説明

部分的薄膜形成方法

【課題】有機単分子膜などの薄膜を簡便に、かつ品質を低下させることなく基材上に部分的に形成する方法を提供すること。
【解決手段】
(A)基材上の薄膜形成領域以外の領域に、水溶性化合物を塗布するか又は含水部材でマスクする工程、
(B)(A)の工程後、薄膜形成用溶液を基材と接触させて基材上に薄膜を形成する工程、及び
(C)(B)の工程後、水溶性化合物又は含水部材を除去する工程
を有することを特徴とする基材上に薄膜を部分的に形成する方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材上に部分的に薄膜を形成する方法に関するものであり、特に、有機薄膜、とりわけ、有機単分子膜を基材上に部分的に形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス、金属、プラスチックス、セラミックス等からなる基板の表面を目的に応じて改質するために、例えば、炭化水素系又はフッ素系等のシランカップリング剤を基板表面にコーティングすることが行われている。
炭化水素系又はフッ素系等のシランカップリング剤などの有機金属化合物は、加水分解縮重合して膜を形成する。こうして形成された膜を有機薄膜という。その場合、膜厚がちょうど1分子に相当するだけの薄い膜となって分子が整列したときに有機単分子膜という。
有機薄膜、とりわけ、有機単分子膜を基材上の必要部分にのみ形成する場合、有機単分子膜を形成する領域以外をマスクすることにより行う方法が知られている。例えば、特許文献1には、コンタクトレンズ面に部分的に単分子膜を形成するために、単分子膜を形成する面以外の領域をマスクすることが記載されている。
また、特許文献2には、有機電界発光素子の製造において、有機薄膜形成用塗布液をスプレー塗布する時に有機薄膜非形成領域の全面または一部にマスクを用いてパターニングを行なうことが行われているが、マスクの素材としては、ステンレス、ニッケル等の金属や、PET(ポリエチレンテレフタラート)、ポリイミド等の樹脂が用いられている。
しかしながら、従来、有機薄膜、とりわけ、有機単分子膜を基材表面に部分的に形成する場合に、簡易に行えて、しかも膜の品質が低下しないマスク方法は知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−84105号公報
【特許文献2】特開2008−243421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、有機単分子膜などの薄膜を簡便に、かつ品質を低下させることなく基材上に部分的に形成する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、マスク材として水溶性樹脂あるいは含水部材を使用することにより、有機薄膜などの薄膜を簡便に、かつ品質を低下させることなく基材表面に部分的に形成することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち本発明は、
(1)(A)基材上の薄膜形成領域以外の領域に、水溶性化合物を塗布するか又は含水部材でマスクする工程、
(B)(A)の工程後、薄膜形成用溶液を基材と接触させて基材上に薄膜を形成する工程、及び
(C)(B)の工程後、水溶性化合物又は含水部材を除去する工程
を有することを特徴とする基材上に薄膜を部分的に形成する方法、
(2)薄膜が有機薄膜であることを特徴とする上記(1)記載の基材上に薄膜を部分的に形成する方法、
(3)有機薄膜が単分子膜であることを特徴とする上記(2)に記載の基材上に薄膜を部分的に形成する方法、
(4)薄膜形成用溶液が、少なくとも1以上の加水分解性基を有する金属系界面活性剤、及び該金属系界面活性剤と相互作用し得る化合物を含有する有機溶媒溶液であることを特徴とする上記(1)記載の基材上に薄膜を部分的に形成する方法、
(5)少なくとも1以上の加水分解性基を有する金属系界面活性剤が、式(I)
MXm−n (I)
〔式中、Rは、置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数1〜30のハロゲン化炭化水素基、連結基を含む炭素数1〜30の炭化水素基、又は連結基を含む炭素数1〜30のハロゲン化炭化水素基を表し、Mは、ケイ素原子、ゲルマニウム原子、スズ原子、チタン原子、及びジルコニウム原子からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属原子を表し、Xは、水酸基又は加水分解性基を表し、mはMの原子価を表す。nは、1から(m−1)のいずれかの正整数を表し、nが2以上の場合、Rは、同一でも相異なっていてもよい。(m−n)が2以上の場合、Xは同一であっても、相異なっていてもよいが、Xのうち、少なくとも一個は加水分解性基である。〕で表される化合物であることを特徴とする上記(1)に記載の基材上に薄膜を部分的に形成する方法に関する。
【発明の効果】
【0007】
マスク材として水溶性化合物あるいは含水部材を使用することにより、有機薄膜などの薄膜、とりわけ、有機単分子膜を簡便に、かつ膜の品質を低下させることなく、基材表面に部分的に形成することができる。
特に、水溶性高分子化合物を使用すると、薄膜作製後、マスク材を水洗することにより容易に除去することが可能であるため、簡易な手法として優れている。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(薄膜)
本発明において、薄膜とは、基材上に作製できる、通常1μm以下の膜厚を有する無機又は有機の膜を意味し、好ましくは、有機薄膜である。
無機薄膜は、金属酸化物などの膜を意味し、例えば、金属酸化物としては酸化ジルコニウム、酸化チタニウム、酸化アルミニウム、酸化錫、酸化インジウム、酸化インジウム錫、酸化タンタル、酸化亜鉛、酸化ハフニウム、酸化セリウム、酸化ニオブ、酸化イットリウムなどが挙げられる。
有機薄膜は、金属系界面活性剤など有機化合物を原料とする膜である。金属系界面活性剤の場合には、加水分解縮重合したものが膜となる。
金属系界面活性剤としては、少なくとも1以上の加水分解性基を有する金属系界面活性剤が好ましく、1以上の加水分解性基を有する金属系界面活性剤としては、式(I)
MXm−n (I)
〔式中、Rは、置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数1〜30のハロゲン化炭化水素基、連結基を含む炭素数1〜30の炭化水素基、又は連結基を含む炭素数1〜30のハロゲン化炭化水素基を表し、Mは、ケイ素原子、ゲルマニウム原子、スズ原子、チタン原子、及びジルコニウム原子からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属原子を表し、Xは、水酸基又は加水分解性基を表し、mはMの原子価を表す。nは、1から(m−1)のいずれかの正整数を表し、nが2以上の場合、Rは、同一でも相異なっていてもよい。(m−n)が2以上の場合、Xは同一であっても、相異なっていてもよいが、Xのうち、少なくとも一個は加水分解性基である。〕で表される化合が好ましい。
前記置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、n−へキシル基、イソへキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−デシル基等の炭素数1〜30のアルキル基;炭素数1〜30のアルケニル基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;等が挙げられる。
【0009】
前記置換基を有していてもよい炭素数1〜30のハロゲン化炭化水素基のハロゲン化炭化水素基としては、炭素数1〜30のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜30のハロゲン化アルケニル基、ハロゲン化アリール基等が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。具体的には、上記例示した炭化水素基中の水素原子の1個以上がフッ素原子、塩素原子又は臭素原子等のハロゲン原子に置換された基が挙げられる。
