説明

都市交通システム

【課題】 都市に於て、乗客数や乗客の行先に応じてより柔軟に車両の運行ができ、かつ、建設コストを削減することが可能な都市交通システムを提供する。
【解決手段】 高架状となった一方向周回軌道1と、軌道1に沿って複数配設された乗降駅2と、軌道1を走行する多数の単独車両3と、相隣り合う前単独車両3aと後単独車両3bとの車両間隔Dを一定距離以上又は速度対応安全距離以上に保ちつつランダムな時間間隔にて走行させる間隔制御手段と、を備える。また、軌道1は、単線部5と、所定の乗降駅2の前後にて分岐・合流する複線部6と、を有し、単独車両3の乗客8がスイッチを操作して指定した乗降駅2に単独車両3が停車するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、都市交通システムに係り、特に、軌道上を走行する車両を備える都市交通システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電車・列車等の交通システムでは、機械的に連結された複数の車両(隊列)を、運行ダイヤに合わせて、軌道上に走行させる方式となっている。このような交通システムでは、電車・列車の車両数を運行途中で変更することはほとんど行われない。これにより一編成あたりの輸送力は、始発駅から終着駅までの区間でほぼ一定であり、この輸送力で乗客数が最大となる区間の乗客を輸送できるように運行ダイヤが計画されている。 しかしながら、乗客数が事前の予測より増えた場合には、乗客を無理矢理車内へ押し込んだり、乗客の積み残しが生じたりする。また、乗客数が事前の予測より減った場合には、ほとんど空車の車両を走行させることがあり、その分、無駄が生じる。このように、従来の交通システムでは、乗客数に応じて柔軟に車両の運行を行うことができないという問題点がある。
そこで、従来、上述した問題点を改善するための、種々の新しい交通システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1では、乗客数情報蓄積手段に蓄積された各駅毎の乗客数情報、及び、輸送力算出手段によって算出された輸送力に基いて、隊列の車両数と隊列間の走行時間間隔からなる車両運行計画を立案する普通車両運行計画手段と、乗客数が輸送力算出手段によって算出された輸送力を越える場合には、隊列に新たな車両を追加してこの車両の行先駅を決定すると共に、決定した行先駅までのうち特定の駅のみにこの車両を停車させる高速区間決定手段と、を備えた交通システムが開示されている。
【特許文献1】特開2002−205648号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示された交通システムでは、一日の運行ダイヤの中で、何度も隊列の車両数を変更することとなり、その車両数の変更の際に必要な作業工数が大きなものとなるという問題点があった。
また、特許文献1では、依然として運行ダイヤに合わせて隊列を走行させる方式となっているので、隊列間の時間間隔の大幅な短縮化を図るのが困難であるという問題点があった。
また、特許文献1のような、従来の隊列(機械的に連結された複数の車両)を専用の軌道上に走行させる方式では、乗降駅に長いプラットホームが必要となるため、乗降駅の敷地面積を大きなものとする必要があるという不都合があった。特に、交通システムを都市内に設けた都市交通システムに於ては、土地に制約があるので、乗降駅のための敷地を確保するのは困難であった。
【0005】
また、土地に制約がある都市交通システムでは、高架状となった軌道を有するモノレールが使用される場合があるが、このモノレールに特許文献1の交通システムを適用する場合には、高所にプラットホームを設ける必要があるため、駅舎が二階建て、三階建てとする必要があるという不都合があった。その結果、モノレール用の乗降駅では、地上の軌道を走行する交通システムの乗降駅よりも建設費用が大きなものとなるという問題点があった。
そこで、本発明は、都市に於て、乗客数や乗客の行先に応じてより柔軟に車両の運行ができ、かつ、建設コストを削減することが可能な都市交通システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明に係る都市交通システムは、高架状となった一方向周回軌道と、該軌道に沿って複数配設された乗降駅と、該軌道を走行する多数の単独車両と、相隣り合う前単独車両と後単独車両との車両間隔を一定距離以上又は速度対応安全距離以上に保ちつつランダムな時間間隔にて走行させる間隔制御手段と、を備えるものである。
