説明

避難用梯子

【課題】本発明は、避難用ハッチに装着して使用する梯子として、軽量で、操作並びに保守が容易な、部品点数を徹底的に削減し、かつ安全に使用できる避難用梯子を提供する。
【解決手段】左右一対の柱材と、前記一対の柱材の下端部の横桟取付部に装着された横桟とでなる同一形状の梯子部材を複数個前後方向に重ね合わせ上下方向に摺動自在にされてなる避難用梯子で、前記柱材が、下端部に横桟取付部を形成した縦長板状の主柱部と、主柱部の横桟取付部上方の内側面に連接して主柱部から後方に突出しかつ内側に傾斜した縦長板状の側柱部と、主柱部の外側辺に連接し前後に重ね合わされる柱材同士を摺動自在に係止する外側係止部、及び側柱部の内側辺に連接して設けられ、前後に重ね合わされる柱材同士を摺動自在に係止する内側係止部とで構成されてなる避難用梯子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は オフィスビルやマンションのベランダに設けられた避難用ハッチに常時は短縮して収納され、火災や地震発生時等の緊急避難時に延伸して上階から下階への避難に使用するスライド伸縮式の避難用梯子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オフィスビルやマンション等の建物には、火災や地震発生時等の緊急避難時に屋上やベランダのパラペットや窓枠等に懸架して、延伸・垂下して使用されるものや、ベランダ等に設置された避難用ハッチに常時収納され緊急避難時に垂下され上階から下階への避難路となるものとして、多様な構造の避難用梯子が考案され、使用されている。
例えば、特許第3757139号公報(特許文献1)には、
「横断面が同一の形状及び大きさに形成された複数枚の縦長板状の柱材(7)を前後方向へ重ね合わせて長手方向へ摺動自在とした伸縮式の左右の伸縮柱体(2)と、左右の伸縮柱体(2)間に長手方向に一定間隔毎に配設され、両端部が対向する左右の柱材(7)の一端部に夫々取り付けられた複数本の横桟(3)と、左右の伸縮柱体(2)の各柱材(7)を長手方向へ伸縮自在に連結すると共に、伸長状態になった伸縮柱体(2)の各柱材(7)が長手方向へ抜けるのを防止する連結機構(4)と、左右の伸縮柱体(2)の柱材(7)に後方へ突出する姿勢で取り付けられ、建物の壁面に当接し得る突子(5)とを具備した伸縮式の避難用梯子(1)に於いて、前記左右の伸縮柱体(2)の各柱材(7)は、横桟(3)の前面及び後面に平行で且つ横桟(3)の端部が取り付けられる縦長板状の取付け部(7a)と、取付け部(7a)の外側端に前方へ傾斜する姿勢で連設されて横桟(3)の端面に対向する縦長板状の外側耳部(7b)と、取付け部(7a)の内側端に後方へ傾斜する姿勢で連設された内側耳部(7c)と、外側耳部(7b)及び内側耳部(7c)の何れか一方又は両方に柱材(7)の長手方向に沿って形成された横断面が四角形で外側面が開放された係止溝(7f)及び係止溝(7f)を形成する一側の側壁の延長部分を横断面がコ字形に折り曲げした先端部から成る係止片(7g)とを備えた一定長さの金属製の押出し型材により形成されており、各柱材(7)を前後方向へ重ね合わせて長手方向へ摺動自在としたときに、取付け部(7a)同士、外側耳部(7b)同士及び内側耳部(7c)同士が夫々密接状に重ね合わされて各柱材(7)の両側端が夫々同一平面上に位置すると共に、前後に隣接する一方の柱材(7)の係止溝(7f)内に他方の柱材(7)の係止片(7g)が摺動自在に嵌合されて重ね合わされた各柱材(7)が分離しないようにし、又、前記各横桟(3)は、その両端部が対向する左右の各柱材(7)の取付け部(7a)の前面にボルト(8)及び袋ナット(9)により夫々取り付けられ、更に、前記連結機構(4)は、各柱材(7)の取付け部(7a)の前面に柱材(7)の長手方向に沿って