【0010】
これらの中でも、前記炭素数1〜30のハロゲン化炭化水素基としては、炭素数1〜30のアルキル基中の水素原子の2個以上がハロゲン原子に置換された基が好ましく、炭素数1〜30のアルキル基中の水素原子の2個以上がフッ素原子に置換されたフッ素化アルキル基がより好ましい。また、フッ素化アルキル基が分岐構造を有する場合には、分岐部分は炭素数1〜4、好ましくは炭素数1〜2の短鎖であるのが好ましい。
【0011】
フッ素化アルキル基としては、末端炭素原子にフッ素原子が1個以上結合した基が好ましく、末端炭素原子にフッ素原子が3個結合したCF基部分を有する基がより好ましく、末端が、フッ素原子が置換しない炭化水素基で内部の炭素鎖にフッ素原子が置換した炭素鎖であっても構わない。末端部分に、アルキル基の全ての水素原子がフッ素原子に置換されたペルフルオロアルキル部分を有し、かつ後述する金属原子Mとの間に、−(CH−(式中、hは1〜6の整数を表し、好ましくは2〜4の整数である。)で表されるアルキレン基を有する基が特に好ましい。
【0012】
前記置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基又は置換基を有していてもよい炭素数1〜30のハロゲン化炭化水素基の置換基としては、カルボキシル基;アミド基;イミド基;エステル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;または水酸基等が挙げられる。これらの置換基の数は0〜3であることが好ましい。
【0013】
連結基を含む炭素数1〜30の炭化水素基の炭化水素基としては、具体的には、前記置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基の炭化水素基として挙げたものと同様のものが挙げられる。
【0014】
また、連結基を含む炭素数1〜30のハロゲン化炭化水素基のハロゲン化炭化水素基としては、具体的には、前記置換基を有していてもよい炭素数1〜30のハロゲン化炭化水素基のハロゲン化炭化水素基として挙げたものと同様のものが挙げられる。
【0015】
前記連結基は、炭化水素基若しくはハロゲン化炭化水素基の炭素−炭素結合間、又は炭化水素基の炭素と後述する金属原子Mとの間に存在するのが好ましい。
【0016】
連結基の具体例としては、−O−、−S−、−SO−、−CO−、−C(=O)O−、−C(=O)NR51−(式中、R51は、水素原子;メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基等のアルキル基;を表す。)、−N(R)CON(R’)−等が挙げられる。
【0017】
これらの中でも、Rとしては、撥水性、耐久性の観点から、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数1〜30のフッ素化アルキル基、又は連結基を含むフッ素化アルキル基であるのが好ましい。
【0018】
Mは、ケイ素原子、ゲルマニウム原子、スズ原子、チタン原子、及びジルコニウム原子からなる群から選ばれる1種の原子を表す。これらの中でも、原料の入手容易性、反応性等の観点からケイ素原子が特に好ましい。
【0019】
Xは、水酸基又は加水分解性基を表し、加水分解性基としては、水と反応して分解する基であれば特に制約されない。具体的には、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルコキシ基;置換基を有していてもよい炭化水素オキシ基(ただし、アルコキシ基を除く);置換基を有していてもよいアシルオキシ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;イソシアネート基;シアノ基;アミノ基;またはアミド基等を例示することができる。
【0020】
炭素数1〜6のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−へキシルオキシ基等が挙げられる。
【0021】
アシルオキシ基としては、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、プロパノイルオキシ基、n−プロピルカルボニルオキシ基、イソプロピルカルボニルオキシ基、n−ブチルカルボニルオキシ基、プロパノイルオキシ基、脂環式炭化水素オキシ基;シクロプロピルオキシ基、シクロプロピルメチルオキシ、シクロヘキシル基、ノルボニルオキシ基等、アルケニルオキシ基;アリルオキシ基等、アルキニルオキシ基;プロパルギルオキシ基等、アラルキルオキシ基;プロパルギルオキシ基等、アラルキルオキシ基;ビニルオキシ基、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基等、芳香族炭化水素オキシ基;フェノキシ基、ナフチルオキシ基等、ベンゾイルオキシ基等が挙げられる。
【0022】
炭化水素オキシ基の炭化水素としては、炭素数1〜30のアルケニル基、フェニル基、ナフチル基などのアリール基などが挙げられる。
X中の「置換基を有しても良い」の置換基としては、カルボキシル基、アミド基、イミド基、エステル基、水酸基等が挙げられる。
Xとしては、特に、水酸基、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルコキシ基、アシルオキシ基、又はイソシアネート基が好ましく、炭素数1〜4のアルコキシ基又はアシルオキシ基がより好ましい。
【0023】
mは、金属原子Mの原子価を表す。
【0024】
nは、1から(m−1)のいずれかの正整数を表す。高密度の有機薄膜を製造する上では、nは1であるのが好ましい。nが2以上のとき、Rは同一であっても相異なっていてもよい。また、(m−n)が2以上のとき、Xは同一であっても相異なっていてもよいが、Xのうち少なくとも一個は加水分解性基であることが好ましい。
【0025】
式(I)で表される化合物の具体例としては、下記に示すものが挙げられる。なお、以下においては、金属原子Mがケイ素原子である化合物を代表例として示しているが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、加水分解性基についても、例示した官能基に限定されず他の加水分解性基が結合したものであってもよい。
【0026】
CH(CHSi(OCH、CH(CHSi(OCH、CH(CHSi(OCH、CH(CH11Si(OCH、CH(CH13Si(OCH、CH(CH15Si(OCH、CH(CH17Si(OCH、CH(CH19Si(OCH、CH(CH21Si(OCH、CH(CH17Si(OCHCH、CH(CH17SiCl、CH(CHSi(OCHCH、CH(CHSiCl、CH(CHSi(CH)(OCHCH、CH(CHSi(CH)(OCH、CH(CHSi(CH(OCHCH)、CH(CHSi(CH(OCH)、CHCHO(CH15Si(OCH、CFCHO(CH15Si(OCH、CH(CHSi(CH(CH15Si(OCH、CH(CHSi(CH(CHSi(OCH、CHCOO(CH15Si(OCH、CF(CF(CHSi(OCH、CF(CF−(CH=CH)−Si(OCH、CHCHO(CH15Si(OC、CH(CHSi(CH(CH15Si(OC、CH(CHSi(CH(CHSi(OC、CF(CHSi(CH(CHSi(OC、CHCOO(CH15Si(OC、CFCOO(CH15Si(OC、CFCOO(CH15Si(OCH、CF(CF(CHSi(OC、CF(CF(CHSi(OC、CF(CF(CHSi(OC、CF(CF(CH=CH)Si(OC、CF(CF(CHSi(OCH、CF(CF(CHSi(OCH、CF(CF(CHSi(CH)(OC、CF(CF(CHSi(CH)(OCH、CF(CF(CHSi(CH