説明

部品搬送装置、該部品搬送装置を備えた部品実装装置、前記部品搬送装置を備えた部品検査装置および部品搬送装置の異常検出方法

【課題】認識される可動子の位置にずれが生じた場合に速やかにこれを検出し、電子部品の搭載に悪影響を及ぼすことを防止する。
【解決手段】本発明の部品搬送装置は、ヘッドに設けられた可動子と、ノズル部材と、一定間隔毎の位置を示す位置信号情報、および、所定の位置に記録され、基準点を示す原点信号情報が記録され、前記可動子の位置を示すリニアスケールと、該リニアスケールに記録された情報を検出するセンサと、該センサによって検出された情報に基づいて前記可動子の駆動を制御する制御部とを備えている。とくに、前記制御部は、前記ヘッド動作中に、前記センサが前記原点信号情報読み取り位置を通過するように前記可動子を昇降させ、前記センサで、前記原点信号情報を読み取り、読み取った位置における位置信号情報から認識される原点位置と正規の原点位置とを比較する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品搬送装置、該部品搬送装置を備えた部品実装装置、前記部品搬送装置を備えた部品検査装置および部品搬送装置の異常検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、部品実装装置などのヘッドユニット(部品搬送装置の一部)には、ノズル部材等を昇降させるための駆動機構としてリニアモータが備えられている(特許文献1参照)。リニアモータには、固定子と、その固定子に沿って直線的に往復移動する可動子とが備えられている。このようなリニアモータにおいては、可動子または固定子の一方に設けられた電磁石に電流を供給し、他方に設けられた永久磁石との間に適切な駆動力を発生させて、可動子を推進させる。ノズル部材は、可動子と一体に取り付けられ、可動子とともに昇降する。
【0003】
また、可動子の位置は、リニアモータに取り付けられたリニアスケールとセンサによってその移動量が検出され、検出された移動量に基づいて特定される。そして可動子を所望の位置に移動させることによって、可動子に取り付けられたノズル部材の先端の高さが調整される。
【特許文献1】特開2006−180645号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記従来の技術では、実装動作中に、可動子、リニアスケールまたはセンサなどの位置関係にずれが生じると、可動子の位置を誤って認識してしまうという問題がある。このような問題が生じると、可動子に取り付けられたノズル部材の昇降が適切に行われず、電子部品の吸着や装着に悪影響を及ぼす。
【0005】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたものであり、認識される可動子の位置にずれが生じた場合に速やかにこれを検出し、電子部品の搭載に悪影響を及ぼすことを防止することができる部品搬送装置、該部品搬送装置を備えた部品実装装置、前記部品搬送装置を備えた部品検査装置および部品搬送装置の異常検出方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の部品搬送装置は、部品を高さ方向の所望の位置で保持するヘッドが備えられ、前記ヘッドが部品供給部から部品を吸着して所定の目的位置に前記部品を搬送する部品搬送装置であって、前記ヘッドに設けられた上下方向に往復移動する可動子と、該可動子に一体に取り付けられ、前記可動子の移動とともに昇降し、前記部品をその先端に保持するノズル部材と、一定間隔毎の位置を示す位置信号情報、および、所定の位置に記録され、基準点を示す原点信号情報が記録され、前記可動子の位置を示すリニアスケールと、該リニアスケールに記録された情報を検出するセンサと、該センサによって検出された情報に基づいて前記可動子の駆動を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記ヘッド動作中に、前記センサが前記原点信号情報読み取り位置を通過するように前記可動子を昇降させ、前記センサで前記原点信号情報を読み取り、読み取った位置における位置信号情報から認識される原点位置と正規の原点位置とを比較するようになっていることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、部品搬送の作業途中において、ヘッド動作中に、センサが原点信号情報読み取り位置を通過するように可動子を昇降させ、センサで、原点信号情報を読み取り、読み取った位置における位置信号情報から認識される原点位置を得る。そして、読み取った位置における位置信号情報から認識される原点位置と正規の原点位置とを比較し、可動子、センサまたはリニアスケールなどの位置関係にずれが生じたか否かの判定を行う。このように、部品搬送の作業途中で幾度も原点信号情報を読み取り、可動子、センサまたはリニアスケールなどの位置関係にずれが生じたか否かの判定を行うことで、認識される可動子の位置にずれが生じた場合に速やかにこれを検出し、電子部品の搭載に悪影響を及ぼすことを防止することができる。
【0008】
また、前記ノズル部材が部品供給部での前記部品の吸着または目的位置で部品の離脱を行うための昇降時の、前記リニアスケールに記録された情報の読み取り範囲内に、前記原点信号情報が記録されている場合において、前記制御部は、前記センサで前記原点信号情報を読み取り、読み取った位置における位置信号情報から認識される原点位置と正規の原点位置とを比較する制御を、前記ノズル部材の前記部品の吸着または離脱のための昇降時に行うことが好ましい。
【0009】
また、前記ノズル部材が部品供給部での前記部品の吸着または目的位置で部品の離脱を行うための昇降時の、前記リニアスケールに記録された情報の読み取り範囲外に、前記原点信号位置が記録されている場合において、前記制御部は、前記センサで前記原点信号情報を読み取り、読み取った位置における位置信号情報から認識される原点位置と正規の原点位置とを比較する制御を、繰り返し行われる前記ノズル部材による前記部品の搬送作業の間に行うことが好ましい。
【0010】
この発明によれば、ノズル部材が前記部品の吸着または目的位置で部品の離脱を行うための昇降時に、リニアスケールに記録された情報の読み取り範囲内に原点信号情報が記録されている場合と、ノズル部材が前記部品の吸着または目的位置で部品の離脱を行うための昇降時に、リニアスケールに記録された情報の読み取り範囲外に原点信号情報が記録されている場合とで異なるタイミングで原点信号情報の再チェックを行うことによって、リニアスケールに記録された原点信号情報が1つだけであっても、部品搬送投装置の異常の有無を速やかに検知することができる。
