説明

部品の密封取付構造

【課題】部品の軸部と取付穴のシール性を確保し、且、部品が簡単に脱落することのない部品の密封取付構造の提供。
【解決手段】下部外周に凹部が形成された軸部を備えた部品を、下部内周面に凸部が形成されたゴム製のグロメットを介して取付板に取付ける部品の密封取付構造であって、前記グロメットの外径をA、内径をBとし、前記の取付板の取付穴の内径をCとし、前記の軸部の外径をDとしたとき、上記A,B,C及びDの寸法関係をA−B>C−D、A≒Cとし、前記のグロメットを取付板の取付穴に装着し、該装着されたグロメットに軸部を挿入すると、上記の寸法関係からゴム製のグロメットは軸部と取付穴の内周間で圧縮されてその部分を確実にシールして固定される。また、グロメットが装着されたときに該グロメットの取付板より突出される先端部分が取付穴の内径よりも大きく広がるように構成したので軸部を抜く方向の力に対してより強固に装着固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品の密封取付構造に関し、特に軸部を有する部品をグロメットを介して取付板の取付穴に密封的に取付ける密封取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来部品取付装置としては、グロメットを用いたものが広く実施されている。そして、グロメットを用いた部品の取付装置としては、筒部にスリットが設けられるとともに上部外周に爪部が突出形成された樹脂製グロメットを前記の爪部によって取付部に仮止めしておき、固定用ピンの軸部を前記したグロメットの筒部の貫通孔に挿入すると、グロメットの貫通孔の外周面が固定ピンの軸部に押され、グロメットのスリットが拡開されることにより、グロメットは取付部に固定されるものが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−241420号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の取付装置においては、単に固定用ピンの軸をグロメットに挿入するのみで固定しているため抜け易く、簡単に脱落してしまう恐れがあり、また、特許文献1の取付装置にあっては、固定用ピンの軸部と取付部の取付孔の間のシール(密封)については全く考慮されてないため、シール性が求められる取付部には適用することができないという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、部品の軸部と取付穴のシール性を確保し、かつ、部品が簡単に脱落することのない部品の密封取付構造の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る部品の密封取付構造は、前記の目的を達成するために、下部外周に凹部が形成された軸部を備えた部品を下部内周面に凸部が形成されたゴム製のグロメットを介して取付板に取付ける部品の密封取付構造において、前記グロメットの外径をA、内径をBとし、前記取付板の取付穴の内径をCとし、前記の軸部の外径をDとしたとき、上記A,B,C及びDの関係をA−B>C−Dとし、前記軸部をグロメットに挿入せしめて軸部の下部外周に形成の凹部にグロメットの下部内周に形成の凸部を嵌入せしめ、前記グロメットの先端部分を取付板より突出させてグロメットを取付板に装着固定したことをその特徴とし、さらに、前記したグロメットが取付板に装着固定されたとき、取付板より突出する該グロメットの先端部分の外径は前記取付穴の内径よりも拡開するとともに、部品の軸部に抜く方向の力が加わったとき、軸部に形成の凹部とグロメットに形成の凸部の嵌入部分から前記したグロメットの拡開された先端部分がさらに大きく広がるように構成したことをその特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る部品の密封取付構造は、下部外周に凹部が形成された軸部を備えた部品の前記軸部を、下部内周に凸部が形成されたゴム製のグロメットを介して取付板に取付ける密封取付構造の前記グロメットの外径をA、内径をBとし、前記の取付板の取付穴の内径をCとし、前記の軸部の外径をDとしたとき、上記A,B,C及びDの関係をA−B>C−Dとし、且つA≒Cとしたので、部品の軸部をグロメットに挿入すると軸部によってゴム製のグロメットは、軸部と取付板に設けた取付穴の間で圧縮され該取付穴の内周の壁に押し付けられ確実にシールされた状態で固定されるとともに、前記した軸部の下部外周面に形成の凹部がゴム製のグロメットの下部内周面に形成の凸部に嵌入され軸部はグロメットを介して取付板に確実に装着固定され部品が簡単に脱落することがなく安定した状態で取付られるものである。
【0008】
また、グロメットが取付穴に装着されたとき、該グロメットの取付穴より突出する先端部分は、前記した軸部と取付穴の間での圧縮により前記の先端部分の外径は取付穴の内径より拡開された状態となり、さらに、部品の軸部を抜く方向に力が加わったときには、グロメットの装着時に嵌入されている軸部の凹部とグロメットの凸部の嵌入部分からグロメットの先端部分をさらに大きく押し広げる力が作用し、このため、グロメット及び該グロメットと嵌合状態にある部品の軸部が取付穴から抜け出ることはなく、部品の脱落を完全に防止することができるという格別の効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。1は部品であり、該部品1は軸部2を備えており、前記軸部2の下部外周に溝状凹部3が形成されている。4はゴム製の筒状をなすグロメットであり、該グロメット4の上部にはフランジ部5が設けられるとともに下部内周には隆起状の凸部6が形成される。上記した溝状の凹部3及び隆起状の凸部の形状は特に限定されるものでなく、部品1の軸部2がグロメット4に挿入されたとき凸部6に凹部3が嵌合可能な形状であれば如何様な形状であってもよい。
