配向膜、配向膜形成用組成物、および液晶表示装置
【課題】本発明の目的は、表示画像の焼き付きが少ない配向膜を備えた液晶表示装置を提供することにある。
【解決手段】少なくとも一方の基板が透明である第一の基板および第二の基板と、第一の基板と第二の基板との間に配置された液晶層と、第一の基板および第二の基板の少なくとも一方の基板に形成され、液晶層に電界を印加するための電極群と、電極群に接続された複数のアクティブ素子と、第一の基板および第二の基板の少なくとも一方の基板に配置された配向膜と、を含む液晶表示装置において、配向膜はジアミンおよび酸無水物を用いて形成された、ポリイミドおよびポリイミドの前駆体を含み、ジアミンは、少なくとも一つの酸性基を有する第一のジアミンと、2つのアミノ基の他に、窒素原子含有官能基を少なくとも一つ有する第二のジアミンと、を含むことを特徴とする液晶表示装置。
【解決手段】少なくとも一方の基板が透明である第一の基板および第二の基板と、第一の基板と第二の基板との間に配置された液晶層と、第一の基板および第二の基板の少なくとも一方の基板に形成され、液晶層に電界を印加するための電極群と、電極群に接続された複数のアクティブ素子と、第一の基板および第二の基板の少なくとも一方の基板に配置された配向膜と、を含む液晶表示装置において、配向膜はジアミンおよび酸無水物を用いて形成された、ポリイミドおよびポリイミドの前駆体を含み、ジアミンは、少なくとも一つの酸性基を有する第一のジアミンと、2つのアミノ基の他に、窒素原子含有官能基を少なくとも一つ有する第二のジアミンと、を含むことを特徴とする液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの基板に挟持された液晶層を配向させる配向膜、およびその配向膜を形成するための配向膜形成用組成物、およびその配向膜を有する液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は表示品質が高く、且つ薄型、軽量、低消費電力などといった特長からその用途を広げており、携帯電話用モニター、デジタルスチルカメラ用モニターなどの携帯向けモニターからデスクトップパソコン用モニター、印刷やデザイン向けモニター、医療用モニターさらには液晶テレビなど様々な用途に用いられている。これら用途拡大に伴い、液晶表示装置には高透過率化による高輝度化、低消費電力化、また低コスト化が強く求められている。
【0003】
通常、液晶表示装置の表示は一対の基板間に挟まれた液晶層の液晶分子に電界を印加することにより液晶分子の配向方向を変化させ、それにより生じた液晶層の光学特性の変化により行われる。電界無印加時の液晶分子の配向方向は、ポリイミド薄膜の表面にラビング処理を施した配向膜により規定されている。従来、画素毎に薄膜トランジスタ(TFT)等のスイッチング素子を備えたアクティブ駆動型液晶表示装置は、液晶層を挟持する一対の基板のそれぞれに電極を設け、液晶層に印加する電界の方向が基板面に対してほぼ垂直になる、所謂縦電界になるように設定され、液晶層を構成する液晶分子の光旋光性を利用して表示を行う。縦電界方式の代表的な液晶表示装置として、ツイステッドネマチック(TN:Twisted Nematic)方式が知られている。
【0004】
TN方式の液晶表示装置においては視野角が狭いことが大きな課題の一つである。そこで、広視野角化を達成する表示方式としてIPS(In−Plane Switching)方式やVA(Vertically Alignment)方式が知られている。
【0005】
いくつかの方式の液晶表示装置において配向膜の体積固有抵抗が高いと液晶表示装置に残留電荷が溜まってしまい、表示画像が焼きつく残像が起こることが知られている。特許文献1にVA方式における配向膜の体積固有抵抗低減に関する提案がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−241249号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の液晶表示装置に用いられる配向膜においては、表示画像の焼き付きの抑制が不十分であるという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、表示画像の焼き付きが少ない配向膜を備えた液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
少なくとも一方の基板が透明である第一の基板および第二の基板と、前記第一の基板と前記第二の基板との間に配置された液晶層と、前記第一の基板および前記第二の基板の少なくとも一方の基板に形成され、前記液晶層に電界を印加するための電極群と、前記電極群に接続された複数のアクティブ素子と、前記第一の基板および前記第二の基板の少なくとも一方の基板に配置された配向膜と、を含む液晶表示装置において、前記配向膜はジアミンおよび酸無水物を用いて形成された、ポリイミドおよび前記ポリイミドの前駆体を含み、前記ジアミンは、少なくとも一つの酸性基を有する第一のジアミンと、2つのアミノ基の他に、窒素原子含有官能基を少なくとも一つ有する第二のジアミンと、を含むことを特徴とする液晶表示装置である。
【0010】
また、前記第一のジアミンは、前記酸性基としてカルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基およびホスホン酸基から選択される少なくとも一つの官能基を含むこととしてもよい。また、前記窒素原子含有官能基は、塩基性基であることとしてもよい。
【0011】
また、前記第一のジアミンおよび前記第二のジアミンは、それぞれ下記化学式(1)および化学式(2)に示されることとしてもよい。
【0012】
【化1】
・・・(1)
【0013】
但し、Xは少なくとも2価の有機基であり、その化学構造中に前記酸性基としてカルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基およびホスホン酸基から選択される少なくとも一種の官能基を、1〜3つ含む。
【0014】
【化2】
・・・(2)
【0015】
但し、Yは少なくとも2価の有機基であり、その化学構造中に窒素原子を1〜3つ含む。
【0016】
また、前記配向膜を構成するポリイミドおよび前記ポリイミドの前駆体に含まれる、前記第一のジアミンに基づく前記酸性基の数に対する、前記窒素原子含有官能基に基づく窒素原子の数との比は、0.25〜4.0であることとしてもよい。
【0017】
また、前記ポリイミドおよび前記ポリイミドの前駆体の形成に用いられる前記ジアミンにおける、前記第一のジアミンの含有率と、前記第二のジアミンの含有率と、の合計は、30モル%以上であることとしてもよい。また、前記ポリイミドおよび前記ポリイミドの前駆体の形成に用いられる前記酸無水物は、脂肪族酸二無水物を50モル%以上含むこととしてもよい。
【0018】
また、前記配向膜の透過率Y値は、98.0%以上であることとしてもよい。また、前記配向膜は、偏光紫外線を照射することにより液晶配向能を付与されていることとしてもよい。また、前記ポリイミドの前駆体は、ポリアミド酸エステルおよびポリアミド酸を含むこととしてもよい。
【0019】
また、前記ポリアミド酸エステルは、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物誘導体および芳香族ジアミンを用いて形成こととしてもよい。また、前記ポリイミドの前駆体は、ポリアミド酸エステルであり、前記ポリアミド酸エステルは、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物誘導体を用いて形成されることとしてもよい。
【0020】
また、ジアミンおよび酸無水物を用いて形成された、ポリイミドおよび前記ポリイミドの前駆体を含む配向膜であって、前記ジアミンは、少なくとも一つの酸性基を有する第一のジアミンと、2つのアミノ基の他に、窒素原子含有官能基を少なくとも一つ有する第二のジアミンと、を含むことを特徴とする配向膜である。
【0021】
また、ポリイミドおよび前記ポリイミドの前駆体を含む配向膜を形成するための、配向膜形成用組成物であって、少なくとも一つの酸性基を有する第一のジアミンと、2つのアミノ基の他に、窒素原子含有官能基を少なくとも一つ有する第二のジアミンと、酸無水物と、を含有する、ことを特徴とする配向膜形成用組成物である。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、表示画像の焼き付きが少ない配向膜を備えた液晶表示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施例1に係る液晶表示装置の1画素付近の模式断面図である。
【図2A】実施例1に係る液晶表示装置の1画素付近の構成を示すアクティブマトリクス基板の模式平面図である。
【図2B】図2Aに示す2B線に沿った断面図である。
【図2C】図2Aに示す2C線に沿った断面図である。
【図3】実施例2に係る液晶表示装置の1画素付近の模式断面図である。
【図4A】実施例2に係る液晶表示装置の1画素付近の構成を示すアクティブマトリクス基板の模式平面図である。
【図4B】図4Aに示す4B線に沿った断面図である。
【図4C】図4Aに示す4C線に沿った断面図である。
【図5】実施例3に係る液晶表示装置の1画素付近の模式断面図である。
【図6】実施例4に係る液晶表示装置の1画素付近の模式断面図である。
【図7】実施例5に係る液晶表示装置の1画素付近の模式断面図である。
【図8】実施例5に係る液晶表示装置の1画素付近の構成を示すアクティブマトリクス基板の模式平面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
焼き付き(残像とも言う)を解決するため、配向膜(配向制御膜とも言う)の体積比抵抗を低減する手法が提案、検討されているが、発明者らの鋭意検討の結果、以下のことが明らかになった。液晶表示装置を駆動する際に配向膜界面に蓄積される直流電荷が焼き付き発生の原因となっているが、この直流電荷を除去するためには配向膜の体積比抵抗を低減するだけでは不十分である。蓄積する直流電荷の主原因は液晶中もしくは配向膜中に存在する不純物イオン性物質の偏りであり、これら不純物イオンは液晶、配向膜の合成工程、液晶表示装置作製工程によってその量や種類が異なる。
【0025】
不純物イオンは正イオン、負イオン、もしくはその両方が存在しており、配向膜の導電性によりこれら不純物イオンの偏りを解消する、すなわち焼き付きを解消するには正負両方のイオンに対する導電性(両イオン導電性)が必要となる。発明者らはプロトン供与体である酸性基と、プロトン受容体である窒素原子含有官能基と、を配向膜構造中に共存させることにより、配向膜に両イオン導電性を付与することができ、非常に良好な焼き付き特性が得られることを見出した。また、プロトン受容体である窒素原子含有官能基は、塩基性基であることとしてもよい。
【0026】
プロトン供与体である酸性基としてはカルボン酸基(−COOH基)、スルホン酸基(−SO3H)、リン酸基(−OPO3H2)、およびホスホン酸基(−PO3H2)が好適である。また、プロトン受容体である窒素原子含有官能基としては、例えば、アミノ基、アミド基、ヒドラジン基等があげられる。また、塩基性基であって窒素原子含有官能基としてはアミノ基またはアミド基が好適であり、アミノ基の中でも特に第二級アミン、アミド基の中では特に分子間水素結合性をもつ第一級アミド基および第二級アミド基が好適である。
【0027】
なお、配向膜に通常使用されるポリアミド酸をイミド化して得られるポリイミドにおいて、イミド化率が低ければ、カルボン酸基とアミノ基が残留していることとなる。しかし焼き付き特性についての要求レベルは年々高くなっており、ポリアミド酸のイミド化率が低い場合に残留する程度のカルボン酸基やアミノ基では密度が低すぎて焼き付き特性が不十分で許容されない。また、イミド化率を低くするために低温や短時間で熱イミド化すると溶媒や不純物が配向膜中に多量に残留してしまい、別の表示不良を引き起こしてしまうという問題がある。
【0028】
配向膜の分子構造中にプロトン受容体である窒素含有官能基として、例えばアミノ基またはアミド基が導入されている場合、構造によっては加熱時の酸化等により共役結合が伸びてしまい、着色が起こって液晶表示装置の透過率を落としてしまうという問題がある。特に、アミノ基とフェニル基が直接結合し、繰り返し構造となる場合は著しい着色を引き起こしてしまうため、好ましいとは言えない。
【0029】
本発明の目的は、表示画像の焼き付きが少ない配向膜を備えた液晶表示装置を提供することにある。
【0030】
本実施の形態に係る液晶表示装置は、少なくとも一方の基板が透明である第一の基板および第二の基板と、第一の基板と第二の基板との間に配置された液晶層と、第一の基板および第二の基板の少なくとも一方の基板に形成され、液晶層に電界を印加するための電極群と、電極群に接続された複数のアクティブ素子と、第一の基板および第二の基板の少なくとも一方の基板に配置された配向膜と、を含む液晶表示装置において、配向膜はジアミンおよび酸無水物を用いて形成された、ポリイミドおよび前記ポリイミドの前駆体を含み、ジアミンは、少なくとも一つの酸性基を有する第一のジアミンと、2つのアミノ基の他に、窒素原子含有官能基を少なくとも一つ有する第二のジアミンと、を含むことを特徴とする液晶表示装置である。
【0031】
また、本実施の形態に係る液晶表示装置における配向膜は、ポリイミドおよびポリイミドの前駆体からなるものであってもよい。なお本実施の形態に係る液晶表示装置における第一の基板と、第二の基板と、は一対の基板を構成している。したがって本明細書中では第一の基板と、第二の基板と、をまとめて一対の基板ということがある。
【0032】
また、本実施の形態に係る液晶表示装置における配向膜は、ジアミンおよび酸無水物を用いて形成された、ポリイミドおよび前記ポリイミドの前駆体を含む配向膜であって、前記ジアミンは、少なくとも一つの酸性基を有する第一のジアミンと、2つのアミノ基の他に、窒素原子含有官能基を少なくとも一つ有する第二のジアミンと、を含むことを特徴とする配向膜である。また、本実施の形態に係る液晶表示装置における配向膜は、ポリイミドおよびポリイミドの前駆体からなるものであってもよい。また、窒素原子含有官能基は塩基性基であることとしてもよい。すなわち配向膜の化学構造中に、酸性基と、窒素原子含有官能基もしくは塩基性基である窒素原子含有官能基と、を含むことを特徴とする。
【0033】
また、本実施の形態に係る配向膜形成用組成物は、ポリイミドおよびポリイミドの前駆体を含む配向膜を形成するための、配向膜形成用組成物であって、少なくとも一つの酸性基を有する第一のジアミンと、2つのアミノ基の他に、窒素原子含有官能基を少なくとも一つ有する第二のジアミンと、酸無水物と、を含有する、ことを特徴とする配向膜形成用組成物である。
【0034】
また、第一のジアミンは、酸性基として、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基およびホスホン酸基から選択される少なくとも一つの官能基を含むこととしてもよい。さらに、第一のジアミンは、酸性基として、カルボン酸基およびスルホン酸基から選択される少なくとも一つの官能基を含むこととしてもよい。
【0035】
また、第一のジアミンは、酸性基として、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基およびホスホン酸基から選択される少なくとも一つの官能基のみを含むこととしてもよい。さらに、第一のジアミンは、酸性基として、カルボン酸基およびスルホン酸基から選択される少なくとも一つの官能基のみを含むこととしてもよい。
【0036】
また、第一のジアミンは、酸性基として、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基およびホスホン酸基から選択される一種の官能基のみを少なくとも一つ含むこととしてもよい。さらに、第一のジアミンは、酸性基として、カルボン酸基およびスルホン酸基から選択される一種の官能基のみを少なくとも一つ含むこととしてもよい。
【0037】
また、第二のジアミンにおける窒素原子含有官能基は、塩基性基であるとしてもよい。そして、塩基性基である窒素原子含有官能基は、その化学構造中にアミン構造を有することとしてもよい。アミン構造とは、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、芳香族アミン、アミド基などを含むものである。具体的には、アンモニア、第一級アミンまたは第二級アミンから水素を除去した1価の官能基である、第一級アミン(−NH2)、第二級アミン(−NHR1:R1はNと結合する一価の有機基)、第三級アミン(−NR1R2:R1、R2はそれぞれ独立にNと結合する一価の有機基)にて示される構造の他に、アミド基、および、窒素原子含有環状化合物(例えばピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、1,3,5−トリアジン等)における窒素原子が導入されている構造(−N=)も含むものである。塩基性基である窒素原子含有官能基が、その化学構造中に、第二級アミン、第一級アミド基または第二級アミド基を有するものは特に好適である。
【0038】
また、第二のジアミンは、塩基性基である窒素原子含有官能基として、アミノ基(例えば、−NH2、−NH−等)および、アミド基(例えば、−CO−NH2、−CO−NH−等)から選択される官能基を少なくとも一つ含むことは好ましい。また、第二のジアミンは、塩基性基である窒素原子含有官能基として、第二級アミン構造(−NH−)を有するアミノ基、第一級アミド基(−CO−NH2)および第二級アミド基(−CO−NH−)から選択される官能基を少なくとも一つ含むことはさらに好ましい。
【0039】
なお、アミド基はpKb(塩基解離定数)=14を有するものであり、本明細書中においては、アミド基は前述の塩基性を有する窒素原子含有官能基に含まれるものである。また、窒素原子含有環状化合物(例えばピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、1,3,5−トリアジン等の)から水素を除去した官能基(ピリジル基、ピリダジニル基等)も同様に塩基性を有する窒素原子含有官能基に含まれるものである。
【0040】
