説明

配管用制振装置並びにその取付装置及び取付方法

【課題】種々の振動特性を有する配管に対し、それぞれの配管に適合した制振特性を有する制振装置を間便にかつ短時間で取り付ける。
【解決手段】固定部磁石5aが配列固定された固定部5と、前記固定部磁石5aと磁気作用する可動部磁石6aが配列固定された可動部6と、前記固定部磁石5aと可動部磁石6a間に取り付けられる導体板7から構成される1連又は多連の制振ユニット3−1・・・3−nからなる配管用制振装置3において、前記制振ユニット3−1は周方向に分割されたな複数の分割制振部3−1a、3−1bと、前記分割制振部3−1a、3−1bに取り付けられ当該分割制振部を相互に連結する連結部材4と、を有し、前記1連又は多連の制振ユニット3−1・・・3−nはその両端部に取り付けられた制振部フランジ20、21に設けられた複数の固定具2により配管に固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁石と導体板を用いた制振装置に関し、特に、配管に適用した配管用制振装置並びにその取付装置及び取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、磁石と導体板を用いた制振装置は、制振対象物に固定される固定部に対して可動部を移動可能に支持し、固定部および可動部にそれぞれ設けられた磁石の磁気作用による磁気ばね力と、磁石と導体板との相対運動による電磁作用による磁気減衰力を利用して動吸振器を構成している。
【0003】
このような磁石式の制振装置として、可動部の表裏2面に取り付けられた可動部磁石とそれぞれ磁気作用するように固定部磁石を取り付け、各可動部磁石と固定部磁石間にそれぞれ導体板を取り付けた制振装置が知られている(特許文献1)。また、特許文献1にはこのような制振装置を配管に適用した例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3718307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、磁石と導体板からなる制振装置を配管に適用した例が特許文献1に開示されているが、この場合、配管の主な振動方向である径方向には制振効果を発揮できない。
【0006】
また、制振装置のばね定数や減衰係数を調整するためには、制振装置の可動部磁石と固定部磁石の間隔や導体板と相対運動する磁石との間隔を調整する必要があるが、例えば原子力発電所の格納容器内のように環境条件(温度、放射線等)が厳しい場合、配管に取り付けたままで調整することは困難であるため、一旦配管から制振装置を取り外して安全な場所に運搬し調整した後、再度格納容器内に搬送して取り付ける必要があり、多大な時間と作業量を要するという問題がある。
【0007】
本発明は上述した課題を解決するためになされたものであり、種々の振動特性を有する配管に対し、それぞれの配管に適合した制振特性を有する制振装置を簡便にかつ短時間で取り付けることができるとともに、取付後にばね定数、減衰係数、質量比の調整を要しない配管用制振装置並びにその取付装置及び取付方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る配管用制振装置は、固定部磁石が配列固定された固定部と、前記固定部磁石と磁気作用する可動部磁石が配列固定された可動部と、前記固定部磁石と可動部磁石間に取り付けられる導体板から構成される1連又は多連の制振ユニットからなる配管用制振装置において、前記制振ユニットは周方向に分割されたな複数の分割制振部と、前記分割制振部に取り付けられ当該分割制振部を相互に連結する連結部材と、を有し、前記1連又は多連の制振ユニットはその両端部に取り付けられた制振部フランジに設けられた複数の固定具により配管に固定されることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る配管用制振装置の取付装置は、複数の分割制振部からなる制振ユニットを複数用意し、前記複数の制振ユニットから制振対象の配管の振動数に適合した組み合せの制振ユニットを選択し、遠隔操作装置により当該制振ユニットを前記制振対象の配管に取り付けることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る配管用制振装置の取付方法は、複数の分割制振部からなる制振ユニットを複数用意し、前記複数の制振ユニットから制振対象の配管の振動数に適合した組み合せの制振ユニットを選択し、遠隔操作装置により当該制振ユニットを配管に取り付けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、種々の振動特性を有する配管に対し、それぞれの配管に適合した制振特性を有する制振装置を簡便に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施形態に係る配管用制振装置の部分断面図。