【0007】
また、高架状となった一方向周回軌道と、該軌道に沿って複数配設された乗降駅と、該軌道を走行すると共に車内に停車駅を指定するためのスイッチを有する多数の単独車両と、相隣り合う前単独車両と後単独車両との車両間隔を一定距離以上又は速度対応安全距離以上に保ちつつランダムな時間間隔にて走行させる間隔制御手段と、を備え、上記軌道は、単線部と、所定の上記乗降駅の前後にて分岐・合流する複線部と、を有し、上記単独車両の乗客が上記スイッチを操作して指定した上記乗降駅に該単独車両が停車するように構成したものである。
【0008】
また、上記乗降駅は、エレベータを備え、上記軌道と同一高さとなる該エレベータの上昇位置に於て、該エレベータの開閉扉と上記単独車両の車両扉とが近接状に対面して開口し、該エレベータと該単独車両との間の乗り降りがプラットホームを介さずにできるように構成されている。
また、上記単独車両が上記乗降駅に接近した際に、上記エレベータが上方待機状態となるように構成されている。
また、上記ランダムな時間間隔は、最短で、15〜60秒間隔となるように設定されている。
また、上記間隔制御手段は、全ての上記単独車両の監視制御を行う監視制御システムと、該単独車両に付設されると共に走行距離を測定する走行距離測定部と、を有し、上記監視制御システムは、該走行距離測定部からのデータによって、全ての上記単独車両の車両間隔を制御するように構成されている。
【0009】
また、上記軌道は、ポイント部にて分岐・合流自在に接続された本線と支線とを備え、上記乗客が指定した上記乗降駅の存在する該支線の上記ポイント部に該本線を走行する上記単独車両が接近したとき自動的に該ポイント部の切換えが行われるように、該ポイント部が上記監視制御システムにて制御される。
また、上記間隔制御手段は、上記単独車両に配設される信号発信部及び受信制御部を有し、該受信制御部は、上記前単独車両の上記信号発信部から発せられた信号を受信すると共に、該前単独車両との車両間隔を制御するように構成されている。
また、上記乗客が少ない時間帯には、上記複線部のいずれかに、該乗客のない上記単独車両を待機させるように構成されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の都市交通システムによれば、単独車両の超過密運行を可能とすることができるので、乗客数に応じて柔軟に単独車両の運行を行うことができる。また、都市の短距離輸送に相応しい都市交通システムとすることができる。
また、土地に制約がある都市に於て、容易に乗降駅のための敷地を確保することができると共に、乗降駅の建設コストを削減することができる。
また、建築構造物が密集した場所に於ても、容易に、軌道を敷設することができる。
【0011】
また、軌道の全体を複線部とする場合よりも軌道を敷設するために必要な建設コストを削減することができる。
また、乗客の行先に応じて柔軟に単独車両の運行を行うことができる。
また、高架状となった軌道に合わせて高所にプラットホームを設ける必要をなくすことができるので、乗降駅の建設コストを削減することができる。
また、ラッシュ時に於ても、各単独車両内を最適な乗客数に保つことができる。
また、スムーズに、エレベータと単独車両との間の乗り降りをすることができる。 また、効率よく単独車両を走行させる軌道を構成することができる。
また、同一軌道上に多数の単独車両を走行させる、超過密運行を安全に行うことができる。
また、車庫用の建設コストを削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、実施の形態を示す図面に基づき、本発明を詳説する。
図1は、本発明の実施の一形態に係る都市交通システムを示す概略平面図である。
本発明に係る都市交通システムは、非連結の車両を使用して都市に於ける短距離輸送に相応しい交通システムを構築するものである。
本発明に係る都市交通システムは、高架状となった軌道1と、軌道1に沿って複数配設された乗降駅2と、軌道1を走行すると共に左右両側に車両扉19, 19(図4及び図6参照)を有する多数の単独車両3…と、間隔制御手段と、を備えている。軌道1は、中空箱型(図3参照)や(図示省略の)I型等の単軌条にて構成するのが好ましい。
ここで、高架状とは、軌道1の全てが高架となっている必要はなく、軌道1の全長のうち、80%以上が高架に敷設されている状態をいうものと定義する。
【0013】
