説明

選択的アンドロゲン受容体調節剤及びその使用方法

【課題】骨粗鬆症、他の骨関連疾患及び筋肉萎縮症を、予防及び治療するための選択的アンドロゲン受容体調節剤を提供する。
【解決手段】本発明に係る選択的アンドロゲン受容体調節剤(selective androgen receptor modulator:SARM)及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝産物、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物或いはそれらの組み合わせを、患者に投与することによって、骨粗鬆症、他の骨関連疾患及び筋肉萎縮症を、治療、予防、抑止、抑制、又は発生を低減させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨粗鬆症、他の骨関連疾患及び筋肉萎縮症を、予防及び治療するための選択的アンドロゲン受容体調節剤及びその使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アンドロゲン受容体(Androgen Receptor:AR)は、その内因性アンドロゲンとの活性を介して男性の性的発育及び機能の誘導を仲立ちする、リガンド活性化転写調節タンパク質である。アンドロゲンは、一般に、男性ホルモンとして知られている。男性ホルモンは、体内で睾丸及び副腎の皮質により生成される、又は実験室で合成されるステロイドである。アンドロゲン性ステロイドは、男性の性的特徴(例えば筋肉や骨量など)の発達及び維持、前立腺の成長、精子形成、及び男性の髪状態などの、数多くの生理学的過程において重要な役割を果たす(非特許文献1参照)。前記内因性のステロイド性アンドロゲンとしては、テストステロンやジヒドロテストステロン(DHT)がある。テストステロンは、睾丸から分泌される主要なステロイドである。また、テストステロンは、男性の血漿中に含まれている主要な循環アンドロゲンである。テストステロンは、多くの末梢組織で、5αレダクターゼによってDHTに変換される。したがって、DHTは、ほとんどのアンドロゲン作用において、細胞内媒介物としての機能を果たすと考えられている(非特許文献2参照)。他のステロイド性アンドロゲンとしては、テストステロンのエステル類や、他の合成アンドロゲンがある。前記テストステロンのエステル類としては、例えば、シピオネート、プロピオン酸、フェニルプロピオン酸、シクロペンチルプロピオネート、イソカルポレート(isocarporate)、エナント酸、及びデカン酸エステルがある。前記合成アンドロゲンとしては、例えば、7−メチル−ノルテストステロン(7-Methyl-Nortestosterone:MENT)や、その酢酸エステルなどがある(非特許文献3参照)。ARは男性の性的発達及び機能に関与しているので、ARは効果的な男性避妊や他のホルモン補充療法の目的に有望である。
【0003】
骨ミネラル濃度(bone mineral density:BMD)は、男性でも女性でも年齢と共に減少する。BMDと骨塩量(bone mineral content:BMC)が減少すると骨の強度が低下し、骨折しやすくなる。
【0004】
骨粗鬆症は全身性の骨疾患であり、骨量の低下及び骨組織の劣化という特徴がある。そのため、骨粗鬆症にかかると、骨が脆くなって骨折しやすくなる。アメリカ合衆国では、毎年、2500万人以上がこの病気にかかっており、130万人以上が骨折している(50万人が背骨を、25万人が股関節を、24万人が手首を骨折している)。股関節の骨折は骨粗鬆症における最も深刻な問題であり、患者の5〜20%は骨折後1年以内に死に至る。また、死に至らなかったとしても、その50%以上は再起不能となる。高齢者は骨粗鬆症にかかる危険性が非常に高いため、高齢化社会が進むにつれてこの問題が一層深刻化することが懸念されている。全世界での骨折の発生率は、次の60年間で3倍になると予測される。また、ある調査によれば、2050年には全世界で450万人が股関節骨折すると推測される。
【0005】
女性は、骨粗鬆症に対して、男性よりも大きな危険性にさらされている。女性は、閉経後の5年間で、骨量が急激に減少する。前記危険性を高める他の要因としては、喫煙、アルコール過剰摂取、座りがちな生活、及びカルシウム摂取不足がある。また、骨粗鬆症は、男性にも高い頻度で発生する。男性の骨ミネラル濃度が年を取ると共に減少することはよく知られている。骨塩量及び濃度の減少は骨強度の減少と相関しており、骨塩量及び濃度が減少すると骨折しやすくなる。非再生組織における性ホルモンの多面発現効果の基礎をなす分子構造は、まだ理解され始めたばかりであるが、アンドロゲン及びエストロゲンの生理学的濃度が、生涯を通じて骨の恒常性において重要な役割を果たすことは明らかである。したがって、アンドロゲン又はエストロゲンが欠乏すると、骨再形成の割合が増加し、吸収と形成のバランスが吸収の方に傾く。その結果、総体的な骨量は減少する。男性では、壮年時における性ホルモンの自然的な減少(アンドロゲンは、アンドロゲンの末梢組織の芳香化に由来するエストロゲンと同様の低いレベルまで減少する)は、骨のもろさと関連する。このことは、去勢された男性にも見られる。
【0006】
筋萎縮(muscle wasting)は、筋量の進行性の減少、及び/又は、筋肉の進行性の弱体化及び退化に起因して生じる。前記筋肉としては、運動を司る骨格筋又は随意筋、心拍制御を行う心筋、及び平滑筋がある。慢性の筋萎縮は、筋量の進行性の減少、筋肉の進行性の弱体化及び退化を特徴とする慢性症状(長期にわたり持続する)である。
【0007】
筋萎縮中に起こる筋量の減少は、筋肉タンパクが異化作用によって分解されることを特徴とする。タンパク質の異化作用は、異常に高い率のタンパク質分解、異常に低い率のタンパク質合成、又はそれらの組み合わせによって起こる。タンパク質の異化作用は、高い率のタンパク質分解に起因する場合でも、低い率のタンパク質合成に起因する場合でも、筋量の減少と筋萎縮をもたらす。
【0008】
筋萎縮は、慢性、神経性、遺伝性又は伝染性の、病状、疾病、疾患又は状態と関連している。それらの病状としては、筋ジストロフィー(デュシェンヌ型筋ジストロフィー、筋強直性筋ジストロフィーなど)、筋萎縮(ポリオ後筋萎縮など。Post-Polio Muscle Atrophy:PPMA)、カヘキシー(心臓カヘキシー、エイズカヘキシー、癌カヘキシーなど)、栄養失調、ハンセン病、糖尿病、腎臓病、慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease:COPD)、癌、末期腎不全、気腫、骨軟化症、HIV感染、エイズ、及び心筋症がある。
【0009】
さらに、他の事情や病状が筋萎縮と関係あり、筋萎縮の原因となる。それらの事情や病状としては、慢性的な腰痛、老化、中枢神経系(Central Nerve System:CNS)の損傷、末梢神経の損傷、脊髄の損傷、化学的損傷、中枢神経系のダメージ、末梢神経のダメージ、脊髄のダメージ、化学的ダメージ、熱傷、手足が固定化されたときに生じる廃用症、病気又は負傷のための長期間の入院、及びアルコール依存症などがある。
【0010】
無傷のアンドロゲン受容体(AR)シグナル経路は、骨格筋の適切な発育に欠かせないものである。さらに、無傷のARシグナル経路は、除脂肪体重、筋力、及び筋肉タンパク質合成を増加させる。
【0011】
筋萎縮を治療しないまま放置すると、健康状態が著しく悪化する。例えば、筋萎縮中に起こる変化は、健康状態を悪化させその人の健康に害を及ぼす。その結果、不完全骨折になりやすくなり、一般状態不良となる。また、筋萎縮は、カヘキシー(cachexia)及びAIDSに罹っている患者における死亡の強い予兆である。
【0012】
そこで、骨粗鬆症、他の骨関連疾患及び筋萎縮を、特に慢性筋萎縮を予防及び治療するための、基礎科学と臨床レベルの両方において革新的なアプローチが緊急に必要とされている。本発明はこれらの課題を解決することを目的としている。
【非特許文献1】Matsumoto, Endocrinol. Met. Clin. N. Am. 23:857-75(1994)
【非特許文献2】Zhou, et al., Molec. Endocrinol. 9:208-18(1995)
【非特許文献3】Sundaram et al., "7 Alpha-Methyl-Nortestosterone(MENT): The Optimal Androgen For Male Contraception," Ann. Med., 25:199-205(1993)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0013】
ある実施形態では、本発明は、化学構造式(I)で表される選択的アンドロゲン受容体調節剤(SARM)化合物、又はそのプロドラッグ、類似体、異性体、代謝産物、誘導体、薬学的に許容される塩、医薬品、多形体、結晶、不純物、N酸化物、水和物或いはそれらの任意の組み合わせを提供する。

ただし、Xは、Oであり、
Zは、NO、CN、COR、又はCONHRであり、
Yは、I、CF、Br、Cl、F、又はSn(R)であり、
Qは、CNであり、
Tは、OH、OR、NHCOCH、NHCOR、又はOC(O)Rであり、
Rは、アルキル、ハロアルキル、ジハロアルキル、トリハロアルキル、CHF、CHF、CF、CFCF、アリル、フェニル、ハロゲン、アルケニル、又はOHであり、
は、CH、CHF、CHF、CF、CHCH、又はCFCFである。

【0014】
他の実施形態では、本発明は、化学構造式(IV)で表される選択的アンドロゲン受容体調節剤(SARM)化合物、又はそのプロドラッグ、類似体、異性体、代謝産物、誘導体、薬学的に許容される塩、医薬品、多形体、結晶、不純物、N酸化物、水和物或いはそれらの任意の組み合わせを提供する。

ただし、Xは、Oであり、
Tは、OH、OR、NHCOCH、NHCOR、又はOC(O)Rであり、
Zは、水素、アルキル、NO、CN、COOH、COR、NHCOR、又はCONHRであり、
Yは、水素、アルキル、CF、ハロゲン、ヒドロキシアルキル、又はアルキルアルデヒドであり、
Aは、

から選択される基である。ただし、R、R、R、R、Rは、互いに独立してH、ハロゲン、CN、NO、NHCOCFである基である。
さらに、Rは、アルキル、ハロアルキル、ジハロアルキル、トリハロアルキル、CHF、CHF、CF、CFCF、アリル、フェニル、ハロゲン、アルケニル、又はOHであり、
は、CH、CHF、CHF、CF、CHCH、又はCFCFである。
【0015】
ある実施形態では、XはOである。他の実施形態では、TはOHである。他の実施形態では、RはCHである。他の実施形態では、ZはNOである。他の実施形態では、ZはCNである。他の実施形態では、R、R、R、Rは水素、RはNHCOCFである。他の実施形態では、R、R、R、Rは水素、RはFである。他の実施形態では、R、R、R、Rは水素である。他の実施形態では、Zはパラ位置にある。他の実施形態では、Yはメタ位置にある。他の実施形態では、それらの任意の組み合わせである。
【0016】
他の実施形態では、本発明は、化学式(I)、(III)又は(IV)のSARM化合物と、適切な担体又は希釈液とを含む医薬品組成物を提供する。
【0017】
他の実施形態では、本発明は、骨関連疾患患者を治療するための、化学式(I)、(III)又は(IV)の又はそれを含む組成物の使用を提供する。
【0018】
他の実施形態では、本発明は、患者の骨の強度又は質量を増加させるか又は患者の骨形成を促進するための、化学式(I)、(III)又は(IV)の化合物又はそれを含む組成物の使用を提供する。
【0019】
他の実施形態では、本発明は、患者の筋肉萎縮症の治療、予防、抑止、抑制、又は発生を低減させるための、化学式(I)、(III)又は(IV)の化合物又はそれを含む組成物の使用を提供する。
【0020】
他の実施形態では、本発明は、患者の筋肉動作、筋肉サイズ、筋肉強度、又はそれらの任意の組み合わせを増加させるための、化学式(I)、(III)又は(IV)の化合物又はそれを含む組成物の使用を提供する。
【0021】
他の実施形態では、本発明は、患者の代謝症候群に関連する肥満症又は糖尿病を治療するための、化学式(I)、(III)又は(IV)の化合物又はそれを含む組成物の使用を提供する。
【0022】
他の実施形態では、本発明は、外科手術後の回復を促進するため又は早めるための、化学式(I)、(III)又は(IV)の化合物又はそれを含む組成物の使用を提供する。
【0023】
他の実施形態では、本発明は、男性患者において精子形成を促進又は抑制するための、化学式(I)、(III)又は(IV)の化合物又はそれを含む組成物の使用を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下の詳細な説明には、本発明を十分に理解できるように多くの特定の詳細が記載されている。しかし、当業者であれば、これらの特定の詳細がなくとも本発明を実施できることが理解できるであろう。他の例では、本発明を不明瞭にしないために、既知の方法、手順及び成分については詳細に記載していない。
【0025】
ある実施形態では、本発明は、化学構造式(I)で表される選択的アンドロゲン受容体調節剤(SARM)化合物、又はそのプロドラッグ、類似体、異性体、代謝産物、誘導体、薬学的に許容される塩、医薬品、多形体、結晶、不純物、N酸化物、水和物或いはそれらの任意の組み合わせを提供する。

ただし、Xは、Oであり、
Zは、NO、CN、COR、又はCONHRであり、
Yは、I、CF、Br、Cl、F、又はSn(R)であり、
Qは、CNであり、
Tは、OH、OR、NHCOCH、NHCOR、又はOC(O)Rであり、
Rは、アルキル、ハロアルキル、ジハロアルキル、トリハロアルキル、CHF、CHF、CF、CFCF、アリル、フェニル、ハロゲン、アルケニル、又はOHであり、
は、CH、CHF、CHF、CF、CHCH、又はCFCFである。
【0026】
他の実施形態では、本発明は、化学構造式(I)で表されるSARMを提供する。

ただし、Xは、Oであり、
Zは、NO、CN、COR、又はCONHRであり、
Yは、I、CF、Br、Cl、F、又はSn(R)であり、
Rは、アルキル基、又はOHであり、
Qは、CNである。
【0027】
ある実施形態では、本発明は、化学構造式(III)で表される選択的アンドロゲン受容体調節剤(SARM)化合物、又はそのプロドラッグ、類似体、異性体、代謝産物、誘導体、薬学的に許容される塩、医薬品、多形体、結晶、不純物、N酸化物、水和物或いはそれらの任意の組み合わせを提供する。

【0028】
他の実施形態では、本発明は、化学構造式(IV)で表される選択的アンドロゲン受容体調節剤(SARM)化合物、又はそのプロドラッグ、類似体、異性体、代謝産物、誘導体、薬学的に許容される塩、医薬品、多形体、結晶、不純物、N酸化物、水和物或いはそれらの任意の組み合わせを提供する。

ただし、Xは、Oであり、
Tは、OH、OR、NHCOCH、NHCOR、又はOC(O)Rであり、
Zは、水素、アルキル、NO、CN、COOH、COR、NHCOR、又はCONHRであり、
Yは、水素、アルキル、CF、ハロゲン、ヒドロキシアルキル、又はアルキルアルデヒドであり、
Aは、