【0011】
本発明の部品実装装置は、上記のいずれかに記載の部品搬送装置を備え、前記ヘッドにより部品供給部と搬入されたプリント基板上の所定の位置とにわたって前記部品が搬送されることを特徴とする。
【0012】
本発明の部品検査装置は、上記のいずれかに記載の部品搬送装置を備え、前記ヘッドにより部品供給部とテストユニットとにわたって前記部品が搬送されることを特徴とする。
【0013】
本発明の部品搬送装置の異常検出方法は、部品を高さ方向の所望の位置で保持するヘッドが備えられ、前記ヘッドが部品供給部から部品を吸着して所定の目的位置に前記部品を搬送し、前記ヘッドに設けられた上下方向に往復移動する可動子と、該可動子に一体に取り付けられ、前記可動子の移動とともに昇降し、前記部品をその先端に保持するノズル部材と、一定間隔毎の位置を示す位置信号情報、および、所定の位置に記録され、基準点を示す原点信号情報が記録され、前記可動子の位置を示すリニアスケールと、該リニアスケールに記録された情報を検出するセンサと、該センサによって検出された情報に基づいて前記可動子の駆動を制御する制御部とを備えた部品搬送装置の異常検出方法であって、前記ヘッド動作中に、前記センサが前記原点信号情報読み取り位置を通過するように前記可動子を昇降させ、前記センサで前記原点信号情報を読み取り、読み取った位置における位置信号情報から認識される原点位置と正規の原点位置とを比較するステップを含むことを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、部品搬送の作業途中において、ヘッド動作中に、センサが原点信号情報読み取り位置を通過するように可動子を昇降させ、センサで、原点信号情報を読み取り、読み取った位置における位置信号情報から認識される原点位置を得る。そして、読み取った位置における位置信号情報から認識される原点位置と正規の原点位置とを比較し、可動子、センサまたはリニアスケールなどの位置関係にずれが生じたか否かの判定を行う。このように、部品搬送の作業途中で幾度も原点信号情報を読み取り、可動子、センサまたはリニアスケールなどの位置関係にずれが生じたか否かの判定を行うことで、認識される可動子の位置にずれが生じた場合に速やかにこれを検出し、電子部品の搭載に悪影響を及ぼすことを防止することができる。
【0015】
また、前記ノズル部材が部品供給部での前記部品の吸着または目的位置での部品の離脱を行うための昇降時の、前記リニアスケールに記録された情報の読み取り範囲内に、前記原点信号情報が記録されている場合において、前記センサで前記原点信号情報を読み取り、読み取った位置における位置信号情報から認識される原点位置と正規の原点位置とを比較する制御を、前記ノズル部材の前記部品の吸着または離脱のための昇降時に行うことが好ましい。
【0016】
また、前記ノズル部材が部品供給部での前記部品の吸着または目的位置での部品の離脱を行うための昇降時の、前記リニアスケールに記録された情報の読み取り範囲外に、前記原点信号位置が記録されている場合において、前記センサで、前記原点信号情報を読み取り、読み取った位置における位置信号情報から認識される原点位置と正規の原点位置とを比較する制御を、繰り返し行われる前記ノズル部材による前記部品の搬送作業の間に行うことが好ましい。
【0017】
この発明によれば、ノズル部材が前記部品の吸着または目的位置での部品の離脱を行うための昇降時に、リニアスケールに記録された情報の読み取り範囲内に原点信号情報が記録されている場合と、ノズル部材が前記部品の吸着または目的位置での部品の離脱を行うための昇降時に、リニアスケールに記録された情報の読み取り範囲外に原点信号情報が記録されている場合とで異なるタイミングで原点信号情報の再チェックを行うことによって、リニアスケールに記録された原点信号情報が1つだけであっても、部品搬送投装置の異常の有無を速やかに検知することができる。
【0018】
また、前記センサで、前記原点信号情報を読み取り、読み取った位置における位置信号情報から認識される原点位置と正規の原点位置とを比較するステップの後に、前記原点信号情報が読み取られた位置における位置信号情報から認識される原点位置と正規の原点位置とが相違する場合に、前記部品搬送装置の駆動を停止させるステップを含むことが好ましい。
【0019】
この発明によれば、原点信号情報が読み取られた位置における位置信号情報から認識される原点位置と正規の原点位置とが相違する場合に、部品搬送装置の駆動を停止させるので、速やかに部品搬送装置の異常を検知することができる。
【0020】
また、前記センサで、前記原点信号情報を読み取り、読み取った位置における位置信号情報から認識される原点位置と正規の原点位置とを比較するステップの後に、前記原点信号情報が読み取られた位置における位置信号情報から認識される原点位置と正規の原点位置とが相違する場合に、ずれ量を算出し、前記リニアセンサから読み取られる情報から認識される位置を、前記ずれ量によって補正するステップを含むことが好ましい。
【0021】
この発明によれば、原点信号情報が読み取られた位置における位置信号情報から認識される原点位置と正規の原点位置とが相違する場合に、これらの原点位置のずれ量を算出し、原点信号情報が読み取られた位置における位置信号情報から認識される原点位置に、算出したずれ量を加算して可動子の位置を特定するので、部品搬送装置の可動子、リニアスケール、センサなどの位置関係に異常が生じても、精度を大きく低下させることなく、部品搬送の動作を続行することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、認識される可動子の位置にずれが生じた場合に速やかにこれを検出し、電子部品の搭載に悪影響を及ぼすことを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の部品搬送装置は、部品を高さ方向の所望の位置で保持するヘッドが備えられ、前記ヘッドが部品供給部から部品を吸着して所定の目的位置に前記部品を搬送する部品搬送装置であって、前記ヘッドに設けられた上下方向に往復移動する可動子と、該可動子に一体に取り付けられ、前記可動子の移動とともに昇降し、前記部品をその先端に保持するノズル部材と、一定間隔毎の位置を示す位置信号情報、および、所定の位置に記録され、基準点を示す原点信号情報が記録され、前記可動子の位置を示すリニアスケールと、該リニアスケールに記録された情報を検出するセンサと、該センサによって検出された情報に基づいて前記可動子の駆動を制御する制御部とを備えている。とくに、前記制御部は、前記ヘッド動作中に、前記センサが前記原点信号情報読み取り位置を通過するように前記可動子を昇降させ、前記センサで、前記原点信号情報を読み取り、読み取った位置における位置信号情報から認識される原点位置と正規の原点位置とを比較する。
