説明

配管処理装置および配管処理方法

【課題】配管に挿入する案内をし、かつ配管の中心を通って挿入を案内すること。
【解決手段】配管の開口部より配管内に挿入される被挿入体1が、当該被挿入体1の中心軸S1に沿う軸方向、中心軸S1に直交する径方向、中心軸S1回りに回転する回転方向、および中心軸S1に対して傾斜する傾斜方向に対し、移動機構によって移動可能に設けられた配管処理装置であって、配管内に挿入される被挿入体1の前側に設けられており配管の内径よりも小さい外径に形成された挿入端部2と、挿入端部2の前端において挿入する方向に音波を送受信する軸方向超音波センサ21と、挿入端部2の側部において中心軸S1と交差する方向に音波を送受信する径方向超音波センサ22と、軸方向超音波センサ21および径方向超音波センサ22の検出結果に応じて移動機構を制御する制御部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、配管の検査や加工などを行う配管処理装置および配管処理方法であって、特に、配管の中心に対する配置を精度良く行うことのできる配管処理装置および配管処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、原子力設備では、その安全性や信頼性を確保するため、検査装置によって定期的に配管の検査が行われる。そして、検査の結果、配管の管台の溶接部になどに、経年変化によるクラックなどの表面欠陥が発生するおそれのある場合や、経年変化による表面欠陥が判明した場合、加工装置によって必要箇所を切削・補修することになる。このような、検査や加工などを行う処理装置は、対象とする配管の開口部から挿入されることになるが、精度良く検査や加工を行うため、配管の中心を通って挿入されることが好ましい。原子力設備では、放射線環境下である配管に対して検査や加工を行うため、安全性を考慮して処理装置を遠隔操作で移動させることが望まれているが、特に、比較的管径の小さい配管にあっては、遠隔操作によって配管の中心を通って処理装置を挿入することは難しい。
【0003】
従来、例えば、特許文献1に記載の配管検査装置および配管検査方法は、簡便かつ正確に超音波センサを配管の中心に配置可能にし、精度の良い探傷を可能とすることを目的としている。そして、超音波センサ、駆動部、位置制御部および超音波送受信制御部を備え、略円筒状の配管を探傷する装置において、配管軸とセンサ回転軸が一致するようにセンサを配置し回転走査させることによって配管内径面を探傷するものであり、この探傷前に、配管軸と想定される位置に配置したセンサから軸垂直方向に超音波を送信しつつセンサを走査させることによって得られた超音波信号、超音波伝播時間およびセンサの位置情報に基づいて配管軸の位置を算出し、算出された配管軸の位置にセンサを位置補正する制御信号を生成し送信する位置補正部をさらに備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−122175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に記載の配管検査装置および配管検査方法は、探傷を行うための超音波センサを、配管軸の位置を算出するための位置情報を得る超音波センサとして用いているため、当該超音波センサを配管内面に向くように配置している。すなわち、特許文献1に記載の配管検査装置は、装置を配管に挿入するとき、配管の位置情報を得る手段はなく、開口部に装置を挿入するための案内もない。
【0006】
本発明は上述した課題を解決するものであり、配管に挿入する案内をすることができ、かつ配管の中心を通って挿入を案内することのできる配管処理装置および配管処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、本発明の配管処理装置は、配管の開口部より配管内に挿入される被挿入体が、当該被挿入体の中心軸に沿う軸方向、前記中心軸に直交する径方向、前記中心軸回りに回転する回転方向、および前記中心軸に対して傾斜する傾斜方向に対し、移動機構によって移動可能に設けられた配管処理装置であって、前記配管内に挿入される前記被挿入体の前側に設けられており前記配管の内径よりも小さい外径に形成された挿入端部と、前記挿入端部の前端において挿入する方向に音波を送受信する軸方向超音波センサと、前記挿入端部の側部において前記中心軸と交差する方向に音波を送受信する径方向超音波センサと、前記軸方向超音波センサおよび前記径方向超音波センサの検出結果に応じて前記移動機構を制御する制御部と、を備えること特徴とする。
【0008】
この配管処理装置によれば、軸方向超音波センサによって配管の開口部の外縁との距離を検出する位置に被挿入体を配置し、軸方向超音波センサによって検出する距離が配管の開口部の外縁よりも大きくなる位置まで被挿入体を径方向に移動させ、径方向超音波センサによって配管の内面が検出される位置まで被挿入体を軸方向に移動させ、被挿入体を回転方向に回転方向に回転させつつ、径方向超音波センサによって配管の内面からの距離を検出して当該距離が等しくなる位置まで被挿入体を径方向に移動させ、被挿入体を軸方向に所定距離移動させた後、被挿入体を回転方向に回転させつつ、径方向超音波センサによって配管の内面からの距離を検出して当該距離が等しくなる位置まで被挿入体を径方向に移動させ、配管の内面からの距離が等しい2つの点を結ぶ直線に中心軸が一致する位置まで、被挿入体を傾斜方向に移動させた後、被挿入体を軸方向に移動させて被挿入体を配管内に挿入する。このため、中心軸が配管の中心軸に一致した状態で、被挿入体が配管内に挿入される。この結果、配管に挿入する案内をすることができ、かつ配管の中心を通って被挿入体の挿入を案内することができる。
【0009】
また、本発明の配管処理装置は、前記挿入端部は、前側に向けて先細りに形成されていることを特徴とする。
【0010】
