説明

選択的界面活性剤を用いたHDLコレステロールセンサ

高密度リポタンパク質を含有する試料中の、高密度リポタンパク質中のコレステロール量を決定するための方法であって、試料中の高密度リポタンパク質と選択的に反応する界面活性剤であって、スクロースエステル類及びマルトシド類から選ばれる界面活性剤と反応させること、並びに高密度リポタンパク質中のコレステロール量を、例えば電気化学的技法を用いて、測定することを含む、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、高密度リポタンパク質(HDL)を含有する試料中の、高密度リポタンパク質に結合するコレステロール(HDLコレステロール)量を決定するための方法に関する。本発明はまた、そのような方法において使用するための組成物及びキットに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
多くの疫学的研究で、コレステロール又はapo AI含量のいずれかの観点で測定される高密度リポタンパク質(HDL)の冠状動脈疾患(CAD)の危険性に対する強く、且つ非依存的な逆相関が証明されてきた。HDLコレステロールが10mg/L低下するごとにCADの危険性が2〜3%増加するといわれている。従って、HDLコレステロール濃度がより高いほど、予防的であると考えられている。従って、CADに対する危険性を明らかにする際、及び脂質異常症の治療を行う際のHDLコレステロールの測定が、臨床検査室でますます一般的になってきた。
【0003】
研究技法から適合された、HDLコレステロール測定のための初期の検査室的方法では、沈殿試薬を用いる手作業の分離段階の後、それに引き続いてたいていの場合には自動化学分析装置による、コレステロール含量の分析が必要とされた。典型的な分離段階は、低密度リポタンパク質(LDL)、超低密度リポタンパク質(VLDL)及びキロミクロン(CM)のアグリゲートを形成するために沈殿試薬をこれらの成分と反応させることを伴っていた。その後アグリゲートを、例えば遠心分離によって、反応容器から除去して、HDL含有試料を分析できる状態にしておいた。沈殿物がUV/Vis又は使用される比色分析技法を妨げないようにするため、沈殿物の分離が不可欠であった。
【0004】
より最近になって、様々なリポタンパク質画分の分離を事前に必要としない、多くの技法が開発されてきた。これらの方法は、典型的には、単一の段階で、又は少なくとも沈殿を実施する必要なく測定を成し遂げることができるという利点を有する。従って、測定の自動化が可能である。そのようなアプローチのあるものでは、様々なリポタンパク質画分を異なる速度で分解するある種の界面活性剤が用いられる。例えばある界面活性剤は、最初にHDLとより迅速に反応するかもしれず、そしてLDLとの反応はより緩やかに起こるかもしれない。当該界面活性剤を加えた後、所定の時間にコレステロール含量を測定することによって、測定が、LDLコレステロール含量よりもHDLコレステロール含量により大きく依存することが分かってきた。
【0005】
しかしながら、このアプローチは、その結果に必要な精度及び信頼性を生じてきておらず、また、当該測定結果は、依然としてある程度の、LDL、VLDL及びCM中のコレステロール含量への依存性を残していた。従って、血液や血漿等の体液のHDLコレステロール含量の測定のための簡単であるが信頼でき且つ正確な方法を提供する新たなアプローチが必要である。測定はまた、試験試料中の、LDL、VLDL及びCMに結合したコレステロール含量への依存が低いか、又はそれらと完全に独立していなくてはならない。更に、好ましい方法は、専門的な設備を用いないか、又は実施するために熟練の技術者を必要としないであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明の要旨
本発明は、高密度リポタンパク質を含有する試料中の、高密度リポタンパク質中のコレステロール量を決定するための方法であって、試料を(a)高密度リポタンパク質を選択的に分解する界面活性剤であって、スクロースエステル類及びマルトシド類から選ばれる界面活性剤と接触させること、並びに該高密度リポタンパク質中のコレステロール量を測定することを含む、方法を提供する。当該界面活性剤は好ましくは、低密度リポタンパク質の反応を弱めるものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明で用いられる界面活性剤は、非常に高い選択性を、LDL、VLDL及びCMよりも、HDLに対してもたらす。以前の界面活性剤は、他のリポタンパク質と比較して、異なる速度でHDLと反応することが示されてきているが、本発明の界面活性剤は、ほぼ排他的にHDLと反応し、他のリポタンパク質と反応しないか、又は実質的に反応しない。試料中のHDLは、可溶化して反応に利用できるHDLコレステロールを残すが、一方で他のリポタンパク質画分に結合したコレステロールは、リポタンパク質構造内に結合したままで、反応には利用可能ではないと考えられている。しかしながら、本発明は、この作用様式には縛られない。代替的な理論としては、当該界面活性剤は、LDLの反応を選択的に抑制し、HDLのみ反応するのを可能にするというものである。従って、本発明の界面活性剤は、コレステロールアッセイにおいてHDLコレステロールが反応するのを選択的に可能にするものであるが、一方でLDLコレステロールは実質的に反応できない。従って、その後の、試料のコレステロール含量の測定では、HDL−コレステロール含量のみが反映され、他のリポタンパク質画分内に含有されるコレステロール量には、実質的に依存しない。従って、本発明の方法は、HDLに対して高度に選択的であり、HDL−コレステロールについての正確で信頼できる試験を提供する。
【0008】
本発明の方法は、先行技術の試験と比較して、改善された簡便性という更なる利点を有する。HDLコレステロールの測定結果は、試料を単一の試薬混合物と反応させ、且つコレステロール含量を1回測定することによって得ることができる。更に、結果は非常に短時間で得ることができ、典型的には試料を添加して1分又は数分以内に得ることができる。
【0009】
HDLコレステロールの測定は、典型的には、試料を、コレステロールエステル加水分解試薬及び、コレステロールオキシダーゼ又はデヒドロゲナーゼのいずれかと反応させることによって行う。従って、本発明はまた、高密度リポタンパク質を含有する試料中の、高密度リポタンパク質中のコレステロール量を決定するための方法において用いるための試薬混合物であって、
(a)高密度リポタンパク質を選択的に分解し、且つ任意に低密度リポタンパク質の反応を弱める、本明細書中に規定した通りの界面活性剤;
(b)コレステロールエステル加水分解試薬;及び
(c)コレステロールオキシダーゼ又はコレステロールデヒドロゲナーゼ
を含む、試薬混合物を提供する。
【0010】
高密度リポタンパク質を含有する試料中の、高密度リポタンパク質中のコレステロール量を決定するためのキットであって、(a)高密度リポタンパク質を選択的に分解し、且つ任意に低密度リポタンパク質の反応を弱める、本明細書中に規定した通りの界面活性剤、(b)コレステロールエステル加水分解試薬、及び(c)コレステロールオキシダーゼ又はコレステロールデヒドロゲナーゼ、並びにコレステロールオキシダーゼ又はコレステロールデヒドロゲナーゼと反応するコレステロール量を測定するための手段、を含む、キットも提供する。当該キットは、典型的には、コレステロールオキシダーゼ又はコレステロールデヒドロゲナーゼと反応するコレステロール量を測定するための手段が
− 作用電極、参照電極又は擬似参照電極及び任意に別個の対向電極(counter electrode)を有する電気化学セル;
− 該セルに電位を印加するための電源;並びに
− 結果生じる電気化学的応答を測定するための測定機器
を含む、電気化学的装置である。
【0011】
本発明はまた、本発明のキットを使用する方法であって、
(i)(1)試薬(a)、(b)及び(c)と(2)高密度リポタンパク質を含有する試料とを、互いに、及び、電極と接触させること
(ii)電気化学セルに電位を印加すること;及び
(iii)結果生じる電気化学的応答を測定することによって、形成した生成物量を電気化学的に検出すること
を含む方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、スクロースモノカプレートを界面活性剤として用いて、(a)HDLを含有する血清、(b)LDLを含有する血清、及び(c)脱脂血清に関して実施したコレステロール測定の結果についての、測定された電流(nA)対時間(秒)を示す。
【図2】図2は、本発明の実施形態による装置を示す。
【図3】図3は、一連のCymal界面活性剤を含有するセンサについての応答グラジエント(nA/mM)対時間(秒)を示す。HDL応答グラジエントを実線で示し、LDL応答グラジェントを点線で示す。
【図4】図4は、一連のCymal界面活性剤を含有するセンサについての応答グラジエント(nA/mM)対時間(秒)を示す。HDL応答グラジエントを実線で示し、LDL応答グラジェントを点線で示す。
【図5】図5は、一連のCymal界面活性剤を含有するセンサについての応答グラジエント(nA/mM)対時間(秒)を示す。HDL応答グラジエントを実線で示し、LDL応答グラジェントを点線で示す。
【図6】図6は、一連のCymal界面活性剤を含有するセンサについての応答グラジエント(nA/mM)対時間(秒)を示す。HDL応答グラジエントを実線で示し、LDL応答グラジェントを点線で示す。
【図7】図7は、一連のCymal界面活性剤を含有するセンサについての応答グラジエント(nA/mM)対時間(秒)を示す。HDL応答グラジエントを実線で示し、LDL応答グラジェントを点線で示す。
【図8】図8は、一連のCymal界面活性剤を含有するセンサについての応答グラジエント(nA/mM)対時間(秒)を示す。HDL応答グラジエントを実線で示し、LDL応答グラジェントを点線で示す。
【図9】図9は、一連のCymal界面活性剤を含有するセンサについての応答グラジエント(nA/mM)対時間(秒)を示す。HDL応答グラジエントを実線で示し、LDL応答グラジェントを点線で示す。
【図10】図10は、LiClを用いるか、若しくは用いていない、スクロースモノカプレートを含有するセンサについての応答グラジエント(nA/mM)対時間(秒)を示す。グラフA−Dは、5%SMC及び0、250、500若しくは750mM LiClのいずれかを含有するセンサについてのものである。HDL及びLDLの応答のグラジエントを、それぞれ黒及び白の記号で示す。
【図11】図11は、(a)界面活性剤なし;(b)40mMスクロースモノドデカノエート(SMD);及び(c)100mMスクロースモノドデカノエート(SMD)について、238秒での電流Iox(nA)対リポタンパク質濃度(mM)を示す。HDLは実線の値で、LDLは破線/白丸で示す。
【図12】図12は、界面活性剤なし、40mM SMDあり及び100mM SMDありのセンサについて、HDL対LDLのディファレンシエーション(differentiation)(%)を時間(秒)に対して示す。
【図13】図13は、238秒での電流Iox(nA)対リポタンパク質濃度(mM)を示す。(a)界面活性剤なし;(b)60mMスクロースモノカプレート(SMC);及び(c)100mM SMCについて、HDLを実線の値で示し、LDLを破線/白丸の値で示す。
【図14】図14は、界面活性剤なし、60mM SMCあり及び100mM SMCありのセンサについて、HDL対LDLのディファレンシエーション(%)を、時間(秒)に対して示す。
【図15】図15は、0%、5%、7.5%及び10% SMCを用いたセンサについて、HDL対LDLのディファレンシエーション(%)を、時間(秒)に対して示す。
【図16】図16は、(a)0%SMC、(b)5%SMC、(c)7.5%SMC及び(d)10%SMCを用いたセンサについて、HDL(黒)及びLDL(破線、白丸の点(outline points))についての、98秒での電流Iox(nA)対リポタンパク質濃度(mM)を示す。
【図17】図17は、0%、0.5%、1.0%及び1.5%SMDを用いたセンサについて、HDL対LDLのディファレンシエーション(%)を、時間(秒)に対して示す。
【図18】図18は、(a)0%SMD、(b)0.5%SMD、(c)1.0%SMD及び(d)1.5%SMDを用いるセンサについて、HDL(黒)及びLDL(破線、白丸の点)についての、98秒での電流Iox(nA)対リポタンパク質濃度(mM)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明の詳細な説明
本発明は、試料のHDL−コレステロール含量を選択的に決定する方法を提供するが、ここで当該試料は、HDLのみならず、コレステロールに結合する他のリポタンパク質を含有し得るものである。LDL、VLDL及びCMよりも、HDLに対して高度に選択的な特異的界面活性剤と、試料を接触させることによって選択性が実現される。従って、当該界面活性剤により、HDLに結合するコレステロール及びコレステロールエステル類が測定のために利用可能となるが、一方でLDL、VLDL及びCMに結合するものはリポタンパク質の構造に結合したままであって、後のコレステロール含量の測定において実質的に反応しない。
【0014】
コレステロール及びコレステロールエステル類は、主としてリポタンパク質粒子中で血液を運搬されることが知られている。酵素及び界面活性剤が、そのようなコレステロールをデヒドロゲナーゼによって酸化されるのに利用可能とする正確なメカニズムに関しては、議論がある。従って、本明細書の全範囲で、「分解する」又は「利用可能にした」又は「反応性を与える」等の用語はすべて、処理過程によって、分析に関する応答が任意の試料中のコレステロール(類)から得られるものである当該処理過程に関するものであることが理解される。しかしながら我々は、作用様式に関して、あらゆる特定の理論にも縛られることを望んでいない。
【0015】
本発明で用いられる界面活性剤は、試料中の高密度リポタンパク質を選択的に分解するものである。これは、当該界面活性剤は、LDL、VLDL及びCMと比較して、HDLと選択的に反応することを意味する。代替的には、当該界面活性剤は、コレステロールアッセイにおいて、HDLコレステロールが反応すること(典型的には、コレステロールエステル加水分解試薬及びコレステロールオキシダーゼ又はデヒドロゲナーゼと反応すること)を選択的に可能にするものとして定義できる。本発明の文脈では、HDLを選択的に分解する界面活性剤、又はコレステロールアッセイにおいてHDLコレステロールが反応することを選択的に可能にする界面活性剤は、典型的には、少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は最も好ましくは少なくとも90%の、HDLとLDLとの間のディファレンシエーションを有する界面活性剤である。
【0016】
HDLとLDLとの間のディファレンシエーションは、式(i):
【0017】
【数1】