【図2】第1の実施形態に係る配管用制振装置の上面図。
【図3】第1の実施形態に係る配管用制振装置の分割状態を示す上面図。
【図4】図1のA−A線図。
【図5】(a)は図4のB−B線図、(b)は図4のC−C線図。
【図6】第2の実施形態に係る配管用制振装置の上面図。
【図7】第1の実施形態に係る制振ユニットの取付方法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る配管用制振装置並びにその取付装置及び取付方法の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
[第1の実施形態]
第1の実施形態に係る配管用制振装置を図1乃至図5及び図7により説明する。
(配管用制振装置の構成)
本実施形態に係る配管用制振装置3は、複数の円筒状の制振ユニット3−1〜3−nからなり、各制振ユニット3−1〜3−nは円周方向に複数に分割されている。本実施形態では、図3に示すように、各制振ユニット3−1、・・は半円状の2つ分割制振部3−1a及び3−1b、・・・に分割されている。
【0015】
この制振ユニット3−1〜3−nは、配管の軸方向に1つ又は複数連結して用いられる。図1に示す例では、配管用制振装置3は2連の制振ユニット3−1及び3−2から構成されている。
【0016】
また、この制振ユニットにより配管用制振装置3を構成する場合には、その両端部に制振部フランジ20と21が取り付けられる。本実施形態では、各制振部フランジ20及び21はそれぞれ20a、20b及び21a、21bに半円状に分割されており、複数の固定具2が設けられている。
【0017】
制振ユニット3−1、3−2を配管1に固定する場合には、分割制振部3−1a、3−1b、分割制振部フランジ20a、20bを連結部材4で連結固定し、分割制振部3−2a、3−2b、分割制振部フランジ21a、21bを連結部材4で連結固定し、さらに、制振ユニット3−1と3−2を連結部材4で連結固定する。
【0018】
次に、上記のように連結固定された制振装置3は制振部フランジ20、21に設けられた複数の固定具2により配管1に固定される。固定具2は押付用ボルト8とガイドロッド9を備え、押付用ボルト8により制振部フランジ20、21を配管1に押し付け固定する。
【0019】
(制振ユニットの構成)
各制振ユニットを構成する分割制振部(例えば、3−1a)は、図1に示すように、固定部磁石5aが配列固定された固定部5と、固定部磁石5aに対し相対運動する可動部磁石6aが配列固定された可動部6と、固定部磁石5aと可動部磁石6a間に取り付けられる導体板7から構成されている。
【0020】
図4は図1のA−A線図であり、可動部磁石6aは小型磁石を複数個並べて配置した構成となっている。分割制振部3−1a、3−1bの各可動部6の両端部には、可動部6同士を連結するためのピン−ソケットからなる可動部横連結部材10が設けられている。
【0021】
また、分割制振部3−1aの可動部6と分割制振部3−2aの可動部6とを連結するために可動部縦連結部材11が備えられ、図5(a)に示すように、制振ユニットを多連に連結する場合に可動部縦連結部材11により両者の可動部磁石6を連結する。
【0022】
また、各分割制振部の可動部6は、図5(b)に示すように、複数の支柱25を介して一対のベアリング部12により支持されている。ここで、ベアリング部12はベアリング12aと受座12bから構成されている。
【0023】
(作用)
このように構成された本実施形態において、例えば配管の振動を抑制する場合、配管1と共に振動する固定部磁石5aが振動力を受けると、磁気作用による磁気力を介して可動部磁石6aが振動する。この時、導体板7と可動部磁石6a間の電磁作用により、磁気減衰力が得られる。したがって、各制振ユニットの可動部磁石6aに作用する磁気力と磁気減衰力および可動部磁石6aの重量を適宜設計することにより、種々の配管1の振動を適切に抑制することができる。
【0024】
また、制振ユニットを複数段重ねて多連構造可能とするとともに、各制振ユニットの可動部6を連結可能としていることから、それぞれのばね力、磁気減衰力、可動部磁石6aの重量が異なる制振ユニット3−1・・・3−nを複数用意し、各現場における配管の振動数に適合するように制振ユニットを組み合わせることにより、振動数が異なる配管に対し短時間で最適な配管用制振装置を構成することができる。
【0025】
図7は制振特性の異なる複数の制振ユニットを現場に配置し、制振対象の配管に対し適合する組み合わせの制振ユニット3−1・・・3−nを当該配管に取り付ける様子を示す図である。
【0026】
図7において、複数の制振ユニット3−1・・・3−nをストッカ部15にストックし、ロボットアーム等の遠隔操作装置14により適合する制振ユニットを取り出して配管1に取り付ける。これにより、環境条件の厳しい場合に、制振装置の取り付け、調整作業を全て自動で行うことができる。