また、第二のジアミンは、塩基性を有する窒素原子含有官能基として、アミノ基(例えば、−NH2、−NH−等)、アミド基(例えば、−CO−NH2、−CO−NH−等)から選択される少なくとも一種の官能基を含むこととしてもよい。また、第二のジアミンは、塩基性を有する窒素原子含有官能基として、第二級アミン構造(−NH−)を有するアミノ基、第一級アミド基(−CO−NH2)および第二級アミド基(−CO−NH−)から選択される少なくとも一種の官能基を含むことはさらに好適である。
【0041】
また、第二のジアミンは、塩基性を有する窒素原子含有官能基として、アミノ基(例えば、−NH2、−NH−等)、アミド基(例えば、−CO−NH2、−CO−NH−等)から選択される一種の官能基のみを含むこととしてもよい。また、第二のジアミンは、塩基性を有する窒素原子含有官能基として、第二級アミン構造(−NH−)を有するアミノ基、第一級アミド基(−CO−NH2)および第二級アミド基(−CO−NH−)から選択される一種の官能基のみを含むことはさらに好適である。
【0042】
また、本実施の形態に係る液晶表示装置における配向膜の透過率Y値は98.0%以上であることを特徴とする。さらに透過率Y値は98.5%以上が望ましく、さらに99.0%以上が望ましい。透過率Y値とは、配向膜の透過スペクトルからJIS規格Z−8722に基づいて計算される透過率(%)であり、光源はC光源を前提としている。
【0043】
また、本実施の形態に係る液晶表示装置における配向膜は偏光紫外線を照射することにより液晶配向能を付与されていることを特徴とする。発明者らは配向膜に紫外線を照射することにより配向膜の体積比抵抗値が上昇してしまうことを見出した。本実施形態による配向膜を用いることにより、紫外線を照射しても体積比抵抗の上昇を抑制でき、焼き付きに有効に作用する。
【0044】
また、ポリイミド前駆体はポリアミド酸エステルを含むこととしてもよい。発明者らの検討の結果、ポリアミド酸エステルは体積比抵抗が非常に高いことを見出した。本実施形態による配向膜を用いることにより、ポリアミド酸エステルをイミド化して得られる配向膜の体積比抵抗を下げることができるため、有効に作用する。
【0045】
前記ポリアミド酸エステルはシクロブタンテトラカルボン酸二無水物誘導体および芳香族ジアミンを原料とすることとしてもよい。シクロブタンテトラカルボン酸二無水物誘導体および芳香族ジアミンを用いて形成された前記ポリアミド酸エステルが配向膜に含まれることにより、偏光紫外線照射時の液晶配向安定性が高く、透過率の高い配向膜を得ることができる。
【0046】
前記シクロブタンテトラカルボン酸二無水物誘導体の具体的構造を下記化学式(C−1)に例示する。但し、これらに限定されるものではない。
【0047】
【化3】
【0048】
但し、化学式(C−1)におけるZはそれぞれ独立に、水素または炭素数1から8のアルキル基である。
【0049】
前述のように、本実施の形態に係る液晶表示装置における配向膜を構成するポリイミドおよびその前駆体は原料として第一のジアミンおよび第二のジアミンを含むことを特徴とする。ポリイミド前駆体としては、例えばポリアミド酸やポリアミド酸エステルが挙げられる。下記技術文献1に記載されているように、ポリアミド酸は、有機溶媒中でジアミン化合物とテトラカルボン酸二無水物(酸無水物、酸二無水物とも言う)とを攪拌、重合させることにより得られる。
【0050】
技術文献1:日本ポリイミド研究会編 最新ポリイミド 株式会社エヌ・ティー・エス発行(2002)
【0051】
具体的には、ジアミン化合物をNMPなどの極性アミド系溶媒に溶解させる。この溶液中にジアミン化合物とほぼ等モルのテトラカルボン酸二無水物を加えて室温下で攪拌すると、テトラカルボン酸二無水物の溶解とともにジアミン化合物との間で開環付加重合反応が進行し、高分子量のポリアミド酸が得られる。またポリアミド酸エステルの場合は、テトラカルボン酸二無水物にアルコールを反応させて得られるジエステルジカルボン酸に塩化チオニルなどの塩素化試薬を反応させ、高反応性のジエステルジカルボン酸クロリドを得る。これにジアミン化合物を反応、重縮合させることによりポリアミド酸アルキルエステルが得られる。
【0052】
このとき、ジアミン化合物およびテトラカルボン酸二無水物の原料を複数種混合させることにより、一つの高分子鎖に複数の化学種が重合された共重合高分子が得られることとなる。
【0053】
本実施形態における第一のジアミンは、下記化学式(1)に示されるジアミンである。
【0054】
【化4】
・・・(1)
【0055】
但し、Xは少なくとも2価の有機基であり、その化学構造中に酸性基としてカルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基またはホスホン酸基から選択される少なくとも一種の官能基を、1〜3つ含む。また、Xは少なくとも2価の有機基であり、その化学構造中に酸性基としてカルボン酸基またはスルホン酸基から選択される少なくとも一種の官能基を、1〜3つ含むこととしてもよい。
【0056】
また、Xは少なくとも2価の有機基であり、その化学構造中に酸性基として、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基およびホスホン酸基から選択される少なくとも一種の官能基のみを、1〜3つ含むこととしてもよい。また、Xは少なくとも2価の有機基であり、その化学構造中に酸性基として、カルボン酸基およびスルホン酸基から選択される少なくとも一種の官能基のみを、1〜3つ含むこととしてもよい。
【0057】
また、Xは少なくとも2価の有機基であり、その化学構造中に酸性基として、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基およびホスホン酸基から選択される一種の官能基のみを、1〜3つ含むこととしてもよい。また、Xは少なくとも2価の有機基であり、その化学構造中に酸性基として、カルボン酸基およびスルホン酸基から選択される一種の官能基のみを、1〜3つ含むこととしてもよい。
【0058】
本実施形態における第二のジアミンは、下記化学式(2)に示されるジアミンである。
【0059】
【化5】
・・・(2)
【0060】
但し、Yは少なくとも2価の有機基であり、その化学構造中に窒素原子を1〜3つ含む。
【0061】
また、Yは少なくとも2価の有機基であり、その化学構造中に窒素原子含有官能基を1〜3つ含むこととしてもよい。また、Yは少なくとも2価の有機基であり、その化学構造中に塩基性を有する窒素原子含有官能基を1〜3つ含むこととしてもよい。
【0062】
さらに、Yは少なくとも2価の有機基であり、その化学構造中に塩基性を有する窒素原子含有官能基として、アミノ基(例えば、−NH2、−NH−等)、アミド基(例えば、−CO−NH2、−CO−NH−等)から選択される少なくとも一種の官能基を1〜3つ含むこととしてもよい。また、Yは少なくとも2価の有機基であり、その化学構造中に塩基性を有する窒素原子含有官能基として、第二級アミン構造(−NH−)を有するアミノ基、第一級アミド基(−CO−NH2)および第二級アミド基(−CO−NH−)から選択される少なくとも一種の官能基を1〜3つ含むことはさらに好適である。
【0063】
また、Yは少なくとも2価の有機基であり、その化学構造中に塩基性を有する窒素原子含有官能基として、アミノ基(例えば、−NH2、−NH−等)、アミド基(例えば、−CO−NH2、−CO−NH−等)から選択される一種の官能基のみを1〜3つ含むこととしてもよい。また、Yは少なくとも2価の有機基であり、その化学構造中に塩基性を有する窒素原子含有官能基として、第二級アミン構造(−NH−)を有するアミノ基、第一級アミド基(−CO−NH2)および第二級アミド基(−CO−NH−)から選択される一種の官能基のみを1〜3つ含むことはさらに好適である。
【0064】
上記化学式(1)および化学式(2)の化合物が混合されて形成されたポリイミドおよびポリイミドの前駆体が、液晶表示装置の配向膜に用いられた場合には、当該液晶表示装置の表示画像の焼き付けは少ないものとなる。
【0065】
第一のジアミンは例えば、下記化学式(A−1)〜(A−20)にて示されるものである。但し、これらに限定されるものではない。
【0066】
【化6】
【0067】
【化7】
【0068】
【化8】
【0069】
【化9】
【0070】
上記化学式(A−9)〜(A−11)における、nはそれぞれ独立に1から8の整数である。
【0071】
第二のジアミンは例えば、下記化学式(B−1)〜(B−38)にて示されるものである。但し、これらに限定されるものではない。
【0072】
【化10】
【0073】
【化11】
【0074】
【化12】
【0075】
【化13】
【0076】
【化14】
【0077】
【化15】
【0078】
【化16】
【0079】
上記化学式(B−6)、(B−7)、(B−14)、(B−16)、(B−17)、(B−20)〜(B−24)、(B−26)、(B−29)、(B−30)、(B−31)、(B−37)および(B−38)における、nはそれぞれ独立に1から8の整数としても良く、また0から8の整数としても良い。(B−29)、(B−30)、(B−31)、(B−32)、(B−33)、(B−34)、(B−35)、(B−36)、(B−37)および(B−38)のRはそれぞれ独立に炭素数1から3のアルキル基である。
【0080】
また、化学式(A−1)〜(A−20)、(B−1)〜(B−38)の構造中に含まれる芳香環(例えば、化学式(A−1)〜(A−20)および(B−6)〜(B−38)であればベンゼン環、化学式(B−1)であればピリジン環、化学式(B−2)であればピリダジン環、化学式(B−3)および(B−4)であればピラジン環、化学式(B−5)であれば1,3,5−トリアジン環を示す)の有する水素と置換して、芳香環に直接結合するアミノ基(−NH2)の位置は特に限定されるものではない。
【0081】
配向膜を構成するポリイミドおよびその前駆体に含まれる、第一のジアミンに基づく酸性基の数と、第二のジアミンにおける2つのアミノ基の以外の窒素原子含有官能基に基づく窒素原子の数と、の比率が20:80から80:20の間(0.25から4.0の間)であることによって、良好な焼き付き特性が得られる。したがって、配向膜を構成するポリイミドおよびポリイミドの前駆体に含まれる、第一のジアミンに基づく酸性基の数に対する、窒素原子含有官能基に基づく窒素原子の数との比は、0.25〜4.0であることとしてもよい。
【0082】
ここで、窒素原子含有官能基に基づく窒素原子の数について説明をする。例えば、(B−1)の化合物はピリジン環に二つのジアミンが結合したものである。(B−1)の化合物における窒素原子含有官能基とはピリジル基であり、ピリジル基の有する窒素原子の数は一つであるので、窒素原子含有官能基に基づく窒素原子の数は一つということとなる。また、例えば、(B−2)の化合物はピリダジン環に二つのジアミンが結合したものである。(B−2)の化合物における窒素原子含有官能基とはピリダジニル基であり、ピリダジニル基の有する窒素原子の数は二つであるので、窒素原子含有官能基に基づく窒素原子の数は二つということとなる。また、(B−6)の化合物は二つのジアミンの他に化学構造中にアミド基を一つ有するものである。(B−6)の化合物における窒素原子含有官能基とはアミド基であり、アミド基の有する窒素原子の数は一つであるので、窒素原子含有官能基に基づく窒素原子の数は一つということとなる。同様に、(B−3)、(B−4)における窒素原子含有官能基に基づく窒素原子の数はそれぞれ二つということとなる。また(B−5)における窒素原子含有官能基に基づく窒素原子の数は三つということとなる。
【0083】
配向膜を構成するポリイミドおよびポリイミドの前駆体に含まれる、第一のジアミンに基づく酸性基の数に対する、窒素原子含有官能基に基づく窒素原子の数との比が、3/7〜7/3(すなわち第一のジアミンに基づく酸性基の数:窒素原子含有官能基に基づく窒素原子の数が、30:70から70:30の間)であることとしてもよい。また、配向膜を構成するポリイミドおよびポリイミドの前駆体に含まれる、第一のジアミンに基づく酸性基の数に対する、窒素原子含有官能基に基づく窒素原子の数との比が、2/3〜3/2(すなわち第一のジアミンに基づく酸性基の数:窒素原子含有官能基に基づく窒素原子の数が、40:60から60:40の間)であることとしてもよい。
【0084】
また、原料であるジアミンにおいて、第一のジアミンと第二のジアミンとの含有比率は20:80から80:20の間であることとしてもよい。さらに、30:70から70:30の間が望ましく、さらに40:60から60:40の間が望ましい。これにより、良好な焼き付き特性が得られる。
【0085】
また、原料であるジアミンにおける、第一のジアミンと第二のジアミンとの合計含有率は全ジアミン成分に対して30モル%以上であることとしてもよい。ポリイミドおよびポリイミドの前駆体の形成に用いられるジアミンにおける、第一のジアミンの含有率と、第二のジアミンの含有率と、の合計が、30モル%以上である。これにより、良好な焼き付き特性が得られる。第一のジアミンの含有率と、第二のジアミンの含有率と、の合計はさらに35モル%以上であることが望ましく、さらに40モル%以上であることが望ましい。
【0086】
前記配向膜を構成するポリイミドおよびその前駆体は原料として脂肪族酸二無水物を50モル%以上含むこととしてもよい。原料である酸無水物が、脂肪族酸二無水物を50モル%以上含むことにより、配向膜の透明性が向上し、高い透過率が得られる。さらに、配向膜を構成するポリイミドおよびその前駆体は原料として脂肪族酸二無水物を70モル%以上含むことは好適である。原料である酸無水物が、脂肪族酸二無水物を70モル%以上含むことにより、脂肪族酸二無水物を50モル%以上含む場合と比較して、さらに配向膜の透明性が向上し高い透過率が得られる。
【0087】
具体的な脂肪族酸二無水物を以下に例示する。しかし、これらに限定されるものではない。シクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物(CBDA)、3c−カルボキシメチルシクロペンタン−1r,2c,4c−トリカルボン酸1,4:2,3−二無水物(TCAAH)、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物(CHDA)、1,5−シクロオクタジエン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物(COEDA)、5−カルボキシメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,6−トリカルボン酸2,3:5,6−二無水物(NDA)、ジシクロヘキシル−3,3´,4,4´−テトラカルボン酸二無水物(DCHA)、4,4´−デカメチレンジオキシビス(3,4´−シクロヘキサンジカルボン酸無水物)(DOHA)5,5´−エチレンジオキシビス(2,3−ノルボルナンジカルボン酸無水物)(EOBN)、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物(BuDA)、エタン−1,1,2,2−テトラカルボン酸二無水物(EtDA)。
【0088】
また、芳香族酸二無水物の代表例としてピロメリット酸二無水物(PMDA)などが挙げられる。
【0089】
以下、本発明の実施例について、図面を参照して詳細に説明する。これら実施例に用いた本発明による配向制御膜はその一例を示したもので、その他の構造についても同様の効果が確認されている。なお、以下では、薄膜トランジスタ等のアクティブ素子を形成した基板をアクティブマトリクス基板という。また、その対向基板にカラーフィルタを有する場合は、これをカラーフィルタ基板ともいう。また、本発明において、目標として望ましいコントラストは500:1以上であり、目標とする残像が解消される時間は5分以内が望ましい。なお、残像の解消される時間は下記の実施例において定義される方法にて決定される。
【実施例1】
【0090】
図1は、実施例1に係る液晶表示装置の1画素付近の模式断面図である。また、図2は、実施例1に係る液晶表示装置の1画素付近の構成を示すアクティブマトリクス基板の模式平面図である。図2A実施例1に係る液晶表示装置の1画素付近の構成を示すアクティブマトリクス基板の模式平面図である。図2Bは図2Aに示す2B線に沿った断面図である。図2Cは図2Aに示す2C線に沿った断面図である。また、図1は、図2Aに示す2B線に沿った断面の一部に対応する。
【0091】
なお、図2Bと図2Cは、要部構成を強調して模式的に示すもので、図2Aの2B線と2C線の切断部に1対1で対応しない。例えば、図2Bでは半導体膜116は図示せず、図2Cではコモン電極103とコモン配線120を接続するスルーホール118は1箇所のみを代表して示してある。
【0092】
本実施例では、アクティブマトリクス基板(第一の基板)としてのガラス基板101上には、Cr(クロム)からなる走査配線(ゲート電極)104及び共通電極配線(コモン配線)120が配置され、このゲート電極104及びコモン配線120を覆うように窒化シリコンからなるゲート絶縁膜107が形成されている。
【0093】
また、ゲート電極104上には、ゲート絶縁膜107を介してアモルファスシリコン又はポリシリコンからなる半導体膜116が配置され、アクティブ素子として薄膜トランジスタ(TFT)115の能動層として機能するようにされている。また、半導体膜116のパターンの一部に重畳するようにCr・Mo(クロム・モリブデン)よりなる信号配線(ドレイン電極)106と画素電極(ソース電極)105が配置され、これら全てを被覆するように窒化シリコンよりなる保護絶縁膜108が形成されている。
【0094】
また、図2Cに示すように、ゲート絶縁膜107と保護絶縁膜108を貫通して形成されたスルーホール118を介してコモン配線120に接続するコモン電極103がオーバーコート層(有機保護膜)112上に配置されている。また、図2Aに示すように、平面的には1画素の領域において、その画素電極105に対向するように、コモン配線120からスルーホール118を介して引き出されているコモン電極103が形成されている。
【0095】
本実施例においては、画素電極105は、有機保護膜112の下層の保護絶縁膜108のさらに下層に配置され、有機保護膜112上に共通電極103が配置された構成となっている。これらの複数の画素電極105と共通電極103とに挟まれた領域で、1画素が構成される構造となっている。また、以上のように構成した単位画素をマトリクス状に配置したアクティブマトリクス基板の表面、すなわち、共通電極103が形成された有機保護膜112上には配向制御膜109が形成されている。
