説明

配合計算装置及びプログラム

【課題】
下水汚泥を炭化処理した炭化燃料と石炭とを石炭ボイラで混焼する際に、炭化燃料及び石炭の成分やその配合割合を考慮して混焼灰の比抵抗を正確に予測でき、混焼灰の比抵抗が電気集塵機での集塵に最適な範囲内となるような配合割合を計算できる配合計算装置を提供することにある。
【解決手段】
石炭を専焼したときに発生する専焼灰の比抵抗から設定される基準灰比抵抗に、前記炭化燃料と石炭の成分分析値及びその配合割合に対応する灰比抵抗低下率を考慮して、前記炭化燃料と石炭とを混焼したときに発生する混焼灰の比抵抗を予測する灰比抵抗予測手段と、予測された前記混焼灰の比抵抗が、電気集塵機での管理範囲内となるような炭化燃料と石炭の配合割合を計算する配合計算手段とを備えたことを特徴とする配合計算装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化燃料と石炭とを石炭ボイラで混焼するときの配合割合を計算する配合計算装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年,廃棄物を再利用し環境に優しいエネルギーの有効活用が図られている。廃棄物を再利用したバイオマス燃料については種々の種類があるが、例えば下水を処理した汚泥(以下、下水汚泥と呼ぶ)を炭化した炭化燃料がある。下水汚泥は人間の活動に伴い恒常的かつ多量に発生するものであり、調達ポテンシャルの面で優れているが、下水汚泥に含まれる成分が日々変化して炭化燃料の品質も若干変動する。
【0003】
この炭化燃料を石炭火力発電所で燃焼させる試みが進められている。そこで、炭化燃料の品質や供給量の変動を吸収するため、炭化燃料の供給量及びその品質と、利用先の需要量及び要求品質との管理を適切に行い、生成した炭化燃料を有効利用できるバイオマス燃料供給システムが提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
炭化燃料と石炭とを混焼するときの配合割合は、炭化燃料と石炭との混合燃料の発熱量、排ガスの環境影響度(NOx量等)及び灰発生量等を考慮して決定される。
【0005】
ここで、石炭火力発電所で発生した石炭灰(フライアッシュ)を含む排ガス中の粉塵は、電気集塵機やバグフィルタを用いて除去されている。電気集塵機とは、並行に配置された2枚の集塵極と、両集塵極間の中央に配置された放電極からなり、集塵極と放電極との間に高電圧を印加しコロナ放電を発生させ、クーロン力を利用して排ガス中の粉塵を捕集するものである。
【0006】
電気集塵機で集塵効率が高く保てる粉塵の比抵抗(電気抵抗率)は、104〜1010Ω・cmであるが、近年利用が増えている海外炭の灰の比抵抗は1012〜1013Ω・cmと高いため、逆電離現象が起こり集塵効率が低下する点が指摘されている(例えば特許文献2参照)。すなわち、粉塵の比抵抗が高い場合に、コロナ放電されず粉塵に電荷が蓄積し、この電荷によって形成された電界が絶縁破壊限界強度に達すると、集塵極から放電極に向かって正イオンが飛び出す逆電離現象が起こる。その結果、集塵空間にある負イオンが正イオンによって中和され、集塵効率が低下してしまう。
【0007】
そのため、灰比抵抗の高い石炭を用いる際には、灰比抵抗の低い石炭と混炭する等の措置により石炭ボイラで混焼させたときの灰(以下混焼灰と呼ぶ)の比抵抗を低下させ、電気集塵機での集塵効率を最適化するように燃料の配合設計がされてきた。
【0008】
さらに、配合設計で配慮しても、混焼灰の比抵抗が一定の制限値(例えば1011Ω・cm)を超えると予測される場合には、逆電離現象を抑えるためパルス荷電を与えて電気集塵機の集塵効率を維持する方法が提案されている(特許文献3参照)。特許文献3の方法では、混焼灰の比抵抗の予測値には、それぞれの石炭を単独で燃焼させたときの灰(以下専焼灰と呼ぶ)の比抵抗に、それぞれの配合割合を乗じて加重平均した値を用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−106390号公報
【特許文献2】特開平1−171662号公報
