説明

還元処理装置及び還元処理方法

【課題】処理コストが低減される還元処理装置及び還元処理方法を提供する。
【解決手段】亜鉛含有酸化鉄又は酸化亜鉛又は酸化鉄が供給される還元炉2内に、還元材として効果的であると共に還元に必要な熱量を発生し加熱材として機能する廃棄物であるASR、家電シュレッダーダスト、廃プラスチック、廃棄物から得られるRDF、RPF、汚泥、油泥、木くず、繊維くず、ゴムくず、動植物性残渣のうちの少なくとも一つを供給し、これを熱源として助燃料を用いない状態で還元処理を行い、処理コストの低減(助燃料を用いない分のランニングコストの低減)を図りつつ、亜鉛を還元し且つ/又は酸化鉄を還元して金属鉄を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、亜鉛含有酸化鉄又は酸化亜鉛又は酸化鉄を還元処理する装置及び還元処理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、亜鉛含有酸化鉄を含む例えば製鉄所発生ダストを被処理物とし、この被処理物と、亜鉛含有酸化鉄中の亜鉛酸化物及び酸化鉄を還元する例えばコークス等の炭材(還元材)とを主体とする混合物原料を作製し、この混合物原料を炉内雰囲気温度が1100°C以上のロータリーキルンの炉内に装入して、重油・酸素バーナー(燃料燃焼装置)で加熱し、炭材により亜鉛含有酸化鉄中の亜鉛酸化物を還元しさらに蒸発させ、例えば高炉等の還元炉に装入可能な鉄含有物を得るロータリーキルンを用いた亜鉛含有酸化鉄の脱亜鉛方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−241850号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ここで、上記特許文献1のものにあっては、処理コストの低減が望まれている。また、還元処理の対象を亜鉛含有酸化鉄に代えて酸化亜鉛又は酸化鉄とした場合にも同様に、処理コストの低減が望まれている。
【0004】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、亜鉛含有酸化鉄又は酸化亜鉛又は酸化鉄、及び還元材を加熱処理することで亜鉛を還元し且つ/又は酸化鉄を還元し金属鉄を得る場合にあって処理コストの低減が可能とされる還元処理装置及び還元処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による還元処理装置は、還元炉で、亜鉛含有酸化鉄又は酸化亜鉛又は酸化鉄、及び還元材を加熱処理することで、亜鉛を還元し且つ/又は酸化鉄を還元し金属鉄を得る還元処理装置であって、還元炉は、還元材であると共に加熱材として、ASR、家電シュレッダーダスト、廃プラスチック、RDF、RPF、汚泥、油泥、木くず、繊維くず、ゴムくず、動植物性残渣のうちの少なくとも一つを導入し、これを熱源として助燃料を用いない状態で還元処理を行うことを特徴としている。
【0006】
また、本発明による還元処理方法は、還元炉で亜鉛含有酸化鉄又は酸化亜鉛又は酸化鉄、及び還元材を加熱処理することで、亜鉛を還元し且つ/又は酸化鉄を還元し金属鉄を得る還元処理方法であって、還元材であると共に加熱材として、ASR、家電シュレッダーダスト、廃プラスチック、RDF、RPF、汚泥、油泥、木くず、繊維くず、ゴムくず、動植物性残渣のうちの少なくとも一つを供給し、これを熱源として助燃料を用いない状態で還元処理を行うことを特徴としている。
【0007】