【0024】
以下で、本発明の部品搬送装置、該部品搬送装置を備えた部品実装装置、前記部品搬送装置を備えた部品検査装置および部品搬送装置の異常検出方法について、図面を用いて詳細に説明する。
【0025】
ここで、本明細書中において、部品搬送装置とは、ヘッドユニットおよび該ヘッドユニットを水平方向に移動させるための機構を含む概念である。
【0026】
(実施の形態1)
図1は、本発明に係る部品搬送装置が適用される部品実装装置1000の概略構成を示す平面図である。なお、本実施の形態では、使用する図面に、各図の方向関係を明確にするためのXYZ直角座標軸を付して説明する。
【0027】
図1に示されるように、部品実装装置1000の基台40上には、基板搬送機構としてコンベア41が配置されており、このコンベア41によりプリント基板Pが図1の紙面右側から左側に搬送されて所定の作業位置(図1に示されるプリント基板Pの位置)に搬入されるようになっている。作業位置の下方領域には、実装作業中にプリント基板Pをバックアップピンにより支持する基板支持装置42が配置されている。
【0028】
コンベア41の両側(図1では上下両側)にはそれぞれフィーダ設置領域43が設けられている。各フィーダ設置領域43には、テープフィーダ43aなどの部品供給装置がコンベア41に沿って並列に配置されている。各テープフィーダ43aは、集積回路(IC)、トランジスタ、抵抗、コンデンサなどの小片状のチップ部品を所定間隔で収納、保持したテープが巻回されたリールを保持している。このリールから前記テープを繰り出すことによりフィーダ先端の部品供給位置に部品を供給する。また、基台40の上方には、部品実装用のヘッドユニット100が設けられ、ヘッドユニット100により部品をピックアップさせるように構成されている。
【0029】
ヘッドユニット100は、テープフィーダ43aから部品を吸着してプリント基板P上に搬送すると共に、プリント基板P上の所定の位置に実装するものである。ヘッドユニット100は、所定領域内でX軸方向(コンベア12によるプリント基板Pの搬送方向)および水平面上でこれと直交するY軸方向にそれぞれ移動可能とされている。すなわち、ヘッドユニット100は、X軸方向に延びる支持部材44に移動可能に支持されている。また、支持部材44は、その両端部がY軸方向に延びる固定レール45に支持され、この固定レール45に沿ってY軸方向に移動可能となっている。そして、X軸サーボモータ46によりボールねじ軸47を介してヘッドユニット100がX軸方向に駆動される一方、Y軸サーボモータ48によりボールねじ軸49を介して支持部材44がY軸方向に駆動されるようになっている。
【0030】
また、基台40上には、図1に示されるように、ヘッドユニット100の各ヘッドAにに吸着された部品を撮像するための部品撮像ユニット50が設けられている。部品撮像ユニット50は、エリアカメラおよび照明装置などから構成されており、基台40上に上向きの姿勢で固定されている。これにより、部品吸着後、ヘッドユニット100が部品撮像ユニット50の上方に配置されると、各ヘッドAによって吸着された電子部品を部品撮像ユニット50で撮像可能となっている。
【0031】
図2は、リニアモータ2を使用したヘッドユニット100を説明するためのヘッドユニット100の正面図である。本実施の形態のリニアモータ2は、図2に示されるように、部品実装装置などのヘッドユニット100のヘッドAに用いられる。
【0032】
ヘッドユニット100は、電子部品をフィーダ設置領域43から吸着し、吸着した電子部品を実装機上に搬入されたプリント基板P上の所定の位置まで運び、搭載するためのものである。ヘッドユニット100は、1回の往復で複数の電子部品を搬送するために、複数のヘッドAを備えている。本実施の形態では、合計10個のヘッドAがX軸方向に列状に配置されている。
【0033】
また、ヘッドユニット100には、さらに基板撮像ユニット100aが搭載されている。この基板撮像ユニット100aは、CCD等の撮像素子を持つエリアカメラおよび照明装置などからなる。そして、基板撮像ユニット100aは、ヘッドユニット100に対して下向きの姿勢で固定されており、作業位置に搬入されるプリント基板P上の各種マークを撮像可能となっている。
【0034】
図3は、ヘッドユニット100に用いられるヘッドAを説明するための斜視図である。図4は、リニアモータ2の可動子24および可動子24に取り付けられたノズル部材3の動きを説明するための側面図であり、(a)はノズル部材3が上方にある状態を示し、(b)はノズル部材3が下方にある状態を示す。
【0035】
各ヘッドAは、図3に示されるように、電子部品をその先端に吸着した状態で保持するノズル部材3と、ノズル部材3を昇降させるための昇降駆動機構であるリニアモータ2とを備えている。
【0036】
ノズル部材3は、駆動シャフト31と、駆動シャフト31の先端に着脱可能に備えられた吸着ノズル32とを含む。
【0037】
ノズル部材3は、駆動シャフト31の内部通路および切換弁(図示しない)などを介して負圧発生装置に接続されており、部品吸着時には、吸着ノズル32の先端に前記負圧発生装置から負圧吸引力が与えられることにより、部品の吸着、保持が可能となっている。ノズル部材3は、ヘッドユニット100に対して昇降(Z軸方向の移動)およびノズル中心軸回りの回転が可能とされ、昇降駆動機構(後述のリニアモータ2)および回転駆動機構によりそれぞれ駆動されるようになっている。これらの駆動機構のうち、昇降駆動機構は各ヘッドAに各々組み込まれている。
【0038】
リニアモータ2は、図3に示されるように、モータ制御部(制御部)20(図5参照)と、フレーム部材21と、可動子24と、固定子25と、リニアスケール27と、センサ22と、リターンスプリング28とを含む。
【0039】
モータ制御部20は、後述の固定子25の電磁石25aに供給する電流を制御するための電流制御部(図示しない)と、可動子24の移動量を計測するための位置信号検出部(図示しない)と、可動子24の移動量を計測するための原点位置を検出するための原点信号検出部(図示しない)とを備えている。
【0040】
フレーム部材21は、可動子24、固定子25、リニアスケール27、センサ22およびリターンスプリング28を一体に収容、保持するための部材である。フレーム部材21には、可動子24、固定子25などを収容するための空間である収容部21aと、ノズル部材3を可動子24に一体に取り付けた状態で上下方向に移動させるための開口であるノズル用開口部21bとが形成されている。フレーム部材21には、可動子24を案内するためのリニアガイド26が上下方向に延びるような姿勢で取り付けられ、また、リニアガイド26の両端を挟むように、フレーム部材21の上方および下方に互いに向かい合うようにストッパ23が1対設けられている。
