遺伝子発現の改良された検出
配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、44、61、62又は63のうちのいずれかのヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチド、プライマー又はプローブ。このオリゴヌクレオチド、プライマー又はプローブは、遺伝子のメチル化状態の検出に有用である。このオリゴヌクレオチドには、癌の診断及び治療における用途が見出される。
【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子の発現の検出に関する。より詳細には、本発明は、メチル化型又は非メチル化型のCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3を検出する方法及び関連するオリゴヌクレオチド、プライマー、プローブ、プライマー対及びキットに関する。本発明の方法は、増幅技術、特に、蛍光に基づくリアルタイムPCR法及びエンドポイントPCR法に関し、診断、予後及び治療的有用性を有する。
【発明の背景】
【0002】
癌精巣(CT)抗原
【0003】
癌精巣(CT)抗原は、通常は発現が精巣、卵巣内の生殖細胞又は栄養膜細胞に限定される一クラスの腫瘍関連抗原である。CT抗原は、成体体細胞組織では普通発現されていない(Simpsonら、Nat.Rev.Cancer、5(8):615〜625(2005);Scanlanら、Immunol.Reviews、188:22〜32(2002);Scanlanら、Cane.Immun.、4:1〜15(2004))。
【0004】
癌患者ではCT抗原の遺伝子制御が損なわれ、多種多様な腫瘍におけるCT抗原の異常発現を導く。同定される第1のCT抗原であるMAGE−1は、1990年代前半にT細胞のエピトープのクローニングによって同定された(参照により組み込まれている、van der Bruggenら、1991 Science 13;254(5038):1643〜7;van der Bruggenら、1999 Science 254:1643〜1647;Traversahら、1992 Immunogenetics、35(3):145〜152;及び米国特許第5,342,774号)。それ以来、血清学的な発現クローニング技術(SEREX)(Sahinら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、92(25):11810〜11813(1995)及び米国特許第5,698,396号)、酵母表面での組換え抗原発現(RAYS)(Mischoら、Cane.Immun.、3:5〜16(2003))及び示差的なmRNA発現解析(Gureら、Int.J.Cane、85(5):726〜732(2000))により、さらに多くのCT抗原が同定された。いくつかのCT抗原は、癌患者において免疫原性があるため、腫瘍ワクチン開発のための絶好の標的となっている。
【0005】
免疫系の細胞性エフェクター又は体液性エフェクターによって認識される腫瘍関連抗原の同定は、癌免疫療法に新たな展望を開いた。免疫療法の概念は、自己免疫系を利用した治療法において、腫瘍内で発現される抗原タンパク質を標的として使用できるという仮定に基づいている。抗原特異的癌免疫治療薬(Antigen−Specific Cancer Immunotherapeutics,ASCI)は、標的化された治療を可能にする。ASCIは、免疫応答を癌細胞に対して特異的に導くための「腫瘍抗原」と、抗腫瘍免疫応答を高めるために選択される免疫賦活化合物を含む「アジュバント系」との2つの主な要素を有する。
【0006】
CTAG1B。癌免疫療法における使用に現在関心が持たれている癌精巣抗原(cancer testis antigen)は、CTAG1B遺伝子(遺伝子の別名NY−ESO−1のもとでも知られている)によってコードされる癌/精巣抗原1Bである。この抗原は、90年代後半にLudwig癌研究所のNew York支部で、食道扁平上皮癌でSEREXによって最初に同定された(参照により組み込まれている、Chenら、PNAS USA、94(5):1914〜1918(1997);及び米国特許第5,804,381号)。CTAG1Bタンパク質は、長さが180アミノ酸であり、卵巣癌、肺癌、乳癌、前立腺癌、食道癌、膀胱癌を含むがこれらに限定されない多種多様な腫瘍内及び黒色腫内で見出されている。(Konishi Jら、Oncol Rep.2004年5月;11(5):1063〜7;Nicholaou Tら、Immunol Cell Biol.2006年6月;84(3):303〜17;Sugita Yら、Cancer Res.2004年3月 15;64(6):2199〜204;Velazquez EFら、Cancer Immun.2007年7月 12;7:11及びJungbluthら、2001 、Int.J.Cane、92(6):856〜860)。CTAG1B陽性腫瘍を有する患者における、この抗原に対する自発的な体液性免疫応答及び細胞性免疫応答が記載されており、いくつかのHLA(ヒト白血球抗原)のクラスI及びクラスllの拘束性ペプチドが同定されている(Jagerら、1998 J.Exp.Med.、187(2):265〜270;Yamaguchiら、2004 Clin.Cane.Res.、10(3):890〜961;及びDavisら、2004 Proc.Natl.Acad.Sci.USA、101(29):10697〜10702)。例示的な特許文献は、米国特許第6,140,050号;第6,251,603号;第6,242,052号;第6,274,145号;第6,338,947号;第6,417,165号;第6,525,177号;第6,605,711号;第6,689,742号;第6,723,832号;第6,756,044号;及び第6,800,730号であり、全てが参照により組み込まれている。
【0007】
臨床試験では、HLA−A2(157〜167、157〜165及び155〜163)に対する結合モチーフを有する、部分的に重なっている3種類のCTAG1B由来のペプチドをワクチン中に使用して、NY−ESO−1を発現する転移性の腫瘍を有する12名の患者が治療されている。この試験により、合成NY−ESO−1ペプチドは、安全に投与することが可能であり、有益となり得るT細胞応答を引き起こす能力のあることが実証された(Jagerら、2000 PNAS USA、97(22):12198〜12203)。
【0008】
CTAG1Bタンパク質中のいくつかのMHC(主要組織適合遺伝子複合体)のクラスI及びクラスIIのエピトープが、別々のグループによって同定されている。N末端にあるコラーゲン様領域は、本明細書中でA31と称する少なくとも1個のMHCクラスIエピトープを含む。中央領域は、本明細書中でDR1、DR2、DR4、DR7及びDP4と称するいくつかのMHCクラス2エピトープを含む。中央領域は、本明細書中でB35、B51、Cw3及びCw6と称するいくつかのMHCクラスIエピトープも含む。C末端は、少なくとも2個のクラスIIエピトープ(DR4及びDP4)及び1個のクラスIエピトープ(A2)を含むと考えられている。
【0009】
CTAG2。CTAG1との配列類似性が高いために、免疫療法への関心が持たれ得るさらなる癌精巣抗原は、CTAG2(遺伝子の別名LAGE−1としても知られている)である。LAGE−IaとLAGE−Ib、2種類のCTAG2転写産物が記載されている。LAGE−Ibは不完全にスプライシングを受けて約210アミノ酸残基の推定タンパク質をコードするが、LAGE−Ia遺伝子の産物は180アミノ酸残基を含む(Sunら、Cancer Immunol Immunother 2006:55:644〜652)。
【0010】
LAGE−1とNY−ESO−1のタンパク質のN末端領域は、高度に保存されており、97%を超える同一性を有すると考えられている。しかし、中央領域では、LAGE−1はNY−ESO−1とは異なり、62%のみが同一である。NY−ESO−1とLAGE−IaのC末端は、高度に保存されている(97%を超える同一性)。しかし、LAGE−IbのC末端は、より長く、LAGE−1a/NY−ESO−1の同領域と50%未満の同一性を有すると考えられている。
【0011】
これらの2種類のタンパク質に関する一般情報は、LICRウェブサイトから入手可能である(www.cancerimmunity.org/CTdatabaseを参照されたい)。
【0012】
PRAME。選択的に発現される黒色腫の抗原であるPRAMEは、黒色腫反応性の細胞傷害性T細胞(CTL)によって認識されるヒトの黒色腫抗原をコードする遺伝子として最初に単離された。PRAMEは、その子宮内膜及び副腎を含むいくつかの正常成体組織における微量な発現のために、CT遺伝子とは呼ばれていない。しかし、PRAMEは、CT遺伝子の他の主要な特徴、すなわち、精巣内での強い発現及び黒色腫(97%)、肉腫(80%)、小細胞肺癌(70%)、腎細胞癌(40%)、及び頭頸部癌(29%)を含む多様な腫瘍内での上方制御を示す。この遺伝子について、同一のタンパク質をコードする、5つの選択的スプライスによる転写バリアントが観察されている。その509アミノ酸の推定タンパク質は、HLA_A24及びHLA−A2分子上に提示される、よく特徴付けされたエピトープを有する。
【0013】
MageA3。MAGE遺伝子は、癌/精巣抗原のファミリーに属する。MAGEファミリーの遺伝子は20を超えるメンバーを含み、MAGE A、B、C及びD遺伝子からなる(Scanlanら、(2002)Immunol Rev.188:22〜32;Chomezら、(2001)Cancer Res.61(14):5544〜51)。これらの遺伝子は、X染色体上にクラスターを形成しており(Lucasら、1998 Cancer Res.58.743〜752;Lucasら、1999 Cancer Res 59:4100〜4103;Lucasら、2000 Int J Cancer 87:55〜60;Lurquinら、1997 Genomics 46:397〜408;Muscatelliら、1995 Proc Natl Acad Sci USA 92:4987〜4991;Poldら、1999 Genomics 59:161〜167;Rognerら 1995 Genomics 29:725〜731)、依然として不明確な機能を有する(Ohmanら 2001 Exp Cell Res.265(2):185〜94)。MAGE遺伝子は相同性が高く、特に、MAGE−Aファミリーのメンバーは、60〜98%の間の相同性を有する。
【0014】
ヒトのMAGE−A3遺伝子は、黒色腫(Furutaら、2004 Cancer Sci.95、962〜968.)、膀胱癌、肝細胞癌(Qiuら、2006.Clinical Biochemistry 39、259〜266)、胃癌(Hondaら、2004 British Journal of Cancer 90、838〜843)、大腸癌(Kimら、2006 World Journal of Gastroenterology 12、5651〜5657)及び肺癌(NSCLC)(Scanlanら 2002 Immunol Rev.188:22〜32;Jangら 2001 Cancer Res.61、21:7959〜7963)を含む、多様な種類の腫瘍において発現される。精巣生殖細胞又は胎盤のみを例外として、いずれの正常成体組織においても発現が観察されていない。(Haasら、1988 Am J Reprod Immunol Microbiol 18:47〜51;Takahashiら、1995 Cancer Res 55:3478〜382)。
【0015】
免疫療法から恩恵を受けるであろう、CTAG1B、CTAG2及び/又はPRAMEを発現している患者を特異的に特定すること、用量の目的でCTAG1B、CTAG2及び/又はPRAMEの発現のモニタリングを行うこと、臨床試験においてCTAG1B、CTAG2及び/又はPRAMEを発現している試料を特定すること、又は単に癌を有する患者を早期に特定することができる、定量的な高処理アッセイがあることは重要である。いくつかの適用可能な診断法が記載されており、これらは、RNA抽出及びRT−PCRを応用する(例えば、以下の中に:Odunsiら、Cancer Research 63、6076〜6083、2003;Sharmaら、Cancer Immunity、第3巻、19ページ、2003)。
【0016】
既存のアッセイの最大に不利な点は、CTAG1B、CTAG2及び/又はPRAMEの発現を評価するのにRNAの単離を必要とすることである。ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)腫瘍組織は、臨床センター内で腫瘍組織を保存する通常の方法である。ホルマリン中での固定は、組織内のRNA分子の構造を変化させ、架橋、そして部分的な分解も引き起こす。この部分的な分解は、100〜300塩基対の間の、RNAのより小さな断片が生じることを導く。RNAに対するこうした構造的変化は、FFPE組織から抽出したRNAのCTAG1B、CTAG2、及び/又はPRAMEの発現レベルを測定するための使用を制限する。
【0017】
遺伝子メチル化
【0018】
遺伝子メチル化は、遺伝子発現の重要な制御因子である。特に、特定の遺伝子のプロモーター領域中のCpGジヌクレオチド対の中に見出されるシトシン残基におけるメチル化は、遺伝子発現の下方制御を通して多くの病態の原因となり得る。例えば、腫瘍抑制遺伝子の異常なメチル化は、それらの遺伝子の上方制御又は下方制御を導くことがあり、したがって、多くの癌の存在及び成長と関連している(Hoffmannら、2005 Biochem Cell Biol 83:296〜321)。異常な遺伝子メチル化のパターンは、由来する組織に特異的であることが多い。したがって、特定の遺伝子のメチル化状態の検出は、予後及び診断に有用である可能性があり、疾患の相対的段階の決定、さらには特定の種類の療法に対する反応性の予測の双方に使用することができる(Laird.2003 Nat Rev Cancer 3:253〜266)。
【0019】
CTAG1B、CTAG2、及び/又はPRAMEのメチル化状態は、癌組織においてある程度まで研究されている。DNAメチル化は、慢性骨髄性白血病(CLM)におけるPRAME遺伝子の高発現の直接的な原因となる分子機構であることが示唆されている。PRAMEのプロモーター、エキソン1及びエキソン2の解析により、PRAMEは、以下の3つのCpGアイランドを有することが明らかにされている:プロモーター内に位置する201bpのアイランド、エキソン1内にある204bpのアイランド及びエキソン2内にある310bpのアイランド、このうちエキソン2にあるCpGアイランドのみがエピジェネティック制御を示した(Gomez−Romanら、Leukemia Research 31(2007)1521〜1528)。DNAメチル化についてのDNA−トランケーション/トランスフェクション試験との組み合わせで、PRAMEの制御領域の規定の部分におけるメチル化パターンの変化は、通常はPRAME遺伝子を発現していない細胞におけるPRAMEの上方制御に十分であることも示されている。
【0020】
LAGE−1のメチル化状態も研究されている(De Smetら、(1999)Molecular and Cellular Biology:7327〜7335)。LAGE−1とLAGE−2/NY−ESO−1は配列類似性が高いので、これら2つの遺伝子のプロモーター配列のメチル化状態を識別するのは困難となっている。
【0021】
ゲル上での結果の可視化を伴うメチル化特異的PCR(Methylation−Specific PCR、MSP)(ゲルベースのMSPアッセイ)は、他の技術を使用した定量的な試験が開発されているにもかかわらず(Laird PW.、Nat Rev Cancer 2003;3:253〜66;Eadsら、Nucleic Acids Res 2000;28:E32;Mikeska Tら、J Mol Diagn 2007)、遺伝子のエピジェネティックサイレンシングを決定するために広く使用されている(Esteller Mら、Cancer Res 2001;61:3225〜9.)。
【0022】
蛍光に基づくいくつかの技術は、核酸増幅反応のリアルタイムモニタリングに利用できる。こうした技術の1つは、米国特許第6,090,552号及び欧州特許第0912597号に記載され、アンプリフルオル(Amplifluor)(登録商標)として商業的に知られている。この方法は、核酸増幅反応のエンドポイントモニタリングにも適している。Vlassenbroeckら(Vlassenbroeckら、2008.Journal of Molec.Diagn.、第10巻、第4号)は、アンプリフルオル(登録商標)技術を使用した、標準化された直接的なリアルタイムのMSPアッセイを記載している。
【0023】
本発明の一目的は、既存のアッセイの不利な点を排除した改良されたアッセイを提供することである。
【発明の概要】
【0024】
本発明は、発現を測定する改良された方法及び/又はアッセイに関する。本発明はさらに、特定の種類の療法、特に、本明細書に記載のオリゴヌクレオチド、プライマー、プローブ、プライマー対、キット及び/又は方法を使用して、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3を発現しているとして特定された患者の抗原特異的癌免疫治療薬(ASCI)に基づく治療に関する。CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3(タンパク質)の発現は、その遺伝子自体の発現レベルを測定するよりもむしろ、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子のメチル化状態を決定することによって検出される。本発明者は、本発明者のメチル化試験のメチル化状態の結果は、NSCLC、黒色腫及び乳癌の試料におけるCTAG1B、CTAG2及び/又はPRAMEの発現について、RT−PCRアッセイで得られる結果と良く一致していることを示している。qRT−PCRが困難であることが立証されている、例えば非小細胞肺癌からの細針生検などの試料の場合には、MageA3遺伝子のメチル化状態を決定することによって検出されるタンパク質発現が有用な代替を提供する。したがって、該アッセイは、治療に(適する)患者を選出すること、患者の治療に成功する可能性を予測することに有用であり、アッセイを使用して患者の療法選択を補助することができる。
【0025】
一態様において、本発明は、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、44、61、62又は63のうちのいずれかのヌクレオチド配列を含む、又は該配列から本質的になる、又は該配列からなるオリゴヌクレオチド、プライマー又はプローブを提供し、オリゴヌクレオチド、プライマー又はプローブは、遺伝子のメチル化状態の検出に有用である。
【0026】
オリゴヌクレオチド、プライマー又はプローブは、好ましくは、5’から3’の順に、以下の連続した配列:
(a)約6〜30ヌクレオチドの間の第1のヌクレオチド配列であって、第1のヌクレオチド配列中のヌクレオチドが、分子エネルギー移動対のドナー部分及びアクセプター部分から選択される第1の部分で標識され、ドナー部分が、励起されると1種又は複数の特定の波長で蛍光を放出し、アクセプター部分が、ドナー部分によって放出される蛍光を吸収及び/又は消光する、第1のヌクレオチド配列、
(b)約3〜20の間のヌクレオチドを含む、該ヌクレオチドから本質的になる、又は該ヌクレオチドからなる第2の一本鎖ヌクレオチド配列、
(c)約6〜30の間のヌクレオチドを含む、該ヌクレオチドから本質的になる、又は該ヌクレオチドからなる第3のヌクレオチド配列であって、第3のヌクレオチド配列中のヌクレオチドが、ドナー部分及びアクセプター部分から選択される第2の部分で標識され、第2の部分が、前記群のうち第1のヌクレオチド配列を標識していない方であり、第3のヌクレオチド配列が第1のヌクレオチド配列と逆の順に相補的であることにより、第1のヌクレオチド配列と第3のヌクレオチド配列との二重鎖を形成することができ、それにより、第1の部分と第2の部分とが近接していることによって、ドナー部分が励起されて蛍光を放出すると、アクセプター部分がドナー部分によって放出される蛍光を吸収して消光する、第3のヌクレオチド配列、及び
(d)プライマーの3’末端に、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、62及び63のうちのいずれかのヌクレオチド配列を3’末端に含む約8〜40の間のヌクレオチドを含む、該ヌクレオチドから本質的になる、又は該ヌクレオチドからなる第4の一本鎖ヌクレオチド配列
を含む、該配列から本質的になる、又は該配列からなり、
二重鎖が形成されない場合、第1の部分と第2の部分とが、第1の部分と第2の部分との間の分子エネルギー移動を妨げる距離で分離される。
【0027】
3’末端の特定のヌクレオチド配列は、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子のメチル化状態を決定できるようにする。これらのプライマーは、(本明細書で述べている)適切な試薬での処理後に非メチル化型のCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子に選択的に結合する。これらのオリゴヌクレオチドの性質については本明細書に述べており、その説明は準用される。この特異的ヌクレオチド配列は、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3ファミリー遺伝子のメチル化されている又はメチル化されていないDNAの一部を含む核酸鎖と相補的なヌクレオチド配列の、核酸ポリメラーゼによる合成を開始させることができる。
【0028】
最も好ましくは、オリゴヌクレオチド、プライマー又はプローブは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41又は61のヌクレオチド配列からなり、目的遺伝子の一部を増幅するために使用される。
【0029】
さらに提供されるのは、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、44、61、62又は63のうちのいずれかのヌクレオチド配列を含む、又は該配列から本質的になる、又は該配列からなるプライマーを含むプライマー対である。好適なプライマー対は、(本明細書で述べている)関連遺伝子の適切な部分の増幅を目的としたセンスプライマー及びアンチセンスプライマーに基づき、当業者によって容易に決定され得る。本発明のプライマー対の例は、表1に記載されている。請求項6にも、適切なプライマー対が記載されている。
【0030】
さらなる一態様において、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、44、61、62又は63のうちのいずれかのヌクレオチド配列を含む、又は該配列から本質的になる、又は該配列からなる、少なくとも1種のプライマー、プライマー対又はプライマーセットを含むキットが提供される。キットは、遺伝子、特に、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3のような遺伝子のメチル化状態を検出するためのものである。
【0031】
さらなる一態様において、本発明は、DNA含有試料中のCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子のメチル化状態を検出する方法を提供し、該方法は、
(a)DNA含有試料を、検出可能な修飾残基を生成するためにDNA中のメチル化されていないシトシン残基を選択的に修飾するが、メチル化されているシトシン残基は修飾しない試薬で接触/処理するステップと、
(b)プライマー対のうち少なくとも1つのプライマーがメチル化されている又はメチル化されていないDNAの配列にのみ結合するように設計された、少なくとも1種のプライマー対を使用して、試薬での処理後に、それぞれメチル化されている又はメチル化されていない目的遺伝子の少なくとも一部を増幅するステップであり、プライマー対のうちの少なくとも1つのプライマーは、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、44、61、62又は63のうち(適切な)任意のヌクレオチド配列を含む、該配列から本質的になる、又は該配列からなる、ステップと
を含む。
【0032】
さらなる一態様において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチド、プライマー若しくはプローブ、プライマー対、キット又は方法を使用することによって、試料中のCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子のメチル化状態を検出することを含む、癌又は癌素因を診断する方法が提供され、該方法において、試料中のメチル化されていないCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3の存在は、癌又は癌素因質を示す。
【0033】
さらなる一態様において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチド、プライマー若しくはプローブ、プライマー対、キット又は方法を使用することによって、試料中のCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子のメチル化状態を検出することを含む、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3陽性の腫瘍の存在を決定する方法が提供され、該方法において、メチル化されていないCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3の存在は、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3陽性の腫瘍の存在を示す。「CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3陽性の腫瘍」とは、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3抗原を発現する、(患者から単離された)あらゆる腫瘍又は腫瘍細胞を意味する。
【0034】
本発明はさらに、本明細書に記載のオリゴヌクレオチド、プライマー若しくはプローブ、プライマー対、キット又は方法を使用することによって、患者の試料中のCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子のメチル化状態を検出することを含む、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3免疫療法を用いた治療に適する患者を特定及び/又は選出する方法を提供し、該方法において、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子がメチル化されていない場合は、対象が、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3免疫治療薬を用いた治療に特定及び/又は選出される(ことが好ましい)。したがって、メチル化されていないCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3を有する患者は、該遺伝子がメチル化されている患者よりも好適である。
【0035】
これに対して、遺伝子がメチル化されていないのではなければ、対象は、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3免疫治療薬を用いた治療に特定及び/又は選出されないことが好ましい。
【0036】
関連する一態様において、本発明は、本明細書に記載のオリゴヌクレオチド、プライマー若しくはプローブ、プライマー対、キット又は方法を使用することによって、患者の試料中のCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子のメチル化状態を検出することを含む、癌の治療に成功する可能性を予測する方法が提供され、該方法において、遺伝子がメチル化されていない場合は、遺伝子がメチル化されている場合よりも、C CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3免疫治療薬を用いた治療に成功する可能性が高い。
【0037】
これに対して、試料中にメチル化されていないCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3がないことは、遺伝子がメチル化されていない場合よりも、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3免疫治療薬を用いた治療に対して抵抗性である可能性が高いことを示す。したがって、メチル化されているCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子の検出は、免疫治療薬を用いた治療に成功する可能性が低いことを示す。
【0038】
関連するさらなる一態様において、本発明は、本明細書に記載のオリゴヌクレオチド、プライマー若しくはプローブ、プライマー対、キット又は方法を使用することによって、患者の試料中のCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子のメチル化状態を検出することを含む、癌の適切な治療レジメンを選択する方法が提供され、該方法において、遺伝子がメチル化されていない場合は、免疫治療薬が治療に選択される。
【0039】
これに対して、遺伝子がメチル化されていないのではなければ、免疫治療薬を用いた治療は禁忌である。
【0040】
さらに、免疫治療薬の投与を含む、対象において癌を治療する方法が提供され、該方法において、本発明の方法のうちのいずれかによって、或いは本明細書に記載のオリゴヌクレオチド、プライマー若しくはプローブ、プライマー対、キット又は方法を使用することによって、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子のメチル化状態を測定することに基づいて、対象が治療に選出されている。
【0041】
本明細書に記載の種々の態様の全てについて、メチル化されていないCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子の検出が、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3タンパク質のレベルの増加に相当していることが好ましい。
【0042】
本発明は、本発明の方法のうちのいずれかによって、及び/又は本明細書に記載のオリゴヌクレオチド、プライマー若しくはプローブ、プライマー対、キット又は方法を使用することによって、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子のメチル化状態を測定することと、次いで、本明細書に記載のCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3を含む組成物を患者に投与することとを含む、患者を治療する方法をさらに提供する。該組成物は、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子がメチル化されていないことが見出された場合に投与されることが好ましい。
【0043】
さらなる一態様において、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3を発現する腫瘍を再発しやすい患者を治療する方法が提供され、患者が、腫瘍組織を除去するための治療を受けている。該方法は、本発明の方法のうちのいずれかによって、或いは本明細書に記載のオリゴヌクレオチド、プライマー若しくはプローブ、プライマー対、キット又は方法を使用することによって、腫瘍組織におけるCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子のメチル化状態を測定することと、次いで、本明細書に記載のCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3を含む組成物を患者に投与することとを、含む。組成物は、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子がメチル化されていないことが見出された場合に投与されることが好ましい。
【0044】
本発明のさらに他の一態様において、腫瘍を有する患者の治療用の医薬品の製造における、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3を含む組成物の使用が提供され、患者は、本発明の方法のうちのいずれかによって、或いは本明細書に記載のオリゴヌクレオチド、プライマー若しくはプローブ、プライマー対、キット又は方法を使用することによって、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子のメチル化状態を測定することに基づいて治療に選出されている。腫瘍を患っている患者の治療に使用するためのCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3を含む組成物も提供され、患者は、本発明の方法のうちのいずれかによって、或いは本明細書に記載のオリゴヌクレオチド、プライマー若しくはプローブ、プライマー対、キット又は方法を使用することによって、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子のメチル化状態を測定することに基づいて治療に選出されている。
【0045】
さらに他の一実施形態において、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3を発現する腫瘍を再発しやすい患者の治療用の医薬品の製造における、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3を含む組成物の使用が提供され、患者は、本発明の方法のうちのいずれかによって、或いは本明細書に記載のオリゴヌクレオチド、プライマー若しくはプローブ、プライマー対、キット又は方法を使用することによって、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子のメチル化状態を測定することに基づいて治療に選出されている。CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3を発現する腫瘍を再発しやすい患者の治療に使用するためのCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3を含む組成物も提供され、患者は、本発明の方法のうちのいずれかによって、或いは本明細書に記載のオリゴヌクレオチド、プライマー若しくはプローブ、プライマー対、キット又は方法を使用することによって、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子のメチル化状態を測定することに基づいて、治療に選出されている。
【発明の詳細な説明】
【0046】
本発明は、DNA含有試料中のメチル化されている又はメチル化されていないCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子の存在及び/又は量を検出するためのアッセイを提供する。このアッセイを開発するために、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子内でメチル化されやすい領域を同定すること、及び非メチル化型とメチル化型のCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子を識別できる特定のオリゴヌクレオチドを開発することが必要であった。
【0047】
したがって、第1の態様において、本発明は、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、44、61、62又は63のうちのいずれかのヌクレオチド配列を含む、又は該配列から本質的になる、又は該配列からなるオリゴヌクレオチド、プライマー又はプローブを提供する。これらのオリゴヌクレオチドは、目的遺伝子のメチル化状態の検出に有用である。オリゴヌクレオチドは、プライマー及び/又はプローブの役割を果たしてもよい。特定の実施形態において、オリゴヌクレオチドは、非メチル化型の遺伝子を検出する。特定の実施形態において、これらのオリゴヌクレオチドは、本明細書に記載され、配列番号43で代表されるヘアピン構造を含む。このような好ましいオリゴヌクレオチドは、非メチル化型の遺伝子を検出するために、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41又は61によるヌクレオチド配列を含む、該配列から本質的になる、又は該配列からなる。
【0048】
本発明の「遺伝子」又は「目的遺伝子」は、CTAG1B及び/又はCTAG2及び/又はPRAME及び/又はMageA3遺伝子であることが好ましい。
【0049】
「CTAG1B」は、HUGO遺伝子命名法委員会によって承認されている遺伝子記号である。該遺伝子はX染色体上;(部位:Xq28)に位置し、その遺伝子配列は登録番号U87459及びNM001327のもとで掲載されている。Ensembl遺伝子IDはENSG00000184033である。該遺伝子は、癌/精巣抗原1B[Homo sapiens]をコードする。CTAG1Bは、互換可能に、よく「CTAG1B」又は「CTAG」又は「CTAG1」又は「NY−ESO−1」又は「ESO1」又は「LAGE−2」又は「LAGE2B」と呼ばれ、本明細書では全てを使用している。該遺伝子の低メチル化は、例えば黒色腫、肺癌(NSCLCを含む)、前立腺癌又は卵巣癌のような、癌の発生と関連し得る。
【0050】
「CTAG2」は、HUGO遺伝子命名法委員会によって承認されている遺伝子記号である。該遺伝子はX染色体上;(部位:Xq28)に位置し、その遺伝子配列は登録番号AJ012833のもとで掲載されている。Ensembl遺伝子IDはENSG00000126890である。該遺伝子は、癌/精巣抗原2[Homo sapiens]をコードする。CTAG2は、互換可能に、よく「CTAG2」又は「CAMEL」又は「ESO2」又は「LAGE−1」又は「LAGE−2b」又は「MGC3803」又は「MGC138724」と呼ばれ、本明細書では全てを使用している。該遺伝子の低メチル化は、例えば黒色腫、肺癌(NSCLCを含む)、膀胱癌、前立腺癌、頭頸部癌、卵巣癌、子宮頸癌、大腸癌、食道癌又は肝細胞癌のような、癌の発生と関連し得る。
【0051】
「PRAME」は、HUGO遺伝子命名法委員会によって承認されている遺伝子記号である。該遺伝子は22番染色体上(部位:22q11.22)に位置し、その遺伝子配列は登録番号U65011及びNM206953のもとで掲載されている。Ensembl遺伝子IDはENSG00000185686である。該遺伝子は、黒色腫において選択的に発現される抗原をコードする[Homo sapiens]。PRAMEは、互換可能に、よく「MAPE」又は「OIP4」と呼ばれ、本明細書では全てを使用している。該遺伝子の低メチル化は、例えば子宮頸癌、前立腺癌、肺癌、卵巣癌、乳癌又は頭頸部扁平上皮癌のような、癌の発生と関連し得る。
【0052】
MAGEA3及びMAGEA6は、HUGO遺伝子命名法委員会によって承認されている遺伝子記号である。MAGEA3遺伝子はX染色体上(部位q28)に位置し、その遺伝子配列は登録番号NM005362及びENSG00000197172のもとで掲載されている。MAGE−A3遺伝子は、黒色腫抗原ファミリーA、3をコードする。MAGEA6遺伝子は、X染色体上(部位q28)に位置する。MAGE−A3は、互換可能に、よくMAGE−3又はMAGEA3と呼ばれる。同様に、MAGE−A6は、互換可能に、よくMAGE−6又はMAGEA6と呼ばれ、本明細書では全てを使用している。これらの遺伝子の低メチル化は、例えば黒色腫又は肺癌(NSCLCを含む)のような、癌の発生と関連し得る。
【0053】
メチル化を受けやすいCpGジヌクレオチドは、典型的には、ヒトの遺伝子のプロモーター及び/又はエキソン及び/又はイントロン領域に集中している。特定の実施形態において、遺伝子のメチル化状態は、遺伝子のプロモーター、イントロン、エキソン1及び/又はエキソン2領域におけるメチル化のレベルを決定することによって評価される。「プロモーター」は、転写開始点(Transcriptio Start Site、TSS)より上流の領域でありTSSから約10Kb、4Kb、3Kb、1Kb、500bp又は150〜300bpの間に広がる。プロモーター領域におけるCpGの分布が比較的まれな場合には、イントロン及び/又はエキソン領域においてメチル化のレベルを評価することもできる。評価のための領域は、イントロン配列及びエキソン配列の双方を含み、したがって双方の領域に重なっている領域であってもよい。
【0054】
「メチル化状況」又は「メチル化状態」という用語は、DNA配列中の1つ又は複数のCpGジヌクレオチドにおける5−メチルシトシン(「5−mCyt」)の存在又は欠如を意味する。「高メチル化」は、メチル化のレベルにおける、正常レベルを超える上昇として定義される。したがって、高メチル化は、遺伝子内の特定のCpG部位における、シトシン(5−mCyt)の異常なメチル化に関し、プロモーター領域中に多い。正常レベルのメチル化は、例えば非癌性細胞におけるメチル化のレベルを決定することによって定めることができる。
【0055】
「低メチル化」とは、(適切な対照試料中に見出される)「正常」DNA配列中の対応するCpGジヌクレオチドに見出される5−mCytの量に対して相対的な、(DNA試験試料の)DNA配列中の1つ又は複数のCpGジヌクレオチドに存在する5−mCytの減少を指す。ここでも、「正常」レベルのメチル化は、例えば非癌性細胞におけるメチル化のレベルを決定することによって定めることができる。本発明において、CTAG1B、CTAG2及び/又はPRAME遺伝子(又は特定の態様におけるMageA3)の低メチル化は、信頼できる癌の指標を提供する、この腫瘍関連抗原遺伝子の発現増加を示している。
【0056】
本発明は、第2の態様において、DNA含有試料を、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、44、61、62又は63のうちのいずれかのヌクレオチド配列を含む、該配列から本質的になる、又は該配列からなる少なくとも1種のオリゴヌクレオチドと接触させるステップを含む、DNA含有試料中のメチル化されている又はメチル化されていない遺伝子の存在及び/又は量を検出する方法を提供する。該方法は、遺伝子がメチル化されている又はメチル化されていないかどうかを評価するさらなるステップを含むことが好ましい。これは、本明細書で述べているように、オリゴヌクレオチドが、DNA含有試料中のDNAに安定に結合するかどうかによって決まり得る。
【0057】
メチル化状態を評価する技術は、別の方法に基づいている。本発明のオリゴヌクレオチドを利用する、任意の好適な技術を用いることができる。一実施形態において、メチル化されているCpGジヌクレオチドモチーフを検出する方法は、DNA中のメチル化されていないシトシン残基を選択的に修飾して検出可能な修飾残基を生成する試薬を使用する。試薬はメチル化されているシトシン残基を修飾しないため、好ましくは、核酸の増幅が関与する下流プロセスにおいて、メチル化されていない核酸分子とメチル化されている核酸分子とを識別することが可能になる。試薬は、一実施形態において、メチル化されていないシトシン残基を選択的に脱アミノ化するように作用してもよい。したがって、試薬に曝露した後に、メチル化されていないDNAは、対応するメチル化されているDNAのものとは異なるヌクレオチド配列を含む。シトシンの脱アミノ反応の結果、チミンと同様の塩基対形成特性を有し、したがって、シトシンの塩基対形成性質とは異なる、ウラシル残基が存在することになる。これにより、メチル化されているシトシンとメチル化されていないシトシンとの間の識別が可能になる。
【0058】
配列の相違を評価するための有用な従来技術は、オリゴヌクレオチドプライマーを使用する。プライマーを設計するための2つの方法が可能である。第1に、それ自身がDNAメチル化され得るいずれの部位も包含しないように、プライマーを設計することができる。示差的なメチル化の部位における配列の相違は2つのプライマー結合部位の間にあり、配列の相違の可視化にはさらなるアッセイのステップが必要とされる。第2に、最初に処理した配列のメチル化型又は非メチル化型のいずれかと特異的にハイブリッド形成するプようにライマーを設計することができる。ハイブリッド形成後、増幅反応を行い、当技術分野において知られている任意の検出システムを使用して増幅産物をアッセイすることができる。増幅産物の存在は、プライマーがDNAとハイブリッド形成したことを示す。プライマーの特異性は、DNAが修飾されているかいないかを示し、次にこれにより、DNAがメチル化されているかどうかを示す。標的に対して相補性の領域が十分である、例えば、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21又は22ヌクレオチドがある場合には、プライマーは、ハイブリッド形成を阻害しないが他の操作に有用であり得る追加のヌクレオチド残基も含んでもよい。他のこうした残基の例は、制限酵素切断のための部位、リガンド結合のための部位、又は因子結合若しくはリンカー若しくはリピートのための部位、又は可視化のための残基であってもよい。オリゴヌクレオチドプライマーは、修飾されたメチル化残基に特異的であるようなものであってもなくてもよい。プライマーとしての使用に好ましいオリゴヌクレオチドは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41又は61のうちのいずれかのヌクレオチド配列を含む、該配列から本質的になる、又は該配列からなる。
【0059】
修飾されている核酸と修飾されていない核酸とを識別するためのさらなる、かつ多くの場合、補足的な手段は、オリゴヌクレオチドプローブを使用することである。こうしたプローブは、修飾されている核酸又は、例えば増幅によって得られた産物のような、修飾された核酸のさらなる産物と直接ハイブリッド形成し得る。プローブに基づくアッセイは、特定の配列に対するオリゴヌクレオチドハイブリッド形成法と、これに続くそのハイブリッドの検出とを利用するものである。増幅産物を検出する前に、さらなる精製ステップ、例えば、沈澱ステップがあってもよい。オリゴヌクレオチドプローブは、当技術分野において知られている任意の検出システムを使用して標識することができる。こうしたシステムには、蛍光部分、放射性同位体標識部分、生物発光部分、発光部分、化学発光部分、酵素、基質、レセプター、又はリガンドが含まれるが、これらに限定されない。プローブとして使用するためのオリゴヌクレオチドは、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、44、61、62又は63のうちのいずれかのヌクレオチド配列を含む、該配列から本質的になる、又は該配列からなるものでもよい。好ましいオリゴヌクレオチドプローブは、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44及び61から選択されるヌクレオチド配列を含む、該配列から本質的になる、又は該配列からなることが好ましい。
【0060】
本明細書では、「オリゴヌクレオチドプライマー」を互換可能に「プライマー」と称する。同様に、本明細書では、「オリゴヌクレオチドプローブ」を互換可能に「プローブ」と称する。
【0061】
好ましい実施形態において、遺伝子(又はその一部、特に、CpGアイランド)のメチル化状態は、メチル化特異的PCR(MSP)を使用して決定する。
【0062】
MSP技術は、当業者に知られているであろう。MSP法では、亜硫酸水素ナトリウム処理の結果としての配列の相違を利用することにより、メチル化されているDNAからメチル化されていないDNAを識別するように設計されたプライマー対を使用して、DNAを増幅することができる(Herman JGら、Proc Natl Acad Sci U S A.1996年9月 3;93(18):9821〜6及び国際公開第97/46705号パンフレット)。リアルタイム定量MSP(QMSP)は、MSP技術の特定の例であり、リアルタイムでのメチル化DNAの信頼性の高い定量を可能にする。
【0063】
リアルタイム法は、一般的に、増幅の進行の連続的な光学的モニタリングに基づくものであり、産物中の試薬の取り込みを定量化することができ、その定量化により鋳型中の配列のコピー数が示される、蛍光標識された試薬を利用する。このような標識された試薬は、二本鎖DNAに優先的に結合し、二本鎖DNAの結合により蛍光が大きく増強される蛍光色素であってもよい。或いは、標識されたプライマー及び/又は標識されたプローブを使用することもできる。これらは、例えば、タックマン(TAQMAN)(登録商標)、モレキュラービーコン(MOLECULAR BEACONS)(登録商標)、アンプリフルオル(登録商標)及びスコーピオン(SCORPION)(登録商標)DzyNA(登録商標)などのような、よく知られており且つ商業的に入手可能なリアルタイム増幅技術の特定の用途を示すものである。これらのリアルタイム法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)と共に使用されることが多い。
【0064】
タックマンの技術では、蛍光色素及び消光色素を含む、直鎖状の加水分解オリゴヌクレオチドプローブが使用される。照射されると、励起された蛍光色素は、蛍光を放出するよりもむしろ、近くの消光色素分子にエネルギーを移動させる(FRET原理)。タックマンプローブは、PCR産物の内側の領域にアニーリングし、ポリメラーゼが鋳型を複製するときに、ポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ活性により切断される。これにより、消光剤の活性が終わり、レポーター色素が蛍光を放出し始め、その蛍光はプローブ切断の速度と比例してサイクル毎に増加する。
【0065】
モレキュラービーコンも蛍光色素及び消光色素を含むが、双方の色素を近づけて蛍光共鳴エネルギー移動(Fluorescence Resonance Energy Transfer、FRET)が生じるように、溶液中で遊離している間はヘアピン構造を取るように設計されている。アニーリングステップ中にビーコンが標的とハイブリッド形成する場合には、ヘアピンが直線状になり、双方の色素(ドナー及びアクセプター/消光剤)が分離される。ドナーから検出される蛍光の増加は、得られるPCR産物の量と相関するであろう。
【0066】
スコーピオンプローブでは、単一のオリゴヌクレオチドを使用して、配列特異的なプライミングとPCR産物の検出とを達成する。スコーピオンプローブは、ハイブリッド形成していない状態ではステムループ構造を維持しており、フルオロフォアと消光剤との間でFRETが生じる。このステムの3’部分は、プライマーの伸長産物と相補的な配列も含む。この配列は、増幅不可能な単量体を介して特異的プライマーの5’末端に連結される。スコーピオンプライマーの伸長後、特異的なプローブ配列は、伸長されたアンプリコン中の相補配列に結合することができ、これにより、ヘアピンループが開かれ、フルオロフォアと消光剤とが分離されて、蛍光シグナルを発生する。
【0067】
ヘビーメチル(Heavymethyl)では、プライミングはメチル化特異的であるが、プライマー自体の代わりに、伸長不可能なオリゴヌクレオチドブロッカーがこの特異性を提供する。ブロッカーは亜硫酸水素処理されたDNAにメチル化特異的な様式で結合し、その結合部位はプライマー結合部位と重複している。ブロッカーが結合すると、プライマーは結合することができず、したがって、アンプリコンは生成されない。ヘビーメチルは、リアルタイム検出と共に使用することができる。
【0068】
プレクサー(Plexor)(商標)qPCRシステム及びqRT−PCRシステムは、2個の修飾ヌクレオチド間の特異的な相互作用を利用して、定量PCR解析を達成するものである。PCRプライマーのうちの一方は、5’末端のイソ−dC残基に隣接する蛍光標識を含む。もう一方のPCRプライマーは、標識されない。この反応混合物は、デオキシヌクレオチドと、消光剤であるダブシルで修飾されたイソ−dGTPとを含む。ダブシル−イソ−dGTPは、イソ−dC残基と相補的な部位に優先的に取り込まれる。この部位におけるダブシル−イソ−dGTPの取り込みは、結果として相補鎖上での蛍光色素の消光及び蛍光の減少をもたらし、これにより、増幅中の定量が可能になる。これらの多重反応のために、それぞれの標的配列に対して、異なるフルオロフォアを有するプライマー対を使用する。
【0069】
したがって、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、44、61、62又は63のうちのいずれかのヌクレオチド配列を含む、該配列から本質的になる、又は該配列からなるオリゴヌクレオチドは、上記の方法において目的遺伝子のメチル化状態の検出用のプライマー又はプローブとして用いることもできる。
