説明

還流装置

【課題】還流冷却器に用いられる冷却水を循環させて使用するとともに、各機器を小型軽量化してドラフトチャンバー内に収容する。循環冷却水の循環状態や冷却状態に不具合が生じた際に、加熱装置を停止する。
【解決手段】加熱装置3と、反応容器の上部に配置する還流冷却器4と、温度が上昇した循環冷却水を還流冷却器4から導出する導出管5と、導出管5を介して送られる循環冷却水をファン6aからの送風で冷却するラジエータ6と、ラジエータ6から排出された冷却された循環冷却水を貯留する水槽7と、水槽7内の循環冷却水をポンプ9により還流冷却器4に戻す導入管8と、導入管8の途中に設けられるポンプ9とを備える。水槽7内の循環冷却水の温度が異常上昇した時に加熱装置3を停止させるサーマルリレー11と、循環冷却水の流量が異常低下した時に加熱装置3を停止させるフローセンサ12とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、還流冷却器を用いて、還流操作を行うための還流装置に係り、詳しくは、ドラフトチャンバー内で行う小容量の還流操作に適した還流装置に関する。
【背景技術】
【0002】
還流冷却器は、蒸留フラスコ等の反応容器の上部に配設され、反応容器内の有機溶媒を沸騰させることによって上昇した蒸気を冷やして凝縮させるもので、蒸気が通る管内に、冷却水が通る冷却管を挿入している(例えば、特許文献1参照)。この還流操作は、通常ドラフトチャンバー内で操作され、操作時には、水道水や井戸水などの冷却水を前記冷却管に流しっぱなしの状態にしている。
【0003】
また、別途市販の冷凍機や電子冷却機能付きの冷却水循環装置を組み合わせて、還流冷却器に送られる冷却水を循環させるようにしたものもある。
【特許文献1】特開2002−126401号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の特許文献1の還流冷却器に、冷却水として水道水を用いる場合では、水道水を流しっぱなしの状態とするために、ランニングコストが嵩むとともに、万が一、配管が外れるようなことがあると、還流冷却器に冷却水が循環しなくなり、反応容器内の蒸気が冷却されることなく大気に放出される虞があった。また、冷却水として井戸水を用いる場合では、不定期に水圧変動があったり、水中に砂等の固体が含まれていたりすることから、配管を閉塞させる虞があるとともに、還流冷却器へ流れる水の量が一定でないことから、配管が外れやすくなり、水道水の場合と同様に反応容器内の蒸気が冷却されることなく大気に放出される虞があった。また、配管が外れると、水道水や井戸水を流しっぱなしの状態にしていることから、周囲が水浸しになっていた。
【0005】
また、市販の冷凍機や電子冷却機能付きの冷却水循環装置を利用して、還流冷却器に送る冷却水を循環させるものでは、冷却水循環装置が重量物であることから、ドラフトチャンバー内に設置することは難しかった。また、この冷却水循環装置は、還流冷却器の冷却水循環用の専用機ではないことから、配管や冷却機能に不具合が生じた際に、加熱装置を制御する機能は備えていなかった。
【0006】
そこで本発明は、還流冷却器に用いられる冷却水を循環させて使用することができるとともに、各機器を小型軽量化してドラフトチャンバー内に収容でき、さらに、循環冷却水の循環状態や冷却状態に不具合が生じた際には、加熱装置を停止することのできる還流装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため本発明は、反応容器内の溶媒を加熱する加熱装置と、前記反応容器の上部に配置される還流冷却器とを備えた還流装置において、前記還流冷却器内で温度が上昇した循環冷却水を還流冷却器の一端部から導出する導出管と、該導出管を介して送られる温度が上昇した循環冷却水をファンからの送風によって冷却するラジエータと、該ラジエータから導出された冷却された循環冷却水を貯留する水槽と、該水槽内の循環冷却水を前記還流冷却器の他端部に戻す導入管と、該導入管の途中に設けられるポンプとを備えるとともに、前記水槽内の循環冷却水の温度が異常上昇した時、又は、前記循環冷却水の流量が異常低下した時に前記加熱装置を停止させる制御部を設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明は上述のように、還流冷却器に用いられる冷却水を循環して使用することから、ランニングコストの低減を図ることができるとともに、一定の循環冷却水をポンプによって安定して還流冷却器に送ることができるので、循環冷却水の循環状態を良好に保つことができる。また、小容量の還流操作を行うものであれば、循環冷却水はファンによる空冷熱交換で充分に冷却することができ、さらに、ラジエータや水槽を還流装置専用に形成することから、ラジエータや水槽を小型化してドラフトチャンバーに収容させることができ、還流操作を簡便に行うことができる。また、万が一、配管が外れるようなことがあっても、冷却水の水量は限られているので、従来のように周囲を水浸しにすることはない。さらに、循環冷却水の循環状態や冷却状態に不具合が生じる場合があっても、制御部によって加熱装置を停止させ、反応容器内の蒸気が冷却されることなく大気に放出されることを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一形態例を図1に示される還流装置を示す説明図に基づいて詳しく説明する。還流装置1は、小容量の還流操作を行うもので、反応容器2内の有機溶媒を加熱させる加熱装置3と、反応容器2の上部に配置する還流冷却器4と、還流冷却器4で温度が上昇した循環冷却水を還流冷却器4の冷却管4aの上部から導出する導出管5と、該導出管5を介して送られる温度が上昇した循環冷却水をファン6aを用いて冷却するラジエータ6と、該ラジエータ6から排出された冷却された循環冷却水を貯留する水槽7と、水槽7内の循環冷却水を還流冷却器4の下部に戻す導入管8と、該導入管8の途中に設けられるポンプ9とを備えている。
