遺伝子解析装置
【課題】 本発明は、装置構成が単純で、少なくとも2種類の蛍光を同時に検出することで高速測定を実現する遺伝子解析装置を提供することにある。
【解決手段】 複数のウェルが形成された試料容器の各ウェル内に収容されている試料が発する蛍光を検出する装置であって、少なくとも2箇所以上のウェルに励起波長の異なる2種類の励起照明を同時に照射する励起照明照射手段と、前記励起照明照射手段からの励起光を前記2箇所以上のウェル内に収容されている試料に同時に導光する2個以上の投光用ファイバと、前記2箇所以上のウェル内に収容されている試料からの蛍光を同時に導光する2個以上の受光用ファイバと、前記2個以上の受光用ファイバにより導光された蛍光波長の異なる2種類の蛍光を同時に検出する2個以上の蛍光検出手段と、を少なくとも具備することを特徴とする遺伝子解析装置を提供する。
【解決手段】 複数のウェルが形成された試料容器の各ウェル内に収容されている試料が発する蛍光を検出する装置であって、少なくとも2箇所以上のウェルに励起波長の異なる2種類の励起照明を同時に照射する励起照明照射手段と、前記励起照明照射手段からの励起光を前記2箇所以上のウェル内に収容されている試料に同時に導光する2個以上の投光用ファイバと、前記2箇所以上のウェル内に収容されている試料からの蛍光を同時に導光する2個以上の受光用ファイバと、前記2個以上の受光用ファイバにより導光された蛍光波長の異なる2種類の蛍光を同時に検出する2個以上の蛍光検出手段と、を少なくとも具備することを特徴とする遺伝子解析装置を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化学反応を初め、医療現場において各種自動解析、例えば遺伝子解析の研究や臨床を行うのに適する試料容器を用いて人間を初めとする動物や植物のゲノムDNAの多型、特にSNP(一塩基多型)を検出するための遺伝子解析装置に関する。検出された遺伝子多型検出結果を用いて病気罹患率の診断や、投与薬剤の種類と効果及び副作用との関係などの診断を行うことができる。
【背景技術】
【0002】
遺伝子多型を利用して病気の罹りやすさなどを予測する方法又は装置として、下記のようなものが提案されている。
患者が敗血症に罹りやすいか否か及び/又は敗血症に急速に進行いやすいか否かを決定するために、患者から核酸サンプルを採取し、該サンプル中におけるパターン2対立遺伝子、又はパターン2対立遺伝子と連鎖不平衡であるマーカー遺伝子を検出し、パターン2対立遺伝子又はパターン2対立遺伝子と連鎖不平衡であるマーカー遺伝子が検出されれば該患者が敗血症に罹りやすいと判定する(特許文献1参照)。
【0003】
ヒトのflt−1遺伝子中の1又はそれ以上の単一ヌクレオチド多型性の診断のために、ヒトの核酸の1又はそれ以上の位置:1953、3453、3888(各々EMBL受理番号X51602中の位置に従う)、519、786、1422、1429(各々EMBL受理番号D64016中の位置に従う)、454(配列番号3に従う)及び696(配列番号5に従う)の配列を決定し、flt−1遺伝子中の多型性を参照することにより、そのヒトの体質を決定する(特許文献2参照)。
【0004】
SNP部位の塩基を判別する、いわゆるタイピングについては多くの手法が報告されている。そのうちの代表的なものは次の方法である。
比較的に少量のゲノムDNAを用いて数十万箇所に及ぶSNP部位についてタイピングを行うために、少なくとも一つの一塩基多型部を含む複数の塩基配列を、ゲノムDNA及び複数対のプライマーを用いて同時に増幅し、増幅した複数の塩基配列を用いて、当該塩基配列に含まれる一塩基多型部位の塩基をタイピング工程により判別する。そのタイピング工程として、インベーダ法又はタックマンPCR法を用いる(特許文献3参照)。
【0005】
インベーダ法については、特許文献3の0032段から0034段に詳しく記載されているので参照されたい。
【0006】
タイピング工程で、複数の種類の蛍光を検出する場合、励起光源としてキセノンランプやハロゲンランプを使用し、発生する蛍光を、励起フィルタとダイクロイックミラーと蛍光フィルタで構成されるフィルタユニットの切換えによって、波長選択して検出することが一般に行われている。この場合、フィルタユニットを切り換えるための切換え機構が必要となるため、装置が複雑化し、高価にもなる。
【0007】
そこで、励起光源と蛍光フィルタとダイクロイックミラーについては2種類備え、検出器については共通化することで、フィルタユニットの切換え機構を不要とした装置が提案されている(特許文献4参照)。
【0008】
ところが、この場合、検出器が共通化されているため、第一の励起光源を点灯している間は、第二の励起光源を消灯しておく必要があり、複数の種類の蛍光を同時に検出することができず、その結果、2種類の励起光源を互い違いに何度も点灯/消灯を繰り返さなければならなかった。そのため、第一、第二の励起光源を点灯/消灯するタイミングと、検出器による第一、第二の蛍光を検出するタイミングと、更には、測定対象物である試料容器および蛍光検出部の移動タイミングとを高精度に制御する必要があり、装置のデバッグ、調整に多大な時間と労力を要してしまう問題があった。
【0009】
さらに、複数の種類の蛍光を同時に検出することができないため、測定対象ウェル数が多い場合や、測定回数が多くなる場合には、測定を完了するのに多くの時間を要してしまう問題があった。
【0010】
また、遺伝子解析装置が備える光電子増倍管などの光検出器の感度や照明の強度は経時的に変化するばかりでなく、特に光電子増倍管は、たとえ同ロット生産品であっても、その感度の製品ばらつきの大きさは無視できない場合が多い。
【特許文献1】特表2002−533096号公報
【特許文献2】特開2001−299366号公報
【特許文献3】特開2002−300894号公報
【特許文献4】特開2006−271347号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記の事情を鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、装置構成が単純で、少なくとも2種類の蛍光を同時に検出することで高速測定を実現し、更に、少なくとも2種類の蛍光を検出する少なくとも2種類の蛍光検出手段各々の感度を校正する少なくとも2種類の標準サンプルを備える遺伝子解析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明は、複数のウェルが形成された試料容器の各ウェル内に収容されている試料が発する蛍光を検出する装置であって、
少なくとも2箇所以上のウェルに励起波長の異なる2種類の励起照明を同時に照射する励起照明照射手段と、
前記励起照明照射手段からの励起光を前記2箇所以上のウェル内に収容されている試料に同時に導光する2個以上の投光用ファイバと、
前記2箇所以上のウェル内に収容されている試料からの蛍光を同時に導光する2個以上の受光用ファイバと、
前記2個以上の受光用ファイバにより導光された蛍光波長の異なる2種類の蛍光を同時に検出する2個以上の蛍光検出手段と、
前記2個以上の投光用ファイバの出射側と前記2個以上の受光用ファイバの入射側を束ねた2分岐ファイバの先端部を保持する保持手段と、
前記保持手段を、互いに直交するXYZ3軸方向に移動するファイバ移動手段と、
を少なくとも具備することを特徴とする遺伝子解析装置である。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の遺伝子解析装置において、
前記励起照明照射手段は第一の波長帯域からなる励起光を選択する第一の励起フィルタと、第二の波長帯域からなる励起光を選択する第二の励起フィルタを含み、
前記蛍光検出手段は第一の第一の波長帯域からなる蛍光を選択する第一の蛍光フィルタと、第二の波長帯域からなる蛍光を選択する第二の蛍光フィルタを含み、
該第一の励起フィルタと、該第一の蛍光フィルタと、該第二の励起フィルタと、該第二の蛍光フィルタ各々の光透過波長域にクロストークが無いことを特徴とする遺伝子解析装置である。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1記載の遺伝子解析装置において、
前記励起照明照射手段は、第一の波長帯域からなる光を発光する第一の光源と、第二の波長帯域からなる光を発光する第二の光源を含み、該第一の光源および該第二の光源は、順電流が100mA以上のパワーLEDであることを特徴とする遺伝子解析装置である。
【0015】
請求項4に記載の発明は、前記第一の光源は青色LEDであり、第二の光源は白色LEDであることを特徴とする請求項3に記載の遺伝子解析装置である。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1記載の遺伝子解析装置において、
前記2分岐ファイバの先端部の直径が、前記試料容器のウェルのピッチよりも小さいことを特徴とする遺伝子解析装置である。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項1記載の遺伝子解析装置において、
前記投光用ファイバ及び受光用ファイバが石英ファイバであることを特徴とする遺伝子解析装置である。
【0018】
請求項7に記載の発明は、請求項1に記載の遺伝子解析装置において、
前記2分岐ファイバが100℃以上の耐熱性を有する耐熱PVCチューブで被覆されていることを特徴とする遺伝子解析装置である。
【0019】
請求項8に記載の発明は、請求項1に記載の遺伝子解析装置において、
前記蛍光検出手段の感度校正のための黒色無反射板と、少なくとも2種類の標準サンプルを備えることを特徴とする遺伝子解析装置である。
【0020】
請求項9に記載の発明は、前記標準サンプルは、蛍光プラスチック又は蛍光ガラスと、複数の光学濃度を有するNDフィルタとを構成要素に含むことを特徴とする請求項8に記載の遺伝子解析装置である。
【0021】
請求項10に記載の発明は、前記標準サンプルからの蛍光強度に基づいて、前記励起照明照射手段及び/又は前記蛍光検出手段の寿命切れ及び/又は劣化状態を監視することを特徴とする請求項8または9のいずれかに記載の遺伝子解析装置である。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に記載の発明は、複数のウェルが形成された試料容器の各ウェル内に収容されている試料が発する蛍光を検出する装置であって、
少なくとも2箇所以上のウェルに励起波長の異なる2種類の励起照明を同時に照射する励起照明照射手段と、
前記励起照明照射手段からの励起光を前記2箇所以上のウェル内に収容されている試料に同時に導光する2個以上の投光用ファイバと、
前記2箇所以上のウェル内に収容されている試料からの蛍光を同時に導光する2個以上の受光用ファイバと、
前記2個以上の受光用ファイバにより導光された蛍光波長の異なる2種類の蛍光を同時に検出する2個以上の蛍光検出手段と、
前記2個以上の投光用ファイバの出射側と前記2個以上の受光用ファイバの入射側を束ねた2分岐ファイバの先端部を保持する保持手段と、
前記保持手段を、互いに直交するXYZ3軸方向に移動するファイバ移動手段と、
を少なくとも具備することを特徴とする遺伝子解析装置である。
請求項1の発明によれば、装置構成が単純であり、かつ、2種類の蛍光を同時に検出することが可能であるために、高速測定が可能となる。
【0023】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の遺伝子解析装置において、
前記励起照明照射手段は第一の波長帯域からなる励起光を選択する第一の励起フィルタと、第二の波長帯域からなる励起光を選択する第二の励起フィルタを含み、
前記蛍光検出手段は第一の第一の波長帯域からなる蛍光を選択する第一の蛍光フィルタと、第二の波長帯域からなる蛍光を選択する第二の蛍光フィルタを含み、
