説明

選択的アンドロゲン受容体モジュレータとしてのアミノフェニル誘導体

本明細書には、構造(I)(式中、Rはシアノもしくはニトロであり、環Aは二環式もしくは三環式架橋複素環である)を有する新規なクラスのアミノフェニル化合物、およびアンドロゲン受容体に関連する状態を治療または予防するためのアンドロゲン受容体のモジュレータとしてのそれらの使用が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、これにより参照して本明細書に全体として組み込まれる、2005年1月10日に提出された米国仮特許出願第60/642,841号の恩典を主張する。
【0002】
本発明は、化学および医学の分野に関する。より詳細には、本発明は、新規な化合物ならびに医学的使用および/またはアンドロゲン受容体を調節するためのこれらの化合物の使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
以下の考察は、本発明を理解する際に役立たつ背景情報としてのみ意図されている;本セクションにおけるいずれについても本発明の先行技術であることは意図されておらず、先行技術と見なされることも意図されていない。
【0004】
アンドロゲン受容体(AR)は、核ホルモン受容体のファミリーに属する。核ホルモン受容体は、リガンド活性化転写因子のスーパーファミリーを規定する。このファミリーのメンバーは、多数のモジュラードメイン:DNA部位での受容体と特異的応答エレメントとの相互作用を誘発するジンクフィンガーDNA結合ドメイン(DBD)、DBDに隣接するリガンド結合ドメイン(LBD)、ならびに各々リガンド非依存性およびリガンド依存性である2つの転写活性化ドメインAF−1およびAF−2を特徴とする。リガンドがこの受容体に結合すると、AF−2ドメインをより近接させて架橋するコアクチベータの動員を可能にするLBD内で立体構造の変化が発生する。コアクチベータは、核ホルモン受容体と転写機構の構成成分との物理的相互作用を作り出し、標的遺伝子の転写調節を確立する。
【0005】
ステロイド性ホルモンであるテストステロンおよびより強力なジヒドロキシテストステロン(DHT)は、AR内因性リガンドを表す。受容体の活性化を通して、これらの「男性ホルモン」は、多数の生理学的プロセス、最も著明には男性の一次および二次性徴を調節する。
【0006】
血漿中テストステロンレベルが減少する臨床状態は、性腺機能低下症としても知られており、広範囲に研究されてきた。例えば、そのような状態に罹患している小児は、思春期発育の全欠如を示す。思春期の遅延は、低身長症および/または二次性徴の獲得の遅延および骨量の減少に続発性の生理学的問題を引き起こす。さらに、数件の疫学的研究は、血漿中テストステロンレベルが加齢とともに徐々に減少することを確証している。平均すると、60歳代の男性の4分の1は臨床的性腺機能低下症を示す。この状態は、80歳代の男性間ではいっそうより優勢となり、この年齢群の男性の50〜80%は臨床的に性腺機能低下症と見なされている。減少した血漿中テストステロンレベルは高齢の女性においても見られる。年連関連性性腺機能低下症には、身体的徴候(筋、骨密度低下)から生理学的問題(気分障害、認知、減少した性欲)までのクオリティ・オブ・ライフにおける明白な障害が結び付いている。この状態は、「男性更年期」または「男性休止」と呼ばれる。
【0007】
現行療法は、テストステロンおよびテストステロンアナログの使用に基づいている。それらは、遅延性男性思春期、男性における不妊症ならびに子宮内膜症における最適療法である。このクラスのステロイドホルモンは強力なアナボリック作用を有するので、それらはやけどに苦しんでいる患者における骨格筋質量を回復させるために治療的に承認されている。多数のプラセボ対照臨床試験は、高齢男性におけるアンドロゲン作用性にとっての治療有益性を報告している。詳細には、骨密度、同化作用、性欲、気分障害(活力、幸福感の欠如)および認知などの年齢関連性性腺機能低下症の多数の態様を改善する際のテストステロン補充療法の利益を証明する報告が出現してきた。眼科学界では、テストステロンまたはテストステロンアナログを用いた療法はドライアイにも適用できる。より最近の試験は、減少しているテストステロンレベルとアルツハイマー病の増加した発生率との相関関係に焦点を当てている。
【0008】
テストステロンおよびテストステロンアナログの経口製剤は初回通過代謝の増強および肝毒性のために有効ではないので、持効性エステルの筋肉内注射剤の形態がテストステロン補充療法の基礎を構成してきた。しかし、これらの製剤によって誘導される血清中テストステロンレベルの大きな変動は、満足できない気分や一部の男性における性機能の変化を引き起こす;頻回な注射が必要とされるので、この送達様式は理想からはほど遠い。これとは対照的に、テストステロンの経皮パッチはより好都合な薬物動態特性を示し、有効な送達様式であることが証明されている。さらに、テストステロンパッチ系(特別には陰嚢パッチ)は高比率の皮膚刺激によって妨害される。最近は、テストステロンゲルが承認を獲得している。ゲルは、正常ホルモン値を回復して性腺機能低下症の徴候および症状を修正するために十分な量のテストステロンを送達するために十分な大量で皮膚上に1日1回適用される。しかし、極めて有効ではあるが、この適用様式は適正かつ一貫した送達に関する問題を提起する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしステロイドARリガンドは、例えば前立腺肥大、ニキビ、多毛症、男性化および雄性化のような望ましくない有害な副作用によって悩まされる。さらに、テストステロンおよびそのアナログのアンドロゲン性特性は、前立腺癌の増大した危険性を構成すると考えられる。そこで、ARリガンドの活性を調節できる非ステロイド性化合物についての研究が開始されている;そのような化合物は、選択的アンドロゲン受容体モジュレータもしくはSARMと呼ばれている。このクラスの化合物は、一般には、現行のステロイド療法より優れた薬物動態および特異性プロファイルを示すことが予測されている。詳細には、非ステロイド性SARMは、アンドロゲン性特性が欠如すると予測されている。第二世代SARMは、積極的な同化作用特性および拮抗性のアンドロゲン性成分を示すことによって追加の治療有益性に寄与すると予想されている。SARMのまた別の望ましい機能は、それらの重大な生物学的利用能であると予測されている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の1つの実施形態は、式(I)もしくは式(II):
【化1】

(式中、
、Z、ZおよびZは各々、水素、任意で置換されたアルキル、任意で置換されたアルケニル、任意で置換されたアルキニル、任意で置換されたシクロアルキル、任意で置換されたヘテロシクリル、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、任意で置換されたアミノアルキル、任意で置換されたアルコキシ、任意で置換されたアリール、任意で置換されたヘテロアリール、任意で置換されたヘテロシクリルアルキル、任意で置換されたヘテロアリールアルキル、C(O)OR、C(O)NR、NHC(O)R、NHSO、OC(O)R、C=NOR、CF、COR、SR、S(O)、およびSONRからなる群から独立して選択される;ただしZ、Z、ZもしくはZのうちの少なくとも1つは水素ではない;
は、シアノおよびニトロからなる群から選択される;
環Aは、原子YおよびYを含み、N、O、S、S=O、SO、C=O、およびC=Sからなる群から選択される3個までのヘテロ原子を含有する任意で置換された二環式もしくは三環式非芳香族複素環であり、YもYもC=OもしくはC=Sではない;
およびRは各々、水素、シアノ、アルキルもしくは置換されたアルキル、アルケニルもしくは置換されたアルケニル、アルキニルもしくは置換されたアルキニル、シクロアルキルもしくは置換されたシクロアルキル、ヘテロシクリルアルキルもしくは置換されたヘテロシクリルアルキル、アリールアルキルもしくは置換されたアリールアルキル、アリールもしくは置換されたアリール、ヘテロアリールアルキルもしくは置換されたヘテロアリールアルキル、およびヘテロアリールもしくは置換されたヘテロアリールからなる群から独立して選択される;
およびRは各々、水素、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、アルキルもしくは置換されたアルキル、アルケニルもしくは置換されたアルケニル、アルキニルもしくは置換されたアルキニル、シクロアルキルもしくは置換されたシクロアルキル、ヘテロシクリルアルキルもしくは置換されたヘテロシクリルアルキル、アリールアルキルもしくは置換されたアリールアルキル、アリールもしくは置換されたアリール、ヘテロアリールアルキルもしくは置換されたヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールもしくは置換されたヘテロアリール、OR、NR、SR、C(O)R、C(O)OR、C(O)NR、NHC(O)R、NRC(O)R5、OC(O)R、C(S)R、C(S)OR、C(S)NR、NHC(S)R、OC(S)R、S(O)、SONR、OSO、NHSO、およびOR、NR、SR、C(O)R、C(O)OR、C(O)NR、NHC(O)R、NRC(O)R5、OC(O)R、C(S)R、C(S)OR、C(S)NR、NHC(S)R、OC(S)R、S(O)、SONR、OSO、もしくはNHSOと置換されたアルキルからなる群から独立して選択される;
およびRは各々、水素、アルキルもしくは置換されたアルキル、アルケニルもしくは置換されたアルケニル、アルキニルもしくは置換されたアルキニル、シクロアルキルもしくは置換されたシクロアルキル、ヘテロシクリルアルキルもしくは置換されたヘテロシクリルアルキル、アリールアルキルもしくは置換されたアリールアルキル、およびヘテロアリールアルキルもしくは置換されたヘテロアリールアルキルからなる群から独立して選択される;および
nは1〜3の整数である)によって表される化合物およびそれらのプロドラッグ、立体異性体、および医薬上許容される塩である。
【0011】
本発明の1つの実施形態では、式Iもしくは式IIの化合物は、
【化2】

からなる群から選択されない。
【0012】
本発明の1つの実施形態では、環Aは二環式複素環である。
【0013】
本発明の1つの実施形態では、前記二環式複素環は架橋二環式複素環である。
【0014】
本発明の1つの実施形態では、
およびZは、水素、未置換の−(C−C)アルキル、−(C−C)アルキルOH、−(C−C)アルキル(ハロ)、ハロ、シアノ、−OR、−OC(O)R、−CF、−CHOおよび−CH=NORからなる群から独立して選択される;
およびRは、水素、未置換の−(C−C)アルキル、−(C−C)アルキルOH、−(C−C)アルキル(ハロ)、ハロ、シアノ、−OR、−OC(O)Rおよび−CFからなる群から独立して選択される;および、
架橋二環式複素環は1つの窒素原子を含むが、Rは、水素、未置換(C−C)アルキル、未置換(C−C)シクロアルキルおよび未置換アリールからなる群から選択される。
【0015】
本発明の1つの実施形態では、環Aは構造:
【化3】

