説明

還流式紙葉類収納庫

【課題】 構成を複雑化することなく、しかも優れた紙葉類還流機能を有しながら、紙葉類を縦向き立設状態で横方向に積層することができる還流式紙葉類収納庫を提供する。
【解決手段】 紙葉類出入れ機構3は、主として紙葉類収容部2に進入してくる紙葉類を受入れる為のエンドレスの低摩擦ベルト10と、主として払出される紙葉類を分離給紙するためのエンドレスの高摩擦ベルト11と、各ベルトをエンドレスに張設しつつ正逆両方向に走行させるローラ群とを備え、低摩擦ベルトが紙葉類収容部に対面する受入れ走行面は紙葉類を受入れるための前方へ突出した位置と紙葉類を送り出すために後方へ退避した位置との間を進退可能に構成されており、高摩擦ベルトの払出し走行面の上部は対向ローラと常時接しており、払出し走行面の上部と該対向ローラとの間で進入及び払出される紙葉類をガイドする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動販売機、自動両替機、金銭払出し装置等の紙葉類取扱装置に用いられる還流式紙葉類収納庫の改良に関し、投入された紙幣等の紙葉類を金種別、種類別に仕分けながら受入れると共に、受入れた紙幣等を払出すことができる還流式紙葉類収納庫に関する。
【0002】
【従来の技術】紙幣等の紙葉類を受入れたり払出す機構を備えた紙幣取扱装置にあっては、装置内に受入れて一旦金庫内に収納した紙幣等を払出し用として金庫外へ払出す還流方式が採用されることが多い。従来の還流式の金庫は、受入れた紙幣を水平な姿勢で積層して収納する上下積層タイプが大半であり、このタイプの金庫にあっては紙幣を積載する台座を金庫内において上下動可能に支持し、金庫上部に位置する受入れ口から新たな紙幣が搬入されてくる時には台座を受入れ口よりも下方へ退避させて台座上の最上部の紙幣と受入れ口との間隔を十分に大きく確保することにより、新紙幣を台座上の紙幣上に堆積させる必要があった。このように受入れ時に台座を下方へ退避させる理由は、受入れ口から搬入されてきた紙幣を自然落下させて台座上の紙幣上に載置する際に、折れやカール癖に起因したふくらみを防止する為の押え機構を上下動させるスペースを確保する必要があるからである。換言すれば、少ない堆積枚数であっても、紙幣に折れ癖やカール癖があると、大きく上方にふくらんでしまい、後続の紙幣の収容を妨げる虞れがある為、癖のついた紙幣を押えてふくらみを矯正する必要があるからである。しかしながら、このように構成すると、必然的に金庫の上下方向寸法が増大し、このような金庫を用いた自動販売機等の紙幣取扱装置の大型化を招くという欠点があり、この点の改善が求められていた。このような不具合は、紙幣の収納方向を従来の上下方向積層タイプから、紙幣を縦方向に立設させて横方向に積層したタイプに変更することにより、改善が可能であるが、コンパクトかつ簡単な構成で還流式の機能を実現できる金庫(紙葉類収納庫)はこれまで開発されていなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようとする課題は、自動販売機等の紙葉類取扱装置に用いられる還流式の金庫(収納庫)において、構成を複雑化することなく、しかも優れた紙葉類還流機能を有しながら、紙葉類を縦向き立設状態で横方向に積層することができる還流式紙葉類収納庫を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記課題を達成するため、請求項1の発明は、上方から進入してくる紙葉類を紙葉類収容部に受入れると共に、紙葉類収容部内に横方向に積層された縦向きの紙葉類を上方に払出す紙葉類出入れ機構を備えた還流式紙葉類収納庫において、上記紙葉類収容部は、紙葉類出入れ機構と、紙葉類出入れ機構