【0096】
一方、図1に示すように、対向基板を構成するガラス基板102には、カラーフィルタ層111が遮光膜(ブラックマトリクス)113で画素毎に区切られて配置され、また、カラーフィルタ層111及び遮光膜113上は、透明な絶縁性材料からなる有機保護膜112で覆われている。さらに、その有機保護膜112上にも配向制御膜109が形成されてカラーフィルタ基板(第二の基板)を構成している。
【0097】
なお、アクティブマトリクス基板(第一の基板)と、カラーフィルタ基板(第二の基板)と、で一対の基板を構成している。したがって本明細書中ではアクティブマトリクス基板(第一の基板)と、カラーフィルタ基板(第二の基板)と、をまとめて一対の基板ということがある。
【0098】
これらの配向制御膜109は、ラビング配向法または高圧水銀ランプを光源とし、石英板を積層したパイル偏光子を用いて取り出される紫外線の直線偏光照射により液晶配向能が付与されている。
【0099】
アクティブマトリクス基板を構成するガラス基板101とカラーフィルタ基板を構成するガラス基板102とが、配向制御膜109の面で対向配置され、これらの間に液晶分子110aで構成される液晶層(液晶組成物層)110bが配置される。また、アクティブマトリクス基板を構成するガラス基板101及びカラーフィルタ基板を構成するガラス基板102の外側の面のそれぞれには、偏光板114が形成されている。
【0100】
以上のようにして、薄膜トランジスタ(TFT)を用いたアクティブマトリクス型液晶表示装置(TFT液晶表示装置)が構成される。このTFT液晶表示装置では、液晶組成物層110bを構成する液晶分子110aは、電界無印加時には対向配置されているガラス基板101,102面にほぼ平行に配向された状態となり、配向処理で規定された初期配向方向に向いた状態でホモジニアス配向している。
【0101】
ここで、ゲート電極104に電圧を印加してTFT115をオンにすると、画素電極105と共通電極103の間の電位差により液晶組成物層110bに電界117が印加され、液晶組成物層110bが持つ誘電異方性と電界との相互作用により液晶組成物層110bを構成する液晶分子110aは電界方向にその向きを変える。このとき液晶組成物層110bの屈折異方性と偏光板114の作用により液晶表示装置の光透過率を変化させ表示を行うことができる。
【0102】
また、有機保護膜112は、絶縁性、透明性に優れるアクリル系樹脂、エポキシアクリル系樹脂又はポリイミド系樹脂などの熱硬化性樹脂を用いればよい。また、有機保護膜112として光硬化性の透明な樹脂を用いてもよいし、ポリシロキサン系の樹脂など無機系の材料を用いてもよい。さらには、有機保護膜112が配向制御膜109を兼ねるものであってもよい。
【0103】
一般的に、IPS方式においては、従来のTN方式に代表される縦電界方式と異なり基板面との界面チルトが原理的に必要なく、界面チルト角が小さいほど視角特性が良いことが知られており、特に1度以下にすることにより、液晶表示装置の視角による色変化、明度変化を大幅に抑制することが出来るため、チルト角が発生しにくい光配向法による配向が効果的である。
【0104】
次に、本実施例の液晶表示装置の製造方法として、配向制御膜のラビングレス配向法を用いた配向制御膜の形成について説明する。本実施例による配向制御膜の形成工程のフローは、以下(1)から(4)のようになる。
(1)配向制御膜の塗膜・形成(表示領域全面にわたり均一な塗膜を形成する)
(2)配向制御膜のイミド化焼成(ワニス溶剤の除去と耐熱性の高いポリイミド化を促進する)
(3)偏光照射による液晶配向能付与(表示領域に均一な配向能を付与する)
(4)(加熱、赤外線照射、遠赤外線照射、電子線照射、放射線照射)による配向能の促進・安定化
【0105】
以上の4段階のプロセスを介して配向制御膜を形成するが、上記(1)から(4)のプロセスの順番に限定されるものではなく、以下(a)(b)のような場合には更なる効果が期待される。
(a)上記(3)(4)を時間的に重なるように処理することにより液晶配向能付与を加速し架橋反応などを誘起することで、更に効果的に配向制御膜を形成することが可能となる。
(b)上記(4)の加熱、赤外線照射、遠赤外線照射などを用いる場合には、上記(2)(3)(4)を時間的にオーバーラップさせることにより、上記(4)のプロセスが上記(2)のイミド化プロセスを兼ねることも可能となり、短時間に配向制御膜の形成が可能となる。
【0106】
次に、本実施例の具体的な製造方法について説明する。アクティブマトリクス基板を構成するガラス基板101及びカラーフィルタ基板を構成するガラス基板102として、厚みが0.7mmで表面を研磨したガラス基板を用いる。ガラス基板101に形成する薄膜トランジスタ115は、画素電極(ソース電極)105、信号配線(ドレイン電極)106、走査配線(ゲート電極)104及びアモルファスシリコンからなる半導体膜116から構成される。
【0107】
走査配線104、共通電極配線120、信号配線106及び画素電極105は、全てクロム膜をパターニングして形成し、画素電極105と共通電極103との間隔は7μmとした。なお、共通電極103と画素電極105については、低抵抗でパターニングの容易なクロム膜を使用したが、ITO膜を使用することで透明電極を構成して、より高い輝度特性を達成することも可能である。
【0108】
ゲート絶縁膜107と保護絶縁膜108は窒化珪素からなり、膜厚はそれぞれ0.3μmとした。その上にはアクリル系樹脂を塗布し、220℃、1時間の加熱処理により透明で絶縁性のある有機保護膜112を形成した。
【0109】
次に、フォトリソグラフィ、エッチング処理により、図2Cに示すように、共通電極配線120までスルーホール118を形成し、共通電極配線120と接続する共通電極103をパターニングして形成した。
【0110】
その結果、単位画素(1画素)内では、図2Aに示すように、画素電極105が3本の共通電極103の間に配置されている構成となり、画素数は1024×3(R、G、Bに対応)本の信号配線106と、768本の走査配線104とから構成される1024×3×768個とするアクティブマトリクス基板を形成した。
【0111】
本実施例において、配向制御膜109として、4,4´−ジアミノジフェニルエーテルと1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物を原料とするポリアミド酸と下記表1Aに示される原料組成で合成した各種ポリアミド酸を1:1の比率で混合した配向膜材料を合成し、これら配向制御膜を用いて液晶表示装置を作製した。樹脂分濃度5重量%、DMAC60重量%、γブチロラクトン20重量%、ブチルセロソルブ15重量%のワニスに調製し、アクティブマトリクス基板の上に印刷形成して熱処理によりイミド化し、イミド化率約95%以上、膜厚約110nmの緻密なポリイミドおよびポリアミド酸からなる配向制御膜109を形成した。
【0112】
【表1A】
【0113】
同様に、ITOを成膜したもう一方のガラス基板102の表面にも同様のポリアミド酸アミドワニスを印刷形成し、イミド化率約95%以上、約110nmの緻密なポリイミド及びポリアミド酸からなる配向制御膜109を形成した。その表面に液晶配向能を付与するために、偏光UV(紫外線)光を配向制御膜109に照射した。光源には高圧水銀ランプを用い、干渉フィルタを介して、240nm〜320nmの範囲のUV光を取り出し、石英基板を積層したパイル偏光子を用いて偏光比約10:1の直線偏光とし、1.5J/cm2の照射エネルギーで照射した。その結果、配向制御膜表面の液晶分子の配向方向は、照射した偏光UVの偏光方向に対し、直交方向であることがわかった。
【0114】
次に、これらの2枚のガラス基板101、102をそれぞれの液晶配向能を有する配向制御膜109を有する表面を相対向させて、分散させた球形のポリマービーズからなるスペーサを介在させ、周辺部にシ−ル剤を塗布し、液晶表示装置となる液晶表示パネル(以下「セル」ともいう。)を組み立てた。2枚のガラス基板101、102の液晶配向方向は互いにほぼ並行とした。このセルに、誘電異方性Δεが正で、その値が10.2(1kHz、20℃)であり、屈折率異方性Δnが0.075(波長590nm、20℃)、ねじれ弾性定数K2が7.0pN、ネマティック−等方相転移温度T(N−I)が約76℃のネマティック液晶組成物Aを真空で注入し、紫外線硬化型樹脂からなる封止材で封止した。液晶層の厚み(ギャップ)は4.2μmの液晶パネルを製作した。
【0115】
この液晶表示パネルのリタデーション(Δn・d)は、約0.31μmとなる。Δn・dは0.2μm≦Δn・d≦0.5μmの範囲が望ましく、この範囲を超えると白表示が色づいてしまうなどの問題がある。また、このパネルに用いた配向制御膜と液晶組成物とが同等のものを用いてホモジニアス配向の液晶表示パネルを作製し、クリスタルローテーション法を用いて液晶のプレチルト角を測定したところ約0.2度を示した。この液晶表示パネルを2枚の偏光板114で挟み、一方の偏光板の偏光透過軸を上記の液晶配向方向とほぼ平行とし、他方をそれに直交するように配置した。その後、駆動回路、バックライトなどを接続してモジュール化し、アクティブマトリクス型の液晶表示装置を得た。本実施例では、低電圧で暗表示、高電圧で明表示となるノーマリークローズ特性とした。
【0116】
次に、本実施例による液晶表示装置の表示品位を評価したところ、コントラスト比500対1の高品位な表示が確認されるとともに、中間調表示時における広視野角が確認された。
【0117】
また、本実施例による液晶表示装置の画像の焼き付け、残像を定量的に測定するため、ホトダイオードを組合せたオシロスコープを用いて評価した。まず、画面上に最大輝度でウインドウパターンを50時間表示し、その後、残像が最も目立つ中間調表示、ここでは、輝度が最大輝度の10%となるように全面を切り換え、ウインドウパターンのエッジ部のパターンが消えるまでの時間を残像消失時間として評価した。ただし、ここで許容される残像緩和時間は5分以下である。また、各種配向膜について透過率Y値(%)を評価した。Y値は、配向膜の透過スペクトルからJIS規格Z−8722に基づいて計算された透過率(%)である。その結果を下記表1Bに示す。
【0118】
【表1B】
【実施例2】
【0119】
図3は、実施例2に係る液晶表示装置の1画素付近の模式断面図である。図4Aは、実施例2に係る液晶表示装置の1画素付近の構成を示すアクティブマトリクス基板の模式平面図である。図4Bは図4Aに示す4B線に沿った断面図である。図4Cは図4Aに示す4C線に沿った断面図である。
【0120】
また、図4は、本実施例による液晶表示装置の1画素付近の構成を説明するアクティブマトリクス基板の模式図であり、図4Aは平面図、図4Bは図4Aに示す4B線に沿った断面図、図4Cは図4Aの4C線に沿った断面図を示す。また、図3は図4Aに示す4B線に沿った断面の一部に対応する。
【0121】
なお、図4Bと図4Cは、要部構成を強調して模式的に示すもので、図4Aの4B線と4C線の切断部に1対1で対応しない。例えば、図4Bでは半導体膜116は図示していない。
【0122】
本実施例では、アクティブマトリクス基板を構成するガラス基板101上には、Crよりなるゲート電極104及び共通電極配線120が配置され、ゲート電極104と共通電極配線120を覆うように窒化シリコンからなるゲート絶縁膜107が形成されている。また、ゲート電極104上には、ゲート絶縁膜107を介してアモルファスシリコン又はポリシリコンからなる半導体膜116が配置され、アクティブ素子である薄膜トランジスタ115の能動層として機能するようにされている。
【0123】
また、半導体膜116のパターンの一部に重畳するようにクロム・モリブデンよりなるドレイン電極106と画素電極(ソース電極)105が配置され、これら全てを被覆するように窒化シリコンよりなる保護絶縁膜108が形成されている。この保護絶縁膜108上には、有機保護膜112が配置されている。この有機保護膜112は、例えば、アクリル樹脂などの透明な材料から構成する。また、画素電極105はITO(In2O3:Sn)などの透明電極から構成されている。共通電極103は、ゲート絶縁膜107、保護絶縁膜108及び有機保護膜112を貫通するスルーホール118を介して、共通電極配線120に接続している。
【0124】
液晶を駆動する電界を与える場合に、画素電極105と対をなす共通電極103は、平面的に1画素の領域を囲うように形成されている。また、この共通電極103は、有機保護膜112の上に配置されている。そして、この共通電極103は、上部から見たときに下層に配置しているドレイン電極106、走査配線104及び能動素子である薄膜トランジスタ115を隠すように配置され、半導体膜116を遮光する遮光層を兼ねている。
【0125】
以上のように構成した単位画素(1画素)をマトリクス状に配置したアクティブマトリクス基板を構成するガラス基板101の表面、すなわち、有機保護膜112上及びその上に形成された共通電極103の上には、配向制御膜109が形成されている。一方、対向基板を構成するガラス基板102にも、カラーフィルタ層111の上に形成される有機保護膜112の上には、配向制御膜109が形成されている。
【0126】
ここで、実施例1と同様に、高圧水銀ランプを光源とし、石英板を積層したパイル偏光子を用いて取り出される紫外線の直線偏光照射により、これらの配向制御膜109に液晶配向能が付与されている。
【0127】
そして、ガラス基板101と対向ガラス基板102が、配向制御膜109の形成面で対向配置され、これらの間に液晶分子110aで構成された液晶組成物層110bが配置される。また、ガラス基板101及び対向ガラス基板102の外側の面のそれぞれには偏光板114が形成されている。
【0128】
このように、本実施例においても、先に述べた実施例1と同様に、画素電極105は、有機保護膜112及び保護絶縁膜108の下層に配置され、画素電極105と有機保護膜112との上に共通電極103が配置された構成となっている。また、共通電極103の電気抵抗が十分低い場合には、この共通電極103は、最下層に形成されている共通電極配線120も兼ねることができる。その際には、最下層に配置している共通電極配線120の形成及びそれに伴うスルーホール118の加工を省くことができる。
【0129】
本実施例では、図4Aに示すように、格子状に形成された共通電極103に囲まれた領域で1画素が構成され、画素電極105と合わせて1画素を4つの領域に分割するように配置されている。また、画素電極105及びそれと対向する共通電極103がお互いに平行に配置されたジグザグな屈曲構造からなり、1画素が2つ以上の複数の副画素を形成している。これにより面内での色調変化を相殺する構造となっている。
【0130】
次に、本実施例による液晶表示装置の製造方法について説明する。ガラス基板101及び102としては、厚みが0.7mmで表面を研磨したガラス基板を用いる。薄膜トランジスタ115は、画素電極(ソース電極)105、信号配線(ドレイン電極)106、走査配線(ゲート電極)104及びアモルファスシリコンからなる半導体膜116から構成される。走査配線104は、アルミニウム膜をパターニングし、共通電極配線120及び信号配線106は、クロム膜をパターニングし、画素電極105は、ITO膜をパターニングし、図4Aに示すように、走査配線104以外は、ジグザグに屈曲した電極配線パターンに形成した。その際、屈曲の角度は10度に設定した。ゲート絶縁膜107と保護絶縁膜108は窒化珪素からなり、膜厚はそれぞれ0.3μmとした。
【0131】
次に、フォトリソグラフィ法とエッチング処理により、図4Cに示すように、共通電極配線120まで約10μm径の円筒状にスルーホール118を形成し、その上にはアクリル系樹脂を塗布し、220℃、で1時間の加熱処理により透明で絶縁性のある誘電率約4の有機保護膜112を約1μm厚に形成した。この有機保護膜112により表示領域の画素電極105の段差起因の凹凸を平坦化し、また、隣接する画素間のカラーフィルタ層111の境界部分の段差凹凸を平坦化した。
【0132】
その後、約7μm径にスルーホール118を再度エッチング処理し、その上から共通電極配線120と接続する共通電極103を、ITO膜をパターニングして形成した。その際、画素電極105と共通電極103との間隔は7μmとした。さらに、この共通電極103は、信号配線106、走査配線104及び薄膜トランジスタ115の上部を覆い画素を囲むように格子状に形成し、遮光層を兼ねるようにした。
【0133】
その結果、単位画素内では図4Aに示すように、画素電極105が3本の共通電極103の間に配置されている構成となり、画素数は1024×3(R、G、Bに対応)本の信号配線106と、768本の走査配線104とから構成される1024×3×768個とするアクティブマトリクス基板が得られた。
【0134】
本実施例において、配向制御膜109として、2,7−ジアミノフルオレンと1−メチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物を原料とするポリアミド酸メチルエステルと下記表2Aに示される原料組成で合成した各種ポリアミド酸メチルエステルを4:6の比率で混合した配向膜材料を合成し、これら配向制御膜を用いて液晶表示装置を作製した。樹脂分濃度5重量%、DMAC60重量%、γブチロラクトン20重量%、ブチルセロソルブ15重量%のワニスに調製し、アクティブマトリクス基板の上に印刷形成して熱処理によりイミド化し、イミド化率約95%以上、膜厚約120nmの緻密なポリイミド及びポリアミド酸メチルエステルからなる配向制御膜109を形成した。
【0135】
【表2A】
【0136】
その配向処理方法は、実施例1と同様の偏光UVを1.5J/cm2の照射エネルギで照射した。
【0137】
次に、これらの2枚のガラス基板101、102をそれぞれの配向制御膜を有する表面を相対向させて、分散させた球形のポリマービーズからなるスペーサを介在させて、周辺部にシール剤を塗布し、液晶表示パネルを組み立てた。2枚のガラス基板101、102の液晶配向方向は互いにほぼ並行とした。
【0138】
この液晶表示パネルに誘電異方性Δεが正でその値が10.2(1kHz、20℃)であり、屈折率異方性Δnが0.075(波長590nm、20℃)、ねじれ弾性定数K2が7.0pN、ネマティック−等方相転移温度T(N−I)が約76℃のネマティック液晶組成物Aを真空で注入し、紫外線硬化型樹脂からなる封止材で封止した。液晶層の厚み(ギャップ)は4.2μmの液晶パネルを製作した。このパネルのリタデーション(Δnd)は、約0.31μmとなる。
