及び第二のループコイル102を有する。一実施例において、第一及び第二のループコイルは、同一の面、例えばx-z面に実質的に置かれ、コイル間の相互インダクタンスの影響を減らすように重なり合う。しかし、誘導分離のような相互インダクタンスを減少させる他の方法の場合には、ループが必ずしも重なり合わないことが理解されるべきである。示される実施例において、コイルループの中心は、x方向で互いから動かされる。z方向での移動は、明瞭さの目的のためだけに示される。図2で示されるように、両ループコイルは長方形であるが、他の形状のコイルが検討されることが理解されるべきである。更に、局部コイルは、従来技術である調整キャパシタ及び送信分離器を有することが理解されるべきである。これら要素は、簡単化のためにここで示されない。
【0044】
続けて図2をみると、第一のループ101は、第一の前置増幅器111に電気接続されている。第二のループコイル102は、第二の前置増幅器112に電気接続されている。第一及び第二の前置増幅器111、112からの出力は、信号結合器120へ入力される。信号結合器120は、第二のRF受信器34に接続されている。
【0045】
図3は信号結合器120の一実施例を示す。見て分かるように、信号結合器120は、第一の分配器131を有し、その入力は、第一の前置増幅器111から入来する。第一の分配器131は二つの出力を有する。第一の出力は、第一の加算器141に接続され、第二の出力は、第二の加算器142に接続されている。第一の加算器141は、第一の移相器151に接続されている。示される実施例において、移相器は、90度の移相器である。第一の移相器151は、第三の加算器143に接続されている。
【0046】
続けて図3を見ると、信号結合器120は、また、第二の分配器132を有し、その入力は第二の前置増幅器112から入来する。第二の分配器132は、二つの出力を有する。第一の出力は、第一の加算器141に接続され、第二の出力は、第二の移相器152に接続されている。示される実施例において、第二の移相器は、180度の移相器である。第二の移相器は、第二の加算器142に接続され、それに入力を供給する。第一の移相器と共に、第二の加算器142からの出力は、第三の加算器143に接続されている。第三の加算器143からの出力は、第二のRF受信器34に接続されている。
【0047】
代わりの実施例において、信号結合器120は、従来技術の一つとして知られる直交結合器でありうる。図4は、このような直交結合器の回路図を示す。従来技術で知られるように、結合キャパシタC1、C2、C3、C4、C5、C6及びインダクタL1、L2は、結合ダイオードD1、D2がバイアスをかけられるときに、直交結合器を作り上げる。該ダイオードがバイアスをかけられるとき、局部RFコイル組立部16は結合コイルとして働く。該ダイオードがバイアスをかけられないとき、キャパシタC1、C2、及びインダクタL1並びにキャパシタC3、C4及びインダクタL2は、50オームの伝送ラインを作る。この後者の動作モードでは、局部RFコイル組立部16は、位相配列コイルとして働く。
【0048】
動作中、メイン磁場B0は試験領域14で発生し、対象はその中に置かれる。一連のRF及び磁場傾斜パルスは、磁気スピンを反転又は励磁し、磁気共鳴を有し、磁気共鳴に再び焦点を合わせ、磁気共鳴を操作し、スピンを飽和させるように磁気共鳴を空間的に又はその反対に符号化し、且つMRIパルス系列を発生するように印加される。更に具体的には、傾斜パルス増幅器20は、試験領域14のx、y及びz軸に沿って磁場傾斜を作るように、選択された一つ又は対の傾斜コイル22に電流パルスを印加する。RF送信器24の全体は、RFパルス又はパルスパケットを試験領域14に送信するように送信コイル26の全体を駆動する。あるいは、同様に、局部RFコイル送信器25は、RFパルス又はパルスパケットを試験領域14に送信するように局部RFコイル16を駆動する。
【0049】