【特許文献3】特開平8−229433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、下水汚泥を炭化処理した炭化燃料を石炭ボイラで燃焼した実績が少なく、石炭とは成分が異なる炭化燃料を混焼した場合に、どのように混焼灰の比抵抗が変化し、それが電気集塵機の集塵効率に如何なる影響を与えるかが不明であった。
【0011】
そのため、特許文献3の方法と同様に、単純な加重平均により混焼灰の比抵抗を予測したとしても、予測値の信頼性に乏しいといった問題点があった。その結果、電気集塵機での集塵効率への影響があらかじめ予測できず、炭化燃料と石炭の配合割合が決定できないといった問題点があった。
【0012】
よって、本発明の目的は、下水汚泥を炭化処理した炭化燃料と石炭とを石炭ボイラで混焼する際に、炭化燃料及び石炭の成分やその配合割合を考慮して混焼灰の比抵抗を正確に予測でき、混焼灰の比抵抗が電気集塵機での集塵に最適な範囲内となるような炭化燃料と石炭の配合割合を計算できる配合計算装置及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、発明者らが鋭意検討を行った結果、石炭に少量の炭化燃料を配合した混合燃料を石炭ボイラで燃焼させると、石炭のみの専焼灰に比べて混焼灰の比抵抗が約半分に低下し電気集塵機での集塵効率が向上することを見出した。さらに、混焼灰の比抵抗は、炭化燃料及び石炭の成分やその配合割合を考慮すれば一定精度で予測できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明に係わる配合計算装置は、下水汚泥を炭化処理した炭化燃料と石炭とを石炭ボイラで混焼するときの配合割合を計算する配合計算装置であって、前記炭化燃料と石炭の成分分析値を含むデータを入力する入力装置と、前記石炭を専焼したときに発生する専焼灰の比抵抗から設定される基準灰比抵抗に、前記炭化燃料と石炭の成分分析値及びその配合割合に対応する灰比抵抗低下率を考慮して、前記炭化燃料と石炭とを混焼したときに発生する混焼灰の比抵抗を予測する灰比抵抗予測手段と、予測された前記混焼灰の比抵抗が、電気集塵機での管理範囲内となるような炭化燃料と石炭の配合割合を計算する配合計算手段と、前記配合計算手段での炭化燃料と石炭の配合割合の計算結果を含むデータを出力する出力装置とを備えたことを特徴とする。
【0015】
また、前記基準灰比抵抗は、前記炭化燃料と石炭とをそれぞれ専焼したときに発生する専焼灰の比抵抗をその配合割合に応じて加重平均した値から設定してもよい。
【0016】
また、前記灰比抵抗低下率は、前記基準灰比抵抗と、前記炭化燃料及び石炭を混焼したときに発生する混焼灰の電気集塵機における見掛け比抵抗との関係に基づき設定及び更新してもよい。
【0017】
また、前記入力装置で入力されるデータは、前記石炭ボイラの燃焼方式に係わるボイラ仕様と前記電気集塵機での灰比抵抗の管理範囲に係わる集塵機仕様とを含み、前記灰比抵抗低下率は、前記炭化燃料と石炭の成分分析値及びその配合割合に加えて前記ボイラ仕様にも対応するよう設定され、前記配合計算手段は、前記集塵機仕様に対応する灰比抵抗の管理範囲に基づいて前記配合割合を計算してもよい。
【0018】
さらに、本発明に係わるプログラムは、下水汚泥を炭化処理した炭化燃料と石炭とを石炭ボイラで混焼するときの配合割合を計算する配合計算プログラムであって、前記石炭を専焼したときに発生する専焼灰の比抵抗から設定される基準灰比抵抗に、前記炭化燃料と石炭の成分分析値及びその配合割合に対応する灰比抵抗低下率を考慮して、前記炭化燃料と石炭とを混焼したときに発生する混焼灰の比抵抗を予測する処理と、予測された前記混焼灰の比抵抗が、電気集塵機での管理範囲内となるような炭化燃料と石炭の配合割合を計算する処理とをコンピュータに行わせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、下水汚泥を炭化処理した炭化燃料と石炭とを石炭ボイラで混焼する際に、炭化燃料及び石炭の成分やその配合割合を考慮して混焼灰の比抵抗を正確に予測でき、混焼灰の比抵抗が電気集塵機での集塵に最適な範囲内となるような炭化燃料と石炭の配合割合を計算できる。その結果、生成した炭化燃料を最適箇所に有効活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施形態に係わる石炭ボイラシステムの概要図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係わる配合計算装置の構成を表すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係わる混焼灰の比抵抗比と炭化燃料の配合割合の関係を表す線グラフである。