該第一の励起フィルタと、該第一の蛍光フィルタと、該第二の励起フィルタと、該第二の蛍光フィルタ各々の光透過波長域にクロストークが無いことを特徴とする遺伝子解析装置である。
請求項2の発明によれば、後述するFAMの励起光としての青色パワーLEDとREDの励起光としての白色パワーLEDを同時に点灯した状態で、FAMの蛍光検出とREDの蛍光検出を同時に行うことが可能となる。
【0024】
請求項3に記載の発明は、請求項1記載の遺伝子解析装置において、
前記励起照明照射手段は、第一の波長帯域からなる光を発光する第一の光源と、第二の波長帯域からなる光を発光する第二の光源を含み、該第一の光源および該第二の光源は、順電流が100mA以上のパワーLEDであることを特徴とする遺伝子解析装置である。請求項3の発明によれば、高輝度で長寿命な証明を使用することで、高品位な信号を取得することが可能となり、さらに、照明交換の頻度も少なく済む。
【0025】
請求項4に記載の発明は、前記第一の光源は青色LEDであり、第二の光源は白色LEDであることを特徴とする請求項3に記載の遺伝子解析装置である。請求項4の発明によれば、励起波長が異なる2種類の蛍光物質を励起することができる。
【0026】
請求項5に記載の発明は、請求項1記載の遺伝子解析装置において、前記2分岐ファイバの先端部の直径が、前記試料容器のウェルのピッチよりも小さいことを特徴とする遺伝子解析装置である。請求項5の発明によれば、互いに隣接するウェル内の各試料からの蛍光を同時に受光するように2分岐ファイバの先端部を後述するファイバ保持手段7に保持させることが可能となる。
【0027】
請求項6に記載の発明は、請求項1記載の遺伝子解析装置において、前記投光用ファイバ及び受光用ファイバが石英ファイバであることを特徴とする遺伝子解析装置である。請求項6に記載の発明によれば、自家蛍光が少ない石英を使用することで、試料に由来する蛍光がファイバ由来の自家蛍光の中に埋もれてしまうことを防止することができる。
【0028】
請求項7に記載の発明は、請求項1に記載の遺伝子解析装置において、前記2分岐ファイバが100℃以上の耐熱性を有する耐熱PVCチューブで被覆されていることを特徴とする遺伝子解析装置である。請求項7の発明によれば、例えばPCRなどの遺伝子増幅のための温調手段や、インベーダ法などのSNPタイピングのための温調手段を、耐熱性を有する2分岐ファイバを介して、励起照明照射手段や蛍光検出手段と隔離された位置に配置することができる。したがって、励起照明照射手段に含まれるパワーLED素子の温度変化による発光効率の変動や短寿命化を防ぐことが可能となるとともに、蛍光検出手段に含まれる光電子増倍管の温度変化による感度変動や暗電流変動についても防ぐことが可能となる。
【0029】
請求項8に記載の発明は、請求項1に記載の遺伝子解析装置において、前記蛍光検出手段の感度校正のための黒色無反射板と、少なくとも2種類の標準サンプルを備えることを特徴とする遺伝子解析装置である。請求項8の発明によれば、2種類の蛍光を検出する2種類の蛍光検出手段各々の感度を校正する2種類の標準サンプルを備えているため、複数個の蛍光検出手段のばらつきをキャンセルすることができ、高精度な測定を行うことが可能となる。
【0030】
請求項9に記載の発明は、前記標準サンプルは、蛍光プラスチック又は蛍光ガラスと、複数の光学濃度を有するNDフィルタとを構成要素に含むことを特徴とする請求項8に記載の遺伝子解析装置である。請求項9の発明によれば、光検出器の感度を校正することで装置間の感度のばらつきや、経時での感度のばらつきを防止することができる。
【0031】
請求項10に記載の発明は、前記標準サンプルからの蛍光強度に基づいて、前記励起照明照射手段及び/又は前記蛍光検出手段の寿命切れ及び/又は劣化状態を監視することを特徴とする請求項8または9のいずれかに記載の遺伝子解析装置である。請求項10の発明によれば、消耗品の劣化により、測定結果が信用できない、という事態を回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
図1に示すように、遺伝子解析装置1には、試料容器としてのチップ2が置かれる。チップ2には複数のウェル21が形成されており、ウェル21内に測定対象となる蛍光体で標識した細胞やその細胞を含有するためのバッファー溶液などの試料が収容されている。ここでは、標識蛍光体として、FAMとRedmond Red(以下、REDと略記する)を使用しているものとするが、これらに限られるものではなく、公知の蛍光体を使用することが可能である。
【0033】
遺伝子解析装置1は、励起照明照射手段3が設けられ、第一の波長帯域を含む光を発光する第一の光源と、第二の波長帯域を含む光を発光する第二の光源を備えている。ここで、第一の波長帯域、第二の波長帯域とは、2種類の測定対象物質が蛍光を発するためにそれぞれの測定対象物質に照射する波長帯域をさし、測定対象物質によって波長帯域の値は適宜選択されるものである。また、励起照明照射手段3は、第一の波長帯域からなる励起光を選択する第一の励起フィルタと、第二の波長帯域からなる励起光を選択する第二の励起フィルタを備えている。第一の励起フィルタ及び第二の励起フィルタは、特定の光だけを透過するバンドパスフィルタである。
前記第一の光源および第二の光源は、順電流が100mA以上のパワーLEDである。高輝度で長寿命な照明を使用することで、高品位な信号を取得でき、照明交換の頻度も少なくすることが可能となる。
【0034】
前記第一の光源として、ここでは青色パワーLED31、第二の光源として白色パワーLED32を備えるものとして、以下説明する。
青色パワーLED31からの光は、レンズ33、第一の波長帯域からなる励起光を選択する第一の励起フィルタとしてのFAM用励起フィルタ34、レンズ35によりFAMの励起光として2分岐ファイバ4の投光用ファイバ41の入射端面に集光される。また、白色パワーLED32からの光は、レンズ36、第二の波長帯域からなる励起光を選択する第二の励起フィルタとしてのRED用励起フィルタ37、レンズ38によりREDの励起光として2分岐ファイバ5の励起光投光用ファイバ51の入射端面に集光される。なお、青色パワーLED31と白色パワーLED32は、パーソナルコンピュータ100から照明制御手段101を介して点灯/消灯制御及び調光制御できるようになっている。
【0035】
図2は、2分岐ファイバ4及び2分岐ファイバ5の構成について示したものであるが、励起光投光用ファイバ201の出射端面の周囲には、チップ2からの蛍光を導光するための6本の蛍光受光用ファイバ202の入射端面が配置されており、1本の励起光投光用ファイバ201の出射端部と6本の蛍光受光用ファイバ202の入射端部は、例えばステンレスなどの金属製の筒203で補強されている。
【0036】
また、2分岐ファイバ4及び2分岐ファイバ5は、励起光投光用ファイバ201及び蛍光受光用ファイバ202を束ねて100℃以上の耐熱性を有する耐熱PVCチューブ204で被覆されている。励起光投光用ファイバ201及び蛍光受光用ファイバ202は、いずれもコア径が400μm以上の石英ファイバである。
2分岐ファイバ4及び2分岐ファイバ5を耐熱PVCチューブ204で被覆しているため、本発明の遺伝子解析装置1は、例えばPCRなどの遺伝子増幅のための温調手段や、インベーダ法などのSNPタイピングのための温調手段(以下、これらをまとめて温調手段と記す)を、耐熱性を有する2分岐ファイバ4及び2分岐ファイバ5を介して、前記励起照明照射手段3や、後述する蛍光検出手段6と隔離された位置に配置することができる。
【0037】
したがって、励起照明照射手段3に含まれるパワーLED素子の温度変化による発光効率の変動や短寿命化を防ぐことができるとともに、後述する蛍光検出手段6に含まれる光電子増倍管の温度変化による感度変動や暗電流変動についても防ぐことができる。
【0038】
金属製の筒203の直径は、チップ2に形成されたウェル21のピッチよりも小さく設計する。筒203の直径がウェル21のピッチよりも大きいと、筒203同士がぶつかってしまい、互いに隣接する2ヶ所のウェルを同時に測定することができない。金属製の筒203の直径を、チップ2に形成されたウェル21のピッチよりも小さくすることにより、互いに隣接するウェル内の各試料からの蛍光を同時に受光するように筒203をファイバ保持手段7に保持させることができる。
【0039】
そして、ファイバ保持手段7に保持された筒203内の励起光投光用ファイバ201(図1の41、51)は、その出射端面からウェル21内の試料に励起光を照射するとともに、蛍光受光用ファイバ202(図1の42、52)の入射端面で前記試料が発する蛍光を受光し、その出射端面を介して蛍光検出手段6に導光する。
【0040】
遺伝子解析装置1は、蛍光検出手段6が設けられおり、蛍光検出手段6は、第一の波長帯域からなる蛍光を選択する第一の蛍光フィルタと、第二の波長帯域からなる蛍光を選択する第二の蛍光フィルタを備えている。第一の蛍光フィルタ及び第二の蛍光フィルタは、特定の光だけを透過するバンドパスフィルタである。
【0041】
蛍光検出手段6は、蛍光受光用ファイバ42が受光した光から第一の波長帯域としてFAMの蛍光波長を選択する第一の蛍光フィルタとしてのFAM用蛍光フィルタ61と、FAM蛍光検出器としてのFAM用光電子増倍管62と、蛍光受光用ファイバ52が受光した光から第二の波長帯域としてREDの蛍光波長を選択する第二の蛍光フィルタとしてのRED用蛍光フィルタ63と、RED蛍光検出器としてのRED用光電子増倍管64とを備えており、FAM用光電子増倍管62と、RED用光電子増倍管64は、受光した光を光電変換し、A/D変換手段105を介してパーソナルコンピュータ100が備える記憶手段(図示せず)に入力する。なお、FAM用光電子増倍管62とRED用光電子増倍管64は、パーソナルコンピュータ100から光電子増倍管制御手段103を介して給電のON/OFF制御及びGAIN制御できるようになっている。
【0042】
図3は、FAM用励起光源としての青色パワーLED31と、RED用励起光源としての白色パワーLED32の分光放射率及びFAM用励起フィルタ34と、FAM用蛍光フィルタ61と、RED用励起フィルタ37と、RED用蛍光フィルタ63との分光透過率を示した図である。
【0043】
微弱蛍光を検出するためには、FAM用励起フィルタ34とFAM用蛍光フィルタ61の分光透過率にクロストークが無いこと、RED用励起フィルタ37とRED用蛍光フィルタ63の分光透過率にクロストークが無いことが重要であることは勿論であるが、本発明の遺伝子解析装置1においては、FAM用蛍光フィルタ61とRED用励起フィルタ37の分光透過率にもクロストークが無いことも重要である。もし、FAM用蛍光フィルタ61とRED用励起フィルタ37の分光透過率にクロストークが存在する場合、チップ2の表面で反射するREDの励起光の一部が、FAM用蛍光フィルタ61を通過してFAM用光電子増倍管62に入射され、FAM由来の蛍光が検出できない虞がある。特に、FAMの蛍光が微弱である場合には、FAM由来の蛍光がチップ2の表面で反射するREDの励起光の一部による信号の中に埋もれてしまい、S/N比は著しく低下する。そこで、本発明の遺伝子解析装置1は、FAM用蛍光フィルタ61とRED用励起フィルタ37の分光透過率にクロストークが無く、したがって、FAMの励起光としての青色パワーLED31と、REDの励起光としての白色パワーLEDを同時に点灯した状態で、FAMの蛍光検出と、REDの蛍光検出を同時に行うことができるようになっている。
【0044】
また、遺伝子解析装置1は、互いに直交するXYZ3軸方向にファイバ保持手段7を移動するファイバ移動手段104を備えているので、ファイバ移動手段に104を備えているので、ファイバ移動手段104によりX軸方向移動機構71、Y軸方向移動機構72を制御し、ファイバ保持手段7を水平方向(X軸方向及びY軸方向)に移動することにより、測定対象である全てのウェルについてFAMの蛍光及びREDの蛍光を検出することができ、またZ軸方向移動機構73を制御し、ファイバ保持手段7を鉛直方向(Z軸方向)に移動させることにより、2分岐ファイバ4及び2分岐ファイバ5の筒203の先端部とチップ2の表面との距離(ワーキングディスタンス)を調整できるようになっている。
