説明

還元装置

【課題】高純度のケイ素を収集したり、二酸化炭素量を効果的に削減させたりする。
【解決手段】酸化マグネシウム、酸化カリウム又は酸化カルシウムなどの第1の酸化物と二酸化炭素又は一酸化ケイ素などの第2の酸化物との混合物又は化合物に対してレーザを照射することによって、前記第1又は第2の酸化物から酸素を脱理させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、還元装置に関し、特に、高純度のケイ素の生成、二酸化炭素の削減に好適な還元装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、本発明者らによる、再生可能なエネルギーを効率的に使用し、反応エネルギーを回収すると共に、水素ガスを生成する、水素生成装置が開示されている。この水素生成装置は、金属元素を保持する反応容器と、前記反応容器に水を供給するための貯水槽と、前記金属元素が前記水に接触する部分を加熱して前記金属元素を加熱するレーザと、前記金属元素と前記水との反応により生成した水素ガスおよび反応エネルギーを回収する水素取出管と、を含む、とされている。
【特許文献1】特開2007−145686号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、理論的には、一酸化ケイ素又は二酸化ケイ素などの酸化物に対して、所定条件下において、レーザなどを用いて沸点以上の温度をかけると、二酸化ケイ素等を構成するケイ素と酸素との結合が切断されつつ噴出し、加熱場所から分離することができる。したがって、係る場合には、半導体材料などに用いることができるケイ素を収集することができる。
【0004】
また、例えば、二酸化炭素についても、所定条件下において、レーザなどを用いて沸点以上の温度をかけると、炭素と酸素との結合が切断されつつ噴出し、加熱場所から分離することができる。したがって、係る場合には、地球温暖化の一因とも考えられている二酸化炭素量を削減することができるはずである。
【0005】
しかし、「所定条件」というものを選定することが困難であり、理論的にはともかく、現実的に、高純度のケイ素を収集するとか、二酸化炭素量を効果的に削減させるといったことは非常に困難である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、研究・実験の結果、上記の「所定条件」を見出すことに成功した。すなわち、本発明の還元装置は、第1の酸化物(例えば、酸化マグネシウム、酸化カリウム又は酸化カルシウム)と第2の酸化物(例えば、二酸化炭素又は一酸化ケイ素)との混合物又は化合物に対してレーザを照射することによって、前記第1又は第2の酸化物から酸素を脱理させるようにしている。
【0007】
すなわち、本発明は、典型的には、二酸化炭素又は一酸化ケイ素に対して、単にレーザを照射するのではなく、これに対して、酸化マグネシウム、酸化カリウム又は酸化カルシウムなどを混合又は化合した状態でレーザを照射することで、二酸化炭素或いは一酸化ケイ素、又は、酸化マグネシウム、酸化カリウム又は酸化カルシウムなどから酸素を脱理させる。
【0008】
より具体的には、例えば、第1の酸化物として酸化マグネシウムを選択し、かつ、第2の酸化物として酸化ケイ素を選択し、これらの混合物を作成した場合には、この混合物に所要の強度のレーザを照射すると、Mg、O、Siなどが発生する、つまり、高純度のケイ素(Si)を収集することができる。
【0009】
前記レーザは、太陽光を含むエネルギー源を利用する固体レーザ、気体レーザ、又は半導体レーザとすることもできる。こうすると、太陽光や自然エネルギーから生成したレーザの実現により、化石燃料に由来する電源を使用することなく、地球環境にやさしい新たな還元処理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態1のレーザ還元装置の模式的な構成図である。
【図2】本発明の実施形態2のレーザ還元装置の模式的な構成図である。
【図3】本発明の実施形態3のレーザ還元装置の模式的な構成図である。
【図4】酸化マグネシウムと一酸化ケイ素との混合割合とマグネシウム画分及びケイ素画分[質量%]とエネルギー効率[mg/kJ]との関係図である。
【図5】本発明の実施形態4のレーザ還元装置の模式的な構成図である。
【図6】図1の処理室1内の初期圧力[Pa]とマグネシウム画分[質量%]とエネルギー効率[mg/kJ]との関係図である。
【図7】酸化マグネシウムと一酸化ケイ素との混合割合と取得された球体状の高濃度ケイ素の総量との関係図である。
【符号の説明】
【0011】