この配管処理装置によれば、径方向超音波センサによって配管の内面が検出される位置まで被挿入体を軸方向に移動させ、被挿入体を回転方向に回転方向に回転させつつ、径方向超音波センサによって配管の内面からの距離を検出して当該距離が等しくなる位置まで被挿入体を径方向に移動させ、被挿入体を軸方向に所定距離移動させた後、被挿入体を回転方向に回転させつつ、径方向超音波センサによって配管の内面からの距離を検出して当該距離が等しくなる位置まで被挿入体を径方向に移動させ、配管の内面からの距離が等しい2つの点を結ぶ直線に中心軸が一致する位置まで、被挿入体を傾斜方向に移動させるとき、挿入端部を配管の内面に接触する事態を防ぐことができる。この結果、より正確な位置に被挿入体を移動させることができる。
【0011】
また、本発明の配管処理装置は、前記被挿入体の側部に設けられて、中心軸と交差する方向に音波を送受信する検査用超音波センサが前記中心軸に沿って複数配置されたセンサ支持部を備え、前記センサ支持部が、前記中心軸を基準とした対称位置で複数設けられていることを特徴とする。
【0012】
この配管処理装置によれば、検査用超音波センサを配管内面に沿って移動させることができ、精度良く配管の検査を行うことができる。
【0013】
また、本発明の配管処理装置は、前記センサ支持部が、前記中心軸に直交する径方向でスライド可能に支持されているとともに、突出する方向に弾性付勢されていることを特徴とする。
【0014】
この配管処理装置によれば、センサ支持部が配管の内面に接触した状態となることから、検査用超音波センサを配管内面に接触させて移動させることができ、精度良く配管の検査を行うことができる。しかも、センサ支持部が配管内面の凹凸に沿って径方向に移動することから、検査用超音波センサを配管内面の形状に沿って倣わせることができ、精度良く配管の検査を行うことができる。
【0015】
また、本発明の配管処理装置は、前記センサ支持部が、挿入の前後方向に傾倒可能に支持されていることを特徴とする。
【0016】
この配管処理装置によれば、センサ支持部が配管内面の凹凸に沿って前後方向に移動することから、検査用超音波センサを配管内面の形状に沿って倣わせることができ、精度良く配管の検査を行うことができる。
【0017】
また、本発明の配管処理装置は、前後方向に傾倒可能に支持された前記センサ支持部が、前方向に弾性付勢されていることを特徴とする。
【0018】
この配管処理装置によれば、被挿入体が配管に挿入されるとき、センサ支持部が前側に傾いて前側が先細りになるため、挿入を円滑に行うことができる。
【0019】
また、本発明の配管処理装置は、前記センサ支持部が、周方向に傾倒可能に支持されていることを特徴とする。
【0020】
この配管処理装置によれば、センサ支持部が配管内面の凹凸に沿って周方向に移動することから、検査用超音波センサを配管内面の形状に沿って倣わせることができ、精度良く配管の検査を行うことができる。
【0021】
また、本発明の配管処理装置は、前記検査用超音波センサは、前記センサ支持部に対して前記中心軸に沿って少なくとも3つ配置され、中側に位置する前記検査用超音波センサが前記センサ支持部の外面から突出する方向にスライド可能に支持されているとともに、突出する方向に弾性付勢されていることを特徴とする。
【0022】
検査用超音波センサを複数配置することで、異なる角度で複数の音波を送受信するので検出精度が向上する。そして、検査用超音波センサが少なくとも3つ配置された場合、中側の検査用超音波センサが配管内面の凹凸によって配管内面から離隔してしまう場合がある。この点、この配管処理装置によれば、中側に位置する検査用超音波センサがセンサ支持部の外面から突出するように弾性付勢されているため、中側に位置する検査用超音波センサが配管内面の凹凸によって配管内面から離隔してしまう事態を防ぎ、精度良く配管の検査を行うことができる。
【0023】
また、本発明の配管処理装置は、前記被挿入体の側部に突出して設けられた突起部が、前記中心軸を基準とした対称位置に複数設けられ、かつ前記中心軸に直交する径方向でスライド可能に支持されているとともに、突出する方向に弾性付勢されていることを特徴とする。
【0024】
この配管処理装置によれば、突起部が配管内面に接触しつつ、配管内面の凹凸に沿って径方向に移動することから、中心軸を配管の中心軸に一致させた状態を保つことができる。
【0025】
また、本発明の配管処理装置は、各前記突起部が、各前記センサ支持部とともに前記中心軸を基準として周方向に均等配置されていることを特徴とする。
【0026】
この配管処理装置によれば、各突起部および各センサ支持部が、配管内において周方向で均等に配置されることから、中心軸を配管の中心軸に一致させた状態を安定して保つことができる。
【0027】
また、本発明の配管処理装置は、前記被挿入体、前記挿入端部、前記センサ支持部、または前記突起部の少なくとも1つの外角が、円弧または面取り処理されていることを特徴とする。
【0028】
この配管処理装置によれば、配管への挿入、配管内での移動、配管からの抜き出しに際して円滑に移動させることができる。
【0029】
上述の目的を達成するために、本発明の配管処理方法は、上述したいずれか1つの配管処理装置を、前記移動機構によって移動させ、前記配管の開口部から前記配管内に挿入する配管処理方法であって、前記軸方向超音波センサによって前記配管の開口部の外縁との距離を検出する位置に、前記被挿入体を配置する工程と、次に、前記軸方向超音波センサによって検出する距離が前記配管の開口部の外縁よりも大きくなる位置まで、前記被挿入体を径方向に移動させる工程と、次に、前記径方向超音波センサによって前記配管の内面が検出される位置まで、前記被挿入体を軸方向に移動させる工程と、次に、前記被挿入体を回転方向に回転方向に回転させつつ、前記径方向超音波センサによって前記配管の内面からの距離を検出し、当該距離が等しくなる位置まで、前記被挿入体を径方向に移動させる工程と、次に、前記被挿入体を軸方向に所定距離移動させた後、前記被挿入体を回転方向に回転させつつ、前記径方向超音波センサによって前記配管の内面からの距離を検出し、当該距離が等しくなる位置まで、前記被挿入体を径方向に移動させる工程と、次に、前記配管の内面からの距離が等しい前記2つの点を結ぶ直線に前記中心軸が一致する位置まで、前記被挿入体を傾斜方向に移動させた後、前記被挿入体を軸方向に移動させて当該被挿入体を前記配管内に挿入する工程と、を含むことを特徴とする。
【0030】
