説明

還元鉄装入装置

【課題】溶解炉に還元鉄を少量ずつ投入でき、高温還元鉄に適用しても温度低下や酸化を防止することができるうえ、走行レールとして曲線部分を有する湾曲レールを使用してもスキップコンベアの傾斜を防止することができる還元鉄装入装置を提供する。
【解決手段】回転炉床炉1にて製造された高温還元鉄を溶解炉4に装入する還元鉄装入装置であって、前記回転炉床炉から還元鉄を受け入れて、走行レール3上をワイヤで牽引されるスキップコンベア2を有し、該スキップコンベアには、耐火物からなる内貼りが設けられていることを特徴とする還元鉄装入装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転炉床炉にて製造された高温還元鉄を溶解炉に装入する還元鉄装入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄系酸化物を回転炉床炉にて加熱還元して製造された高温還元鉄を溶解炉に装入する還元鉄装入装置に関しては従来から種々の提案がなされており、例えば、WO01/018256号公報には、第63図に、還元鉄を入れた底開きコンテナをクレーンで溶解炉に吊上げて装入する方法が開示されている。
しかし、WO01/018256号公報に開示されている方法は、クレーンハンドリングで時間がかかるため、1回の装入量を多くする必要があり溶解炉の操業変動が大きいうえ、クレーンを設置するための設備コストが高いという問題点があった。
【0003】
そこで、従来、高炉原料の装入用に用いられていたスキップコンベアを使用する方法が考えられるが、従来のスキップコンベアは、常温の原料を対象としていたため、還元鉄のような1000℃程度の高温の還元鉄には適用できないうえ、設置スペースの制約から走行レールとして曲線部分を有する湾曲レールを使用する場合に、スキップコンベアが傾斜して還元鉄がこぼれ落ちるという問題点があった。
【特許文献1】WO01/018256号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前述のような従来技術の問題点を解決し、溶解炉に還元鉄を少量ずつ投入でき、高温還元鉄に適用しても温度低下や酸化を防止することができるうえ、走行レールとして曲線部分を有する湾曲レールを使用してもスキップコンベアの傾斜を防止することができる還元鉄装入装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、前述の課題を解決するために鋭意検討の結果、スキップコンベアの構造を工夫することによって、溶解炉に還元鉄を少量ずつ投入でき、高温還元鉄に適用しても温度低下や酸化を防止することができるうえ、走行レールとして曲線部分を有する湾曲レールを使用してもスキップコンベアの傾斜を防止することができる還元鉄装入装置を提供するものであり、その要旨とするところは特許請求の範囲に記載した通りの下記内容である。
(1)回転炉床炉にて製造された高温還元鉄を溶解炉に装入する還元鉄装入装置であって、前記回転炉床炉から還元鉄を受け入れて、走行レール上をワイヤで牽引されるスキップコンベアを有し、
該スキップコンベアには、耐火物からなる内貼りが設けられていることを特徴とする還元鉄装入装置。
(2)該スキップコンベアに、走行中に外気の侵入を防止する蓋が設けられていることを特徴とする還元鉄装入装置。
(3)前記走行レールが曲線部分を有する湾曲レールであり、該湾曲レール上を走行するスキップコンベアの傾斜防止機構を有することを特徴とする(1)または(2)に記載の還元鉄装入装置。
(4)前記傾斜防止機構が、前記スキップコンベアの前輪用走行レールと後輪用走行レールとを有し、該前輪用走行レールと後輪用走行レールの設置高さを変えることにより前記スキップコンベアの傾斜を防止する機構であることを特徴とする(1)乃至(3)に記載の還元鉄装入装置。
(5)前記傾斜防止機構が、前記スキップコンベアが自重によって、支持軸を中心として回転する機構であることを特徴とする(1)乃至(3)に記載の還元鉄装入装置。
(6)回転炉床炉にて製造された高温還元鉄を溶解炉に装入する還元鉄装入装置であって、前記溶解炉の装入口にベル型シールを有し、該ベル型シールが水冷されていることを特徴とする還元鉄装入装置。