を有する。
【0016】
本発明の1つの実施形態では、環Aは構造:
【化4】

を有する。
【0017】
本発明の1つの実施形態では、Rはヒドロキシである。
【0018】
本発明の1つの実施形態では、Rは−(C−C)アルキルである。
【0019】
本発明の1つの実施形態では、Rは、それにRが結合している同一炭素原子に結合している。
【0020】
本発明の1つの実施形態では、環Aはトロパンもしくは任意で置換されたトロパンである。本発明の1つの実施形態では、環Aは、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシもしくは置換されたアルコキシ、アルキルもしくは置換されたアルキル、アルケニルもしくは置換されたアルケニル、アルキニルもしくは置換されたアルキニル、アミノアルキルもしくは置換されたアミノアルキル、OC(O)R、およびNHC(O)Rからなる群から選択される1つまたは複数の置換基と任意で置換されている。本発明の1つの実施形態では、Rはシアノである。本発明の1つの実施形態では、環A上のRもしくはRのうちの少なくとも1つはヒドロキシもしくはアルキルである。本発明の1つの実施形態では、Zはアルキル、ハロゲン、ハロアルキルもしくはヒドロキシアルキルである。本発明の1つの実施形態では、Zはアルキル、ハロゲン、ハロアルキルもしくはヒドロキシアルキルである。本発明の1つの実施形態では、Zはメチルもしくはエチルであり、Zはハロゲンである。本発明の1つの実施形態では、Zはメチルもしくはエチルであり、Zはクロロである。本発明の1つの実施形態では、Zはメチルであり、そしてZはクロロである。
【0021】
本発明の1つの実施形態では、式(I)もしくは式(II)の化合物は、
endo−8−(3−クロロ−2−メチル−4−ニトロフェニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−3−オール;
2−クロロ−4−(3−endo−ヒドロキシ−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−8−イル)−3−メチルベンゾニトリル;
2−ブロモ−4−(3−endo−ヒドロキシ−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル)−5−メチルベンゾニトリル;
6−(3−endo−ヒドロキシ−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル)−2−メチル−3−ニトロ安息香酸;
2−(トリフルオロメチル)−4−(3−endo−ヒドロキシ−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−8−イル)ベンゾニトリル;
3−ブロモ−2−クロロ−4−(3−endo−ヒドロキシ−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル)ベンゾニトリル;
endo−8−(2,3−ジメチル−4−ニトロフェニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−3−オール;
2−クロロ−4−(3−endo−ヒドロキシ−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル)−3−ヨードベンゾニトリル;
endo−8−[2−(ヒドロキシメチル)−3−メチル−4−ニトロフェニル]−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−3−オール;
4−(3−endo−ヒドロキシ−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル)−3−トリフルオロメチルベンゾニトリル;
endo−8−(2−クロロ−3−メチル−4−ニトロフェニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−3−オール;
2−クロロ−6−(3−endo−ヒドロキシ−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル)−3−ニトロベンズアルデヒド;
endo−8−(3−クロロ−2−ヒドロキシメチル−4−ニトロフェニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−3−オール;
2−クロロ−6−(3−endo−ヒドロキシ−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル)−3−ニトロベンズアルデヒドオキシム;
endo−8−(2−クロロ−3−ヒドロキシメチル−4−ニトロフェニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−3−オール;
endo−8−(5−クロロ−2−メチル−4−ニトロフェニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−3−オール;
2−クロロ−4−(3−endo−ヒドロキシ−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル)ベンゾニトリル;
6−(3−endo−ヒドロキシ−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル)−2−メチル−3−ニトロ安息香酸;
endo−8−(2−ヒドロキシメチル−3−メチル−4−ニトロフェニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−3−オール;
2−クロロ−4−(3−endo−ヒドロキシ−3−exo−メチル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル)−3−メチルベンゾニトリル;
2−クロロ−4−(3−endo−ヒドロキシ−3−exo−メチル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル)−3−メチルベンゾニトリル塩酸塩;および
2−クロロ−4−(3−endo−ヒドロキシ−3−exo−メチル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル)−3−メチルベンゾニトリルメシレート、からなる群から選択される。
【0022】
本発明の1つの実施形態は、式(I)もしくは式(II)の化合物のプロドラッグエステル、炭酸塩、カルバミン酸塩、硫酸塩、リン酸塩もしくはホスホルアミデートである。
【0023】
本明細書に開示した実施形態は、式(I)もしくは式(II)の化合物と医薬上許容される賦形剤とを含む医薬組成物を含む。
【0024】
本明細書に開示した実施形態は、性腺機能低下症、正常値より低い血漿中テストステロンレベル、男性における不妊症、男性における勃起機能不全、男性における男性休止、女性における子宮内膜症、女性における性交疼痛症,女性における膣痙、女性における性覚醒障害、女性における性オルガスムス障害、男性における性欲障害、悪液質、HIV消耗、筋肉疲労が明白である重症疾患、サルコペニア、虚弱、低身長症、矮小発育症、骨密度低下、気分障害、抑うつ、認知機能障害、神経変性障害、眼球乾燥症、代謝障害、心血管障害、肥満症、貧血、前立腺癌、および統合失調症からなる群から選択される状態を治療する方法であって、前記状態の1つまたは複数の症状を示す患者へ本発明の化合物またはそれらのプロドラッグ、立体異性体、もしくは医薬上許容される塩を投与する工程を含む方法を含む。
【0025】
本発明の1つの実施形態では、気分障害は、幸福感の欠如、活力の欠如、怒り、被刺激性、悲しみ、疲労感、および神経質からなる群から選択される。本発明の1つの実施形態では、神経変性障害は、アルツハイマー病、軽度認知障害(MCI)、ルイス体(Lewis body)認知症、および前頭側頭型認知症からなる群から選択される。本発明の1つの実施形態では、代謝障害は、脂質代謝異常、アテローム硬化症、および非インスリン依存型糖尿病(NIDDM)からなる群から選択される。本発明の1つの実施形態では、心血管障害は、高血圧、冠動脈疾患、および心筋灌流からなる群から選択される。
【0026】
本発明の1つの実施形態は、男性における精子形成を調節する方法であって、男性被験者に本発明の化合物またはそのプロドラッグ、立体異性体もしくは医薬上許容される塩を投与する工程を含む方法である。
【0027】
本明細書に開示した1つの実施形態は、ホルモン補充療法の方法であって、ホルモン補充療法を必要とする被験者に本発明の化合物またはそのプロドラッグ、立体異性体もしくは医薬上許容される塩を投与する工程を含む方法である。
【0028】
本発明の1つの実施形態である、ホルモン補充療法に対する必要は、外科的もしくは化学的手段による睾丸摘除術によって引き起こされる。
【0029】
本明細書に開示した1つの実施形態は、筋力を改善する方法であって、それを必要とする被験者に本発明の化合物またはそのプロドラッグ、立体異性体もしくは医薬上許容される塩を投与する工程を含む方法である。
【0030】
本発明の1つの実施形態では、筋力における改善の必要は、筋ジストロフィ、筋緊張性ジストロフィ、またはグルココルチコイド療法下の喘息によって引き起こされる。
【0031】
本明細書に開示した実施形態は、骨密度低下、眼球乾燥症、代謝障害、心血管障害、肥満症、および前立腺癌からなる群から選択される状態を予防する方法であって、被験者に本発明の化合物またはそのプロドラッグ、立体異性体もしくは医薬上許容される塩を投与する工程を含む方法を含む。
【0032】
本発明の1つの実施形態では、代謝障害は、脂質代謝異常、アテローム硬化症、および非インスリン依存型糖尿病(NIDDM)からなる群から選択される。1つの実施形態では、心血管障害は、高血圧、冠動脈疾患、および心筋灌流からなる群から選択される。
【0033】
本明細書に開示した実施形態は、生存、機能障害、機能的状態、健康の認識、および機会からなる群から選択される健康関連性クオリティ・オブ・ライフのパラメータを改善する方法であって、被験者に本発明の化合物またはそのプロドラッグ、立体異性体もしくは医薬上許容される塩を投与する工程を含む方法を含む。
【0034】
本明細書に開示した1つの実施形態は、前立腺癌の進行を遅延させる方法であって、それを必要とする患者へ本発明の化合物またはそのプロドラッグ、立体異性体もしくは医薬上許容される塩を投与する工程を含む方法である。
【0035】
本明細書に開示した1つの実施形態は、アンドロゲン受容体を調節する方法であって、前記受容体を本発明の化合物またはそのプロドラッグ、立体異性体もしくは医薬上許容される塩と接触させる工程を含む方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
考察
上述したように、本発明の1つの実施形態では、本発明の化合物のプロドラッグ、代謝産物、立体異性体、および医薬上許容される塩が提供される。
【0037】
「プロドラッグ」は、インビボで親薬物に変換される物質を意味する。プロドラッグは、一部の状況では、それらが親薬物より容易に投与できるので、有用なことが多い。それらは、例えば、経口投与によって生物学的に利用可能であるが、他方親薬物はそうではない。プロドラッグは、さらにまた親薬物に比較して医薬組成物中の改良された溶解性を有することがある。適切なプロドラッグ誘導体を選択および調製するための従来方法は、例えば、参照して本明細書に全体として組み込まれるDesign of Prodrugs,(ed.H.Bundgaard,Elsevier,1985)に記載されている。本明細書で使用するためのプロドラッグの非限定的例には、どちらも参照して本明細書に全体として組み込まれるMahfous,N.H.et al,J.Pharm.Pharmacol,53,841−848(2001)およびBundgaard,H.et al.,J.Med.Chem.,32,2503−2507(1989)に記載された方法などのアルコールの溶解性を促進するプロドラッグが含まれる。
【0038】
用語「プロドラッグエステル」は、生理学的条件下で加水分解される数種のエステル形成基のうちのいずれかの付加によって形成された、本明細書に開示された化合物の誘導体を意味する。プロドラッグエステル基の例には、ピボイルオキシメチル、アセトキシメチル、フタリジル、インダニルおよびメトキシメチル、ならびに(5−R−2−オキソ−l,3−ジオキソレン−4−イル)メチル基を含む当分野において知られている他のそのような基が含まれる。プロドラッグエステル基の他の例は、例えば、T.Higuchi and V.Stella,in 「Pro−drugs as Novel Delivery Systems」,Vol.14,A.C.S.Symposium Series,American Chemical Society(1975);および「Bioreversible Carriers in Drug Design:Theory and Application」,edited by E.B.Roche,Pergamon Press:New York,14−21(1987)(カルボキシル基を含有する化合物に対するプロドラッグとして有用なエステルの例を提供している)の中に見いだすことができる。上記に挙げた参考文献は各々、参照して本明細書に全体として組み込まれる。
【0039】
本発明の化合物の代謝産物には、生物学的環境内へ化合物が導入されると生成される活性種が含まれる。
【0040】
式(I)もしく式(II)の化合物が少なくとも1つのキラル中心を有する場合は、それらはラセミ酸塩またはエナンチオマーとして存在することができる。そのような異性体およびそれらの混合物の全部が本発明の範囲内に含まれることに留意されたい。さらに、式(I)もしくは式(II)の化合物についての結晶形の一部は多形体として存在することができる。そのような多形体は、本発明の1つの実施形態に含まれる。さらに、本発明の化合物の一部は、水(すなわち、水化物)または一般的有機溶媒との溶媒和物を形成することができる。そのような溶媒和物は、本発明の1つの実施形態に含まれる。
【0041】
用語「医薬上許容される塩」は、それが投与される生物への重大な刺激を引き起こさない、そして本化合物の生物活性および特性を排除しない化合物の塩を意味する。一部の実施形態では、塩は本化合物の酸付加塩である。医薬上の塩は、1つの化合物をハロゲン化水素酸(例、塩酸もしくは臭化水素酸)、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸と反応させる工程によって入手できる。医薬上の塩は、1つの化合物を脂肪族もしくは芳香族カルボン酸もしくはスルホン酸、例えば酢酸、コハク酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、ニコチン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸もしくはナフタレンスルホン酸などの有機酸と反応させる工程によっても入手できる。医薬上の塩は、1つの化合物を、アンモニウム塩、例えばナトリウムもしくはカリウム塩などのアルカリ金属塩、例えばカルシウムもしくはマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、例えばジシクロヘキシルアミン、N−メチル−D−グルカミン、tris(ヒドロキシメチル)メチルアミン、C−Cアルキルアミン、シクロヘキシルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミンなどの有機塩基の塩、および例えばアルギニン、リシンなどのアミノ酸との塩を形成するために塩基と反応させる工程によって入手することもできる。
【0042】
医薬調製物の製造が、医薬賦形剤とその塩形にある有効成分とを緊密に混合する工程を含む場合は、非塩基性である医薬賦形剤、すなわち酸性もしくは中性賦形剤を使用することが望ましい場合がある。
【0043】
本発明の1つの実施形態では、本発明の化合物は、単独で、他の化合物と組み合わせて、または本明細書に記載した治療領域において活性である1つまたは複数の他の物質と組み合わせて使用できる。
【0044】
用語「ハロゲン原子」は、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素を意味するが、本明細書ではフッ素および塩素が好ましい。
【0045】
用語「エステル」は、式−(R)−COOR’(式中、RおよびR’は、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール(環状炭素を通して結合)および複素脂環(環状炭素を通して結合)からなる群から独立して選択され、そしてnは0もしくは1である)を備える化学部分を意味する。
【0046】
用語「アミド」は、式−(R)−C(O)NHR’または−(R)−NHC(O)R’(式中、RおよびR’は、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール(環状炭素を通して結合)および複素脂環(環状炭素を通して結合)からなる群から独立して選択され、そしてnは0もしくは1である)を備える化学部分を意味する。アミドは、それによりプロドラッグを形成する、本発明の化合物に付着したアミノ酸またはペプチド分子であってよい。
【0047】
本発明の化合物上の任意のアミン、ヒドロキシ、またはカルボキシル側鎖は、エステル化またはアミド化できる。この目的を達成するために使用できる手段および特定の基は当業者に知られており、本明細書に全体として組み込まれるGreene and Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,3rd Ed.,John Wiley & Sons,New York,NY,1999などの参考文献起源において容易に見いだすことができる。
【0048】
用語「芳香族」は、コンジュゲートしたpi電子系を有する少なくとも1つの環を有しており、炭素環アリール基(例、フェニル)および複素環アリール基(例、ピリジン)のどちらも含む芳香族基を意味する。この用語は、単環式もしくは縮合環多環式(すなわち、隣接炭素原子対を共有する環)基を含む。用語「炭素環」は、1つまたは複数の共有的に閉鎖した環構造を含有しており、その環の主鎖を形成する原子がすべて炭素原子である化合物を意味する。そこでこの用語は、炭素環を、環状主鎖が炭素とは相違する少なくとも1つの原子を含有する複素環から区別する。用語「複素環式芳香族」は、少なくとも1つの複素環を含有する芳香族基を意味する。
【0049】
本明細書で使用する用語「アルキル」は、任意の非分枝状もしくは分枝状の、置換もしくは未置換の飽和炭化水素を意味する。アルキル部分は、分枝状、直鎖状、または環状であってよい。アルキル基は、1〜20個の炭素原子を有していてよい(本明細書で登場する場合は必ず、「1〜20」などの数値範囲は所与範囲内の各整数を意味する;例えば、「1〜20個の炭素原子」は、アルキル基が20個の炭素原子を含むそれまでの1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子などからなる可能性があることを意味するが、本定義はさらにまた数的範囲が指定されていない場合の用語「アルキル」の発生も含む)。アルキル基は、1〜10個の炭素原子を有する中サイズのアルキルであってもよい。アルキル基は、1〜5個の炭素原子を有する低級アルキルの場合もある。アルキル基は、「C−Cアルキル」または類似の名称として示すことができる。例としてのみ、「C−Cアルキル」は、アルキル鎖内に1〜4個の炭素原子があることを意味しており、アルキル鎖は、メチル、エチル、プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、およびt−ブチルからなる群から選択される。
【0050】
アルキル基は、置換であっても未置換であってもよい。置換である場合は、置換基は、置換もしくは未置換のシクロアルキル、置換もしくは未置換のシクロアルケニル、置換もしくは未置換のアリール、置換もしくは未置換のヘテロアリール、置換もしくは未置換のヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクロオキシ、ヘテロアリシクリル、ヒドロキシ、置換もしくは未置換のアルコキシ、置換もしくは未置換のアリールオキシ、アシル、チオール、置換もしくは未置換のチオアルコキシ、アルキルチオ、アリールチオ、シアノ、ハロ、カルボニル、チオカルボニル、アシルアルキル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノアシル、アミノアシルオキシ、オキシアシルアミノ、ケト、チオケト、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、S−スルホンアミド、N−スルホンアミド、C−カルボキシ、O−カルボキシ、イソシアナト、チオシアナト、イソチオシアナト、ニトロ、シリル、トリハロメタンスルホニル、そして一置換および二置換アミノ基を含む置換もしくは未置換アミノ、ならびにそれらの保護された誘導体、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ニトロ−SO−アルキル、−SO−置換アルキル、−SO−アリール、−SO−ヘテロアリール、−SO−アルキル、−SO−置換アルキル、−SO−アリールおよび−SO−ヘテロアリールから個別に、そして独立して選択される1つまたは複数の基である。典型的なアルキル基には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第3級ブチル、ペンチル、ヘキシル、エテニル、プロペニル、ブテニル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが含まれるが、決してそれらに限定されない。置換基が「任意で置換される」と記載される場合は、その置換基は上記の置換基の1つと置換されてよい。
【0051】
本発明の状況では、用語「シクロアルキル」は、炭素原子だけを含む3員、4員、5員、6員、7員、および8員以上の環を含むことが意図されている。シクロアルキルは、任意で、しかし芳香族pi電子系が発生しないような方法で配置された1つまたは複数の不飽和結合を含有することができる。「シクロアルキル」の一部の例は、炭素環であるシクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、1,3−シクロヘキサジエン、1,4−シクロヘキサジエン、シクロヘプタン、もしくはシクロヘプテンである。
【0052】
「アルケニル」部分は、少なくとも2つの炭素原子および少なくとも1つの炭素−炭素二重結合からなる基を意味する。アルケニルは、ポリ不飽和炭化水素を含む、非分枝状もしくは分枝状の、置換もしくは未置換の不飽和炭化水素であってよい。一部の実施形態では、アルケニルは、C−C非分枝状の、モノ不飽和もしくはジ不飽和の未置換炭化水素である。用語「シクロアルケニル」は、好ましくはその環を含む5〜12個の原子を有する、任意の非芳香族炭化水素環を意味する。
【0053】
「アルキン」部分は、少なくとも2つの炭素原子および少なくとも1つの炭素−炭素三重結合からなる基を意味する。
【0054】
単独で登場して数指定を伴わない置換基「R」は、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール(環状炭素を通して結合)およびヘテロアリシクリル(環状炭素を通して結合)からなる群から選択される置換基を意味する。
【0055】
用語「アルコキシ」は、任意の非分枝状もしくは分枝状の、置換もしくは未置換の飽和もしくは不飽和エーテルを意味するが、C−C非分枝状の飽和未置換エーテルが好ましく、メトキシが好ましく、さらにまたジメチル、ジエチル、メチル−イソブチル、およびメチル−tert−ブチルエーテルもまた好ましい。用語「シクロアルコキシ」は、好ましくはその環を含む5〜12個の原子を有する、任意の非芳香族炭化水素環を意味する。
【0056】
「O−カルボキシ」基は、RC(=O)O−基(式中、Rは本明細書に規定した通りである)を意味する。
【0057】
「C−カルボキシ」基は、−C(=O)OR基(式中、Rは本明細書に規定した通りである)を意味する。
【0058】
「アセチル」基は、−C(=O)CH基を意味する。
【0059】
「トリハロメタンスルホニル」基は、XCS(=O)−基(式中、Xはハロゲンである)を意味する。
【0060】
「シアノ」基は、−CN基を意味する。
【0061】
「イソシアナト」基は、−NCO基を意味する。
【0062】
「チオシアナト」基は、−CNS基を意味する。
【0063】
「イソチオシアナト」基は、−NCS基を意味する。
【0064】
「スルフィニル」基は、−S(=O)−R基(式中、Rは本明細書に規定した通りである)を意味する。
【0065】
「S−スルホンアミド」基は、−S(=O)NR基(式中、Rは本明細書に規定した通りである)を意味する。
【0066】
「N−スルホンアミド」基は、RS(=O)NH−基(式中、Rは本明細書に規定した通りである)を意味する。
【0067】
「トリハロメタンスルホンアミド」基は、XCS(O)NR−基(式中、XおよびRは本明細書に規定した通りである)を意味する。
【0068】
「O−カルバミル」基は、−OC(=O)−NR基(式中、Rは本明細書に規定した通りである)を意味する。
【0069】
「N−カルバミル」基は、ROC(=O)NH−基(式中、Rは本明細書に規定した通りである)を意味する。
【0070】
「O−チオカルバミル」基は、−OC(=S)−NR基(式中、Rは本明細書に規定した通りである)を意味する。
【0071】
「N−チオカルバミル」基は、ROC(=S)NH−基(式中、Rは本明細書に規定した通りである)を意味する。
【0072】
「C−アミド」基は、−C(=O)−NR基(式中、Rは本明細書に規定した通りである)を意味する。
【0073】
「N−アミド」基は、RC(=O)NH−基(式中、Rは本明細書に規定した通りである)を意味する。
【0074】
用語「パーハロアルキル」は、水素原子の全部がハロゲン原子によって置換されているアルキル基を意味する。
【0075】
用語「アシルアルキル」は、RC(=O)R’−基(式中、Rは本明細書に規定した通りであり、R’はジラジカルアルキレン基である)を意味する。アシルアルキルの例は、制限なく、CHC(=O)CH−、CHC(=O)CHCH−、CHCHC(=O)CHCH−、CHC(=O)CHCHCH−などを含むことができる。
【0076】
用語「アミノアルキル」は、−RNR’R’’、−RNHR’、および−RNH基(式中、R、R’、およびR’’は独立して本明細書にRとして規定した通りである)からなる群から選択される置換基を意味する。
【0077】
他に特別に指定しない限り、置換基が「任意に置換」されていると見なされる場合は、置換基はモルホリノアルカノエート、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、複素脂環、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、メルカプト、アルキルチオ、アリールチオ、シアノ、ハロ、カルボニル、チオカルボニル、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、S−スルホンアミド、N−スルホンアミド、C−カルボキシ、O−カルボキシ、イソシアナト、チオシアナト、イソチオシアナト、ニトロ、シリル、トリハロメタンスルホニル、ならびに一置換および二置換アミノ基を含むアミノ基、およびそれらの保護された誘導体から個別に、および独立して選択される1つまたは複数の基で置換されてよい基である。上記の置換基の保護誘導体を形成できる保護基は当業者には知られており、上記のGreene and Wutsなどの参考文献の中に見いだすことができる。
【0078】
用語「ヘテロシクリル」は、炭素原子が1〜3個のヘテロ原子と一緒に環を形成する、3員、4員、5員、6員、7員、および8員以上の環を意味することが意図されている。ヘテロシクリルは、任意で、しかし芳香族pi電子系が発生しないような方法で配置された1つまたは複数の不飽和結合を含有することができる。ヘテロ原子は、酸素、硫黄、および窒素から独立して選択される。
【0079】
ヘテロシクリルは、この定義がラクタム、ラクトン、環状イミド、環状チオイミド、環状カルバミン酸塩などのオキソ系およびチオ系を含むことができるように、1つまたは複数のカルボニルもしくはチオカルボニル官能基をさらに含有することができる。
【0080】
ヘテロシクリル環は任意で、二環式もしくは三環式構造を形成するために少なくとも1つの原子が2つ以上の環間で共有される、2つ以上の環を含有する縮合環系であってよい。一部の実施形態では、そのような縮合環系は、ヘテロシクリルの2つの原子間の架橋部分によって形成される。
【0081】
ヘテロシクリル環は、この定義が二環式構造を含むように、任意でアリール環へ縮合させることもできる。典型的には、そのような縮合ヘテロシクリル基は、任意で置換されたベンゼン環と1つの結合を共有している。ベンゾ−縮合ヘテロシクリル基の例には、ベンズイミダゾリジノン、テトラヒドロキノリン、およびメチレンジオキシベンゼン環構造が含まれるが、それらに限定されない。
【0082】
「ヘテロシクリル」の例には、テトラヒドロチオピラン、4H−ピラン、テトラヒドロピラン、ピペリジン、1,3−ジオキシン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキシン、1,4−ジオキサン、ピペラジン、1,3−オキサチアン、1,4−オキサチイン、1,4−オキサチアン、テトラヒドロ−1,4−チアジン、2H−1,2−オキサジン、マレイミド、スクシンイミド、バルビツール酸、チオバルビツール酸、ジオキソピペラジン、ヒダントイン、ジヒドロウラシル、モルホリン、トリオキサン、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン、テトラヒドロチオフェン、テトラヒドロフラン、ピロリン、ピロリジン、ピロリドン、ピロリジオン、ピラゾリン、ピラゾリジン、イミダゾリン、イミダゾリジン、1,3−ジオキソール、1,3−ジオキソラン、1,3−ジチオール、1,3−ジチオラン、イソキサゾリン、イソキサゾリジン、オキサゾリン、オキサゾリジン、オキサゾリジノン、チアゾリン、チアゾリジン、1,3−オキサチオラン、およびアザビシクロ[3.2.1]オクチル(トロパン)などのアザビシクロ系が含まれるが、それらに限定されない。複素環への結合は、ヘテロ原子の位置で、もしくは複素環の炭素原子を介して、またはベンゾ縮合誘導体についてはベンゼノイド環の炭素を介してであってよい。
【0083】
本発明の状況では、用語「アリール」は、炭素環式芳香族環もしくは環系を意味することが意図されている。さらに、用語「アリール」は、少なくとも2つのアリール環、または少なくとも1つのアリールおよび少なくとも1つのC3−8−シクロアルキルが少なくとも1つの化学結合を共有している縮合環系を含む。「アリール」環の一部の例には、任意で置換されたフェニル、ナフタレニル、フェナントレニル、アントラセニル、テトラリニル、フルオレニル、インデニル、およびインダニルが含まれる。用語「アリール」は、環形成炭素原子の1つを介して結合され、例えば任意でヘテロシクリル、ヘテロアリール、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、シアノ、ニトロ、アルキルアミド、アシル、C1−6アルコキシ、C1−6アルキル、C1−6ヒドロキシアルキル、C1−6アミノアルキル、C1−6アルキルアミノ、アルキルスルフェニル、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、スルファモイル、もしくはトリフルオロメチルから選択される1つまたは複数の置換基を有するベンゼノイド基を含む、芳香族基に関する。アリール基は、パラおよび/またはメタ位置で置換されてよい。他の実施形態では、アリール基は、オルト位置で置換されてよい。アリール基の代表的な例には、フェニル、3−ハロフェニル、4−ハロフェニル、3−ヒドロキシフェニル、4−ヒドロキシフェニル、3−アミノフェニル、4−アミノフェニル、3−メチルフェニル、4−メチルフェニル、3−メトキシフェニル、4−メトキシフェニル、4−トリフルオロメトキシフェニル、3−シアノフェニル、4−シアノフェニル、ジメチルフェニル、ナフチル、ヒドロキシナフチル、ヒドロキシメチルフェニル、トリフルオロメチルフェニル、アルコキシフェニル、4−モルホリン−4−イルフェニル、4−ピロリジン−1−イルフェニル、4−ピラゾリルフェニル、4−トリアゾリルフェニル、および4−(2−オキソピロリジン−1−イル)フェニルが含まれるが、それらに限定されない。
【0084】
本発明の状況では、用語「ヘテロアリール」は、芳香族環内の1つまたは複数の炭素原子が窒素、硫黄、および酸素を含む群から選択される1つまたは複数のヘテロ原子と置換されている複素環式芳香族基を意味することが意図されている。
【0085】
さらに、本発明の状況では、用語「ヘテロアリール」は、少なくとも1つのアリール環および少なくとも1つのヘテロアリール環、少なくとも2つのヘテロアリール環、少なくとも1つのヘテロアリール環および少なくとも1つのヘテロシクリル環、または少なくとも1つのヘテロアリール環および少なくとも1つのシクロアルキル環が少なくとも1つの化学結合を共有している縮合環系を含む。
【0086】
用語「ヘテロアリール」は、1個の酸素もしくは硫黄原子または4個までの窒素原子、または1個の酸素もしくは硫黄原子と2個までの窒素原子との組み合わせ、およびそれらの置換された、ならびに例えば環形成炭素原子の1つを介して結合されたベンゾ−およびピリド−縮合誘導体をさらに含有している芳香族C3−8環状基に関すると理解されている。ヘテロアリール基は、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、シアノ、ニトロ、アルキルアミド、アシル、C1−6−アルコキシ、C1−6−アルキル、C−ヒドロキシアルキル、C1−6−アミノアルキル、C1−6−アルキルアミノ、アルキルスルフェニル、アルキルスルフィニル、アルキルスルフォニル、スルファモイル、もしくはトリフルオロメチルから選択される、1つまたは複数の置換基を有することができる。一部の実施形態では、ヘテロアリール基は、上記のリストから選択される、同一であっても相互に相違していてもよい0、1、もしくは2個の置換基を有する5員および6員の芳香族複素環系であってよい。ヘテロアリール基の代表的な例には、フラン、ベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ピロール、ピリジン、インドール、オキサゾール、ベンゾキサゾール、イソキサゾール、ベンズイソキサゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ピラゾール、インダゾール、テトラゾール、キノリン、イソキノリン、ピリダジン、ピリミジン、プリンおよびピラジン、フラザン、1,2,3−オキサジアゾール、1,2,3−チアジアゾール、1,2,4−チアジアゾール、トリアゾール、ベンゾトリアゾール、プテリジン、フェノキサゾール、オキサジアゾール、ベンゾピラゾール、キノリジン、シノリン、フタラジン、キナゾリン、およびキノキサリンの未置換および一置換もしくは二置換誘導体が含まれるが、それらに限定されない。一部の実施形態では、置換基は、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、O−C1−6−アルキル、C1−6−アルキル、ヒドロキシ−C1−6−アルキル、およびアミノ−C1−6−アルキルである。
【0087】
本明細書で使用する用語「精製された」、「実質的に精製された」、および「単離された」は、他の、通常は本発明の化合物がそれらの自然状態においては結び付いている異なる化合物を含んでいない本発明の化合物を意味するので、本発明の化合物は、重量で少なくとも0.5%、1%、5%、10%、もしくは20%、および最も好ましくは少なくとも50%もしくは75%の質量の所与サンプルを含む。
【0088】
合成
本発明の化合物は、以下に記載する方法によって、またはこれらの方法の修飾によって合成することができる。これらの方法を修飾する方法には、特に、温度、溶媒、試薬などが含まれ、当業者には明白である。一般に、化合物を調製するための任意のプロセス中には、関係する任意の分子上の感受性もしくは反応性基を保護することが必要および/または望ましいことがある。これは、どちらも参照して本明細書に全体として組み込まれるProtective Groups in Organic Chemistry(ed.J.F.W.McOmie,Plenum Press,1973);およびGreene & Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,John Wiley & Sons,1991に記載されているような従来型保護基によって達成できる。保護基は、当分野から知られている法法を用いて便宜的なその後の段階に除去することができる。適用できる化合物を合成する際に有用な合成化学変換は当分野において知られており、例えばどちらもこれにより参照して本明細書に全体として組み込まれるR.Larock,Comprehensive Organic Transformations,VCH Publishers,1989,or L.Paquette,ed.,Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis,John Wiley and Sons,1995に記載されたものが含まれる。
【0089】
式(I)および式(II)の化合物は、CおよびC(スキーム1)などのハロ置換芳香族環から出発してハロゲンと適切なアミンDとの塩基触媒芳香族求核性置換によって調製すると一般式I(式中、R、Z、Z、Z、Z、R、R、Y、Yは式(I)および(II)について上記で規定した通りである、またはそれらの適切な前駆体である、そしてXはハロゲン化物を表す)の化合物を得ることができる。このプロセスは、適切な溶媒中、例えばピリジン、DBUなどの適切な塩基を伴うトルエン、アセトニトリル、ベンゼン、ジオキサン、DMSO、THFもしくはDMFなどの非プロトン性溶媒中において、過剰な第2級アミン(塩基として機能することもできる)を用いて実施することができる。反応は、+20℃〜+150℃の間の温度で発生することができる。または、この反応は300℃までの温度においてマイクロ波照射下で実施することもできる。
【化5】