【0070】
好ましい一実施形態において、本発明は、DNA含有試料中のメチル化されている又はメチル化されていない目的遺伝子の存在及び/又は量を検出するリアルタイム法を提供し、該方法は、
(a)DNA含有試料を、検出可能な修飾残基を生成するためにDNA中のメチル化されていないシトシン残基を選択的に修飾するが、メチル化されているシトシン残基を修飾しない試薬で接触/処理するステップと、
(b)プライマー対のうち少なくとも1つのプライマーがメチル化されている又はメチル化されていないDNAの配列にのみ結合するように設計された、少なくとも1種のプライマー対を使用して、試薬での処理後に、それぞれメチル化されている又はメチル化されていない目的遺伝子の少なくとも一部を増幅するステップであり、プライマー対のうちの少なくとも1つのプライマーは、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、44、61、62又は63のうちのいずれかのヌクレオチド配列を含む、該配列から本質的になる、又は該配列からなるステップと
を含む。
【0071】
本発明の方法における目的遺伝子は、CTAG1B、CTAG2、MageA3及び/又はPRAME遺伝子であることが好ましい。好ましくは、プライマー対のうちの少なくとも1つのプライマーは、増幅のないときには、アクセプター部分がドナー部分によって放出される蛍光を(励起と同時に)消光し、増幅中には、ステムループ構造が破壊され、ドナー部分とアクセプター部分とが十分に分離されて検出可能な蛍光シグナルを発生するように配置された、分子エネルギー移動対のドナー及びアクセプター部分を有するステムループ構造を含むプライマーである。このシグナルは、メチル化されている又はメチル化されていない目的遺伝子の存在の指標を提供するために、リアルタイムで検出することができる。配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、44、61、62又は63のうちのいずれかのヌクレオチド配列を含む、該配列から本質的になる、又は該配列からなるプライマー対のうちのプライマーは、ステムループ構造を有することが好ましい。
【0072】
特定の実施形態において、メチル化されている又はメチル化されていない遺伝子の遺伝子コピー数が決定される。ここで、本明細書に記載の方法は、以下のさらなるステップ:
(c)遺伝子コピー数を得るため、リアルタイム検出の結果を、メチル化されている又はメチル化されていない目的遺伝子の標準曲線に対して定量するステップ
を含むことが好ましい。
【0073】
好ましくは、ステップ(c)は、サイクル閾値が40以下の場合に増幅が有効であると考えられることをさらに特徴とする。
【0074】
CTAG1B、CTAG2、MageA3及び/又はPRAME遺伝子のような遺伝子の場合、非メチル化型の遺伝子の検出が主に関連するであろう。
【0075】
本発明の方法は、メチル化されている又はメチル化されていない目的遺伝子の存在を試料中でリアルタイムに検出することを可能にする。本発明の方法は定量的な方法であるので、反応の進行と並行してメチル化型又は非メチル化型の目的遺伝子の(相対)量も決定することができる。
【0076】
しかし、リアルタイム法を利用しなくてはならないわけではない。試料中に標的DNAが存在するかしないかを知るためだけに、解析を行うこともできる。エンドポイントの増幅検出技術は、リアルタイムPCRのために広く使用されるのと同様の方法を利用する。したがって、本発明の方法は、DNA含有試料中のメチル化されている又はメチル化されていない目的遺伝子の存在及び/又は量を検出するエンドポイント法を包含し得る。
【0077】
したがって、本発明は、DNA含有試料中のメチル化されている又はメチル化されていない目的遺伝子の存在及び/又は量を検出する(エンドポイントの)方法を提供し、該方法は、
(a)DNA含有試料を、検出可能な修飾残基を生成するために、DNA中のメチル化されていないシトシン残基を選択的に修飾するが、メチル化されているシトシン残基を修飾しない試薬で接触及び/又は処理するステップと、
(b)プライマー対のうち少なくとも1つのプライマーがメチル化されている又はメチル化されていないDNAの配列にのみ結合するように設計された、少なくとも1種のプライマー対を使用して、試薬での処理後にそれぞれメチル化されている又はメチル化されていない目的遺伝子の少なくとも一部を増幅するステップであり、プライマー対のうちの少なくとも1つのプライマーは、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、44、61、62又は63のうちのいずれかのヌクレオチド配列を含む、該配列から本質的になる、又は該配列からなるステップと、
を含む。
【0078】
上述したように、本発明の方法における目的遺伝子は、CTAG1B、CTAG2、MageA3及び/又はPRAMEであることが好ましい。プライマー対のうちの少なくとも1つのプライマーは、本明細書に記載の特徴を有する分子エネルギー移動対のドナー及びアクセプター部分を有するステムループ構造を含むプライマーであることが好ましい。配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、44、61、62又は63のうちのいずれかのヌクレオチド配列を含む、該配列から本質的になる、又は該配列からなるプライマー対のうちのプライマーは、ステムループ構造を有することが好ましい。
【0079】
CTAG1B、CTAG2、MageA3及び/又はPRAME遺伝子の場合、非メチル化型の遺伝子の検出が主に関連するであろう。配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41又は61のうちのいずれかのヌクレオチド配列を含む、該配列から本質的になる、又は該配列からなるプライマーは、試薬での処理後にメチル化されていないCTAG1B、CTAG2及び/又はPRAMEのDNAを検出するために設計されている。
【0080】
メチル化されていない遺伝子がないということは、メチル化されている遺伝子があることを示している。
【0081】
メチル化されている又はメチル化されていない遺伝子の遺伝子コピー数が望まれる場合には、該方法は、以下のさらなるステップ:
(c)遺伝子コピー数を得るため、検出の結果をメチル化されている又はメチル化されていない目的遺伝子の標準曲線に対して定量するステップ
を含んでもよい。
【0082】
本発明の全ての実施形態は、本発明のエンドポイント態様に適用可能であり、したがって、それに準用する。エンドポイント分析には、増幅の終わりでの蛍光を決定するための蛍光プレートリーダー又は他の好適な装置の使用が想定され得る。
【0083】
本発明の方法は、任意の好適な(DNA含有)試験試料において行われるex vivo又はin vitroでの方法であることが最も好ましい。しかし、一実施形態では、方法は、試料を採取するステップも含んでもよい。試験試料は、DNA含有試料であり、特に、目的遺伝子を含むDNA含有試料である。本発明の方法は、疾患の診断に、特に、目的遺伝子のメチル化が疾患の発生と関連している(ことが知られている)場合に、使用することができる。
【0084】
DNA含有試料は、任意の好適な組織試料又は体液を含んでもよい。好ましくは、試験試料は、ヒト対象から採取される。癌に適用する場合、試料は、癌性であると疑われる組織又は代表的な体液から採取された組織試料を含んでもよい。
【0085】
CTAG1B、CTAG2、MageA3及び/又はPRAME遺伝子の低メチル化は、肺癌と関連づけられており、したがって、本発明を肺癌に適用することができる。したがって、一実施形態では、CTAG1B、CTAG2、MageA3及び/又はPRAME遺伝子に関する本発明の方法において使用される試験試料は、肺細胞又は肺細胞からの核酸(分子)を含むことが好ましい。最も好ましくは、試料は、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織である。肺癌には、非小細胞肺癌(NSCLC)及び小細胞肺癌(SCLC)の2種類がある。これらの名称は、腫瘍内で見つかる細胞の種類を簡単に説明するものである。試験試料は、非小細胞肺癌(NSCLC)からの細胞又は核酸を含むことが好ましい。NSCLCは、扁平上皮癌、腺癌、及び大細胞癌を含み、肺癌の約80%を占めている。好ましい一実施形態において、癌がNSCLCである場合、試料は、肺組織試料又は喀痰試料又は血清試料である。NSCLCは治癒が困難であり、利用可能な治療は、できる限り長く延命し、疾患の症状を緩和しようとするものになりがちである。NSCLCは最も一般的な種類の肺癌であり、不良転帰と関連する。
【0086】
CTAG1B、CTAG2、MageA3及び/又はPRAME遺伝子の低メチル化は、黒色腫とも関連があり、したがって、本発明は黒色腫に適用することもできる。黒色腫は組織病理学的用語でよく定義されている、色素沈着した、アクセスしやすい病変である。初期の水平増殖期(Radial Growth Phase、RGP)の黒色腫は、表皮及び真皮乳頭層に浸潤し得るが、転移能を有さない;この段階での切除は、ほぼ完全に治癒的である。その後の垂直増殖期(Vertical Growth Phase、VGP)は、より攻撃的な段階への移行を意味し、転移能がある。したがって、RGP/VGP移行時に起こる遺伝子発現の変化は、非常に興味深い。したがって、さらなる実施形態では、本発明の方法において使用されるさらに好ましい試験試料は、黒色腫細胞又は黒色腫細胞からの核酸を含む。好ましくは、試験試料は、皮膚病変から採取される。
【0087】
CTAG1B、CTAG2、MageA3及び/又はPRAME遺伝子の低メチル化は、乳癌とも関連があり、したがって、本発明を乳癌に適用することもできる。乳癌には、非侵襲性癌及び侵襲性癌の2種類の主なグループがある。非侵襲性癌には、上皮内小葉癌及び腺管上皮内癌が含まれる。都合の悪いことに、乳癌は基底膜を通して増殖することが多く、全乳癌のうちおよそ95%は浸潤性又は侵襲性の癌である。最も一般的な種類の侵襲性乳癌(約75%)は、侵襲性腺管癌であり、乳管内で発生し、管壁を通して広がる。侵襲性小葉癌は、乳腺内で発生し、侵襲性乳癌の10〜15%を占める。より一般的でない種類の侵襲性乳癌には、炎症性乳癌、乳頭のパジェット病、髄様癌、粘液癌、葉状腫瘍、及び管状癌が含まれる。まれに(約1%)、肉腫(結合組織の癌)が乳房内に発生する。個体は、侵襲性乳癌及び非侵襲性乳癌の一方か、他方、又はその組合せを発症し得る。したがって、さらなる実施形態では、本発明の方法において使用されるさらに好ましい試験試料は、乳房細胞又は乳房細胞からの核酸分子を含む。最も好ましくは、試験試料は、乳房組織から採取される。
【0088】
本発明の方法において使用される他のDNA含有試料としては、診断、予後、又は個別化医療用のための試料が挙げられる。こうした試料は、例えば、生検若しくは細針吸引などの外科的試料から、パラフィン包埋組織から、凍結腫瘍組織試料から、新鮮な腫瘍組織試料から、又は新鮮な若しくは凍結された体液から採取することができる。非限定的な例としては、全血、骨髄、脳脊髄液、腹膜液、胸膜液、リンパ液、血清、血漿、尿、乳び、便、射精液、喀痰、乳頭吸引液、唾液、スワブ検体、結腸洗浄検体及びブラシ検体などが挙げられる。組織及び体液は、任意の好適な方法を使用して採取することができ、そうした多くの方法は、当技術分野でよく知られている。パラフィン包埋検体の評価は、直接又は組織切片上で行うことができる。
【0089】
「試料」、「患者試料」及び「患者の試料」という用語は、上記のように、互換可能に使用され、患者からのDNA含有試料を意味することが意図される。
【0090】
本発明の方法は、精製された又は未精製のDNA含有試料において行うことができる。しかし、好ましい一実施形態において、DNAは、ステップ(a)(試薬処理ステップ)の前に、又は予備的なステップとして、DNA含有試料から単離/抽出/精製される。任意の好適なDNA単離技術を利用することができる。精製技術の例は、Molecular Cloning−A Laboratory Manual(第3版)、Sambrook及びRussell(特に、その中の付録8及び第5章を参照されたい)のような標準的な教科書中に見出すことができる。好ましい一実施形態において、精製は、DNAのアルコール沈殿に関するものである。好ましいアルコールとしては、エタノール及びイソプロパノールなどが挙げられる。好適な精製技術には、塩に基づく沈殿法も挙げられる。したがって、特定の一実施形態では、DNA精製技術は、混在物を沈殿させるための高濃度の塩の使用を含む。塩は、例えば、酢酸カリウム及び/又は酢酸アンモニウムを含む、それらから本質的になる、又はそれらからなるものでもよい。該方法は、アルコール沈澱を通して沈澱させた混在物を除去し、それに続きDNAを回収するステップをさらに含んでもよい。
【0091】
一代替実施形態では、DNA精製技術は、細胞溶解液から混在物を抽出するための有機溶媒の使用に基づく。したがって、一実施形態において、方法は、DNAを抽出するためのフェノール、クロロホルム及びイソアミルアルコールの使用を含む。好適な条件を用いて、確実に、混在物が有機相中に分離され、DNAが水相に残るようにする。
さらなるキットでは、磁気ビーズ、シリカ膜などを使用する。そうしたキットは当技術分野でよく知られており、市販されている。本発明の方法では、ピュアジーン(PUREGENE)(登録商標)DNA精製キットを使用することもできる。
【0092】
こうした精製技術の好ましい実施形態では、抽出したDNAを、エタノール沈澱又はイソプロパノール沈澱などのアルコール沈澱を通して回収する。
【0093】
ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)腫瘍組織は、臨床センター内で腫瘍組織を保存する通常の方法である。そうしたFFPE包埋試料は、DNA抽出の前に脱ろうステップを必要とする。好ましい一実施形態において、FFPE組織試料又はスライド上に固定した試料材料は、キシレン処理によって最初に脱ろうさせる。キシレンとの接触時間は、キシレンが試料と接触して相互作用できるようにするのに十分でなければならない。より好ましい一実施形態では、FFPE試料を、100%キシレン中で約2時間脱パラフィン化する。完全な脱パラフィン化を確実にするために、このステップをもう一度繰り返すこともできる。キシレン処理の後に、試料は70%エタノールを用いて再水和させる。
【0094】
本発明の方法は、必要に応じて、(同様に、ステップ(a)の前に、又は予備的なステップとして)、試料中の単離/抽出/精製されたDNAの定量も含んでもよい。試料中のDNAの定量は、任意の好適な手段を使用して達成することができる。核酸の定量は、例えば、分光光度計、蛍光光度計又はUVトランスイルミネーターの使用に基づくものであってもよい。好適な技術の例は、Molecular Cloning−A Laboratory Manual(第3版)、Sambrook及びRussell(特に、その中の付録8を参照されたい)のような標準的な教科書に記載されている。好ましい一実施形態では、DNAを定量するために、Molecular Probes、Invitrogenから入手可能なピコグリーン(Picogreen)(登録商標)dsDNA定量キットのようなキットを用いることもできる。
【0095】
本発明の方法は、検出可能な修飾残基を生成するためにDNA中のメチル化されていないシトシン残基を選択的に修飾する試薬に依存していてもよい。試薬の作用機序については、既に説明した。好ましい一実施形態において、検出可能な修飾残基を生成するためにDNA中のメチル化されていないシトシン残基を選択的に修飾するが、メチル化されているシトシン残基を修飾しない試薬は、亜硫酸水素塩試薬を含む、亜硫酸水素塩試薬から本質的になる、又は亜硫酸水素塩試薬からなる(Frommerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 1992 89:1827〜1831,)。いくつかの亜硫酸水素塩含有試薬が当技術分野で知られており、脱アミノ化反応を行うための好適なキットが市販されている(Zymo Research製のEZ DNAメチル化キットなど)。本発明の方法における使用のために特に好ましい試薬は、亜硫酸水素ナトリウムを含む、亜硫酸水素ナトリウムから本質的になる、又は亜硫酸水素ナトリウムからなる。
【0096】
試料中のDNAを試薬で処理すると、次は、試薬により引き起こされるヌクレオチド配列中の相違を検出する必要がある。この検出は、核酸増幅技術を用いて行う。既に述べたように、機能的に重要なメチル化は、プロモーター領域と最も一般的に関連している。特に、いわゆる「CpGアイランド」は、比較的高頻度のCpG残基を含み、遺伝子の転写開始点の近くに見出されることが多い。遺伝子の中には、例えばMAGE−3のように、プロモーター領域におけるCpGの分布が比較的まれなものもある。こうした場合には、遺伝子のイントロン領域及びエキソン領域をメチル化について評価することが適切な場合もある。目的遺伝子中のCpGアイランドを特定することができる様々なソフトウェアプログラムが存在する。したがって、本発明の方法は、少なくとも1種のプライマー対を使用して、メチル化されている又はメチル化されていない目的遺伝子の少なくとも一部を増幅することを含んでもよい。上述のように、メチル化状態を調べる目的残基は、典型的には、目的遺伝子の規定のCpGアイランド及び/又はプロモーター領域及び/又はイントロン領域及び/又はエキソン領域中に見出されるため、プライマー対は、典型的には、遺伝子の全体よりもむしろ、(領域中の)一部のみを増幅するであろう。目的遺伝子の存在の信頼できる指標として増幅産物を検出可能であるならば、遺伝子の任意の好適な部分を本発明の方法に従って増幅することができる。特に容易に検出可能な増幅産物は、約50〜250bpの間である。さらにより好ましくは、メチル化されている又はメチル化されていない目的遺伝子の増幅のための少なくとも1種のプライマー対を使用する増幅により、約100〜200bpの間又は50〜100bpの間の増幅産物が生成される。これは、組織試料、特に、典型的に得られるDNAの質が限られ、より小さいアンプリコンが望まれることもあるパラフィン包埋試料では、特に重要である。好ましい一実施形態において、検出可能な増幅産物は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、62及び63のうちのいずれかのヌクレオチド配列を少なくとも含む。好ましくは、(約)50bp、51bp、52bp、53bp、54bp、55bp、56bp、57bp、58bp、59bp、60bp、61bp、62bp、63bp、64bp、65bp、66bp、67bp、68bp、69bp、70bp、71bp、72bp、73bp、74bp、75bp、76bp、77bp、78bp、79bp、80bp、81bp、82bp、83bp、84bp、85bp、86bp、87bp、88bp、89bp、90bp、91bp、92bp、93bp、94bp、95bp、96bp、97bp、98bp、99bp、100bp、101bp、102bp、103bp、104bp、105bp、106bp、107bp、108bp、109bp、110bp、111bp、112bp、113bp、114bp、115bp、116bp、117bp、118bp、119bp、120bp、121bp、122bp、123bp、124bp、125bp、126bp、127bp、128bp、129bp、130bp、131bp、132bp、133bp、134bp、135bp、136bp、137bp、138bp、139bp、140bp、141bp、142bp 143bp、144bp、145bp、146bp、147bp、148bp、149bp、又は150bpの増幅産物が生成される。
【0097】
プライマー対のうちの少なくとも1つのプライマー、及び好ましくは双方のプライマーは、試薬での処理後に、メチル化されている又はメチル化されていないDNAの配列にのみ結合するように設計される。したがって、プライマーは、方法が行われる用途に応じて、(試薬での処理後に修飾されていないままである)メチル化型の遺伝子又は(試薬によって修飾される)非メチル化型の遺伝子のいずれかとのみ塩基対を形成することによって、メチル化されている遺伝子とメチル化されていない遺伝子とを識別する働きをする。したがって、プライマーは、目的遺伝子中の少なくとも1個のメチル化部位を包含しなければならない。好ましくは、プライマーは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7又は8個のメチル化部位を含む遺伝子の領域に結合する。最も好ましくは、プライマーは、プライマー結合部位中のCpG対にある全シトシン残基がメチル化されている配列又はメチル化されていない配列−すなわち、「完全にメチル化されている」配列又は「完全にメチル化されていない」配列に結合するように設計される。しかし、1個又は数個のメチル化部位のみが機能的に重要性がある場合には、プライマーは、有効な結合が生じるよう、にこれらの残基のみがメチル化されている(シトシンとして残る)又はメチル化されていない(ウラシルに変換される)必要のある標的配列に結合するように設計することができる。他の(機能的に関連のない)潜在的なメチル化の部位を、適切なプライマー設計を通して完全に回避する、又は重要性のより少ないこれらの部位のメチル化状態とは無関係に結合するようにプライマーを設計することもできる(例えば、プライマー配列中の適切な位置にG残基とA残基とを混在させることによる)。したがって、最初のDNA含有試料中にメチル化型又は非メチル化型の目的遺伝子が存在する場合にのみ、増幅産物が予想される。これに加えて又はこれに代えて、例えば、遺伝子が、機能的に重要なメチル化されている部位と、別の機能的に重要なメチル化されていない部位とを含む場合のように、プライマー対のうちの少なくとも一方のプライマーが、試薬での処理後にメチル化されていないDNAの配列にのみ結合し、他方のプライマーが、処理後にメチル化されているDNAにのみ結合することが好適な場合もある。
【0098】
好ましくは、プライマー対のうちの少なくとも1つのプライマーは、分子エネルギー移動対のドナー及びアクセプター部分を有するステムループ構造又は「ヘアピン」構造を含むプライマーである。このプライマーは、所望により、メチル化されているDNAとメチル化されていないDNAとを識別するプライマーであってもなくてもよい。プライマーは、増幅のないときには、アクセプター部分がドナー部分によって放出される蛍光を励起と同時に消光するように配置される。したがって、プライマーによって導かれる増幅の前には、又は増幅のないときには、ステムループ構造又は「ヘアピン」構造は完全なままである。ドナー部分によって放出される蛍光は、アクセプター部分によって効果的に受容され、蛍光の消光を導く。
【0099】
増幅中には、プライマーのステムループ又はヘアピン構造の形状が変更される。特に、プライマーが増幅産物中に、特に二本鎖DNA中に組み込まれると、(特に、2回目の増幅中に)ステムループ又はヘアピン構造が破壊される。構造におけるこの変化は、アクセプター部分が、ドナー部分によって放出される蛍光をもはや効果的に消光することができないほど十分にドナー部分とアクセプター部分とを分離する。したがって、ドナー部分は、検出可能な蛍光シグナルを生成する。このシグナルは、メチル化されている又はメチル化されていない目的遺伝子の遺伝子コピー数の指標を得るために、リアルタイムで検出される。
【0100】
したがって、本発明の方法は、分子エネルギー移動(molecular energy transfer、MET)標識で検出可能に標識された核酸の増幅用のオリゴヌクレオチドを利用することができる。プライマーは、MET対のドナー及び/又はアクセプター部分を含み、増幅産物がMET対のドナー及びアクセプター部分の双方を含むように、増幅反応の増幅産物中に組み込まれる。
【0101】
増幅産物が二本鎖である場合には、増幅産物中に組み込まれるMET対は同一の鎖上にあってもよく、増幅が三重増幅である場合には、反対の鎖上にあってもよい。増幅で使用されるポリメラーゼが5’−3’エキソヌクレアーゼ活性を有する特定の例では、このエキソヌクレアーゼ活性により、増幅産物集団のうちの少なくとも一部からMET対部分のうちの1つが切断されてもよい。こうしたエキソヌクレアーゼ活性は、本発明の増幅法に対して有害ではない。
【0102】
本明細書で述べている本発明の方法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、三重増幅、及び他の増幅システムを含む、核酸配列を増幅するための多くの方法に適合可能である。
【0103】
好ましい一実施形態において、METは蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)であり、ここで、オリゴヌクレオチドは、ドナー部分によって放出される蛍光エネルギーがアクセプター部分によって吸収されるように、ドナー部分がフルオロフォアであり、アクセプター部分がフルオロフォアであってもよい、ドナー及びアクセプター部分で標識される。アクセプター部分は、消光剤であってもよい。したがって、増幅プライマーは、ドナー及びアクセプター部分の双方を含むヘアピンプライマーであり、アクセプター部分がドナー部分の蛍光を消光するように構成される。プライマーが増幅産物中に組み込まれると、その構造が変化して、消光が排除され、ドナー部分の蛍光を検出することができる。
【0104】
本発明の方法により、組み込まれなかったオリゴヌクレオチドを予め分離することなく増幅産物を検出することができる。さらに、これらの方法は、標識されたオリゴヌクレオチドを増幅産物中に組み込むことによって、増幅産物を直接検出することを可能にする。
【0105】
好ましい一実施形態において、本発明の方法は、参照遺伝子の発現を決定することも含む。参照遺伝子は、異なる試料間での比較を可能にするために重要である。比較する試料間で安定且つ信頼性の高い様式で発現されると考えられる適切な遺伝子を選択することにより、目的遺伝子と共に参照遺伝子の増幅を検出するで、最初に入れた材料の量、酵素の効率、試料の分解などのような試料間のばらつきが考慮される。参照遺伝子は、理想的には、信頼性の高い量の、最初に入れたDNAの存在下で、試験する試料間で定常的に発現されているものでなければならない。したがって、目的遺伝子から得られる結果を、参照遺伝子の対応するコピー数に対して標準化することができる。本発明に好適な参照遺伝子としては、ベータアクチン、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、18SリボソームRNAなどのリボソームRNA遺伝子及びRNAポリメラーゼII遺伝子などが挙げられる(Radonic A.ら、Biochem Biophys Res Commun.2004年1月 23;313(4):856〜62)。特に好ましい一実施形態では、参照遺伝子はベータアクチンである。
【0106】
したがって、本発明の方法は、プライマー対のうちの少なくとも1つのプライマーが上記の特徴を有するステムループ構造を含むプライマーである、少なくとも1種のプライマー対を使用して、参照遺伝子の少なくとも一部を増幅することを、さらに特徴としてもよい。
【0107】
参照遺伝子の存在の信頼できる指標として増幅産物を検出可能であるならば、参照遺伝子の任意の好適な部分を本発明の方法に従って増幅することができる。特に容易に検出可能な増幅産物は、約50〜250bpの間である。さらにより好ましくは、参照遺伝子の増幅のための少なくとも1種のプライマー対を使用する増幅により、約50bp〜150bpの間の増幅産物が生成される。これは、組織試料、特に、典型的に得られるDNAの質が限られるパラフィン包埋試料では、特に重要である。
【0108】
参照遺伝子が本発明の方法に含まれる実施形態において、該方法は、(リアルタイム)検出の結果をメチル化されている又はメチル化されていない目的遺伝子の標準曲線に対して定量することを含む該方法のステップが、参照遺伝子のリアルタイム検出の結果を参照遺伝子の標準曲線に対して定量して、それぞれの場合の遺伝子コピー数の出力を得ることも含み、任意でさらに、メチル化されている又はメチル化されていない目的遺伝子の遺伝子コピー数を参照遺伝子の遺伝子コピー数で除算することによって、これらの結果を標準化することを含むことを、さらに特徴としていてもよい。
【0109】
ここでも、該方法は、サイクル閾値が40以下の場合に増幅が有効であると考えられることを特徴付けられてもよい。
【0110】
参照遺伝子の少なくとも一部の増幅には、一般的に、少なくとも1種のプライマー対が利用される。好ましくは、プライマー対のうちの少なくとも1つのプライマーは、分子エネルギー移動対のドナー及びアクセプター部分を有するステムループ構造を含む、目的遺伝子のためのプライマーである。増幅中のこうした構造の作用機序については、本明細書中で説明している。
【0111】
本発明の方法において使用される「ヘアピン」プライマーは、米国特許第6,090,552号及び欧州特許第0912597号に記載されているようなものであることが最も好ましく、これらの開示は、本明細書にその全体が組み込まれている。これらのプライマーは、アンプリフルオル(登録商標)プライマーとして商業的に知られている。したがって、特に好ましい一実施形態において、目的遺伝子及び/又は参照遺伝子の一部を増幅するために使用される、ステムループ構造を含むプライマーは、5’から3’の順に、以下の連続した配列:
(a)約6〜30ヌクレオチドの間の第1のヌクレオチド配列であって、第1のヌクレオチド配列中のヌクレオチドが、分子エネルギー移動対のドナー部分及びアクセプター部分から選択される第1の部分で標識され、ドナー部分が、励起されると1種又は複数の特定の波長で蛍光を放出し、アクセプター部分が、ドナー部分によって放出される蛍光を吸収及び/又は消光する、第1のヌクレオチド配列、
(b)約3〜20の間のヌクレオチドを含む、該ヌクレオチドから本質的になる、又は該ヌクレオチドからなる第2の一本鎖ヌクレオチド配列、
(c)約6〜30の間のヌクレオチドを含む、該ヌクレオチドから本質的になる、又は該ヌクレオチドからなる第3のヌクレオチド配列であって、第3のヌクレオチド配列中のヌクレオチドが、ドナー部分及びアクセプター部分から選択される第2の部分で標識され、第2の部分が、前記群のうち第1のヌクレオチド配列を標識していない方であり、第3のヌクレオチド配列が第1のヌクレオチド配列と逆の順に相補的であることにより、第1のヌクレオチド配列と第3のヌクレオチド配列との二重鎖を形成することができ、それにより、第1の部分と第2の部分とが近接していることによって、ドナー部分が励起されて蛍光を放出すると、アクセプター部分がドナー部分によって放出される蛍光を吸収して消光する、第3のヌクレオチド配列、及び
(d)プライマーの3’末端に、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、62及び63のうちのいずれかの配列を3’末端に含む(したがって、核酸ポリメラーゼによる、遺伝子のメチル化されている又はメチル化されていないDNAの部分を含む核酸鎖と相補的なヌクレオチド配列の合成を開始することができる)、約8〜40の間のヌクレオチドを含む、該ヌクレオチドから本質的になる、又は該ヌクレオチドからなる第4の一本鎖ヌクレオチド配列、と
を含む、該配列から本質的になる、又は該配列からなり、二重鎖が形成されない場合、第1の部分と第2の部分とが、第1の部分と第2の部分との間の分子エネルギー移動を妨げる距離で分離される。
【0112】
特に好ましい一実施形態において、ドナー部分とアクセプター部分とは、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)対を形成する。分子エネルギー移動(MET)は、それによってエネルギーがドナー分子とアクセプター分子との間で無放射的に受け渡されるプロセスである。蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)は、METの形態である。FRETは特定の化合物の特性から生じる;該化合物は、特定の波長の光への曝露によって励起されると、別の波長で光を放出する(すなわち、蛍光を発する)。こうした化合物は、フルオロフォアと呼ばれる。FRETにおいて、エネルギーは、フルオロフォアであるドナー分子と、アクセプター分子との間で長距離(10〜100Å)に渡って無放射的に受け渡される。ドナーは光子を吸収し、このエネルギーをアクセプターに無放射的に移動させる(Forster、1949、Z.Naturforsch.A4:321〜327;Clegg、1992、Methods Enzymol.211:353〜388)。励起スペクトルと放出スペクトルとが重複している2種類のフルオロフォアが近くにある場合には、1種のフルオロフォアの励起は、このフルオロフォアが、第2のフルオロフォアによって吸収されてそれを刺激するような波長で光を放出し、次いで、第2のフルオロフォアが蛍光を発することになる。換言すれば、第1の(ドナー)フルオロフォアの励起状態のエネルギーは、近くにある第2の(アクセプター)フルオロフォアとの共鳴誘導性双極子−双極子相互作用によって移動する。結果として、ドナー分子の寿命が減少してその蛍光は消光されるが、アクセプター分子の蛍光強度は増強されて偏光が解消される。ドナーの励起状態のエネルギーがフルオロフォアではないアクセプターに移動する場合には、その後アクセプターによる蛍光の放出なく、ドナーの蛍光は消光される。この場合、アクセプターは消光剤として機能する。本発明では、消光剤及びアクセプターの双方を使用することができる。蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)に関与し得る分子対は、FRET対と呼ばれる。エネルギー移動が起こるためには、ドナー分子とアクセプター分子とが、典型的には、近い位置になければならない(最長で70〜100Å)(Clegg、1992、Methods Enzymol.211:353〜388;Selvin、1995、Methods Enzymol.246:300〜334)。エネルギー移動の効率は、ドナー分子とアクセプター分子との距離と共に急速に低下する。Forster(1949、Z.Naturforsch.A4:321〜327)によれば、エネルギー移動の効率はD×10−6に比例し、ここで、Dはドナーとアクセプターとの間の距離である。事実上、これは、FRETが約70Åまでの距離で最も効率よく起こり得ることを意味する。FRETに一般に使用される分子については、別の節で述べている。フルオロフォアがドナーであるか又はアクセプターであるかは、その励起スペクトル及び放出スペクトル、並びに共に対形成したフルオロフォアによって決まる。例えば、FAMは488nmの波長を有する光によって最も効率よく励起され、500〜650nmのスペクトル、及び525nmの発光極大を有する光を放出する。FAMは、JOE、TAMRA、及びROX(これらは全て514nmの励起極大を有する)と共に使用するのに好適なドナーフルオロフォアである。
【0113】
特に好ましい一実施形態において、ドナー部分はフルオレセイン又はその誘導体であり、アクセプター部分はDABCYLである。好ましくは、フルオレセイン誘導体は、6−カルボキシフルオレセインを含む、6−カルボキシフルオレセインから本質的になる、又は6−カルボキシフルオレセインからなる。
【0114】
MET標識を、プライマー中の任意の好適な位置に付加することができる。特に好ましい一実施形態において、ドナー及びアクセプター部分は、ステムループが完全である間には、これらの部分が互いに物理的に近くにあるように、ステムループ構造内の相補的なヌクレオチド上に配置される。しかし、本発明のプライマーは、増幅がないときにはそれぞれのドナーとアクセプターとの間でのMET/FRETを可能にし、プライマーが増幅産物中に組み込まれるとドナーとアクセプターとの分離を可能にするのに有効な任意の位置に該部分で標識することができる。
【0115】
ステムループ又はヘアピン構造の配列は、標的遺伝子(目的遺伝子又は参照遺伝子)に結合しないため、標的遺伝子のヌクレオチド配列に依存しない。したがって、目的配列のリアルタイム検出を容易にする配列特異的プライマーとその後組み合わせることができる「ユニバーサル」なステムループ配列又はヘアピン配列を設計することもできる。配列の主な必要条件は、その配列が、増幅のないときに安定な(したがって、効率的な消光を確実にする)ステムループ/ヘアピン構造を形成することである。したがって、プライマーの配列特異的部分は、鋳型鎖に結合し、相補鎖の合成を導く。したがって、プライマーは、1回目の増幅で増幅産物の一部になる。相補鎖が合成されるときには、ステムループ/ヘアピン構造を通って増幅が起こる。これにより、フルオロフォア分子と消光剤分子とが分離され、したがって、増幅が進行するにつれて蛍光の発生が誘導される。
【0116】
ステムループ構造は、増幅に使用されるプライマーの配列特異的部分の5’末端に見出されることが好ましい。
【0117】
上記のように、この検出配列は、一般的には、FRET対で標識される。好ましくは、FRET対のうち一方の部分は、配列の5’末端の方向に、5’末端の近く、又は5’末端に見出され、もう一方の部分は、配列の3’末端の方向に、3’末端の近く、又は3’末端に見出され、これにより、ステムループ又はヘアピン構造が完全なままであるときには、2つの部分の間でFRETが有効である。
【0118】
実験の節に詳述するように、本発明の方法の感度及び特異性を確実にするために、プライマーを注意深く選択しなければならない。したがって、遺伝子のメチル化状態を検出するのに使用される特に好ましいプライマーとしては、以下に記載のヌクレオチド配列を含む、該配列から本質的になる、又は該配列からなるプライマーが挙げられる:
5’― AGCGATGCGTTCGAGCATCGCUGGAAGGTGGGGGAGAGTG ―3’ (配列番号 1)
及び/または、
5’ ― AAAACAACACAACCCCAAAAA ― 3’ (配列番号 2)
及び/または、
5’ ― AGCGATGCGTTCGAGCATCGCUAAAACAACACAACCCCAAAAA ― 3’ (配列番号 3)
及び/または、
5’ ― GGAAGGTGGGGGAGAGTG ― 3’ (配列番号 4)
及び/または、
5’― AGCGATGCGTTCGAGCATCGCUGGGTTGGAGAGTTGTTTGTTTG ― 3' (配列番号 5)
及び/または、
5 '― CACATCTCCCCCACCTCCT ― 3' (配列番号 6)
及び/または、
5’ ― AGCGATGCGTTCGAGCATCGCUCACATCTCCCCCACCTCCT ― 3’ (配列番号 7)
及び/または、
5' ― GGGTTGGAGAGTTGTTTGTTTG ― 3'(配列番号 8)
及び/または、
5' ― AGCGATGCGTTCGAGCATCGCUTGGTGGTGTTGTTTTTGTGT ― 3'(配列番号 9)
及び/または、
5' ― CTTAACCCTATTATCTCCATCTC ― 3'(配列番号 10)
及び/または、
5’ ― AGCGATGCGTTCGAGCATCGCUCTTAACCCTATTATCTCCATCTC ― 3’ (配列番号 11)
及び/または、
5’ ― TGGTGGTGTTGTTTTTGTGT ― 3’(配列番号 12)
及び/または、
5’ ― AGCGATGCGTTCGAGCATCGCUGGTGGTTTTGAAGGATTTTATTG ― 3’ (配列番号 13)
及び/または、
5' ― ACCCAACACCTTCCCTATCCT ― 3' (配列番号 14)
及び/または、
5’ ― AGCGATGCGTTCGAGCATCGCUACCCAACACCTTCCCTATCCT ― 3’(配列番号 15)
及び/または、
5’ ― GGTGGTTTTGAAGGATTTTATTG ― 3’ (配列番号 16)
及び/または、
5' ― AGCGATGCGTTCGAGCATCGCUTTTTGTTTTGGGATGTTGTATTTT ― 3' (配列番号 17)
及び/または、
5’ ― CCTCATCCACCCAACACCTT ― 3’(配列番号 18)
及び/または、
5’ ― AGCGATGCGTTCGAGCATCGCUCCTCATCCACCCAACACCTT ― 3’(配列番号 19)
及び/または、
5’ ― TTTTGTTTTGGGATGTTGTATTTT ― 3’(配列番号 20)
及び/または、
5’ ― AGCGATGCGTTCGAGCATCGCUTGGGTTTGTAGTGTTTTAGTATTGTTT ― 3’(配列番号 21)
及び/または、
5’ ― TCCACCCTACTTTCCCTACATTC ― 3’(配列番号 22)
及び/または、
5’ ― AGCGATGCGTTCGAGCATCGCUTCCACCCTACTTTCCCTACATTC ― 3’(配列番号 23)
及び/または、
5’ ― TGGGTTTGTAGTGTTTTAGTATTGTTT ― 3’(配列番号 24)
及び/または、
5’ ― AGCGATGCGTTCGAGCATCGCUTTGTTTTGGGATATTTTATTTGTTTT ― 3’(配列番号 25)
及び/または、
5’ ― AAAAACTCCACCCTACTTTCC ― 3’(配列番号 26)
及び/または、
5’ ― AGCGATGCGTTCGAGCATCGCUAAAAACTCCACCCTACTTTCC ― 3’(配列番号 27)
及び/または、
5’ ― TTGTTTTGGGATATTTTATTTGTTTT ― 3’(配列番号 28)
及び/または、
5’ ― AGCGATGCGTTCGAGCATCGCUGAGGGGAGGGGTGTGAATGTG ― 3’(配列番号 29)
及び/または、
5’ ― CATTCCTCCCTACTCCCAAAAA ― 3’(配列番号 30)
及び/または、
5’ ― AGCGATGCGTTCGAGCATCGCUCATTCCTCCCTACTCCCAAAAA ― 3’(配列番号 31)
及び/または、
5’ ― GAGGGGAGGGGTGTGAATGTG ― 3’(配列番号 32)
及び/または、
5’ ― AGCGATGCGTTCGAGCATCGCUTGGTGGATGTTTTGGGATTT ― 3’(配列番号 33)
及び/または、
5’ ― CAACATTTCTACCTCTACTCCCACCTT ― 3’(配列番号 34)
及び/または、
5’ ― AGCGATGCGTTCGAGCATCGCUCAACATTTCTACCTCTACTCCCACCTT ― 3’(配列番号 35)
及び/または、
5’ ― TGGTGGATGTTTTGGGATTT ― 3’(配列番号 36)
及び/または、
5’ ― AGCGATGCGTTCGAGCATCGCUGTTTTGGAAGGATTGAGAAATGG ― 3’(配列番号 37)
及び/または、
5’ ― CACCCTAACCACTACATAAAACAAA ― 3’(配列番号 38)
及び/または、
5’ ― AGCGATGCGTTCGAGCATCGCUCACCCTAACCACTACATAAAACAAA ― 3’(配列番号 39)
及び/または、
5’ ― GTTTTGGAAGGATTGAGAAATGG ― 3’(配列番号 40)
及び/または、
5’ ― AGCGATGCGTTCGAGCATCGCUTAGGGAGTATATAGGTTGGGGAAGTT ― 3’(配列番号 41)
及び/または、
5’ ― AACACACAATAACAAACACAAATTCAC ― 3’(配列番号 42)
及び/または、
5’ ―AGGGAGTATATAGGTTGGGGAAGTT ― 3’(配列番号 44)
及び/または、
5 '― AGCGATGCGTTCGAGCATCGCUTGGAATTTAGGGTAGTATTGT― 3' (配列番号 61)
及び/または、
5’ ― CCCTCCACCAACATCAAA ― 3’ (配列番号 62)
及び/または、
5’― TGGAATTTAGGGTAGTATTGT ― 3' (配列番号 63)。
【0119】
配列番号4及び8は、亜硫酸水素塩で変換されたメチル化されていないCTAG1Bの配列と相補的なフォワードプライマー(センスプライマー)配列である。
【0120】
配列番号12、16及び20は、亜硫酸水素塩で変換されたメチル化されていないCTAG2の配列と相補的なフォワードプライマー(センスプライマー)配列である。
【0121】
配列番号24、28、32、36及び40は、亜硫酸水素塩で変換されたメチル化されていないPRAMEの配列と相補的なフォワードプライマー(センスプライマー)配列である。
【0122】
配列番号43は、ヘアピン構造の配列である。
【0123】
配列番号1、5、9、13、17、21、25、29、33、及び37は、ヘアピン構造の配列と、それぞれ配列番号4、8、12、16、20、24、28、32、36及び40の配列とを含む。
【0124】
配列番号2及び6は、亜硫酸水素塩で変換されたメチル化されていないCTAG1Bプロモーターの配列と相補的なリバースプライマー(アンチセンスプライマー)配列である。
【0125】
配列番号10、14及び18は、亜硫酸水素塩で変換されたメチル化されていないCTAG2プロモーターの配列と相補的なリバースプライマー配列である。
【0126】
配列番号22、26、30、34及び38は、亜硫酸水素塩で変換されたメチル化されていないPRAMEプロモーターの配列と相補的なリバースプライマー配列である。
【0127】
配列番号3、7、11、15、19、23、27、31、35及び39は、ヘアピン構造の配列と、配列番号2、6、10、14、18、22、26、30、34及び38の配列とを含む。
【0128】
配列番号42及び44は、亜硫酸水素塩で変換されたメチル化されているベータアクチン遺伝子の配列と相補的なフォワードプライマー配列及びリバースプライマー配列である;配列番号41は、ヘアピン構造の配列と配列番号44の配列とを含む。
【0129】
配列番号63は、亜硫酸水素塩で変換されたメチル化されていないMageA3の配列と相補的なフォワードプライマー(センスプライマー)配列である。
【0130】
配列番号61は、ヘアピン構造の配列と配列番号63の配列とを含む。
【0131】
配列番号62は、亜硫酸水素塩で変換されたメチル化されていないMageA3の配列と相補的なリバースプライマー配列である。
【0132】
実験の節に詳述しているように、CTAG2の発現及びメチル化のレベルは、配列番号9〜12及び配列番号21〜20のうちいずれのプライマーを組み込んだアッセイで最良の一致を示した。実験の節に詳述しているように、PRAMEの発現及びメチル化のレベルは、配列番号21〜40のうちいずれのプライマーを組み込んだアッセイで最良の一致を示した。
【0133】
したがって、別の実施形態において、CTAG2の領域に結合する好ましいプライマーは、配列番号9〜12及び配列番号21〜20のうちのいずれかのヌクレオチド配列を含む、該配列から本質的になる、又は該配列からなる。PRAMEの領域に結合する好ましいプライマーは、配列番号21〜40のうちのいずれかのヌクレオチド配列を含む、該配列から本質的になる、又は該配列からなる。
【0134】
別の低メチル化アッセイで生成された増幅産物は、以下の配列を有していた:
CTAG1B_1 (129 bp)
GGAAGGTGGGGGAGAGTGGTTTGGATTTTAGTATTTTTTTTTTTTTTAGGGTTAGGTTTTGTTTGGTTATTTTTTGTTGTTATAGGTGTGTTTGGTATAGATATTTAGTTTTTGGGGTTGTGTTGTTTT (配列番号 45)
CTAG1B_2 (130 bp)
GGGTTGGAGAGTTGTTTGTTTGAGTTGTATTTTGTTTTGTTTTGTTTTGTTTTGATAGTTTTGGTGGTGAGGTGGGGGTTGGGAGATGGGGAGGGTAGGGTTAGGTGGGGGAGGAGGTGGGGGAGATG(配列番号 46)
CTAG2 (150 bp)
TGGTGGTGTTGTTTTTGTGTAGGATGGAAGGTGTTTTTGTGGGGTTAGGAGGTTGGATAGTTGTTTGTTTTAGTTGTATTTTGTTTTGTTTTGTTTTAGGAGGTTTTGGTGGTGAGGTGGGGGTTGTGAGATGGAGATAATAGGGTTAAG (配列番号 47)
CTAG2_2 (80 bp)
GGTGGTTTTGAAGGATTTTATTGTGTTTGGTAATTTATTGTTTATGTTAGTTTGGGATTAGGATAGGGAAGGTGTTGGGT(配列番号 48)
CTAG2_3 (125 bp)
TTTTGTTTTGGGATGTTGTATTTTTTTTTTGATTAGGGGTGGTTTTGAAGGATTTTATTGTGTTTGGTAATTTATTGTTTATGTTAGTTTGGGATTAGGATAGGGAAGGTGTTGGGTGGATGAGG (配列番号 49)
PRAME_1 (129 bp)
TGGGTTTGTAGTGTTTTAGTATTGTTTTGGGATATTTTATTTGTTTTTTAGGTGTGATTTGTTAATAGGTTTGTATTGGTGATAAAAGGAGTAGTTTTGAATGTAGGGAAAGTAGGGTGGAGTTTTTTG (配列番号 50)
PRAME_2 (106 bp)
TTGTTTTGGGATATTTTATTTGTTTTTTAGGTGTGATTTGTTAATAGGTTTGTATTGGTGATAAAAGGAGTAGTTTTGAATGTAGGGAAAGTAGGGTGGAGTTTTT (配列番号 51)
PRAME_3 (120 bp)
GAGGGGAGGGGTGTGAATGTGTGGATTTTTGTGGAGAGTGGAAATATGGGGAGTTGAGGGGAGTATGTGTGGGTTTTAGAAAGTTTTGGGAAATTGATTTTTGGGAGTAGGGAGGAATG (配列番号 52)
PRAME_4 (59 bp)
AGTGTTGGAGGTTTTGAGGTTAGTTTAAGTTGTTTTAAAATGGAATGAAGGTGTTTGTG (配列番号 53)
PRAME_6 (50 bp)
TGGTGGATGTTTTGGGATTTGGTTTTTTTGAAGGTGTTGGGGGTTGGGGATGGTTTAGGTAGTGGTGTAGGTGTTTTAGGAAGGTGGGAGTAGAGGTAGAAATGTTG (配列番号 54)
PRAME_7 (98 bp)
GTTTTGGAAGGATTGAGAAATGGGGATTGGTTAGATTAGGTTGTTTAGTTTTTTGGTTTTTATTGTTGTTTTTTTTGTTTTATGTAGTGGTTAGGGTG (配列番号 55)
【0135】
これらの配列は、それぞれの遺伝子のCpGリッチアイランド中に位置する。したがって、本発明はさらに、亜硫酸水素塩で変換された、配列番号45、46、47、48、49、50、51、52、53、54又は55として記載のヌクレオチド配列の一部からなる、又はそれと相補的な、オリゴヌクレオチド、プライマー及び/又はプローブに関する。
【0136】
亜硫酸水素塩で変換されたCTAG1B、CTAG2及び/又はPRAME遺伝子の配列の一部からなる、又はそれと相補的な、プライマーの部分は、30bp未満であることが好ましい;これは、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18又は17bpの長さであることが好ましい。したがって、こうした好ましいプライマーのCTAG1B、CTAG2及び/又はPRAMEに特異的な部分は、好ましくは、28〜16bpの間、又は27〜17bpの間の長さである。したがって、プライマーは、亜硫酸水素塩で変換された配列からなる、又は該配列と相補的な、連続した27、26、25、24、23、22、21、20、19、18又は17塩基の任意の配列を含んでもよい。
【0137】
上に詳述したように、(プライマー対のうちの)プライマーのいずれか一方又は双方は、好ましくは5’末端に、ドナー及びアクセプター部分を有する好適なステムループ又はヘアピン構造で標識される、又は該構造を組み込むように合成されていてもよい。好ましい一実施形態において、プライマー(1種又は複数)のうち一方又は双方は、好ましくは5’末端に、
5’−AGCGATGCGTTCGAGCATCGCU−3’(配列番号43)
として記載のヌクレオチド配列を含む、該配列から本質的になる、又は該配列からなるステムループ構造で標識される、又は該構造を組み込むように合成されていてもよい。
【0138】
この検出配列は、一般的には、FRET対で標識される。好ましくは、FRET対のうち一方の部分は、配列の5’末端の方向に、5’末端の近く、又は5’末端に見出され、もう一方の部分は、配列の3’末端の方向に、3’末端の近く、又は3’末端に見出され、これにより、ステムループ又はヘアピン構造が完全なままであるときには、2つの部分の間でFRETが有効である。特に好ましい一実施形態において、ステムループ又はヘアピン構造、特に、配列番号1として記載の配列を含む、該配列から本質的になる、又は該配列からなる核酸は、5’末端にFAMで標識され、3’末端にDABCYLで標識される。他の好ましい組合せについては本明細書に述べており、その説明は変準用される。
【0139】