用いられるMRIパルス系列又は技術に無関係に、系列制御30は、試験領域から最終的に受信されるMR信号を発生する複数のMRIパルス系列を調整する。選択された系列に対して、受信されたMR信号の夫々のエコーは、第一のRFコイル26又は局部RFコイル16によって受けられる。
【0050】
局部RFコイル16が試験領域から信号を受けるように働く場合、該局部コイルは、二つの動作モードで動作しうる。第一のモードでは、局部RFコイル16は、直交コイルとして働く。図2及び3で示される実施例を参照すると、試験領域から第一及び第二のループコイル101、102によって受けられたRF信号は、第一及び第二の前置増幅器111、112に夫々送信され、更なる処理のために増幅される。
【0051】
次に、増幅された信号は、垂直モード(y方向)及び水平モード(x方向)でのRF信号が直交結合される信号結合器120に送信される。一般的に言えば、図5を参照して、夫々のループ101、102の感度は、x及びy方向での成分を有する。図5を参照すると、明瞭さのために、ループ101、102は、如何なる重なり合いもなく、断面で示される。垂直モードYは、同相である第一及び第二の前置増幅器の前置増幅器出力を足し合わせることによって得られる。水平モードXは、第一のループ101からの前置増幅器出力を、位相を180度ずらされた第二のループ102の前置増幅器出力に加えることによって得られる。
【0052】
更に具体的には、図3を再度参照すると、垂直モードYは、第一の前置増幅器111からRF信号(SA)を、第二の前置増幅器112からRF信号(SB)を信号結合器120に送信することによって得られる。RF信号SA及びSBは、第一及び第二の分配器131、132によって夫々分配される。従来技術で知られるように、これは、第一の分配器に対しては0.7SAに、第二の分配器に対しては0.7SBに等しい夫々の分配器からの二つの出力信号をもたらす。
【0053】
垂直モードを得るために、夫々の分配器からの第一の出力は、第一の加算器141によって同相で足し合わされる。これは、0.7SA+0.7SBに等しい信号SYをもたらす。
【0054】
水平モードを得るために、第二の分配器132からの第二の出力は、第二の移相器152によって位相をずらされる。示される実施例において、位相移動は180度である。従って、第二の移相器152は、-0.7SBに等しい信号を出力する。次に、この信号は、第二の加算器142によって第一の分配器131の第二の出力に加えられる。これは、0.7SA−0.7SBに等しい信号SXをもたらす。
【0055】
直交位相である水平及び垂直信号SX、SYを結合するために、垂直信号SYは、第一の移相器151によって位相をずらされる。示される実施例において、SYは90度だけ位相をずらされる。これは、j(0.7SA+0.7SB)に等しい信号をもたらす。この信号は、第三の加算器143によって水平信号SXに加えられる。これは、以下のような信号、
SQUAD=(0.7SA−0.7SB)+j(0.7SA+0.7SB) (1)
をもたらす。これは、以下のように、
SQUAD=SA(45度)+SB(135度) (2)
と書き換えられうる。
【0056】
示される実施例において、SB成分は、SA成分より90度だけ遅れるので、標準的な直交結合器は、図4で図解的に示されるように、信号結合器として実施されうる。
【0057】
上述のように、局部RFコイル16は、二つの動作モードで動作しうる。第一のモードでは、局部RFコイル16は直行コイルとして働く。第二の動作モードでは、該局部コイルは位相配列コイルとして働く。この動作モードでは、信号結合器120は、第一及び第二のループコイル101、102に対応する二つの別々の信号が個々の受信チャネルに別々に送信されるように切り替えられる。このような一実施例は、SENSEのような並行処理用途を可能にする。
【0058】
位相配列の実施例において、図4で示される結合回路は、信号結合器120として使用されうる。ここで、直交結合器は、第二のポートJ2に存在する直流バイアスに従って、オン又はオフに切り替えられる。位相配列モードが望まれる場合、正のバイアスが印加される。PINダイオードD1及びD2は、オフに切り替えられ、第一及び第二のループ信号は、第一及び第二のポートJ1及びJ2において有効である。直交結合器が望まれる場合、負のバイアスが第二のポートJ2に印加される。これは、磁場方向によってポートJ1又はJ2の一つで直行信号を生じる。非直交信号は、他のポートに存在する。
