説明

選択送信装置

【課題】受信装置まで同時に全ての放送信号が伝送されない選択送信装置が介在する放送システムにおいて、選択送信装置が介在することを前提としない直接受信用の一般的な受信装置のスキャン処理を容易に行うことができ、また、伝送帯域使用の非効率化を招くことなく行うことができる選択送信装置を提供する。
【解決手段】選択送信装置1は、受信した複数の放送信号の中から選択した放送信号を放送番組として出力する受信装置3まで、当該選択した放送信号を伝送するものであって、制御信号送受信部12と、信号選択部11と、を備える構成とした。
を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放送信号を受信し、そのうちいくつかを選択的に受信装置まで送信する選択送信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、各放送局による電波(以下、放送信号という)を用いたアナログ及びデジタル放送サービス(地上放送又は衛星放送を指し、以下、アナログとデジタルとを区別しない場合単に放送サービスという)は、無線周波数のうち、ある周波数帯域を使用して行われている。地上放送の場合は、VHF〜UHF帯の内の6MHzが使用され、衛星放送(BS、CS放送)の場合は、12GHz帯の内の27MHzが使用されている。以下、各放送局が放送信号に使用する無線周波数の周波数帯域をチャンネルと呼称することとする。
【0003】
そして、デジタル放送サービスの場合、各放送局があるチャンネルで送信するデジタル放送信号は、TS(トランスポートストリーム)と呼ばれ、このTSはTSごとに一意の識別子(TS id)を持っている。
【0004】
そして、このデジタル放送信号を受信する受信装置(以下、デジタル放送受信装置という)では、TSのTS id及び当該TSで伝送される番組のservice idと、送信されるチャンネルとの一覧をメモリに保持して、参照することで、送信されるTSの中から、所望のTSを選択し、チャンネルを合わせて視聴することができる。以下、このTS id、service idと対応するチャンネルとの一覧を受信可能周波数テーブルと呼称することとする。
【0005】
通常、放送サービスにおいては、地域によって受信できる放送信号及びチャンネル数が異なっており、ある時期から受信できる放送信号及びチャンネルの数が増減したり、ある放送信号のチャンネルが変更されたりすることがある。
【0006】
このため、デジタル放送受信装置は、このような放送サービスの差異、変更に対応するため、受信可能なチャンネルをサーチし、受信可能周波数テーブルを受信装置のメモリに保持する処理を行う機能を有している。以下、この処理をスキャン処理と呼称することとする。
【0007】
このデジタル放送受信装置のスキャン処理には、ARIB TR−B14 6.2に示されているように、初期スキャンと再スキャンとがある。
初期スキャンは、それまで受信装置のメモリに保持されていた受信可能周波数テーブルをクリアし、スキャンを行うことを指しており、再スキャンは、受信装置のメモリをクリアせずに、スキャン処理を行うことを指している。なお、再スキャンで新たに発見されたチャンネルは、受信装置の受信可能周波数テーブルに追加されることになる。
【0008】
以上のスキャン処理は、放送サービスを受ける視聴者が、自ら受信装置を操作することによって行う場合のほかに、ケーブルテレビサービスで行われているように、放送サービスを提供している放送サービス提供者が、視聴者宅に設置された受信装置に対してリモートで行う場合がある。
【0009】
この場合、例えば、JCL SPEC−007(地上デジタルテレビジョン放送トランスモジュレーション運用仕様)第7章等に示されているように、チャンネルの増減、又は変更がある場合、受信装置に予め予約スキャンの要求を行い、受信装置が自動でスキャン処理を行うことにより、視聴者が手動でスキャン処理を行うことなく、変更後のサービスを利用可能にする仕組みが規定されている。
【0010】
このようなスキャン処理の例として、その地域で受信可能な複数の周波数テーブルをメモリに記憶しておいて、複数の周波数テーブルを一覧表示させるとともに周波数テーブルを選択可能にすることで、他の周波数テーブルへの切り替えと、受信可能な他の地域にまたがる放送の受信を容易にした例(特許文献1参照)や、メモリに複数の周波数テーブルと共に地域識別子を記憶しておいて、地域識別子による選択によりチャンネルサーチを高速で行いながら所望の放送を受信可能にし、地域固有のサービスを受信可能にした例(特許文献2参照)などが報告されている。
【0011】
【特許文献1】特開2004−15499号公報
【特許文献2】特開2004−228769号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、以上の背景技術として述べたスキャン処理は、送信装置から送られる全ての放送信号が受信装置まで伝送されているシステムを想定している。受信装置は、一度、初期スキャンあるいは再スキャンを行えば、全てのTS及びチャンネルを受信可能周波数テーブル中に加えることができる。従って、こうしたシステムで使用する受信装置のスキャン処理は、処理中に受信装置まで伝送されている放送信号を対象とし、受信装置が放送信号単位のリクエストを送信装置に送ることはない。また、番組視聴リクエストのコマンドは、受信装置のリモコンと本体間でやり取りされるだけで、ネットワークを介して送受信されることは想定されていない。
【0013】
一方、放送システムとして、各放送局に備えられた送信装置から送信されたすべての放送信号(以下、全放送信号)がデジタル放送受信装置まで同時に伝送されないものがある。
そして、この放送システムには、ある放送信号について、デジタル放送受信装置からのリクエスト(番組視聴リクエスト)を受け取って、リクエストされた放送信号だけを当該デジタル放送受信装置に伝送する選択送信装置が備えられている。