【0139】
また、この液晶表示パネルに用いた配向制御膜と液晶組成物とが同等のものを用いてホモジニアス配向の液晶表示パネルを作製し、クリスタルローテーション法を用いて液晶のプレチルト角を測定したところ約0.2度を示した。このパネルを2枚の偏光板114で挟み、一方の偏光板の偏光透過軸を上記の液晶配向方向とほぼ平行とし、他方をそれに直交するように配置した。その後、駆動回路、バックライトなどを接続してモジュール化し、アクティブマトリクス型の液晶表示装置を得た。本実施例では、低電圧で暗表示、高電圧で明表示となるノーマリークローズ特性とした。
【0140】
これら液晶表示装置および配向膜について、実施例1と同様に評価した。結果を表2Bに示す。
【0141】
【表2B】
【実施例3】
【0142】
図5は、実施例3に係る液晶表示装置の1画素付近の模式断面図である。図中、前記した各実施例の図面と同一符号は同一機能部分に対応する。図5に示すように、本実施例では、保護絶縁膜108の下層に配置した画素電極105を、スルーホール118を介して有機保護膜112上に引き上げて共通電極103と同層に配置した。この構成とした場合には、液晶を駆動する電圧をさらに低減することが可能である。
【0143】
以上のように構成されたTFT液晶表示装置では、電界無印加時には、液晶組成物層110bを構成する液晶分子110aは対向配置されているガラス基板101と102の面にほぼ平行な状態となり、光配向処理で規定された初期配向方向に向いた状態でホモジニアス配向している。ここで、ゲート電極104に電圧を印加して薄膜トランジスタ115をオンにすると、画素電極105と共通電極103との間の電位差により液晶組成物層110bに電界117が印加され、液晶組成物が持つ誘電異方性と電界との相互作用により液晶分子110aは電界方向にその向きを変える。このとき液晶組成物層110bの屈折異方性と偏光板114の作用により液晶表示装置の光透過率を変化させ表示を行うことができる。
【0144】
以下、本実施例による液晶表示装置の製造方法について説明する。ガラス基板101と102としては、厚みが0.7mmで表面を研磨したガラス基板を用いる。薄膜トランジスタ115は、画素電極(ソース電極)105、信号配線(ドレイン電極)106、走査配線(ゲート電極)104及びアモルファスシリコンからなる半導体膜116から構成される。走査配線104はアルミニウム膜をパターニングし、共通電極配線120、信号配線106及び画素電極105はクロム膜をパターニングして形成した。ゲート絶縁膜107と保護絶縁膜108は窒化珪素からなり、膜厚はそれぞれ0.3μmとした。その上にアクリル系樹脂を塗布し、220℃、1時間の加熱処理により透明で絶縁性のある誘電率約4の有機保護膜112を約1.0μm厚に形成した。この有機保護膜112により表示領域の画素電極105の段差起因の凹凸を平坦化し、また、隣接する画素間の段差凹凸を平坦化した。
【0145】
次に、フォトリソグラフィ法とエッチング処理により、図5に示すように、ソース電極105まで約10μm径の円筒状にスルーホール118を形成し、その上からソース電極105と接続する画素電極105を、ITO膜をパターニングして形成した。また、共通電極配線120についても約10μm径の円筒状にスルーホール118を形成し、その上からITO膜をパターニングして共通電極103を形成した。その際、画素電極105と共通電極103との間隔は7μmとし、走査配線104以外は、ジグザグに屈曲した電極配線パターンに形成した。その際、屈曲の角度は10度に設定した。さらに、この共通電極103は信号配線106、走査配線104及び薄膜トランジスタ115の上部を覆い画素を囲むように格子状に形成し、遮光層を兼ねるようにした。
【0146】
その結果、単位画素内に2種類のスルーホール118が形成されている以外は、実施例2とほぼ同様に、画素電極105が3本の共通電極103の間に配置されている構成となり、画素数は1024×3(R、G、Bに対応)本の信号配線106と、768本の走査配線104とから構成される1024×3×768個とするアクティブマトリクス基板を形成した。
【0147】
以上のように、画素構造と、用いる配向制御膜以外は、実施例2と同様として、図5に示すように、液晶表示装置を作製した。
【0148】
本実施例において、配向制御膜109として、下記表3Aに示される原料組成で合成した各種ポリアミド酸からなる配向膜材料を用いて液晶表示装置を作製した。樹脂分濃度5重量%、DMAC60重量%、γブチロラクトン20重量%、ブチルセロソルブ15重量%のワニスに調製し、アクティブマトリクス基板の上に印刷形成して熱処理によりイミド化し、イミド化率約95%以上、膜厚約110nmの緻密なポリイミドおよびポリアミド酸からなる配向制御膜109を形成した。
【0149】
【表3A】
【0150】
その配向処理方法は、ラビング配向処理とした。
【0151】
これら液晶表示装置および配向膜について、実施例1と同様に評価した。結果を表3Bに示す。
【0152】
【表3B】
【実施例4】
【0153】
図6は、実施例4に係る液晶表示装置の1画素付近の模式断面図である。図中、前記した各実施例の図面と同一符号は同一機能部分に対応する。本実施例では、電極などによる段差が大きい構造となっている。図6において、薄膜トランジスタ115のゲート電極104と共通電極103とを同層に形成し、共通電極103と画素電極105による電界117によって、液晶分子110aはその電界方向に向きを変える。
【0154】
また、上記した各実施例においては、1つの画素における共通電極103と画素電極105から構成される表示領域は、複数組設けることが可能である。このように、複数組設けることによって、1つの画素が大きい場合でも、画素電極105と共通電極103との間の距離を短くできるので、液晶を駆動させるために印加する電圧を小さくできる。
【0155】
また、上記した各実施例においては、画素電極と共通電極の少なくとも一方を構成する透明導電膜の材料としては、特に制限はないが、加工の容易さ、信頼性の高さ等を考慮して、インジウム・チン・オキサイド(ITO)のようなチタン酸化物にイオンドープされた透明導電膜又はイオンドープされた亜鉛酸化物を用いるのが望ましい。
【0156】
本実施例による液晶表示装置の製造方法において、ガラス基板101と102としては、厚みが0.7mmで表面を研磨したガラス基板を用いる。薄膜トランジスタ115は画素電極(ソース電極)105、信号配線(ドレイン電極)106、走査配線(ゲート電極)104及びアモルファスシリコンからなる半導体膜116から構成される。走査配線104、共通電極配線120、信号配線106、画素電極105及び共通電極103は、全てクロム膜をパターニングして形成し、画素電極105と共通電極103との間隔は7μmとした。ゲート絶縁膜107と保護絶縁膜108は窒化珪素からなり、膜厚はそれぞれ0.3μmとした。
【0157】
本実施例において、配向制御膜109として、1,4−フェニレンジアミンと1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物を原料とするポリアミド酸t−ブチルエステルと下記表4Aに示される原料組成で合成した各種ポリアミド酸を6:4の比率で混合した配向膜材料を合成し、これら配向制御膜を用いて液晶表示装置を作製した。樹脂分濃度5重量%、DMAC60重量%、γブチロラクトン20重量%、ブチルセロソルブ15重量%のワニスに調製し、アクティブマトリクス基板の上に印刷形成して熱処理によりイミド化し、イミド化率約95%以上、膜厚約100nmの緻密なポリイミドおよびポリアミド酸からなる配向制御膜109を形成した。
【0158】
【表4A】
【0159】
その配向処理方法は、実施例1と同様の偏光UVを1.5J/cm2の照射エネルギーで照射した。その結果、画素数は1024×3(R、G、Bに対応)本の信号配線106と、768本の走査配線104とから構成される1024×3×768個とするアクティブマトリクス基板を形成した。
【0160】
以上のように、画素構造以外は実施例1と同様として、図6に示す本実施例の液晶表示装置を作製した。
【0161】
これら液晶表示装置および配向膜について、実施例1と同様に評価した。結果を表4Bに示す。
【0162】
【表4B】
【実施例5】
【0163】
図7は、実施例5に係る液晶表示装置の1画素付近の模式断面図である。図中、前記した各実施例の図面と同一符号は同一機能部分に対応する。本実施例において、画素電極105と共通電極103は、ITOにより形成されており、共通電極103は画素のほぼ全体を覆うベタ電極で構成されている。本構成により電極上も透過部として利用することができ、開口率を向上することができる。また、電極間隔を短くすることができ、電界を効率よく液晶に印加できる。
【0164】
図8は、実施例5に係る液晶表示装置の1画素付近の構成を示すアクティブマトリクス基板の模式平面図であり、薄膜トランジスタ115、共通電極103、画素電極105、信号配線106の構造を示す。
【0165】
本実施例による液晶表示装置の製造方法において、ガラス基板101としては、厚みが0.7mmで表面を研磨したガラス基板を用いる。ガラス基板101上には、共通電極103、画素電極105、信号配線106及び走査配線104の短絡を防止するためのゲート絶縁膜107と、薄膜トランジスタ115、画素電極105及び信号配線106を保護する保護絶縁膜108を形成してTFT基板とする。
【0166】
薄膜トランジスタ115は、画素電極(ソース電極)105、信号配線(ドレイン電極)106、走査配線(ゲート電極)104及びアモルファスシリコンからなる半導体膜116から構成される。走査配線(ゲート電極)104はアルミニウム膜をパターニングし、信号配線(ドレイン電極)106はクロム膜をパターニングし、そして共通電極103と画素電極105とはITOをパターニングして形成する。
【0167】
ゲート絶縁膜107と保護絶縁膜108は窒化珪素からなり、膜厚はそれぞれ0.2μmと0.3μmとした。容量素子は画素電極105と共通電極103でゲート絶縁膜107と保護絶縁膜108を挟む構造として形成する。
【0168】
画素電極105は、ベタ形状の共通電極103の上層に重畳する形で配置されている。画素数は1024×3(R,G,Bに対応)本の信号配線106と、768本の走査配線104とから構成される1024×3×768個とする。
【0169】
ガラス基板102上には、実施例1と同様に、ブラックマトリクス113付きカラーフィルタ層111を形成し、対向カラーフィルタ基板とした。
【0170】
本実施例において、配向制御膜109として、1,4−フェニレンジアミン(PDA)と1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物を原料とするポリアミド酸メチルエステルと下記表5Aに示される原料組成で合成した各種ポリアミド酸を5:5の比率で混合した配向膜材料を合成し、これら配向制御膜を用いて液晶表示装置を作製した。樹脂分濃度5重量%、DMAC60重量%、γブチロラクトン20重量%、ブチルセロソルブ15重量%のワニスに調製し、アクティブマトリクス基板の上に印刷形成して熱処理によりイミド化し、イミド化率約95%以上、膜厚約100nmの緻密なポリイミドおよびポリアミド酸エステルおよびポリアミド酸からなる配向制御膜109を形成した。
【0171】
【表5A】
【0172】
同様に、ITOを成膜したもう一方のガラス基板102の表面にも同様に配向制御膜109を形成した。
【0173】
その配向処理方法は、実施例1と同様の偏光UVを1.5J/cm2の照射エネルギーで照射した。
【0174】
TFT基板及びカラーフィルタ基板における配向制御膜109の配向方向は互いにほぼ平行とした。これらの基板間に平均粒径が4μmのポリマービーズをスペーサとして分散し、TFT基板とカラーフィルタ基板との間に液晶分子110aを挟み込んだ。液晶分子110aは、実施例1と同じ液晶組成物Aを用いた。
【0175】
TFT基板とカラーフィルタ基板とを挟む2枚の偏光板114はクロスニコルに配置した。そして、低電圧で暗状態となり、高電圧で明状態をとるノーマリークローズ特性を採用した。
【0176】
これら液晶表示装置および配向膜について、実施例1と同様に評価した。結果を表5Bに示す。
【0177】
【表5B】
【実施例6】
【0178】
本実施例において、配向制御膜109として、下記表6Aに示される原料組成で合成したポリアミド酸メチルエステルを用いた他は、実施例5と同様にして液晶表示装置を作成した。
【0179】
【表6A】
【0180】
これら液晶表示装置および配向膜について、実施例1と同様に評価した。結果を表6Bに示す。
【0181】
【表6B】
【実施例7】
【0182】
本実施例において、配向制御膜109として、1,4−フェニレンジアミン(PDA)と1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物を原料とするポリアミド酸メチルエステルと下記表7Aに示される原料組成で合成した各種ポリアミド酸を3:7の比率で混合した配向膜材料を用いた他は、実施例5と同様にして液晶表示装置を作成した。
【0183】
【表7A】
【0184】
これら液晶表示装置および配向膜について、実施例1と同様に評価した。結果を表7Bに示す。
【0185】
【表7B】
【符号の説明】
【0186】
101,102 ガラス基板、103 共通電極(コモン電極)、104 走査配線(ゲート電極)、105 画素電極(ソース電極)、106 信号配線(ドレイン電極)、107 ゲート絶縁膜、108 保護絶縁膜、109 配向制御膜、110a 液晶分子、110b 液晶層(液晶組成物層)、111 カラーフィルタ層、112 オーバーコート層(有機保護膜)、113 遮光膜(ブラックマトリクス)、114 偏光板、115 薄膜トランジスタ(TFT)、116 半導体膜(アモルファスシリコン又はポリシリコン)、117 電界(電界方向)、118 スルーホール、120 共通電極配線(コモン配線)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの基板に挟持された液晶層を配向させる配向膜、およびその配向膜を形成するための配向膜形成用組成物、およびその配向膜を有する液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は表示品質が高く、且つ薄型、軽量、低消費電力などといった特長からその用途を広げており、携帯電話用モニター、デジタルスチルカメラ用モニターなどの携帯向けモニターからデスクトップパソコン用モニター、印刷やデザイン向けモニター、医療用モニターさらには液晶テレビなど様々な用途に用いられている。これら用途拡大に伴い、液晶表示装置には高透過率化による高輝度化、低消費電力化、また低コスト化が強く求められている。
【0003】
通常、液晶表示装置の表示は一対の基板間に挟まれた液晶層の液晶分子に電界を印加することにより液晶分子の配向方向を変化させ、それにより生じた液晶層の光学特性の変化により行われる。電界無印加時の液晶分子の配向方向は、ポリイミド薄膜の表面にラビング処理を施した配向膜により規定されている。従来、画素毎に薄膜トランジスタ(TFT)等のスイッチング素子を備えたアクティブ駆動型液晶表示装置は、液晶層を挟持する一対の基板のそれぞれに電極を設け、液晶層に印加する電界の方向が基板面に対してほぼ垂直になる、所謂縦電界になるように設定され、液晶層を構成する液晶分子の光旋光性を利用して表示を行う。縦電界方式の代表的な液晶表示装置として、ツイステッドネマチック(TN:Twisted Nematic)方式が知られている。
【0004】
TN方式の液晶表示装置においては視野角が狭いことが大きな課題の一つである。そこで、広視野角化を達成する表示方式としてIPS(In−Plane Switching)方式やVA(Vertically Alignment)方式が知られている。
【0005】
いくつかの方式の液晶表示装置において配向膜の体積固有抵抗が高いと液晶表示装置に残留電荷が溜まってしまい、表示画像が焼きつく残像が起こることが知られている。特許文献1にVA方式における配向膜の体積固有抵抗低減に関する提案がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−241249号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の液晶表示装置に用いられる配向膜においては、表示画像の焼き付きの抑制が不十分であるという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、表示画像の焼き付きが少ない配向膜を備えた液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
少なくとも一方の基板が透明である第一の基板および第二の基板と、前記第一の基板と前記第二の基板との間に配置された液晶層と、前記第一の基板および前記第二の基板の少なくとも一方の基板に形成され、前記液晶層に電界を印加するための電極群と、前記電極群に接続された複数のアクティブ素子と、前記第一の基板および前記第二の基板の少なくとも一方の基板に配置された配向膜と、を含む液晶表示装置において、前記配向膜はジアミンおよび酸無水物を用いて形成された、ポリイミドおよび前記ポリイミドの前駆体を含み、前記ジアミンは、少なくとも一つの酸性基を有する第一のジアミンと、2つのアミノ基の他に、窒素原子含有官能基を少なくとも一つ有する第二のジアミンと、を含むことを特徴とする液晶表示装置である。
【0010】
また、前記第一のジアミンは、前記酸性基としてカルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基およびホスホン酸基から選択される少なくとも一つの官能基を含むこととしてもよい。また、前記窒素原子含有官能基は、塩基性基であることとしてもよい。
【0011】
また、前記第一のジアミンおよび前記第二のジアミンは、それぞれ下記化学式(1)および化学式(2)に示されることとしてもよい。
【0012】
【化1】
・・・(1)
【0013】
但し、Xは少なくとも2価の有機基であり、その化学構造中に前記酸性基としてカルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基およびホスホン酸基から選択される少なくとも一種の官能基を、1〜3つ含む。
【0014】
【化2】
・・・(2)
【0015】