この配管処理方法によれば、配管に挿入する案内をするとともに、中心軸が配管の中心軸に一致した状態で、被挿入体が配管内に挿入される。この結果、配管に挿入する案内をすることができ、かつ配管の中心を通って被挿入体の挿入を案内することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、配管に挿入する案内をし、かつ配管の中心を通って挿入を案内することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、原子力設備の一例を示す概略図である。
【図2】図2は、原子炉容器の横断面図である。
【図3】図3は、注水管台の断面図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態に係る配管処理装置の外観図である。
【図5】図5は、図4の配管処理装置を軸回りに90度回転した状態での外観図である。
【図6】図6は、図4の配管処理装置を前側から視た外観図である。
【図7】図7は、図5におけるA−A断面図である。
【図8】図8は、図4におけるB−B断面図である。
【図9】図9は、図4におけるC−C断面図である。
【図10】図10は、本発明の実施の形態に係る配管処理装置の制御系のブロック図である。
【図11】図11は、本発明の実施の形態に係る配管処理装置の挿入工程図である。
【図12】図12は、本発明の実施の形態に係る配管処理装置の挿入工程図である。
【図13】図13は、本発明の実施の形態に係る配管処理装置の挿入工程図である。
【図14】図14は、本発明の実施の形態に係る配管処理装置の挿入工程図である。
【図15】図15は、本発明の実施の形態に係る配管処理装置の挿入工程図である。
【図16】図16は、本発明の実施の形態に係る配管処理装置の挿入工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、本発明に係る実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0034】
図1は、原子力設備の一例を示す概略図であり、図2は、原子炉容器の横断面図である。図1に示すように、原子力設備100は、例えば、加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)がある。この原子力設備100は、原子炉容器101、加圧器102、蒸気発生器103およびポンプ104が、一次冷却水管105により順次連結されて、一次冷却水の循環経路が構成されている。また、蒸気発生器103とタービン(図示省略)との間には、二次冷却水の循環経路が構成されている。
【0035】
この原子力設備100では、一次冷却水が原子炉容器101にて加熱されて高温・高圧となり、加圧器102にて加圧されて圧力を一定に維持されつつ、一次冷却水管105を介して蒸気発生器103に供給される。蒸気発生器103では、一次冷却水と二次冷却水との熱交換が行われることにより、二次冷却水が蒸発して蒸気となる。熱交換により蒸気となった二次冷却水は、タービンに供給される。タービンは、二次冷却水の蒸気により駆動される。そして、タービンの動力が発電機(図示省略)に伝達されて発電される。タービンの駆動に供された蒸気は、凝縮して水となり蒸気発生器103に供給される。一方、熱交換後の一次冷却水は、一次冷却水管105を介してポンプ104側に回収される。
【0036】
蒸気発生器103は、図1に示すように、半球形状に形成された下部において、入口側水室103aと出口側水室103bとが仕切板103cによって区画されて設けられている。入口側水室103aおよび出口側水室103bは、その天井部に設けられた管板103dによって蒸気発生器103の上部側と区画されている。蒸気発生器103の上部側には、逆U字形状の伝熱管103eが設けられている。この伝熱管103eは、入口側水室103aと出口側水室103bとを繋ぐように端部が管板103dに支持されている。また、入口側水室103aは、配管ノズルとしての入口管台103fが設けられ、この入口管台103fに入口側の一次冷却水管105が接続されている。一方、出口側水室103bは、配管ノズルとしての出口管台103gが設けられ、この出口管台103gに出口側の一次冷却水管105が接続されている。
【0037】
原子炉容器101は、図1に示すように、燃料集合体(図示省略)が挿抜できるように、容器本体101aとその上部に装着される容器蓋101bとにより構成されている。容器蓋101bは、容器本体101aに対して開閉可能に設けられている。容器本体101aは、上方が開口し、下方が半球形状とされて閉塞された円筒形状をなし、上部に一次冷却水としての軽水を給排する入口管台101cおよび出口管台101dが設けられている。出口管台101dは、蒸気発生器103の入口管台103fに連通するように一次冷却水管105が接続されている。また、入口管台101cは、蒸気発生器103の出口管台103gに連通するように一次冷却水管105が接続されている。また、原子炉容器101は、図2に示すように、容器本体101aにおいて入口管台101cおよび出口管台101dと同等高さの位置に、注水用の管である注水管台101eが設けられている。注水管台101eは、管である注水配管101fが溶接によって接続されている。
【0038】
図3は、注水管台の断面図である。注水管台101eは、上述した原子力設備100の安全性や信頼性を確保するため、定期的に検査が行われる。この検査の結果、図3に示す、注水管台101eと注水配管101fとの接続部分である溶接部101gに、経年変化によるクラックなどの表面欠陥が発生するおそれのある場合や、経年変化による表面欠陥が判明した場合、当該溶接部101gを切削・補修する。
【0039】
上記の検査や、切削・補修などの加工を行うため、本実施の形態に係る配管処理装置が適用される。図4は、本実施の形態に係る配管処理装置の外観図であり、図5は、図4の配管処理装置を軸回りに90度回転した状態での外観図であり、図6は、図4の配管処理装置を前側から視た外観図であり、図7は、図5におけるA−A断面図であり、図8は、図4におけるB−B断面図であり、図9は、図4におけるC−C断面図である。
【0040】