【0014】
例えば、このような放送システムの一例として、実用化が検討されているデジタル放送サービスのIPマルチキャスト配信が挙げられる。そして、IPマルチキャスト配信においては、ISP(インターネットサービスプロバイダ)のエッジルータなどが選択送信装置の役割を担っている。
【0015】
このような放送システムの選択送信装置では、デジタル放送受信装置からの番組視聴リクエストにより、選択送信装置まで伝送されている放送信号の中から、リクエストされた放送信号を選択してデジタル放送受信装置に送信し、リクエストされていない放送信号は送信しない。この結果、全放送信号を送信する場合に比べて、選択送信装置とデジタル放送受信装置間の伝送路帯域に空きができるため、空いた帯域を別の通信に利用するなど、伝送路の帯域利用効率の向上も図れる。
【0016】
なお、放送信号のリクエストは、デジタル放送受信装置がネットワーク上にリクエストコマンドを送信して行う場合などが考えられるが、電波を直接受信する一般的なデジタル放送受信装置を用いる場合には、当該受信装置のリモコンから本体に対して放送信号のリクエストが行われるため、選択送信装置がこのリモコンの信号を受信することで、リクエストを検知することができる。
【0017】
また、選択送信装置とデジタル放送受信装置は、1対1で接続される場合のほか、一つの選択送信装置に対して、2つ以上のデジタル放送受信装置が接続される場合も考えられる。この場合、選択送信装置は、デジタル放送受信装置がそれぞれ異なる放送信号を視聴することを想定して、受信信号の数と同じ数の放送信号を選択して出力できることが望ましい。この場合、選択送信装置は、複数の放送信号を、周波数多重或いは時分割多重などにより、多重化して伝送路に送信する。
【0018】
こうした選択送信装置が介在する放送システムに対して、デジタル放送受信装置のスキャン処理を適用する場合、選択送信装置の放送信号出力を視聴者が手動で切替えると共に、デジタル放送受信装置において、視聴者の手動操作によるスキャン処理を全放送信号分終了するまで行わねばならず、非常に手間がかかるという問題がある。
【0019】
また、選択送信装置に複数のデジタル放送受信装置が接続されている場合、スキャン処理を行いたいデジタル放送受信装置以外の受信装置が番組リクエストやスキャン処理を行うことによって、選択送信装置が出力する放送信号の数が、選択送信装置が出力可能な最大数にすでに達している場合がある。この場合、他の受信装置が番組を切替えるなどして、選択送信装置が出力する放送信号の数に空きが出るのを待たないと、スキャン処理が行えない。このときの待ち時間は、他の受信装置が任意のタイミングで行う番組切替などの操作に依存するため、ランダムである。スキャン処理を手動で行う視聴者が、この時間を待って、処理を進めることは実質的に不可能である。
【0020】
また、前記したケーブルテレビのように、デジタル放送受信装置に予約スキャンの要求を行う場合、例えば、選択送信装置が、放送局に備えられている送信装置の予約スキャン要求コマンドを中継し、当該コマンドにより、デジタル放送受信装置に送信する放送信号及びチャンネルを切り替え、スキャン処理を行う方法が考えられる。
【0021】
この場合、視聴者による手動操作は不要であるが、新規設置されたデジタル放送受信装置と、すでに設置済みでスキャン処理を終えているデジタル放送受信装置とを区別せずにスキャン処理を予約することになるため、すでにスキャン処理を終えているデジタル放送受信装置に対して余計な負荷を掛けることになる。
また、視聴者によるデジタル放送受信装置の設置のタイミングは任意であると考えられるため、常に予約スキャン要求コマンドを繰り返し伝送しなくてはならず、伝送路におけるチャンネルの帯域が非効率的に使用されることになる。
【0022】
本発明は、このような背景によって行われるものであって、受信装置まで同時に全ての放送信号が伝送されない選択送信装置が介在する放送システムにおいて、選択送信装置が介在することを前提としない直接受信用の一般的な受信装置のスキャン処理を容易に行うことができ、また、伝送帯域使用の非効率化を招くことなく行うことができる選択送信装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
前記課題を解決するため、請求項1に記載の選択送信装置は、受信した複数の放送信号の中から選択した放送信号を放送番組として出力する受信装置まで、当該選択した放送信号を伝送する選択送信装置であって、制御信号送受信部と、信号選択部と、を備える構成とした。
【0024】
かかる構成によれば、選択送信装置は、制御信号送受信部によって、複数の放送信号と各放送信号が受信される周波数で特定されるチャンネルとを対応付けた放送信号一覧を受信装置内の記憶手段に保持させるスキャン処理を実行するためのスキャン処理制御信号を受信装置から受信し、放送信号から取得された又は予め設定された放送信号一覧を前記受信装置に送信すると共に、受信装置から放送番組の視聴要求を行うための視聴要求制御信号を受信する。そして、選択送信装置は、信号選択部によって、制御信号送受信部で受信したスキャン処理制御信号に基づいて、受信した複数の放送信号の中でスキャン処理を終えていない放送信号を受信装置に出力すると共に、受信した複数の放送信号の中から、視聴要求制御信号に基づいた放送信号を選択して受信装置に出力する。
【0025】
請求項2に記載の選択送信装置は、請求項1に記載の選択送信装置において、前記信号選択部が、前記制御信号送受信部で受信したスキャン処理制御信号が入力された際に、予め保持している前記受信装置それぞれに対応したスキャン処理制御信号の中から該当するスキャン処理制御信号を、前記スキャン処理で得た放送信号一覧を更新するための再スキャン制御信号として出力し、前記制御信号送受信部が、前記再スキャン制御信号を、前記受信装置に出力することを特徴とする。