に向けて弾性付勢された加圧部材との間に形成される空間であり、長手方向両辺を上下方向に向けた縦向き紙葉類を横方向に積層するものであり、紙葉出入れ機構と、紙葉出入れ機構に向けて弾性付勢された加圧部材との間を紙葉収容部とし、上方から進入してくる紙葉類を紙葉受入れ機構側より順に横方向に積層して収納する一方、収納した紙葉類を紙葉出入れ機構側より順に上方に払出す還流式紙葉類収納庫であって、該紙葉類出入れ機構は、主として紙葉類収容部に進入してくる紙葉類を受入れる為のエンドレスの低摩擦ベルトと、主として払出される紙葉類を分離給紙するためのエンドレスの高摩擦ベルトと、各ベルトをエンドレスに張設しつつ正逆両方向に走行させるローラ群と、ローラ群を駆動する駆動源と、を備え、上記低摩擦ベルトが紙葉類収容部に対面する受入れ走行面は、紙葉類を受入れるための前方へ突出した位置と紙葉類を送り出すために後方へ退避した位置との間を進退可能に構成されており、上記高摩擦ベルトが紙葉類収容部に対面する払出し走行面は常に一定位置を維持しており、低摩擦ベルトの受入れ走行面が突出位置にある時には高摩擦ベルトの払出し走行面の大半は紙葉類と接触しない位置にあり、低摩擦ベルトの受入れ走行面が退避位置にある時には高摩擦ベルトの払出し走行面は受入れ走行面よりも紙葉類収容部側に突出しており、上記高摩擦ベルトの払出し走行面の上部は対向ローラと常時接しており、払出し走行面の上部と該対向ローラとの間で進入及び払出される紙葉類をガイドすることを特徴とする。請求項2の発明は、紙葉類を紙葉類収容部に受入れる為に低摩擦ベルトの受入れ走行面が突出位置にある時に、該受入れ走行面の上部は紙葉類収容部へ向けて一定の下向きの傾斜面を構成することを特徴とする。請求項3の発明は、上方から進入してくる紙葉類を紙葉類収容部に受入れると共に、紙葉類収容部内に横方向に積層された縦向きの紙葉類を上方に払出す紙葉類出入れ機構を備えた還流式紙葉類収納庫において、上記紙葉類収容部は、紙葉類出入れ機構と、紙葉類出入れ機構に向けて弾性付勢された加圧部材との間に形成される空間であり、長手方向両辺を上下方向に向けた縦向き紙葉類を横方向に積層するものであり、該紙葉類出入れ機構は、上記加圧部材との間で紙葉類を挟んで積層保持したり、紙葉類の受入れ払出しを行うエンドレスベルトと、エンドレスベルトの上部に位置し受入れ紙葉類及び払出し紙葉類の進退を円滑化するための傾斜面を有したガイド部材と、を備えていることを特徴とする。請求項4の発明は、上記エンドレスベルトを張設するローラ群のうちの最上部に位置するローラは駆動ローラであり、該駆動ローラと同軸状に高摩擦ローラを配置したことを特徴とする。
【0005】
【発明の実施の形態】以下、本発明を図面に示した形態例により詳細に説明する。図1(a) 及び(b) は本発明の還流式紙葉類収納庫の原理と概略構成を示す図であり、(a) は入金状態、(b) は払出し状態を示している。尚、この形態例では、主として紙幣を収納するための収納庫を一例として示しているが、本発明は紙幣以外の紙葉類、券類、カード等のシート状物一般に適用することができることは言うまでもない。この還流式紙葉類収納庫(還流式紙幣収納庫)は、上方に位置する紙幣搬送経路(紙葉搬送経路)1から進入してくる紙幣Pを紙幣収容部(紙葉収容部)2に受入れると共に、紙幣収容部2内に横方向に積層された縦向きの紙幣Pを上方に払出す紙幣出入れ機構3を備えている。上記紙幣収容部2は、紙幣出入れ機構(紙葉出入れ機構)3と、紙幣出入れ機構に向けて弾性付勢された加圧部材4との間に形成される空間であり、長手方向両辺を上下方向に向けた縦向き紙幣Pを横方向に積層するものである。