から選択される基である。ただし、R、R、R、R、Rは、互いに独立して、H、ハロゲン、CN、NO、NHCOCFである。
さらに、Rは、アルキル、ハロアルキル、ジハロアルキル、トリハロアルキル、CHF、CHF、CF、CFCF、アリル、フェニル、ハロゲン、アルケニル、又はOHであり、
は、CH、CHF、CHF、CF、CHCH、又はCFCFである。
【0029】
ある実施形態では、XはOである。他の実施形態では、TはOHである。他の実施形態では、RはCHである。他の実施形態では、ZはNOである。他の実施形態では、ZはCNである。他の実施形態では、R、R、R、Rは水素、RはNHCOCFである。他の実施形態では、R、R、R、Rは水素、RはFである。他の実施形態では、R、R、R、Rは水素である。他の実施形態では、Zはパラ位置にある。他の実施形態では、Yはメタ位置にある。他の実施形態では、それらの任意の組み合わせである。
【0030】
ある実施形態では、本発明は、化学式(I)、(II)、(III)又は(IV)の化合物、又はそのプロドラッグ、類似体、異性体、代謝産物、誘導体、薬学的に許容される塩、医薬品、多形体、結晶、不純物、N酸化物、水和物或いはそれらの任意の組み合わせと、適切な担体又は希釈液とを含む医薬品組成物を提供する。
【0031】
“アルキル”基は、ある実施形態では、直鎖型、分枝型又は環状型の飽和脂肪族炭化水素である。ある実施形態では、アルキル基は、1〜12個の炭素を有する。他の実施形態では、アルキル基は、1〜7個の炭素を有する。ある実施形態では、アルキル基は、1〜6個の炭素を有する。ある実施形態では、アルキル基は、1〜4個の炭素を有する。アルキル基は置換されない、又は、ハロゲン、水酸基、アルコキシ・カルボニル基、アミド基、アルキルアミド基、ジアルキルアミド基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、カルボニル基、チオ基及びチオアルキル基から成る群より選択される1つ又は複数の基と置換される。
【0032】
“アルケニル”基は、ある実施形態では、1つ以上の二重結合を有する直鎖型、分枝型又は環状型の不飽和炭化水素である。アルケニル基は、1つの二重結合、2つの二重結合又は3つの二重結合を有している。アルケニル基の例としては、エテニル、プロペニル、ブテニル、シクロヘキセニルなどがある。アルケニル基は置換されない、又は、ハロゲン、水酸基、アルコキシ・カルボニル基、アミド基、アルキルアミド基、ジアルキルアミド基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、カルボニル基、チオ基及びチオアルキル基から成る群より選択される1つ又は複数の基と置換される。
【0033】
“ハロアルキル”基は、上記に定義したアルキル基を1つ又は複数のハロゲン原子(F、Cl、Br、Iなど)で置換したものである。
【0034】
“アリル”基は、ある実施形態では、少なくとも1つの炭素環式芳香族基又は複素環式芳香族基を有する芳香族基である。アリル基は置換されない、又は、ハロゲン、ハロアルキル基、水酸基、アルコキシ・カルボニル基、アミド基、アルキルアミド基、ジアルキルアミド基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、カルボニル基、チオ基、及びチオアルキル基から成る群より選択される1つ又は複数の基と置換される。アリル環の例としては、フェニル、ナフチル、ピラニル、ピロリル、ピラジニル、ピリミジニル、ピラゾリル、ピリジニル、フラニル、チオフェニル、チアゾリル、イミダゾリル、イソオキサゾリルなどがある(ただし、これらに限定されるものではない)。
【0035】
“ヒドロキシル”基は、OH基である。当業者には明らかなように、本発明に係る化合物のTがORならば、RはOHではない。
【0036】
“ハロ”又は“ハロゲン”は、ある実施形態ではFであり、他の実施形態ではClであり、他の実施形態ではBrであり、他の実施形態ではIである。
【0037】
“アリルアルキル”基は、ある実施形態では、アリル基と結合したアルキル基である。なお、アルキル基とアリル基は、上記に定義したとおりである。アリルアルキル基の例としては、ベンジル基などがある。
【0038】
ある実施形態では、本発明は、SARM化合物、及び/又は、前記SARM化合物の類似体、誘導体、異性体、代謝産物、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物、プロドラッグ、多形体、不純物、結晶或いはそれらの任意の組み合わせを提供する。したがって、ある実施形態では、本発明は、前記SARM化合物の類似体を提供する。ある実施形態では、本発明は、前記SARM化合物の誘導体を提供する。ある実施形態では、本発明は、前記SARM化合物の異性体を提供する。ある実施形態では、本発明は、前記SARM化合物の代謝産物を提供する。ある実施形態では、本発明は、前記SARM化合物の薬学的に許容される塩を提供する。ある実施形態では、本発明は、前記SARM化合物の医薬品を提供する。ある実施形態では、本発明は、前記SARM化合物の水和物を提供する。ある実施形態では、本発明は、前記SARM化合物のN酸化物を提供する。ある実施形態では、本発明は、前記SARM化合物のプロドラッグを提供する。ある実施形態では、本発明は、前記SARM化合物の多形体を提供する。ある実施形態では、本発明は、前記SARM化合物の不純物を提供する。ある実施形態では、本発明は、前記SARM化合物の結晶を提供する。他の実施形態では、本発明は、前記SARM化合物を含んでいる組成物を提供する。他の実施形態では、本発明には、本発明に係るSARM化合物の類似体、誘導体、異性体、代謝産物、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物、プロドラッグ、多形体、不純物、又は結晶の組み合わせを提供する。
【0039】
ここで定義される“異性体”は、光学異性体とその類似体、構造異性体とその類似体、及び配座異性体とその類似体などを含む(ただし、これらに限定されるものではない)。
【0040】
ある実施形態では、“異性体”は、前記SARM化合物の光学異性体を含む。本発明に係るSARMが少なくとも1つのキラル中心を有していることを当業者なら理解するであろう。したがって、本発明に係る方法で使用されるSARMは、光学活性又はラセミ形態で存在しており、単離されている。ある化合物は、多形性を示し得る。当然のことながら、本発明は、任意のラセミ、光学活性、多形又は立体異性形態、或いはそれらの混合物を含んでおり、それらは上記したアンドロゲンに関連する病気の治療に有用であるという特性を示す。ある実施形態では、前記SARMは、純粋な(R)異性体である。他の実施形態では、前記SARMは、純粋な(S)異性体である。他の実施形態では、前記SARMは、(R)異性体と(S)異性体との混合物である。他の実施形態では、前記SARMは、同量の(R)異性体及び(S)異性体を含むラセミ混合物である。当該技術分野では、光学活性形態を作成する方法は周知である(例えば、再結晶法によるラセミ形態の分解により、光学活性開始物質の合成により、キラル合成により、又は、キラル固定相を使用したクロマトグラフ分離により行う)。
【0041】
本発明は、前記SARMの“薬学的に許容される塩”を提供する。薬学的に許容される塩は、ある実施形態では、アミノ置換されたSARM及び有機酸又は無機酸(例えばクエン酸や塩酸)を使用して作成される。薬学的に許容される塩は、他の実施形態では、無機塩基(例えば水酸化ナトリウム)を処理することによって、フェノール化合物から生成することもできる。他の実施形態では、フェノール化合物のエステルは、脂肪族及び芳香族カルボン酸(例えば酢酸エステルと安息香酸エステル)から生成することもできる。
【0042】
また、本発明は、上記したSARMのアミノ置換基のN酸化物を提供する。
【0043】
本発明は、前記SARM化合物の誘導体を提供する。ある実施形態では“誘導体”は、エーテル誘導体、酸誘導体、アミノ誘導体、エステル誘導体などを含む(ただし、これらに限定されるものではない)。他の実施形態では、本発明は、前記SARM化合物の水和物を提供する。ある実施形態では、“水和物”は、半水和物、一水和物、二水和物、三水和物などを含む(ただし、これらに限定されるものではない)。
【0044】
本発明は、他の実施形態では、前記SARM化合物の代謝産物を提供する。ある実施形態では、“代謝産物”は、別の物質から代謝作用又は代謝過程によって生成された物質を意味する。
【0045】
本発明は、他の実施形態では、SARM化合物の医薬品を提供する。ある実施形態では、“医薬品”は、医薬品としての使用に適した組成物(医薬品組成物)を意味する。
【0046】
《選択的アンドロゲン受容体調節剤(SARM)》
【0047】
SARMは、アンドロゲン受容体に対する非ステロイド性リガンドとしてのアンドロゲン活性及びタンパク同化作用を示す新規なアンドロゲン受容体標的物質(androgen receptor targeting agent:ARTA)である。この新規な物質は、男性における様々な、ホルモンに関連する病気(性的不全、性欲減退、勃起不全、性腺機能低下症、筋肉減少症、骨減少症、骨粗鬆症、気分・認識力の変調、うつ病、貧血、脱毛症、肥満、良性前立腺肥大症、及び/又は前立腺癌)の治療に有用である。さらに、SARMは、経口テストステロン補充療法及び前立腺癌の画像化に有用である。また、SARMは、女性における様々な、ホルモンに関連する病気(性的不全、性欲減退、性腺機能低下症、筋肉減少症、骨減少症、骨粗鬆症、気分・認識力の変調、うつ病、貧血、脱毛症、肥満、子宮内膜症、乳ガン、子宮癌、及び卵巣癌)の治療に有用である。
【0048】
本発明は、新規な選択的アンドロゲン受容体調節剤(SARM)化合物を提供する。このSARM化合物は筋萎縮疾患及び骨関連疾患に有用であり、アンドロゲン受容体アゴニスト(ARアゴニスト)、部分アゴニスト、又はアンドロゲン受容体アンタゴニスト(ARアンタゴニスト)に分類される。
【0049】
受容体アゴニストは、受容体と結合してその受容体を活性化させる物質である。受容体部分アゴニストは、受容体と結合してその受容体を部分的に活性化させる物質である。受容体アンタゴニストは、受容体と結合してその受容体を不活性にする物質である。ここで実証するように、ある実施形態では、本発明に係るSARM化合物は組織選択性を有し、例えば、受容体が発現した組織に応じて、単一の物質は、アゴニスト、部分的アゴニスト及び/又はアンタゴニストになり得る。例えば、SARM化合物は、筋肉組織を刺激すると同時に、前立腺組織を抑制し得る。ある実施形態では、本発明に係る筋肉萎縮症の治療に有用なSARM化合物はARアゴニストであり、ARと結合してARを活性化させるのに有用である。他の実施形態では、本発明に係るSARM化合物はARアンタゴニストであり、ARと結合してARを不活性させるのに有用である。本発明に係る化合物がARアゴニストであるかアンタゴニストであるかを判断するための分析方法は、当該技術分野では周知である。例えば、ARアゴニスト活性は、SARM化合物における、AR含有組織(例えば前立腺や精嚢)の成長を維持及び/又は刺激する能力をモニタすることで判断できる(例えば重量測定によって)。ARアンタゴニスト活性は、SARM化合物における、AR含有組織の成長を抑制する能力をモニタリングすることで判断できる。別の実施形態では、本発明に係るSARM化合物は、ARの部分的アゴニスト又はアンタゴニストとして分類することもできる。SARMはある組織内ではARアゴニストであり、AR反応遺伝子の転写を増加させる(例えば筋肉同化効果)。他の組織内では、これらの化合物は、天然アンドロゲンのアゴニスト作用を防止するために、ARにおいてテストステロン及び/又はジヒドロテストステロン(dihydrotestosterone:DHT)の拮抗阻害剤して作用する。SARM(選択的アンドロゲン受容体調節剤)は、ある実施形態では、アンドロゲン受容体の活性を調節する化合物である。ある実施形態ではSARMはアゴニストであり、他の実施形態ではSARMはアンタゴニストである。
【0050】
ある実施形態ではSARMは、患者の性腺に対してのアンタゴニスト活性と、筋肉に対しての末梢的なアゴニスト活性とを有する。肛門挙筋筋肉組織と対比した前立腺組織に対する効果に関してのそのような活性はここで実証する(図3〜5参照)。
【0051】
ある実施形態では、本発明に係るSARM化合物は、ARと可逆的又は不可逆的に結合する。他の実施形態では、SARM化合物は、ARと可逆的に結合する。ある実施形態では、SARM化合物は、ARと不可逆的に結合する。本発明に係るSARM化合物は、AR(すなわち共有結合構造)のアルキル化が可能な官能基(親和性標識)を有している。したがって、この場合、SARM化合物は、受容体と不可逆的に結合するので、内在性リガンドDHTやテストステロンなどのステロイドによっては置換されない。
【0052】
ある実施形態では、アンドロゲン受容体の調節は、化合物の受容体を介した信号伝達、及び、任意の又は全ての受容体情報伝達のダウンストリーム効果を促進又は増大させる能力に関する。
【0053】
他の実施形態では、アンドロゲン受容体の調節は、化合物の受容体を介した信号伝達、及び、任意の又は全ての受容体情報伝達のダウンストリーム効果を弱める又は抑止する能力に関する。
【0054】
他の実施形態では、本発明に係るSARMは、アンドロゲン受容体の相同物と相互に作用する。ある実施形態では、“アンドロゲン受容体の相同物”は、構造的に関連のある受容体、又は、機能的に関連のある受容体である。ある実施形態では、本発明に係るSARMは、エストロゲンと相互作用する。また、他の実施形態では、本発明に係るSARMは、同化経路、ステロイド産生経路、又は代謝経路に関与している細胞表面分子と相互作用する。
【0055】
ある実施形態では、本発明は、SARM(又は他の実施形態では本発明に係るSARM)を含有する組成物を提供する。
【0056】
ある実施形態では、前記組成物は医薬品組成物であり、他の実施形態では、ペレット、錠剤、カプセル、微粉末化したカプセル、微粉末化された又は微粉末化されていないカプセル、溶液、懸濁液、乳濁液、エリキシル剤、ゲル、クリーム、坐剤又は非経口的な組成物である。
【0057】
ある実施形態では、微粉末化したカプセルは、本発明に係るSARMを含む粒子を含有している。“微粉末化”は、粒径が100ミクロン未満、又は他の実施形態では50ミクロン未満、又は他の実施形態では35ミクロン未満、又は他の実施形態では15ミクロン未満、又は他の実施形態では10ミクロン未満、又は他の実施形態では5ミクロン未満のことを意味する。
【0058】
前記医薬品組成物は、効果的で便利な方法で投与される。そのような投与方法としては、例えば、血管内投与(intravascular:i.v.)、筋内投与(intramuscular:i.m.)、鼻内投与(intranasal:i.n.)、皮下投与(subcutaneous:s.c.)、舌下投与、経口投与、直腸投与、膣内投与、又は組み換えウイルス/組成物を組織に到達させることが可能な他の任意の方法(例えば注射やカテーテル)がある。又は、粘膜細胞、皮膚又は目へ適用する際は、局所的な投与が望ましい。他の投与方法としては、吸引又はエアロゾル形成を介しての投与がある。
【0059】
哺乳類、特に人間に投与するためには、医師が、その個人に対して最も適切であり、その個人の年齢、体重及び反応によって変わり得る、実際の投与量と治療期間を決定することが期待される。
【0060】
ある実施形態では、投与するための組成物は、殺菌した液体であり得る。他の実施形態では、投与するための組成物は、水溶性又は非水性の懸濁液又は乳濁液である。ある実施形態では、前記組成物は、プロピレン・グリコール、ポリエチレン・グリコール、注射用有機エステル(例えばオレイン酸エチル)、又はシクロデキストリンを含み得る。他の実施形態では、前記組成物は、湿潤、乳化及び/又は分散剤を含み得る。他の実施形態では、前記組成物は、滅菌水、又は他の滅菌された注射可能な媒体を含み得る。
【0061】
ある実施形態では、本発明に係る組成物は、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤と共に本発明に係るSARM又はその任意の組み合わせを含み得る。
【0062】
ある実施形態では、“医薬品組成物”は、治療に効果的な量の本発明に係るSARM化合物の1つ又は複数と、本発明に係る方法に使用可能な適切な賦形剤及び/又は担体とを組み合わせたものである。ある実施形態では、前記組成物は、治療に効果的な量の本発明に係るSARMを含み得る。ある実施形態では、“治療に効果的な量”は、与条件及び投薬計画において治療効果のある量を意味する。ある実施形態では、そのような組成物は、当該技術分野では周知の方法により投与される。
【0063】
ある実施形態では、本発明に係る組成物は、経口投与又は非経口投与用に、例えば被覆されていないタブレット、被覆されたタブレット、ピル、カプセル、粉末、粒状、分散液、又は懸濁液などの形態で製剤される。ある実施形態では、本発明に係る組成物は、静脈内投与用に製剤される。他の実施形態では、本発明に係る組成物は、経皮投与用に、軟膏、クリーム、又はゲルなど形態で製剤される。他の実施形態では、本発明に係る組成物は、経鼻投与用に、エアロゾル又はスプレーの形態に製剤される。他の実施形態では、本発明に係る組成物は、液体投与用の形態に製剤される。適切な液体投与用の形態としては、水溶液又は水中の懸濁液、薬学的に許容される脂肪或いは油、アルコール、又は他の有機溶媒(例えばエステル、乳濁液、シロップ或いはエリキシル剤、溶液、及び/又は乳濁液)がある。
【0064】
適切な賦形剤及び担体は、投与方法に応じて選択される。前記組成物を送達させるのにリポソームを使用することができる。適切な固形担体の例としては、乳糖、ショ糖、ゼラチン、及び寒天がある。経口投与形態としては、適切な結合剤、潤滑剤、希釈剤、崩壊剤、着色剤、香料添加剤、流動助剤、及び可溶化剤がある。また、経口投与形態としては、例えば、適切な溶剤、保存料、乳化剤、懸濁化剤、希釈剤、甘味料、増粘剤、及び可溶化剤がある。非経口及び静脈内投与の形態としては、選択された注射又は送達システムの種類に適合するミネラル又は他の物質がある。もちろん、他の賦形剤を使用することもできる。
【0065】
本発明に係るSARMは、様々な用量で投与することができる。ある実施形態では、SARMは、1日当たり0.1〜200mgの用量で投与される。他の実施形態では、SARMは、1日当たり0.1−10mgの用量で投与される。他の実施形態では、SARMは、1日当たり0.1−25mgの用量で投与される。他の実施形態では、SARMは、1日当たり0.1−50mgの用量で投与される。他の実施形態では、SARMは、1日当たり0.3−15mgの用量で投与される。他の実施形態では、SARMは、1日当たり0.3−30mgの用量で投与される。他の実施形態では、SARMは、1日当たり0.5−25mgの用量で投与される。他の実施形態では、SARMは、1日当たり0.5−50mgの用量で投与される。他の実施形態では、SARMは、1日当たり0.75−15mgの用量で投与される。他の実施形態では、SARMは、1日当たり0.75−60mgの用量で投与される。他の実施形態では、SARMは、1日当たり1−5mgの用量で投与される。他の実施形態では、SARMは、1日当たり1−20mgの用量で投与される。他の実施形態では、SARMは、1日当たり3−15mgの用量で投与される。他の実施形態では、SARMは、1日当たり30−50mgの用量で投与される。他の実施形態では、SARMは、1日当たり30−75mgの用量で投与される。他の実施形態では、SARMは、1日当たり100−2000mgの用量で投与される。
【0066】
本発明に係るSARMは、様々な用量で投与することができる。ある実施形態では、SARMは1mgの用量で投与される。他の実施形態では、SARMは5mgの用量で投与される。他の実施形態では、SARMは10mgの用量で投与される。他の実施形態では、SARMは15mgの用量で投与される。他の実施形態では、SARMは20mgの用量で投与される。他の実施形態では、SARMは25mgの用量で投与される。他の実施形態では、SARMは30mgの用量で投与される。他の実施形態では、SARMは35mgの用量で投与される。他の実施形態では、SARMは40mgの用量で投与される。他の実施形態では、SARMは45mgの用量で投与される。他の実施形態では、SARMは50mgの用量で投与される。他の実施形態では、SARMは55mgの用量で投与される。他の実施形態では、SARMは60mgの用量で投与される。他の実施形態では、SARMは65mgの用量で投与される。他の実施形態では、SARMは70mgの用量で投与される。他の実施形態では、SARMは75mgの用量で投与される。他の実施形態では、SARMは80mgの用量で投与される。他の実施形態では、SARMは85mgの用量で投与される。他の実施形態では、SARMは90mgの用量で投与される。他の実施形態では、SARMは95mgの用量で投与される。他の実施形態では、SARMは100mgの用量で投与される。
【0067】
ある実施形態では、本発明に係る化合物及び組成物は、ここで説明する本発明に係る方法に使用することができる。ある実施形態では、同じ物を含んでいるSARM又は組成物は、当業者には明らかなように、患者の目的とする反応を、抑止、抑制、促進又は増大させることができる。他の実施形態では、前記化合物は、SRAM化合物が投与される特定の用途に有用なさらなる活性成分を更に含む。
【0068】
ある実施形態では、本発明は、次の(1)〜(6)のためのSARM化合物、又はそのプロドラッグ、類似体、異性体、代謝産物、誘導体、薬学的に許容される塩、医薬品、多形体、結晶、不純物、N酸化物、水和物或いはそれらの任意の組み合わせの使用を提供する。(1)骨関連疾患の治療、(2)骨関連疾患の予防、(3)骨関連疾患の抑止、(4)骨関連疾患の抑制、(5)患者の骨の強度又は質量の増加、(6)破骨細胞増殖の抑制。ある実施形態では、SARM化合物は、化学式(I)、(II)、(III)又は(IV)の化合物である。
【0069】
ある実施形態では、骨関連疾患は、遺伝性疾患である。他の実施形態では、骨関連疾患は、ある病気を治療した結果、誘発される。例えば、ある実施形態では、本発明に係るSARMは、患者の前立腺癌発症に対応して行われるアンドロゲン枯渇療法の結果生じた骨関連疾患の治療に有用である。
【0070】
ある実施形態では、本発明は、骨関連疾患を予防するためのSARM化合物を提供する。他の実施形態では、本発明は、骨関連疾患を抑止するためのSARM化合物を提供する。他の実施形態では、本発明は、骨関連疾患を抑制するためのSARM化合物を提供する。ある実施形態では、SARM化合物は、化学式(I)、(II)、(III)又は(IV)の化合物である。ある実施形態では、SARM化合物は、化学式(I)、(II)、(III)又は(IV)の化合物、又はそのプロドラッグ、類似体、異性体、代謝産物、誘導体、薬学的に許容される塩、医薬品、多形体、結晶、不純物、N酸化物、水和物或いはそれらの任意の組み合わせである。
【0071】
ある実施形態では、骨関連疾患は骨粗鬆症である。他の実施形態では、骨関連疾患は骨粗鬆症である。他の実施形態では、骨関連疾患は骨減少症である。他の実施形態では、骨関連疾患は骨吸収増加である。他の実施形態では、骨関連疾患は骨折である。他の実施形態では、骨関連疾患は骨脆弱性である。他の実施形態では、骨関連疾患は骨密度(BMD)減少である。他の実施形態では、骨関連疾患は、骨粗鬆症、骨減少症、骨吸収増加、骨折、骨脆弱性、骨密度(BMD)減少の任意の組み合わせである。各骨粗鬆症は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0072】
“骨粗鬆症”は、ある実施形態では、カルシウムや骨タンパク質の不足に起因する骨量の減少によって、骨が細くなる病気である。他の実施形態では、骨粗鬆症は全身性の骨疾患であり、骨量の減少及び骨組織の劣化という特徴がある。そのため、骨粗鬆症にかかると、骨が脆くなり骨折しやすくなる。骨粗鬆症の患者は、骨強度が異常になるので、骨折しやすくなる。他の実施形態では、骨粗鬆症にかかると、通常は骨内に含まれるカルシウム及びタンパク質コラーゲンの両方を激減させる。ある実施形態では、その結果、骨質の異常や骨密度の減少がもたらされる。他の実施形態では、骨粗鬆症にかかった骨は、通常は骨折しないようなちょっとした転倒やけがでも、骨折するようになる。骨折は、ある実施形態では、亀裂骨折(例えば股関節の)又は崩壊骨折(例えば背骨の圧迫骨折)である。背骨、股関節及び手首が、骨粗鬆症によって骨折する一般的な部位である(ただし、骨折は他の骨格部位でも起こり得る)。骨粗鬆症を治療せずに放っておくと、他の実施形態では、姿勢の変化、身体的異常、及び可動域の減少が生じ得る。
【0073】
ある実施形態では、骨粗鬆症はアンドロゲンの欠乏に起因する。他の実施形態では、骨粗鬆症はアンドロゲンが欠乏した後に起こる。他の実施形態では、骨粗鬆症は原発性骨粗鬆症である。他の実施形態では、骨粗鬆症は続発性骨粗鬆症である。他の実施形態では、骨粗鬆症は閉経後骨粗鬆症である。他の実施形態では、骨粗鬆症は若年性骨粗鬆症である。他の実施形態では、骨粗鬆症は特発性骨粗鬆症である。他の実施形態では、骨粗鬆症は老人性骨粗鬆症である。
【0074】
他の実施形態では、原発性骨粗鬆症はI型原発性骨粗鬆症である。他の実施形態では、原発性骨粗鬆症はII型原発性骨粗鬆症である。各骨粗鬆症は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0075】