【0090】
または、式(I)もしくは式(II)による化合物は、適切に置換されたハロアリールもしくは擬ハロアリール(例、Br、I−、Cl−、インフレート−、ノナフレート−、トシレート−置換アリール誘導体)上の金属触媒(例、パラジウムもしくはニッケル)もしくはCu触媒(Buchwald et al,Org.Lett.,2002,4,581−584;Kwong & Buchwald,Org.Lett.,2003,5,793−796)求核置換を通してアミンDを導入する工程によって調製できる(Hartwig,Angew.Chem.Int.Ed.,1998,37,2046−2067;Yang & Buchwald,J.Organometallic Chem.,1999,576,125−146;Hartwig in Modern Amination Methods;Ricci,Ed.;Wiley−VCH:Weinheim,Germany,2000)。金属触媒アミン化反応もまた、マイクロ波照射下で実施できる(T.Wang et al.,Org.Lett.,2003,5,897−900);これらはすべて、参照して本明細書に全体として組み込まれる。
【0091】
または、式(I)もしくは式(II)(式中、R、Z、Z、Z、Z、R、R、Y、Yは、上記の式(I)および(II)について規定した通りである、またはそれらの適切な前駆体である、そしてLおよびLは適切な離脱基を表す)による化合物は、スキーム2に示した適切な二官能アルキル化剤を用いて、適切に置換されたアニリンをベースとする誘導体から調製できる。離脱基LおよびLの非限定的例は、ハロゲン原子、例えば、塩素、臭素もしくはヨウ素、またはスルホネート、例えば、トシレートもしくはメシレート、またはこの反応に好都合なまた別の離脱基である。この反応は、便宜的には不活性溶媒中、例えばアセトニトリル中のジイソプロピルエチルアミン、またはN,N−ジメチルホルムアミド中のKCO中において塩基性条件下で試薬を攪拌する工程によって実施される。この反応は、典型的には室温から120℃の間の温度で実施される。
【化6】

【0092】
適切な出発材料は、市販で入手できる、または文献に開示された方法によって調製できる。置換基R、Z、Z、Z、Zならびに任意のRおよびRは各々、文献から知られている方法にしたがって、化合物の調製の任意の適切な段階に個別に導入される。
【0093】
式(I)もしくは式(II)(式中、Rはニトロである)の化合物は、HNO/HSOを用いて文献に明確に記載された伝統的ニトロ化方法によって、または当業者に知られている他の方法によって調製できる。
【0094】
式(I)もしくは式(II)(式中、Z、Z、ZもしくはZはハロゲンである)の化合物は、Brを用いて、文献に記載された伝統的ハロゲン化方法によって、または当業者に知られている他の方法によって調製できる。または、適切に置換されたアニリンをベースとする前駆体は、酢酸もしくはトリフルオロ酢酸中の硝酸ナトリウムを用いるSandmeyer法によってジアゾ化を介してハロ−誘導体へ変換させることができ、次に例えば、ヘキサフルオロリン酸と反応させて結果として生じた塩を分解させると、フルオロ誘導体を得ることができる(W.Adcock et al.,J.Am.Chem.Soc.,1967,89,386−390、これにより参照して本明細書に全体として組み込まれる)。
【0095】
式(I)もしくは式(II)(式中、R、Z、Z、ZもしくはZはシアノである)による化合物であるCONR、もしくはCOORは、対応するヨウ化物、臭化物(Alterman & Hallberg,J.Org.Chem.,2000,65,7984−7989)および塩化物(Sundermeier et al,Angew.Chem.Int.ed,2003,42,1661−1664)からのPd触媒シアン化ならびに臭化アリールおよび塩化アリールのNi媒介性シアン化(Arvela & Leadbeater,J.Org.Chem.,2003,68,9122−9125;これらの参考文献は全部がこれにより参照して本明細書に全体として組み込まれる)によって入手できる。ニトリルは、ハロ誘導体もしくはSandmeyerジアゾ中間体とシアン化第一銅との反応によって入手することもできる。このように入手されたアリールニトリルは、マイクロ波誘導付加環化化学反応によって対応するテトラゾールへ変換させる(Alterman & Hallberg,J.Org.Chem.,2000,65,7984−7989、これにより参照して本明細書に全体として組み込まれる)または対応するカルボン酸へ加水分解させることができる。さらに、カルボン酸残基を有する化合物は、対応するヨウ化アリール、臭化アリールおよびアリールトリフレートからPd触媒ヒドロキシカルボニル化化学反応によって入手することができる(Cacchi et al,Org.Lett,2003,5,4269−4293、これにより参照して本明細書に全体として組み込まれる)。アリールアミド残基を有する化合物は、対応する臭化アリールからPd触媒アミノカルボニル化化学反応によって入手することができる(Wan et al,J.Org.Chem.,2002,67,6232−6235、これにより参照して本明細書に全体として組み込まれる)。カルボン酸は、当分野において明確に記載されている伝統的アシル化反応もしくはカップリング剤法によってアミドへさらに誘導体化することができる。
【0096】
式(I)もしくは式(II)(式中、Z、Z、ZもしくはZは、S(O)もしくはSONRである)による化合物は、濃硫酸、SO、またはクロロスルホン酸を使用することによる直接的アリールスルホン化によって、または塩化スルホニルの加水分解によって調製できる。塩化スルホニルは、塩化第二銅の存在下でジアゾニウム塩へSOを添加することによって入手できる。または、塩化スルホニルは、SOをアリール金属複合体、例えばアリールリチウムもしくはアリールグリニャール試薬へ添加し(スルフィン酸塩を形成する)、次に塩化スルフリルと反応させることによって調製できる。スルホン酸エステルは、スルホニルクロリドとアルコールとの反応によって入手できる。スルホン酸エステルおよびスルホンアミドは、便宜的には塩化スルホニルから調製される。スルホンは、芳香族化合物とハロゲン化スルホニルとのフリーデル−クラフツ(Friedel−Craft)型反応、ハロゲン化アルキルもしくはスルホン酸アルキルとスルフィン酸アリール塩との反応、グリニャール試薬の塩化スルホニルへの添加、またはチオフェノールの酸化によって調製できる。
【0097】
式(I)もしくは式(II)(式中、Z、Z、ZもしくはZはアルコキシもしくはOCORである)による化合物は、典型的には、対応するヒドロキシアリール誘導体からウィリアムソン(Williamson)エーテル合成または以下に記載する方法を用いるアシル化によって調製できる。
【0098】
式(I)もしくは式(II)(式中、Z、Z、ZもしくはZはCORである)による化合物は、対応するヨウ化アリールからPd触媒アシル化化学反応によって調製することができる(Cacchi et al,Org.Lett,2003,5,289−293、これにより参照して本明細書に全体として組み込まれる)。または、それらは対応するアリールからフリーデル−クラフツ化学反応(Read,J.Am.Chem.Soc.,1922,44,1746−1755、参照して本明細書に全体として組み込まれる)によって、またはアリールグリニャール試薬のニトリル(Whitmore et al,J.Am.Chem.Soc.,1947,69,235−237、参照して本明細書に全体として組み込まれる)もしくは塩化アリール(Whitmore & Lester,J.Am.Chem.Soc.,1942,64,1247、参照して本明細書に全体として組み込まれる)への添加によって、またはアリールホウ酸のPd触媒アシル化(Goossen and Ghosh,Angew.Chem.Int.Ed.Engl,2001,40,3458−3460)もしくはRh触媒アシル化(Frost & Wadsworth,Chem.Commun.,2001,22,2316−2317、どちらも参照して本明細書に全体として組み込まれる)によって入手できる。
【0099】
式(I)もしくは式(II)(式中、Z、Z、ZもしくはZは低級アミノアルキル、NHCOR、もしくはNHSOである)による化合物は、市販で入手できるアニリンをベースとする前駆体から入手できる、または例えばRaneyニッケルおよびヒドラジンまたはPdもしくはPt触媒および水素を用いて上記で説明したように調製したニトロ誘導体から還元によって入手できる。または、アミノアルキル基は上述した方法(スキーム1)と同一方法にしたがって、または還元アミン化(Emerson & Walters,J.Am.Chem.Soc.,1938,60,2023;Milovic et al,Synthesis,1991,11,1043−1045、どちらも参照して本明細書に全体として組み込まれる)、または脱水アルキル化(Rice & Kohn,J.Am.Chem.Soc.,1955,77,4052;Brown & Reid,J.Am.Chem.Soc.,1924,46,1838、どちらも参照して本明細書に全体として組み込まれる)によって導入できる。さらに、このタイプの化合物は、対応するホウ酸からCu触媒カップリング(Antilla & Buchwald,Org.Lett.,2001,3,2077−2079、これにより参照して本明細書に全体として組み込まれる)によって合成することもできる。アミノ基は、さらに、アルキル化、アシル化(Wolf,Liebigs Ann.Chem.,1952,576,35;Yasukara et al,J.Chem.Soc.Perkin Trans.1,2000,17,2901−2902;Nigam & Weedon,J.Chem.Soc.,1957,2000、それらの全部がこれにより参照して本明細書に全体として組み込まれる)、ホルミル化(Hirst & Cohen,J.Chem.Soc.,1895,67,830;Olah & Kuhn,Chem.Ber.1956,89,2211;Guthrie et al,Can.J.Chem.,1993,71,2109−2122、それらの全部がこれにより参照して本明細書に全体として組み込まれる)またはスルホニル化によって誘導体化できる。または、アミド置換基を有する化合物は、適切なハロもしくは擬ハロ前駆体からPd触媒(Yin & Buchwald,J.Am.Chem.Soc.,2002,124,6043−6048、これにより参照して本明細書に全体として組み込まれる)もしくはCu触媒アミド化化学反応(Buchwald et al,J.Am.Chem.Soc.,2002,124,7421−7428、これにより参照して本明細書に全体として組み込まれる)のいずれかによって入手できる。
【0100】
式(I)もしくは式(II)(式中、Z、Z、ZもしくはZはSRである)による化合物は、適切なハロもしくは擬ハロ前駆体からPd触媒(Li,J.Org.Chem.,2002,67,3643−3650、これにより参照して本明細書に全体として組み込まれる)もしくはCu触媒チオエーテル化化学反応(Kwong & Buchwald,Org.Lett.,2002,4,3517−3520、これにより参照して本明細書に全体として組み込まれる)によって入手できる。または、これらの化合物は、対応するアリールチオール前駆体のアルキル化(Vogel,J.Chem.Soc.,1948,1809;Landini & Rocca,Synthesis,1974,565−566;Bun−Hoi et al,J.Org.Chem.,1951,16,988、それらの全部がこれにより参照して本明細書に全体として組み込まれる)によって調製できる。または、アルキルアリールスルファニルは、ベンゼンチオールおよびアルケンの照射によって入手できる(Screttas and Micha−Screttas,J.Org.Chem.,1978,43,1064−1071、これにより参照して本明細書に全体として組み込まれる)。
【0101】
さらに、臭化アリールおよびヨウ化アリールから出発して、アルキルリチウムおよびアルキルグリニャール試薬を用いて、ハロゲン−金属交換化学反応を利用すると、アルキル、−Si(R)、−CHO、−COOH、−CN、−SON(R)、−SR、−B(OR)、−Sn(R)、−ZnX(式中、X=Br、Cl)などの広範囲の求電子物質を導入することができる。
【0102】
一般に、アミンもしくはアルコール官能基は、さらにスキーム3においてアミンもしくはアルコールKによって例示したように、アミドを得るために誘導体化する、例えば任意のカルボン酸ハロゲン化物、例えば塩化物、またはカルボン酸無水物を用いてアシル化することができるが、Rおよびアリールは式(I)もしくは式(II)(式中、ZはOH、NH、NHR、もしくはSHである;ZはO、NH、NR、もしくはSである;ZはOもしくはSである;Xはハロゲン化物を表す)にしたがって規定されており、そしてRは式(I)もしくは式(II)にしたがって規定されている。この反応は、典型的には過剰のアシル化剤、および例えば不活性溶媒、例えばジクロロメタン中の適切な塩基、例えば、トリエチルアミンもしくはジイソプロピルエチルアミンを用いて、0℃から室温の間の温度で乾燥条件下において実施される。カルボン酸ハロゲン化物およびカルボン酸無水物の代替物として、カルボン酸および適切なカップリング試薬、例えばPyBroP、DCCもしくはEDCIを用いてアミン/アルコールをアシル化できる。この反応は、典型的には過剰のアシル化剤、および例えば不活性溶媒、例えばジクロロメタン中のカップリング試薬を用いて、0℃〜100℃の間の温度で乾燥条件下において実施される。
【化7】