(OC)、CF(CF(CHSi(CH(OCH)、CF(CHSiCl、CF(CF(CHSiCl、CF(CF(CHSiCl、CF(CF(CHSiCl、CF(CF(CHSiCl、CF(CF(CHSiCl、CF(CF(CHSiCl、CF(CFO(CF(CHSiCl、CF(CFO(CF(CHSiCl、CF(CF(CHO(CHSiCl、CF(CFCONH(CHSiCl、CF(CFCONH(CHSiCl、CF(CFO[CF(CF)CF(CF)O]CF(CF)CONH(CHSiCl、CF(CF(CHSi(CH)Cl、CF(CF(CHSi(CH)Cl、CF(CHSi(CH)Cl、CF(CF(CHSi(CH)Cl、CF(CF(CHSi(CH)Cl、CF(CF(CHSi(CH)Cl、CF(CF(CF(CHSi(CH)Cl、CF(CF(CF(CHSi(CH)Cl、CF(CF(CHO(CHSi(CH)Cl、CF(CFCONH(CHSi(CH)Cl、CF(CFCONH(CHSi(CH)Cl、CF(CFO[CF(CF)CF(CF)O]CF(CF)CONH(CHSi(CH)Cl、CH(CHSiCl、CH(CF(CHSiCl、CH(CF(CHSi(CH)Cl、CH(CF(CHSi(OCH、CH(CF(CHSi(NCO)、CH(CF(CHSiCl、CH(CF(CHSi(OCH、CH(CF(CHSi(NCO)、CH(CF(CHSiCl、CH(CF(CHSi(OCH、CH(CF(CHSi(NCO)、CHCH(CF(CHSiCl、CHCH(CF(CHSi(OCH、CHCH(CF(CHSi(NCO)、CHCH(CF(CHSiCl、CHCH(CF(CH
Si(OCH、CHCH(CF(CHSi(NCO)、CHCH(CF10(CHSiCl、CH(CF4O(CF(CHSiCl、CH(CF(CHO(CHSiCl、CH(CF(CHO(CHSiCl、CH(CF(CHO(CHSiCl、CHCH(CF(CHO(CHSiCl、CH(CFCONH(CHSiCl、CH(CFCONH(CHSiCl、CH(CFO[CF(CF)CF(CF)O]CF(CF)CONH(CHSiCl、CHCHO(CH15Si(OCH)(OH)、CFCHO(CH15Si(OCH(OH)、CH(CHSi(CH(CH15Si(OCH)(OH)、CH(CHSi(CH(CHSi(OCH)(OH)、CHCOO(CH15Si(OCH)(OH)、CF(CF(CHSi(OCH)(OH)、CF(CF(CH=CH)Si(OCH)(OH)、CHCHO(CH15Si(OC)(OH)、CH(CHSi(CH(CH15Si(OC)(OH)、CH(CHSi(CH(CHSi(OC)(OH)、CF(CHSi(CH(CHSi(OC)(OH)、CHCOO(CH15Si(OC)(OH)、CFCOO(CH15Si(OC)(OH)、CFCOO(CH15Si(OCH)(OH)、CF(CF(CHSi(OC)(OH)、CF(CF(CHSi(OC)(OH)、CF(CF(CHSi(OC)(OH)、CF(CF(CH=CH)Si(OC)(OH)、CF(CF(CHSi(OCH)(OH)、CF(CF(CHSi(OCH)(OH)、CF(CF(CHSi(CH)(OH)、CF(CF(CHSi(CH)(OH)、CHCHO(CH15Si(OCH(OH)、CFCHO(CH15Si(OCH(OH)、CH(CHSi(CH(CH15Si(OCH(OH)、CH(CHSi(CH(CHSi(OCH(OH)、CHCOO(CH15Si(OCH(OH)、CF(CF(CHSi(OCH(OH)、CHCHO(CH15Si(OC(OH)、CF(CF(CH=CH)Si(OCH(OH)、CH(CHSi(CH(CH15Si(OC(OH)、CH(CHSi(CH(CHSi(OC(OH)、CF(CHSi(CH(CHSi(OC(OH)、CHCOO(CH15Si(OC(OH)、CFCOO(CH15Si(OC(OH)、CFCOO(CH15Si(OCH(OH)、CF(CF(CHSi(OC(OH)、CF(CF(CHSi(OC(OH)、CF(CF(CHSi(OC(OH)、CF(CF(CH=CH)Si(OC(OH)、CF(CF(CHSi(OCH(OH)、CF(CF(CHSi(OCH(OH)、CF(CF(CHSi(CH)(OC)(OH)、CF(CF(CHSi(CH)(OCH)(OH)、CF(CHSi(OCH)(OH)、CF(CF(CHSi(OCH)(OH)、CF(CF(CHSi(OCH)(OH)、CF(CF(CHSi(OCH)(OH)、CF(CF(CHSi(OCH)(OH)、CF(CF(CHSi(OCH)(OH)、CF(CF(CHSi(OCH)(OH)、CF(CFO(CF(CHSi(OCH)(OH)、CF(CFO(CF(CHSi(OCH)(OH)、CF(CF(CHO(CHSi(OCH)(OH)、CF(CFCONH(CHSi(OCH)(OH)、CF(CFCONH(CHSi(OCH)(OH)、CF(CFO[CF(CF)CF(CF)O]CF(CF)CONH(CHSi(OCH)(OH)、CF(CHSi(OCH(OH)、CF(CF(CHSi(OCH(OH)、CF(CF(CHSi(OCH(OH)、CF(CF(CHSi(OCH

(OH)、CF(CF(CHSi(OCH(OH)、CF(CF(CHSi(OCH(OH)、CF(CF(CHSi(OCH(OH)、CF(CFO(CF(CHSi(OCH(OH)、CF(CFO(CF(CHSi(OCH(OH)、CF(CF(CHO(CHSi(OCH(OH)、CF(CFCONH(CHSi(OCH(OH)、CF(CFCONH(CHSi(OCH(OH)、CF(CFO[CF(CF)CF(CF)O]CF(CF)CONH(CHSi(OCH(OH)、CH(CHSi(OCH)(OH)、CH(CF(CHSi(OCH)(OH)、CH(CF(CHSi(OCH)(OH)、CH(CF(CHSi(NCO)(OH)、CH(CF(CHSi(OCH)(OH)、CH(CF(CHSi(NCO)(OH)、CH(CF(CHSi(OCH)(OH)、CH(CF(CHSi(NCO)(OH)、CHCH(CF(CHSi(OCH)(OH)、CHCH(CF(CH)2Si(OCH)(OH)、CHCH(CF(CHSi(NCO)(OH)、CHCH(CF(CHSi(OCH)(OH)、CHCH(CF(CHSi(NCO)(OH)、CHCH(CF10(CHSi(OCH)(OH)、CH(CFO(CF(CHSi(OCH)(OH)、CH(CF(CHO(CHSi(OCH)(OH)、CH(CF(CHO(CHSi(OCH)(OH)、CH(CF(CHO(CHSi(OCH)(OH)、CHCH(CF(CHO(CHSi(OCH)(OH)、CH(CFCONH(CHSi(OCH)(OH)、CH(CFCONH(CHSi(OCH)(OH)、CH(CFO[CF(CF)CF(CF)O]CF(CF)CONH(CHSi(OCH)(OH)、CF(CF(CHSi(CH)(OCH)(OH)、CF(CF(CHSi(CH)(OCH)(OH)、CF(CHSi(CH)(OCH)(OH)、CF(CF(CHSi(CH)(OCH)(OH)、CF(CF(CHSi(CH)(OCH)(OH)、CF(CF(CHSi(CH)(OCH)(OH)、CF(CF(CF(CHSi(CH)(OCH)(OH)、CF(CF(CF(CHSi(CH)(OCH)(OH)、CF(CF(CHO(CHSi(CH)(OCH)(OH)、CF(CFCONH(CHSi(CH)(OCH)(OH)、CF(CFCONH(CHSi(CH)(OCH)(OH)、CF(CFO[CF(CF)CF(CF)O]CF(CF)CONH(CHSi(CH)(OCH)(OH)、CH(CHSi(OCH(OH)、CH(CF(CHSi(OCH(OH)、CH(CF(CHSi(CH)(OCH)(OH)、CH(CF(CHSi(OCH(OH)、CH(CF(CHSi(NCO)(OH)、CH(CF(CHSi(OCH(OH)、CH(CF(CHSi(NCO)(OH)、CH(CF(CHSi(OCH(OH)、CH(CF(CHSi(NCO)(OH)、CHCH(CF(CHSi(OCH(OH)、CHCH(CF(CHSi(OCH(OH)、CHCH(CF(CHSi(NCO)(OH)、CHCH(CF(CHSi(OCH(OH)、CHCH(CF(CHSi(NCO)(OH)、CHCH(CF10(CHSi(OCH(OH)、CH(CF4O(CF(CHSi(OCH(OH)、CH(CF(CHO(CHSi(OCH(OH)、CH(CF(CHO(CHSi(OCH(OH)、CH(CF(CHO(CHSi(OCH(OH)、CHCH(CF(CHO(CHSi(OCH(OH)、CH(CFCONH(CHSi(OCH(OH)、CH(CFCONH(CHSi(OCH(OH)、CH(CFO[CF(CF)CF(CF)O]CF(CF)CONH(CHSi(OCH(OH)、CHCHO(CH15Si(OH)、CFCHO(CH15