なお、図1にはFAMの蛍光検出及びREDの蛍光検出のために、それぞれ1系統の励起光照射手段、2分岐ファイバ、蛍光検出手段を示したが、測定の更なる高速化を実現させるために、2系統若しくはそれ以上の励起光照射手段、2分岐ファイバ、蛍光検出手段を設けることもできる。
【0045】
さらに、遺伝子解析装置1は、複数個の光電子増倍管の感度及び照明強度の経時的な変化を校正するため、あるいは、2系統若しくはそれ以上の励起光照射、2分岐ファイバ、蛍光検出手段を設けた場合には、同一品種の励起フィルタ及び蛍光フィルタの個体差としての分光透過率のばらつき、2分岐ファイバの個体差としての分光透過率のばらつき、光電子増倍管毎の個体差としての出力感度ばらつきなどによる系全体の差異を校正するために、FAM用光電子増倍管62とRED用光電子増倍管64の感度を校正するための黒色無反射板22と、FAM用標準サンプル23と、RED用標準サンプル24とを備える。
【0046】
黒色無反射板22は、光電子増倍管毎の個体差としての暗電流による出力ばらつきをキャンセルするために設けられている。すなわち、光電子増倍管毎の暗電流による出力信号VDarkを測定し、試料からの出力信号VSamp及び標準サンプルからの出力信号VRefから減算する。つまり、暗電流による出力ばらつきがキャンセルされた試料からの出力信号、標準サンプルからの出力信号をそれぞれV´Samp及びV´Refとすると、V´Samp、V´Refは、それぞれ(式1)、(式2)で表される。なお、黒色無反射板22としては、黒アルマイト表面処理が施された安価な金属板を使用することができる。
(式1)
V´Samp=VSamp−VDark
(式2)
V´Ref=VRef−VDark
【0047】
FAM用標準サンプル23及びRED用標準サンプル24は、光電子増倍管の出力感度及び照明強度の経時的な変化、光電子増倍管毎の出力感度のばらつきなどに起因する系全体の差異を補正するために設けられている。すなわち、(式1)のV´Sampを(式2)のV´Refで除算した値(式3)を以って当該試料からの蛍光強度としてISampとしている。
(式3)
ISamp=V´Samp/V´Ref=(VSamp−VDark)/(VRef−VDark)
【0048】
FAM用標準サンプル23としては、FAMの蛍光を測定する際に用いられる所定の励起光を照射したときに、FAMの蛍光を検出する光検出器のダイナミックレンジ内の適当な強度に相当する蛍光を発することが望ましく、したがって、図4(a)に示すように、FAM用標準サンプル23は、青色(490nm程度)の励起光により、緑色(520nm程度)の蛍光を発する蛍光プラスチック231と複数の光学濃度を有するNDフィルタ232とで構成されている。
【0049】
同様に、RED用標準サンプル24としては、REDの蛍光を測定する際に用いられる所定の励起光を照射したときに、REDの蛍光を検出する光検出器のダイナミックレンジ内の適当な強度に相当する蛍光を発することが望ましく、したがって、図4(b)に示すように、RED用標準サンプル24は、緑〜橙色(580nm程度)の励起光により、赤色(595nm程度)の蛍光を発する蛍光プラスチック241と、複数の光学濃度を有するNDフィルタ242とで構成されている。
【0050】
ここで、FAM用標準サンプル23及びRED用標準サンプル24の構成要素であるNDフィルタ232、242は、FAM用光電子増倍管62及びRED用光電子増倍管64のダイナミックレンジ内の適当な強度に相当する蛍光を取得するための減光手段として作用するものであるが、図4に示すように、NDフィルタ232、242は複数の光学濃度を有しているので、試料が発する蛍光(VSamp)と同等の強度が得られる部分を予め調査して選択しておき、測定条件の一情報としてパーソナルコンピュータ100が備える記憶手段(図示せず)に記憶させることができるようになっている。
【0051】
さらに、各標準サンプルからの出力信号値VRef(FAM)、VRef(RED)に基づいて、青色パワーLED31や白色パワーLED32などの励起照明照射手段及び/又はFAM用光電子増倍管62やRED用光電子増倍管64などの蛍光検出手段の寿命切れ及び/または劣化状態を判定し、VRefが異常値を示した場合には、モニタ106を介して部品交換や再測定を使用者に促すことができるようになっている。
【0052】
次に、遺伝子解析装置1の動作について説明する。
【0053】
図5は、遺伝子解析装置1の動作フローを示したフローチャート図である。S501では、遺伝子増幅反応やタイピング反応のための温調条件や、ポジティブコントロール(以下、P.C.と略記する)、ネガティブコントロール(以下、N.C.と略記する)を含む測定対象ウェルの位置を特定するためのチップレイアウト、蛍光検出時の各照明の強度設定、各光電子増倍管のGAIN設定、2分岐ファイバ4、5の筒203の先端部とチップ2の表面との距離(ワーキングディスタンス)などの各種条件を設定する。また、S501でファイバ移動手段104によりZ軸方向移動機構73を制御し、ファイバ保持手段7を鉛直方向に移動させ、ワーキングディスタンスの調整を完了させても良い。
【0054】
P.C.、N.C.とは、測定対象物の劣化、遺伝子増幅反応を阻害する阻害物質、コンタミ混入による汚染などの影響の有無を確認するためのものであり、もし、測定結果においてP.C.が収容されているウェルから所定の強度の蛍光が検出されなかった場合や、N.C.が収容されているウェルから所定の強度の蛍光が検出された場合は、全ての測定対象ウェルについての測定結果の信頼性が乏しいものとして判定不能とする。ここでは、P.C.として、FAMの蛍光のみを発光するべきもの(以下、FAM−P.C.と略記する)、REDの蛍光のみを発光するべきもの(以下、RED−P.C.と略記する)、FAMとRED両方の蛍光を発光するべきもの(以下、HETERO−P.C.と略記する)の3種を用いることとする。
【0055】
S502では、ファイバ移動手段104によりX軸方向移動機構71、Y軸方向移動機構72を制御し、ファイバ保持手段7を水平方向に移動させ、FAM用光電子増倍管62でFAM用標準サンプル23を、RED用光電子増倍管64でRED用標準サンプル24を測定する。なお、FAM用標準サンプル23の測定ポイント及びRED用標準サンプル24の測定ポイントは、S501で設定される各種条件に含む。
【0056】
S503では、S502で取得したFAM用標準サンプル23からの出力信号値VRef(FAM)、RED用標準サンプル24からの出力信号値VRef(RED)を確認し、異常値を示した場合には、モニタ106を介して部品交換や再測定を使用者に促す。なお、正常/異常を判断するための閾値は、S501で設定される各種条件に含む。
【0057】
S504では、測定対象物となるチップ2を遺伝子解析装置1に投入する。
【0058】
S505では、温調手段102により、遺伝子増幅反応及びタイピング反応を行う。
【0059】
S506では、ファイバ移動手段104によりX軸方向移動機構71、Y軸方向移動機構72を制御し、ファイバ保持手段7を水平方向に移動させ、FAM用光電子増倍管62及びRED用光電子増倍管64で黒色無反射板22を測定し、各出力信号値VDark(FAM)、VDark(RED)をパーソナルコンピュータ100が備える記憶手段(図示せず)に記憶する。なお、黒色無反射板22の測定ポイントは、S501で設定される条件に含む。
【0060】
S507では、ファイバ移動手段104によりX軸方向移動機構71、Y軸方向移動機構72を制御し、ファイバ保持手段7を水平方向に移動させ、FAM用光電子増倍管62でFAM用標準サンプル23を、RED用光電子増倍管64でRED用標準サンプル24を測定し、各出力信号値VRef(FAM)、VRef(RED)をパーソナルコンピュータ100が備える記憶手段(図示せず)に記憶する。
【0061】
S508では、S501で設定された測定対象ウェルの位置を特定するチップレイアウト情報に基づき、ファイバ移動手段104によりX軸方向移動機構71及びY軸方向移動機構72を制御し、ファイバ保持手段7を水平方向に移動させ、FAM用光電子増倍管62及びRED用光電子増倍管64で各種P.C.(FAM−P.C.、RED−P.C.、HETERO−P.C.)、N.C.を含む全測定対象ウェルを逐次測定し、各出力信号値をパーソナルコンピュータ100が備える記憶手段(図示せず)に記憶する。
【0062】
ここで、FAM用光電子増倍管62で、N.C.が収容されているウェルを測定したときの出力信号値をVN.C.(FAM)、FAM−P.C.が収容されているウェルを測定したときの出力信号値をVFAM−P.C.(FAM)、RED−P.C.が収容されているウェルを測定したときの出力信号値をVRED−P.C.(FAM)、HETERO−P.C.が収容されているウェルを測定したときの出力信号値をVHETERO−P.C.(FAM)、その他測定対象ウェルを測定したときの出力信号値をVSamp(FAM)と表記し、RED用光電子増倍管64でN.C.が収容されているウェルを測定したときの出力信号値をVN.C.(RED)、FAM−P.C.が収容されているウェルを測定したときの出力信号値をVFAM−P.C.(RED)、RED−P.C.が収容されているウェルを測定したときの出力信号値をVRED−P.C.(RED)、HETERO−P.C.が収容されているウェルを測定したときの出力信号値をVHETERO−P.C.(RED)、その他測定対象ウェルを測定したときの出力信号値をVSamp(RED)と表記する。また、S501で設定したチップレイアウトは、本説明では図6に従うものとするが、これに限られるものではない。
【0063】
S509では、S506〜S508で取得した種々の出力信号値に基づき、各種データ処理・表示を行う。以下、その詳細について説明する。
【0064】
図7、図8は、遺伝子解析装置1のデータ処理のフローを示すフローチャート図である。まず、S701では、(式4)(式5)に基づき、N.C.が収容されているウェルからの蛍光強度IN.C.(FAM)、IN.C.(RED)を計算する。
(式4)
IN.C.(FAM)=V´N.C.(FAM)/V´Ref(FAM)
=(VN.C.(FAM)−VDark(FAM))/(VRef(FAM)−VDark(FAM))
(式5)
IN.C.(RED)=V´N.C.(RED)/V´Ref(RED)
=(VN.C.(RED)−VDark(RED))/(VRef(RED)−VDark(RED))
【0065】
S702では、「IN.C.(FAM)が所定の閾値ITh−N.C.(FAM)未満であること、かつ、IN.C.(RED)が所定の閾値ITh−N.C.(RED)未満であること」を確認し、もしこの命題が満足されない場合には、全ての測定対象ウェルについて「判定不能」とする。なお、閾値ITh−N.C.(FAM)、ITh−N.C.(RED)は、S501で設定される各種条件に含む。
【0066】
S703では、(式6)、(式7)に基づき、FAM−P.C.が収容されているウェルからの蛍光強度IFAM−P.C.(FAM)、IFAM−P.C.(RED)を計算する。
(式6)
IFAM−P.C.(FAM)=V´FAM−P.C.(FAM)/V´Ref(FAM)
=(VFAM−P.C.(FAM)−VDark(FAM))/(VRef(FAM)−VDark(FAM))
(式7)
IFAM−P.C.(RED)=V´FAM−P.C.(RED)/V´Ref(RED)
=(VFAM−P.C.(RED)−VDark(RED))/(VRef(RED)−VDark(RED))
【0067】
