説明

還元剤補給容器の収納装置

【課題】大幅なコスト増がなく、収納や取り出しが容易であり、かつじゃまにならず、品質悪化や盗難等のおそれがない還元剤補給容器の収納装置を実現する。
【解決手段】車両用座席シート50のバックシート背面52aに尿素水補給容器10の収納装置60を設けている。収納装置60は中央領域がバックシート52のフレーム56に螺着された弾性帯状体62からなる。弾性帯状体62の上下両端曲折部64,66は、バックシート52に対して外側に円弧状に曲折されている。尿素水補給容器10は、側面16に容器本体12と一体の円筒形状のグリップ部26が形成され、グリップ部26の外周面は容器本体12に対して縮径され、段差26a、26bが形成されている。上部曲折部64の幅Wは段差26a、26b間の間隔より小さく設定され、尿素水補給容器10が収納装置60に収納されたとき、上部曲折部64は段差26a、26b間に挿入される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に装備されたディーゼルエンジンの排気ガス浄化装置に用いる還元剤を収納し、携行できるようにした還元剤補給容器の収納装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トラック、バス等に装備されたディーゼルエンジンの排気ガス浄化装置として、排気ガス中の窒素酸化物(NOx)を浄化するために尿素を還元剤に用いたSCR(Selectve Catalytic Reduction)触媒を使用することが実用化されている。SCR触媒を用いた排気ガス浄化装置は、排気ガスが流通する排気管の途中に、酸素共存下でも選択的に排気ガス中の窒素酸化物(NOx)を還元剤と反応させる性質を備えたSCR触媒を設け、排気ガス中のNOxを選択的にSCR触媒に吸着させて清浄化するものである。
【0003】
SCR触媒上流側の排気通路中に尿素水を噴射し、該尿素水中の尿素を加水分解し還元剤であるアンモニア(NH)を生成して、アンモニアをSCR触媒に供給し、SCR触媒に吸着したNOxを還元して窒素と水に分解して排出させることで、NOxの排出濃度を低減させるものである。
【0004】
このようなSCR触媒を用いた排気ガス浄化装置を使用する車両においては、SCR触媒上流側の排気通路中に尿素水を噴射するため、尿素水を貯留する尿素水タンクを備えており、尿素水タンク内の尿素水がなくなると、専用設備を有したスタンド、販売店等で購入して供給する必要がある。
【0005】
しかし、尿素水は、販売店舗も限られており、燃料のように容易に入手することはできない。従って、ドライバーは尿素水がなくなるというリスクを少しでも低減するために、万一に備えて尿素水数リットルを入れた汎用の容器を車室内などに携行している場合も少なくない。そして、入手タイミングを逸した時には、容器内の尿素水を尿素水タンク内に補給するようにして、排ガス浄化装置の機能を確保するようにしている場合もある。
【0006】
かかる事情から、尿素水補給容器を車両内に装備しておく必要性が生じてきた。尿素水は、濃度を適正に管理する必要があると共に、高温下でアンモニアなどに分解して、強い臭いを発生するので、尿素水補給容器からの漏れを防止する必要がある。そのため、大幅なコスト増がなく、収納や取り出しが容易な収納装置を用い、かつじゃまにならず、品質悪化や盗難等のおそれがない車内収納場所を選定する必要がある。
【0007】
特許文献1には、バックシート背面にテーブル用凹部を形成し、かつカップホルダを備えた車両用座席シートが開示されている。この構成を図10で説明する。図10において、車両用座席シート100は、クッションシート104に対して、バックシート102がリクライニング可能に構成されている。バックシート背面102aには、テーブル用凹部106が形成されている。バックシート102をクッションシート104上に折り畳み、水平にした状態で、テーブル用凹部106が使用される。
【0008】