配管処理装置は、上述した原子炉容器101の内側であって注水管台101eから注水配管101fに至る配管の内部に挿入されるもので、被挿入体1と、被挿入体1の前記配管内に挿入される前側に設けられた挿入端部2と、被挿入体1の後側に設けられて移動機構6(図10参照)としての図示しない多関節構造のマニピュレータに固定される固定部3とを備えている。そして、挿入端部2が配管処理装置として構成されている。また、配管処理装置は、中心軸S1に沿って挿入の前側から、挿入端部2、被挿入体1、固定部3の順で配置されている。なお、以下の説明において、中心軸S1の延在方向(中心軸S1に沿う方向)を軸方向といい、中心軸S1に直交する方向を径方向という。また、配管処理装置が配管に挿入される方向を挿入方向といい、挿入方向に向く側を前側といい、その反対に向く側を後側という。
【0041】
挿入端部2は、配管としての注水管台101eおよび注水配管101fの内径よりも小さい外径に形成され、図4〜図7および図9に示すように、中心軸S1を中心とした円柱形状をなしている。具体的に、挿入端部2は、前側に向けて先細りとなるように、中心軸S1を中心とした円錐形状を基に、前面がほぼ平坦とされ、外面が前側に向けて傾斜したテーパ面2aを有している。
【0042】
この挿入端部2は、図5〜図7に示すように、軸方向超音波センサ21および径方向超音波センサ22が設けられている。軸方向超音波センサ21は、挿入端部2の前端に設けられ、中心軸S1に沿う挿入方向に音波を送受信するものである。径方向超音波センサ22は、中心軸S1と交差(直交)する方向(径方向)に音波を送受信するものである。
【0043】
被挿入体1は、図4〜図6、図8および図9に示すように、中心軸S1を中心とした円柱形状をなす本体部10を基に構成されている。この本体部10は、配管としての注水管台101eおよび注水配管101fの内径よりも小さい外径に形成されている。
【0044】
この被挿入体1は、図4〜図8に示すように、センサ支持部11を有している。センサ支持部11は、軸方向に沿って延在して設けられ、本体部10の側部に突出し、中心軸S1を基準とした対称位置で複数設けられている。本実施の形態では、センサ支持部11は、2つ設けられており、中心軸S1を中心として相反する方向に突出して配置されている。なお、図には明示しないが、センサ支持部11は、例えば、3つ設けられている場合、中心軸S1を中心とした周方向に均等配置される。
【0045】
このセンサ支持部11は、軸方向に沿って複数の検査用超音波センサ111が設けられている。検査用超音波センサ111は、本実施の形態では、1つのセンサ支持部11に対して軸方向に沿って3つ設けられている。この検査用超音波センサ111は、中心軸S1と交差する方向に音波を送受信するものである。また、個々の検査用超音波センサ111は、被挿入体1が配管内に挿入された場合、中心軸S1に直交する方向(径方向)に対して異なる角度で音波を送受信する。これは、単一の角度で音波を送受信すると、当該角度と同じ方向で欠陥があった場合に受信感度が低下してしまい、当該欠陥を検出することができないおそれがあるためである。すなわち、異なる角度で複数の音波を送受信することで検出精度が向上する。
【0046】
また、被挿入体1は、図7に示すように、スライド移動部12を有している。スライド移動部12は、軸方向に沿って延在する支持部材12aを有している。支持部材12aは、センサ支持部11を支持するものである。また、スライド移動部12は、支持部材12aの両端に、センサ支持部11の両端の外側で本体部10の側部に突出して設けられた摺動部12bを有している。さらに、スライド移動部12は、摺動軸12cを有している。摺動軸12cは、中心軸S1に直交する方向に延在して本体部10に固定され、自身の延在方向に摺動部12bを摺動可能に挿通する。このため、スライド移動部12は、摺動軸12cが延在する中心軸S1に直交する方向にスライド可能に設けられている。すなわち、スライド移動部12に支持されているセンサ支持部11は、径方向にスライド可能に設けられる。また、スライド移動部12は、圧縮コイルバネ12dを有している。圧縮コイルバネ12dは、摺動軸12cに挿通され、摺動部12bに当接している。このため、スライド移動部12は、圧縮コイルバネ12dによって、摺動軸12cが延在する径方向であって、本体部10の外側に向けて弾性付勢されている。すなわち、スライド移動部12に支持されているセンサ支持部11は、径方向であって、本体部10の外側に突出する方向に弾性付勢されている。また、スライド移動部12は、支持部材12aの両端に摺動部12bが設けられ、各摺動部12bがそれぞれ摺動軸12cに沿ってスライド移動可能に設けられ、かつ圧縮コイルバネ12dによって本体部10の外側に向けて弾性付勢されている。このため、スライド移動部12は、軸方向の一端側と他端側とが、それぞれスライド移動可能に弾性付勢されている。すなわち、センサ支持部11は、軸方向の一端側と他端側とが、それぞれスライド移動可能に弾性付勢されている。また、本体部10の外側に向けて弾性付勢された各センサ支持部11の外面間の寸法H1は、挿入される配管の内径よりも大きい。
【0047】
また、被挿入体1は、図7および図8に示すように、傾倒移動部13を有している。傾倒移動部13は、支持部材12aにおいてセンサ支持部11の両側に沿って立設された軸受部材13aと、当該軸受部材13aに対して径方向に延在して設けられ、センサ支持部11の延在方向のほぼ中央部に挿入された回転軸13bとを有している。このため、センサ支持部11は、スライド移動部12に対し、挿入方向の前後方向に傾倒可能に支持されている。なお、傾倒移動部13は、スライド移動部12がない場合、本体部10に設けられて、センサ支持部11を挿入方向の前後方向に傾倒可能に支持する。
【0048】
また、傾倒移動部13は、傾倒付勢部14を有している。傾倒付勢部14は、スプリングプランジャとして構成され、支持部材12aに固定されており、プランジャ部が、傾倒移動部13に支持されたセンサ支持部11における挿入方向の後側に当接し、当該センサ支持部11を被挿入体1の外側に弾性付勢する。すなわち、傾倒移動部13によって挿入の前後方向に傾倒可能に支持されたセンサ支持部11は、前方向に弾性付勢される。なお、傾倒付勢部14は、スライド移動部12がない場合、本体部10に設けられて、センサ支持部11を挿入の前方向に弾性付勢する。
【0049】