S704では、「IFAM−P.C.(FAM)が所定の閾値ITh−FAM−P.C.(FAM)以上であること、かつ、IFAM−P.C.(RED)が所定の閾値ITh−FAM−P.C.(RED)未満であること」を確認し、もしこの命題が満足されない場合には、全ての測定対象ウェルについて「判定不能」とする。なお、閾値ITh−FAM−P.C.(FAM)、ITh−FAM−P.C.(RED)は、S501で設定される各種条件に含む。
【0068】
S705では、(式8)、(式9)に基づき、RED−P.C.が収容されているウェルからの蛍光強度IRED−P.C.(FAM)、IRED−P.C.(RED)を計算する。
(式8)
IRED−P.C.(FAM)=V´RED−P.C.(FAM)/V´Ref(FAM)
=(VRED−P.C.(FAM)−VDark(FAM))/(VRef(FAM)−VDark(FAM))
(式9)
IRED−P.C.(RED)=V´RED−P.C.(RED)/V´Ref(RED)
=(VRED−P.C.(RED)−VDark(RED))/(VRef(RED)−VDark(RED))
【0069】
S706では、「IRED−P.C.(FAM)が所定の閾値ITh−RED−P.C.(FAM)未満であること、かつ、IRED−P.C.(RED)が所定の閾値ITh−RED−P.C.(RED)以上であること」を確認し、もしこの命題が満足されない場合には、全ての測定対象ウェルについて「判定不能」とする。なお、閾値ITh−RED−P.C.(FAM)、ITh−RED−P.C.(RED)は、S501で設定される各種条件に含む。
【0070】
S707では、(式10)、(式11)に基づき、HETERO−P.C.が収容されているウェルからの蛍光強度IHETERO−P.C.(FAM)、IHETERO−P.C.(RED)を計算する。
(式10)
IHETERO−P.C.(FAM)=V´HETERO−P.C.(FAM)/V´Ref(FAM)
=(VHETERO−P.C.(FAM)−VDark(FAM))/(VRef(FAM)−VDark(FAM))
(式11)
IHETERO−P.C.(RED)=V´HETERO−P.C.(RED)/V´Ref(RED)
=(VHETERO−P.C.(RED)−VDark(RED))/(VRef(RED)−VDark(RED))
【0071】
S708では、「IHETERO−P.C.(FAM)が所定の閾値ITh−HETERO−P.C.(FAM)以上であること、かつ、IHETERO−P.C.(RED)が所定の閾値ITh−HETERO−P.C.(RED)以上であること」を確認し、もしこの命題が満足されない場合には、全ての測定対象ウェルについて「判定不能」とする。なお、閾値ITh−HETERO−P.C.(FAM)、ITh−HETERO−P.C.(RED)は、S501で設定される各種条件に含む。
【0072】
そして、S708の命題が満足されている場合には、その他測定対象ウェル(図6のB1〜B6ウェル、C1〜C6ウェル)各々について、SNPの有無と、そのSNPがホモ接合体であるかヘテロ接合体であるかを判定するためにステップS801(図8)に進む。
【0073】
S801では、(式12)、(式13)で表される蛍光強度ISamp(FAM)、ISamp(RED)を計算する。
(式12)
ISamp(FAM)=V´Samp(FAM)/V´Ref(FAM)
=(VSamp(FAM)−VDark(FAM))/(VRef(FAM)−VDark(FAM))
(式13)
ISamp(RED)=V´Samp(RED)/V´Ref(RED)
=(VSamp(RED)−VDark(RED)/(VRef(RED)−VDark(RED))
【0074】
S802では、(式12)、(式13)で計算したISamp(FAM)、ISamp(RED)の値に基づき、当該ウェルにおけるSNPの有無について判定する。すなわち、
「ISamp(FAM)が所定の閾値ITh−FAM−P.C.(FAM)以上、かつ、ISamp(RED)が所定の閾値ITh−FAM−P.C.(RED)未満」、又は、
「ISamp(FAM)が所定の閾値ITh−RED−P.C.(FAM)未満、かつ、ISamp(RED)が所定の閾値ITh−RED−P.C.(RED)以上」、又は、
「ISamp(FAM)が所定の閾値ITh−HETERO−P.C.(FAM)以上、かつ、ISamp(RED)が所定の閾値ITh−HETERO−P.C.(RED)以上」
のいずれかの命題を満足しているかどうかを確認し、もしどの命題も満足されていない場合は、当該ウェルにおけるSNPは「判定不能」とする。
【0075】
S803では、(式12)(式13)で計算したISamp(FAM)とISamp(RED)との比に基づき、当該ウェルにおけるSNPのタイプを判定する。すなわち、
「ISamp(FAM)/ISamp(RED)が所定の閾値ThFAM−HOMO以上」ならば、当該ウェルにおけるSNPタイプは「FAMのホモ型」と判定し、
「ISamp(FAM)/ISamp(RED)が所定の閾値ThFAM−HOMO未満」ならば、当該ウェルにおけるSNPタイプは「REDのホモ型」と判定し、
「ISamp(FAM)/ISamp(RED)が所定の閾値ThHETERO−MAX未満、かつ、所定の閾値ThHETERO−MIN以上」ならば、当該ウェルにおけるSNPタイプは「ヘテロ型」と判定し、
「ISamp(FAM)/ISamp(RED)が所定の閾値ThFAM−HOMO未満、かつ、所定の閾値ThHETERO−MAX未満」、又は、「ISamp(FAM)/ISamp(RED)が所定の閾値ThHETERO−MIN未満、かつ、所定の閾値ThRED−HOMO以上」ならば、当該ウェルにおけるSNPタイプは「判定不能」と判定する。なお、閾値ThFAM−HOMO、ThRED−HOMO、ThHETERO−MAX、ThHETERO−MINは、S501で設定される各種条件に含む。
【0076】
S804では、全測定対象ウェルについての判定が完了したかどうかを確認する。未了の場合は残りの測定対象ウェルについて上記S801〜S803のステップを繰り返し、完了の場合は図9〜図11に示した各種結果情報をモニタ106に表示し、図5のS510に進む。
【0077】
図9は、P.C.、N.C.を含む全測定対象ウェル各々について(式4)〜(式13)により算出された蛍光強度を示したグラフであり、P.C.、N.C.の蛍光強度により、測定対象物の劣化、遺伝子増幅反応を阻害する阻害物質、コンタミ混入による汚染などの影響の有無が確認でき、その他測定対象ウェルの蛍光強度により各ウェルについてのSNPの有無が確認できる。
【0078】
図10は、P.C.を含む全測定対象ウェル各々についての蛍光強度比を示したグラフであり、各ウェルがどのSNPタイプに判定されたかを確認できる。
【0079】
図11は、図9及び図10をまとめて表したグラフである。
【0080】
そして、S510では、チップ2を排出し、遺伝子解析装置1の一連の動作を完了する。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】装置構成の一例を示す図である。
【図2】2分岐ファイバの一例を示す概略図である。
【図3】本発明の一実施形態である、青色LEDおよび白色LED、各励起フィルタ及び各蛍光フィルタの分光特性を示す図である。
【図4】標準サンプルの一例を示す図である。
【図5】装置の動作の一例を示すフローチャート図である。
【図6】チップレイアウトの一例を示す図である。
【図7】データ処理のフローの一例を示すフローチャート図である。
【図8】データ処理のフローの一例を示すフローチャート図である。
【図9】データ処理の結果の一例を示す図である。
【図10】データ処理の結果の一例を示す図である。
【図11】データ処理の結果の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0082】
1 遺伝子解析装置
100 パーソナルコンピュータ
101 照明制御手段
102 温度制御手段
103 光電子増倍管制御手段
104 ファイバ移動手段
105 A/D変換手段
106 モニタ
2 チップ
21 ウェル
22 黒色無反射板
23 FAM用標準サンプル
231 蛍光プラスチック
232 NDフィルタ
24 RED用標準サンプル
241 蛍光プラスチック
242 NDフィルタ
201 励起光投光用ファイバ
202 蛍光受光用ファイバ
203 筒
3 励起照明照射手段
31 青色パワーLED
32 白色パワーLED
33 レンズ
34 FAM用励起フィルタ
35 レンズ
36 レンズ
37 RED用励起フィルタ
38 レンズ
4 2分岐ファイバ
41 投光用ファイバ
42 受光用ファイバ
5 2分岐ファイバ
51 投光用ファイバ
52 受光用ファイバ
6 蛍光検出手段
61 FAM用蛍光フィルタ
62 FAM用光電子増倍管
63 RED用蛍光フィルタ
64 RED用光電子増倍管
7 ファイバ保持手段
71 X軸方向移動機構
72 Y軸方向移動機構
73 Z軸方向移動機構
【技術分野】
【0001】
本発明は化学反応を初め、医療現場において各種自動解析、例えば遺伝子解析の研究や臨床を行うのに適する試料容器を用いて人間を初めとする動物や植物のゲノムDNAの多型、特にSNP(一塩基多型)を検出するための遺伝子解析装置に関する。検出された遺伝子多型検出結果を用いて病気罹患率の診断や、投与薬剤の種類と効果及び副作用との関係などの診断を行うことができる。
【背景技術】
【0002】
遺伝子多型を利用して病気の罹りやすさなどを予測する方法又は装置として、下記のようなものが提案されている。
患者が敗血症に罹りやすいか否か及び/又は敗血症に急速に進行いやすいか否かを決定するために、患者から核酸サンプルを採取し、該サンプル中におけるパターン2対立遺伝子、又はパターン2対立遺伝子と連鎖不平衡であるマーカー遺伝子を検出し、パターン2対立遺伝子又はパターン2対立遺伝子と連鎖不平衡であるマーカー遺伝子が検出されれば該患者が敗血症に罹りやすいと判定する(特許文献1参照)。
【0003】
ヒトのflt−1遺伝子中の1又はそれ以上の単一ヌクレオチド多型性の診断のために、ヒトの核酸の1又はそれ以上の位置:1953、3453、3888(各々EMBL受理番号X51602中の位置に従う)、519、786、1422、1429(各々EMBL受理番号D64016中の位置に従う)、454(配列番号3に従う)及び696(配列番号5に従う)の配列を決定し、flt−1遺伝子中の多型性を参照することにより、そのヒトの体質を決定する(特許文献2参照)。
【0004】
SNP部位の塩基を判別する、いわゆるタイピングについては多くの手法が報告されている。そのうちの代表的なものは次の方法である。
比較的に少量のゲノムDNAを用いて数十万箇所に及ぶSNP部位についてタイピングを行うために、少なくとも一つの一塩基多型部を含む複数の塩基配列を、ゲノムDNA及び複数対のプライマーを用いて同時に増幅し、増幅した複数の塩基配列を用いて、当該塩基配列に含まれる一塩基多型部位の塩基をタイピング工程により判別する。そのタイピング工程として、インベーダ法又はタックマンPCR法を用いる(特許文献3参照)。
【0005】
インベーダ法については、特許文献3の0032段から0034段に詳しく記載されているので参照されたい。
【0006】
タイピング工程で、複数の種類の蛍光を検出する場合、励起光源としてキセノンランプやハロゲンランプを使用し、発生する蛍光を、励起フィルタとダイクロイックミラーと蛍光フィルタで構成されるフィルタユニットの切換えによって、波長選択して検出することが一般に行われている。この場合、フィルタユニットを切り換えるための切換え機構が必要となるため、装置が複雑化し、高価にもなる。
【0007】
そこで、励起光源と蛍光フィルタとダイクロイックミラーについては2種類備え、検出器については共通化することで、フィルタユニットの切換え機構を不要とした装置が提案されている(特許文献4参照)。
【0008】