【0041】
可動子24は、フレーム部材21に取り付けられたリニアガイド26上に、リニアガイド26の長手方向に移動可能に取り付けられている。可動子24は、断面略コ字形の縦長枠状に形成されている。可動子24には、ノズル部材3が取り付けられる。また、可動子24には、複数の永久磁石24aが取り付けられている。
【0042】
永久磁石24aは、可動子24に対して、可動子24の移動方向に沿って、N極とS極が交互に現れるように所定の間隔で1列に配設されている。そして、この永久磁石24aが可動子24の側面に固定されるとともに、ノズル部材3が、可動子24の下端部側面に、取付アーム29を介して取り付けられている。
【0043】
そして、リニアガイド26に摺動可能に係合するスライダ26aに、上記可動子24がボルト等で固定されることにより、可動子24の一方の端面がフレーム部材21の上部に設けられたストッパ23に当接する位置から、可動子24の他方の端面がフレーム部材21の下部に設けられたストッパ23に当接する位置までにわたり、可動子24がリニアガイド26に沿って移動可能となっている。
【0044】
固定子25は、櫛型のコアと、モータ駆動時に固定子両端の磁束形成を補う1対のサブティースと、コアに巻き付けられたコイルとを備えている。リニアモータ2の駆動時には、各コイルに、互いに位相が異なるu相、v相、w相のうちのいずれかの相の電流を供給することにより、各コイルの周りに所定の磁束を生じさせ、電磁石25aを得る。固定子25は、その電磁石25aが、可動子24に取り付けられた永久磁石24aと対向する位置に固定される。
【0045】
リニアスケール27は、可動子24の側部に固定される。リニアスケール27は、位置情報を磁気的に記録した磁気スケールである。具体的には、位置信号情報27aと、原点位置情報とが記録されている(図5参照)。位置信号情報27aは、微小な一定間隔を空けて、可動子24の移動方向に沿うように記録されている。原点信号情報27bは、基準点を示すものであり、リニアスケール27の所定の位置に1箇所記録されている。後述のセンサ22は、可動子24の移動時に、可動子24に固定されたリニアスケール27の位置信号情報27aを読み取る。そして、モータ制御部20で、読み取ったパルスの数をカウントすることで、可動子24の移動量を把握する。また、センサ22は、可動子24の移動時にリニアスケール27の所定の位置に記録された原点信号情報27bを読み取る。従来、原点信号情報27bは、センサ22によって、基準位置を設定するためにヘッドユニット100の駆動開始時に1度読み取られ、モータ制御部20が、原点信号情報27bを読み取った位置を可動子24の基準点(すなわち可動子24の移動量が0の位置)に設定して、可動子24の移動量を計測する。本実施の形態では、原点信号情報27bを、ヘッドユニット100の作業時に幾度も検出し、駆動開始時に原点信号情報27bが読み取られたときの、位置信号情報27aのパルスのカウント値と、その後原点信号情報27bが読み取られたときの、位置信号情報27aのパルスのカウント値とが一致しているか否かを判定している。
【0046】
ノズル部材3の先端部3aは、図4(a)のように、可動子24がフレーム部材21の上部に設けられたストッパ23に当接した状態で、最上位置L1に位置する。また、ノズル部材3の先端部3aは、図4(b)のように、可動子24がフレーム部材21の下部に設けられたストッパ23に当接した状態で、最下位置L2に位置する。このように、ノズル部材3の先端部3aは、可動子24の上下方向に所定の距離だけ移動可能になっている。
【0047】
さらに、ノズル部材3の先端部3aは、その作業内容に応じて、高さ方向に異なる範囲に位置する。具体的には、電子部品を吸着し、電子部品を吸着した状態でヘッドユニット100の移動に伴って水平方向に移動し、電子部品をプリント配線板上の所定の位置に搭載するという電子部品の運搬作業を行う場合には、ノズル部材3は、昇降可能な範囲の中の所定高さ位置から最下位置L2までの実装動作範囲I内を移動する。また、電子部品の運搬作業を伴わずにヘッドユニット100の移動のみを行う場合には、ノズル部材3は、上記所定高さ位置もしくはこれより上方の非実装動作範囲II内を移動する。したがって、可動子24を介してノズル部材3と一体に設けられたリニアスケール27についても、電子部品ECの吸着、搬送および搭載を行う場合には、リニアスケール27における実装動作範囲I’内に記録された情報がセンサ22で読み取られ、電子部品ECの運搬作業を伴わずに、ヘッドユニット100の移動のみを行う場合には、リニアスケール27における非実装動作範囲II’内に記録された情報がセンサ22で読み取られることになる(図5参照)。
【0048】
さらに、本実施の形態において、原点信号情報27bは、リニアスケール27における非実装動作範囲II’内(ノズル部材3が電子部品ECの吸着または装着を行う昇降時の、リニアスケール27に記録された情報の読み取り範囲外)に記録されている(図5参照)。
【0049】
センサ22は、フレーム部材21上の、可動子24に固定されたリニアスケール27と向かい合うような位置に固定される。センサ22は、磁気記録情報を読み取り可能なMRセンサである。
【0050】
本実施の形態では、磁気式のリニアスケールとリニアセンサを用いているが、光学式のリニアスケールとリニアセンサを用いてもよい。
【0051】
リターンスプリング28は、フレーム部材21の上部と可動子24の下部の取付アーム29との間に取り付けられたスプリングからなり、可動子24を上方に付勢している。そして、可動子24が下方へ移動する場合には、リターンスプリング28の付勢力に逆らってノズル部材3が下降し、可動子24が上方へ移動する場合には、リターンスプリング28の付勢力を受けてノズル部材3が上昇する。
【0052】
固定子25のコイルに所定の電流が供給されると、コイルの周りに磁束が発生するとともに、この磁束と、可動子24の永久磁石24aとの相互作用により、可動子24を固定子25に対して相対移動させる推進力が発生する。可動子24は、図4(a)および図4(b)に示されるように、1対のストッパ23の間を、固定子25に沿って直線的に上下方向に往復移動する。このような可動子24の駆動により、可動子24に取り付けられているノズル部材3が昇降する。
【0053】