Si(OH)、CH(CHSi(CH(CH15Si(OH)、CH(CHSi(CH(CHSi(OH)、CHCOO(CH15Si(OH)、CF(CF(CHSi(OH)、CF(CF(CH=CH)Si(OH)、CHCHO(CH15Si(OH)、CH(CHSi(CH(CH15Si(OH)、CH(CHSi(CH(CHSi(OH)、CF(CHSi(CH(CHSi(OH)、CHCOO(CH15Si(OH)、CFCOO(CH15Si(OH)、CFCOO(CH15Si(OH)、CF(CF(CHSi(OH)、CF(CF(CHSi(OH)、CF(CF(CHSi(OH)、CF(CF(CH=CH)Si(OH)、CF(CF(CHSi(OH)、CF(CF(CHSi(OH)、CF(CF(CHSi(CH(OH)、CF(CHSi(OH)、CF(CF(CHSi(OH)、CF(CF(CHSi(OH)、CF(CF(CHSi(OH)、CF(CF(CHSi(OH)、CF(CF(CHSi(OH)、CF(CF(CHSi(OH)、CF(CFO(CF(CHSi(OH)、CF(CFO(CF(CHSi(OH)、CF(CF(CHO(CHSi(OH)、CF(CFCONH(CHSi(OH)、CF(CFCONH(CHSi(OH)、CF(CFO[CF(CF)CF(CF)O]CF(CF)CONH(CHSi(OH)、CH(CHSi(OH)、CH(CF(CHSi(OH)、CH(CF(CHSi(OH)、CH(CF(CHSi(OH)、CH(CF(CHSi(OH)、CH(CF(CHSi(OH)、CH(CF(CHSi(OH)、CH(CF(CHSi(OH)、CHCH(CF(CHSi(OH)、CHCH(CF(CHSi(OH)、CHCH(CF(CHSi(OH)、CHCH(CF(CHSi(OH)、CHCH(CF(CHSi(OH)、CHCH(CF10(CHSi(OH)、CH(CF40(CF(CHSi(OH)、CH(CF(CHO(CHSi(OH)、CH(CF(CHO(CHSi(OH)、CH(CF(CHO(CHSi(OH)、CHCH(CF(CHO(CHSi(OH)、CH(CFCONH(CHSi(OH)、CH(CFCONH(CHSi(OH)、CH(CFO[CF(CF)CF(CF)O]CF(CF)CONH(CHSi(OH)、CF(CF(CHSi(CH)(OH)、CF(CF(CHSi(CH)(OH)、CF(CHSi(CH)(OH)、CF(CF(CHSi(CH)(OH)、CF(CF(CHSi(CH)(OH)、CF(CF(CHSi(CH)(OH)、CF(CF(CF(CHSi(CH)(OH)、CF(CF(CF(CHSi(CH)(OH)、CF(CF(CHO(CHSi(CH)(OH)、CF(CFCONH(CHSi(CH)(OH)、CF(CFCONH(CHSi(CH)(OH)、CF(CFO[CF(CF)CF(CF)O]CF(CF)CONH(CHSi(CH)(OH)、CH(CF(CHSi(CH)(OH)、等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、これらの化合物は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
有機薄膜は、単分子膜であっても2層以上の多層膜であってもよいが、単分子膜が好適である。単分子膜の場合には、有機基の鎖長にほぼ等しい厚さになる。
有機薄膜は、化学吸着膜であるのが好ましく、前記基板が結晶性を有さず、かつ、化学吸着膜が結晶性を有することがより好ましい。この場合、結晶性とは、多結晶であっても単結晶であっても構わない。化学吸着膜としては、金属−酸素結合を介して共有結合した有機薄膜を例示することができる。
本発明の有機薄膜形成方法により形成される有機薄膜は、自己集合膜であるのが好ましい。ここで自己集合膜とは、外部からの強制力なしに秩序だった構造を形成してなる膜を意味する。
【0028】
(水溶性化合物)
本発明において、水溶性化合物とは、基材上に塗布することができ、かつ薄膜作製後除去することのできる、水溶性の無機化合物又は高分子化合物を意味し、好ましくは高分子化合物である。
水溶性の無機化合物としては、例えば、硫酸バリウム、炭酸バリウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム等の1種又は2種以上が挙げられる。
水溶性の高分子化合物としては、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸アンモニウム塩、ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム塩、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、アルギン酸ナトリウム、寒天、多糖類(メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロプルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等のセルロース系誘導体や澱粉等)、タンパク質(ゼラチン、膠等)等の1種又は2種以上が挙げられる。
【0029】
(含水部材)
本発明において、含水部材としては、基材を部分的にマスクすることのできる部材であって、仮接着、挟着などの手段により基材に一時的に固定できるものであれば特に制限はない。そのような含水部材としては、紙、ゲル、布などからなる吸水性シートを任意の形状にして使用することができる。
【0030】
(基材上に薄膜を部分的に形成する方法)
本発明は、以下の工程を有する。
工程(A):
基材上の薄膜形成領域以外の領域に、水溶性化合物を塗布するか又は含水部材でマスクする工程、
工程(B):
(A)の工程後、薄膜形成用溶液を基材と接触させて基材上に薄膜を形成する工程、及び
工程(C)
(B)の工程後、水溶性化合物又は含水部材を除去する工程
【0031】
以下に、各工程について説明する。
工程(A)
本発明において用いる基材は、特に制限されない。基材としては、有機薄膜形成用溶液中の有機薄膜を形成する分子と相互作用し得る官能基を表面に有する基材でなくてもよいが、有機薄膜形成用溶液中の有機薄膜を形成する分子と相互作用し得る官能基を表面に有する基材であることが好ましく、活性水素を表面に有する基材であることが特に好ましい。活性水素を表面に有する基材を用いると、基材表面の活性水素と、工程(B)中の有機薄膜形成用溶液中の分子とが、化学的な相互作用により基材表面に容易に化学吸着膜を形成することができる。ここで、有機薄膜形成用溶液中の有機薄膜を形成する分子と相互作用し得る官能基を表面に有する基材とは、有機薄膜形成用溶液中の有機薄膜を形成する分子と、化学結合し得る官能基を表面に有する基材を意味する。
【0032】
ここで活性水素とは、プロトンとして解離しやすいものをいい、活性水素を含む官能基としては、水酸基(−OH)、カルボキシル基(−COOH)、ホルミル基(−CHO)、イミノ基(=NH)、アミノ基(−NH)、チオール基(−SH)等が挙げられ、なかでも、水酸基が好ましい。
【0033】
基材表面に水酸基を有する基材として、具体的には、アルミニウム、銅、ステンレス、ニッケル等の金属;ガラス;シリコンウェハー;セラミックス;プラスチック;ダイヤモンド等の鉱物;紙;天然繊維、合成繊維等の繊維;皮革;その他親水性の物質;等からなる基材が挙げられる。なかでも、金属、ガラス、シリコンウェハー、セラミックス、紙、繊維、プラスチック及び鉱物からなる基材が好ましい。