紙幣出入れ機構(紙葉出入れ機構)3は、主として紙幣収容部2に進入してくる紙幣Pを受入れる為のエンドレスの低摩擦ベルト10と、主として払出される紙幣を分離給紙するためのエンドレスの高摩擦ベルト11と、低摩擦ベルト10をエンドレスに張設しつつ正逆両方向に走行させるローラ15乃至19と、高摩擦ベルト11をエンドレスに張設しつつ正逆両方向に走行させるローラ25、26、27と、を有する。なお、両ベルト10、11は図面の紙面と直交する方向に位置をずらして交互に複数配置する。低摩擦ベルト10を張設するローラ15乃至19のうちの符号15、16は軸心位置が固定された固定ローラであり、符号17は可動のテンションローラ、18、19は矢印方向に進退可能な可動ローラである。固定ローラ15、16のうちの何れか一方は駆動源と連結された駆動ローラであり、テンションローラ17はローラ16、18間に位置して低摩擦ベルト10の外側面を押圧しテンションを加える可動ローラである。また、可動ローラ18、19は(a) に示した入金時には加圧部材4側へ同期して等距離移動し、(b) に示した払出し時には同期して加圧部材4から退避する方向へ等距離移動する。
【0006】入金時に上側の可動ローラ19が接する低摩擦ベルト10の位置から下側の可動ローラ18の位置までのベルト面は受入れ走行面30を構成しており、この時固定ローラ15と上側の可動ローラ19との間に位置するベルト部分は傾斜したガイド面31を構成している。払出し時には可動ローラ18、19は、(b) に示すように紙幣収容部2から離間する方向へ退避するので、上記傾斜したガイド面31がなくなり、固定ローラ15、16、可動ローラ18により支持された低摩擦ベルト10の前面は全体として後方に退避する。高摩擦ベルト11は、上側の固定ローラ15の直上位置に配置された固定ローラ25、固定ローラ15の後方適所に配置された固定ローラ26、下側の固定ローラ16と同軸状に配置されかつ固定ローラ16よりも僅かに大径の固定ローラ27によって張設されており、いずれか一つの固定ローラを駆動ローラとして回転駆動される。上側の固定ローラ25の前方には対向ローラ40が対向配置されており、この対向ローラ40は固定ローラ25の外周面の高摩擦ベルト11と圧接しており、高摩擦ベルト11と対向ローラ40との間で入出金される紙幣を案内する。上記高摩擦ベルト11が紙幣収容部2に面する払出し走行面45は一定位置を維持しており、低摩擦ベルト10の受入れ走行面30が(a) に示した突出位置にある時には高摩擦ベルトの払出し走行面45の大半は紙幣と接触しない位置にあり、低摩擦ベルト10の受入れ走行面30が(b) に示した退避位置にある時には高摩擦ベルトの払出し走行面45は受入れ走行面30とほぼ平行な姿勢で受入れ走行面よりも僅かに紙幣収容部2側に突出して紙幣と接触可能な状態にある。加圧部材4としては、例えばパンタグラフ式の弾性付勢手段を用いる。上記構成を備えた紙幣搬送経路1、紙幣収容部2及び紙幣出入れ機構3を前後方向に複数組配置し、各紙幣収容部に異なった金種の紙幣を出入れすることにより、自動販売機等の紙幣取扱装置内にコンパクトに収納することが可能となる。
【0007】次に、上記構成を備えた紙幣出入れ機構の動作を説明する。まず、この還流式紙葉類収納庫を備えた自動販売機等の紙幣取扱装置本体に設けた投入口から紙幣が投入され、真贋、金種を判定した上で、金庫に搬送されてきた場合には、各ベルト10、11の受入れ方向への回転によって、紙幣搬送経路1から高摩擦ベルト11と対向ローラ40とのニップ部に進入して紙幣収容部2へ向けて搬送される。入金時には図示しない作動機構が可動ローラ18、19を図1(a) の受入れ位置に移動させているので、可動ローラ18、19間に位置する低摩擦ベルト10、即ち受入れ走行面30が加圧部材4側に突出し、更に固定ローラ15と可動ローラ19との間の低摩擦ベルト部分は傾斜ガイド面31を形成している。