【図4】本発明の第1の実施形態に係わる配合計算方法を表すフロー図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係わる石炭ボイラシステムの概要図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係わる配合計算方法を表すフロー図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係わる石炭ボイラシステムの概要図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係わる配合計算方法を表すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。
【0022】
〔第1の実施形態〕
図1は、本発明の第1の実施形態に係わる石炭ボイラシステムの概要図である。この石炭ボイラシステムは、下水汚泥を炭化処理した炭化燃料と石炭とを混焼するためのシステムである。
【0023】
図1を用いて、石炭ボイラシステムでの燃料及び排ガス処理の流れを説明する。石炭バンカ1に貯留された石炭と炭化燃料置場2に貯留された炭化燃料は、それぞれ給炭機3に送られ、給炭機3で所定の配合割合となるよう混合燃料が配合される。ここで、炭化燃料と石炭の配合割合は予め配合計算装置5によって計算され、給炭機3にインプットされている。混合燃料は微粉炭機4で微粉化された後、石炭ボイラ後段の空気予熱機7にて加熱された燃焼用空気とともに、石炭ボイラ6に供給される。
【0024】
石炭ボイラ6で混合燃料を燃焼させた際に発生する排ガスは、排煙脱硝装置(図示しない)と前述の空気予熱機7を経て電気集塵機8に通流され、ここで大部分の粉塵が除去される。粉塵濃度計9で粉塵濃度を確認した後、残った粉塵はバグフィルタ10で除去される。さらに、排煙脱硫装置(図示しない)で排ガス中の脱硫を行い、再度粉塵濃度計9で粉塵濃度を最終確認して、清浄化された排ガスが煙突11から排出される。
【0025】
図2は、本実施形態に係わる配合計算装置の構成を表すブロック図である。配合計算装置5は、炭化燃料と石炭の成分分析値を含むデータを入力する入力装置21と、入力データや演算プログラムを記憶する記憶装置23と、炭化燃料と石炭とを石炭ボイラで混焼するときの配合割合を計算する演算装置22と、配合結果を出力する出力装置24とから構成される。以後、各構成について詳細に説明する。
【0026】
入力装置21は、炭化燃料と石炭の成分分析値を入力するために用いられる。入力される成分分析値は、後段の配合計算で用いられるデータを網羅している必要がある。具体的には、少なくとも以下のデータが必要である。
【0027】
発熱量、全水分
工業分析データ(固有水分、灰分、揮発分、固定炭素の含有率)
元素分析データ(炭素、水素、酸素、窒素、硫黄、塩素、リン等の含有率)
灰の組成分析(シリカ、アルミナ、5酸化2リン等の含有率)
通常、石炭は海上輸送により定期的に一定量が供給され、その成分分析値は石炭ヤード受け入れ時に測定される。同一産地の石炭であれば成分はほぼ安定しており、受け入れ時に測定すれば十分である。
【0028】
炭化燃料の場合は、下水処理場から定常的に少量づつ供給される。成分分析値のうち、発熱量は配合割合を計算する基本データとなるため高い頻度(例えば、1週間/回)で測定され、それ以外の成分分析値は定期的(例えば、数ヶ月/回)に測定される。炭化燃料の成分は若干変動するものの、同じ下水処理場からの炭化燃料であればその変動幅は一定範囲であることが分かっており、定期的に測定されたデータがあれば問題はない。なお、下水汚泥に含まれる成分に季節変動が認められる場合には、過去の同時期に測定された成分分析値を参照してもよい。