このような還元処理装置及び還元処理方法によれば、亜鉛含有酸化鉄又は酸化亜鉛又は酸化鉄が供給される還元炉内に、還元材として効果的であると共に還元に必要な熱量を発生し加熱材として機能する廃棄物であるASR、家電シュレッダーダスト、廃プラスチック、廃棄物から得られるRDF、RPF、汚泥、油泥、木くず、繊維くず、ゴムくず、動植物性残渣のうちの少なくとも一つが供給され、これを熱源として助燃料を用いない状態で還元処理が行われるため、処理コストの低減(助燃料を用いない分のランニングコストの低減)を図りつつ、亜鉛が還元され且つ/又は酸化鉄が還元されて金属鉄が得られる。
【0008】
ここで、還元炉としては種々のものが採用され得るが、シュレッダーダスト業者から排出された状態のASRであっても容易に投入できると共に、炉内に好適な還元雰囲気を形成できるロータリーキルンを採用するのが好ましい。
【0009】
また、還元炉には、Caを含む物資が供給されると、還元炉内の塩基度が上がり、還元炉内でのクリンカの生成が防止される。
【0010】
また、亜鉛含有酸化鉄又は酸化亜鉛又は酸化鉄は、造粒されてから還元炉に導入されると、飛灰率が低減され飛散防止効果が高められる。
【発明の効果】
【0011】
このように本発明によれば、処理コストの低減が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明による還元処理装置及び還元処理方法の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態に係る還元処理装置を備えた設備を示す構成図であり、ここでは、還元処理装置は、亜鉛含有酸化鉄の還元処理装置とされている。
【0013】
図1に示すように、設備100は、電炉(電気炉)1と、この電炉1の電炉ダストと還元材を導入して加熱処理するロータリーキルン(還元炉)2と、このロータリーキルン2の出口2fに連絡されて燃焼を完結させる二次燃焼塔3と、この二次燃焼塔3からの排ガスを導入して熱交換を行うボイラ(熱回収装置)4と、このボイラ4からの排ガスを冷却するガス冷却塔5と、このガス冷却塔5からの排ガスを導入し固気分離するサイクロン6と、このサイクロン6からの排ガス中のダストを捕集する前段バグフィルタ7aと、前段バグフィルタ7aからの排ガスに排ガス処理剤としての消石灰、活性炭を供給する排ガス処理剤供給装置10と、この排ガス処理剤の供給位置より下流に連絡されて前段バグフィルタ7aからの排ガス中のダストを捕集する後段バグフィルタ7bとを備えている。
【0014】
また、設備100は、ロータリーキルン2の出口2fから排出される排出物から鉄を選別する磁選機8と、この磁選機8で鉄が除去された排出物から銅を選別する銅選別機9とを備えている。
【0015】
電炉1は、例えば1500〜1700°Cの炉内温度で鉄スクラップを原料として溶融し鋼を製造するものであり、この電炉1からは飛灰として電炉ダストが発生する。この電炉ダストの代表的な性状を表1に示す。
【0016】
【表1】

【0017】
表1に示すように、電炉ダストは、鉄分全体(T−Fe)の含有率が22%程度、金属鉄(M−Fe)の含有率が0.8%程度、酸化鉄の含有率が30%程度、亜鉛の含有率が30%程度であり、多くの亜鉛含有酸化鉄を含有している。従って、電炉ダストは、このままの性状では廃棄物扱いで非鉄精錬所に引き取られることになる。
【0018】
ロータリーキルン2は、円筒形状の回転胴部2aを有して横置きされ、入口側となる前部(図示左側)から出口側となる後部(図示右側)に向かって下方に所定に傾斜するようにして配設されている。なお、ロータリーキルン2としては、水平置きされるものもある。このロータリーキルン2は、その胴部2aの前端部が固定部としての前支持部2bにより閉じられていると共に回転自在に支持され、その胴部2aの後端部が固定部としての二次燃焼塔3に挿入されて回転自在に支持されている。
【0019】