この時、高摩擦ベルト11の払出し走行面45の大半の部分は、後方に退避している為、紙幣の進入当初に高摩擦ベルト11によりガイドされた紙幣Pは、傾斜ガイド面31に沿って紙幣収容部2内に移動する際には高摩擦ベルト11とは接触しない。つまり、受入れ時には専ら低摩擦ベルト10の作用により紙幣は紙幣収容部2内に導入される。傾斜ガイド面31は、紙幣収容部2内の既存の紙幣との干渉を避ける為のスロープを形成しており、新たに進入してきた紙幣は既存紙幣と受入れ走行面30との間にスムーズに導入される。なお、この入金時には図示しない加圧部材作動機構によって加圧部材4から紙幣に対する加圧力を低減することにより、受入れ易くする。
【0008】次に、紙幣収容部2内に積層収容された紙幣を搬送路1側へ払出す場合には、図示しない作動機構を用いて図1(b) のように低摩擦ベルト10を支持する2つの可動ローラ18、19を後方へ退避させることにより低摩擦ベルト10の前面(受入れ走行面30)を図示の位置まで後退させる。この時、低摩擦ベルト10の前面は固定ローラ15、16、可動ローラ18により支持されているに過ぎないので、受入れ走行面30が後退位置にある時には、固定ローラ16と同軸であって僅かに大径の固定ローラ27により支持された高摩擦ベルト11の前面(払出し走行面45)が、受入れ走行面30よりも僅かに前方に突出した状態にある。従って、図示しない加圧部材作動機構によって紙幣収容部2内の紙幣に対して加圧部材4から強い加圧力を加えつつ、高摩擦ベルト11を払出し方向に回転させることにより、払出し走行面45と接触している紙幣を一枚づつ分離して上方に送出し、高摩擦ベルト11と対向ローラ40とのニップ部を経て紙幣搬送経路へ送り出すことができる。なお、このとき、低摩擦ベルトの受入れ走行面30の上部による紙幣の搬送方向は、高摩擦ベルト11と対向ローラ40とのニップ部に向けて延びているので、紙幣をストレートの搬送経路にて送り出すことができる。
【0009】次に、図2、図3及び図4は図1の形態例を具体化した構成例を示す図であり、図2は正面図、図3は右側面図、図4は平面図である。図1中の同一構成要素には同一符号を付して説明する。各図において、低摩擦ベルト10を支持する固定ローラ15、16を回転自在に支持する固定軸15A、16Aと、高摩擦ベルト11を支持する固定ローラ25、26、27を回転自在に支持する固定軸25A、26A、16Aは、夫々固定フレーム50により回転自在に支持されている。この例では、固定軸25Aを固定フレーム50によって回転自在に支持する一方で、固定軸25Aの軸端部に固着したはすば傘歯車51を、モータ53の出力軸に固定した出力側のはすば傘歯車52と噛合させることによって固定軸25A及び固定ギヤ25を一体回転させることにより、他のローラ群及びベルト10、11を回転駆動させる。
【0010】テンションローラ17は、下側の可動ローラ18の軸18Aに下端部を支持されたブラケット54の上端部に回転自在に支持されるとともに、ブラケット54は弾性部材54aによって常時図2の時計廻り方向(低摩擦ベルトの後方走行面を前方へ押圧する方向)へ弾性付勢されている。低摩擦ベルト10を張設する可動ローラ18、19を回転自在に支持した可動軸18A、19Aは、固定フレーム50に固定されたガイドシャフト55によって前後方向へ進退可能に支持された可動フレーム60により夫々回転自在に支持されており、可動フレーム60が前後移動することにより、図2に実線で示す後退位置(払出し位置)と、点線で示す前進位置(入金位置)との間を進退可能に構成されている。