夫々形成され、横断面が略T字形で且つ両端が開放されたガイド溝(7d)と、横桟(3)の両端部及び各柱材(7)の取付け部(7a)に前面側から挿通支持されたボルト(12)により各柱材(7)の取付け部(7a)の後面に夫々取り付けられ、前後に隣接する後側の柱材(7)のガイド溝(7d)に摺動自在に嵌合されてガイド溝(7d)の開口縁部に係止される抜け止め体(10)と、各柱材(7)のガイド溝(7d)内にボルト(14)により取り付けられ、伸縮柱体(2)の伸長時に抜け止め体(10)がガイド溝(7d)から抜けるのを阻止するストッパー(11)とから構成され、そして、前記突子(5)は、その両端部がストッパー(11)を柱材(7)へ取り付けるためのボルト(14)により対向する左右の柱材(7)の取付け部(7a)の後面に固定されていることを特徴とする伸縮式の避難梯子。」が開示されている。
そして明細書の段落〔0033〕〜〔0034〕及び〔図12〕、〔図13〕には、壁面に当接する突子のない避難用梯子による避難用ハッチでの実施例も記載されている。
この特許文献1に開示された避難用梯子は、それ以前の避難用梯子に比べれば部品点数の削減、組立の簡略化がなされているものの、連結機構においては、その明細書の〔図16〕に見られるように、まだ部品点数が多く、しかも、いずれもがボルトとナットにより取り付けられており、中でも断面T字形のガイド溝にストッパーを摺動可能に取り付ける工程では、ボルトの締め付け具合によってストッパーの摺動の滑らかさが変わるという作業上の問題がある。
また、この発明がオフィスやマンション、一般家屋等のベランダや外壁高所、屋上等に設置される避難用梯子を目的として行われたものであることから、避難者の足裏に当接する横桟の幅が25mmと設定されており、短縮時の形態がコンパクトになるよう、前記横桟の一部が上下に重なり合うようにして短縮される構成になされている。したがって、この避難用梯子を避難用ハッチに装着した場合にも、図12に見られるように短縮された避難用梯子の1段1段は前方に少しずつずれた形で重なって収容されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3757139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記背景技術に鑑みてなされたもので、避難用ハッチに装着して使用する梯子としての要件、すなわち、上階からすぐ下の階に避難するのに必要な長さと強度を備えていればよいこと、先端を支持して水平に収納保持するため軽量であること、操作並びに保守が容易であることを勘案し、部品点数を徹底的に削減しながらも安全に使用できる避難用梯子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は上記課題を下記の手段により解決した。
(1)左右一対の柱材と、前記一対の柱材の下端部にそれぞれ設けられた横桟取付部に装着された横桟とで構成された同一形状の梯子部材を複数個前後方向に重ね合わせて上下方向に摺動自在に構成された避難用梯子であって、
前記柱材が、下端部に前記横桟取付部を形成してなる縦長板状の主柱部と、
前記主柱部の横桟取付部より上方の内側辺に連接して、前記主柱部から後方に突出しかつ内側に傾斜して設けられ、前記縦長板状の主柱部の補強材となる縦長板状の側柱部と、
前記主柱部の外側辺に連接して設けられ、前後に重ね合わされる柱材同士を摺動自在に係止する外側係止部、及び前記側柱部の内側辺に連接して設けられ、前後に重ね合わされる柱材同士を摺動自在に係止する内側係止部とで構成されてなることを特徴とする避難用梯子。
【0006】
(2)前記主柱部と側柱部とが連接する前記主柱部の内側辺の上端部に、避難用梯子を延伸降下させたとき前方に重なり合う梯子部材の横桟の上面に当接して、後方に重なって降下する梯子部材が脱落するのを防止する、脱落防止部を突設してなることを特徴とする前項(1)に記載の避難用梯子。