【0018】
(式中、GはXに対する測定された応答のグラジエント(例、Xの既知の濃度に対する、測定された電流)である)に従って決定できる。測定される応答は、リポタンパク質濃度に関係する(又は対応する)(例えば、リポタンパク質濃度に比例する)任意の測定値であり得る。
【0019】
従って、当業者は、選択した界面活性剤を用いて、HDLコレステロール含量が既知の試料のHDLコレステロール含量を測定し、そして対応して同じ手順を用いて、LDLコレステロール含量が既知の試料のLDLコレステロール含量を測定することによって、任意の所与の界面活性剤がHDLを選択的に分解するものかどうかを、容易に決定できる。その結果からディファレンシエーションの値が計算できる。HDLコレステロール含量又はLDLコレステロール含量を測定するための手順は、典型的には、選択した界面活性剤を用いる、下記の実施例1に記載したものである。
【0020】
本発明において、HDL濃度は典型的には、コレステロールのコレステノンへの電気化学的変換に際して、電極で生じる電流を決定することによって電気化学的に測定される。当該電流は、HDLコレステロール含量の測定値に関係するので、典型的には、測定電流値を、グラジエントを決定するために用いる。
【0021】
ディファレンシエーションは、HDLコレステロール試験の間に用いる経過時間と同じの、試料への試薬の添加とコレステロール含量の測定との間の経過時間を用いて測定しなくてはならない。そのような経過時間は、典型的には、3分以下、好ましくは120秒以下、90秒以下又は60秒以下のオーダーである。本発明の文脈では、選択的な界面活性剤は、実施例1において記載した手順、及び、試料への試薬の添加と測定との間に62秒の経過時間を用いてコレステロール含量を測定した場合、典型的には、少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%又は最も好ましくは少なくとも90%の、HDLとLDLとの間のディファレンシエーションを有する界面活性剤である。
【0022】
好ましい実施形態においては、本発明の選択的界面活性剤は、実質的にLDLを分解しない。従って、本発明のコレステロール試験において、界面活性剤は、好ましくはLDLの反応を弱める。本発明の選択的界面活性剤の正確な作用メカニズムは完全には理解されておらず、また、我々は、あらゆる特定の提案されるメカニズムに縛られることを望まない。
【0023】
HDL若しくはLDLのいずれかに存在する遊離コレステロール又はコレステロールエステル類に起因するコレステロール応答は、速度論的に分離し、HDL応答はLDL応答に先行し、HDLに対するディファレンシエーションを生じさせると考えられている。
【0024】
当該応答の速度論的分離は、多くの理由に起因し得る:界面活性剤のHDLに対する選択的な作用若しくはLDL応答を弱める選択的な作用、又は両メカニズムが一緒に機能してもよい。
【0025】
HDLとLDLとが異なる膜タンパク質を有することは公知である。HDLはApoA1を含有し、LDLはApoBを含有する。当該界面活性剤は、これらのタンパク質の可溶化及びリポタンパク質粒子の崩壊に、選択的に作用し得る。当該界面活性剤が、種々のタイプのリポタンパク質粒子に選択的に取り込まれることができ、この能力がそれらの疎水性−脂溶性のバランス(HLB)に関連していることも公知である。リポタンパク質粒子への界面活性剤の取り込みは、該リポタンパク質粒子のサイズの増大を惹起してその反応性に影響を及ぼし得る。
【0026】
LDL粒子の核は、概ね室温の転移温度以下で結晶的な挙動をすることも公知である。言い換えれば、LDL粒子核中のトリグリセリド及びコレステロールエステルは秩序だって配置されており、LDL粒子は結晶性を示すということができる。このことで、LDL粒子核中のコレステロールの反応性に影響すると期待される。当該界面活性剤がLDL粒子核の秩序を崩壊させないこと、即ち、核中のコレステロールエステルが、リパーゼとの反応のために、表面膜の層から出てくるのが難しいということはあり得る。
【0027】
LDL応答の弱まりは、本発明の選択的界面活性剤の特定の構造によって惹起され得る。当該界面活性剤は、親水性部分(糖部分)及び疎水性部分(アルキル鎖)を有し、そしてアルキル鎖はリポタンパク質粒子の膜を貫通するが、一方糖部分は外側で結合したままのことがあり得る。当該界面活性剤が、そのような様式でLDL粒子中に組み込まれると、糖部分で外膜を覆うこととなり、酵素との距離の接近及び反応を妨げる。当該界面活性剤のHDL粒子中への組み込みにはこの効果はなく、酵素と容易に反応できる、より小さなミセルへのHDL粒子の急速な分解がもたらされ得る。
【0028】
本発明の界面活性剤が、LDL粒子への選択的結合を惹起し、それによってLDL粒子の反応性及びLDL粒子内に含有されるコレステロールのリパーゼ/デヒドロゲナーゼとの反応を低減又は完全に除去することができるということもあり得る。
【0029】
界面活性剤の選択的作用は、リパーゼ/デヒドロゲナーゼ酵素をHDLに対して活性化すること及び/又は当該酵素のLDLへの作用を抑制することが可能ですらあり得る。
【0030】
当業者は、選択した界面活性剤存在下で得られたグラジエントGLDL(界面活性剤)(上に規定した通り)を、界面活性剤非存在下で得られたグラジエントGLDL(ブランク)に対して比較することによって、当該選択した界面活性剤によりLDL応答が弱められるかどうかを決定できる。関係
【0031】
【数2】

【0032】
は、当該界面活性剤がLDL反応を弱める場合には、1未満である。典型的には、関係
【0033】
【数3】

【0034】
は、0.8未満、好ましくは0.5未満又は0.3未満である。
【0035】
グラジエントGLDLは、LDL濃度を決定するための任意の手段によって測定できる。典型的には、本発明においては、既知の濃度に対する電流のグラジエントを用いる。実施例1又は12に示す通りの、グラジエントを決定するための方法を用いてもよい。
【0036】
本発明の界面活性剤として使用するためのスクロースエステル類の例としては、1以上のHO−基が独立してRCOO−基(式中、Rは典型的には、最大18個の炭素原子を有する、直鎖状、分枝状又は環状であり得るアルキル又はアルケニル基である)と置換される、スクロース部分が挙げられる。スクロースエステル類の例としては、式(I):
【0037】
【化1】

【0038】
(Rは典型的には、最大18個の炭素原子を有する、直鎖状、分枝状又は環状であり得るアルキル又はアルケニル基である)の化合物が挙げられる。典型的には、Rは少なくとも5個、例えば少なくとも7個の炭素原子を有する直鎖状アルキル基である。1つの実施形態においては、Rは、最大15個、例えば最大13個の炭素原子を有する。
【0039】
スクロースエステル類の更なる例は、エステル部分が、スクロース部分における異なる位置に現れる式(I)の化合物の修飾物である。更なる例としては、ジ又はポリエステル類が挙げられる。ジ又はポリエステル類の場合は、2以上のR基は同じであっても異なっていてもよいが、典型的には同じである。2以上のスクロースエステル類の混合物を用いてもよい。
【0040】
本発明の界面活性剤として用いるためのマルトシド類の例としては、式(II):
【0041】
【化2】