但し、Yは少なくとも2価の有機基であり、その化学構造中に窒素原子を1〜3つ含む。
【0016】
また、前記配向膜を構成するポリイミドおよび前記ポリイミドの前駆体に含まれる、前記第一のジアミンに基づく前記酸性基の数に対する、前記窒素原子含有官能基に基づく窒素原子の数との比は、0.25〜4.0であることとしてもよい。
【0017】
また、前記ポリイミドおよび前記ポリイミドの前駆体の形成に用いられる前記ジアミンにおける、前記第一のジアミンの含有率と、前記第二のジアミンの含有率と、の合計は、30モル%以上であることとしてもよい。また、前記ポリイミドおよび前記ポリイミドの前駆体の形成に用いられる前記酸無水物は、脂肪族酸二無水物を50モル%以上含むこととしてもよい。
【0018】
また、前記配向膜の透過率Y値は、98.0%以上であることとしてもよい。また、前記配向膜は、偏光紫外線を照射することにより液晶配向能を付与されていることとしてもよい。また、前記ポリイミドの前駆体は、ポリアミド酸エステルおよびポリアミド酸を含むこととしてもよい。
【0019】
また、前記ポリアミド酸エステルは、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物誘導体および芳香族ジアミンを用いて形成こととしてもよい。また、前記ポリイミドの前駆体は、ポリアミド酸エステルであり、前記ポリアミド酸エステルは、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物誘導体を用いて形成されることとしてもよい。
【0020】
また、ジアミンおよび酸無水物を用いて形成された、ポリイミドおよび前記ポリイミドの前駆体を含む配向膜であって、前記ジアミンは、少なくとも一つの酸性基を有する第一のジアミンと、2つのアミノ基の他に、窒素原子含有官能基を少なくとも一つ有する第二のジアミンと、を含むことを特徴とする配向膜である。
【0021】
また、ポリイミドおよび前記ポリイミドの前駆体を含む配向膜を形成するための、配向膜形成用組成物であって、少なくとも一つの酸性基を有する第一のジアミンと、2つのアミノ基の他に、窒素原子含有官能基を少なくとも一つ有する第二のジアミンと、酸無水物と、を含有する、ことを特徴とする配向膜形成用組成物である。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、表示画像の焼き付きが少ない配向膜を備えた液晶表示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施例1に係る液晶表示装置の1画素付近の模式断面図である。
【図2A】実施例1に係る液晶表示装置の1画素付近の構成を示すアクティブマトリクス基板の模式平面図である。
【図2B】図2Aに示す2B線に沿った断面図である。
【図2C】図2Aに示す2C線に沿った断面図である。
【図3】実施例2に係る液晶表示装置の1画素付近の模式断面図である。
【図4A】実施例2に係る液晶表示装置の1画素付近の構成を示すアクティブマトリクス基板の模式平面図である。
【図4B】図4Aに示す4B線に沿った断面図である。
【図4C】図4Aに示す4C線に沿った断面図である。
【図5】実施例3に係る液晶表示装置の1画素付近の模式断面図である。
【図6】実施例4に係る液晶表示装置の1画素付近の模式断面図である。
【図7】実施例5に係る液晶表示装置の1画素付近の模式断面図である。
【図8】実施例5に係る液晶表示装置の1画素付近の構成を示すアクティブマトリクス基板の模式平面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
焼き付き(残像とも言う)を解決するため、配向膜(配向制御膜とも言う)の体積比抵抗を低減する手法が提案、検討されているが、発明者らの鋭意検討の結果、以下のことが明らかになった。液晶表示装置を駆動する際に配向膜界面に蓄積される直流電荷が焼き付き発生の原因となっているが、この直流電荷を除去するためには配向膜の体積比抵抗を低減するだけでは不十分である。蓄積する直流電荷の主原因は液晶中もしくは配向膜中に存在する不純物イオン性物質の偏りであり、これら不純物イオンは液晶、配向膜の合成工程、液晶表示装置作製工程によってその量や種類が異なる。
【0025】
不純物イオンは正イオン、負イオン、もしくはその両方が存在しており、配向膜の導電性によりこれら不純物イオンの偏りを解消する、すなわち焼き付きを解消するには正負両方のイオンに対する導電性(両イオン導電性)が必要となる。発明者らはプロトン供与体である酸性基と、プロトン受容体である窒素原子含有官能基と、を配向膜構造中に共存させることにより、配向膜に両イオン導電性を付与することができ、非常に良好な焼き付き特性が得られることを見出した。また、プロトン受容体である窒素原子含有官能基は、塩基性基であることとしてもよい。
【0026】
プロトン供与体である酸性基としてはカルボン酸基(−COOH基)、スルホン酸基(−SO3H)、リン酸基(−OPO3H2)、およびホスホン酸基(−PO3H2)が好適である。また、プロトン受容体である窒素原子含有官能基としては、例えば、アミノ基、アミド基、ヒドラジン基等があげられる。また、塩基性基であって窒素原子含有官能基としてはアミノ基またはアミド基が好適であり、アミノ基の中でも特に第二級アミン、アミド基の中では特に分子間水素結合性をもつ第一級アミド基および第二級アミド基が好適である。
【0027】
なお、配向膜に通常使用されるポリアミド酸をイミド化して得られるポリイミドにおいて、イミド化率が低ければ、カルボン酸基とアミノ基が残留していることとなる。しかし焼き付き特性についての要求レベルは年々高くなっており、ポリアミド酸のイミド化率が低い場合に残留する程度のカルボン酸基やアミノ基では密度が低すぎて焼き付き特性が不十分で許容されない。また、イミド化率を低くするために低温や短時間で熱イミド化すると溶媒や不純物が配向膜中に多量に残留してしまい、別の表示不良を引き起こしてしまうという問題がある。
【0028】
配向膜の分子構造中にプロトン受容体である窒素含有官能基として、例えばアミノ基またはアミド基が導入されている場合、構造によっては加熱時の酸化等により共役結合が伸びてしまい、着色が起こって液晶表示装置の透過率を落としてしまうという問題がある。特に、アミノ基とフェニル基が直接結合し、繰り返し構造となる場合は著しい着色を引き起こしてしまうため、好ましいとは言えない。
【0029】
本発明の目的は、表示画像の焼き付きが少ない配向膜を備えた液晶表示装置を提供することにある。
【0030】
本実施の形態に係る液晶表示装置は、少なくとも一方の基板が透明である第一の基板および第二の基板と、第一の基板と第二の基板との間に配置された液晶層と、第一の基板および第二の基板の少なくとも一方の基板に形成され、液晶層に電界を印加するための電極群と、電極群に接続された複数のアクティブ素子と、第一の基板および第二の基板の少なくとも一方の基板に配置された配向膜と、を含む液晶表示装置において、配向膜はジアミンおよび酸無水物を用いて形成された、ポリイミドおよび前記ポリイミドの前駆体を含み、ジアミンは、少なくとも一つの酸性基を有する第一のジアミンと、2つのアミノ基の他に、窒素原子含有官能基を少なくとも一つ有する第二のジアミンと、を含むことを特徴とする液晶表示装置である。
【0031】
また、本実施の形態に係る液晶表示装置における配向膜は、ポリイミドおよびポリイミドの前駆体からなるものであってもよい。なお本実施の形態に係る液晶表示装置における第一の基板と、第二の基板と、は一対の基板を構成している。したがって本明細書中では第一の基板と、第二の基板と、をまとめて一対の基板ということがある。
【0032】
また、本実施の形態に係る液晶表示装置における配向膜は、ジアミンおよび酸無水物を用いて形成された、ポリイミドおよび前記ポリイミドの前駆体を含む配向膜であって、前記ジアミンは、少なくとも一つの酸性基を有する第一のジアミンと、2つのアミノ基の他に、窒素原子含有官能基を少なくとも一つ有する第二のジアミンと、を含むことを特徴とする配向膜である。また、本実施の形態に係る液晶表示装置における配向膜は、ポリイミドおよびポリイミドの前駆体からなるものであってもよい。また、窒素原子含有官能基は塩基性基であることとしてもよい。すなわち配向膜の化学構造中に、酸性基と、窒素原子含有官能基もしくは塩基性基である窒素原子含有官能基と、を含むことを特徴とする。
【0033】
また、本実施の形態に係る配向膜形成用組成物は、ポリイミドおよびポリイミドの前駆体を含む配向膜を形成するための、配向膜形成用組成物であって、少なくとも一つの酸性基を有する第一のジアミンと、2つのアミノ基の他に、窒素原子含有官能基を少なくとも一つ有する第二のジアミンと、酸無水物と、を含有する、ことを特徴とする配向膜形成用組成物である。
【0034】
また、第一のジアミンは、酸性基として、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基およびホスホン酸基から選択される少なくとも一つの官能基を含むこととしてもよい。さらに、第一のジアミンは、酸性基として、カルボン酸基およびスルホン酸基から選択される少なくとも一つの官能基を含むこととしてもよい。
【0035】
また、第一のジアミンは、酸性基として、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基およびホスホン酸基から選択される少なくとも一つの官能基のみを含むこととしてもよい。さらに、第一のジアミンは、酸性基として、カルボン酸基およびスルホン酸基から選択される少なくとも一つの官能基のみを含むこととしてもよい。
【0036】
また、第一のジアミンは、酸性基として、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基およびホスホン酸基から選択される一種の官能基のみを少なくとも一つ含むこととしてもよい。さらに、第一のジアミンは、酸性基として、カルボン酸基およびスルホン酸基から選択される一種の官能基のみを少なくとも一つ含むこととしてもよい。
【0037】
また、第二のジアミンにおける窒素原子含有官能基は、塩基性基であるとしてもよい。そして、塩基性基である窒素原子含有官能基は、その化学構造中にアミン構造を有することとしてもよい。アミン構造とは、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、芳香族アミン、アミド基などを含むものである。具体的には、アンモニア、第一級アミンまたは第二級アミンから水素を除去した1価の官能基である、第一級アミン(−NH2)、第二級アミン(−NHR1:R1はNと結合する一価の有機基)、第三級アミン(−NR1R2:R1、R2はそれぞれ独立にNと結合する一価の有機基)にて示される構造の他に、アミド基、および、窒素原子含有環状化合物(例えばピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、1,3,5−トリアジン等)における窒素原子が導入されている構造(−N=)も含むものである。塩基性基である窒素原子含有官能基が、その化学構造中に、第二級アミン、第一級アミド基または第二級アミド基を有するものは特に好適である。
【0038】
また、第二のジアミンは、塩基性基である窒素原子含有官能基として、アミノ基(例えば、−NH2、−NH−等)および、アミド基(例えば、−CO−NH2、−CO−NH−等)から選択される官能基を少なくとも一つ含むことは好ましい。また、第二のジアミンは、塩基性基である窒素原子含有官能基として、第二級アミン構造(−NH−)を有するアミノ基、第一級アミド基(−CO−NH2)および第二級アミド基(−CO−NH−)から選択される官能基を少なくとも一つ含むことはさらに好ましい。
【0039】
なお、アミド基はpKb(塩基解離定数)=14を有するものであり、本明細書中においては、アミド基は前述の塩基性を有する窒素原子含有官能基に含まれるものである。また、窒素原子含有環状化合物(例えばピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、1,3,5−トリアジン等の)から水素を除去した官能基(ピリジル基、ピリダジニル基等)も同様に塩基性を有する窒素原子含有官能基に含まれるものである。
【0040】
また、第二のジアミンは、塩基性を有する窒素原子含有官能基として、アミノ基(例えば、−NH2、−NH−等)、アミド基(例えば、−CO−NH2、−CO−NH−等)から選択される少なくとも一種の官能基を含むこととしてもよい。また、第二のジアミンは、塩基性を有する窒素原子含有官能基として、第二級アミン構造(−NH−)を有するアミノ基、第一級アミド基(−CO−NH2)および第二級アミド基(−CO−NH−)から選択される少なくとも一種の官能基を含むことはさらに好適である。
【0041】
また、第二のジアミンは、塩基性を有する窒素原子含有官能基として、アミノ基(例えば、−NH2、−NH−等)、アミド基(例えば、−CO−NH2、−CO−NH−等)から選択される一種の官能基のみを含むこととしてもよい。また、第二のジアミンは、塩基性を有する窒素原子含有官能基として、第二級アミン構造(−NH−)を有するアミノ基、第一級アミド基(−CO−NH2)および第二級アミド基(−CO−NH−)から選択される一種の官能基のみを含むことはさらに好適である。
【0042】
また、本実施の形態に係る液晶表示装置における配向膜の透過率Y値は98.0%以上であることを特徴とする。さらに透過率Y値は98.5%以上が望ましく、さらに99.0%以上が望ましい。透過率Y値とは、配向膜の透過スペクトルからJIS規格Z−8722に基づいて計算される透過率(%)であり、光源はC光源を前提としている。
【0043】
また、本実施の形態に係る液晶表示装置における配向膜は偏光紫外線を照射することにより液晶配向能を付与されていることを特徴とする。発明者らは配向膜に紫外線を照射することにより配向膜の体積比抵抗値が上昇してしまうことを見出した。本実施形態による配向膜を用いることにより、紫外線を照射しても体積比抵抗の上昇を抑制でき、焼き付きに有効に作用する。
【0044】
また、ポリイミド前駆体はポリアミド酸エステルを含むこととしてもよい。発明者らの検討の結果、ポリアミド酸エステルは体積比抵抗が非常に高いことを見出した。本実施形態による配向膜を用いることにより、ポリアミド酸エステルをイミド化して得られる配向膜の体積比抵抗を下げることができるため、有効に作用する。
【0045】
前記ポリアミド酸エステルはシクロブタンテトラカルボン酸二無水物誘導体および芳香族ジアミンを原料とすることとしてもよい。シクロブタンテトラカルボン酸二無水物誘導体および芳香族ジアミンを用いて形成された前記ポリアミド酸エステルが配向膜に含まれることにより、偏光紫外線照射時の液晶配向安定性が高く、透過率の高い配向膜を得ることができる。
【0046】
前記シクロブタンテトラカルボン酸二無水物誘導体の具体的構造を下記化学式(C−1)に例示する。但し、これらに限定されるものではない。
【0047】
【化3】
【0048】
但し、化学式(C−1)におけるZはそれぞれ独立に、水素または炭素数1から8のアルキル基である。
【0049】
前述のように、本実施の形態に係る液晶表示装置における配向膜を構成するポリイミドおよびその前駆体は原料として第一のジアミンおよび第二のジアミンを含むことを特徴とする。ポリイミド前駆体としては、例えばポリアミド酸やポリアミド酸エステルが挙げられる。下記技術文献1に記載されているように、ポリアミド酸は、有機溶媒中でジアミン化合物とテトラカルボン酸二無水物(酸無水物、酸二無水物とも言う)とを攪拌、重合させることにより得られる。
【0050】
技術文献1:日本ポリイミド研究会編 最新ポリイミド 株式会社エヌ・ティー・エス発行(2002)
【0051】
具体的には、ジアミン化合物をNMPなどの極性アミド系溶媒に溶解させる。この溶液中にジアミン化合物とほぼ等モルのテトラカルボン酸二無水物を加えて室温下で攪拌すると、テトラカルボン酸二無水物の溶解とともにジアミン化合物との間で開環付加重合反応が進行し、高分子量のポリアミド酸が得られる。またポリアミド酸エステルの場合は、テトラカルボン酸二無水物にアルコールを反応させて得られるジエステルジカルボン酸に塩化チオニルなどの塩素化試薬を反応させ、高反応性のジエステルジカルボン酸クロリドを得る。これにジアミン化合物を反応、重縮合させることによりポリアミド酸アルキルエステルが得られる。
【0052】
このとき、ジアミン化合物およびテトラカルボン酸二無水物の原料を複数種混合させることにより、一つの高分子鎖に複数の化学種が重合された共重合高分子が得られることとなる。
【0053】
本実施形態における第一のジアミンは、下記化学式(1)に示されるジアミンである。
【0054】
【化4】
・・・(1)
【0055】
但し、Xは少なくとも2価の有機基であり、その化学構造中に酸性基としてカルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基またはホスホン酸基から選択される少なくとも一種の官能基を、1〜3つ含む。また、Xは少なくとも2価の有機基であり、その化学構造中に酸性基としてカルボン酸基またはスルホン酸基から選択される少なくとも一種の官能基を、1〜3つ含むこととしてもよい。
【0056】
また、Xは少なくとも2価の有機基であり、その化学構造中に酸性基として、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基およびホスホン酸基から選択される少なくとも一種の官能基のみを、1〜3つ含むこととしてもよい。また、Xは少なくとも2価の有機基であり、その化学構造中に酸性基として、カルボン酸基およびスルホン酸基から選択される少なくとも一種の官能基のみを、1〜3つ含むこととしてもよい。
【0057】
また、Xは少なくとも2価の有機基であり、その化学構造中に酸性基として、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基およびホスホン酸基から選択される一種の官能基のみを、1〜3つ含むこととしてもよい。また、Xは少なくとも2価の有機基であり、その化学構造中に酸性基として、カルボン酸基およびスルホン酸基から選択される一種の官能基のみを、1〜3つ含むこととしてもよい。
【0058】
本実施形態における第二のジアミンは、下記化学式(2)に示されるジアミンである。
【0059】
【化5】
・・・(2)
【0060】
但し、Yは少なくとも2価の有機基であり、その化学構造中に窒素原子を1〜3つ含む。