軌道1は、一方向のみに周回できるように構成されている(図1中の矢印A方向)。また、軌道1は、最大勾配が5度となるように設定されており、単線部5と、所定の乗降駅2の前後にて分岐・合流する2つの複線部6, 6と、を有している。単線部5と複線部6, 6とは、駅ポイント部35にて分岐・合流自在に接続されている。
また、乗客8が少ない時間帯には、2つの複線部6, 6のいずれかに、乗客8のない単独車両3を待機させるように構成されている。
なお、乗降駅2の前後にて分岐・合流する複線部6, 6は、2つに限るものではなく、2つ以上とするも好ましい。また、複線部6, 6は、乗降駅2の前後にて分岐・合流したものに限るのではなく、軌道1上の他の場所に設けるも自由である。
【0014】
図2及び図3に於いて、駅ポイント部35は、二本の曲線軌条32, 32と、両曲線軌条32, 32を支持する二本の移動梁部33, 33と、各移動梁部33の底部に配設された車輪部37, 37と、移動梁部33内に配設されると共に車輪部37を駆動させるモータ部36と、レール部34aを有すると共に車輪部37, 37を介して二本の移動梁部33, 33を各々支持する受梁部34, 34と、を備えている。
二本の移動梁部33, 33は、モータ部36により駆動される車輪部37の回転によって、受梁部34, 34上のレール部34a, 34aに沿って、単線部5の延びる方向に対して左右方向(図2中の矢印C方向)に移動するように構成されている。これにより、二本の移動梁部33, 33に支持された二本の曲線軌条32, 32のうちいずれか一方が選択されて、駅ポイント部35の切換えが行われるように構成されている。
【0015】
図4は、乗降駅周辺を示す要部拡大一部破断平面図であり、図5は、乗降駅周辺の一部破断正面図である。
乗降駅2は、乗降駅2の前後にて分岐・合流する2つの複線部6, 6の間にほぼ納まるように建設されている。この乗降駅2は、地上Gに建設された駅舎27と、正面視で複線部6, 6の間に納まるように駅舎27に立設された外形略矩形柱状のエレベータ9と、を備えている。
駅舎27は、例えば一階建てであり、切符購入所や、エレベータ9に乗る順番を待つ乗客8のための待合室や、トイレ等の設備を有している。
【0016】
エレベータ9は、乗客8が駅舎27と高架状の軌道1上の単独車両3との間を行き来するために設けられている。また、エレベータ9は、単独車両3が乗降駅2に接近した際に、上方待機状態となるように構成されている。このエレベータ9は、本体部23と、内部に本体部23を昇降自在に保持する外形矩形柱状の外壁部24と、軌道1と同一高さ位置に於て外壁部24の外周を囲むように外壁部24から突出した張出部25と、軌道1と同一高さ位置に於いて2つの複線部6, 6側に配設される一対の開閉扉28, 28と、駅舎27内に配設された開閉扉29と、を有している。
【0017】
張出部25は、エレベータ9の開閉扉28が誤作動で開いた場合に、開閉扉28から誤って乗客8が地上Gに落下するのを防止するために設けられている。また、一対の開閉扉28のうち、単独車両3が停車していない側の開閉扉28が誤作動で開いた場合に、反対の開閉扉28側に回り込むことができるようになっている。この張出部25には、転落防止用の柵部26が張りめぐらされている。
なお、張出部25と地上Gとを結ぶ非常階段を設けるのも好ましい。この場合、エレベータ9が故障して上方位置で止まったとしても、容易に非常階段から地上Gに避難することができる。
【0018】
一対の開閉扉28, 28は、軌道1と同一高さとなるエレベータ9の上昇位置に於て、単独車両3が停車した側の開閉扉28と単独車両3の車両扉19とが近接状に対面して開口し、エレベータ9と単独車両3との間の乗り降りが(プラットホームを介さずに)できるように構成されている。
【0019】
図6は、単独車両を示す側面図である。
単独車両3は、図1、及び、図4〜図6に示すように、例えば20人乗りで非連結の跨座式モノレールであって、輸送能力3600人/h、回転半径10mとなる大きさに形成されている。
この単独車両3は、図4に示すように、駆動モータ21と、駆動モータ21によって駆動される車輪部15と、車輪部15に付設される走行距離測定部16と、単独車両3の後部に配設される信号発信部17と、単独車両3の前部に配設される受信制御部18と、軌道(軌条)1の側面に転動して単独車両3を案内する横案内輪40と、を備えている。
また、単独車両3は、車内に、複数の座席部20…と、各座席部20に対応して設けられた複数のスイッチ7…と、を有している。
【0020】