【0007】
(3)前記外側係止部が、前記主柱部の外側辺に沿って後方に向けて連接された断面T字状でその頭部を第1の摺動片とする第1部材と、
前記主柱部の外側辺に沿って前方に向けて連接された断面がクランク状でかつその先端部が内側に短く曲げられ、その内側の開口部が、後述の第3部材とともに前方に重なる梯子部材の第1の摺動片を嵌合させる第1の摺動溝を構成する第2部材と、
前記主柱部の外側端部近傍に前方に向けて突設された断面鈎型の第3部材と、
そして前記第2部材の端辺に連接して前方に向かって短く延伸された後、外側に向けて直角に折り曲げられた部分と、更にこの外側に向けて直角に折り曲げられた部分の端辺から前方に向けて直角に折り曲げられその鈎状部分が第2の摺動片としてなる第4部材と、
前記外側に向けて直角に折り曲げたれた部分の中央部に後方に向かって突設された、先端が外側に曲がった断面鈎状の第5部材とで構成され、
前記第5部材と前記外側に向けて直角に折り曲げたれた部分とで後方に重なる梯子部材の第2の摺動片を嵌合させる第2の摺動溝が形成されてなり、
また、前記内側係止部が、前記側柱部の内側辺に内側に向けて連接された断面ロの字形の外側面の一部が開放されて第3の摺動溝を形成する第6部材と、
前記側柱部の端部近傍に内側に突出し、後方に重なり合う梯子部材の前記第3の摺動溝に嵌合する第3の摺動片となる断面鈎状の第7部材と
で形成されてなることを特徴とする前項(1)又は(2)に記載の避難用梯子。
【0008】
(4)前記柱材の主柱部、側柱部、外側係止部、内側係止部が、アルミ製の押し出し型材で一体として成型され、その後、主柱部下端部の横桟取付部、及び主柱部と側柱部が連接する前記主柱部の内側辺の上端部に設けられる脱落防止部脱落防止部を切削加工により形成されてなることを特徴とする前項(1)〜(3)のいずれれか1項に記載の避難用梯子。
【0009】
(5)前記柱材の下端に装着される横桟が、避難時に避難者の姿勢が後方に傾くことを考慮して、上面に連接して傾斜面が設けられ、その両面で足裏を支えるように、縦長の長方形の上部を後方に傾斜させた断面形状を有する長尺の筒状体であって、上面には滑り止めの溝が、傾斜面には滑り止めの凸条が設けられてなり、そして筒状体の中空部内には下面から、前記主柱部の横桟取付部が挿入される挿入溝を形成する突起が設けられ、かつ、両端近傍の背面には挿入された前記主柱部の横桟取付部に横桟を固定するねじを通すねじ挿通孔が設けられてなることを特徴とする前項(1)〜(4)のいずれれか1項に記載の避難用梯子。
【0010】
(6)前項(1)〜(5)に記載の避難用梯子が、避難用ハッチに装着して使用されるものであることを特徴とする避難用梯子。
【発明の効果】
【0011】
本発明の避難用梯子によって下記の効果が発揮される。
〈1〉本発明の避難用梯子が、左右一対の柱材と、前記一対の柱材の下端部にそれぞれ設けられた横桟取付部に装着された横桟とで構成された同一形状の梯子部材を複数個前後方向に重ね合わせて上下方向に摺動自在に構成され、かつ、前記柱材及び横桟がいずれもアルミ製の押し出し型材で一体として成型され、柱材下端部に設けた横桟取付部を、前記横桟の中空部に設けた横桟取付部挿入溝に挿入してねじ止めすることのみによって前記梯子部材が構成でき、また前記複数の梯子部材を前後方向に重ね合わせて連結して避難用梯子を構成した際、連結した梯子部材が前記避難用梯子の延伸降下によって脱落することを防止する脱落防止部が、主柱部と側柱部とが連接する前記主柱部の内側辺の上端部に、前方に重なり合う梯子部材の横桟の上面に当接するよう形成されているので、特許文献1に記載された発明における連結機構が複数の部品の組合せによって構成されているのに比べて特段に簡略化され、複雑な組立工程がなくなり、構造が簡易で量産に適し、均一な性能の避難用梯子が安価に製造できる。