【0059】
コイルがRF受信コイルとして働き、あるいは局部コイル組立部16が動作するにも関わらず、受信されたMR信号は、結合されたRF受信器38、34及びアナログ/デジタル変換器40、36によって複数の時間をサンプリングされ、夫々のエコーを表わすサンプリングされたデータ点のデータの列又は配列を生じる。次に、この未加工のMRデータは、MRデータメモリ又はバッファ42に取り込まれる。該MRデータメモリは、一般にk空間として知られるデータ行列に相当する。夫々のエコーに与えられた特定の傾斜符号化に基づいて、対応するMRデータは、k空間での配置にマッピングされ、あるいは割り当てられる。
【0060】
該データは、逆フーリエ変換又は他の適切な再構成アルゴリズムを適用する再構成処理装置50によって画像表示に再構成される。次に、電子画像表示は、画像メモリ52に保存される。該画像メモリは、人間が合成画像の、人間が読み取り可能な合成画像表示を提供するモニタ56のような表示装置に対して、スライス、投影、又は画像表示の他の部分を適切な形式に変換する映像処理装置54によって選択的にアクセスされる。
【0061】
コイル16は、二つのループコイルを有する一実施例に基づいて説明されてきた。しかし、様々な大きさの配列が検討される。例えば、z方向で縦に延びる2×5のコイルの配列であるように、並んで配置された二つの縦五連結のループ配列を有する脊髄コイルを有することも可能である。このような実施例において、ループ配列は、夫々の対に対して分離性を設けるように重なり合う。対角線上で隣の分離性は、共通の対角線の導電体での容量性の相殺によって達成される。次の最も近い分離性は、個々によって固有である。脊髄配列の例を参照すると、脊髄コイルの夫々の面は、前置増幅器出力が上述のように別々に、あるいは直交結合で取られうる二つのループを有する。
【0062】
他の実施例において、前記局部コイルは、nがx方向で2の倍数であり、mがz方向(又は磁場方向)であるn×mの配列を有する。このような配列は、nm/2の信号に直交結合されうる。
【0063】
更なる他の実施例において、第一、第二、第三及び第四のループコイル201、201、203及び204は、図6で示されるように、試験領域の周りに間隔を空けて配置される。これらコイルは、既知の分離技術を用いて互いから分離される。この実施例では、これらコイルは、水平方向(x方向)に沿って、あるいは垂直方向(y方向)で、感度の符号化に対して選択的に結合されうる。
【0064】
x方向での感度符号化に対して、第一及び第二のループコイル201、202が直交結合されえ、第三及び第四のループコイル203、204が直交結合されうる。これは、図6で示されるようなx方向での感度符号化能力を有する一対の直交コイルをもたらす。y方向での感度符号化に対して、第二及び第三のコイルが直交結合されえ、第一及び第四のコイルが直交結合されうる。これは、図6で示されるようなy方向での感度符号化能力を有する一対の直交コイルをもたらす。
【0065】
図7は、図6で示されたコイルの構造が、縦に四つのコイルを連結された位相配列コイルとして、あるいは上述のような一対の直交コイルとして如何に選択的に使用されうるかを示す。更に具体的には、図7は、第一、第二、第三及び第四のコイル201、202、203、204の組み合わせが二つの直交受信チャネルを実現する4つのチャネルの選択可能な直交結合器を示す。該結合器は、要望通りにx又はy方向のどちらかでの空間的識別を選択可能である。
【0066】