骨粗鬆症及び骨減少症は、他の実施形態では、全身性の骨疾患であり、骨量の減少及び骨組織の微細構造の劣化という特徴がある。“微細構造の劣化”は、ある実施形態では、骨梁(後に定義する)が細くなり、骨内の骨梁間の結合が失われることである。他の実施形態では、“骨粗鬆症”は、BMD(骨ミネラル濃度)が若年成人の平均値を2.5SD(standard deviation:標準偏差)以上下回った状態と定義される。他の実施形態では、“骨粗鬆症”は、BMC(骨塩量)が若年成人の平均値を2.5以上下回った状態と定義される。他の実施形態では、“骨粗鬆症”は、BMDが若年成人の平均値を2.0SD以上下回った状態と定義される。他の実施形態では、“骨粗鬆症”は、BMCが若年成人の平均値を2.0SD以上下回った状態と定義される。他の実施形態では、“骨粗鬆症”は、BMDが若年成人の平均値を3.0SD以上下回った状態と定義される。他の実施形態では、“骨粗鬆症”は、BMCが若年成人の平均値を3.0SD以上下回った状態と定義される。骨粗鬆症及び骨減少症の各定義は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0076】
他の実施形態では、“骨粗鬆症”は、BMDが若年成人の平均値を2.5SD下回った状態と定義される。他の実施形態では、“骨粗鬆症”は、BMCが若年成人の平均値を2.5下回った状態と定義される。他の実施形態では、“骨粗鬆症”は、BMDが若年成人の平均値を2.0SD下回った状態と定義される。他の実施形態では、“骨粗鬆症”は、BMCが若年成人の平均値を2.0SD下回った状態と定義される。他の実施形態では、“骨粗鬆症”は、BMDが若年成人の平均値を3.0SD下回った状態と定義される。他の実施形態では、“骨粗鬆症”は、BMCが若年成人の平均値を3.0SD下回った状態と定義される。骨粗鬆症及び骨減少症の各定義は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0077】
骨粗鬆症及び骨減少症の評価方法は、当該技術分野では周知である。例えば、ある実施形態では、濃度測定によって測定された患者のBMD(g/cm)を、性別が同一の若年成人における骨量ピーク時のBMDの平均値である“正常値”と比較することによって、“Tスコア”を作成する。他の実施形態では、患者の骨量減少を表すZスコアを、性別及び年齢が同一の人間の予測される損失と比較する。他の実施形態では、“骨粗鬆症”は、Tスコアが若年成人の平均値を2.5SD以上下回った状態と定義される。他の実施形態では、“骨粗鬆症”は、Zスコアが若年成人の平均値を2.5SD以上下回った状態と定義される。他の実施形態では、“骨粗鬆症”は、Tスコアが若年成人の平均値を2.0SD以上下回った状態と定義される。他の実施形態では、“骨粗鬆症”は、Zスコアが若年成人の平均値を2.0SD以上下回った状態と定義される。他の実施形態では、“骨粗鬆症”は、Tスコアが若年成人の平均値を3.0SD以上下回った状態と定義される。他の実施形態では、“骨粗鬆症”は、Zスコアが若年成人の平均値を3.0SD以上下回った状態と定義される。
【0078】
他の実施形態では、“骨粗鬆症”は、Tスコアが若年成人の平均値を2.5SD下回った状態と定義される。他の実施形態では、“骨粗鬆症”は、Zスコアが若年成人の平均値を2.5SD下回った状態と定義される。他の実施形態では、“骨粗鬆症”は、Tスコアが若年成人の平均値を2.0SD下回った状態と定義される。他の実施形態では、“骨粗鬆症”は、Zスコアが若年成人の平均値を2.0SD下回った状態と定義される。他の実施形態では、“骨粗鬆症”は、Tスコアが若年成人の平均値を3.0SD下回った状態と定義される。他の実施形態では、“骨粗鬆症”は、Zスコアが若年成人の平均値を3.0SD下回った状態と定義される。骨粗鬆症及び骨減少症のそれぞれの定義は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0079】
“BMD”は、ある実施形態では、正確な骨量の測定値を意味する。BMDによって測定された骨の絶対量は、一般的に、骨強度及び重量に耐える能力と関係がある。血圧の測定によって脳梗塞の危険を予測できるのと同様に、BMDの測定によって骨折の危険を予測できる。
【0080】
BMD(骨ミネラル濃度)は、ある実施形態では、公知のBMDマッピング技術によって測定することができる。ある実施形態では、腰、背骨、手首又は踵骨の骨密度は、様々な手法によって測定される。BMDの好ましい測定方法は、二重エネルギーX線吸収測定法(dual-energy x-ray absorptiometry:DEXA)である。腰、前後方向の背骨、側方の背骨、及び手首のBMDは、この手法によって測定することができる。ある部位の総体的な骨折は、任意の部分の測定によって予測できる。しかし、ある部位の骨折の予測には、特定部分の情報が適している。背骨のBMDを測定するためには、定量的コンピュータ断層撮影(quantitative computerized tomography:QCT)を使用することもできる。詳しくは、例えば、「Nuclear Medicine: Quantitative Procedures(by Wahner H W, et al, Toronto little, Brown & Co., 1983, pp.107-132)」、「Assessment of Bone Mineral Part 1(J Nucl Medicine 26, pp.1134-1141, 1984)」、及び、「Bone mineral Denisty of The Radius(J Nucl Medicine 26, pp.13-39, 1985)」を参照されたい。各手法は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0081】
“骨減少症”は、ある実施形態では、BMD又はBMCが若年成人の平均値を1〜2.5SD下回った状態である。他の実施形態では、骨減少症は、石灰化又は骨密度の減少を意味する。この用語は、ある実施形態では、そのような状態が見られる全ての骨格系を含む。本発明において開示されている判断(diagnosis)のそれぞれの定義又は意味は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0082】
ある実施形態では、“骨折”は、骨の破壊を意味し、脊椎骨折と非脊椎骨折との両方を含む。“骨の脆弱化”は、ある実施形態では、骨が弱体化し、骨折しやすくなった状態を意味する。
【0083】
他の実施形態では、骨関連疾患は、本発明に係るSARM又はそれらの組み合わせによって治療される。他の実施形態では、SARM又は本発明に係るSARMの投与の前に、同時に、又は後に、他の骨形成促進化合物(bone stimulating compound)が患者に対して提供される。ある実施形態では、そのような他の骨形成促進化合物は、天然物質又は合成物質を含んでいる。
【0084】
ある実施形態では、骨形成促進化合物は、骨形成タンパク質(bone morphogenetic protein:BMP)、成長因子(例えば、上皮細胞増殖因子(epidermal growth factor:EOF))、線維芽細胞増殖因子(fibroblast growth factor:FGF)、形質転換成長因子(transforming growth factor:TGF)(TGFα又はTGFベータ)、インスリン様成長因子(insulin growth factor:IGF)、血小板由来増殖因子(platelet-derived growth factor:PDGF)、ヘッジホッグタンパク質(例えば、ソニック・ヘッジホッグ、デザート・ヘッジホッグ、)ホルモン(例えば、卵胞刺激ホルモン、副甲状腺ホルモン、副甲状腺ホルモン関連ペプチド、アクチビン、インヒビン、frizzled、frzb又はfrazzledタンパク質、BMP結合タンパク質(chordinやフェツインなど))、サイトカイン(例えば、IL−3、IL−7、GM−CSF)、ケモカイン(例えばエオタキシン)、コラーゲン、オステオカルシン、オステオネクチン、及び当業者に明白な他の物質を含んでいる。
【0085】
他の実施形態では、本発明に係る骨疾患の治療に使用される組成物は、SARM又は本発明に係るSARM、さらなる骨形成促進化合物、又は骨形成原細胞を含み得る。ある実施形態では、骨形成原細胞は、骨芽細胞への分化を促進し得る幹細胞又は前駆細胞であり得る。
【0086】
他の実施形態では、骨形成促進化合物をエンコードする核酸(本発明の一部とみなされる)が、患者に投与され得る。
【0087】
ある実施形態では、本発明に係る骨粗鬆症、骨減少症、骨吸収の増加、骨折、骨の脆弱化、BMDの減少及び他の疾患・障害は、ホルモン障害、ホルモン崩壊又はホルモン失調(hormonal imbalance)によって生じる。他の実施形態では、これらの状態は、ホルモン障害、ホルモン崩壊又はホルモン失調とは無関係に生じる。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0088】
ある実施形態では、ホルモン障害、ホルモン崩壊及びホルモン失調は、ホルモン過剰を含む。他の実施形態では、ホルモン障害、ホルモン崩壊及びホルモン失調は、ホルモン欠乏を含む。ある実施形態では、ホルモンはステロイド・ホルモンである。他の実施形態では、ホルモンはエストロゲンである。他の実施形態では、ホルモンはアンドロゲンである。他の実施形態では、ホルモンはグルココルチコイド(glucocorticoid)である。他の実施形態では、ホルモンはコルチコステロイド(corticosteroid)である。他の実施形態では、ホルモンは黄体形成ホルモン(luteinizing hormone:LH)である。他の実施形態では、ホルモンは卵胞刺激ホルモン(follicle-stimulating hormone:FSH)である。他の実施形態では、ホルモンは、当該技術分野では周知の任意のホルモンである。他の実施形態では、ホルモン障害、ホルモン崩壊及びホルモン失調は、更年期障害と関係がある。他の実施形態では、ホルモン欠乏症は、特定の操作の結果であり、患者に対する疾患又は障害の治療の副作用である。例えば、ホルモン欠乏症は、患者の前立腺癌を治療するために、患者のアンドロゲンを減少させた結果生じる。
【0089】
それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態に相当する。
【0090】
ある実施形態では、本発明は、患者の骨強度を増加させるためのSARM化合物の使用方法を提供する。他の実施形態では、前記SARM化合物は、化学構造式(I)、(II)、(III)又は(IV)で表される化合物である。他の実施形態では、前記SARM化合物は、化学構造式(I)、(II)、(III)、(IV)で表される化合物、又は、そのプロドラッグ、類似体、異性体、代謝産物、誘導体、薬学的に許容される塩、医薬品、多形体、結晶、不純物、N酸化物、水和物、N酸化物或いはそれらの組み合わせである。したがって、患者の骨強度を増加させる。
【0091】
他の実施形態では、患者は骨粗鬆症である。他の実施形態では、骨粗鬆症はホルモン的に誘発されたものである。
【0092】
ある実施形態では、本発明は、患者の骨量を増加させるためのSARM化合物の使用方法を提供する。他の実施形態では、前記SARM化合物は、化学構造式(I)、(II)、(III)又は(IV)で表される化合物である。他の実施形態では、前記SARM化合物は、化学構造式(I)、(II)、(III)、(IV)で表される化合物又はそのプロドラッグ、類似体、異性体、代謝産物、誘導体、薬学的に許容される塩、医薬品、多形体、結晶、不純物、N酸化物、水和物、N酸化物或いはそれらの組み合わせ、並びにそれを含む組成物である。
【0093】
他の実施形態では、患者は骨粗鬆症である。他の実施形態では、骨粗鬆症はホルモン的に誘発されたものである。他の実施形態では、患者は筋組織減少(Sacropenia)又はカヘキシー(cachexia)である。他の実施形態では、本発明に係る方法は、患者の皮質の骨量を増加させるためのものである。他の実施形態では、骨量は骨梁の量である。他の実施形態では、骨量は網状骨の量である。
【0094】
ある実施形態では、本発明は、骨形成を促進させるためのSARM化合物の使用方法を提供する。他の実施形態では、前記SARM化合物は、化学構造式(I)、(II)、(III)又は(IV)で表される化合物である。他の実施形態では、前記SARM化合物は、化学構造式(I)、(II)、(III)、(IV)で表される化合物、又は、そのプロドラッグ、類似体、異性体、代謝産物、誘導体、薬学的に許容される塩、医薬品、多形体、結晶、不純物、N酸化物、水和物、N酸化物或いはそれらの組み合わせ、並びにそれを含む組成物である。
【0095】
他の実施形態では、SARM化合物は、骨芽細胞形成を促進又は増進する。他の実施形態では、前記SARM化合物は、破骨細胞の形成を抑制する。
【0096】
ある実施形態では、本発明は、骨芽細胞(osteoblast)の刺激又は増殖の増大による骨形成を提供する。ある実施形態では、“骨芽細胞”は、骨形成に関与する細胞を意味する。ある実施形態では、骨形成に関与する骨芽細胞は、組織を形成した後、その組織内にミネラルを堆積させる(骨に強度を与える)。他の実施形態では、本発明は、破骨細胞(osteoclast)の誘導又は活性を抑制することによる骨形成を提供する。他の実施形態では、“破骨細胞”は、骨の再形成、特に骨吸収に関与する細胞を意味する。
【0097】
他の実施形態では、骨疾患又は骨障害は、本発明に係る骨形成の刺激によって治療される。
【0098】
図1〜2は、SARM化合物IIIは、破骨細胞の誘導を抑止しつつ、骨髄細胞の骨芽細胞への分化を誘導し、骨芽細胞と破骨細胞の両方に対して直接的に影響を及ぼすことを示している。したがって、SARM化合物IIIは、骨粗鬆症の患者の骨量を増加させるのに有用である。
【0099】
ある実施形態では、本発明は、(1)筋肉萎縮症の治療、(2)筋肉萎縮症の予防、(3)筋肉萎縮症に起因する筋肉の消失の治療、予防、抑止、抑制、又は低減、(4)筋肉萎縮症に起因する筋肉疲労の治療、予防、抑止、抑制、又は低減、及び/又は、(5)筋肉萎縮症に起因する筋肉タンパクの異化を治療、予防、抑止、抑制、又は低減のための、本発明に係るSARM、又はそのプロドラッグ、類似体、異性体、代謝産物、誘導体、薬学的に許容される塩、医薬品、多形体、結晶、不純物、N酸化物、水和物或いはそれらの任意の組み合わせの使用を提供する。ある実施形態では、前記SARM化合物は、化学式(I)、(II)、(III)又は(IV)の化合物である。他の実施形態では、本発明は、ここに説明した本発明で用いる、本発明に係るSARMを含んでいる化合物を提供する。
【0100】
ある実施形態では、本発明は、筋肉萎縮症を治療するSARM化合物を提供する。他の実施形態では、前記SARM化合物は、化学式(I)、(II)、(III)又は(IV)の化合物である。他の実施形態では、前記SARM化合物は、化学式(I)、(II)、(III)又は(IV)の化合物、又はそのプロドラッグ、類似体、異性体、代謝産物、誘導体、薬学的に許容される塩、医薬品、多形体、結晶、不純物、N酸化物、水和物或いはそれらの任意の組み合わせ、並びにそれを含む組成物である。このようにして、筋肉萎縮症を治療することができる。
【0101】
ある実施形態では、筋肉萎縮症を治療するためのSARM化合物の使用は、前記SARM化合物を含んでいる医薬品組成物の投与を含んでいる。他の実施形態では、前記投与は、患者に前記SARM化合物を含んでいる液体状の医薬品組成物を注射することによって、経静脈的、経動脈的、又は筋肉内に投与される。他の実施形態では、前記SARM化合物を含んでいる医薬品組成物を含むペレットを患者の皮下に移植する。他の実施形態では、液体又は固体形状の前記医薬品組成物を経口投与する。他の実施形態では、液体又は固体形状の前記医薬品組成物を皮膚表面に塗布することによって、局所的に投与する。
【0102】
筋肉は、主に動力源として機能する身体の組織である。筋肉には3つのタイプがある。(a)骨格筋:体の先端及び外部の動きに反応する筋肉、(b)心筋:心臓の筋肉、(c)平滑筋:血管や内臓の壁にある筋肉。
【0103】
消耗性疾患又は障害は、ここでは、少なくとも部分的な、体重、器官又は組織の量が進行性で異常減少することを特徴とする疾患又は障害と定義される。消耗性疾患は、例えば、癌などの病状や感染の結果として生じ得る。または、消耗性疾患は、例えば廃用性失調(disuse deconditioning)などの生理的又は代謝状態の結果として生じ得る。なお、廃用性失調は、長期のベッド休養、又は例えばギブスによる手足の固定に起因して起る。また、消耗性疾患は、加齢に伴って起り得る。消耗性疾患中に生じる体重の減少は、組織タンパク質の減少に起因して、全体重が減少する、又は、器官の重量が減少する(骨量の減少、筋肉量の減少)ことを特徴とする。
【0104】
ある実施形態では、“筋萎縮(muscle wasting、muscular wasting)”は、筋肉量の進行性消失、及び/又は、筋肉の進行性弱体化及び変質と同義である。前記筋肉としては、
運動を司る骨格筋又は随意筋、心臓を制御する心筋、及び平滑筋がある。ある実施形態では、筋萎縮疾患又は障害は、慢性の筋萎縮疾患又は障害である。“慢性の筋萎縮”は、ここでは、筋肉量の慢性的(長期間持続する)な進行性消失、及び/又は、筋肉の慢性的な進行性衰弱及び変性と定義される。
【0105】
筋萎縮中に生じる筋肉量の消失は、筋肉タンパクの異化による、筋肉タンパクの破壊又は分解を特徴とする。タンパク質の異化は、異常に高い率のタンパク質分解、異常に低い率のタンパク質合成、又はそれらの組み合わせによって生じる。高度のタンパク質分解又は低度のタンパク質合成により起こるタンパク質の異化又は減少は、筋肉量の減少及び筋萎縮を引き起こす。“異化(catabolism)”は、当該技術分野では周知であり、特に代謝のエネルギー燃焼形態である。
【0106】
筋萎縮は、症状、病気、疾患、状態、又は障害の結果として生じる。ある実施形態では、症状、病気、疾患、又は状態は、慢性である。ある実施形態では、症状、病気、疾患、又は状態は、遺伝性である。ある実施形態では、症状、病気、疾患、又は状態は、神経的である。ある実施形態では、症状、病気、疾患、又は状態は、伝染性である。ここで説明したように、本発明に係る化合物及び組成物を投与する対象の症状、病気、疾患、状態、又は障害は、直接的又は間接的に、筋萎縮疾患である筋肉量の萎縮(すなわち消失)をもたらす。
【0107】
ある実施形態では、筋萎縮は、患者が筋ジストロフィー、筋萎縮、X連鎖性球脊髄性筋肉萎縮症(spinal-bulbar muscular atrophy:SBMA)、結核、ハンセン病、糖尿病、腎不全、慢性閉塞性肺疾患、癌、末期腎不全、筋組織減少、気腫、骨軟化症、心筋症を患った結果として生じる。
【0108】
他の実施形態では、筋萎縮疾患は、エンテロ・ウイルス、エプスタイン・バー・ウイルス、帯状ヘルペス、HIV、トリパノソーマ(trypanosomes)、インフルエンザ、コクサッキー(coxsackie)、リケッチア( rickettsia)、旋毛虫属(trichinella)、住血吸虫属(schistosoma)、又はマイコバクテリウムに感染した結果として起こる。
【0109】
筋ジストロフィーは、遺伝性疾患であり、進行性の衰弱、及び運動を司る骨格筋又は随意筋が縮退するという特徴がある。心臓の筋肉及び他の不随意筋は、何らかの形態の筋ジストロフィーに影響される。筋ジストロフィー(Muscular Dystrophy:MD)の主な形態としては、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、筋強直性筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィー、肢帯型筋ジストロフィー、先天性筋ジストロフィー、眼球咽頭型筋ジストロフィー、遠位筋ジストロフィー、エメリー・ドレイフアス型筋ジストロフィーがある。
【0110】
筋ジストロフィーは、あらゆる年齢の人々がかかる。しかし、ある種の形態は、幼児又は子供時代に現れるが、その他は、中年までは現れない。デュシェンヌ型筋ジストロフィーは、子供がかかる最も一般的な形態である。筋強直性筋ジストロフィーは、大人がかかる最も一般的な形態である。
【0111】
筋萎縮(Muscle Atrophy:MA)は、筋肉の消耗又は減少、及び、筋肉量の減少を特徴とする。例えば、ポリオ後筋萎縮(Post-Polio MA)は、ポリオ後筋肉萎縮症候群(Post-polio syndrome:PPS)の一部として起こる筋萎縮である。筋萎縮は、脆弱性、筋肉疲労、及び痛みを含む。
【0112】
他のタイプのMAは、X連鎖性球脊髄性筋肉萎縮症(spinal-bulbar muscular atrophy:SBMA)(別名、ケネディー病)である。この疾患は、X染色体でのアンドロゲン受容体遺伝子の欠陥から生じる。そのため、男性だけに発生する。また、大人になってから発現する。主な疾患の原因はアンドロゲン受容体の突然変異であるため、アンドロゲンの交換は現在の治療方針ではない。アンドロゲン不感受性を克服し、ことによると同化作用を提供することを期待して、アンドロゲンの濃度を増やすべく外因性プロピオン酸テストステロンが与えられた、いくつかの臨床試験がある。補充のための高い生理的濃度のテストステロンの使用は限界があり、他の潜在的な深刻な合併症を有している。
【0113】
カヘキシー(cachexia)は、疾患又は病気の副作用により起こる脆弱性及び体重の減少である。心臓カヘキシー、すなわち心筋及び骨格筋の筋肉タンパク質萎縮は、うっ血性心不全を特徴とする。癌カヘキシーは、固形腫瘍及び血液悪性腫瘍の患者に起こる症候群であり、脂肪組織及び除脂肪体重の両方の大幅な減少による体重の減少が見られる。
【0114】
また、カヘキシー(cachexia)は、後天性免疫不全症候群(後天性免疫不全症候群:AIDS)に見られる、ヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus :HIV)関連筋障害及び/又は筋肉衰弱/萎縮は、AIDSの比較的一般的な臨床症状である。HIV関連筋障害又は筋肉衰弱又は筋肉萎縮の患者は、一般的に、著しい体重減少、全身又は
近位筋の衰弱、圧痛、及び筋萎縮を経験する。
【0115】
筋組織減少(Sacropenia)は、高齢者及び慢性疾患患者がかかる衰弱性疾患であり、筋肉量及び機能の減少を特徴とする。さらに、ある筋肉萎縮疾患では、除脂肪体重の増加が、疾病率の減少及び脂肪率と関係がある。また、他の環境及び状態が、筋肉萎縮疾患と関係があり、筋肉萎縮疾患を引き起こす可能性がある。例えば、慢性的な腰痛の重症例では、深刻な場合は、傍脊柱筋(paraspinal muscle)が萎縮する。
【0116】
また、筋肉萎縮は高齢に関係がある。高齢者の全身の衰弱は筋萎縮が原因だと考えられている。身体が年齢を取るにつれて、骨格筋の割合の増加は、線維組織に取って代わられる。その結果、筋パワー、能力及び耐久性が大幅に減少する。
【0117】
病気又は負傷による長期間の入院、又は、例えば手足の固定による廃用性失調は、筋肉萎縮をもたらす。怪我、慢性的な病気、やけど、外傷、又は癌のために長期間入院している患者には、長く残る片側の筋肉萎縮が生じ、結果として体重が減少することが知られている。
【0118】
中枢神経系(central nervous system:CNS)の損傷は、筋肉萎縮症と関連がある。CNSの損傷は、例えば、疾患、外傷又は化学作用に起因する。例としては、中枢神経損傷、末梢神経損傷、又は脊髄損傷がある。
【0119】
他の実施形態では、筋肉萎縮はアルコール依存症の結果として生じ、本発明に係る化合物又は組成物によって治療可能である。
【0120】
ある実施形態では、本発明は、筋肉萎縮症を予防するためのSARM化合物の使用を提供する。他の実施形態では、前記SARM化合物は、化学式(I)、(II)、(III)又は(IV)の化合物である。他の実施形態では、前記SARM化合物は、化学式(I)、(II)、(III)又は(IV)の化合物、又はそのプロドラッグ、類似体、異性体、代謝産物、誘導体、薬学的に許容される塩、医薬品、多形体、結晶、不純物、N酸化物、水和物或いはそれらの任意の組み合わせである。他の実施形態では、前記投与は、前記SARM及び/又はそのプロドラッグ、類似体、異性体、代謝産物、誘導体、薬学的に許容される塩、医薬品、多形体、結晶、不純物、N酸化物、水和物或いはそれらの任意の組み合わせと、薬学的に許容される担体とを含む医薬品組成物の投与を含む。このようにして、筋肉萎縮症を予防することができる。
【0121】
ある実施形態では、本発明は、慢性的な筋肉萎縮症を治療するためのSARM化合物の使用を提供する。他の実施形態では、前記SARM化合物は、化学式(I)、(II)、(III)又は(IV)の化合物である。他の実施形態では、前記SARM化合物は、化学式(I)、(II)、(III)又は(IV)の化合物、又はそのプロドラッグ、類似体、異性体、代謝産物、誘導体、薬学的に許容される塩、医薬品、多形体、結晶、不純物、N酸化物、水和物或いはそれらの任意の組み合わせである。他の実施形態では、SARM化合物の使用は、患者への経口投与によって行われる。
【0122】
ある実施形態では、本発明は、筋萎縮を予防するためのSARM化合物の使用を提供する。他の実施形態では、本発明は、筋萎縮を抑止するためのSARM化合物の使用を提供する。他の実施形態では、本発明は、萎縮症を抑制するためのSARM化合物の使用を提供する。他の実施形態では、本発明は、萎縮症の発生を低減させるためのSARM化合物の使用を提供する。他の実施形態では、前記SARM化合物は、化学式(I)、(II)、(III)又は(IV)の化合物である。他の実施形態では、前記SARM化合物は、化学式(I)、(II)、(III)又は(IV)の化合物、又はそのプロドラッグ、類似体、異性体、代謝産物、誘導体、薬学的に許容される塩、医薬品、多形体、結晶、不純物、N酸化物、水和物或いはそれらの任意の組み合わせ、並びにそれを含む組成物である。
【0123】
ある実施形態では、本発明は、筋萎縮を治療、予防、抑止、抑制、又は発生を減少させるための、本発明に係るSARM、又はそのプロドラッグ、類似体、異性体、代謝産物、誘導体、薬学的に許容される塩、医薬品、多形体、結晶、不純物、N酸化物、水和物或いはそれらの任意の組み合わせ、並びにそれを含む組成物の使用を提供する。
【0124】
他の実施形態では、本発明は、筋肉の能力、筋肉の大きさ、筋肉の強度、又はそれらの組み合わせを高めるための、本発明に係るSARM、又はそのプロドラッグ、類似体、異性体、代謝産物、誘導体、薬学的に許容される塩、医薬品、多形体、結晶、不純物、N酸化物、水和物或いはそれらの任意の組み合わせ、並びにそれを含む組成物の使用を提供する。