1 処理室
2 入射窓
3 反射鏡
4 付着媒体
5 容器
7 捕集手段
9 レンズアレイ
【発明の実施の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、各図において、同様の部分には同一符号を付している。
【0013】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1のレーザ還元装置の模式的な構成図である。図1には、一般的にチャンバーとも称される処理室1が示されている。処理室1には、排気ポンプPが取り付けられていて、必要に応じて、処理室1内の排気が行われる。
【0014】
なお、処理室1には、図示しないガス導入管を設け、処理室1に対して、選択的に、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、ネオンガス、不活性ガスなどを導入することもできる。
【0015】
また、処理室1には、例えば円筒状の容器5が裁置されるステージ21が設けられている。容器5には、主として、例えば、第1の酸化物であるところの酸化マグネシウムと第2の酸化物であるところの一酸化ケイ素とを攪拌してなる混合物が収容される。
【0016】
本実施形態では、地球上に豊富に存在している二酸化ケイ素に対して、図1に示すレーザ還元装置を用いてレーザを照射することによって、一酸化ケイ素を生成している。したがって、容器5内の収容物は、例えば、第1の酸化物と第2の酸化物との混合物ではない二酸化ケイ素などになる場合もある。もっとも、第2の酸化物であるところの一酸化ケイ素の取得手法は、これに限定されるものではない。
【0017】
また、容器5内の収容物は、例えば、二酸化炭素を吸着した酸化マグネシウム、すなわち、二酸化炭素と酸化マグネシウムとの化合物とすることもできる。酸化マグネシウムは、二酸化炭素を吸着することが知られている。酸化マグネシウムを大気中に例えば数日間放置すれば、ここには大気中の二酸化炭素が吸着されることになる。本実施形態では、二酸化炭素を吸着した酸化マグネシウムに対してレーザを照射することによって、二酸化炭素を酸素と炭素とに分解して、二酸化炭素の削減を図ることも可能である。
【0018】
ここで、先に、二酸化ケイ素から一酸化ケイ素を生成する手法について概説する。容器5内に、二酸化ケイ素を収容し、この二酸化ケイ素に対して、スポット径の形成位置の温度がケイ素の沸点である2230度以上(例えば2500度〜5000度)となる条件で、レーザ照射装置Lからレーザを照射する。
【0019】
この結果、二酸化ケイ素から酸素が分離され、一酸化ケイ素が得られる。本実施形態では、こうして得られた一酸化ケイ素を、上記のように酸化マグネシウムなどと混合して、容器5に収容する。この混合割合は、一酸化ケイ素と酸化マグネシウムとの混合物からケイ素又はマグネシウムを効率よく抽出する際に重要である。この点は、実験結果とともに後述する。
【0020】
また、ステージ21には、ステージ21を回転させたり、ステージ21を昇降させたりするモータMが取り付けられている。ステージ21の回転は、容器5内の収容物に対して分散的にレーザを照射させるために行う処理である。
【0021】
ステージ21の昇降は、容器5内の収容物に対して同一のスポット径でレーザを照射させるために行う処理である。したがって、必ずしもこれらの処理を実行することは必須ではない点に留意されたい。
【0022】
容器5の上方には、所定距離Sの間隔で、二酸化ケイ素の蒸発物である一酸化ケイ素が付着される付着媒体4が配置されている。本実施形態では、蒸発物を、その冷却過程において、付着媒体4に衝突させることによって付着媒体4に付着させている。
【0023】
なお、図1では、板状の付着媒体4の採用例を示しているが、後述する他実施形態のように、種々の形状の付着媒体4を用いることができる。また、付着媒体4は、ここに付着する蒸発物の熱によって溶解されない耐熱条件を満たすものであれば、どのような材料のものを採用してもよい。本実施形態では、付着媒体4として、銅板を用いている。
【0024】
さらに、付着媒体4には、レーザ照射装置Lから照射されるレーザを遮断しないようにするための孔22が形成されている。図1では、孔22の形成角度をレーザと平行となるようにしているが、レーザが容器5内の収容物に到達さえすれば、この角度に限定されるものではない。
【0025】
ここで、所定距離Sは、容器5内の二酸化ケイ素から昇華した一酸化ケイ素蒸発物を効率よく、付着媒体4に付着可能な距離としている。具体例を示すと、ポンプPによって処理室1内を約6Paの真空度とし、付着媒体4の材料として銅を採用した場合には、所定距離Sは、例えば5mm〜15mm程度とすることができる。