【0103】
または、アミンもしくはアルコール官能基は、T−Lなどの適切なアルキル化剤を用いてアルキル化できる。離脱基Lは、適切にはハロゲン原子、例えば、塩素、臭素もしくはヨウ素、またはスルホン酸塩、例えば、トシレートもしくはメシレート、またはこの反応に好都合なまた別の離脱基である。この反応は、便宜的には不活性溶媒中、例えばアセトニトリル中のジイソプロピルエチルアミン、またはN,N−ジメチルホルムアミド中のKCO中において塩基性条件下で試薬を攪拌する工程によって実施される。この反応は、典型的には室温から80℃の間の温度で実施される。
【0104】
さらに、スキーム4においてトロパノン誘導体Gによって例示されたケトンは、第1級もしくは第2級アミンHNR(式中、R、Rおよびアリールは式(I)もしくは式(II)にしたがって規定されている)を用いて還元アミン化によって修飾できる。
【0105】
または、同一方法を使用して、アミンJによって例示される第1級もしくは第2級アミンを修飾することができる(スキーム4)。この反応は、便宜的にはメタノールもしくはエタノールなどの不活性溶媒中の反応物を攪拌することによって実施される。還元剤としては、固体支持ホウ化水素、NaBH、NaCNBH、BH−ピリジン、H/Pd−C、または固体支持試薬を含む任意の関連試薬を使用できる。この反応は、典型的には室温で実施されるが、低反応性カルボニル化合物は還元剤添加前に水分の除去下でより高温および/または対応するイミンの予備形成を必要とすることがある。
【化8】

【0106】
さらに、スキーム5においてトロパノン誘導体Gによって例示されたケトンをグリニャールもしくはリチウム試薬などの広範囲の有機金属試薬と反応させるとKなどの誘導体を得ることができるが、Rおよびアリールは式(I)もしくは式(II)にしたがって規定されている。グリニャール反応は、典型的にはTHFなどの溶媒中で実施され、そして一部の場合には無水酸塩化セリウム添加は反応収率を改善することができる。
【0107】
または、トロパノンGによって例示されるケトン(スキーム5)は、0〜40℃の温度でジメチルスルホキシドなどの不活性溶媒中で水素化ナトリウムなどの塩基の添加によって、ヨウ化トリメチルスルホキソニウムもしくはヨウ化トリメチルスルホニウムから生成したジメチルスルホキソニウムメチライドおよびジメチルスルホニウムメチライドなどの硫黄イリドと反応させると、エポキシドLへ変換することができる。または、ケトンGは、ヴィッティヒ(Wittig)もしくはワズワース・ホーナー・エモンズ(Wadsworth−Horner−Emmons)反応によって、Tebbeオレフィン化によってオレフィンに変換させることができる。次にこうして入手されたアルケンは、ヒドロペルオキシドもしくはMCPBAなどの酸化試薬を用いた処置によって対応するエポキシドに変換させることができる。誘導体Lなどのエポキシドは、さらにシアン化物、アルコキシド、アミン、有機金属試薬などの広範囲の求核試薬、または塩基との処理によりアミドもしくはスルホンアミド誘導体から誘導されたカルバニオンとの反応によって誘導体化すると、誘導体M1−M5(式中、R、R、R、Nuおよびアリールは式(I)もしくは式(II)にしたがって規定されている)によって例示される第3級アルコールが得られる。所定の反応は、イッテルビウムトリフレートもしくは三フッ化ホウ素エーテル化合物などのルイス酸触媒の添加によって促進できる。さらに、エポキシドは、LiAlH、NaBH/LiCl、Superhydride、ボランなどの還元剤を用いて第3級アルコールへ還元することができる、触媒水素化または固体支持試薬を含む任意の関連試薬を使用できる。この反応は、典型的には、THF、ジエチルエーテル、もしくはdiglymeなどの溶媒中において0〜100℃の温度で実施できる。
【化9】

【0108】
さらに、環Aもしくはフェニル部分上の置換基の導入は、合成経路の任意の段階で発生することができるので、そこで環Aを最初に調製し、そのアミン官能をスキーム6に示したように合成の後の工程において適切なフェニル前駆体と反応させるが、トロパン誘導体Pは式(I)もしくは式(II)に規定した環Aを例示している。アミン官能は、Boc、CBz、ベンジル、p−メトキシベンジルなどの一過性保護基(PG)を必要とすることがある。
【化10】