また、被挿入体1は、図8に示すように、周方向移動部15を有している。周方向移動部15は、傾倒移動部13において、回転軸13bが挿通されるセンサ支持部11側の穴の少なくとも径方向の内径が、回転軸13bの外径よりも大きく形成されている。すなわち、センサ支持部11は、大径の穴である周方向移動部15によって、回転軸13bに対し、径方向に移動可能に支持されることになる。このため、センサ支持部11は、回転軸13bに対し、中心軸S1の周方向への移動が許容され、周方向に傾倒可能に支持される。なお、周方向移動部15は、傾倒移動部13がない場合、図には明示しないが、スライド移動部12の支持部材12aに対して周方向に延在するレールと、当該レールに摺動する摺動子との構成によって、センサ支持部11を周方向に傾倒可能に支持する。また、周方向移動部15は、スライド移動部12がない場合、上述のように本体部10に設けられた傾倒移動部13に対してセンサ支持部11を周方向に傾倒可能に支持する。また、周方向移動部15は、傾倒移動部13およびスライド移動部12がない場合、本体部10に対して周方向に延在するレールと、当該レールに摺動する摺動子との構成によって、センサ支持部11を周方向に傾倒可能に支持する。
【0050】
また、センサ支持部11は、センサ押出部16を有している。センサ押出部16は、検査用超音波センサ111が中心軸S1に沿って少なくとも3つ配置されている場合に設けられるもので、中側に位置する検査用超音波センサ111aを、外面から径方向に突出するようにセンサ支持部11に対してスライド可能に支持する。そして、センサ押出部16は、当該検査用超音波センサ111aを外側に弾性付勢する圧縮コイルバネとして構成されている。なお、検査用超音波センサ111aは、センサ支持部11の外側に抜けないようにセンサ支持部11に対してスライド移動を規制されている。
【0051】
また、被挿入体1は、図4〜図6、図8および図9に示すように、突起部18を有している。突起部18は、被挿入体1の側部にて径方向に突出して設けられ、中心軸S1を基準とした対称位置で複数設けられている。本実施の形態では、突起部18は、2つ設けられており、中心軸S1を中心として相反する方向に突出して配置されている。なお、図には明示しないが、突起部18は、例えば、3つ設けられている場合、中心軸S1を中心とした周方向に均等配置される。この突起部18は、本体部10に対し、スライド支持部18aによって径方向にスライド移動可能に設けられている。また、突起部18は、圧縮コイルバネ18bによってスライド方向である径方向に突出する方向に弾性付勢されている。なお、図9に示すように、圧縮コイルバネ18bは、軸方向で複数(本実施の形態では2つ)設けられている。このため、突起部18は、弾性付勢されつつ軸方向の前後で傾倒移動することが可能である。また、本体部10の外側に向けて弾性付勢された各突起部18の外面間の寸法H2は、挿入される配管の内径よりも大きい。
【0052】
なお、突起部18は、センサ支持部11とともに中心軸S1を基準として周方向に均等配置されていることが好ましい。
【0053】
また、上述した配管処理装置は、被挿入体1、挿入端部2、センサ支持部11、または突起部18の少なくとも1つの外角が、円弧または面取り処理されている。
【0054】
また、固定部3は、被挿入体1の後側において、挿入端部2を前後逆にした形状の継手部4を介して設けられている。固定部3は、後方に延在する管状部材であって、先細りに形成された挿入端部2の前端の外径よりも小径に形成されている。この固定部3は、後端の接続部3aが、移動機構6に取り付けられる。このため、配管処理装置は、移動機構6によって中心軸S1に沿う軸方向、当該軸方向に直交する径方向、中心軸S1回りに回転する回転方向、および中心軸S1に対して傾斜する傾斜方向に対して移動される。
【0055】
図10は、本実施の形態に係る配管処理装置の制御系のブロック図であり、図11〜図16は、本実施の形態に係る配管処理装置の挿入工程図である。
【0056】
図10に示すように、上述した配管処理装置は、上述した軸方向超音波センサ21および径方向超音波センサ22が、制御部5に接続されている。また、配管処理装置は、上述した各検査用超音波センサ111が制御部5に接続されている。また、配管処理装置は、当該配管処理装置を移動させる移動機構6が接続されている。移動機構6は、上述したように、多関節構造のマニピュレータとして構成されており、配管処理装置を軸方向に移動させる軸方向移動部61、配管処理装置を径方向に移動させる径方向移動部62、配管処理装置を回転方向に移動させる回転方向移動部63、および配管処理装置を傾斜方向に移動させる傾斜方向移動部64を有している。そして、これら軸方向移動部61、径方向移動部62、回転方向移動部63、および傾斜方向移動部64が制御部5に接続されている。
【0057】
制御部5は、マイコンなどで構成され、軸方向超音波センサ21および径方向超音波センサ22の検出結果に応じ、移動機構6の軸方向移動部61、径方向移動部62、回転方向移動部63、および傾斜方向移動部64を制御する。また、制御部5は、各検査用超音波センサ111の検出結果を入力し、配管の検査情報を記憶する。
【0058】
具体的に、制御部5による配管処理装置の動作を説明する。ここでは、上述した原子力設備100の安全性や信頼性を確保するため、原子炉容器101において注水管台101eと注水配管101fとの接続部分である溶接部101gの検査を行う工程を説明する。検査対象の配管(注水管台101eおよび注水配管101f)の内部は、水で満たされた状態であり、この水中に、移動機構6、および当該移動機構6に取り付けられた配管処理装置が配置される。なお、移動機構6は、配管の位置情報および配管の内部構造情報が制御部5に予め記憶されており、基本的には制御部5に記憶された情報を基に配管処理装置を移動させる。
【0059】
まず、図11に示すように、軸方向超音波センサ21によって配管の開口部101hの外縁との距離を検出する位置に、被挿入体1を配置する。軸方向超音波センサ21が、配管の開口部101hの外縁との距離を検出することで、配管の開口部101hの外縁に対する配管処理装置の位置を認識することができる。
【0060】