【0042】
(式中、Rは、例えば最大18個の炭素原子を有する、アルキレン又はアルケニレン基であり、且つAは、メチル基又は4〜7個の炭素原子を有するシクロアルキル基である)のマルトシド類が挙げられる。Rは直鎖状又は分枝状であり得る。例えば、Rは(CH(式中、yは1〜9である)であり得る。
【0043】
1つの実施形態においては、Aは、炭素原子4〜7個を有するシクロアルキル基であり、好ましくはシクロヘキシルである。そのような化合物の例としては、シクロヘキシルメチル−β−D−マルトシド(Cymal−1、アナトレースから入手可能)、シクロヘキシルエチル−β−D−マルトシド(Cymal−2、シクロヘキシルメチル−β−D−マルトシド、アナトレースから入手可能)、シクロヘキシルプロピル−β−D−マルトシド(Cymal−3、アナトレースから入手可能)、シクロヘキシルブチル−β−D−マルトシド(Cymal−4、アナトレースから入手可能)、シクロヘキシルペンチルl−β−D−マルトシド(Cymal−5、アナトレースから入手可能)、シクロヘキシルへキシル−β−D−マルトシド(Cymal−6、アナトレースから入手可能)及びシクロヘキシルヘプチル−β−D−マルトシド(Cymal−7、アナトレースから入手可能)等のシクロヘキシルアルキルマルトシド類が挙げられる。
【0044】
代替の実施形態においては、Aはメチルであり、且つRは、少なくとも5個(例、少なくとも7個)の炭素原子を有し、且つ最大15個(例、最大13個)の炭素原子を有するアルキレン又はアルケニレン基である。そのような化合物の例としては、n−ウンデシル−β−D−マルトシド、ω−ウンデシレニル−β−D−マルトシド、n−オクチル−β−D−マルトシド、2,6−ジメチル−4−ヘプチル−β−D−マルトシド、2−プロピル−1−ペンチル−β−D−マルトシド、n−デシル−β−D−マルトシド、n−トリデシル−β−D−マルトシド、n−テトラデシル−β−D−マルトシド及びn−ドデシル−β−D−マルトシドが挙げられる。
【0045】
上式IIは、β−マルトシド類を示す。しかしながら、α−マルトシド類もまた、本発明における界面活性剤として用いられ得る。従って、界面活性剤の更なる例としては、上に列挙したマルトシド類のα相当物が挙げられる。
【0046】
本発明で用いるための好ましい界面活性剤としては、スクロースモノカプレート、スクロースモノデカノエート、Cymal−1、Cymal−2、Cymal−3、Cymal−4、Cymal−5、Cymal−6、Cymal−7、n−ウンデシル−α−D−マルトシド、n−ウンデシル−β−D−マルトシド、ω−ウンデシレニル−β−D−マルトシド、n−オクチル−β−D−マルトシド、2,6−ジメチル−4−ヘプチル−β−D−マルトシド、2−プロピル−1−ペンチル−β−D−マルトシド、n−デシル−β−D−マルトシド、n−トリデシル−β−D−マルトシド、n−テトラデシル−β−D−マルトシド及びn−ドデシル−β−D−マルトシド、特に、スクロースモノカプレート、スクロースモノデカノエート、n−オクチル−β−D−マルトピラノシド、n−デシル−β−D−マルトピラノシド、Cymal−4及びCymal−5が挙げられる。
【0047】
本発明の1つの実施形態においては、好ましい界面活性剤としては、スクロースモノカプレート(シグマ アルドリッチ株式会社)、Cymal−1、Cymal−2、Cymal−3、Cymal−4、Cymal−5、Cymal−6及びCymal−7が挙げられる。他の実施形態においては、好ましい界面活性剤としては、スクロースモノカプレート(シグマ アルドリッチ株式会社)、Cymal−4及びCymal−5が挙げられる。
【0048】
界面活性剤は個々に用いてもよく、又は2以上の異なる界面活性剤を組み合わせて用いてもよい。用いる界面活性剤の総量は、典型的には、試験される試料1mlあたり最大200mg、好ましくは最大100mg/ml、例えば約50mg/mlである。
【0049】
所望により、試料を、HDL以外のリポタンパク質と錯体を形成する錯化剤と更に反応させてもよい。錯化剤の例としては、ポリアニオン類、ポリアニオン類と二価金属塩との組み合わせ、及びapoB含有リポタンパク質に結合できる抗体が挙げられる。ポリアニオン類はホスホタングステン酸及びその塩、デキストラン硫酸及びその塩、ポリエチレングリコール並びにヘパリン及びその塩から選ぶことができる。一度錯化した形態になると、HDL以外のリポタンパク質は反応に利用できなくなり、従ってコレステロール測定を妨げない。しかしながら、本発明においては特異的な界面活性剤を使用するため、錯化剤は必要でない。従って、試料を錯化剤と反応させないことが好ましい。
【0050】
所望により、試料をイオン性塩と更に接触させてもよい。イオン性塩の添加でHDLへの応答速度が速くなることが分かった。好適なイオン性塩としては、アルカリ金属(例、Li、Na、K)、アルカリ土類金属(例、Mg2+、Ca2+)及び遷移金属(例、Cr3+)塩が挙げられる。LiCl、NaCl、MgCl、CaCl及びCr(NHClが適切な例である。一般的には、反応に悪影響(用いる測定条件下で酸化又は還元される等)を及ぼさない限り、任意のイオン性塩を用いてよい。
【0051】
試料のHDL−コレステロール含量の測定を、コレステロールを測定するための任意の好適な技法によって行うことができる。好ましい技法は、試料を、コレステロールエステル加水分解試薬及び、コレステロールオキシダーゼ又はコレステロールデヒドロゲナーゼと反応させることを伴う。1つの実施形態においては、コレステロールデヒドロゲナーゼが用いられる。従って本発明は、試料を界面活性剤及びコレステロールデヒドロゲナーゼと反応させる方法を包含する。
【0052】
HDLリポタンパク質中に含有されるコレステロールは、遊離コレステロール又はコレステロールエステル類の形態であり得る。従って、任意のコレステロールエステル類を遊離コレステロールに分解するためにコレステロールエステル加水分解試薬が典型的に用いられる。次いで、遊離コレステロールをコレステロールオキシダーゼ又はコレステロールデヒドロゲナーゼと反応させ、そのような反応を受けたコレステロールの量を測定する。
【0053】
コレステロールエステル加水分解試薬は、コレステロールエステル類をコレステロールに加水分解できる、任意の試薬であり得る。試薬は、コレステロールのコレステロールオキシダーゼ又はコレステロールデヒドロゲナーゼとの反応、及びアッセイにおけるその後の任意の段階を妨げないものでなくてはならない。好ましいコレステロールエステル加水分解試薬は酵素であり、例えば、コレステロールエステラーゼ及びリパーゼである。リパーゼはとりわけ好ましい。好適なリパーゼは、例えば、シュードモナス(pseudomonas)又はクロモバクテリウム・ビスコサム(chromobacterium viscosum)種由来のリパーゼである。任意に安定化剤又は保存剤等の添加剤を含有する市販の酵素(例、東洋紡又はアマノから入手可能なもの)を用いてもよい。コレステロールエステル加水分解試薬は、試料1mlあたり0.1〜25mg、例えば試料1mlあたり0.1〜20mg、好ましくは、1mlあたり0.5〜25mg(1mlあたり0.5〜15mg等)の量で用いてもよい。
【0054】
任意の市販形態の、コレステロールオキシダーゼ及びコレステロールデヒドロゲナーゼを用いることができる。例えば、コレステロールデヒドロゲナーゼは、例えばノカルディア(Nocardia)種由来である。コレステロールオキシダーゼ又はコレステロールデヒドロゲナーゼは、試薬混合物1mlあたり0.01〜100mgの量で用いてもよい。1つの実施形態においては、コレステロールオキシダーゼ又はデヒドロゲナーゼは、試料1mlあたり0.1〜20mg、好ましくは1mlあたり0.5〜25mgの量で用いられる。
【0055】
各酵素は、安定化剤又は保存剤等の添加剤を含有し得る。更に、各酵素は、化学的に修飾されていてもよい。
【0056】
界面活性剤は、試料に対して、他の試薬を加える前に加えてもよく、又は他の試薬を加えるのと同時に加えてもよい。好ましい実施形態においては、コレステロールエステル加水分解試薬、コレステロールオキシダーゼ又はデヒドロゲナーゼ及び界面活性剤は、単一の段階で試料と混合される単一の試薬混合物中に存在する。特に好ましい実施形態においては、当該方法は、試料を試薬と接触させる単一の段階を伴い、その結果、単一の試薬混合物のみ提供される必要がある。
【0057】
本発明による測定は、HDL−コレステロールを含有する任意の好適な試料で実施できる。測定は、典型的には、全血又は血液成分(例えば血清又は血漿)で実施される。本発明の方法において使用する好ましい試料は、血清及び血漿である。測定を全血で実施する場合は、当該方法は、赤血球を除去するために血液を濾過する、更なる段階を含み得る。
【0058】
本発明の好ましい実施形態においては、HDL−コレステロール含量を測定するために、電気化学的技法を用いる。これは、コレステロールオキシダーゼ又はコレステロールデヒドロゲナーゼと反応したコレステロールの量を、電極で発生する電気化学的応答を測定することによって決定することを意味する。この実施形態においては、典型的には、試料を界面活性剤、コレステロールエステル加水分解試薬、コレステロールオキシダーゼ又はコレステロールデヒドロゲナーゼ、コレステロールオキシダーゼ又はコレステロールデヒドロゲナーゼと相互作用できる補酵素、及び酸化又は還元されて電極で電気化学的に検出できる生成物を形成することができる酸化還元剤と反応させる。試料と試薬との混合物は、生じる酸化還元反応が検出できるように、電気化学セルの作用電極と接触させる。セルに電位を印加し、結果生じる電気化学的応答、典型的には電流を測定する。
【0059】
この好ましい実施形態においては、HDL−コレステロール量は、以下のアッセイ:
【0060】
【化3】

【0061】
(ここで、ChDはコレステロールデヒドロゲナーゼである)に従って測定する。このアッセイにおいて、所望により、コレステロールデヒドロゲナーゼは、コレステロールオキシダーゼに置き換えることができる。当該アッセイによって生成した、還元された酸化還元試薬量を電気化学的に検出する。しかるべき場合には、更なる試薬もまた、このアッセイに含めてもよい。
【0062】
典型的には、試料は、単一の段階で全ての試薬と接触する。従って、全ての必要な試薬を含有し、且つアッセイを実施するために容易に試料と接触できる試薬混合物を提供する。本発明の試薬混合物は、典型的には、界面活性剤を試料1ml当たり最大200mg、好ましくは最大100mg、例えば約50mgの量で含み、コレステロールエステル加水分解試薬を試料1ml当たり0.1〜20mg、好ましくは0.5〜20mgの量で含み、且つコレステロールデヒドロゲナーゼを、試料1ml当たり0.1〜30mg、好ましくは0.5〜25mgの量で含む。
【0063】
典型的には、補酵素はNAD又はそのアナログである。NADのアナログは、NADと共通する構造的特徴を有し、且つコレステロールデヒドロゲナーゼの補酵素としても働く化合物である。NADのアナログの例としては、APAD(アセチルピリジンアデニンジヌクレオチド);TNAD(チオNAD);AHD(アセチルピリジンヒポキサンチンジヌクレオチド);NaAD(ニコチン酸アデニンジヌクレオチド);NHD(ニコチンアミドヒポキサンチンジヌクレオチド);及びNGD(ニコチンアミドグアニンジヌクレオチド)が挙げられる。補酵素は、典型的には、1〜20mM、例えば3〜15mM、好ましくは5〜10mMの量で、試薬混合物中に存在する。
【0064】
典型的には、酸化還元剤は、上に示したアッセイに従って還元できるものでなくてはならない。この場合、酸化還元剤は補酵素から(又は後述のようなレダクターゼから)電子を受容でき、且つ電子を電極に伝達できるものでなくてはならない。酸化還元剤は分子又はイオン錯体であってもよい。酸化還元剤は、タンパク質等の天然に存在する電子受容体であってもよく、又は合成分子であってもよい。酸化還元剤は、典型的には、少なくとも2つの酸化状態を有するであろう。
【0065】
好ましくは、酸化還元剤は無機錯体である。当該剤は金属イオンを含んでもよく、少なくとも2価を有することが好ましいであろう。特に、当該剤は、遷移金属イオンを含んでもよく、好ましい遷移金属イオンとしては、コバルト、銅、鉄、クロム、マンガン、ニッケル、オスミウム又はルテニウムのイオンが挙げられる。酸化還元剤は帯電していてもよく、例えば、カチオン性又は代替的にはアニオン性であってもよい。好適なカチオン性の剤の例は、Ru(NH3+等のルテニウム錯体であり、好適なアニオン性の剤の例は、Fe(CN)3−等のフェリシアン化錯体である。
【0066】
用いられ得る錯体の例としては、Cu(EDTA)2−、Fe(CN)3−、Fe(CN)(OCR)3−、Fe(CN)(シュウ酸塩)3−、Ru(NH3+、Ru(acac)(Py−3−COH)(Py−3−CO)及び(エチレンジアミン等の)それらのキレートアミンリガンド誘導体類、Ru(NH(py)3+、フェロセニウム及び−NH、−NHR、−NHC(O)R、及びCOH等の、1以上の基が2つのシクロペンタジエニル環の一方又は両方へと置換されたその誘導体類が挙げられる。無機錯体は、好ましくはFe(CN)3−、Ru(NH3+又はフェロセニウムモノカルボン酸(FMCA)である。Ru(NH3+又はRu(acac)(Py−3−COH)(Py−3−CO)が好ましい。
【0067】
酸化還元剤は、典型的には、10〜200mM、例えば20〜150mM、好ましくは30〜100mM又は最大80mMの量で試薬混合物中に存在する。
【0068】
好ましい実施形態においては、電気化学的アッセイにおいて用いられる試薬混合物は、レダクターゼを更に含む。レダクターゼは、典型的には、還元型NADから2個の電子を伝達され、酸化還元剤へ2個の電子を伝達する。従って、レダクターゼの使用により、素早い電子の伝達がもたらされる。
【0069】
用いることができるレダクターゼの例としては、ジアホラーゼ並びにチトクロームP450レダクターゼ、特に、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)由来のチトクロームP450cam酵素系のプチダレドキシンレダクターゼ、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)由来のP450BM−3酵素のフラビン(FAD/FMN)ドメイン、ホウレンソウフェレドキシン(ferrodoxin)レダクターゼ、ルブレドキシンレダクターゼ、アドレノドキシンレダクターゼ、硝酸還元酵素、チトクロームbレダクターゼ、トウモロコシ硝酸還元酵素、テルプレドキシンレダクターゼ及び酵母、ラット、ウサギ及びヒトNADPHチトクロームP450レダクターゼが挙げられる。本発明で用いるための好ましいレダクターゼとしては、ジアホラーゼ及びプチダレドキシンレダクターゼが挙げられる。
【0070】
レダクターゼは組み換えタンパク質、又は精製若しくは単離した天然に存在するタンパク質であってもよい。レダクターゼは、電子の伝達を行う速度又は基質特異性を最適化する等、その性能を向上するために変異されていてもよい。
【0071】
レダクターゼは、典型的には、0.5〜100mg/ml、例えば1〜50mg/ml、1〜30mg/ml又は2〜20mg/mlの量で試薬混合物中に存在する。
【0072】
任意で試薬は乾燥でき、より好ましくは、試薬は凍結乾燥できる。
【0073】
本発明の好ましい実施形態においては、電気化学的アッセイの大まかなスキームは、以下:
【0074】
【化4】