前支持部2bには、電炉1からの電炉ダストを炉内に導入する導入ダクト2cが貫設されると共に、例えば重油等の燃料を、炉内に導入される燃焼用空気を用いて燃焼する燃料燃焼装置2dが貫設されている。この燃料燃焼装置2dは、後述の炉内の還元温度となるように、炉の立ち上げ時において炉内を予熱するためのものであり、炉内が還元温度に昇温し処理が開始されると(実運転になると)、その駆動を停止する構成とされている。そして、炉内温度は、出口2f近くに設けられた温度センサ(温度情報取得手段)12により検出される。また、導入ダクト2cには、還元材供給装置2eが設けられている。この還元材供給装置2eは、ロータリーキルン2の運転を停止すること無く炉内に還元材を吹き込み所定位置に供給するものである。さらに、前支持部2bには、炉内に冷却水を噴霧するための冷却水噴霧装置13が貫設されている。
【0020】
また、ロータリーキルン2は、温度センサ12により検出される温度に基づいて、炉内の温度が一定となるように、冷却水噴霧装置13の駆動を制御する制御手段15を備えている。この制御手段15は、冷却水を冷却水噴霧装置13に供給するための冷却水ラインに設けられたバルブ14の開閉及びその開度を調整することで、噴霧量を制御し、炉内の温度を一定とする。
【0021】
ここで、上記還元材供給装置2eにより供給される還元材は、ここでは、ASR(自動車由来のシュレッダーダスト)であり、自動車リサイクル法から処理が義務づけられているものである。このASRは、未選または選別されたASRであり、代表的な性状を表2に示す。
【0022】
【表2】

【0023】
表2に示すように、ASRは、水素、炭化水素等の揮発分の含有率が50%程度と多く、固定炭素の含有率が4%程度と少ない。また、このASRには、比較的多くの銅が含まれている。
【0024】
これらの電炉ダスト、ASRが供給されるロータリーキルン2は、炉内を還元雰囲気とすべく出口2fの排ガス中O濃度が5%−dry以下となると共に、銅の溶融を防止すべく炉の還元温度が800〜1080°Cとなるように、実運転される。この温度による運転によって、ロータリーキルン2内では、固体還元(溶融させない固体状態での還元)が行われる。
【0025】
このようなロータリーキルン2にあっては、先ず、炉の立ち上げ時において、燃料燃焼装置2dが駆動され燃料を燃焼して高温の燃焼ガス及び火炎が発生し、これにより炉内を予熱し、炉内温度を800〜1080°Cに昇温させる。そして、炉内温度が800〜1080°Cに昇温したら、その駆動が停止され、実運転が開始される。
【0026】
この実運転にあっては、胴部2aが所定の速度で回転し、導入ダクト2cを介して炉内に供給された電炉ダストは、入口側から出口2fへ搬送されながら熱が与えられる。また、還元材供給装置2eを介して炉内に供給されたASRは熱が与えられて還元に必要な熱量を発生し、還元材及び加熱材として効果的に機能し、燃焼処理(加熱処理)が行われる。
【0027】
このASRの還元作用により、電炉ダスト中の亜鉛含有酸化鉄から亜鉛が還元されて分離すると共に酸化鉄が還元されて金属鉄が得られる。この時、炉の還元温度が1080°C以下とされているため、融点が1083°Cの銅が溶融し鉄に付着するということが防止される。また、炉の還元温度が800°C以上とされているため、金属化率(酸化鉄中の鉄分のうち金属鉄になる割合)及び脱亜鉛率(亜鉛の除去の割合)が共に高められる(還元性能が高められる)。
【0028】
図2は、炉内温度と金属化率、脱亜鉛率との関係を示す図である。この図にあっては、横軸がロータリーキルン2内の温度、縦軸が金属化率、脱亜鉛率の割合(%)であり、丸印が金属化率、四角印が脱亜鉛率を示している。図より明らかなように、炉内温度が800°C以上であれば、金属化率、脱亜鉛率が約40%以上と共に高められ満足いく還元性能となる。
【0029】