ところが、この場合、検出器が共通化されているため、第一の励起光源を点灯している間は、第二の励起光源を消灯しておく必要があり、複数の種類の蛍光を同時に検出することができず、その結果、2種類の励起光源を互い違いに何度も点灯/消灯を繰り返さなければならなかった。そのため、第一、第二の励起光源を点灯/消灯するタイミングと、検出器による第一、第二の蛍光を検出するタイミングと、更には、測定対象物である試料容器および蛍光検出部の移動タイミングとを高精度に制御する必要があり、装置のデバッグ、調整に多大な時間と労力を要してしまう問題があった。
【0009】
さらに、複数の種類の蛍光を同時に検出することができないため、測定対象ウェル数が多い場合や、測定回数が多くなる場合には、測定を完了するのに多くの時間を要してしまう問題があった。
【0010】
また、遺伝子解析装置が備える光電子増倍管などの光検出器の感度や照明の強度は経時的に変化するばかりでなく、特に光電子増倍管は、たとえ同ロット生産品であっても、その感度の製品ばらつきの大きさは無視できない場合が多い。
【特許文献1】特表2002−533096号公報
【特許文献2】特開2001−299366号公報
【特許文献3】特開2002−300894号公報
【特許文献4】特開2006−271347号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記の事情を鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、装置構成が単純で、少なくとも2種類の蛍光を同時に検出することで高速測定を実現し、更に、少なくとも2種類の蛍光を検出する少なくとも2種類の蛍光検出手段各々の感度を校正する少なくとも2種類の標準サンプルを備える遺伝子解析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明は、複数のウェルが形成された試料容器の各ウェル内に収容されている試料が発する蛍光を検出する装置であって、
少なくとも2箇所以上のウェルに励起波長の異なる2種類の励起照明を同時に照射する励起照明照射手段と、
前記励起照明照射手段からの励起光を前記2箇所以上のウェル内に収容されている試料に同時に導光する2個以上の投光用ファイバと、
前記2箇所以上のウェル内に収容されている試料からの蛍光を同時に導光する2個以上の受光用ファイバと、
前記2個以上の受光用ファイバにより導光された蛍光波長の異なる2種類の蛍光を同時に検出する2個以上の蛍光検出手段と、
前記2個以上の投光用ファイバの出射側と前記2個以上の受光用ファイバの入射側を束ねた2分岐ファイバの先端部を保持する保持手段と、
前記保持手段を、互いに直交するXYZ3軸方向に移動するファイバ移動手段と、
を少なくとも具備することを特徴とする遺伝子解析装置である。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の遺伝子解析装置において、
前記励起照明照射手段は第一の波長帯域からなる励起光を選択する第一の励起フィルタと、第二の波長帯域からなる励起光を選択する第二の励起フィルタを含み、
前記蛍光検出手段は第一の第一の波長帯域からなる蛍光を選択する第一の蛍光フィルタと、第二の波長帯域からなる蛍光を選択する第二の蛍光フィルタを含み、
該第一の励起フィルタと、該第一の蛍光フィルタと、該第二の励起フィルタと、該第二の蛍光フィルタ各々の光透過波長域にクロストークが無いことを特徴とする遺伝子解析装置である。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1記載の遺伝子解析装置において、
前記励起照明照射手段は、第一の波長帯域からなる光を発光する第一の光源と、第二の波長帯域からなる光を発光する第二の光源を含み、該第一の光源および該第二の光源は、順電流が100mA以上のパワーLEDであることを特徴とする遺伝子解析装置である。
【0015】
請求項4に記載の発明は、前記第一の光源は青色LEDであり、第二の光源は白色LEDであることを特徴とする請求項3に記載の遺伝子解析装置である。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1記載の遺伝子解析装置において、
前記2分岐ファイバの先端部の直径が、前記試料容器のウェルのピッチよりも小さいことを特徴とする遺伝子解析装置である。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項1記載の遺伝子解析装置において、
前記投光用ファイバ及び受光用ファイバが石英ファイバであることを特徴とする遺伝子解析装置である。
【0018】
請求項7に記載の発明は、請求項1に記載の遺伝子解析装置において、
前記2分岐ファイバが100℃以上の耐熱性を有する耐熱PVCチューブで被覆されていることを特徴とする遺伝子解析装置である。
【0019】
請求項8に記載の発明は、請求項1に記載の遺伝子解析装置において、
前記蛍光検出手段の感度校正のための黒色無反射板と、少なくとも2種類の標準サンプルを備えることを特徴とする遺伝子解析装置である。
【0020】
請求項9に記載の発明は、前記標準サンプルは、蛍光プラスチック又は蛍光ガラスと、複数の光学濃度を有するNDフィルタとを構成要素に含むことを特徴とする請求項8に記載の遺伝子解析装置である。
【0021】
請求項10に記載の発明は、前記標準サンプルからの蛍光強度に基づいて、前記励起照明照射手段及び/又は前記蛍光検出手段の寿命切れ及び/又は劣化状態を監視することを特徴とする請求項8または9のいずれかに記載の遺伝子解析装置である。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に記載の発明は、複数のウェルが形成された試料容器の各ウェル内に収容されている試料が発する蛍光を検出する装置であって、
少なくとも2箇所以上のウェルに励起波長の異なる2種類の励起照明を同時に照射する励起照明照射手段と、
前記励起照明照射手段からの励起光を前記2箇所以上のウェル内に収容されている試料に同時に導光する2個以上の投光用ファイバと、
前記2箇所以上のウェル内に収容されている試料からの蛍光を同時に導光する2個以上の受光用ファイバと、
前記2個以上の受光用ファイバにより導光された蛍光波長の異なる2種類の蛍光を同時に検出する2個以上の蛍光検出手段と、
前記2個以上の投光用ファイバの出射側と前記2個以上の受光用ファイバの入射側を束ねた2分岐ファイバの先端部を保持する保持手段と、
前記保持手段を、互いに直交するXYZ3軸方向に移動するファイバ移動手段と、
を少なくとも具備することを特徴とする遺伝子解析装置である。
請求項1の発明によれば、装置構成が単純であり、かつ、2種類の蛍光を同時に検出することが可能であるために、高速測定が可能となる。
【0023】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の遺伝子解析装置において、
前記励起照明照射手段は第一の波長帯域からなる励起光を選択する第一の励起フィルタと、第二の波長帯域からなる励起光を選択する第二の励起フィルタを含み、
前記蛍光検出手段は第一の第一の波長帯域からなる蛍光を選択する第一の蛍光フィルタと、第二の波長帯域からなる蛍光を選択する第二の蛍光フィルタを含み、
該第一の励起フィルタと、該第一の蛍光フィルタと、該第二の励起フィルタと、該第二の蛍光フィルタ各々の光透過波長域にクロストークが無いことを特徴とする遺伝子解析装置である。
請求項2の発明によれば、後述するFAMの励起光としての青色パワーLEDとREDの励起光としての白色パワーLEDを同時に点灯した状態で、FAMの蛍光検出とREDの蛍光検出を同時に行うことが可能となる。
【0024】
請求項3に記載の発明は、請求項1記載の遺伝子解析装置において、
前記励起照明照射手段は、第一の波長帯域からなる光を発光する第一の光源と、第二の波長帯域からなる光を発光する第二の光源を含み、該第一の光源および該第二の光源は、順電流が100mA以上のパワーLEDであることを特徴とする遺伝子解析装置である。請求項3の発明によれば、高輝度で長寿命な証明を使用することで、高品位な信号を取得することが可能となり、さらに、照明交換の頻度も少なく済む。
【0025】
請求項4に記載の発明は、前記第一の光源は青色LEDであり、第二の光源は白色LEDであることを特徴とする請求項3に記載の遺伝子解析装置である。請求項4の発明によれば、励起波長が異なる2種類の蛍光物質を励起することができる。
【0026】
請求項5に記載の発明は、請求項1記載の遺伝子解析装置において、前記2分岐ファイバの先端部の直径が、前記試料容器のウェルのピッチよりも小さいことを特徴とする遺伝子解析装置である。請求項5の発明によれば、互いに隣接するウェル内の各試料からの蛍光を同時に受光するように2分岐ファイバの先端部を後述するファイバ保持手段7に保持させることが可能となる。
【0027】
請求項6に記載の発明は、請求項1記載の遺伝子解析装置において、前記投光用ファイバ及び受光用ファイバが石英ファイバであることを特徴とする遺伝子解析装置である。請求項6に記載の発明によれば、自家蛍光が少ない石英を使用することで、試料に由来する蛍光がファイバ由来の自家蛍光の中に埋もれてしまうことを防止することができる。
【0028】
請求項7に記載の発明は、請求項1に記載の遺伝子解析装置において、前記2分岐ファイバが100℃以上の耐熱性を有する耐熱PVCチューブで被覆されていることを特徴とする遺伝子解析装置である。請求項7の発明によれば、例えばPCRなどの遺伝子増幅のための温調手段や、インベーダ法などのSNPタイピングのための温調手段を、耐熱性を有する2分岐ファイバを介して、励起照明照射手段や蛍光検出手段と隔離された位置に配置することができる。したがって、励起照明照射手段に含まれるパワーLED素子の温度変化による発光効率の変動や短寿命化を防ぐことが可能となるとともに、蛍光検出手段に含まれる光電子増倍管の温度変化による感度変動や暗電流変動についても防ぐことが可能となる。
【0029】
請求項8に記載の発明は、請求項1に記載の遺伝子解析装置において、前記蛍光検出手段の感度校正のための黒色無反射板と、少なくとも2種類の標準サンプルを備えることを特徴とする遺伝子解析装置である。請求項8の発明によれば、2種類の蛍光を検出する2種類の蛍光検出手段各々の感度を校正する2種類の標準サンプルを備えているため、複数個の蛍光検出手段のばらつきをキャンセルすることができ、高精度な測定を行うことが可能となる。
【0030】
請求項9に記載の発明は、前記標準サンプルは、蛍光プラスチック又は蛍光ガラスと、複数の光学濃度を有するNDフィルタとを構成要素に含むことを特徴とする請求項8に記載の遺伝子解析装置である。請求項9の発明によれば、光検出器の感度を校正することで装置間の感度のばらつきや、経時での感度のばらつきを防止することができる。
【0031】
請求項10に記載の発明は、前記標準サンプルからの蛍光強度に基づいて、前記励起照明照射手段及び/又は前記蛍光検出手段の寿命切れ及び/又は劣化状態を監視することを特徴とする請求項8または9のいずれかに記載の遺伝子解析装置である。請求項10の発明によれば、消耗品の劣化により、測定結果が信用できない、という事態を回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
図1に示すように、遺伝子解析装置1には、試料容器としてのチップ2が置かれる。チップ2には複数のウェル21が形成されており、ウェル21内に測定対象となる蛍光体で標識した細胞やその細胞を含有するためのバッファー溶液などの試料が収容されている。ここでは、標識蛍光体として、FAMとRedmond Red(以下、REDと略記する)を使用しているものとするが、これらに限られるものではなく、公知の蛍光体を使用することが可能である。
【0033】