テーブル用凹部106の下端部を覆うように、下側リッド体108が、テーブル用凹部106の両側壁106a、106bの下端部に設けられた支軸を介して、側壁106a、106bに回動可能に設けられている。また、上側リッド体110が、テーブル用凹部106の上端部を覆うように、側壁106a、106bに回動可能に軸支されている。下側リッド体108には、2つの孔112が形成されて、これら孔はカップホルダーを構成している。
【0009】
かかる構成において、下側リッド体108がテーブル用凹部106と共にポケット部を形成し、雑誌等の物入れとして利用できる。また、バックシート102を折り畳んで、テーブル用凹部106をテーブルとして使用するときは、カップホルダー112にカップを嵌合保持できる。しかも下側リッド体108及び上側リッド体110をテーブル用凹部106の底壁106cに対して直立させることで、底壁106c上に置いた物が車両の走行中に移動したとしても、テーブル用凹部106から落下するのを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−114069号公開公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
車両用座席シートのバックシートは斜めに傾斜しており、バックシート背面は、デッドスペースが形成される。このデッドスペースが尿素水補給容器の保管場所のひとつとして考えられる。特許文献1に開示された座席シートのように、バックシート背面に凹部を形成し、該凹部に尿素水補給容器を収納するようにすれば、収納空間を大きく取ることができる。しかし、かかる凹部を形成するために、バックシートの大幅改造を必要とし、コスト増をまねく。
【0012】
尿素水補給容器をバックシート背面に吊り下げるようにすれば、尿素水補給容器の収納装置を低コストにできるが、車両の振動により、尿素水補給容器が揺動し、尿素水補給容器がバックシート背面に衝突して、尿素水に衝撃を与える。それによって、容器内で尿素水の蒸発を促進し、尿素水の濃度変化等に起因した品質低下をまねく。また、尿素水補給容器がバックシート背面にぶつかって騒音を発生するという問題がある。
【0013】
本発明は、かかる従来技術の課題に鑑み、還元剤補給容器を車両内に収納保管する場合に、大幅なコスト増がなく、収納や取り出しが容易であり、かつじゃまにならず、品質悪化や盗難等のおそれがない収納装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
かかる目的を達成するため、本発明の還元剤補給容器の収納装置は、車両の排気ガス浄化装置に用いる液体の還元剤を収納し、携行可能できるようにした還元剤補給容器の収納装置において、還元剤補給容器は直方体状に形成され、頂面にキャップが装着される還元剤注入出口を備えると共に、一側面に両端が容器本体と一体形成された筒状のグリップ部を備え、該グリップ部の外周面は容器本体より縮径され容器本体との境界で段差を形成してなり、車両内に設けられた座席シートのバックシート背面に装着され、上下両端がバックシート背面から外側に円弧状に曲折され、上下両端曲折部の少なくとも一方の幅がグリップ部の両端側に形成された段差間の間隔より小さく形成された弾性帯状体を備え、グリップ部に形成された段差間に前記一方の曲折部を挿入するようにしてグリップ部及びグリップ部と相対する容器本体の円弧状側面を上下両端曲折部で弾性的に把持するように構成したものである。
【0015】
本発明装置は、座席シートのバックシート背面に弾性帯状体を設けただけの簡単な構成であり、バックシート自体を改造する必要がないので、コスト増をまねかない。また、弾性帯状体の両端曲折部で形成された収納空間に還元剤補給容器を嵌合するだけであるので、収納や取り出しが極めて容易である。また、還元剤補給容器をバックシート背面のデッドスペースに収納するので、じゃまにならず、かつ盗難のおそれもない。
【0016】
また、還元剤補給容器を帯状体に帯状体の弾性力を付与した状態で把持固定させるので、車両の走行中、還元剤補給容器が揺動しない。そのため、容器内での還元剤の蒸発を抑制でき、濃度変化等に起因した還元剤の品質低下を抑制できる。また、尿素水補給容器がバックシート背面にぶつかって騒音を発生するという問題を解消できる。さらに、グリップ部に形成された段差間に上部曲折部のうちの一方を挿入するので、還元剤補給容器の左右方向へのずれを防止して還元剤補給容器を収納空間内に保持し続けることができる。