【0011】図2においては低摩擦ベルト10及び可動ローラ18、19等が後退位置にある状態を実線で示し、前進位置にある状態を点線で示している。可動フレーム60により支持された可動ローラ18、19は、後退位置にある時には低摩擦ベルト10の前面を前方(紙幣収容部2側)へ押し出さないので、低摩擦ベルト10の前面(受入れ走行面)30は実線で示した退避位置にあり、この時低摩擦ベルト10前面30は高摩擦ベルト11の払出し走行面45よりも後方へ退避した位置にある。これは、高摩擦ベルト11を巻付けている固定ローラ27の径が低摩擦ベルト10を巻付けている固定ローラ16よりも少しく大径であることと、上側の固定ローラ25の径及び位置がそのように設定されているからである。このとき、高摩擦ベルトの払出し走行面45は紙幣搬送経路1へ向けて直線的に延びる払出し経路を形成する。この払出し状態において、図示しない加圧部材4を紙幣収容部2内に位置する紙幣に向けて強い力で加圧することにより、紙幣は加圧部材4と高摩擦ベルトの払出し走行面45との間で加圧されつつ一枚づつ適正に分離されて上方に給送される。
【0012】逆に、受入れ状態においては、可動ローラ18、19が前方へ変位して、可動ローラ18が低摩擦ベルト10の後面下部を前方へ押圧し、可動ローラ19が低摩擦ベルト10の前面略中央部を前方へ押圧する。前方への移動距離は、低摩擦ベルト10の前面の上部に適正な傾斜ガイド面31が形成され得るように設定する。このように上下の可動ローラ19、18が所定距離だけ前方へ変位することにより、両可動ローラ19、18と接する低摩擦ベルト前面(受入れ走行面)30はほぼ垂直な姿勢となり、しかも高摩擦ベルトの前面31よりも更に前方に位置しているので、全ベルト10、11を受入れ方向へ回転させたときに傾斜ガイド面31を経て導入されてくる紙幣を、紙幣収容部2内の最後部に位置する紙幣と受入れ走行面30との間にスムーズに導くことができる。このとき、加圧部材4から紙幣に対する付勢力は必要最小限となっているので、紙幣の進入が容易となる。なお、各可動ローラ19、18の前方への移動に伴ってテンションローラ17が弾性部材54aによって前方へ変位することは勿論である。
【0013】次に、図5(a) 及び(b) は本発明の他の形態例の紙幣出入れ機構を備えた還流式紙葉類収納庫の概略構成図であり、(a) は入金時、(b) は払出し時を示す。また、図6は図5の形態例の斜視図であり、この形態例の紙幣出入れ機構(紙葉出入れ機構)100は、ローラ101、102、103等によりエンドレスに張設された低摩擦ベルト104と、低摩擦ベルトを張設するローラのうちの最上部に位置する駆動ローラ101と同軸状に配置された高摩擦ローラ105と、低摩擦ベルト104の直上部に位置する傾斜ガイド面106aを有したガイド部材106と、低摩擦ベルト104の前面と対向する位置に配置された加圧部材107とを有する。ガイド部材106の直上位置には紙幣搬送経路(紙葉搬送経路)110が配置され、紙幣搬送経路110から下方へ向けて搬送されてきた紙幣はガイド部材の傾斜ガイド面106aを経て低摩擦ベルト104の前面と加圧部材107との間の紙幣収容部(紙葉収容部)108内に送り込まれる。なお、高摩擦ローラ105に接して給紙圧を加える為の対向ローラ109を加圧部材107の加圧プレート107aに回転自在に支持する。傾斜ガイド面106aは、紙幣収容部108内の既存の紙幣との干渉を避ける為のスロープを形成しており、新たに進入してきた紙幣は既存紙幣と低摩擦ベルトの前面との間にスムーズに導入される。駆動ローラ101と高摩擦ローラ105を共通の軸101Aにより支持してこの軸を正逆転方向に回転駆動させることにより、低摩擦ベルトと高摩擦ローラを回転させることができる。低摩擦ベルト104は主として入金時に紙幣を紙幣収容部に安定して導く為に用いられ、高摩擦ローラ105は主として払出し時に紙幣束中から最後部に位置する紙幣のみを分離して取り出す為に使用される。