また、上記実運転時にあっては、上記熱源(加熱材;還元材)の性状に変動があった場合でも、制御手段15により冷却水噴霧装置13の駆動が制御されて炉内の温度が一定に維持される。このため、所望の還元処理が行われる。
【0030】
そして、鉄、銅を含む排出物は、出口2fから流下して排出される。一方、亜鉛含有酸化鉄から分離した亜鉛は揮発し微粒径のダストとして飛散し排ガスに随伴されて二次燃焼塔3のキルン出口2fより上方の二次燃焼室3aに向かう。
【0031】
ここで、電炉ダスト(亜鉛含有酸化鉄)とASRの配合比は、1:1〜1:10とするのが好ましく、1:4とするのが特に好ましい。
【0032】
キルン出口2fから排出された排出物は、磁選機8で鉄が選別され、当該鉄は、電炉1の原料として供される。この鉄は、前述したように、銅の溶融が無いため、品位低下が防止された原料として有効利用される。そして、この電炉ダスト1で生じる電炉ダストは、前述したように、ロータリーキルン2に供給され、これが繰り返される。
【0033】
また、キルン出口2fから排出され磁選機8で鉄が除去された排出物は、銅選別機9で銅が選別され、当該銅は、銅精錬所の原料として供されて有効利用される。
【0034】
一方、二次燃焼室3aでは排ガス中の未燃分が完全燃焼し、揮発した亜鉛は酸化亜鉛等となって亜鉛が濃縮された高亜鉛濃度のダストとして後段に向かう。
【0035】
このダストは排ガスと共にボイラ4を通り、この時、ボイラ4で熱回収が行われて熱源として有効利用が図られる。ボイラ4を通過した排ガスは、ガス冷却塔5で所定温度まで冷却されてからサイクロン6に至り、当該サイクロン6で固気分離が成されて所定の重さのダスト(固形物)が排ガスから分離されて捕集される。このサイクロン6で捕集されるダストは、高亜鉛濃度のダストである。
【0036】
一方、サイクロン6を通過した排ガスは、前段バグフィルタ7aを通り、この時、サイクロン6で捕集されなかったダストが前段バグフィルタ7aで捕集される。この前段バグフィルタ7aで捕集されるダストも、前述した高亜鉛濃度のダストである。
【0037】
この前段バグフィルタ7aを通過した排ガスに対しては、排ガス処理剤供給装置10から消石灰、活性炭が供給され、排ガス中の塩素分、硫黄分等の有害物質が消石灰と結合すると共に、排ガス中のダイオキシン等の有害物質が活性炭に吸着され、この有害物質と結合した消石灰及びダイオキシン等の有害物質を吸着した活性炭を含む排ガスは、後段バグフィルタ7bを通り、この時、消石灰物及び活性炭を含むダストが後段バグフィルタ7bで捕集される。この後段バグフィルタ7bで捕集されたダストは、埋め立て処理等に供され、後段バグフィルタ7bを通過し、脱塩、脱硫、脱ダイオキシンが成され清浄化されたガスは、後段の煙突11を介し大気に放出される。
【0038】
一方、サイクロン6及び前段バグフィルタ7aで捕集され回収された高亜鉛濃度のダストは、亜鉛濃度が50〜80%であるため、亜鉛精錬所の粗亜鉛鉱の原料として極めて有効に利用される。因みに、電炉1からの電炉ダストにあっては亜鉛濃度は30%程度である。
【0039】
なお、ここでは、ロータリーキルン2の後段にサイクロン6及び二段バグフィルタ7a,7bを設置し、サイクロン6及び前段バグフィルタ7aで、塩素分、硫黄分、排ガス処理剤を含まない高亜鉛濃度のダストを捕集し回収して亜鉛精錬所に供するようにしているが、ロータリーキルン2の後段にサイクロン6及び一段バグフィルタ7aを設置すると共に、サイクロン6とバグフィルタ7aとの間の排ガスラインに排ガス処理剤を供給するようにし、サイクロン6のみで、塩素分、硫黄分、排ガス処理剤を含まない高亜鉛濃度のダストを捕集し回収して亜鉛精錬所に供するようにしても良く、また、ロータリーキルン2の後段に二段バグフィルタ7a,7bのみを設置すると共に、バグフィルタ7a,7b間の排ガスラインに排ガス処理剤を供給するようにし、前段バグフィルタ7aのみで、塩素分、硫黄分、排ガス処理剤を含まない高亜鉛濃度のダストを捕集し回収して亜鉛精錬所に供するようにしても良く、要は、最下流のバグフィルタより上流で捕集したダストを亜鉛精錬所の原料として供することができ、亜鉛の有効利用が図られる。