【0017】
本発明装置において、上部曲折部の被把持部材に対する巻回角を下部曲折部の被把持部材に対する巻回角より小さくするとよい。本発明装置では、下部曲折部が還元剤補給容器の重量を支え、上部曲折部が主として還元剤補給容器の収納装置からの脱落を防いでいる。そのため、下部曲折部の巻回角は大きくなくても還元剤補給容器の重量を支持できる。上部曲折部の巻回角を還元剤補給容器の巻回角より大きくすることで、還元剤補給容器の脱落を有効に防止できる。
【0018】
また、下部曲折部の巻回角を小さくしたことで、還元剤補給容器を上部曲折部の内側に先に挿入し、次に下部曲折部の内側に挿入する手順とする。還元剤補給容器を収納装置から取り出すときは、先に下部曲折部側から還元剤補給容器を取り出すようにする。これによって、還元剤補給容器の着脱が容易になる。
【0019】
本発明装置において、上部曲折部の巻回角を180°とし、下部曲折部の巻回角を180°未満とすれば、下部曲折部で還元剤補給容器の重量を支持し、上部曲折部で還元剤補給容器の脱落を有効に防止できる。また、前述の手順で還元剤補給容器を着脱させることで、還元剤補給容器の着脱を容易にできる。
【0020】
本発明装置において、上部曲折部の幅をグリップ部の段差間の間隔より小さく形成し、グリップ部の外周面を上部曲折部で把持するようにするとよい。グリップ部を上部曲折部に把持させることで、作業員がグリップ部を把持したまま、還元剤補給容器を収納空間内に挿入するのが容易になる。
【0021】
なお、弾性帯状体を弾性を有する樹脂で構成すれば、樹脂は軽量であるので、弾性帯状体をバックシート背面に装着するボルト等の支持荷重を低減できる。特に、エンジニアニングプラスチック等の高強度をもつ高質樹脂を用いれば、高い支持強度を得ることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明装置によれば、車両の排気ガス浄化装置に用いる液体の還元剤を収納し、携行可能できるようにした還元剤補給容器の収納装置において、還元剤補給容器は直方体状に形成され、頂面にキャップが装着される還元剤注入出口を備えると共に、一側面に両端が容器本体と一体形成された筒状のグリップ部を備え、該グリップ部の外周面は容器本体より縮径され容器本体との境界で段差を形成してなり、車両内に設けられた座席シートのバックシート背面に装着され、上下両端がバックシート背面から外側に円弧状に曲折され、上下両端曲折部の少なくとも一方の幅がグリップ部の両端側に形成された段差間の間隔より小さく形成された弾性帯状体を備え、グリップ部に形成された段差間に前記一方の曲折部を挿入するようにしてグリップ部及びグリップ部と相対する容器本体の円弧状側面を上下両端曲折部で弾性的に把持するように構成したので、バックシート自体を改造する必要がなく、コスト増をまねかず、かつ収納や取り出しが極めて容易であり、じゃまにならず、盗難のおそれもない。
【0023】
また、還元剤補給容器を弾性帯状体の弾性力を付与して固定するため、車両の走行中、還元剤補給容器が揺動しない。そのため、容器内での還元剤の蒸発を抑制でき、還元剤の品質低下を抑制できると共に、尿素水補給容器がバックシート背面にぶつかって騒音を発生するという問題を解消できる。さらに、グリップ部に形成された段差間に上部曲折部のうちの一方を挿入するので、還元剤補給容器の左右方向へのずれを防止して還元剤補給容器を収納空間内に保持し続けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明装置に収納される尿素水補給容器の斜視図である。
【図2】前記尿素水補給容器の正面視断面図である。
【図3】前記尿素水補給容器の尿素水補給時の断面図である。
【図4】前記尿素水補給容器の尿素水注出時の操作を示す説明図である。
【図5】本発明装置の一実施形態に係る収納装置の斜視図(尿素水補給容器収納前)である。
【図6】前記収納装置の取り付け方法を示す側面視説明図である。
【図7】前記収納装置の側面図(尿素水補給容器収納前)である。