【0012】
〈2〉本発明の避難用梯子の柱材が、下端部に前記横桟取付部を形成してなる縦長板状の主柱部と、前記主柱部の横桟取付部より上方の内側辺に連接して、前記主柱部から後方に突出しかつ内側に傾斜して設けられ、前記縦長板状の主柱部の補強材となる縦長板状の側柱部と、前記主柱部の外側辺に連接して設けられ、前後に重ね合わされる柱材を摺動自在に係止する外側係止部、及び前記側柱部の内側辺に連接して設けられ、前後に重ね合わされる柱材を摺動自在に係止する内側係止部とが、アルミ製の押し出し型材で一体として成型されているので、量産に適し、軽量で剛性に富んだ避難用梯子が安価に製造できる。
【0013】
〈3〉前記外側係止部が、前記主柱部の外側辺に沿って後方に向けて連接された断面T字状でその頭部を第1の摺動片とする第1部材と、
前記主柱部の外側辺に沿って前方に向けて連接された断面がクランク状でかつその先端部が内側に短く曲げられ、その内側の開口部が、後述の第3部材とともに前方に重なる梯子部材の第1の摺動片を嵌合させる第1の摺動溝を構成する第2部材と、
前記主柱部の外側端近傍に前方に向けて突設された断面鈎型の第3部材と、
そして前記第2部材の端辺に連接して前方に向かって短く延伸された後、外側に向けて直角に折り曲げられた部分と、更にこの外側に向けて直角に折り曲げられた部分から前方に向けて直角に折り曲げられその先端が内側に鈎状に折り曲げられその鈎状部分が第2の摺動片としてなる第4部材と、
前記外側に向けて直角に折り曲げたれた部分の中央部に後方に向かって突設された、先端が外側に曲がった断面鈎状の第5部材とで構成され、
前記第5部材と前記外側に向けて直角に折り曲げたれた部分とで後方に重なる梯子部材の第2の摺動片を嵌合する第2の摺動溝が形成されてなり、
また、前記内側係止部が、前記側柱部の端辺に内側に向けて連接された断面ロの字形の外側面の一部が開放されて第3の摺動溝を形成する第6部材と、
前記側柱部の端部近傍に内側に突出し、後方に重なり合う梯子部材の前記第3の摺動溝に嵌合する第3の摺動片となる断面鈎状の第7部材と
で形成されているので、
3個所の摺動溝に3つの摺動片が嵌合して摺動するため、避難用梯子の延伸降下、及び巻き上げ収納が安全確実に実施でき、避難時における避難用梯子の安全性も確保できる。
【0014】
〈4〉前記柱材の下端に装着される横桟が、避難時に避難者の姿勢が後方に傾くことを考慮して、上面に連接して傾斜面が設けられ、その両面で足裏を支えるように、縦長の長方形の上部を後方に傾斜させた断面形状を有する長尺の筒状体で構成されているので、前記横桟の上面幅を狭くすることができ、避難用梯子を短縮して避難用ハッチに収納した際、重なり合った複数の横桟の合計幅がハッチの高さ内に納まり、また避難用梯子の軽量化にも貢献できる。
そして上面の幅が狭められた横桟によって足裏に係る負担も、前記上面に連設して設けられた傾斜面によって緩和され、避難時において避難者の足裏に痛みを与えず、また上面のすべり止め溝、傾斜面のすべり止め凸条によっても、避難時の安全を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の避難用梯子を構成する梯子部材の正面図(a)と平面図(b)
【図2】本発明の避難用梯子の柱体の斜視図
【図3】図2の柱体の断面図(a)及び各係止部の嵌合状態図(b)
【図4】本発明の避難用梯子の横桟の斜視図
【図5】避難用梯子延伸垂下時の状態を示す正面図(一部省略)
【図6】本発明の実施例の避難用梯子の短縮状態を示す平面図
【図7】本避難用梯子の避難用ハッチへの適用実施例