【0125】
他の実施形態では、本発明に係るSARM及び組成物は、外科的処置の後の回復を促進する又は迅速化させるのに有用である。
【0126】
ある実施形態では、本発明は、患者の脂肪量を減少させるためのSARMの使用を提供する。他の実施形態では、前記SARM化合物は、化学式(I)、(II)、(III)又は(IV)の化合物である。他の実施形態では、前記SARM化合物は、化学式(I)、(II)、(III)又は(IV)の化合物、又はそのプロドラッグ、類似体、異性体、代謝産物、誘導体、薬学的に許容される塩、医薬品、多形体、結晶、不純物、N酸化物、水和物或いはそれらの任意の組み合わせ、並びにそれを含む組成物である。
【0127】
他の実施形態では、本発明は、代謝性疾患に関係のある肥満又は糖尿病を治療するための、化学式(I)、(II)、(III)又は(IV)で表される化合物、又はそのプロドラッグ、類似体、異性体、代謝産物、誘導体、薬学的に許容される塩、医薬品、多形体、結晶、不純物、N酸化物、水和物或いはそれらの任意の組み合わせ、並びにそれを含む組成物の使用を提供する。
【0128】
他の実施形態では、患者は、ホルモンの失調、障害、又は疾患を患っている。他の実施形態では、患者は更年期障害を患っている。
【0129】
他の実施形態では、本発明は、患者の除脂肪体重を増加させるためのSARMの使用を提供する。他の実施形態では、前記SARM化合物は、化学式(I)、(II)、(III)又は(IV)の化合物である。他の実施形態では、前記SARM化合物は、化学式(I)、(II)、(III)又は(IV)の化合物、又はそのプロドラッグ、類似体、異性体、代謝産物、誘導体、薬学的に許容される塩、医薬品、多形体、結晶、不純物、N酸化物、水和物或いはそれらの任意の組み合わせ、並びにそれを含む組成物である。このようにして、患者の除脂肪体重を増加させることができる。
【0130】
他の実施形態では、患者は、ホルモンの失調、障害、又は疾患を患っている。他の実施形態では、患者は、更年期障害を患っている。
【0131】
図3〜7は、化合物IIIがアンドロゲンをほとんど含んでいないのにも関わらず同化作用を有することを示している。したがって、前記化合物は、アンドロゲンが禁忌である患者を治療するのに有用である。化合物IIIは、前立腺の増殖抑制効果を発揮している間、テストステロンの存在の有無に関わらず、筋肉成長を促進すると見られている。したがって、ある実施形態では、本発明に係るSARMは、筋肉減少症又はカヘキシーによって失われた筋量を回復させることができる。
【0132】
ある実施形態では、本発明に係るSARMは、患者に液体状の医薬品組成物を注射することによって、経静脈的に投与される。他の実施形態では、本発明に係るSARMは、患者に液体状の医薬品組成物を注射することによって、経動脈的に投与される。他の実施形態では、本発明に係るSARMは、患者に液体状の医薬品組成物を注射することによって、筋肉内投与される。他の実施形態では、本発明に係るSARMは、医薬品組成物を含むペレットを患者の皮下に移植することによって投与される。他の実施形態では、本発明に係るSARMは、液体又は固体形状の医薬品組成物によって患者に経口投与される。他の実施形態では、本発明に係るSARMは、液体状の医薬品組成物を患者の皮膚表面に塗布することによって、局所的に投与される。
【0133】
本発明は、ある実施形態では、筋萎縮に起因する筋肉の消失及び/又は筋肉タンパクの異化を、治療、予防、抑止、抑制又は減少させるための安全で効果的な方法を提供する。本発明は、他の実施形態では、筋肉萎縮症の患者を治療するのに有用である。また、本発明は、他の実施形態では、骨関連疾患を治療するのに有用である。ある実施形態では、前記患者は、哺乳類の患者である。
【0134】
他の実施形態では、本発明は、肥満を予防、抑止、抑制又は発生を減少させるための方法である。この方法は、前記患者に、肥満を予防、抑止、抑制又は発生を減少させるのに効果的な量の、本発明に係る選択的アンドロゲン受容体調節剤(SARM)化合物、及び/又はその類似体、異性体、代謝産物、誘導体、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物、プロドラッグ、多形体、結晶或いはそれらの任意の組み合わせを投与するステップを含んでいる。
【0135】
ある実施形態では、本発明に係るSARM化合物は、患者のレプチン濃度を変化させる。他の実施形態では、SARM化合物は、患者のレプチン濃度を減少させる。他の実施形態では、本発明に係るSARM化合物は、患者のレプチン濃度を増加させる。レプチンは、食欲、肥満したマウスの体重減少に効果があることが知られており、肥満に関係があるとされている。
【0136】
本発明に係るSARMは、ある実施形態では、循環に影響を及ぼす。また、本発明に係るSARMは、他の実施形態では、レプチンの組織内濃度影響を及ぼす。ある実施形態では、“レプチン濃度”は、レプチンの血中濃度を意味する。また、ここで意図される本発明に係るSARM化合物は、インビトロ又はインビボのレプチンに効果がある。レプチン濃度は、例えば、市販されているELISAキットなどの当該技術分野では周知の方法により測定することが可能である。さらに、レプチン濃度は、インビトロ分析、又はインビボ分析などの当該技術分野では周知の技術によって測定することができる。
【0137】
レプチンは、食欲、体重減少、食糧摂取量及びエネルギー消費のコントロールに関与している。そのため、レプチン濃度の調節及び/又は制御は、肥満を治療、予防、抑止、抑制、又は発生を減少させる治療的なアプローチに有用である。レプチンの濃度を調節することによって、食欲の減退、食糧摂取量の減少、及びエネルギー消費の増加をもたらすことが可能である。そのため、肥満の制御及び治療に貢献することができる。
【0138】
“肥満”という用語は、ある実施形態では、体内に脂肪を過剰に蓄積された結果、体重が骨格及び身体的に必要とされる限度を超過した状態と定義される。
【0139】
“肥満に関連した代謝性疾患”は、ある実施形態では、肥満の結果生じる、肥満がもたらした結果の、肥満の副作用によって生じた、又は、肥満によって2次的に生じた疾患である。そのような疾患としては、これに限定されるものではないが、変形性関節症(osteoarthritis)、II型糖尿病、血圧の上昇、脳梗塞(stroke)、心疾患がある。
【0140】
“変形性関節症”は、他の実施形態では、主に高齢者に起こる非炎症性変性関節疾患であり、関節軟骨の変性、骨及びその余白部の肥大、及び、滑膜の変化を特徴とする。他の実施形態では、特に長時間の作業後に、痛みと凝りを伴う。
【0141】
“糖尿病”は、ある実施形態では、インスリンの相対的又は絶対的な欠如であり、制御されていない炭水化物代謝をもたらす。ほとんどの患者は、臨床的に、インスリン依存性糖尿病(insulin-dependent diabetes mellitus:IDDM)(I型糖尿病)か、インスリン非依存性糖尿病(noninsulin-dependent diabetes mellitus:NIDDM(II型糖尿病)かのどちらかに分類される。
【0142】
“血圧の上昇”又は“高血圧症(hypertension)”は、他の実施形態では、最大血圧が140以上又は最小血圧が90以上の高血圧を意味する。慢性的な高血圧は、目の裏側での血管変化、心筋の肥大、腎機能障害、及び脳傷害をもたらす。
【0143】
“脳梗塞”は、他の実施形態では、血管の破裂又は血栓によって生じる血液供給不全が原因の、脳内での神経細胞の損傷を意味する。“心疾患”は、他の実施形態では、心臓が正常機能及び動作が不全であることを意味し、心不全を含む。
【0144】
さらに、最近になって、アンドロゲンは、多能性間葉細胞の筋原リネージへの関与、及び、脂質生成リネージへの分化を阻止に関係していることが分かっている(Singh et al., Endocrinology, 2003, Jul 24)。したがって、SARM化合物は、脂質生成、及び/又は幹細胞の分化の変更を阻止する方法に有用である。
【0145】
他の実施形態では、本発明は、患者の体重減少を促進、増進又は手助けする方法に関する。該方法は、前記患者に、体重減少を促進、増進又は手助けするのに効果的な量の、本発明に係る選択的アンドロゲン受容体(SARM)化合物、又はそのプロドラッグ、類似体、異性体、代謝産物、誘導体、薬学的に許容される塩、医薬品、多形体、結晶、不純物、N酸化物、水和物或いはそれらの任意の組み合わせを投与するステップを含んでいる。
【0146】
他の実施形態では、本発明は、患者の食欲を減少、抑止、抑制、又は低減させる方法に関する。該方法は、前記患者に、食欲を減少、抑止、抑制、又は低減させるのに効果的な量の、本発明に係る選択的アンドロゲン受容体(SARM)化合物、又はそのプロドラッグ、類似体、異性体、代謝産物、誘導体、薬学的に許容される塩、医薬品、多形体、結晶、不純物、N酸化物、水和物或いはそれらの任意の組み合わせを投与するステップを含んでいる。
【0147】
他の実施形態では、本発明は、患者の身体組成を変化させる方法に関する。該方法は、前記患者に、身体組成を変化させるのに効果的な量の、本発明に係る選択的アンドロゲン受容体(SARM)化合物、又はそのプロドラッグ、類似体、異性体、代謝産物、誘導体、薬学的に許容される塩、医薬品、多形体、結晶、不純物、N酸化物、水和物或いはそれらの任意の組み合わせを投与するステップを含んでいる。ある実施形態では、患者の身体組成の変化は、除脂肪体重又は無脂肪体重の変化、或いはそれらの組み合わせを含んでいる。
【0148】
他の実施形態では、本発明は、除脂肪体重(lean body mass)又は無脂肪体重( fat free body mass)を変化させる方法に関する。該方法は、前記患者に、除脂肪体重又は無脂肪体重を変化させるのに効果的な量の、本発明に係る選択的アンドロゲン受容体(SARM)化合物、又はそのプロドラッグ、類似体、異性体、代謝産物、誘導体、薬学的に許容される塩、医薬品、多形体、結晶、不純物、N酸化物、水和物或いはそれらの任意の組み合わせを投与するステップを含んでいる。
【0149】
他の実施形態では、本発明は、脂肪を除脂肪筋肉(lean muscle)に変換させる方法に関する。該方法は、前記患者に、脂肪を除脂肪筋に変化させるのに効果的な量の、本発明に係る選択的アンドロゲン受容体(SARM)化合物、又はそのプロドラッグ、類似体、異性体、代謝産物、誘導体、薬学的に許容される塩、医薬品、多形体、結晶、不純物、N酸化物、水和物或いはそれらの任意の組み合わせを投与するステップを含んでいる。
【0150】
他の実施形態では、本発明は、肥満に関連した代謝性疾患を治療する方法に関する。該方法は、前記患者に、肥満に関連した代謝性疾患を治療するのに効果的な量の、本発明に係る選択的アンドロゲン受容体(SARM)化合物、又はそのプロドラッグ、類似体、異性体、代謝産物、誘導体、薬学的に許容される塩、医薬品、多形体、結晶、不純物、N酸化物、水和物或いはそれらの任意の組み合わせを投与するステップを含んでいる。
【0151】
他の実施形態では、本発明は、肥満に関連した代謝性疾患を予防、抑止、抑制、又は発生を低減させる方法に関する。該方法は、前記患者に、肥満に関連した代謝性疾患を予防、抑止、抑制、又は発生を低減させるのに効果的な量の、本発明に係る選択的アンドロゲン受容体(SARM)化合物、又はそのプロドラッグ、類似体、異性体、代謝産物、誘導体、薬学的に許容される塩、医薬品、多形体、結晶、不純物、N酸化物、水和物或いはそれらの任意の組み合わせを投与するステップを含んでいる。
【0152】
ある実施形態では、肥満に関連した代謝性疾患は高血圧である。ある実施形態では、前記代謝性疾患は変形性関節症である。ある実施形態では、前記代謝性疾患はII型糖尿病である。ある実施形態では、前記代謝性疾患は血圧の上昇である。ある実施形態では、前記代謝性疾患は脳梗塞(stroke)である。ある実施形態では、前記代謝性疾患は心疾患である。
【0153】
他の実施形態では、本発明は、脂質生成を減少、抑止、抑制、又は低減させる方法に関する。該方法は、前記患者に、脂質生成を減少、抑止、抑制、又は低減させるのに効果的な量の、本発明に係る選択的アンドロゲン受容体(SARM)化合物、又はそのプロドラッグ、類似体、異性体、代謝産物、誘導体、薬学的に許容される塩、医薬品、多形体、結晶、不純物、N酸化物、水和物或いはそれらの任意の組み合わせを投与するステップを含んでいる。
【0154】
他の実施形態では、本発明は、幹細胞の分化を変化させる方法に関する。該方法は、前記患者に、幹細胞の分化を変化させるのに効果的な量の、本発明に係る選択的アンドロゲン受容体(SARM)化合物、又はそのプロドラッグ、類似体、異性体、代謝産物、誘導体、薬学的に許容される塩、医薬品、多形体、結晶、不純物、N酸化物、水和物或いはそれらの任意の組み合わせを投与するステップを含んでいる。
【0155】
他の実施形態では、本発明は、レプチン濃度を変化させる方法に関する。該方法は、前記患者に、レプチン濃度を変化させるのに効果的な量の、本発明に係る選択的アンドロゲン受容体(SARM)化合物、又はそのプロドラッグ、類似体、異性体、代謝産物、誘導体、薬学的に許容される塩、医薬品、多形体、結晶、不純物、N酸化物、水和物或いはそれらの任意の組み合わせを投与するステップを含んでいる。ある実施形態では、レプチン濃度の変化は、患者内のレプチン・レベルの減少を含んでいる。
【0156】
他の実施形態では、本発明は、患者内のレプチン濃度を減少、抑止、抑制又は低減させる方法に関する。該方法は、前記患者に、レプチン濃度を減少、抑止、抑制又は低減させるのに効果的な量の、本発明に係る選択的アンドロゲン受容体(SARM)化合物、又はそのプロドラッグ、類似体、異性体、代謝産物、誘導体、薬学的に許容される塩、医薬品、多形体、結晶、不純物、N酸化物、水和物或いはそれらの任意の組み合わせを投与するステップを含んでいる
【0157】
ある実施形態では、次の(a)〜(j)に有用な前記SARMは、化学構造式(I)、(II)、(III)又は(IV)で表される化合物である。(a)肥満を治療、予防、抑止、抑制、又は低減させる。(b)体重減少を促進、増進又は手助けする。(c)食欲を減少、抑止、抑制、又は低減させる。(d)身体組成を変化させる。(e)除脂肪体重又は無脂肪体重を変化させる。(f)脂肪を除脂肪筋肉に変換させる。(g)肥満に関連した代謝性疾患(例えば、高血圧、変形性関節症、II型糖尿病、血圧の上昇、脳梗塞、心疾患)を治療、予防、抑止、抑制、又は発生を低減させる。(h)脂質生成を減少、抑止、抑制、又は低減させる。(i)幹細胞の分化を変化させる。(j)レプチン濃度を変化させる
【0158】
ある実施形態では、本発明に係るSARMは、糖尿病を治療する、又は糖尿病の進行を停止させるのに有用である。他の実施形態では、本発明に係るSARMは、糖尿病に関連する病的状態を治療するのに有用である。これらの症状としては、高血圧、脳血管疾患、アテローム性冠動脈疾患、黄斑変性症、糖尿病性網膜症(眼疾患)及び失明、白内障全身性炎症(赤血球沈降速度やC反応性タンパク質などの炎症マーカーの上昇を特徴とする)、先天性欠損症、妊娠関連糖尿病、妊娠関連の子癇前症及び高血圧、腎臓病(腎機能障害、腎不全など)、神経疾患(糖尿病性神経障害)、表面及び全身性真菌感染症、うっ血性心不全、痛風/高尿酸血、高トリグリセリド血症、コレステロール血症、脂肪肝疾患(非アルコール性脂肪性肝炎(nonalcoholic steatohepatitis :NASH))、及び、糖尿病関連皮膚疾患がある。糖尿病関連皮膚疾患としては、例えば、糖尿病性リポイド類壊死症(Necrobiosis Lipoidica Diabeticorum:NLD)、糖尿病性水疱、萌出性黄色腫症(Eruptive Xanthomatosis)、指先硬化症(Digital Sclerosis)、播種状環状肉芽腫、及び黒色表皮症がある。
【0159】
ある実施形態では、本発明は、(a)アテローム性動脈硬化を治療、予防、抑止、抑制する方法、及び、(b)脂肪の蓄積に起因する肝臓障害を治療、予防、抑止、抑制する方法を提供する。該方法は、前記患者に、アテローム性動脈硬化、及び脂肪の蓄積に起因する肝臓障害を治療、予防、抑止、抑制するのに効果的な量の、本発明に係る選択的アンドロゲン受容体(SARM)化合物、又はそのプロドラッグ、類似体、異性体、代謝産物、誘導体、薬学的に許容される塩、医薬品、多形体、結晶、不純物、N酸化物、水和物或いはそれらの任意の組み合わせ、並びにそれらを含む組成物を投与するステップを含んでいる。
【0160】
ある実施形態では、SARMは、(a)アテローム性動脈硬化を治療、予防、抑止、抑制又は減少させるのに、及び、(b)脂肪の蓄積に起因する肝臓障害を療、予防、抑止、抑制するのに有用である。
【0161】
ある実施形態では、アテローム性動脈硬化は、進行速度の遅い複雑な疾患であり、血管の最内層の損傷から始まる。他の実施形態では、血管の損傷は、(a)コレステロール値の上昇、(b)高血圧、(c)、タバコの煙、(d)糖尿病が原因である。他の実施形態では、タバコの煙がアテローム性動脈硬化を著しく悪化させる、及び、冠状動脈や下肢動脈大動脈・動脈内での成長を促進するという事実にもかかわらず、喫煙者における状態は治療可能である。同様に、他の実施形態では、本発明に係る方法は、アテローム性動脈硬化起こすリスクが高い若年性心疾患(premature cardiovascular disease )の家系の患者を治療するのに有用である。
【0162】
他の実施形態では、脂肪の蓄積に起因する肝臓障害は、肝臓細胞内での脂肪の蓄積による脂肪肝(肝臓の炎症を引き起こす)を意味する。このことにより、肝臓の瘢痕化及び硬化を引き起こす。瘢痕化が広範囲に及んだときは、肝硬変と呼ばれる。他の実施形態では、脂肪は肥満により肝臓に蓄積される。他の実施形態では、脂肪肝は、糖尿病、高い血中トリグリセリド、アルコールの過剰摂取と関係している。他の実施形態では、脂肪肝は、例えば、結核及び栄養失調、肥満を治療するための腸バイパス形成術、体内でのビタミンAの過剰、又は、バルプロ酸(商標名:Depakene/Depakote)やコルチコステロイド(コルチゾン、プレドニゾン)などの薬の使用によって生じる。また、脂肪肝は、妊娠合併症によって生じるときもある。
【0163】
ある実施形態では、本発明に係る治療方法は、人間を対象としている。他の実施形態では、男性を対象としている。他の実施形態では、女性を対象としている。
【0164】
ある実施形態では、本発明は、男性患者の精子形成を促進又は抑制するための、本発明に係るSARM又はそれを含む化合物の使用を提供する。本発明に係るSARMのいくつかは、とりわけ、精子形成を促進するアンドロゲン活性を示す。他の実施形態では、本発明に係るSARMは、患者の性腺において、精子形成を抑制するアンタゴニスト活性を示す。そのため、ある実施形態では、前記SARMは避妊薬として使用される。
【0165】
また、本発明に係るSARMを使用して、とりわけ、筋肉、脂肪、心臓、肝臓、性腺、又は骨組織に関する病気又は状態を治療できることを理解されたい。本発明に係るSARM化合物又はそれを含む組成物の投与することによって、疾患及び状態を患者にとって好ましい状態に変えることができる。これは、本発明の一部だと考えられる。
【0166】
次の実施例は、本発明の実施形態をより詳細に説明するためのものである。ただし、これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0167】
《実施例1:前駆細胞の骨芽細胞及び破骨細胞への分化に対する選択的アンドロゲン受容体調節剤(SARM)化合物IIIの影響》
【0168】
〈材料及び方法〉
化学物質
化合物III、THT及びPTHを、1nMから1μMの濃度で用意した。
【0169】
月齢4か月のメスラットを安楽死させ、大腿を動物から切除した。大腿から筋肉及び結合組織をすべて除去し、細胞を培養するまで、ペニシリン、ストレプトマイシン及びフンギソン(Fungizone)を含む最小必須培養液(Minimum Essential Medium:MEM)中で冷蔵した。
【0170】
骨髄細胞培養
細胞培養材料は、すべてインビトロゲン(Invitrogen)(カールスバッド(CA))から入手した。大腿を70%のエタノール中で最初に洗浄し、ペニシリン及びストレプトマイシン各々5mlで3回洗浄した。大腿の両端を折り、骨髄細胞を50mlの円錐管へ入れ、ペニシリン、ストレプトマイシン及びフンギソンを含む15mlのMEMで洗い流し、冷蔵した。同じ手順をすべての大腿について行った。骨髄細胞を貯め、臨床用の遠心分離機で5分間、1000rpmで遠心分離を行った。10%の血清、ペニシリン、ストレプトマイシン及びフンギソンを追加したフェノールレッド不含のMEMに細胞を再懸濁した。22gのニードルによって細胞を粉にし、顕微鏡で数を数え、繊維芽細胞/骨芽細胞へ分化させるため、15%の血清、ペニシリン、ストレプトマイシン、300ng/mlのフンギソン、0.28mMのアスコルビン酸及び10mMのβ―グリセロン酸エステルを追加したフェノールレッド不含のMEM中に、6ウェルプレートの各ウェルにつき150万個の細胞をプレーティングした。また、破骨細胞へ分化させるため、10%の血清、ペニシリン、ストレプトマイシン及び300ng/mlのフンギソンを追加したフェノールレッド不含のMEM中に、24ウェルプレートプレートの各ウェルにつき250万個の細胞をプレーティングした。2日目に培養液を交換し、望ましいホルモンで細胞を処理した。破骨細胞形成を引き起こすために、破骨細胞培地を、50ngのRANKリガンド及び10ngのGM−CSFがある状態とした。破骨細胞培地用に、培養液を3日毎に完全交換した。繊維芽細胞培地については、細胞によって成長因子が分泌されるようにするために、培養液の半分を3日毎に交換した。
【0171】
細胞の汚染
12日目の終わりに、繊維芽細胞培地用に10%の緩衝ホルマリン液及び、破骨細胞培地用にホルムアルデヒド4%のPBSに細胞を移した。繊維芽細胞はアルカリフォスファターゼ活性のために染色され、405nmのO.D.は前述されたような分光測光器を使用して測定された。破骨細胞を、耐酒石酸塩性の酸性ホスファターゼ活性(TRAP)染色させた。また、2つ以上の核がある細胞を顕微鏡で数え、前述のようにプロットした。
【0172】
〈結果〉
〈SARMは骨髄細胞の骨芽細胞及び破骨細胞への分化に対する強力な誘導因子である〉
アンドロゲンは骨に同化作用を与え、前立腺癌及び老齢におけるアンドロゲン枯渇療法のような条件下でのアンドロゲンの不足は、骨保護ホルモンとしてのアンドロゲンの利点を明白に示した。しかしながら、異所性アンドロゲン(ectopic androgen)の使用は、その副作用のために、また、アンドロゲンのエストロゲンへの転換の危険性のために制限されている。
【0173】
SARMが治療に用いられるが上記の副作用を取り除くことができるか否かを決めるために、親ホルモンに見られるように、より少ない副作用で骨防護効果を発揮する能力の観点から、様々な選択的アンドロゲン受容体変調剤(SARM)を評価した。主なラットの骨髄細胞を骨芽細胞及び破骨細胞へ分化する能力の観点から、ジヒドロテストステロン(DHT)及び副甲状腺ホルモン(PTH)の効能を、SARM化合物IIIと比較した(図1及び図2)。ラットの骨髄細胞を、培地中で12日間、上記ホルモンが存在する状態若しくは存在しない状態で培養し、骨芽細胞又は破骨細胞への分化の観点から評価した。
【0174】
DHT及び化合物IIIはすべて、細胞のアルカリフォスファターゼ(ALP)活性によって測定されたように、主な骨髄細胞の骨芽細胞への分化を増加させた(図1)。濃度1μMでは、DHT及びSARMはALP活性を同等にしたが、より低い濃度100nM及び10nMでは、化合物IIIはDHTよりも優れた誘導を示した。PTH、別の骨蛋白同化ホルモンは、低い濃度ではなく高い濃度でのみALP染色が行われた。
【0175】
図2は、RANKリガンド及びGM−CSFが存在する状態で細胞が培養されたとき、TRAP陽性多核化多核破骨細胞の数が明らかに増加したことを示す。DHT又はSARMでの細胞の治療は、RANKリガンド及びGM−CSFがTRAPの肯定的な多核破骨細胞を増加させるのを著しく抑制した。PTHは高い濃度における誘導を抑制したが、低い濃度ではTRAPの肯定的な破骨細胞数を増加させた。エストラジオールは、評価したすべての投薬量で、破骨細胞形成を抑制した。
【0176】
《実施例2:単独及び、再吸収阻害薬(アレンドロン酸)と組合せたSARMの骨への影響》
【0177】
〈材料及び方法〉
メスで、処女で、無傷のSDラット(Sprague-Dawley rat)60匹をチャールズ・リバー研究所(Charles River Laboratories)(ウィルミントン、マサチューセッツ州)から入手し、23週齢に育てた。ケージ1個当たり2〜3匹の動物を収容し、12時間の明暗サイクルで飼育した。エサ(7012C LM-485マウス/ラット、滅菌ダイエット、ハーラン・テクラッド社(Harlan Telclad)、マディソン、ウィスコンシン州)及び水は、不断給餌で供給した。テネシー大学の動物の管理及び使用に関する委員会(The Institutional Animal Care and Use Committee)は、この研究用に動物プロトコルを調査・承認している。
【0178】
偽手術或いは卵巣切除術を0日目に行った。研究は、6つの治療群で以下のように構成された。(1)無傷+媒体、(2)無傷+化合物III、(3)OVX+媒体、(4)OVX+化合物III、(5)OVX+アレンドロン酸、(6)OVX+アレンドロン酸+化合物III。投与(200L)は、1日目に始まって、DMSOの媒体:PLG300(10:90)で強制経口投与によって毎日投与され、動物は研究の45日目に屠殺された。大腿を切除し、軟繊維を取り除き、分析まで20℃の生理食塩水で濡らしたガーゼに保存した。9匹の動物が研究の間に絶命した。これらの死は、卵巣切除術から生じる外科合併症及び経口投与中の技術上のエラー(すなわち、投薬液が肺へ分配されたこと)に起因する。投与群を表1に示す。