【図8】前記収納装置の側面図(尿素水補給容器収納後)である。
【図9】前記収納装置の斜視図(尿素水補給容器収納後)である。
【図10】従来の車両用座席シートのバックシート背面の一構成例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではない。
【0026】
本発明装置の一実施形態を図1〜図9に基づいて説明する。図1において、本実施形態に係る尿素水補給容器10の容器本体12は、扁平な直方体をなし、最大面積を有する側面20に貫通空間24が形成され、側面20と交差する側面16側で、頂面14又は底面22と直交する方向に、円筒形状のグリップ部26が形成されている。側面16と相対する側面18の外周面は半円弧状に形成されている。
【0027】
図2に示すように、容器本体12の内部は、仕切壁32によって、尿素水貯留室28とノズル体44を収納するためのノズル体収納室30とに仕切られている。ノズル体収納室30はグリップ部26の内部で円筒形状の空間を形成している。側面18側の頂面14に、尿素水の注出又は注入を行なうための尿素水注入出口34が設けられ、側面16側の頂面14に、ノズル体46を出し入れするためのノズル体収納開口36が設けられている。グリップ部26の外周面は、容器本体12の接続部12a及び12bと比べて縮径されており、接続部12a、12bとグリップ部26の外側外周面との間に、段差26a及び26bが形成されている。
【0028】
頂面14の外面で、尿素水注入出口34の周囲に、外周面に外ネジ38aを形成した中空円筒体38が一体に設けられている。尿素水を尿素水貯留室28に注入又は注出する時以外、中空円筒体38には、内周面に内ネジ40aを形成したキャップ40が螺着され、尿素水注入出口34を密閉している。
【0029】
頂面14の外面で、ノズル体収納開口36の周囲に、外周面に外ネジ42aを形成した中空円筒体42が一体に設けられている。尿素水補給容器10から尿素水を注出する時以外、ノズル体収納室30にノズル体46が収納され、中空円筒体42には、内周面に内ネジ44aを形成したキャップ44が螺着され、ノズル体収納開口36を密閉している。ノズル体46は、軸方向に波形断面を形成した蛇腹状の中空筒状体からなり、折れ曲がりが容易になっている。ノズル体46の基端部48は中空円筒形状をなし、基端部48の内周面に内ネジ48aが形成されている。ノズル体収納開口36には、ノズル体46より大径の基端部48を受け止める受け部50が形成されている。
【0030】
ノズル体44はその基端部48から注出口がある先端部にかけて徐々に径が細くなる円錐形状をなし、屈曲しやすいように波形の蛇腹形状をなしている。基端部48の内ネジ48aはキャップ40の内ネジ40aと同径であり、中空円筒体38の外ネジ38aと螺合可能になっている。また、基端部48の外径はキャップ40の外径と同一である。
【0031】
尿素水を尿素水補給容器10から注出するとき以外、ノズル体44はノズル体収納室30内に収納される。ノズル体46をノズル体収納室30に収納するとき、図2に示すように、ノズル体46の先端部の注出口を下にし、受け部50で基端部48を受け止めるようにする。このように、受け部49を設けたことにより、ノズル体46がノズル体収納室30の底部に落下せず、かつノズル体収納室30の内壁に接触することなく、ノズル体46を安定収納できる。
【0032】
ノズル体収納室30はキャップ44で密閉されるため、尿素水補給容器10から尿素水を注出するために使用されたノズル体44がノズル体収納室30に収納され、ノズル体44に尿素水の残液が付着していた場合でも、尿素水がノズル体収納室30の外部へ流出又は放散することはない。また、ノズル体46はノズル体収納室30の内壁に接触しない状態で収納されるので、ノズル体46の付着した尿素水がノズル体収納室30の内壁に付着するおそれがない。
【0033】