遺伝子解析装置1は、励起照明照射手段3が設けられ、第一の波長帯域を含む光を発光する第一の光源と、第二の波長帯域を含む光を発光する第二の光源を備えている。ここで、第一の波長帯域、第二の波長帯域とは、2種類の測定対象物質が蛍光を発するためにそれぞれの測定対象物質に照射する波長帯域をさし、測定対象物質によって波長帯域の値は適宜選択されるものである。また、励起照明照射手段3は、第一の波長帯域からなる励起光を選択する第一の励起フィルタと、第二の波長帯域からなる励起光を選択する第二の励起フィルタを備えている。第一の励起フィルタ及び第二の励起フィルタは、特定の光だけを透過するバンドパスフィルタである。
前記第一の光源および第二の光源は、順電流が100mA以上のパワーLEDである。高輝度で長寿命な照明を使用することで、高品位な信号を取得でき、照明交換の頻度も少なくすることが可能となる。
【0034】
前記第一の光源として、ここでは青色パワーLED31、第二の光源として白色パワーLED32を備えるものとして、以下説明する。
青色パワーLED31からの光は、レンズ33、第一の波長帯域からなる励起光を選択する第一の励起フィルタとしてのFAM用励起フィルタ34、レンズ35によりFAMの励起光として2分岐ファイバ4の投光用ファイバ41の入射端面に集光される。また、白色パワーLED32からの光は、レンズ36、第二の波長帯域からなる励起光を選択する第二の励起フィルタとしてのRED用励起フィルタ37、レンズ38によりREDの励起光として2分岐ファイバ5の励起光投光用ファイバ51の入射端面に集光される。なお、青色パワーLED31と白色パワーLED32は、パーソナルコンピュータ100から照明制御手段101を介して点灯/消灯制御及び調光制御できるようになっている。
【0035】
図2は、2分岐ファイバ4及び2分岐ファイバ5の構成について示したものであるが、励起光投光用ファイバ201の出射端面の周囲には、チップ2からの蛍光を導光するための6本の蛍光受光用ファイバ202の入射端面が配置されており、1本の励起光投光用ファイバ201の出射端部と6本の蛍光受光用ファイバ202の入射端部は、例えばステンレスなどの金属製の筒203で補強されている。
【0036】
また、2分岐ファイバ4及び2分岐ファイバ5は、励起光投光用ファイバ201及び蛍光受光用ファイバ202を束ねて100℃以上の耐熱性を有する耐熱PVCチューブ204で被覆されている。励起光投光用ファイバ201及び蛍光受光用ファイバ202は、いずれもコア径が400μm以上の石英ファイバである。
2分岐ファイバ4及び2分岐ファイバ5を耐熱PVCチューブ204で被覆しているため、本発明の遺伝子解析装置1は、例えばPCRなどの遺伝子増幅のための温調手段や、インベーダ法などのSNPタイピングのための温調手段(以下、これらをまとめて温調手段と記す)を、耐熱性を有する2分岐ファイバ4及び2分岐ファイバ5を介して、前記励起照明照射手段3や、後述する蛍光検出手段6と隔離された位置に配置することができる。
【0037】
したがって、励起照明照射手段3に含まれるパワーLED素子の温度変化による発光効率の変動や短寿命化を防ぐことができるとともに、後述する蛍光検出手段6に含まれる光電子増倍管の温度変化による感度変動や暗電流変動についても防ぐことができる。
【0038】
金属製の筒203の直径は、チップ2に形成されたウェル21のピッチよりも小さく設計する。筒203の直径がウェル21のピッチよりも大きいと、筒203同士がぶつかってしまい、互いに隣接する2ヶ所のウェルを同時に測定することができない。金属製の筒203の直径を、チップ2に形成されたウェル21のピッチよりも小さくすることにより、互いに隣接するウェル内の各試料からの蛍光を同時に受光するように筒203をファイバ保持手段7に保持させることができる。
【0039】
そして、ファイバ保持手段7に保持された筒203内の励起光投光用ファイバ201(図1の41、51)は、その出射端面からウェル21内の試料に励起光を照射するとともに、蛍光受光用ファイバ202(図1の42、52)の入射端面で前記試料が発する蛍光を受光し、その出射端面を介して蛍光検出手段6に導光する。
【0040】
遺伝子解析装置1は、蛍光検出手段6が設けられおり、蛍光検出手段6は、第一の波長帯域からなる蛍光を選択する第一の蛍光フィルタと、第二の波長帯域からなる蛍光を選択する第二の蛍光フィルタを備えている。第一の蛍光フィルタ及び第二の蛍光フィルタは、特定の光だけを透過するバンドパスフィルタである。
【0041】
蛍光検出手段6は、蛍光受光用ファイバ42が受光した光から第一の波長帯域としてFAMの蛍光波長を選択する第一の蛍光フィルタとしてのFAM用蛍光フィルタ61と、FAM蛍光検出器としてのFAM用光電子増倍管62と、蛍光受光用ファイバ52が受光した光から第二の波長帯域としてREDの蛍光波長を選択する第二の蛍光フィルタとしてのRED用蛍光フィルタ63と、RED蛍光検出器としてのRED用光電子増倍管64とを備えており、FAM用光電子増倍管62と、RED用光電子増倍管64は、受光した光を光電変換し、A/D変換手段105を介してパーソナルコンピュータ100が備える記憶手段(図示せず)に入力する。なお、FAM用光電子増倍管62とRED用光電子増倍管64は、パーソナルコンピュータ100から光電子増倍管制御手段103を介して給電のON/OFF制御及びGAIN制御できるようになっている。
【0042】
図3は、FAM用励起光源としての青色パワーLED31と、RED用励起光源としての白色パワーLED32の分光放射率及びFAM用励起フィルタ34と、FAM用蛍光フィルタ61と、RED用励起フィルタ37と、RED用蛍光フィルタ63との分光透過率を示した図である。
【0043】
微弱蛍光を検出するためには、FAM用励起フィルタ34とFAM用蛍光フィルタ61の分光透過率にクロストークが無いこと、RED用励起フィルタ37とRED用蛍光フィルタ63の分光透過率にクロストークが無いことが重要であることは勿論であるが、本発明の遺伝子解析装置1においては、FAM用蛍光フィルタ61とRED用励起フィルタ37の分光透過率にもクロストークが無いことも重要である。もし、FAM用蛍光フィルタ61とRED用励起フィルタ37の分光透過率にクロストークが存在する場合、チップ2の表面で反射するREDの励起光の一部が、FAM用蛍光フィルタ61を通過してFAM用光電子増倍管62に入射され、FAM由来の蛍光が検出できない虞がある。特に、FAMの蛍光が微弱である場合には、FAM由来の蛍光がチップ2の表面で反射するREDの励起光の一部による信号の中に埋もれてしまい、S/N比は著しく低下する。そこで、本発明の遺伝子解析装置1は、FAM用蛍光フィルタ61とRED用励起フィルタ37の分光透過率にクロストークが無く、したがって、FAMの励起光としての青色パワーLED31と、REDの励起光としての白色パワーLEDを同時に点灯した状態で、FAMの蛍光検出と、REDの蛍光検出を同時に行うことができるようになっている。
【0044】
また、遺伝子解析装置1は、互いに直交するXYZ3軸方向にファイバ保持手段7を移動するファイバ移動手段104を備えているので、ファイバ移動手段に104を備えているので、ファイバ移動手段104によりX軸方向移動機構71、Y軸方向移動機構72を制御し、ファイバ保持手段7を水平方向(X軸方向及びY軸方向)に移動することにより、測定対象である全てのウェルについてFAMの蛍光及びREDの蛍光を検出することができ、またZ軸方向移動機構73を制御し、ファイバ保持手段7を鉛直方向(Z軸方向)に移動させることにより、2分岐ファイバ4及び2分岐ファイバ5の筒203の先端部とチップ2の表面との距離(ワーキングディスタンス)を調整できるようになっている。
なお、図1にはFAMの蛍光検出及びREDの蛍光検出のために、それぞれ1系統の励起光照射手段、2分岐ファイバ、蛍光検出手段を示したが、測定の更なる高速化を実現させるために、2系統若しくはそれ以上の励起光照射手段、2分岐ファイバ、蛍光検出手段を設けることもできる。
【0045】
さらに、遺伝子解析装置1は、複数個の光電子増倍管の感度及び照明強度の経時的な変化を校正するため、あるいは、2系統若しくはそれ以上の励起光照射、2分岐ファイバ、蛍光検出手段を設けた場合には、同一品種の励起フィルタ及び蛍光フィルタの個体差としての分光透過率のばらつき、2分岐ファイバの個体差としての分光透過率のばらつき、光電子増倍管毎の個体差としての出力感度ばらつきなどによる系全体の差異を校正するために、FAM用光電子増倍管62とRED用光電子増倍管64の感度を校正するための黒色無反射板22と、FAM用標準サンプル23と、RED用標準サンプル24とを備える。
【0046】
黒色無反射板22は、光電子増倍管毎の個体差としての暗電流による出力ばらつきをキャンセルするために設けられている。すなわち、光電子増倍管毎の暗電流による出力信号VDarkを測定し、試料からの出力信号VSamp及び標準サンプルからの出力信号VRefから減算する。つまり、暗電流による出力ばらつきがキャンセルされた試料からの出力信号、標準サンプルからの出力信号をそれぞれV´Samp及びV´Refとすると、V´Samp、V´Refは、それぞれ(式1)、(式2)で表される。なお、黒色無反射板22としては、黒アルマイト表面処理が施された安価な金属板を使用することができる。
(式1)
V´Samp=VSamp−VDark
(式2)
V´Ref=VRef−VDark
【0047】
FAM用標準サンプル23及びRED用標準サンプル24は、光電子増倍管の出力感度及び照明強度の経時的な変化、光電子増倍管毎の出力感度のばらつきなどに起因する系全体の差異を補正するために設けられている。すなわち、(式1)のV´Sampを(式2)のV´Refで除算した値(式3)を以って当該試料からの蛍光強度としてISampとしている。
(式3)
ISamp=V´Samp/V´Ref=(VSamp−VDark)/(VRef−VDark)
【0048】
FAM用標準サンプル23としては、FAMの蛍光を測定する際に用いられる所定の励起光を照射したときに、FAMの蛍光を検出する光検出器のダイナミックレンジ内の適当な強度に相当する蛍光を発することが望ましく、したがって、図4(a)に示すように、FAM用標準サンプル23は、青色(490nm程度)の励起光により、緑色(520nm程度)の蛍光を発する蛍光プラスチック231と複数の光学濃度を有するNDフィルタ232とで構成されている。
【0049】
同様に、RED用標準サンプル24としては、REDの蛍光を測定する際に用いられる所定の励起光を照射したときに、REDの蛍光を検出する光検出器のダイナミックレンジ内の適当な強度に相当する蛍光を発することが望ましく、したがって、図4(b)に示すように、RED用標準サンプル24は、緑〜橙色(580nm程度)の励起光により、赤色(595nm程度)の蛍光を発する蛍光プラスチック241と、複数の光学濃度を有するNDフィルタ242とで構成されている。
【0050】
ここで、FAM用標準サンプル23及びRED用標準サンプル24の構成要素であるNDフィルタ232、242は、FAM用光電子増倍管62及びRED用光電子増倍管64のダイナミックレンジ内の適当な強度に相当する蛍光を取得するための減光手段として作用するものであるが、図4に示すように、NDフィルタ232、242は複数の光学濃度を有しているので、試料が発する蛍光(VSamp)と同等の強度が得られる部分を予め調査して選択しておき、測定条件の一情報としてパーソナルコンピュータ100が備える記憶手段(図示せず)に記憶させることができるようになっている。
【0051】
さらに、各標準サンプルからの出力信号値VRef(FAM)、VRef(RED)に基づいて、青色パワーLED31や白色パワーLED32などの励起照明照射手段及び/又はFAM用光電子増倍管62やRED用光電子増倍管64などの蛍光検出手段の寿命切れ及び/または劣化状態を判定し、VRefが異常値を示した場合には、モニタ106を介して部品交換や再測定を使用者に促すことができるようになっている。