【0026】
かかる構成によれば、選択送信装置は、信号選択部によって、制御信号送受信部で受信したスキャン処理制御信号が入力された際に、予め保持している前記受信装置それぞれに対応したスキャン処理制御信号の中から該当するスキャン処理制御信号を、スキャン処理で得た放送信号一覧を更新する再スキャン制御信号として出力し、制御信号送受信部によって、再スキャン制御信号を、受信装置に出力する。
【0027】
請求項3に記載の選択送信装置は、請求項1又は2に記載の選択送信装置において、前記信号選択部が、放送信号一覧取得手段と、放送信号決定手段と、放送信号選択手段と、を備えることを特徴とする。
【0028】
かかる構成によれば、選択送信装置は、放送信号一覧取得手段によって、受信した複数の放送信号それぞれに付されている識別子及び周波数で特定されるチャンネルを収集することで放送信号一覧を取得する。続いて、選択送信装置は、放送信号決定手段によって、制御信号送受信部から受信した視聴要求制御信号に基づいて、放送信号一覧から出力する放送信号を決定する。そして、選択送信装置は、放送信号選択手段によって、放送信号決定手段の決定に基づいて放送信号を選択して出力する。
【0029】
請求項4に記載の選択送信装置は、請求項1乃至3の何れか1項に記載の選択送信装置において、前記信号選択部が、視聴中放送信号把握手段を備えることを特徴とする。
【0030】
かかる構成によれば、選択送信装置は、視聴中放送信号把握手段によって、当該選択送信装置に複数の受信装置が接続されている場合、スキャン処理を現在実施していない受信装置が視聴中の放送信号を把握し、把握した総数を取得する。
【0031】
請求項5に記載の選択送信装置は、請求項3に記載の選択送信装置において、前記放送信号決定手段が、スキャン未処理放送信号決定手段と、視聴要求放送信号決定手段と、再スキャン制御信号送信手段と、を備える構成とした。
【0032】
かかる構成によれば、選択送信装置は、スキャン未処理放送信号決定手段によって、スキャン処理制御信号を送信した受信装置のスキャン処理済み及びスキャン未処理の放送信号を記憶してスキャン未処理の放送信号の中から出力する放送信号を決定する。続いて、選択送信装置は、視聴要求放送信号決定手段によって、スキャン処理を行っていない及びスキャン処理制御信号を送信していない受信装置からの視聴要求制御信号に応じて出力する放送信号を決定する。そして、選択送信装置は、再スキャン制御信号送信手段によって、スキャン処理制御信号を送信した受信装置にスキャン処理を行わせるために、当該受信装置がスキャン未処理の放送信号について、当該スキャン処理を要する時間だけ遅らせて、制御信号送受信部に再スキャン制御信号を送信する。
【0033】
請求項6に記載の選択送信装置は、請求項3に記載の選択送信装置において、前記放送信号決定手段が、優先順放送信号決定手段を備えることを特徴とする。
【0034】
かかる構成によれば、選択送信装置は、優先順放送信号決定手段によって、複数の受信装置が備えられている場合、信号選択部が出力する放送信号を、予め決められた優先順位に従って決定する。
【0035】
請求項7に記載の選択送信装置は、請求項3に記載の選択送信装置において、前記放送信号決定手段が、前記再スキャン制御信号の送信をスキャン未処理の放送信号がなくなるまで繰り返し行うことを特徴とする。
【0036】
かかる構成によれば、選択送信装置は、放送信号決定手段によって、再スキャン制御信号の送信をスキャン未処理の放送信号がなくなるまで繰り返し行う。
【発明の効果】
【0037】
請求項1に記載の発明によれば、受信装置との間で制御信号(スキャン処理制御信号、視聴要求制御信号:コマンド)を送受信して、当該受信装置にスキャン処理を行わせることができ、操作者(視聴者)に放送番組の選択視聴を行わせることができる。そして、受信装置まで同時に全ての放送信号が伝送されない選択送信装置が介在する放送システムにおいて、選択送信装置が介在することを前提としない直接受信用の一般的な受信装置のスキャン処理を容易に行うことができる。
【0038】
請求項2に記載の発明によれば、受信装置に再スキャン制御信号の送信と、受信装置からのスキャン処理制御信号や視聴要求制御信号の受信とをそれぞれ行って、当該受信装置にスキャン処理を行わせることができ、操作者(視聴者)に放送番組の選択視聴を行わせることができる。
【0039】
請求項3に記載の発明によれば、受信した放送信号から放送信号一覧を作成すると共に、この放送信号一覧から出力する放送信号を選択することで、受信装置からの要求に応じた放送信号の出力を行うことができる。
【0040】
請求項4に記載の発明によれば、現在視聴されている放送信号を把握して、スキャン処理のために利用できる放送信号の数を得ることができる。
【0041】
請求項5に記載の発明によれば、受信装置からの視聴要求に応じて送信すべき放送信号、再スキャンのために送信すべき放送信号を決定して送信すると共に、再スキャンの場合は適当なタイミングで再スキャン制御信号を送ることができるため、伝送帯域使用の非効率化を招くことなく行うことができる。
【0042】
請求項6に記載の発明によれば、優先順位を与えて最適な放送信号の選択を行うことができる。
【0043】
請求項7に記載の発明によれば、一旦再スキャンを開始するとスキャン未処理の放送信号がなくなるまでスキャン処理を継続することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下、本発明を、図面を参照にして詳細に説明する。
図1は、本発明の選択送信装置を適用した放送システムの一実施形態のブロック図である。ここで伝送される放送信号は、ISDB−T形式によりOFDM(直交波周波数分割多重)変調された地上デジタル放送のMPEG−2システムのTS(トランスポートストリーム)であり、以下TSで表す。
