説明

部材支持用クリップおよびその取付構造

【課題】板状体を折り曲げて使用する部材支持用クリップの作業性を向上する。
【解決手段】中間部分で折り曲げることにより互いに重ね合わされる両側板状部分1b・1cを有するクリップ1において、その重ね合わせ状態で中間部分に孔5形成され、孔によりネットの紐3を支持する。両側板状部分の一方に係合突部6を設け、他方に係合孔7を設けて、両側板状部分の重ね合わされた状態で係合させる。クリップをあらかじめ両側板状部分を重ね合わせた状態に保持することができ、その状態により支持部材にクリップを仮止めすることができるため、その後の取付対象部材への取り付け作業を容易に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状体を折り曲げて互いに重ね合わせて使用する部材支持用クリップおよびその取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、物としての種々の部材を壁面やパネルなどに取り付ける場合に部材支持用クリップを介して取り付けるようにしたものがある。その場合に用いられるクリップにあっては、部材を支持する部位の形状を支持対象物に合わせると良く、例えば紐や線状のものを支持対象とするクリップにおいて、板状体を折り曲げて、その折り曲げ部分に線状の物を把持状態に受容し得る円筒形状部分を形成したものがある(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−222393号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1におけるクリップにあっては、使用前(取り付け前)の状態では板状体の両端部分となる両側平板部を互いに略直交して開いた状態に折り曲げられ、かつ折り曲げ部分に半円状の円弧部が形成されている。その円弧部によりワイヤハーネスを支持し、一方の平板部を固定材に当接させると共に他方の平板部を重ね合わせて、両平板部をねじ止めにより共締めするようにしてパネル等に固定している。
【0004】
しかしながら、パネル等に固定する前にあっては、上記したようにワイヤハーネスを支持する円弧部を間にした両側平板部が互いに略直交して開いた状態になっているため、固定時にワイヤハーネスを円弧部に収めて、両側平板部を閉じるようにしてからパネル等にねじ止めすることになる。そのため、作業が煩雑化するという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を解決して、板状体を折り曲げて互いに重ね合わせて使用する部材支持用クリップの作業性を向上するために本発明に於いては、支持部材(2)を支持しかつ取付対象部材(11)に取り付けられる部材支持用クリップ(1)であって、板状体からなり、中間部分で折り曲げることにより互いに重ね合わされる両側板状部分(1b・1c)と、前記折り曲げ状態で前記中間部分に形成される孔状の支持部分(5)と、前記重ね合わされた状態の前記両側板状部分(1b・1c)を貫通するように前記両側板状部分(1b・1c)にそれぞれ設けられた各取付用貫通孔(8a・8b)とを有し、前記両側板状部分(1b・1c)の一方に係合孔(7)が設けられ、前記両側板状部分(1b・1c)の他方に、前記重ね合わされた状態で前記係合孔(7)に係合しかつ前記一方の板状部分の外方に所定量突出する係合突部(6)が設けられているものとした。
【0006】
特に、前記部材支持用クリップ(1)が、前記各取付用貫通孔(8a・8b)に挿通する固定部材(9)により前記取付対象部材(11)に取り付けられ、前記取付対象部材(11)に、前記部材支持用クリップ(1)を回り止めするべく前記係合突部(6)の突出端部を係合状態に受容する回り止め用凹部(11b)が設けられていると良い。
【発明の効果】
【0007】
このように本発明によれば、係合突部と係合孔との係合により、クリップをあらかじめ両側板状部分を重ね合わせた状態に保持することができ、その状態により支持部材にクリップを仮止めすることができるため、その後の取付対象部材への取り付け作業を容易に行うことができる。
【0008】