【0052】
次に、遺伝子解析装置1の動作について説明する。
【0053】
図5は、遺伝子解析装置1の動作フローを示したフローチャート図である。S501では、遺伝子増幅反応やタイピング反応のための温調条件や、ポジティブコントロール(以下、P.C.と略記する)、ネガティブコントロール(以下、N.C.と略記する)を含む測定対象ウェルの位置を特定するためのチップレイアウト、蛍光検出時の各照明の強度設定、各光電子増倍管のGAIN設定、2分岐ファイバ4、5の筒203の先端部とチップ2の表面との距離(ワーキングディスタンス)などの各種条件を設定する。また、S501でファイバ移動手段104によりZ軸方向移動機構73を制御し、ファイバ保持手段7を鉛直方向に移動させ、ワーキングディスタンスの調整を完了させても良い。
【0054】
P.C.、N.C.とは、測定対象物の劣化、遺伝子増幅反応を阻害する阻害物質、コンタミ混入による汚染などの影響の有無を確認するためのものであり、もし、測定結果においてP.C.が収容されているウェルから所定の強度の蛍光が検出されなかった場合や、N.C.が収容されているウェルから所定の強度の蛍光が検出された場合は、全ての測定対象ウェルについての測定結果の信頼性が乏しいものとして判定不能とする。ここでは、P.C.として、FAMの蛍光のみを発光するべきもの(以下、FAM−P.C.と略記する)、REDの蛍光のみを発光するべきもの(以下、RED−P.C.と略記する)、FAMとRED両方の蛍光を発光するべきもの(以下、HETERO−P.C.と略記する)の3種を用いることとする。
【0055】
S502では、ファイバ移動手段104によりX軸方向移動機構71、Y軸方向移動機構72を制御し、ファイバ保持手段7を水平方向に移動させ、FAM用光電子増倍管62でFAM用標準サンプル23を、RED用光電子増倍管64でRED用標準サンプル24を測定する。なお、FAM用標準サンプル23の測定ポイント及びRED用標準サンプル24の測定ポイントは、S501で設定される各種条件に含む。
【0056】
S503では、S502で取得したFAM用標準サンプル23からの出力信号値VRef(FAM)、RED用標準サンプル24からの出力信号値VRef(RED)を確認し、異常値を示した場合には、モニタ106を介して部品交換や再測定を使用者に促す。なお、正常/異常を判断するための閾値は、S501で設定される各種条件に含む。
【0057】
S504では、測定対象物となるチップ2を遺伝子解析装置1に投入する。
【0058】
S505では、温調手段102により、遺伝子増幅反応及びタイピング反応を行う。
【0059】
S506では、ファイバ移動手段104によりX軸方向移動機構71、Y軸方向移動機構72を制御し、ファイバ保持手段7を水平方向に移動させ、FAM用光電子増倍管62及びRED用光電子増倍管64で黒色無反射板22を測定し、各出力信号値VDark(FAM)、VDark(RED)をパーソナルコンピュータ100が備える記憶手段(図示せず)に記憶する。なお、黒色無反射板22の測定ポイントは、S501で設定される条件に含む。
【0060】
S507では、ファイバ移動手段104によりX軸方向移動機構71、Y軸方向移動機構72を制御し、ファイバ保持手段7を水平方向に移動させ、FAM用光電子増倍管62でFAM用標準サンプル23を、RED用光電子増倍管64でRED用標準サンプル24を測定し、各出力信号値VRef(FAM)、VRef(RED)をパーソナルコンピュータ100が備える記憶手段(図示せず)に記憶する。
【0061】
S508では、S501で設定された測定対象ウェルの位置を特定するチップレイアウト情報に基づき、ファイバ移動手段104によりX軸方向移動機構71及びY軸方向移動機構72を制御し、ファイバ保持手段7を水平方向に移動させ、FAM用光電子増倍管62及びRED用光電子増倍管64で各種P.C.(FAM−P.C.、RED−P.C.、HETERO−P.C.)、N.C.を含む全測定対象ウェルを逐次測定し、各出力信号値をパーソナルコンピュータ100が備える記憶手段(図示せず)に記憶する。
【0062】
ここで、FAM用光電子増倍管62で、N.C.が収容されているウェルを測定したときの出力信号値をVN.C.(FAM)、FAM−P.C.が収容されているウェルを測定したときの出力信号値をVFAM−P.C.(FAM)、RED−P.C.が収容されているウェルを測定したときの出力信号値をVRED−P.C.(FAM)、HETERO−P.C.が収容されているウェルを測定したときの出力信号値をVHETERO−P.C.(FAM)、その他測定対象ウェルを測定したときの出力信号値をVSamp(FAM)と表記し、RED用光電子増倍管64でN.C.が収容されているウェルを測定したときの出力信号値をVN.C.(RED)、FAM−P.C.が収容されているウェルを測定したときの出力信号値をVFAM−P.C.(RED)、RED−P.C.が収容されているウェルを測定したときの出力信号値をVRED−P.C.(RED)、HETERO−P.C.が収容されているウェルを測定したときの出力信号値をVHETERO−P.C.(RED)、その他測定対象ウェルを測定したときの出力信号値をVSamp(RED)と表記する。また、S501で設定したチップレイアウトは、本説明では図6に従うものとするが、これに限られるものではない。
【0063】
S509では、S506〜S508で取得した種々の出力信号値に基づき、各種データ処理・表示を行う。以下、その詳細について説明する。
【0064】
図7、図8は、遺伝子解析装置1のデータ処理のフローを示すフローチャート図である。まず、S701では、(式4)(式5)に基づき、N.C.が収容されているウェルからの蛍光強度IN.C.(FAM)、IN.C.(RED)を計算する。
(式4)
IN.C.(FAM)=V´N.C.(FAM)/V´Ref(FAM)
=(VN.C.(FAM)−VDark(FAM))/(VRef(FAM)−VDark(FAM))
(式5)
IN.C.(RED)=V´N.C.(RED)/V´Ref(RED)
=(VN.C.(RED)−VDark(RED))/(VRef(RED)−VDark(RED))
【0065】
S702では、「IN.C.(FAM)が所定の閾値ITh−N.C.(FAM)未満であること、かつ、IN.C.(RED)が所定の閾値ITh−N.C.(RED)未満であること」を確認し、もしこの命題が満足されない場合には、全ての測定対象ウェルについて「判定不能」とする。なお、閾値ITh−N.C.(FAM)、ITh−N.C.(RED)は、S501で設定される各種条件に含む。
【0066】
S703では、(式6)、(式7)に基づき、FAM−P.C.が収容されているウェルからの蛍光強度IFAM−P.C.(FAM)、IFAM−P.C.(RED)を計算する。
(式6)
IFAM−P.C.(FAM)=V´FAM−P.C.(FAM)/V´Ref(FAM)
=(VFAM−P.C.(FAM)−VDark(FAM))/(VRef(FAM)−VDark(FAM))
(式7)
IFAM−P.C.(RED)=V´FAM−P.C.(RED)/V´Ref(RED)
=(VFAM−P.C.(RED)−VDark(RED))/(VRef(RED)−VDark(RED))
【0067】
S704では、「IFAM−P.C.(FAM)が所定の閾値ITh−FAM−P.C.(FAM)以上であること、かつ、IFAM−P.C.(RED)が所定の閾値ITh−FAM−P.C.(RED)未満であること」を確認し、もしこの命題が満足されない場合には、全ての測定対象ウェルについて「判定不能」とする。なお、閾値ITh−FAM−P.C.(FAM)、ITh−FAM−P.C.(RED)は、S501で設定される各種条件に含む。
【0068】
S705では、(式8)、(式9)に基づき、RED−P.C.が収容されているウェルからの蛍光強度IRED−P.C.(FAM)、IRED−P.C.(RED)を計算する。
(式8)
IRED−P.C.(FAM)=V´RED−P.C.(FAM)/V´Ref(FAM)
=(VRED−P.C.(FAM)−VDark(FAM))/(VRef(FAM)−VDark(FAM))
(式9)
IRED−P.C.(RED)=V´RED−P.C.(RED)/V´Ref(RED)
=(VRED−P.C.(RED)−VDark(RED))/(VRef(RED)−VDark(RED))
【0069】
S706では、「IRED−P.C.(FAM)が所定の閾値ITh−RED−P.C.(FAM)未満であること、かつ、IRED−P.C.(RED)が所定の閾値ITh−RED−P.C.(RED)以上であること」を確認し、もしこの命題が満足されない場合には、全ての測定対象ウェルについて「判定不能」とする。なお、閾値ITh−RED−P.C.(FAM)、ITh−RED−P.C.(RED)は、S501で設定される各種条件に含む。
【0070】
S707では、(式10)、(式11)に基づき、HETERO−P.C.が収容されているウェルからの蛍光強度IHETERO−P.C.(FAM)、IHETERO−P.C.(RED)を計算する。
(式10)
IHETERO−P.C.(FAM)=V´HETERO−P.C.(FAM)/V´Ref(FAM)
=(VHETERO−P.C.(FAM)−VDark(FAM))/(VRef(FAM)−VDark(FAM))
(式11)
IHETERO−P.C.(RED)=V´HETERO−P.C.(RED)/V´Ref(RED)
=(VHETERO−P.C.(RED)−VDark(RED))/(VRef(RED)−VDark(RED))
【0071】
S708では、「IHETERO−P.C.(FAM)が所定の閾値ITh−HETERO−P.C.(FAM)以上であること、かつ、IHETERO−P.C.(RED)が所定の閾値ITh−HETERO−P.C.(RED)以上であること」を確認し、もしこの命題が満足されない場合には、全ての測定対象ウェルについて「判定不能」とする。なお、閾値ITh−HETERO−P.C.(FAM)、ITh−HETERO−P.C.(RED)は、S501で設定される各種条件に含む。
【0072】
そして、S708の命題が満足されている場合には、その他測定対象ウェル(図6のB1〜B6ウェル、C1〜C6ウェル)各々について、SNPの有無と、そのSNPがホモ接合体であるかヘテロ接合体であるかを判定するためにステップS801(図8)に進む。
【0073】
S801では、(式12)、(式13)で表される蛍光強度ISamp(FAM)、ISamp(RED)を計算する。
(式12)
ISamp(FAM)=V´Samp(FAM)/V´Ref(FAM)
=(VSamp(FAM)−VDark(FAM))/(VRef(FAM)−VDark(FAM))
(式13)
ISamp(RED)=V´Samp(RED)/V´Ref(RED)
=(VSamp(RED)−VDark(RED)/(VRef(RED)−VDark(RED))
【0074】
S802では、(式12)、(式13)で計算したISamp(FAM)、ISamp(RED)の値に基づき、当該ウェルにおけるSNPの有無について判定する。すなわち、
「ISamp(FAM)が所定の閾値ITh−FAM−P.C.(FAM)以上、かつ、ISamp(RED)が所定の閾値ITh−FAM−P.C.(RED)未満」、又は、
「ISamp(FAM)が所定の閾値ITh−RED−P.C.(FAM)未満、かつ、ISamp(RED)が所定の閾値ITh−RED−P.C.(RED)以上」、又は、
「ISamp(FAM)が所定の閾値ITh−HETERO−P.C.(FAM)以上、かつ、ISamp(RED)が所定の閾値ITh−HETERO−P.C.(RED)以上」
のいずれかの命題を満足しているかどうかを確認し、もしどの命題も満足されていない場合は、当該ウェルにおけるSNPは「判定不能」とする。
【0075】