複数のスイッチ7…は、単独車両3の乗客8が降車したい乗降駅2(行先)を指定するものである。これら複数のスイッチ7…のうちのいずれかを操作することにより、乗客8が指定した乗降駅2に単独車両3が停車するように構成されている。また、スイッチ7にて指定されていない乗降駅2では、単独車両3はその乗降駅2を通過するように構成されている。
【0021】
走行距離測定部16は、起点となる乗降駅2等の基準点からの走行距離を測定するものである。
信号発信部17は、図1及び図4に示すように、後単独車両3bに向けて電磁波による信号を発信するように構成されている。
また、受信制御部18は、前単独車両3aの信号発信部17から発せられた信号を受信すると共に、前単独車両3aとの車両間隔Dを制御するように構成されている。
なお、この単独車両3は、種々のタイプがあり、定員も種々設定可能である。例えば、図9に示すような、8人乗りの車両であって、輸送能力1500人/h、とした構成にするも好ましい。
【0022】
間隔制御手段は、相隣り合う前単独車両3aと後単独車両3bとの車両間隔Dを一定距離以上又は速度対応安全距離以上に保ちつつ、最短で15〜60秒間隔となるランダムな時間間隔にて走行させる機能を有するものである。この間隔制御手段は、(前述した)単独車両3に配設される走行距離測定部16と、(前述した)単独車両3に配設される信号発信部17及び受信制御部18と、全ての単独車両3の監視制御を行う監視制御システム4と、から構成されている。
【0023】
監視制御システム4は、走行距離測定部16からのデータによって、全ての単独車両3の車両間隔Dを制御するように構成されている。この監視制御システム4により、原則的には、全ての単独車両3の車両間隔Dが制御される。しかしながら相隣り合う前単独車両3aと後単独車両3bが接近する区域に於ける車両間隔Dの細部制御には、単独車両3に配設される信号発信部17及び受信制御部18が利用される。
【0024】
本発明に係る都市交通システムでは、軌道1は、(図1のような)一つの周回軌道から構成されている場合に限定されず、複数の周回軌道を組み合わせる場合もある。即ち、図7に於て示されるように、軌道1は、ポイント部13にて分岐・合流自在に接続された本線11と支線12とを備えている場合がある。
このポイント部13は、上述した監視制御システム4によって制御される。具体的には、スイッチ7によって乗客8が指定した乗降駅2の存在する支線12のポイント部13に、本線11を走行する単独車両3が接近したとき、自動的にポイント部13の切換えが行われるように制御される。
図8に於て、ポイント部13は、一本の直線軌条31と一本の曲線軌条32と、直線軌条31及び曲線軌条32を支持する二本の移動梁部33, 33と、各移動梁部33の底部に配設された車輪部37, 37(図3参照)と、各移動梁部33内に配設されると共に車輪部37を駆動させるモータ部36(図3参照)と、レール部34aを有すると共に車輪部37, 37を介して二本の移動梁部33, 33を各々支持する受梁部34, 34と、を備えている。
二本の移動梁部33, 33は、モータ部36の駆動による車輪部37の回転によって、受梁部34, 34上のレール部34a, 34aに沿って、本線11の延びる方向に対して左右方向(図8中の矢印C方向)に移動するように構成されている。これにより、二本の移動梁部33, 33に支持された直線軌条31及び曲線軌条32のうちいずれか一方が選択されて、ポイント部13の切換えが行われるように構成されている。
【0025】
次に、図1を参照して、本発明に係る都市交通システムに於いて、軌道1上を走行する単独車両3の動き(特に、乗降駅2の前後にて分岐・合流する複線部6, 6を走行する単独車両3の動き)を説明する。
軌道1上では、多数の単独車両3…が前後の車両間隔を一定距離以上又は速度対応安全距離以上に保ちつつランダムな時間間隔にて同一方向(図1中の矢印A方向)に走行している。この軌道1上を走行する単独車両3…には、乗客8を乗せた単独車両3b, 3c, 3f, 3g, 3i, 3jや、乗客8のない単独車両3a, 3e, 3hが混在している。また、乗客8が少ない時間帯では、全ての乗降駅2…のうち、複線部6, 6の一方に乗客8のない単独車両3dが待機している乗降駅2が存在する。
これら軌道1上を走行する単独車両3…が乗降駅2の前後にて分岐・合流する複線部6, 6を走行する際、各単独車両3は、以下のような動きをとる。
【0026】
まず、乗降駅2に単独車両3が停車していない場合、乗降駅2内に進入する乗客8を乗せた単独車両3(3g)は、複線部6, 6のいずれか一方を通って乗降駅2に停車するか、若しくは乗降駅2を通過する。