【0034】
プラスチック、ダイヤモンド、合成繊維のように表面に水酸基を持たない材質からなる基材には、予め基材表面を酸素含有のプラズマ雰囲気中で(例えば100Wで20分)処理したり、コロナ処理して親水性基を導入することができる。ポリアミド樹脂又はポリウレタン樹脂等からなる基材は、表面にイミノ基が存在しており、このイミノ基の活性水素と金属系界面活性剤のアルコキシシリル基等とが脱アルコール反応し、シロキサン結合(−SiO−)を形成するので特に表面処理を必要としない。
【0035】
また、表面に活性水素を持たない基材を用いる場合、この基材の表面に、予めSiCl、SiHCl、SiHCl、Cl−(SiClO)−SiCl(式中、bは自然数)及びSi(OR)から選ばれる少なくとも一つの化合物を接触させた後、加水分解により脱塩化水素や脱アルコールさせることにより、表面に活性水素を有するシリカ下地層を形成しておくこともできる。
【0036】
基材上の薄膜形成領域以外の領域に水溶性化合物を塗布するには、特に制限はなく、水溶性化合物の溶液を刷毛塗り法、インクジェット塗布法、スプレー法、浸漬法などにより塗布することができる。
水溶性化合物の溶液は、基材上に塗布することができる溶液であればよく、通常、水、エタノールなどの親水性溶媒に水溶性化合物を0.1〜10質量%含有するものが使用される。
また、基材上の薄膜形成領域以外の領域を含水部材でマスクするには、含水部材の底面に仮接着剤を塗って仮接着したり、テープ、その他の挟着用具を用いて挟着するなどにより一時的に固定する。
薄膜を部分的に形成する基材としては、具体的には、切断用刃の刃先、金型、針、メタルマスク、カラーフィルター用ガラス、MEMS用シリコンウェハ等が挙げられる。
【0037】
工程(B)
工程(A)により部分的にマスクされた基材に薄膜を形成する。薄膜は、マスクされた領域に形成させてもかまわない。
薄膜を基材上に形成させる方法としては、真空蒸着法、液相成長法、化学気相成長法、ラングミュア法、スパッタリング法、ディップ法(浸漬法)、スプレーコート、スピンコート、ローラーコート、刷毛塗り、スクリーン印刷等が挙げられる。有機単分子膜を作製する場合はディップ法が好ましく、ディップ法の場合には、基材を有機薄膜形成用溶液に浸漬する時間は基材の種類等にも左右され、一概にはいえないが、数秒〜24時間とすることができ、数秒〜10時間が好ましい。
【0038】
有機薄膜の原料として、金属系界面活性剤、特に少なくとも1以上の加水分解性基を有する金属系界面活性剤を使用するときは、該金属系界面活性剤及び該金属系界面活性剤と相互作用し得る化合物を含有する有機薄膜形成用溶液に、ディップ法を用いて前記基材を接触させることが好ましい。これにより、不純物がより少ないより緻密な有機薄膜をより迅速に形成することができる。
【0039】
金属系界面活性剤と相互作用し得る化合物は、金属系界面活性剤の金属部分又は加水分解性基部分と配位結合や水素結合等を介して相互作用をすることにより、加水分解性基又は水酸基を活性化させ、加水分解を促進させると共に、縮合を促進させる作用を有する触媒である。具体的には、金属酸化物、金属アルコキシド類、金属アルコキシド類の部分加水分解生成物、シラノール縮合触媒、酸触媒等が上げられ、金属アルコキシド類、金属アルコキシド類の部分加水分解生成物が好ましい。
【0040】
金属酸化物としては、特に限定されないが、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、ケイ素、ゲルマニウム、インジウム、スズ、タンタル、亜鉛、タングステン、鉛からなる群から選ばれる1種の金属からなる酸化物を好ましく例示することができる。
【0041】
金属酸化物は、ゾル、ゲル、固体状等の何れの状態のものも使用することができる。ゲル、ゾルの製造方法は、特に限定されず、例えばシリカゾルを例にとると、珪酸ナトリウム溶液を陽イオン交換する方法、シリコンアルコキシドを加水分解する方法等を例示することができる。特に、有機溶媒中に安定に分散しているゾルが好ましく、さらに、ゾルの粒子径が10〜100nmの範囲、さらに好ましくは、10〜20nmの範囲であるものが好ましい。ゾルの形状は特に限定されず、球状、細長い形状等、いずれのものも用いることができる。
【0042】
具体的には、メタノールシリカゾル、IPA−ST、IPA−ST−UP、IPA−ST−ZL、NPC−ST−30、DMAC−ST、MEK−ST、MIBK−ST、XBA−ST、PMA−ST(以上、いずれも日産化学工業(株)社製オルガノシリカゾルの商品名を表す。)等を例示することができる。
【0043】
シラノール縮合触媒としては、カルボン酸金属塩、カルボン酸エステル金属塩、カルボン酸金属塩ポリマー、カルボン酸金属塩キレート、チタン酸エステル及びチタン酸エステルキレート等を例示することができる。
【0044】
具体的には、酢酸第一スズ、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジオクテート、ジブチルスズジアセテート、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズジオクテート、ジオクチルスズジアセテート、ジオクタン酸第一スズ、ナフテン酸鉛、ナフテン酸コバルト、2−エチルヘキセン酸鉄、ジオクチルスズビスオクチリチオグリコール酸エステル塩、ジオクチルスズマレイン酸エステル塩、ジブチルスズマレイン酸塩ポリマー、ジメチルスズメルカプトプロピオン酸塩ポリマー、ジブチルスズビスアセチルアセテート、ジオクチルスズビスアセチルラウレート、チタンテトラエトキサイド、チタンテトラブトキサイド、チタンテトライソプロポキサイド、チタンビス(アセチルアセトニル)ジプロポキサイド等を例示することができる。
【0045】
酸触媒としては、塩酸、硝酸、ホウ酸、ホウフッ化水素酸等の鉱酸、酢酸、ギ酸、シュウ酸、炭酸、トリフルオロ酢酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等の有機酸等を例示することができ、さらには、光照射によって酸を発生する光酸発生剤、具体的には、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルホスホニウムヘキサフルオロホスフェート等を例示することができる。
【0046】
金属アルコキシド類としては、特に限定されないが、透明性に優れる有機薄膜を得ることができること等の理由から、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、ケイ素、ゲルマニウム、インジウム、スズ、タンタル、亜鉛、タングステン及び鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属のアルコキシド類が好ましい。
【0047】
金属アルコキシド類のアルコキシ基の炭素数は特に限定されないが、含有酸化物濃度、有機物の脱離容易性、入手容易性等から、炭素数1〜4のものが好ましい。
【0048】
本発明に用いる金属アルコキシド類の具体例としては、Si(OCH、Si(OC、Si(OC−i)、Si(OC−t)等のケイ素アルコキシド;Ti(OCH、Ti(OC、Ti(OC−i)、Ti(OC等のチタンアルコキシド;Ti[OSi(CH、Ti[OSi(C等のテトラキストリアルキルシロキシチタン;Zr(OCH、Zr(OC、Zr(OC、Zr(OC等のジルコニウムアルコキシド;Al(OCH、Al(OC、Al(OC−i)、Al(OC等のアルミニウムアルコキシド;Ge(OC等のゲルマニウムアルコキシド;In(OCH、In(OC、In(OC−i)、In(OC等のインジウムアルコキシド;Sn(OCH、Sn(OC、Sn(OC−i)、Sn(OC等のスズアルコキシド;Ta(OCH、Ta(OC、Ta(OC−i)、Ta(OC等のタンタルアルコキシド;W(OCH、W(OC、W(OC−i)、W(OC等のタングステンアルコキシド;Zn(OC等の亜鉛アルコキシド;Pb(OC等の鉛アルコキシド;等が挙げられる。これらの金属アルコキシド類は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0049】