【0109】
式(I)もしくは式(II)の化合物を調製するためのプロセスが立体異性体の混合物を発生させる場合は、そのような異性体は、分取キラル・クロマトグラフィなどの従来型技術によって分離することができる。化合物はラセミ形で調製できる、または個別エナンチオマーは立体選択的合成もしくは分解によって調製できる。化合物は、(−)−ジ−p−トルオイル−d−酒石酸および/または(+)−ジ−p−トルオイル−1−酒石酸などの光学活性酸を用いた塩形成によるジアステレオマー対の形成、その後の分別結晶化および遊離塩基の再生などの標準技術によってそれらの成分エナンチオマーに分解できる。化合物は、さらにまたキラル補助基を用いてエステル、アミドもしくはケタールなどのジアステレオマー誘導体の形成、その後のクロマトグラフィ分離およびキラル補助基の除去によって分解することもできる。
【0110】
使用方法
本発明の実施形態では、本発明の化合物は、アンドロゲン受容体の活性を調節することができる。
【0111】
用語「調節する」は、本明細書に開示した化合物がアンドロゲン受容体の機能を変化させる能力を意味する。モジュレータは、アンドロゲン受容体の活性を活性化することができる、アンドロゲン受容体に曝露させた化合物の濃度に依存してアンドロゲン受容体の活性を活性化もしくは阻害することができる、またはアンドロゲン受容体の活性を阻害することができる。用語「変調する」は、アンドロゲン受容体と天然結合パートナーとの間で複合体が形成される確率を増加または減少させることによってアンドロゲン受容体の機能を変化させることも意味する。モジュレータは、そのような複合体がアンドロゲン受容体と天然結合パートナーとの間で形成される確率を増加させる、アンドロゲン受容体に曝露した化合物の濃度に依存してアンドロゲン受容体と天然結合パートナーとの間で複合体が形成される確率を増加もしくは減少させる、またはアンドロゲン受容体と天然結合パートナーとの間で複合体が形成される確率を減少させることができる。アンドロゲン受容体の調節は、その開示がこれにより本明細書に全体として組み込まれる米国特許第5,707,798号に記載されたように受容体の選択および増幅技術(R−SAT)を用いて評価することができる。
【0112】
用語「活性化する」は、アンドロゲン受容体の細胞機能を増加させることを意味する。用語「阻害する」は、アンドロゲン受容体の細胞機能を減少させることを意味する。アンドロゲン受容体の機能は、天然結合パートナーとの相互作用または触媒活性であってよい。
【0113】
本明細書で使用する用語「接触させる工程」は、本明細書に開示した化合物および標的アンドロゲン受容体を、その化合物がアンドロゲン受容体の活性に、直接的に;すなわちアンドロゲン受容体自体との相互作用させることによって、または間接的に;すなわちアンドロゲン受容体の活性が依存するまた別の分子と相互作用させることによって影響を及ぼせるような方法で、結合させることを意味する。そのような「接触させる工程」は、試験管、ペトリ皿などの中で遂行できる。試験管内では、接触させる工程は化合物および当該のアンドロゲン受容体だけを含むことができる、または細胞全体を含むことができる。細胞は、さらにまた細胞培養皿内で維持もしくは増殖させ、その環境内で化合物と接触させることができる。この状況では、特定化合物がアンドロゲン受容体関連性障害に影響を及ぼす能力;すなわち、化合物のIC50は、より複雑な生物を用いてインビボでの化合物の使用が試みられる前に決定することができる。生物の体外の細胞については、アンドロゲン受容体を化合物と接触させるための、直接細胞マイクロインジェクション法および極めて多数の膜貫通担体技術を含むがそれらに限定されない多数の方法が存在しており、当業者には周知である。用語「接触させる工程」は、さらに本明細書に開示した化合物を標的アンドロゲン受容体とインビボで接触させる工程を意味することができる。そこで、本明細書に開示した化合物、またはそのプロドラッグが生物に投与されて化合物が生物内のアンドロゲン受容体と結合されると、そのような接触させる工程は、本開示の範囲内に含まれる。
【0114】
本発明の1つの実施形態では本発明の化合物はアンドロゲン受容体のアゴニストであってよいが、他の実施形態では本化合物はアンドロゲン受容体のアゴニストであってよい。本発明の1つの実施形態では、本化合物はアンドロゲン受容体の部分アゴニストであってよい。部分アゴニストである化合物は、一部の場合には受容体の部分活性化因子であってよいが、他の場合には受容体の部分リプレッサであってよい。本発明の実施形態では、本化合物は組織特異的モジュレータであってよいが、他の状況では、本化合物は遺伝子特異的モジュレータであってよい。
【0115】
本発明の1つの実施形態では、アンドロゲン受容体は、それと式(I)もしくは式(II)の化合物とを接触させる工程によって活性化される。アンドロゲン受容体を接触させる工程は、インビボまたはインビトロであってよい。受容体がインビボで接触させられる場合は、接触させる工程は、受容体を含有する生きている被験者へ本化合物を投与する工程によって遂行できる。一部の実施形態では、生きている被験者は患者である。本発明の1つの実施形態では、患者は哺乳動物であってよい。哺乳動物は、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、イヌ、ネコ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、例えばサル、チンパンジー、および類人猿、ならびにヒトなどの霊長類からなる群から選択できる。本発明の1つの実施形態では、患者はヒトであってよい。
【0116】
本発明の1つの実施形態では、本発明の化合物は、患者へその患者における状態を治療するために投与できる。そのような状態には、制限なく、性腺機能低下症、正常値より低い血漿中テストステロンレベル、不妊症、性覚醒障害、性オルガスム障害、性欲障害、悪液質に起因する筋肉疲労、HIV疲労、もしくは臨界的疾患、サルコペニア、虚弱、低身長症、矮小発育症、骨密度低下、例えば幸福感の欠如、活気の欠如、怒り、被刺激性、哀しみ、疲労、神経質、抑うつを含む気分障害、言語の流ちょうさや空間的記憶を含む認知機能不全、例えばアルツハイマー病、軽度認知不全(MCI)、ルイス体認知症、および前頭側頭型認知症を含む神経変性障害、眼球乾燥症、例えば脂質代謝異常、アテローム硬化症、および非インスリン依存型糖尿病(NIDDM)を含む代謝障害、例えば、高血圧、冠動脈疾患、および心筋灌流を含むがそれらに限定されない心血管障害、肥満症、貧血、前立腺癌、および統合失調症が含まれる。本発明の1つの実施形態では、本発明の化合物は、患者へその患者における状態を予防するために投与できる。予防される状態には、制限なく、骨密度低下;眼球乾燥症;脂質代謝異常、アテローム硬化症、および非インスリン依存型糖尿病(NIDDM)を含む代謝異常;高血圧、冠動脈疾患、および心筋灌流を含む心血管障害;肥満症;および前立腺癌が含まれる。
【0117】
本発明の1つの実施形態では、本発明の化合物は、男性患者における所定の状態を治療する際に有効である。そこで、本化合物は、1つまたは複数の状態を治療するために男性患者へ投与できる。男性において治療される状態には、制限なく、不妊症、勃起機能不全、男性休止、および性欲障害が含まれる。本発明の1つの実施形態では、本発明の化合物は、男性患者へその男性患者における精子形成を調節するために投与できる。
【0118】
本発明の1つの実施形態では、本発明の化合物は、女性患者における所定の状態を治療する際に有効である。そこで、本化合物は、1つまたは複数の状態を治療するために女性患者へ投与できる。女性において治療される状態には、制限なく、子宮内膜症、性交疼痛症、膣痙、性的刺激障害、および性オルガスム障害が含まれる。
【0119】
本発明の1つの実施形態では、本発明の化合物は、患者へホルモン補充療法を行うために投与できる。
【0120】
本発明の1つの実施形態では、本発明の化合物は、患者へ筋力を改善するために投与できる。例えば、本化合物は、筋ジストロフィ、筋緊張性ジストロフィ、またはグルココルチコイド治療下の喘息に起因する筋力の改善を必要とする場合に投与できる。
【0121】
本発明の1つの実施形態では、本発明の化合物は、患者へ生存、機能障害、機能状態、健康の認識、および機会などの健康に関連するクオリティ・オブ・ライフのパラメータを改善するために投与できる。
【0122】
本発明の1つの実施形態では、本発明の化合物は、前立腺癌に罹患している男性患者へ前立腺癌の進行を遅延させるために投与できる。
【0123】
医薬組成物
本発明の実施形態は、生理学的に許容される界面活性剤、担体、希釈剤、賦形剤、平滑化剤、懸濁化剤、フィルム形成物質、およびコーティング助剤、またはそれらの組み合わせと、本明細書に開示した化合物とを含む医薬組成物に関する。治療使用のために許容される担体または希釈剤は、製薬分野において周知であり、例えば、参照して本明細書に全体として組み込まれるRemington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.,Mack Publishing Co.,Easton,PA(1990)に記載されている。医薬組成物中には、保存料、安定剤、色素、甘味料、芳香剤、フレーバー剤などを提供できる。例えば、安息香酸ナトリウム、アスコルビン酸およびp−ヒドロキシ安息香酸のエステルを保存料として添加できる。さらに、酸化防止剤および懸濁化剤を使用できる。アルコール、エステル、硫化脂肪族アルコールなどは界面活性剤として使用できる;スクロース、グルコース、ラクトース、デンプン、結晶質セルロース、マンニトール、軽無水ケイ酸塩、アルミン酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウム、リン酸水素カルシウム、カルボキシメチルセルロースカルシウムなどは賦形剤として使用できる;ステアリン酸マグネシウム、タルク、硬化油などは平滑化剤として使用できる;ヤシ油、オリーブ油、ゴマ油、落花生油、大豆は、懸濁化剤もしくは潤滑剤として使用できる;セルロースもしくは糖などの炭水化物の誘導体としての酢酸フタル酸セルロースまたはポリビニルの誘導体としてのメチルアセテート−メタクリレートコポリマーは、懸濁剤として使用できる;ならびにフタル酸エステルなどの可塑剤は懸濁剤として使用できる。
【0124】
用語「医薬組成物」は、本明細書に開示した化合物と希釈剤もしくは担体などの他の化学構成成分との混合物を意味する。医薬組成物は、生物への化合物の投与を促進する。当分野には、経口、注射、エーロゾル、非経口、および局所投与を含むがそれらに限定されない、化合物を投与する多数の技術が存在する。医薬組成物は、さらにまた化合物を塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸などの無機酸もしくは有機酸と反応させる工程によって入手することもできる。
【0125】
用語「担体」は、細胞もしくは組織内へ化合物を組み込むことを促進する化学化合物を規定する。例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)は、生物の細胞もしくは組織内への多数の有機化合物の取り込みを促進するので、一般に利用された担体である。
【0126】
用語「希釈剤」は、当該の化合物を溶解させる、ならびに本化合物の生物活性形を安定化させる水に希釈された化学化合物を規定する。緩衝液中に溶解された塩は、当分野における希釈剤として利用される。一般に使用される1つの緩衝液は、ヒト血液の塩状態を模倣するので、リン酸緩衝食塩液である。緩衝食塩液は低濃度にある溶液のpHを制御できるので、緩衝希釈剤が化合物の生物活性を修飾することはめったにない。
【0127】
用語「生理学的に許容される」は、化合物の生物活性および特性を無効にしない担体または希釈剤を規定する。
【0128】
本明細書に記載した医薬組成物は、ヒト患者へそれ自体で、または併用療法におけるように他の有効成分と、あるいは適切な担体もしくは賦形剤と混合されている医薬組成物中で投与することができる。本出願の化合物を調製および投与するための技術は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences,」 Mack Publishing Co.,Easton,PA,18th edition,1990の中に見いだすことができる。
【0129】
適切な投与経路は、例えば、経口、直腸、経粘膜、局所、もしくは経腸投与;筋肉内、皮下、静脈内、髄内注射、ならびに気管内、直接脳室内、腹腔内、鼻腔内、もしくは眼内注射を含む非経口投与を含むことができる。これらの化合物は、持効性および/または定時、所定速度でのパルス投与するためのデポー注射、浸透圧ポンプ、ピル剤、経皮(電気輸送を含む)パッチなどを含む持続性もしくは徐放性製剤形で投与することもできる。
【0130】
本発明の医薬組成物は、例えば従来型混合、溶解、顆粒化、糖衣錠作製、ゲル化、乳化、カプセル封入、エントラップもしくは錠剤化プロセスによるそれ自体は知られている方法で製造できる。
【0131】
そこで本発明によって使用するための医薬組成物は、活性化合物を医薬上使用できる製剤に処理する工程を促進する賦形剤および補助剤を含む1つまたは複数の生理学的に許容される担体を用いて、従来型方法で調製することができる。適正な調製は、選択される投与経路に依存する。任意の周知の技術、担体、および賦形剤は適切に、そして当分野において理解されているように使用することができる;例えば上記のRemington’s Pharmaceutical Sciencesを参照。
【0132】
注射剤は、液状溶液もしくは懸濁液、注射前の液体中の溶液もしくは懸濁剤として適切な固体形、またはエマルジョンのいずれかとして従来型形状で調製できる。適切な賦形剤は、例えば、水、食塩液、デキストロース、マンニトール、ラクトース、レシチン、アルブミン、グルタミン酸ナトリウム、塩酸システインなどである。さらに、所望であれば、注射用医薬組成物は、湿潤剤、pH緩衝剤などの微量の非毒性補助物質を含有していてよい。生理学的に適合するバッファには、ハンクス液、リンゲル液、または生理的緩衝食塩液が含まれるが、それらに限定されない。所望であれば、吸収強化製剤(例えば、リポソーム)を利用できる。
【0133】
経粘膜投与のために、浸透させるべき障壁に適切な浸透剤を製剤中において使用できる。
【0134】
例えばボーラス注射もしくは持続注入による非経口投与のための医薬製剤は、水溶形にある活性化合物の水溶液が含まれる。さらに、活性化合物の懸濁液は、適切な油性注射懸濁液として調製できる。適切な脂肪親和性溶媒もしくはビヒクルには、ゴマ油などの脂肪油、または大豆、グレープフルーツもしくはアーモンド油などの他の有機油、またはオレイン酸エチルもしくはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、またはリポソームが含まれる。水性注射懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、もしくはデキストランなどの懸濁液の粘度を増加させる物質を含有していてよい。任意で、懸濁液は、高濃縮液の調製を可能にするために化合物の溶解度を増加させる適切な安定剤もしくは物質をさらに含有していてよい。注射用製剤は、例えばアンプル剤、または保存料が添加された複数回投与容器中の単位製剤形で提示できる。組成物は、油性もしくは水性ビヒクル中の懸濁剤、液剤またはエマルジョンなどの形態を取ることができ、そして懸濁化剤、安定剤および/または分散剤などの調剤用物質を含有することができる。または、有効成分は、適切なビヒクル、例えば無菌発熱物質無含有水を用いて使用前に構成するための粉末形にあってよい。
【0135】
経口投与するためには、本化合物は活性化合物を当分野において周知の医薬上許容される担体と結合させることによって容易に調製できる。そのような担体は、本発明の化合物を治療対象の患者が経口摂取するために錠剤、ピル剤、糖衣錠、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁剤などとして調製することを可能にする。経口使用するための医薬製剤は、有効化合物を個体賦形剤と結合させ、結果として生じた混合物を任意で粉砕し、そして錠剤もしくは糖衣錠コアを入手するために所望であれば適切な補助剤を添加した後に、顆粒の混合物を処理加工することによって入手できる。適切な賦形剤は、特別には、ラクトース、スクロース、マンニトール、もしくはソルビトールを含む糖;例えばトウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および/またはポリビニルピロリドン(PVP)などのセルロース調製物などの充填剤である。所望であれば、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、もしくはアルギン酸またはアルギン酸ナトリウムなどのその塩などの崩壊剤を添加できる。糖衣錠コアには、適切なコーティングが提供される。このための、任意でアラビアガム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポルゲル(carbopol gel)、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー液、ならびに適切な有機溶媒もしくは溶媒混合液を含有していてよい糖濃縮液を使用できる。活性化合物用量の様々な組み合わせを同定または特性付けるために、錠剤もしくは糖衣錠コーティングへ染料もしくは色素を添加できる。このための、任意でアラビアガム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポルゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー液、ならびに適切な有機溶媒もしくは溶媒混合液を含有していてよい糖濃縮液を使用できる。活性化合物用量の様々な組み合わせを同定または特性付けるために、錠剤もしくは糖衣錠コーティングへ染料もしくは色素を添加できる。
【0136】
経口で使用できる医薬製剤は、ゼラチンから製造された押しばめカプセル、ならびにゼラチンとグリセロールもしくはソルビトールなどの可塑剤から製造された軟質の密封カプセルが含まれる。押しばめカプセルは、ラクトースなどの充填剤、デンプンなどの結合剤、および/またはタルクもしくはステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、および任意で安定剤との混合物中に有効成分を含有することができる。軟質カプセル中では、有効化合物は、脂肪油、流動パラフィン、または液状ポリエチレングリコールなどの適切な液体中に溶解または懸濁させることができる。さらに、安定剤を添加できる。経口投与のための全調製物は、そのような投与のために適合する用量であってよい。
【0137】
口腔投与のためには、本組成物は、従来型方法で調製された錠剤またはトローチ剤の形状を取ることができる。
【0138】
吸入による投与のためには、本発明により使用するための化合物は、便宜的には適切な推進剤、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素もしくは他の適切な気体を使用して、加圧パックもしくはネブライザからのエーロゾルスプレーの形状で送達される。加圧エーロゾルの場合には、用量単位は、計量された量を送達するための弁を提供することによって決定できる。例えば、インヘラもしくはインサフレータ内で使用するためのゼラチンのカプセルおよびカートリッジは、本化合物とラクトースもしくはデンプンなどの適切な粉末ベースの粉末ミックスを含有するように調製できる。
【0139】
さらに、本明細書では、眼内、鼻腔内、および耳介内送達を含む使用のために製薬分野において周知の様々な医薬組成物が開示される。これらの使用のために適合する浸透剤は、当分野において一般に知られている。眼内送達用の医薬組成物には、点眼薬などの水溶性形態、またはゲランガム(Shedden et al.,Clin.Ther.,23(3):440−50(2001))もしくはヒドロゲル(Mayer et al.,Ophthalmologica,210(2):101−3(1996));眼軟膏;液状担体媒質中に懸濁させた微粒子、薬物含有小ポリマー粒子などの眼懸濁剤(Joshi,A.,J.Ocul.Pharmacol,10(l):29−45(1994))、脂質溶解性調製物(Aim et al.,Prog.Clin.Biol.Res.,312:447−58(1989))、およびミクロスフェア(Mordenti,Toxicol.Sci.,52(1):101−6(1999));ならびに眼用インサートが含まれる。上記に挙げた参考文献は全部、参照して本明細書に全体として組み込まれる。そのような適切な医薬調製物は、最も頻回には、そして好ましくは無菌で、等張性で調製され、そして安定性および快適さのために緩衝される。鼻腔内送達用の医薬組成物は、ドロップ剤および正常繊毛作用の維持を保証するために多くの点で鼻分泌を刺激するために調製されることが多いスプレーを含むことができる。参照して本明細書に全体として組み込まれるRemington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.,Mack Publishing Co.,Easton,PA(1990)に開示されており、当業者には周知のように、適切な調製物は、最も頻回かつ好ましくは等張性で、5.5〜6.5のpHを維持するために緩衝されており、そして最も頻回かつ好ましくは抗菌性保存料および適切な薬物安定剤を含む。耳介内送達用の医薬調製物には、耳の中に局所投与するための、懸濁剤および軟膏が含まれる。そのような耳介用調製物のための一般的溶媒には、グリセリンおよび水が含まれる。
【0140】
本化合物は、例えばカカオ脂もしくは他のグリセリドなどの従来型坐剤ベースを含有する、坐剤もしくは停留浣腸などの直腸組成物で調製することもできる。
【0141】
上記に記載した調製物に加えて、本化合物は、デポー製剤として調製することもできる。そのような持効性調製物は、植え込み(例えば、皮下もしくは筋肉内)または筋肉内注射によって投与できる。そこで、例えば、本化合物は適切なポリマーもしくは疎水性材料(例えば許容される油中のエマルジョン)もしくはイオン交換樹脂を用いて、または難溶性誘導体、例えば難溶性塩として調製できる。
【0142】
疎水性化合物については、適切な医薬担体は、ベンジルアルコール、非極性界面活性剤、水混和性有機ポリマー、および水相を含む補助溶媒系であってよい。使用される一般的補助溶媒系は、無水エタノール中で容量まで作製される3%(w/v)のベンジルアルコール、8%(w/v)の非極性界面活性剤Polysorbate 80(商標)、および65%(w/v)のポリエチレングリコール300の溶液であるVPD補助溶媒系である。当然ながら、補助溶媒系の比率は、その溶解度を破壊せず、毒性特性を伴わなければ相当に大きく変動してよい。さらに、補助溶媒構成成分の同一性は変動してよい。例えば、他の低毒性非極性界面活性剤をPOLYSORBATE 80(商標)の代わりに使用できる;ポリエチレングリコールの分画サイズは変動してよい;他の生体適合性ポリマー、例えばポリビニルピロリドンがポリエチレングリコールに代わってよい;および他の糖および他の多糖がデキストロースと置換されてもよい。
【0143】
または、疎水性医薬化合物のための他の送達系を使用できる。リポソームおよびエマルジョンは、疎水薬物のための送達用ビヒクルもしくは担体の周知の例である。ジメチルスルホキシドなどの所定の有機溶媒もまた使用できるが、通常は相当に大きな毒性という犠牲を伴う。さらに、本化合物は、治療物質を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスなどの徐放系を用いて送達できる。様々な徐放性物質は確立されており、当業者には周知である。徐放性カプセルは、それらの化学的性質に依存して、数週間から100日間までにわたり本化合物を遊離することができる。治療用試薬の化学的性質および生物学的安定性に依存して、タンパク質安定化のための追加の戦略を使用できる。
【0144】
細胞内に投与することが意図された物質は、当業者に周知の技術を用いて投与することができる。例えば、そのような物質はリポソーム内へカプセル封入することができる。リポソーム形成時点に水溶液中に存在する全分子は、水性内部中に組み込まれる。リポソーム内容物は、外部ミクロ環境から保護される、そしてリポソームは細胞膜と融合するので、効果的に細胞質中に送達される。リポソームは、組織特異的抗体でコーティングできる。リポソームは、所望の器官へ標的化され、所望の器官へ選択的に取り込まれる。または、疎水性有機小分子は、細胞内に直接的に投与できる。
【0145】
医薬組成物中には、追加の治療用もしくは診断用物質を組み込むことができる。または、もしくは追加して、医薬組成物は、他の治療用もしくは診断用物質を含有する他の組成物と結合することができる。
【0146】
投与方法
本発明の化合物もしくは医薬組成物は、患者へ任意の適切な手段によって投与できる。投与方法の非限定的例には、特に、本発明の化合物を生体組織と接触させるために当業者が適切と判断するように、(a)その投与がカプセル剤、錠剤、顆粒剤、スプレー剤、シロップ剤などのそのような形状での投与を含む経口経路を通しての投与;(b)その投与が水性懸濁液、油性製剤などまたはドリップ剤、スプレー剤、坐剤、塗剤、軟膏などとしての投与を含む、経直腸、経膣、子宮内、眼内、鼻腔内、もしくは耳介内などの非経口経路を通しての投与;(c)注入ポンプ送達を含む、注射、皮下、腹腔内、静脈内、筋肉内、皮内、眼窩内、関節包内、脊髄内、胸骨内などによる投与;(d)例えばデポー植え込みによるなどの直腸もしくは心臓領域における直接的注射によるなどの局部的投与;ならびに(e)局所的投与が含まれる。
【0147】
投与するために適切な医薬組成物には、その意図された目的を達成するために有効な量で有効成分が含有されている組成物が含まれる。本明細書に開示した化合物の1回の用量として必要とされる治療有効量は、投与経路、ヒトを含む治療される動物のタイプ、および考察下の特定動物の身体的特性に左右される。しかし所望の作用を達成するために調製できる用量は、当業者が認識する体重、食物、併用投薬などの要素およびその他の要素に左右される。より詳細には、治療有効量は、治療される被験者の疾患の症状を予防、緩和もしくは改善する、または生存期間を延長するために有効な化合物の量を意味する。治療有効量の決定は、特に本明細書に提供した詳細な開示に照らすと、明確に当業者の能力の範囲内にある。
【0148】
当業者には容易に明白になるように、インビボで有用な投与すべき用量および特定投与様式は、治療される哺乳動物の年齢、体重および種、使用される特定化合物、ならびにこれらの化合物がそのために使用される特定の使用に依存して変動する。所望の結果を達成するために必要な用量レベルである有効用量レベルの決定は、当業者であればルーチンの薬理学的方法を用いて実施できる。典型的には、生成物のヒトへの臨床適用は、低用量レベルで開始され、所望の効果が達成されるまで用量レベルは増加させられる。または、許容されるインビトロ試験を使用すると、確立された薬理学的方法を用いて本方法によって同定された組成物の有用な用量および投与経路を確立することができる。
【0149】
非ヒト動物試験では、可能性のある生成物の適用はより高い用量レベルで開始され、所望の作用がもはや達成されなくなるまで、または有害な副作用が消失するまで用量が減少させられる。用量は、所望の作用および治療適応に依存して、広範囲に及ぶ可能性がある。典型的には、用量は約10μg/kg〜100mg/kg(体重)、好ましくは約100μg/kg〜10mg/kg(体重)であってよい。または、用量は、当業者によって理解されるように、患者の表面積に基づいて計算することができる。
【0150】
本発明の医薬組成物についての正確な処方、投与経路および用量は、患者の状態を考慮して個々の医師が選択することができる。(例えば、これにより参照して本明細書に全体として組み込まれるFingl et al.1975,「The Pharmacological Basis of Therapeutics」、特に第1章第1頁を参照されたい)。典型的には、患者へ投与される組成物の用量範囲は、約0.5〜1,000mg/kg(患者の体重)であってよい。用量は、患者によって必要とされるように、単回用量または1日もしくは複数日数の経過において与えられる一連の2回以上であってよい。化合物についてのヒト用量が少なくとも一部の条件について確立されている場合には、本発明は、これらの同一用量、または確立されたヒト用量の約0.1%〜500%、より好ましくは約25%〜250%を使用する。ヒト用量が確立されていない場合は、新規に発見された製薬化合物についての場合と同様に、適切なヒト用量はED50もしくはID50値から、または動物における毒性試験および有効性試験によって限定されるように、インビトロもしくはインビボ試験から引き出された他の適切な数値から推測できる。
【0151】
担当医師は、毒性もしくは器官の機能不全に起因して投与を終了させる、中断する、または調整する方法および時機が分かることに留意されたい。これとは逆に、担当医師は、臨床応答が適切ではなかった場合は治療をより高レベルへ調整する(毒性を防止する)方法も知っている。当該の障害の管理における投与された用量の大きさは、治療対象の状態の重症度および投与経路に伴って変動する。状態の重症度は、例えば、標準予後評価方法によって一部には評価することができる。さらに、用量およびおそらくは投与頻度はさらにまた、個別患者の年齢、体重、および応答によって変動する。上記で考察したものに匹敵するプログラムは、獣医学において使用できる。
【0152】
正確な用量は、薬物毎に基づいて決定され、ほとんどの場合は用量に関する一般化を行うことができる。成人ヒト患者についての1日1回投与レジメンは、例えば各有効成分0.1mg〜2000mg、好ましくは1mg〜500mg、例えば5〜200mgの経口用量であってよい。他の実施形態では、0.01mg〜100mg、好ましくは0.1mg〜60mg、例えば1〜40mgの各有効成分の静脈内、皮下、または筋肉内用量が使用される。医薬上許容される塩を投与する場合は、用量は、遊離塩基として計算できる。一部の実施形態では、本組成物は1日当たり1〜4回投与される。または、本発明の組成物は、好ましくは1,000mg/日までの各有効成分の用量で、持続的静脈内注入によって投与できる。当業者には理解されるように、所定の状況では、本明細書に開示した化合物は、特に攻撃性の疾患もしくは感染症を効果的かつ攻撃的に治療するための上述した好ましい用量範囲を超える、またはいっそうはるかに超える量で投与することが必要になることがある。一部の実施形態では、本化合物は、ある期間の持続療法のため、例えば1週間以上、または数カ月もしくは数年間にわたり投与される。
【0153】
投与の量および間隔は、調節作用、または最小有効濃度(MEC)を維持するために十分である活性部分の血漿中レベルを提供するために個別に調整できる。MECは、各化合物について変動するが、インビトロデータから推定できる。MECを達成するために必要な用量は、個別特性および投与経路に依存する。しかし、HPLCアッセイもしくはバイオアッセイは、血漿中濃度を決定するために使用できる。
【0154】
投与間隔は、MEC値を用いて決定することができる。組成物は、10〜90%、好ましくは30〜90%、および最も好ましくは50〜90%の時間に渡ってMECを超える血漿中レベルを維持するレジメンを用いて投与すべきである。
【0155】
局所投与もしくは選択的取り込みの場合には、薬物の有効局所濃度は血漿中濃度と関連していない場合がある。
【0156】
投与される組成物の量は、当然ながら、治療される被験者、被験者の体重、苦痛の重症度、投与方法および処方する医師の判断に依存する。
【0157】
本明細書に開示した化合物は、知られている方法を用いて有効性および毒性について評価することができる。例えば、特定化合物の、または所定の化学部分を共有する1サブセットの化合物の毒物学は、哺乳動物などの細胞系、および好ましくはヒトの細胞系に対するインビトロ毒性を決定することによって確立できる。そのような試験の結果はしばしば、例えば哺乳動物などの動物、またはより詳細にはヒトにおける毒性を予測する。または、マウス、ラット、ウサギ、もしくはサルなどの動物モデルにおける特定化合物の毒性は、知られている方法を用いて決定できる。特定化合物の有効性は、インビトロ方法、動物モデル、またはヒト臨床試験などの数種の容認された方法を用いて確立できる。適切なインビトロ動物モデルの非限定的例には、去勢雄性ラットもしくは高齢雄性精巣摘除ラットが含まれる。有効性を決定するためのモデルを選択する場合は、当業者は、適切な投与のモデル、用量、および経路、ならびにレジメンを選択するために最新技術によって誘導できる。当然ながら、ヒト臨床試験は、ヒトにおける化合物の有効性を決定するためにも使用できる。
【0158】
本組成物は、所望であれば、有効成分を含有する1つまたは複数の単位製剤形を含有していてよいパックまたはディスペンサー器具に入れて提示できる。パックは、例えばブリスターパックなどの、金属もしくはプラスチック箔を含んでいてよい。パックまたはディスペンサー器具には、投与についての説明書が添付されていてよい。パックまたはディスペンサーには、その通知がヒト医学もしくは獣医学投与のための薬剤の形状について政府機関による承認を反映している、医薬品の製造、使用、または販売を規制する政府機関によって規定された形状で容器と関連付けられた通知を添付することもできる。そのような通知は、例えば、処方箋薬、または承認製品挿入物について米国食品医薬品局によって承認されたラベリングであってよい。適合する医薬上の担体中に調製された本発明の化合物を含む組成物は、さらにまた指示された状態を治療するために調製し、適切な容器内に配置し、そしてラベル表示することができる。
【0159】
<実施例>
一般的方法
NMR法。他に規定しない限り、H NMRスペクトルはBruker Ultrashield 300MHz上に記録され、化学シフトは、7.26での残留溶媒ピーククロロホルム(CDCl)および3.31ppmでのメタノール(CDOD)と言及されるδ値[ppm]で与えられる。H NMRスペクトルは、400MHzのVarian Mercury−VX 400MHz分光計上で記録した。カップリング定数Jは、ヘルツで報告されている。本化合物のNMRスペクトルは、それらの遊離アミン形について記載されている。材料および溶媒は、市販入手源から入手できる最高グレードであり、それ以上精製せずに使用した。
【0160】
LC/MS法I。分析は、エレクトロスプレーイオン化インターフェースを備えたZMD単一四重極質量分光計からなる結合分取/分析Waters/Micromassシステム上で実施した。HPLCシステムは、オンライン脱ガス装置を備えたWaters 600グラジエントポンプ、2700サンプルマネージャーおよび996 PDA検出器から構成された。分離は、X−Terra MS C18、5μm、4.6×50mmカラム上で実施した。バッファA:水中の10mM酢酸アンモニウム、バッファB:アセトニトリル/水(95/5)中の10mM酢酸アンモニウム。勾配は7分間にわたり30% Bから100% Bへランし、100% Bで1分間保持し、5.5分間にわたり再平衡化させた。このシステムは1mL/分で作動させた。
【0161】
LC/MS法II。分析は、エレクトロスプレーイオン化インターフェースを備えたZQ単一四重極質量分光計からなるWaters/Micromass LC/MSシステム上で実施した。HPLCは、996 PDA検出器を備えるWaters 2795 Alliance HTシステムであった。分離は、X−Terra MS C18、3.5μm、4.6×30mmカラム上で実施した。バッファA:水中の10mM酢酸アンモニウム、バッファB:アセトニトリル/水(95/5)中の10mM酢酸アンモニウム。勾配は5.5分間にわたり30% Bから100% Bへランし、100% Bで0.5分間保持し、2.5分間にわたり再平衡化させた。システムは1mL/分で作動させた。
【0162】
LC/MS法III。分析は、エレクトロスプレーイオン化インターフェースを備えたZMD単一四重極質量分光計からなる結合分取/分析Waters/Micromassシステム上で実施した。HPLCシステムは、オンライン脱ガス装置を備えたWaters 600グラジエントポンプ、2700サンプルマネージャーおよび996 PDA検出器から構成された。
【0163】
分離は、YMC C18 J’sphere ODS H80、5μm 4.6×l00mmカラム上で実施した。バッファA:水中の0.15% TFA、バッファB:アセトニトリル/水(95/5)中の0.15% TFA。勾配は10分間にわたり30% Bから100% Bへランし、100% Bで2分間保持し、5分間にわたり再平衡化させた。システムは1mL/分で作動させた。
【0164】
塩酸塩の調製。典型的には、本化合物をジクロロメタン中に溶解させ、ジエチルエーテル中の過剰の1M HClを用いて処置し、n−ヘプタンから沈降させた。溶媒を真空中で除去し、乾燥させた後、塩酸塩を固体として入手した。
【実施例1】
【0165】
endo−8−(3−クロロ−2−メチル−4−ニトロフェニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−3−オール(173FBA73bL)
ピリジン(0.5mL)中の198RL41(0.050g、0.264mmol)の溶液にノルトロピン(0.134g、1.056mmol)を加え、反応混合液を17時間にわたり90℃で攪拌し続けた。この混合液を酢酸エチルで希釈し、有機相を0.4N HClおよび飽和NaHCO水溶液で洗浄した;乾燥させた(NaSO)の有機相を蒸発させると粗生成物(0.055g)が得られたので、これを分取TLC(n−ヘプタン/酢酸エチル(7:3))によって精製した。下方Rバンドの抽出により173FBA73bL(0.026g)が得られた。
【0166】
LC/MS m/z 297[M+H]H−NMR(CDCl,300MHz)δ 7.62(d,1H,J=9.0),6.72(d,1H,J=9.0),4.14(t,1H,J=4.9),3.76(br s,2H),2.35(s,3H),2.25−2.13(m,4H),1.94−1.79(m,4H).13C−NMR(CDCl,75MHz)155.6,142.1,130,7,129.4,124.5,114.5,65.1,59.1,40.5,27.9,18.3.
【実施例2】
【0167】
3−ブロモ−2−クロロ−6−フルオロトルエン(165RL91)
2−クロロ−6−フルオロトルエン(5.00g、34.6mmol)および鉄(0.1g、0.17mmol)を100mLのフラスコ内で攪拌した。臭素(6.08g、38.1mmol)は各添加間を1分ずつあけて3回に分けて緩徐に添加した。この反応液をさらに15分間攪拌した。次にジクロロメタン(50mL)を加え、この反応混合液を分離漏斗に移し、無色になるまでチオ硫酸ナトリウム溶液(10%、30mL)で洗浄した。相を分離し、有機相を飽和炭酸水素ナトリウム(30mL)で洗浄し、乾燥させて蒸発させると、15% 3−ブロモ−5−クロロ−2−フルオロトルエン(H−NMRによる計算)を含有する無色油として標題化合物が得られた(7.57g、98%)。本化合物は、これ以上精製せずに次の工程で使用した。
【0168】
GC/MS m/z 222[M+H]H−NMR(CDCl,300MHz)δ 7.53(dd,1H,J=5.5,8.6,Ar−H),7.07(t,1H,J=8.6,Ar−H),2.35(d,3H,J=2.3,CH).
【実施例3】
【0169】
2−クロロ−4−フルオロ−3−メチルベンゾニトリル(165RL87a)
3−ブロモ−2−クロロ−6−フルオロトルエン165RL91(173mg、0.78mmol)、シアン化亜鉛(91mg、0.78mmol)およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(27mg、23μmol)をバイアル中に装填し、DMF(1mL)を加え、この混合液を電子レンジ中で150秒間にわたり200℃で照射した。ジエチルエーテル(30mL)を加え、反応混合液を硫酸マグネシウム(4%溶液、3×20mL)、次に食塩液(20mL)で洗浄した。有機相を乾燥させて蒸発させた。n−ヘプタン/酢酸エチル(9:1)を用いるシリカゲル上のカラムクロマトグラフィによって生成物をさらに精製すると、白色固体(55mg、42%)が得られた。
【0170】
GC/MS m/z 169[M+H]H−NMR(CDCl,300MHz)δ 7.43(dd,1H,J=5.6,8.8,Ar−H),6.87(t,1H,J=8.8,Ar−H),2.36(d,3H,J=2.4,CH).
【実施例4】
【0171】
2−クロロ−4−(3−endo−ヒドロキシ−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−8−イル)−3−メチルベンゾニトリル塩酸塩(165RL90)
2−クロロ−4−フルオロ−3−メチルベンゾニトリル(165RL87a、55mg、0.32mmol)およびノルトロピン(165mg、1.29mmol)をピリジン(2mL)中に溶解させ、混合液を電子レンジ中で2時間にわたり220℃で照射した。ジクロロメタン(50mL)を加え、混合液を塩酸(0.4M、2×30mL)、次に飽和炭酸水素ナトリウム(20mL)で洗浄した。有機相を硫酸ナトリウムの上方に通して乾燥させ、濾過し、そして蒸発させた。ジクロロメタンを使用するカラムクロマトグラフィによってこの生成物をさらに精製すると、標題化合物が得られた(16.2mg、18%)。
【0172】
=0.45(CHCl).LC/MS m/z 277[M+H]H−NMR(CDCl,300MHz)δ 7.37(d,1H,J=8.6,Ar−H),6.78(d,1H,J=8.6,Ar−H),4.20(m,1H,Tr−H),3.80(m,2H,Tr−H),2.37(s,3H,Ar−CH),2.32−2.22(m,4H,Tr−H),1.98−1,81(m,4H,Tr−H).
【実施例5】
【0173】
2−(トリフルオロメチル)−4−(3−endo−ヒドロキシ−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−8−イル)ベンゾニトリル(196MBT4−B)
ノルトロピン(269mg、2.12mmol)および4−フルオロ−2−(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル(100mg、0.529mmol)をピリジン(2mL)中に溶解させた。この混合液を6時間にわたり密封フラスコ中で100℃へ加熱し、次に濃縮した。残留物を2M HCl(20mL)中に溶解し、ジクロロメタン(2×20mL)で抽出した。結合有機相をNaSOの上方に通して乾燥させ、濾過して蒸発させ、結果として生じた油を分取TLC(ジクロロメタンを用いて溶出する)によって精製すると、無色固体として133mg(85%)の標題化合物が得られた。
【0174】
LC/MS m/z 297[M+H]H−NMR(CDCl)δ 7.65−6.75(m,3H),4.35−4.28(m,2H),4.12−4.05(m,1H),2.48−2.39(m,2H),2.17−2.04(m,4H),1.82−1.73(m,2H),1.60−1.52(m,1H).
【実施例6】
【0175】
3−endo−ヒドロキシ−3−exo−メチル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−8−カルボン酸tert−ブチルエステル(197FBA17d)
ヨウ化トリメチルスルホキソニウム(7.33g、33.3mmol)をDMSO(20mL)中のNaH(鉱油中の55〜65%分散液、1.45g、33.3mmol)に緩徐に加え、反応混合液を1時間攪拌した。Boc−トロピノン(5.0g、22.2mmol)の溶液を加え、この混合液を室温で20時間攪拌した。水性作業(EtOAc/HO)および乾燥させた(MgSO)有機相の蒸発により粗エポキシドであるスピロ[8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−3,2’−オキシラン]−8−カルボン酸tert−ブチルエステル(197FBA10a)が得られたので、これを次の工程でそれ以上精製せずに使用した。
【0176】
Super−Hydride(登録商標)(1.0M THF溶液、29.0mmol、29.0mL)を無水THF(10mL)中の197FBA10a(5.3g、22.2mmol)の溶液に加え、水浴を用いて冷却し、反応混合液を室温で攪拌した。1時間後、混合液を再び冷却し(氷浴)、水(10mL)を用いて緩徐にクエンチし、KCOを用いて水相を飽和させ、反応混合液をジエチルエーテルで抽出した。有機相を乾燥させて蒸発させると粗生成物が得られたので、これを酢酸エチル(200mL)中に取り上げ、シリカパッドに通して濾過すると、無色油として197FBA17dが得られた(4.11g、77%)。
【0177】
GC−MS m/z 241.H−NMR(CDCl)4.19(m,2H),2.18−2.12(m,2H),1.95−1.89(m,4H),1.66(d,J=14.3,2H),1.46(s,9H),1.17(s,3H).
【実施例7】
【0178】
endo−3−exo−メチル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−3−オール塩酸塩(197FBA20a)
ジオキサン(40mL)中の4M HCl溶液をジエチルエーテル(40mL)中の197FBA17d(3.81g、15.8mmol)の溶液に加えた。反応混合液を2時間にわたり攪拌し、次に蒸発させると白色固体が得られたので、これを濾過し、ヘプタン(70mL)を用いて洗浄し、乾燥させると白色固体として197FBA20aが得られた(2.17g、77%)。
【0179】
H−NMR(DMSO−d)δ 3.87(br s,2H),2.27(d,J=7.3,2H),2.00(dd,J=14.9および3.2,2H),1.87−1.83(m,2H),1.74(d,J=14.6,2H),1.07(s,3H).
【実施例8】
【0180】
2−クロロ−4−フルオロ−3−メチルベンゾニトリル(198RL18)
3−ブロモ−2−クロロ−6−フルオロトルエン(7.0g、31mmol)、シアン化亜鉛(3.7g、31mmol)およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(1.81g、1.56mmol)をアルゴン大気下でフラスコに加えた。無水DMF(35mL)を加え、反応混合液を120℃のアルゴン下で攪拌した。この反応をGC−MSによって監視したところ、2時間後に完全変換が観察された。この混合液をジクロロメタン(300mL)で希釈し、水(100mL)および4%硫酸マグネシウム(100mL)を用いて洗浄し、硫酸マグネシウムの上方に通して乾燥させ、濾過し、蒸発させると無色油が得られた。n−ヘプタン/酢酸エチル(9:1)を用いるシリカゲル上のカラムクロマトグラフィによって生成物をさらに精製すると、白色固体(3.79g、71%)が得られた。
【0181】
H−NMR(CDCl)δ 7.43(dd,1H,J=5.6,8.8,Ar−H),6.87(t,1H,J=8.8,Ar−H),2.36(d,3H,J=2.4,CH).
【実施例9】
【0182】
トリフルオロメタンスルホン酸2,3−ジメチル−4−ニトロフェニルエステル(195JP07)
トリフルオロメタンスルホン酸無水物(1.57mL、8.77mmol)をジクロロメタン(40mL)中の2,3−ジメチル−4−ニトロフェノール(1.12g、6.70mmol)およびトリエチルアミン(2.5mL、17.9mmol)へ0℃のアルゴン大気下で加え、結果として生じた混合液を室温で一晩攪拌し続けた。次に2M HCl(50mL)を加え、この溶液をジクロロメタン(3×100mL)で抽出した。有機相を結合し、飽和NaHCO水溶液(100mL)で洗浄し、n−ヘプタン(200mL)で希釈し、シリカゲルパッドを通過させると、黄色油として1.96g(98%)の195JP07が得られた。
【0183】
GC/MS m/z 299[M]H−NMR(CDCl,300MHz)δ 7.72(d,1H,J=9.0),7.28(d,1H,J=9.0),2.48(s,3H),2.41(s,3H).
【実施例10】
【0184】
endo−8−(2,3−ジメチル−4−ニトロ−フェニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−3−オール(195JP08)
195JP07(793mg、2.65mmol)、ノルトロピン(1.01g、7.96mmol)、およびピリジン(2.5mL)を16時間にわたり110℃へ加熱した。粗物質を次に室温へ冷却し、水(200mL)の中に注入し、酢酸エチル(3×100mL)で抽出した。結合有機抽出物を乾燥させ(NaSO)、真空中で濃縮し、残留物を分取TLC(溶離液としてEtOAc/n−ヘプタン、(1:8))によって精製すると黄色固体として49.7mg(6.8%)の195JP08が得られた。
【0185】
=0.38(EtOAc/n−ヘプタン(1:1)).LC/MS m/z 277[M+H]H−NMR(CDCl,300MHz)δ 7.70(d,1H,J=9.0),6.79(d,1H,J=9.0),4.25(t,1H,J=4.5),3.79(br s,2H),2.47(s,3H),2.49−2.25(m,4H),2.32(s,3H),1.98−1.85(m,4H).
【実施例11】
【0186】
2−クロロ−4−(3−endo−ヒドロキシ−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル)−3−ヨードベンゾニトリル(195JP18)
参照して全体として本明細書に組み込まれるUchiyama et al.によるプロトコル(J.Am.Chem.Soc.,2002,124,8514−8515)を採用して、無水THF(1.0mL)中の2−クロロ−4−フルオロベンズニトリル(311mg、2.0mmol)を滴下法でジ−t−ブチル(2,2,6,6−テトラメチルピペリジノ)亜硝酸リチウム(10mL THF中で4.0mmol、参照して全体として本明細書に組み込まれるUchiyama et al.,J.Am.Chem.Soc.,1999,121,3539−3540)へ0℃で加え0℃で3.5時間攪拌した。ヨウ素(5.08g、20.0mmol)を次に加え、反応液を室温で一晩攪拌した。NaSaO(1.0M、50mL)および飽和NHCl(100mL)水溶液を加え、次にジクロロメタン(3×100mL)により抽出し、NaSOの上方に通して結合有機相を乾燥させ、濾過し、真空中で溶媒を除去した。残留物をEtOAc/n−ヘプタン(1:40)により溶出するシリカゲルパッドに通して通過させると、112mg(0.40mmol)の2−クロロ−4−フルオロ−3−ヨードベンズニトリルが得られた。この物質をノルトロピン(114mg、0.90mmol)、KCO(186mg、0.134mol)およびDMSO(2.0mL)と結合し、130℃で1.5時間攪拌した。このように入手した粗混合液はn−ヘプタン(10mL)で希釈し、EtOAc/n−ヘプタン(1:2)を用いるシリカゲルパッドを通過させ、濃縮し、分取TLC(EtOAC/n−ヘプタン(1:1))によって精製するとオフホワイトの固体として1.5mg(1.7%)の195JP18が得られた。
【0187】
=0.21(EtOAc/n−ヘプタン(1:1)).LC/MS m/z 389[M+H]H−NMR(CDCl)δ 7.42(d,1H,J=8.6),6.70(d,1H,J=8.6),4.16(br s,1H),3.95(br s,2H),2.50−2.22(m,4H),1.93−1.78(m,4H).
【実施例12】
【0188】
3−ブロモ−2−クロロ−4−(3−endo−ヒドロキシ−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル)ベンゾニトリル(195JP22)
この反応を、求電子物質としてのヨウ素の代わりに臭素を用いて実施例11と同一方法で実施すると、オフホワイトの固体として4.0mg(0.5%)の195JP22が得られた。
【0189】
=0.34(EtOAc/n−ヘプタン(1:1)).LC/MS m/z 342[M+H]H−NMR(CDCl)δ 7.39(d,1H,J=8.6),6.74(d,1H,J=8.6),4.15(t,1H,J=5.0),4.02(br s,2H),2.38−2.20(m,4H),1.92−1.79(m,4H).
【実施例13】
【0190】
2−ブロモ−4−(3−endo−ヒドロキシ−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル)−5−メチル−ベンゾニトリル(195JP26)
この反応を、基質としての2−クロロ−4−フルオロベンズニトリルの代わりに4−フルオロ−3−メチルベンゾニトリルを用いて実施例12と同一方法で実施すると、オフホワイトの固体として17.6mg(1.4%)の195JP26が得られた。
【0191】
=0.28(EtOAc/n−ヘプタン(1:1)).LC/MS m/z 322[M+H]H−NMR(CDCl)δ 7.29(s,1H),6.92(s,1H),4.12(t,1H,J=5.0),3.82(br s,2H),2.30−2.13(m,4H),2.19(s,3H),1.92−1.72(m,4H).
【実施例14】
【0192】
endo−8−(2−クロロ−3−メチル−4−ニトロフェニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−3−オール(196MBT14−B)
濃硫酸(2.5mL)中の2,3−ジクロロトルエン(500mg、3.11mmol)の懸濁液に、室温で濃硫酸(2.5mL)中の硝酸カリウム溶液(314mg、3.11mmol)を滴下した。結果として生じた懸濁液を室温で1時間攪拌し、次に氷/水(100mL)中に攪拌しながら注入した。結果として生じる水相は、25%水性アンモニアの添加によってpH10へ塩基性化し、続いてジクロロメタン(2×100mL)を用いて抽出した。結合有機相を硫酸ナトリウムの上方に通して乾燥させ、濾過し、そして蒸発させた。粗生成物を分取TLC(ヘプタン中で0〜100%の酢酸エチル)によって精製すると、6−および5−硝酸化生成物の4:1混合物が得られた(232mg)。この混合物80mgをピリジン(1mL)中に溶解させた。ノルトロピン(198mg、1.553mmol)を加え、この混合液を20時間にわたり密封フラスコ中で110℃へ加熱し、次に濃縮した。残留物を2M HCl(20mL)中に溶解し、ジクロロメタン(2×20mL)で抽出した。結合有機相をNaSOの上方に通して乾燥させ、濾過して蒸発させ、結果として生じた油を分取TLC(ジクロロメタンを用いて溶出する)によって精製すると、黄色固体として標題化合物(2,3−ジクロロトルエンから35mg、14%)が得られた。
【0193】
LC/MS m/z 297[M+H]H−NMR(CDCl)δ 7.76(d,J=10.5,1H),6.80(d,J=10.5,1H),4.24−4.16(m,1H),4.14−4.05(m,2H),2.59(s,3H),2.40−2.25(m,4H),1.97−1.81(m,4H),1.55(s,1H).
【実施例15】
【0194】
2−クロロ−6−(3−endo−ヒドロキシ−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル)−3−ニトロ−ベンズアルデヒド(196MBT30)
硝酸カリウム(638mg、6.31mmol)を濃硫酸(4.5mL)中に溶解させ、室温で2−クロロ−6−フルオロベンズアルデヒド(1.0g、6.31mmol)の攪拌溶液に滴下した。混合液を室温で1時間攪拌し、次に氷/水(100mL)中に攪拌しながら注入した。結果として生じる水相は、25%水性アンモニアの添加によってpH10へ塩基性化し、続いてジクロロメタン(2×100mL)を用いて抽出した。結合有機相を硫酸ナトリウムの上方に通して乾燥させ、濾過し、蒸発させると2−クロロ−6−フルオロ−3−ニトロベンズアルデヒド(196MBT28−A、1.16g、91%)が得られた。位置選択性は、13C−NMRによって確証した。
【0195】
ノルトロピン(62mg、0.491mmol)および196MBT28−A(100mg、0.491mmol)をピリジン(2mL)中に溶解させ、この混合液を2時間にわたり密封フラスコ内で攪拌し、次に濃縮した。残留物をジクロロメタン(40mL)中に溶解させ、有機相を2M HCl(40mL)、次に2M NaOH(40mL)によって洗浄し、最後にNaSOの上方に通して乾燥させ、濾過して蒸発させた。結果として生じた油を分取TLC(ジクロロメタン中の0〜5%メタノール)によって精製すると、黄色固体として40mg(26%)の標題化合物が得られた。
【0196】
LC/MS m/z 311[M+H]H−NMR(CDCl)δ 10.26(s,1H),7.93(d,J=9.5,1H),6.84(d,J=9.5,1H),4.21−4.16(m,1H),4.10−4.01(m,2H),2.40−2.18(m,4H),2.13−1.98(m,2H),1.90−1.82(m,2H),1.47(s,1H).
【実施例16】
【0197】
endo−8−(3−クロロ−2−ヒドロキシメチル−4−ニトロフェニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−3−オール(196MBT32)
196MBT30(20mg、0.064mmol)をメタノール(1mL)中に溶解させた。水素化ホウ素ナトリウム(3mg、0.064mmol)を加え、この混合液を室温で30分間攪拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液(1mL)を加え、ジクロロメタン(2×10mL)で抽出した。結合有機相はNaSOの上方に通して乾燥させ、濾過し、蒸発させると、黄色固体として18mg(90%)の標題化合物が得られた。
【0198】
LC/MS m/z 313[M+H]H−NMR(CDCl)δ 7.80(d,J=9.0,1H),6.82(d,J=9.0,1H),4.86(d,J=6.5,2H),4.24−4.18(m,1H),4.16−4.05(m,2H),3.00(t,J=6.5,1H),2.36−2.22(m,4H),2.00−1.86(m,4H),1.36(s,1H).
【実施例17】
【0199】
2−クロロ−6−(3−endo−ヒドロキシ−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル)−3−ニトロ−ベンズアルデヒドオキシム(196MBT40)
196MBT30(132mg、0.426mmol)をテトラヒドロフラン(2mL)中に溶解させた。炭酸ナトリウム(45mg、0.426mmol)、次に水(0.5mL)および塩酸ヒドロキシルアミン(30mg、0.426mmol)を加えた。この混合液を室温で1時間攪拌し、次に濃縮した。ジクロロメタン(50mL)を加え、有機相を2M HCl(50mL)、次に2M NaOH(50mL)によって洗浄し、最後にNaSOの上方に通して乾燥させ、濾過して蒸発させた。結果として生じた残留物を分取TLC(ジクロロメタン中の0〜5%メタノール)によって精製すると、黄色固体として45mg(32%)の標題化合物が得られた。
【0200】
LC/MS m/z 326[M+H]H−NMR(MeOD)δ 8.15(s,1H),7.90−6.90(m,2H),4.25−4.00(m,3H),2.35−1.80(m,8H).
【実施例18】
【0201】
endo−8−(2−クロロ−3−ヒドロキシメチル−4−ニトロフェニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−3−オール(196MBT48)
硝酸カリウム(578mg、5.71mmol)を濃硫酸(4.5mL)中に溶解させ、室温で2,3−ジクロロベンズアルデヒド(1.0g、5.71mmol)の攪拌溶液に滴下した。この混合液を攪拌せずに室温で10日間放置した。反応混合液から晶出した材料を濾過によって収集すると、黄色針晶として2,3−ジクロロ−6−ニトロベンズアルデヒド(196MBT36、433mg、34%)が得られた。位置選択性は、Bayer−Drewsonインジゴ合成によって確証した。
【0202】
196MBT36(100mg、0.455mmol)をメタノール(2mL)中に溶解させた。水素化ホウ素ナトリウム(17mg、0.455mmol)を加え、この混合液を室温で30分間攪拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液(1mL)を加え、ジクロロメタン(2×10mL)で抽出した。結合有機相はNaSOの上方に通して乾燥させ、濾過し、蒸発させると、黄色固体として2,3−ジクロロ−6−ニトロベンジルアルコール(196MBT46−A、92mg、91%)が得られた。
【0203】
196MBT46−A(92mg、0.418mmol)およびノルトロピン(53mg、0.418mmol)をピリジン(2mL)中に溶解させた。この混合液を3日間にわたり密封フラスコ中で110℃へ加熱し、次に濃縮した。赤色残留物を2M HCl(20mL)中に溶解し、ジクロロメタン(2×20mL)で抽出した。結合有機相をNaSOの上方に通して乾燥させ、濾過して蒸発させ、結果として生じた油を分取TLC(ジクロロメタン中の0〜5%メタノール)によって精製すると、黄色固体として1.0mg(1%)の標題化合物が得られた。
【0204】
LC/MS m/z 313[M+H]H−NMR(CDCl)δ 7.90−6.85(m,2H),5.00−4.97(m,2H),4.26−4.15(m,3H),3.00−2.92(m,1H),2.40−2.30(m,4H),2.00−1.83(m,4H),1.27(s,lH).
【実施例19】
【0205】
endo−8−(5−クロロ−2−メチル−4−ニトロフェニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−3−オール(196MBT6−1)
ノルトロピン(269mg、2.12mmol)および4−クロロ−2−フルオロ−5−ニトロトルエン(100mg、0.527mmol)をピリジン(2mL)中に溶解させた。この混合液を20時間にわたり密封フラスコ中で110℃へ加熱し、次に濃縮した。残留物を2M HCl(20mL)中に溶解し、ジクロロメタン(2×20mL)で抽出した。結合有機相をNaSOの上方に通して乾燥させ、濾過して蒸発させ、結果として生じた油を分取TLC(ジクロロメタンを用いて溶出する)によって精製すると、無色固体として14mg(9%)の標題化合物が得られた。
【0206】
LC/MS m/z 297[M+H]H−NMR(CDCl)δ 7.86(s,1H),6.75(s,1H),4.17−4.10(m,1H),3.97−3.88(m,2H),2.30−2.10(m,7H),1.96−1.74(m,4H),1.40−1.32(m,1H).
【実施例20】
【0207】
2−クロロ−4−(3−endo−ヒドロキシ−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル)ベンゾニトリル(196MBT8−B)
ノルトロピン(269mg、2.12mmol)および2−クロロ−4−フルオロベンゾニトリル(100mg、0.643mmol)をピリジン(2mL)中に溶解させた。この混合液を20時間にわたり密封フラスコ中で110℃へ加熱し、次に濃縮した。残留物を2M HCl(20mL)中に溶解し、ジクロロメタン(2×20mL)で抽出した。結合有機相をNaSOの上方に通して乾燥させ、濾過して蒸発させ、結果として生じた油を分取TLC(ジクロロメタンを用いて溶出する)によって精製すると、無色固体として107mg(63%)の標題化合物が得られた。
【0208】
LC/MS m/z 263[M+H]H−NMR(CDCl)δ 7.46−6.51(m,3H),4.29−4.16(m,2H),4.16−4.00(m,1H),2.45−2.27(m,2H),2.18−1.96(m,4H),1.79−1.65(m,2H),1.56(s,1H).
【実施例21】
【0209】
6−クロロ−2−メチル−3−ニトロ安息香酸(198RL35)
2−クロロ−6−メチル安息香酸(99mg、0.58mmol)を濃塩酸(1mL)中に溶解させ、氷浴中で冷却した。この溶液に濃塩酸(1mL)中の硝酸カリウムを滴下した。反応混合液を5分間攪拌し、次に氷浴を除去し、さらに2時間攪拌し続けた。反応混合液を氷(25g)上に注入し、酢酸エチル(3×25mL)で抽出した。結合有機相を硫酸ナトリウムの上方に通して乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮すると所望の3−ニトロ(70%)および5−ニトロ(30%)誘導体の混合物が得られた(118.6mg、95%)。2つの異性体を分離することは試みず、混合物を次の工程で使用した。
【0210】
H−NMR(CDCl)δ 10.53(br,1H,COH),7.91(d,0.7H,J=8.8,Ar−H),7.85(d,0.3H,J=8.4,Ar−H),7.44(d,0.7H,J=8.8,Ar−H),7.31(d,0.3H,J=8.4,Ar−H),2.59(s,2.1H,Ar−CH),2.59(s,0.9H,Ar−CH).
【実施例22】
【0211】
6−(3−endo−ヒドロキシ−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル)−2−メチル−3−ニトロ安息香酸(198RL39)
6−クロロ−2−メチル−3−ニトロ安息香酸(198RL35、30%の5−ニトロ異性体を含有する、227mg、1.05mmol)およびノルトロピン(536mg、4.21mmol)をピリジン(5mL)中に溶解させ、90℃で5日間にわたりバイアル内で振とうした。反応混合液を酢酸エチル(20mL)で希釈し、水酸化ナトリウム溶液(2M、3×20mL)で抽出した。結合アルカリ相のpHは、塩酸溶液(6M)を用いてほぼ5へ調節し、酢酸エチルで抽出した(3×30mL)。結合有機相を硫酸ナトリウムの上方に通して乾燥させ、真空中で濃縮した。粗生成物を分取HPLCによって精製すると黄色固体が得られた(154mg、48%)。
【0212】
LC/MS m/z 307[M+H]H−NMR(CDCl)δ 9.90(br,1H,COH),7.90(d,1H,J=9.2,Ar−H),6.87(d,1H,J=9.2,Ar−H),4.20(m,3H,Tr−H),2.52(s,3H,Ar−CH),2.40−2.27(m,4H,Tr−H),2.12−2.04(m,4H,Tr−H),1.90(m,1H,Tr−OH).
【実施例23】
【0213】
endo−8−(2−ヒドロキシメチル−3−メチル−4−ニトロフェニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]−オクタン−3−オール(198RL48−3)
6−(3−endo−ヒドロキシ−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル)−2−メチル−3−ニトロ安息香酸(198RL39、64mg、0.21mmol)をTHF(1mL)中に溶解させた。これを0℃で攪拌し、その間にボラン−THF複合体(1M、0.35mL、0.35mmol)を滴下した。完全に添加した後、混合液を室温へ加温し、一晩攪拌を持続すると、その後のLC−MS分析はよぼ50%の変換を証明した。この反応を徐々に進めた(水/酢酸エチル)。移動相として酢酸エチルを使用する分取TLCによって粗生成物を2回精製すると、標題化合物が得られた(2.1mg、3%)。
【0214】
=0.57(酢酸エチル).LCMS m/z 292[M+H]H−NMR(CDCl)δ 7.75(d,1H,J=9.1,Ar−H),6.85(d,1H,J=9.1,Ar−H),4.89(s,2H,Ar−CHOH),4.21(m,1H,Tr−H),3.95(m,2H,Tr−H),2.57(s,3H,Ar−CH),2.43−2.25(m,4H,Tr−H),2.14−2.01(m,4H,Tr−H).
【実施例24】
【0215】
2−クロロ−4−フルオロ−3−メチル−1−ニトロベンゼン(198RL41)
1−クロロ−3−フルオロ−2−メチルベンゼン(1.00mL、8.24mmol)を硫酸(18M、10mL)中に溶解させ、氷浴中で冷却した。硫酸(18M、10mL)中に溶解させた硝酸カリウム(0.87g、8.65mmol)を低温溶液に滴下した。反応混合液を5分間攪拌し、次に氷浴を除去し、さらに2時間攪拌し続けた。反応混合液を氷(25g)上に注入し、5分間攪拌し、酢酸エチル(3×25mL)で抽出した。結合有機相を硫酸ナトリウムの上方に通して乾燥させ、濾過し、蒸発させると黄色油(1.34g、純度85%)が得られた。本生成物は、これ以上精製せずに次の工程で使用した。
【0216】
H−NMR(CDCl)δ 7.11(m,1H,Ar−H),7.10(m,1H,J=8.3,Ar−H),2.40(m,3H,Ar−CH).
【実施例25】
【0217】
4−(3−endo−ヒドロキシ−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル)−3−トリフルオロメチルベンゾニトリル(196MBT10−B)
ノルトロピン(269mg、2.12mmol)および4−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル(100mg、0.529mmol)をピリジン(2mL)中に溶解させた。この混合液を20時間にわたり密封フラスコ中で110℃へ加熱し、次に濃縮した。残留物を2M HCl(20mL)中に溶解し、ジクロロメタン(2×20mL)で抽出した。結合有機相をNaSOの上方に通して乾燥させ、濾過して蒸発させ、結果として生じた油を分取TLC(ジクロロメタンを用いて溶出する)によって精製すると、無色固体として55mg(35%)の標題化合物が得られた。
LCMS m/z 297[M+H]H−NMR(CDCl)δ 7.80−6.85(m,3H),4.15−4.00(m,3H),2.33−2.10(m,4H),2.00−1.84(m,2H),1.82−1.70(m,2H),1.39(s,1H).
【実施例26】
【0218】
2−クロロ−4−(3−endo−ヒドロキシ−3−exo−メチル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル)−3−メチルベンゾニトリル(198RL93)
2−クロロ−4−フルオロ−3−メチルベンゾニトリル(198RL18、2.48g、14.6mmol)、endo−3−exo−メチル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−3−オール塩酸塩(197FBA20a、3.37g、19.0mmol)、および炭酸カリウム(6.67g、48.2mmol)をジメチルスルホキシド(40mL)中に溶解させ、この混合液を18時間にわたり80℃のアルゴン下で攪拌した。反応混合液を水(200mL)中に注入し、30分間攪拌した。オフホワイトの固体を濾過して取り除き、トルエンから2回再結晶化すると、白色粉末が得られた(1.53g)。母液を蒸発させ、残留物を再結晶化させると第2バッチの化合物(210mg)が得られ、総収率は40%となった。
【0219】
Mp=145〜147℃.R=0.68(酢酸エチル/ジクロロメタン(1:1)).LC/MS m/z 291[M+H]H−NMR(CDCl)δ 7.39(d,1H,J=8.6,Ar−H),6.84(d,1H,J=8.6,Ar−H),3.82(m,2H,Tr−H),2.36(s,3H,Ar−CH),2.32−2.22(m,2H,Tr−H),2.17−1.98(m,2H,Tr−H),1.92−1.77(m,4H,Tr−H),1.26(s,3H,Tr−CH).
【実施例27】
【0220】
2−クロロ−4−(3−endo−ヒドロキシ−3−exo−メチル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル)−3−メチルベンゾニトリル塩酸塩(198RL26)
塩酸塩は、2−クロロ−4−(3−endo−ヒドロキシ−3−exo−メチル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル)−3−メチルベンゾニトリル(198RL93)をジエチルエーテル中に溶解させ、HCl(1.1当量、1,4−ジオキサン中の4M)を加えることによって調製した。この混合液を15分間にわたり攪拌し続け、沈降した塩を濾過により微細な白色粉末として取り出した。
【0221】
Mp=160℃(分解)。
【実施例28】
【0222】
2−クロロ−4−(3−endo−ヒドロキシ−3−exo−メチル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル)−3−メチルベンゾニトリルメシレート(198RL93−MS)
メシレート塩は、2−クロロ−4−(3−endo−ヒドロキシ−3−exo−メチル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル)−3−メチルベンゾニトリル(198RL93)をジエチルエーテル中に溶解させ、メチルスルホン酸塩(1.1当量)を加えることによって調製した。この混合液を15分間にわたり攪拌し続け、沈降した塩を濾過により微細な白色粉末として取り出した。
【0223】
Mp=164℃(分解)。
【実施例29】
【0224】
受容体活性のインビトロ決定
化合物をアンドロゲンAR受容体での有効性についてスクリーニングするために、機能的受容体アッセイであるReceptor Selection and Amplification Technology(R−SAT(商標))を上記に記載された方法(これにより参照して本明細書に全体として組み込まれる、米国特許第5,707,798号)からのわずかな変更を加えて使用した。手短には、NIH3T3細胞をローラーボトル内で70〜80%のコンフルエンスへ増殖させた。細胞は次に、製造業者のプロトコルによってPolyfect(Qiagen社)を使用して、プラスミドDNAを用いて12〜16時間にわたりトランスフェクトした。R−SATアッセイは、典型的には30μg/ボトルの受容体および50μg/ボトルのβガラクトシダーゼプラスミドDNAをトランスフェクトすることによって実施した。使用した全受容体およびヘルパー構築物は、哺乳動物発現ベクター内にあった。ヘルパーは、AR受容体、典型的にはコアクチベータのリガンド依存性および/またはリガンド非依存性両方の機能を調節するシグナリング分子として規定されている。
【0225】
NIH3T3細胞を12〜16時間にわたりトランスフェクトし、次にトリプシン化し、DMSO中で冷凍した。冷凍した細胞を後に解凍し、薬物を含有する96ウエルプレートの1ウエル当たり10,000〜40,000cellsでプレーティングした。細胞は次に5日間にわたり5%の周囲COを含む加湿大気下中で増殖させた。培地をプレートから除去し、βガラクトシダーゼ基質であるo−ニトロフェニルβ−D−ガラクトピラノシド(ONPG、5% NP−40を含むPBS中において)の添加によってマーカー遺伝子活性を測定した。結果として生じた比色反応を420nMでの分光学的プレートリーダー(Titertek社)において測定した。全データは、コンピュータプログラムXLFit(IDBSm)を用いて分析した。
【0226】
選択した化合物についての結果は、表1に提示した。
【表1】