本実施例では、信号は、夫々のループ201、202、203、204から取られ、第一、第二、第三及び第四の前置増幅器211、212、213、214に夫々入力される。増幅された信号は、第一、第二、第三及び第四の結合入力221、222、223、224で信号結合器230に入力される。図7で示される信号結合器230の回路は、直交モードと位相配列モードとの間でコイルを切り替えるように働くPINダイオードスイッチD1…D8を有する。キャパシタC1…C16及びインダクタL1…L4は、直交結合器を作る。インダクタL5…L14は、直流バイパスインダクタとして働き、抵抗器R1…R8は、切り替えバイアスに対する電流制限抵抗器である。
【0067】
ポートJ2及びJ4に負の直流バイアスを置くことによって、PINダイオードD1、D3、D5及びD7はバイアスをかけられる。これは、第一及び第二のループコイル並びに第三及び第四のループコイルをx方向での空間識別のために直交結合するように働く。直交信号は、B0の磁場極性に従ってポートJ1及びJ3又はJ2及びJ4に現れる。
【0068】
ポートJ2及びJ4に正のバイアスを置くことによって、PINダイオードD2、D4、D6及びD8はバイアスをかけられる。これは、第一及び第四のコイル並びに第二及び第四のコイルをy方向での空間識別のために直交結合するように働く。
【0069】
J2及びJ4に零電圧の直流バイアスを置くことによって、全てのPINダイオードはオフとされる。この場合、直交結合は起こらず、別々の位相配列信号が全ての四つのコイルから取られうる。
【0070】
本発明は、好ましい実施例を参照して記述されている。明らかに、変更及び交換は、前述を読み、理解することで、他者によって実施される。本発明は、添付の請求範囲又はそれと同等の記載の適用範囲内で、あるがままに全てのこのような変更及び交換を有すると解釈されることが表記される。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明による磁気共鳴映像装置の図である。
【図2】二つのループコイルを有する局部RFコイル組立部の図である。
【図3】信号結合器の図である。
【図4】直交結合器の回路図である。
【図5】断面で示された二つのコイルの磁場検出感度パターンの図である。
【図6】試験領域の周りに間隔を空けて配置されたコイル配列を示す図である。
【図7】4つのチャネルを選択可能な直交結合器の回路図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験領域でメイン磁場を発生するメイン磁石と、
該メイン磁場に磁場傾斜を作る複数の傾斜コイルと、
該試験領域に配置された対象で磁気共鳴を励磁するようにRF信号を該試験領域に送信するRF送信コイルと、
実質的に同様な面に配置された第一のループ及び第二のループを有し、該対象からRF信号を受けるRF受信コイルと、
直交モードで該第一及び第二のループによって受けられた信号を結合する信号結合器とを有することを特徴とする磁気共鳴映像装置。
【請求項2】
該第一及び第二のループの幾何学的中心は、該メイン磁場に対して垂直な方向で互いに動かされることを特徴とする、請求項1記載の磁気共鳴映像装置。
【請求項3】
該第一及び第二のループは、該両ループ間の相互インダクタンスを減少させるように重なり合うことを特徴とする、請求項2記載の磁気共鳴映像装置。
【請求項4】
前記第一及び第二のループによって受けられた前記RF信号は、第一及び第二の方向での成分を有し、該第一及び第二の方向は、前記メイン磁場に対して垂直であることを特徴とする、請求項1記載の磁気共鳴映像装置。
【請求項5】
前記信号結合器は、該第一の方向での該第一及び第二のループに関連する該RF信号を、互いに位相を180度ずらされた該信号を足し合わせることによって結合し、該信号結合器は、該第二の方向での該第一及び第二のループに関連する該RF信号を、同相である該信号を足し合わせることによって結合することを特徴とする、請求項4記載の磁気共鳴映像装置。
【請求項6】
前記信号結合器を傾斜モードから位相配列モードへ切り替える切り替え手段を更に有することを特徴とする、請求項1記載の磁気共鳴映像装置。
【請求項7】
前記第一及び第二のループは、互いに類似な形状を有することを特徴とする、請求項1記載の磁気共鳴映像装置。
【請求項8】
試験領域でメイン磁場を発生するメイン磁石と、
