配管系における防振継手の設置位置決定方法
【課題】振動発生源に接続された配管系に防振継手を挿入設置する位置を最適化する。1個の防振継手だけでは不充分な場合に2番目の防振継手を最適な位置に設置することにより、振動吸収効果を最大限に発揮させる。
【解決手段】ポンプ等の振動発生源に接続された配管系に防振継手を挿入設置する際にその位置を決定するために、配管系に対しインパクトハンマーによる打撃や加振器による加振もしくはポンプなどの加振源を用いて管壁振動特性を実測する。あるいは配管系に伝達剛性係数法などの数値解析手法を適用して数値計算による振動解析を行う。それらの結果から卓越周波数の管壁振動管軸方向の振動加速度レベルの分布を調べ、振動加速度レベルが極大(腹)又は極小(節)となる位置に防振継手を設置する。
【解決手段】ポンプ等の振動発生源に接続された配管系に防振継手を挿入設置する際にその位置を決定するために、配管系に対しインパクトハンマーによる打撃や加振器による加振もしくはポンプなどの加振源を用いて管壁振動特性を実測する。あるいは配管系に伝達剛性係数法などの数値解析手法を適用して数値計算による振動解析を行う。それらの結果から卓越周波数の管壁振動管軸方向の振動加速度レベルの分布を調べ、振動加速度レベルが極大(腹)又は極小(節)となる位置に防振継手を設置する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ等の振動発生源に接続された配管系に防振継手(フレキシブル継手)を挿入する際に、その設置位置を最適化するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
設備配管系の振動現象は、配管単独としてのみならず、躯体などへの振動伝搬、いわゆる固体伝搬音として問題となることが多い。このような問題を未然に防止するため、防振継手や防振支持など種々の方策がとられている。
【0003】
従来は、配管系の任意の位置、特に振動源であるポンプに近接した個所に防振継手を設置するのが普通であり、防振継手は1個だけの場合が多かった。しかしながら、防振継手は共振を伴う振動特性を有するので、単独の使用では、防振継手の挿入設置によりかえって管壁振動が増幅することがあった。また、その設置位置に関しては、配管系の管壁振動特性を考慮していないので、防振継手の振動低減効果は限定されたものにすぎなかった。
【0004】
本発明者等は、実験配管系を設置してインパクトハンマーによる打撃実験及び加振器による加振実験を行うと共に、伝達剛性係数法を適用した数値解析を行ってきた。これは、空気調和・衛生工学会の平成15年度学術講演会論文集(2003年9月発行)に「配管系の振動低減に関する研究」として発表された。その後の研究の結果、実際の配管系での振動特性と数値解析による振動特性とを利用すれば防振継手の設置位置を最適化できることが判明した。
【0005】
本発明と関連する配管防振技術の従来例として次のようなものがある。
【特許文献1】実公平4−49426「防振構造」では、配管の途中に複数の防振継手を直列に挿入している。しかしながら、その設置位置は保護すべき精密機器に近接した位置であり、配管系の振動防止を目的としたものではなく、また設置位置の決定方法を明確にしていないので最適な振動低減効果が得られない場合がある。
【特許文献2】特開平9−287691「配管用制振装置」には、配管支持部材のアームに重錘を取り付けて、配管の固有振動数とマッチングさせることにより、高周波から低周波までの振動の振幅を減少させ、建物に流体配管の振動が伝わらないようにする技術が記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の主たる目的は、配管系に防振継手を挿入設置する位置を最適化する方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、1個の防振継手だけでは不充分な場合に2番目の防振継手を最適な位置に設置することにより、振動吸収効果を最大限に発揮させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した課題を解決するため、本発明はその第1の態様において、ポンプ等の振動発生源に接続された配管系に防振継手を挿入設置する際にその位置を決定するために、配管系に対しインパクトハンマーによる打撃や加振器による加振もしくはポンプなどの加振源を用いて管壁振動特性を実測し、又は配管系に伝達剛性係数法などの数値解析手法を適用して数値計算による振動解析を行い、卓越周波数の管壁振動管軸方向の振動加速度レベルの分布が極大又は極小となる位置に防振継手を設置することを特徴とする配管系における防振継手の設置位置決定方法を提供する。
【0008】
本発明はその第2の態様において、さらに防振継手が設置された配管系に対しインパクトハンマーによる打撃や加振器による加振もしくはポンプなどの加振源を用いて管壁振動特性を実測し、卓越周波数の管壁振動管軸方向の振動加速度レベルの分布が極大又は極小となる位置に第2の防振継手を設置することを特徴とする設置方法を提供する。