これらのプライマーは、本発明の別々の態様を形成する。これらのプライマーのさらなる特徴については、以下の詳細な説明(実験部分)にまとめている。オリゴヌクレオチド、プライマー及びプローブ(配列)の異型を本発明において利用してもよいことに留意されたい。特に、追加のフランキング配列を、必要に応じて、例えば、結合特異性又はステムループ形成を増進させるために、付加することもできる。異型配列は、配列番号:1〜42並びに配列番号:44、60、61及び62に記載のプライマー及び/又はプローブのヌクレオチド配列と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%のヌクレオチド配列同一性を有することが好ましい。プライマー及びヘアピン構造は、必要に応じて合成ヌクレオチド類似体を組み込んでいてもよく、又は例えば、DNA、RNA若しくはPNAに基づくもの、又はこれらの混合物であってもよい。同様に、別な蛍光ドナー及びアクセプター部分/FRET対を、必要に応じて利用することもできる。本発明の方法におけるプライマー及び/又はステムループ/ヘアピン構造としての機能が損なわれないのであれば、プライマーは、蛍光のドナー及びアクセプター部分で標識されることに加えて、修飾されたオリゴヌクレオチド並びに他の付加基及び標識を含んでもよい。
【0140】
それぞれのプライマー対について、少なくとも1つのプライマーは分子エネルギー移動対のドナー及びアクセプター部分で標識される。分子エネルギー移動対のドナー及びアクセプター部分は、増幅のないときには、アクセプター部分がドナー部分によって放出される蛍光を(励起と同時に)消光し、増幅中には、ステムループ構造が破壊され、ドナー部分とアクセプター部分とが、遺伝子の遺伝子コピー数の指標を提供するためにリアルタイムで検出される検出可能な蛍光シグナルを発生するように十分に分離されるように、配置された。好ましくは、ドナー部分及びアクセプター部分は、FRET対である。一実施形態において、ドナー部分及びアクセプター部分は、5−カルボキシフルオレセイン又は6−カルボキシフルオレセイン(FAM)、2’7’−ジメトキシ−4’5’−ジクロロ−6−カルボキシフルオレセイン(JOE)、ローダミン、6−カルボキシローダミン(R6G)、N,N,N’−テトラメチル−6−カルボキシローダミン(TAMRA)、6−カルボキシ−X−ローダミン(ROX)、5−(2’−アミノエチル)アミノナフタレン−1−スルホン酸(EDANS)、アントラニルアミド、クマリン、テルビウムキレート誘導体、マラカイトグリーン、リアクティブレッド4、DABCYL、テトラメチルローダミン、ピレンブチレート、エオシンニトロチロシン、エチジウム、及びテキサスレッドから選択される。さらなる一実施形態において、ドナー部分は、フルオレセイン、5−カルボキシフルオレセイン又は6−カルボキシフルオレセイン(FAM)、ローダミン、5−(2’−アミノエチル)アミノナフタレン−1−スルホン酸(EDANS)、アントラニルアミド、クマリン、テルビウムキレート誘導体、マラカイトグリーン、及びリアクティブレッド4から選択され、アクセプター部分は、DABCYL、ローダミン、テトラメチルローダミン、ピレンブチレート、エオシンニトロチロシン、エチジウム、及びテキサスレッドから選択される。好ましくは、ドナー部分はフルオレセイン又はその誘導体であり、アクセプター部分はDABCYLであり、最も好ましくは、ドナー部分は6−カルボキシフルオレセインである。特に多重化の場合における、他の好ましい組合せについては本明細書に述べており、本発明のこうした態様ではこれらの組合せも想定される。
【0141】
また、本発明は、本発明の方法を行うために使用することができるキットも提供する。キットは、本明細書に記載の本発明の多様な方法(及び使用)に関連して言及した好ましい特徴のうちのいずれかを含んでもよい。したがって、本発明は、少なくとも1種の本発明のプライマー対を含む、DNA含有試料中のメチル化されている又はメチル化されていない目的遺伝子の存在及び/又は量を検出するためのキットを提供する。好ましくは、キットは、メチル化されていない及び/又はメチル化されているCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子の存在及び/又は量を検出するための本発明のプライマー対、並びに参照遺伝子、特に、ベータアクチンの存在及び/又は量を検出するためのプライマー対を含む。したがって、キットは、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、44、60、61又は62として記載のヌクレオチド配列を含む、該配列から本質的になる、又は該配列からなるプライマーを含むプライマー対を含んでもよい。好ましくは、上述のように(その説明はここで準用される)、それぞれのプライマー対のうちの少なくとも1つのプライマーは、リアルタイムでの検出を容易にするために、適切なステムループ又はヘアピン構造で標識される。最も好ましくは、それぞれのプライマー対のうちの少なくとも一つのプライマーは、配列番号43として記載のヌクレオチド配列を含む、該配列から本質的になる、又は該配列からなるステムループ又はヘアピン構造を含む。ステムループ構造は、本明細書で述べているように(その説明はここで準用される)、適切なドナー及びアクセプター部分で標識される。
【0142】
上述のように、本発明のプライマーのさらなる特徴については、以下の詳細な説明(実験部分)にまとめている。これらの配列の異型を、本発明において本明細書で述べているように利用することができる。本明細書で述べているように、別な蛍光ドナー及びアクセプター部分/FRET対を必要に応じて使用することもできる。
【0143】
一実施形態において、本発明のキットは、本明細書で述べているように(保護されたメチル化されているシトシン残基に優先して)、メチル化されていないシトシンを修飾する試薬をさらに含む。こうした試薬は、メチル化されていないシトシン残基からメチル化されているシトシン残基を識別するのに有用である。好ましい一実施形態において、試薬は、亜硫酸水素塩、好ましくは、亜硫酸水素ナトリウムを含む。この試薬は、メチル化されていないシトシン残基をウラシルに変換することができるが、メチル化されているシトシンは変換されないままである。残基におけるこの相違は、例えばシトシンとウラシルとを識別するプライマー(シトシンはグアニンと対になるが、ウラシルはアデニンと対になる)を使用するPCRなどのような下流の過程において、メチル化されているとメチル化されていない核酸とを識別するのに利用することができる。
【0144】
本発明の方法に関して本明細書に述べているように、該方法の質的な対照として機能する好適な対照を利用することができる。したがって、一実施形態では、本発明のキットはさらに、メチル化状態の知られている1つ又は複数の対照核酸分子を含む、該分子から本質的になる、又は該分子からなる。これらの(1種又は複数の)対照核酸分子は、メチル化されていることが知られている、若しくはメチル化されるように処理された核酸、及び/又はメチル化されていないことが知られている、若しくはメチル化されないように処理された核酸分子の双方を含んでもよい。一般的にはメチル化されていないが、メチル化されるように処理されることができる好適な内部参照遺伝子の一例は、ベータアクチンである。
【0145】
本発明のキットは、本発明の特許請求された方法を行うのに好適な緩衝液及び他の試薬をさらに含んでいてもよい。したがって、本発明の方法に関して提供している説明は、本明細書では変更すべきところは変更して適用され、簡潔性のために繰り返さないものとする。一実施形態において、本発明のキットは、さらに、核酸増幅緩衝液を含む、核酸増幅緩衝液から本質的になる、又は核酸増幅緩衝液からなる。
【0146】
該キットは、さらに、核酸増幅を触媒する酵素を含む、該酵素から本質的になる、又は該酵素からなるものでもよい。したがって、該キットは、さらに、核酸増幅用の好適なポリメラーゼを含む、該ポリメラーゼから本質的になる、又は該ポリメラーゼからなるものでもよい。例としては、例えばTaq、Pfu、Ventのような、ファミリーA及びファミリーBの双方の型のポリメラーゼに由来するものが挙げられる。
【0147】
キットの様々な構成要素は、個別の仕切りの中に別々に包装されていてもよく、又は例えば、必要に応じて、一緒に収納されていてもよい。
【0148】
キットは、例えば、別の用紙に印刷するか又はキットの包装内に組み込まれていてもよい、使用のための好適な説明書も含んでいてもよい。説明書は、適切なリアルタイム増幅装置又はエンドポイント検出装置、そのうちのいくつかは市販されている、を用いた本発明のキットを使用するのを容易にし得る。
【0149】
本発明のリアルタイム法の最後のステップは、リアルタイム検出の結果を、メチル化されている又はメチル化されていない目的遺伝子、及び任意選択で参照遺伝子(含まれる場合)、についての標準曲線に対して定量することを含む。標準曲線は、1組の標準を使用して作製することができる。それぞれの標準は、必要に応じて、既知のコピー数、又は濃度の目的遺伝子及び/又は参照遺伝子を含む。典型的には、蛍光のベースライン値は、バックグラウンドの蛍光に対して設定されることになる。例えば、一実施形態において、シーケンスディテクションシステム(Sequence Detection System)(SDS)ソフトウェアを使用する。このソフトウェアは、増幅産物を検出する前に、3〜15サイクルの増幅反応のデフォルトベースラインの範囲を設定する。次いで、このベースラインより上の統計学的に有意な値で、蛍光の閾値を定める。典型的には、この閾値は、ベースラインの蛍光よりも10標準偏差上に設定される。リアルタイム増幅反応を行うための装置と共に、適切なソフトウェアが提供される。該ソフトウェアは、反応のベースライン値及び閾値を自動的に算出する。次いで、各標準について、サイクル閾値(Ct)を決定することができる。これは、閾値の増幅レベルを達成するのに必要とされるサイクル数である。したがって、反応混合物中の遺伝子標準の初期濃度が高いほど、特定収量の増幅産物を得るのに必要とされるサイクル数は少なくなる。1組の標準DNAの既知の初期コピー数のlog10に対するCtのプロットは、直線になる。これが標準曲線である。したがって、DNA含有試料中のコピー数を決定するために、目的遺伝子及び参照遺伝子の増幅についてのCt値を、利用する場合には、それぞれの標準曲線に対してそれぞれ補間することができる。したがって、該方法の結果として、目的遺伝子及び参照遺伝子のそれぞれの遺伝子コピー数が得られる。これらの結果は、メチル化されている又はメチル化されていない目的遺伝子の遺伝子コピー数を参照遺伝子の遺伝子コピー数で除算することによって標準化することができる。好ましい一実施形態では、アプライドバイオシステムズ(Applied Biosystems)7900HT高速リアルタイムPCRシステムを使用して、本発明の方法を行う。好ましくは、個々の検出器用のベースライン値及び閾値を自動的に生成するためのオートシーティー(Auto CT)アルゴリズムのような好適なアルゴリズムを含むことが好ましい、SDSソフトウェアを利用する。
【0150】
本発明の方法は、任意の好適な増幅技術と共に利用することができるが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して増幅を行うことが最も好ましい。したがって、PCRが好ましい増幅法であるが、ネステッドPCRなどの基本技術上の変形を含めるために、同等のものを本発明の範囲内に含めることもできる。例としては、限定されるものではないが、NASBA、3SR、TMA及び三重増幅のような等温増幅技術などが挙げられ、これらは全て当技術分野でよく知られており、好適な試薬が市販されている。他の好適な増幅法としては、限定されるものではないが、リガーゼ連鎖反応(LCR)(Barringerら、1990)、MLPA、標的ポリヌクレオチド配列の選択的増幅(米国特許第6,410,276号)、コンセンサス配列プライムポリメラーゼ連鎖反応(米国特許第4,437,975号)、インベーダー技術(Third Wave Technologies、Madison、WI)、鎖置換技術、任意プライムポリメラーゼ連鎖反応(国際公開第90/06995号パンフレット)及びニック置換増幅(国際公開第2004/067726号パンフレット)などが挙げられる。
【0151】
本発明のリアルタイムPCR法は、一般的には、プライマーをアニーリングさせるために温度を低下させるステップ、プライマー伸長のために温度を上昇させるステップ、変性のために温度を上昇させるステップ及びデータ収集のために温度を低下させるステップを含む。特定の一実施形態において、データ収集のステップは、約56℃〜63℃、最も好ましくは約57℃又は62℃の間の温度で行われるが、実施例の節で述べているように、この温度で最も感度の高い特異的な結果が得られることが示されているからである。
【0152】
特定の一実施形態において、ポリメラーゼ連鎖反応の温度プロファイリングは、以下のサイクルの40〜50回の間の反復、好ましくは約45回の反復を含む:
(a)約50℃で約2分間
(b)約95℃で約10分間
(c)約95℃で約15秒間
(d)約57℃で約1分間
本発明の方法において特異的且つ高感度の結果をもたらすことが示された好ましい反応スキームは、段階1:50℃で2分間、段階2:95℃で10分間、段階3:95℃で15秒間、57℃で30秒間、57℃で30秒間(=プラトーデータ収集)を45回反復するものである。
【0153】
本発明の方法は、同一の反応において2種類以上の目的遺伝子を検出するために使用することができる。特定の数セットのプライマーの使用を通して、同一の反応混合物中で数種類の核酸標的の増幅を行うことができる。これは、「多重化」と呼ばれることもある。好ましい一実施形態において、各標的用の一方又は双方のプライマーは、FRET対を形成する蛍光部分と消光部分とで標識されたヘアピンプライマーであってもよい。いくつかの核酸標的の増幅には、異なる発光波長を有する、異なる蛍光ドナー及び/又はアクセプター部分が、各プライマーセットを標識するために使用される必要がある。増幅後の検出及び分析の間に、反応混合物は、反応に使用する各プライマーセットに特有の、それぞれの特定の波長において、照射され、読み取れる。したがって、混合物中のどの特定の標的DNAが増幅されて標識されたかを決定することができる。特定の一実施形態では、異なるそれぞれの標的配列の増幅用の2種類以上のプライマー対を使用する。したがって、一区画のメチル化されている/メチル化されていない目的遺伝子の存在及び/又は量を、単一のDNA含有試料中で検出することができる。
【0154】
多重化は、同一反応物中で目的遺伝子及び参照遺伝子の双方を検出する場合にも利用することができる。ここでも、識別可能な適切なドナー部分及び/又はアクセプター部分で標識されたプライマーにより、目的遺伝子及び参照遺伝子の増幅により生じたシグナルを、それぞれ識別することができる。
【0155】
一実施形態では、識別可能な発光波長極大をそれぞれ有する好適なフルオロフォアドナーと共に、ユニバーサル消光剤が利用される。特に好ましい消光剤は、DABCYLである。多重化を可能にするために、消光剤としてのDABCYLと共に、以下のフルオロフォアをそれぞれ利用することもできる:クマリン(発光極大475nm)、EDANS(491nm)、フルオレセイン(515nm)、ルシファーイエロー(523nm)、BODIPY(525nm)、エオシン(543nm)、テトラメチルローダミン(575nm)及びテキサスレッド(615nm)(Tyagiら、Nature Biotechnology、第16巻、1998年1月;49〜53)。他の好ましい組合せについては、本明細書に述べている。
【0156】
一代替実施形態において、直接比較可能な結果を得るために、DNA含有試料を分割して、好適な一部の該試料について本発明の方法を行うことができる。したがって、目的遺伝子及び参照遺伝子の双方を検出する場合に、試料を一方の試料部分で目的遺伝子の増幅をリアルタイムで検出し、他方の試料部分で参照遺伝子の増幅をリアルタイムで検出することを可能にするために、2つに分割してもよい。必要に応じて、試料をさらに分割して、好適な対照反応を行うこともできる。このスキームの利点は、各プライマー対を標識するためにユニバーサルFRET対を使用することができ、様々な波長で発光を検出する必要性がなくなることである。しかし、この方法は、最初に試料を分割できるような好適な試料が得られるに依存する。任意の好適な反応量を用いることができるが、特定の一実施形態では、増幅ステップのための全反応量は約10〜40μlの間であり、約10〜30μlの間がより好ましく、約12μlが最も好ましい。
【0157】
一態様において、本発明のオリゴヌクレオチド、プライマー若しくはプローブ、プライマー対、キット又は方法は、癌又は癌素質を診断するのに使用され、ここで、該試料中のメチル化されていない(又は低メチル化された)CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3の存在は、癌又は癌素質を示している。したがって、本発明は、癌又は癌素質を診断するためのキット、方法及びプライマーを提供する。
【0158】
本明細書では、「診断」とは、疾患又は疾患の前段階のスクリーニング、疾患又は疾患の前段階の特定、疾患の病期及び状態及び進行のモニタリング、治療後の疾患の再発の検査並びに特定の治療の成功のモニタリングを含むと定義する。その試験には予測値があってもよく、これは「診断」という用語の定義の範囲内に含まれる。この試験の予測値は、癌になりやすい可能性のマーカーとして、又は癌への進行のマーカーとして使用することができる。したがって、患者における確認可能な症状として、疾患がそれ自体を現す機会がある前に、危険性のある患者を特定することができる。好ましい一実施形態において、癌は、肺癌、黒色腫又は乳癌から選択される。好ましい一実施形態において、診断のための方法及びアッセイでは、CTAG1Bマーカー用に、配列番号1、2、3、4、5、6、7、又は8のうちのいずれかのヌクレオチド配列を含む、該配列を構成する、該配列から本質的になる、又は該配列からなる少なくとも1種のオリゴヌクレオチドを使用する。診断のための方法及びアッセイでは、CTAG2マーカー用に、配列番号9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19のうちのいずれかのヌクレオチド配列を含む、該配列を構成する、該配列から本質的になる、又は該配列からなる少なくとも1種のオリゴヌクレオチドを使用する。診断のための方法及びアッセイでは、PRAMEマーカー用に、配列番号20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39又は40のうちのいずれかのヌクレオチド配列を含む、該配列を構成する、該配列から本質的になる、又は該配列からなる少なくとも1種のオリゴヌクレオチドを使用する。好ましい一実施形態において、癌又は癌素質の診断では、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39及び40のうちのいずれかのヌクレオチド配列を含む、該配列を構成する、該配列から本質的になる、又は該配列からなるオリゴヌクレオチドを使用して、遺伝子の非メチル化型を検出する。
【0159】
試験は、診断的に又は治療法と併せて行うことができる。NSCLC、乳癌又は黒色腫におけるCTAG1B、CTAG2及び/又はPRAMEの発現の予測値を確定するRT−PCRアッセイは、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3免疫治療薬を用いた治療に適する患者の選出においてその用途が見出される。本発明者は、本発明のオリゴヌクレオチド、プライマー若しくはプローブ、プライマー対又はキットを用いる、メチル化されていないCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3を検出するために設計されたアッセイが、試料をCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3の発現で確実に分類することができることを示している。低メチル化試験で得られるメチル化状態の結果は、RNA試料に使用される、CTAG1B、CTAG2及び/又はPRAMEの検出についての既存のRT−PCR試験で得られる結果と良く一致する。
【0160】
qRT−PCRが困難であることが立証されている、例えば非小肺癌からの細針生検などの試料を利用する場合には、MageA3遺伝子のメチル化状態を決定することによって検出されるタンパク質発現が有用な代替を提供する。したがって、メチル化試験は、臨床的な用途を有する。このように、本発明の全ての方法は、細針生検試料に適用することができる。特定の実施形態において、MAGE−A3遺伝子のメチル化状態が決定される。上に示した試料は、(MAGE−A3)発現を検出する代替法を実施するのに適していない。これらの試料には、少数の細胞しか含まれていないことがあり、結果として、低レベルのDNAが含まれている。例えば、こうした試料は、各アッセイにつき、約70〜150μgの間のインプットDNAの使用のみ許容することができる。実施例4に示すように、本発明の方法は、細針生検試料の使用に有効である。
【0161】
さらなる一態様において、本発明は、対象において癌の治療に成功する可能性を予測する方法であって、
(a)対象から得られたDNA含有試験試料を、DNA中のメチル化されていないシトシン残基を選択的に修飾して検出可能な修飾残基を生成するが、メチル化されているシトシン残基は修飾しない試薬で接触/処理するステップと、
(b)プライマー対のうち少なくとも1つのプライマーが、メチル化されていないDNAの配列にのみ結合するように設計された、少なくとも1種のプライマー対を使用して、試薬での処理後にメチル化されていないCTAG1B、CTAG2及び/又はPRAME各遺伝子の少なくとも一部を増幅するステップであり、プライマー対のうちの少なくとも1つのプライマーが、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、44、60及び61のうちのいずれかのヌクレオチド配列を含む、該配列から本質的になる、又は該配列からなるステップと、
(c)CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子のメチル化状態を決定するステップと
を含み、試料中のメチル化されていないCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3の存在は、メチル化されていないCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子が検出されない又はその検出レベルがより低い場合よりも、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3免疫治療薬を用いた治療に成功する可能性が高いことを示す方法を提供する。
【0162】
ステップ(c)には、増幅産物が形成されたかどうかを識別することが含まれる。この増幅産物の識別(本明細書で述べているように、任意の好適な技術を使用する)は、試料中のメチル化されていない又は低メチル化されたCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3の存在を示す。
【0163】
当然、逆の状況も適用可能であり、そのため、本発明の方法は、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3免疫治療薬に抵抗性である可能性、又は該免疫治療薬を使用した治療が成功しない可能性が高いかを決定するために、同様に利用することもできる―試料中にメチル化されていないCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3がないことは、治療に対して抵抗性である可能性、及び/又はその治療が成功しない可能性が高いことを示している。特定の実施形態では、補完的な方法において、メチル化されているDNAに特異的なプライマーを用いることもできる。
【0164】
また、本発明の方法は、患者に適した治療のコースを選択するために利用することもできる−メチル化されていないCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3の存在は、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3免疫治療薬を有益に投与することができることを示しており、これに対して、メチル化されていないCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3のないこと又はそのレベルが低いことは、免疫治療薬が禁忌であることを示している。本発明のオリゴヌクレオチド、プライマー若しくはプローブ、プライマー対、キット又は方法に関して提供している説明は、本態様に準用され、したがって、本発明のこの態様では、必要に応じて、全ての実施形態が想定される。
【0165】
「治療に成功する可能性」とは、挙げられた治療剤のうちのいずれかの1種又は複数、好ましくは、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3免疫治療薬又はCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3を含む組成物を使用する癌の治療が成功するであろう確率を意味する。
【0166】
「抵抗性」とは、特定の免疫治療薬のうちのいずれかの1種を使用して癌の治療が成功するであろう可能性の低下及び/又は治療効果を達成するためにより高い用量が必要とされるであろうこととして定義される。
【0167】
CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3の低メチル化は、特定の癌種と関連し得る。したがって、特定の一実施形態において、本発明は、本発明のオリゴヌクレオチド、プライマー若しくはプローブ、プライマー対、キット又は方法を使用して、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子のメチル化状態を検出することを含む試料において乳癌、NSCLCを含む肺癌、又は黒色腫の素質又は発生を検出する方法であって、試料におけるメチル化されていないCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3の検出は、癌、及び特に、黒色腫;非小細胞肺癌(NSCLC)を含む肺癌;又は乳癌の素質又は発生を示す方法を提供する。さらなる一実施形態において、該腫瘍又は癌は、前立腺癌、卵巣癌、乳癌、膀胱癌;食道癌を含む頭頸部癌;子宮頸癌、大腸癌、扁平上皮癌;肝癌;多発性骨髄腫及び大腸癌から選択される。
【0168】
さらなる一態様において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチド、プライマー若しくはプローブ、プライマー対、キット又は方法を使用して、試料中のCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子のメチル化状態を検出することを含むCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3陽性の腫瘍の存在を決定する方法であって、メチル化されていないCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3の存在は、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3陽性の腫瘍の存在を示す方法を提供する。
【0169】
試験は、診断的に又は治療法と併せて行うことができる。試験は、どのような治療法又は予防法を患者に用いるかを決定するために使用することもでき、治療法の有効性を調べるために使用することもできる。
【0170】
したがって、本発明は、本明細書に記載のオリゴヌクレオチド、プライマー若しくはプローブ、プライマー対、キット又は方法を使用して、患者の試料中のCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子のメチル化状態を検出することを含むCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3免疫治療薬を用いた治療に適する患者を特定及び/又は選出する方法であって、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子がメチル化されていない場合は、対象が、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3免疫治療薬を用いた治療に特定及び/又は選出される方法をさらに提供する。
【0171】
これに対して、該遺伝子がメチル化されている場合は、対象は、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3免疫治療薬を用いた治療に選出されないことが好ましい。
【0172】
関連する一態様において、本発明は、本明細書に記載のオリゴヌクレオチド、プライマー若しくはプローブ、プライマー対、キット又は方法を使用して、患者の試料中のCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子のメチル化状態を検出することを含む癌の治療に成功する可能性を予測する方法であって、遺伝子がメチル化されていない場合は、遺伝子がメチル化されている場合よりも、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3免疫治療薬を用いた治療に成功する可能性が高い方法を提供する。
【0173】
これに対して、試料中にメチル化されていないCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3がないことは、遺伝子がメチル化されていない場合よりも、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3免疫治療薬を用いた治療に対して抵抗性である可能性が高いことを示す。したがって、メチル化されているCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子の検出(又は低メチル化されている遺伝子の検出がないこと)は、免疫治療薬を用いた治療に成功する可能性が低いことを示す。
【0174】
したがって、患者のCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子のメチル化状態に基づいて、治療に患者群を選出することができる。これにより、はるかに焦点が定められ、個別化された型の医療がもたらされ、したがって、有効である可能性の最も高い薬剤で患者が治療されるであろうために成功率の改善につながる。
【0175】
関連するさらなる一態様において、本発明は、本明細書に記載のオリゴヌクレオチド、プライマー若しくはプローブ、プライマー対、キット又は方法を使用して、患者の試料中のCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子のメチル化状態を検出することを含む癌の適切な治療計画を選択する方法であって、遺伝子がメチル化されていない場合は、治療に免疫治療薬(特に、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3の免疫治療薬)が選択される方法を提供する。
【0176】
これに対して、該遺伝子がメチル化されている場合は、免疫治療薬を用いた治療は禁忌である。
【0177】
免疫治療薬の投与を含む対象において癌を治療する方法であって、本発明の方法のうちのいずれかによって、或いは本明細書に記載のオリゴヌクレオチド、プライマー若しくはプローブ、プライマー対、キット又は方法を使用することによって、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子のメチル化状態を測定することに基づいて、対象が治療に選出されている方法がさらに提供される。本明細書に記載の種々の態様の全てについて、メチル化されていないCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子の検出が、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3タンパク質のレベルの増加に相当していることが好ましい。
【0178】
本発明において有用な、CTAG1B、CTAG2、MAGE−A3及び/又はPRAME免疫治療薬としては、CTAG1B、CTAG2、MAGE−A3及び/又はPRAMEを主成分とした組成物を含む。CTAG1B、CTAG2、MAGE−A3及び/又はPRAMEを含む組成物の例としては、全長のCTAG1B、CTAG2、MAGE−A3又はPRAME、ほぼ全長のCTAG1B、CTAG2、MAGE−A3及び/又はPRAME、及び例えばCTAG1B、CTAG2、MAGE−A3又はPRAMEのペプチドなどのCTAG1B、CTAG2、MAGE−A3又はPRAMEの断片を含む組成物などが挙げられる。
【0179】
本発明において使用できるペプチドの例としては、以下のMAGE−A3ペプチドなどが挙げられる:
【0180】
【表1】
【0181】
MAGEタンパク質は、全長のMAGE−A3であってもよく、又はほぼ全長のMAGE3の断片、例えばMAGE3(全312アミノ酸)のアミノ酸3〜314、若しくは1〜10個の間のアミノ酸がMAGE−A3タンパク質のN末端及び/若しくはC末端から欠失された他のMAGE−A3断片を含んでもよい。
【0182】
一実施形態において、CTAG1B、CTAG2、MAGE−A3及び/又はPRAMEのタンパク質、断片又はペプチドは、融合パートナータンパク質に連結されていてもよい。
【0183】
本発明において使用できる抗原の例としては、以下のCTAG1B、CTAG2及び/又はPRAME抗原を含む:
【0184】
例えば、CTAG1Bの好適なペプチドとしては、Jagerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,97(22):12198〜12203(2000)に開示されている、HLA−A2に対する結合モチーフを有するペプチド、例えばペプチド157〜167、157〜165及び155〜163を含む。CTAG1Bのペプチドは、例えば、A31、DR1、DR2、DR4、DR7、DP4、B35、B51、Cw3、Cw6及びA2として知られる、1個又は複数のMHCクラス1又はクラス2のエピトープを含んでもよい(国際公開第2008/089074号パンフレットを参照されたい)。
【0185】
例えば、PRAMEのペプチドは、HLA−A2に対する結合モチーフを有するペプチド、例えばLYVDSLFFL、ALYVDSLFFL、VLDGLDVLL、SLYSFPEA及びSLLQHILGLペプチドなどを含んでもよい(Quintarelliら、Blood、1 2008年9月、第112巻、第5号、1876〜1885ページを参照されたい)。PRAMEのペプチドは、1個又は複数のMHCクラス1又はクラス2のエピトープを含んでもよい。
【0186】
例えば、CTAG2のペプチドは、Sunら Cancer Immunology,Immunotherapy 第55巻、第6号/2006年6月に開示されているように、ELVRRILSR、MLMAQEALAFL、SLLMWITQC、LAAQERRVPRを含んでもよい。
【0187】
CTAG1B、CTAG2、MAGE−A3及び/又はPRAMEのタンパク質、断片又はペプチドと融合パートナータンパク質とは、化学的にコンジュゲートされていてもよく、又は組換え融合タンパク質として発現されてもよい。抗原とパートナーとが組換え融合タンパク質として発現させる一実施形態では、非融合タンパク質と比較して、発現系において産生されるレベルの増加を可能にし得る。したがって、融合パートナータンパク質は、ヘルパーTエピトープ(免疫学的融合パートナータンパク質)、好ましくは、ヒトによって認識されるヘルパーTエピトープを提供すること、及び/又は天然の組換えタンパク質よりも高収量でタンパク質(発現増強タンパク質)を発現することを補助し得る。一実施形態において、融合パートナータンパク質は、免疫学的融合パートナータンパク質及び発現増強パートナータンパク質の双方であってもよい。
【0188】
本発明の一実施形態において、使用することができる免疫学的融合パートナータンパク質は、グラム陰性菌ヘモフィルスインフルエンザ(Haemophilus influenza)Bの表面タンパク質であるプロテインD(国際公開第91/18926号パンフレット)又はその誘導体から得られる。プロテインD誘導体は、該タンパク質の最初の1/3、又は該タンパク質の最初の約1/3を含んでもよい。一実施形態において、プロテインDのN末端の最初の109残基は、CTAG1B、CTAG2、MAGE−A3及び/又はPRAMEの抗原に付加的な外来性T細胞エピトープを提供し、大腸菌(E.coli)において発現レベルを上昇させる(したがって、発現エンハンサーとしても働いている)ための融合パートナーとして使用することができる。一代替実施形態において、該プロテインD誘導体は、N末端の最初の100〜110アミノ酸又はおよそN末端の最初の100〜110アミノ酸を含んでもよい。一実施形態において、プロテインD又はその誘導体に脂質が付加されて、リポプロテインDを使用することもできる:脂質テールにより、抗原提示細胞への抗原の最適な提示を確実にすることができる。一代替実施形態において、プロテインD又はその誘導体は脂質付加されない。プロテインDの「分泌配列」又は「シグナル配列」とは、天然に存在するタンパク質の約1〜16、17、18又は19のアミノ酸を指す。一実施形態において、プロテインDの分泌配列又はシグナル配列とは、プロテインDのN末端の19アミノ酸を指す。一実施形態において、分泌配列又はシグナル配列は、プロテインD融合パートナーのN末端に含まれる。本明細書で使用される場合、「最初の3分の1(1/3)」、「最初の109アミノ酸」及び「N末端の最初の100〜110アミノ酸」とは、分泌配列又はシグナル配列の直後のプロテインD配列のアミノ酸を指す。シグナル配列のアミノ酸2−K及び3−Lは、任意でアミノ酸2−M及び3−Dで置換されてもよい。
【0189】
一実施形態において、免疫療法用の抗原は、以下の構築物の形態でプロテインDと融合されていてもよい:プロテインD−CTAG1B−His、又はプロテインD−CTAG2−His、又はプロテインD−PRAME−His、又はプロテインD−MAGE−A3−His。この融合タンパク質は、プロテインDのシグナル配列、プロテインDのアミノ酸1〜109、免疫療法用の抗原(全長の又は部分的なタンパク質配列であってもよい)、スペーサー及び製造過程中の融合タンパク質の精製を容易にすることができるポリヒスチジンテール(His)を含んでもよく、例えば以下のようなものである:
i)プロテインDの18残基のシグナル配列及びN末端の最初の109残基;
ii)関連のない2残基(メチオニン及びアスパラギン酸);
iii)免疫療法用の抗原;
iv)ヒンジ領域として機能している2個のグリシン残基;並びに
v)7個のヒスチジン残基。
【0190】
利用されるプロテインDの部分は、分泌配列又はシグナル配列を含んでいないことが好ましい。特定の実施形態では、融合パートナータンパク質は、融合タンパク質配列のN末端に又はN末端の中にアミノ酸Met−Asp−Proを含み、プロテインDの分泌配列又はシグナル配列を含まない。例えば、融合パートナータンパク質は、およそ又は正確に、プロテインDのアミノ酸17〜127、18〜127、19〜127又は20〜127を含む、又はそれらからなるものでもよい。
【0191】
例えば、プロテインDとの融合タンパク質に基づく好適なPRAME抗原は、国際公開第2008/087102号パンフレットに記載されており、その文書は、参照により本明細書にその全体が組み込まれている。
【0192】
別の実施形態において、免疫学的融合パートナータンパク質は、LytAとして知られるタンパク質又はそれから誘導されるタンパク質であってもよい。LytAは、ペプチドグリカン主鎖中の特定の結合を特異的に分解する自己溶菌酵素であるN−アセチル−L−アラニンアミダーゼ、アミダーゼLytA(LytA遺伝子によってコードされる(Gene、43(1986)265〜272ページ))を合成する肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)に由来する。LytAタンパク質のC末端ドメインは、コリン、又はDEAEなどのいくつかのコリン類似体に対する親和性に重要である。この特性は、融合タンパク質の発現に有用な大腸菌(E.coli)C−LytA発現プラスミドの開発に利用されている。アミノ末端にC−LytA断片を含むハイブリッドタンパク質の精製が記載されている(Biotechnology:10、(1992)795〜798ページ)。一実施形態において、この分子のC末端部分を使用することもできる。C末端に見出される残基178から始まるLytA分子のリピート部分を使用することもできる。一実施形態において、LytA部分は、残基188〜305を組み込んでいてもよい。
【0193】
他の融合パートナーとしては、インフルエンザウイルスからの非構造タンパク質であるNS1(血球凝集素)などが挙げられる。一実施形態では、NS1のN末端の81個のアミノ酸を利用するが、ヘルパーTエピトープを含むものであれば、別の断片を使用することもできる。
【0194】
本発明の一実施形態において、免疫療法において使用される抗原は、誘導体化された遊離チオールを含んでもよい。本発明の一実施形態において、MAGE−A3タンパク質は、誘導体化された遊離チオールを含んでもよい。こうした抗原は、国際公開第99/40188号パンフレットに記載されている。特に、カルボキシアミド化又はカルボキシメチル化されている誘導体を使用することができる。
【0195】
免疫療法用の抗原は、融合の形態で又は混加物中で、他の免疫療法抗原と組み合わせて使用することができる。例えば、CTAG1Bは、CTAG2、又はその断片との融合物として用いることができ、国際公開第2008/089074号パンフレットを参照されたく、その文書は参照により本明細書にその全体が組み込まれている。
【0196】
免疫治療薬の組合せとしては、融合タンパク質又は混加物のいずれかとして、例えば、CTAG1B、CTAG2、PRAME又はMAGE3のうち2種類以上の任意の組合せなどが挙げられるが、本発明はこれらの特定の抗原に限定されず、任意の免疫療法抗原を使用することができる。例えば、MAGE−3抗原は、例えば、NY−ESO−1と組み合わせて製剤化するのに好適であるとして記載されている;国際公開第2005/105139号パンフレットを参照されたく、その文書は参照により本明細書にその全体が組み込まれている。
【0197】
さらなる一実施形態において、本発明で使用される免疫治療薬は、本明細書に記載の免疫療法のタンパク質、断片若しくはペプチド、又は融合タンパク質をコードする核酸分子を含んでもよい。本発明の一実施形態において、その配列を好適な発現ベクター中に挿入して、DNA/RNAワクチン接種に使用することができる。また、核酸を発現する微生物ベクターを、ベクター送達免疫治療薬として使用することもできる。
【0198】
好適なウイルスベクターの例としては、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、単純ヘルペスウイルスなどのヘルペスウイルス、アルファウイルス、カナリアポックスウイルスなどのポックスウイルス及びワクシニアウイルスに基づくシステムが挙げられる。これらのウイルスを使用する遺伝子導入技術は、当業者に知られている。本発明のポリヌクレオチドを宿主ゲノム中に安定に組み込むために、例えばレトロウイルスベクターを使用することができるが、こうした組換えは好ましくない。対照的に、複製欠損アデノウイルスベクターは、エピソームの状態を維持し、したがって、一過性発現を可能にする。例えばサブユニットワクチンとしての使用又は免疫アッセイでの使用のために、本発明のポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質を大量に産生させるために、昆虫細胞(例えば、バキュロウイルスベクター)、ヒト細胞、酵母又は細菌において発現を引き起こすことができるベクターを使用することができる。
【0199】
好ましい一実施形態において、生物ベクターとして使用されるアデノウイルスは、複製欠損サルアデノウイルスである。典型的には、これらのウイルスは、E1欠失を有しており、E1遺伝子で形質転換された細胞株において増殖させることができる。好ましいサルアデノウイルスは、チンパンジーから単離されたウイルスである。特に、C68(Pan9としても知られる)(米国特許第6,083,716号を参照されたい)並びにPan5、Pan6及びPan7(国際公開第03/046124号パンフレット)は、本発明における使用に好ましい。これらのベクターは、本発明の異種遺伝子を挿入し、その遺伝子産物を発現できるように操作されることができる。こうした組換えアデノウイルスベクターの使用、製剤及び製造は、国際公開第03/046142号パンフレットに詳細に記載されている。
【0200】
核酸配列を得るための従来の組換え技術、及び発現ベクターの作製については、Maniatisら、Molecular Cloning−A Laboratory Manual;Cold Spring Harbor、1982〜1989に記載されている。
【0201】
タンパク質に基づく組成物の場合、本発明のタンパク質は、液体に可溶化された形態、又は凍結乾燥形態のいずれかで提供することができる。
【0202】
それぞれのヒトの用量は、1〜1000μgのタンパク質を含んでもよい。一実施形態において、該用量は、30〜300μgのタンパク質を含んでもよい。
【0203】
本明細書に記載の免疫療法用の組成物は、ワクチンアジュバント、及び/又は免疫賦活性サイトカイン若しくはケモカインをさらに含んでもよい。したがって、本明細書に適用されている「免疫治療薬」という用語は、適切なアジュバントを含む、本明細書に記載の全ての免疫療法用の組成物を含み得る。
【0204】
本発明における使用に好適なワクチンアジュバントは、市販されており、例えば、不完全フロイントアジュバント及び完全フロイントアジュバント(Difco Laboratories、Detroit、MI);メルクアジュバント65(Merck and Company,Inc.、Rahway、NJ);AS−2(SmithKline Beecham、Philadelphia、PA);水酸化アルミニウムゲル(ミョウバン)又はリン酸アルミニウムなどのアルミニウム塩;カルシウム、鉄又は亜鉛の塩;アシル化チロシンの不溶性懸濁液;アシル化糖;陽イオン又は陰イオンで誘導体化された多糖;ポリホスファゼン;生分解性ミクロスフェア;モノホスホリルリピドA及びクイルAなどである。GM−CSF又はインターロイキン−2、インターロイキン−7、若しくはインターロイキン−12などのサイトカイン、及びケモカインもアジュバントとして使用することができる。
【0205】
一実施形態において、アジュバントは、3−O−脱アシル化モノホスホリルリピドA(3D−MPL)などのモノホスホリルリピドAと、アルミニウム塩との組合せを含んでもよい。或いは、アジュバントは、国際公開第98/50399号パンフレット、国際公開第01/34617号パンフレット及び国際公開第03/065806号パンフレットに開示されている、3D−MPL、又はアミノアルキルグルコサミニドリン酸のような他のtoll様受容体4(TLR4)リガンドを含んでもよい。
【0206】
使用可能なもう1種のアジュバントは、単独で又は他のアジュバントと組み合わせて使用することができる、サポニン、例えばQS21(Aquila Biopharmaceuticals,Inc.、Framingham、MA)である。例えば、一実施形態において、例えば国際公開第94/00153号パンフレットに記載されているQS21と3D−MPLとの組合せのような、モノホスホリルリピドAとサポニン誘導体との組合せ、又は国際公開第96/33739号パンフレットに記載されている、QS21がコレステロールで消光された組成物が提供される。他の好適な製剤は、水中油型乳剤及びトコフェロールを含む。一実施形態において、アジュバントは、国際公開第95/17210号パンフレットに記載されているように、水中油型乳剤中にQS21、3D−MPL及びトコフェロールを含む。
【0207】
本発明において使用される他のアジュバントは、CpGジヌクレオチドがメチル化されていない、非メチル化CpG含有オリゴヌクレオチドのようなTLR9アンタゴニストを含み得る。こうしたオリゴヌクレオチドは、よく知られており、例えば国際公開第96/02555号パンフレットに、記載されている。
【0208】
(この場合に)本発明における使用に好適なオリゴヌクレオチドは、以下を含んでもよい:
【0209】
【表2】
【0210】
CpG含有オリゴヌクレオチドはまた、単独で又は他のアジュバントと組み合わせて使用することができる。例えば、一実施形態において、アジュバントは、CpG含有オリゴヌクレオチドとサポニン誘導体との組合せ、特に、国際公開第00/09159号パンフレット及び国際公開第00/62800号パンフレットに開示されているCpGとQS21との組合せを含む。
【0211】
したがって、本明細書に記載の免疫治療薬を含む組成物が提供され、ここで、アジュバントは、3D−MPL、QS21、CpGオリゴヌクレオチド、ポリエチレンエーテル又はエステルのうちの1つ又は複数、又はこれらのアジュバントの2種類以上の組合せを含む。特定の実施形態において、組成物中の免疫治療薬の成分は、水中油型若しくは油中水型乳化賦形剤中又はリポソーム製剤中で提示することができる。
【0212】
一実施形態において、アジュバントは、3D−MPL、QS21及び免疫賦活性CpGオリゴヌクレオチドのうちの1つ又は複数を含んでもよい。一実施形態において、3種類全てのアジュバント成分が存在する。該成分は、国際公開第95/17210号パンフレットに記載されているように、リポソーム製剤又は水中油型乳剤中のいずれでも提示することができる。
【0213】
別の実施形態において、3D MPL−及びQS21は、水中油型乳剤中で、CpGオリゴヌクレオチドの非存在下で提示される。
【0214】
使用される3D−MPLの量は、一般的に少量であるが、製剤によっては、用量あたり1〜1000μg、好ましくは用量あたり1〜500μg、より好ましくは用量あたり1〜100μgの間の範囲にあってもよい。
【0215】
本発明のアジュバント中のCpG又は免疫賦活性オリゴヌクレオチドの量は、一般的には少量であるが、製剤によっては、用量あたり1〜1000μg、好ましくは用量あたり1〜500μg、より好ましくは用量あたり1〜100μgの間の範囲にあってもよい。
【0216】
本発明のアジュバント中で使用されるサポニンの量は、用量あたり1〜1000μg、好ましくは用量あたり1〜500μg、より好ましくは用量あたり1〜250μg、最も好ましくは用量あたり1〜100μgの間の範囲にあってもよい。
【0217】
本明細書に記載のアジュバント製剤は、水中油型乳剤及び/又はトコフェロールをさらに含んでいてもよく、又はリポソーム組成物中に製剤化されていてもよい。
【0218】
他の好適なアジュバントとしては、モンタニド(Montanide)ISA720(Seppic、France)、SAF(Chiron、California、United States)、ISCOMS(CSL)、MF−59(Chiron)、リビ デトックス(Ribi Detox)、RC−529(GSK、Hamilton、MT)及び他のアミノアルキルグルコサミニド4−リン酸(AGP)などが挙げられる。
【0219】
一般的には、それぞれのヒトの用量は、0.1〜1000μg、例えば、0.1〜500μg、0.1〜100μg、又は0.1〜50μgの抗原を含んでもよい。特定の免疫治療薬の最適量は、ワクチン接種した対象における適切な免疫応答の観察を含む標準的な治験によって確認することができる。初回ワクチン接種後に、対象は、適切に間隔を空けた1回又は数回の追加免疫を受けることもできる。
【0220】
或いは、本発明の方法において使用される組成物は、本明細書に記載の免疫治療薬を、薬学的に許容される添加剤と組み合わせて含む医薬組成物を含んでもよい。
【0221】
ここで、以下の非限定的な実施例に関して、本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0222】
【図1】染色体上のCTAG1Bアッセイの局在を示す図である。可能性のある1つの転写開始点(TSS)を記載している。この遺伝子構造の始まりを以下のように表している:白い四角形は300bpのプロモーター領域を表し、可能性のあるTSSを示している縦線がこれに続き、次いで、濃い四角形が第1エキソンを表す。各アッセイ部位を、各部位に該当する名称の前にあるそれぞれの白い四角形で示し、「(U)」は、非メチル化特異的アッセイ(すなわち、低メチル化に特異的なアッセイ)を示している。CpGカウントの数は、20kbの領域にわたってスポットされている。