【0040】
このように、本実施形態にあっては、亜鉛含有酸化鉄が供給されるロータリーキルン2内に、還元材として効果的であると共に還元に必要な熱量を発生し加熱材として機能する廃棄物であるASRを供給し、これを熱源として燃料燃焼装置2dを用いない、すなわち助燃料を用いない状態で、還元処理を行うようにしているため、処理コストの低減(助燃料を用いない分のランニングコストの低減)を図りつつ、亜鉛含有酸化鉄から亜鉛を還元して分離できると共に酸化鉄を還元して金属鉄を得ることができる。
【0041】
ここで、表1に示す性状の電炉ダスト、表2に示す性状のASRを用い、本発明者らが図1に示す設備で行った実験結果を表3に示す。表3は、ロータリーキルン2からの排出物の性状を示すものである。
【0042】
【表3】

【0043】
表3に示すように、排出物は、鉄分全体(T−Fe)の含有率が65%程度、金属鉄(M−Fe)の含有率が60%程度、酸化鉄の含有率が7%程度、亜鉛の含有率が2%程度であり、金属鉄の含有率が大幅に高められていると共に、亜鉛の含有率が大幅に低減されていることが確認された。
【0044】
なお、亜鉛含有酸化鉄を処理したロータリーキルン2を、例えば1200〜1300°C程度の酸化溶融炉として用い、排出物から鉄及び銅を除去した残渣を溶融するようにしても良く、このようにすると、酸化溶融炉であるロータリーキルン2からのスラグが、例えば道路用路盤材やコンクリート用骨材として有効利用される。
【0045】
ここで、排出物から鉄及び銅を除去した残渣には、カーボン、シリカ、アルミナ、カルシア等が多く含まれている。従って、排出物から鉄及び銅を除去した残渣を、電炉1に供給するようにしても良く、このようにすると、カーボンがコークス代替品(加炭材)とされて機能すると共にシリカ、アルミナ、カルシア等は溶融され、電炉1からのスラグが例えば道路用路盤材やコンクリート用骨材として有効利用される。
【0046】
また、ロータリーキルン2より排出された排出物を篩選別し、篩上の排出物のみから、磁選機8で鉄を、銅選別機9で銅を各々選別し、鉄を電炉1の原料として供し、銅を銅精錬所の原料として供するようにしても良く、このようにすると、選別された鉄及び銅が各々有効利用されると共に、鉄及び銅の取扱性(ハンドリング)が向上される。
【0047】
また、亜鉛含有酸化鉄を処理したロータリーキルン2を、例えば1200〜1300°C程度の酸化溶融炉として用い、排出物から鉄及び銅を除去した篩上の排出物を溶融するようにしても良く、このようにすると、酸化溶融炉であるロータリーキルン2からのスラグが、例えば道路用路盤材やコンクリート用骨材として有効利用されると共に、酸化溶融炉であるロータリーキルン2に供給する排出物の取扱性が向上される。
【0048】
さらにまた、排出物から鉄及び銅を除去した篩上の排出物を、電炉1に供給するようにしても良く、このようにすると、カーボンがコークス代替品(加炭材)とされて機能すると共にシリカ、アルミナ、カルシア等は溶融され、電炉1からのスラグが例えば道路用路盤材やコンクリート用骨材として有効利用され、且つ、電炉1に供給する排出物の取扱性が向上される。
【0049】
ところで、ASRは前述したように固定炭素が少なく揮発分が多いことから、固定炭素の固まりであるコークスとは相違する還元材の特性を有している。図3は、還元材であるASRの還元機能の経時変化をASRを追加供給した場合と共に示し且つコークスと比較して示す線図である。
【0050】