(7)前記溶解炉の装入口にベル型シールを有し、該ベル型シールが水冷されていることを特徴とする(1)乃至(5)に記載の還元鉄装入装置。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、スキップコンベアの構造を工夫することによって、溶解炉に還元鉄を少量ずつ投入でき、高温還元鉄に適用しても温度低下や酸化を防止することができるうえ、走行レールとして曲線部分を有する湾曲レールを使用してもスキップコンベアの傾斜を防止することができる還元鉄装入装置を提供することができるなど産業上有用な著しい効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
発明を実施するための最良の形態について、図1乃至図8を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明における還元鉄装入装置の全体図である。
図1において、1は回転炉床炉(RHF)、2はスキップコンベア、3は走行レール、4は溶解炉を示す。
通称RHFと呼ばれる回転炉床炉1で製造されたペレット状の還元鉄は排出口からスキップコンベア2に入れられ、このスキップコンベア2は走行レール3上をワイヤで牽引されて、溶解炉4の上部に搬送された後に転倒されて、溶解炉に装入される。
前記還元鉄は、回転炉床炉1の出口から溶解炉4の装入口で1000℃程度の高温である。
【0008】
本発明は、回転炉床炉1にて製造された高温還元鉄を溶解炉4に装入する還元鉄装入装置であって、前記回転炉床炉1から還元鉄を受け入れて、走行レール3上をワイヤで牽引されるスキップコンベア2を有し、
該スキップコンベア2には、耐火物からなる内貼りが設けられていることを特徴とする。また、必要に応じて走行中に外気の侵入を防止する蓋を設ける。
従来、スキップコンベアは、高炉に原料を装入するコンベアとして使用されていたが、製銑用の原料は常温であるため、耐熱性を必要としないうえ、酸化を防止する必要もなかったので密閉する機構を設けていなかった。
しかし、高温の還元鉄を溶解炉に装入する場合には、耐熱性と保温性が必要であるうえ、搬送途中での再酸化を防止する必要がある。
そこで、本発明に用いるスキップコンベア2の内面には、耐火物からなる内貼り16を設けることによって、耐熱性と保温性を確保することができる。
【0009】
また、スキップコンベア2には必要に応じて蓋を設け、外気を遮断して密閉することにより還元鉄の再酸化を防止することができる。
さらに、スキップコンベア2によって、還元鉄を少量ずつ溶解炉4に装入することができるので、溶解炉4の操業変動を小さくすることができ、溶解炉中の湯面がスロッピングしにくいうえ、排ガス量も変動しにくいので排ガス処理が容易にできる。
【0010】
<第1の実施形態>
図2乃至図4は、本発明における還元鉄装入装置の第1の実施形態を示す図である。
図2乃至図4において、2はスキップコンベア、3は走行レール、5 はワイヤ、6はドラム、7はテンションロール、8は押えレール、9は 前輪、10は後輪を示す。
図2に示すように、スキップコンベア2は、RHFから還元鉄を受け入れ、ワイヤ5に牽引されて図2の右下から左上に走行する。
なお、ワイヤ5の中間には、ワイヤ5を巻き付けるドラム6と、ワイヤ5の張力を調整するテンションロールが設けられている。
本実施形態は、スキップコンベア2を走行させる走行レール3が曲線部分を有する湾曲レールである場合に、2本の走行レール3を設けることにより、スキップコンベアの傾斜を防止するものである。
(なお、図2ではスキップコンベアの側面形状が台形と長方形の両方を併記しているが、何れの場合も本願発明例であり、これらの形状は本発明例に限定されるものではない。)
【0011】
本発明の還元鉄装入装置の設置環境によっては、スキップコンベア2を走行させる走行レール3を直線状に設置することができない場合があり、走行レール3を曲線部分を有する湾曲レールにするとスキップコンベア2が傾斜して還元鉄がこぼれ落ちてしまう。
そこで、本実施形態においては、スキップコンベア2の前輪用走行レールと後輪用走行レールとを設け、該前輪用走行レールと後輪用走行レールの設置高さを変えることにより前記スキップコンベアの傾斜を防止する機構を設けることを特徴とする。
例えば、走行レール3の前半の傾斜角θ1が、設置スペースの制約上、後段の傾斜角θ2より小さくする必要がある場合、走行レール3を上下2本設け、上段の走行レールをスキップコンベア2の前輪9に用い、下段の走行レールをスキップコンベア2の後輪10に用いることにより前輪9を持ち上げることによって、走行レールが湾曲していてもスキップコンベア2の傾斜を防止することができる。