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の避難用梯子を実施するための形態を、実施例の図に基づいて説明する。
図1は本発明の避難用梯子を構成する梯子部材の正面図(a)と平面図(b)、図2は本発明の避難用梯子の柱体の斜視図、図3は図2の柱体の断面図、図4は本発明の避難用梯子の横桟の斜視図、図5は本発明の避難用梯子延伸垂下時の状態を示す正面図(一部省略)、図6は本発明の避難用梯子短縮時の状態を示す平面図であり、図7は本避難用梯子の避難用ハッチへの適用実施例を示す。
図において1は梯子部材、2は柱材、2aは主柱部、2bは側柱部、2cは外側係止部、2dは内側係止部、2eは脱落防止部、2fは横桟取付部、21は第1部材、21aは第1の摺動片、21bは第1の摺動溝、22は第2部材、23は第3部材、24は第4部材、24aは第2の摺動片、24bは第2の摺動溝、25は第5部材、26は第6部材、26aは第3の摺動片、26bは第3の摺動溝、27は第7部材、28はねじ孔、3は横桟、3aは上面、3bは上向きの傾斜面、31はすべり止めの溝、32はすべり止めの凸条、33は突起、34は横桟取付部挿入溝、35はねじ挿通孔、4は避難用ハッチへの取り付けアームを、そしてAは主柱部の内側辺(主柱部と側柱部の連接部),Bは主柱部の外側辺(主柱部と外側係止部との連接部)、Cは側柱部の内側片(側柱部と内側係止部との連接部)を示す。
また、10は避難用ハッチ筐体、11は上蓋、12は下蓋、13は避難梯子取付具、15は緩降・巻き上げ装置、16はワイヤーを示す。
【0017】
本発明の避難用梯子は、図1に示すように、左右一対の柱材2と、前記一対の柱材2の下端部にそれぞれ設けられた横桟取付部2f(図2参照)に装着された横桟3とで構成された梯子部材1を複数個前後方向に重ね合わせて上下方向に摺動自在に構成されており(図6参照)、
そして前記柱材2は、図2の斜視図に示すように、その下端部に前記横桟取付部2fを形成してなる縦長板状の主柱部2aと、
前記主柱部2aの横桟取付部2fより上方の内側辺Aに連接して、前記主柱部2aから後方に突出しかつ内側に傾斜して設けられ、前記縦長板状の主柱部2aの補強材となる縦長板状の側柱部2bと、
前記主柱部2aの外側辺Bに連接して設けられ、前方に重ね合わされる柱材2を摺動自在に係止する外側係止部2c、及び前記側柱部2bの内側辺に連接して設けられ、前方に重ね合わされる柱材2を摺動自在に係止する内側係止部2dとで構成されている。
また、前記主柱部2aと側柱部2bとが連接する前記主柱部の内側辺Aの上端部に、避難用梯子を延伸降下させたとき前方に重なり合う梯子部材の横桟の上面に当接して、後方に重なって降下する梯子部材が脱落するのを防止する脱落防止部2eが突設されている。
【0018】
前記外側係止部2cは、図3(a)の柱材2の断面図に示すように、前記主柱部2aの外側辺Bに沿って内側に向けて連接された、断面T字状でその頭部を第1の摺動片21aとする第1部材21と、
前記主柱部2aの外側辺Bに沿って外側に向けて連接された断面がクランク状でかつその先端部が後方に短く曲げられ、その内側の開口部が、後述の第3部材23とともに後方に重なり合う梯子部材1の第1の摺動片21aを嵌合させる第1の摺動溝21bを構成する第2部材22と、
前記主柱部2aの前端部近傍に外側に向けて突設された断面鈎型の第3部材23と、
そして前記第2部材22の端辺に連接して前方に向かって短く延伸された後、外側に向けて直角に折り曲げられ、更に前方に向けて直角に折り曲げられその先端が内側に鈎状に折り曲げられその鈎状部分が第2の摺動片24aとしてなる第4部材24と、
前記第4部材24の外側に向けて直角に折り曲げたれた部分24cの内側面中央部に突設された、先端が外側に曲がった断面鈎状の第5部材25とで構成され