【0029】
演算装置22では、記憶装置23に記憶された演算プログラムを演算装置22内のプロセッサ(図示せず)で実行し、配合計算に係わる演算を行う。演算は、次の手段を用いて行われる。すなわち、
1)石炭を専焼したときに発生する専焼灰の比抵抗から設定される基準灰比抵抗に、炭化燃料と石炭の成分分析値及びその配合割合に対応する灰比抵抗低下率を考慮して、炭化燃料と石炭とを混焼したときに発生する混焼灰の比抵抗を予測する灰比抵抗予測手段25と、
2)混焼灰の比抵抗が、電気集塵機8での管理範囲内となるような炭化燃料と石炭の配合割合を計算する配合計算手段26である。
【0030】
灰比抵抗予測手段25では、まず、基準灰比抵抗を求める。基準灰比抵抗とは、混焼灰の比抵抗を予測するための基準となる灰比抵抗のことであり、本実施形態では石炭の専焼灰の比抵抗から設定される。石炭の専焼灰の比抵抗は、その灰成分から予測するだけでなく、同じ成分(同一産地)の石炭における過去の燃焼実績を参照して算出することができる。
【0031】
次に、基準灰比抵抗に灰比抵抗低下率を考慮して、炭化燃料と石炭の混焼灰の比抵抗を予測する。例え少量であっても石炭に炭化燃料を配合すると、混焼灰の比抵抗が石炭専焼灰の比抵抗よりも大幅に低下する。この現象を反映するため、灰比抵抗低下率を設けた。
【0032】
混焼灰の比抵抗が石炭専焼灰の比抵抗よりも低下する現象について、図3を用いて説明する。図3は、炭化燃料と石炭との混焼灰の比抵抗比と炭化燃料の配合割合の関係を表す線グラフである。ここで、混焼灰の比抵抗比は、混焼灰の比抵抗と石炭専焼灰(炭化燃料の配合割合がゼロの時の灰)の比抵抗との比として算出した。同図には2つのデータがあるが、これは電気集塵機8を通る排ガスラインがAライン、Bラインの2本存在するためである。また、灰の比抵抗は、電気集塵機での印加電圧と測定電流から後述する方法にて見掛け比抵抗として算出した。炭化燃料の配合割合は、石炭に対する炭化燃料の重量比として算出した。
【0033】
図3に示されるように、炭化燃料の配合割合が増加すると直線的に混焼灰の比抵抗比が低下している。特に、炭化燃料の配合割合が3.9重量%のときには、比抵抗比が0.5近くになり、混焼灰の比抵抗が石炭専焼灰の比抵抗の半分程度まで低下することが分かる。
【0034】
炭化燃料の配合によって混焼灰の比抵抗が大幅に低下する要因は明らかではないが、炭化燃料の成分が起因している可能性が高い。表1に石炭と炭化燃料の専焼灰の組成分析結果を示す。
【表1】

【0035】
表1より、5酸化2リン(P)が、石炭の専焼灰にはほとんど含まれていないのに対し、炭化燃料の専焼灰では製造日にかかわらず20%以上含まれていることが分かる。このように、石炭と炭化燃料の専焼灰では、5酸化2リン(P)の組成率が大きく異なっており、この成分が何らかの影響を及ぼして混焼灰の比抵抗が低下したものと判断される。
【0036】
よって、専焼灰の比抵抗を予測するにあたっては、炭化燃料の配合割合だけでなく、特に灰の組成分析値も考慮する必要がある。これらを総合して、灰比抵抗低下率を表す関数F(P、P、x)を定義する。考慮するパラメータとして、Pは石炭専焼灰の組成分析値、Pは炭化燃料専焼灰の組成分析値、xは炭化燃料の配合割合である。ここで、混焼灰の比抵抗をρとすると、ρは(1)式より求めることができる。
【0037】
(数1)
ρ=ρ・F(P、P、x) ------- (1)
ここで、関数F(P、P、x)には、灰比抵抗低下率を表すのに最適な関数を用いればよい。
【0038】
例えば、図3については、同一の石炭と炭化燃料を用いて、配合割合のみ変化させているため、変数は配合割合xのみとなり、この関数はF(x)となる。さらに、図3に示すように、F(x)は1次関数で表現できることが分かる。配合割合に対する混焼灰の比抵抗比の変化率を−k(k>0)とすると、(1)式は(2)式に置き換えることができる。
【0039】
(数2)