【図2】染色体上のCTAG2アッセイの局在を示す図である。可能性のある1つの転写開始点(TSS)を記載している。この遺伝子構造の始まりを以下のように表している:白い四角形は300bpのプロモーター領域を表し、可能性のあるTSSを示している縦線がこれに続き、次いで、濃い四角形が第1エキソンを表す。各アッセイ部位を、各部位に該当する名称の前にあるそれぞれの白い四角形で示し、「(U)」は、非メチル化特異的アッセイ(すなわち、低メチル化に特異的なアッセイ)を示している。CpGカウントの数は、20kbの領域にわたってスポットされている。CTAG2には、CTAG2_1という名称もつけられている。
【図3】染色体上のPRAMEアッセイの局在を示す図である。可能性のある1つの転写開始点(TSS)を記載している。この遺伝子構造の始まりを以下のように表している:白い四角形は300bpのプロモーター領域を表し、可能性のあるTSSを示している縦線がこれに続き、次いで、濃い四角形が第1エキソンを表す。各アッセイ部位を、各部位に該当する名称の前にあるそれぞれの白い四角形で示し、「(U)」は、非メチル化特異的アッセイ(すなわち、低メチル化に特異的なアッセイ)を示している。CpGカウントの数は、20kbの領域にわたってスポットされている。
【図4】染色体上のあるMAGE−A3アッセイ(MAGE−A3 GO_2Uアッセイ)の局在を示す図である。可能性のある1つの転写開始点(TSS)を記載している。この遺伝子構造の始まりを以下のように表している:白い四角形は300bpのプロモーター領域を表し、可能性のあるTSSを示している縦線がこれに続き、次いで、濃い四角形が第1エキソンを表す。アッセイ部位を、その部位に該当する名称の付いた白い四角形で示し、「(U)」は、非メチル化特異的アッセイ(すなわち、低メチル化に特異的なアッセイ)を示している。CpGカウントの数は、20kbの領域にわたってスポットされている。
【図5】アンプリフルオル(登録商標)技術を示す概要図である。プライマー対において少なくとも1種のプライマー(フォワードプライマー)は、分子エネルギー移動対のドナー部分(FAM)及びアクセプター部分(DABCYL)を有する「ヘアピン」構造を含む。この図は、標識したヘアピン構造に連結した、フォワードプライマー(forプライマー)とも呼ばれるセンスプライマーの場合について説明している。増幅のないときには、ドナー部分によって放出される蛍光は、アクセプター部分によって効果的に受容され、その結果、蛍光が消失される。増幅中には、プライマーは増幅産物中に組み込まれる。2回目の増幅中に、ステムループ又はヘアピン構造が破壊される。アクセプター部分は、ドナー部分によって放出される蛍光をもはや効果的に消光することができなくなる。したがって、ドナー部分は、検出可能な蛍光シグナルを産生する。
【図6】非小細胞肺癌(NSCLC)の48試料についてのCTAG1B_1S脱メチル化アッセイで得られるリアルタイムMS−PCR結果とCTAG1B(遺伝子の別名、NY−ESO−1)リアルタイムRT−PCR発現データとの間の一致を示す図である。濃く太い縦線は脱メチル化アッセイのカットオフを示し、太い横線は発現のカットオフを示している。線形回帰を黒線で表している;R=0.35。
【図7】非小細胞肺癌(NSCLC)の48試料についてのCTAG2_1_AS脱メチル化アッセイで得られるリアルタイムMS−PCR結果とCTAG2(遺伝子の別名、LAGE−1)リアルタイムRT−PCR発現データとの間の一致を示す図である。濃く太い縦線は脱メチル化アッセイのカットオフを示し、太い横線は発現のカットオフを示している。線形回帰を黒線で表している;R=0.86;2つの技術間の一致は、87.5%である。
【図8】非小細胞肺癌(NSCLC)の48試料についてのCTAG2_1_S脱メチル化アッセイで得られるリアルタイムMS−PCR結果とCTAG2(遺伝子の別名、LAGE−1)リアルタイムRT−PCR発現データとの間の一致を示す図である。濃く太い縦線は脱メチル化アッセイのカットオフを示し、太い横線は発現のカットオフを示している。線形回帰を黒線で表している;R=0.88;2つの技術間の一致は、87.5%である。
【図9】非小細胞肺癌(NSCLC)の48試料についてのCTAG2_2_S脱メチル化アッセイで得られるリアルタイムMS−PCR結果とCTAG2(遺伝子の別名、LAGE−1)リアルタイムRT−PCR発現データとの間の一致を示す図である。濃く太い縦線は脱メチル化アッセイのカットオフを示し、太い横線は発現のカットオフを示している。線形回帰を黒線で表している;R=0.47;2つの技術間の一致は、68.8%である。
【図10】非小細胞肺癌(NSCLC)の48試料についてのCTAG2_3_S脱メチル化アッセイで得られるリアルタイムMS−PCR結果とCTAG2(遺伝子の別名、LAGE−1)リアルタイムRT−PCR発現データとの間の一致を示す図である。濃く太い縦線は脱メチル化アッセイのカットオフを示し、太い横線は発現のカットオフを示している。線形回帰を黒線で表している;R=0.55;2つの技術間の一致は、66.7%である。
【図11】非小細胞肺癌(NSCLC)の48試料についてのPRAME_7_S脱メチル化アッセイで得られるリアルタイムMS−PCR結果とPRAMEリアルタイムRT−PCR発現データとの間の一致を示す図である。濃く太い縦線は脱メチル化アッセイのカットオフを示し、太い横線は発現のカットオフを示している。線形回帰を黒線で表している;R=0.62;2つの技術間の一致は、83.3%である。
【図12】非小細胞肺癌(NSCLC)の48試料についてのPRAME_1_AS脱メチル化アッセイで得られるリアルタイムMS−PCR結果とPRAMEリアルタイムRT−PCR発現データとの間の一致を示す図である。濃く太い縦線は脱メチル化アッセイのカットオフを示し、太い横線は発現のカットオフを示している。線形回帰を黒線で表している;R=0.39;2つの技術間の一致は、66.7%である。
【図13】非小細胞肺癌(NSCLC)の48試料についてのPRAME_2_S脱メチル化アッセイで得られるリアルタイムMS−PCR結果とPRAMEリアルタイムRT−PCR発現データとの間の一致を示す図である。濃く太い縦線は脱メチル化アッセイのカットオフを示し、太い横線は発現のカットオフを示している。線形回帰を黒線で表している;R=0.64;2つの技術間の一致は、79.2%である。
【図14】非小細胞肺癌(NSCLC)の48試料についてのPRAME_3_AS脱メチル化アッセイで得られるリアルタイムMS−PCR結果とPRAMEリアルタイムRT−PCR発現データとの間の一致を示す図である。濃く太い縦線は脱メチル化アッセイのカットオフを示し、太い横線は発現のカットオフを示している。線形回帰を黒線で表している;R=0.73;2つの技術間の一致は、85.4%である。
【図15】非小細胞肺癌(NSCLC)の48試料についてのPRAME_6_AS脱メチル化アッセイで得られるリアルタイムMS−PCR結果とPRAMEリアルタイムRT−PCR発現データとの間の一致を示す図である。濃く太い縦線は脱メチル化アッセイのカットオフを示し、太い横線は発現のカットオフを示している。線形回帰を黒線で表している;R=0.24;2つの技術間の一致は、66.7%である。
【図16】黒色腫の31試料についてのCTAG1B_1_S脱メチル化アッセイで得られるリアルタイムMS−PCR結果とCTAG1B(遺伝子の別名、NY−ESO−1)リアルタイムRT−PCR発現データとの間の一致を示す図である;濃く太い縦線は脱メチル化アッセイのカットオフを示し、太い横線は発現のカットオフを示している。線形回帰を黒線で表している。
【図17】黒色腫の31試料についてのCTAG2_1_AS脱メチル化アッセイで得られるリアルタイムMS−PCR結果とCTAG2(遺伝子の別名、LAGE−1)リアルタイムRT−PCR発現データとの間の一致を示す図である。濃く太い縦線は脱メチル化アッセイのカットオフを示し、太い横線は発現のカットオフを示している。線形回帰を黒線で表している;R=0.63;2つの技術間の一致は、74.2%である。
【図18】黒色腫の31試料についてのCTAG2_1_S脱メチル化アッセイで得られるリアルタイムMS−PCR結果とCTAG2(遺伝子の別名、LAGE−1)リアルタイムRT−PCR発現データとの間の一致を示す図である。濃く太い縦線は脱メチル化アッセイのカットオフを示し、太い横線は発現のカットオフを示している。線形回帰を黒線で表している;R=0.62;2つの技術間の一致は、74.2%である。
【図19】黒色腫の31試料についてのCTAG2_2_S脱メチル化アッセイで得られるリアルタイムMS−PCR結果とCTAG2(遺伝子の別名、LAGE−1)リアルタイムRT−PCR発現データとの間の一致を示す図である。濃く太い縦線は脱メチル化アッセイのカットオフを示し、太い横線は発現のカットオフを示している。線形回帰を黒線で表している;R=0.34;2つの技術間の一致は、51.6%である。
【図20】黒色腫の31試料についてのCTAG2_3_S脱メチル化アッセイで得られるリアルタイムMS−PCR結果とCTAG2(遺伝子の別名、LAGE−1)リアルタイムRT−PCR発現データとの間の一致を示す図である。濃く太い縦線は脱メチル化アッセイのカットオフを示し、太い横線は発現のカットオフを示している。線形回帰を黒線で表している;R=0.58;2つの技術間の一致は、74.2%である。
【図21】黒色腫の31試料についてのPRAME_7_S脱メチル化アッセイで得られるリアルタイムMS−PCR結果とPRAMEリアルタイムRT−PCR発現データとの間の一致を示す図である。濃く太い縦線は脱メチル化アッセイのカットオフを示し、太い横線は発現のカットオフを示している。線形回帰を黒線で表している;R=0.70;2つの技術間の一致は、90.3%である。
【図22】黒色腫の31試料についてのPRAME_1_AS脱メチル化アッセイで得られるリアルタイムMS−PCR結果とPRAMEリアルタイムRT−PCR発現データとの間の一致を示す図である。濃く太い縦線は脱メチル化アッセイのカットオフを示し、太い横線は発現のカットオフを示している。線形回帰を黒線で表している;R=0.26;2つの技術間の一致は、93.5%である。
【図23】黒色腫の31試料についてのPRAME_2_S脱メチル化アッセイで得られるリアルタイムMS−PCR結果とPRAMEリアルタイムRT−PCR発現データとの間の一致を示す図である。濃く太い縦線は脱メチル化アッセイのカットオフを示し、太い横線は発現のカットオフを示している。線形回帰を黒線で表している;R=0.29;2つの技術間の一致は、90.3%である。
【図24】黒色腫の31試料についてのPRAME_3_AS脱メチル化アッセイで得られるリアルタイムMS−PCR結果とPRAMEリアルタイムRT−PCR発現データとの間の一致を示す図である。濃く太い縦線は脱メチル化アッセイのカットオフを示し、太い横線は発現のカットオフを示している。線形回帰を黒線で表している;R=0.48;2つの技術間の一致は、90.3%である。
【図25】黒色腫の31試料についてのPRAME_6_AS脱メチル化アッセイで得られるリアルタイムMS−PCR結果とPRAMEリアルタイムRT−PCR発現データとの間の一致を示す図である。濃く太い縦線は脱メチル化アッセイのカットオフを示し、太い横線は発現のカットオフを示している。線形回帰を黒線で表している;R=0.51;2つの技術間の一致は、90.3%である。
【図26】乳癌の28試料についてのCTAG2_1_AS脱メチル化アッセイで得られるリアルタイムMS−PCR結果とCTAG2リアルタイムRT−PCR発現データとの間の一致を示す図である。濃く太い縦線は脱メチル化アッセイのカットオフを示し、太い横線は発現のカットオフを示している。線形回帰を黒線で表している;R=0.56;2つの技術間の一致は、71.4%である。
【図27】乳癌の28試料についてのCTAG2_3_S脱メチル化アッセイで得られるリアルタイムMS−PCR結果とCTAG2リアルタイムRT−PCR発現データとの間の一致を示す図である。濃く太い縦線は脱メチル化アッセイのカットオフを示し、太い横線は発現のカットオフを示している。線形回帰を黒線で表している;R=0.34;2つの技術間の一致は、78.6%である。
【0223】
実験の節
【0224】
本発明者らは、疾患のスクリーニング、検出、病期分類、予後、予測及びモニタリング、治療の予測及びモニタリング(ワクチンの選択を含む)などの様々な目的のために、非小細胞肺癌(NSCLC)、黒色腫及び乳癌における種々のCT遺伝子のメチル化状態を、非メチル化アッセイを用いて調査した。
【0225】
実施例1:CT抗原アッセイ:in silicoでのプライマー設計
【0226】
CT抗原であるCTAG1B(=NY−ESO−1)、CTAG2(=LAGE−1)及びPRAMEに対して、非メチル化型の遺伝子配列を標的とするように設計されたいくつかの低メチル化アッセイが開発された。
【0227】
MSPの必要条件に適合したPrimer3ソフトウェア(http://fokker.wi.mit.edu/primer3/input.htm)を、非メチル化型のCTAG1B、CTAG2及びPRAMEを検出するためのフォワード(F)プライマー及びリバース(R)プライマーのin silico設計に使用した。条件は、以下の通りであった:アンプリコンサイズ:50〜120;プライマーサイズ:19〜27;融解温度:55〜65;最大3’自己相補性=0;TSS周辺の4000bpの枠(返答する数(number to return)=2000)。
【0228】
転写開始点(TSS)に対するCTAG1B、CTAG2及びPRAMEのU−プライマーの位置をそれぞれ図1、図2及び図3に示している。調査した領域は、プロモーター領域を含み、第1エキソンまで及んでいた。
【0229】
フォワードプライマー又はリバースプライマーのいずれかは、5’末端に、以下の配列を有する、ドナー及びアクセプター部分を有する適切なステムループ又はヘアピン構造を組み込むように合成した:5’AGCGATGCGTTCGAGCATCGCU 3’(配列番号43。)
【0230】
下記の表1に、試験したような種々のプライマーの組合せを示している。アンプリフルオルプライマーを使用したPCRの技術の原理については、図5に記載している。
【0231】
【表3−1】
【表3−2】
【0232】
実施例2:温度勾配及びアッセイの選択
【0233】
材料及び方法
【0234】
標準物質調製用の温度勾配:MJ Research PTC−200サーモサイクラーを使用してPCRを行った。サイクリング条件は、以下の通りであった:段階1、95℃で5分間;段階2を35回反復、95℃で30秒間、アニーリング温度で30秒間、72℃で30秒間;段階3、72℃で30分間、4℃で保持。アニーリング温度は、機器の加熱ブロック全体に57℃〜62℃の勾配として設定した。
【0235】
クローニング:PCR産物をトポ(TOPO)(登録商標)TAベクター(トポ(登録商標)クローニングキット、インビトロジェン(Invitrogen)(登録商標))中に連結し、ワンショット(One Shot)(登録商標)コンピテント大腸菌(E.coli)を形質転換した。プラスミドはQiagen GmbH製のキアプレップ(QIAprep)(登録商標)spin midiprepキットを製造業者の手順書に従って使用して、単離された。クローニングしたPCR産物は、シーケンシングによって確認され、公開されているプロモーター配列と比較された。
【0236】
標準曲線物質の調製:制限酵素BamHI(Roche)で消化することによってプラスミドを線状にし、次いで、キアクイック(QIAquick)(登録商標)PCR精製キット(Qiagen GmbH;製造業者の手順書に従って)を使用して精製した。PCR又はプラスミドの調製物の濃度はUV分光光度法を用いて決定された。2×107コピー/5μlのストック溶液を調製し、使用まで−80℃で保存した。標準曲線の希釈物(2×106〜2×101コピー/5μl)は、試験ごとに新たに調製した。
【0237】
リアルタイムMS−PCR:リアルタイムMSPアッセイにより、CTAG1B、CTAG2、PRAME及びβ―アクチンの定量を行った。これらは、ABIプリズム(Prism)(登録商標)7900HT機器(Applied Biosystems)又はi−Cycler(BioRad)のいずれかを使用したアンプリフルオル(登録商標)アッセイフォーマットごとに特定のプライマーの組合せを使用する平行の増幅法/定量法からなっていた。サイクリング条件は:段階1:50℃で2分間、段階2:95℃で15分間、段階3:95℃で15秒間、57℃で30秒間、57℃で30秒間(プラトーデータ収集)を45回反復であった。結果は、Applied Biosystems製のSDS2.2.2ソフトウェア又はBioRad製のiCycler iQ version3.1ソフトウェアのいずれかを使用して作製され、Ct値(ソフトウェアによって自動的に設定される、増幅曲線が閾値と交差するところのサイクル数)として出された。
【0238】
結果
【0239】
表1に記載している、プライマー対に対応しているプライマーを使用して、各アッセイ用のPCR産物を調製した。この目的のために、亜硫酸水素塩処理したシ−ピーゲノム(CpGenome)(商標)ユニバーサル非メチル化DNAを鋳型物質として使用して、図1、図2及び図3に記載のようなCTAG1B_1、CTAG2_1及びPRAME_7の短い領域を増幅した。単一のPCR産物を得るために、プライマー対ごとに、いくつかのアニーリング温度を試験した(57℃〜62℃)。これらのPCR産物を、精製して定量し、次いで、希釈して、各アッセイ用の標準物質を調製した。最初のリアルタイムMS−PCRは、(各アッセイに特異的な)精製PCR産物を鋳型として使用して、表1に記載のような種々のプライマー対の組合せを用いて調製した。最終的に、さらなる調査のために以下のアッセイが残った:CTAG1B_1_S_AMP、CTAG1B_2_AS_AMP、CTAG2_1_S_AMP、CTAG2_1_AS_AMP、CTAG2_3_S_AMP、PRAME_1_AS_AMP、PRAME_2_S_AMP、PRAME_3_AS_AMP、PRAME_6_AS_AMP及びPRAME_7_S_AMP。それぞれの性能の例を表2に示している(6つのデータポイント全てを含む)。
【0240】
【表4】
【0241】
いくつかのアッセイでは、PCR産物はプラスミド中にクローニングし、PCR産物の代わりにその構築物が標準曲線調製用の物質として使用された。
【0242】
実施例3:CTAG1B、CTAG2及びPRAME遺伝子についての、リアルタイムMS−PCRアッセイと定量リアルタイムRT−PCR結果との間の一致
【0243】
材料及び方法:
【0244】
細胞株、肺試料、黒色腫試料及び乳房試料からのRNAは、イソプロパノール沈澱をRNeasy精製ステップ(Qiagen、Venlo、Netherlands)に置き換えたことを除いて、Tripure試薬(Roche、Vilvoorde、Belgium)を使用して製造業者の説明書に従って抽出された。RNA濃度は、260nmでの光学濃度の値から決定された。細胞株DNAは、「Puregene Cell and Tissueキット」(Qiagen #158767)又は「QIAamp DNA miniキット(Qiagen #51304)のいずれかを使用して抽出された。
【0245】
GSKBioによって提供されたRNAレーター(RNA later)(登録商標)溶液中の、肺生検試料を使用して、ゲノムDNAを抽出した。かみそりの刃を使用して約10mgの肺組織を極めて小さな断片に薄切りして、フェノール抽出法に従って抽出を行った。ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)乳房組織からのDNAは、キシレン処理後に、同様のフェノール/クロロホルム法に従って抽出された。
【0246】
黒色腫生検試料からのDNAは、「QIAamp DNA miniキット」(Qiagen #51304)又は「Maxwell 16 Tissue DBA精製キット」(Promege AS1030)のいずれかを使用して抽出された。
【0247】
キシレン処理の場合:FFPE組織を含むそれぞれのチューブを、750μlのキシレン(Merck #1.08681.1000)と共に室温で2時間インキュベートして、パラフィンを溶解させた。パラフィンが全て溶解したときに、250μlの70%エタノールを添加して、混合後、チューブを最高速度で15分間遠心した。上清を除去し、試料を室温で空気乾燥した。
【0248】
DNAは、フェノール/クロロホルムを使用して試料から抽出された:簡単に説明すると、試料を、最初に、50〜100μg/mlのプロテイナーゼK(Roche)及び最終濃度の1%SDSで、1100rpmで振盪しながら、48℃で一晩インキュベートした。1倍量の試料に、Invitrogen製の1倍量のフェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール(25:24:1)を添加して、混合物をPhase Lock Gelチューブ(Eppendorf)に移した。完全に混合した後に、チューブを遠心して、相を分離させ、核酸を含んでいる上部の水相を回収した。Phase lock gelチューブでの抽出をもう1回行った。DNAは、750μlのEtOH/NH4Ac溶液及び2μlのグリコーゲン(Roche)を添加することにより沈殿させた。次いで、これを50μlのLoTE(3mM TRIS、0.2mM EDTA、pH8.0)に溶解した。
【0249】
DNAは、ピコグリーン(登録商標)dsDNA定量キット(Molecular Probes、#P7589)を使用して、製造業者の推奨に従って定量された。キットと共に提供されたλDNAを使用して標準曲線を用意した。データは、FluoStar Galaxyプレートリーダー(BMG Lab technologies、Germany)を使用して収集された。
【0250】
亜硫酸水素塩処理:LoTE中の1.5μgまでのDNAを、Zymo Research製のEZ DNAメチル化キット(#D5002)を使用して処理した。簡単に説明すると、45μlの一定分量を、5μlのM−Dilution緩衝液と混合し、1100rpmで振盪しながら、37℃で15分間インキュベートした。次いで、希釈した100μlのCT Conversion Reagentを添加し、試料を、暗所で1100rpmで振盪しながら、70℃で3時間インキュベートした。変換後、製造業者の説明書に従って、試料をさらに脱塩して、脱スルホン化し、50μlのTris−HCl 1mM Ph8.0で溶出を行った。
【0251】
100nMの最終濃度の各プライマー(表1に記載の特定の組合せ)及びQuantitect Probe PCRキット(Qiagen #204345)からの2×ミックスを含んでいる12μlの最終反応物中に、亜硫酸水素塩処理した2.4μlのDNAを使用した。陰性対照及び陽性対照として、シ−ピーゲノム(商標)ユニバーサルメチル化及び非メチル化DNA(Chemicon International、CA、USA;カタログ# S7821及びカタログ# S7822)を各回のアッセイに含めた。反応物は384ウェルプレートに入れられた。アッセイは、Applied Biosystem7900HT機器上で行われた。サイクリング条件は:段階1:50℃で2分間、段階2:95℃で10分間、段階3(45回反復):95℃で15秒間、57℃で30秒間(又はβ−アクチンの場合には62℃)、プラトーデータ収集に相当する57℃で30秒間(又はβ−アクチンの場合には62℃)であった。Applied Biosystems製のSDS2.2.2ソフトウェアを使用して結果を作製し、Ct値(ソフトウェアによって自動的に設定される、増幅曲線が閾値と交差するところのサイクル数)として出した。Ct値は、20〜2×106遺伝子コピー相当の標準曲線上にプロットされた値の線形回帰に基づいたコピー数の算出に使用された。目的遺伝子とb−アクチンとの間の比率を算出し、試験結果を作製した。
【0252】
2μgの全RNAからのcDNA合成を、1×ファーストストランド緩衝液(first strand buffer)、0.5mMの各dNTP、10mMのジチオスレイトール、20UのrRNase阻害剤(Promega カタログN2511)、2μMのオリゴ(dT)15及び200UのM−MLV逆転写酵素(Life Technologies カタログ28025−013)を含んでいる20μl混合物中で、42℃で1時間30分行った。
【0253】
50ngの全RNAに相当するcDNAを、タックマン緩衝液、5mMのMgCl2、0.4mMのdUTP、0.2mMの各ヌクレオチド、0.625UのAmpli Taq Gold DNAポリメラーゼ、0.05UのUNG、0.2μMの各オリゴヌクレオチドプライマー及び0.2μMのタックマンMGBプローブを含んでいる25μlの混合物中でPCRによって増幅した。特定のオリゴヌクレオチドプライマー及びMGBプローブを使用した。標的遺伝子及びベータアクチン遺伝子は、タックマンchemistry7900システム(PE Applied Biosystems)を使用した定量PCRで増幅した。増幅プロファイルは、50℃で2分間を1サイクル、95℃で12分間を1サイクル及び95℃で15秒間並びに60℃で1分間を40サイクルであった。60℃での全ての伸長ステップ中に、タックマンプローブの分解によって生じる蛍光シグナルをリアルタイムで検出した。リアルタイム配列検出ソフトウェア(Applied Biosystems、Warrington、UK)を使用して、生データを分析した。標的遺伝子とb−アクチンとの間の比率を算出し、試験結果を作製した。
【0254】
検定規定:
【0255】
リアルタイムMS−PCRでは、以下の検定規定を標準曲線に適用した:二重試験で少なくとも4点;(二重試験の間の)ΔCt<1.5;PCR効率>80%;R2>0.99;陽性対照は、陽性でなければならない;陰性対照は、陰性でなければならない。
【0256】
結果解釈の判定基準は、目的遺伝子の標準相当のコピー数とb−アクチンのコピー数とで算出した比率の値に基づいていた:比率=(目的遺伝子コピー数/β−アクチンコピー数)×1000。
【0257】
遺伝子発現については、検定規定は、NTCが35を超えるCtを有し、陽性対照が陽性であり、標的遺伝子及びベータアクチンの二重試験のΔCt<2であった。
【0258】
遺伝子発現の結果はアクチン発現と比較して算出される。PRAME発現用のカットオフは1E−04コピー/アクチンコピーに設定され、CTAG1B及びCTAG2については、カットオフは1E−05コピー/アクチンコピーに設定される。試料は、ベータアクチンCtが23未満で、二重試験のΔCt<2であり、かつ標的遺伝子の二重試験のΔCt<2である場合、有効であった。
【0259】
【表5】
【0260】
結果
【0261】
細胞株
【0262】
代替の標準曲線物質を使用して、最適なリアルタイムMS−PCR条件を選択した後に、多様な細胞株を、CTAG1B、CTAG2及びPRAMEの脱メチル化アッセイについてアッセイした。結果は、リアルタイムRT−PCRを使用して得られたものと比較した。試験する遺伝子(CTAG1B、CTAG2、PRAME)ごとに1つのアッセイを示す。表4、表5及び表6を参照されたい。
【0263】
【表6】
【0264】
【表7】
【0265】
【表8】
【0266】
この試験の一目的は、癌試料において行うアッセイに好適な陽性細胞株及び陰性細胞株を発見することであった。リアルタイムMS−PCRデータを発現データと比較すると、CRL2505及びCRL5803は、最も高いCTAG1B_1_S/b−アクチン比率を示すことが認められ(表4)、したがって、CTAG1B_1_Sアッセイを使用する場合に、CTAG1B脱メチル化の陽性細胞株として使用できることができる。SW−480及びHL−60細胞株は、このアッセイの陰性細胞株として使用することができる。
【0267】
試験したCTAG2及びPRAMEのアッセイの最良の陽性細胞株及び陰性細胞株を定めることもできた(表7及び表8)。
【0268】
【表9】
【0269】
【表10】
【0270】
非小細胞肺癌(NSCLC)
【0271】
CTAG1B、CTAG2及びPRAMEの発現をリアルタイムRT−PCRによって、並びにこれらのメチル化状態をリアルタイムMS−PCRによって調べるために、NSCLCの51試料を使用した。3試料は少なくとも1つの技術で無効なことが見出され、したがって、48試料のNSCLCで得られた結果を比較した。結果の比較を視覚的に表した。CTAG1Bでは、CTAG1B_1_Sアッセイとの良好な一致は認められなかった(図6)。CTAG2の発現を、4つの脱メチル化アッセイで得られた結果と比較した場合には、CTAG2_1S(図8)及びCTAG2_1AS(図7)のアッセイで最良の一致が得られ、両技術間で87.5%の一致が示された。CTAG2_2_S(図9)及びCTAG2_3_S(図10)は、それぞれ68.8%及び66.7%でより低い一致が示される。PRAMEの発現については、アッセイによって66.7%〜85.4%の範囲の一致が認められる(図11、図12、図13、図14及び図15)。発現データとの最良の一致は、PRAME_3_AS脱メチル化アッセイ(図14)で得られ、85.4%の一致が示された。表9は、NSCLC試料における遺伝子発現と遺伝子メチル化とを比較する際に得られる全ての結果のまとめを示す。
【0272】
【表11】
【0273】
黒色腫試料
【0274】
DNA及びRNAは、RNAレーター(登録商標)溶液中の黒色腫組織の31試料から抽出された。NSCLCを調べた際に行ったことと同様に、これらの黒色腫試料は、CTAG1B、CTAG2及びPRAMEの発現をリアルタイムRT−PCRによって、並びにこれらのメチル化状態をリアルタイムMS−PCRによって調べるために、使用された。NSCLCの場合と同様に、CTAG1B_1_S脱メチル化アッセイを使用した場合には、発現データとの良好な一致は認められなかった。CTAG2遺伝子の場合には、CTAG2_1_S(図18)、CTAG2_1_AS(図17)及びCTAG2_3S(図20)アッセイの3アッセイで最良の一致が認められ、全てが両技術間で74.2%の一致を示した。PRAME遺伝子の場合、全てのPRAMEのアッセイ(図21、図22、図23、図24及び図25)で良好な一致(90.3%及び93.5%)が示された。しかし、おそらくその中の陰性試料の数が少ない(2)ために、PRAME_7_S(表9)だけは、許容可能なRピアソン相関係数を示した。表10に、黒色腫試料で得られる一致及び関連性の結果をまとめている。
【0275】
【表12】
【0276】
乳癌試料
【0277】
CTAG2の発現をリアルタイムRT−PCRによって、並びにCTAG2のメチル化状態をリアルタイムMS−PCRによって調べるために、乳癌の29試料を使用した。1試料は少なくとも1つの技術で無効なことが見出され、したがって、乳癌の28試料で得られた結果を比較した。CTAG2_1_AS及びCTAG2_3_Sのアッセイで得られた結果は、それぞれ71.4%(図26)及び78.6%の一致(図27)であった。
【0278】
結論
【0279】
正常組織では精巣内でほぼ排他的に発現される癌/精巣(CT)抗原は、精巣以外の癌組織において発現されることがわかる。この試験で示されるように、CT遺伝子の発現は、リアルタイムRT−PCRによって調べることができるが、さらに、遺伝子プロモーター(又は近くの領域)のメチル化状態を調べることによって間接的にも調べることができる。実際に、異常な発現は、低メチル化と関連付けることができる。細胞株における試験により、CTAG1B脱メチル化アッセイを含めた全てのアッセイ用の陽性対照及び陰性対照の細胞株が得られた。NSCLC、黒色腫及び乳癌の組織では、CTAG1Bアッセイを除き、遺伝子発現と遺伝子低メチル化状態との間でいくらかの一致を示すことができた。CTAG2発現についての最良の一致は、CTAG2_1_S及びCTAG2_1_ASの脱メチル化アッセイで得られ、いずれもNSCLC試料では87.5%、黒色腫試料では74.2%の一致が示された。一方、CTAG2_3_Sアッセイでは、乳癌試料間で78.6%の一致が示されていた。PRAMEについては、NSCLCにおけるPRAME_3_AS脱メチル化アッセイ(85.4%)及び黒色腫におけるPRAME_1_ASアッセイ(93.5%)で最良の一致が得られた。2種類のアッセイを乳癌組織において行った:CTAG2_1_AS及びCTAG2_3_Sでは、それぞれ71.4%及び78.6%の一致を示した。
【0280】
実施例4:MAGE−A3低メチル化アッセイを用いた非小細胞肺癌(NSCLC)の診断
【0281】
材料及び方法
【0282】
細針生検(FNB)からのDNAを抽出した。
【0283】
実施例3と同様に、ピコグリーン(登録商標)dsDNA定量キット(Molecular Probes、#P7589)を製造業者の推奨に従って使用して、それぞれの試料及び細胞株のDNAをDNA量についてアッセイした。FluoStar Galaxyプレートリーダー(BMG Lab technologies、Germany)を使用して、データを収集し、分析した。上記のように、Zymo Research製のEZ DNAメチル化キット(詳細については実施例2を参照されたい)を使用して、1.5μgまでのDNAを処理し、25μlで溶出を行った。次いで、亜硫酸水素塩処理した2.4μlのDNAを、100nMの最終濃度の各プライマーを含んでいる12μlの全反応量中で、β−アクチン(実施例3と同様)及びMAGE−A3(MAGE−A3 GO_2U)のリアルタイムMSPアッセイを通して(表1)、処理した。使用するPCRミックスは、BioRad製のRoxを有する「iTaq supermix」(#172−5855)である。プラスミド構築物(Invitrogen life technologies製のトポ(登録商標)クローニングベクター中にクローニングされたPCR産物)を使用して、標準を調製した。反応物は384ウェルプレートに入れられた。アッセイは、Applied Biosystem7900HT機器上で行った。β−アクチンアッセイのサイクリング条件は、以下の通りであった:段階1、50℃で2分間;段階2、95℃で10分間;段階3、95℃で15秒間、次いで、62℃で1分間(プラトーデータ収集)を45回反復。MAGE−A3 GO_2Uアッセイのサイクリング条件は、以下の通りであった:段階1、50℃で2分間;段階2、95℃で10分間;段階3、95℃で15秒間、次いで、59℃で1分間(プラトーデータ収集)を45回反復。Applied Biosystems製のSDS2.2.2ソフトウェアを使用して結果を作製し、Ct値(ソフトウェアによって自動的に設定される、増幅曲線が閾値と交差するところのサイクル数)として出した。Ct値は、20〜2×106遺伝子コピー相当の標準曲線上にプロットされた値の線形回帰に基づいてコピー数の算出に使用した。目的遺伝子とβ−アクチンとの間の比率を算出し、試験結果を作製した。
【0284】
結果
【0285】
ここでは、腫瘍の切除を受けておらず、進行した疾患を有し、発現データが得られていない、非小細胞肺癌(NSCLC)患者からの細針生検(FNB)を用いて得られた結果が示される。
【0286】
DNAの抽出及び変換(亜硫酸水素塩処理)の後に、MAGE−A3 GO_2U低メチル化アッセイ(表1)を通して35試料のFNBを処理した。実施例3(表3)と同様の結果解釈の判定基準を適用した。低メチル化試験をqRT−PCRと比較することは不可能であったので、低メチル化試験のカットオフは間接的に設定しなければならなかった。IB期及びII期のNSCLC患者からのホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)肺組織及び後のRNAレーター溶液中の組織についての同様のアッセイで得られる結果に基づき、選択されるカットオフは112である。対応する結果を、表11に示している。カットオフ値は、発現データにより良く対応するように調整され得ることに注意しなければならない。
【0287】
【表13】
【0288】
カットオフ値を112に設定すると、MAGE−A3の低メチル化を有する患者の百分率は45.7%である。これらの患者は、MAGE−A3を発現している可能性がある。
【0289】
結論
【0290】
脱メチル化/低メチル化アッセイは、qRT−PCRが困難であることが立証されている試料の種類の場合に特に関心が持たれるであろう。これは、細針生検(FNB)の場合である。この技術は非侵襲性であるので、将来、他のNSCLC患者に応用されることが可能である。
【0291】
本発明は、本明細書に記載の特定の実施形態によって範囲を限定されるものではない。実際に、本明細書に記載のものに加えて、本発明の多様な改変形態が、上記の説明及び添付の図面から当業者に明らかとなるであろう。こうした改変形態は、添付の特許請求の範囲の範囲内に入ることが意図される。さらに、本明細書に記載の全ての実施形態は、必要に応じて、幅広く適用可能であり、整合する他の任意及び全ての実施形態と組み合わせることができるものとみなされる。
【0292】
本明細書には多様な刊行物を引用しており、これらの開示は参照によりその全体が組み込まれている。
【発明の分野】
【0001】
本発明は、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子の発現の検出に関する。より詳細には、本発明は、メチル化型又は非メチル化型のCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3を検出する方法及び関連するオリゴヌクレオチド、プライマー、プローブ、プライマー対及びキットに関する。本発明の方法は、増幅技術、特に、蛍光に基づくリアルタイムPCR法及びエンドポイントPCR法に関し、診断、予後及び治療的有用性を有する。
【発明の背景】
【0002】
癌精巣(CT)抗原
【0003】
癌精巣(CT)抗原は、通常は発現が精巣、卵巣内の生殖細胞又は栄養膜細胞に限定される一クラスの腫瘍関連抗原である。CT抗原は、成体体細胞組織では普通発現されていない(Simpsonら、Nat.Rev.Cancer、5(8):615〜625(2005);Scanlanら、Immunol.Reviews、188:22〜32(2002);Scanlanら、Cane.Immun.、4:1〜15(2004))。
【0004】
癌患者ではCT抗原の遺伝子制御が損なわれ、多種多様な腫瘍におけるCT抗原の異常発現を導く。同定される第1のCT抗原であるMAGE−1は、1990年代前半にT細胞のエピトープのクローニングによって同定された(参照により組み込まれている、van der Bruggenら、1991 Science 13;254(5038):1643〜7;van der Bruggenら、1999 Science 254:1643〜1647;Traversahら、1992 Immunogenetics、35(3):145〜152;及び米国特許第5,342,774号)。それ以来、血清学的な発現クローニング技術(SEREX)(Sahinら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、92(25):11810〜11813(1995)及び米国特許第5,698,396号)、酵母表面での組換え抗原発現(RAYS)(Mischoら、Cane.Immun.、3:5〜16(2003))及び示差的なmRNA発現解析(Gureら、Int.J.Cane、85(5):726〜732(2000))により、さらに多くのCT抗原が同定された。いくつかのCT抗原は、癌患者において免疫原性があるため、腫瘍ワクチン開発のための絶好の標的となっている。
【0005】
免疫系の細胞性エフェクター又は体液性エフェクターによって認識される腫瘍関連抗原の同定は、癌免疫療法に新たな展望を開いた。免疫療法の概念は、自己免疫系を利用した治療法において、腫瘍内で発現される抗原タンパク質を標的として使用できるという仮定に基づいている。抗原特異的癌免疫治療薬(Antigen−Specific Cancer Immunotherapeutics,ASCI)は、標的化された治療を可能にする。ASCIは、免疫応答を癌細胞に対して特異的に導くための「腫瘍抗原」と、抗腫瘍免疫応答を高めるために選択される免疫賦活化合物を含む「アジュバント系」との2つの主な要素を有する。
【0006】
CTAG1B。癌免疫療法における使用に現在関心が持たれている癌精巣抗原(cancer testis antigen)は、CTAG1B遺伝子(遺伝子の別名NY−ESO−1のもとでも知られている)によってコードされる癌/精巣抗原1Bである。この抗原は、90年代後半にLudwig癌研究所のNew York支部で、食道扁平上皮癌でSEREXによって最初に同定された(参照により組み込まれている、Chenら、PNAS USA、94(5):1914〜1918(1997);及び米国特許第5,804,381号)。CTAG1Bタンパク質は、長さが180アミノ酸であり、卵巣癌、肺癌、乳癌、前立腺癌、食道癌、膀胱癌を含むがこれらに限定されない多種多様な腫瘍内及び黒色腫内で見出されている。(Konishi Jら、Oncol Rep.2004年5月;11(5):1063〜7;Nicholaou Tら、Immunol Cell Biol.2006年6月;84(3):303〜17;Sugita Yら、Cancer Res.2004年3月 15;64(6):2199〜204;Velazquez EFら、Cancer Immun.2007年7月 12;7:11及びJungbluthら、2001 、Int.J.Cane、92(6):856〜860)。CTAG1B陽性腫瘍を有する患者における、この抗原に対する自発的な体液性免疫応答及び細胞性免疫応答が記載されており、いくつかのHLA(ヒト白血球抗原)のクラスI及びクラスllの拘束性ペプチドが同定されている(Jagerら、1998 J.Exp.Med.、187(2):265〜270;Yamaguchiら、2004 Clin.Cane.Res.、10(3):890〜961;及びDavisら、2004 Proc.Natl.Acad.Sci.USA、101(29):10697〜10702)。例示的な特許文献は、米国特許第6,140,050号;第6,251,603号;第6,242,052号;第6,274,145号;第6,338,947号;第6,417,165号;第6,525,177号;第6,605,711号;第6,689,742号;第6,723,832号;第6,756,044号;及び第6,800,730号であり、全てが参照により組み込まれている。
【0007】
臨床試験では、HLA−A2(157〜167、157〜165及び155〜163)に対する結合モチーフを有する、部分的に重なっている3種類のCTAG1B由来のペプチドをワクチン中に使用して、NY−ESO−1を発現する転移性の腫瘍を有する12名の患者が治療されている。この試験により、合成NY−ESO−1ペプチドは、安全に投与することが可能であり、有益となり得るT細胞応答を引き起こす能力のあることが実証された(Jagerら、2000 PNAS USA、97(22):12198〜12203)。
【0008】
CTAG1Bタンパク質中のいくつかのMHC(主要組織適合遺伝子複合体)のクラスI及びクラスIIのエピトープが、別々のグループによって同定されている。N末端にあるコラーゲン様領域は、本明細書中でA31と称する少なくとも1個のMHCクラスIエピトープを含む。中央領域は、本明細書中でDR1、DR2、DR4、DR7及びDP4と称するいくつかのMHCクラス2エピトープを含む。中央領域は、本明細書中でB35、B51、Cw3及びCw6と称するいくつかのMHCクラスIエピトープも含む。C末端は、少なくとも2個のクラスIIエピトープ(DR4及びDP4)及び1個のクラスIエピトープ(A2)を含むと考えられている。
【0009】
CTAG2。CTAG1との配列類似性が高いために、免疫療法への関心が持たれ得るさらなる癌精巣抗原は、CTAG2(遺伝子の別名LAGE−1としても知られている)である。LAGE−IaとLAGE−Ib、2種類のCTAG2転写産物が記載されている。LAGE−Ibは不完全にスプライシングを受けて約210アミノ酸残基の推定タンパク質をコードするが、LAGE−Ia遺伝子の産物は180アミノ酸残基を含む(Sunら、Cancer Immunol Immunother 2006:55:644〜652)。
【0010】
LAGE−1とNY−ESO−1のタンパク質のN末端領域は、高度に保存されており、97%を超える同一性を有すると考えられている。しかし、中央領域では、LAGE−1はNY−ESO−1とは異なり、62%のみが同一である。NY−ESO−1とLAGE−IaのC末端は、高度に保存されている(97%を超える同一性)。しかし、LAGE−IbのC末端は、より長く、LAGE−1a/NY−ESO−1の同領域と50%未満の同一性を有すると考えられている。
【0011】
これらの2種類のタンパク質に関する一般情報は、LICRウェブサイトから入手可能である(www.cancerimmunity.org/CTdatabaseを参照されたい)。
【0012】
PRAME。選択的に発現される黒色腫の抗原であるPRAMEは、黒色腫反応性の細胞傷害性T細胞(CTL)によって認識されるヒトの黒色腫抗原をコードする遺伝子として最初に単離された。PRAMEは、その子宮内膜及び副腎を含むいくつかの正常成体組織における微量な発現のために、CT遺伝子とは呼ばれていない。しかし、PRAMEは、CT遺伝子の他の主要な特徴、すなわち、精巣内での強い発現及び黒色腫(97%)、肉腫(80%)、小細胞肺癌(70%)、腎細胞癌(40%)、及び頭頸部癌(29%)を含む多様な腫瘍内での上方制御を示す。この遺伝子について、同一のタンパク質をコードする、5つの選択的スプライスによる転写バリアントが観察されている。その509アミノ酸の推定タンパク質は、HLA_A24及びHLA−A2分子上に提示される、よく特徴付けされたエピトープを有する。
【0013】
MageA3。MAGE遺伝子は、癌/精巣抗原のファミリーに属する。MAGEファミリーの遺伝子は20を超えるメンバーを含み、MAGE A、B、C及びD遺伝子からなる(Scanlanら、(2002)Immunol Rev.188:22〜32;Chomezら、(2001)Cancer Res.61(14):5544〜51)。これらの遺伝子は、X染色体上にクラスターを形成しており(Lucasら、1998 Cancer Res.58.743〜752;Lucasら、1999 Cancer Res 59:4100〜4103;Lucasら、2000 Int J Cancer 87:55〜60;Lurquinら、1997 Genomics 46:397〜408;Muscatelliら、1995 Proc Natl Acad Sci USA 92:4987〜4991;Poldら、1999 Genomics 59:161〜167;Rognerら 1995 Genomics 29:725〜731)、依然として不明確な機能を有する(Ohmanら 2001 Exp Cell Res.265(2):185〜94)。MAGE遺伝子は相同性が高く、特に、MAGE−Aファミリーのメンバーは、60〜98%の間の相同性を有する。
【0014】
ヒトのMAGE−A3遺伝子は、黒色腫(Furutaら、2004 Cancer Sci.95、962〜968.)、膀胱癌、肝細胞癌(Qiuら、2006.Clinical Biochemistry 39、259〜266)、胃癌(Hondaら、2004 British Journal of Cancer 90、838〜843)、大腸癌(Kimら、2006 World Journal of Gastroenterology 12、5651〜5657)及び肺癌(NSCLC)(Scanlanら 2002 Immunol Rev.188:22〜32;Jangら 2001 Cancer Res.61、21:7959〜7963)を含む、多様な種類の腫瘍において発現される。精巣生殖細胞又は胎盤のみを例外として、いずれの正常成体組織においても発現が観察されていない。(Haasら、1988 Am J Reprod Immunol Microbiol 18:47〜51;Takahashiら、1995 Cancer Res 55:3478〜382)。
【0015】
免疫療法から恩恵を受けるであろう、CTAG1B、CTAG2及び/又はPRAMEを発現している患者を特異的に特定すること、用量の目的でCTAG1B、CTAG2及び/又はPRAMEの発現のモニタリングを行うこと、臨床試験においてCTAG1B、CTAG2及び/又はPRAMEを発現している試料を特定すること、又は単に癌を有する患者を早期に特定することができる、定量的な高処理アッセイがあることは重要である。いくつかの適用可能な診断法が記載されており、これらは、RNA抽出及びRT−PCRを応用する(例えば、以下の中に:Odunsiら、Cancer Research 63、6076〜6083、2003;Sharmaら、Cancer Immunity、第3巻、19ページ、2003)。
【0016】
既存のアッセイの最大に不利な点は、CTAG1B、CTAG2及び/又はPRAMEの発現を評価するのにRNAの単離を必要とすることである。ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)腫瘍組織は、臨床センター内で腫瘍組織を保存する通常の方法である。ホルマリン中での固定は、組織内のRNA分子の構造を変化させ、架橋、そして部分的な分解も引き起こす。この部分的な分解は、100〜300塩基対の間の、RNAのより小さな断片が生じることを導く。RNAに対するこうした構造的変化は、FFPE組織から抽出したRNAのCTAG1B、CTAG2、及び/又はPRAMEの発現レベルを測定するための使用を制限する。
【0017】
遺伝子メチル化
【0018】
遺伝子メチル化は、遺伝子発現の重要な制御因子である。特に、特定の遺伝子のプロモーター領域中のCpGジヌクレオチド対の中に見出されるシトシン残基におけるメチル化は、遺伝子発現の下方制御を通して多くの病態の原因となり得る。例えば、腫瘍抑制遺伝子の異常なメチル化は、それらの遺伝子の上方制御又は下方制御を導くことがあり、したがって、多くの癌の存在及び成長と関連している(Hoffmannら、2005 Biochem Cell Biol 83:296〜321)。異常な遺伝子メチル化のパターンは、由来する組織に特異的であることが多い。したがって、特定の遺伝子のメチル化状態の検出は、予後及び診断に有用である可能性があり、疾患の相対的段階の決定、さらには特定の種類の療法に対する反応性の予測の双方に使用することができる(Laird.2003 Nat Rev Cancer 3:253〜266)。
【0019】
CTAG1B、CTAG2、及び/又はPRAMEのメチル化状態は、癌組織においてある程度まで研究されている。DNAメチル化は、慢性骨髄性白血病(CLM)におけるPRAME遺伝子の高発現の直接的な原因となる分子機構であることが示唆されている。PRAMEのプロモーター、エキソン1及びエキソン2の解析により、PRAMEは、以下の3つのCpGアイランドを有することが明らかにされている:プロモーター内に位置する201bpのアイランド、エキソン1内にある204bpのアイランド及びエキソン2内にある310bpのアイランド、このうちエキソン2にあるCpGアイランドのみがエピジェネティック制御を示した(Gomez−Romanら、Leukemia Research 31(2007)1521〜1528)。DNAメチル化についてのDNA−トランケーション/トランスフェクション試験との組み合わせで、PRAMEの制御領域の規定の部分におけるメチル化パターンの変化は、通常はPRAME遺伝子を発現していない細胞におけるPRAMEの上方制御に十分であることも示されている。
【0020】
LAGE−1のメチル化状態も研究されている(De Smetら、(1999)Molecular and Cellular Biology:7327〜7335)。LAGE−1とLAGE−2/NY−ESO−1は配列類似性が高いので、これら2つの遺伝子のプロモーター配列のメチル化状態を識別するのは困難となっている。
【0021】
ゲル上での結果の可視化を伴うメチル化特異的PCR(Methylation−Specific PCR、MSP)(ゲルベースのMSPアッセイ)は、他の技術を使用した定量的な試験が開発されているにもかかわらず(Laird PW.、Nat Rev Cancer 2003;3:253〜66;Eadsら、Nucleic Acids Res 2000;28:E32;Mikeska Tら、J Mol Diagn 2007)、遺伝子のエピジェネティックサイレンシングを決定するために広く使用されている(Esteller Mら、Cancer Res 2001;61:3225〜9.)。
【0022】
蛍光に基づくいくつかの技術は、核酸増幅反応のリアルタイムモニタリングに利用できる。こうした技術の1つは、米国特許第6,090,552号及び欧州特許第0912597号に記載され、アンプリフルオル(Amplifluor)(登録商標)として商業的に知られている。この方法は、核酸増幅反応のエンドポイントモニタリングにも適している。Vlassenbroeckら(Vlassenbroeckら、2008.Journal of Molec.Diagn.、第10巻、第4号)は、アンプリフルオル(登録商標)技術を使用した、標準化された直接的なリアルタイムのMSPアッセイを記載している。
【0023】
本発明の一目的は、既存のアッセイの不利な点を排除した改良されたアッセイを提供することである。
【発明の概要】
【0024】