【0061】
また、Yは少なくとも2価の有機基であり、その化学構造中に窒素原子含有官能基を1〜3つ含むこととしてもよい。また、Yは少なくとも2価の有機基であり、その化学構造中に塩基性を有する窒素原子含有官能基を1〜3つ含むこととしてもよい。
【0062】
さらに、Yは少なくとも2価の有機基であり、その化学構造中に塩基性を有する窒素原子含有官能基として、アミノ基(例えば、−NH2、−NH−等)、アミド基(例えば、−CO−NH2、−CO−NH−等)から選択される少なくとも一種の官能基を1〜3つ含むこととしてもよい。また、Yは少なくとも2価の有機基であり、その化学構造中に塩基性を有する窒素原子含有官能基として、第二級アミン構造(−NH−)を有するアミノ基、第一級アミド基(−CO−NH2)および第二級アミド基(−CO−NH−)から選択される少なくとも一種の官能基を1〜3つ含むことはさらに好適である。
【0063】
また、Yは少なくとも2価の有機基であり、その化学構造中に塩基性を有する窒素原子含有官能基として、アミノ基(例えば、−NH2、−NH−等)、アミド基(例えば、−CO−NH2、−CO−NH−等)から選択される一種の官能基のみを1〜3つ含むこととしてもよい。また、Yは少なくとも2価の有機基であり、その化学構造中に塩基性を有する窒素原子含有官能基として、第二級アミン構造(−NH−)を有するアミノ基、第一級アミド基(−CO−NH2)および第二級アミド基(−CO−NH−)から選択される一種の官能基のみを1〜3つ含むことはさらに好適である。
【0064】
上記化学式(1)および化学式(2)の化合物が混合されて形成されたポリイミドおよびポリイミドの前駆体が、液晶表示装置の配向膜に用いられた場合には、当該液晶表示装置の表示画像の焼き付けは少ないものとなる。
【0065】
第一のジアミンは例えば、下記化学式(A−1)〜(A−20)にて示されるものである。但し、これらに限定されるものではない。
【0066】
【化6】
【0067】
【化7】
【0068】
【化8】
【0069】
【化9】
【0070】
上記化学式(A−9)〜(A−11)における、nはそれぞれ独立に1から8の整数である。
【0071】
第二のジアミンは例えば、下記化学式(B−1)〜(B−38)にて示されるものである。但し、これらに限定されるものではない。
【0072】
【化10】
【0073】
【化11】
【0074】
【化12】
【0075】
【化13】
【0076】
【化14】
【0077】
【化15】
【0078】
【化16】
【0079】
上記化学式(B−6)、(B−7)、(B−14)、(B−16)、(B−17)、(B−20)〜(B−24)、(B−26)、(B−29)、(B−30)、(B−31)、(B−37)および(B−38)における、nはそれぞれ独立に1から8の整数としても良く、また0から8の整数としても良い。(B−29)、(B−30)、(B−31)、(B−32)、(B−33)、(B−34)、(B−35)、(B−36)、(B−37)および(B−38)のRはそれぞれ独立に炭素数1から3のアルキル基である。
【0080】
また、化学式(A−1)〜(A−20)、(B−1)〜(B−38)の構造中に含まれる芳香環(例えば、化学式(A−1)〜(A−20)および(B−6)〜(B−38)であればベンゼン環、化学式(B−1)であればピリジン環、化学式(B−2)であればピリダジン環、化学式(B−3)および(B−4)であればピラジン環、化学式(B−5)であれば1,3,5−トリアジン環を示す)の有する水素と置換して、芳香環に直接結合するアミノ基(−NH2)の位置は特に限定されるものではない。
【0081】
配向膜を構成するポリイミドおよびその前駆体に含まれる、第一のジアミンに基づく酸性基の数と、第二のジアミンにおける2つのアミノ基の以外の窒素原子含有官能基に基づく窒素原子の数と、の比率が20:80から80:20の間(0.25から4.0の間)であることによって、良好な焼き付き特性が得られる。したがって、配向膜を構成するポリイミドおよびポリイミドの前駆体に含まれる、第一のジアミンに基づく酸性基の数に対する、窒素原子含有官能基に基づく窒素原子の数との比は、0.25〜4.0であることとしてもよい。
【0082】
ここで、窒素原子含有官能基に基づく窒素原子の数について説明をする。例えば、(B−1)の化合物はピリジン環に二つのジアミンが結合したものである。(B−1)の化合物における窒素原子含有官能基とはピリジル基であり、ピリジル基の有する窒素原子の数は一つであるので、窒素原子含有官能基に基づく窒素原子の数は一つということとなる。また、例えば、(B−2)の化合物はピリダジン環に二つのジアミンが結合したものである。(B−2)の化合物における窒素原子含有官能基とはピリダジニル基であり、ピリダジニル基の有する窒素原子の数は二つであるので、窒素原子含有官能基に基づく窒素原子の数は二つということとなる。また、(B−6)の化合物は二つのジアミンの他に化学構造中にアミド基を一つ有するものである。(B−6)の化合物における窒素原子含有官能基とはアミド基であり、アミド基の有する窒素原子の数は一つであるので、窒素原子含有官能基に基づく窒素原子の数は一つということとなる。同様に、(B−3)、(B−4)における窒素原子含有官能基に基づく窒素原子の数はそれぞれ二つということとなる。また(B−5)における窒素原子含有官能基に基づく窒素原子の数は三つということとなる。
【0083】
配向膜を構成するポリイミドおよびポリイミドの前駆体に含まれる、第一のジアミンに基づく酸性基の数に対する、窒素原子含有官能基に基づく窒素原子の数との比が、3/7〜7/3(すなわち第一のジアミンに基づく酸性基の数:窒素原子含有官能基に基づく窒素原子の数が、30:70から70:30の間)であることとしてもよい。また、配向膜を構成するポリイミドおよびポリイミドの前駆体に含まれる、第一のジアミンに基づく酸性基の数に対する、窒素原子含有官能基に基づく窒素原子の数との比が、2/3〜3/2(すなわち第一のジアミンに基づく酸性基の数:窒素原子含有官能基に基づく窒素原子の数が、40:60から60:40の間)であることとしてもよい。
【0084】
また、原料であるジアミンにおいて、第一のジアミンと第二のジアミンとの含有比率は20:80から80:20の間であることとしてもよい。さらに、30:70から70:30の間が望ましく、さらに40:60から60:40の間が望ましい。これにより、良好な焼き付き特性が得られる。
【0085】
また、原料であるジアミンにおける、第一のジアミンと第二のジアミンとの合計含有率は全ジアミン成分に対して30モル%以上であることとしてもよい。ポリイミドおよびポリイミドの前駆体の形成に用いられるジアミンにおける、第一のジアミンの含有率と、第二のジアミンの含有率と、の合計が、30モル%以上である。これにより、良好な焼き付き特性が得られる。第一のジアミンの含有率と、第二のジアミンの含有率と、の合計はさらに35モル%以上であることが望ましく、さらに40モル%以上であることが望ましい。
【0086】
前記配向膜を構成するポリイミドおよびその前駆体は原料として脂肪族酸二無水物を50モル%以上含むこととしてもよい。原料である酸無水物が、脂肪族酸二無水物を50モル%以上含むことにより、配向膜の透明性が向上し、高い透過率が得られる。さらに、配向膜を構成するポリイミドおよびその前駆体は原料として脂肪族酸二無水物を70モル%以上含むことは好適である。原料である酸無水物が、脂肪族酸二無水物を70モル%以上含むことにより、脂肪族酸二無水物を50モル%以上含む場合と比較して、さらに配向膜の透明性が向上し高い透過率が得られる。
【0087】
具体的な脂肪族酸二無水物を以下に例示する。しかし、これらに限定されるものではない。シクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物(CBDA)、3c−カルボキシメチルシクロペンタン−1r,2c,4c−トリカルボン酸1,4:2,3−二無水物(TCAAH)、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物(CHDA)、1,5−シクロオクタジエン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物(COEDA)、5−カルボキシメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,6−トリカルボン酸2,3:5,6−二無水物(NDA)、ジシクロヘキシル−3,3´,4,4´−テトラカルボン酸二無水物(DCHA)、4,4´−デカメチレンジオキシビス(3,4´−シクロヘキサンジカルボン酸無水物)(DOHA)5,5´−エチレンジオキシビス(2,3−ノルボルナンジカルボン酸無水物)(EOBN)、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物(BuDA)、エタン−1,1,2,2−テトラカルボン酸二無水物(EtDA)。
【0088】
また、芳香族酸二無水物の代表例としてピロメリット酸二無水物(PMDA)などが挙げられる。
【0089】
以下、本発明の実施例について、図面を参照して詳細に説明する。これら実施例に用いた本発明による配向制御膜はその一例を示したもので、その他の構造についても同様の効果が確認されている。なお、以下では、薄膜トランジスタ等のアクティブ素子を形成した基板をアクティブマトリクス基板という。また、その対向基板にカラーフィルタを有する場合は、これをカラーフィルタ基板ともいう。また、本発明において、目標として望ましいコントラストは500:1以上であり、目標とする残像が解消される時間は5分以内が望ましい。なお、残像の解消される時間は下記の実施例において定義される方法にて決定される。
【実施例1】
【0090】
図1は、実施例1に係る液晶表示装置の1画素付近の模式断面図である。また、図2は、実施例1に係る液晶表示装置の1画素付近の構成を示すアクティブマトリクス基板の模式平面図である。図2A実施例1に係る液晶表示装置の1画素付近の構成を示すアクティブマトリクス基板の模式平面図である。図2Bは図2Aに示す2B線に沿った断面図である。図2Cは図2Aに示す2C線に沿った断面図である。また、図1は、図2Aに示す2B線に沿った断面の一部に対応する。
【0091】
なお、図2Bと図2Cは、要部構成を強調して模式的に示すもので、図2Aの2B線と2C線の切断部に1対1で対応しない。例えば、図2Bでは半導体膜116は図示せず、図2Cではコモン電極103とコモン配線120を接続するスルーホール118は1箇所のみを代表して示してある。
【0092】
本実施例では、アクティブマトリクス基板(第一の基板)としてのガラス基板101上には、Cr(クロム)からなる走査配線(ゲート電極)104及び共通電極配線(コモン配線)120が配置され、このゲート電極104及びコモン配線120を覆うように窒化シリコンからなるゲート絶縁膜107が形成されている。
【0093】
また、ゲート電極104上には、ゲート絶縁膜107を介してアモルファスシリコン又はポリシリコンからなる半導体膜116が配置され、アクティブ素子として薄膜トランジスタ(TFT)115の能動層として機能するようにされている。また、半導体膜116のパターンの一部に重畳するようにCr・Mo(クロム・モリブデン)よりなる信号配線(ドレイン電極)106と画素電極(ソース電極)105が配置され、これら全てを被覆するように窒化シリコンよりなる保護絶縁膜108が形成されている。
【0094】
また、図2Cに示すように、ゲート絶縁膜107と保護絶縁膜108を貫通して形成されたスルーホール118を介してコモン配線120に接続するコモン電極103がオーバーコート層(有機保護膜)112上に配置されている。また、図2Aに示すように、平面的には1画素の領域において、その画素電極105に対向するように、コモン配線120からスルーホール118を介して引き出されているコモン電極103が形成されている。
【0095】
本実施例においては、画素電極105は、有機保護膜112の下層の保護絶縁膜108のさらに下層に配置され、有機保護膜112上に共通電極103が配置された構成となっている。これらの複数の画素電極105と共通電極103とに挟まれた領域で、1画素が構成される構造となっている。また、以上のように構成した単位画素をマトリクス状に配置したアクティブマトリクス基板の表面、すなわち、共通電極103が形成された有機保護膜112上には配向制御膜109が形成されている。
【0096】
一方、図1に示すように、対向基板を構成するガラス基板102には、カラーフィルタ層111が遮光膜(ブラックマトリクス)113で画素毎に区切られて配置され、また、カラーフィルタ層111及び遮光膜113上は、透明な絶縁性材料からなる有機保護膜112で覆われている。さらに、その有機保護膜112上にも配向制御膜109が形成されてカラーフィルタ基板(第二の基板)を構成している。
【0097】
なお、アクティブマトリクス基板(第一の基板)と、カラーフィルタ基板(第二の基板)と、で一対の基板を構成している。したがって本明細書中ではアクティブマトリクス基板(第一の基板)と、カラーフィルタ基板(第二の基板)と、をまとめて一対の基板ということがある。
【0098】
これらの配向制御膜109は、ラビング配向法または高圧水銀ランプを光源とし、石英板を積層したパイル偏光子を用いて取り出される紫外線の直線偏光照射により液晶配向能が付与されている。
【0099】
アクティブマトリクス基板を構成するガラス基板101とカラーフィルタ基板を構成するガラス基板102とが、配向制御膜109の面で対向配置され、これらの間に液晶分子110aで構成される液晶層(液晶組成物層)110bが配置される。また、アクティブマトリクス基板を構成するガラス基板101及びカラーフィルタ基板を構成するガラス基板102の外側の面のそれぞれには、偏光板114が形成されている。
【0100】
以上のようにして、薄膜トランジスタ(TFT)を用いたアクティブマトリクス型液晶表示装置(TFT液晶表示装置)が構成される。このTFT液晶表示装置では、液晶組成物層110bを構成する液晶分子110aは、電界無印加時には対向配置されているガラス基板101,102面にほぼ平行に配向された状態となり、配向処理で規定された初期配向方向に向いた状態でホモジニアス配向している。
【0101】
ここで、ゲート電極104に電圧を印加してTFT115をオンにすると、画素電極105と共通電極103の間の電位差により液晶組成物層110bに電界117が印加され、液晶組成物層110bが持つ誘電異方性と電界との相互作用により液晶組成物層110bを構成する液晶分子110aは電界方向にその向きを変える。このとき液晶組成物層110bの屈折異方性と偏光板114の作用により液晶表示装置の光透過率を変化させ表示を行うことができる。
【0102】
また、有機保護膜112は、絶縁性、透明性に優れるアクリル系樹脂、エポキシアクリル系樹脂又はポリイミド系樹脂などの熱硬化性樹脂を用いればよい。また、有機保護膜112として光硬化性の透明な樹脂を用いてもよいし、ポリシロキサン系の樹脂など無機系の材料を用いてもよい。さらには、有機保護膜112が配向制御膜109を兼ねるものであってもよい。
【0103】
一般的に、IPS方式においては、従来のTN方式に代表される縦電界方式と異なり基板面との界面チルトが原理的に必要なく、界面チルト角が小さいほど視角特性が良いことが知られており、特に1度以下にすることにより、液晶表示装置の視角による色変化、明度変化を大幅に抑制することが出来るため、チルト角が発生しにくい光配向法による配向が効果的である。
【0104】
次に、本実施例の液晶表示装置の製造方法として、配向制御膜のラビングレス配向法を用いた配向制御膜の形成について説明する。本実施例による配向制御膜の形成工程のフローは、以下(1)から(4)のようになる。
(1)配向制御膜の塗膜・形成(表示領域全面にわたり均一な塗膜を形成する)
(2)配向制御膜のイミド化焼成(ワニス溶剤の除去と耐熱性の高いポリイミド化を促進する)
(3)偏光照射による液晶配向能付与(表示領域に均一な配向能を付与する)
(4)(加熱、赤外線照射、遠赤外線照射、電子線照射、放射線照射)による配向能の促進・安定化
【0105】
以上の4段階のプロセスを介して配向制御膜を形成するが、上記(1)から(4)のプロセスの順番に限定されるものではなく、以下(a)(b)のような場合には更なる効果が期待される。
(a)上記(3)(4)を時間的に重なるように処理することにより液晶配向能付与を加速し架橋反応などを誘起することで、更に効果的に配向制御膜を形成することが可能となる。
(b)上記(4)の加熱、赤外線照射、遠赤外線照射などを用いる場合には、上記(2)(3)(4)を時間的にオーバーラップさせることにより、上記(4)のプロセスが上記(2)のイミド化プロセスを兼ねることも可能となり、短時間に配向制御膜の形成が可能となる。
【0106】
次に、本実施例の具体的な製造方法について説明する。アクティブマトリクス基板を構成するガラス基板101及びカラーフィルタ基板を構成するガラス基板102として、厚みが0.7mmで表面を研磨したガラス基板を用いる。ガラス基板101に形成する薄膜トランジスタ115は、画素電極(ソース電極)105、信号配線(ドレイン電極)106、走査配線(ゲート電極)104及びアモルファスシリコンからなる半導体膜116から構成される。
【0107】
走査配線104、共通電極配線120、信号配線106及び画素電極105は、全てクロム膜をパターニングして形成し、画素電極105と共通電極103との間隔は7μmとした。なお、共通電極103と画素電極105については、低抵抗でパターニングの容易なクロム膜を使用したが、ITO膜を使用することで透明電極を構成して、より高い輝度特性を達成することも可能である。
【0108】
ゲート絶縁膜107と保護絶縁膜108は窒化珪素からなり、膜厚はそれぞれ0.3μmとした。その上にはアクリル系樹脂を塗布し、220℃、1時間の加熱処理により透明で絶縁性のある有機保護膜112を形成した。
【0109】
次に、フォトリソグラフィ、エッチング処理により、図2Cに示すように、共通電極配線120までスルーホール118を形成し、共通電極配線120と接続する共通電極103をパターニングして形成した。
【0110】
その結果、単位画素(1画素)内では、図2Aに示すように、画素電極105が3本の共通電極103の間に配置されている構成となり、画素数は1024×3(R、G、Bに対応)本の信号配線106と、768本の走査配線104とから構成される1024×3×768個とするアクティブマトリクス基板を形成した。