【0045】
この放送システムは、放送局に備えられた送信装置2と、この送信装置2から放送されたすべてのTS(全放送信号)を受信する選択送信装置1と、この選択送信装置1から送信された放送信号を受信する複数の受信装置3とから構成されている。
送信装置2は、MPEG−2 TSをISDB−T形式によりOFDM変調し、周波数多重によって送信するものである。
【0046】
選択送信装置1は、送信装置2から送られた複数のOFDM変調波のうち、受信装置3からリクエストされたTSを伝送する変調波を選択して受信装置3へ送信するものである(以下、選択送信装置1が「TSを変調波として出力する」処理を、単に「TSを出力する」という)。詳細は後記する。
【0047】
受信装置3は、OFDM変調波を直接受信する一般的なもの(従来のものと同様)であり、視聴者が操作するリモコン(後記する受信装置リモコン32)からの番組リクエストコマンドにより、選択送信装置1へのTSリクエストを行うと共に、その結果、選択送信装置1から伝送されるTS(選択した放送送信)を受信し、復調して取り出したMPEG−2 TSについて、映像・音声のデコードを行うものである。
【0048】
(選択送信装置と受信装置との制御信号送受信系統について)
図2は、選択送信装置1と受信装置3との間でやり取りされる受信装置3のスキャン処理のためのスキャン処理制御信号(コマンド)及び番組視聴のための視聴要求制御信号(コマンド)の送受信系統を示す説明図である。
【0049】
選択送信装置1は、全TSの中からTSを選択して出力する信号選択部11と、受信装置3との間でスキャン処理制御信号及び視聴要求制御信号をやり取りする制御信号送受信部12とを備えている。
【0050】
受信装置3は、TSを受信し復調した後、映像、音声のデコードを行う受信装置本体31と、出力する放送番組の切り替えや、受信装置本体31の各種制御を行う受信装置リモコン32とから構成されている。そして、受信装置本体3には、一般的なメモリ等によって構成されている記憶手段311が備えられている。
【0051】
そして、選択送信装置1の信号選択部11から受信装置3の受信装置本体31に信号伝送路(同軸ケーブルなど)を介して、選択した放送信号が出力されている。
また、選択送信装置1の信号選択部11と制御信号送受信部12との間では、制御信号伝送路(LANなど)を介して、信号選択部11から制御信号送受信部12に「再スキャン」制御信号(再スキャン制御信号)が送信され、制御信号送受信部12から信号選択部11に「初期/再スキャン」および「放送信号リクエスト」制御信号(スキャン処理制御信号及び視聴要求制御信号)が送信されている。
【0052】
さらに、受信装置3の受信装置リモコン32から選択送信装置1の制御信号送受信部12に図示を省略した「初期/再スキャン」および「放送信号リクエスト」制御信号(スキャン制御信号及び視聴要求制御信号)が出力され、同じ制御信号が受信装置本体31に送信されている。
そして、選択送信装置1の制御信号送受信部12から受信装置3の受信装置本体31に、図示を省略した再スキャン制御信号が出力されている。
【0053】
なお、この実施形態では、信号選択部11と制御信号送受信部12とが選択送信装置1の枠内(筐体)に収められているが、信号選択部11と制御信号送受信部12とを別々の場所に設置し、例えば、LANや電話回線、同軸ケーブルなどの伝送路を用いてコマンドをやり取りする構成としてもよい。
【0054】
選択送信装置1の信号選択部11は、制御信号送受信部12を介して再スキャン制御信号を受信装置3へ送信するとともに、受信装置3がスキャン未処理のTSを選択して出力する。以上の処理を、受信装置3がスキャン未処理のTSがなくなるまで繰り返し行うことで、受信装置3で受信可能周波数テーブルを取得することができる。
この手順の詳細については、以下に述べる第1の実施形態、第2の実施形態の項で説明する。
【0055】
なお、図2においては、選択送信装置1に接続される受信装置3は1台にしているが、複数である場合も考えられる。接続される受信装置3が複数の場合、それぞれが別々のTSをリクエストして視聴する場合を想定して、1つの選択送信装置1が選択して出力可能なTSをI個とする。
【0056】
(選択送信装置の構成〔第1の実施形態〕)
図3に、本発明の選択送信装置1の第1の実施形態の機能ブロック図を示す。図3は、選択送信装置1から放送信号が出力される受信装置3が1台の場合(出力チャンネル数1の場合)を示したものである。なお、選択送信装置1まで伝送されるTSの数をM個とする。ここでM≧2である。M=1の場合は、選択送信装置1がTSを選択する必要はなく、こうしたシステムは本発明の対象とはしない(もともと選択送信装置1が不要なシステムである)。また、選択送信装置1の出力数を1個としているのは、通常、視聴者が視聴するTSが1個(1つの放送番組)であるためである。ちなみに、出力数を2個以上とすることも考えられる(視聴者が2つ以上の放送番組を1つの受信装置3で同時に視聴することも想定される)が、ここでは触れないこととする。
【0057】
この図3に示すように、選択送信装置1は、放送信号一覧取得手段111、放送信号決定手段112及び放送信号選択手段113を有した信号選択部11と、スキャン処理制御信号送受信手段121、視聴制御信号送受信手段122及び信号中継手段123を有した制御信号送受信部12とを備えている。
【0058】
放送信号一覧取得手段111は、伝送されるM個のTS一覧(放送信号一覧)を、放送信号それぞれに付されている識別子(TS id)及び周波数で特定されるチャンネルを収集することで取得するものである。なお、別のTS一覧の取得方法としては、選択送信装置1まで送られている変調波をすべて復調して取得するほかに、各TSを伝送するチャンネルの情報を予め用意しておく方法が考えられる。