本発明は、発現を測定する改良された方法及び/又はアッセイに関する。本発明はさらに、特定の種類の療法、特に、本明細書に記載のオリゴヌクレオチド、プライマー、プローブ、プライマー対、キット及び/又は方法を使用して、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3を発現しているとして特定された患者の抗原特異的癌免疫治療薬(ASCI)に基づく治療に関する。CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3(タンパク質)の発現は、その遺伝子自体の発現レベルを測定するよりもむしろ、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子のメチル化状態を決定することによって検出される。本発明者は、本発明者のメチル化試験のメチル化状態の結果は、NSCLC、黒色腫及び乳癌の試料におけるCTAG1B、CTAG2及び/又はPRAMEの発現について、RT−PCRアッセイで得られる結果と良く一致していることを示している。qRT−PCRが困難であることが立証されている、例えば非小細胞肺癌からの細針生検などの試料の場合には、MageA3遺伝子のメチル化状態を決定することによって検出されるタンパク質発現が有用な代替を提供する。したがって、該アッセイは、治療に(適する)患者を選出すること、患者の治療に成功する可能性を予測することに有用であり、アッセイを使用して患者の療法選択を補助することができる。
【0025】
一態様において、本発明は、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、44、61、62又は63のうちのいずれかのヌクレオチド配列を含む、又は該配列から本質的になる、又は該配列からなるオリゴヌクレオチド、プライマー又はプローブを提供し、オリゴヌクレオチド、プライマー又はプローブは、遺伝子のメチル化状態の検出に有用である。
【0026】
オリゴヌクレオチド、プライマー又はプローブは、好ましくは、5’から3’の順に、以下の連続した配列:
(a)約6〜30ヌクレオチドの間の第1のヌクレオチド配列であって、第1のヌクレオチド配列中のヌクレオチドが、分子エネルギー移動対のドナー部分及びアクセプター部分から選択される第1の部分で標識され、ドナー部分が、励起されると1種又は複数の特定の波長で蛍光を放出し、アクセプター部分が、ドナー部分によって放出される蛍光を吸収及び/又は消光する、第1のヌクレオチド配列、
(b)約3〜20の間のヌクレオチドを含む、該ヌクレオチドから本質的になる、又は該ヌクレオチドからなる第2の一本鎖ヌクレオチド配列、
(c)約6〜30の間のヌクレオチドを含む、該ヌクレオチドから本質的になる、又は該ヌクレオチドからなる第3のヌクレオチド配列であって、第3のヌクレオチド配列中のヌクレオチドが、ドナー部分及びアクセプター部分から選択される第2の部分で標識され、第2の部分が、前記群のうち第1のヌクレオチド配列を標識していない方であり、第3のヌクレオチド配列が第1のヌクレオチド配列と逆の順に相補的であることにより、第1のヌクレオチド配列と第3のヌクレオチド配列との二重鎖を形成することができ、それにより、第1の部分と第2の部分とが近接していることによって、ドナー部分が励起されて蛍光を放出すると、アクセプター部分がドナー部分によって放出される蛍光を吸収して消光する、第3のヌクレオチド配列、及び
(d)プライマーの3’末端に、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、62及び63のうちのいずれかのヌクレオチド配列を3’末端に含む約8〜40の間のヌクレオチドを含む、該ヌクレオチドから本質的になる、又は該ヌクレオチドからなる第4の一本鎖ヌクレオチド配列
を含む、該配列から本質的になる、又は該配列からなり、
二重鎖が形成されない場合、第1の部分と第2の部分とが、第1の部分と第2の部分との間の分子エネルギー移動を妨げる距離で分離される。
【0027】
3’末端の特定のヌクレオチド配列は、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子のメチル化状態を決定できるようにする。これらのプライマーは、(本明細書で述べている)適切な試薬での処理後に非メチル化型のCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子に選択的に結合する。これらのオリゴヌクレオチドの性質については本明細書に述べており、その説明は準用される。この特異的ヌクレオチド配列は、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3ファミリー遺伝子のメチル化されている又はメチル化されていないDNAの一部を含む核酸鎖と相補的なヌクレオチド配列の、核酸ポリメラーゼによる合成を開始させることができる。
【0028】
最も好ましくは、オリゴヌクレオチド、プライマー又はプローブは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41又は61のヌクレオチド配列からなり、目的遺伝子の一部を増幅するために使用される。
【0029】
さらに提供されるのは、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、44、61、62又は63のうちのいずれかのヌクレオチド配列を含む、又は該配列から本質的になる、又は該配列からなるプライマーを含むプライマー対である。好適なプライマー対は、(本明細書で述べている)関連遺伝子の適切な部分の増幅を目的としたセンスプライマー及びアンチセンスプライマーに基づき、当業者によって容易に決定され得る。本発明のプライマー対の例は、表1に記載されている。請求項6にも、適切なプライマー対が記載されている。
【0030】
さらなる一態様において、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、44、61、62又は63のうちのいずれかのヌクレオチド配列を含む、又は該配列から本質的になる、又は該配列からなる、少なくとも1種のプライマー、プライマー対又はプライマーセットを含むキットが提供される。キットは、遺伝子、特に、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3のような遺伝子のメチル化状態を検出するためのものである。
【0031】
さらなる一態様において、本発明は、DNA含有試料中のCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子のメチル化状態を検出する方法を提供し、該方法は、
(a)DNA含有試料を、検出可能な修飾残基を生成するためにDNA中のメチル化されていないシトシン残基を選択的に修飾するが、メチル化されているシトシン残基は修飾しない試薬で接触/処理するステップと、
(b)プライマー対のうち少なくとも1つのプライマーがメチル化されている又はメチル化されていないDNAの配列にのみ結合するように設計された、少なくとも1種のプライマー対を使用して、試薬での処理後に、それぞれメチル化されている又はメチル化されていない目的遺伝子の少なくとも一部を増幅するステップであり、プライマー対のうちの少なくとも1つのプライマーは、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、44、61、62又は63のうち(適切な)任意のヌクレオチド配列を含む、該配列から本質的になる、又は該配列からなる、ステップと
を含む。
【0032】
さらなる一態様において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチド、プライマー若しくはプローブ、プライマー対、キット又は方法を使用することによって、試料中のCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子のメチル化状態を検出することを含む、癌又は癌素因を診断する方法が提供され、該方法において、試料中のメチル化されていないCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3の存在は、癌又は癌素因質を示す。
【0033】
さらなる一態様において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチド、プライマー若しくはプローブ、プライマー対、キット又は方法を使用することによって、試料中のCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子のメチル化状態を検出することを含む、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3陽性の腫瘍の存在を決定する方法が提供され、該方法において、メチル化されていないCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3の存在は、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3陽性の腫瘍の存在を示す。「CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3陽性の腫瘍」とは、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3抗原を発現する、(患者から単離された)あらゆる腫瘍又は腫瘍細胞を意味する。
【0034】
本発明はさらに、本明細書に記載のオリゴヌクレオチド、プライマー若しくはプローブ、プライマー対、キット又は方法を使用することによって、患者の試料中のCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子のメチル化状態を検出することを含む、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3免疫療法を用いた治療に適する患者を特定及び/又は選出する方法を提供し、該方法において、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子がメチル化されていない場合は、対象が、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3免疫治療薬を用いた治療に特定及び/又は選出される(ことが好ましい)。したがって、メチル化されていないCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3を有する患者は、該遺伝子がメチル化されている患者よりも好適である。
【0035】
これに対して、遺伝子がメチル化されていないのではなければ、対象は、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3免疫治療薬を用いた治療に特定及び/又は選出されないことが好ましい。
【0036】
関連する一態様において、本発明は、本明細書に記載のオリゴヌクレオチド、プライマー若しくはプローブ、プライマー対、キット又は方法を使用することによって、患者の試料中のCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子のメチル化状態を検出することを含む、癌の治療に成功する可能性を予測する方法が提供され、該方法において、遺伝子がメチル化されていない場合は、遺伝子がメチル化されている場合よりも、C CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3免疫治療薬を用いた治療に成功する可能性が高い。
【0037】
これに対して、試料中にメチル化されていないCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3がないことは、遺伝子がメチル化されていない場合よりも、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3免疫治療薬を用いた治療に対して抵抗性である可能性が高いことを示す。したがって、メチル化されているCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子の検出は、免疫治療薬を用いた治療に成功する可能性が低いことを示す。
【0038】
関連するさらなる一態様において、本発明は、本明細書に記載のオリゴヌクレオチド、プライマー若しくはプローブ、プライマー対、キット又は方法を使用することによって、患者の試料中のCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子のメチル化状態を検出することを含む、癌の適切な治療レジメンを選択する方法が提供され、該方法において、遺伝子がメチル化されていない場合は、免疫治療薬が治療に選択される。
【0039】
これに対して、遺伝子がメチル化されていないのではなければ、免疫治療薬を用いた治療は禁忌である。
【0040】
さらに、免疫治療薬の投与を含む、対象において癌を治療する方法が提供され、該方法において、本発明の方法のうちのいずれかによって、或いは本明細書に記載のオリゴヌクレオチド、プライマー若しくはプローブ、プライマー対、キット又は方法を使用することによって、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子のメチル化状態を測定することに基づいて、対象が治療に選出されている。
【0041】
本明細書に記載の種々の態様の全てについて、メチル化されていないCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子の検出が、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3タンパク質のレベルの増加に相当していることが好ましい。
【0042】
本発明は、本発明の方法のうちのいずれかによって、及び/又は本明細書に記載のオリゴヌクレオチド、プライマー若しくはプローブ、プライマー対、キット又は方法を使用することによって、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子のメチル化状態を測定することと、次いで、本明細書に記載のCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3を含む組成物を患者に投与することとを含む、患者を治療する方法をさらに提供する。該組成物は、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子がメチル化されていないことが見出された場合に投与されることが好ましい。
【0043】
さらなる一態様において、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3を発現する腫瘍を再発しやすい患者を治療する方法が提供され、患者が、腫瘍組織を除去するための治療を受けている。該方法は、本発明の方法のうちのいずれかによって、或いは本明細書に記載のオリゴヌクレオチド、プライマー若しくはプローブ、プライマー対、キット又は方法を使用することによって、腫瘍組織におけるCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子のメチル化状態を測定することと、次いで、本明細書に記載のCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3を含む組成物を患者に投与することとを、含む。組成物は、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子がメチル化されていないことが見出された場合に投与されることが好ましい。
【0044】
本発明のさらに他の一態様において、腫瘍を有する患者の治療用の医薬品の製造における、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3を含む組成物の使用が提供され、患者は、本発明の方法のうちのいずれかによって、或いは本明細書に記載のオリゴヌクレオチド、プライマー若しくはプローブ、プライマー対、キット又は方法を使用することによって、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子のメチル化状態を測定することに基づいて治療に選出されている。腫瘍を患っている患者の治療に使用するためのCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3を含む組成物も提供され、患者は、本発明の方法のうちのいずれかによって、或いは本明細書に記載のオリゴヌクレオチド、プライマー若しくはプローブ、プライマー対、キット又は方法を使用することによって、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子のメチル化状態を測定することに基づいて治療に選出されている。
【0045】
さらに他の一実施形態において、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3を発現する腫瘍を再発しやすい患者の治療用の医薬品の製造における、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3を含む組成物の使用が提供され、患者は、本発明の方法のうちのいずれかによって、或いは本明細書に記載のオリゴヌクレオチド、プライマー若しくはプローブ、プライマー対、キット又は方法を使用することによって、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子のメチル化状態を測定することに基づいて治療に選出されている。CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3を発現する腫瘍を再発しやすい患者の治療に使用するためのCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3を含む組成物も提供され、患者は、本発明の方法のうちのいずれかによって、或いは本明細書に記載のオリゴヌクレオチド、プライマー若しくはプローブ、プライマー対、キット又は方法を使用することによって、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子のメチル化状態を測定することに基づいて、治療に選出されている。
【発明の詳細な説明】
【0046】
本発明は、DNA含有試料中のメチル化されている又はメチル化されていないCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子の存在及び/又は量を検出するためのアッセイを提供する。このアッセイを開発するために、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子内でメチル化されやすい領域を同定すること、及び非メチル化型とメチル化型のCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子を識別できる特定のオリゴヌクレオチドを開発することが必要であった。
【0047】
したがって、第1の態様において、本発明は、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、44、61、62又は63のうちのいずれかのヌクレオチド配列を含む、又は該配列から本質的になる、又は該配列からなるオリゴヌクレオチド、プライマー又はプローブを提供する。これらのオリゴヌクレオチドは、目的遺伝子のメチル化状態の検出に有用である。オリゴヌクレオチドは、プライマー及び/又はプローブの役割を果たしてもよい。特定の実施形態において、オリゴヌクレオチドは、非メチル化型の遺伝子を検出する。特定の実施形態において、これらのオリゴヌクレオチドは、本明細書に記載され、配列番号43で代表されるヘアピン構造を含む。このような好ましいオリゴヌクレオチドは、非メチル化型の遺伝子を検出するために、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41又は61によるヌクレオチド配列を含む、該配列から本質的になる、又は該配列からなる。
【0048】
本発明の「遺伝子」又は「目的遺伝子」は、CTAG1B及び/又はCTAG2及び/又はPRAME及び/又はMageA3遺伝子であることが好ましい。
【0049】
「CTAG1B」は、HUGO遺伝子命名法委員会によって承認されている遺伝子記号である。該遺伝子はX染色体上;(部位:Xq28)に位置し、その遺伝子配列は登録番号U87459及びNM001327のもとで掲載されている。Ensembl遺伝子IDはENSG00000184033である。該遺伝子は、癌/精巣抗原1B[Homo sapiens]をコードする。CTAG1Bは、互換可能に、よく「CTAG1B」又は「CTAG」又は「CTAG1」又は「NY−ESO−1」又は「ESO1」又は「LAGE−2」又は「LAGE2B」と呼ばれ、本明細書では全てを使用している。該遺伝子の低メチル化は、例えば黒色腫、肺癌(NSCLCを含む)、前立腺癌又は卵巣癌のような、癌の発生と関連し得る。
【0050】
「CTAG2」は、HUGO遺伝子命名法委員会によって承認されている遺伝子記号である。該遺伝子はX染色体上;(部位:Xq28)に位置し、その遺伝子配列は登録番号AJ012833のもとで掲載されている。Ensembl遺伝子IDはENSG00000126890である。該遺伝子は、癌/精巣抗原2[Homo sapiens]をコードする。CTAG2は、互換可能に、よく「CTAG2」又は「CAMEL」又は「ESO2」又は「LAGE−1」又は「LAGE−2b」又は「MGC3803」又は「MGC138724」と呼ばれ、本明細書では全てを使用している。該遺伝子の低メチル化は、例えば黒色腫、肺癌(NSCLCを含む)、膀胱癌、前立腺癌、頭頸部癌、卵巣癌、子宮頸癌、大腸癌、食道癌又は肝細胞癌のような、癌の発生と関連し得る。
【0051】
「PRAME」は、HUGO遺伝子命名法委員会によって承認されている遺伝子記号である。該遺伝子は22番染色体上(部位:22q11.22)に位置し、その遺伝子配列は登録番号U65011及びNM206953のもとで掲載されている。Ensembl遺伝子IDはENSG00000185686である。該遺伝子は、黒色腫において選択的に発現される抗原をコードする[Homo sapiens]。PRAMEは、互換可能に、よく「MAPE」又は「OIP4」と呼ばれ、本明細書では全てを使用している。該遺伝子の低メチル化は、例えば子宮頸癌、前立腺癌、肺癌、卵巣癌、乳癌又は頭頸部扁平上皮癌のような、癌の発生と関連し得る。
【0052】
MAGEA3及びMAGEA6は、HUGO遺伝子命名法委員会によって承認されている遺伝子記号である。MAGEA3遺伝子はX染色体上(部位q28)に位置し、その遺伝子配列は登録番号NM005362及びENSG00000197172のもとで掲載されている。MAGE−A3遺伝子は、黒色腫抗原ファミリーA、3をコードする。MAGEA6遺伝子は、X染色体上(部位q28)に位置する。MAGE−A3は、互換可能に、よくMAGE−3又はMAGEA3と呼ばれる。同様に、MAGE−A6は、互換可能に、よくMAGE−6又はMAGEA6と呼ばれ、本明細書では全てを使用している。これらの遺伝子の低メチル化は、例えば黒色腫又は肺癌(NSCLCを含む)のような、癌の発生と関連し得る。
【0053】
メチル化を受けやすいCpGジヌクレオチドは、典型的には、ヒトの遺伝子のプロモーター及び/又はエキソン及び/又はイントロン領域に集中している。特定の実施形態において、遺伝子のメチル化状態は、遺伝子のプロモーター、イントロン、エキソン1及び/又はエキソン2領域におけるメチル化のレベルを決定することによって評価される。「プロモーター」は、転写開始点(Transcriptio Start Site、TSS)より上流の領域でありTSSから約10Kb、4Kb、3Kb、1Kb、500bp又は150〜300bpの間に広がる。プロモーター領域におけるCpGの分布が比較的まれな場合には、イントロン及び/又はエキソン領域においてメチル化のレベルを評価することもできる。評価のための領域は、イントロン配列及びエキソン配列の双方を含み、したがって双方の領域に重なっている領域であってもよい。
【0054】
「メチル化状況」又は「メチル化状態」という用語は、DNA配列中の1つ又は複数のCpGジヌクレオチドにおける5−メチルシトシン(「5−mCyt」)の存在又は欠如を意味する。「高メチル化」は、メチル化のレベルにおける、正常レベルを超える上昇として定義される。したがって、高メチル化は、遺伝子内の特定のCpG部位における、シトシン(5−mCyt)の異常なメチル化に関し、プロモーター領域中に多い。正常レベルのメチル化は、例えば非癌性細胞におけるメチル化のレベルを決定することによって定めることができる。
【0055】
「低メチル化」とは、(適切な対照試料中に見出される)「正常」DNA配列中の対応するCpGジヌクレオチドに見出される5−mCytの量に対して相対的な、(DNA試験試料の)DNA配列中の1つ又は複数のCpGジヌクレオチドに存在する5−mCytの減少を指す。ここでも、「正常」レベルのメチル化は、例えば非癌性細胞におけるメチル化のレベルを決定することによって定めることができる。本発明において、CTAG1B、CTAG2及び/又はPRAME遺伝子(又は特定の態様におけるMageA3)の低メチル化は、信頼できる癌の指標を提供する、この腫瘍関連抗原遺伝子の発現増加を示している。
【0056】
本発明は、第2の態様において、DNA含有試料を、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、44、61、62又は63のうちのいずれかのヌクレオチド配列を含む、該配列から本質的になる、又は該配列からなる少なくとも1種のオリゴヌクレオチドと接触させるステップを含む、DNA含有試料中のメチル化されている又はメチル化されていない遺伝子の存在及び/又は量を検出する方法を提供する。該方法は、遺伝子がメチル化されている又はメチル化されていないかどうかを評価するさらなるステップを含むことが好ましい。これは、本明細書で述べているように、オリゴヌクレオチドが、DNA含有試料中のDNAに安定に結合するかどうかによって決まり得る。
【0057】
メチル化状態を評価する技術は、別の方法に基づいている。本発明のオリゴヌクレオチドを利用する、任意の好適な技術を用いることができる。一実施形態において、メチル化されているCpGジヌクレオチドモチーフを検出する方法は、DNA中のメチル化されていないシトシン残基を選択的に修飾して検出可能な修飾残基を生成する試薬を使用する。試薬はメチル化されているシトシン残基を修飾しないため、好ましくは、核酸の増幅が関与する下流プロセスにおいて、メチル化されていない核酸分子とメチル化されている核酸分子とを識別することが可能になる。試薬は、一実施形態において、メチル化されていないシトシン残基を選択的に脱アミノ化するように作用してもよい。したがって、試薬に曝露した後に、メチル化されていないDNAは、対応するメチル化されているDNAのものとは異なるヌクレオチド配列を含む。シトシンの脱アミノ反応の結果、チミンと同様の塩基対形成特性を有し、したがって、シトシンの塩基対形成性質とは異なる、ウラシル残基が存在することになる。これにより、メチル化されているシトシンとメチル化されていないシトシンとの間の識別が可能になる。
【0058】
配列の相違を評価するための有用な従来技術は、オリゴヌクレオチドプライマーを使用する。プライマーを設計するための2つの方法が可能である。第1に、それ自身がDNAメチル化され得るいずれの部位も包含しないように、プライマーを設計することができる。示差的なメチル化の部位における配列の相違は2つのプライマー結合部位の間にあり、配列の相違の可視化にはさらなるアッセイのステップが必要とされる。第2に、最初に処理した配列のメチル化型又は非メチル化型のいずれかと特異的にハイブリッド形成するプようにライマーを設計することができる。ハイブリッド形成後、増幅反応を行い、当技術分野において知られている任意の検出システムを使用して増幅産物をアッセイすることができる。増幅産物の存在は、プライマーがDNAとハイブリッド形成したことを示す。プライマーの特異性は、DNAが修飾されているかいないかを示し、次にこれにより、DNAがメチル化されているかどうかを示す。標的に対して相補性の領域が十分である、例えば、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21又は22ヌクレオチドがある場合には、プライマーは、ハイブリッド形成を阻害しないが他の操作に有用であり得る追加のヌクレオチド残基も含んでもよい。他のこうした残基の例は、制限酵素切断のための部位、リガンド結合のための部位、又は因子結合若しくはリンカー若しくはリピートのための部位、又は可視化のための残基であってもよい。オリゴヌクレオチドプライマーは、修飾されたメチル化残基に特異的であるようなものであってもなくてもよい。プライマーとしての使用に好ましいオリゴヌクレオチドは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41又は61のうちのいずれかのヌクレオチド配列を含む、該配列から本質的になる、又は該配列からなる。
【0059】
修飾されている核酸と修飾されていない核酸とを識別するためのさらなる、かつ多くの場合、補足的な手段は、オリゴヌクレオチドプローブを使用することである。こうしたプローブは、修飾されている核酸又は、例えば増幅によって得られた産物のような、修飾された核酸のさらなる産物と直接ハイブリッド形成し得る。プローブに基づくアッセイは、特定の配列に対するオリゴヌクレオチドハイブリッド形成法と、これに続くそのハイブリッドの検出とを利用するものである。増幅産物を検出する前に、さらなる精製ステップ、例えば、沈澱ステップがあってもよい。オリゴヌクレオチドプローブは、当技術分野において知られている任意の検出システムを使用して標識することができる。こうしたシステムには、蛍光部分、放射性同位体標識部分、生物発光部分、発光部分、化学発光部分、酵素、基質、レセプター、又はリガンドが含まれるが、これらに限定されない。プローブとして使用するためのオリゴヌクレオチドは、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、44、61、62又は63のうちのいずれかのヌクレオチド配列を含む、該配列から本質的になる、又は該配列からなるものでもよい。好ましいオリゴヌクレオチドプローブは、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44及び61から選択されるヌクレオチド配列を含む、該配列から本質的になる、又は該配列からなることが好ましい。
【0060】
本明細書では、「オリゴヌクレオチドプライマー」を互換可能に「プライマー」と称する。同様に、本明細書では、「オリゴヌクレオチドプローブ」を互換可能に「プローブ」と称する。
【0061】
好ましい実施形態において、遺伝子(又はその一部、特に、CpGアイランド)のメチル化状態は、メチル化特異的PCR(MSP)を使用して決定する。
【0062】
MSP技術は、当業者に知られているであろう。MSP法では、亜硫酸水素ナトリウム処理の結果としての配列の相違を利用することにより、メチル化されているDNAからメチル化されていないDNAを識別するように設計されたプライマー対を使用して、DNAを増幅することができる(Herman JGら、Proc Natl Acad Sci U S A.1996年9月 3;93(18):9821〜6及び国際公開第97/46705号パンフレット)。リアルタイム定量MSP(QMSP)は、MSP技術の特定の例であり、リアルタイムでのメチル化DNAの信頼性の高い定量を可能にする。
【0063】
リアルタイム法は、一般的に、増幅の進行の連続的な光学的モニタリングに基づくものであり、産物中の試薬の取り込みを定量化することができ、その定量化により鋳型中の配列のコピー数が示される、蛍光標識された試薬を利用する。このような標識された試薬は、二本鎖DNAに優先的に結合し、二本鎖DNAの結合により蛍光が大きく増強される蛍光色素であってもよい。或いは、標識されたプライマー及び/又は標識されたプローブを使用することもできる。これらは、例えば、タックマン(TAQMAN)(登録商標)、モレキュラービーコン(MOLECULAR BEACONS)(登録商標)、アンプリフルオル(登録商標)及びスコーピオン(SCORPION)(登録商標)DzyNA(登録商標)などのような、よく知られており且つ商業的に入手可能なリアルタイム増幅技術の特定の用途を示すものである。これらのリアルタイム法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)と共に使用されることが多い。
【0064】
タックマンの技術では、蛍光色素及び消光色素を含む、直鎖状の加水分解オリゴヌクレオチドプローブが使用される。照射されると、励起された蛍光色素は、蛍光を放出するよりもむしろ、近くの消光色素分子にエネルギーを移動させる(FRET原理)。タックマンプローブは、PCR産物の内側の領域にアニーリングし、ポリメラーゼが鋳型を複製するときに、ポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ活性により切断される。これにより、消光剤の活性が終わり、レポーター色素が蛍光を放出し始め、その蛍光はプローブ切断の速度と比例してサイクル毎に増加する。
【0065】
モレキュラービーコンも蛍光色素及び消光色素を含むが、双方の色素を近づけて蛍光共鳴エネルギー移動(Fluorescence Resonance Energy Transfer、FRET)が生じるように、溶液中で遊離している間はヘアピン構造を取るように設計されている。アニーリングステップ中にビーコンが標的とハイブリッド形成する場合には、ヘアピンが直線状になり、双方の色素(ドナー及びアクセプター/消光剤)が分離される。ドナーから検出される蛍光の増加は、得られるPCR産物の量と相関するであろう。
【0066】
スコーピオンプローブでは、単一のオリゴヌクレオチドを使用して、配列特異的なプライミングとPCR産物の検出とを達成する。スコーピオンプローブは、ハイブリッド形成していない状態ではステムループ構造を維持しており、フルオロフォアと消光剤との間でFRETが生じる。このステムの3’部分は、プライマーの伸長産物と相補的な配列も含む。この配列は、増幅不可能な単量体を介して特異的プライマーの5’末端に連結される。スコーピオンプライマーの伸長後、特異的なプローブ配列は、伸長されたアンプリコン中の相補配列に結合することができ、これにより、ヘアピンループが開かれ、フルオロフォアと消光剤とが分離されて、蛍光シグナルを発生する。
【0067】
ヘビーメチル(Heavymethyl)では、プライミングはメチル化特異的であるが、プライマー自体の代わりに、伸長不可能なオリゴヌクレオチドブロッカーがこの特異性を提供する。ブロッカーは亜硫酸水素処理されたDNAにメチル化特異的な様式で結合し、その結合部位はプライマー結合部位と重複している。ブロッカーが結合すると、プライマーは結合することができず、したがって、アンプリコンは生成されない。ヘビーメチルは、リアルタイム検出と共に使用することができる。
【0068】
プレクサー(Plexor)(商標)qPCRシステム及びqRT−PCRシステムは、2個の修飾ヌクレオチド間の特異的な相互作用を利用して、定量PCR解析を達成するものである。PCRプライマーのうちの一方は、5’末端のイソ−dC残基に隣接する蛍光標識を含む。もう一方のPCRプライマーは、標識されない。この反応混合物は、デオキシヌクレオチドと、消光剤であるダブシルで修飾されたイソ−dGTPとを含む。ダブシル−イソ−dGTPは、イソ−dC残基と相補的な部位に優先的に取り込まれる。この部位におけるダブシル−イソ−dGTPの取り込みは、結果として相補鎖上での蛍光色素の消光及び蛍光の減少をもたらし、これにより、増幅中の定量が可能になる。これらの多重反応のために、それぞれの標的配列に対して、異なるフルオロフォアを有するプライマー対を使用する。
【0069】
したがって、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、44、61、62又は63のうちのいずれかのヌクレオチド配列を含む、該配列から本質的になる、又は該配列からなるオリゴヌクレオチドは、上記の方法において目的遺伝子のメチル化状態の検出用のプライマー又はプローブとして用いることもできる。
【0070】
好ましい一実施形態において、本発明は、DNA含有試料中のメチル化されている又はメチル化されていない目的遺伝子の存在及び/又は量を検出するリアルタイム法を提供し、該方法は、
(a)DNA含有試料を、検出可能な修飾残基を生成するためにDNA中のメチル化されていないシトシン残基を選択的に修飾するが、メチル化されているシトシン残基を修飾しない試薬で接触/処理するステップと、
(b)プライマー対のうち少なくとも1つのプライマーがメチル化されている又はメチル化されていないDNAの配列にのみ結合するように設計された、少なくとも1種のプライマー対を使用して、試薬での処理後に、それぞれメチル化されている又はメチル化されていない目的遺伝子の少なくとも一部を増幅するステップであり、プライマー対のうちの少なくとも1つのプライマーは、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、44、61、62又は63のうちのいずれかのヌクレオチド配列を含む、該配列から本質的になる、又は該配列からなるステップと
を含む。
【0071】
本発明の方法における目的遺伝子は、CTAG1B、CTAG2、MageA3及び/又はPRAME遺伝子であることが好ましい。好ましくは、プライマー対のうちの少なくとも1つのプライマーは、増幅のないときには、アクセプター部分がドナー部分によって放出される蛍光を(励起と同時に)消光し、増幅中には、ステムループ構造が破壊され、ドナー部分とアクセプター部分とが十分に分離されて検出可能な蛍光シグナルを発生するように配置された、分子エネルギー移動対のドナー及びアクセプター部分を有するステムループ構造を含むプライマーである。このシグナルは、メチル化されている又はメチル化されていない目的遺伝子の存在の指標を提供するために、リアルタイムで検出することができる。配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、44、61、62又は63のうちのいずれかのヌクレオチド配列を含む、該配列から本質的になる、又は該配列からなるプライマー対のうちのプライマーは、ステムループ構造を有することが好ましい。
【0072】
特定の実施形態において、メチル化されている又はメチル化されていない遺伝子の遺伝子コピー数が決定される。ここで、本明細書に記載の方法は、以下のさらなるステップ:
(c)遺伝子コピー数を得るため、リアルタイム検出の結果を、メチル化されている又はメチル化されていない目的遺伝子の標準曲線に対して定量するステップ
を含むことが好ましい。
【0073】
好ましくは、ステップ(c)は、サイクル閾値が40以下の場合に増幅が有効であると考えられることをさらに特徴とする。
【0074】
CTAG1B、CTAG2、MageA3及び/又はPRAME遺伝子のような遺伝子の場合、非メチル化型の遺伝子の検出が主に関連するであろう。
【0075】
本発明の方法は、メチル化されている又はメチル化されていない目的遺伝子の存在を試料中でリアルタイムに検出することを可能にする。本発明の方法は定量的な方法であるので、反応の進行と並行してメチル化型又は非メチル化型の目的遺伝子の(相対)量も決定することができる。
【0076】
しかし、リアルタイム法を利用しなくてはならないわけではない。試料中に標的DNAが存在するかしないかを知るためだけに、解析を行うこともできる。エンドポイントの増幅検出技術は、リアルタイムPCRのために広く使用されるのと同様の方法を利用する。したがって、本発明の方法は、DNA含有試料中のメチル化されている又はメチル化されていない目的遺伝子の存在及び/又は量を検出するエンドポイント法を包含し得る。
【0077】
したがって、本発明は、DNA含有試料中のメチル化されている又はメチル化されていない目的遺伝子の存在及び/又は量を検出する(エンドポイントの)方法を提供し、該方法は、
(a)DNA含有試料を、検出可能な修飾残基を生成するために、DNA中のメチル化されていないシトシン残基を選択的に修飾するが、メチル化されているシトシン残基を修飾しない試薬で接触及び/又は処理するステップと、
(b)プライマー対のうち少なくとも1つのプライマーがメチル化されている又はメチル化されていないDNAの配列にのみ結合するように設計された、少なくとも1種のプライマー対を使用して、試薬での処理後にそれぞれメチル化されている又はメチル化されていない目的遺伝子の少なくとも一部を増幅するステップであり、プライマー対のうちの少なくとも1つのプライマーは、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、44、61、62又は63のうちのいずれかのヌクレオチド配列を含む、該配列から本質的になる、又は該配列からなるステップと、
を含む。
【0078】
上述したように、本発明の方法における目的遺伝子は、CTAG1B、CTAG2、MageA3及び/又はPRAMEであることが好ましい。プライマー対のうちの少なくとも1つのプライマーは、本明細書に記載の特徴を有する分子エネルギー移動対のドナー及びアクセプター部分を有するステムループ構造を含むプライマーであることが好ましい。配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、44、61、62又は63のうちのいずれかのヌクレオチド配列を含む、該配列から本質的になる、又は該配列からなるプライマー対のうちのプライマーは、ステムループ構造を有することが好ましい。
【0079】
CTAG1B、CTAG2、MageA3及び/又はPRAME遺伝子の場合、非メチル化型の遺伝子の検出が主に関連するであろう。配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41又は61のうちのいずれかのヌクレオチド配列を含む、該配列から本質的になる、又は該配列からなるプライマーは、試薬での処理後にメチル化されていないCTAG1B、CTAG2及び/又はPRAMEのDNAを検出するために設計されている。
【0080】
メチル化されていない遺伝子がないということは、メチル化されている遺伝子があることを示している。
【0081】
メチル化されている又はメチル化されていない遺伝子の遺伝子コピー数が望まれる場合には、該方法は、以下のさらなるステップ:
(c)遺伝子コピー数を得るため、検出の結果をメチル化されている又はメチル化されていない目的遺伝子の標準曲線に対して定量するステップ
を含んでもよい。
【0082】
本発明の全ての実施形態は、本発明のエンドポイント態様に適用可能であり、したがって、それに準用する。エンドポイント分析には、増幅の終わりでの蛍光を決定するための蛍光プレートリーダー又は他の好適な装置の使用が想定され得る。
【0083】
本発明の方法は、任意の好適な(DNA含有)試験試料において行われるex vivo又はin vitroでの方法であることが最も好ましい。しかし、一実施形態では、方法は、試料を採取するステップも含んでもよい。試験試料は、DNA含有試料であり、特に、目的遺伝子を含むDNA含有試料である。本発明の方法は、疾患の診断に、特に、目的遺伝子のメチル化が疾患の発生と関連している(ことが知られている)場合に、使用することができる。
【0084】
DNA含有試料は、任意の好適な組織試料又は体液を含んでもよい。好ましくは、試験試料は、ヒト対象から採取される。癌に適用する場合、試料は、癌性であると疑われる組織又は代表的な体液から採取された組織試料を含んでもよい。
【0085】
CTAG1B、CTAG2、MageA3及び/又はPRAME遺伝子の低メチル化は、肺癌と関連づけられており、したがって、本発明を肺癌に適用することができる。したがって、一実施形態では、CTAG1B、CTAG2、MageA3及び/又はPRAME遺伝子に関する本発明の方法において使用される試験試料は、肺細胞又は肺細胞からの核酸(分子)を含むことが好ましい。最も好ましくは、試料は、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織である。肺癌には、非小細胞肺癌(NSCLC)及び小細胞肺癌(SCLC)の2種類がある。これらの名称は、腫瘍内で見つかる細胞の種類を簡単に説明するものである。試験試料は、非小細胞肺癌(NSCLC)からの細胞又は核酸を含むことが好ましい。NSCLCは、扁平上皮癌、腺癌、及び大細胞癌を含み、肺癌の約80%を占めている。好ましい一実施形態において、癌がNSCLCである場合、試料は、肺組織試料又は喀痰試料又は血清試料である。NSCLCは治癒が困難であり、利用可能な治療は、できる限り長く延命し、疾患の症状を緩和しようとするものになりがちである。NSCLCは最も一般的な種類の肺癌であり、不良転帰と関連する。
【0086】
CTAG1B、CTAG2、MageA3及び/又はPRAME遺伝子の低メチル化は、黒色腫とも関連があり、したがって、本発明は黒色腫に適用することもできる。黒色腫は組織病理学的用語でよく定義されている、色素沈着した、アクセスしやすい病変である。初期の水平増殖期(Radial Growth Phase、RGP)の黒色腫は、表皮及び真皮乳頭層に浸潤し得るが、転移能を有さない;この段階での切除は、ほぼ完全に治癒的である。その後の垂直増殖期(Vertical Growth Phase、VGP)は、より攻撃的な段階への移行を意味し、転移能がある。したがって、RGP/VGP移行時に起こる遺伝子発現の変化は、非常に興味深い。したがって、さらなる実施形態では、本発明の方法において使用されるさらに好ましい試験試料は、黒色腫細胞又は黒色腫細胞からの核酸を含む。好ましくは、試験試料は、皮膚病変から採取される。
【0087】
CTAG1B、CTAG2、MageA3及び/又はPRAME遺伝子の低メチル化は、乳癌とも関連があり、したがって、本発明を乳癌に適用することもできる。乳癌には、非侵襲性癌及び侵襲性癌の2種類の主なグループがある。非侵襲性癌には、上皮内小葉癌及び腺管上皮内癌が含まれる。都合の悪いことに、乳癌は基底膜を通して増殖することが多く、全乳癌のうちおよそ95%は浸潤性又は侵襲性の癌である。最も一般的な種類の侵襲性乳癌(約75%)は、侵襲性腺管癌であり、乳管内で発生し、管壁を通して広がる。侵襲性小葉癌は、乳腺内で発生し、侵襲性乳癌の10〜15%を占める。より一般的でない種類の侵襲性乳癌には、炎症性乳癌、乳頭のパジェット病、髄様癌、粘液癌、葉状腫瘍、及び管状癌が含まれる。まれに(約1%)、肉腫(結合組織の癌)が乳房内に発生する。個体は、侵襲性乳癌及び非侵襲性乳癌の一方か、他方、又はその組合せを発症し得る。したがって、さらなる実施形態では、本発明の方法において使用されるさらに好ましい試験試料は、乳房細胞又は乳房細胞からの核酸分子を含む。最も好ましくは、試験試料は、乳房組織から採取される。
【0088】
本発明の方法において使用される他のDNA含有試料としては、診断、予後、又は個別化医療用のための試料が挙げられる。こうした試料は、例えば、生検若しくは細針吸引などの外科的試料から、パラフィン包埋組織から、凍結腫瘍組織試料から、新鮮な腫瘍組織試料から、又は新鮮な若しくは凍結された体液から採取することができる。非限定的な例としては、全血、骨髄、脳脊髄液、腹膜液、胸膜液、リンパ液、血清、血漿、尿、乳び、便、射精液、喀痰、乳頭吸引液、唾液、スワブ検体、結腸洗浄検体及びブラシ検体などが挙げられる。組織及び体液は、任意の好適な方法を使用して採取することができ、そうした多くの方法は、当技術分野でよく知られている。パラフィン包埋検体の評価は、直接又は組織切片上で行うことができる。
【0089】
「試料」、「患者試料」及び「患者の試料」という用語は、上記のように、互換可能に使用され、患者からのDNA含有試料を意味することが意図される。
【0090】
本発明の方法は、精製された又は未精製のDNA含有試料において行うことができる。しかし、好ましい一実施形態において、DNAは、ステップ(a)(試薬処理ステップ)の前に、又は予備的なステップとして、DNA含有試料から単離/抽出/精製される。任意の好適なDNA単離技術を利用することができる。精製技術の例は、Molecular Cloning−A Laboratory Manual(第3版)、Sambrook及びRussell(特に、その中の付録8及び第5章を参照されたい)のような標準的な教科書中に見出すことができる。好ましい一実施形態において、精製は、DNAのアルコール沈殿に関するものである。好ましいアルコールとしては、エタノール及びイソプロパノールなどが挙げられる。好適な精製技術には、塩に基づく沈殿法も挙げられる。したがって、特定の一実施形態では、DNA精製技術は、混在物を沈殿させるための高濃度の塩の使用を含む。塩は、例えば、酢酸カリウム及び/又は酢酸アンモニウムを含む、それらから本質的になる、又はそれらからなるものでもよい。該方法は、アルコール沈澱を通して沈澱させた混在物を除去し、それに続きDNAを回収するステップをさらに含んでもよい。
【0091】
一代替実施形態では、DNA精製技術は、細胞溶解液から混在物を抽出するための有機溶媒の使用に基づく。したがって、一実施形態において、方法は、DNAを抽出するためのフェノール、クロロホルム及びイソアミルアルコールの使用を含む。好適な条件を用いて、確実に、混在物が有機相中に分離され、DNAが水相に残るようにする。
さらなるキットでは、磁気ビーズ、シリカ膜などを使用する。そうしたキットは当技術分野でよく知られており、市販されている。本発明の方法では、ピュアジーン(PUREGENE)(登録商標)DNA精製キットを使用することもできる。
【0092】
こうした精製技術の好ましい実施形態では、抽出したDNAを、エタノール沈澱又はイソプロパノール沈澱などのアルコール沈澱を通して回収する。
【0093】
ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)腫瘍組織は、臨床センター内で腫瘍組織を保存する通常の方法である。そうしたFFPE包埋試料は、DNA抽出の前に脱ろうステップを必要とする。好ましい一実施形態において、FFPE組織試料又はスライド上に固定した試料材料は、キシレン処理によって最初に脱ろうさせる。キシレンとの接触時間は、キシレンが試料と接触して相互作用できるようにするのに十分でなければならない。より好ましい一実施形態では、FFPE試料を、100%キシレン中で約2時間脱パラフィン化する。完全な脱パラフィン化を確実にするために、このステップをもう一度繰り返すこともできる。キシレン処理の後に、試料は70%エタノールを用いて再水和させる。
【0094】
本発明の方法は、必要に応じて、(同様に、ステップ(a)の前に、又は予備的なステップとして)、試料中の単離/抽出/精製されたDNAの定量も含んでもよい。試料中のDNAの定量は、任意の好適な手段を使用して達成することができる。核酸の定量は、例えば、分光光度計、蛍光光度計又はUVトランスイルミネーターの使用に基づくものであってもよい。好適な技術の例は、Molecular Cloning−A Laboratory Manual(第3版)、Sambrook及びRussell(特に、その中の付録8を参照されたい)のような標準的な教科書に記載されている。好ましい一実施形態では、DNAを定量するために、Molecular Probes、Invitrogenから入手可能なピコグリーン(Picogreen)(登録商標)dsDNA定量キットのようなキットを用いることもできる。
【0095】
本発明の方法は、検出可能な修飾残基を生成するためにDNA中のメチル化されていないシトシン残基を選択的に修飾する試薬に依存していてもよい。試薬の作用機序については、既に説明した。好ましい一実施形態において、検出可能な修飾残基を生成するためにDNA中のメチル化されていないシトシン残基を選択的に修飾するが、メチル化されているシトシン残基を修飾しない試薬は、亜硫酸水素塩試薬を含む、亜硫酸水素塩試薬から本質的になる、又は亜硫酸水素塩試薬からなる(Frommerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 1992 89:1827〜1831,)。いくつかの亜硫酸水素塩含有試薬が当技術分野で知られており、脱アミノ化反応を行うための好適なキットが市販されている(Zymo Research製のEZ DNAメチル化キットなど)。本発明の方法における使用のために特に好ましい試薬は、亜硫酸水素ナトリウムを含む、亜硫酸水素ナトリウムから本質的になる、又は亜硫酸水素ナトリウムからなる。
【0096】