該試験領域に配置された双極子で磁気共鳴を励磁するように該試験領域に関して置かれたRF送信コイルと、
該RF送信コイルを駆動するRF送信器と、
互いに非直交な面で配置された複数のループコイルを有し、該共鳴する双極子から磁気共鳴信号を受けるRF受信コイルと、
直交結合モード又は位相配列モードで選択的に該複数のループコイルによって受けられた該信号を結合する信号結合器とを有する磁気共鳴映像装置。
【請求項9】
該RF受信コイルは、該メイン磁場に対して垂直に、且つ該メイン磁場に対して平行に延びるループコイルのn×mの配列を有することを特徴とする、請求項8記載の磁気共鳴映像装置。
【請求項10】
前記複数のループコイルは、互いに類似な形状を有することを特徴とする、請求項8記載の磁気共鳴映像装置。
【請求項11】
前記複数のループコイルによって受けられた前記RF信号は、第一及び第二の方向での成分を有し、該第一及び第二の方向は、前記メイン磁場に対して垂直であることを特徴とする、請求項8記載の磁気共鳴映像装置。
【請求項12】
前記信号結合器は、該第一の方向での該複数のループコイルの少なくとも該第一及び第二のループに関連する該RF信号を、互いに位相を180度ずらされた該信号を足し合わせることによって結合し、該信号結合器は、該第二の方向での該第一及び第二のループに関連する該RF信号を、同相である該信号を足し合わせることによって結合することを特徴とする、請求項11記載の磁気共鳴映像装置。
【請求項13】
前記信号結合器を傾斜モードから位相配列モードへ切り替える切り替え手段を更に有することを特徴とする、請求項8記載の磁気共鳴映像装置。
【請求項14】
第一の面に配置された第一のループと、
該第一の面と非直交である第二の面に配置された第二のループと、
該第一のループに関連するRF信号を該第二のループに関連するRF信号と直交結合する信号結合器とを有することを特徴とする磁気共鳴RFコイル組立部。
【請求項15】
該第一及び第二のループは、実質的に同一な面で互いに隣接して配置されることを特徴とする、請求項14記載の磁気共鳴RFコイル組立部。
【請求項16】
該ループ間の相互インダクタンスを減少させる手段を更に有することを特徴とする、請求項15記載の磁気共鳴RFコイル組立部。
【請求項17】
前記第一及び第二のループは、両方とも、第一及び第二の方向での成分を有するRF信号に反応し、該第一及び第二の方向は、互いに直交することを特徴とする、請求項14記載の磁気共鳴RFコイル組立部。
【請求項18】
前記信号結合器は、該第一の方向での該第一及び第二のループに関連する該RF信号を、互いに位相を180度ずらされた該信号を足し合わせることによって結合し、該信号結合器は、該第二の方向での該第一及び第二のループに関連する該RF信号を、同相である該信号を足し合わせることによって結合することを特徴とする、請求項17記載の磁気共鳴RFコイル組立部。
【請求項19】
前記信号結合器を傾斜モードから位相配列モードへ切り替える切り替え手段を更に有することを特徴とする、請求項14記載の磁気共鳴RFコイル組立部。
【請求項20】
前記第一及び第二のループは、互いに類似な形状を有することを特徴とする、請求項14記載の磁気共鳴映像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2006−523487(P2006−523487A)
【公表日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−506474(P2006−506474)
【出願日】平成16年4月2日(2004.4.2)
【国際出願番号】PCT/IB2004/001146
【国際公開番号】WO2004/092760
【国際公開日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips Electronics N.V.
【住所又は居所原語表記】Groenewoudseweg 1,5621 BA Eindhoven, The Netherlands
【Fターム(参考)】