ρ=ρ(1−x・k)------- (2)
以上の説明では、基準灰比抵抗は、石炭専焼灰の比抵抗から設定したが、他にも石炭と炭化燃料のそれぞれの専焼灰の比抵抗をその配合割合に応じて加重平均した値から設定してもよい。炭化燃料の配合割合が多い場合(例えば10%以上)、炭化燃料自体の専焼灰の比抵抗を考慮した方が、より合理的に混焼灰の比抵抗を予測できるためである。
【0040】
基準灰比抵抗を加重平均値から設定する場合、炭化燃料専焼灰の比抵抗をρとすると、(1)式は(3)式に置き換えることができる。
【0041】
(数3)
ρ={(1−x)ρ+x・ρ}F(P、P、x) ------- (3)
続いて配合計算手段26について説明する。まず、炭化燃料と石炭との混合燃料の発熱量、排ガスの環境影響度(NOx量等)、灰発生量等の一般条件を満足する配合を計算し、仮配合を決定する。この仮配合について、予測された混焼灰の比抵抗が、電気集塵機8での管理範囲内(例えば104〜1010Ω・cm)になるかどうかを確認する。
【0042】
混焼灰の比抵抗が上記管理範囲外になる予測された場合には、前述の一般条件を満足する範囲で、灰比抵抗が低い石炭と混炭したり炭化燃料を追加配合して、管理範囲内となるように配合を調整する。なお、前述の通り炭化燃料の配合割合が増加すると混焼灰の比抵抗が低下する傾向にあるため、灰比抵抗が高い石炭を燃焼させるときに炭化燃料を多めに配合するのは有効な措置である。
【0043】
以上説明してきた配合計算装置5としては、パーソナルコンピュータ、ワークステーション、メインフレームなどが例示される。入力装置21としては、マウス、キーボード、無線あるいは有線で送信されるデータを受信する受信部などが例示される。記憶装置23としては、ハードディスクドライブ、揮発型または不揮発型メモリ、CD−ROM、CD−RAM、DVD−ROM、DVD−RAMなどが例示される。出力装置24は、ディスプレイ、プリンタ、ハードディスクドライブなどが例示される。
【0044】
次に、図4に示す本実施形態に係わる配合計算方法を表すフロー図について説明する。まず、炭化燃料と石炭について配合計算に必要な成分分析値を入力する(S1)。入力された成分分析値等から、石炭専焼灰の比抵抗を算出し、基準灰比抵抗として設定する(S2)。次に、前述した一般条件を満たすように炭化燃料と石炭の配合割合を仮定する(S3)。その配合割合及び成分分析値に対応する灰比抵抗低下率を算出し、基準灰比抵抗に灰比抵抗低下率を乗じて混焼灰の比抵抗を予測する(S4)。混焼灰の比抵抗が電気集塵機8の管理範囲内にあるかどうかを確認し(S5)、管理範囲外であれば、再度配合割合の仮定(S3)に戻る。管理範囲内であれば、配合割合を確定し、結果を給炭機3に伝送する(S6)。
【0045】
第1の実施形態によれば、下水汚泥を炭化処理した炭化燃料と石炭とを石炭ボイラ6で混焼する際に、炭化燃料及び石炭の成分分析値やその配合割合を考慮して混焼灰の比抵抗を正確に予測でき、混焼灰の比抵抗が電気集塵機8での集塵に最適な範囲内となるような炭化燃料と石炭の配合割合を計算することができる。
【0046】
〔第2の実施形態〕
図5は、本発明の第2の実施形態に係わる石炭ボイラシステムの概要図である。本実施形態は、図1に示した第1の実施形態に対し、配合計算装置5を電気集塵機8とも接続して、データの送信ができるようにしたものである。
【0047】
本実施形態では、図2に示す灰比抵抗予測手段25で用いられる灰比抵抗低下率は、基準灰比抵抗と、炭化燃料及び石炭を混焼したときに発生する混焼灰の電気集塵機における見掛け比抵抗との関係に基づき設定及び更新する。
【0048】
ここで、混焼灰の見掛け比抵抗ρ’は、電気集塵機での印加電圧をV、測定電流をI、集塵極の面積をA、集塵極と放電極の距離をLとし、(4)式より算出する。
【0049】
(数4)
ρ’=V/I×A/L ------- (4)
(1)式のρに(4)式のρ’で代入して、灰比抵抗低下率F(P、P、x)について整理すると(5)式の通りとなる。この関係を満足するように灰比抵抗低下率の算出方法を設定及び更新する。
【0050】
(数5)
(P、P、x)=ρ’/ρ ------- (5)