前記第2部材25と第4部材の外側に向けて直角に折り曲げたれた部分24cとで後方に重なる梯子部材1の第2摺動片24aを嵌合させる第2の摺動溝24bが形成されてなり、
また、前記内側係止部2dは、前記側柱部2bの内側辺Cに連接された断面ロの字形の外側面の一部が開放されて第3の摺動溝26bを形成する第6部材26と、前記側柱部2bの端部近傍に内側に突出し、後方に重なり合う梯子部材1の前記第3の摺動溝26bに嵌合する第3の摺動片26aとなる断面形状が鈎状の第7部材27とで形成されている。
なお、前後に重なり合う梯子部材1の外側係止部2c、及び内側係止部2dの各摺動片21a,24a、26aと各摺動溝21b、24b、26bとの嵌合状態を、図3(b)及び図6に示した。
【0019】
前記柱材2の下端に装着される横桟3は、図4に示すように避難時に避難者の姿勢が後方に傾くことを考慮して、上面3aに連接して傾斜面3bが設けられ、その両面3a、3bで避難者の足裏を支えるように、縦長の長方形の上部を後方に傾斜させた断面形状を有する長尺の筒状体であって、上面3aには滑り止めの溝31が、傾斜面3bには滑り止めの凸条32が設けられている。
そして筒状体の中空部内には、下面から、前記主柱部2aの横桟取付部2fが挿入される挿入溝34を形成する突起33が設けられ、かつ、その両端近傍の背面には前記挿入溝34に挿入された前記主柱部2aの横桟取付部2fに横桟3を固定するねじを通すねじ挿通孔35が設けられ、柱材2と横桟3とが、前記ねじ挿通孔35を介して挿通され、前記一対の柱材1の各横桟取付部2fにそれぞれ穿設されたねじ孔28に螺着される2本のねじのみによって装着できる構成となっており、梯子部材1の組立は極めて容易となっている。
【0020】
前記柱材2の主柱部2a、側柱部2b、外側係止部2c、内側係止部2dが、アルミ製の押し出し型材で一体として成型され、その後、主柱部2a下端部の横桟取付部2fと、及び主柱部2aと側柱部2bとが連接する前記主柱部の内側辺Aの上部に設けられた脱落防止部2eとが切削加工により形成され、また前記横桟3もアルミ製の押し出し型材で形成されており、前記柱材2と横桟3との取り付け構造と相まって、部品数が少なく製造が容易で軽量化された避難用梯子が形成されている。
【0021】
本避難用梯子の避難用ハッチへの取り付けは、図5に示すように、最上段となる短尺の柱材2’の主柱部2a’に固着された一対の取り付けアーム4によって行われる。
また、前記避難用梯子の最下段には、延伸降下した前記避難用梯子を短縮して避難用ハッチ筐体10内に収納するためのワイヤー16の先端を取り付ける巻上げワイヤー取付梁材3cが、前記左右一対の柱材2,2の背面側の中央部を繋ぐように渡されている。
【0022】
本発明の避難用梯子を避難用ハッチ10に収納した状態の一実施例を図7に示す。本実施例は別途出願した「被難用ハッチへの避難用梯子取付・支持装置」を介して避難用ハッチ筐体10に取り付けたものであるが、これに限られるものでなく、従来のように避難前記緩降・巻き上げ装置15を直接に避難用ハッチ筐体10に取り付け、また、避難用ハッチへの取付アーム4の先端を避難用ハッチ筐体10に設けられた避難用梯子取付具13に回動可能に軸着して延伸降下と巻き上げ収納ができるようにしてもよい。
本発明の避難用梯子を用いて避難する場合には、前記避難用ハッチの上蓋11と底蓋12(連動する)を開き、前記緩降・巻き上げ装置15のロックを解除すると、避難用ハッチへの取り付けアーム4が避難用梯子の自重によってその回動軸を中心に下方に向けて回動し、それに伴って重なり合っていた前記複数の梯子部材1が自重によって延伸降下する。この際一挙に降下すると階下の避難者に危険なことから、前記緩降・巻き上げ装置15の制動機構によってワイヤー16の延伸速度が制御されるので、上方の梯子部材から順次延伸する。