【0027】
乗降駅2の一方の複線部6に単独車両3(3j)が停車している場合、乗降駅2内に進入する乗客8を乗せた単独車両3(3i)は、他方の複線部6を通って乗降駅2に停車するか、若しくは乗降駅2を通過する(図1中の矢印B方向)。
また、乗降駅2の一方の複線部6に単独車両3(3f)が停車している場合、乗降駅2内に進入する乗客8のない単独車両3(3e)は、他方の複線部6を通って乗降駅2を通過する(図1中の矢印B方向)。
【0028】
乗降駅2の一方の複線部6に待機中の単独車両3(3d)が停車している場合、乗降駅2内に進入する乗客8を乗せた単独車両3(3i)は、他方の複線部6を通って乗降駅2に停車するか、若しくは乗降駅2を通過する(図1中の矢印B方向)。
【0029】
乗降駅2の両方の複線部6, 6に単独車両3(3i, 3j)が存在している場合、乗降駅2に近づく単独車両3(3h)は、複線部6, 6のいずか一方が空くまで乗降駅2の手前で速度を低下させるか、若しくは一時停車する。
【0030】
なお、本発明の実施の形態に於ては、乗降駅2が一つのエレベータ9を有し、エレベータ9が軌道1と同一高さ位置に配設される一対の開閉扉28, 28を有する場合を例示したが、本発明はこれに限ることなく、乗降駅2に複数のエレベータ9を設けて、降車専用、乗車専用に各エレベータ9を振り分けてもよい。また、軌道1と同一高さ位置に配設される開閉扉28は一つでもよい。
また、乗降駅2に複数のエレベータ9を設けて、降車専用、乗車専用に各エレベータ9を振り分けた場合、単独車両3は、乗降駅2に於て乗車専用のエレベータ9前、降車専用のエレベータ9前の2回停車するようにしてもよい。この場合、よりスムーズに、乗客8の乗降駅2での乗り降りが行えるようにすることができる。
【0031】
また、本発明の実施の形態に於ては、乗降駅2が単独車両3の乗り降り専用の駅としたが、本発明はこれに限ることなく、乗降駅2を百貨店・マンション等の建物内(又は建物外壁面)に設けて、乗降駅2から直接的に百貨店・マンション等の建物内に入れるように構成してもよい。
【0032】
また、本発明の実施の形態に於ては、乗降駅2にエレベータ9を設け、軌道1と同一高さとなるエレベータ9の上昇位置に於て、エレベータ9の開閉扉28と単独車両3の車両扉19とが近接状に対面して開口し、エレベータ9と単独車両3との間の乗り降りができるように構成したが、本発明はこれに限ることなく、従来のプラットホームを有する乗降駅2を採用することも可能である。
【0033】
以上のように、本発明に係る都市交通システムは、高架状となった一方向周回軌道1と、軌道1に沿って複数配設された乗降駅2と、軌道1を走行する多数の単独車両3と、相隣り合う前単独車両3aと後単独車両3bとの車両間隔Dを一定距離以上又は速度対応安全距離以上に保ちつつランダムな時間間隔にて走行させる間隔制御手段と、を備えるので、運行ダイヤなしで各単独車両3を軌道1に走行させることができる。また、機械的に連結された複数の車両(隊列)ではなく、多数の非連結の車両を軌道1に走行させることによって、前後の車両間隔を小さくすることができる。これにより、単独車両3…の超過密運行を可能とすることができる。その結果、乗客数に応じて柔軟に単独車両3…の運行を行うことができる。また、都市の短距離輸送に相応しい都市交通システムとすることができる。
【0034】
また、単独車両3…を軌道1に走行させることにより、乗降駅に長いプラットホームを設ける必要をなくすことができる。これにより、乗降駅の敷地面積を小さくすることができる。その結果、土地に制約がある都市に於て、容易に乗降駅2のための敷地を確保することができると共に、乗降駅2の建設コストを削減することができる。
また、単独車両3…を軌道1に走行させることにより、軌道1の曲線部分の最小半径を小さくすることができる。これにより、建築構造物が密集した場所に於ても、容易に、軌道1を敷設することができる。
【0035】
また、単独車両3の乗客8がスイッチ7を操作して指定した乗降駅2に単独車両3が停車するように構成することによって、乗客8が降車しない乗降駅2では、単独車両3を通過させると共に、乗客8が降車する乗降駅2では、単独車両3を停車させることができる。これにより、乗客の行先に応じて柔軟に単独車両3…の運行を行うことができる。 また、所定の乗降駅2の前後にて分岐・合流する複線部6, 6を有するように構成することによって、前単独車両3aが乗降駅2に停車していても、その前単独車両3aを容易に追い越すことができる。また、軌道1の全体のうち、単線部5の領域を多くとることによって、軌道1の全体を複線部6, 6とする場合よりも軌道1を敷設するために必要な建設コストを削減することができる。