試料中のDNAを試薬で処理すると、次は、試薬により引き起こされるヌクレオチド配列中の相違を検出する必要がある。この検出は、核酸増幅技術を用いて行う。既に述べたように、機能的に重要なメチル化は、プロモーター領域と最も一般的に関連している。特に、いわゆる「CpGアイランド」は、比較的高頻度のCpG残基を含み、遺伝子の転写開始点の近くに見出されることが多い。遺伝子の中には、例えばMAGE−3のように、プロモーター領域におけるCpGの分布が比較的まれなものもある。こうした場合には、遺伝子のイントロン領域及びエキソン領域をメチル化について評価することが適切な場合もある。目的遺伝子中のCpGアイランドを特定することができる様々なソフトウェアプログラムが存在する。したがって、本発明の方法は、少なくとも1種のプライマー対を使用して、メチル化されている又はメチル化されていない目的遺伝子の少なくとも一部を増幅することを含んでもよい。上述のように、メチル化状態を調べる目的残基は、典型的には、目的遺伝子の規定のCpGアイランド及び/又はプロモーター領域及び/又はイントロン領域及び/又はエキソン領域中に見出されるため、プライマー対は、典型的には、遺伝子の全体よりもむしろ、(領域中の)一部のみを増幅するであろう。目的遺伝子の存在の信頼できる指標として増幅産物を検出可能であるならば、遺伝子の任意の好適な部分を本発明の方法に従って増幅することができる。特に容易に検出可能な増幅産物は、約50〜250bpの間である。さらにより好ましくは、メチル化されている又はメチル化されていない目的遺伝子の増幅のための少なくとも1種のプライマー対を使用する増幅により、約100〜200bpの間又は50〜100bpの間の増幅産物が生成される。これは、組織試料、特に、典型的に得られるDNAの質が限られ、より小さいアンプリコンが望まれることもあるパラフィン包埋試料では、特に重要である。好ましい一実施形態において、検出可能な増幅産物は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、62及び63のうちのいずれかのヌクレオチド配列を少なくとも含む。好ましくは、(約)50bp、51bp、52bp、53bp、54bp、55bp、56bp、57bp、58bp、59bp、60bp、61bp、62bp、63bp、64bp、65bp、66bp、67bp、68bp、69bp、70bp、71bp、72bp、73bp、74bp、75bp、76bp、77bp、78bp、79bp、80bp、81bp、82bp、83bp、84bp、85bp、86bp、87bp、88bp、89bp、90bp、91bp、92bp、93bp、94bp、95bp、96bp、97bp、98bp、99bp、100bp、101bp、102bp、103bp、104bp、105bp、106bp、107bp、108bp、109bp、110bp、111bp、112bp、113bp、114bp、115bp、116bp、117bp、118bp、119bp、120bp、121bp、122bp、123bp、124bp、125bp、126bp、127bp、128bp、129bp、130bp、131bp、132bp、133bp、134bp、135bp、136bp、137bp、138bp、139bp、140bp、141bp、142bp 143bp、144bp、145bp、146bp、147bp、148bp、149bp、又は150bpの増幅産物が生成される。
【0097】
プライマー対のうちの少なくとも1つのプライマー、及び好ましくは双方のプライマーは、試薬での処理後に、メチル化されている又はメチル化されていないDNAの配列にのみ結合するように設計される。したがって、プライマーは、方法が行われる用途に応じて、(試薬での処理後に修飾されていないままである)メチル化型の遺伝子又は(試薬によって修飾される)非メチル化型の遺伝子のいずれかとのみ塩基対を形成することによって、メチル化されている遺伝子とメチル化されていない遺伝子とを識別する働きをする。したがって、プライマーは、目的遺伝子中の少なくとも1個のメチル化部位を包含しなければならない。好ましくは、プライマーは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7又は8個のメチル化部位を含む遺伝子の領域に結合する。最も好ましくは、プライマーは、プライマー結合部位中のCpG対にある全シトシン残基がメチル化されている配列又はメチル化されていない配列−すなわち、「完全にメチル化されている」配列又は「完全にメチル化されていない」配列に結合するように設計される。しかし、1個又は数個のメチル化部位のみが機能的に重要性がある場合には、プライマーは、有効な結合が生じるよう、にこれらの残基のみがメチル化されている(シトシンとして残る)又はメチル化されていない(ウラシルに変換される)必要のある標的配列に結合するように設計することができる。他の(機能的に関連のない)潜在的なメチル化の部位を、適切なプライマー設計を通して完全に回避する、又は重要性のより少ないこれらの部位のメチル化状態とは無関係に結合するようにプライマーを設計することもできる(例えば、プライマー配列中の適切な位置にG残基とA残基とを混在させることによる)。したがって、最初のDNA含有試料中にメチル化型又は非メチル化型の目的遺伝子が存在する場合にのみ、増幅産物が予想される。これに加えて又はこれに代えて、例えば、遺伝子が、機能的に重要なメチル化されている部位と、別の機能的に重要なメチル化されていない部位とを含む場合のように、プライマー対のうちの少なくとも一方のプライマーが、試薬での処理後にメチル化されていないDNAの配列にのみ結合し、他方のプライマーが、処理後にメチル化されているDNAにのみ結合することが好適な場合もある。
【0098】
好ましくは、プライマー対のうちの少なくとも1つのプライマーは、分子エネルギー移動対のドナー及びアクセプター部分を有するステムループ構造又は「ヘアピン」構造を含むプライマーである。このプライマーは、所望により、メチル化されているDNAとメチル化されていないDNAとを識別するプライマーであってもなくてもよい。プライマーは、増幅のないときには、アクセプター部分がドナー部分によって放出される蛍光を励起と同時に消光するように配置される。したがって、プライマーによって導かれる増幅の前には、又は増幅のないときには、ステムループ構造又は「ヘアピン」構造は完全なままである。ドナー部分によって放出される蛍光は、アクセプター部分によって効果的に受容され、蛍光の消光を導く。
【0099】
増幅中には、プライマーのステムループ又はヘアピン構造の形状が変更される。特に、プライマーが増幅産物中に、特に二本鎖DNA中に組み込まれると、(特に、2回目の増幅中に)ステムループ又はヘアピン構造が破壊される。構造におけるこの変化は、アクセプター部分が、ドナー部分によって放出される蛍光をもはや効果的に消光することができないほど十分にドナー部分とアクセプター部分とを分離する。したがって、ドナー部分は、検出可能な蛍光シグナルを生成する。このシグナルは、メチル化されている又はメチル化されていない目的遺伝子の遺伝子コピー数の指標を得るために、リアルタイムで検出される。
【0100】
したがって、本発明の方法は、分子エネルギー移動(molecular energy transfer、MET)標識で検出可能に標識された核酸の増幅用のオリゴヌクレオチドを利用することができる。プライマーは、MET対のドナー及び/又はアクセプター部分を含み、増幅産物がMET対のドナー及びアクセプター部分の双方を含むように、増幅反応の増幅産物中に組み込まれる。
【0101】
増幅産物が二本鎖である場合には、増幅産物中に組み込まれるMET対は同一の鎖上にあってもよく、増幅が三重増幅である場合には、反対の鎖上にあってもよい。増幅で使用されるポリメラーゼが5’−3’エキソヌクレアーゼ活性を有する特定の例では、このエキソヌクレアーゼ活性により、増幅産物集団のうちの少なくとも一部からMET対部分のうちの1つが切断されてもよい。こうしたエキソヌクレアーゼ活性は、本発明の増幅法に対して有害ではない。
【0102】
本明細書で述べている本発明の方法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、三重増幅、及び他の増幅システムを含む、核酸配列を増幅するための多くの方法に適合可能である。
【0103】
好ましい一実施形態において、METは蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)であり、ここで、オリゴヌクレオチドは、ドナー部分によって放出される蛍光エネルギーがアクセプター部分によって吸収されるように、ドナー部分がフルオロフォアであり、アクセプター部分がフルオロフォアであってもよい、ドナー及びアクセプター部分で標識される。アクセプター部分は、消光剤であってもよい。したがって、増幅プライマーは、ドナー及びアクセプター部分の双方を含むヘアピンプライマーであり、アクセプター部分がドナー部分の蛍光を消光するように構成される。プライマーが増幅産物中に組み込まれると、その構造が変化して、消光が排除され、ドナー部分の蛍光を検出することができる。
【0104】
本発明の方法により、組み込まれなかったオリゴヌクレオチドを予め分離することなく増幅産物を検出することができる。さらに、これらの方法は、標識されたオリゴヌクレオチドを増幅産物中に組み込むことによって、増幅産物を直接検出することを可能にする。
【0105】
好ましい一実施形態において、本発明の方法は、参照遺伝子の発現を決定することも含む。参照遺伝子は、異なる試料間での比較を可能にするために重要である。比較する試料間で安定且つ信頼性の高い様式で発現されると考えられる適切な遺伝子を選択することにより、目的遺伝子と共に参照遺伝子の増幅を検出するで、最初に入れた材料の量、酵素の効率、試料の分解などのような試料間のばらつきが考慮される。参照遺伝子は、理想的には、信頼性の高い量の、最初に入れたDNAの存在下で、試験する試料間で定常的に発現されているものでなければならない。したがって、目的遺伝子から得られる結果を、参照遺伝子の対応するコピー数に対して標準化することができる。本発明に好適な参照遺伝子としては、ベータアクチン、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、18SリボソームRNAなどのリボソームRNA遺伝子及びRNAポリメラーゼII遺伝子などが挙げられる(Radonic A.ら、Biochem Biophys Res Commun.2004年1月 23;313(4):856〜62)。特に好ましい一実施形態では、参照遺伝子はベータアクチンである。
【0106】
したがって、本発明の方法は、プライマー対のうちの少なくとも1つのプライマーが上記の特徴を有するステムループ構造を含むプライマーである、少なくとも1種のプライマー対を使用して、参照遺伝子の少なくとも一部を増幅することを、さらに特徴としてもよい。
【0107】
参照遺伝子の存在の信頼できる指標として増幅産物を検出可能であるならば、参照遺伝子の任意の好適な部分を本発明の方法に従って増幅することができる。特に容易に検出可能な増幅産物は、約50〜250bpの間である。さらにより好ましくは、参照遺伝子の増幅のための少なくとも1種のプライマー対を使用する増幅により、約50bp〜150bpの間の増幅産物が生成される。これは、組織試料、特に、典型的に得られるDNAの質が限られるパラフィン包埋試料では、特に重要である。
【0108】
参照遺伝子が本発明の方法に含まれる実施形態において、該方法は、(リアルタイム)検出の結果をメチル化されている又はメチル化されていない目的遺伝子の標準曲線に対して定量することを含む該方法のステップが、参照遺伝子のリアルタイム検出の結果を参照遺伝子の標準曲線に対して定量して、それぞれの場合の遺伝子コピー数の出力を得ることも含み、任意でさらに、メチル化されている又はメチル化されていない目的遺伝子の遺伝子コピー数を参照遺伝子の遺伝子コピー数で除算することによって、これらの結果を標準化することを含むことを、さらに特徴としていてもよい。
【0109】
ここでも、該方法は、サイクル閾値が40以下の場合に増幅が有効であると考えられることを特徴付けられてもよい。
【0110】
参照遺伝子の少なくとも一部の増幅には、一般的に、少なくとも1種のプライマー対が利用される。好ましくは、プライマー対のうちの少なくとも1つのプライマーは、分子エネルギー移動対のドナー及びアクセプター部分を有するステムループ構造を含む、目的遺伝子のためのプライマーである。増幅中のこうした構造の作用機序については、本明細書中で説明している。
【0111】
本発明の方法において使用される「ヘアピン」プライマーは、米国特許第6,090,552号及び欧州特許第0912597号に記載されているようなものであることが最も好ましく、これらの開示は、本明細書にその全体が組み込まれている。これらのプライマーは、アンプリフルオル(登録商標)プライマーとして商業的に知られている。したがって、特に好ましい一実施形態において、目的遺伝子及び/又は参照遺伝子の一部を増幅するために使用される、ステムループ構造を含むプライマーは、5’から3’の順に、以下の連続した配列:
(a)約6〜30ヌクレオチドの間の第1のヌクレオチド配列であって、第1のヌクレオチド配列中のヌクレオチドが、分子エネルギー移動対のドナー部分及びアクセプター部分から選択される第1の部分で標識され、ドナー部分が、励起されると1種又は複数の特定の波長で蛍光を放出し、アクセプター部分が、ドナー部分によって放出される蛍光を吸収及び/又は消光する、第1のヌクレオチド配列、
(b)約3〜20の間のヌクレオチドを含む、該ヌクレオチドから本質的になる、又は該ヌクレオチドからなる第2の一本鎖ヌクレオチド配列、
(c)約6〜30の間のヌクレオチドを含む、該ヌクレオチドから本質的になる、又は該ヌクレオチドからなる第3のヌクレオチド配列であって、第3のヌクレオチド配列中のヌクレオチドが、ドナー部分及びアクセプター部分から選択される第2の部分で標識され、第2の部分が、前記群のうち第1のヌクレオチド配列を標識していない方であり、第3のヌクレオチド配列が第1のヌクレオチド配列と逆の順に相補的であることにより、第1のヌクレオチド配列と第3のヌクレオチド配列との二重鎖を形成することができ、それにより、第1の部分と第2の部分とが近接していることによって、ドナー部分が励起されて蛍光を放出すると、アクセプター部分がドナー部分によって放出される蛍光を吸収して消光する、第3のヌクレオチド配列、及び
(d)プライマーの3’末端に、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、62及び63のうちのいずれかの配列を3’末端に含む(したがって、核酸ポリメラーゼによる、遺伝子のメチル化されている又はメチル化されていないDNAの部分を含む核酸鎖と相補的なヌクレオチド配列の合成を開始することができる)、約8〜40の間のヌクレオチドを含む、該ヌクレオチドから本質的になる、又は該ヌクレオチドからなる第4の一本鎖ヌクレオチド配列、と
を含む、該配列から本質的になる、又は該配列からなり、二重鎖が形成されない場合、第1の部分と第2の部分とが、第1の部分と第2の部分との間の分子エネルギー移動を妨げる距離で分離される。
【0112】
特に好ましい一実施形態において、ドナー部分とアクセプター部分とは、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)対を形成する。分子エネルギー移動(MET)は、それによってエネルギーがドナー分子とアクセプター分子との間で無放射的に受け渡されるプロセスである。蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)は、METの形態である。FRETは特定の化合物の特性から生じる;該化合物は、特定の波長の光への曝露によって励起されると、別の波長で光を放出する(すなわち、蛍光を発する)。こうした化合物は、フルオロフォアと呼ばれる。FRETにおいて、エネルギーは、フルオロフォアであるドナー分子と、アクセプター分子との間で長距離(10〜100Å)に渡って無放射的に受け渡される。ドナーは光子を吸収し、このエネルギーをアクセプターに無放射的に移動させる(Forster、1949、Z.Naturforsch.A4:321〜327;Clegg、1992、Methods Enzymol.211:353〜388)。励起スペクトルと放出スペクトルとが重複している2種類のフルオロフォアが近くにある場合には、1種のフルオロフォアの励起は、このフルオロフォアが、第2のフルオロフォアによって吸収されてそれを刺激するような波長で光を放出し、次いで、第2のフルオロフォアが蛍光を発することになる。換言すれば、第1の(ドナー)フルオロフォアの励起状態のエネルギーは、近くにある第2の(アクセプター)フルオロフォアとの共鳴誘導性双極子−双極子相互作用によって移動する。結果として、ドナー分子の寿命が減少してその蛍光は消光されるが、アクセプター分子の蛍光強度は増強されて偏光が解消される。ドナーの励起状態のエネルギーがフルオロフォアではないアクセプターに移動する場合には、その後アクセプターによる蛍光の放出なく、ドナーの蛍光は消光される。この場合、アクセプターは消光剤として機能する。本発明では、消光剤及びアクセプターの双方を使用することができる。蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)に関与し得る分子対は、FRET対と呼ばれる。エネルギー移動が起こるためには、ドナー分子とアクセプター分子とが、典型的には、近い位置になければならない(最長で70〜100Å)(Clegg、1992、Methods Enzymol.211:353〜388;Selvin、1995、Methods Enzymol.246:300〜334)。エネルギー移動の効率は、ドナー分子とアクセプター分子との距離と共に急速に低下する。Forster(1949、Z.Naturforsch.A4:321〜327)によれば、エネルギー移動の効率はD×10−6に比例し、ここで、Dはドナーとアクセプターとの間の距離である。事実上、これは、FRETが約70Åまでの距離で最も効率よく起こり得ることを意味する。FRETに一般に使用される分子については、別の節で述べている。フルオロフォアがドナーであるか又はアクセプターであるかは、その励起スペクトル及び放出スペクトル、並びに共に対形成したフルオロフォアによって決まる。例えば、FAMは488nmの波長を有する光によって最も効率よく励起され、500〜650nmのスペクトル、及び525nmの発光極大を有する光を放出する。FAMは、JOE、TAMRA、及びROX(これらは全て514nmの励起極大を有する)と共に使用するのに好適なドナーフルオロフォアである。
【0113】
特に好ましい一実施形態において、ドナー部分はフルオレセイン又はその誘導体であり、アクセプター部分はDABCYLである。好ましくは、フルオレセイン誘導体は、6−カルボキシフルオレセインを含む、6−カルボキシフルオレセインから本質的になる、又は6−カルボキシフルオレセインからなる。
【0114】
MET標識を、プライマー中の任意の好適な位置に付加することができる。特に好ましい一実施形態において、ドナー及びアクセプター部分は、ステムループが完全である間には、これらの部分が互いに物理的に近くにあるように、ステムループ構造内の相補的なヌクレオチド上に配置される。しかし、本発明のプライマーは、増幅がないときにはそれぞれのドナーとアクセプターとの間でのMET/FRETを可能にし、プライマーが増幅産物中に組み込まれるとドナーとアクセプターとの分離を可能にするのに有効な任意の位置に該部分で標識することができる。
【0115】
ステムループ又はヘアピン構造の配列は、標的遺伝子(目的遺伝子又は参照遺伝子)に結合しないため、標的遺伝子のヌクレオチド配列に依存しない。したがって、目的配列のリアルタイム検出を容易にする配列特異的プライマーとその後組み合わせることができる「ユニバーサル」なステムループ配列又はヘアピン配列を設計することもできる。配列の主な必要条件は、その配列が、増幅のないときに安定な(したがって、効率的な消光を確実にする)ステムループ/ヘアピン構造を形成することである。したがって、プライマーの配列特異的部分は、鋳型鎖に結合し、相補鎖の合成を導く。したがって、プライマーは、1回目の増幅で増幅産物の一部になる。相補鎖が合成されるときには、ステムループ/ヘアピン構造を通って増幅が起こる。これにより、フルオロフォア分子と消光剤分子とが分離され、したがって、増幅が進行するにつれて蛍光の発生が誘導される。
【0116】
ステムループ構造は、増幅に使用されるプライマーの配列特異的部分の5’末端に見出されることが好ましい。
【0117】
上記のように、この検出配列は、一般的には、FRET対で標識される。好ましくは、FRET対のうち一方の部分は、配列の5’末端の方向に、5’末端の近く、又は5’末端に見出され、もう一方の部分は、配列の3’末端の方向に、3’末端の近く、又は3’末端に見出され、これにより、ステムループ又はヘアピン構造が完全なままであるときには、2つの部分の間でFRETが有効である。
【0118】
実験の節に詳述するように、本発明の方法の感度及び特異性を確実にするために、プライマーを注意深く選択しなければならない。したがって、遺伝子のメチル化状態を検出するのに使用される特に好ましいプライマーとしては、以下に記載のヌクレオチド配列を含む、該配列から本質的になる、又は該配列からなるプライマーが挙げられる:
5’― AGCGATGCGTTCGAGCATCGCUGGAAGGTGGGGGAGAGTG ―3’ (配列番号 1)
及び/または、
5’ ― AAAACAACACAACCCCAAAAA ― 3’ (配列番号 2)
及び/または、
5’ ― AGCGATGCGTTCGAGCATCGCUAAAACAACACAACCCCAAAAA ― 3’ (配列番号 3)
及び/または、
5’ ― GGAAGGTGGGGGAGAGTG ― 3’ (配列番号 4)
及び/または、
5’― AGCGATGCGTTCGAGCATCGCUGGGTTGGAGAGTTGTTTGTTTG ― 3' (配列番号 5)
及び/または、
5 '― CACATCTCCCCCACCTCCT ― 3' (配列番号 6)
及び/または、
5’ ― AGCGATGCGTTCGAGCATCGCUCACATCTCCCCCACCTCCT ― 3’ (配列番号 7)
及び/または、
5' ― GGGTTGGAGAGTTGTTTGTTTG ― 3'(配列番号 8)
及び/または、
5' ― AGCGATGCGTTCGAGCATCGCUTGGTGGTGTTGTTTTTGTGT ― 3'(配列番号 9)
及び/または、
5' ― CTTAACCCTATTATCTCCATCTC ― 3'(配列番号 10)
及び/または、
5’ ― AGCGATGCGTTCGAGCATCGCUCTTAACCCTATTATCTCCATCTC ― 3’ (配列番号 11)
及び/または、
5’ ― TGGTGGTGTTGTTTTTGTGT ― 3’(配列番号 12)
及び/または、
5’ ― AGCGATGCGTTCGAGCATCGCUGGTGGTTTTGAAGGATTTTATTG ― 3’ (配列番号 13)
及び/または、
5' ― ACCCAACACCTTCCCTATCCT ― 3' (配列番号 14)
及び/または、
5’ ― AGCGATGCGTTCGAGCATCGCUACCCAACACCTTCCCTATCCT ― 3’(配列番号 15)
及び/または、
5’ ― GGTGGTTTTGAAGGATTTTATTG ― 3’ (配列番号 16)
及び/または、
5' ― AGCGATGCGTTCGAGCATCGCUTTTTGTTTTGGGATGTTGTATTTT ― 3' (配列番号 17)
及び/または、
5’ ― CCTCATCCACCCAACACCTT ― 3’(配列番号 18)
及び/または、
5’ ― AGCGATGCGTTCGAGCATCGCUCCTCATCCACCCAACACCTT ― 3’(配列番号 19)
及び/または、
5’ ― TTTTGTTTTGGGATGTTGTATTTT ― 3’(配列番号 20)
及び/または、
5’ ― AGCGATGCGTTCGAGCATCGCUTGGGTTTGTAGTGTTTTAGTATTGTTT ― 3’(配列番号 21)
及び/または、
5’ ― TCCACCCTACTTTCCCTACATTC ― 3’(配列番号 22)
及び/または、
5’ ― AGCGATGCGTTCGAGCATCGCUTCCACCCTACTTTCCCTACATTC ― 3’(配列番号 23)
及び/または、
5’ ― TGGGTTTGTAGTGTTTTAGTATTGTTT ― 3’(配列番号 24)
及び/または、
5’ ― AGCGATGCGTTCGAGCATCGCUTTGTTTTGGGATATTTTATTTGTTTT ― 3’(配列番号 25)
及び/または、
5’ ― AAAAACTCCACCCTACTTTCC ― 3’(配列番号 26)
及び/または、
5’ ― AGCGATGCGTTCGAGCATCGCUAAAAACTCCACCCTACTTTCC ― 3’(配列番号 27)
及び/または、
5’ ― TTGTTTTGGGATATTTTATTTGTTTT ― 3’(配列番号 28)
及び/または、
5’ ― AGCGATGCGTTCGAGCATCGCUGAGGGGAGGGGTGTGAATGTG ― 3’(配列番号 29)
及び/または、
5’ ― CATTCCTCCCTACTCCCAAAAA ― 3’(配列番号 30)
及び/または、
5’ ― AGCGATGCGTTCGAGCATCGCUCATTCCTCCCTACTCCCAAAAA ― 3’(配列番号 31)
及び/または、
5’ ― GAGGGGAGGGGTGTGAATGTG ― 3’(配列番号 32)
及び/または、
5’ ― AGCGATGCGTTCGAGCATCGCUTGGTGGATGTTTTGGGATTT ― 3’(配列番号 33)
及び/または、
5’ ― CAACATTTCTACCTCTACTCCCACCTT ― 3’(配列番号 34)
及び/または、
5’ ― AGCGATGCGTTCGAGCATCGCUCAACATTTCTACCTCTACTCCCACCTT ― 3’(配列番号 35)
及び/または、
5’ ― TGGTGGATGTTTTGGGATTT ― 3’(配列番号 36)
及び/または、
5’ ― AGCGATGCGTTCGAGCATCGCUGTTTTGGAAGGATTGAGAAATGG ― 3’(配列番号 37)
及び/または、
5’ ― CACCCTAACCACTACATAAAACAAA ― 3’(配列番号 38)
及び/または、
5’ ― AGCGATGCGTTCGAGCATCGCUCACCCTAACCACTACATAAAACAAA ― 3’(配列番号 39)
及び/または、
5’ ― GTTTTGGAAGGATTGAGAAATGG ― 3’(配列番号 40)
及び/または、
5’ ― AGCGATGCGTTCGAGCATCGCUTAGGGAGTATATAGGTTGGGGAAGTT ― 3’(配列番号 41)
及び/または、
5’ ― AACACACAATAACAAACACAAATTCAC ― 3’(配列番号 42)
及び/または、
5’ ―AGGGAGTATATAGGTTGGGGAAGTT ― 3’(配列番号 44)
及び/または、
5 '― AGCGATGCGTTCGAGCATCGCUTGGAATTTAGGGTAGTATTGT― 3' (配列番号 61)
及び/または、
5’ ― CCCTCCACCAACATCAAA ― 3’ (配列番号 62)
及び/または、
5’― TGGAATTTAGGGTAGTATTGT ― 3' (配列番号 63)。
【0119】
配列番号4及び8は、亜硫酸水素塩で変換されたメチル化されていないCTAG1Bの配列と相補的なフォワードプライマー(センスプライマー)配列である。
【0120】
配列番号12、16及び20は、亜硫酸水素塩で変換されたメチル化されていないCTAG2の配列と相補的なフォワードプライマー(センスプライマー)配列である。
【0121】
配列番号24、28、32、36及び40は、亜硫酸水素塩で変換されたメチル化されていないPRAMEの配列と相補的なフォワードプライマー(センスプライマー)配列である。
【0122】
配列番号43は、ヘアピン構造の配列である。
【0123】
配列番号1、5、9、13、17、21、25、29、33、及び37は、ヘアピン構造の配列と、それぞれ配列番号4、8、12、16、20、24、28、32、36及び40の配列とを含む。
【0124】
配列番号2及び6は、亜硫酸水素塩で変換されたメチル化されていないCTAG1Bプロモーターの配列と相補的なリバースプライマー(アンチセンスプライマー)配列である。
【0125】
配列番号10、14及び18は、亜硫酸水素塩で変換されたメチル化されていないCTAG2プロモーターの配列と相補的なリバースプライマー配列である。
【0126】
配列番号22、26、30、34及び38は、亜硫酸水素塩で変換されたメチル化されていないPRAMEプロモーターの配列と相補的なリバースプライマー配列である。
【0127】
配列番号3、7、11、15、19、23、27、31、35及び39は、ヘアピン構造の配列と、配列番号2、6、10、14、18、22、26、30、34及び38の配列とを含む。
【0128】
配列番号42及び44は、亜硫酸水素塩で変換されたメチル化されているベータアクチン遺伝子の配列と相補的なフォワードプライマー配列及びリバースプライマー配列である;配列番号41は、ヘアピン構造の配列と配列番号44の配列とを含む。
【0129】
配列番号63は、亜硫酸水素塩で変換されたメチル化されていないMageA3の配列と相補的なフォワードプライマー(センスプライマー)配列である。
【0130】
配列番号61は、ヘアピン構造の配列と配列番号63の配列とを含む。
【0131】
配列番号62は、亜硫酸水素塩で変換されたメチル化されていないMageA3の配列と相補的なリバースプライマー配列である。
【0132】
実験の節に詳述しているように、CTAG2の発現及びメチル化のレベルは、配列番号9〜12及び配列番号21〜20のうちいずれのプライマーを組み込んだアッセイで最良の一致を示した。実験の節に詳述しているように、PRAMEの発現及びメチル化のレベルは、配列番号21〜40のうちいずれのプライマーを組み込んだアッセイで最良の一致を示した。
【0133】
したがって、別の実施形態において、CTAG2の領域に結合する好ましいプライマーは、配列番号9〜12及び配列番号21〜20のうちのいずれかのヌクレオチド配列を含む、該配列から本質的になる、又は該配列からなる。PRAMEの領域に結合する好ましいプライマーは、配列番号21〜40のうちのいずれかのヌクレオチド配列を含む、該配列から本質的になる、又は該配列からなる。
【0134】
別の低メチル化アッセイで生成された増幅産物は、以下の配列を有していた:
CTAG1B_1 (129 bp)
GGAAGGTGGGGGAGAGTGGTTTGGATTTTAGTATTTTTTTTTTTTTTAGGGTTAGGTTTTGTTTGGTTATTTTTTGTTGTTATAGGTGTGTTTGGTATAGATATTTAGTTTTTGGGGTTGTGTTGTTTT (配列番号 45)
CTAG1B_2 (130 bp)
GGGTTGGAGAGTTGTTTGTTTGAGTTGTATTTTGTTTTGTTTTGTTTTGTTTTGATAGTTTTGGTGGTGAGGTGGGGGTTGGGAGATGGGGAGGGTAGGGTTAGGTGGGGGAGGAGGTGGGGGAGATG(配列番号 46)
CTAG2 (150 bp)
TGGTGGTGTTGTTTTTGTGTAGGATGGAAGGTGTTTTTGTGGGGTTAGGAGGTTGGATAGTTGTTTGTTTTAGTTGTATTTTGTTTTGTTTTGTTTTAGGAGGTTTTGGTGGTGAGGTGGGGGTTGTGAGATGGAGATAATAGGGTTAAG (配列番号 47)
CTAG2_2 (80 bp)
GGTGGTTTTGAAGGATTTTATTGTGTTTGGTAATTTATTGTTTATGTTAGTTTGGGATTAGGATAGGGAAGGTGTTGGGT(配列番号 48)
CTAG2_3 (125 bp)
TTTTGTTTTGGGATGTTGTATTTTTTTTTTGATTAGGGGTGGTTTTGAAGGATTTTATTGTGTTTGGTAATTTATTGTTTATGTTAGTTTGGGATTAGGATAGGGAAGGTGTTGGGTGGATGAGG (配列番号 49)
PRAME_1 (129 bp)
TGGGTTTGTAGTGTTTTAGTATTGTTTTGGGATATTTTATTTGTTTTTTAGGTGTGATTTGTTAATAGGTTTGTATTGGTGATAAAAGGAGTAGTTTTGAATGTAGGGAAAGTAGGGTGGAGTTTTTTG (配列番号 50)
PRAME_2 (106 bp)
TTGTTTTGGGATATTTTATTTGTTTTTTAGGTGTGATTTGTTAATAGGTTTGTATTGGTGATAAAAGGAGTAGTTTTGAATGTAGGGAAAGTAGGGTGGAGTTTTT (配列番号 51)
PRAME_3 (120 bp)
GAGGGGAGGGGTGTGAATGTGTGGATTTTTGTGGAGAGTGGAAATATGGGGAGTTGAGGGGAGTATGTGTGGGTTTTAGAAAGTTTTGGGAAATTGATTTTTGGGAGTAGGGAGGAATG (配列番号 52)
PRAME_4 (59 bp)
AGTGTTGGAGGTTTTGAGGTTAGTTTAAGTTGTTTTAAAATGGAATGAAGGTGTTTGTG (配列番号 53)
PRAME_6 (50 bp)
TGGTGGATGTTTTGGGATTTGGTTTTTTTGAAGGTGTTGGGGGTTGGGGATGGTTTAGGTAGTGGTGTAGGTGTTTTAGGAAGGTGGGAGTAGAGGTAGAAATGTTG (配列番号 54)
PRAME_7 (98 bp)
GTTTTGGAAGGATTGAGAAATGGGGATTGGTTAGATTAGGTTGTTTAGTTTTTTGGTTTTTATTGTTGTTTTTTTTGTTTTATGTAGTGGTTAGGGTG (配列番号 55)
【0135】
これらの配列は、それぞれの遺伝子のCpGリッチアイランド中に位置する。したがって、本発明はさらに、亜硫酸水素塩で変換された、配列番号45、46、47、48、49、50、51、52、53、54又は55として記載のヌクレオチド配列の一部からなる、又はそれと相補的な、オリゴヌクレオチド、プライマー及び/又はプローブに関する。
【0136】
亜硫酸水素塩で変換されたCTAG1B、CTAG2及び/又はPRAME遺伝子の配列の一部からなる、又はそれと相補的な、プライマーの部分は、30bp未満であることが好ましい;これは、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18又は17bpの長さであることが好ましい。したがって、こうした好ましいプライマーのCTAG1B、CTAG2及び/又はPRAMEに特異的な部分は、好ましくは、28〜16bpの間、又は27〜17bpの間の長さである。したがって、プライマーは、亜硫酸水素塩で変換された配列からなる、又は該配列と相補的な、連続した27、26、25、24、23、22、21、20、19、18又は17塩基の任意の配列を含んでもよい。
【0137】
上に詳述したように、(プライマー対のうちの)プライマーのいずれか一方又は双方は、好ましくは5’末端に、ドナー及びアクセプター部分を有する好適なステムループ又はヘアピン構造で標識される、又は該構造を組み込むように合成されていてもよい。好ましい一実施形態において、プライマー(1種又は複数)のうち一方又は双方は、好ましくは5’末端に、
5’−AGCGATGCGTTCGAGCATCGCU−3’(配列番号43)
として記載のヌクレオチド配列を含む、該配列から本質的になる、又は該配列からなるステムループ構造で標識される、又は該構造を組み込むように合成されていてもよい。
【0138】
この検出配列は、一般的には、FRET対で標識される。好ましくは、FRET対のうち一方の部分は、配列の5’末端の方向に、5’末端の近く、又は5’末端に見出され、もう一方の部分は、配列の3’末端の方向に、3’末端の近く、又は3’末端に見出され、これにより、ステムループ又はヘアピン構造が完全なままであるときには、2つの部分の間でFRETが有効である。特に好ましい一実施形態において、ステムループ又はヘアピン構造、特に、配列番号1として記載の配列を含む、該配列から本質的になる、又は該配列からなる核酸は、5’末端にFAMで標識され、3’末端にDABCYLで標識される。他の好ましい組合せについては本明細書に述べており、その説明は変準用される。
【0139】
これらのプライマーは、本発明の別々の態様を形成する。これらのプライマーのさらなる特徴については、以下の詳細な説明(実験部分)にまとめている。オリゴヌクレオチド、プライマー及びプローブ(配列)の異型を本発明において利用してもよいことに留意されたい。特に、追加のフランキング配列を、必要に応じて、例えば、結合特異性又はステムループ形成を増進させるために、付加することもできる。異型配列は、配列番号:1〜42並びに配列番号:44、60、61及び62に記載のプライマー及び/又はプローブのヌクレオチド配列と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%のヌクレオチド配列同一性を有することが好ましい。プライマー及びヘアピン構造は、必要に応じて合成ヌクレオチド類似体を組み込んでいてもよく、又は例えば、DNA、RNA若しくはPNAに基づくもの、又はこれらの混合物であってもよい。同様に、別な蛍光ドナー及びアクセプター部分/FRET対を、必要に応じて利用することもできる。本発明の方法におけるプライマー及び/又はステムループ/ヘアピン構造としての機能が損なわれないのであれば、プライマーは、蛍光のドナー及びアクセプター部分で標識されることに加えて、修飾されたオリゴヌクレオチド並びに他の付加基及び標識を含んでもよい。
【0140】
それぞれのプライマー対について、少なくとも1つのプライマーは分子エネルギー移動対のドナー及びアクセプター部分で標識される。分子エネルギー移動対のドナー及びアクセプター部分は、増幅のないときには、アクセプター部分がドナー部分によって放出される蛍光を(励起と同時に)消光し、増幅中には、ステムループ構造が破壊され、ドナー部分とアクセプター部分とが、遺伝子の遺伝子コピー数の指標を提供するためにリアルタイムで検出される検出可能な蛍光シグナルを発生するように十分に分離されるように、配置された。好ましくは、ドナー部分及びアクセプター部分は、FRET対である。一実施形態において、ドナー部分及びアクセプター部分は、5−カルボキシフルオレセイン又は6−カルボキシフルオレセイン(FAM)、2’7’−ジメトキシ−4’5’−ジクロロ−6−カルボキシフルオレセイン(JOE)、ローダミン、6−カルボキシローダミン(R6G)、N,N,N’−テトラメチル−6−カルボキシローダミン(TAMRA)、6−カルボキシ−X−ローダミン(ROX)、5−(2’−アミノエチル)アミノナフタレン−1−スルホン酸(EDANS)、アントラニルアミド、クマリン、テルビウムキレート誘導体、マラカイトグリーン、リアクティブレッド4、DABCYL、テトラメチルローダミン、ピレンブチレート、エオシンニトロチロシン、エチジウム、及びテキサスレッドから選択される。さらなる一実施形態において、ドナー部分は、フルオレセイン、5−カルボキシフルオレセイン又は6−カルボキシフルオレセイン(FAM)、ローダミン、5−(2’−アミノエチル)アミノナフタレン−1−スルホン酸(EDANS)、アントラニルアミド、クマリン、テルビウムキレート誘導体、マラカイトグリーン、及びリアクティブレッド4から選択され、アクセプター部分は、DABCYL、ローダミン、テトラメチルローダミン、ピレンブチレート、エオシンニトロチロシン、エチジウム、及びテキサスレッドから選択される。好ましくは、ドナー部分はフルオレセイン又はその誘導体であり、アクセプター部分はDABCYLであり、最も好ましくは、ドナー部分は6−カルボキシフルオレセインである。特に多重化の場合における、他の好ましい組合せについては本明細書に述べており、本発明のこうした態様ではこれらの組合せも想定される。
【0141】
また、本発明は、本発明の方法を行うために使用することができるキットも提供する。キットは、本明細書に記載の本発明の多様な方法(及び使用)に関連して言及した好ましい特徴のうちのいずれかを含んでもよい。したがって、本発明は、少なくとも1種の本発明のプライマー対を含む、DNA含有試料中のメチル化されている又はメチル化されていない目的遺伝子の存在及び/又は量を検出するためのキットを提供する。好ましくは、キットは、メチル化されていない及び/又はメチル化されているCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子の存在及び/又は量を検出するための本発明のプライマー対、並びに参照遺伝子、特に、ベータアクチンの存在及び/又は量を検出するためのプライマー対を含む。したがって、キットは、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、44、60、61又は62として記載のヌクレオチド配列を含む、該配列から本質的になる、又は該配列からなるプライマーを含むプライマー対を含んでもよい。好ましくは、上述のように(その説明はここで準用される)、それぞれのプライマー対のうちの少なくとも1つのプライマーは、リアルタイムでの検出を容易にするために、適切なステムループ又はヘアピン構造で標識される。最も好ましくは、それぞれのプライマー対のうちの少なくとも一つのプライマーは、配列番号43として記載のヌクレオチド配列を含む、該配列から本質的になる、又は該配列からなるステムループ又はヘアピン構造を含む。ステムループ構造は、本明細書で述べているように(その説明はここで準用される)、適切なドナー及びアクセプター部分で標識される。
【0142】
上述のように、本発明のプライマーのさらなる特徴については、以下の詳細な説明(実験部分)にまとめている。これらの配列の異型を、本発明において本明細書で述べているように利用することができる。本明細書で述べているように、別な蛍光ドナー及びアクセプター部分/FRET対を必要に応じて使用することもできる。
【0143】
一実施形態において、本発明のキットは、本明細書で述べているように(保護されたメチル化されているシトシン残基に優先して)、メチル化されていないシトシンを修飾する試薬をさらに含む。こうした試薬は、メチル化されていないシトシン残基からメチル化されているシトシン残基を識別するのに有用である。好ましい一実施形態において、試薬は、亜硫酸水素塩、好ましくは、亜硫酸水素ナトリウムを含む。この試薬は、メチル化されていないシトシン残基をウラシルに変換することができるが、メチル化されているシトシンは変換されないままである。残基におけるこの相違は、例えばシトシンとウラシルとを識別するプライマー(シトシンはグアニンと対になるが、ウラシルはアデニンと対になる)を使用するPCRなどのような下流の過程において、メチル化されているとメチル化されていない核酸とを識別するのに利用することができる。
【0144】
本発明の方法に関して本明細書に述べているように、該方法の質的な対照として機能する好適な対照を利用することができる。したがって、一実施形態では、本発明のキットはさらに、メチル化状態の知られている1つ又は複数の対照核酸分子を含む、該分子から本質的になる、又は該分子からなる。これらの(1種又は複数の)対照核酸分子は、メチル化されていることが知られている、若しくはメチル化されるように処理された核酸、及び/又はメチル化されていないことが知られている、若しくはメチル化されないように処理された核酸分子の双方を含んでもよい。一般的にはメチル化されていないが、メチル化されるように処理されることができる好適な内部参照遺伝子の一例は、ベータアクチンである。
【0145】
本発明のキットは、本発明の特許請求された方法を行うのに好適な緩衝液及び他の試薬をさらに含んでいてもよい。したがって、本発明の方法に関して提供している説明は、本明細書では変更すべきところは変更して適用され、簡潔性のために繰り返さないものとする。一実施形態において、本発明のキットは、さらに、核酸増幅緩衝液を含む、核酸増幅緩衝液から本質的になる、又は核酸増幅緩衝液からなる。
【0146】
該キットは、さらに、核酸増幅を触媒する酵素を含む、該酵素から本質的になる、又は該酵素からなるものでもよい。したがって、該キットは、さらに、核酸増幅用の好適なポリメラーゼを含む、該ポリメラーゼから本質的になる、又は該ポリメラーゼからなるものでもよい。例としては、例えばTaq、Pfu、Ventのような、ファミリーA及びファミリーBの双方の型のポリメラーゼに由来するものが挙げられる。
【0147】
キットの様々な構成要素は、個別の仕切りの中に別々に包装されていてもよく、又は例えば、必要に応じて、一緒に収納されていてもよい。
【0148】
キットは、例えば、別の用紙に印刷するか又はキットの包装内に組み込まれていてもよい、使用のための好適な説明書も含んでいてもよい。説明書は、適切なリアルタイム増幅装置又はエンドポイント検出装置、そのうちのいくつかは市販されている、を用いた本発明のキットを使用するのを容易にし得る。
【0149】
本発明のリアルタイム法の最後のステップは、リアルタイム検出の結果を、メチル化されている又はメチル化されていない目的遺伝子、及び任意選択で参照遺伝子(含まれる場合)、についての標準曲線に対して定量することを含む。標準曲線は、1組の標準を使用して作製することができる。それぞれの標準は、必要に応じて、既知のコピー数、又は濃度の目的遺伝子及び/又は参照遺伝子を含む。典型的には、蛍光のベースライン値は、バックグラウンドの蛍光に対して設定されることになる。例えば、一実施形態において、シーケンスディテクションシステム(Sequence Detection System)(SDS)ソフトウェアを使用する。このソフトウェアは、増幅産物を検出する前に、3〜15サイクルの増幅反応のデフォルトベースラインの範囲を設定する。次いで、このベースラインより上の統計学的に有意な値で、蛍光の閾値を定める。典型的には、この閾値は、ベースラインの蛍光よりも10標準偏差上に設定される。リアルタイム増幅反応を行うための装置と共に、適切なソフトウェアが提供される。該ソフトウェアは、反応のベースライン値及び閾値を自動的に算出する。次いで、各標準について、サイクル閾値(Ct)を決定することができる。これは、閾値の増幅レベルを達成するのに必要とされるサイクル数である。したがって、反応混合物中の遺伝子標準の初期濃度が高いほど、特定収量の増幅産物を得るのに必要とされるサイクル数は少なくなる。1組の標準DNAの既知の初期コピー数のlog10に対するCtのプロットは、直線になる。これが標準曲線である。したがって、DNA含有試料中のコピー数を決定するために、目的遺伝子及び参照遺伝子の増幅についてのCt値を、利用する場合には、それぞれの標準曲線に対してそれぞれ補間することができる。したがって、該方法の結果として、目的遺伝子及び参照遺伝子のそれぞれの遺伝子コピー数が得られる。これらの結果は、メチル化されている又はメチル化されていない目的遺伝子の遺伝子コピー数を参照遺伝子の遺伝子コピー数で除算することによって標準化することができる。好ましい一実施形態では、アプライドバイオシステムズ(Applied Biosystems)7900HT高速リアルタイムPCRシステムを使用して、本発明の方法を行う。好ましくは、個々の検出器用のベースライン値及び閾値を自動的に生成するためのオートシーティー(Auto CT)アルゴリズムのような好適なアルゴリズムを含むことが好ましい、SDSソフトウェアを利用する。
【0150】
本発明の方法は、任意の好適な増幅技術と共に利用することができるが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して増幅を行うことが最も好ましい。したがって、PCRが好ましい増幅法であるが、ネステッドPCRなどの基本技術上の変形を含めるために、同等のものを本発明の範囲内に含めることもできる。例としては、限定されるものではないが、NASBA、3SR、TMA及び三重増幅のような等温増幅技術などが挙げられ、これらは全て当技術分野でよく知られており、好適な試薬が市販されている。他の好適な増幅法としては、限定されるものではないが、リガーゼ連鎖反応(LCR)(Barringerら、1990)、MLPA、標的ポリヌクレオチド配列の選択的増幅(米国特許第6,410,276号)、コンセンサス配列プライムポリメラーゼ連鎖反応(米国特許第4,437,975号)、インベーダー技術(Third Wave Technologies、Madison、WI)、鎖置換技術、任意プライムポリメラーゼ連鎖反応(国際公開第90/06995号パンフレット)及びニック置換増幅(国際公開第2004/067726号パンフレット)などが挙げられる。
【0151】
本発明のリアルタイムPCR法は、一般的には、プライマーをアニーリングさせるために温度を低下させるステップ、プライマー伸長のために温度を上昇させるステップ、変性のために温度を上昇させるステップ及びデータ収集のために温度を低下させるステップを含む。特定の一実施形態において、データ収集のステップは、約56℃〜63℃、最も好ましくは約57℃又は62℃の間の温度で行われるが、実施例の節で述べているように、この温度で最も感度の高い特異的な結果が得られることが示されているからである。
【0152】
特定の一実施形態において、ポリメラーゼ連鎖反応の温度プロファイリングは、以下のサイクルの40〜50回の間の反復、好ましくは約45回の反復を含む:
(a)約50℃で約2分間
(b)約95℃で約10分間
(c)約95℃で約15秒間
(d)約57℃で約1分間
本発明の方法において特異的且つ高感度の結果をもたらすことが示された好ましい反応スキームは、段階1:50℃で2分間、段階2:95℃で10分間、段階3:95℃で15秒間、57℃で30秒間、57℃で30秒間(=プラトーデータ収集)を45回反復するものである。
【0153】
本発明の方法は、同一の反応において2種類以上の目的遺伝子を検出するために使用することができる。特定の数セットのプライマーの使用を通して、同一の反応混合物中で数種類の核酸標的の増幅を行うことができる。これは、「多重化」と呼ばれることもある。好ましい一実施形態において、各標的用の一方又は双方のプライマーは、FRET対を形成する蛍光部分と消光部分とで標識されたヘアピンプライマーであってもよい。いくつかの核酸標的の増幅には、異なる発光波長を有する、異なる蛍光ドナー及び/又はアクセプター部分が、各プライマーセットを標識するために使用される必要がある。増幅後の検出及び分析の間に、反応混合物は、反応に使用する各プライマーセットに特有の、それぞれの特定の波長において、照射され、読み取れる。したがって、混合物中のどの特定の標的DNAが増幅されて標識されたかを決定することができる。特定の一実施形態では、異なるそれぞれの標的配列の増幅用の2種類以上のプライマー対を使用する。したがって、一区画のメチル化されている/メチル化されていない目的遺伝子の存在及び/又は量を、単一のDNA含有試料中で検出することができる。
【0154】
多重化は、同一反応物中で目的遺伝子及び参照遺伝子の双方を検出する場合にも利用することができる。ここでも、識別可能な適切なドナー部分及び/又はアクセプター部分で標識されたプライマーにより、目的遺伝子及び参照遺伝子の増幅により生じたシグナルを、それぞれ識別することができる。
【0155】
一実施形態では、識別可能な発光波長極大をそれぞれ有する好適なフルオロフォアドナーと共に、ユニバーサル消光剤が利用される。特に好ましい消光剤は、DABCYLである。多重化を可能にするために、消光剤としてのDABCYLと共に、以下のフルオロフォアをそれぞれ利用することもできる:クマリン(発光極大475nm)、EDANS(491nm)、フルオレセイン(515nm)、ルシファーイエロー(523nm)、BODIPY(525nm)、エオシン(543nm)、テトラメチルローダミン(575nm)及びテキサスレッド(615nm)(Tyagiら、Nature Biotechnology、第16巻、1998年1月;49〜53)。他の好ましい組合せについては、本明細書に述べている。
【0156】
一代替実施形態において、直接比較可能な結果を得るために、DNA含有試料を分割して、好適な一部の該試料について本発明の方法を行うことができる。したがって、目的遺伝子及び参照遺伝子の双方を検出する場合に、試料を一方の試料部分で目的遺伝子の増幅をリアルタイムで検出し、他方の試料部分で参照遺伝子の増幅をリアルタイムで検出することを可能にするために、2つに分割してもよい。必要に応じて、試料をさらに分割して、好適な対照反応を行うこともできる。このスキームの利点は、各プライマー対を標識するためにユニバーサルFRET対を使用することができ、様々な波長で発光を検出する必要性がなくなることである。しかし、この方法は、最初に試料を分割できるような好適な試料が得られるに依存する。任意の好適な反応量を用いることができるが、特定の一実施形態では、増幅ステップのための全反応量は約10〜40μlの間であり、約10〜30μlの間がより好ましく、約12μlが最も好ましい。
【0157】
一態様において、本発明のオリゴヌクレオチド、プライマー若しくはプローブ、プライマー対、キット又は方法は、癌又は癌素質を診断するのに使用され、ここで、該試料中のメチル化されていない(又は低メチル化された)CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3の存在は、癌又は癌素質を示している。したがって、本発明は、癌又は癌素質を診断するためのキット、方法及びプライマーを提供する。
【0158】