延伸した梯子部材1は、前記柱材2の主柱部2aと側柱部2bとが連接する前記主柱部の内側辺Aの上端部に設けられた脱落防止部2eが、前方に重なる梯子部材1の横桟3の上面に当接して停止するので降下する柱部材1が下方に脱落することがなく、安全に延伸降下し、確実に避難できるようになる。
なお、図7に示した実施例では、避難用梯子の降下延伸に伴って緩降・巻き上げ装置15が、上方に移動し避難用ハッチ筐体10の外方にはみ出すので避難時の障害となることはない。
延伸降下した避難用梯子を巻き上げ短縮して避難用ハッチの筐体10内に収納するには、前記緩降・巻き上げ装置15にハンドルを取り付けて巻き上げる。従来構造の避難用梯子は、巻き上げによって短縮した後、短縮した梯子の下端部を持ち上げて避難用ハッチ筐体10にロープやフックなどのロック機構によって係止するか、底蓋12を閉じることによって押し込むかが必要であるが、図7の実施例では、ワイヤー16の巻き上げによって、前記緩降・巻き上げ装置15が、避難用ハッチ筐体10内に降下するとともに避難用梯子の避難用ハッチへの取付アーム4がその回動軸を中心に上方に回動するので、避難用梯子の下端も上方に移動し、ワイヤー16を巻き上げるという一つの操作のみで避難用梯子の収納を行うことができる。
【符号の説明】
【0023】
1:梯子部材
2、2’:柱材
2a:主柱部
2b:側柱部
2c:外側係止部
2d:内側係止部
2e:脱落防止部
2f:横桟取付部
21:第1部材
21a:第1の摺動片
21b:第1の摺動溝
22:第2部材
23:第3部材
24:第4部材
24a:第2の摺動片
24b:第2の摺動溝
25:第5部材
26:第6部材
26a:第3の摺動片
26b:第3の摺動溝
27:第7部材
28:ねじ孔
3:横桟
3a:上面
3b:上向きの傾斜面
3c:ワイヤー取付梁材
31:すべり止めの溝
32:すべり止めの凸条
33:突起
34:横桟取付部挿入溝
35:ねじ挿通孔
4:避難用ハッチへの取付アーム
10:避難用ハッチ筐体
11:上蓋
12:下蓋
13:避難梯子取付具
15:緩降・巻き上げ装置
16:ワイヤー
A:主柱部の内側辺(主柱部と側柱部の連接部)
B:主柱部の外側辺(主柱部と外側係止部との連接部)
C:側柱部の内側辺(側柱部と内側係止部との連接部)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対の柱材(2)と、前記一対の柱材(2)の下端部にそれぞれ設けられた横桟取付部(2f)に装着された横桟(3)とで構成された同一形状の梯子部材(1)を複数個前後方向に重ね合わせて上下方向に摺動自在に構成された避難用梯子であって、
前記柱材(2)が、下端部に前記横桟取付部(2f)を形成してなる縦長板状の主柱部(2a)と、
前記主柱部(2a)の横桟取付部(2f)より上方の内側辺(A)に連接して前記主柱部(2a)から後方に突出し、かつ内側に傾斜して設けられ、前記縦長板状の主柱部(2a)の補強材となる縦長板状の側柱部(2b)と、
前記主柱部(2a)の外側辺(B)に連接して設けられ、前後に重ね合わされる柱材(2)同士を摺動自在に係止する外側係止部(2c)、及び前記側柱部(2b)の内側辺(C)に連接して設けられ、前後に重ね合わされる柱材(2)同士を摺動自在に係止する内側係止部(2d)とで構成されてなることを特徴とする避難用梯子。
【請求項2】
前記主柱部(2a)と側柱部(2b)とが連接する前記主柱部(2a)の内側辺(A)の上端部に、避難用梯子を延伸降下させたとき前方に重なり合う梯子部材(1)の横桟(3)の上面に当接して、後方に重なって降下する梯子部材(1)が脱落するのを防止する脱落防止部(2e)を突設してなることを特徴とする請求項1に記載の避難用梯子。
【請求項3】
前記外側係止部(2c)が、前記主柱部(2a)の外側辺(B)に沿って後方に向けて連接された断面T字状でその頭部を第1の摺動片(21a)とする第1部材(21)と、