S803では、(式12)(式13)で計算したISamp(FAM)とISamp(RED)との比に基づき、当該ウェルにおけるSNPのタイプを判定する。すなわち、
「ISamp(FAM)/ISamp(RED)が所定の閾値ThFAM−HOMO以上」ならば、当該ウェルにおけるSNPタイプは「FAMのホモ型」と判定し、
「ISamp(FAM)/ISamp(RED)が所定の閾値ThFAM−HOMO未満」ならば、当該ウェルにおけるSNPタイプは「REDのホモ型」と判定し、
「ISamp(FAM)/ISamp(RED)が所定の閾値ThHETERO−MAX未満、かつ、所定の閾値ThHETERO−MIN以上」ならば、当該ウェルにおけるSNPタイプは「ヘテロ型」と判定し、
「ISamp(FAM)/ISamp(RED)が所定の閾値ThFAM−HOMO未満、かつ、所定の閾値ThHETERO−MAX未満」、又は、「ISamp(FAM)/ISamp(RED)が所定の閾値ThHETERO−MIN未満、かつ、所定の閾値ThRED−HOMO以上」ならば、当該ウェルにおけるSNPタイプは「判定不能」と判定する。なお、閾値ThFAM−HOMO、ThRED−HOMO、ThHETERO−MAX、ThHETERO−MINは、S501で設定される各種条件に含む。
【0076】
S804では、全測定対象ウェルについての判定が完了したかどうかを確認する。未了の場合は残りの測定対象ウェルについて上記S801〜S803のステップを繰り返し、完了の場合は図9〜図11に示した各種結果情報をモニタ106に表示し、図5のS510に進む。
【0077】
図9は、P.C.、N.C.を含む全測定対象ウェル各々について(式4)〜(式13)により算出された蛍光強度を示したグラフであり、P.C.、N.C.の蛍光強度により、測定対象物の劣化、遺伝子増幅反応を阻害する阻害物質、コンタミ混入による汚染などの影響の有無が確認でき、その他測定対象ウェルの蛍光強度により各ウェルについてのSNPの有無が確認できる。
【0078】
図10は、P.C.を含む全測定対象ウェル各々についての蛍光強度比を示したグラフであり、各ウェルがどのSNPタイプに判定されたかを確認できる。
【0079】
図11は、図9及び図10をまとめて表したグラフである。
【0080】
そして、S510では、チップ2を排出し、遺伝子解析装置1の一連の動作を完了する。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】装置構成の一例を示す図である。
【図2】2分岐ファイバの一例を示す概略図である。
【図3】本発明の一実施形態である、青色LEDおよび白色LED、各励起フィルタ及び各蛍光フィルタの分光特性を示す図である。
【図4】標準サンプルの一例を示す図である。
【図5】装置の動作の一例を示すフローチャート図である。
【図6】チップレイアウトの一例を示す図である。
【図7】データ処理のフローの一例を示すフローチャート図である。
【図8】データ処理のフローの一例を示すフローチャート図である。
【図9】データ処理の結果の一例を示す図である。
【図10】データ処理の結果の一例を示す図である。
【図11】データ処理の結果の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0082】
1 遺伝子解析装置
100 パーソナルコンピュータ
101 照明制御手段
102 温度制御手段
103 光電子増倍管制御手段
104 ファイバ移動手段
105 A/D変換手段
106 モニタ
2 チップ
21 ウェル
22 黒色無反射板
23 FAM用標準サンプル
231 蛍光プラスチック
232 NDフィルタ
24 RED用標準サンプル
241 蛍光プラスチック
242 NDフィルタ
201 励起光投光用ファイバ
202 蛍光受光用ファイバ
203 筒
3 励起照明照射手段
31 青色パワーLED
32 白色パワーLED
33 レンズ
34 FAM用励起フィルタ
35 レンズ
36 レンズ
37 RED用励起フィルタ
38 レンズ
4 2分岐ファイバ
41 投光用ファイバ
42 受光用ファイバ
5 2分岐ファイバ
51 投光用ファイバ
52 受光用ファイバ
6 蛍光検出手段
61 FAM用蛍光フィルタ
62 FAM用光電子増倍管
63 RED用蛍光フィルタ
64 RED用光電子増倍管
7 ファイバ保持手段
71 X軸方向移動機構
72 Y軸方向移動機構
73 Z軸方向移動機構
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のウェルが形成された試料容器の各ウェル内に収容されている試料が発する蛍光を検出する装置であって、
少なくとも2箇所以上のウェルに励起波長の異なる2種類の励起照明を同時に照射する励起照明照射手段と、
前記励起照明照射手段からの励起光を前記2箇所以上のウェル内に収容されている試料に同時に導光する2個以上の投光用ファイバと、
前記2箇所以上のウェル内に収容されている試料からの蛍光を同時に導光する2個以上の受光用ファイバと、
前記2個以上の受光用ファイバにより導光された蛍光波長の異なる2種類の蛍光を同時に検出する2個以上の蛍光検出手段と、
前記2個以上の投光用ファイバの出射側と前記2個以上の受光用ファイバの入射側を束ねた2分岐ファイバの先端部を保持する保持手段と、
前記保持手段を、互いに直交するXYZ3軸方向に移動するファイバ移動手段と、
を少なくとも具備することを特徴とする遺伝子解析装置。
【請求項2】
請求項1記載の遺伝子解析装置において、
前記励起照明照射手段は第一の波長帯域からなる励起光を選択する第一の励起フィルタと、第二の波長帯域からなる励起光を選択する第二の励起フィルタを含み、
前記蛍光検出手段は第一の第一の波長帯域からなる蛍光を選択する第一の蛍光フィルタと、第二の波長帯域からなる蛍光を選択する第二の蛍光フィルタを含み、
該第一の励起フィルタと、該第一の蛍光フィルタと、該第二の励起フィルタと、該第二の蛍光フィルタ各々の光透過波長域にクロストークが無いことを特徴とする遺伝子解析装置。
【請求項3】
請求項1記載の遺伝子解析装置において、
前記励起照明照射手段は、第一の波長帯域からなる光を発光する第一の光源と、第二の波長帯域からなる光を発光する第二の光源を含み、該第一の光源および該第二の光源は、順電流が100mA以上のパワーLEDであることを特徴とする遺伝子解析装置。
【請求項4】
前記第一の光源は青色LEDであり、第二の光源は白色LEDであることを特徴とする請求項3に記載の遺伝子解析装置。
【請求項5】
請求項1記載の遺伝子解析装置において、
前記2分岐ファイバの先端部の直径が、前記試料容器のウェルのピッチよりも小さいことを特徴とする遺伝子解析装置。
【請求項6】
請求項1記載の遺伝子解析装置において、
前記投光用ファイバ及び受光用ファイバが石英ファイバであることを特徴とする遺伝子解析装置。
【請求項7】
請求項1に記載の遺伝子解析装置において、
前記2分岐ファイバが100℃以上の耐熱性を有する耐熱PVCチューブで被覆されていることを特徴とする遺伝子解析装置。
【請求項8】
請求項1に記載の遺伝子解析装置において、
前記蛍光検出手段の感度校正のための黒色無反射板と、少なくとも2種類の標準サンプルを備えることを特徴とする遺伝子解析装置。
【請求項9】
前記標準サンプルは、蛍光プラスチック又は蛍光ガラスと、複数の光学濃度を有するNDフィルタとを構成要素に含むことを特徴とする請求項8に記載の遺伝子解析装置。
【請求項10】
前記標準サンプルからの蛍光強度に基づいて、前記励起照明照射手段及び/又は前記蛍光検出手段の寿命切れ及び/又は劣化状態を監視することを特徴とする請求項8または9のいずれかに記載の遺伝子解析装置。
【請求項1】
複数のウェルが形成された試料容器の各ウェル内に収容されている試料が発する蛍光を検出する装置であって、
少なくとも2箇所以上のウェルに励起波長の異なる2種類の励起照明を同時に照射する励起照明照射手段と、
前記励起照明照射手段からの励起光を前記2箇所以上のウェル内に収容されている試料に同時に導光する2個以上の投光用ファイバと、
前記2箇所以上のウェル内に収容されている試料からの蛍光を同時に導光する2個以上の受光用ファイバと、
前記2個以上の受光用ファイバにより導光された蛍光波長の異なる2種類の蛍光を同時に検出する2個以上の蛍光検出手段と、
前記2個以上の投光用ファイバの出射側と前記2個以上の受光用ファイバの入射側を束ねた2分岐ファイバの先端部を保持する保持手段と、
前記保持手段を、互いに直交するXYZ3軸方向に移動するファイバ移動手段と、
を少なくとも具備することを特徴とする遺伝子解析装置。
【請求項2】
請求項1記載の遺伝子解析装置において、
前記励起照明照射手段は第一の波長帯域からなる励起光を選択する第一の励起フィルタと、第二の波長帯域からなる励起光を選択する第二の励起フィルタを含み、
前記蛍光検出手段は第一の第一の波長帯域からなる蛍光を選択する第一の蛍光フィルタと、第二の波長帯域からなる蛍光を選択する第二の蛍光フィルタを含み、
該第一の励起フィルタと、該第一の蛍光フィルタと、該第二の励起フィルタと、該第二の蛍光フィルタ各々の光透過波長域にクロストークが無いことを特徴とする遺伝子解析装置。
【請求項3】
請求項1記載の遺伝子解析装置において、
前記励起照明照射手段は、第一の波長帯域からなる光を発光する第一の光源と、第二の波長帯域からなる光を発光する第二の光源を含み、該第一の光源および該第二の光源は、順電流が100mA以上のパワーLEDであることを特徴とする遺伝子解析装置。
【請求項4】
前記第一の光源は青色LEDであり、第二の光源は白色LEDであることを特徴とする請求項3に記載の遺伝子解析装置。
【請求項5】
請求項1記載の遺伝子解析装置において、
前記2分岐ファイバの先端部の直径が、前記試料容器のウェルのピッチよりも小さいことを特徴とする遺伝子解析装置。
【請求項6】
請求項1記載の遺伝子解析装置において、
前記投光用ファイバ及び受光用ファイバが石英ファイバであることを特徴とする遺伝子解析装置。
【請求項7】
請求項1に記載の遺伝子解析装置において、
前記2分岐ファイバが100℃以上の耐熱性を有する耐熱PVCチューブで被覆されていることを特徴とする遺伝子解析装置。
【請求項8】
請求項1に記載の遺伝子解析装置において、
前記蛍光検出手段の感度校正のための黒色無反射板と、少なくとも2種類の標準サンプルを備えることを特徴とする遺伝子解析装置。
【請求項9】
前記標準サンプルは、蛍光プラスチック又は蛍光ガラスと、複数の光学濃度を有するNDフィルタとを構成要素に含むことを特徴とする請求項8に記載の遺伝子解析装置。
【請求項10】
前記標準サンプルからの蛍光強度に基づいて、前記励起照明照射手段及び/又は前記蛍光検出手段の寿命切れ及び/又は劣化状態を監視することを特徴とする請求項8または9のいずれかに記載の遺伝子解析装置。
【図3】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図1】
【図2】
【図4】
【図6】
【図10】
【図11】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図1】
【図2】
【図4】
【図6】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−14379(P2009−14379A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−173872(P2007−173872)
【出願日】平成19年7月2日(2007.7.2)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月2日(2007.7.2)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
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