本明細書では、「診断」とは、疾患又は疾患の前段階のスクリーニング、疾患又は疾患の前段階の特定、疾患の病期及び状態及び進行のモニタリング、治療後の疾患の再発の検査並びに特定の治療の成功のモニタリングを含むと定義する。その試験には予測値があってもよく、これは「診断」という用語の定義の範囲内に含まれる。この試験の予測値は、癌になりやすい可能性のマーカーとして、又は癌への進行のマーカーとして使用することができる。したがって、患者における確認可能な症状として、疾患がそれ自体を現す機会がある前に、危険性のある患者を特定することができる。好ましい一実施形態において、癌は、肺癌、黒色腫又は乳癌から選択される。好ましい一実施形態において、診断のための方法及びアッセイでは、CTAG1Bマーカー用に、配列番号1、2、3、4、5、6、7、又は8のうちのいずれかのヌクレオチド配列を含む、該配列を構成する、該配列から本質的になる、又は該配列からなる少なくとも1種のオリゴヌクレオチドを使用する。診断のための方法及びアッセイでは、CTAG2マーカー用に、配列番号9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19のうちのいずれかのヌクレオチド配列を含む、該配列を構成する、該配列から本質的になる、又は該配列からなる少なくとも1種のオリゴヌクレオチドを使用する。診断のための方法及びアッセイでは、PRAMEマーカー用に、配列番号20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39又は40のうちのいずれかのヌクレオチド配列を含む、該配列を構成する、該配列から本質的になる、又は該配列からなる少なくとも1種のオリゴヌクレオチドを使用する。好ましい一実施形態において、癌又は癌素質の診断では、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39及び40のうちのいずれかのヌクレオチド配列を含む、該配列を構成する、該配列から本質的になる、又は該配列からなるオリゴヌクレオチドを使用して、遺伝子の非メチル化型を検出する。
【0159】
試験は、診断的に又は治療法と併せて行うことができる。NSCLC、乳癌又は黒色腫におけるCTAG1B、CTAG2及び/又はPRAMEの発現の予測値を確定するRT−PCRアッセイは、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3免疫治療薬を用いた治療に適する患者の選出においてその用途が見出される。本発明者は、本発明のオリゴヌクレオチド、プライマー若しくはプローブ、プライマー対又はキットを用いる、メチル化されていないCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3を検出するために設計されたアッセイが、試料をCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3の発現で確実に分類することができることを示している。低メチル化試験で得られるメチル化状態の結果は、RNA試料に使用される、CTAG1B、CTAG2及び/又はPRAMEの検出についての既存のRT−PCR試験で得られる結果と良く一致する。
【0160】
qRT−PCRが困難であることが立証されている、例えば非小肺癌からの細針生検などの試料を利用する場合には、MageA3遺伝子のメチル化状態を決定することによって検出されるタンパク質発現が有用な代替を提供する。したがって、メチル化試験は、臨床的な用途を有する。このように、本発明の全ての方法は、細針生検試料に適用することができる。特定の実施形態において、MAGE−A3遺伝子のメチル化状態が決定される。上に示した試料は、(MAGE−A3)発現を検出する代替法を実施するのに適していない。これらの試料には、少数の細胞しか含まれていないことがあり、結果として、低レベルのDNAが含まれている。例えば、こうした試料は、各アッセイにつき、約70〜150μgの間のインプットDNAの使用のみ許容することができる。実施例4に示すように、本発明の方法は、細針生検試料の使用に有効である。
【0161】
さらなる一態様において、本発明は、対象において癌の治療に成功する可能性を予測する方法であって、
(a)対象から得られたDNA含有試験試料を、DNA中のメチル化されていないシトシン残基を選択的に修飾して検出可能な修飾残基を生成するが、メチル化されているシトシン残基は修飾しない試薬で接触/処理するステップと、
(b)プライマー対のうち少なくとも1つのプライマーが、メチル化されていないDNAの配列にのみ結合するように設計された、少なくとも1種のプライマー対を使用して、試薬での処理後にメチル化されていないCTAG1B、CTAG2及び/又はPRAME各遺伝子の少なくとも一部を増幅するステップであり、プライマー対のうちの少なくとも1つのプライマーが、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、44、60及び61のうちのいずれかのヌクレオチド配列を含む、該配列から本質的になる、又は該配列からなるステップと、
(c)CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子のメチル化状態を決定するステップと
を含み、試料中のメチル化されていないCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3の存在は、メチル化されていないCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子が検出されない又はその検出レベルがより低い場合よりも、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3免疫治療薬を用いた治療に成功する可能性が高いことを示す方法を提供する。
【0162】
ステップ(c)には、増幅産物が形成されたかどうかを識別することが含まれる。この増幅産物の識別(本明細書で述べているように、任意の好適な技術を使用する)は、試料中のメチル化されていない又は低メチル化されたCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3の存在を示す。
【0163】
当然、逆の状況も適用可能であり、そのため、本発明の方法は、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3免疫治療薬に抵抗性である可能性、又は該免疫治療薬を使用した治療が成功しない可能性が高いかを決定するために、同様に利用することもできる―試料中にメチル化されていないCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3がないことは、治療に対して抵抗性である可能性、及び/又はその治療が成功しない可能性が高いことを示している。特定の実施形態では、補完的な方法において、メチル化されているDNAに特異的なプライマーを用いることもできる。
【0164】
また、本発明の方法は、患者に適した治療のコースを選択するために利用することもできる−メチル化されていないCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3の存在は、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3免疫治療薬を有益に投与することができることを示しており、これに対して、メチル化されていないCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3のないこと又はそのレベルが低いことは、免疫治療薬が禁忌であることを示している。本発明のオリゴヌクレオチド、プライマー若しくはプローブ、プライマー対、キット又は方法に関して提供している説明は、本態様に準用され、したがって、本発明のこの態様では、必要に応じて、全ての実施形態が想定される。
【0165】
「治療に成功する可能性」とは、挙げられた治療剤のうちのいずれかの1種又は複数、好ましくは、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3免疫治療薬又はCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3を含む組成物を使用する癌の治療が成功するであろう確率を意味する。
【0166】
「抵抗性」とは、特定の免疫治療薬のうちのいずれかの1種を使用して癌の治療が成功するであろう可能性の低下及び/又は治療効果を達成するためにより高い用量が必要とされるであろうこととして定義される。
【0167】
CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3の低メチル化は、特定の癌種と関連し得る。したがって、特定の一実施形態において、本発明は、本発明のオリゴヌクレオチド、プライマー若しくはプローブ、プライマー対、キット又は方法を使用して、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子のメチル化状態を検出することを含む試料において乳癌、NSCLCを含む肺癌、又は黒色腫の素質又は発生を検出する方法であって、試料におけるメチル化されていないCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3の検出は、癌、及び特に、黒色腫;非小細胞肺癌(NSCLC)を含む肺癌;又は乳癌の素質又は発生を示す方法を提供する。さらなる一実施形態において、該腫瘍又は癌は、前立腺癌、卵巣癌、乳癌、膀胱癌;食道癌を含む頭頸部癌;子宮頸癌、大腸癌、扁平上皮癌;肝癌;多発性骨髄腫及び大腸癌から選択される。
【0168】
さらなる一態様において、本明細書に記載のオリゴヌクレオチド、プライマー若しくはプローブ、プライマー対、キット又は方法を使用して、試料中のCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子のメチル化状態を検出することを含むCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3陽性の腫瘍の存在を決定する方法であって、メチル化されていないCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3の存在は、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3陽性の腫瘍の存在を示す方法を提供する。
【0169】
試験は、診断的に又は治療法と併せて行うことができる。試験は、どのような治療法又は予防法を患者に用いるかを決定するために使用することもでき、治療法の有効性を調べるために使用することもできる。
【0170】
したがって、本発明は、本明細書に記載のオリゴヌクレオチド、プライマー若しくはプローブ、プライマー対、キット又は方法を使用して、患者の試料中のCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子のメチル化状態を検出することを含むCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3免疫治療薬を用いた治療に適する患者を特定及び/又は選出する方法であって、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子がメチル化されていない場合は、対象が、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3免疫治療薬を用いた治療に特定及び/又は選出される方法をさらに提供する。
【0171】
これに対して、該遺伝子がメチル化されている場合は、対象は、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3免疫治療薬を用いた治療に選出されないことが好ましい。
【0172】
関連する一態様において、本発明は、本明細書に記載のオリゴヌクレオチド、プライマー若しくはプローブ、プライマー対、キット又は方法を使用して、患者の試料中のCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子のメチル化状態を検出することを含む癌の治療に成功する可能性を予測する方法であって、遺伝子がメチル化されていない場合は、遺伝子がメチル化されている場合よりも、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3免疫治療薬を用いた治療に成功する可能性が高い方法を提供する。
【0173】
これに対して、試料中にメチル化されていないCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3がないことは、遺伝子がメチル化されていない場合よりも、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3免疫治療薬を用いた治療に対して抵抗性である可能性が高いことを示す。したがって、メチル化されているCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子の検出(又は低メチル化されている遺伝子の検出がないこと)は、免疫治療薬を用いた治療に成功する可能性が低いことを示す。
【0174】
したがって、患者のCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子のメチル化状態に基づいて、治療に患者群を選出することができる。これにより、はるかに焦点が定められ、個別化された型の医療がもたらされ、したがって、有効である可能性の最も高い薬剤で患者が治療されるであろうために成功率の改善につながる。
【0175】
関連するさらなる一態様において、本発明は、本明細書に記載のオリゴヌクレオチド、プライマー若しくはプローブ、プライマー対、キット又は方法を使用して、患者の試料中のCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子のメチル化状態を検出することを含む癌の適切な治療計画を選択する方法であって、遺伝子がメチル化されていない場合は、治療に免疫治療薬(特に、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3の免疫治療薬)が選択される方法を提供する。
【0176】
これに対して、該遺伝子がメチル化されている場合は、免疫治療薬を用いた治療は禁忌である。
【0177】
免疫治療薬の投与を含む対象において癌を治療する方法であって、本発明の方法のうちのいずれかによって、或いは本明細書に記載のオリゴヌクレオチド、プライマー若しくはプローブ、プライマー対、キット又は方法を使用することによって、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子のメチル化状態を測定することに基づいて、対象が治療に選出されている方法がさらに提供される。本明細書に記載の種々の態様の全てについて、メチル化されていないCTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3遺伝子の検出が、CTAG1B、CTAG2、PRAME及び/又はMageA3タンパク質のレベルの増加に相当していることが好ましい。
【0178】
本発明において有用な、CTAG1B、CTAG2、MAGE−A3及び/又はPRAME免疫治療薬としては、CTAG1B、CTAG2、MAGE−A3及び/又はPRAMEを主成分とした組成物を含む。CTAG1B、CTAG2、MAGE−A3及び/又はPRAMEを含む組成物の例としては、全長のCTAG1B、CTAG2、MAGE−A3又はPRAME、ほぼ全長のCTAG1B、CTAG2、MAGE−A3及び/又はPRAME、及び例えばCTAG1B、CTAG2、MAGE−A3又はPRAMEのペプチドなどのCTAG1B、CTAG2、MAGE−A3又はPRAMEの断片を含む組成物などが挙げられる。
【0179】
本発明において使用できるペプチドの例としては、以下のMAGE−A3ペプチドなどが挙げられる:
【0180】
【表1】
【0181】
MAGEタンパク質は、全長のMAGE−A3であってもよく、又はほぼ全長のMAGE3の断片、例えばMAGE3(全312アミノ酸)のアミノ酸3〜314、若しくは1〜10個の間のアミノ酸がMAGE−A3タンパク質のN末端及び/若しくはC末端から欠失された他のMAGE−A3断片を含んでもよい。
【0182】
一実施形態において、CTAG1B、CTAG2、MAGE−A3及び/又はPRAMEのタンパク質、断片又はペプチドは、融合パートナータンパク質に連結されていてもよい。
【0183】
本発明において使用できる抗原の例としては、以下のCTAG1B、CTAG2及び/又はPRAME抗原を含む:
【0184】
例えば、CTAG1Bの好適なペプチドとしては、Jagerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,97(22):12198〜12203(2000)に開示されている、HLA−A2に対する結合モチーフを有するペプチド、例えばペプチド157〜167、157〜165及び155〜163を含む。CTAG1Bのペプチドは、例えば、A31、DR1、DR2、DR4、DR7、DP4、B35、B51、Cw3、Cw6及びA2として知られる、1個又は複数のMHCクラス1又はクラス2のエピトープを含んでもよい(国際公開第2008/089074号パンフレットを参照されたい)。
【0185】
例えば、PRAMEのペプチドは、HLA−A2に対する結合モチーフを有するペプチド、例えばLYVDSLFFL、ALYVDSLFFL、VLDGLDVLL、SLYSFPEA及びSLLQHILGLペプチドなどを含んでもよい(Quintarelliら、Blood、1 2008年9月、第112巻、第5号、1876〜1885ページを参照されたい)。PRAMEのペプチドは、1個又は複数のMHCクラス1又はクラス2のエピトープを含んでもよい。
【0186】
例えば、CTAG2のペプチドは、Sunら Cancer Immunology,Immunotherapy 第55巻、第6号/2006年6月に開示されているように、ELVRRILSR、MLMAQEALAFL、SLLMWITQC、LAAQERRVPRを含んでもよい。
【0187】
CTAG1B、CTAG2、MAGE−A3及び/又はPRAMEのタンパク質、断片又はペプチドと融合パートナータンパク質とは、化学的にコンジュゲートされていてもよく、又は組換え融合タンパク質として発現されてもよい。抗原とパートナーとが組換え融合タンパク質として発現させる一実施形態では、非融合タンパク質と比較して、発現系において産生されるレベルの増加を可能にし得る。したがって、融合パートナータンパク質は、ヘルパーTエピトープ(免疫学的融合パートナータンパク質)、好ましくは、ヒトによって認識されるヘルパーTエピトープを提供すること、及び/又は天然の組換えタンパク質よりも高収量でタンパク質(発現増強タンパク質)を発現することを補助し得る。一実施形態において、融合パートナータンパク質は、免疫学的融合パートナータンパク質及び発現増強パートナータンパク質の双方であってもよい。
【0188】
本発明の一実施形態において、使用することができる免疫学的融合パートナータンパク質は、グラム陰性菌ヘモフィルスインフルエンザ(Haemophilus influenza)Bの表面タンパク質であるプロテインD(国際公開第91/18926号パンフレット)又はその誘導体から得られる。プロテインD誘導体は、該タンパク質の最初の1/3、又は該タンパク質の最初の約1/3を含んでもよい。一実施形態において、プロテインDのN末端の最初の109残基は、CTAG1B、CTAG2、MAGE−A3及び/又はPRAMEの抗原に付加的な外来性T細胞エピトープを提供し、大腸菌(E.coli)において発現レベルを上昇させる(したがって、発現エンハンサーとしても働いている)ための融合パートナーとして使用することができる。一代替実施形態において、該プロテインD誘導体は、N末端の最初の100〜110アミノ酸又はおよそN末端の最初の100〜110アミノ酸を含んでもよい。一実施形態において、プロテインD又はその誘導体に脂質が付加されて、リポプロテインDを使用することもできる:脂質テールにより、抗原提示細胞への抗原の最適な提示を確実にすることができる。一代替実施形態において、プロテインD又はその誘導体は脂質付加されない。プロテインDの「分泌配列」又は「シグナル配列」とは、天然に存在するタンパク質の約1〜16、17、18又は19のアミノ酸を指す。一実施形態において、プロテインDの分泌配列又はシグナル配列とは、プロテインDのN末端の19アミノ酸を指す。一実施形態において、分泌配列又はシグナル配列は、プロテインD融合パートナーのN末端に含まれる。本明細書で使用される場合、「最初の3分の1(1/3)」、「最初の109アミノ酸」及び「N末端の最初の100〜110アミノ酸」とは、分泌配列又はシグナル配列の直後のプロテインD配列のアミノ酸を指す。シグナル配列のアミノ酸2−K及び3−Lは、任意でアミノ酸2−M及び3−Dで置換されてもよい。
【0189】
一実施形態において、免疫療法用の抗原は、以下の構築物の形態でプロテインDと融合されていてもよい:プロテインD−CTAG1B−His、又はプロテインD−CTAG2−His、又はプロテインD−PRAME−His、又はプロテインD−MAGE−A3−His。この融合タンパク質は、プロテインDのシグナル配列、プロテインDのアミノ酸1〜109、免疫療法用の抗原(全長の又は部分的なタンパク質配列であってもよい)、スペーサー及び製造過程中の融合タンパク質の精製を容易にすることができるポリヒスチジンテール(His)を含んでもよく、例えば以下のようなものである:
i)プロテインDの18残基のシグナル配列及びN末端の最初の109残基;
ii)関連のない2残基(メチオニン及びアスパラギン酸);
iii)免疫療法用の抗原;
iv)ヒンジ領域として機能している2個のグリシン残基;並びに
v)7個のヒスチジン残基。
【0190】
利用されるプロテインDの部分は、分泌配列又はシグナル配列を含んでいないことが好ましい。特定の実施形態では、融合パートナータンパク質は、融合タンパク質配列のN末端に又はN末端の中にアミノ酸Met−Asp−Proを含み、プロテインDの分泌配列又はシグナル配列を含まない。例えば、融合パートナータンパク質は、およそ又は正確に、プロテインDのアミノ酸17〜127、18〜127、19〜127又は20〜127を含む、又はそれらからなるものでもよい。
【0191】
例えば、プロテインDとの融合タンパク質に基づく好適なPRAME抗原は、国際公開第2008/087102号パンフレットに記載されており、その文書は、参照により本明細書にその全体が組み込まれている。
【0192】
別の実施形態において、免疫学的融合パートナータンパク質は、LytAとして知られるタンパク質又はそれから誘導されるタンパク質であってもよい。LytAは、ペプチドグリカン主鎖中の特定の結合を特異的に分解する自己溶菌酵素であるN−アセチル−L−アラニンアミダーゼ、アミダーゼLytA(LytA遺伝子によってコードされる(Gene、43(1986)265〜272ページ))を合成する肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)に由来する。LytAタンパク質のC末端ドメインは、コリン、又はDEAEなどのいくつかのコリン類似体に対する親和性に重要である。この特性は、融合タンパク質の発現に有用な大腸菌(E.coli)C−LytA発現プラスミドの開発に利用されている。アミノ末端にC−LytA断片を含むハイブリッドタンパク質の精製が記載されている(Biotechnology:10、(1992)795〜798ページ)。一実施形態において、この分子のC末端部分を使用することもできる。C末端に見出される残基178から始まるLytA分子のリピート部分を使用することもできる。一実施形態において、LytA部分は、残基188〜305を組み込んでいてもよい。
【0193】
他の融合パートナーとしては、インフルエンザウイルスからの非構造タンパク質であるNS1(血球凝集素)などが挙げられる。一実施形態では、NS1のN末端の81個のアミノ酸を利用するが、ヘルパーTエピトープを含むものであれば、別の断片を使用することもできる。
【0194】
本発明の一実施形態において、免疫療法において使用される抗原は、誘導体化された遊離チオールを含んでもよい。本発明の一実施形態において、MAGE−A3タンパク質は、誘導体化された遊離チオールを含んでもよい。こうした抗原は、国際公開第99/40188号パンフレットに記載されている。特に、カルボキシアミド化又はカルボキシメチル化されている誘導体を使用することができる。
【0195】
免疫療法用の抗原は、融合の形態で又は混加物中で、他の免疫療法抗原と組み合わせて使用することができる。例えば、CTAG1Bは、CTAG2、又はその断片との融合物として用いることができ、国際公開第2008/089074号パンフレットを参照されたく、その文書は参照により本明細書にその全体が組み込まれている。
【0196】
免疫治療薬の組合せとしては、融合タンパク質又は混加物のいずれかとして、例えば、CTAG1B、CTAG2、PRAME又はMAGE3のうち2種類以上の任意の組合せなどが挙げられるが、本発明はこれらの特定の抗原に限定されず、任意の免疫療法抗原を使用することができる。例えば、MAGE−3抗原は、例えば、NY−ESO−1と組み合わせて製剤化するのに好適であるとして記載されている;国際公開第2005/105139号パンフレットを参照されたく、その文書は参照により本明細書にその全体が組み込まれている。
【0197】
さらなる一実施形態において、本発明で使用される免疫治療薬は、本明細書に記載の免疫療法のタンパク質、断片若しくはペプチド、又は融合タンパク質をコードする核酸分子を含んでもよい。本発明の一実施形態において、その配列を好適な発現ベクター中に挿入して、DNA/RNAワクチン接種に使用することができる。また、核酸を発現する微生物ベクターを、ベクター送達免疫治療薬として使用することもできる。
【0198】
好適なウイルスベクターの例としては、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、単純ヘルペスウイルスなどのヘルペスウイルス、アルファウイルス、カナリアポックスウイルスなどのポックスウイルス及びワクシニアウイルスに基づくシステムが挙げられる。これらのウイルスを使用する遺伝子導入技術は、当業者に知られている。本発明のポリヌクレオチドを宿主ゲノム中に安定に組み込むために、例えばレトロウイルスベクターを使用することができるが、こうした組換えは好ましくない。対照的に、複製欠損アデノウイルスベクターは、エピソームの状態を維持し、したがって、一過性発現を可能にする。例えばサブユニットワクチンとしての使用又は免疫アッセイでの使用のために、本発明のポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質を大量に産生させるために、昆虫細胞(例えば、バキュロウイルスベクター)、ヒト細胞、酵母又は細菌において発現を引き起こすことができるベクターを使用することができる。
【0199】
好ましい一実施形態において、生物ベクターとして使用されるアデノウイルスは、複製欠損サルアデノウイルスである。典型的には、これらのウイルスは、E1欠失を有しており、E1遺伝子で形質転換された細胞株において増殖させることができる。好ましいサルアデノウイルスは、チンパンジーから単離されたウイルスである。特に、C68(Pan9としても知られる)(米国特許第6,083,716号を参照されたい)並びにPan5、Pan6及びPan7(国際公開第03/046124号パンフレット)は、本発明における使用に好ましい。これらのベクターは、本発明の異種遺伝子を挿入し、その遺伝子産物を発現できるように操作されることができる。こうした組換えアデノウイルスベクターの使用、製剤及び製造は、国際公開第03/046142号パンフレットに詳細に記載されている。
【0200】
核酸配列を得るための従来の組換え技術、及び発現ベクターの作製については、Maniatisら、Molecular Cloning−A Laboratory Manual;Cold Spring Harbor、1982〜1989に記載されている。
【0201】
タンパク質に基づく組成物の場合、本発明のタンパク質は、液体に可溶化された形態、又は凍結乾燥形態のいずれかで提供することができる。
【0202】
それぞれのヒトの用量は、1〜1000μgのタンパク質を含んでもよい。一実施形態において、該用量は、30〜300μgのタンパク質を含んでもよい。
【0203】
本明細書に記載の免疫療法用の組成物は、ワクチンアジュバント、及び/又は免疫賦活性サイトカイン若しくはケモカインをさらに含んでもよい。したがって、本明細書に適用されている「免疫治療薬」という用語は、適切なアジュバントを含む、本明細書に記載の全ての免疫療法用の組成物を含み得る。
【0204】
本発明における使用に好適なワクチンアジュバントは、市販されており、例えば、不完全フロイントアジュバント及び完全フロイントアジュバント(Difco Laboratories、Detroit、MI);メルクアジュバント65(Merck and Company,Inc.、Rahway、NJ);AS−2(SmithKline Beecham、Philadelphia、PA);水酸化アルミニウムゲル(ミョウバン)又はリン酸アルミニウムなどのアルミニウム塩;カルシウム、鉄又は亜鉛の塩;アシル化チロシンの不溶性懸濁液;アシル化糖;陽イオン又は陰イオンで誘導体化された多糖;ポリホスファゼン;生分解性ミクロスフェア;モノホスホリルリピドA及びクイルAなどである。GM−CSF又はインターロイキン−2、インターロイキン−7、若しくはインターロイキン−12などのサイトカイン、及びケモカインもアジュバントとして使用することができる。
【0205】
一実施形態において、アジュバントは、3−O−脱アシル化モノホスホリルリピドA(3D−MPL)などのモノホスホリルリピドAと、アルミニウム塩との組合せを含んでもよい。或いは、アジュバントは、国際公開第98/50399号パンフレット、国際公開第01/34617号パンフレット及び国際公開第03/065806号パンフレットに開示されている、3D−MPL、又はアミノアルキルグルコサミニドリン酸のような他のtoll様受容体4(TLR4)リガンドを含んでもよい。
【0206】
使用可能なもう1種のアジュバントは、単独で又は他のアジュバントと組み合わせて使用することができる、サポニン、例えばQS21(Aquila Biopharmaceuticals,Inc.、Framingham、MA)である。例えば、一実施形態において、例えば国際公開第94/00153号パンフレットに記載されているQS21と3D−MPLとの組合せのような、モノホスホリルリピドAとサポニン誘導体との組合せ、又は国際公開第96/33739号パンフレットに記載されている、QS21がコレステロールで消光された組成物が提供される。他の好適な製剤は、水中油型乳剤及びトコフェロールを含む。一実施形態において、アジュバントは、国際公開第95/17210号パンフレットに記載されているように、水中油型乳剤中にQS21、3D−MPL及びトコフェロールを含む。
【0207】
本発明において使用される他のアジュバントは、CpGジヌクレオチドがメチル化されていない、非メチル化CpG含有オリゴヌクレオチドのようなTLR9アンタゴニストを含み得る。こうしたオリゴヌクレオチドは、よく知られており、例えば国際公開第96/02555号パンフレットに、記載されている。
【0208】
(この場合に)本発明における使用に好適なオリゴヌクレオチドは、以下を含んでもよい:
【0209】
【表2】
【0210】
CpG含有オリゴヌクレオチドはまた、単独で又は他のアジュバントと組み合わせて使用することができる。例えば、一実施形態において、アジュバントは、CpG含有オリゴヌクレオチドとサポニン誘導体との組合せ、特に、国際公開第00/09159号パンフレット及び国際公開第00/62800号パンフレットに開示されているCpGとQS21との組合せを含む。
【0211】
したがって、本明細書に記載の免疫治療薬を含む組成物が提供され、ここで、アジュバントは、3D−MPL、QS21、CpGオリゴヌクレオチド、ポリエチレンエーテル又はエステルのうちの1つ又は複数、又はこれらのアジュバントの2種類以上の組合せを含む。特定の実施形態において、組成物中の免疫治療薬の成分は、水中油型若しくは油中水型乳化賦形剤中又はリポソーム製剤中で提示することができる。
【0212】
一実施形態において、アジュバントは、3D−MPL、QS21及び免疫賦活性CpGオリゴヌクレオチドのうちの1つ又は複数を含んでもよい。一実施形態において、3種類全てのアジュバント成分が存在する。該成分は、国際公開第95/17210号パンフレットに記載されているように、リポソーム製剤又は水中油型乳剤中のいずれでも提示することができる。
【0213】
別の実施形態において、3D MPL−及びQS21は、水中油型乳剤中で、CpGオリゴヌクレオチドの非存在下で提示される。
【0214】
使用される3D−MPLの量は、一般的に少量であるが、製剤によっては、用量あたり1〜1000μg、好ましくは用量あたり1〜500μg、より好ましくは用量あたり1〜100μgの間の範囲にあってもよい。
【0215】
本発明のアジュバント中のCpG又は免疫賦活性オリゴヌクレオチドの量は、一般的には少量であるが、製剤によっては、用量あたり1〜1000μg、好ましくは用量あたり1〜500μg、より好ましくは用量あたり1〜100μgの間の範囲にあってもよい。
【0216】
本発明のアジュバント中で使用されるサポニンの量は、用量あたり1〜1000μg、好ましくは用量あたり1〜500μg、より好ましくは用量あたり1〜250μg、最も好ましくは用量あたり1〜100μgの間の範囲にあってもよい。
【0217】
本明細書に記載のアジュバント製剤は、水中油型乳剤及び/又はトコフェロールをさらに含んでいてもよく、又はリポソーム組成物中に製剤化されていてもよい。
【0218】
他の好適なアジュバントとしては、モンタニド(Montanide)ISA720(Seppic、France)、SAF(Chiron、California、United States)、ISCOMS(CSL)、MF−59(Chiron)、リビ デトックス(Ribi Detox)、RC−529(GSK、Hamilton、MT)及び他のアミノアルキルグルコサミニド4−リン酸(AGP)などが挙げられる。
【0219】
一般的には、それぞれのヒトの用量は、0.1〜1000μg、例えば、0.1〜500μg、0.1〜100μg、又は0.1〜50μgの抗原を含んでもよい。特定の免疫治療薬の最適量は、ワクチン接種した対象における適切な免疫応答の観察を含む標準的な治験によって確認することができる。初回ワクチン接種後に、対象は、適切に間隔を空けた1回又は数回の追加免疫を受けることもできる。
【0220】
或いは、本発明の方法において使用される組成物は、本明細書に記載の免疫治療薬を、薬学的に許容される添加剤と組み合わせて含む医薬組成物を含んでもよい。
【0221】
ここで、以下の非限定的な実施例に関して、本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0222】
【図1】染色体上のCTAG1Bアッセイの局在を示す図である。可能性のある1つの転写開始点(TSS)を記載している。この遺伝子構造の始まりを以下のように表している:白い四角形は300bpのプロモーター領域を表し、可能性のあるTSSを示している縦線がこれに続き、次いで、濃い四角形が第1エキソンを表す。各アッセイ部位を、各部位に該当する名称の前にあるそれぞれの白い四角形で示し、「(U)」は、非メチル化特異的アッセイ(すなわち、低メチル化に特異的なアッセイ)を示している。CpGカウントの数は、20kbの領域にわたってスポットされている。
【図2】染色体上のCTAG2アッセイの局在を示す図である。可能性のある1つの転写開始点(TSS)を記載している。この遺伝子構造の始まりを以下のように表している:白い四角形は300bpのプロモーター領域を表し、可能性のあるTSSを示している縦線がこれに続き、次いで、濃い四角形が第1エキソンを表す。各アッセイ部位を、各部位に該当する名称の前にあるそれぞれの白い四角形で示し、「(U)」は、非メチル化特異的アッセイ(すなわち、低メチル化に特異的なアッセイ)を示している。CpGカウントの数は、20kbの領域にわたってスポットされている。CTAG2には、CTAG2_1という名称もつけられている。
【図3】染色体上のPRAMEアッセイの局在を示す図である。可能性のある1つの転写開始点(TSS)を記載している。この遺伝子構造の始まりを以下のように表している:白い四角形は300bpのプロモーター領域を表し、可能性のあるTSSを示している縦線がこれに続き、次いで、濃い四角形が第1エキソンを表す。各アッセイ部位を、各部位に該当する名称の前にあるそれぞれの白い四角形で示し、「(U)」は、非メチル化特異的アッセイ(すなわち、低メチル化に特異的なアッセイ)を示している。CpGカウントの数は、20kbの領域にわたってスポットされている。
【図4】染色体上のあるMAGE−A3アッセイ(MAGE−A3 GO_2Uアッセイ)の局在を示す図である。可能性のある1つの転写開始点(TSS)を記載している。この遺伝子構造の始まりを以下のように表している:白い四角形は300bpのプロモーター領域を表し、可能性のあるTSSを示している縦線がこれに続き、次いで、濃い四角形が第1エキソンを表す。アッセイ部位を、その部位に該当する名称の付いた白い四角形で示し、「(U)」は、非メチル化特異的アッセイ(すなわち、低メチル化に特異的なアッセイ)を示している。CpGカウントの数は、20kbの領域にわたってスポットされている。
【図5】アンプリフルオル(登録商標)技術を示す概要図である。プライマー対において少なくとも1種のプライマー(フォワードプライマー)は、分子エネルギー移動対のドナー部分(FAM)及びアクセプター部分(DABCYL)を有する「ヘアピン」構造を含む。この図は、標識したヘアピン構造に連結した、フォワードプライマー(forプライマー)とも呼ばれるセンスプライマーの場合について説明している。増幅のないときには、ドナー部分によって放出される蛍光は、アクセプター部分によって効果的に受容され、その結果、蛍光が消失される。増幅中には、プライマーは増幅産物中に組み込まれる。2回目の増幅中に、ステムループ又はヘアピン構造が破壊される。アクセプター部分は、ドナー部分によって放出される蛍光をもはや効果的に消光することができなくなる。したがって、ドナー部分は、検出可能な蛍光シグナルを産生する。
【図6】非小細胞肺癌(NSCLC)の48試料についてのCTAG1B_1S脱メチル化アッセイで得られるリアルタイムMS−PCR結果とCTAG1B(遺伝子の別名、NY−ESO−1)リアルタイムRT−PCR発現データとの間の一致を示す図である。濃く太い縦線は脱メチル化アッセイのカットオフを示し、太い横線は発現のカットオフを示している。線形回帰を黒線で表している;R=0.35。
【図7】非小細胞肺癌(NSCLC)の48試料についてのCTAG2_1_AS脱メチル化アッセイで得られるリアルタイムMS−PCR結果とCTAG2(遺伝子の別名、LAGE−1)リアルタイムRT−PCR発現データとの間の一致を示す図である。濃く太い縦線は脱メチル化アッセイのカットオフを示し、太い横線は発現のカットオフを示している。線形回帰を黒線で表している;R=0.86;2つの技術間の一致は、87.5%である。
【図8】非小細胞肺癌(NSCLC)の48試料についてのCTAG2_1_S脱メチル化アッセイで得られるリアルタイムMS−PCR結果とCTAG2(遺伝子の別名、LAGE−1)リアルタイムRT−PCR発現データとの間の一致を示す図である。濃く太い縦線は脱メチル化アッセイのカットオフを示し、太い横線は発現のカットオフを示している。線形回帰を黒線で表している;R=0.88;2つの技術間の一致は、87.5%である。
【図9】非小細胞肺癌(NSCLC)の48試料についてのCTAG2_2_S脱メチル化アッセイで得られるリアルタイムMS−PCR結果とCTAG2(遺伝子の別名、LAGE−1)リアルタイムRT−PCR発現データとの間の一致を示す図である。濃く太い縦線は脱メチル化アッセイのカットオフを示し、太い横線は発現のカットオフを示している。線形回帰を黒線で表している;R=0.47;2つの技術間の一致は、68.8%である。
【図10】非小細胞肺癌(NSCLC)の48試料についてのCTAG2_3_S脱メチル化アッセイで得られるリアルタイムMS−PCR結果とCTAG2(遺伝子の別名、LAGE−1)リアルタイムRT−PCR発現データとの間の一致を示す図である。濃く太い縦線は脱メチル化アッセイのカットオフを示し、太い横線は発現のカットオフを示している。線形回帰を黒線で表している;R=0.55;2つの技術間の一致は、66.7%である。
【図11】非小細胞肺癌(NSCLC)の48試料についてのPRAME_7_S脱メチル化アッセイで得られるリアルタイムMS−PCR結果とPRAMEリアルタイムRT−PCR発現データとの間の一致を示す図である。濃く太い縦線は脱メチル化アッセイのカットオフを示し、太い横線は発現のカットオフを示している。線形回帰を黒線で表している;R=0.62;2つの技術間の一致は、83.3%である。
【図12】非小細胞肺癌(NSCLC)の48試料についてのPRAME_1_AS脱メチル化アッセイで得られるリアルタイムMS−PCR結果とPRAMEリアルタイムRT−PCR発現データとの間の一致を示す図である。濃く太い縦線は脱メチル化アッセイのカットオフを示し、太い横線は発現のカットオフを示している。線形回帰を黒線で表している;R=0.39;2つの技術間の一致は、66.7%である。
【図13】非小細胞肺癌(NSCLC)の48試料についてのPRAME_2_S脱メチル化アッセイで得られるリアルタイムMS−PCR結果とPRAMEリアルタイムRT−PCR発現データとの間の一致を示す図である。濃く太い縦線は脱メチル化アッセイのカットオフを示し、太い横線は発現のカットオフを示している。線形回帰を黒線で表している;R=0.64;2つの技術間の一致は、79.2%である。
【図14】非小細胞肺癌(NSCLC)の48試料についてのPRAME_3_AS脱メチル化アッセイで得られるリアルタイムMS−PCR結果とPRAMEリアルタイムRT−PCR発現データとの間の一致を示す図である。濃く太い縦線は脱メチル化アッセイのカットオフを示し、太い横線は発現のカットオフを示している。線形回帰を黒線で表している;R=0.73;2つの技術間の一致は、85.4%である。
【図15】非小細胞肺癌(NSCLC)の48試料についてのPRAME_6_AS脱メチル化アッセイで得られるリアルタイムMS−PCR結果とPRAMEリアルタイムRT−PCR発現データとの間の一致を示す図である。濃く太い縦線は脱メチル化アッセイのカットオフを示し、太い横線は発現のカットオフを示している。線形回帰を黒線で表している;R=0.24;2つの技術間の一致は、66.7%である。
【図16】黒色腫の31試料についてのCTAG1B_1_S脱メチル化アッセイで得られるリアルタイムMS−PCR結果とCTAG1B(遺伝子の別名、NY−ESO−1)リアルタイムRT−PCR発現データとの間の一致を示す図である;濃く太い縦線は脱メチル化アッセイのカットオフを示し、太い横線は発現のカットオフを示している。線形回帰を黒線で表している。
【図17】黒色腫の31試料についてのCTAG2_1_AS脱メチル化アッセイで得られるリアルタイムMS−PCR結果とCTAG2(遺伝子の別名、LAGE−1)リアルタイムRT−PCR発現データとの間の一致を示す図である。濃く太い縦線は脱メチル化アッセイのカットオフを示し、太い横線は発現のカットオフを示している。線形回帰を黒線で表している;R=0.63;2つの技術間の一致は、74.2%である。
【図18】黒色腫の31試料についてのCTAG2_1_S脱メチル化アッセイで得られるリアルタイムMS−PCR結果とCTAG2(遺伝子の別名、LAGE−1)リアルタイムRT−PCR発現データとの間の一致を示す図である。濃く太い縦線は脱メチル化アッセイのカットオフを示し、太い横線は発現のカットオフを示している。線形回帰を黒線で表している;R=0.62;2つの技術間の一致は、74.2%である。
【図19】黒色腫の31試料についてのCTAG2_2_S脱メチル化アッセイで得られるリアルタイムMS−PCR結果とCTAG2(遺伝子の別名、LAGE−1)リアルタイムRT−PCR発現データとの間の一致を示す図である。濃く太い縦線は脱メチル化アッセイのカットオフを示し、太い横線は発現のカットオフを示している。線形回帰を黒線で表している;R=0.34;2つの技術間の一致は、51.6%である。
【図20】黒色腫の31試料についてのCTAG2_3_S脱メチル化アッセイで得られるリアルタイムMS−PCR結果とCTAG2(遺伝子の別名、LAGE−1)リアルタイムRT−PCR発現データとの間の一致を示す図である。濃く太い縦線は脱メチル化アッセイのカットオフを示し、太い横線は発現のカットオフを示している。線形回帰を黒線で表している;R=0.58;2つの技術間の一致は、74.2%である。
【図21】黒色腫の31試料についてのPRAME_7_S脱メチル化アッセイで得られるリアルタイムMS−PCR結果とPRAMEリアルタイムRT−PCR発現データとの間の一致を示す図である。濃く太い縦線は脱メチル化アッセイのカットオフを示し、太い横線は発現のカットオフを示している。線形回帰を黒線で表している;R=0.70;2つの技術間の一致は、90.3%である。
【図22】黒色腫の31試料についてのPRAME_1_AS脱メチル化アッセイで得られるリアルタイムMS−PCR結果とPRAMEリアルタイムRT−PCR発現データとの間の一致を示す図である。濃く太い縦線は脱メチル化アッセイのカットオフを示し、太い横線は発現のカットオフを示している。線形回帰を黒線で表している;R=0.26;2つの技術間の一致は、93.5%である。
【図23】黒色腫の31試料についてのPRAME_2_S脱メチル化アッセイで得られるリアルタイムMS−PCR結果とPRAMEリアルタイムRT−PCR発現データとの間の一致を示す図である。濃く太い縦線は脱メチル化アッセイのカットオフを示し、太い横線は発現のカットオフを示している。線形回帰を黒線で表している;R=0.29;2つの技術間の一致は、90.3%である。
【図24】黒色腫の31試料についてのPRAME_3_AS脱メチル化アッセイで得られるリアルタイムMS−PCR結果とPRAMEリアルタイムRT−PCR発現データとの間の一致を示す図である。濃く太い縦線は脱メチル化アッセイのカットオフを示し、太い横線は発現のカットオフを示している。線形回帰を黒線で表している;R=0.48;2つの技術間の一致は、90.3%である。
【図25】黒色腫の31試料についてのPRAME_6_AS脱メチル化アッセイで得られるリアルタイムMS−PCR結果とPRAMEリアルタイムRT−PCR発現データとの間の一致を示す図である。濃く太い縦線は脱メチル化アッセイのカットオフを示し、太い横線は発現のカットオフを示している。線形回帰を黒線で表している;R=0.51;2つの技術間の一致は、90.3%である。
【図26】乳癌の28試料についてのCTAG2_1_AS脱メチル化アッセイで得られるリアルタイムMS−PCR結果とCTAG2リアルタイムRT−PCR発現データとの間の一致を示す図である。濃く太い縦線は脱メチル化アッセイのカットオフを示し、太い横線は発現のカットオフを示している。線形回帰を黒線で表している;R=0.56;2つの技術間の一致は、71.4%である。
【図27】乳癌の28試料についてのCTAG2_3_S脱メチル化アッセイで得られるリアルタイムMS−PCR結果とCTAG2リアルタイムRT−PCR発現データとの間の一致を示す図である。濃く太い縦線は脱メチル化アッセイのカットオフを示し、太い横線は発現のカットオフを示している。線形回帰を黒線で表している;R=0.34;2つの技術間の一致は、78.6%である。
【0223】
実験の節
【0224】
本発明者らは、疾患のスクリーニング、検出、病期分類、予後、予測及びモニタリング、治療の予測及びモニタリング(ワクチンの選択を含む)などの様々な目的のために、非小細胞肺癌(NSCLC)、黒色腫及び乳癌における種々のCT遺伝子のメチル化状態を、非メチル化アッセイを用いて調査した。
【0225】
実施例1:CT抗原アッセイ:in silicoでのプライマー設計
【0226】
CT抗原であるCTAG1B(=NY−ESO−1)、CTAG2(=LAGE−1)及びPRAMEに対して、非メチル化型の遺伝子配列を標的とするように設計されたいくつかの低メチル化アッセイが開発された。
【0227】
MSPの必要条件に適合したPrimer3ソフトウェア(http://fokker.wi.mit.edu/primer3/input.htm)を、非メチル化型のCTAG1B、CTAG2及びPRAMEを検出するためのフォワード(F)プライマー及びリバース(R)プライマーのin silico設計に使用した。条件は、以下の通りであった:アンプリコンサイズ:50〜120;プライマーサイズ:19〜27;融解温度:55〜65;最大3’自己相補性=0;TSS周辺の4000bpの枠(返答する数(number to return)=2000)。
【0228】
転写開始点(TSS)に対するCTAG1B、CTAG2及びPRAMEのU−プライマーの位置をそれぞれ図1、図2及び図3に示している。調査した領域は、プロモーター領域を含み、第1エキソンまで及んでいた。
【0229】
フォワードプライマー又はリバースプライマーのいずれかは、5’末端に、以下の配列を有する、ドナー及びアクセプター部分を有する適切なステムループ又はヘアピン構造を組み込むように合成した:5’AGCGATGCGTTCGAGCATCGCU 3’(配列番号43。)
【0230】
下記の表1に、試験したような種々のプライマーの組合せを示している。アンプリフルオルプライマーを使用したPCRの技術の原理については、図5に記載している。
【0231】
【表3−1】
【表3−2】
【0232】
実施例2:温度勾配及びアッセイの選択
【0233】
材料及び方法
【0234】
標準物質調製用の温度勾配:MJ Research PTC−200サーモサイクラーを使用してPCRを行った。サイクリング条件は、以下の通りであった:段階1、95℃で5分間;段階2を35回反復、95℃で30秒間、アニーリング温度で30秒間、72℃で30秒間;段階3、72℃で30分間、4℃で保持。アニーリング温度は、機器の加熱ブロック全体に57℃〜62℃の勾配として設定した。
【0235】
クローニング:PCR産物をトポ(TOPO)(登録商標)TAベクター(トポ(登録商標)クローニングキット、インビトロジェン(Invitrogen)(登録商標))中に連結し、ワンショット(One Shot)(登録商標)コンピテント大腸菌(E.coli)を形質転換した。プラスミドはQiagen GmbH製のキアプレップ(QIAprep)(登録商標)spin midiprepキットを製造業者の手順書に従って使用して、単離された。クローニングしたPCR産物は、シーケンシングによって確認され、公開されているプロモーター配列と比較された。
【0236】
標準曲線物質の調製:制限酵素BamHI(Roche)で消化することによってプラスミドを線状にし、次いで、キアクイック(QIAquick)(登録商標)PCR精製キット(Qiagen GmbH;製造業者の手順書に従って)を使用して精製した。PCR又はプラスミドの調製物の濃度はUV分光光度法を用いて決定された。2×107コピー/5μlのストック溶液を調製し、使用まで−80℃で保存した。標準曲線の希釈物(2×106〜2×101コピー/5μl)は、試験ごとに新たに調製した。
【0237】
リアルタイムMS−PCR:リアルタイムMSPアッセイにより、CTAG1B、CTAG2、PRAME及びβ―アクチンの定量を行った。これらは、ABIプリズム(Prism)(登録商標)7900HT機器(Applied Biosystems)又はi−Cycler(BioRad)のいずれかを使用したアンプリフルオル(登録商標)アッセイフォーマットごとに特定のプライマーの組合せを使用する平行の増幅法/定量法からなっていた。サイクリング条件は:段階1:50℃で2分間、段階2:95℃で15分間、段階3:95℃で15秒間、57℃で30秒間、57℃で30秒間(プラトーデータ収集)を45回反復であった。結果は、Applied Biosystems製のSDS2.2.2ソフトウェア又はBioRad製のiCycler iQ version3.1ソフトウェアのいずれかを使用して作製され、Ct値(ソフトウェアによって自動的に設定される、増幅曲線が閾値と交差するところのサイクル数)として出された。
【0238】
結果
【0239】