【0179】
左の大腿は、生体力学的強さ(3点曲げ)の分析及びpQCT分析を行うために、スケル・テック社(Skele Tech Inc)(ボセル、ウィスコンシン州)へ送った。ストラテック(Stratec)XCT―RM及び関連ソフトウェア(Stratec Medizintechnik GmbH、プフォルツハイム、ドイツ、ソフトウェア・バージョン5.40C)をpQCT分析に使用した。大腿骨は中央骨幹領域及び末端領域の両方を分析した。中央骨幹の分析は、大腿骨長の50%の部位で行った。末端の分析は、遠位端から大腿骨長の20%の部位で行った。大腿骨の長軸に垂直な1つの0.5mm薄片を分析に使用した。全骨塩量、総骨面積、総骨ミネラル密度、皮質骨塩含量、皮質骨面積、皮質骨ミネラル密度、皮質の厚さ、骨膜周辺(周囲)及び骨内膜の周辺は、大腿骨の中央骨幹で測定した。大腿骨の末端では、全骨塩含量、総骨面積、総骨ミネラル密度、骨梁骨含塩量、骨梁骨面積及び骨梁骨ミネラル密度を測定した。pQCT分析に続いて、大腿部の強度を3点曲げ試験によって決定した。電子キャリパスを用いて大腿骨幹の中心での前後径(APD)(単位:ミリメートル[mm])を測定した。大腿骨は、インストロンの機械試験機器(インストロン5500にレトロフィットされた4465)(キャントン、マサチューセッツ州)において3点曲げ具の下支点上に大腿骨の前側を下向きにして大腿骨を載置した。低い支持点間の長さ(l)は14mmに設定し、大腿骨幹の中央に合わせて上側荷重負荷装置の向きを調整した。6mm/分の一定の変位速度で大腿骨が折れるまで負荷をかけた。物理試験機により最大負荷(Fu)(単位:N)、堅さ(S)(単位:N/mm)、及び吸収エネルギー(W)(単位:mJ)を直接測定した。大腿骨の中央骨幹のpQCT分析中にソフトウェアにより慣性軸面積モーメント(I)(単位:mm)を計算した。応力(σ)(単位:N/mm)、弾性係数(E)(単位:Mpa)、靱性(T)(単位:mJ/m)を次式により計算した。応力σ=(Fu×L×(a/2))/(4×I);弾性係数E=S×L/(48×I);靱性T=3×W×(APD/2)/(L×I)。統計分析はスチューデントt−検定によって行った。P値が0.05以下のときに統計的有意差があるとした。
【0180】
〈結果〉
大腿骨の3点曲げ試験により大腿骨の最大荷重を測定した。結果を図3に示す。無傷媒体対照群(210N)とOVX媒体対照群(212N)との間に違いは観察されなかった。無傷及びOVX群において、化合物IIIを処置した群の最大荷重がそれぞれ224及び233ニュートンに増加する傾向があることが観察された。アレンドロン酸(213N)及びアレンドロン酸+化合物III(270N)群は、対照群と同じであった。
【0181】
骨梁骨含塩量は大腿骨の末端でpQCTによって分析した。結果を図4に示す。OVXにより著しい骨梁骨塩量の減少が生じることが観察された。骨梁骨密度は、無傷媒体対照群及びOVX媒体対照群において、379から215mg/mmに減少した。化合物IIIを処置された無傷動物では、骨梁骨密度が398mg/mmへとわずかに増加していることが観察された。化合物IIIを処置されたOVX動物では、406mg/mmと、OVX媒体対照群に対する著しい増加が観察された。アレンドロン酸は骨梁骨密度を480mg/mmに増加させた。アレンドロン酸及び化合物IIIを組合せた処置は、骨梁骨密度を552mg/mmに増加させる相加効果を示した。
【0182】
《実施例3:無傷及びORXラットにおけるアンドロゲン活性及びタンパク同化作用》
【0183】
〈材料及び方法〉
およそ200gの重さのオスのSDラットを、ハーラン・バイオプロダクト・フォー・サイエンス(Harlan Bioproducts for Science)(インディアナポリス、インディアナ州)から購入した。動物は、12時間の明暗サイクルで飼育し、食物(7012C LM-485マウス/ラット、滅菌ダイエット、ハーラン・テクラッド社、マディソン、ウィスコンシン州)及び水を不断給餌で供給した。動物プロトコルは、テネシー大学の動物の管理及び使用に関する委員会によって調査され承認された。無傷の動物に対する化合物IIIのタンパク同化作用及びアンドロゲン活性について評価し、精巣摘除(ORX)を急性的に施した動物に対する容量反応についても同様に評価した。慢性的な(9日)ORXのラットに対する化合物IIIの再生効果についても評価した。
【0184】
適切な投薬濃度に作成するために、化合物を計量し、PEG 300(アクロス・オルガニクス、ニュージャージー州)で希釈した10%のDMSO(フィッシャー)に溶解した。動物は、ケージ当たり2匹から3匹の群に分けて収容した。無傷のORX動物は、1群当たり4匹から5匹の動物からなる7つの群の1つに無作為に分けられた。対照群(無傷及びORX)には、媒体を毎日処置した。化合物IIIを0.01、0.03、0.1、0.3、0.75mg/日の投与量で、無傷及びORX群の両方に強制経口で投与した。
【0185】
容量反応評価のために、去勢された動物(研究1日目)を、0.01、0.03、0.1、0.3、0.75及び1mg/日の投与量群(4匹から5匹の動物/群)に無作為に分けた。ORXの9日前に投与を開始し、強制経口投与によって14日間毎日処置した。14日間投薬方式の後、麻酔(ケタミン/キシラジン、87:13mg/kg)の下で動物を屠殺し、体重を記録した。さらに、腹側前立腺、精嚢及び肛門挙筋を取り除き、それぞれ計量し、体重に対して標準化し、無傷群に対する百分率として表した。個々の投与量群を無傷対照群と比較するためにスチューデントt−検定を使用した。P値が0.05以下のときに統計的有意差があるとした。アンドロゲン活性の基準として、腹側前立腺及び精嚢重量を評価し、一方、タンパク同化作用の基準として、肛門挙筋重量を評価した。腹大動脈から血液を採集し、遠心分離機にかけ、血清ホルモン・レベルの測定に先立って血清を−80℃で冷凍した。血清中の黄体形成ホルモン(LH)及び卵胞刺激ホルモン(FSH)濃度は、バージニア大学再生リガンド試験・分析センター(University of Virginia Center for Research in Reproduction Ligand Assay and Analysis Core)(NICHD(SCCPRR)許可U54-HD28934)によって測定された。
【0186】
〈結果〉
化合物IIIの処置を受けた前立腺重量は、0.01、0.03、0.1、0.3、0.75及び1mg/日の投与の後、それぞれ無傷対照群の111%±21%、88%±15%、77%±17%、71%±16%、71%±10%及び87%±13%であった(図5)。同様に、精嚢重量は、0.01、0.03、0.1、0.3、0.75及び1mg/日の投与の後、それぞれ無傷対照群の94%±9%、77%±11%、80%±9%、73%±12%、77%±10%及び88%±14%に減少した。著しい増加は偽物動物の肛門挙筋重量に見られたが、無傷群と比較するとすべての投与量群に増加が見られた。肛門挙筋重量は、0.01、0.03、0.1、0.3、0.75及び1mg/日の投与の後、それぞれ無傷対照群の120%±12%、116%±7%、128%±7%、134%±7%、125%±9%及び146%±17%であった。結果を図5にグラフで示す。
【0187】
化合物IIIは精巣摘除術後の前立腺重量を部分的に維持した。媒体を処置されたORX群の前立腺重量は、無傷対照群の5%±1%に減少した。0.01、0.03、0.1、0.3、0.75及び1mg/日の投与量で、化合物IIIは、前立腺重量をそれぞれ無傷対照群の8%±2%、20%±5%、51%±19%、56%±9%、80%±28%及び74%±12.5%に維持した。精嚢重量は、去勢された対照群で無傷対照群の13%±2%に減少した。化合物IIIは、ORX動物の精嚢重量を部分的に維持した。薬を処置された動物の精嚢重量は、0.01、0.03、0.1、0.3、0.75及び1mg/日の投与の後、それぞれ無傷対照群の12%±4%、17%±5%、35%±10%、61%±15%、70%±14%及び80%±6%であった。肛門挙筋重量は、ORX対照群において、無傷対照群の55%±7%に減少した。化合物IIIを処置された動物の肛門挙筋に対するタンパク同化の影響が観察された。化合物IIIは、0.1mg/日より多い投与量では、肛門挙筋重量を完全に維持した。0.1mg/日より少ない投与量では、肛門挙筋重量は、無傷の対照群で観察されたものと比較して著しく増加した。無傷対照群の百分率としての肛門挙筋重量は、0.01、0.03、0.1、0.3、0.75及び1mg/日の投与量群につき、それぞれ無傷対照群の59%±6%、85%±9%、112%±10%、122%±16%、127%±12%及び129.66%±2%であった。結果を図6にグラフで示す。EmaxとED50の値をWinNonlin(登録商標)の非線形回帰分析によって各組織で測定し、図7に示した。Emax値は、前立腺、精嚢及び肛門挙筋につき、それぞれ83%±25%、85%±11%及び131%±2%であった。前立腺、精嚢及び肛門挙筋のED50は、それぞれ0.09±0.07、0.17±0.05及び0.02±0.01mg/日であった。
【0188】
〈血中ホルモン分析〉
動物の血清LH及びFSHデータを表1に示した。LHは無傷動物及び去勢した動物の両方で用量依存的に減少した。0.1mg/日より多い投与の後、LHレベルは定量限界(0.07ng/mL)未満となった。ORX動物における0.1mg/日の投与量は、LHを無傷対照群で見られたレベルに戻した。同様の結果はFSHでも観察された。無傷動物では、FSHレベルの著しい減少は、0.75mg/日の投与量で観察された。ORX動物では、FSHレベルの用量依存的減少が観察された。ORX動物における0.1mg/日より多い化合物IIIの投与量は、FSHレベルを無傷対照群のレベルに戻した。