【0075】
(式中、
PdRはプチダレドキシンレダクターゼであり、
Diaはジアホラーゼであり、
ChDはコレステロールデヒドロゲナーゼである)
の通りである。
【0076】
試薬混合物は、任意に、1以上の更なる成分、例えば、賦形剤及び/又は緩衝液及び/又は安定化剤を含有する。混合物を安定化するため、並びに任意で、試薬混合物を本発明の装置上で乾燥する場合に、当該乾燥混合物に多孔性を提供するために、当該試薬混合物に賦形剤を含めることが好ましい。好適な賦形剤の例としては、マンニトール、イノシトール及びラクトース等の糖類、並びにPEGが挙げられる。グリシンもまた、賦形剤として用いることができる。至適酵素活性のために必要なpHを提供するために、緩衝液も含めてもよい。例えば、トリス緩衝液(pH9)を用いてもよい。例えば酵素の安定性を高めるために、安定化剤を加えてもよい。好適な安定化剤の例は、アミノ酸(例、グリシン及びエクトイン)である。
【0077】
好ましい実施形態においては、本発明の電気化学的アッセイのための試薬混合物は、高密度リポタンパク質を選択的に分解し、その上LDLでは弱まった作用を示す界面活性剤;コレステロールエステラーゼ又はリパーゼ;コレステロールデヒドロゲナーゼ;NAD又はそのアナログ;レダクターゼ;及び酸化還元剤を含む。より好ましい実施形態においては、試薬混合物は、高密度リポタンパク質を選択的に分解する界面活性剤、コレステロールエステラーゼ又はリパーゼ、コレステロールデヒドロゲナーゼ、NAD又はそのアナログ、ジアホラーゼ又はプチダレドキシンレダクターゼ及びRu(NH3+を含む。
【0078】
本発明の試薬混合物は、典型的には、固形形態、例えば、乾燥形態、又はゲルとして提供される。代替的には、溶液又は懸濁液の形態であり得る。反応混合物中に存在する各成分量は、上にモル濃度又はw/vで表しているが、当業者には、存在する各成分の相対量が同じであるまま、これらの量を乾燥混合物又はゲルに好適な単位に適合させることができるであろう。
【0079】
電気化学的測定が全血で実施される場合、得られる測定結果はヘマトクリット値に依存し得る。従って、測定結果は理想的には、少なくとも部分的に、この要因を説明するために調整するべきである。代替的には、アッセイを実施する前に、試料を濾過することによって赤血球を除去できる。
【0080】
本発明はまた、HDLを含有する試料のHDLコレステロール含量を選択的に決定するためのキットを提供する。当該キットには、必要な試薬(例、界面活性剤、コレステロールエステル加水分解試薬及びコレステロールオキシダーゼ又はコレステロールデヒドロゲナーゼ並びにオキシダーゼ又はデヒドロゲナーゼと反応するコレステロール量を測定するための手段)が含まれる。
【0081】
好ましい実施形態においては、当該キットは、HDL−コレステロール含量を電気化学的に決定するための装置を含む。この実施形態においては、反応したコレステロール量を決定するための手段は、作用電極、参照電極又は擬似参照電極及び任意に別個の対向電極を有する電気化学セル;セルに電位を印加するための電源;及び結果生じる電気化学的応答、典型的にはセルを横断する電流、を測定するための測定機器を含む。
【0082】
電気化学的な決定のための装置は、典型的には、上記した通りの試薬混合物を含む。当該試薬は個々に、又は1以上の試薬混合物の形態でキット中に存在し得る。単一の試薬混合物が好ましい。試薬混合物は装置中に、液体又は固体のいずれの形態でも存在し得るが、固体形態が好ましい。
【0083】
典型的には、試薬混合物は、好適な液体(例、水又は緩衝液)中に懸濁/溶解させて装置中に挿入するか又は装置上に置き、次いで所定の位置で乾燥させる。装置中/上で物質を乾燥させるこの段階は、当該物質を望ましい場所に保持するのに役立つ。乾燥は、例えば、風乾、真空乾燥、凍結乾燥又はオーブン乾燥(加熱)によって実施され得るが、凍結乾燥が好ましい。試薬混合物は、典型的には、試料が試薬混合物と接触したとき、電極との接触も起きるように、電極の付近に配置される。
【0084】
当該装置には、任意に、試験する試料が、試薬混合物と接触する前に通過する膜が含まれ得る。当該膜は、例えば、赤血球(red blood cell)、赤血球(erythrocyte)及び/又はリンパ球等の成分を濾過で除去するために用いられ得る。血液濾過膜を含む好適な濾過膜は、当該技術において公知である。Presence 200及びPall filtrationのPALL BTS SP300、Whatman VF2, Whatman Cyclopore, Spectral NX及びSpectral Xが血液濾過膜の例である。繊維ガラスフィルター(例えばWhatman VF2)は全血から血漿を分離でき、また全血検査試料が装置に供給され、且つ試験される試料が血漿である場合に好適に用いられる。
【0085】
使用前に親水的又は疎水的処理を経てきたものを含む、代替的又は付加的な膜も用いてもよい。所望により、膜表面の他の特徴もまた、改変してもよい。例えば、所望の試料の膜を通る流れを促進するために、水中における膜の接触角を修正するための処理を用いてもよい。当該膜は1又は2以上の材料層を含んでもよく、各々は同じであっても、異なっていてもよい。例えば、異なる膜材料の2層を有する従来の二重層膜を用い得る。
【0086】
本発明において用いるための適切な装置には、WO 2003/056319及びWO 2006/000828に記載のものが含まれる。
【0087】
本発明の1つの実施形態による装置を、図18に記載する。この実施形態においては、作用電極5はミクロ電極である。本発明の目的のために、ミクロ電極は、50μmを超えない少なくとも1つの作業寸法を有する電極である。
【0088】
セルは、底部1及び壁(単数又は複数)2を有するレセプタクル又は容器の形態である。典型的には、レセプタクルは、25〜1000μmの深さ(即ち、上部から底部まで)を有するであろう。1つの実施形態においては、レセプタクルの深さは、50〜500μm、例えば、100〜250μmである。代替的な実施形態においては、レセプタクルの深さは50〜1000μm、好ましくは200〜800μmであり、例えば300〜600μmである。レセプタクルの長さ及び幅(即ち、壁から壁まで)、又はレセプタクルが円筒状の場合はその直径は、典型的には、0.1〜5mm、例えば0.5〜1.5mm(1mm等)である。
【0089】
レセプタクル3の開口端は、部分的に、不透過性材料で覆われてもよく、又は半透性若しくは透過性の膜等の、半透性若しくは透過性の材料で覆われてもよい。レセプタクルの開口端は、実質的に、半透性又は透過性の膜4で覆われるのが好ましい。膜4は、とりわけ、埃又は他の混入物質がレセプタクルに入ることを防ぐのに役立つ。
【0090】
作用電極5は、レセプタクルの壁に位置する。作用電極は、例えば、レセプタクルの壁周囲の連続した帯の形態である。作用電極の厚みは、典型的には0.01〜25μm、好ましくは0.05〜15μmであり、例えば0.1〜20μmである。より厚みのある作用電極、例えば、0.1〜50μm、好ましくは5〜20μmの厚みを有する電極も想定している。作用電極の厚みは、レセプタクルをその底部に置く場合は、その垂直方向の寸法である。作用電極の厚みは、その有効作業寸法、即ち、試験する試料と接触する、電極の寸法である。作用電極は、例えば、導電性インクの形態の、炭素、パラジウム、金又は白金で形成するのが好ましい。当該導電性インクは、例えば、白金及び/又はグラファイト及び/又は白金炭素といった更なる材料を含有する改良インクであり得る。作用電極を形成するために2以上の層を用いてもよく、当該層は、同じか、又は異なった材料で形成される。
【0091】
セルはまた、例えば、レセプタクルの底部、レセプタクルの壁(単数又は複数)中、又はレセプタクルの周囲又は付近の装置の領域中に存在し得る擬似参照電極(示さず)を含有する。擬似参照電極は、典型的には、Ag/AgClから作られるが、他の材料も用いてもよい。擬似参照電極として用いるための好適な材料は、当業者に公知である。この実施形態においては、セルは、擬似参照電極が対向電極及び参照電極の両方として働く2電極システムである。セルが参照電極及び別個の対向電極を含む、代替の実施形態も想定できる。
【0092】
擬似参照(又は参照)電極は、典型的には、作用電極5と同様のサイズの、又はそれより小さい、若しくは大きい(例えば相当大きい)表面積を有する。典型的には、擬似参照(又は参照)電極の表面積の、作用電極の表面積に対する比率は、少なくとも1:1、例えば少なくとも2:1、又は少なくとも3:1である。好ましい比率は少なくとも4:1である。擬似参照(又は参照)電極は、例えば、マクロ電極であってもよい。好ましい擬似参照(又は参照)電極は、0.01mm又はそれを上回る、例えば、0.1mm又はそれを上回る、寸法を有する。これは例えば、0.1mm又はそれを上回る、直径であり得る。擬似参照(又は参照)電極の典型的な面積は、0.001mm〜100mm、好ましくは0.1mm〜60mmであり、例えば1mm〜50mmである。作用電極と擬似参照(又は参照)電極との間の最短距離は、例えば、50〜1000μmである。
【0093】
セルが機能できるためには、電極は各絶縁材料6によって分離されなければならない。絶縁材料は、典型的には、例えば、アクリレート、ポリウレタン、PET,ポリオレフィン、ポリエステルといったポリマー又は他の任意の安定な絶縁材料である。ポリカーボネート並びに他のプラスチック及びセラミックも、好適な絶縁材料である。絶縁層はポリマー溶液から溶媒を蒸発させることによって形成することができる。塗布後硬化する液体、例えばワニスも、用いてもよい。代替的には、例えば、熱若しくはUVへの曝露によって、又は2成分の架橋可能なシステムの活性部分と混合することによって架橋される、架橋可能なポリマー溶液を用いてもよい。しかるべき場合には、絶縁層を形成するために、誘電性インクも用いてもよい。代替の実施形態においては、絶縁層は装置にラミネートされる(例えば熱で、ラミネートされる)。
【0094】
電気化学セルの電極は、好適な任意の手段によって、必要な任意の測定機器に接続してよい。典型的には、電極は、導電性のトラック(track)に接続され、該導電性のトラックは、必要な測定機器にそれ自身接続されるか、又は接続され得る。
【0095】
図18中の7に示す通り、必要な試薬は、典型的にはレセプタクル内に含有させる。典型的には、単一の試薬混合物の形態の試薬は、液体の形態でレセプタクル内に挿入された後、組成物を固定するのに役立つよう乾燥させる。試薬混合物は、例えば、風乾、真空乾燥、凍結乾燥、又はオーブン乾燥(加熱)されてもよく、最も好ましくは、凍結乾燥される。
【0096】
本発明の装置は、試料を装置に提供し、且つ試料の試薬混合物への接触を可能にすることによって機能させる。血漿又は血液を溶解し、且つ混合物中の試薬と反応させるために十分な時間が割り当てられなければならないのは明らかである。血漿を凍結乾燥したセンサと共に用いる場合は、センサへの試料のアプライと、セルの印加電位の印加との間に概ね20秒間が経過する。全血を用いる場合、血液細胞の除去を可能にするために、この遅延時間はより長くてもよく、例えば最大で5分間である。特定の試験においては、血漿を試薬と、電極から離して混合し、そしてセルに添加して即座に電位を印加する。典型的には、電位が印加され、測定結果を10秒間、典型的には1〜4秒以内に読み取る。
【0097】
この短い範囲内の時間を用いることで、HDLに結合したコレステロールのみを測定で検出することを確実にするのに役立つ。用いた界面活性剤がわずかにLDLと反応する場合、そのような反応は無視され、測定がそのような短時間内でなされる場合には実質的に結果に影響しない。
【0098】
典型的には、Ru(II)が作用電極で検出すべき生成物の場合、セルに印加する電位は0.1V〜0.3Vである。0.15Vが好ましい印加電位である。(本明細書中で述べる電圧はすべて、0.1M塩化物ありでの、Ag/AgCl参照電極に対する値である。)好ましい実施形態においては、電位は最初の段階で、約1秒間、0.15Vの正の印加電位にし、次の段階で、還元電流の測定を望む場合、負の印加電位を印加する。WO 03/097860(参照により本明細書中に組み込まれる)に記載の通り、二重の電位段階を用いることで、電極汚染及び電極領域におけるばらつきを最小にする修正が可能になる。異なる酸化還元剤を用いる場合、酸化/還元ピークが発生する電位によって、印加電位を変えることができる。
【0099】
従って、本発明の電気化学的試験で、HDLコレステロールの測定を、試料を装置にアプライしてから非常に短時間で、典型的には約5分以内で、好ましくは3分以内で、2分以内で、又は1分以内にでさえ、行うことが可能になる。状況によっては、試料を装置にアプライしてからわずか15秒又は30秒で結果を得ることができるかもしれない。
【実施例】
【0100】
実施例
実施例1
緩衝溶液の調製(トリス緩衝液−5%グリシン pH9.0)
結晶化トリス及びトリスHClを含有するTrizma Pre−Set Crystals(pH9.0、シグマ、T−1444)を950mlのdHOに溶かし、pHを記録した。続いて、グリシン(シグマ、G−7403)50gを該トリス溶液に加え、pHを記録した。次いで、10Mの水酸化カリウム(シグマ、p−5958)を用いてpHを8.8〜9.2内に調整し、dHOを用いて該溶液を1000mlとし、最終pHを記録した(pH9.1)。該溶液は使用期限を1ヶ月とし、4℃にて保存した。
【0101】
界面活性剤溶液の調製
事前調製した緩衝液にスクロースモノカプレート(シグマ)を加え、10%スクロースモノカプレート緩衝液とすることにより、界面活性剤溶液を調製した。
【0102】
LDL試料及びHDL試料の調製
LDL(Scipac、P232−8)試料及びHDL(Scipac、P233−8)試料は、脱脂血清(dilipidated serum)(Scipac、S139)を用いて、必要濃度の10倍のものを作製した(最終テスト混合物中で1:10希釈するため)。次いで、該試料を、スペースクリニカルアナライザー(Space clinical analyser)(Schiappanelli Biosystems Inc)を用いて解析した。LDL及びHDLのおおよその濃度は10mMであり、最終テスト混合物中で1mMとした。
【0103】
酵素混合物の調製
事前調製した緩衝液に、以下を加えることにより、酵素混合物を調製した:
160mMヘキサアンミンルテニウム(III)塩化物(アルファ・エイサー、10511)
17.7mMチオニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(オリエンタル酵母工業株式会社)
8.4mg/ml プチダレドキシンレダクターゼ(バイオカタリスト)
6.7mg/ml コレステロールエステラーゼ(Sorachim/東洋紡、COE−311)
44.4mg/ml コレステロールデヒドロゲナーゼ、ゼラチンフリー(アマノ、CHDH−6)
【0104】
テストプロトコル
該界面活性剤溶液9μlを該酵素混合物9μlと混合した。T=−30秒にて、試料2μl(10倍濃度LDL若しくは10倍濃度HDLのいずれか、又は脱脂血清2μl)と、生成した界面活性剤:酵素混合物とを混合し、この結果生じた溶液の9μlを、電極上に置いた。T=0秒にて、クロノアンペロメトリーテストを開始した。0.15Vの酸化電位を印加し、続いて−0.45Vの還元電位を印加した。酸化電位を印加している間、5つのタイムポイント(T=0、32、64、90及び118秒)にて電流を測定した。各試料とも、重複してテストを行った。
【0105】
結果
HDL及びLDLのテスト結果を、コントロールとしての脱脂試料と共に、図1に示す。図1から、とりわけ短い期間において、スクロースモノカプレートがLDLよりもHDLに対して選択的であることが明らかである。
【0106】
ディファレンシエーションの値を決定するために、測定したHDL電流を既知のHDL濃度に対してプロットし、各タイムポイントでのグラジエントを測定した。同様に、LDLの各測定結果に対するグラジエントを計算した。ディファレンシエーションの値の結果を表1に示す。
【0107】
【表1】