【0059】
放送信号決定手段112は、受信装置3の受信装置リモコン32からの初期スキャン又は再スキャンの要求を受け、受信装置3の受信装置本体31に初期スキャン又は再スキャンの終了をトリガーとして、M個のTSのうちの1個を決定すると共に、決定したTSに対してスキャン処理を行わせるために、制御信号送受信部12を介して受信装置本体31に対して再スキャン制御信号を出力するものである。
【0060】
放送信号選択手段113は、放送信号決定手段112によって決定されたTSを、M個のTSから選択して伝送路から受信装置3の受信装置本体31に出力するものである。
【0061】
スキャン処理制御信号送受信手段121は、受信装置3の受信装置リモコン32から出力されたスキャン処理制御信号(「初期スキャン」又は「再スキャン」の要求)を受信し、信号選択部11に送信するものである。
【0062】
視聴制御信号送受信手段122は、受信装置3の受信装置リモコン32から出力された視聴要求制御信号(「放送信号リクエスト」)を受信し、信号選択部11に送信するものである。
【0063】
信号中継手段123は、信号選択部11から出力された再スキャン制御信号(「再スキャン」制御信号)を受信して、制御信号送受信部12を介して、当該再スキャン制御信号を受信装置3に出力するものである。
【0064】
この選択送信装置1によれば、受信装置3に再スキャン制御信号を出力することで、当該受信装置3にスキャン処理を行わせることができ、視聴要求制御信号に基づいた放送信号を出力することで、操作者(視聴者)に放送番組の選択視聴を行わせることができる。そして、受信装置3まで同時に全ての放送信号が伝送されない選択送信装置1が介在する放送システムにおいて、選択送信装置1が介在することを前提としない直接受信用の一般的な受信装置のスキャン処理を容易に行うことができる。
【0065】
(選択送信装置の構成〔第2の実施形態〕)
次に、図4に、本発明の選択送信装置1の第2の実施形態の機能ブロック図を示す。
図4は、選択送信装置1から放送信号が出力される受信装置3がN台(N≧2)の場合を示したものである。図3に示す受信装置3が1台の場合の機能ブロックに対して、機能ブロックを追加することによって、放送信号が出力される受信装置3がN台の場合の選択送信装置1を実現することができる。
選択送信装置1まで伝送されるTSの数をM個(M≧2)とし、選択送信装置1は、I個(I≧2)のTSを同時に出力できるものとする。
【0066】
受信装置3が複数接続されている場合、スキャン処理を行う受信装置3と、あるTSで伝送される番組を視聴中の受信装置3とが混在することが考えられる。従って、選択送信装置1が同時出力可能な最大のTS数は少なくとも2以上であるとしてI≧2とする。
ちなみに、I=1の場合は、N台の受信装置3が常に同じ番組を視聴することとなる。また、I≧2であっても、I<Nであるとき、N台の受信装置3が別々の番組を視聴できないという制限が生じてしまうので、I≧Nであることが望ましい。
【0067】
選択送信装置1が同時に出力する必要のあるTS数は、最大でもM個であるため、選択送信装置1が同時出力可能な最大TS数はM以下(I≦M)となる。
ここで、スキャン処理に使用できる出力TS数の例を挙げる。N台の受信装置3のうちの何台かが、合計でm個のTSを視聴中であるとする。このとき、残りの受信装置3のうちの何台かがスキャン処理を行うものとすると、スキャン処理に利用できる出力TS数は(I−m)個となる。(I−m)の値が大きいほど、受信装置3が1回のスキャン処理で取得可能なTS数を多くすることができ、スキャン処理の繰り返し回数が少なくて済む。
【0068】
選択送信装置1は、放送信号一覧取得手段111、放送信号決定手段112、放送信号選択手段113及び視聴中放送信号把握手段114を有した信号選択部11と、スキャン処理制御信号送受信手段121、視聴制御信号送受信手段122及び信号中継手段123を有した複数の制御信号送受信部12とを備えている。なお、図3に示した構成と同じもの(同じ動作をするもの)は、その説明を省略する。
【0069】
放送信号決定手段112は、受信装置3の受信装置リモコン32からの初期スキャン又は再スキャンの要求を受け、受信装置3の受信装置本体31に初期スキャン又は再スキャンの終了をトリガーとして、スキャン未処理のTSのうち出力するTS(最大I−m個)を決定すると共に、決定したTSに対してスキャン処理を行わせるために、制御信号送受信部12を介して受信装置3に対して再スキャン制御信号を出力するものである。
【0070】
そして、放送信号決定手段112は、初期スキャン又は再スキャンの要求を行った受信装置3と、各受信装置3が最初のスキャン処理を開始してから、何回目かのスキャン処理を終了するまでに、スキャン処理を終えたTSの情報を記憶する。
【0071】
また、放送信号選択手段113は、放送信号決定手段112によって決定された、スキャン処理のためのTS(最大I−m個)と、スキャン処理を行っていない、何台かの受信装置3が視聴リクエスト(視聴要求制御信号を送信してきたもの)を行ったTS(合計m個)とをM個のTSの中から選択し伝送路に送出するものである。このm個は、視聴中のTS数であり、受信装置3からの視聴要求制御信号が制御信号送受信部12の視聴制御信号送受信手段122を介して信号選択部11に送られることで、把握されることになる。
【0072】
視聴中放送信号把握手段114は、N台の受信装置が視聴中のTS数(m個)を把握する(このとき、選択送信装置1は最大のTS出力数I個のうちのm個を使用している。)。
【0073】
ここで、図5を参照して、放送信号決定手段112の詳細な構成を説明する。この図5に示すように、放送信号決定手段112は、スキャン未処理放送信号決定手段112aと、視聴要求放送信号決定手段112bと、再スキャン制御信号送信手段112cと、優先順放送信号決定手段112dとを備えている。