以下で、本実施の形態の部品搬送装置の異常検出方法について、詳しく説明する。本実施の形態の部品搬送装置の異常検出方法は、大きく分けて、(1)センサ22で、原点信号情報27bを読み取り、読み取った位置における位置信号情報27aのパルスのカウント値を第1の原点位置情報(正規の原点位置)として保存するステップと、(2)電子部品ECの吸着を行うステップと、(3)部品認識を行うステップと、(4)電子部品ECをプリント基板Pの所定の位置に搭載するステップと、(5)原点信号情報27bの再チェックを行うか否かを判定するステップと、(6)センサ22で、原点信号情報27bを読み取り、読み取った位置における位置信号情報27aパルスのカウント値である第2の原点位置情報(読み取った位置における位置信号情報から認識される原点位置)と保存された第1の原点位置情報とを比較するステップとを含む。
【0054】
図5は、リニアモータ2を説明するための概念図である。図6は、本実施の形態のヘッドユニット100の動きを説明するためのフローチャートである。図7は、本実施の形態の原点信号の再チェックのフローチャートである。図8(a)〜(c)は、本実施の形態の原点信号の再チェック時における、ノズル部材3のノズル先端3aの位置について説明するための図である。
【0055】
(1)センサ22で、原点信号情報27bを読み取り、読み取った位置における位置信号情報27aのパルスのカウント値を第1の原点位置情報として保存するステップ(ステップS1)
図6のフローチャートの処理がスタートすると、まず、ステップS1で原点信号情報27bのチェックが行われる。具体的には、可動子24を1対のストッパ23のうちフレーム部材21の上部に設けられた一方のストッパ23に当接する位置まで移動させる。そして、可動子24を一方のストッパ23から離れる方向へ、すなわち他方のストッパ23へ向けて推進させる。このとき、センサ22で、可動子24に固定されたリニアスケール27に等間隔に記録された位置信号情報27aを読み取り、モータ制御部20で読み取った位置信号情報27aのパルスの数をカウントするとともに、センサ22で、リニアスケール27の所定の位置に一箇所記録されている原点信号情報27bを読み取る。
【0056】
そして、モータ制御部20は、原点信号情報27bを読み取った位置を、可動子24の移動量を計測する際の原点位置に決定する。すなわち、可動子24が原点信号情報27bの位置にある状態において、可動子24の移動量がゼロであると認識される。
【0057】
さらに、モータ制御部20には、原点信号情報27bを読み取ったときの、位置信号情報27aのパルスのカウント値が、第1の原点位置情報として保存される。この第1の原点位置情報は、可動子24、センサ22またはリニアスケール27などの位置関係にずれが生じたか否かを検知するために、後述の第2の原点位置情報と比較される。
【0058】
(2)電子部品ECの吸着を行うステップ(ステップS2〜ステップS5)
つぎに、ステップS2〜ステップS5で電子部品ECの吸着を行う。具体的には、ヘッドユニット100は、部品実装装置1000の基台40上に設けられたフィーダ設置領域43上まで移動し、それぞれのヘッドAが、そのノズル部材3をZ軸方向に所定の距離だけ下降させ(ステップS3)、ノズル先端3aに、所定のテープフィーダ43aから所定の電子部品ECを吸着させる(ステップS4)。そして、電子部品ECをノズル先端3aに吸着させた状態で、ノズル部材3をZ軸方向に所定の距離だけ上昇させる(ステップS5)。
【0059】
(3)部品認識を行うステップ(ステップS6)
電子部品ECの吸着動作を終えると、ヘッドユニット100は、部品実装装置1000の基台40に設けられた部品撮像ユニット50上まで水平移動する。そして、部品撮像ユニット50では、各ヘッドAのノズル先端3aに吸着された電子部品ECを撮像することによって、各ヘッドAのノズル先端3aに吸着された電子部品ECが、所定の姿勢で吸着されているか否かが判断される。そして、電子部品ECが所定の姿勢で吸着されていない場合には、プリント基板Pへの搭載時の補正量が算出される。
【0060】
(4)電子部品ECをプリント基板Pの所定の位置に搭載するステップ(ステップS7〜ステップS11)
つぎに、ヘッドユニット1000は、基台40上の所定の位置に搬入されたプリント基板P上の部品装着位置まで水平移動し(ステップS7)、電子部品ECの装着動作を開始する(ステップS8)。具体的には、それぞれのヘッドAが、ノズル先端3aに電子部品ECが吸着された状態のノズル部材3をZ軸方向に所定の距離だけ下降させ(ステップS9)、プリント基板P上の所定の位置に電子部品ECを搭載する(ステップS10)。そして、電子部品ECをノズル先端3aから放した状態で、ノズル部材3をZ軸方向に所定の距離だけ上昇させる(ステップS11)。
【0061】
(5)原点信号情報の再チェックを行うか否かを判定するステップ(ステップS12〜S13)
プリント基板P上の所定の位置に電子部品ECを搭載し終えると、ヘッドユニット100は、基台40上に設けられたフィーダ設置領域43まで水平移動する(ステップ12)。
【0062】
そして、原点信号情報の再チェックを行うか否かを判定する。具体的には、ヘッドユニット100の電子部品ECの搬送往復回数を記憶し、これを基に、原点信号情報の再チェックを行うか否かを判定してもよい。たとえば、往復回数3回ごとに原点信号情報の再チェックを行ってもよいし、往復回数5回ごとに原点信号情報の再チェックを行ってもよい。このように、所定の間隔を空けて原点信号情報27bの再チェックを行うことによって、実装動作に要する時間が延びるのを回避することができる。
【0063】
原点信号情報の再チェックを行うと判定された場合には、ステップS14で原点信号情報27bの再チェックが行われ、原点信号情報27bの再チェックを行わないと判定された場合には、ステップS2に戻ってフィーダ設置領域43で、電子部品ECの吸着動作が開始される。
【0064】
(6)センサ22で、原点信号情報27bを読み取り、読み取った位置における位置信号情報27aのパルスのカウント値である第2の原点位置情報と保存された第1の原点位置情報とを比較するステップ(ステップS14〜ステップS15)
ステップ13で原点信号情報27bの再チェックを行うと判定された場合には、ステップS14でリニアモータ2の可動子24をZ軸上方への移動が開始され、ステップS15で原点信号情報27bの再チェックが行われる。具体的には、図7に示されるように、ステップS15で、原点信号情報27bの再チェックの処理が開始されると(ステップSS10)、まず、リニアモータ2の可動子24を原点信号情報27bを検出する位置よりもZ軸上方位置に移動させ、当該位置からZ軸下方へ推進させる。そして、このとき、センサ22で、可動子24に固定されたリニアスケール27に等間隔に記録された位置信号情報27aを再び読み取り、モータ制御部20で、センサ22が読み取った位置信号情報27のパルスの数を再びカウントするとともに、センサ22で、リニアスケール27の所定の位置に一箇所記録されている原点信号情報27bを再び読み取る。そして、モータ制御部20には、原点信号情報27bを読み取ったときの、位置信号情報27aのパルスのカウント値が、第2の原点位置情報として保存される(ステップSS11)。