【0010】
加熱装置3は、ホットプレートスターラー等の周知のものが用いられ、制御部を備えた加熱用電源10に繋げることにより、ホットプレートスターラー上の湯浴の温度を所定の温度に保持させる。反応容器2は、丸底やなす底等の蒸留フラスコが用いられ、有機溶媒を入れ、上部に還流冷却器4を取り付けた状態で、加熱装置3上の湯浴中で加熱して反応させる。
【0011】
還流冷却器4は、周知のものが用いられ、本形態例では、蒸気が通る外管4bに、冷却水が通る前記冷却管4aを挿入している。外管4bには、冷却管4aに連通して循環冷却水を導入及び導出する2つの側管が形成され、該側管に導出管5と導入管8とをそれぞれ連通させている。
【0012】
導出管5は、ファン6aを備えた空冷式のラジエータ6に連結され、該ラジエータ6には冷却された循環冷却水を水槽7に導入する配管6bが接続されている。前記配管6bは、上部を開放した水槽7に接続され、該水槽7に溜まった循環冷却水は、ポンプ9によって前記導入管8を介して前記還流冷却器4の下部に戻される。
【0013】
また、前記水槽7には、循環冷却水の温度を検知し、該温度が異常上昇した時に、制御部を介して加熱用電源10から加熱装置3への通電を停止させるサーマルリレー11が設けられるとともに、導入管8の循環冷却水の流量を検知し、該流量が異常低下した時に、制御部を介して加熱用電源10から加熱装置3への通電を停止させるフローセンサ12を備えている。
【0014】
このような還流装置1を用いて行う還流操作は、最大1リットルまでの小容量の還流操作で、ドラフトチャンバー内に還流装置1を収容する。加熱装置3の湯浴中に、有機溶媒を入れ、上部に還流冷却器4を備えた反応容器2を配設し、加熱装置3を加熱用電源10に繋げ、湯浴を所定の温度に保持させる。反応容器2中の有機溶媒は加熱されて沸騰し、蒸気が還流冷却器4に導入される。還流冷却器4は、前記導入管8からポンプ9によって循環冷却水が冷却管4a内に送り込まれ、蒸気と熱交換し、該蒸気を凝縮させて反応容器2に流下させる。また、温度が上昇した循環冷却水は、前記導出管5からラジエータ6に送られる。ラジエータ6では、ファン6aからの送風によって温度が上昇した循環冷却水が冷却される。この還流操作は、常圧〜微加圧下での反応であるので、有機溶媒の沸点が極端に低くなることはなく、室温程度の水の温度が確保されれば良いことから、循環冷却水はファン6aによる空冷熱交換で充分に冷却することができる。ラジエータ6によって冷却された循環冷却水は、配管6bによって水槽7に導入され、水槽7内の循環冷却水は、前記ポンプ9によって、前記導入管8を介して還流冷却器4に循環する。また、ファン6aやポンプ9が故障した場合は、前記サーマルリレー11やフローセンサ12が作動して加熱装置3を強制的に停止させ、有機溶媒の加熱を停止させることができる。
【0015】
本形態例の還流装置1は上述のように構成されることにより、還流冷却器4に用いられる冷却水を循環して使用することができ、ランニングコストの低減を図ることができるとともに、一定の循環冷却水をポンプ9によって安定して還流冷却器4に送ることができることから、循環冷却水の循環状態を良好に保つことができる。また、小容量の還流操作を行うものであることから、循環冷却水はファン6aによる空冷熱交換で充分に冷却することができ、さらに、ラジエータ6や水槽7を還流装置専用に形成することから、ラジエータ6や水槽7を小型化してドラフトチャンバーに収容させることができ、還流操作を簡便に行うことができる。また、万が一、導出管5や導入管8が外れるようなことがあっても、循環冷却水の水量は限られているので、流しっぱなしの水道水や井戸水を使用していた従来のように、周囲を水浸しにすることはない。さらに、循環冷却水の循環状態や冷却状態に不具合が生じた際には、前記サーマルリレー11やフローセンサ12が作動して加熱装置3を強制的に停止させ、有機溶媒の沸騰を停止させることができる。これにより、反応容器2内の蒸気が冷却されることなく大気に放出される虞がない。
【0016】
なお、本発明に適用される還流冷却器は、上述の形態例の構造に限らず、周知の様々な構造の還流冷却器を使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一形態例を示す還流装置の説明図である。
【符号の説明】
【0018】
1…還流装置、2…反応容器、3…加熱装置、4…還流冷却器、5…導出管、6…ラジエータ、6a…ファン、7…水槽、8…導入管、9…ポンプ、10…加熱用電源、11…サーマルリレー、12…フローセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応容器内の溶媒を加熱する加熱装置と、前記反応容器の上部に配置される還流冷却器とを備えた還流装置において、前記還流冷却器内で温度が上昇した循環冷却水を還流冷却器の一端部から導出する導出管と、該導出管を介して送られる温度が上昇した循環冷却水をファンからの送風で冷却するラジエータと、該ラジエータから導出された冷却された循環冷却水を貯留する水槽と、該水槽内の循環冷却水を前記還流冷却器の他端部に戻す導入管と、該導入管の途中に設けられるポンプとを備えるとともに、前記水槽内の循環冷却水の温度が異常上昇した時、又は、前記循環冷却水の流量が異常低下した時に前記加熱装置を停止させる制御部を設けたことを特徴とする還流装置。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2007−216084(P2007−216084A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−35911(P2006−35911)
【出願日】平成18年2月14日(2006.2.14)
【出願人】(591245543)東京理化器械株式会社 (36)
【Fターム(参考)】