【0074】
スキャン未処理放送信号決定手段112aは、スキャン処理制御信号を送信した受信装置3のスキャン処理済み(スキャン処理を終えたTSの情報)及びスキャン未処理の放送信号を記憶してスキャン未処理の放送信号の中から出力する放送信号を決定するものである。この実施形態では、スキャン処理を終えたTS id(TSの識別子)を記憶することとしている。
【0075】
視聴要求放送信号決定手段112bは、スキャン処理を行っていない受信装置3及びスキャン処理制御信号を送信していない受信装置3からの視聴要求制御信号に応じて出力する放送信号を決定するものである。
【0076】
再スキャン制御信号送信手段112cは、スキャン処理制御信号を送信した受信装置3にスキャン処理を行わせるために、当該受信装置3がスキャン未処理の放送信号について、当該スキャン処理を要する時間だけ遅らせて、制御信号送受信部12に再スキャン制御信号を送信するものである。なお、このスキャン処理を要する時間とは、受信装置3がスキャン処理を要する時間を予め記憶しておくことによって求められたものである。また、このスキャン処理を要する時間は、放送信号決定手段112が初期スキャン又は再スキャンの終了を把握する際にも用いられている。
【0077】
優先順放送信号決定手段112dは、複数の受信装置3が備えられている場合(放送信号を出力する受信装置3が複数存在する)場合、信号選択部11が出力する放送信号を、予め決められた優先順位に従って決定するものである。つまり、受信装置3に、予め放送信号を出力する優先順位を設定しておくことで、この優先順位に従って放送信号を出力することができる。
【0078】
図6に、選択送信装置1のスキャン処理動作のフローチャートを示す。
以下、図6のフローチャートに沿って、選択送信装置1は受信装置3に対してスキャン処理を行う処理動作について説明する。
【0079】
ステップS101にて、受信装置3の受信装置リモコン32は、受信可能周波数テーブルを取得するために、初期スキャン又は再スキャンの要求を、選択送信装置1に送信する。この初期スキャン又は再スキャンの要求(要求コマンド)は選択送信装置1の制御信号送受信部12を介し、放送信号決定手段112へ送られる。それと同時に、要求コマンドは受信装置3の受信装置本体31でも受信され、受信装置本体31はスキャン処理を開始する。
【0080】
次に、ステップS102にて、選択送信装置1の信号選択部11は、受信装置3が複数の場合、初期スキャン又は再スキャンの要求を送信した受信装置3以外の受信装置3が視聴中のTS数mを把握する。これにより、スキャン処理に使用可能な出力TS数、すなわち、選択送信装置1が出力可能な最大TS数Iに対し、他の受信装置3が視聴中のTS数mを減じた数(I−m)を算出する。受信装置3が1個の場合、I=1、M=0となり、常にI−m=1である。
【0081】
ここで、I−m=0の場合は、ステップS107に進んで、選択送信装置1の信号選択部11は、受信装置3の受信装置本体31が、他の受信装置3が視聴中であったm個のTSのスキャン処理を終えるのを待つ。なお、この場合、「m個」=「I個」である。
【0082】
I−m>0の場合は、ステップS103に進む。ここで選択送信装置1の信号選択部11は、スキャン処理に使用可能な出力TS数が1以上(I−m≧1)の場合、スキャン要求を行った受信装置がスキャン未処理のTSの中から、(I−m)個のTSを決定し、出力する。スキャン未処理のTSが(I−m)個より少ない場合は、その数のスキャン未処理のTSを出力する。
【0083】
そして、ステップS104に進み、信号選択部11は、受信装置3の受信装置本体31が、最大(I−m)個のTS、及び他の受信装置が視聴中であったm個のTSのスキャン処理を終えるのを待つ。
【0084】
ステップS105にて、選択送信装置1の信号選択部11は、受信装置3の受信装置本体31のスキャン処理終了後、スキャン用の(I−m)個のTS出力を一時停止する。
【0085】
そして、ステップS106では、初期スキャン又は再スキャンの要求を送信した受信装置3と、その受信装置3がスキャン処理を終了したTSの情報を記憶するとともに、当該受信装置3は受信可能周波数テーブルを更新する。
受信装置3が1個の場合、その受信装置3がスキャン処理を終了したTSの情報を記憶する。
【0086】
ステップS108では、選択送信装置1の信号選択部11は、スキャン要求を行った受信装置3がスキャン処理を終了したTSの情報を更新し、スキャン未処理のTSが残っているかどうかを判定する。すべてのTSのスキャン処理を終えている場合は、終了する(END)。スキャン未処理のTSがある場合はステップS109へ移行する。
【0087】
ステップS109では、ステップS102での場合と同様に、選択送信装置1の信号選択部11は、受信装置3が複数の場合、初期スキャン要求あるいは再スキャン要求を送信した受信装置3以外の受信装置3が視聴中のTS数mを把握する。そうして、(I−m)を算出する。
【0088】
I−m>0の場合は、選択送信装置1の信号選択部11は、スキャン未処理のTSを出力可能であるため、ステップS110に進み、コマンド送受信部12は、受信装置3の受信装置本体31へ再スキャン制御信号(再スキャンコマンド)を送信する。これにより、受信装置3の受信装置本体31はスキャン処理を開始する。
【0089】
I−m=0の場合は、ステップS111に進んで、他の受信装置3が視聴中のTSの中に、スキャン未処理のTSがあるかどうかを判定する。スキャン未処理のTSがある場合は、I−m>0の場合と同様にステップS110に進む。
【0090】
ステップS110のあと、I−m>0の場合は、ステップS103に進んで、スキャン未処理のTSを出力する処理に入る。I−m=0の場合で、他の受信装置3が視聴中のTSの中に、スキャン未処理のTSがあった場合は、ステップS112で受信装置3のスキャン処理の終了を待つ。