次に、図12に示すように、図11の位置から、軸方向超音波センサ21によって検出する距離が、配管の開口部101hの外縁よりも大きくなる位置まで、被挿入体1を径方向に移動させる。配管の開口部101hの外縁よりも距離が大きくなることは、配管の開口部101hを検出したことを意味する。すなわち、軸方向超音波センサ21が、配管の開口部101hの外縁よりも大きい距離を検出することで、配管の開口部101hを認識することができる。そして、予め記憶された配管の位置情報に基づき、被挿入体1の中心軸S1を、配管の中心軸S2の位置に合わせる。ここでは、配管の中心軸S2の正確な位置が確認できないため、配管の中心軸S2に対して被挿入体1の中心軸S1が一致していない可能性がある。
【0061】
次に、図13に示すように、図12の位置から、径方向超音波センサ22によって配管の内面が検出される位置まで、被挿入体1を軸方向に移動させる。径方向超音波センサ22が設けられた挿入端部2は、配管の内径よりも小さい外径であり、かつ先細りに形成されている。また、径方向超音波センサ22によって配管の内面が検出される位置では、被挿入体1は、配管内に未だ挿入されない。このため、挿入端部2や被挿入体1は、配管に接触することはない。
【0062】
次に、図14に示すように、図13の位置において、被挿入体1を回転方向に回転させつつ、径方向超音波センサ22によって配管の内面からの距離を検出する。そして、当該距離が等しくなる位置まで、被挿入体1を径方向に移動させる。ここでは、配管の断面が円形の場合、全ての距離が等しくなる位置まで被挿入体1を径方向に移動させる。また、配管の断面が楕円形である場合、対向する距離が等しくなる位置まで被挿入体1を径方向に移動させる。このため、被挿入体1の中心軸S1上において径方向超音波センサ22による検出点P1が、配管の中心軸S2に一致することになる。
【0063】
次に、図15に示すように、図14の位置から、被挿入体1を軸方向に所定距離移動させた後、被挿入体1を回転方向に回転させつつ、径方向超音波センサ22によって配管の内面からの距離を検出する。そして、当該距離が等しくなる位置まで、被挿入体1を径方向に移動させる。ここで、所定距離とは、被挿入体1が配管に未だ挿入されない範囲をいう。このため、被挿入体1の中心軸S1上において径方向超音波センサ22による検出点P2が、配管の中心軸S2に一致することになる。
【0064】
次に、図16に示すように、配管の内面からの距離が等しい前記2つの点P1,P2を結ぶ直線に中心軸S1が一致する位置まで、被挿入体1を傾斜方向に移動させる。すなわち、先に検出された各点P1,P2を結ぶ直線が配管の中心軸S2に一致していることから、あとは被挿入体1の中心軸S1が中心軸S2に対して傾いているだけであり、この各点P1,P2を結ぶ直線上に被挿入体1の中心軸S1を一致させることにより、中心軸S1が中心軸S2に一致することになる。その後、被挿入体1を軸方向に移動させ、被挿入体1を配管内に挿入する。これにより、中心軸S1が中心軸S2に一致した状態で、被挿入体1が配管内に挿入される。
【0065】
上記のごとく、被挿入体1が配管内に挿入されることで、各検査用超音波センサ111によって配管の検査が行われる。
【0066】
本実施の形態の配管処理装置は、配管の開口部101hより配管内に挿入される被挿入体1が、当該被挿入体1の中心軸S1に沿う軸方向、当該中心軸S1に直交する径方向、中心軸S1回りに回転する回転方向、および中心軸S1に対して傾斜する傾斜方向に対し、移動機構6によって移動可能に設けられた配管処理装置である。そして、この配管処理装置は、配管内に挿入される被挿入体1の前側に設けられており配管の内径よりも小さい外径に形成された挿入端部2と、挿入端部2の前端において挿入する方向に音波を送受信する軸方向超音波センサ21と、挿入端部2の側部において中心軸S1と交差する方向に音波を送受信する径方向超音波センサ22と、軸方向超音波センサ21および径方向超音波センサ22の検出結果に応じて移動機構6を制御する制御部5と、を備える。
【0067】
この配管処理装置によれば、軸方向超音波センサ21によって配管の開口部101hの外縁との距離を検出する位置に被挿入体1を配置し、軸方向超音波センサ21によって検出する距離が配管の開口部101hの外縁よりも大きくなる位置まで被挿入体1を径方向に移動させ、径方向超音波センサ22によって配管の内面が検出される位置まで被挿入体1を軸方向に移動させ、被挿入体1を回転方向に回転方向に回転させつつ、径方向超音波センサ22によって配管の内面からの距離を検出して当該距離が等しくなる位置まで被挿入体1を径方向に移動させ、被挿入体1を軸方向に所定距離移動させた後、被挿入体1を回転方向に回転させつつ、径方向超音波センサ22によって配管の内面からの距離を検出して当該距離が等しくなる位置まで被挿入体1を径方向に移動させ、配管の内面からの距離が等しい前記2つの点P1,P2を結ぶ直線に中心軸S1が一致する位置まで、被挿入体1を傾斜方向に移動させた後、被挿入体1を軸方向に移動させて被挿入体1を配管内に挿入する。このため、中心軸S1が配管の中心軸S2に一致した状態で、被挿入体1が配管内に挿入される。この結果、配管の中心を通って被挿入体1の挿入を案内することが可能になる。
【0068】
また、本実施の形態の配管処理装置では、挿入端部2は、前側に向けて先細りに形成されている。
【0069】
この配管処理装置によれば、径方向超音波センサ22によって配管の内面が検出される位置まで被挿入体1を軸方向に移動させ、被挿入体1を回転方向に回転させつつ、径方向超音波センサ22によって配管の内面からの距離を検出して当該距離が等しくなる位置まで被挿入体1を径方向に移動させ、被挿入体1を軸方向に所定距離移動させた後、被挿入体1を回転方向に回転させつつ、径方向超音波センサ22によって配管の内面からの距離を検出して当該距離が等しくなる位置まで被挿入体1を径方向に移動させ、配管の内面からの距離が等しい前記2つの点P1,P2を結ぶ直線に中心軸S1が一致する位置まで、被挿入体1を傾斜方向に移動させるとき、挿入端部2を配管の内面に接触する事態を防ぐことができる。この結果、より正確な位置に被挿入体1を移動させることが可能になる。
【0070】