【0026】
実際に実験をしたところ、所定距離Sが25mm以下であれば、非酸素蒸発物を付着媒体4に付着させることができた。所定距離Sが約7mm〜約14mmの場合には、約5mmの場合の2倍以上の効果が得られた。さらに、所定距離Sが約8mm〜約12mmの場合には、約5mmの場合の2.5倍以上の効果が得られた。
【0027】
一方、処理室1内に不活性ガス等を導入したり、処理室1内の圧力を低くしたりすることによって、処理室1内の酸素残存量を極めて少なくした場合には、処理室1の内壁を付着媒体として兼用することもできる。なお、係る場合には、ポンプPによる排気により、処理室1に取り付けられたポンプPの周辺に、蒸発物が付着することになる。
【0028】
また、処理室1の上部には、レーザ照射装置Lから照射されたレーザを処理室1内に取り込むために、既知の入射窓2が設けられている。また、レーザの光路には、レーザ照射装置Lから照射されたレーザの進路を、入射窓2に向けて変更する反射鏡3が設けられている。
【0029】
なお、少なくともレーザ照射装置Lと反射鏡3との間は、図示しない光ファイバなどを用いて接続するとよい。同様に、反射鏡3と入射窓2との間も、さらには、入射窓2と容器5付近との間も、光ファイバなどを用いて接続してもよい。こうすると、容器5内の収容物に到達するレーザの光損失を抑止することが可能となる。
【0030】
レーザ照射装置Lは、例えば数kWの固体レーザ、気体レーザ、又は半導体レーザを照射する照射装置を用いることができる。また、後述する種々の実験では、連続光炭酸ガスレーザーを照射する照射装置を用いた。
【0031】
ここで、レーザ照射装置Lを、太陽光を含むエネルギー源を利用する固体レーザ、気体レーザ、又は半導体レーザ照射装置とするとよい。この種のレーザ照射装置は、引用によって本願明細書に取り込まれたものとする、本出願時には非公開である本発明者らによって出願済みのPCT/2009/57671を参照されたい。
【0032】
また、レーザのkW数及びレーザのスポット径は、容器5内の収容物に与える温度を決定するため、これらの選択は重要である。具体的には、1kWのレーザで、かつ、スポット径を約2mmとした場合には、容器5内の収容物のスポット径の形成位置の温度は、約5000度となる。
【0033】
このことから、容器5内の二酸化ケイ素を蒸発させ、一酸化ケイ素と酸素とを効果的に分離させるためには、1kWのレーザを照射するレーザ照射装置Lを用いた場合には、スポット径が2mm以下となるように設定するとよい。
【0034】
好ましくは、1kWのレーザ照射装置Lを用いた場合に、スポット径を2mm以下とすれば、レーザ照射位置における二酸化ケイ素の膨張が容易となり、かつ、その後に、一酸化ケイ素を急激に冷却させることが可能となり、一酸化ケイ素を効率よく収集することができる。
【0035】
また、例えば、1kWのレーザ照射装置を用いて、2mmのスポット径となるように設定した場合には、レーザ照射位置における二酸化ケイ素を2cmまで膨張させられ、一酸化ケイ素はすぐに100度以下の温度まで冷却される。
【0036】
なお、レーザのkW数をレーザのスポット面積で除した値を一定に保つことで、容器5内の収容物のスポット径の形成位置の温度を略同一とすることができる。したがって、例えば、4kWのレーザを用いた場合、スポット径は約4mmとすればよい。
【0037】
図4は、酸化マグネシウムと一酸化ケイ素との混合割合とマグネシウム画分及びケイ素画分[質量%]とエネルギー効率[mg/kJ]との関係図である。図4の横軸には酸化マグネシウムと一酸化ケイ素との混合割合を示し、図4の右側縦軸にはマグネシウムのエネルギー効率[mg/kJ]を示し、図4の左側縦軸にはマグネシウム画分及びケイ素画分[質量%]を示している。
【0038】
図4に示すデータは、処理室1にアルゴンガスを流入し、処理室1内を1気圧とした条件で取得した。図4示すように、酸化マグネシウムに対する一酸化ケイ素の混合割合が増加するにつれて、付着媒体4である銅板に付着したケイ素の取得量は、リニアに増加することがわかる。したがって、ケイ素を効率よく取得するためには、酸化マグネシウムに対する一酸化ケイ素の混合割合を増加させるとよい。なお、図4には示していないが、[一酸化ケイ素/酸化マグネシウム]の混合割合を「1:2」、「1:3」と増加しても、ケイ素の取得量リニアな増加が確認できた。
【0039】
また、付着媒体4ではなく、ターゲット5側に、略球形状をした高純度のケイ素が得られた。この段階で、それらのケイ素の各々の成分を分析してみた。その分析結果を表1に示す。