【0111】
本実施例において、配向制御膜109として、4,4´−ジアミノジフェニルエーテルと1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物を原料とするポリアミド酸と下記表1Aに示される原料組成で合成した各種ポリアミド酸を1:1の比率で混合した配向膜材料を合成し、これら配向制御膜を用いて液晶表示装置を作製した。樹脂分濃度5重量%、DMAC60重量%、γブチロラクトン20重量%、ブチルセロソルブ15重量%のワニスに調製し、アクティブマトリクス基板の上に印刷形成して熱処理によりイミド化し、イミド化率約95%以上、膜厚約110nmの緻密なポリイミドおよびポリアミド酸からなる配向制御膜109を形成した。
【0112】
【表1A】
【0113】
同様に、ITOを成膜したもう一方のガラス基板102の表面にも同様のポリアミド酸アミドワニスを印刷形成し、イミド化率約95%以上、約110nmの緻密なポリイミド及びポリアミド酸からなる配向制御膜109を形成した。その表面に液晶配向能を付与するために、偏光UV(紫外線)光を配向制御膜109に照射した。光源には高圧水銀ランプを用い、干渉フィルタを介して、240nm〜320nmの範囲のUV光を取り出し、石英基板を積層したパイル偏光子を用いて偏光比約10:1の直線偏光とし、1.5J/cm2の照射エネルギーで照射した。その結果、配向制御膜表面の液晶分子の配向方向は、照射した偏光UVの偏光方向に対し、直交方向であることがわかった。
【0114】
次に、これらの2枚のガラス基板101、102をそれぞれの液晶配向能を有する配向制御膜109を有する表面を相対向させて、分散させた球形のポリマービーズからなるスペーサを介在させ、周辺部にシ−ル剤を塗布し、液晶表示装置となる液晶表示パネル(以下「セル」ともいう。)を組み立てた。2枚のガラス基板101、102の液晶配向方向は互いにほぼ並行とした。このセルに、誘電異方性Δεが正で、その値が10.2(1kHz、20℃)であり、屈折率異方性Δnが0.075(波長590nm、20℃)、ねじれ弾性定数K2が7.0pN、ネマティック−等方相転移温度T(N−I)が約76℃のネマティック液晶組成物Aを真空で注入し、紫外線硬化型樹脂からなる封止材で封止した。液晶層の厚み(ギャップ)は4.2μmの液晶パネルを製作した。
【0115】
この液晶表示パネルのリタデーション(Δn・d)は、約0.31μmとなる。Δn・dは0.2μm≦Δn・d≦0.5μmの範囲が望ましく、この範囲を超えると白表示が色づいてしまうなどの問題がある。また、このパネルに用いた配向制御膜と液晶組成物とが同等のものを用いてホモジニアス配向の液晶表示パネルを作製し、クリスタルローテーション法を用いて液晶のプレチルト角を測定したところ約0.2度を示した。この液晶表示パネルを2枚の偏光板114で挟み、一方の偏光板の偏光透過軸を上記の液晶配向方向とほぼ平行とし、他方をそれに直交するように配置した。その後、駆動回路、バックライトなどを接続してモジュール化し、アクティブマトリクス型の液晶表示装置を得た。本実施例では、低電圧で暗表示、高電圧で明表示となるノーマリークローズ特性とした。
【0116】
次に、本実施例による液晶表示装置の表示品位を評価したところ、コントラスト比500対1の高品位な表示が確認されるとともに、中間調表示時における広視野角が確認された。
【0117】
また、本実施例による液晶表示装置の画像の焼き付け、残像を定量的に測定するため、ホトダイオードを組合せたオシロスコープを用いて評価した。まず、画面上に最大輝度でウインドウパターンを50時間表示し、その後、残像が最も目立つ中間調表示、ここでは、輝度が最大輝度の10%となるように全面を切り換え、ウインドウパターンのエッジ部のパターンが消えるまでの時間を残像消失時間として評価した。ただし、ここで許容される残像緩和時間は5分以下である。また、各種配向膜について透過率Y値(%)を評価した。Y値は、配向膜の透過スペクトルからJIS規格Z−8722に基づいて計算された透過率(%)である。その結果を下記表1Bに示す。
【0118】
【表1B】
【実施例2】
【0119】
図3は、実施例2に係る液晶表示装置の1画素付近の模式断面図である。図4Aは、実施例2に係る液晶表示装置の1画素付近の構成を示すアクティブマトリクス基板の模式平面図である。図4Bは図4Aに示す4B線に沿った断面図である。図4Cは図4Aに示す4C線に沿った断面図である。
【0120】
また、図4は、本実施例による液晶表示装置の1画素付近の構成を説明するアクティブマトリクス基板の模式図であり、図4Aは平面図、図4Bは図4Aに示す4B線に沿った断面図、図4Cは図4Aの4C線に沿った断面図を示す。また、図3は図4Aに示す4B線に沿った断面の一部に対応する。
【0121】
なお、図4Bと図4Cは、要部構成を強調して模式的に示すもので、図4Aの4B線と4C線の切断部に1対1で対応しない。例えば、図4Bでは半導体膜116は図示していない。
【0122】
本実施例では、アクティブマトリクス基板を構成するガラス基板101上には、Crよりなるゲート電極104及び共通電極配線120が配置され、ゲート電極104と共通電極配線120を覆うように窒化シリコンからなるゲート絶縁膜107が形成されている。また、ゲート電極104上には、ゲート絶縁膜107を介してアモルファスシリコン又はポリシリコンからなる半導体膜116が配置され、アクティブ素子である薄膜トランジスタ115の能動層として機能するようにされている。
【0123】
また、半導体膜116のパターンの一部に重畳するようにクロム・モリブデンよりなるドレイン電極106と画素電極(ソース電極)105が配置され、これら全てを被覆するように窒化シリコンよりなる保護絶縁膜108が形成されている。この保護絶縁膜108上には、有機保護膜112が配置されている。この有機保護膜112は、例えば、アクリル樹脂などの透明な材料から構成する。また、画素電極105はITO(In2O3:Sn)などの透明電極から構成されている。共通電極103は、ゲート絶縁膜107、保護絶縁膜108及び有機保護膜112を貫通するスルーホール118を介して、共通電極配線120に接続している。
【0124】
液晶を駆動する電界を与える場合に、画素電極105と対をなす共通電極103は、平面的に1画素の領域を囲うように形成されている。また、この共通電極103は、有機保護膜112の上に配置されている。そして、この共通電極103は、上部から見たときに下層に配置しているドレイン電極106、走査配線104及び能動素子である薄膜トランジスタ115を隠すように配置され、半導体膜116を遮光する遮光層を兼ねている。
【0125】
以上のように構成した単位画素(1画素)をマトリクス状に配置したアクティブマトリクス基板を構成するガラス基板101の表面、すなわち、有機保護膜112上及びその上に形成された共通電極103の上には、配向制御膜109が形成されている。一方、対向基板を構成するガラス基板102にも、カラーフィルタ層111の上に形成される有機保護膜112の上には、配向制御膜109が形成されている。
【0126】
ここで、実施例1と同様に、高圧水銀ランプを光源とし、石英板を積層したパイル偏光子を用いて取り出される紫外線の直線偏光照射により、これらの配向制御膜109に液晶配向能が付与されている。
【0127】
そして、ガラス基板101と対向ガラス基板102が、配向制御膜109の形成面で対向配置され、これらの間に液晶分子110aで構成された液晶組成物層110bが配置される。また、ガラス基板101及び対向ガラス基板102の外側の面のそれぞれには偏光板114が形成されている。
【0128】
このように、本実施例においても、先に述べた実施例1と同様に、画素電極105は、有機保護膜112及び保護絶縁膜108の下層に配置され、画素電極105と有機保護膜112との上に共通電極103が配置された構成となっている。また、共通電極103の電気抵抗が十分低い場合には、この共通電極103は、最下層に形成されている共通電極配線120も兼ねることができる。その際には、最下層に配置している共通電極配線120の形成及びそれに伴うスルーホール118の加工を省くことができる。
【0129】
本実施例では、図4Aに示すように、格子状に形成された共通電極103に囲まれた領域で1画素が構成され、画素電極105と合わせて1画素を4つの領域に分割するように配置されている。また、画素電極105及びそれと対向する共通電極103がお互いに平行に配置されたジグザグな屈曲構造からなり、1画素が2つ以上の複数の副画素を形成している。これにより面内での色調変化を相殺する構造となっている。
【0130】
次に、本実施例による液晶表示装置の製造方法について説明する。ガラス基板101及び102としては、厚みが0.7mmで表面を研磨したガラス基板を用いる。薄膜トランジスタ115は、画素電極(ソース電極)105、信号配線(ドレイン電極)106、走査配線(ゲート電極)104及びアモルファスシリコンからなる半導体膜116から構成される。走査配線104は、アルミニウム膜をパターニングし、共通電極配線120及び信号配線106は、クロム膜をパターニングし、画素電極105は、ITO膜をパターニングし、図4Aに示すように、走査配線104以外は、ジグザグに屈曲した電極配線パターンに形成した。その際、屈曲の角度は10度に設定した。ゲート絶縁膜107と保護絶縁膜108は窒化珪素からなり、膜厚はそれぞれ0.3μmとした。
【0131】
次に、フォトリソグラフィ法とエッチング処理により、図4Cに示すように、共通電極配線120まで約10μm径の円筒状にスルーホール118を形成し、その上にはアクリル系樹脂を塗布し、220℃、で1時間の加熱処理により透明で絶縁性のある誘電率約4の有機保護膜112を約1μm厚に形成した。この有機保護膜112により表示領域の画素電極105の段差起因の凹凸を平坦化し、また、隣接する画素間のカラーフィルタ層111の境界部分の段差凹凸を平坦化した。
【0132】
その後、約7μm径にスルーホール118を再度エッチング処理し、その上から共通電極配線120と接続する共通電極103を、ITO膜をパターニングして形成した。その際、画素電極105と共通電極103との間隔は7μmとした。さらに、この共通電極103は、信号配線106、走査配線104及び薄膜トランジスタ115の上部を覆い画素を囲むように格子状に形成し、遮光層を兼ねるようにした。
【0133】
その結果、単位画素内では図4Aに示すように、画素電極105が3本の共通電極103の間に配置されている構成となり、画素数は1024×3(R、G、Bに対応)本の信号配線106と、768本の走査配線104とから構成される1024×3×768個とするアクティブマトリクス基板が得られた。
【0134】
本実施例において、配向制御膜109として、2,7−ジアミノフルオレンと1−メチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物を原料とするポリアミド酸メチルエステルと下記表2Aに示される原料組成で合成した各種ポリアミド酸メチルエステルを4:6の比率で混合した配向膜材料を合成し、これら配向制御膜を用いて液晶表示装置を作製した。樹脂分濃度5重量%、DMAC60重量%、γブチロラクトン20重量%、ブチルセロソルブ15重量%のワニスに調製し、アクティブマトリクス基板の上に印刷形成して熱処理によりイミド化し、イミド化率約95%以上、膜厚約120nmの緻密なポリイミド及びポリアミド酸メチルエステルからなる配向制御膜109を形成した。
【0135】
【表2A】
【0136】
その配向処理方法は、実施例1と同様の偏光UVを1.5J/cm2の照射エネルギで照射した。
【0137】
次に、これらの2枚のガラス基板101、102をそれぞれの配向制御膜を有する表面を相対向させて、分散させた球形のポリマービーズからなるスペーサを介在させて、周辺部にシール剤を塗布し、液晶表示パネルを組み立てた。2枚のガラス基板101、102の液晶配向方向は互いにほぼ並行とした。
【0138】
この液晶表示パネルに誘電異方性Δεが正でその値が10.2(1kHz、20℃)であり、屈折率異方性Δnが0.075(波長590nm、20℃)、ねじれ弾性定数K2が7.0pN、ネマティック−等方相転移温度T(N−I)が約76℃のネマティック液晶組成物Aを真空で注入し、紫外線硬化型樹脂からなる封止材で封止した。液晶層の厚み(ギャップ)は4.2μmの液晶パネルを製作した。このパネルのリタデーション(Δnd)は、約0.31μmとなる。
【0139】
また、この液晶表示パネルに用いた配向制御膜と液晶組成物とが同等のものを用いてホモジニアス配向の液晶表示パネルを作製し、クリスタルローテーション法を用いて液晶のプレチルト角を測定したところ約0.2度を示した。このパネルを2枚の偏光板114で挟み、一方の偏光板の偏光透過軸を上記の液晶配向方向とほぼ平行とし、他方をそれに直交するように配置した。その後、駆動回路、バックライトなどを接続してモジュール化し、アクティブマトリクス型の液晶表示装置を得た。本実施例では、低電圧で暗表示、高電圧で明表示となるノーマリークローズ特性とした。
【0140】
これら液晶表示装置および配向膜について、実施例1と同様に評価した。結果を表2Bに示す。
【0141】
【表2B】
【実施例3】
【0142】
図5は、実施例3に係る液晶表示装置の1画素付近の模式断面図である。図中、前記した各実施例の図面と同一符号は同一機能部分に対応する。図5に示すように、本実施例では、保護絶縁膜108の下層に配置した画素電極105を、スルーホール118を介して有機保護膜112上に引き上げて共通電極103と同層に配置した。この構成とした場合には、液晶を駆動する電圧をさらに低減することが可能である。
【0143】
以上のように構成されたTFT液晶表示装置では、電界無印加時には、液晶組成物層110bを構成する液晶分子110aは対向配置されているガラス基板101と102の面にほぼ平行な状態となり、光配向処理で規定された初期配向方向に向いた状態でホモジニアス配向している。ここで、ゲート電極104に電圧を印加して薄膜トランジスタ115をオンにすると、画素電極105と共通電極103との間の電位差により液晶組成物層110bに電界117が印加され、液晶組成物が持つ誘電異方性と電界との相互作用により液晶分子110aは電界方向にその向きを変える。このとき液晶組成物層110bの屈折異方性と偏光板114の作用により液晶表示装置の光透過率を変化させ表示を行うことができる。
【0144】
以下、本実施例による液晶表示装置の製造方法について説明する。ガラス基板101と102としては、厚みが0.7mmで表面を研磨したガラス基板を用いる。薄膜トランジスタ115は、画素電極(ソース電極)105、信号配線(ドレイン電極)106、走査配線(ゲート電極)104及びアモルファスシリコンからなる半導体膜116から構成される。走査配線104はアルミニウム膜をパターニングし、共通電極配線120、信号配線106及び画素電極105はクロム膜をパターニングして形成した。ゲート絶縁膜107と保護絶縁膜108は窒化珪素からなり、膜厚はそれぞれ0.3μmとした。その上にアクリル系樹脂を塗布し、220℃、1時間の加熱処理により透明で絶縁性のある誘電率約4の有機保護膜112を約1.0μm厚に形成した。この有機保護膜112により表示領域の画素電極105の段差起因の凹凸を平坦化し、また、隣接する画素間の段差凹凸を平坦化した。
【0145】
次に、フォトリソグラフィ法とエッチング処理により、図5に示すように、ソース電極105まで約10μm径の円筒状にスルーホール118を形成し、その上からソース電極105と接続する画素電極105を、ITO膜をパターニングして形成した。また、共通電極配線120についても約10μm径の円筒状にスルーホール118を形成し、その上からITO膜をパターニングして共通電極103を形成した。その際、画素電極105と共通電極103との間隔は7μmとし、走査配線104以外は、ジグザグに屈曲した電極配線パターンに形成した。その際、屈曲の角度は10度に設定した。さらに、この共通電極103は信号配線106、走査配線104及び薄膜トランジスタ115の上部を覆い画素を囲むように格子状に形成し、遮光層を兼ねるようにした。
【0146】
その結果、単位画素内に2種類のスルーホール118が形成されている以外は、実施例2とほぼ同様に、画素電極105が3本の共通電極103の間に配置されている構成となり、画素数は1024×3(R、G、Bに対応)本の信号配線106と、768本の走査配線104とから構成される1024×3×768個とするアクティブマトリクス基板を形成した。
【0147】
以上のように、画素構造と、用いる配向制御膜以外は、実施例2と同様として、図5に示すように、液晶表示装置を作製した。
【0148】
本実施例において、配向制御膜109として、下記表3Aに示される原料組成で合成した各種ポリアミド酸からなる配向膜材料を用いて液晶表示装置を作製した。樹脂分濃度5重量%、DMAC60重量%、γブチロラクトン20重量%、ブチルセロソルブ15重量%のワニスに調製し、アクティブマトリクス基板の上に印刷形成して熱処理によりイミド化し、イミド化率約95%以上、膜厚約110nmの緻密なポリイミドおよびポリアミド酸からなる配向制御膜109を形成した。
【0149】
【表3A】
【0150】
その配向処理方法は、ラビング配向処理とした。
【0151】
これら液晶表示装置および配向膜について、実施例1と同様に評価した。結果を表3Bに示す。
【0152】
【表3B】
【実施例4】
【0153】
図6は、実施例4に係る液晶表示装置の1画素付近の模式断面図である。図中、前記した各実施例の図面と同一符号は同一機能部分に対応する。本実施例では、電極などによる段差が大きい構造となっている。図6において、薄膜トランジスタ115のゲート電極104と共通電極103とを同層に形成し、共通電極103と画素電極105による電界117によって、液晶分子110aはその電界方向に向きを変える。
【0154】
また、上記した各実施例においては、1つの画素における共通電極103と画素電極105から構成される表示領域は、複数組設けることが可能である。このように、複数組設けることによって、1つの画素が大きい場合でも、画素電極105と共通電極103との間の距離を短くできるので、液晶を駆動させるために印加する電圧を小さくできる。
【0155】
また、上記した各実施例においては、画素電極と共通電極の少なくとも一方を構成する透明導電膜の材料としては、特に制限はないが、加工の容易さ、信頼性の高さ等を考慮して、インジウム・チン・オキサイド(ITO)のようなチタン酸化物にイオンドープされた透明導電膜又はイオンドープされた亜鉛酸化物を用いるのが望ましい。