【0108】
ここで、GLDL(A)は、LDLコレステロール濃度Aにおける、既知のLDLコレステロール濃度に対するILDLのグラジエントであり;GHDL(A)は、HDLコレステロール濃度Aにおける、既知のHDLコレステロール濃度に対するIHDLのグラジエントである。
【0109】
従って、スクロースモノカプレートは、LDLよりもHDLに対して選択性を示す。
【0110】
実施例2から8
緩衝溶液の調製
緩衝溶液は0.1M トリス(pH9.0)、30mM KOH、10%w/v β−ラクトースを含有していた。10%ラクトース緩衝液を用いて、30mMメディエーター(メディエーター=Ru(acac)(Py−3−COH)(Py−3−CO))溶液を作製した。この溶液をCovarisのアコースティックミキサーを用いて混合したが、10秒の1サイクルを強度0.5でバーストあたり50サイクルで用い、そして60秒の3サイクルを強度5でサイクルあたり100バーストで用いた。
【0111】
酵素及びCymalを、以下の最終濃度になるように上記緩衝液に加えた:
8.85mM チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチド
4.2mg/ml プチダレドキシンレダクターゼ
3.35mg/ml リパーゼ(ジェンザイム、クロモバクテリウム・ビスコサム由来)
22.2mg/ml コレステロールデヒドロゲナーゼ、ゼラチンフリー
50mM Cymal界面活性剤
【0112】
用いたCymalは:
実施例2: Cymal1=2−シクロヘキシルメチル−β−D−マルトシド
実施例3: Cymal2=2−シクロヘキシルエチル−β−D−マルトシド
実施例4: Cymal3=シクロヘキシルプロピル−β−D−マルトシド
実施例5: Cymal4=シクロヘキシルブチル−β−D−マルトシド
実施例6: Cymal5=シクロヘキシルペンチル−β−D−マルトシド
実施例7: Cymal6=シクロヘキシルヘキシル−β−D−マルトシド
実施例8: Cymal7=シクロヘキシルヘプチル−β−D−マルトシド
【0113】
分注及び凍結乾燥
WO 03056319に記載の通りに、各溶液0.4μl/ウェルをセンサ上へ分注した。次いで、分注したセンサシートを、凍結乾燥させた。
【0114】
試料
テストは、事前に凍結させた血漿試料を用いて行った。これらを最低30分間解凍してから、14000rpmで5分間遠心した。脱脂血清も試料として用いた。次いで、これらの試料について、TC濃度、TG濃度、HDL濃度及びLDL濃度を、クリニカルアナライザーを用いて解析した。
【0115】
テストプロトコル
血漿試料を用いてセンサをテストした。該センサに15μlの血漿試料を加えて、ポテンショスタットに連結されたマルチプレクサを用いてクロノアンペロメトリーテストを行った。これにより、13のタイムポイント(0、32、64、96、128、160、192、224、256、288、320、352及び384秒)にて、+0.15Vで酸化電流を測定し、最後のタイムポイント(416秒)にて、−0.45Vで還元電流を測定した。トランジェントの長さは4秒間で、各酸化の間に遅延時間はなかった。各血漿試料を重複してテストした。
【0116】
解析
電流トランジェントでの4秒間の値について、結果を解析した。各タイムポイントにおけるグラジエントを用いて、LDL及びHDLの測定結果の間で得られる%ディファレンシエーションを計算した。
【0117】
結果を以下の通り、図3から9に示す。
【0118】
図3:50mM Cymal−1を含有するセンサの経時的な応答グラジエント(nA/mM)。HDLへの応答グラジエントを実線で、LDLへの応答グラジエントを点線で示している。
【0119】
図4:50mM Cymal−2を含有するセンサの経時的な応答グラジエント(nA/mM)。HDLへの応答グラジエントを実線で、LDLへの応答グラジエントを点線で示している。
【0120】
図5:50mM Cymal−3を含有するセンサの経時的な応答グラジエント(nA/mM)。HDLへの応答グラジエントを実線で、LDLへの応答グラジエントを点線で示している。
【0121】
図6:50mM Cymal−4を含有するセンサの経時的な応答グラジエント(nA/mM)。HDLへの応答グラジエントを実線で、LDLへの応答グラジエントを点線で示している。
【0122】
図7:50mM Cymal−5を含有するセンサの経時的な応答グラジエント(nA/mM)。HDLへの応答グラジエントを実線で、LDLへの応答グラジエントを点線で示している。
【0123】
図8:50mM Cymal−6を含有するセンサの経時的な応答グラジエント(nA/mM)。HDLへの応答グラジエントを実線で、LDLへの応答グラジエントを点線で示している。
【0124】
図9:50mM Cymal−7を含有するセンサの経時的な応答グラジエント(nA/mM)。HDLへの応答グラジエントを実線で、LDLへの応答グラジエントを点線で示している。
【0125】
Cymal界面活性剤を含有する酵素混合物のHDL及びLDLへの応答を比較することにより、Cymal界面活性剤のいくつかは、HDLに対するディファレンシエーションの増加を示し、Cymal4及び5が最も顕著であったことが示される。
【0126】
実施例9
本実験の目的は、アルファ型若しくはベータ型のいずれかのn−ウンデシルD−マルトシド又は、不飽和アルキル鎖を有するアルキルマルトシドであるω−ウンデシレニル−β−D−マルトシドを含有するセンサの、HDLへの応答を調べることであった。
【0127】
緩衝溶液の調製
緩衝液は0.1M トリス(pH9.0)、30mM KOH、10%w/v β−ラクトースを含有していた。10%ラクトース緩衝液を用いて、30mMメディエーター(メディエーター=Ru(acac)(Py−3−COH)(Py−3−CO))溶液を作製した。この溶液をCovarisのアコースティックミキサーを用いて混合したが、10秒の1サイクルを強度0.5でバーストあたり50サイクルで用い、そして60秒の3サイクルを強度5でサイクルあたり100バーストで用いた。
【0128】
界面活性剤溶液
事前調製したRuAcac溶液にマルトシドを加えて、以下の最終濃度にすることにより、2倍強度マルトシド溶液を作製した:

n−ウンデシル−α−D−マルトピラノシド(アナトレース、U300HA)
200mM(180μl RuAcac溶液中、0.0179g)
100mM(200mMストック50μl+RuAcac溶液50μl)
50mM(200mMストック25μl+RuAcac溶液75μl)

n−ウンデシル−β−D−マルトピラノシド(シグマ−アルドリッチ、94206)
200mM(180l RuAcac溶液中、0.0179)
100mM(200mMストック50μl+RuAcac溶液50μl)
50mM(200mMストック25μl+RuAcac溶液75μl)

ω−ウンデシレニル−β−D−マルトピラノシド(アナトレース、U310)
200mM(171μl RuAcac溶液中、0.0169g)
100mM(200mMストック50μl+RuAcac溶液50μl)
50mM(200mMストック25μl+RuAcac溶液75μl)
【0129】
酵素混合物
事前調製したRuAcac溶液に酵素を加えて以下の最終濃度にすることにより、2倍強度で酵素混合物を作製した:

17.7mM チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチド
8.4mg/ml プチダレドキシンレダクターゼ
6.7mg/ml リパーゼ(ジェンザイム、クロモバクテリウム・ビスコサム由来)
44.4mg/ml コレステロールデヒドロゲナーゼ、ゼラチンフリー
この溶液をCovarisアコースティックミキサーを用いて混合した。
【0130】
分注及び凍結乾燥
各酵素溶液につき、等量(約50ul)の2倍濃度酵素溶液及びマルトシド溶液を1:1で混合し、酵素/界面活性剤の最終混合物を得た。更に、等量(約50ul)の2倍濃度酵素溶液及び30mM RuAcac溶液を混合することにより、ブランク混合物を調製した。WO03056319に記載の通りに、電動ピペットを用い、0.4μl/ウェルの各溶液をセンサへ分注した。次いで、分注したセンサシートを凍結乾燥させた。
【0131】
試料
テストは、事前に凍結させた血漿試料を用いて行った。これらを最低30分間解凍してから、1400rpmで遠心した。脱脂血清(Scipac、S139)も、試料として用いた。これらの試料について、TC濃度、TG濃度、HDL濃度及びLDL濃度を、スペースクリニカルアナライザー(Schiappanelli Biosystems Inc)を用いて解析した。
【0132】
テストプロトコル
血漿試料を用いてセンサをテストした。該センサに12〜15ulの血漿試料を加えて、クロノアンペロメトリーテストを行った。これにより、13のタイムポイント(0、32、64、96、128、160、192、224、256、288、320、352及び384秒)にて、+0.15Vで酸化電流を測定し、最後のタイムポイント(416秒)にて、−0.45Vで還元電流を測定した。トランジェントの長さは4秒間で、各酸化の間に遅延時間はなかった。各血漿試料は重複してテストした。
【0133】
解析
電流トランジェントでの4秒間の値についてアウトプットを解析した。各タイムポイントにおける、HDL及びLDLへの応答のグラジエントを用いて、LDL及びHDLの測定値の間で得られる%ディファレンシエーションを計算した。
【0134】
結果
224秒における応答グラジエント及び%ディファレンシエーションを、以下の表に示す:
【0135】
【表2】