【表1】

【0040】
表1に示すように、いずれも98%以上の高純度のケイ素であり、ここには、いずれも僅かな酸素が存在しているだけであった。他の成分は、検出限界を下回っているため、実質的には、高純度のケイ素に含有されていないといえよう。
【0041】
また、図4に示すように、酸化マグネシウムと一酸化ケイ素との混合割合は、マグネシウムの還元効率にも影響を及ぼすことがわかった。酸化マグネシウム:一酸化ケイ素=1:0.2〜0.3の場合には、マグネシウム画分は約20質量%であった。
【0042】
さらに、エネルギー効率は、マグネシウムの還元効率の変化と相関関係があるように見受けられる。
【0043】
以上の実験結果によれば、酸化マグネシウムと一酸化ケイ素との混合割合を調整することで、ケイ素の取得量を増減させること、および、マグネシウムの還元効率を変更できることがわかる。もっとも、既述のように、ケイ素の取得効率からすれば、酸化マグネシウムに対する一酸化ケイ素の混合割合が高いほどよいのであるから、用途に応じて、この混合割合を決定すればよい。なお、一酸化ケイ素と酸化マグネシウムとの混合は、一酸化ケイ素と酸化マグネシウムとの計量手段、及び、一酸化ケイ素と酸化マグネシウムとの攪拌機などを備える混合手段を用いるとよい。
【0044】
図6は、図1の処理室1内の初期圧力[Pa]とマグネシウム画分[質量%]とエネルギー効率[mg/kJ]との関係図である。大気雰囲気におけるマグネシウム画分に着目すると、処理室1内の初期圧力[Pa]が増加するにつれて、大気雰囲気のマグネシウム画分が低下していることがわかる。つぎに、大気雰囲気におけるエネルギー効率に着目してみると、同様に、処理室1内の初期圧力[Pa]が増加するにつれて、大気雰囲気におけるエネルギー効率が低下していることがわかる。
【0045】
一方、アルゴン雰囲気におけるマグネシウム画分の場合には、処理室1内の初期圧力[Pa]が増加するにつれて、アルゴン雰囲気のマグネシウム画分が増加していることがわかる。また、アルゴン雰囲気におけるエネルギー効率は、処理室1内の初期圧力[Pa]の影響をさほど受けないように見受けられる。
【0046】
図6によれば、大気雰囲気での処理よりも、アルゴン雰囲気での処理の方が、マグネシウムを効果的に収集することが可能であること、及び、処理室1内の初期圧力が増加すればするほどマグネシウムを効果的に収集することが可能であることがわかる。
【0047】
図7は、酸化マグネシウムと一酸化ケイ素との混合割合とターゲット5で取得された球体状の高濃度ケイ素の総量との関係図である。まず、図7に付記してあるように、高濃度ケイ素の球体は容器5内の酸化マグネシウムと一酸化ケイ素との混合物の表面に表出し、その略直径は酸化マグネシウムと一酸化ケイ素の割合が1:1程度では200μm程度であり、その割合が増加するにつれ直径は増加し、酸化マグネシウムと一酸化ケイ素の割合が1:3では1mmとなった。このケイ素の球体の純度を測定した結果、99%以上であった。
【0048】
そして、図7から明らかなように、酸化マグネシウムに対する一酸化ケイ素の混合割合を増加させるにつれて、高濃度ケイ素の総量も増加する。図7から予測されることは、更に、当該混合割合を増加させることによって、より多くの高濃度ケイ素の球体を取得できるものと思われる。
【0049】
(実施形態2)
図2は、本発明の実施形態2のレーザ還元装置の模式的な構成図である。図2には、図1のものに対して、
(1)付着媒体4の形状を1枚板状のものから、2枚の円盤状のものに変更し、
(2)円盤状の付着媒体4を回転可能とし、それに伴い、付着媒体4に連結されたモータM1を設ける、
といった点の変形を行ったレーザ還元装置を示している。
【0050】
付着媒体4を回転可能とすると、付着媒体4に対して均一に一酸化ケイ素を付着させることが可能となる。付着媒体4の回転速度は、例えば、1rpm〜20rpm程度とすればよい。
【0051】
(実施形態3)
図3は、本発明の実施形態3のレーザ還元装置の模式的な構成図である。図3には、図1のものに対して、
(1)レーザ照射装置Lを複数設け、
(2)複数のレーザ照射装置Lを設けたことに伴って、各レーザ照射装置Lから照射されるレーザを容器5内の収容物に集光させるためのレンズアレイ9を処理室1に取り付け、
(3)付着媒体4を回転可能な円筒状のものに変更し、
(4)円筒状の付着媒体4の採用に伴って、レーザが容器5内の収容物に照射されるように、ステージ21を水平方向に移動可能なものとし、
(5)付着媒体4に付着した蒸発物を捕集する捕集手段7を設ける、
といった点の変形を行ったレーザ還元装置を示している。
【0052】