【0091】
ステップS111で、他の受信装置3が視聴中のTSの中に、スキャン未処理のTSがない場合はステップS113に進む。ここでは、I−m=0のためスキャン未処理のTSを出力することはできない。従って、視聴中の受信装置3が番組を切り替えることによって、スキャン未処理のTSが出力可能になるのを一定時間待つ。
【0092】
以上のステップS101からステップS104への処理、ステップS101からステップS107への処理或いはステップS110からステップS112への処理中で受信装置3のスキャン処理の終了を待っている段階で、他の受信装置3が視聴中のTSが切り替わったことにより、出力されなくなった、或いは、新たに出力されたTSがある場合は、そのTSはスキャン処理が行われていない、すなわちスキャン未処理のTSとする。
【0093】
例えば、選択送信装置1が出力可能な最大TS数I=4で、受信装置aがTSα、受信装置bがTSβを視聴中であって(m=2)、受信装置cがTSα、TSβに加え、TSγ、TSδをスキャンしている(I−m=2)とする。
このとき、受信装置aが視聴中の番組を切り替えて、TSεを視聴リクエスト(視聴要求制御信号を出力)すると、選択送信装置1はTSαの出力を停止し、TSεを出力する。スキャン中の受信装置cは、TSα、TSεをスキャンできていない可能性があるため、これらのTSはスキャン未処理とする。
【0094】
また、同じ受信装置3のスキャン処理の終了を待っている段階で、選択送信装置1がそのとき出力していないTSの視聴リクエストを、受信装置3が行ったときは、選択送信装置1はそのTSを出力できないため、受信装置3のスキャン処理が終了するまで、リクエストされたTSを出力しない。
【0095】
例えば、選択送信装置1が出力可能な最大TS数I=4で、受信装置a及び受信装置bがTSαを視聴中であり(m=1)、受信装置cがTSαに加え、TSβ、TSγ、TSδをスキャンしているとする(I−m=3)。
このとき、受信装置aが視聴中の番組を切り替え、TSεを視聴リクエストしても、選択送信装置はTSεを出力できない。
或いは、受信装置dの電源が入り、TSεを視聴リクエストしても、選択送信装置1はTSεを出力できない。
【0096】
このような、「リクエストされたTSを出力できない」事態を避けるために、スキャン処理時に、選択送信装置1の出力数に余裕を持たせることも考えられる。スキャン処理時に使用しない出力TS数をqとすると、I−q個のTSを一度にスキャンすることになる。
例えば、前記の例において、q=1とすると、スキャン処理を行う受信装置cは、3個の出力(I−q=3)を使用してスキャンを行う。すなわち、受信装置cは、TSαに加え、TSβ、TSγをスキャンする。このとき受信装置aがTSεを視聴リクエストすると、選択送信装置1はTSεを出力できる。
【0097】
或いは、選択送信装置1では、スキャン処理よりも、視聴リクエストを優先させることができ、リクエストされたTSxを優先して出力し、スキャン用のTSyの出力を停止する(TSx、TSyはスキャン未処理として扱う)という処理も行うことができる。
【0098】
ステップS109からステップS111を経てステップS113にかけての処理が何回か繰り返された場合、スキャン処理がいつまでも終了しない事態を避けるために、スキャン未処理のTSが残っている状態で、「スキャン未処理のTS及びチャンネルはスキャン失敗」として、スキャン処理をエラー終了させるようにすることもできる。
【0099】
図7に、受信装置3が複数個の場合の、スキャン要求を行ったある受信装置3が取得する受信可能周波数テーブル(TS一覧:放送信号一覧)の表の一例を示す。TS一覧にはTS識別子(TS id)と、そのTSで伝送される番組の内容を示すサービス識別子(service id)と、対応するチャンネルが示される。
図7に示すように、スキャンされるべきTSの数が選択送信装置1まで伝送される全TS数のM個であるとする。
【0100】
選択送信装置1から複数の受信装置3に放送信号が出力されていて、これらの受信装置3のうちの何台かが合計でm個のTSを受信しており、これらについてのスキャンは終了しているものとする。選択送信装置1が同時に出力可能なTSの数をI個とすると、スキャンのために現在一度に出力可能なTSの数は(I−m)である。
このため、M−mのTSを、1回に(I−m)個ずつ繰り返してスキャンし、k回目のスキャンでk(I−m)≧M−mとなったところでスキャンが終了するものとする。
この結果、図7に示すような受信可能周波数テーブルがスキャンによって受信装置3に作成される。
【0101】
以上の実施形態では、選択送信装置1が受信及び出力する信号が、地上デジタル放送のISDB−T信号であるとしたが、それ以外に、放送信号が、デジタル放送のMPEG−2 TSを他の伝送方式で伝送したもの、あるいは、ベースバンドのMPEG−2 TS、あるいは、ベースバンドのMPEG−2 TSをIPパケット列化したものなどである場合が考えられる。
【0102】
こうした放送信号を、送信装置が直接送信する場合、及び送信装置が出力したISDB−T信号を、一旦再送信装置と呼ばれる装置が受信して、別の伝送方式に変換して、選択送信装置まで再送信する場合の、両方のケースが考えられる。
このような場合、受信装置3は、それぞれの伝送方式に対応した装置を用いることが考えられる。この受信装置3が前記した「再スキャン」と同等の機能を持てば、伝送方式に関係なく本発明を適用してその効果を得ることができる。例えば、地上デジタル放送のISDB−T形式に対応する受信装置は、本発明を適用して容易にスキャン処理を行うことが可能である。
【0103】