本実施の形態の配管処理装置は、被挿入体1の側部に設けられて、中心軸S1と交差する方向に音波を送受信する検査用超音波センサ111が中心軸S1に沿って複数配置されたセンサ支持部11を備えている。そして、このセンサ支持部11が、中心軸S1を基準とした対称位置で複数設けられている。
【0071】
この配管処理装置によれば、検査用超音波センサ111を配管内面に沿って移動させることができ、精度良く配管の検査を行うことが可能になる。
【0072】
また、本実施の形態の配管処理装置は、センサ支持部11が、中心軸S1に直交する径方向でスライド可能に支持されているとともに、突出する方向に弾性付勢されている。
【0073】
この配管処理装置によれば、センサ支持部11が配管の内面に接触した状態となることから、検査用超音波センサ111を配管内面に接触させて移動させることができ、精度良く配管の検査を行うことが可能になる。しかも、センサ支持部11が配管内面の凹凸に沿って径方向に移動することから、検査用超音波センサ111を配管内面の形状に沿って倣わせることができ、精度良く配管の検査を行うことが可能になる。
【0074】
また、本実施の形態の配管処理装置は、センサ支持部11が、挿入の前後方向に傾倒可能に支持されている。
【0075】
この配管処理装置によれば、センサ支持部11が配管内面の凹凸に沿って前後方向に移動することから、検査用超音波センサ111を配管内面の形状に沿って倣わせることができ、精度良く配管の検査を行うことが可能になる。
【0076】
また、本実施の形態の配管処理装置は、前後方向に傾倒可能に支持されたセンサ支持部11が、前方向に弾性付勢されている。
【0077】
この配管処理装置によれば、被挿入体1が配管に挿入されるとき、センサ支持部11が前側に傾いて前側が先細りになるため、挿入を円滑に行うことが可能になる。そして、被挿入体1が配管に挿入された状態では、センサ支持部11が配管内面の凹凸に沿って前後方向に移動することから、検査用超音波センサ111を配管内面の形状に沿って倣わせることができ、精度良く配管の検査を行うことが可能になる。なお、センサ支持部11が、前方向に傾倒した状態で弾性付勢されていることから、当該センサ支持部11の前方にある検査用超音波センサ111が配管の内面から距離をおいて配置される場合、当該検査用超音波センサ111を挿入時の径方向超音波センサとして代用することが可能になる。
【0078】
また、本実施の形態の配管処理装置は、センサ支持部11が、周方向に傾倒可能に支持されている。
【0079】
この配管処理装置によれば、センサ支持部11が配管内面の凹凸に沿って周方向に移動することから、検査用超音波センサ111を配管内面の形状に沿って倣わせることができ、精度良く配管の検査を行うことが可能になる。
【0080】
また、本実施の形態の配管処理装置では、検査用超音波センサ111は、センサ支持部11に対して中心軸S1に沿って少なくとも3つ配置され、中側に位置する検査用超音波センサ111aがセンサ支持部11の外面から突出する方向にスライド可能に支持されているとともに、突出する方向に弾性付勢されている。
【0081】
検査用超音波センサ111を複数配置することで、異なる角度で複数の音波を送受信するので検出精度が向上する。そして、検査用超音波センサ111が少なくとも3つ配置された場合、中側の検査用超音波センサ111aが配管内面の凹凸によって配管内面から離隔してしまう場合がある。この点、この配管処理装置によれば、中側に位置する検査用超音波センサ111aがセンサ支持部11の外面から突出するように弾性付勢されているため、中側に位置する検査用超音波センサ111aが配管内面の凹凸によって配管内面から離隔してしまう事態を防ぎ、精度良く配管の検査を行うことが可能になる。
【0082】
また、本実施の形態の配管処理装置は、被挿入体1の側部に突出して設けられた突起部18が、中心軸S1を基準とした対称位置に複数設けられ、かつ中心軸S1に直交する径方向でスライド可能に支持されているとともに、突出する方向に弾性付勢されている。
【0083】
この配管処理装置によれば、突起部18が配管内面に接触しつつ、配管内面の凹凸に沿って径方向に移動することから、中心軸S1を配管の中心軸S2に一致させた状態を保つことが可能になる。
【0084】
また、本実施の形態の配管処理装置は、各突起部18が、各センサ支持部11とともに中心軸S1を基準として周方向に均等配置されている。
【0085】
この配管処理装置によれば、各突起部18および各センサ支持部11が、配管内において周方向で均等に配置されることから、中心軸S1を配管の中心軸S2に一致させた状態を安定して保つことが可能になる。
【0086】
また、本実施の形態の配管処理装置は、被挿入体1、挿入端部2、センサ支持部11、または突起部18の少なくとも1つの外角が、円弧または面取り処理されている。
【0087】
この配管処理装置によれば、配管への挿入、配管内での移動、配管からの抜き出しに際して円滑に移動させることが可能になる。
【0088】
また、本実施の形態の配管処理方法は、上述したいずれか1つの配管処理装置を、移動機構6によって移動させ、配管の開口部101hから配管内に挿入する配管処理方法であって、軸方向超音波センサ21によって配管の開口部101hの外縁との距離を検出する位置に、被挿入体1を配置する工程と、次に、軸方向超音波センサ21によって検出する距離が配管の開口部101hの外縁よりも大きくなる位置まで、被挿入体1を径方向に移動させる工程と、次に、径方向超音波センサ22によって配管の内面が検出される位置まで、被挿入体1を軸方向に移動させる工程と、次に、被挿入体1を回転方向に回転させつつ、径方向超音波センサ22によって配管の内面からの距離を検出し、当該距離が等しくなる位置まで、被挿入体1を径方向に移動させる工程と、次に、被挿入体1を軸方向に所定距離移動させた後、被挿入体1を回転方向に回転させつつ、径方向超音波センサ22によって配管の内面からの距離を検出し、当該距離が等しくなる位置まで、被挿入体1を径方向に移動させる工程と、次に、配管の内面からの距離が等しい前記2つの点P1,P2を結ぶ直線に中心軸S1が一致する位置まで、被挿入体1を傾斜方向に移動させた後、被挿入体1を軸方向に移動させて当該被挿入体1を配管内に挿入する工程と、を含む。
【0089】