【0014】図5(a) に示した入金時には低摩擦ベルト104を時計廻り方向に回転させると共に、加圧部材107からの付勢力を弱くして、紙幣収容部108内の紙幣Pに対する加圧力を低減し、低摩擦ベルト104と紙幣との間に新たな紙幣を導入し易くする。この時、高摩擦ローラ105も進入してくる紙幣に接する為、該紙幣の入金作業に貢献することは勿論であるが、低摩擦ベルト104は紙幣収容部108の下部にまで延在しているので、最後まで紙幣をガイドすることができる。また、傾斜ガイド面106aの作用によって、新たな紙幣の下端縁は、積層紙幣束の後面と低摩擦ベルトの前面との間に間違いなくガイドされるので、紙幣束の上端面と新たな紙幣の下端縁とが衝突する事態を回避できる。これに対して、図5(b) に示した払出し時には加圧部材107からの加圧力を強くして高摩擦ローラ105及び低摩擦ベルト104を反時計廻り方向に回転させるので、低摩擦ベルト104により上方に送り出された最後部の紙幣は高摩擦ローラ105と対向ローラ109との協働によって更に上方に送られ傾斜ガイド面106aを経て紙幣搬送経路110内に払出される。この形態例の紙幣出入れ機構は、上記第1の形態例のように低摩擦ベルトと高摩擦ベルトの2種類のベルトを使い分けたり、可動ローラを設ける訳ではなく、低摩擦ベルトと、低摩擦ベルトを張設する最上部のローラ(駆動ローラ)と同軸状に一体化した高摩擦ローラとを用い、更に高摩擦ローラの上方に設けた傾斜ガイド面によりガイドするだけの簡単な構成であるので、部品点数を増大させたり、大型化することなく、縦向きの横置き状態にて紙幣を横方向に積層収納することができる。この形態例の紙幣出入れ機構を並列に配置して金種別に入出金するように構成することにより、コンパクトな構成でありながら、複数種類の紙幣を金種別に入出金する還流式紙葉類収納庫を提供することが可能となる。
【0015】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、自動販売機等の紙葉類取扱装置に用いられる還流式の金庫において、構成を複雑化することなく、しかも優れた紙幣還流機能を有しながら、紙幣等を立設状態で横方向に積層することができる還流式紙葉類収納庫を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の還流式紙葉類収納庫の原理と概略構成を示す図であり、(a) は入金状態、(b) は払出し状態を示す図である。
【図2】図1の金庫に使用する紙幣出入れ機構の一例の正面図。
【図3】図2の紙幣出入れ機構の右側面図。
【図4】図2の紙幣出入れ機構の平面図。
【図5】(a) 及び(b) は他の形態例の紙幣出入れ機構の原理を説明する図。
【図6】図5の斜視図。
【符号の説明】
1 紙幣(紙葉類)搬送経路、P 紙幣(紙葉類)、2 紙幣(紙葉類)収容部、3 紙幣(紙葉類)出入れ機構、4 加圧部材、10 低摩擦ベルト、11高摩擦ベルト、15〜19 ローラ、25〜27 ローラ、30 受入れ走行面、 31 傾斜ガイド面、40 対向ローラ、45 払出し走行面、54 ブラケット、54a 弾性部材,50 固定フレーム,60 可動フレーム,100紙幣(紙葉類)出入れ機構,101、102、103 ローラ、104 低摩擦ベルト、105 高摩擦ローラ、106 ガイド部材、106a 傾斜ガイド面,107 加圧部材,108 紙幣(紙葉類)収容部,109 対向ローラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 