【0065】
つぎに、ステップS1の初回原点信号チェックにおいて、保存された第1の原点位置情報と、ステップS15のステップSS11において保存された第2の原点位置情報とを比較する(ステップSS12)。そして、第1の原点位置情報と第2の原点位置情報とが一致している場合には、可動子24、リニアスケール27またはセンサ22などに位置ずれが発生していないと判定し、第1の原点位置情報と第2の原点位置情報とが一致してない場合には、可動子24、リニアスケール27またはセンサ22などに位置ずれが発生していると判定する。
【0066】
位置ずれが発生していないと判定された場合には、ステップS2へ戻り電子部品ECの吸着動作を開始し(ステップSS13’)、位置ずれが発生していると判定された場合には、部品実装装置の実装動作を停止させる(ステップSS13)。
【0067】
ステップS15(すなわち、ステップSS10〜SS12)の一連の動作は、図8(a)、図8(b)および図8(c)に示されるように、ノズル先端3aがZ方向(高さ方向)の所定範囲内で行われる。すなわち、ノズル先端3aが、非実装動作範囲II内に位置した状態で行われる。これは、リニアスケール27に記録された原点信号情報27bがリニアスケール27の非実装動作範囲II’内に記録されているためである。したがって、実施の形態1では、繰り返し行われるノズル部材3による電子部品ECの搭載作業の間に、位置ずれが発生しているか否かが判定される。
【0068】
実施の形態1によれば、まず、センサ22で原点信号情報27bを読み取り、読み取った位置における位置信号情報27aのパルスのカウント値を第1の原点位置情報として保存する。その後、ヘッドユニット100の作業途中において、センサ22で、原点信号情報27bを再度読み取り、読み取った位置における位置信号情報27aのパルスのカウント値である第2の原点位置情報を得る。そして、第1の原点位置情報と第2の原点位置情報とを比較し、両者が一致する場合には、リニアモータの駆動を続行させ、両者が相違する場合には、リニアモータ2の駆動を停止させる。このように、ヘッドユニット100の作業途中で幾度も原点信号情報27bを読み取り、可動子24、センサ22またはリニアスケール27などの位置関係にずれが生じたか否かの判定を行うことで、異常が生じている場合には速やかに部品搬送装置を停止させ、可動子24の上下方向の位置を誤って認識するのを防ぐことができる。したがって、電子部品ECをプリント基板P上に搭載する際に、ノズル部材3のノズル先端3aで過度に電子部品ECを押圧することによる電子部品の破損を避けることができる。
【0069】
(実施の形態2)
実施の形態2の部品実装装置、ヘッドユニットおよびヘッドの構成については、原点信号情報27bが、リニアスケール27の実装動作範囲I’内(ノズル部材3が電子部品ECの吸着または装着を行う昇降時の、リニアスケール27に記録された情報の読み取り範囲内)に記録されていること以外は、実施の形態1と同様であるので、ここでの説明を省略する。
【0070】
図9は、実施の形態2のヘッドユニットの動きを説明するためのフローチャートである。図10(a)〜(e)および図11(a)〜(e)は、実施の形態2の原点信号情報27bのチェックを説明するための図である。
【0071】
実施の形態2の部品搬送装置の異常検出方法は、(1)センサ22で、原点信号情報27bを読み取り、読み取った位置における位置信号情報27aのパルスのカウント値を正規の原点位置として保存するステップと、(2)電子部品ECの吸着を行うステップと、(3)部品認識を行うステップと、(4)電子部品ECをプリント基板Pの所定の位置に装着するステップとを含み、(2)および(4)のステップにおいて、センサ22で、原点信号情報27bを読み取り、読み取った位置における位置信号情報27aのパルスのカウント値である原点位置と保存された正規の原点位置とを比較する。
【0072】
すなわち、電子部品ECをフィーダ設置領域43から吸着するためにノズル部材3を昇降させる時(図10(a)〜図10(e)参照)、および、電子部品ECをプリント基板P上に搭載するためにノズル部材3を昇降させる時(図11(a)〜図11(e)参照)に、ヘッドユニット100の異常の有無を検知している(図9参照)。なお、上記(1)のステップは、図9のフローチャートでは省略するが、たとえば、前述の図6中のステップS1に相当する処理で予め原点位置を調べ、保存しておくようにすればよい。
【0073】
図9に示されるように、ヘッドユニット100は、部品実装装置1000の基台40上に設けられたフィーダ設置領域43上まで移動し(ステップS1’)、それぞれのヘッドAが、そのノズル部材3をZ軸方向に所定の距離だけ下降させる(ステップS2’)。このとき、ノズル部材3の下降途中でリニアスケール27の実装動作範囲II’に記録された原点信号情報27bを読み取り、読み取った位置における位置信号情報27aのパルスのカウント値である原点位置と保存された正規の原点位置とを比較し、原点信号チェックを行う(ステップS3’)。そして、正規の原点位置と再チェック時に特定された原点位置とを比較し、両者が一致する場合には、リニアモータ2の駆動を続行させ、両者が相違する場合には、リニアモータ2の駆動を停止させる。リニアモータ2の駆動を続行させる場合には、ノズル部材3をさらに下降させて、ノズル先端3aに、所定のテープフィーダ43aから所定の電子部品ECを吸着させる(ステップS4’)。そして、電子部品ECをノズル先端3aに吸着させた状態で、ノズル部材3をZ軸方向に所定の距離だけ上昇させる(ステップS5’)。
【0074】
電子部品ECの吸着動作を終えると、ヘッドユニット100は、部品実装装置1000の基台40に設けられた部品撮像ユニット50上まで水平移動する(ステップS6’)。そして、部品撮像ユニット50では、各ヘッドAのノズル先端3aに吸着された電子部品ECを撮像することによって、各ヘッドAのノズル先端3aに吸着された電子部品ECが、所定の姿勢で吸着されているか否かが判断される。そして、電子部品ECが所定の姿勢で吸着されていない場合には、プリント基板Pへの搭載時の補正量が算出される。
【0075】