特に、クリップを取付対象部材に、両側板状部分に設けた取付用貫通孔に挿通する固定部材としての例えばボルトを用いて取り付ける場合に、そのままではボルトの軸線回りにクリップが回転し得る虞があるのに対して、クリップに設けた仮止め用の係合突部の突出端部を係合状態に受容する回り止め用凹部を取付対象部材に設けたことから、ボルトの軸線回りに回転しようとしても係合突部と回り止め用凹部との係合によりクリップを回り止めすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。図1は本発明が適用されたクリップ1を支持部材としてのネット2に組み付けた状態の全体を示す斜視図である。なお、図に示されるネット2は、例えば自動車の荷室などにて積載物の荷崩れを防止するのに用いられるが、使用場所を自動車の荷室に限られるものではない。
【0010】
図示例のネット2にあっては、その外周となる縁の全周に渡って、ある程度の太さを有する紐3が矩形環状に設けられ、その紐3に囲まれた内側の全範囲に菱目網地形状の網4が張られている。その紐3の適所に任意の数(図示例では6個)のクリップ1が取り付けられている。
【0011】
クリップ1は、合成樹脂製であって良く、図2に示されるように細長の板状体を中間部で折り曲げた形状に形成されている。組み付け前のクリップ1にあっては、図2(a)に示されるように、クリップ1の中間部の折り曲げ部分にはC字状の湾曲部1aが形成されるように、湾曲部1aの両側に延出された平板形状の各板状部分1b・1cが鋭角に開いている。なお、各板状部分1b・1cの開口量は紐3を湾曲部1aに通し得る程度であって良い。
【0012】
組み付け時には、図3に示されるように、両板状部分1b・1cを閉じて互いに重ね合わせる。その閉じた状態で上記湾曲部1aにより支持部分として円筒状の孔5が形成される。なお、孔5の大きさは紐4をある程度の余裕をもって受容し得る大きさであって良い。
【0013】
一方の板状部分1bには、その他方の板状部分1cに重ね合わされる面であって湾曲部1a側とは相反する端部近傍に、他方の板状部分1cの厚さよりも長い柱状の係合突部6が突設されている。係合突部6の突出側には先細り形状の拡頭部6aが設けられている。
【0014】
他方の板状部分1cにおける係合突部6に対応する位置には、厚さ方向に貫通する係合孔7が形成されている。係合孔7は、図2(b)に示されるように、横長の小幅部分を有し、その中間部に拡頭部6aの最大外径よりも小径の円形部分7aを有するように形成されている。
【0015】
また、両板状部分1b・1cには、互いに重ね合わされた状態で両板状部分1b・1cを厚さ方向(重ね合わせ方向)に貫通する取付用貫通孔8a・8bが設けられている。取付用貫通孔8a・8bには、図3に示されるように取付対象部材11への取り付け用の固定部材としての固定ピン9が挿通される。固定ピン9は、扁平大径部9aと、扁平大径部9aから同軸に突出された複数本(例えば2本)の脚部9bとを有する形状に形成されている。
【0016】
クリップ1を取り付ける対象となる取付対象部材11は、図示例の自動車の場合にはパネルや内装部材の薄板状部分であって良い。その取付対象部材11には、固定ピン9の複数本の脚部9bを挿通し得る程度の例えば取付用貫通孔8a・8bと略同径の取付孔11aが設けられている。また、取付対象部材11には、上記した係合突部6の突出端部としての拡頭部6aが没入し得る回り止め用凹部としての回り止め用孔11bが設けられている。回り止め用孔11bは、取付用貫通孔8a・8bと取付孔11aとの整合状態で係合突部6に対応する位置に設けられており、また拡頭部6aの没入状態で大きな遊びが生じない程度の内径に形成されている。
【0017】
このように構成されたクリップ1および取付対象部材11を用いた取り付け要領を以下に示す。まず、紐3の適所部分を、図2のよう開いた状態の両板状部分1b・1cの開口から挿入して湾曲部1aに収める。次に、両板状部分1b・1cを閉じて互いに重ね合わせる。この時、係合突部6が係合孔7に突入し、拡頭部6aと円形部分7aとが係合して、両板状部分1b・1cの開きを防止することができる。これにより、両板状部分1b・1cを重ね合わせた状態で形成される孔5内に紐3を通した状態にすることができ、ネット2にクリップ1を一体的に組み付けることができる。そのようにして、紐3をクリップ1により仮止めすることができるため、取付対象部材11にクリップ1を取り付ける前に必要な数のクリップ1をネット2に組み付けておくことができ、取付対象部材11にクリップ1を取り付ける時に同時に紐3を支持するようにするものに対して、作業性が良い。
【0018】