【実施例30】
【0227】
アンドロゲン受容体アゴニストのインビボ活性
式Iの試験化合物を去勢された雄性Sprague Dawley系ラット(n=3)へ2週間にわたり1日1回経口投与する。試験化合物(1、3、10、30mg/kg)の作用をプロピオン酸テストステロン(1および3mg/kg、皮下;陽性コントロール)およびビヒクル(10% Tween80;陰性コントロール)と比較する。血液ならびに前立腺および精嚢の湿潤重量は、最終投与24時間後に行われる致死後に測定する。血液は、最終投与24時間後に行われる致死後にヘパリン収集チューブ中に採取する。血液を遠心分離し、血漿を収集し、血漿サンプルを冷凍する。
【0228】
ラット黄体化ホルモン(LH)血漿中レベルは、製造業者の取扱説明書にしたがってAmersham社からの酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を用いて決定する。固相アッセイは、非標識rLHと限定された量のrLH特異的抗体についての固定量のビオチン標識rLHとの競合に基づく。コンジュゲートのストレプトアビジン/ペルオキシダーゼは、基質の存在下でのシグナル増幅および検出を可能にする。
【0229】
198RL26についての結果
2週間にわたる用量1mg/kgでのプロピオン酸テストステロン(TP)の1日1回の投与(皮下)は、ビヒクル処置と比較して、前立腺(図1)、精嚢(図2)、および肛門挙筋(図3)の湿潤組織重量における有意な増加を生じさせた。これとは対照的に、2週間にわたる3mg/kgの198RL26の1日1回の皮下投与は、湿潤組織重量を有意に変化させるとは思われなかった。高用量(3および10mg/kg)の198RL26の1日1回の投与は、湿潤組織重量を有意に増加させると思われたが、TPの程度を有意に増加させるとは思われなかった。これらのデータは、TPと比較して、198RL26を用いた場合の不都合な副作用(すなわち、増加した精嚢および前立腺のサイズ)の可能性は、TPの少なくとも100倍の用量に達するまでは明白にならない可能性があることを示唆している。去勢術後には、黄体化ホルモン(LH)の血漿中レベルはおよそ3〜4倍増加した。(図4)。TP(1mg/kg、皮下、14日間)の長期投与は、実験未使用ラット(非去勢動物)において入手されるLHレベルを回復した。198RL26(様々な用量、経口、14日間)は、10mg/kgで完全逆転が明白になるように、血漿中LHレベルの用量依存性抑制を生成した。
【0230】
実施形態および実施例を参照しながら本発明について記載してきたが、本発明の範囲および精神から逸脱せずに、極めて多数の様々な修飾を加えられることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0231】
【図1】2週間にわたるラットへの1または3mg/kgのプロピオン酸テストステロン(TP)の1日1回の皮下(s.c.)投与後の前立腺組織の湿性組織重量を様々な用量の化合物198RL26(経口)と比較している棒グラフである。
【図2】2週間にわたるラットへの1または3mg/kgのプロピオン酸テストステロン(TP)の1日1回の皮下投与後の精嚢組織の湿性組織重量を様々な用量の化合物198RL26(経口)と比較している棒グラフである。
【図3】2週間にわたるラットへの1または3mg/kgのプロピオン酸テストステロン(TP)の1日1回の皮下投与後の肛門挙筋組織の湿性組織重量を様々な用量の化合物198RL26(経口)と比較している棒グラフである。
【図4】2週間にわたるラットへの1または3mg/kgのプロピオン酸テストステロン(TP)の1日1回の皮下投与後に去勢したラットにおける血漿中黄体化ホルモン(LH)を様々な用量の化合物198RL26(経口)と比較している棒グラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