【0010】
グロメット4の本体部7の外径(最大外径)をA、内径をBとし、前記した筒状のグロメット4の先端部分8の外径を前記した外径Aよりも若干小径とするのがよく、このように形成することにより後記する取付穴に装着するときにグロメット4の初期の挿入を容易とすることができるものである。
【0011】
9は部品1を取付ける取付板であり、該取付板9にはグロメット4を装着するための取付穴10が設けられている。そして該取付穴10の内径Cは、前記したグロメット4の最大外径Aとほぼ等しい寸法(A≒C)としてある。このため、グロメット4を取付穴10に通す際には大きな力を要することなく容易に装着できるようにしている。
【0012】
前記した部品1の軸部2の外形をDとしたとき、本実施の態様においては、グロメット4の外径A及び内径Bと取付穴10の内径Cと部品1の軸部2の外径Dの寸法関係を、A−B>C−Dの関係に形成し、且つ、A≒Cに形成している。
【0013】
本実施の態様における部品1の取付け手順は、先にグロメット4を取付板9の取付穴10に該グロメット4の先端部分8より挿入するが、本実施の態様においては、前記のグロメット4の先端部分8の外径をグロメット4の最大外径Aよりも若干小径としているのでグロメット4の取付穴10への初期の挿入は円滑に実施することができ、さらに、取付穴10の内径Cとグロメット4の最大外径Aとはほぼ等しく構成(A≒C)しているので、グロメット4を取付穴10に通すときには大きな力を要することなく容易に取付けることができるものである。
【0014】
グロメット4を取付板9の取付穴10に挿入し、該グロメット4のフランジ部5が取付板9に当接するまで該グロメット4を挿入し、グロメット4の先端部分8が取付板9より突出された状態で取付板9に装着した後、部品1の軸部2を前記グロメット4に挿入すると、ゴム製のグロメット4の本体部7は、前述したようにこれらの寸法関係がA−B>C−Dで且つA≒Cとされているので、ゴム製のグロメット4は、部品1の軸部2と取付穴10の内周間で圧縮されてゴム製のグロメット4の本体部7が取付穴10の内周の壁に押し付けられて取付穴10に固定されるとともに前記の押し付けによりゴム製のグロメット4により軸部2と取付穴10の間を確実にシールすることができる。
【0015】
また、グロメット4を取付板9に装着するとき該グロメット4の先端部分8が取付穴10の下方に突出するように構成されるが、前記したグロメット4の先端部分8は、該グロメット4の本体部7が軸部2と取付穴10の間で圧縮されることにより前記取付穴10の下方に突出されるグロメット4の先端部分8の外径Eは取付穴10の内径Cよりも大きくなるように広がった状態となる(E>C)。
【0016】
上記したようにゴム製のグロメット4の先端部分8が取付穴10の内径よりも大きく広がった状態でグロメット4が取付板9に装着された状態で部品1を抜く方向に力が加わった場合、部品1の軸部2の下部外周に形成の溝状凹部3がグロメット4の下部内周に形成の突状の凸部6に嵌入する部分からグロメット4の取付穴10より突出する先端部分8を更に大きく押し広げる力が作用し、このため、グロメット4及び該グロメット4と嵌入状態にある部品1の軸部2が取付穴10から抜けることはなく、部品の脱落を確実に防止することができるばかりでなく、軸部2と取付穴10の間はゴム製のグロメット4により確実なシール性が保持されることになる。
【0017】
上記したように、本実施の態様においては、部品1の軸部2の外径、ゴム製グロメット4の最大外径、内径及び取付板9に設けられる取付穴10の内径寸法をそれぞれ関連規定することによって部品の軸部と取付穴との間を前記のゴム製グロメットにより確実にのシールした状態で部品が簡単に脱落することなく安定して取付けられる構造を実現することができたものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の態様による部品の密封取付構造の分解図である。
【図2】本発明の実施の態様による部品の取付状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0019】
1 部品
2 部品の軸
3 凹部
4 グロメット
6 凸部
9 取付板
10 取付穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部外周に凹部が形成された軸部を備えた部品を下部内周面に凸部が形成されたゴム製のグロメットを介して取付板に取付ける部品の密封取付構造において、前記グロメットの外径をA、内径をBとし、前記取付板の取付穴の内径をCとし、前記の軸部の外径をDとしたとき、上記A,B,C及びDの関係をA−B>C−Dとし、前記軸部をグロメットに挿入せしめて軸部の下部外周に形成の凹部にグロメットの下部内周に形成の凸部を嵌入せしめ、前記グロメットの先端部分を取付板より突出させてグロメットを取付板に装着固定したことを特徴とする部品の密封取付構造。
【請求項2】
グロメットが取付板に装着固定されたとき、取付板より突出する該グロメットの先端部分の外径は前記取付穴の内径よりも拡開するとともに、部品の軸部に抜く方向の力が加わったとき、軸部に形成の凹部とグロメットに形成の凸部の嵌入部分から前記したグロメットの拡開された先端部分がさらに大きく広がるように構成したことを特徴とする請求項1記載の部品の密封取付構造。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−24828(P2009−24828A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−190742(P2007−190742)
【出願日】平成19年7月23日(2007.7.23)
【出願人】(000143307)株式会社荒井製作所 (100)
【Fターム(参考)】