【0189】
〈遅延投与を受けたアンドロゲン活性及びタンパク同化作用〉
化合物IIIはORX動物の前立腺重量及び精嚢重量の両方を部分的に回復させた。0.01、0.03、0.1、0.3、0.75及び1mg/日の投与群につき、前立腺は、それぞれ無傷対照群の9%±3%、11%±3%、23%±5%、50%±13%、62%±12%及び71%±5%に回復され、一方、精嚢は、それぞれ無傷対照群の7%±1%、9%±1%、23%±8%、49%±5%、67%±12%及び67%±11%に回復された。化合物IIIは、0.1mg/日より多い投与量で肛門挙筋重量を完全に回復させた。肛門挙筋重量は、0.01、0.03、0.1、0.3、0.75及び1mg/日の投与群に対して、それぞれ56%±7%、82%±9%、103%±11%、112%±11%、121%±7%及び120%±7%に回復された。結果を図8にグラフで示す。EmaxとED50の値をWinNonlinの非線形回帰分析によって各組織で決定し、図9に示した。Emax値は、前立腺、精嚢及び肛門挙筋でそれぞれ75%±8%、73%±3%及び126%±4%であった。ED50の値は、前立腺、精嚢及び肛門挙筋でそれぞれ0.22%±0.05%、0.21%±0.02%及び0.013%±0.01%であった。
【0190】
《実施例4:新しい経口の同化を促進するSARM化合物IIIの薬物動態学的特性付け:健康な男性ボランティアにおける最初の分析》
【0191】
〈材料及び方法〉
最大12人の健康な男性ボランティアの集団を、二重盲検試験で無作為に各投与量レベル(9人は活性、3人はプラシーボ)で投薬した。8つの集団を集め(18歳から45歳で)、溶液中に化合物IIIを1、3、10、30又は100mgのいずれかに対応する投与量を溶解した(或いは同じ量のPEG300のプラシーボ)1回の経口投与を、又は3mg若しくは30mgの実験用カプセルを各集団に与えた。微粉化の(すなわち、粒子サイズを縮小した)影響は、30mgの固体の経口投薬形式で化合物IIIの薬物動態解析を行った。投与後72時間に渡り親薬物のサンプルを得た。
【0192】
〈結果〉
PEG300ベース溶液中の化合物IIIの投与(1、3、10、30及び100mg)は、胃腸管から急速に吸収された。投与量レベルはすべて、収集した最後の時点(72時間)まで、定量化可能な血漿化合物III濃度となった(図10〜12)。化合物IIIへの暴露(Cmax及びAUC)は、投与量の増加につれて増加し、1mgから100mgの投与量に及ぶ溶液について線形的となった。Tmaxは、化合物III溶液で、0.8時間と2.3時間との間(中央値=1.0時間)であり、固体の経口製剤で、処方後3.2時間と3.9時間との間であった(図10、図11)。ターミナル排出半減期は、1mg〜100mgの溶液及び3mgのカプセルでは、19時間から22時間(中央値=20時間)であり、微分化及び非微分化では30mgのカプセルで27時間及び31時間に増大されたが、著しい変化ではなかった(p>0.1)。経口クリアランスは逆に、半減期に関連して、30mgの非微粉化カプセルで、他の投薬形式及び投与量と比較して最長の半減期及び最低のクリアランスを示した。3mgの非微粉化カプセル及び溶液は、等しく体内に吸収され利用できたが、より高い投与量(30mg)では、微分化は経口投与可能性を改善した(p<0.05)(図12)。薬の排出相を超える共通の第2ピークによって示唆されるように、肝胆汁システムによる腸肝循環が親薬物の再分配に役立つことが可能である。
【0193】
《実施例5:SARMのタンパク同化作用及びアンドロゲン活性》
【0194】
〈材料〉
SARMは、米国特許出願公開番号2004/0014975A1記載のような方法に従って本質的に合成される。アルゼット(Alzet)浸透圧ポンプ(モデル2002)はアルザ社(Alzet Corp.)(パロアルト、カリフォルニア州)から購入可能である。
【0195】
試験したSARMは次の化学式からなる。