表1に記載している、プライマー対に対応しているプライマーを使用して、各アッセイ用のPCR産物を調製した。この目的のために、亜硫酸水素塩処理したシ−ピーゲノム(CpGenome)(商標)ユニバーサル非メチル化DNAを鋳型物質として使用して、図1、図2及び図3に記載のようなCTAG1B_1、CTAG2_1及びPRAME_7の短い領域を増幅した。単一のPCR産物を得るために、プライマー対ごとに、いくつかのアニーリング温度を試験した(57℃〜62℃)。これらのPCR産物を、精製して定量し、次いで、希釈して、各アッセイ用の標準物質を調製した。最初のリアルタイムMS−PCRは、(各アッセイに特異的な)精製PCR産物を鋳型として使用して、表1に記載のような種々のプライマー対の組合せを用いて調製した。最終的に、さらなる調査のために以下のアッセイが残った:CTAG1B_1_S_AMP、CTAG1B_2_AS_AMP、CTAG2_1_S_AMP、CTAG2_1_AS_AMP、CTAG2_3_S_AMP、PRAME_1_AS_AMP、PRAME_2_S_AMP、PRAME_3_AS_AMP、PRAME_6_AS_AMP及びPRAME_7_S_AMP。それぞれの性能の例を表2に示している(6つのデータポイント全てを含む)。
【0240】
【表4】
【0241】
いくつかのアッセイでは、PCR産物はプラスミド中にクローニングし、PCR産物の代わりにその構築物が標準曲線調製用の物質として使用された。
【0242】
実施例3:CTAG1B、CTAG2及びPRAME遺伝子についての、リアルタイムMS−PCRアッセイと定量リアルタイムRT−PCR結果との間の一致
【0243】
材料及び方法:
【0244】
細胞株、肺試料、黒色腫試料及び乳房試料からのRNAは、イソプロパノール沈澱をRNeasy精製ステップ(Qiagen、Venlo、Netherlands)に置き換えたことを除いて、Tripure試薬(Roche、Vilvoorde、Belgium)を使用して製造業者の説明書に従って抽出された。RNA濃度は、260nmでの光学濃度の値から決定された。細胞株DNAは、「Puregene Cell and Tissueキット」(Qiagen #158767)又は「QIAamp DNA miniキット(Qiagen #51304)のいずれかを使用して抽出された。
【0245】
GSKBioによって提供されたRNAレーター(RNA later)(登録商標)溶液中の、肺生検試料を使用して、ゲノムDNAを抽出した。かみそりの刃を使用して約10mgの肺組織を極めて小さな断片に薄切りして、フェノール抽出法に従って抽出を行った。ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)乳房組織からのDNAは、キシレン処理後に、同様のフェノール/クロロホルム法に従って抽出された。
【0246】
黒色腫生検試料からのDNAは、「QIAamp DNA miniキット」(Qiagen #51304)又は「Maxwell 16 Tissue DBA精製キット」(Promege AS1030)のいずれかを使用して抽出された。
【0247】
キシレン処理の場合:FFPE組織を含むそれぞれのチューブを、750μlのキシレン(Merck #1.08681.1000)と共に室温で2時間インキュベートして、パラフィンを溶解させた。パラフィンが全て溶解したときに、250μlの70%エタノールを添加して、混合後、チューブを最高速度で15分間遠心した。上清を除去し、試料を室温で空気乾燥した。
【0248】
DNAは、フェノール/クロロホルムを使用して試料から抽出された:簡単に説明すると、試料を、最初に、50〜100μg/mlのプロテイナーゼK(Roche)及び最終濃度の1%SDSで、1100rpmで振盪しながら、48℃で一晩インキュベートした。1倍量の試料に、Invitrogen製の1倍量のフェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール(25:24:1)を添加して、混合物をPhase Lock Gelチューブ(Eppendorf)に移した。完全に混合した後に、チューブを遠心して、相を分離させ、核酸を含んでいる上部の水相を回収した。Phase lock gelチューブでの抽出をもう1回行った。DNAは、750μlのEtOH/NH4Ac溶液及び2μlのグリコーゲン(Roche)を添加することにより沈殿させた。次いで、これを50μlのLoTE(3mM TRIS、0.2mM EDTA、pH8.0)に溶解した。
【0249】
DNAは、ピコグリーン(登録商標)dsDNA定量キット(Molecular Probes、#P7589)を使用して、製造業者の推奨に従って定量された。キットと共に提供されたλDNAを使用して標準曲線を用意した。データは、FluoStar Galaxyプレートリーダー(BMG Lab technologies、Germany)を使用して収集された。
【0250】
亜硫酸水素塩処理:LoTE中の1.5μgまでのDNAを、Zymo Research製のEZ DNAメチル化キット(#D5002)を使用して処理した。簡単に説明すると、45μlの一定分量を、5μlのM−Dilution緩衝液と混合し、1100rpmで振盪しながら、37℃で15分間インキュベートした。次いで、希釈した100μlのCT Conversion Reagentを添加し、試料を、暗所で1100rpmで振盪しながら、70℃で3時間インキュベートした。変換後、製造業者の説明書に従って、試料をさらに脱塩して、脱スルホン化し、50μlのTris−HCl 1mM Ph8.0で溶出を行った。
【0251】
100nMの最終濃度の各プライマー(表1に記載の特定の組合せ)及びQuantitect Probe PCRキット(Qiagen #204345)からの2×ミックスを含んでいる12μlの最終反応物中に、亜硫酸水素塩処理した2.4μlのDNAを使用した。陰性対照及び陽性対照として、シ−ピーゲノム(商標)ユニバーサルメチル化及び非メチル化DNA(Chemicon International、CA、USA;カタログ# S7821及びカタログ# S7822)を各回のアッセイに含めた。反応物は384ウェルプレートに入れられた。アッセイは、Applied Biosystem7900HT機器上で行われた。サイクリング条件は:段階1:50℃で2分間、段階2:95℃で10分間、段階3(45回反復):95℃で15秒間、57℃で30秒間(又はβ−アクチンの場合には62℃)、プラトーデータ収集に相当する57℃で30秒間(又はβ−アクチンの場合には62℃)であった。Applied Biosystems製のSDS2.2.2ソフトウェアを使用して結果を作製し、Ct値(ソフトウェアによって自動的に設定される、増幅曲線が閾値と交差するところのサイクル数)として出した。Ct値は、20〜2×106遺伝子コピー相当の標準曲線上にプロットされた値の線形回帰に基づいたコピー数の算出に使用された。目的遺伝子とb−アクチンとの間の比率を算出し、試験結果を作製した。
【0252】
2μgの全RNAからのcDNA合成を、1×ファーストストランド緩衝液(first strand buffer)、0.5mMの各dNTP、10mMのジチオスレイトール、20UのrRNase阻害剤(Promega カタログN2511)、2μMのオリゴ(dT)15及び200UのM−MLV逆転写酵素(Life Technologies カタログ28025−013)を含んでいる20μl混合物中で、42℃で1時間30分行った。
【0253】
50ngの全RNAに相当するcDNAを、タックマン緩衝液、5mMのMgCl2、0.4mMのdUTP、0.2mMの各ヌクレオチド、0.625UのAmpli Taq Gold DNAポリメラーゼ、0.05UのUNG、0.2μMの各オリゴヌクレオチドプライマー及び0.2μMのタックマンMGBプローブを含んでいる25μlの混合物中でPCRによって増幅した。特定のオリゴヌクレオチドプライマー及びMGBプローブを使用した。標的遺伝子及びベータアクチン遺伝子は、タックマンchemistry7900システム(PE Applied Biosystems)を使用した定量PCRで増幅した。増幅プロファイルは、50℃で2分間を1サイクル、95℃で12分間を1サイクル及び95℃で15秒間並びに60℃で1分間を40サイクルであった。60℃での全ての伸長ステップ中に、タックマンプローブの分解によって生じる蛍光シグナルをリアルタイムで検出した。リアルタイム配列検出ソフトウェア(Applied Biosystems、Warrington、UK)を使用して、生データを分析した。標的遺伝子とb−アクチンとの間の比率を算出し、試験結果を作製した。
【0254】
検定規定:
【0255】
リアルタイムMS−PCRでは、以下の検定規定を標準曲線に適用した:二重試験で少なくとも4点;(二重試験の間の)ΔCt<1.5;PCR効率>80%;R2>0.99;陽性対照は、陽性でなければならない;陰性対照は、陰性でなければならない。
【0256】
結果解釈の判定基準は、目的遺伝子の標準相当のコピー数とb−アクチンのコピー数とで算出した比率の値に基づいていた:比率=(目的遺伝子コピー数/β−アクチンコピー数)×1000。
【0257】
遺伝子発現については、検定規定は、NTCが35を超えるCtを有し、陽性対照が陽性であり、標的遺伝子及びベータアクチンの二重試験のΔCt<2であった。
【0258】
遺伝子発現の結果はアクチン発現と比較して算出される。PRAME発現用のカットオフは1E−04コピー/アクチンコピーに設定され、CTAG1B及びCTAG2については、カットオフは1E−05コピー/アクチンコピーに設定される。試料は、ベータアクチンCtが23未満で、二重試験のΔCt<2であり、かつ標的遺伝子の二重試験のΔCt<2である場合、有効であった。
【0259】
【表5】
【0260】
結果
【0261】
細胞株
【0262】
代替の標準曲線物質を使用して、最適なリアルタイムMS−PCR条件を選択した後に、多様な細胞株を、CTAG1B、CTAG2及びPRAMEの脱メチル化アッセイについてアッセイした。結果は、リアルタイムRT−PCRを使用して得られたものと比較した。試験する遺伝子(CTAG1B、CTAG2、PRAME)ごとに1つのアッセイを示す。表4、表5及び表6を参照されたい。
【0263】
【表6】
【0264】
【表7】
【0265】
【表8】
【0266】
この試験の一目的は、癌試料において行うアッセイに好適な陽性細胞株及び陰性細胞株を発見することであった。リアルタイムMS−PCRデータを発現データと比較すると、CRL2505及びCRL5803は、最も高いCTAG1B_1_S/b−アクチン比率を示すことが認められ(表4)、したがって、CTAG1B_1_Sアッセイを使用する場合に、CTAG1B脱メチル化の陽性細胞株として使用できることができる。SW−480及びHL−60細胞株は、このアッセイの陰性細胞株として使用することができる。
【0267】
試験したCTAG2及びPRAMEのアッセイの最良の陽性細胞株及び陰性細胞株を定めることもできた(表7及び表8)。
【0268】
【表9】
【0269】
【表10】
【0270】
非小細胞肺癌(NSCLC)
【0271】
CTAG1B、CTAG2及びPRAMEの発現をリアルタイムRT−PCRによって、並びにこれらのメチル化状態をリアルタイムMS−PCRによって調べるために、NSCLCの51試料を使用した。3試料は少なくとも1つの技術で無効なことが見出され、したがって、48試料のNSCLCで得られた結果を比較した。結果の比較を視覚的に表した。CTAG1Bでは、CTAG1B_1_Sアッセイとの良好な一致は認められなかった(図6)。CTAG2の発現を、4つの脱メチル化アッセイで得られた結果と比較した場合には、CTAG2_1S(図8)及びCTAG2_1AS(図7)のアッセイで最良の一致が得られ、両技術間で87.5%の一致が示された。CTAG2_2_S(図9)及びCTAG2_3_S(図10)は、それぞれ68.8%及び66.7%でより低い一致が示される。PRAMEの発現については、アッセイによって66.7%〜85.4%の範囲の一致が認められる(図11、図12、図13、図14及び図15)。発現データとの最良の一致は、PRAME_3_AS脱メチル化アッセイ(図14)で得られ、85.4%の一致が示された。表9は、NSCLC試料における遺伝子発現と遺伝子メチル化とを比較する際に得られる全ての結果のまとめを示す。
【0272】
【表11】
【0273】
黒色腫試料
【0274】
DNA及びRNAは、RNAレーター(登録商標)溶液中の黒色腫組織の31試料から抽出された。NSCLCを調べた際に行ったことと同様に、これらの黒色腫試料は、CTAG1B、CTAG2及びPRAMEの発現をリアルタイムRT−PCRによって、並びにこれらのメチル化状態をリアルタイムMS−PCRによって調べるために、使用された。NSCLCの場合と同様に、CTAG1B_1_S脱メチル化アッセイを使用した場合には、発現データとの良好な一致は認められなかった。CTAG2遺伝子の場合には、CTAG2_1_S(図18)、CTAG2_1_AS(図17)及びCTAG2_3S(図20)アッセイの3アッセイで最良の一致が認められ、全てが両技術間で74.2%の一致を示した。PRAME遺伝子の場合、全てのPRAMEのアッセイ(図21、図22、図23、図24及び図25)で良好な一致(90.3%及び93.5%)が示された。しかし、おそらくその中の陰性試料の数が少ない(2)ために、PRAME_7_S(表9)だけは、許容可能なRピアソン相関係数を示した。表10に、黒色腫試料で得られる一致及び関連性の結果をまとめている。
【0275】
【表12】
【0276】
乳癌試料
【0277】
CTAG2の発現をリアルタイムRT−PCRによって、並びにCTAG2のメチル化状態をリアルタイムMS−PCRによって調べるために、乳癌の29試料を使用した。1試料は少なくとも1つの技術で無効なことが見出され、したがって、乳癌の28試料で得られた結果を比較した。CTAG2_1_AS及びCTAG2_3_Sのアッセイで得られた結果は、それぞれ71.4%(図26)及び78.6%の一致(図27)であった。
【0278】
結論
【0279】
正常組織では精巣内でほぼ排他的に発現される癌/精巣(CT)抗原は、精巣以外の癌組織において発現されることがわかる。この試験で示されるように、CT遺伝子の発現は、リアルタイムRT−PCRによって調べることができるが、さらに、遺伝子プロモーター(又は近くの領域)のメチル化状態を調べることによって間接的にも調べることができる。実際に、異常な発現は、低メチル化と関連付けることができる。細胞株における試験により、CTAG1B脱メチル化アッセイを含めた全てのアッセイ用の陽性対照及び陰性対照の細胞株が得られた。NSCLC、黒色腫及び乳癌の組織では、CTAG1Bアッセイを除き、遺伝子発現と遺伝子低メチル化状態との間でいくらかの一致を示すことができた。CTAG2発現についての最良の一致は、CTAG2_1_S及びCTAG2_1_ASの脱メチル化アッセイで得られ、いずれもNSCLC試料では87.5%、黒色腫試料では74.2%の一致が示された。一方、CTAG2_3_Sアッセイでは、乳癌試料間で78.6%の一致が示されていた。PRAMEについては、NSCLCにおけるPRAME_3_AS脱メチル化アッセイ(85.4%)及び黒色腫におけるPRAME_1_ASアッセイ(93.5%)で最良の一致が得られた。2種類のアッセイを乳癌組織において行った:CTAG2_1_AS及びCTAG2_3_Sでは、それぞれ71.4%及び78.6%の一致を示した。
【0280】
実施例4:MAGE−A3低メチル化アッセイを用いた非小細胞肺癌(NSCLC)の診断
【0281】
材料及び方法
【0282】
細針生検(FNB)からのDNAを抽出した。
【0283】
実施例3と同様に、ピコグリーン(登録商標)dsDNA定量キット(Molecular Probes、#P7589)を製造業者の推奨に従って使用して、それぞれの試料及び細胞株のDNAをDNA量についてアッセイした。FluoStar Galaxyプレートリーダー(BMG Lab technologies、Germany)を使用して、データを収集し、分析した。上記のように、Zymo Research製のEZ DNAメチル化キット(詳細については実施例2を参照されたい)を使用して、1.5μgまでのDNAを処理し、25μlで溶出を行った。次いで、亜硫酸水素塩処理した2.4μlのDNAを、100nMの最終濃度の各プライマーを含んでいる12μlの全反応量中で、β−アクチン(実施例3と同様)及びMAGE−A3(MAGE−A3 GO_2U)のリアルタイムMSPアッセイを通して(表1)、処理した。使用するPCRミックスは、BioRad製のRoxを有する「iTaq supermix」(#172−5855)である。プラスミド構築物(Invitrogen life technologies製のトポ(登録商標)クローニングベクター中にクローニングされたPCR産物)を使用して、標準を調製した。反応物は384ウェルプレートに入れられた。アッセイは、Applied Biosystem7900HT機器上で行った。β−アクチンアッセイのサイクリング条件は、以下の通りであった:段階1、50℃で2分間;段階2、95℃で10分間;段階3、95℃で15秒間、次いで、62℃で1分間(プラトーデータ収集)を45回反復。MAGE−A3 GO_2Uアッセイのサイクリング条件は、以下の通りであった:段階1、50℃で2分間;段階2、95℃で10分間;段階3、95℃で15秒間、次いで、59℃で1分間(プラトーデータ収集)を45回反復。Applied Biosystems製のSDS2.2.2ソフトウェアを使用して結果を作製し、Ct値(ソフトウェアによって自動的に設定される、増幅曲線が閾値と交差するところのサイクル数)として出した。Ct値は、20〜2×106遺伝子コピー相当の標準曲線上にプロットされた値の線形回帰に基づいてコピー数の算出に使用した。目的遺伝子とβ−アクチンとの間の比率を算出し、試験結果を作製した。
【0284】
結果
【0285】
ここでは、腫瘍の切除を受けておらず、進行した疾患を有し、発現データが得られていない、非小細胞肺癌(NSCLC)患者からの細針生検(FNB)を用いて得られた結果が示される。
【0286】
DNAの抽出及び変換(亜硫酸水素塩処理)の後に、MAGE−A3 GO_2U低メチル化アッセイ(表1)を通して35試料のFNBを処理した。実施例3(表3)と同様の結果解釈の判定基準を適用した。低メチル化試験をqRT−PCRと比較することは不可能であったので、低メチル化試験のカットオフは間接的に設定しなければならなかった。IB期及びII期のNSCLC患者からのホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)肺組織及び後のRNAレーター溶液中の組織についての同様のアッセイで得られる結果に基づき、選択されるカットオフは112である。対応する結果を、表11に示している。カットオフ値は、発現データにより良く対応するように調整され得ることに注意しなければならない。
【0287】
【表13】
【0288】
カットオフ値を112に設定すると、MAGE−A3の低メチル化を有する患者の百分率は45.7%である。これらの患者は、MAGE−A3を発現している可能性がある。
【0289】
結論
【0290】
脱メチル化/低メチル化アッセイは、qRT−PCRが困難であることが立証されている試料の種類の場合に特に関心が持たれるであろう。これは、細針生検(FNB)の場合である。この技術は非侵襲性であるので、将来、他のNSCLC患者に応用されることが可能である。
【0291】
本発明は、本明細書に記載の特定の実施形態によって範囲を限定されるものではない。実際に、本明細書に記載のものに加えて、本発明の多様な改変形態が、上記の説明及び添付の図面から当業者に明らかとなるであろう。こうした改変形態は、添付の特許請求の範囲の範囲内に入ることが意図される。さらに、本明細書に記載の全ての実施形態は、必要に応じて、幅広く適用可能であり、整合する他の任意及び全ての実施形態と組み合わせることができるものとみなされる。
【0292】
本明細書には多様な刊行物を引用しており、これらの開示は参照によりその全体が組み込まれている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、44、61、62又は63のうちのいずれかのヌクレオチド配列を含む、又は前記配列から本質的になる、又は前記配列からなる、遺伝子のメチル化状態の検出に有用なオリゴヌクレオチド、プライマー又はプローブ。
【請求項2】
配列番号9〜12及び配列番号21〜40のうちのいずれかのヌクレオチド配列を含む、前記配列から本質的になる、又は前記配列からなる、遺伝子のメチル化状態の検出に有用な、請求項1に記載のオリゴヌクレオチド、プライマー又はプローブ。
【請求項3】
5’から3’の順に、以下の連続した配列:
(a)約6〜30ヌクレオチドの間の第1のヌクレオチド配列であって、前記第1のヌクレオチド配列中のヌクレオチドが、分子エネルギー移動対のドナー部分及びアクセプター部分から選択される第1の部分で標識され、前記ドナー部分が、励起されると1種又は複数の特定の波長で蛍光を放出し、前記アクセプター部分が、前記ドナー部分によって放出される前記蛍光を吸収及び/又は消光する、第1のヌクレオチド配列、
(b)約3〜20の間のヌクレオチドを含む、前記ヌクレオチドから本質的になる、又は前記ヌクレオチドからなる第2の一本鎖ヌクレオチド配列、
(c)約6〜30の間のヌクレオチドを含む、前記ヌクレオチドから本質的になる、又は前記ヌクレオチドからなる第3のヌクレオチド配列であって、前記第3のヌクレオチド配列中のヌクレオチドが、前記ドナー部分及び前記アクセプター部分から選択される第2の部分で標識され、前記第2の部分が、前記群のうち前記第1のヌクレオチド配列を標識していない方であり、前記第3のヌクレオチド配列が前記第1のヌクレオチド配列と逆の順に相補的であることにより、前記第1のヌクレオチド配列と前記第3のヌクレオチド配列との二重鎖を形成することができ、それにより、前記第1の部分と前記第2の部分とが近接していることによって、前記ドナー部分が励起されて蛍光を放出すると、前記アクセプター部分が前記ドナー部分によって放出される前記蛍光を吸収して消光する、第3のヌクレオチド配列、及び
(d)プライマーの3’末端に、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、61又は63のうちのいずれかの配列を3’末端に含む、前記配列から本質的になる、又は前記配列からなる(さらに、核酸ポリメラーゼによる、CTAG1B、CTAG2、MageA3及び/又はPRAME遺伝子のメチル化されていないDNAの部分を含む核酸鎖と相補的なヌクレオチド配列の合成を開始することができる)、約8〜40の間のヌクレオチドを含む、前記ヌクレオチドから本質的になる、又は前記ヌクレオチドからなる第4の一本鎖ヌクレオチド配列
を含む、又は前記配列から本質的になる、又は前記配列からなり、
前記二重鎖が形成されない場合、前記第1の部分と前記第2の部分とが、前記第1の部分と前記第2の部分との間の分子エネルギー移動を妨げる距離で分離される、請求項1に記載のオリゴヌクレオチド、プライマー又はプローブ。
【請求項4】
前記請求項のいずれか一項に記載のプライマーを含むプライマー対。
【請求項5】
請求項3に記載のプライマーを含む、請求項4に記載のプライマー対。
【請求項6】
配列番号9及び配列番号10;配列番号11及び配列番号12;配列番号21及び配列番号22;配列番号23及び配列番号24;配列番号25及び配列番号26;配列番号27及び配列番号28;配列番号29及び配列番号30;配列番号31及び配列番号32;配列番号33及び配列番号34;配列番号35及び配列番号36;配列番号37及び配列番号38;配列番号39及び配列番号40;又は配列番号61及び62のヌクレオチド配列を含む、又は前記配列から本質的になる、又は前記配列からなるプライマー対。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の少なくとも1種のオリゴヌクレオチド、プライマー若しくはプローブ、又は請求項4〜6のいずれか一項に記載のプライマー対を含む、遺伝子のメチル化状態を検出するためのキット。
【請求項8】
前記遺伝子がCTAG1B、CTAG2、MageA3及び/又はPRAME遺伝子である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド、プライマー若しくはプローブ、又は請求項4〜6のいずれか一項に記載のプライマー対、又は請求項7に記載のキット。
【請求項9】
DNA含有試料中のメチル化されていないCTAG1B、CTAG2、MageA3及び/又はPRAME遺伝子の存在及び/又は量を検出する方法であって、前記方法は、
(a)前記DNA含有試料を、検出可能な修飾残基を生成するためにDNA中のメチル化されていないシトシン残基を選択的に修飾するが、メチル化されているシトシン残基は修飾しない試薬で接触/処理するステップと、
(b)プライマー対のうち少なくとも1つのプライマーが、メチル化されていないDNAの配列にのみ結合するように設計された、少なくとも1種のプライマー対を使用して、前記試薬での処理後にメチル化されていない目的遺伝子の少なくとも一部を増幅するステップと
を含む方法。
【請求項10】
前記プライマー対のうちの少なくとも1つのプライマーが、配列番号1〜40又は配列番号61〜63のうちのいずれかのヌクレオチド配列を含む、前記配列から本質的になる、又は前記配列からなる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
癌又は癌素質を診断する方法であって、請求項1〜3若しくは8のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド、プライマー若しくはプローブ、請求項4〜6若しくは8のいずれか一項に記載のプライマー対、請求項7若しくは8に記載のキット、又は請求項9若しくは10に記載の方法を使用することによって、試料中のCTAG1B、CTAG2、MageA3及び/又はPRAME遺伝子のうち少なくとも1つのメチル化状態を検出するステップを含み、前記試料中のメチル化されていないCTAG1B、CTAG2、MageA3及び/又はPRAMEの存在が癌又は癌素質を示す方法。
【請求項12】
CTAG1B、CTAG2、MageA3及び/又はPRAME免疫治療薬を用いた治療に適する患者を特定及び/又は選出する方法であって、請求項1〜3若しくは8のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド、プライマー若しくはプローブ、請求項4〜6若しくは8のいずれか一項に記載のプライマー対、請求項7若しくは8に記載のキット、又は請求項9若しくは10に記載の方法を使用することによって、患者の試料中のCTAG1B、CTAG2、MageA3及び/又はPRAME遺伝子のメチル化状態を検出するステップを含み、CTAG1B、CTAG2、MageA3及び/又はPRAME遺伝子がメチル化されていない場合は、対象が、CTAG1B、CTAG2 MageA3及び/又はPRAME免疫治療薬を用いた治療に特定及び/又は選出される方法。
【請求項13】
癌の治療に成功する可能性を予測する方法であって、請求項1〜3若しくは8のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド、プライマー若しくはプローブ、請求項4〜6若しくは8のいずれか一項に記載のプライマー対、請求項7若しくは8に記載のキット、又は請求項9若しくは10に記載の方法を使用することによって、患者の試料中のCTAG1B、CTAG2、MageA3及び/又はPRAME遺伝子のメチル化状態を検出するステップを含み、前記遺伝子がメチル化されていない場合は、前記遺伝子がメチル化されている場合よりも、CTAG1B、CTAG2、MageA3及び/又はPRAME免疫治療薬を用いた治療に成功する可能性が高い方法。
【請求項14】
癌の適切な治療計画を選択する方法であって、請求項1〜3若しくは8のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド、プライマー若しくはプローブ、請求項4〜6若しくは8のいずれか一項に記載のプライマー対、請求項7若しくは8に記載のキット、又は請求項9若しくは10に記載の方法を使用することによって、患者の試料中のCTAG1B、CTAG2、MageA3及び/又はPRAME遺伝子のメチル化状態を検出するステップを含み、前記遺伝子がメチル化されていない場合は、治療に免疫治療薬が選択される方法。
【請求項15】
CTAG1B、CTAG2、MageA3及び/又はPRAMEを含む又はコードする組成物の投与を含む、対象において癌を治療する方法であって、前記対象は、請求項1〜3若しくは8のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド、プライマー若しくはプローブ、請求項4〜6若しくは8のいずれか一項に記載のプライマー対、請求項7若しくは8に記載のキット、又は請求項9若しくは10に記載の方法を使用することによって、CTAG1B、CTAG2、MageA3及び/又はPRAME遺伝子のメチル化状態を測定することに基づいて、前記対象が治療に選出されている方法。
【請求項16】
患者を治療する方法であって、請求項1〜3若しくは8のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド、プライマー若しくはプローブ、請求項4〜6若しくは8のいずれか一項に記載のプライマー対、請求項7若しくは8に記載のキット、又は請求項9若しくは10に記載の方法を使用することによって、CTAG1B、CTAG2、MageA3及び/又はPRAME遺伝子のメチル化状態を測定するステップと、次いで、CTAG1B、CTAG2、MageA3及び/又はPRAMEを含む又はコードする組成物を前記患者に投与するステップとを含む方法。
【請求項17】
CTAG1B、CTAG2、MageA3及び/又はPRAMEを発現する腫瘍を再発しやすい患者を治療する方法であって、前記患者が、腫瘍組織を除去するための治療を受けており、前記方法が、請求項1〜3若しくは8のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド、プライマー若しくはプローブ、請求項4〜6若しくは8のいずれか一項に記載のプライマー対、請求項7若しくは8に記載のキット、又は請求項9若しくは10に記載の方法を使用することによって、前記腫瘍組織におけるCTAG1B、CTAG2、MageA3及び/又はPRAME遺伝子のメチル化状態を測定するステップと、次いで、CTAG1B、CTAG2、MageA3及び/又はPRAMEを含む又はコードする組成物を前記患者に投与するステップとを含む方法。
【請求項18】
腫瘍を有する患者の治療用の医薬品の製造における、CTAG1B、CTAG2、MageA3及び/又はPRAMEを含む又はコードする組成物の使用であって、請求項1〜3若しくは8のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド、プライマー若しくはプローブ、請求項4〜6若しくは8のいずれか一項に記載のプライマー対、請求項7若しくは8に記載のキット、又は請求項9若しくは10に記載の方法を使用することによって、CTAG1B、CTAG2、MageA3及び/又はPRAME遺伝子のメチル化状態を測定することに基づいて、前記患者が治療に選出されている使用。
【請求項19】
CTAG1B、CTAG2、MageA3及び/又はPRAMEを発現する腫瘍を再発しやすい患者の治療用の医薬品の製造における、CTAG1B、CTAG2、MageA3及び/又はPRAMEを含む又はコードする組成物の使用であって、請求項1〜3若しくは8のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド、プライマー若しくはプローブ、請求項4〜6若しくは8のいずれか一項に記載のプライマー対、請求項7若しくは8に記載のキット、又は請求項9若しくは10に記載の方法を使用することによって、CTAG1B、CTAG2、MageA3及び/又はPRAME遺伝子のメチル化状態を測定することに基づいて、患者が治療に選出されている使用。
【請求項20】
前記組成物が、全長のCTAG1B、CTAG2、MageA3及び/又はPRAME、ほぼ全長のCTAG1B、CTAG2、MageA3及び/又はPRAME、又は例えばCTAG1B、CTAG2、MageA3及び/又はPRAMEのペプチドなどのCTAG1B、CTAG2、MageA3及び/又はPRAMEの断片を含むCTAG1B、CTAG2、MageA3及び/又はPRAMEを含む、請求項16〜19のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項21】
CTAG1Bが、ペプチド157〜167、157〜165及び155〜163から選択される、HLA−A2に対する結合モチーフを含む全長CTAG1Bの断片である、請求項20に記載の方法又は使用。
【請求項22】
CTAG1Bが、国際公開第2008/089074号パンフレットに開示されているA31、DR1、DR2、DR4、DR7、DP4、B35、B51、Cw3、Cw6及びA2から選択される1個又は複数のMHCクラス1又はクラス2のエピトープを含む全長CTAG1Bの断片である、請求項20に記載の方法又は使用。
【請求項23】
前記CTAG1B、CTAG2及び/又はPRAMEのタンパク質、断片又はペプチドが、融合パートナータンパク質に連結されている、請求項15〜22のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項24】
前記融合パートナータンパク質が、グラム陰性菌ヘモフィルスインフルエンザ(Haemophilus influenza)Bの表面タンパク質であるプロテインD又はその誘導体である、請求項23に記載の方法又は使用。
【請求項25】
前記融合パートナータンパク質が、LytAである、或いはC末端に見出される残基178から始まるLytA分子のリピート部分を含む若しくは前記部分からなる、又は残基188〜305を含む、LytAの誘導体である、請求項23に記載の方法又は使用。
【請求項26】
前記融合パートナータンパク質が、NS1(血球凝集素)、又はNS1のN末端の81アミノ酸を含むその誘導体である、請求項23に記載の方法又は使用。
【請求項27】
前記組成物が、CTAG1B、CTAG2及び/又はPRAMEのタンパク質、断片若しくはペプチド、又はその融合タンパク質をコードする核酸分子を含む、請求項15〜26のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項28】
前記核酸分子が発現ベクター中に備えられている、請求項27に記載の方法又は使用。
【請求項29】
前記CTAG1B、CTAG2及び/又はPRAMEのタンパク質、断片又はペプチドを含む組成物、又は核酸を含む組成物が、アジュバント、免疫賦活性サイトカイン及びケモカインのうちの1つ又は複数をさらに含む、請求項15〜28のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項30】
前記アジュバントが、モノホスホリルリピドA又はその誘導体、サポニン又はその誘導体及びTLR9アンタゴニストのうちの1つ又は複数を含む、請求項29に記載の方法又は使用。
【請求項31】
前記TLR9アゴニストがCpG含有オリゴヌクレオチドである、請求項30に記載の方法又は使用。
【請求項32】
前記アジュバントが、水中油型乳剤又は油中水型乳剤中に製剤化されて任意選択でコレステロール及び/又はトコフェロールを含む、又はリポソーム組成物中に製剤化される、請求項29〜31のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項33】
前記遺伝子がMageA3遺伝子であり、前記試料又は腫瘍組織が細針生検によって採取される、請求項9〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項1】
配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、44、61、62又は63のうちのいずれかのヌクレオチド配列を含む、又は前記配列から本質的になる、又は前記配列からなる、遺伝子のメチル化状態の検出に有用なオリゴヌクレオチド、プライマー又はプローブ。
【請求項2】
配列番号9〜12及び配列番号21〜40のうちのいずれかのヌクレオチド配列を含む、前記配列から本質的になる、又は前記配列からなる、遺伝子のメチル化状態の検出に有用な、請求項1に記載のオリゴヌクレオチド、プライマー又はプローブ。
【請求項3】
5’から3’の順に、以下の連続した配列:
(a)約6〜30ヌクレオチドの間の第1のヌクレオチド配列であって、前記第1のヌクレオチド配列中のヌクレオチドが、分子エネルギー移動対のドナー部分及びアクセプター部分から選択される第1の部分で標識され、前記ドナー部分が、励起されると1種又は複数の特定の波長で蛍光を放出し、前記アクセプター部分が、前記ドナー部分によって放出される前記蛍光を吸収及び/又は消光する、第1のヌクレオチド配列、
(b)約3〜20の間のヌクレオチドを含む、前記ヌクレオチドから本質的になる、又は前記ヌクレオチドからなる第2の一本鎖ヌクレオチド配列、
(c)約6〜30の間のヌクレオチドを含む、前記ヌクレオチドから本質的になる、又は前記ヌクレオチドからなる第3のヌクレオチド配列であって、前記第3のヌクレオチド配列中のヌクレオチドが、前記ドナー部分及び前記アクセプター部分から選択される第2の部分で標識され、前記第2の部分が、前記群のうち前記第1のヌクレオチド配列を標識していない方であり、前記第3のヌクレオチド配列が前記第1のヌクレオチド配列と逆の順に相補的であることにより、前記第1のヌクレオチド配列と前記第3のヌクレオチド配列との二重鎖を形成することができ、それにより、前記第1の部分と前記第2の部分とが近接していることによって、前記ドナー部分が励起されて蛍光を放出すると、前記アクセプター部分が前記ドナー部分によって放出される前記蛍光を吸収して消光する、第3のヌクレオチド配列、及び
(d)プライマーの3’末端に、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、61又は63のうちのいずれかの配列を3’末端に含む、前記配列から本質的になる、又は前記配列からなる(さらに、核酸ポリメラーゼによる、CTAG1B、CTAG2、MageA3及び/又はPRAME遺伝子のメチル化されていないDNAの部分を含む核酸鎖と相補的なヌクレオチド配列の合成を開始することができる)、約8〜40の間のヌクレオチドを含む、前記ヌクレオチドから本質的になる、又は前記ヌクレオチドからなる第4の一本鎖ヌクレオチド配列
を含む、又は前記配列から本質的になる、又は前記配列からなり、
前記二重鎖が形成されない場合、前記第1の部分と前記第2の部分とが、前記第1の部分と前記第2の部分との間の分子エネルギー移動を妨げる距離で分離される、請求項1に記載のオリゴヌクレオチド、プライマー又はプローブ。
【請求項4】
前記請求項のいずれか一項に記載のプライマーを含むプライマー対。
【請求項5】
請求項3に記載のプライマーを含む、請求項4に記載のプライマー対。
【請求項6】
配列番号9及び配列番号10;配列番号11及び配列番号12;配列番号21及び配列番号22;配列番号23及び配列番号24;配列番号25及び配列番号26;配列番号27及び配列番号28;配列番号29及び配列番号30;配列番号31及び配列番号32;配列番号33及び配列番号34;配列番号35及び配列番号36;配列番号37及び配列番号38;配列番号39及び配列番号40;又は配列番号61及び62のヌクレオチド配列を含む、又は前記配列から本質的になる、又は前記配列からなるプライマー対。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の少なくとも1種のオリゴヌクレオチド、プライマー若しくはプローブ、又は請求項4〜6のいずれか一項に記載のプライマー対を含む、遺伝子のメチル化状態を検出するためのキット。
【請求項8】
前記遺伝子がCTAG1B、CTAG2、MageA3及び/又はPRAME遺伝子である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド、プライマー若しくはプローブ、又は請求項4〜6のいずれか一項に記載のプライマー対、又は請求項7に記載のキット。
【請求項9】
DNA含有試料中のメチル化されていないCTAG1B、CTAG2、MageA3及び/又はPRAME遺伝子の存在及び/又は量を検出する方法であって、前記方法は、
(a)前記DNA含有試料を、検出可能な修飾残基を生成するためにDNA中のメチル化されていないシトシン残基を選択的に修飾するが、メチル化されているシトシン残基は修飾しない試薬で接触/処理するステップと、
(b)プライマー対のうち少なくとも1つのプライマーが、メチル化されていないDNAの配列にのみ結合するように設計された、少なくとも1種のプライマー対を使用して、前記試薬での処理後にメチル化されていない目的遺伝子の少なくとも一部を増幅するステップと
を含む方法。
【請求項10】
前記プライマー対のうちの少なくとも1つのプライマーが、配列番号1〜40又は配列番号61〜63のうちのいずれかのヌクレオチド配列を含む、前記配列から本質的になる、又は前記配列からなる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
癌又は癌素質を診断する方法であって、請求項1〜3若しくは8のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド、プライマー若しくはプローブ、請求項4〜6若しくは8のいずれか一項に記載のプライマー対、請求項7若しくは8に記載のキット、又は請求項9若しくは10に記載の方法を使用することによって、試料中のCTAG1B、CTAG2、MageA3及び/又はPRAME遺伝子のうち少なくとも1つのメチル化状態を検出するステップを含み、前記試料中のメチル化されていないCTAG1B、CTAG2、MageA3及び/又はPRAMEの存在が癌又は癌素質を示す方法。
【請求項12】
CTAG1B、CTAG2、MageA3及び/又はPRAME免疫治療薬を用いた治療に適する患者を特定及び/又は選出する方法であって、請求項1〜3若しくは8のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド、プライマー若しくはプローブ、請求項4〜6若しくは8のいずれか一項に記載のプライマー対、請求項7若しくは8に記載のキット、又は請求項9若しくは10に記載の方法を使用することによって、患者の試料中のCTAG1B、CTAG2、MageA3及び/又はPRAME遺伝子のメチル化状態を検出するステップを含み、CTAG1B、CTAG2、MageA3及び/又はPRAME遺伝子がメチル化されていない場合は、対象が、CTAG1B、CTAG2 MageA3及び/又はPRAME免疫治療薬を用いた治療に特定及び/又は選出される方法。
【請求項13】
癌の治療に成功する可能性を予測する方法であって、請求項1〜3若しくは8のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド、プライマー若しくはプローブ、請求項4〜6若しくは8のいずれか一項に記載のプライマー対、請求項7若しくは8に記載のキット、又は請求項9若しくは10に記載の方法を使用することによって、患者の試料中のCTAG1B、CTAG2、MageA3及び/又はPRAME遺伝子のメチル化状態を検出するステップを含み、前記遺伝子がメチル化されていない場合は、前記遺伝子がメチル化されている場合よりも、CTAG1B、CTAG2、MageA3及び/又はPRAME免疫治療薬を用いた治療に成功する可能性が高い方法。
【請求項14】
癌の適切な治療計画を選択する方法であって、請求項1〜3若しくは8のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド、プライマー若しくはプローブ、請求項4〜6若しくは8のいずれか一項に記載のプライマー対、請求項7若しくは8に記載のキット、又は請求項9若しくは10に記載の方法を使用することによって、患者の試料中のCTAG1B、CTAG2、MageA3及び/又はPRAME遺伝子のメチル化状態を検出するステップを含み、前記遺伝子がメチル化されていない場合は、治療に免疫治療薬が選択される方法。
【請求項15】
CTAG1B、CTAG2、MageA3及び/又はPRAMEを含む又はコードする組成物の投与を含む、対象において癌を治療する方法であって、前記対象は、請求項1〜3若しくは8のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド、プライマー若しくはプローブ、請求項4〜6若しくは8のいずれか一項に記載のプライマー対、請求項7若しくは8に記載のキット、又は請求項9若しくは10に記載の方法を使用することによって、CTAG1B、CTAG2、MageA3及び/又はPRAME遺伝子のメチル化状態を測定することに基づいて、前記対象が治療に選出されている方法。
【請求項16】
患者を治療する方法であって、請求項1〜3若しくは8のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド、プライマー若しくはプローブ、請求項4〜6若しくは8のいずれか一項に記載のプライマー対、請求項7若しくは8に記載のキット、又は請求項9若しくは10に記載の方法を使用することによって、CTAG1B、CTAG2、MageA3及び/又はPRAME遺伝子のメチル化状態を測定するステップと、次いで、CTAG1B、CTAG2、MageA3及び/又はPRAMEを含む又はコードする組成物を前記患者に投与するステップとを含む方法。
【請求項17】
CTAG1B、CTAG2、MageA3及び/又はPRAMEを発現する腫瘍を再発しやすい患者を治療する方法であって、前記患者が、腫瘍組織を除去するための治療を受けており、前記方法が、請求項1〜3若しくは8のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド、プライマー若しくはプローブ、請求項4〜6若しくは8のいずれか一項に記載のプライマー対、請求項7若しくは8に記載のキット、又は請求項9若しくは10に記載の方法を使用することによって、前記腫瘍組織におけるCTAG1B、CTAG2、MageA3及び/又はPRAME遺伝子のメチル化状態を測定するステップと、次いで、CTAG1B、CTAG2、MageA3及び/又はPRAMEを含む又はコードする組成物を前記患者に投与するステップとを含む方法。
【請求項18】
腫瘍を有する患者の治療用の医薬品の製造における、CTAG1B、CTAG2、MageA3及び/又はPRAMEを含む又はコードする組成物の使用であって、請求項1〜3若しくは8のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド、プライマー若しくはプローブ、請求項4〜6若しくは8のいずれか一項に記載のプライマー対、請求項7若しくは8に記載のキット、又は請求項9若しくは10に記載の方法を使用することによって、CTAG1B、CTAG2、MageA3及び/又はPRAME遺伝子のメチル化状態を測定することに基づいて、前記患者が治療に選出されている使用。
【請求項19】
CTAG1B、CTAG2、MageA3及び/又はPRAMEを発現する腫瘍を再発しやすい患者の治療用の医薬品の製造における、CTAG1B、CTAG2、MageA3及び/又はPRAMEを含む又はコードする組成物の使用であって、請求項1〜3若しくは8のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチド、プライマー若しくはプローブ、請求項4〜6若しくは8のいずれか一項に記載のプライマー対、請求項7若しくは8に記載のキット、又は請求項9若しくは10に記載の方法を使用することによって、CTAG1B、CTAG2、MageA3及び/又はPRAME遺伝子のメチル化状態を測定することに基づいて、患者が治療に選出されている使用。
【請求項20】
前記組成物が、全長のCTAG1B、CTAG2、MageA3及び/又はPRAME、ほぼ全長のCTAG1B、CTAG2、MageA3及び/又はPRAME、又は例えばCTAG1B、CTAG2、MageA3及び/又はPRAMEのペプチドなどのCTAG1B、CTAG2、MageA3及び/又はPRAMEの断片を含むCTAG1B、CTAG2、MageA3及び/又はPRAMEを含む、請求項16〜19のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項21】
CTAG1Bが、ペプチド157〜167、157〜165及び155〜163から選択される、HLA−A2に対する結合モチーフを含む全長CTAG1Bの断片である、請求項20に記載の方法又は使用。
【請求項22】
CTAG1Bが、国際公開第2008/089074号パンフレットに開示されているA31、DR1、DR2、DR4、DR7、DP4、B35、B51、Cw3、Cw6及びA2から選択される1個又は複数のMHCクラス1又はクラス2のエピトープを含む全長CTAG1Bの断片である、請求項20に記載の方法又は使用。
【請求項23】
前記CTAG1B、CTAG2及び/又はPRAMEのタンパク質、断片又はペプチドが、融合パートナータンパク質に連結されている、請求項15〜22のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項24】
前記融合パートナータンパク質が、グラム陰性菌ヘモフィルスインフルエンザ(Haemophilus influenza)Bの表面タンパク質であるプロテインD又はその誘導体である、請求項23に記載の方法又は使用。
【請求項25】
前記融合パートナータンパク質が、LytAである、或いはC末端に見出される残基178から始まるLytA分子のリピート部分を含む若しくは前記部分からなる、又は残基188〜305を含む、LytAの誘導体である、請求項23に記載の方法又は使用。
【請求項26】
前記融合パートナータンパク質が、NS1(血球凝集素)、又はNS1のN末端の81アミノ酸を含むその誘導体である、請求項23に記載の方法又は使用。
【請求項27】
前記組成物が、CTAG1B、CTAG2及び/又はPRAMEのタンパク質、断片若しくはペプチド、又はその融合タンパク質をコードする核酸分子を含む、請求項15〜26のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項28】
前記核酸分子が発現ベクター中に備えられている、請求項27に記載の方法又は使用。
【請求項29】
前記CTAG1B、CTAG2及び/又はPRAMEのタンパク質、断片又はペプチドを含む組成物、又は核酸を含む組成物が、アジュバント、免疫賦活性サイトカイン及びケモカインのうちの1つ又は複数をさらに含む、請求項15〜28のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項30】
前記アジュバントが、モノホスホリルリピドA又はその誘導体、サポニン又はその誘導体及びTLR9アンタゴニストのうちの1つ又は複数を含む、請求項29に記載の方法又は使用。
【請求項31】
前記TLR9アゴニストがCpG含有オリゴヌクレオチドである、請求項30に記載の方法又は使用。
【請求項32】
前記アジュバントが、水中油型乳剤又は油中水型乳剤中に製剤化されて任意選択でコレステロール及び/又はトコフェロールを含む、又はリポソーム組成物中に製剤化される、請求項29〜31のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項33】
前記遺伝子がMageA3遺伝子であり、前記試料又は腫瘍組織が細針生検によって採取される、請求項9〜19のいずれか一項に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図2】
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【図24】
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【図26】
【図27】
【公表番号】特表2012−520663(P2012−520663A)
【公表日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−500143(P2012−500143)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【国際出願番号】PCT/EP2010/001674
【国際公開番号】WO2010/105815
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(509194703)エムディーエックスヘルス エスエー (3)
【出願人】(305060279)グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム (169)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【国際出願番号】PCT/EP2010/001674
【国際公開番号】WO2010/105815
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(509194703)エムディーエックスヘルス エスエー (3)
【出願人】(305060279)グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム (169)
【Fターム(参考)】
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