【0136】
これらのマルトシドの任意のものを使用することにより、界面活性剤を加えていないセンサの応答に比べ、HDLへの応答のグラジエント及び%ディファレンシエーションが有意に増加した。アルファ型とベータ型の両方のアルキルマルトシドが、HDLセンサにおいて、有効に差異を与える(differentiating)剤となり得ると結論づけられる。不飽和アルキル鎖を有するアルキルマルトシドがHDLセンサにおいて有効に差異を与える剤となり得ることも、また結論づけられる。
【0137】
実施例10
本実験の目的は、直鎖又は分岐アルキル鎖のいずれかを持つアルキル−β−D−マルトシドを含有するセンサの、HDLへの応答を調べることであった。
【0138】
実施例9の方法を繰り返したが、2倍強度のマルトシド溶液としては以下を用いた:

n−オクチル−β−D−マルトピラノシド(アナトレース、O310)
200mM(200μl RuAcac溶液中、0.0182g)
100mM(200mMストック50μl+RuAcac溶液50μl)
50mM(200mMストック25μl+RuAcac溶液75μl)

2,6−ジメチル−4−ヘプチル−β−D−マルトピラノシド(アナトレース、DH325)
200mM(189μl RuAcac溶液中、0.0177g)
100mM(200mMストック50μl+RuAcac溶液50μl)
50mM(200mMストック25μl+RuAcac溶液75μl)

2−プロピル−1−ペンチル−β−D−マルトピラノシド(アナトレース、P310)
200mM(192μl RuAcac溶液中、0.0175g)
100mM(200mMストック50μl+RuAcac溶液50μl)
50mM(200mMストック25μl+RuAcac溶液75μl)

n−デシル−β−D−マルトピラノシド(アナトレース、D322)
200mM(191μl RuAcac溶液中、0.0184g)
100mM(200mMストック50μl+RuAcac溶液50μl)
50mM(200mMストック25μl+RuAcac溶液75μl)
【0139】
結果
224秒における応答グラジエント及び%ディファレンシエーションを、以下の表に示す:
【0140】
【表3】

【0141】
分岐アルキル基を有するアルキル−β−D−マルトシドが、HDLセンサにおいて差異を与える剤として作用しうると結論づけられる。
【0142】
実施例11
本実施例の目的は、Cymal4又はCymal−5(シクロヘキシル−ブチル−β−D−マルトシド、又は、シクロヘキシル−ペンチル−β−D−マルトシド)を含有するセンサの、HDLへの応答を調べることであった。
【0143】
実施例9の方法を繰り返したが、2倍強度のマルトシド溶液としては以下を用いた:

Cymal−4 (アナトレース, C324)
50mM (217μl RuAcac溶液中、0.0052g)

Cymal−5 (アナトレース, C325)
50mM (208μl RuAcac溶液中、0.0051g)
【0144】
結果
224秒における応答グラジエント及び%ディファレンシエーションを以下の表に示す:
【0145】
【表4】

【0146】
該HDLセンサにおいて、Cymal−4及びCymal−5の両方が、差異を与える剤として作用し得ると結論づけられる。
【0147】
実施例12
本実施例の目的は、種々のアルキル鎖長を有するn−アルキル−β−D−マルトシドを含有するセンサの、HDLへの応答を調べることであった。
【0148】
以下の2倍強度マルトシド溶液を用いて、実施例9に従い、RuAcac溶液、マルトシド溶液及び酵素溶液を作製した:

n−オクチル−β−D−マルトピラノシド(アナトレース、O310)
200mM(201μl RuAcac溶液中、0.0182g)
100mM(200mMストック50μl+RuAcac溶液50μl)
50mM(200mMストック25μl+RuAcac溶液75μl)

n−トリデシル−β−D−マルトピラノシド(アナトレース、T323LA)
200mM(204μl RuAcac溶液中、0.0214g)
100mM(200mMストック50μl+RuAcac溶液50μl)
50mM(200mMストック25μl+RuAcac溶液75μl)

n−テトラデシル−β−D−マルトピラノシド(アナトレース、T315)
200mM(200μl RuAcac溶液中、0.0215g)
100mM(200mMストック50μl+RuAcac溶液50μl)
50mM(200mMストック25μl+RuAcac溶液75μl)
【0149】
分注及び凍結乾燥
実施例9に記載したように、酵素溶液を分注及び凍結乾燥した。実施例9と同様の方法で試料を調製した。
【0150】
テストプロトコル
電極あたり、血漿試料12〜15μlを用いた。12〜15μlの血漿を加えてクロノアンペロメトリーを開始した。酸化電流を0.15Vで、13のタイムポイント(0、32、64、96、128、160、192、224、256、288、320、352及び384秒)にて測定し、還元電流を−0.45Vで、最後のタイムポイント(416秒)にて測定した。各試料を重複してテストした。
【0151】
解析
各タイムポイントにおける、HDL及びLDLへの応答のグラジエントを用いて、LDL及びHDLの測定値の間で得られる%ディファレンシエーションを計算した。
【0152】
結果
224秒における応答グラジエント及び%ディファレンシエーションを以下の表に示す:
【0153】
【表5】

【0154】
n−オクチル−β−D−マルトシドの使用により、界面活性剤を加えていないセンサの応答に比べ、HDLへの応答のグラジエント及び%ディファレンシエーションが有意に増加した。更に、n−オクチル−β−D−マルトピラノシドの使用により、LDLへの応答のグラジエントが減少した。
【0155】
25mM及び50mMにおいては、n−トリデシル−β−D−マルトシドは、HDLへの応答のグラジエントは増加させなかったが、LDLへの応答のグラジエントを減少させたので、HDLに対する%ディファレンシエーションを増加させた。
【0156】
100mMでは、n−テトラデシル−β−D−マルトシドはHDLとLDLの両方への応答のグラジエントを減少させ、HDLに対する%ディファレンシエーションの小さな増加を与えた。
【0157】
実施例13:
本実施例の目的は、リパーゼ又はコレステロールエステラーゼのいずれかを用いて、スクロースモノカプレート(SMC)又はn−オクチル−β−D−マルトシド(OMP)を含有するセンサの、HDLへの応答を調べることであった。
【0158】
緩衝溶液の調製
緩衝溶液は0.1M トリス(pH9.0)、30mM KOH、10%w/v β−ラクトースを含有していた。10%ラクトース緩衝液を用いて、30mMメディエーター(メディエーター=Ru(acac)(Py−3−COH)(Py−3−CO))溶液を作製した。この溶液をCovarisのアコースティックミキサーを用いて混合したが、10秒の1サイクルを強度0.5でバーストあたり50サイクルで用い、そして60秒の3サイクルを強度5でサイクルあたり100バーストで用いた。
【0159】
界面活性剤溶液
RuAcac溶液を用いて、2倍強度の界面活性剤溶液を作製した。

スクロースモノカプレート(SMC)(同仁堂、SO21−12)
200mM(218μl RuAcac溶液中、0.0217g)

n−オクチル マルトピラノシド(OMP)(アナトレース、O310)
100mM(209μl RuAcac溶液中、0.0095g)
【0160】
酵素混合物
事前調製したRuAcac溶液に酵素を加えて、以下の最終濃度にすることにより、リパーゼ(ジェンザイム、クロモバクテリウム・ビスコサム)又はコレステロールエステラーゼ(ジェンザイム、シュードモナス・エスピー)のいずれかを有する酵素混合物を2倍強度で作製した:

17.7mM チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(オリエンタル酵母工業株式会社)
8.4mg/mlプチダレドキシンレダクターゼ(バイオカタリスト)
6.7mg/ml リパーゼ(ジェンザイム)又はコレステロールエステラーゼ(ジェンザイム)
44.4mg/mlコレステロールデヒドロゲナーゼ、ゼラチンフリー(アマノ、CHDH−6)
【0161】
この溶液をCovarisアコースティックミキサーを用いて混合した。
【0162】
以下のリパーゼを用いて、更なる酵素混合物を4倍強度で作製した:
クロモバクテリウム・ビスコサム由来のリパーゼ(ジェンザイム、70−1461−01)
100mM SMC溶液 89uL中、0.0048g

シュードモナス・エスピー由来のリパーゼ(東洋紡、LPL311)
RuAcac溶液 91uL中、0.0049g
【0163】
事前調製したRuAcac溶液に酵素を加えることにより、これらの酵素混合物を適宜希釈し、以下の最終濃度とした:

8.8mM チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(オリエンタル酵母工業株式会社)
4.2mg/ml プチダレドキシンレダクターゼ(バイオカタリスト)
13.5mg/ml リパーゼ(ジェンザイム)又はリパーゼ(東洋紡)
22.2g/mL/mlコレステロールデヒドロゲナーゼ、ゼラチンフリー(アマノ、CHDH−6)
【0164】
最終酵素混合物
等量(約50ul)の2倍濃度酵素溶液及び2倍濃度マルトシド溶液を1:1で混合し、単倍濃度の酵素/界面活性剤の最終混合物を得た。更に、等量(約50ul)の2倍濃度酵素溶液及び30mM RuAcac溶液を混合することにより、ブランク混合物を調製した。
4倍濃度の酵素はRuAcac溶液及び界面活性剤溶液で希釈し、上に示したような最終濃度を得た。
【0165】
分注及び凍結乾燥
WO 03056319に記載の通りに、電動ピペットを用い、各溶液0.4μl/ウェルをセンサに分注した。次いで、分注したセンサシートを凍結乾燥させた。
【0166】
試料
テストは、事前に凍結させた血漿試料を用いて行った。これらを最低30分間解凍してから、1400rpmで5分間遠心した。脱脂血清(Scipac、S139)も、試料として用いた。これらの試料について、TC濃度、TG濃度、HDL濃度及びLDL濃度を、スペースクリニカルアナライザー(Schiappanelli Biosystems Inc)を用いて解析した。
【0167】
テストプロトコル
血漿試料を用いてセンサをテストした。該センサに12〜15uLの血漿試料を加えて、クロノアンペロメトリーテストを行った。これにより、13のタイムポイント(0、32、64、96、128、160、192、224、256、288、320、352及び384秒)にて、+0.15Vで酸化電流を測定し、最後のタイムポイント(416秒)にて、−0.45Vで還元電流を測定した。トランジェントの長さは4秒間で、各酸化の間に遅延時間はなかった。各血漿試料を重複してテストした。
【0168】
解析
各タイムポイントでのHDL及びLDLへの応答のグラジエントを用いて、LDLの測定値及びHDLの測定値から得られる%ディファレンシエーションを計算した。
【0169】
結果
224秒における応答のグラジエント及び%ディファレンシエーションは以下の表の通りである:
【0170】
【表6】

【0171】
リパーゼ又はコレステロールエステラーゼのいずれかを、界面活性剤SMC又はOMPと共に用いることにより、界面活性剤を加えていないセンサの応答に比べ、HDLへの応答のグラジエント及び%ディファレンシエーションが増加した。これらの界面活性剤を含有する全ての混合物において、界面活性剤を加えていないセンサと比べて、LDLへの応答のグラジエントが減少した。
【0172】
実施例14
本実施例の目的は、種々のアルキル鎖長を有するn−アルキル−β−D−マルトシドを含有するセンサの、HDLへの応答を調べることであった。
【0173】
実施例12の方法を繰り返したが、2倍強度のマルトシド溶液としては、以下を用いた:

n−ドデシル−β−D−マルトピラノシド(アナトレース、D310)

200mM(194μl RuAcac溶液中、0.0198g)
100mM(200mMストック50μl+RuAcac溶液50μl)
50mM(200mMストック25μl+RuAcac溶液75μl)

n−デシル−β−D−マルトピラノシド(アナトレース、D322)