【0012】
図3は、本発明の第1の実施形態に用いるスキップコンベアの転倒機構を示す図である。
図3において、2はスキップコンベア、3は走行レール、8は押えレール、9は前輪、10は後輪を示す。
還元鉄を溶解炉に装入する装入口においては、スキップコンベア2の後輪8を押える押えロールを設け、後輪10を持ち上げることによってスキップコンベア2を転倒させて、還元鉄を溶解炉に装入することができる。
図4は、本発明の第1の実施形態に用いるスキップコンベアの前輪および後輪の構造を示す図であり、図2のA矢視図である。
図4において、3は走行レール、9は前輪、10は後輪を示す。
図4に示すように、前輪9と後輪10を設置高さの異なる走行レール3上を走行させることによって、スキップコンベアの傾斜を防止することができる。
【0013】
<第2の実施形態>
図5乃至図7は、本発明における還元鉄装入装置の第2の実施形態を示す図である。
図5乃至図7において、2はスキップコンベア、3は走行レール、5 はワイヤ、6はドラム、7はテンションロール、8は押えレール、9は 前輪、10は後輪、13は支持軸を示す。
図5に示すように、スキップコンベア2は、RHFから還元鉄を受け入れ、ワイヤ5に牽引されて図5の右下から左上に走行する。
なお、ワイヤ5の中間には、ワイヤ5を巻き付けるドラム6と、ワイヤ5の張力を調整するテンションロールが設けられている。
本実施形態は、スキップコンベア2を走行させる走行レール3が曲線部分を有する湾曲レールである場合に、スキップコンベア2に支持軸13を設けることにより、スキップコンベアの傾斜を防止するものである。
本発明の還元鉄装入装置の設置環境によっては、スキップコンベア2を走行させる走行レール3を直線状に設置することができない場合があり、走行レール3を曲線部分を有する湾曲レールにするとスキップコンベア2が傾斜して還元鉄がこぼれ落ちてしまう。
そこで、本実施形態においては、前記スキップコンベア2が自重によって、支持軸13を中心として回転する機構を設けることによって前記スキップコンベアの傾斜を防止することを特徴とする。
【0014】
例えば、走行レール3の前半の傾斜角θ1が、設置スペースの制約上、後段の傾斜角θ2より小さくする必要がある場合、スキップコンベア2に支持軸13を設けることにより、スキップコンベア2の自重によって支持軸13が回転し、スキップコンベア2が観覧車のように常時同じ姿勢を保つことができるので、走行レールが湾曲していてもスキップコンベア2の傾斜を防止することができる。
また、傾斜変化部分にはガイド11を設置しスキップコンベアの正立を保持することも可能である。
【0015】
図6は、本発明の第2の実施形態に用いるスキップコンベアの転倒機構を示す図である。
図6において、2はスキップコンベア、3は走行レール、8は押えレール、9は前輪、10は後輪、13は支持軸を示す。
還元鉄を溶解炉に装入する装入口においては、スキップコンベア2の後輪8を押える押えロールを設け、後輪10を持ち上げることによってスキップコンベア2を転倒させて、還元鉄を溶解炉に装入することができる。
図7は、本発明の第2の実施形態に用いるスキップコンベアの支持軸の構造を示す図である。
図7に示すように、スキップコンベアの自重によって自由に回転する支持軸13を設けることによって、スキップコンベアが常に同じ姿勢を保つことができる構造となっており、この支持軸13が磨耗した場合には軸受け部分だけを交換できるようにボルト締め構造とすることが好ましい。
【0016】
<第3の実施形態>
図8は、本発明における還元鉄装入装置の第3の実施形態を示す図である。
図8において、2はスキップコンベア、14,14´はフラップ型シール、15はベル型シールを示す。
本実施形態は、スキップコンベア2を転倒させて還元鉄を溶解炉に装入する装入口にシール構造を設けるものである。
1000℃程度の高温の還元鉄を溶解炉に装入する装入口においては、溶解炉の発生する可燃性ガスが外部に漏洩すること、あるいは外気が発生ガスに混入することを防止するため、シール性に優れ、高温の還元鉄に耐える耐熱性を有するシール装置を設ける必要がある。
そこで、本実施形態においては、前記溶解炉の装入口に、従来のフラップ型シール14、14´に加えて、ベル型シール15を設け、該ベル型シール15が水冷されていることを特徴とする。