また本発明においては、金属アルコキシド類として、2種以上の金属アルコキシド類の反応により得られる複合アルコキシド、1種もしくは2種以上の金属アルコキシド類と、1種もしくは2種以上の金属塩との反応により得られる複合アルコキシド、及びこれらの組み合わせを用いることもできる。
【0050】
2種以上の金属アルコキシド類の反応により得られる複合アルコキシドとしては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のアルコキシドと、遷移金属のアルコキシドとの反応により得られる複合アルコキシドや、第3B族元素の組合せにより錯塩の形で得られる複合アルコキシド等を例示することができる。
【0051】
その具体例としては、BaTi(OR)、SrTi(OR)、BaZr(OR)、SrZr(OR)、LiNb(OR)、LiTa(OR)、及び、これらの組合せ、LiVO(OR)、MgAl(OR)、(RO)SiOAl(OR’)、(RO)SiOTi(OR’)、(RO)SiOZr(OR’)、(RO)SiOB(OR’)、(RO)SiONb(OR’)、(RO)SiOTa(OR’)等のケイ素アルコキシドと、前記金属アルコキシド類との反応物及びその縮重合物等が挙げられる。ここで、R及びR’はアルキル基等を表す。
【0052】
1種もしくは2種以上の金属アルコキシド類と1種もしくは2種以上の金属塩との反応により得られる複合アルコキシドとしては、金属塩と金属アルコキシド類との反応により得られる化合物を例示することができる。
【0053】
金属塩としては、塩化物、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、ギ酸塩、シュウ酸塩等を、金属アルコキシド類としては、上述した金属アルコキシド類と同様のものをそれぞれ例示することができる。
金属アルコキシド類の部分加水分解生成物は、金属アルコキシド類を完全に加水分解する前に得られるものであって、オリゴマーの状態で存在する。
【0054】
有機薄膜形成用溶液に用いる有機溶媒としては、炭化水素系溶媒、フッ化炭素系溶媒、及びシリコーン系溶媒が好ましく、炭化水素系溶媒がより好ましい。なかでも、沸点が100〜250℃のものが特に好ましい。
【0055】
具体的には、n−ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、石油ナフサ、ソルベントナフサ、石油エーテル、石油ベンジン、イソパラフィン、ノルマルパラフィン、デカリン、工業ガソリン、灯油、リグロイン等の炭化水素系溶媒;CBrClCF、CClFCFCCl、CClFCFCHFCl、CFCFCHCl、CFCBrFCBrF、CClFCClFCFCCl、Cl(CFCFCl)Cl、Cl(CFCFCl)CFCCl、Cl(CFCFCl)Cl等フロン系溶媒、フロリナート(3M社製品)、アフルード(旭ガラス社製品)等のフッ化炭素系溶媒;ジメチルシリコーン、フェニルシリコーン、アルキル変性シリコーン、ポリエーテルシリコーン等のシリコーン系溶媒;が挙げられる。これらの溶媒は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0056】
有機薄膜形成用溶液に基材を接触させる工程は、一度に長い時間行ってもよいし、複数回に分けて短時間で行ってもよい。また、有機薄膜の形成を促進するために超音波を用いることもできる。
【0057】
有機薄膜形成用溶液に基材を接触させる際の有機薄膜形成用溶液の温度は、該溶液が安定性を保てる範囲であれば特に制限されないが、通常、室温から溶液の調製に用いた溶媒の還流温度までの範囲である。有機薄膜形成用溶液を接触に好適な温度とするには、該有機薄膜形成用溶液を加熱してもよいし、基材そのものを加熱してもよいし、その両方を加熱してもよい。接触後、基板を乾燥する。
【0058】
有機薄膜形成用溶液中の金属系界面活性剤の含有量は、特に制限されないが、より緻密な単分子膜を製造する観点からは、有機薄膜形成用溶液に対し0.1〜30重量%の範囲であることが好ましい。
【0059】
また、金属系界面活性剤と相互作用し得る化合物の使用量は、形成する単分子の有機薄膜の物性に悪影響を与えない量であれば特に制限されないが、金属系界面活性剤1モルに対して酸化物換算モル数で、0.001〜1モルであることが好ましく、0.001〜0.2モルであることがより好ましい。
【0060】
有機薄膜形成用溶液の調製方法は特に制限されない。有機薄膜形成用溶液は、例えば、少なくとも1以上の加水分解性基を有する金属系界面活性剤、該金属系界面活性剤と相互作用し得る化合物、及び有機溶媒を含む混合物を攪拌するなどして調製することができる。
【0061】
撹拌温度は特に制限されないが、例えば−100℃〜+100℃であってもよく、−20℃〜+50℃であることが好ましい。また、撹拌時間も特に制限されないが、数分から数時間行うことができる。
【0062】
調製した有機薄膜形成用溶液中に、金属酸化物等を含む析出物が生じる場合があるが、これらの析出物等の不純物は、不純物のより少ない緻密な単分子の有機薄膜を得るためには、基材に接触させる前に、それらの不純物を除去又は低減しておくことが好ましい。析出物は、濾過、デカント等の操作で簡便に除去又は低減することができる。
【0063】
有機薄膜形成用溶液は、所定の範囲内の水分含量になるように調整され、かつ保持された溶液であることが好ましい。具体的には、有機薄膜形成用溶液中の水分含量が、30ppm以上であることが好ましく、30ppmから有機溶媒への飽和水分量の範囲、より具体的には、30〜1000ppmの範囲内であることがさらに好ましく、50〜800ppmの範囲内であることがさらにより好ましい。水分含量が30ppm以上であると、より迅速に有機薄膜の形成を行うことができ、また、水分含量が1000ppm以下であれば、金属系界面活性剤等がより十分な活性を発揮することができる。
なお、ここで示す水分含量は、有機溶媒溶液の一部を採取してカールフィッシャー法で測定した値を示し、その方法原理を用いた装置で測定した値であれば、測定装置については特に限定されない。なお、有機溶媒溶液が均一である場合には、均一な溶液を一部採取して測定し、有機溶媒層と水分層が2層となっている場合には、有機溶媒層より一部採取して測定し、有機溶媒中に水分層が分散し分離不可能な状態な場合には、その分散液をそのまま採取して測定した値を示す。
【0064】
有機薄膜形成用溶液を所定の範囲内の水分含量に調製する方法は特に制限されないが、
(1)金属系界面活性剤、及び金属系界面活性剤と相互作用し得る化合物を含む有機薄膜形成用溶液に水を添加する方法、
(2)金属系界面活性剤と水を含む有機溶媒溶液に、金属系界面活性剤と相互作用し得る化合物を添加する方法、等を例示することができる。
なお、急激な反応を抑えるためには、(1)の方法において添加する水、(2)の方法において添加する金属系界面活性剤と相互作用し得る化合物は、有機溶媒等で希釈して用いることが好ましい。
【0065】
工程(C)
基材上に塗布された水溶性化合物は、水に浸漬するなどして水洗することにより除去される。水に浸漬する際には、必要に応じて揺動又は振動させてもよい。水溶性化合物を塗布した流域の上に薄膜が形成されていても、水溶性化合物は容易に除去することができる。水洗後乾燥する。
また、基材上に固定された含水部材は、引き剥がしたり、挟着用具を外すことにより除去することができる。
【実施例】
【0066】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【0067】
[1.薄膜形成溶液の調製]
調製例1−1
1)〔有機薄膜形成用補助剤の調製〕