このように構成されたクリップ1の取付対象部材11への取付要領にあっては、ネット2への上記仮止め状態にし、係合突部6を回り止め用孔11bに没入させてクリップ1を取付対象部材11に当接状態にして、取付用貫通孔8a・8bを取付孔11aに整合させる。この時、係合突部6を回り止め用孔11bに没入させた状態で回り止め用孔11bを回転中心としてクリップ1を回転させることができるため、取付用貫通孔8a・8bを取付孔11aに整合させる作業を容易に行うことができる。
【0019】
そして、図4の矢印に示されるように固定ピン9を取付用貫通孔8a・8bおよび取付孔11aに挿通し、図4に示されるように複数の脚部9bを拡開する向きに曲折し、脚部9bの突出端を取付対象部材11の裏面(クリップ1の当接面とは相反する側の面)に係合させる。これにより、固定ピン9の扁平大径部9aと曲折された脚部9bの係合部との間に両板状部分1b・1cと取付対象部材11とが挟持され、取付対象部材11にクリップ1が取り付けられる。
【0020】
このようにして、固定ピン9の軸線方向に対するクリップ1の変位が防止され、かつ固定ピン9の軸線回りに対するクリップ1の回転も防止される。したがって、クリップ1を取付対象部材11に取り付ける固定部材に図示例のように脚部9bを拡開させるという簡単な形状の固定ピン9を用いることができ、ボルト止めすることなく回り止めすることができ、取り付け作業性を向上し得る。
【0021】
なお、図示例では貫通孔からなる回り止め用孔11bを設けたが、貫通孔に限られるものではなく、底のある凹部形状であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明にかかる部材支持用クリップおよびその取付構造は、支持部材にクリップを仮止めすることができるため、その後の取付対象部材への取り付け作業を容易に行うことができ、支持部材を取付対象部材へクリップを介して取り付けるクリップによる取付構造等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明が適用されたクリップを組み付けたネットの全体を示す斜視図である。
【図2】(a)はクリップを示す側断面図であり、(b)は(a)の矢印IIb線から見た平面図である。
【図3】クリップの仮止め状態および固定ピンと取付対象部材とを示す要部破断側面図である。
【図4】クリップを取付対象部材に取り付けた状態を示す要部破断側面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 クリップ
1b・1c 板状部分
2 ネット(支持部材)
8a・8b 取付用貫通孔
5 孔(支持部分)
6 係合突部
7 係合孔
9 固定ピン(固定部材)
11 取付対象部材
11b 回り止め用孔(回り止め用凹部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部材を支持しかつ取付対象部材に取り付けられる部材支持用クリップであって、
板状体からなり、中間部分で折り曲げることにより互いに重ね合わされる両側板状部分と、前記折り曲げ状態で前記中間部分に形成される孔状の支持部分と、前記重ね合わされた状態の前記両側板状部分を貫通するように前記両側板状部分にそれぞれ設けられた各取付用貫通孔とを有し、
前記両側板状部分の一方に係合孔が設けられ、
前記両側板状部分の他方に、前記重ね合わされた状態で前記係合孔に係合しかつ前記一方の板状部分の外方に所定量突出する係合突部が設けられていることを特徴とする部材支持用クリップ。
【請求項2】
前記部材支持用クリップが、前記各取付用貫通孔に挿通する固定部材により前記取付対象部材に取り付けられ、
前記取付対象部材に、前記部材支持用クリップを回り止めするべく前記係合突部の突出端部を係合状態に受容する回り止め用凹部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の部材支持用クリップの取付構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−68618(P2009−68618A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−238675(P2007−238675)
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】