図3において、横軸は時間を表し、縦軸は金属化率(M−Fe/T−Fe)を表している。図中の実線は、950°Cの還元温度で電炉ダストとASRの配合比を1:4とした時の金属化率の経時変化を示し、図中の点線は、950°Cの還元温度で電炉ダストとASRの配合比を1:4とし、途中でASRを追加供給して電炉ダストとASRの配合比を1:10とした時の金属化率の経時変化を示している。なお、図中の一点鎖線は、コークスによるものを示している。
【0051】
図3に実線で示すように、ASRは、固定炭素が少なく揮発分が多いため、還元機能が働き始めるのは早いが、1〜3時間しか持続しないという特性がある。従って、ロータリーキルン2での亜鉛含有酸化鉄の滞留時間は、1〜3時間とするのが好ましい。
【0052】
また、図4は、排出物の亜鉛除去率の経時変化を示す線図である。図4において、横軸は時間を表し、縦軸は排出物の亜鉛除去率を表している。図中の実線は、950°Cの還元温度で電炉ダストとASRの配合比を1:4とした時の排出物の亜鉛除去率の経時変化を示している。図4に示すように、亜鉛除去率からも、ロータリーキルン2での亜鉛含有酸化鉄の滞留時間は、1〜3時間とするのが好ましい。
【0053】
このようにASRは、還元材としての機能が短いため、還元材としての機能を経時的に維持するには、ロータリーキルン2にASRを追加供給するのが好ましい。このようにASRを追加供給すると、図3に点線で示すように、還元機能が大幅に延びることが確認されている。このようにASRを追加供給する場合にあっては、ロータリーキルン2内のASRの機能が無くなっている箇所に上記還元材供給装置2eを用いてASRを吹き込むのが好ましい。
【0054】
また、ロータリーキルン2に、予めコークスを供給するようにしておくと、固定炭素の固まりであるコークスは、図3に示すようにASRと比較すると、還元機能が働き始めるのは遅いが長期間持続するという特性があるため、ASRが経時的に機能しなくなった後にあっても、コークスが還元材として長期間機能することになる。
【0055】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、上記実施形態においては、亜鉛含有酸化鉄が多く含まれる電炉ダストを被処理物とし、鉄及び亜鉛の回収率を高め回収した鉄及び亜鉛の効率的な有効利用を図るようにしているが、例えば、電炉付帯設備である廃水処理設備で発生するスラッジや、圧延設備で発生する圧延スケール等であっても良く、要は、亜鉛含有酸化鉄を含むものであれば良い。また、特に好適であるとして、還元対象を亜鉛含有酸化鉄としているが、亜鉛含有酸化鉄に代えて酸化亜鉛又は酸化鉄を還元対象とした場合にも同様に適用可能である。そして、酸化亜鉛の場合には、上記亜鉛含有酸化鉄の場合と同様に、亜鉛が還元されて高亜鉛濃度のダストとしての回収が可能とされ、また、酸化鉄の場合には、上記亜鉛含有酸化鉄の場合と同様に、酸化鉄が還元されて品位低下が防止された金属鉄としての回収が可能とされる。
【0056】
また、上記実施形態においては、自動車リサイクル法から処理が義務づけられていると共に銅が多く含まれているASRを還元材及び加熱材とし、自動車リサイクル法を満足すると共に特に金属鉄に対する銅の溶融付着を防止する上記実施形態の作用・効果を一層発揮させるようにしているが、還元材として効果的であると共に還元に必要な熱量を発生し加熱材として機能する廃棄物であるASR、家電シュレッダーダスト、廃プラスチック、廃棄物から得られるRDF(Refuse Derived Fuel)、RPF(Refuse Paper and Plastic Fuel)、汚泥、油泥、木くず、繊維くず、ゴムくず、動植物性残渣のうちの少なくとも一つを用いても良い。なお、これらは、RPFのように成形、均質化したものでなくても良く、また、ASRであれば、シュレッダーダスト業者から排出された状態のもので良い。そして、シュレッダーダスト業者から排出された状態のASRであっても、還元炉をロータリーキルン2とした場合には、当該ロータリーキルン2に容易に投入できる。