さらに、ISDB−T形式に対応した受信装置を利用できるようにするために、選択送信装置1の後ろに、伝送形式の変換装置(図示せず)を用意するような方法も考えられる。このような変換装置は、入力された放送信号を、接続される受信装置に対応した伝送方式に変換し、放送信号ごとに固定のチャンネルで出力する装置である。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明の選択送信装置を適用した放送システムの一実施形態のブロック図である。
【図2】本発明の選択送信装置と受信装置との間でやり取りされる受信装置のスキャン処理のための制御信号と番組視聴のための制御信号の送受信系統を示す説明図である。
【図3】本発明の選択送信装置の第1の実施形態の機能ブロック図である。
【図4】本発明の選択送信装置の第2の実施形態の機能ブロック図である。
【図5】選択送信装置の放送信号決定手段を詳細に示した機能ブロック図である。
【図6】本発明の選択送信装置のスキャン処理動作のフローチャートである。
【図7】本発明の選択送信装置のスキャン処理で受信装置が取得する受信可能周波数テーブルの表の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0105】
1 選択送信装置
2 送信装置
3 受信装置
11 信号選択部
12 制御信号送受信部
31 受信装置本体
32 受信装置リモコン
111 放送信号一覧取得手段
112 放送信号決定手段
113 放送信号選択手段
114 視聴中放送信号把握手段
121 スキャン処理制御信号送受信手段
122 視聴制御信号送受信手段
123 信号中継手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信した複数の放送信号の中から選択した放送信号を放送番組として出力する受信装置まで、当該選択した放送信号を伝送する選択送信装置であって、
前記複数の放送信号と各放送信号が受信される周波数で特定されるチャンネルとを対応付けた放送信号一覧を前記受信装置内の記憶手段に保持させるスキャン処理を実行するためのスキャン処理制御信号を前記受信装置から受信し、前記放送信号から取得された又は予め設定された放送信号一覧を前記受信装置に送信すると共に、前記受信装置から前記放送番組の視聴要求を行うための視聴要求制御信号を受信する制御信号送受信部と、
この制御信号送受信部で受信したスキャン処理制御信号に基づいて、前記受信した複数の放送信号の中で前記スキャン処理を終えていない放送信号を前記受信装置に順次出力すると共に、前記受信した複数の放送信号の中から、前記視聴要求制御信号に基づいた放送信号を選択して前記受信装置に出力する信号選択部と、
を備えることを特徴とする選択送信装置。
【請求項2】
前記信号選択部は、
前記制御信号送受信部で受信したスキャン処理制御信号が入力された際に、予め保持している前記受信装置それぞれに対応したスキャン処理制御信号の中から該当するスキャン処理制御信号を、前記スキャン処理で得た放送信号一覧を更新するための再スキャン制御信号として出力し、
前記制御信号送受信部は、
前記再スキャン制御信号を、前記受信装置に出力することを特徴とする請求項1に記載の選択送信装置。
【請求項3】
前記信号選択部は、
前記受信した複数の放送信号それぞれに付されている識別子及び周波数で特定されるチャンネルを収集することで前記放送信号一覧を取得する放送信号一覧取得手段と、
前記制御信号送受信部から受信した視聴要求制御信号に基づいて、前記放送信号一覧から出力する放送信号を決定する放送信号決定手段と、
この放送信号決定手段の決定に基づいて前記放送信号を選択して出力する放送信号選択手段と、
を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の選択送信装置。
【請求項4】
前記信号選択部は、
当該選択送信装置に複数の前記受信装置が接続されている場合、前記スキャン処理を現在実施していない受信装置が視聴中の放送信号を把握し、把握した総数を取得する視聴中放送信号把握手段を備えることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の選択送信装置。
【請求項5】
前記放送信号決定手段は、
前記スキャン処理制御信号を送信した受信装置のスキャン処理済み及びスキャン未処理の放送信号を記憶してスキャン未処理の放送信号の中から出力する放送信号を決定するスキャン未処理放送信号決定手段と、
前記スキャン処理を行っていない及び前記スキャン処理制御信号を送信していない受信装置からの前記視聴要求制御信号に応じて出力する放送信号を決定する視聴要求放送信号決定手段と、
前記スキャン処理制御信号を送信した受信装置にスキャン処理を行わせるために、当該受信装置がスキャン未処理の放送信号について、当該スキャン処理を要する時間だけ遅らせて、前記制御信号送受信部に前記再スキャン制御信号を送信する再スキャン制御信号送信手段と、
を備えることを特徴とする請求項3に記載の選択送信装置。
【請求項6】
前記放送信号決定手段は、
複数の前記受信装置が備えられている場合、前記信号選択部が出力する放送信号を、予め決められた優先順位に従って決定する優先順放送信号決定手段を備えることを特徴とする請求項3に記載の選択送信装置。
【請求項7】
前記放送信号決定手段は、
前記再スキャン制御信号の送信をスキャン未処理の放送信号がなくなるまで繰り返し行うことを特徴とする請求項3に記載の選択送信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−294544(P2008−294544A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−135509(P2007−135509)
【出願日】平成19年5月22日(2007.5.22)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】