【0027】
また、遠隔操作装置14の先端部には振動センサが取り付けられている(図示せず)。この振動センサにより制振対象の配管の振動を予め測定し、必要なばね定数等を自動算出して、適合する組み合わせの制振ユニットを選定する。
【0028】
以上説明したように、本実施形態によれば、現場に制振特性の異なる制振ユニットを複数準備し、振動数が異なる種々の配管に対し、制振ユニットを適宜組み合わせることにより、各配管に適合した制振装置を簡便に構成することができる。
【0029】
また、現場の遠隔走査装置に加速度センサを設けることにより、制振対象の配管の振動数を予め把握し、当該配管に適合した組み合わせの制振ユニットを迅速に選択することが可能となる。
【0030】
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係る配管用制振装置を図6により説明する。なお、第1の実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0031】
本第2の実施形態は、図6に示すように、配管1に所定の空間を介して配管用制振装置3を取り付ける構成としている。
これにより、配管が高温となる場合、空間に断熱材を挿入することが可能となり、配管1の温度を保つことができると共に、制振装置が熱によって変形又は破損するのを防ぐことができる。また、配管径が異なる配管に対しても、配管用制振装置を簡便に取り付けることができる。
【0032】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、組み合わせ、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0033】
1…配管、2…固定具、3…配管用制振装置、3−1〜3−n…制振ユニット、3−1a、3−1b…分割制振部、3−2a、3−2b…分割制振部、4…連結部材、5…固定部、5a…固定部磁石、6…可動部、6a…可動部磁石、7…導体板、8…押し付けボルト、9…ガイドロッド、10…可動部磁石間連結部材、11…可動部磁石間縦連結部材、12…ベアリング部、13…可動部磁石穴部、14…遠隔操作装置、15…ストッカ、20、21…制振部フランジ、25…支柱。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部磁石が配列固定された固定部と、前記固定部磁石と磁気作用する可動部磁石が配列固定された可動部と、前記固定部磁石と可動部磁石間に取り付けられる導体板から構成される1連又は多連の制振ユニットからなる配管用制振装置において、
前記制振ユニットは周方向に分割されたな複数の分割制振部と、前記分割制振部に取り付けられ当該分割制振部を相互に連結する連結部材と、を有し、
前記1連又は多連の制振ユニットはその両端部に取り付けられた制振部フランジに設けられた複数の固定具により配管に固定されることを特徴とする配管用制振装置。
【請求項2】
前記分割制振部の可動部を可動部横連結部材により周方向に連結したことを特徴とする請求項1記載の配管用制振装置。
【請求項3】
前記多連の制振ユニットの各可動部を可動部縦連結部材で連結したことを特徴とする請求項1又は2記載の配管用制振装置。
【請求項4】
前記制振ユニットと配管との間に空間を設けたことを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の配管用制振装置。
【請求項5】
複数の分割制振部からなる制振ユニットを複数用意し、前記複数の制振ユニットから制振対象の配管の振動数に適合した組み合せの制振ユニットを選択し、遠隔操作装置により当該制振ユニットを前記制振対象の配管に取り付けることを特徴とする配管用制振装置の取付装置。
【請求項6】
前記複数の制振ユニットはそれぞれ制振特性が異なることを特徴とする請求項5記載の配管用制振装置の取付装置。
【請求項7】
前記遠隔操作装置に制振対象の配管の振動数を測定する振動センサを取り付けたことを特徴とする配管用制振装置の取付装置。
【請求項8】
複数の分割制振部からなる制振ユニットを複数用意し、前記複数の制振ユニットから制振対象の配管の振動数に適合した組み合せの制振ユニットを選択し、遠隔操作装置により当該制振ユニットを配管に取り付けることを特徴とする配管用制振装置の取付方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−64481(P2013−64481A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204683(P2011−204683)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】