つぎに、ヘッドユニット1000は、基台40上の所定の位置に搬入されたプリント基板P上の部品装着位置まで水平移動し(ステップS8’)、電子部品ECの装着動作を開始する。具体的には、それぞれのヘッドAが、ノズル先端3aに電子部品ECが吸着された状態のノズル部材3をZ軸方向に所定の距離だけ下降させる(ステップS9’)。このとき、ノズル部材3の下降途中でリニアスケール27の実装動作範囲II’に記録された原点信号情報27bを読み取り、読み取った位置における位置信号情報27aのパルスのカウント値である原点位置と保存された正規の原点位置とを比較し、原点信号チェックを行う(ステップS10’)。そして、正規の原点位置と再チェック時に特定された原点位置とを比較し、両者が一致する場合には、リニアモータ2の駆動を続行させ、両者が相違する場合には、リニアモータ2の駆動を停止させる。リニアモータ2の駆動を続行させる場合には、ノズル部材3をさらに下降させて、プリント基板P上の所定の位置に電子部品ECを搭載する(ステップS11’)。そして、電子部品ECをノズル先端3aから放した状態で、ノズル部材3をZ軸方向に所定の距離だけ上昇させ(ステップS12’)、ヘッドユニット100を再度、フィーダ設置領域43まで移動させる(ステップS13’)。
【0076】
実施の形態2によれば、電子部品ECの吸着時には、図10(b)および図10(d)に示されるように、電子部品ECの搭載時には、図11(b)および図11(d)に示されるように、実装動作範囲Iの上端であって、非実装動作範囲IIの下端である中間位置MLから最下位置L2までの実装動作範囲I内において、原点信号情報27bの再チェックが行われる。すなわち、電子部品ECの吸着時および搭載時における原点信号情報27bの再チェックは、ノズル先端3aが中間位置MLから最下位置L2付近まで下降するとき、およびノズル先端3aが最下位置L2付近から中間位置ML付近まで上昇するときに行われる。そして、正規の原点位置と再チェック時に特定された原点位置とを比較し、両者が一致する場合には、リニアモータの駆動を続行させ、両者が相違する場合には、リニアモータ2の駆動を停止させる。このように、ヘッドユニット100の作業途中で幾度も原点信号情報27bを読み取り、可動子24、センサ22またはリニアスケール27などの位置関係にずれが生じたか否かの判定を行うことで、異常が生じている場合には速やかに部品搬送装置を停止させ、可動子24の上下方向の位置を誤って認識するのを防ぐことができる。したがって、電子部品ECをプリント基板P上に搭載する際に、ノズル部材3のノズル先端3aで過度に電子部品ECを押圧することによる電子部品の破損を避けることができる。
【0077】
このように、実施の形態1のように、リニアスケール27の非実装動作範囲II’内に原点信号情報27bが記録されている場合と、実施の形態2のように、リニアスケール27の実装動作範囲I’内に原点信号情報27bが記録されている場合とで、異なるタイミングで原点信号情報27bの再チェックを行うことによって、リニアスケール27に記録された原点信号情報27bが1つだけであっても、異常の有無を速やかに検知することができる。
【0078】
なお、上記実施の形態では、原点信号情報の再チェックにおいて、位置ずれが発生していると判定された場合に、実装動作を停止させる形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。図12に示されるように、原点信号情報の再チェックにおいて、位置ずれが発生していると判定された場合に、位置ずれのずれ量を算出し(ステップSS23)、現在位置にずれ量を加算し、現在位置を補正したうえで(ステップSS24)、次の動作(すなわち、電子部品の吸着動作)へ進む形態であってもよい。
【0079】
また、上記実施の形態1では、ヘッドユニットの部品搬送往復回数を基に、原点信号情報の再チェックを行うか否かを判定する形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、原点信号情報の再チェックを毎回行う形態であってもよい。
【0080】
また、上記実施の形態2では、電子部品ECの吸着および装着時のノズル部材3の下降の際に原点信号情報27bの再チェックを行う形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。たとえば、電子部品の吸着時にのみ原点信号情報の再チェックを行ってもよいし、電子部品の装着時にのみ原点信号情報の再チェックを行ってもよい。また、ノズル部材の上昇時にのみ原点信号情報の再チェックを行ってもよい。
【0081】
また、上記実施の形態では、部品実装装置に備えられた部品搬送装置の異常検出方法について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。たとえば、本発明は、部品を保持可能な部品保持部材が搭載された移動可能なヘッドユニットを備え、部品保持部材に設けられた部品を吸着する吸着ノズルを有するノズル部材を昇降駆動することにより、部品供給部からの部品の取り出し、および所定の部品検査領域への部品の移動を行うように構成された部品検査装置についても適用可能である。あるいは、ディスペンサに本発明の部品搬送装置の異常検出方法を適用してもよい。
【0082】
また、上記実施の形態1では、第1の原点位置情報(正規の原点位置)を得るための初回原点信号チェックを部品搬送装置の駆動時に毎回行う形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、第1の原点位置情報は、部品搬送装置、部品実装装置または部品検査装置の組み立て終了時に1度チェックし、部品搬送装置の駆動時に初回原点信号チェックを行わない形態であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】部品実装装置を説明するための平面図である。
【図2】部品実装装置のヘッドユニットを説明するための正面図である。
【図3】ヘッドユニットに取り付けられるヘッドを説明するための斜視図である。
【図4】リニアモータの可動子および可動子に取り付けられたノズル部材の動きを説明するための図であり、(a)はノズル部材が上方にある状態を示し、(b)はノズル部材が下方にある状態を示す。
【図5】リニアモータを説明するための概念図である。
【図6】実施の形態1のヘッドユニットの動きを説明するためのフローチャートである。
【図7】実施の形態1の原点信号情報の再チェックのフローチャートである。
【図8】(a)〜(c)は、実施の形態1の原点信号のチェック時におけるノズル部材のノズル先端の位置について説明するための図である。
【図9】実施の形態2のヘッドユニットの動きを説明するためのフローチャートである。
【図10】(a)〜(e)は、実施の形態2の原点信号情報のチェックを説明するための図である。