上方から進入してくる紙葉類を紙葉類収容部に受入れると共に、紙葉類収容部内に横方向に積層された縦向きの紙葉類を上方に払出す紙葉類出入れ機構を備えた還流式紙葉類収納庫において、上記紙葉類収容部は、紙葉類出入れ機構と、紙葉類出入れ機構に向けて弾性付勢された加圧部材との間に形成される空間であり、長手方向両辺を上下方向に向けた縦向き紙葉類を横方向に積層するものであり、紙葉出入れ機構と、紙葉出入れ機構に向けて弾性付勢された加圧部材との間を紙葉収容部とし、上方から進入してくる紙葉類を紙葉受入れ機構側より順に横方向に積層して収納する一方、収納した紙葉類を紙葉出入れ機構側より順に上方に払出す還流式紙葉類収納庫であって、該紙葉類出入れ機構は、主として紙葉類収容部に進入してくる紙葉類を受入れる為のエンドレスの低摩擦ベルトと、主として払出される紙葉類を分離給紙するためのエンドレスの高摩擦ベルトと、各ベルトをエンドレスに張設しつつ正逆両方向に走行させるローラ群と、ローラ群を駆動する駆動源と、を備え、上記低摩擦ベルトが紙葉類収容部に対面する受入れ走行面は、紙葉類を受入れるための前方へ突出した位置と紙葉類を送り出すために後方へ退避した位置との間を進退可能に構成されており、上記高摩擦ベルトが紙葉類収容部に対面する払出し走行面は常に一定位置を維持しており、低摩擦ベルトの受入れ走行面が突出位置にある時には高摩擦ベルトの払出し走行面の大半は紙葉類と接触しない位置にあり、低摩擦ベルトの受入れ走行面が退避位置にある時には高摩擦ベルトの払出し走行面は受入れ走行面よりも紙葉類収容部側に突出しており、上記高摩擦ベルトの払出し走行面の上部は対向ローラと常時接しており、払出し走行面の上部と該対向ローラとの間で進入及び払出される紙葉類をガイドすることを特徴とする還流式紙葉類収納庫。
【請求項2】 紙葉類を紙葉類収容部に受入れる為に低摩擦ベルトの受入れ走行面が突出位置にある時に、該受入れ走行面の上部は紙葉類収容部へ向けて一定の下向きの傾斜面を構成することを特徴とする還流式紙葉類収納庫。
【請求項3】 上方から進入してくる紙葉類を紙葉類収容部に受入れると共に、紙葉類収容部内に横方向に積層された縦向きの紙葉類を上方に払出す紙葉類出入れ機構を備えた還流式紙葉類収納庫において、上記紙葉類収容部は、紙葉類出入れ機構と、紙葉類出入れ機構に向けて弾性付勢された加圧部材との間に形成される空間であり、長手方向両辺を上下方向に向けた縦向き紙葉類を横方向に積層するものであり、該紙葉類出入れ機構は、上記加圧部材との間で紙葉類を挟んで積層保持したり、紙葉類の受入れ払出しを行うエンドレスベルトと、エンドレスベルトの上部に位置し受入れ紙葉類及び払出し紙葉類の進退を円滑化するための傾斜面を有したガイド部材と、を備えていることを特徴とする還流式紙葉類収納庫。
【請求項4】 上記エンドレスベルトを張設するローラ群のうちの最上部に位置するローラは駆動ローラであり、該駆動ローラと同軸状に高摩擦ローラを配置したことを特徴とする請求項3記載の還流式紙葉類収納庫。

【図1】
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【図5】
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【図6】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2000−11235(P2000−11235A)
【公開日】平成12年1月14日(2000.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−193806
【出願日】平成10年6月24日(1998.6.24)
【出願人】(000003104)東洋通信機株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】