200mM(197μl RuAcac溶液中、0.0190g)
100mM(200mMストック50μl+RuAcac溶液50μl)
50mM(200mMストック25μl+RuAcac溶液75μl)

n−ウンデシル−β−D−マルトピラノシド(シグマ−アルドリッチ、94206)

200mM(174μl RuAcac溶液中、0.0173g)
100mM(200mMストック50μl+RuAcac溶液50μl)
50mM(200mMストック25μl+RuAcac溶液75μl)
【0174】
結果
224秒における応答のグラジエント及び%ディファレンシエーションは以下の表の通りである:
【0175】
【表7】

【0176】
これらのn−アルキル−β−D−マルトシドの使用により、界面活性剤を加えていないセンサの応答に比べ、HDLへの応答のグラジエント及び%ディファレンシエーションが有意に増加した。更に、これらのn−アルキル−β−D−マルトシドの使用により、LDLへの応答のグラジエントが減少した。
【0177】
実施例15
本実験の目的は、スクロースミリステート又はスクロースカプレートを含有するセンサの、HDLへの応答を調べることであった。これらの界面活性剤は、モノ及びポリ置換スクロースエステルの混合物を含有する。これらの界面活性剤のNMR解析は、これらがスクロース分子あたり1.1アルキル鎖を含有することを示している。
【0178】
実施例12の方法を繰り返したが、2倍強度マルトシド溶液の代わりに、以下の2倍強度界面活性剤溶液を用いた:

スクロースミリステート(同仁堂、S335)
10%(260μl RuAcac溶液中、0.026g)
5%(10% ストック50μl+RuAcac溶液50μl)
2.5%(10% ストック25μl+RuAcac溶液75μl)

スクロースカプレート(同仁堂、S334)
10%(248μl RuAcac溶液中、0.0248g)
5%(10% ストック50μl+RuAcac溶液50μl)
2.5%(10% ストック25μl+RuAcac溶液75μl)
【0179】
結果
224秒における応答のグラジエント及び%ディファレンシエーションは以下の表の通りである:
【0180】
【表8】

【0181】
スクロースカプレート又はスクロースミリステートの使用により、界面活性剤を加えていないセンサ応答に比べ、HDLへの応答のグラジエント及び%ディファレンシエーションが有意に増加する。更に、スクロースカプレート又はスクロースミリステートの使用により、LDLへの応答のグラジエントが減少する。
【0182】
実施例16
本実験の目的は、広範な濃度のSMC又はUMPで調製したセンサのHDLへの応答の依存性を調べることであった。
【0183】
実施例12の方法を繰り返したが、2倍強度マルトシド溶液の代わりに以下の2倍強度界面活性剤溶液を用いた:

スクロースモノカプレート(同仁堂、S021−12)
600mM(252μl RuAcac溶液中、0.0751g)

n−ウンデシル−β−D−マルトピラノシド(シグマ−アルドリッチ、94206)
600mM(251μl RuAcac溶液中、0.0749g)
【0184】
希釈 600mMストックの量 RuAcac溶液の量
400mM 60μl 30μl
200mM 30μl 60μl
100mM 15μl 75μl
50mM 10μl 110μl
20mM 3μl 87μl
【0185】
結果
224秒における応答のグラジエント及び%ディファレンシエーションは以下の表の通りである:
【0186】
【表9】

【0187】
SMCの使用により、界面活性剤を加えていないセンサの応答に比べ、HDLへの応答のグラジエント及び%ディファレンシエーションが有意に増加する。更に、SMCの使用により、LDLへの応答のグラジエントが減少する。最も大きなHDLの応答のグラジエントのためには、SMCの最適量は25〜100mMである。
【0188】
界面活性剤を加えていないセンサの応答に比べ、低濃度のUMPにおいてHDLへの応答のグラジエントは増加し、より高濃度のUMPにおいては減少した。更に、UMPの濃度の全てにおいて、UMPの使用によって、LDLへの応答のグラジェントは減少する。HDLに対する%ディファレンシエーションは、全体として、全ての濃度において、UMPの使用によって、有意に増加する。最も大きなHDLの応答のグラジエントのためには、UMPの最適量は10〜50mMである。
【0189】
実施例17
本実験の目的は、5%w/v SMC(スクロースモノカプレート)及び種々のイオン性塩を用いて調製したセンサでのHDLへの応答を調べることであった。
【0190】
緩衝溶液
10% β−ラクトース(シグマ、L3750)、0.1M Tris PH9.0,30mM KOHを含有する緩衝溶液を調製した。これを、0.1g SMCを2.0ml ラクトース緩衝液に溶解することにより、5%w/v SMC(同仁堂 SO21−12)溶液にした。0.0670g RuAcacを4.083mlのSMC溶液に溶解することにより、単倍強度のRuAcac(Cis−[Ru(acac)(Py−3−COH)(Py−3−CO)])溶液を作製した。この溶液を、アコースティックミキサーを用いて、混合した。
【0191】
2倍濃度酵素溶液
事前調製した30mM RuAcac溶液に酵素を加えることにより、酵素溶液を2倍濃度で作製した。該酵素溶液は以下を含有していた:

17.7mM チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(オリエンタル酵母工業株式会社)
8.4mg/ml プチダレドキシンレダクターゼ(バイオカタリスト)
6.7mg/ml リパーゼ(ジェンザイム、1461)
44.4mg/ml コレステロールデヒドロゲナーゼ、ゼラチンフリー(アマノ、CHDH−6)
【0192】
この溶液を、Covarisアコースティックミキサーを用いて、混合した。
【0193】
イオン性塩溶液
事前調製したRuAcac溶液にイオン性塩を加えることにより、イオン性塩溶液を2倍濃度で以下の通りに調製した:

LiCl(アルドリッチ、21、323−3)
1.5M LiCl溶液:0.0379gをRuAcac溶液595μLに溶解した。
1M LiCl溶液:1.5mM LiCl溶液100μLをRuAcac溶液50μLと混合した。
0.5M LiCl溶液:1.5mM LiCl溶液50μLをRuAcac溶液100μLと混合した。

NaCl(シグマ、S−7653)
1M NaCl溶液:0.0118グラムをRuAcac溶液201.7μLに溶解した。
100mM NaCl溶液:1M NaCl溶液及びRuAcac溶液を1:9の量比で混合した。

MgCl(シグマ、C−4901)
560mM MgCl溶液:0.0461グラムをRuAcac溶液403μLに溶解した。

CaCl(シグマ、M2670)
500mM CaCl溶液:0.0111グラムをRuAcac溶液200μLに溶解した。
250mM CaCl溶液:500mM CaCl溶液及びRuAcac溶液を1:1の量比で混合した。

Cr(NHCl(Manchester Organics)
120mM Cr(NHCl溶液:0.0253グラムをRuAcac溶液809μLに溶解した。
30mM Cr(NHCl:120mM Cr(NHCl溶液37.5μLをRuAcac溶液112.5μLと混合した。
【0194】
分注及び凍結乾燥
各酵素溶液につき、等量(約50ul)の2倍濃度酵素溶液及びイオン性塩溶液を1:1で混合し、酵素/イオン性塩の最終混合物を得た。更に、イオン性塩実験の各セットにつき、等量(約50ul)ずつの2倍濃度酵素溶液及び30mM RuAcac溶液を混合して、ブランク混合物を調製した。WO 03056319に記載の通りに、電動ピペットを用いて、0.4μl/ウェルの各溶液を、センサへ分注した。次いで、分注したセンサシートを凍結乾燥した。
【0195】
試料
事前に凍結させた血漿試料を用いて、テストを行った。これらを最低30分間解凍してから、1400rpmで5分間遠心した。脱脂血清(Scipac、S139)も、試料として用いた。これらの試料について、TC濃度、TG濃度、HDL濃度及びLDL濃度を、スペースクリニカルアナライザー(Schiappanelli Biosystems Inc)を用いて解析した。
【0196】
テストプロトコル
血漿試料を用いてセンサをテストした。該センサに12〜15uLの血漿試料を加えて、クロノアンペロメトリーテストを行った。これにより、13のタイムポイント(0、32、64、96、128、160、192、224、256、288、320、352及び384秒)にて、+0.15Vで酸化電位を測定し、最後のタイムポイント(416秒)にて、−0.45Vで還元電位を測定した。トランジェントの長さは4秒間で、各酸化の間の遅延時間はなかった。各血漿試料を重複してテストした。
【0197】
解析
各タイムポイントにおける、HDL及びLDLへの応答のグラジエントを用いて、LDL及びHDLの測定結果の間で得られる%ディファレンシエーションを計算した。
【0198】
結果
酵素混合物中でイオン性塩を使用することで、センサ応答にかかる時間の量が減少し、HDLへの応答の最大のグラジエントとなることが分かった。センサ型がHDLへの応答の最大のグラジエントを与えたタイムポイントを以下の表に示す:
【0199】
【表10】

【0200】
時間に対するHDL及びLDLへの応答のグラジエントを、LiClを用いて又は用いずに調製したセンサに関して、図10に示す。
【0201】
イオン性塩の添加は、概しては、5% SMCを用いて調製したHDLセンサにおいて、より早いHDLへの応答速度をもたらした。
【0202】
実施例18
本実験の目的は、種々のアルキル鎖長を持つスクロースエステルを含有するセンサの、HDLへの応答を調べることであった。
【0203】
緩衝溶液の調製
緩衝溶液は、0.1M トリス(pH9.0)、30mM KOH、10%w/v β−ラクトースを含有していた。10% ラクトース緩衝液を用いて、30mM メディエーター(メディエーター=Ru(acac)(Py−3−COH)(Py−3−CO))溶液を作製した。この溶液をCovarisのアコースティックミキサーを用いて混合したが、10秒の1サイクルを強度0.5でバーストあたり50サイクルで用い、そして60秒の3サイクルを強度5でサイクルあたり100バーストで用いた。
【0204】
スクロースエステル溶液
事前調製したRuAcac溶液にスクロースエステルを加えて以下の濃度にすることにより、2倍強度のスクロースエステル溶液を作製した:

スクロースモノカプレート(SMC)(同仁堂、S021−12)
200mM(202μl RuAcac溶液中、0.0201g)
100mM(200mM ストック50μl+RuAcac溶液50μl)
50mM(200mM ストック25μl+RuAcac溶液75μl)

n−オクタノイルスクロース(SMO)(カルビオケム、494466)
200mM(201μl RuAcac溶液中、0.0188g)
100mM(200mM ストック50μl+RuAcac溶液50μl)
50mM(200mM ストック25μl+RuAcac溶液75μl)

n−ドデカノイルスクロース(SMD)(カルビオケム、324374)
200mM(202μl RuAcac溶液中、0.0201g)
100mM(200mM ストック50μl+RuAcac溶液50μl)
50mM(200mM ストック25μl+RuAcac溶液75μl)
【0205】
酵素混合物
事前調製したRuAcac溶液に酵素を加えて以下の最終濃度にすることにより、酵素混合物を2倍強度で作製した:

17.7mM チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(オリエンタル酵母工業株式会社)
8.4mg/ml プチダレドキシンレダクターゼ(バイオカタリスト)
6.7mg/ml リパーゼ(ジェンザイム、クロモバクテリウム・ビスコサム由来))
44.4mg/ml コレステロールデヒドロゲナーゼ、ゼラチンフリー(アマノ、CHDH−6)
【0206】
この溶液を、Covarisアコースティックミキサーを用いて混合し、Covaris S−series SonoLab−S1ソフトウェア−プログラムHDL4℃を用いた。
【0207】
分注及び凍結乾燥
各酵素溶液につき、等量(約50ul)の2倍濃度酵素溶液及びスクロースエステル溶液を1:1で混合し、酵素/界面活性剤の最終混合物を得た。更に、等量(約50ul)ずつの2倍濃度酵素溶液及び30mM RuAcac溶液を混合して、ブランク混合物を調製した。WO 03056319に記載の通りに、電動ピペットを用いて、0.4μl/ウェルの各溶液をセンサ上へ分注した。次いで、分注したセンサシートを凍結乾燥した。
【0208】
血漿試料
血漿試料を30分間解凍してから、2900RCFで5分間遠心した。脱脂血清(Scipac、S139)も、試料として用いた。試料について、TC濃度、TG濃度、HDL濃度及びLDL濃度を、スペースクリニカルアナライザー(Schiappanelli Biosystems Inc)を用いて解析した。
【0209】
テストプロトコル
12〜15μlの血漿試料を電極ごとに用いた。血漿を加えて、クロノアンペロメトリーテストを開始した。13のタイムポイント(0、32、64、96、128、160、192、224、256、288、320、352及び384秒)にて、酸化電流を+0.15Vで測定し、最後のタイムポイント(416秒)にて、還元電位を−0.45Vで測定した。各血漿試料を重複してテストした。
【0210】
解析
各タイムポイントにおけるHDL及びLDLへの応答のグラジエントを用いて、LDL及びHDLの測定結果の間で得られる%ディファレンシエーションを計算した。
【0211】
結果
224秒における応答のグラジエント及び%ディファレンシエーションは、以下の表の通りである:
【0212】
【表11】