【図11】(a)〜(e)は、実施の形態2の原点信号情報のチェックを説明するための図である。
【図12】原点信号情報の再チェックの他の形態を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0084】
20 制御部
22 センサ
24 可動子
27 リニアスケール
27a 位置信号情報
27b 原点信号情報
3 ノズル部材
1000 部品実装装置
EC 電子部品(部品)
A ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品を高さ方向の所望の位置で保持するヘッドが備えられ、前記ヘッドが部品供給部から部品を吸着して所定の目的位置に前記部品を搬送する部品搬送装置であって、
前記ヘッドに設けられた上下方向に往復移動する可動子と、
該可動子に一体に取り付けられ、前記可動子の移動とともに昇降し、前記部品をその先端に保持するノズル部材と、
一定間隔毎の位置を示す位置信号情報、および、所定の位置に記録され、基準点を示す原点信号情報が記録され、前記可動子の位置を示すリニアスケールと、
該リニアスケールに記録された情報を検出するセンサと、
該センサによって検出された情報に基づいて前記可動子の駆動を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記ヘッド動作中に、前記センサが前記原点信号情報読み取り位置を通過するように前記可動子を昇降させ、前記センサで前記原点信号情報を読み取り、読み取った位置における位置信号情報から認識される原点位置と正規の原点位置とを比較するようになっていることを特徴とする部品搬送装置。
【請求項2】
前記ノズル部材が部品供給部での前記部品の吸着または目的位置で部品の離脱を行うための昇降時の、前記リニアスケールに記録された情報の読み取り範囲内に、前記原点信号情報が記録されている場合において、
前記制御部は、前記センサで前記原点信号情報を読み取り、読み取った位置における位置信号情報から認識される原点位置と正規の原点位置とを比較する制御を、前記ノズル部材の前記部品の吸着または離脱のための昇降時に行う請求項1記載の部品搬送装置。
【請求項3】
前記ノズル部材が部品供給部での前記部品の吸着または目的位置で部品の離脱を行うための昇降時の、前記リニアスケールに記録された情報の読み取り範囲外に、前記原点信号位置が記録されている場合において、
前記制御部は、前記センサで前記原点信号情報を読み取り、読み取った位置における位置信号情報から認識される原点位置と正規の原点位置とを比較する制御を、繰り返し行われる前記ノズル部材による前記部品の搬送作業の間に行う請求項1記載の部品搬送装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の部品搬送装置を備え、前記ヘッドにより部品供給部と搬入されたプリント基板上の所定の位置とにわたって前記部品が搬送される部品実装装置。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の部品搬送装置を備え、前記ヘッドにより部品供給部とテストユニットとにわたって前記部品が搬送される部品検査装置。
【請求項6】
部品を高さ方向の所望の位置で保持するヘッドが備えられ、前記ヘッドが部品供給部から部品を吸着して所定の目的位置に前記部品を搬送し、前記ヘッドに設けられた上下方向に往復移動する可動子と、該可動子に一体に取り付けられ、前記可動子の移動とともに昇降し、前記部品をその先端に保持するノズル部材と、一定間隔毎の位置を示す位置信号情報、および、所定の位置に記録され、基準点を示す原点信号情報が記録され、前記可動子の位置を示すリニアスケールと、該リニアスケールに記録された情報を検出するセンサと、該センサによって検出された情報に基づいて前記可動子の駆動を制御する制御部とを備えた部品搬送装置の異常検出方法であって、
前記ヘッド動作中に、前記センサが前記原点信号情報読み取り位置を通過するように前記可動子を昇降させ、前記センサで前記原点信号情報を読み取り、読み取った位置における位置信号情報から認識される原点位置と正規の原点位置とを比較するステップを含むことを特徴とする部品搬送装置の異常検出方法。
【請求項7】
前記ノズル部材が部品供給部での前記部品の吸着または目的位置での部品の離脱を行うための昇降時の、前記リニアスケールに記録された情報の読み取り範囲内に、前記原点信号情報が記録されている場合において、
前記センサで前記原点信号情報を読み取り、読み取った位置における位置信号情報から認識される原点位置と正規の原点位置とを比較する制御を、前記ノズル部材の前記部品の吸着または離脱のための昇降時に行う請求項6記載の部品搬送装置の異常検出方法。
【請求項8】
前記ノズル部材が部品供給部での前記部品の吸着または目的位置での部品の離脱を行うための昇降時の、前記リニアスケールに記録された情報の読み取り範囲外に、前記原点信号位置が記録されている場合において、
前記センサで、前記原点信号情報を読み取り、読み取った位置における位置信号情報から認識される原点位置と正規の原点位置とを比較する制御を、繰り返し行われる前記ノズル部材による前記部品の搬送作業の間に行う請求項6記載の部品搬送装置の異常検出方法。
【請求項9】
前記センサで、前記原点信号情報を読み取り、読み取った位置における位置信号情報から認識される原点位置と正規の原点位置とを比較するステップの後に、
前記原点信号情報が読み取られた位置における位置信号情報から認識される原点位置と正規の原点位置とが相違する場合に、前記部品搬送装置の駆動を停止させるステップを含む請求項6〜8のいずれかに記載の部品搬送装置の異常検出方法。
【請求項10】
前記センサで、前記原点信号情報を読み取り、読み取った位置における位置信号情報から認識される原点位置と正規の原点位置とを比較するステップの後に、
前記原点信号情報が読み取られた位置における位置信号情報から認識される原点位置と正規の原点位置とが相違する場合に、ずれ量を算出し、前記リニアセンサから読み取られる情報から認識される位置を、前記ずれ量によって補正するステップを含む請求項6〜8のいずれかに記載の部品搬送装置の異常検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−170526(P2009−170526A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−4645(P2008−4645)
【出願日】平成20年1月11日(2008.1.11)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】