【0156】
本実施例による液晶表示装置の製造方法において、ガラス基板101と102としては、厚みが0.7mmで表面を研磨したガラス基板を用いる。薄膜トランジスタ115は画素電極(ソース電極)105、信号配線(ドレイン電極)106、走査配線(ゲート電極)104及びアモルファスシリコンからなる半導体膜116から構成される。走査配線104、共通電極配線120、信号配線106、画素電極105及び共通電極103は、全てクロム膜をパターニングして形成し、画素電極105と共通電極103との間隔は7μmとした。ゲート絶縁膜107と保護絶縁膜108は窒化珪素からなり、膜厚はそれぞれ0.3μmとした。
【0157】
本実施例において、配向制御膜109として、1,4−フェニレンジアミンと1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物を原料とするポリアミド酸t−ブチルエステルと下記表4Aに示される原料組成で合成した各種ポリアミド酸を6:4の比率で混合した配向膜材料を合成し、これら配向制御膜を用いて液晶表示装置を作製した。樹脂分濃度5重量%、DMAC60重量%、γブチロラクトン20重量%、ブチルセロソルブ15重量%のワニスに調製し、アクティブマトリクス基板の上に印刷形成して熱処理によりイミド化し、イミド化率約95%以上、膜厚約100nmの緻密なポリイミドおよびポリアミド酸からなる配向制御膜109を形成した。
【0158】
【表4A】
【0159】
その配向処理方法は、実施例1と同様の偏光UVを1.5J/cm2の照射エネルギーで照射した。その結果、画素数は1024×3(R、G、Bに対応)本の信号配線106と、768本の走査配線104とから構成される1024×3×768個とするアクティブマトリクス基板を形成した。
【0160】
以上のように、画素構造以外は実施例1と同様として、図6に示す本実施例の液晶表示装置を作製した。
【0161】
これら液晶表示装置および配向膜について、実施例1と同様に評価した。結果を表4Bに示す。
【0162】
【表4B】
【実施例5】
【0163】
図7は、実施例5に係る液晶表示装置の1画素付近の模式断面図である。図中、前記した各実施例の図面と同一符号は同一機能部分に対応する。本実施例において、画素電極105と共通電極103は、ITOにより形成されており、共通電極103は画素のほぼ全体を覆うベタ電極で構成されている。本構成により電極上も透過部として利用することができ、開口率を向上することができる。また、電極間隔を短くすることができ、電界を効率よく液晶に印加できる。
【0164】
図8は、実施例5に係る液晶表示装置の1画素付近の構成を示すアクティブマトリクス基板の模式平面図であり、薄膜トランジスタ115、共通電極103、画素電極105、信号配線106の構造を示す。
【0165】
本実施例による液晶表示装置の製造方法において、ガラス基板101としては、厚みが0.7mmで表面を研磨したガラス基板を用いる。ガラス基板101上には、共通電極103、画素電極105、信号配線106及び走査配線104の短絡を防止するためのゲート絶縁膜107と、薄膜トランジスタ115、画素電極105及び信号配線106を保護する保護絶縁膜108を形成してTFT基板とする。
【0166】
薄膜トランジスタ115は、画素電極(ソース電極)105、信号配線(ドレイン電極)106、走査配線(ゲート電極)104及びアモルファスシリコンからなる半導体膜116から構成される。走査配線(ゲート電極)104はアルミニウム膜をパターニングし、信号配線(ドレイン電極)106はクロム膜をパターニングし、そして共通電極103と画素電極105とはITOをパターニングして形成する。
【0167】
ゲート絶縁膜107と保護絶縁膜108は窒化珪素からなり、膜厚はそれぞれ0.2μmと0.3μmとした。容量素子は画素電極105と共通電極103でゲート絶縁膜107と保護絶縁膜108を挟む構造として形成する。
【0168】
画素電極105は、ベタ形状の共通電極103の上層に重畳する形で配置されている。画素数は1024×3(R,G,Bに対応)本の信号配線106と、768本の走査配線104とから構成される1024×3×768個とする。
【0169】
ガラス基板102上には、実施例1と同様に、ブラックマトリクス113付きカラーフィルタ層111を形成し、対向カラーフィルタ基板とした。
【0170】
本実施例において、配向制御膜109として、1,4−フェニレンジアミン(PDA)と1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物を原料とするポリアミド酸メチルエステルと下記表5Aに示される原料組成で合成した各種ポリアミド酸を5:5の比率で混合した配向膜材料を合成し、これら配向制御膜を用いて液晶表示装置を作製した。樹脂分濃度5重量%、DMAC60重量%、γブチロラクトン20重量%、ブチルセロソルブ15重量%のワニスに調製し、アクティブマトリクス基板の上に印刷形成して熱処理によりイミド化し、イミド化率約95%以上、膜厚約100nmの緻密なポリイミドおよびポリアミド酸エステルおよびポリアミド酸からなる配向制御膜109を形成した。
【0171】
【表5A】
【0172】
同様に、ITOを成膜したもう一方のガラス基板102の表面にも同様に配向制御膜109を形成した。
【0173】
その配向処理方法は、実施例1と同様の偏光UVを1.5J/cm2の照射エネルギーで照射した。
【0174】
TFT基板及びカラーフィルタ基板における配向制御膜109の配向方向は互いにほぼ平行とした。これらの基板間に平均粒径が4μmのポリマービーズをスペーサとして分散し、TFT基板とカラーフィルタ基板との間に液晶分子110aを挟み込んだ。液晶分子110aは、実施例1と同じ液晶組成物Aを用いた。
【0175】
TFT基板とカラーフィルタ基板とを挟む2枚の偏光板114はクロスニコルに配置した。そして、低電圧で暗状態となり、高電圧で明状態をとるノーマリークローズ特性を採用した。
【0176】
これら液晶表示装置および配向膜について、実施例1と同様に評価した。結果を表5Bに示す。
【0177】
【表5B】
【実施例6】
【0178】
本実施例において、配向制御膜109として、下記表6Aに示される原料組成で合成したポリアミド酸メチルエステルを用いた他は、実施例5と同様にして液晶表示装置を作成した。
【0179】
【表6A】
【0180】
これら液晶表示装置および配向膜について、実施例1と同様に評価した。結果を表6Bに示す。
【0181】
【表6B】
【実施例7】
【0182】
本実施例において、配向制御膜109として、1,4−フェニレンジアミン(PDA)と1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物を原料とするポリアミド酸メチルエステルと下記表7Aに示される原料組成で合成した各種ポリアミド酸を3:7の比率で混合した配向膜材料を用いた他は、実施例5と同様にして液晶表示装置を作成した。
【0183】
【表7A】
【0184】
これら液晶表示装置および配向膜について、実施例1と同様に評価した。結果を表7Bに示す。
【0185】
【表7B】
【符号の説明】
【0186】
101,102 ガラス基板、103 共通電極(コモン電極)、104 走査配線(ゲート電極)、105 画素電極(ソース電極)、106 信号配線(ドレイン電極)、107 ゲート絶縁膜、108 保護絶縁膜、109 配向制御膜、110a 液晶分子、110b 液晶層(液晶組成物層)、111 カラーフィルタ層、112 オーバーコート層(有機保護膜)、113 遮光膜(ブラックマトリクス)、114 偏光板、115 薄膜トランジスタ(TFT)、116 半導体膜(アモルファスシリコン又はポリシリコン)、117 電界(電界方向)、118 スルーホール、120 共通電極配線(コモン配線)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方の基板が透明である第一の基板および第二の基板と、前記第一の基板と前記第二の基板との間に配置された液晶層と、前記第一の基板および前記第二の基板の少なくとも一方の基板に形成され、前記液晶層に電界を印加するための電極群と、前記電極群に接続された複数のアクティブ素子と、前記第一の基板および前記第二の基板の少なくとも一方の基板に配置された配向膜と、を含む液晶表示装置において、
前記配向膜はジアミンおよび酸無水物を用いて形成された、ポリイミドおよび前記ポリイミドの前駆体を含み、
前記ジアミンは、少なくとも一つの酸性基を有する第一のジアミンと、2つのアミノ基の他に、窒素原子含有官能基を少なくとも一つ有する第二のジアミンと、を含む、
ことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記第一のジアミンは、前記酸性基としてカルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基およびホスホン酸基から選択される少なくとも一つの官能基を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記窒素原子含有官能基は、塩基性基である、
ことを特徴とする請求項1または2いずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記第一のジアミンおよび前記第二のジアミンは、それぞれ下記化学式(1)および化学式(2)に示される、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【化1】
・・・(1)
(但し、Xは少なくとも2価の有機基であり、その化学構造中に前記酸性基としてカルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基およびホスホン酸基から選択される少なくとも一種の官能基を、1〜3つ含む。)
【化2】
・・・(2)
(但し、Yは少なくとも2価の有機基であり、その化学構造中に窒素原子を1〜3つ含む。)
【請求項5】
前記配向膜を構成するポリイミドおよび前記ポリイミドの前駆体に含まれる、前記第一のジアミンに基づく前記酸性基の数に対する、前記窒素原子含有官能基に基づく窒素原子の数との比は、0.25〜4.0である、
ことを特徴とする請求項4に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記ポリイミドおよび前記ポリイミドの前駆体の形成に用いられる前記ジアミンにおける、前記第一のジアミンの含有率と、前記第二のジアミンの含有率と、の合計は、30モル%以上である、
ことを特徴とする請求項4に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記ポリイミドおよび前記ポリイミドの前駆体の形成に用いられる前記酸無水物は、脂肪族酸二無水物を50モル%以上含む、
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
前記配向膜の透過率Y値は、98.0%以上である、
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項9】
前記配向膜は、偏光紫外線を照射することにより液晶配向能を付与されている、
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項10】
前記ポリイミドの前駆体は、ポリアミド酸エステルおよびポリアミド酸を含む、
ことを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項11】
前記ポリアミド酸エステルは、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物誘導体および芳香族ジアミンを用いて形成される、
ことを特徴とする請求項10に記載の液晶表示装置。
【請求項12】
ジアミンおよび酸無水物を用いて形成された、ポリイミドおよび前記ポリイミドの前駆体を含む配向膜であって、
前記ジアミンは、少なくとも一つの酸性基を有する第一のジアミンと、2つのアミノ基の他に、窒素原子含有官能基を少なくとも一つ有する第二のジアミンと、を含む、
ことを特徴とする配向膜。
【請求項13】
ポリイミドおよび前記ポリイミドの前駆体を含む配向膜を形成するための、配向膜形成用組成物であって、少なくとも一つの酸性基を有する第一のジアミンと、2つのアミノ基の他に、窒素原子含有官能基を少なくとも一つ有する第二のジアミンと、酸無水物と、を含有する、ことを特徴とする配向膜形成用組成物。
【請求項14】
前記ポリイミドの前駆体は、ポリアミド酸エステルであり、前記ポリアミド酸エステルは、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物誘導体を用いて形成される、
ことを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項1】
少なくとも一方の基板が透明である第一の基板および第二の基板と、前記第一の基板と前記第二の基板との間に配置された液晶層と、前記第一の基板および前記第二の基板の少なくとも一方の基板に形成され、前記液晶層に電界を印加するための電極群と、前記電極群に接続された複数のアクティブ素子と、前記第一の基板および前記第二の基板の少なくとも一方の基板に配置された配向膜と、を含む液晶表示装置において、
前記配向膜はジアミンおよび酸無水物を用いて形成された、ポリイミドおよび前記ポリイミドの前駆体を含み、
前記ジアミンは、少なくとも一つの酸性基を有する第一のジアミンと、2つのアミノ基の他に、窒素原子含有官能基を少なくとも一つ有する第二のジアミンと、を含む、
ことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記第一のジアミンは、前記酸性基としてカルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基およびホスホン酸基から選択される少なくとも一つの官能基を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記窒素原子含有官能基は、塩基性基である、
ことを特徴とする請求項1または2いずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記第一のジアミンおよび前記第二のジアミンは、それぞれ下記化学式(1)および化学式(2)に示される、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【化1】
・・・(1)
(但し、Xは少なくとも2価の有機基であり、その化学構造中に前記酸性基としてカルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基およびホスホン酸基から選択される少なくとも一種の官能基を、1〜3つ含む。)
【化2】
・・・(2)
(但し、Yは少なくとも2価の有機基であり、その化学構造中に窒素原子を1〜3つ含む。)
【請求項5】
前記配向膜を構成するポリイミドおよび前記ポリイミドの前駆体に含まれる、前記第一のジアミンに基づく前記酸性基の数に対する、前記窒素原子含有官能基に基づく窒素原子の数との比は、0.25〜4.0である、
ことを特徴とする請求項4に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記ポリイミドおよび前記ポリイミドの前駆体の形成に用いられる前記ジアミンにおける、前記第一のジアミンの含有率と、前記第二のジアミンの含有率と、の合計は、30モル%以上である、
ことを特徴とする請求項4に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記ポリイミドおよび前記ポリイミドの前駆体の形成に用いられる前記酸無水物は、脂肪族酸二無水物を50モル%以上含む、
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
前記配向膜の透過率Y値は、98.0%以上である、
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項9】
前記配向膜は、偏光紫外線を照射することにより液晶配向能を付与されている、
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項10】
前記ポリイミドの前駆体は、ポリアミド酸エステルおよびポリアミド酸を含む、
ことを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項11】
前記ポリアミド酸エステルは、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物誘導体および芳香族ジアミンを用いて形成される、
ことを特徴とする請求項10に記載の液晶表示装置。
【請求項12】
ジアミンおよび酸無水物を用いて形成された、ポリイミドおよび前記ポリイミドの前駆体を含む配向膜であって、
前記ジアミンは、少なくとも一つの酸性基を有する第一のジアミンと、2つのアミノ基の他に、窒素原子含有官能基を少なくとも一つ有する第二のジアミンと、を含む、
ことを特徴とする配向膜。
【請求項13】
ポリイミドおよび前記ポリイミドの前駆体を含む配向膜を形成するための、配向膜形成用組成物であって、少なくとも一つの酸性基を有する第一のジアミンと、2つのアミノ基の他に、窒素原子含有官能基を少なくとも一つ有する第二のジアミンと、酸無水物と、を含有する、ことを特徴とする配向膜形成用組成物。
【請求項14】
前記ポリイミドの前駆体は、ポリアミド酸エステルであり、前記ポリアミド酸エステルは、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物誘導体を用いて形成される、
ことを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2012−98715(P2012−98715A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220138(P2011−220138)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【Fターム(参考)】
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