図3は、尿素水補給容器10から尿素水を注出し、トラック、バス等に装備された尿素水タンクに尿素水タンクを補給するときの図である。キャップ44を開け、ノズル体46をノズル体収納室30から取り出す。次に、キャップ40を開け、ノズル体46の基端部48を中空円筒体38に螺着させる。キャップ40は、中空円筒体42の内部に嵌入させる。基端部48の外径はキャップ40の外径と同一であるので、キャップ40を中空円筒体42に嵌入させることができる。キャップ40を受け部49に係止させることで、キャップ40がノズル体収納室30に入り込まず、中空円筒体42の内側に保持できる。
【0034】
なお、中空円筒体42の高さはキャップ40の高さと略同等になっている。次に、キャップ40を中空円筒体42に螺着させる。これによって、尿素水の補給時に、中空円筒体38及び42の紛失を防止できる。
【0035】
次に、図4により、尿素水を尿素水補給容器10から注出するときの操作を説明する。図4において、図4(a)は、ノズル体46をノズル体収納室30から取り出すときの状態を示し、図4(b)は、尿素水注入出口34からキャップ40を外し、その後、尿素水注入出口34にノズル体46を装着した状態を示している。図4(c)では、作業員がグリップ部26を握り、容器本体12を略直角に傾け、尿素水をノズル体46から車両に装備された尿素水タンク外部へ注出している状態を示している。
【0036】
かかる構成の尿素水補給容器10によれば、作業員がグリップ部26を把持し、容器本体12を略直角に傾けるだけで、尿素水を容器外に注出できる。最後に、尿素水補給容器10の底部に残った尿素水も、グリップ部26を大きく傾けることのない楽な体勢で、容易に外部へ注出できる。
【0037】
図5は、トラックやバスの運転席に設けられた座席シート50を示す。座席シート50は、運転者が着座するクッションシート54とバックシート52とからなる。バックシート52の背面54aに、本実施形態に係る収納装置60が装着されている。収納装置60は、上下両端部64及び66がバックシート背面52aから離れる方向に円弧状に曲折された弾性帯状体62で構成されている。弾性帯状体62は弾性をもつ硬質性樹脂、例えば、硬質性のエンジニアリングプラスチック等で構成されている。
【0038】
図6に示すように、弾性帯状体62の中央平坦領域は、バックシート52の内部に埋設されたフレーム56に、バックシート52の外部から4本のボルト58で螺着されている。かかる固定手段によって、弾性帯状体62はバックシート52の背面52aに固定されている。弾性帯状体62は、長手方向に亘って同一幅Wを有している。弾性帯状体62の幅Wは、上部曲折部64がグリップ部26の段差26a、26b間に配置できるように、該段差間の間隔より少し小さく設定されている。
【0039】
図7に示すように、上下両端曲折部64及び66は、部分円弧状に形成されている。上部曲折部64の端部は、上部曲折部64の円弧中心Oの高さまで延設された半円弧状を形成している。即ち、上部曲折部64がグリップ部26の外周面を囲む巻回角θが180°となるように設定されている。一方、下部曲折部66は、端部が円弧中心Oの高さまで延設されていない。即ち、下部曲折部66の巻回角θが180°未満、例えば160°となるように設定されている。
【0040】
かかる構成において、尿素水補給容器10を収納装置60に収納するときは、図7に示すように、グリップ部26を上にして尿素水補給容器10を持ち、まず、グリップ部26を帯状体62の上部曲折部64内に挿入する。次に、図8に示すように、尿素水補給容器10の半円弧状側面18を下部曲折部66の内側に収納する。図9は、尿素水補給容器10を収納装置60に収納した後の状態を示す。
【0041】
本実施形態の収納装置60は、座席シート50のバックシート背面52に帯状体62を4個のボルト58で固定しただけの簡単な構成であり、バックシート自体を改造する必要がないので、設備費を低コストにできる。また、帯状体62の上下両端曲折部64,66で形成された収納空間に尿素水補給容器10を嵌合するだけで収納できるので、収納や取り出しが極めて容易である。また、尿素水補給容器10をバックシート背面52aのデッドスペースに収納するので、じゃまにならず、盗難のおそれもない。
【0042】
さらに、尿素水補給容器10を弾性帯状体62に弾性帯状体62の弾性力を付与した状態で把持固定しているので、車両の走行中、尿素水補給容器10が揺動しない。そのため、容器内での還元剤の蒸発を抑制でき、濃度変動等に起因した尿素水の品質低下を抑制できる。また、尿素水補給容器10がバックシート背面52aにぶつかって騒音を発生するという問題を解消できる。