【0017】
図8に示すように、本実施形態に用いるベル型シール15は、斜めに広がったベル型のシール装置であって、矢印で示すように上下方向に移動することによって、傾斜したコーン部分全体でシールすることができるのでシール面積が大きく、極めてシール性に優れているうえ、安息角を確保することができ粉溜りがなくなるので還元鉄の粉の噛み込みを防止することができる。
また、シール性能をさらに高めるために窒素ガスによるN2パージを行うとともに、シール内に冷却水を循環させて水冷することで高温に耐えるシール構造にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明における還元鉄装入装置の全体図である。
【図2】本発明における還元鉄装入装置の第1の実施形態を示す図である。
【図3】本発明における還元鉄装入装置の第1の実施形態を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に用いるスキップコンベアの前輪および後輪の構造を示す図であり、図2のA矢視図である。
【図5】本発明における還元鉄装入装置の第2の実施形態を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に用いるスキップコンベアの転倒機構を示す図である。
【図7】本発明における還元鉄装入装置の第2の実施形態を示す図である。
【図8】本発明における還元鉄装入装置の第3の実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0019】
1 回転炉床炉(RHF)
2 スキップコンベア
3 走行レール
4 溶解炉
5 ワイヤ
6 ドラム
7 テンションロール
8 押えレール
9 前輪
10 後輪
11 ガイド
13 支持軸
14,14´ フラップ型シール
15 ベル型シール
16 内貼り
17 軸受け部
18 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転炉床炉にて製造された高温還元鉄を溶解炉に装入する還元鉄装入装置であって、
前記回転炉床炉から還元鉄を受け入れて、走行レール上をワイヤで牽引されるスキップコンベアを有し、
該スキップコンベアには、耐火物からなる内貼りが設けられていることを特徴とする還元鉄装入装置。
【請求項2】
該スキップコンベアに、走行中に外気の侵入を防止する蓋が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の還元鉄装入装置。
【請求項3】
前記走行レールが曲線部分を有する湾曲レールであり、該湾曲レール上を走行するスキップコンベアの傾斜防止機構を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の還元鉄装入装置。
【請求項4】
前記傾斜防止機構が、前記スキップコンベアの前輪用走行レールと後輪用走行レールとを有し、該前輪用走行レールと後輪用走行レールの設置高さを変えることにより前記スキップコンベアの傾斜を防止する機構であることを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の還元鉄装入装置。
【請求項5】
前記傾斜防止機構が、前記スキップコンベアが自重によって、支持軸を中心として回転する機構であることを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の還元鉄装入装置。
【請求項6】
回転炉床炉にて製造された高温還元鉄を溶解炉に装入する還元鉄装入装置であって、前記溶解炉の装入口にベル型シールを有し、該ベル型シールが水冷されていることを特徴とする還元鉄装入装置。
【請求項7】
前記溶解炉の装入口にベル型シールを有し、該ベル型シールが水冷されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5に記載の還元鉄装入装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−105544(P2006−105544A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−295477(P2004−295477)
【出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】