【0196】
研究デザイン
重さ90から100gの未成熟のオスのSDラットを、群当たり少なくとも5匹の動物として各群へ無作為に分けた。薬物療法の開始前のある日、動物をケージから個々に取り出し、計量し、ケタミン/キシラジン(87/13mg/kg;1kg当たりおよそ1mL)の腹腔内投与で麻酔をかけた。適切に麻酔がかかったとき(すなわち、足指をつまんでも反応がないとき)、動物の耳に識別目的で標識を付した。その後、動物を無菌パッドの上に置き、腹及び陰嚢をベータダイン(betadine)及び70%のアルコールで洗浄した。各精巣の外科的切除に先立って精巣組織を結紮するために使用されている無菌縫合で、陰嚢正中切開によって精巣を切除した。無菌のステンレス創傷クリップで傷口を閉じ、ベータダインで傷口を衛生処理した。無菌パッドの上で動物が回復するまで(立つことができるようになるまで)待ち、ケージに戻した。
【0197】
24時間後に、ケタミン/キシラジンで動物に再度麻酔をかけ、SARM化合物を含んでいるアルゼット浸透圧ポンプ(モデル2002)を肩甲部の皮下に置いた。浸透圧ポンプは、ポリエチレングリコール300(PEG300)に溶解する適切な処置(実施例3に記したように)を含む。注入に先立つある日、浸透圧ポンプを適切な溶液で満たした。薬物療法に対する急性毒性の徴候(例えば、無気力やラフコート(rough coat))がないかどうか、毎日動物を監視した。
【0198】
14日間の薬物療法の後に、ケタミン/キシラジンでラットに麻酔をかけた。動物は麻酔の下、全採血によって屠殺された。腹大動脈の静脈穿刺によって血液サンプルを採集し、完全な血球分析に送った。血液の一部を個別のチューブに置き、1分間12,000gで遠心分離にかけ、血漿層を除去して−20℃で冷凍した。腹部の前立腺、精嚢、肛門挙筋、肝臓、腎臓、脾臓、肺及び心臓を切除し、外部組織を取り除き、計量し、10%の中性緩衝ホルマリンを含んでいる水薬瓶に入れた。保存された組織について組織病理学的分析を行った。
【0199】
データ分析については、すべての臓器の重量を体重に対して標準化し、単一要因の分散分析(ANOVA)によってどんな統計的な重要な差異についても分析した。前立腺及び精嚢の重量をアンドロゲン活性の評価の指標として使用し、肛門挙筋重量をタンパク同化作用を評価するために使用した。
【0200】
テストステロン・プロピオン酸エステル(TP)を、投与量を増加させるときに、同化作用及び男性ホルモン作用の陽性対照として使用する。このようにして、特定の化合物の影響はTPのものと比較すればよい。
【0201】
去勢され、媒体処置されたラットの前立腺、精嚢及び肛門挙筋の重量は、内因性アンドロゲン生成のアブレーションのために、著しく減少すると予想される。テストステロン・プロピオン、アンドロゲン性ステロイド及びタンパク同化ステロイドの外因性投与が、去勢されたラットの前立腺、精嚢及び肛門挙筋の重量を投与量依存的に増加させると予想される。SARMは、去勢された動物の前立腺、精嚢及び肛門挙筋の重量に対するそれらの影響について比較的に評価されるであろう。化合物(これは、前立腺及び精嚢の重量を増加させる際に、より低い効能及び固有活性を示すが、肛門挙筋の重量を増加させる際には、より大きな効能及び固有活性を示す)は、不十分なアンドロゲンであり、同化であると考えられるだろう。また化合物は、例えば前立腺癌の治療、或いは前立腺癌に対する現在の治療に関連する副作用の処置(例えば、アンドロゲン枯渇療法のようなもの)には有用な化合物を表わしている。
【0202】
《実施例6:コレステロール値のSARM縮減》
【0203】
〈材料及び方法〉
100匹のSDラットラット(50匹のオス及び50匹のメス)を、5つの群(各群ごとに各性につきn=10)に分け、1つを媒体のみの群(PEG300:40%Cavasol(登録商標)[75/25(v/v)]に、そして4つを化合物IIIの投与群とした。最新の体重にしたがって、0、3、30又は100mg/kgのいずれかの投与量で、化合物IIIを強制経口投与によって毎日動物に処置した。研究期間中、ラットには水及びHarlanTakladRodent Chowの標準的実験用エサを不断給餌で与えた。28日の連続投薬の後、一夜動物に食を与えず、血清を生成するために血液サンプルを採集した。自動研究分析方法を使用して、総コレステロールの血中濃度を測定した。
【0204】
〈結果〉
媒体のみの群(0mg/kg)のオス及びメスのラットは、総血清コレステロール値がそれぞれ、92±13.5及び102±13mg/dLであった。これらの値は、研究所の正常な経験的範囲内にあると考えられる。3mg/kg若しくはそれ以上の化合物IIIの毎日の経口投与量は、オス及びメスの両方のラットの総コレステロールレベルに著しい減少をもたらした。3mg/kgでは、媒体対照動物と比較して、およそ30%の総コレステロールの減少が認められ、オス及びメスはそれぞれ、63±17.4及び74±14.2mg/dLであった。わずかに大きな結果が、最も高い投与量群(1日当たり100mg/kg)で認められたが、一般に、容量反応の関係は、SDラットの総コレステロールレベルの減少には観察されなかった。結果を図15にグラフで示す。
【0205】
治療を受ける動物の診断的血液学試験及び外観検査によって測定されるように、急性毒性を引き起こすことに対するSARMの影響は評価され、上記実施例4に記したように、黄体形成ホルモン(LH)或いは卵胞刺激ホルモン(FSH)を抑制する。
【0206】
本発明のある特徴がここに例示され、説明された一方、通常の技術的知識を有する者には多くの修正、代用、変更及び等価物が思い浮かぶであろう。したがって、特許請求の範囲は、発明の技術的思想内にある修正及び変更をすべて含むことを理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0207】
【図1】ラットの骨髄細胞の骨芽細胞への分化に対するSARM、DHT及びPTHの影響を示すグラフである。
【図2】TRAPの肯定的な多核破骨細胞に対するSARMの影響を示すグラフである。
【図3】大腿骨の3点曲げ試験により測定された大腿骨の最大荷重を示すグラフである。
【図4】大腿骨の末端のpQCTによって分析された骨梁骨含塩量を示すグラフである。
【図5】無傷ラットにおける化合物IIIの薬効を示すグラフである。
【図6】去勢され、化合物IIIを処置されたラットの臓器を無傷対照群との百分率で表したグラフである(P値<0.05 対無傷対照群)。
【図7】去勢されたラットにおける化合物IIIに対する用量依存曲線を維持する内蔵重量を示すグラフである。肛門挙筋(黒三角)、前立腺(白丸)及び精嚢(黒四角)のEmaxとED50の値は、WinNonlin(登録商標)のS字状Emaxモデルを使用して非線形回帰分析によって測定した。
【図8】去勢され、化合物IIIを処置されたラットの臓器を無傷対照群との百分率で表したグラフである(P値<0.05 対無傷対照群)。
【図9】去勢されたラットにおける化合物IIIに対する用量依存曲線を再生する内蔵重量を示すグラフである。肛門挙筋(黒三角)、前立腺(白丸)及び精嚢(黒四角)のEmaxとED50の値は、WinNonlin(登録商標)のS字状Emaxモデルを使用して非線形回帰分析によって測定した。
【図10】PEG300による経口投与を受けた健康な男性ボランティアにおける、化合物IIIについての血漿濃度―時間データを示すグラフである。
【図11】化合物IIIの溶液および経口剤形の血漿濃度―時間データを示すグラフである。
【図12】化合物III(30mg)の様々な形態の血漿濃度―時間データを示すグラフである。
【図13】経口液剤についての投与量に対するAUC0−inf(G100401)を示すグラフである。
【図14】経口液剤についての投与量に対するCmaxを示すグラフである。
【図15】ラットにおける化合物IIIによるコレステロールの減少を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学構造式IVで表される選択的アンドロゲン受容体調節剤(SARM)化合物、又はその薬学的に許容される塩、結晶、水和物或いはそれらの任意の組み合わせ。