図6は、本実施形態に係わる配合計算方法を表すフロー図であり、図4に示した第1の実施形態に対し、配合割合の確定及び給炭機への結果の伝送(S6)以降の処理(S11〜S15)を追加したものである。
【0051】
追加した処理について説明する。処理S6で確定した配合に基づき炭化燃料と石炭とを混合した混合燃料を石炭ボイラで混焼する(S11)。その際、電気集塵機8での印加電圧と電流を計測し(S12)、前述の(4)式より混焼灰の見掛け比抵抗を算出する(S13)。混焼灰の見掛け比抵抗が、S4で予測した混焼灰の比抵抗予測値の許容誤算範囲内にあるかどうかを確認する(S14)。混焼灰の見掛け比抵抗が許容誤差範囲外の場合には、灰比抵抗低下率の算出法を更新し(S15)、更新結果を次回以降の灰比抵抗低下率の算出(S4)に反映する。具体的には、灰比抵抗低下率を表す関数F(P、P、x)の各種係数を最新のデータに基づき(5)式を満足するように更新する。混焼灰の見掛け比抵抗が許容誤差範囲内の場合には、処理を終了する。
【0052】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態での効果に加えて、炭化燃料の燃焼実績の蓄積により混焼灰の見掛け比抵抗に関するデータが増えた場合に、そのデータを柔軟に反映でき、混焼灰の比抵抗予測の精度を常に高く保つことができる。
【0053】
なお、以上の説明では、配合計算装置5を電気集塵機8に接続する構成を対象としたが、さらに図5に示すように配合計算装置5をバグフィルタ10や粉塵濃度計とも接続してデータの送信ができるようにしてもよい。バグフィルタの差圧計や粉塵濃度計の測定値から電気集塵機での集塵効率が直接確認できるためである。
【0054】
〔第3の実施形態〕
図7は、本発明の第3の実施形態に係わる石炭ボイラシステムの概要図である。本実施形態は、図1に示した第1の実施形態に対し、配合計算装置5を複数の石炭ボイラシステムの給炭機3と接続して、データの送信ができるようにしたものである。この配合計算装置5は、対象とする石炭ボイラシステムの仕様を考慮して配合割合を計算できる点に特徴がある。
【0055】
本実施形態では、図2に示す配合計算装置5の入力装置21で入力されるデータには、第1の実施形態で説明した成分分析値に加えて、石炭ボイラ6の燃焼方式に係わるボイラ仕様と電気集塵機8での灰比抵抗の管理範囲に係わる集塵機仕様が含まれている。また、灰比抵抗予測手段25で用いられる灰比抵抗低下率は、炭化燃料と石炭の成分分析値、その配合割合に加えてこのボイラ仕様にも対応するように設定され、配合計算手段26は、この集塵機仕様に対応する灰比抵抗の管理範囲に基づき炭化燃料と石炭の配合割合を計算する。
【0056】
石炭ボイラ6の燃焼方式や燃焼温度によって発生する灰成分や灰比抵抗が若干変化するため、ボイラ仕様を考慮して混焼灰の比抵抗を予測することで、その予測精度をさらに向上させることができる。また、電気集塵機8のメーカーや型式によって集塵に適した灰比抵抗の範囲が変化するため、集塵機仕様に対応した管理範囲を用いることで、設備仕様を適切に反映した合理的な配合割合を計算することができる。
【0057】
図8は、本実施形態に係わる配合計算方法を表すフロー図である。図4に示した第1の実施形態に対し、処理S1の前段に処理S21及び処理S22を、判断S5の後段に判断S23を追加したものである。
【0058】
本実施形態では、まず、複数ある選択肢の中から1つの石炭ボイラシステムを選定して仮決定し(S21)、その石炭ボイラシステムでのボイラ仕様及び集塵機仕様を入力する(S22)。その後、炭化燃料と石炭について配合計算に必要な成分分析値を入力し(S1)、入力された成分分析値等から、石炭専焼灰の比抵抗を算出し、基準灰比抵抗として設定する(S2)。さらに、前述した一般条件を満たすように炭化燃料と石炭の配合割合を仮定する(S3)。その配合割合、成分分析値及びボイラ仕様に対応する灰比抵抗低下率を算出し、基準灰比抵抗に灰比抵抗低下率を乗じて混焼灰の比抵抗を予測する(S4)。
【0059】