前記主柱部(2a)の外側辺(B)に沿って前方に向けて連接された断面がクランク状でかつその先端部が内側に短く曲げられ、その内側の開口部が、後述の第3部材(23)とともに前方に重なる梯子部材(1)の第1の摺動片(21a)を嵌合させる第1の摺動溝(21b)を構成する第2部材(22)と、
前記主柱部(2a)の外側端部近傍に前方に向けて突設された断面鈎型の第3部材(23)と、
そして前記第2部材(22)の端辺に連接して前方に向かって短く延伸された後、外側に向けて直角に折り曲げられた部分(24c)と、更にこの外側に向けて直角に折り曲げられた部分(24c)の端辺から前方に向けて直角に折り曲げられその先端が内側に鈎状に折り曲げられその鈎状部分が第2の摺動片(24a)としてなる第4部材(24)と、
前記外側に向けて直角に折り曲げられた部分(24c)の中央部に後方に向かって突設された、先端が外側に曲がった断面鈎状の第5部材(25)とで構成され、
前記第5部材(25)と前記外側に向けて直角に折り曲げたれた部分(24c)とで後方に重なる梯子部材(1)の第2の摺動片(24a)を嵌合させる第2の摺動溝(24b)が形成されてなり、
また、前記内側係止部(2d)が、前記側柱部(2b)の内側辺(C)に内側に向けて連接された断面ロの字形の外側面の一部が開放されて第3の摺動溝(26b)を形成する第6部材(26)と、
前記側柱部(2b)の端部近傍に内側に突出し、後方に重なり合う梯子部材(1)の前記第3の摺動溝(26b)に嵌合する第3の摺動片(26a)となる断面鈎状の第7部材(27)と
で形成されてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の避難用梯子。
【請求項4】
前記柱材(2)の主柱部(2a)、側柱部(2b)、外側係止部(2c)、内側係止部2d)が、アルミ製の押し出し型材で一体として成型され、その後、主柱部(2a)下端部の横桟取付部(2f)、及び主柱部(2a)と側柱部(2b)とが連接する前記主柱部(2a)の内側辺(A)の上端部に設けられる脱落防止部(2e)を切削加工により形成されてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれれか1項に記載の避難用梯子。
【請求項5】
前記柱材(2)の下端に装着される横桟(3)が、避難時に避難者の姿勢が後方に傾くことを考慮して、上面に連接して傾斜面が設けられ、その両面で足裏を支えるように、縦長の長方形の上部を後方に傾斜させた断面形状を有する長尺の筒状体であって、上面(3a)には滑り止めの溝(31)が、傾斜面(3b)には滑り止めの凸条(32)が設けられてなり、そして筒状体の中空部内には下面から、前記主柱部の横桟取付部が挿入される挿入溝(34)を形成する突起(33)が設けられ、かつ、両端近傍の背面には挿入された前記主柱部(2a)の横桟取付部(2f)に横桟を固定するねじを通すねじ挿通孔(35)が設けられてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれれか1項に記載の避難用梯子。
【請求項6】
請求項1〜5に記載の避難用梯子が、避難用ハッチに装着して使用されるものであることを特徴とする避難用梯子。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−94578(P2013−94578A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242749(P2011−242749)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(306027736)株式会社 富士 (4)
【Fターム(参考)】