【0036】
また、乗降駅2にエレベータ9を設け、軌道1と同一高さとなるエレベータ9の上昇位置に於て、エレベータ9の開閉扉28と単独車両3の車両扉19とが近接状に対面して開口し、エレベータ9と単独車両3との間の乗り降りができるように構成することによって、高架状となった軌道1に合わせて高所にプラットホームを設ける必要をなくすことができる。これにより、駅舎を二階建て、三階建てとする必要がなくなるので、高所にプラットホームを設けるよりも乗降駅2の建設コストを削減することができる。
また、エレベータ9の上昇位置に於て、エレベータ9の開閉扉28と単独車両3の車両扉19とが近接状に対面して開口し、エレベータ9と単独車両3との間の乗り降りができるように構成することによって、エレベータ9の最大収容人数以上の乗客8がエレベータ9内に乗り込むのを容易に防止することができる。これにより、エレベータ9の最大収容人数と単独車両3の最大収容人数とを同一にして、単独車両3内に無理矢理乗客が乗り込むのを防止することができる。その結果、ラッシュ時に於ても、各単独車両3内を最適な乗客数に保つことができる。
【0037】
また、単独車両3が乗降駅2に接近した際に、エレベータ9が上方待機状態となるように構成することによって、よりスムーズに、エレベータ9と単独車両3との間の乗り降りをすることができる。
【0038】
また、ランダムな時間間隔を、最短で、15〜60秒間隔となるように設定することによって、従来の交通システムにはない、単独車両3の超過密運行を可能とすることができる。その結果、乗客数に応じてより柔軟に単独車両3…の運行を行うことができる。また、都市の短距離輸送により相応しい都市交通システムとすることができる。
【0039】
また、間隔制御手段として、全ての単独車両3…の監視制御を行う監視制御システム4と、単独車両3の車輪部15に付設されると共に起点となる乗降駅2からの走行距離を測定する走行距離測定部16と、を有し、かつ、監視制御システム4が走行距離測定部16からのデータにて全ての単独車両3の車両間隔Dを制御するように構成することによって、同一軌道1上に多数の単独車両3を走行させる、超過密運行を安全に行うことができる。その結果、都市の短距離輸送に相応しい都市交通システムとすることができる。
【0040】
また、軌道1にポイント部13にて分岐・合流自在に接続された本線11と支線12とを設け、本線11から支線12への進入時には、監視制御システム4の制御により、ポイント部13の切換えが(自動的に)行われるように構成することによって、軌道1を一方向周回の本線11のみとする場合と比較して、乗降駅2…を設ける場所に合わせて、効率よく単独車両3…を走行させる軌道1を構成することができる。
【0041】
また、間隔制御手段は、単独車両3に配設される信号発信部17及び受信制御部18を有し、受信制御部18は、前単独車両3aの信号発信部17から発せられた信号を受信すると共に、前単独車両3aとの車両間隔Dを制御するように構成することによって、単独車両3同士で車両間隔Dを制御することができる。これにより、前単独車両3aと後単独車両3bとが衝突しないようにすることができ、超過密運行を安全に行うことができる。その結果、都市の短距離輸送に相応しい都市交通システムとすることができる。
【0042】
また、乗客8が少ない時間帯には、複線部6, 6のいずれかに、乗客8のない単独車両3…を待機させるように構成することによって、いずれかの複線部6を車庫として利用することができる。これにより、軌道1とは別に設けた、単独車両3…の車庫用の引込み線を大幅に削減することができる。また、ラッシュ時には、すぐに待機中の単独車両3を利用することができる。これにより、乗客数に応じてより柔軟に車両の運行ができ、かつ、車庫用の建設コストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施の一形態に係る都市交通システムを示す概略平面図である。
【図2】駅ポイント部を示す平面図である。
【図3】要部拡大正面図である。
【図4】乗降駅周辺を示す要部拡大一部破断平面図である。
【図5】一部破断正面図である。
【図6】単独車両を示す側面図である。
【図7】本線と支線とを備えた軌道を示す概略平面図である。
【図8】ポイント部を示す平面図である。
【図9】他の単独車両を示す側面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 軌道