200mLの四つ口フラスコに、室温でオクタデシルトリメトキシシラン(Gelest社製:純度95%)16.1g(43.0mmol)を仕込み、テトラブトキシチタン(日本曹達製)5.7g(16.4mmol)を加え、トルエン:76.5gを加えて希釈した。
この溶液に25℃で蒸留水1.7gを加え、室温で24時間反応させて有機薄膜形成用補助剤を得た。
[希釈前の有機薄膜形成溶液の調製]
500mLの四つ口フラスコに、室温でオクタデシルトリメトキシシラン(Gelest社製:純度95%)78.9g(200mmol)を仕込み、前記有機薄膜形成用補助剤A:0.16gを加え、トルエン:167.4gを加えて希釈した。
この溶液に蒸留水3.7gを加え、60℃で24時間反応させて希釈前の有機薄膜形成溶液を得た。
[有機薄膜形成溶液Aの調製]
2000mLの四つ口フラスコに、室温でオクタデシルトリメトキシシラン(Gelest社製:純度95%)6.45g(16.4mmol)を仕込み、前記有機薄膜形成用補助剤:2.5gを加え、トルエン:991gを加えて希釈し、有機薄膜形成溶液Aを得た。
【0068】
調製例1−2
1000mLの四つ口フラスコに、室温で前記希釈前の有機薄膜形成溶液:10gを仕込み、トルエン:490gを加え希釈し、有機薄膜形成溶液Bを得た。
【0069】
調製例1−3
1)オリゴマー溶液合成
100mLの四つ口フラスコに、室温でノナフロロヘキシルトリメトキシシラン(Gelest社製:純度95%)8.1g(21mmol)を仕込み、THF 41.2gを加えて希釈した。その溶液に純水 0.54g(42mmol)と0.1N塩酸 0.20g(0.02mmol)を加え攪拌して、室温で2日間反応させてオリゴマー溶液を得た。このオリゴマー溶液をGPC分析した結果、単量体:14.3%、2量体:51.6%、3量体:28.1%、4量体以上:5.9%(相対面積比)であった。
2)有機薄膜形成溶液の調製
500mLの四つ口フラスコに、室温でHFE−7300(住友スリーエム社製):480gを仕込み、前記オリゴマー溶液20gを加え撹拌し、有機薄膜形成溶液Cを得た。
【0070】
[2.水溶性樹脂溶液の調製]
調製例2−1
200mLの四つ口フラスコに、室温で蒸留水95gを仕込み、ポリビニルアルコール(PVA−105:クラレ製)5gを加えて、70℃で1時間撹拌して溶解し、5%水溶性樹脂溶液Aを調製した。
調製例2−2
200mLの四つ口フラスコに、室温で蒸留水95gを仕込み、ポリビニルアルコール(PVA−205:クラレ製)5gを加えて、70℃で1時間撹拌して溶解し、5%水溶性樹脂溶液Bを調製した。
調製例2−3
200mLの四つ口フラスコに、室温で蒸留水99gを仕込み、ポリビニルアルコール(PVA−205:クラレ製)5gを加えて、70℃で1時間撹拌して溶解し、1%水溶性樹脂溶液Cを調製した。
調製例2−4
200mLの四つ口フラスコに、室温で蒸留水99gを仕込み、ポリ(エチレン)オキシド(粘度平均分子量(Mv)=約200,000、アルドリッチ製)1gを加えて、70℃で1時間攪拌して溶解し、1%水溶性樹脂溶液Dを調製した。
【0071】
[3.有機薄膜部分形成]
(1)シリコン基板への応用例
実施例1
前洗浄として純水及びアルコールで超音波洗浄を行い、更にUVオゾン処理をしたシリコン基板の半分に、前記水溶性樹脂溶液Aを刷毛塗りして乾燥し、水溶性樹脂膜を形成した。
この基板を、水分を300ppmに調整した有機薄膜形成溶液Aに3分間浸漬し、その後引き上げて有機溶媒で洗浄後、乾燥した。その後基板全面を蒸留水で洗浄し、水溶性樹脂膜を除去し乾燥して、有機薄膜の形成部分と未形成部分を持つシリコン基板を作製した。
この有機薄膜の形成部分と未形成部分を、水及びテトラデカンで接触角を測定したところ、有機薄膜の形成部分は水:108°・テトラデカン:39°、有機薄膜の未形成部分は水:55°・テトラデカン:7°であった。
上記接触角の測定は、試料の表面にマイクロシリンジから水、又は、テトラデカンを5μL滴下した後、60秒後に、接触角測定器(360S型:エルマ社製)を用いて行った。以後の実施例も同様である。
【0072】
実施例2
前洗浄として純水及びアルコールで超音波洗浄を行い、更にUVオゾン処理をしたシリコン基板の半分に、前記水溶性樹脂溶液Bを刷毛塗りして乾燥し、水溶性樹脂膜を形成した。
この基板を、有機薄膜形成溶液Bに3分間浸漬し、その後引き上げて有機溶媒で洗浄後、乾燥した。その後基板全面を蒸留水で洗浄し、水溶性樹脂膜を除去し乾燥して、有機薄膜の形成部分と未形成部分を持つシリコン基板を作製した。
この有機薄膜の形成部分と未形成部分を、水及びテトラデカンで接触角を測定したところ、有機薄膜の形成部分は水:109°・テトラデカン:39°、有機薄膜の未形成部分は水:55°・テトラデカン:7°であった。
【0073】
実施例3
前洗浄として純水及びアルコールで超音波洗浄を行い、更にUVオゾン処理をしたシリコン基板の半分に、前記水溶性樹脂溶液Cを刷毛塗りして乾燥し、水溶性樹脂膜を形成した。
この基板を、有機薄膜形成溶液Bに3分間浸漬し、その後引き上げて有機溶媒で洗浄後、乾燥した。その後基板全面を蒸留水で洗浄し、水溶性樹脂膜を除去し乾燥して、有機薄膜の形成部分と未形成部分を持つシリコン基板を作製した。
この有機薄膜の形成部分と未形成部分を、水及びテトラデカンで接触角を測定したところ、有機薄膜の形成部分は水:108°・テトラデカン:38°、有機薄膜の未形成部分は水:59°・テトラデカン:6°であった。
【0074】
実施例4
前洗浄として純水及びアルコールで超音波洗浄を行い、更にUVオゾン処理をしたシリコン基板の半分に、前記水溶性樹脂溶液Cを刷毛塗りして乾燥し、水溶性樹脂膜を形成した。
この基板を、有機薄膜形成溶液Bに3分間浸漬し、その後引き上げて有機溶媒で洗浄後、エアーブローで洗浄液を除去した。その後基板全面を蒸留水で洗浄し、水溶性樹脂膜を除去し乾燥して、有機薄膜の形成部分と未形成部分を持つシリコン基板を作製した。
この有機薄膜の形成部分と未形成部分を、水及びテトラデカンで接触角を測定したところ、有機薄膜の形成部分は水:110°・テトラデカン:38°、有機薄膜の未形成部分は水:35°・テトラデカン:5°であった。
【0075】
実施例5
前洗浄として純水及びアルコールで超音波洗浄を行ったシリコン基板の下半分に、前記水溶性樹脂溶液Cを刷毛塗りして乾燥し、シリコン基板の半分に水溶性樹脂膜を形成した。この基板をUVオゾン処理後、有機薄膜形成溶液Bに3分間浸漬し、その後引き上げて有機溶媒で洗浄後、乾燥した。その後基板全面を蒸留水で洗浄し、水溶性樹脂膜を除去し乾燥して、有機薄膜の形成部分と未形成部分を持つシリコン基板を作製した。
この有機薄膜の形成部分と未形成部分を、水及びテトラデカンで接触角を測定したところ、有機薄膜の形成部分は水:95°・テトラデカン:35°、有機薄膜の未形成部分は水:37°・テトラデカン:6°であった。
【0076】
実施例6
前洗浄として純水およびアルコールで超音波洗浄を行い、さらにUVオゾン処理したシリコン基板の半分に、前記水溶性樹脂溶液Dを刷毛塗りして乾燥し、水溶性樹脂膜を形成した。
この基板を、有機薄膜形成溶液Bに3分間浸漬し、その後引き上げて有機溶媒で洗浄後、乾燥した。その後基板全体を蒸留水で洗浄し、水溶性樹脂膜を除去し乾燥して、有機薄膜の形成部分と未形成部分を持つシリコン基板を作製した。
この有機薄膜の形成部分と未形成部分を、水およびテトラデカンで接触角を測定したところ、有機薄膜の形成部分は水:100°・テトラデカン:37°、有機薄膜の未形成部分は水:28°・テトラデカン:11°であった。
【0077】
実施例7
前洗浄として純水及びアルコールで超音波洗浄を行い、更にUVオゾン処理をしたシリコン基板の半分に、前記水溶性樹脂溶液Cを刷毛塗りして乾燥し、水溶性樹脂膜を形成した。
この基板を、有機薄膜形成溶液Cに3分間浸漬し、その後引き上げて有機溶媒で洗浄後、乾燥した。その後基板全面を蒸留水で洗浄し、水溶性樹脂膜を除去し乾燥して、有機薄膜の形成部分と未形成部分を持つシリコン基板を作製した。