まず、レーザ照射装置Lを複数設けることによって、容器5内の収容物の蒸発量を増大させることが可能となる。したがって、図3に示すレーザ還元装置は、図1に示したものに比して、蒸発物の収集効率が高まる。このため、本実施形態では、付着媒体4における蒸発物の付着面積を増加させるために、付着媒体4は、表面積が相対的に大きな円筒状のものを採用している。
【0053】
また、容器5内の収容物の蒸発量が増大した場合、付着媒体4に対して、所定量の蒸発物が付着するまでに要する時間は短くなる。そこで、蒸発物の付着効率を低下させないため、本実施形態では、付着媒体4に付着した蒸発物を、捕集手段7によって捕集するようにしている。
【0054】
捕集手段7の構成は不問であるが、一例としては、円筒状の付着媒体4の表面から数mm程度の間隔で、蒸発物の凝縮を促す冷却機構を選択的に備える、捕集プレートを設置することで構成できる。この捕集プレートは、鋭利な端面を有するとよい。こうすれば、その間隔を超えて付着媒体4の表面に蒸発物が付着した場合には、その蒸発物が捕集プレートによって付着媒体4から研ぎ落されるため、蒸発物の捕集が可能となる。
【0055】
(実施形態4)
図5は、本発明の実施形態4のレーザ還元装置の模式的な構成図である。図5には、図1のものに対して、
(1)不活性ガス等の導入管の先端が容器5の上面付近となるように設置し、
(2)導入管の先端に対して、容器5を挟んで対向側に、複数の波状のプレートからなる付着媒体4を配置する、
といった点の変形を行ったレーザ還元装置を示している。
【0056】
導入管から容器5内に不活性ガス等を導入しながら、レーザ照射装置Lによってレーザを照射すると、容器5内の収容物の蒸発物は、導入された不活性ガス等によって、付着媒体4に向けて進路が変更される。
【0057】
付着媒体4は複数の波状のプレートから構成されているため、不活性ガス等自体はプレート間を抜けていくことになる。この際、各プレートは、波状であるため凹凸が形成されているところ、凸部に対して容器5内の収容物の蒸発物が衝突することで、付着媒体4に蒸発物が付着することになる。
【0058】
なお、図5に示す付着媒体4の構造は単なる例示であって、ディーゼルフィルターのような構造のものを用いることも可能である。もっとも、ディーゼルフィルターの場合には、不活性ガスと蒸発物とが通過しにくいので、波状のプレートのように、蒸発物が衝突する部分と不活性ガスが通過する部分とを含む構造であることが望ましい。
【0059】
本実施形態では、主として、酸化マグネシウムと一酸化ケイ素との混合物を処理対象とした場合を例に説明したが、酸化マグネシウムに代えて、酸化カリウム又は酸化カルシウムを用いることができる。また、一酸化ケイ素に代えて、二酸化炭素を用いることで、二酸化炭素を削減することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、レーザを用いた還元装置の分野で利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の酸化物と第2の酸化物との混合物又は化合物に対してレーザを照射することによって、前記第1又は第2の酸化物から酸素を脱理させる還元装置。
【請求項2】
前記第1の酸化物は、酸化マグネシウム、酸化カリウム又は酸化カルシウムである、請求項1記載の還元装置。
【請求項3】
前記第2の酸化物は、二酸化炭素又は一酸化ケイ素である、請求項1記載の還元装置。
【請求項4】
前記第2の酸化物は、二酸化ケイ素に対してレーザを照射することによって酸素を離脱させることによって生成された一酸化ケイ素である、請求項1記載の還元装置。
【請求項5】
前記第1の酸化物と前記第2の酸化物とを所定割合で混合することによって、前記混合物を生成する混合手段を備える、請求項1記載の還元装置。
【請求項6】
前記レーザは、前記混合物又は化合物に対してその沸点以上の温度を加える条件で照射される、還元装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図5】
image rotate

【図4】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−255291(P2011−255291A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−130701(P2010−130701)
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【出願人】(509199409)株式会社エレクトラホールディングス (6)
【Fターム(参考)】