(式中、
環Aは、原子YおよびYを含み、N、O、S、SO、S=O、C=O、およびC=Sからなる群から選択される3個までのヘテロ原子を含有する任意で置換された二環式もしくは三環式非芳香族複素環であり、YもYもC=OもしくはC=Sではない;
は、シアノおよびニトロからなる群から選択される;
およびZは各々、水素、任意で置換されたアルキル、任意で置換されたアルケニル、任意で置換されたアルキニル、任意で置換されたシクロアルキル、任意で置換されたヘテロシクリル、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、任意で置換されたアミノアルキル、任意で置換されたアルコキシ、任意で置換されたアリール、任意で置換されたヘテロアリール、任意で置換されたヘテロシクリルアルキル、任意で置換されたヘテロアリールアルキル、−C(O)OR、−C(O)NR、−NHC(O)R、−NHSO、−CH=NOR、−CF、−OC(O)R、−COR、SR、−S(O)、および−SONRからなる群から独立して選択されるが、ただしZもしくはZのうちの一方が水素であれば、他方は水素ではない;
およびRは各々、水素、アルキルもしくは置換されたアルキル、アルケニルもしくは置換されたアルケニル、アルキニルもしくは置換されたアルキニル、シクロアルキルもしくは置換されたシクロアルキル、ヘテロシクリルアルキルもしくは置換されたヘテロシクリルアルキル、アリールアルキルもしくは置換されたアリールアルキル、アリールもしくは置換されたアリール、ヘテロアリールアルキルもしくは置換されたヘテロアリールアルキル、およびヘテロアリールもしくは置換されたヘテロアリールからなる群から独立して選択される;
およびRは各々、水素、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、アルキルもしくは置換されたアルキル、アルケニルもしくは置換されたアルケニル、アルキニルもしくは置換されたアルキニル、シクロアルキルもしくは置換されたシクロアルキル、ヘテロシクリルアルキルもしくは置換されたヘテロシクリルアルキル、アリールアルキルもしくは置換されたアリールアルキル、アリールもしくは置換されたアリール、ヘテロアリールアルキルもしくは置換されたヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールもしくは置換されたヘテロアリール、OR、NR、SR、C(O)R、C(O)OR、C(O)NR、NHC(O)R、NRC(O)R5、OC(O)R、C(S)R、C(S)OR、C(S)NR、NHC(S)R、OC(S)R、S(O)、SONR、OSO、NHSO、およびOR、NR、SR、C(O)R、C(O)OR、C(O)NR、NHC(O)R、NRC(O)R、OC(O)R、C(S)R、C(S)OR、C(S)NR、NHC(S)R、OC(S)R、S(O)、SONR、OSO、もしくはNHSOと置換されたアルキルからなる群から独立して選択される;
およびRは各々、水素、アルキルもしくは置換されたアルキル、アルケニルもしくは置換されたアルケニル、アルキニルもしくは置換されたアルキニル、シクロアルキルもしくは置換されたシクロアルキル、ヘテロシクリルアルキルもしくは置換されたヘテロシクリルアルキル、アリールアルキルもしくは置換されたアリールアルキル、およびヘテロアリールアルキルもしくは置換されたヘテロアリールアルキルからなる群から独立して選択される;および
nは1〜3の整数である;
ただし前記化合物は
【化2】