ただし、Xは、Oであり、
Tは、OH、OR、NHCOCH、NHCOR、又はOC(O)Rであり、
Zは、水素、アルキル、NO、CN、COOH、COR、NHCOR、又はCONHRであり、
Yは、水素、アルキル、CF、ハロゲン、ヒドロキシアルキル、又はアルキルアルデヒドであり、
Aは、

から選択される基である。ただし、R、R、R、Rは、Hであり、RはCNである。
さらに、Rは、アルキル、ハロアルキル、ジハロアルキル、トリハロアルキル、CHF、CHF、CF、CFCF、アリル、フェニル、ハロゲン、アルケニル、又はOHであり、
は、CH、CHF、CHF、CF、CHCH、又はCFCFである。
【請求項2】
XがOであることを特徴とする請求項1に記載のSARM化合物。
【請求項3】
TがOHであることを特徴とする請求項1に記載のSARM化合物。
【請求項4】
がCHであることを特徴とする請求項1に記載のSARM化合物。
【請求項5】
ZがNOであることを特徴とする請求項1に記載のSARM化合物。
【請求項6】
ZがCNであることを特徴とする請求項1に記載のSARM化合物。
【請求項7】
Zがパラ位置にあることを特徴とする請求項1に記載のSARM化合物。
【請求項8】
Yがメタ位置にあることを特徴とする請求項1に記載のSARM化合物。
【請求項9】
請求項1のSARM化合物と、適切な担体又は希釈液とを含む組成物。
【請求項10】
アレンドロネートを更に含むことを特徴とする請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
骨関連疾患を治療する医薬を製造するための、請求項1のSARM化合物又はそれを含む組成物の使用。
【請求項12】
前記骨関連疾患が、骨粗鬆症、骨減少症、骨吸収増加、骨折、骨脆弱性、骨密度(BMD)減少、又はそれらの任意の組み合わせであることを特徴とする請求項11の使用。
【請求項13】
前記組成物が、アレンドロネートを更に含むことを特徴とする請求項11の使用。
【請求項14】
患者の骨の強度又は質量を増加させるための医薬を製造するため、又は患者の骨形成を促進するための医薬を製造するための、請求項1のSARM化合物又はそれを含む組成物の使用。
【請求項15】
前記組成物が、アレンドロネートを更に含むことを特徴とする請求項14の使用。
【請求項16】
前記骨が、皮質骨であることを特徴とする請求項14の使用。
【請求項17】
前記骨が、小柱状の骨又は海綿質骨であることを特徴とする請求項14の使用。
【請求項18】
前記SARM化合物が、骨芽細胞形成を促進又は増進することを特徴とする請求項14の使用。
【請求項19】
前記SARM化合物が、破骨細胞増殖を抑制することを特徴とする請求項14の使用。
【請求項20】
前記患者が、筋肉減少症又はカヘキシーを有することを特徴とする請求項14の使用。
【請求項21】
骨粗鬆症又は骨減少症を処置又は予防するための医薬を製造するための、請求項1のSARM化合物又はそれを含む組成物の使用。
【請求項22】
前記患者が、骨粗鬆症を有することを特徴とする請求項16の使用。
【請求項23】
前記骨粗鬆症が、ホルモン的に誘発されることを特徴とする請求項16の使用。
【請求項24】
患者の筋肉萎縮症を治療、予防、抑止、抑制、又は発生を低減させるための医薬を製造するための、請求項1のSARM化合物又はそれを含む組成物の使用。
【請求項25】
前記筋肉萎縮症が、病態、疾病、病気又は容態に起因することを特徴とする請求項24の使用。
【請求項26】
前記病態、疾病、病気又は容態が、神経性、感染性、慢性的又は遺伝的であることを特徴とする請求項25の使用。
【請求項27】
前記病態、疾病、病気又は容態が、筋ジストロフィー、筋肉萎縮症、X連鎖性球脊髄性筋肉萎縮症(SBMA)、カヘキシー、栄養不良、ライ病、糖尿病、腎疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、ガン、末期腎不全、筋肉減少症、気腫、骨軟化症、HIV感染、エイズ、うっ血性心不全(CHF)又は心筋疾患であることを特徴とする請求項26の使用。
【請求項28】
前記筋肉萎縮症が、加齢に伴う筋肉萎縮症、廃用性の身体機能低下に関連する筋肉萎縮症であるか、又は前記筋肉萎縮症が、慢性下背部痛、熱傷、中枢神経系(CNS)の損傷又は障害、末梢神経の損傷又は障害、脊髄の損傷又は障害、化学的損傷又は障害、又はアルコール中毒に起因することを特徴とする請求項24の使用。
【請求項29】
前記医薬が、液体状で静脈内に、動脈内に、又は筋肉内に投与されるか、前記患者にペレット形状で皮下に移植されるか、液体又は固体形状で経口投与されるか、液体又は固体形状で舌下に投与されるか、又は前記患者の粘膜表面に局所的に塗布されることを特徴とする請求項24の使用。
【請求項30】
前記化合物が、ペレット、錠剤、カプセル、溶液、懸濁液、乳濁液、エリキシル、ゲル、クリーム、坐剤又は非経口的製剤形態であることを特徴とする請求項26の使用。
【請求項31】
患者の筋肉動作、筋肉サイズ、筋肉強度、又はそれらの任意の組み合わせを増加させるための医薬を製造するための、請求項1のSARM化合物又はそれを含む組成物の使用。
【請求項32】
患者の代謝症候群に関連する肥満症又は糖尿病を治療するための医薬を製造するための、請求項1のSARM化合物又はそれを含む組成物の使用。
【請求項33】
前記患者が、ホルモンの不均衡、障害又は病気を有することを特徴とする請求項32の使用。
【請求項34】
前記患者が、更年期障害を有することを特徴とする請求項33の使用。
【請求項35】
前記SARMが、前記患者の除脂肪体重を増加させることを特徴とする請求項33の使用。
【請求項36】
外科手術後の回復を促進するための又は早めるための医薬を製造するための、請求項1のSARM化合物又はそれを含む組成物の使用。
【請求項37】
男性患者において精子形成を促進又は抑制するための医薬を製造するための、請求項1のSARM化合物又はそれを含む組成物の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−266350(P2008−266350A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−155291(P2008−155291)
【出願日】平成20年6月13日(2008.6.13)
【分割の表示】特願2006−544150(P2006−544150)の分割
【原出願日】平成17年6月7日(2005.6.7)
【出願人】(504326686)ユニバーシティ・オブ・テネシー・リサーチ・ファウンデーション (22)
【Fターム(参考)】