この配管処理方法によれば、中心軸S1が配管の中心軸S2に一致した状態で、被挿入体1が配管内に挿入される。この結果、配管の中心を通って被挿入体1の挿入を案内することが可能になる。
【0090】
なお、上述した実施の形態では、配管処理装置として、検査用超音波センサ111を搭載した配管検査装置を例に説明したが、検査用超音波センサ111に換えて、切削加工を行う機構を設ければ、配管加工装置として精度良く配管の加工を行うことが可能になる。
【符号の説明】
【0091】
1 被挿入体
2 挿入端部
2a テーパ面
21 軸方向超音波センサ
22 径方向超音波センサ
3 固定部
4 継手部
5 制御部
6 移動機構
61 軸方向移動部
62 径方向移動部
63 回転方向移動部
64 傾斜方向移動部
10 本体部
11 センサ支持部
111(111a) 検査用超音波センサ
12 スライド移動部
12a 支持部材
12b 摺動部
12c 摺動軸
12d 圧縮コイルバネ
13 傾倒移動部
13a 軸受部材
13b 回転軸
14 傾倒付勢部
15 周方向移動部
16 センサ押出部
18 突起部
18a スライド支持部
18b 圧縮コイルバネ
101e 注水管台
101f 注水配管
101h 開口部
P1,P2 検出点
S1 装置の中心軸
S2 配管の中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管の開口部より配管内に挿入される被挿入体が、当該被挿入体の中心軸に沿う軸方向、前記中心軸に直交する径方向、前記中心軸回りに回転する回転方向、および前記中心軸に対して傾斜する傾斜方向に対し、移動機構によって移動可能に設けられた配管処理装置であって、
前記配管内に挿入される前記被挿入体の前側に設けられており前記配管の内径よりも小さい外径に形成された挿入端部と、
前記挿入端部の前端において挿入する方向に音波を送受信する軸方向超音波センサと、
前記挿入端部の側部において前記中心軸と交差する方向に音波を送受信する径方向超音波センサと、
前記軸方向超音波センサおよび前記径方向超音波センサの検出結果に応じて前記移動機構を制御する制御部と、
を備えること特徴とする配管処理装置。
【請求項2】
前記挿入端部は、前側に向けて先細りに形成されていることを特徴とする請求項1に記載の配管処理装置。
【請求項3】
前記被挿入体の側部に設けられて、中心軸と交差する方向に音波を送受信する検査用超音波センサが前記中心軸に沿って複数配置されたセンサ支持部を備え、
前記センサ支持部が、前記中心軸を基準とした対称位置で複数設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の配管処理装置。
【請求項4】
前記センサ支持部が、前記中心軸に直交する径方向でスライド可能に支持されているとともに、突出する方向に弾性付勢されていることを特徴とする請求項3に記載の配管処理装置。
【請求項5】
前記センサ支持部が、挿入の前後方向に傾倒可能に支持されていることを特徴とする請求項3または4に記載の配管処理装置。
【請求項6】
前後方向に傾倒可能に支持された前記センサ支持部が、前方向に弾性付勢されていることを特徴とする請求項5に記載の配管処理装置。
【請求項7】
前記センサ支持部が、周方向に傾倒可能に支持されていることを特徴とする請求項3〜6のいずれか1つに記載の配管処理装置。
【請求項8】
前記検査用超音波センサは、前記センサ支持部に対して前記中心軸に沿って少なくとも3つ配置され、中側に位置する前記検査用超音波センサが前記センサ支持部の外面から突出する方向にスライド可能に支持されているとともに、突出する方向に弾性付勢されていることを特徴とする請求項3〜7のいずれか1つに記載の配管処理装置。
【請求項9】
前記被挿入体の側部に突出して設けられた突起部が、前記中心軸を基準とした対称位置に複数設けられ、かつ前記中心軸に直交する径方向でスライド可能に支持されているとともに、突出する方向に弾性付勢されていることを特徴とする請求項3〜8のいずれか1つに記載の配管処理装置。
【請求項10】
各前記突起部が、各前記センサ支持部とともに前記中心軸を基準として周方向に均等配置されていることを特徴とする請求項9に記載の配管処理装置。
【請求項11】
前記被挿入体、前記挿入端部、前記センサ支持部、または前記突起部の少なくとも1つの外角が、円弧または面取り処理されていることを特徴とする請求項3〜10のいずれか1つに記載の配管処理装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1つの配管処理装置を、前記移動機構によって移動させ、前記配管の開口部から前記配管内に挿入する配管処理方法であって、
前記軸方向超音波センサによって前記配管の開口部の外縁との距離を検出する位置に、前記被挿入体を配置する工程と、
次に、前記軸方向超音波センサによって検出する距離が前記配管の開口部の外縁よりも大きくなる位置まで、前記被挿入体を径方向に移動させる工程と、
次に、前記径方向超音波センサによって前記配管の内面が検出される位置まで、前記被挿入体を軸方向に移動させる工程と、
次に、前記被挿入体を回転方向に回転方向に回転させつつ、前記径方向超音波センサによって前記配管の内面からの距離を検出し、当該距離が等しくなる位置まで、前記被挿入体を径方向に移動させる工程と、
次に、前記被挿入体を軸方向に所定距離移動させた後、前記被挿入体を回転方向に回転させつつ、前記径方向超音波センサによって前記配管の内面からの距離を検出し、当該距離が等しくなる位置まで、前記被挿入体を径方向に移動させる工程と、
次に、前記配管の内面からの距離が等しい2つの点を結ぶ直線に前記中心軸が一致する位置まで、前記被挿入体を傾斜方向に移動させた後、前記被挿入体を軸方向に移動させて当該被挿入体を前記配管内に挿入する工程と、
を含むことを特徴とする配管処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−220218(P2012−220218A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83116(P2011−83116)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】