次に、混焼灰の比抵抗が集塵機仕様に対応した管理範囲内にあるかどうかを確認する(S5)。管理範囲外であれば、さらに石炭ボイラシステムを変更する必要があるか(配合割合の変更では対応できないか)どうかを確認する(S23)。石炭ボイラシステムを変更する必要があれば、再度石炭ボイラシステムの仮定(S21)に戻り、変更する必要がなければ、再度配合割合の仮定(S3)に戻る。混焼灰の比抵抗が電気集塵機8の管理範囲内であれば、配合割合を確定し、結果を給炭機3に伝送する(S6)。
【0060】
図8に示す配合計算方法によれば、複数の選択肢の中から炭化燃料を混焼させるのに最適な石炭ボイラシステムを選定でき、生成した炭化燃料を最適箇所に有効活用することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 石炭バンカ
2 炭化燃料置場
3 給炭機
4 微粉炭機
5 配合計算装置
6 石炭ボイラ
7 空気予熱機
8 電気集塵機
9 粉塵濃度計
10 バグフィルタ
11 煙突
21 入力装置
22 演算装置
23 記憶装置
24 出力装置
25 灰比抵抗予測手段
26 配合計算手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下水汚泥を炭化処理した炭化燃料と石炭とを石炭ボイラで混焼するときの配合割合を計算する配合計算装置であって、
前記炭化燃料と石炭の成分分析値を含むデータを入力する入力装置と、
前記石炭を専焼したときに発生する専焼灰の比抵抗から設定される基準灰比抵抗に、前記炭化燃料と石炭の成分分析値及びその配合割合に対応する灰比抵抗低下率を考慮して、前記炭化燃料と石炭とを混焼したときに発生する混焼灰の比抵抗を予測する灰比抵抗予測手段と、
予測された前記混焼灰の比抵抗が、電気集塵機での管理範囲内となるような炭化燃料と石炭の配合割合を計算する配合計算手段と、
前記配合計算手段での炭化燃料と石炭の配合割合の計算結果を含むデータを出力する出力装置とを備えたことを特徴とする配合計算装置。
【請求項2】
前記基準灰比抵抗は、前記炭化燃料と石炭とをそれぞれ専焼したときに発生する専焼灰の比抵抗をその配合割合に応じて加重平均した値から設定することを特徴とする請求項1に記載の配合計算装置。
【請求項3】
前記灰比抵抗低下率は、前記基準灰比抵抗と、前記炭化燃料及び石炭を混焼したときに発生する混焼灰の電気集塵機における見掛け比抵抗との関係に基づき設定及び更新することを特徴とする請求項1または2に記載の配合計算装置。
【請求項4】
前記入力装置で入力されるデータは、前記石炭ボイラの燃焼方式に係わるボイラ仕様と前記電気集塵機での灰比抵抗の管理範囲に係わる集塵機仕様とを含み、
前記灰比抵抗低下率は、前記炭化燃料と石炭の成分分析値及びその配合割合に加えて前記ボイラ仕様にも対応するよう設定され、
前記配合計算手段は、前記集塵機仕様に対応する灰比抵抗の管理範囲に基づいて前記配合割合を計算することを特徴とする請求項1から3に記載の配合計算装置。
【請求項5】
下水汚泥を炭化処理した炭化燃料と石炭とを石炭ボイラで混焼するときの配合割合を計算する配合計算プログラムであって、
前記石炭を専焼したときに発生する専焼灰の比抵抗から設定される基準灰比抵抗に、前記炭化燃料と石炭の成分分析値及びその配合割合に対応する灰比抵抗低下率を考慮して、前記炭化燃料と石炭とを混焼したときに発生する混焼灰の比抵抗を予測する処理と、
予測された前記混焼灰の比抵抗が、電気集塵機での管理範囲内となるような炭化燃料と石炭の配合割合を計算する処理とをコンピュータに行わせることを特徴とする配合計算プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−281536(P2010−281536A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−136850(P2009−136850)
【出願日】平成21年6月8日(2009.6.8)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【出願人】(595072686)常磐共同火力株式会社 (5)
【出願人】(505054874)バイオ燃料株式会社 (3)
【Fターム(参考)】