ではない)によって表される化合物またはそのプロドラッグ、立体異性体もしくは医薬上許容される塩。
【請求項2】
環Aは二環式複素環である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記二環式複素環は架橋二環式複素環である、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
およびZは、水素、未置換(C−C)アルキル、−(C−C)アルキルOH、−(C−C)アルキル(ハロ)、ハロ、シアノ、−OR、−OC(O)R、−CF、−CHOおよび−CH=NORからなる群から独立して選択される;
およびRは、水素、未置換−(C−C)アルキル、−(C−C)アルキルOH、−(C−C)アルキル(ハロ)、ハロ、シアノ、−OR、−OC(O)Rおよび−CFからなる群から独立して選択される;
前記架橋二環式複素環は1個の窒素原子を含む;および
は、水素、未置換(C−C)アルキル、未置換(C−C)シクロアルキルおよび未置換アリールからなる群から選択される、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
前記二環式複素環は構造:
【化3】

を有する、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
前記架橋二環式複素環は構造:
【化4】

を有する、請求項4に記載の化合物。
【請求項7】
はヒドロキシである、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
は−(C−C)アルキルである、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
は、それにRが結合している同一炭素原子に結合している、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
は、アルキル、ハロゲン、ハロアルキルもしくはヒドロキシアルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
は、アルキル、ハロゲン、ハロアルキルもしくはヒドロキシアルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
はメチルもしくはエチルであり、Zはハロゲンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
はメチルもしくはエチルであり、Zはクロロである、請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
はメチルであり、Zはクロロである、請求項1に記載の化合物。
【請求項15】
endo−8−(3−クロロ−2−メチル−4−ニトロフェニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−3−オール;
2−クロロ−4−(3−endo−ヒドロキシ−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−8−イル)−3−メチルベンゾニトリル;
6−(3−endo−ヒドロキシ−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル)−2−メチル−3−ニトロ安息香酸;
3−ブロモ−2−クロロ−4−(3−endo−ヒドロキシ−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル)ベンゾニトリル;
2−(トリフルオロメチル)−4−(3−endo−ヒドロキシ−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−8−イル)ベンゾニトリル;
endo−8−(2,3−ジメチル−4−ニトロフェニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−3−オール;
2−クロロ−4−(3−endo−ヒドロキシ−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル)−3−ヨードベンゾニトリル;
2−クロロ−4−(3−endo−ヒドロキシ−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル)ベンゾニトリル;
endo−8−[2−(ヒドロキシメチル)−3−メチル−4−ニトロフェニル]−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−3−オール;
4−(3−endo−ヒドロキシ−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル)−3−トリフルオロメチルベンゾニトリル;
endo−8−(2−クロロ−3−メチル−4−ニトロフェニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−3−オール;
2−クロロ−6−(3−endo−ヒドロキシ−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル)−3−ニトロベンズアルデヒド;
endo−8−(3−クロロ−2−ヒドロキシメチル−4−ニトロフェニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−3−オール;
2−クロロ−6−(3−endo−ヒドロキシ−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル)−3−ニトロベンズアルデヒドオキシム;
endo−8−(2−クロロ−3−ヒドロキシメチル−4−ニトロフェニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−3−オール;
6−(3−endo−ヒドロキシ−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル)−2−メチル−3−ニトロ安息香酸;
endo−8−(2−ヒドロキシメチル−3−メチル−4−ニトロフェニル)−8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−3−オール;
2−クロロ−4−(3−endo−ヒドロキシ−3−exo−メチル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル)−3−メチルベンゾニトリル;
2−クロロ−4−(3−endo−ヒドロキシ−3−exo−メチル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル)−3−メチルベンゾニトリル塩酸塩;および
2−クロロ−4−(3−endo−ヒドロキシ−3−exo−メチル−8−アザビシクロ[3.2.1]オクト−8−イル)−3−メチルベンゾニトリルメシレート、からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の化合物のプロドラッグエステル、炭酸塩、カルバミン酸塩、硫酸塩、リン酸塩もしくはホスホルアミデート。
【請求項17】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の化合物と医薬上許容される賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項18】
性腺機能低下症、正常値より低い血漿中テストステロンレベル、男性における不妊症、男性における勃起機能不全、男性における男性休止、女性における子宮内膜症、女性における性交疼痛症,女性における膣痙、女性における性覚醒障害、女性における性オルガスムス障害、男性における性欲障害、悪液質、HIV消耗、筋肉疲労が明白である重症疾患、サルコペニア、虚弱、低身長症、矮小発育症、骨密度低下、気分障害、抑うつ、認知機能障害、神経変性障害、眼球乾燥症、代謝障害、心血管障害、肥満症、貧血、前立腺癌、および統合失調症からなる群から選択される状態を治療する方法であって、前記状態の1つまたは複数の症状を示す患者へ請求項1〜15のいずれか一項の化合物を投与する工程を含む、方法。
【請求項19】
前記気分障害は、幸福感の欠如、活力の欠如、怒り、被刺激性、悲しみ、疲労感、および神経質からなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記神経変性障害は、アルツハイマー病、軽度認知障害(MCI)、ルイス体(Lewis body)認知症、および前頭側頭型認知症からなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記代謝障害は、脂質代謝異常、アテローム硬化症、および非インスリン依存型糖尿病(NIDDM)からなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記心血管障害は、高血圧、冠動脈疾患、および心筋灌流からなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
男性における精子形成を調節する方法であって、請求項1〜15のいずれか一項の化合物を男性被験者に投与する工程を含む、方法。
【請求項24】
ホルモン補充療法の方法であって、ホルモン補充療法を必要とする被験者に請求項1〜15のいずれか一項の化合物を投与する工程を含む、方法。
【請求項25】
ホルモン補充療法に対する必要は、外科的もしくは化学的手段による睾丸摘除術によって引き起こされる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
筋力を改善する方法であって、それを必要とする被験者に請求項1〜15のいずれか一項の化合物を投与する工程を含む、方法。
【請求項27】
筋力における改善の必要は、筋ジストロフィ、筋緊張性ジストロフィ、またはグルココルチコイド療法下の喘息によって引き起こされる、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
骨密度低下、眼球乾燥症、代謝障害、心血管障害、肥満症、および前立腺癌からなる群から選択される状態を予防する方法であって、それを必要とする被験者に請求項1〜15のいずれか一項の化合物を投与する工程を含む、方法。
【請求項29】
前記代謝障害は、脂質代謝異常、アテローム硬化症、および非インスリン依存型糖尿病(NIDDM)からなる群から選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記心血管障害は、高血圧、冠動脈疾患、および心筋灌流からなる群から選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
生存、機能障害、機能状態、健康認識、および機会からなる群から選択される健康関連性クオリティ・オブ・ライフのパラメータを改善する方法であって、それを必要とする被験者に請求項1〜15のいずれか一項の化合物を投与する工程を含む、方法。
【請求項32】
前立腺癌の進行を遅延させる方法であって、それを必要とする患者へ請求項1〜15のいずれか一項の化合物を投与する工程を含む、方法。
【請求項33】
アンドロゲン受容体を調節する方法であって、前記受容体を請求項1〜15のいずれか一項の化合物と接触させる工程を含む、方法。
【請求項34】
性腺機能低下症、正常値より低い血漿中テストステロンレベル、男性における不妊症、男性における勃起機能不全、男性における男性休止、女性における子宮内膜症、女性における性交疼痛症,女性における膣痙、女性における性覚醒障害、女性における性オルガスムス障害、男性における性欲障害、悪液質、HIV消耗、筋肉疲労が明白である重症疾患、サルコペニア、虚弱、低身長症、矮小発育症、骨密度低下、気分障害、抑うつ、認知機能障害、神経変性障害、眼球乾燥症、代謝障害、心血管障害、肥満症、貧血、前立腺癌、および統合失調症からなる群から選択される状態を治療する工程;
男性における精子形成を調節する工程;または
ホルモン補充療法を実行する工程;または
筋力を改善する工程;または
骨密度低下、眼球乾燥症、代謝障害、心血管障害、肥満症、および前立腺癌からなる群から選択される状態を予防する工程;または
生存、機能障害、機能状態、健康認識、および機会からなる群から選択される健康関連性クオリティ・オブ・ライフのパラメータを改善する工程;または
前立腺癌の進行を遅延させる工程;または
アンドロゲン受容体を調節する工程であって、
それを必要とする患者へ:
【化5】

からなる群から選択される化合物を投与する工程を含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−526888(P2008−526888A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−550547(P2007−550547)
【出願日】平成18年1月9日(2006.1.9)
【国際出願番号】PCT/US2006/000733
【国際公開番号】WO2006/076317
【国際公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(507231172)アカディア ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】