【0043】
また、上部曲折部64の巻回角θを180°としたので、車両が振動しても、尿素水補給容器10のグリップ部26を強固に把持して、脱落を防止できる。また、下部曲折部66の巻回角θを160°としたので、下部曲折部66で尿素水補給容器10の重量を支持しながら、尿素水補給容器10の着脱を容易にできる。
また、上部曲折部64をグリップ部26の外周面に設けられた段差26a、26b間に挿入しているので、尿素水補給容器10の左右方向への移動を上部曲折部64で阻止でき、尿素水補給容器10の左右方向への脱落を有効に防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明によれば、座席シートのバックシート背面に、大幅な改造を要することなく、簡易かつ低コストで着脱の容易な還元剤補給容器の収納装置を設けることができる。
【符号の説明】
【0045】
10 尿素水補給容器
12 容器本体
14 頂面
16,18,20 側面
22 底面
24 貫通空間
26 グリップ部
28 尿素水貯留室
30 ノズル体収納室
32 仕切壁
34 尿素水注入出口
36 ノズル体収納開口
38,42 中空円筒体
38a、42a 外ネジ
40,44 キャップ
46 ノズル体
48 基端部
49 受け部
50,100 車両用座席シート
52、102 バックシート
52a、102a バックシート背面
54、104 クッションシート
56 フレーム
58 ボルト
60 収納装置
62 弾性帯状体
64 上部曲折部
66 下部曲折部
106 テーブル用凹部
106a、106b 側壁
106c 底壁
108 下側リッド体
110 上側リッド体
112 カップホルダー
,O 円弧中心
θ、θ 巻回角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の排気ガス浄化装置に用いる液体の還元剤を収納し、携行可能できるようにした還元剤補給容器の収納装置において、
前記還元剤補給容器は直方体状に形成され、頂面にキャップが装着される還元剤注入出口を備えると共に、一側面に両端が容器本体と一体形成された筒状のグリップ部を備え、該グリップ部の外周面は容器本体より縮径され容器本体との境界で段差を形成してなり、
車両内に設けられた座席シートのバックシート背面に装着され、上下両端がバックシート背面から外側に円弧状に曲折され、上下両端曲折部の少なくとも一方の幅がグリップ部の両端側に形成された段差間の間隔より小さく形成された弾性帯状体を備え、
グリップ部に形成された段差間に前記一方の曲折部を挿入するようにしてグリップ部及びグリップ部と相対する容器本体の円弧状側面を上下両端曲折部で弾性的に把持するように構成したことを特徴とする還元剤補給容器の収納装置。
【請求項2】
上部曲折部の被把持部材に対する巻回角を下部曲折部の被把持部材に対する巻回角より小さくしたことを特徴とする請求項1に記載の還元剤補給容器の収納装置。
【請求項3】
前記上部曲折部の巻回角を180°とし、前記下部曲折部の巻回角を180°未満としたことを特徴とする請求項2に記載の還元剤補給容器の収納装置。
【請求項4】
上部曲折部の幅を前記グリップ部の段差間の間隔より小さく形成し、グリップ部の外周面を上部曲折部で把持するようにしたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項に記載の還元剤補給容器の収納装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−161450(P2012−161450A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23718(P2011−23718)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(303002158)三菱ふそうトラック・バス株式会社 (1,037)
【Fターム(参考)】