この有機薄膜の形成部分と未形成部分を、水及びテトラデカンで接触角を測定したところ、有機薄膜の形成部分は水:96°・テトラデカン:65°、有機薄膜の未形成部分は水:37°・テトラデカン:6°であった。
【0078】
実施例8
前洗浄として純水及びアルコールで超音波洗浄を行い、更にUVオゾン処理をしたシリコン基板の半分に、前記水溶性樹脂溶液Cを刷毛塗りして乾燥し、水溶性樹脂膜を形成した。
この基板を、市販フッ素系薄膜形成溶液Novec EGC−1720(3M製)に3分間浸漬し、その後引き上げて有機溶媒で洗浄後、乾燥した。その後基板全面を蒸留水で洗浄し、水溶性樹脂膜を除去し乾燥して、有機薄膜の形成部分と未形成部分を持つシリコン基板を作製した。
この有機薄膜の形成部分と未形成部分を、水及びテトラデカンで接触角を測定したところ、有機薄膜の形成部分は水:109°・テトラデカン:64°、有機薄膜の未形成部分は水:38°・テトラデカン:8°であった。
【0079】
実施例9
前洗浄として純水及びアルコールで超音波洗浄を行い、更にUVオゾン処理をしたシリコン基板の半分に、前記水溶性樹脂溶液Cを刷毛塗りして乾燥し、水溶性樹脂膜を形成した。
この基板とFAS−9をテフロン(登録商標)製容器に入れ、密閉条件で150℃に加熱、2時間放置し、その後常温まで冷却して取り出して基板全面を蒸留水で洗浄し、水溶性樹脂膜を除去し乾燥して、有機薄膜の形成部分と未形成部分を持つシリコン基板を作製した。
この有機薄膜の形成部分と未形成部分を、水及びテトラデカンで接触角を測定したところ、有機薄膜の形成部分は水:105°・テトラデカン:65°、有機薄膜の未形成部分は水:37°・テトラデカン:7°であった。
【0080】
(2)SUS304基板への応用例
実施例10
SUS304基板(鏡面仕上げ)の前洗浄として、純水及びアルコールで超音波洗浄を行い、更に55−60℃に加温した8wt%KOH水溶液に10分間浸漬して引き上げ後、蒸留水で基板をかけ洗いし,エアーブローで基板表面の水滴を除去した。
その基板の半分に、前記水溶性樹脂溶液Cを刷毛塗りして、水溶性樹脂膜を形成した。この基板を有機薄膜形成溶液Bに30分間浸漬し、その後引き上げて有機溶媒で洗浄後、エアーブローで基板表面の溶媒を除去した。次いで基板全面を蒸留水で洗浄し、水溶性樹脂膜を除去し乾燥して、有機薄膜の形成部分と未形成部分を持つSUS304基板を作製した。
この有機薄膜の形成部分と未形成部分を、水及びテトラデカンで接触角を測定したところ、有機薄膜の形成部分は水:98°・テトラデカン:24°、有機薄膜の未形成部分は水:62°・テトラデカン:7°であった。
【0081】
実施例11
前洗浄として純水及びアルコールで超音波洗浄を行い、更にUVオゾン処理をしたSUS304基板(鏡面仕上げ)の半分に、前記水溶性樹脂溶液Cを刷毛塗りして乾燥し、水溶性樹脂膜を形成した。
この基板を、有機薄膜形成溶液Bに30分間浸漬し、その後引き上げて有機溶媒で洗浄後、乾燥した。その後基板全面を蒸留水で洗浄し、水溶性樹脂膜を除去し乾燥して、有機薄膜の形成部分と未形成部分を持つSUS304基板を作製した。
この有機薄膜の形成部分と未形成部分を、水及びテトラデカンで接触角を測定したところ、有機薄膜の形成部分は水:108°・テトラデカン:34°、有機薄膜の未形成部分は水:65°・テトラデカン:8°であった。
【0082】
実施例12
SUS304基板(鏡面仕上げ)の前洗浄として、純水及びアルコールで超音波洗浄を行い、更に55−60℃に加温した8wt%KOH水溶液に10分間浸漬して引き上げ後、蒸留水で基板をかけ洗いし,エアーブローで基板表面の水滴を除去した。
その基板の半分に、蒸留水を含浸したクリーンルーム用ワイパー(クリーンルーム用不織布:クラレ社製)を貼り付け、有機薄膜形成溶液Bに30分間浸漬した。その後引き上げてクリーンルーム用ワイパーを取り除き、有機溶媒で洗浄後、エアーブローで基板表面の溶媒を除去し、有機薄膜の形成部分と未形成部分を持つSUS304基板を作製した。
この有機薄膜の形成部分と未形成部分を、水及びテトラデカンで接触角を測定したところ、有機薄膜の形成部分は水:100°・テトラデカン:26°、有機薄膜の未形成部分は水:77°・テトラデカン:8°であった。
【0083】
(3)ニッケル基板への応用例
実施例13
前洗浄として純水及びアルコールで超音波洗浄を行い、更にUVオゾン処理をしたニッケル基板の半分に、前記水溶性樹脂溶液Cを刷毛塗りして乾燥し、水溶性樹脂膜を形成した。
この基板を、有機薄膜形成溶液Bに30分間浸漬し、その後引き上げて有機溶媒で洗浄後、乾燥した。その後基板全面を蒸留水で洗浄し、水溶性樹脂膜を除去し乾燥して、有機薄膜の形成部分と未形成部分を持つニッケル基板を作製した。
この有機薄膜の形成部分と未形成部分を、水及びテトラデカンで接触角を測定したところ、有機薄膜の形成部分は水:98°、有機薄膜の未形成部分は水:59°であった。
【0084】
実施例14
前洗浄として純水及びアルコールで超音波洗浄を行い、更にUVオゾン処理をしたニッケル基板の半分に、蒸留水を含浸したクラレワイプを貼り付け、有機薄膜形成溶液Bに30分間浸漬した。その後引き上げてクラレワイプを取り除き、有機溶媒で洗浄後、エアーブローで基板表面の溶媒を除去し、有機薄膜の形成部分と未形成部分を持つニッケル基板を作製した。
この有機薄膜の形成部分と未形成部分を、水及びテトラデカンで接触角を測定したところ、有機薄膜の形成部分は水:108°・テトラデカン:36°、有機薄膜の未形成部分は水:60°・テトラデカン:13°であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)基材上の薄膜形成領域以外の領域に、水溶性化合物を塗布するか又は含水部材でマスクする工程、
(B)(A)の工程後、薄膜形成用溶液を基材と接触させて基材上に薄膜を形成する工程、及び
(C)(B)の工程後、水溶性化合物又は含水部材を除去する工程
を有することを特徴とする基材上に薄膜を部分的に形成する方法。
【請求項2】
薄膜が有機薄膜であることを特徴とする請求項1記載の基材上に薄膜を部分的に形成する方法。
【請求項3】
有機薄膜が、単分子膜であることを特徴とする請求項2に記載の基材上に薄膜を部分的に形成する方法。
【請求項4】
薄膜形成用溶液が、少なくとも1以上の加水分解性基を有する金属系界面活性剤、及び該金属系界面活性剤と相互作用し得る化合物を含有する有機溶媒溶液であることを特徴とする請求項1記載の基材上に薄膜を部分的に形成する方法。
【請求項5】
少なくとも1以上の加水分解性基を有する金属系界面活性剤が、式(I)
MXm−n (I)
〔式中、Rは、置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数1〜30のハロゲン化炭化水素基、連結基を含む炭素数1〜30の炭化水素基、又は連結基を含む炭素数1〜30のハロゲン化炭化水素基を表し、Mは、ケイ素原子、ゲルマニウム原子、スズ原子、チタン原子、及びジルコニウム原子からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属原子を表し、Xは、水酸基又は加水分解性基を表し、mはMの原子価を表す。nは、1から(m−1)のいずれかの正整数を表し、nが2以上の場合、Rは、同一でも相異なっていてもよい。(m−n)が2以上の場合、Xは同一であっても、相異なっていてもよいが、Xのうち、少なくとも一個は加水分解性基である。〕で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の基材上に薄膜を部分的に形成する方法。

【公開番号】特開2010−234234(P2010−234234A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−84052(P2009−84052)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000004307)日本曹達株式会社 (434)
【Fターム(参考)】