【0057】
また、シュレッダーダスト業者から排出された状態のASRであっても容易に投入できると共に炉内に好適な還元雰囲気を形成できる炉としてロータリーキルン2を用いているが、還元炉として機能する炉であれば、例えば、シャフト炉や、高温ガス化炉等であっても良い。
【0058】
また、還元炉に、例えば、生石灰、消石灰、石灰石等のCaを含む物資を供給するようにすると、還元炉内の塩基度が上がり、還元炉内でのクリンカの生成を防止することができる。
【0059】
さらにまた、還元炉に導入する亜鉛含有酸化鉄又は酸化亜鉛又は酸化鉄を、造粒してから還元炉に導入するようにすると、飛灰率を低減でき飛散防止効果を高めることができる。
【0060】
なお、上記実施形態においては、温度センサ12により直接炉内の温度を検出するようにしているが、温度に関する情報を取得できれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施形態に係る還元処理装置を備えた設備を示す構成図である。
【図2】炉内温度と金属化率、脱亜鉛率との関係を示す図である。
【図3】還元材であるASRの還元機能の経時変化をASRを追加供給した場合と共に示し且つコークスと比較して示す線図である。
【図4】排出物の亜鉛除去率の経時変化を示す線図である。
【符号の説明】
【0062】
2…ロータリーキルン(還元炉;還元処理装置)、2e…還元材供給装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
還元炉で、亜鉛含有酸化鉄又は酸化亜鉛又は酸化鉄、及び還元材を加熱処理することで、亜鉛を還元し且つ/又は酸化鉄を還元し金属鉄を得る還元処理装置であって、
前記還元炉は、
前記還元材であると共に加熱材として、ASR、家電シュレッダーダスト、廃プラスチック、RDF、RPF、汚泥、油泥、木くず、繊維くず、ゴムくず、動植物性残渣のうちの少なくとも一つを導入し、これを熱源として助燃料を用いない状態で還元処理を行うことを特徴とする還元処理装置。
【請求項2】
前記還元炉は、ロータリーキルンであることを特徴とする請求項1記載の還元処理装置。
【請求項3】
前記還元炉には、Caを含む物資が供給されることを特徴とする請求項1又は2記載の還元処理装置。
【請求項4】
前記亜鉛含有酸化鉄又は前記酸化亜鉛又は前記酸化鉄は、造粒されてから前記還元炉に導入されることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の還元処理装置。
【請求項5】
還元炉で亜鉛含有酸化鉄又は酸化亜鉛又は酸化鉄、及び還元材を加熱処理することで、亜鉛を還元し且つ/又は酸化鉄を還元し金属鉄を得る還元処理方法であって、
前記還元材であると共に加熱材として、ASR、家電シュレッダーダスト、廃プラスチック、RDF、RPF、汚泥、油泥、木くず、繊維くず、ゴムくず、動植物性残渣のうちの少なくとも一つを供給し、
これを熱源として助燃料を用いない状態で還元処理を行うことを特徴とする還元処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−297623(P2008−297623A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−148492(P2007−148492)
【出願日】平成19年6月4日(2007.6.4)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【出願人】(595131374)大阪製鐵株式会社 (17)
【Fターム(参考)】