2 乗降駅
3 単独車両
3a 前単独車両
3b 後単独車両
4 監視制御システム
5 単線部
6 複線部
7 スイッチ
8 乗客
9 エレベータ
11 本線
12 支線
13 ポイント部
15 車輪部
16 走行距離測定部
17 信号発信部
18 受信制御部
19 車両扉
28 開閉扉
D 車両間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高架状となった一方向周回軌道(1)と、該軌道(1)に沿って複数配設された乗降駅(2)と、該軌道(1)を走行する多数の単独車両(3)と、相隣り合う前単独車両(3a)と後単独車両(3b)との車両間隔(D)を一定距離以上又は速度対応安全距離以上に保ちつつランダムな時間間隔にて走行させる間隔制御手段と、を備えることを特徴とする都市交通システム。
【請求項2】
高架状となった一方向周回軌道(1)と、該軌道(1)に沿って複数配設された乗降駅(2)と、該軌道(1)を走行すると共に車内に停車駅を指定するためのスイッチ(7)を有する多数の単独車両(3)と、相隣り合う前単独車両(3a)と後単独車両(3b)との車両間隔(D)を一定距離以上又は速度対応安全距離以上に保ちつつランダムな時間間隔にて走行させる間隔制御手段と、を備え、
上記軌道(1)は、単線部(5)と、所定の上記乗降駅(2)の前後にて分岐・合流する複線部(6)と、を有し、
上記単独車両(3)の乗客(8)が上記スイッチ(7)を操作して指定した上記乗降駅(2)に該単独車両(3)が停車するように構成したことを特徴とする都市交通システム。
【請求項3】
上記乗降駅(2)は、エレベータ(9)を備え、上記軌道(1)と同一高さとなる該エレベータ(9)の上昇位置に於て、該エレベータ(9)の開閉扉(28)と上記単独車両(3)の車両扉(19)とが近接状に対面して開口し、該エレベータ(9)と該単独車両(3)との間の乗り降りがプラットホームを介さずにできるように構成されている請求項1又は2記載の都市交通システム。
【請求項4】
上記単独車両(3)が上記乗降駅(2)に接近した際に、上記エレベータ(9)が上方待機状態となるように構成されている請求項3記載の都市交通システム。
【請求項5】
上記ランダムな時間間隔は、最短で、15〜60秒間隔となるように設定されている請求項1、2、3又は4記載の都市交通システム。
【請求項6】
上記間隔制御手段は、全ての上記単独車両(3)の監視制御を行う監視制御システム(4)と、該単独車両(3)に付設されると共に走行距離を測定する走行距離測定部(16)と、を有し、
上記監視制御システム(4)は、該走行距離測定部(16)からのデータによって、全ての上記単独車両(3)の車両間隔(D)を制御するように構成されている請求項1、2、3、4又は5記載の都市交通システム。
【請求項7】
上記軌道(1)は、ポイント部(13)にて分岐・合流自在に接続された本線(11)と支線(12)とを備え、
上記乗客(8)が指定した上記乗降駅(2)の存在する該支線(12)の上記ポイント部(13)に該本線(11)を走行する上記単独車両(3)が接近したとき自動的に該ポイント部(13)の切換えが行われるように、該ポイント部(13)が上記監視制御システム(4)にて制御される請求項6記載の都市交通システム。
【請求項8】
上記間隔制御手段は、上記単独車両(3)に配設される信号発信部(17)及び受信制御部(18)を有し、
該受信制御部(18)は、上記前単独車両(3a)の上記信号発信部(17)から発せられた信号を受信すると共に、該前単独車両(3a)との車両間隔(D)を制御するように構成されている請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の都市交通システム。
【請求項9】
上記乗客(8)が少ない時間帯には、上記複線部(6)のいずれかに、該乗客(8)のない上記単独車両(3)を待機させるように構成されている請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の都市交通システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−56290(P2006−56290A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−237543(P2004−237543)
【出願日】平成16年8月17日(2004.8.17)
【出願人】(390002196)泉陽興業株式会社 (28)
【Fターム(参考)】