【0213】
スクロースエステルの使用により、界面活性剤を加えていないセンサ応答に比べ、HDLへの応答のグラジエント及び%ディファレンシエーションが有意に増加した。更に、スクロースエステルの使用により、LDLへの応答のグラジエントは減少した。
【0214】
実施例19
溶液の調製、分注及び凍結乾燥
基本の酵素混合物は同一であるが、異なる酵素混合物を用いて、最終の成分濃度が以下のようになるようにして、いくつかの溶液を調製した:

0.1M Tris−HCL、pH9.0
30mM KCl
100mg/ml ラクトース
界面活性剤(界面活性剤なし(0mg/ml)、40mM スクロースモノドデカノエート(SMD)(20mg/ml)、100mM SMD(50mg/ml)、60mM スクロースモノカプレート(SMC)(30mg/ml)若しくは100mM SMC(50mg/ml)
30mM ルテニウムAcAcメディエーター(Cis−[Ru(acac)(Py−3−COH)(Py−3−CO)])
6mg/ml チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(TNAD)
4mg/ml プチダレドキシンレダクターゼ(PdR)
3mg/ml ジェンザイムリパーゼ(G.Lip)
22.2mg/ml コレステロールデヒドロゲナーゼ
【0215】
WO 0356319に記載の通りに、ウェルあたり0.4ulの溶液を、センサ上に分注した。センサを凍結乾燥した。
【0216】
テストプロトコル
20ulの血漿を各電極に添加した。t=0秒にて、クロノアンペロメトリーテストを開始した。34秒の連続した時間間隔で4秒間、340秒の期間、+0.15Vで酸化電位を測定し、続いて4秒間、−0.45Vで還元電位を測定した。酸化の間には34秒の遅延があり、その結果、約0、34、68、102、136、170、204、238、272、306及び340秒における酸化であった。トランジェントでの4秒における電流値に関して、データを解析した。
【0217】
結果を図11から14並びに表12及び13に示す:
【0218】
【表12】

【0219】
【表13】

【0220】
実施例20:
溶液の調製、分注及び凍結乾燥
基本の酵素混合物は同一であるが、異なる酵素混合物を用いて、最終の成分濃度が以下のようになるようにして、いくつかの溶液を調製した:

0.1M Tris−HCL、pH9.0
50mg/ml (5%)グリシン
界面活性剤(0% SMC又は界面活性剤なし(0mg/ml)、5% スクロースモノカプレート(SMC)(50mg/ml)、7.5% SMC(75mg/ml)又は10%(100mg/ml))
80mM 塩化ルテニウムヘキサアミン(Hexaamine)
6mg/ml チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(TNAD)
4mg/ml プチダレドキシンレダクターゼ(PdR)
3mg/ml ジェンザイムリパーゼ
22.2mg/ml コレステロールデヒドロゲナーゼ
【0221】
WO 200356319に記載の通りに、ウェルあたり0.4ulの溶液をセンサ上に分注した。センサを凍結乾燥した。
【0222】
テストプロトコル
脱脂血清中で調製した20ulのScipac HDL又はLDLを各電極に添加した。Autolab及びマルチプレクサーを用いて、クロノアンぺロメトリーにより、電極をテストした。t=0秒において、クロノアンペロメトリーはテストされた。14秒の連続した時間間隔で1秒間、140秒の期間、+0.15Vで酸化電位を測定し、続いて1秒間、−0.45Vで還元電位を測定した。酸化の間には14秒の遅延があり、その結果、約0、14、28、42、56、70、84、98、112、126及び140秒における酸化であった。トランジェントでの1秒における電流値に関して、データを解析した。
【0223】
結果を図15及び16並びに表14に示す。
【0224】
【表14】

【0225】
実施例21
溶液の調製、分注及び凍結乾燥
基本の酵素混合物は同一であるが、異なる酵素混合物を用いて、最終の成分濃度が以下のようになるようにして、いくつかの溶液を調製した:

0.1M Tris−HCL、pH9.0
50mg/ml (5%)グリシン
界面活性剤(0% SMD又は界面活性剤なし(0mg/ml)、0.5% スクロースモノドデカノエート(SMD)(5mg/ml)、1.0% SMD(10mg/ml)又は1.5%(15mg/ml))
80mM 塩化ルテニウムヘキサアミン(Hexaamine)
6mg/ml チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(TNAD)
4mg/ml プチダレドキシンレダクターゼ(PdR)
3mg/ml ジェンザイムリパーゼ
22.2mg/ml コレステロールデヒドロゲナーゼ
【0226】
WO 200356319に記載の通りに、ウェルあたり0.4ulの溶液をセンサ上に分注した。センサを凍結乾燥した。
【0227】
テストプロトコル
脱脂血清中で調製した20ulのScipac HDL又はLDLを各電極に添加した。Autolab及びマルチプレクサーを用いて、クロノアンペロメトリーにより電極をテストした。t=0秒において、クロノアンペロメトリーテスト(tested)を開始した。14秒の連続した時間間隔で1秒間、140秒の期間、+0.15Vで酸化電位を測定し、続いて1秒間、−0.45Vで還元電位を測定した。酸化の間には14秒の遅延があり、その結果、約0、14、28、42、56、70、84、98、112、126及び140秒における酸化であった。トランジェントでの1秒における電流値に関して、データを解析した。
【0228】
結果を図17及び18並びに表15に示す。
【0229】
【表15】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
高密度リポタンパク質を含有する試料中の、高密度リポタンパク質中のコレステロール量を決定するための方法であって、試料を(a)高密度リポタンパク質を選択的に分解し、且つ任意に低密度リポタンパク質の反応を弱める界面活性剤であって、スクロースエステル類及びマルトシド類から選ばれる界面活性剤と反応させること、並びに高密度リポタンパク質中のコレステロール量を測定することを含む、方法。
【請求項2】
界面活性剤(a)が、少なくとも50%を下回る、式(i):
【数1】

[式中、測定(HDLコレステロール)又は測定(LDLコレステロール)は、それぞれHDL又はLDLコレステロール濃度に関係する測定値である]で与えられるLDLに対するHDLのディファレンシエーションを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
界面活性剤が(i)1以上のHO−基が独立してRCOO−基[式中、Rは最大18個の炭素原子を有するアルキル基又はアルケニル基である]で置換されているスクロース部分を含むスクロースエステルであるか、又は(ii)式(II)
【化1】

[式中、Rは最大18個の炭素原子を有するアルキレン基又はアルケニレン基であり、且つAはメチル基又は4〜7個の炭素原子を有するシクロアルキル基である]のβ−マルトシドであるか、若しくは対応するα−マルトシドである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
界面活性剤が、スクロースモノカプレート、シクロヘキシルブチル−β−D−マルトシド(Cymal−4)又はシクロヘキシルペンチル−β−D−マルトシド(Cymal−5)である、請求項1〜3のうちの1項に記載の方法。
【請求項5】
高密度リポタンパク質中のコレステロール量が、試料を(b)コレステロールエステル加水分解試薬及び(c)コレステロールオキシダーゼ又はコレステロールデヒドロゲナーゼと反応させること、並びにコレステロールオキシダーゼ又はコレステロールデヒドロゲナーゼと反応したコレステロール量を決定することによって測定される、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
高密度リポタンパク質中のコレステロール量を、電気化学的技法によって測定する、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
試料を
(a)高密度リポタンパク質を選択的に分解し、且つ任意に低密度リポタンパク質の反応を弱める界面活性剤;
(b)コレステロールエステル加水分解試薬;
(c)コレステロールオキシダーゼ又はコレステロールデヒドロゲナーゼ;
(d)補酵素;及び
(e)酸化又は還元されて生成物を形成することができる酸化還元剤;
と反応させること、
並びに形成された生成物の量を電気化学的に検出することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
コレステロールエステル加水分解試薬がリパーゼである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
試料を、更に(f)レダクターゼと反応させる、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
試料を、界面活性剤(a)、コレステロールエステル加水分解試薬(b)及びコレステロールオキシダーゼ又はコレステロールデヒドロゲナーゼ(c)と同時に反応させる、請求項7〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
高密度リポタンパク質を含有する試料が全血であり、且つ方法が、赤血球を除去するために、試料を濾過する段階を更に含む、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
高密度リポタンパク質中のコレステロール量の測定が、試料の界面活性剤との反応から3分以下の時間内で完了される、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
高密度リポタンパク質を含有する試料中の、高密度リポタンパク質中のコレステロール量を決定するための方法において使用するための試薬混合物であって、
(a)請求項1〜4のいずれか1項において規定した通りの、高密度リポタンパク質を選択的に分解し、且つ任意に低密度リポタンパク質の反応を弱める界面活性剤;
(b)請求項7又は8において規定した通りのコレステロールエステル加水分解試薬;及び
(c)コレステロールオキシダーゼ又はコレステロールデヒドロゲナーゼを含む、試薬混合物。
【請求項14】
(d)補酵素、(e)酸化又は還元されて生成物を形成することができる酸化還元剤;及び任意に(f)レダクターゼを更に含む、請求項13に記載の試薬混合物。
【請求項15】
高密度リポタンパク質を含有する試料中の、高密度リポタンパク質中のコレステロール量を決定するためのキットであって、(a)請求項1〜4のいずれか1項において規定した通りの、高密度リポタンパク質を選択的に分解し、且つ任意に低密度リポタンパク質の反応を弱める界面活性剤、(b)請求項7又は8において規定した通りのコレステロールエステル加水分解試薬、及び(c)コレステロールオキシダーゼ又はコレステロールデヒドロゲナーゼ、並びに任意に(d)補酵素、(e)酸化又は還元されて生成物を形成することができる酸化還元剤、及び(f)レダクターゼ、並びにコレステロールオキシダーゼ又はコレステロールデヒドロゲナーゼと反応するコレステロールの量を測定するための手段のうちの1つ以上、を含む、キット。
【請求項16】
コレステロールオキシダーゼ又はコレステロールデヒドロゲナーゼと反応するコレステロールの量を測定するための手段が
− 作用電極、参照電極又は擬似参照電極及び任意に別個の対向電極を有する電気化学セル;
− セルに電位を印加するための電源;並びに
− 結果生じる電気化学的応答を測定するための測定機器
を含む、請求項15に記載のキット。
【請求項17】
試薬(a)、(b)及び(c)並びに任意に(d)、(e)及び(f)のうちの1つ以上が、単一の試薬混合物の形態で存在する、請求項15又は16に記載のキット。
【請求項18】
試薬混合物が乾燥した形態である、請求項17に記載のキット。
【請求項19】
請求項16〜18のいずれか1項において規定した通りのキットを使用する方法であって、
(i)(1)試薬(a)、(b)及び(c)並びに任意に(d)、(e)及び(f)のうちの1つ以上と、(2)高密度リポタンパク質を含有する試料とを、互いに、及び電極と接触させること;
(ii)電気化学セルに電位を印加すること;及び
(iii)結果生じる電気化学的応答を測定することによって、形成された生成物量を電気化学的に検出すること
を含む、方法。
【請求項20】
段階(iii)が、試料を試薬(a)、(b)及び(c)と接触させた時点から最大3分以内の時間で完了される、請求項19に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公表番号】特表2009−537019(P2009−537019A)
【公表日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−510534(P2009−510534)
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【国際出願番号】PCT/GB2007/001765
【国際公開番号】WO2007/132223
【国際公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(500472327)オックスフォード バイオセンサーズ リミテッド (19)
【Fターム(参考)】