【0009】
本発明はその第3の態様において、さらに防振継手を設置した配管系について伝達剛性係数法などの数値解析手法を適用して数値計算による振動解析を行い、卓越周波数の管壁振動管軸方向の振動加速度レベルの分布が極大又は極小となる位置に第2の防振継手を設置することを特徴とする設置方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
第1の態様により、インパクトハンマーや加振器もしくはポンプなどの加振源による振動特性の実測値、又は数値解析による振動特性から、卓越周波数の管壁振動管軸方向の振動加速度レベルの分布が極大又は極小となる位置に防振継手を設置すれば、振動低減効果を最大にすることができる。
【0011】
第2の態様により、さらに防振継手が設置された配管系に対しインパクトハンマーによる打撃や加振器による加振もしくはポンプなどの加振源を用いて管壁振動特性を実測し、卓越周波数の管壁振動管軸方向の振動加速度レベルの分布が極大又は極小となる位置に第2の防振継手を設置すれば、振動低減効果をさらに増大させることが可能になる。
【0012】
第3の態様により、さらに防振継手を設置した配管系について伝達剛性係数法などの数値解析手法を適用して数値計算による振動解析を行い、卓越周波数の管壁振動管軸方向の振動加速度レベルの分布が極大又は極小となる位置に第2の防振継手を設置すれば、振動低減効果をさらに増大させることが可能になる。第3の態様では、必ずしも実測を必要としないから、実際には1本目の防振継手を挿入する作業の前に数値計算だけで第2の防振継手の位置を割り出して第1と第2の防振継手を同時に挿入施工することが可能になるから、作業工程の増加を最小限に抑えることができるという著しい利点が得られる。以下、添付図面の実施態様を参照しながら、本発明による防振継手設置位置決定方法についてさらに説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明を検証するため、ポンプ送水稼働時の配管系を対象として、単独で挿入設置された防振継手の振動低減効果と、本発明による防振継手の設置位置決定方法を用いて2本設置した防振継手の振動低減効果とを比較した。一例として、ポンプ送水稼働時の配管系の管壁振動特性を実測し、防振継手の挿入位置を決定した。
【0014】
図1は配管系の概略回路図(平面図)であり、配管系の概要は次のようなものである。
配管:配管用炭素鋼鋼管(SGP)、呼び径100mmと65mm
ポンプ:片吸込渦巻型、3φ200V、5.5kW、4P
流量:0.2m3 /min
弁:弁1は玉形弁100A、弁2は仕切弁65A
支持:ボルト(10mm径)吊り
その他:開放型ポンプ循環系。
【0015】
図2は配管振動測定方法の概略図であり、配管の屈曲端部から管軸方向の距離Lsの位置を振動測定基準位置10とし、右側方向に設置した分析器21で解析した。
【0016】
図3は実測により得られた配管管壁振動の周波数特性−水平方向−を表している。
【0017】
図4は管壁振動154Hz成分の管軸方向分布−水平方向−(継手なし)を表している。
【0018】
本実施例では、実測による解析で得られた配管管壁振動特性の管軸方向分布(図4)を基にして防振継手の挿入位置を決定した。すなわち、図4の管壁振動管軸方向分布のうち、振動加速度レベル(卓越周波数)が最小(極小)となる位置に1本目の防振継手30を挿入した。この位置は図6において、振動測定基準位置から管軸方向にLi1の位置として図示されている。
【0019】
この防振継手30は、図5に示すように弾性体31の両側をフランジ32で挟んだ構造になっており、その概要は次のようなものである。用途:空調用、材質:合成ゴム、呼び径100mm、全長:135mm。
【0020】
さらに、防振継手を1本挿入した後に、再度配管系の管壁振動特性を実測し、2本目の防振継手の挿入位置を決定した。図6は1本目の防振継手を挿入した状態での配管振動の実測方法の概要を表している。
【0021】
図7は、図6の実測方法における配管管壁振動の周波数特性−水平方向−を表している。図8は振動加速度レベル(卓越周波数)である管壁振動162Hz成分の管軸方向分布−水平方向−(継手1本目挿入時)を表している。本実施例では、図8の管壁振動管軸方向分布のうち、振動加速度レベル(卓越周波数)が最大(極大)または最小(極小)となる位置に、適当な支持具を用いて2本目の防振継手を挿入した。図9は、1本目と2本目の防振継手を挿入する位置Li1,Li2a ,Li2b と配管管壁振動評価位置Le の関係を表している。
【0022】
図10は、2本目の防振継手を挿入した後でのポンプ送水稼働時の配管系の評価位置における配管管壁振動測定結果を表している。図10では、比較のため、防振継手なしの管壁振動測定結果と、本発明の方法を利用せずに任意の位置(Li1+100mm,Li2a +100mm)に防振継手を2本挿入した場合の管壁振動測定結果を併せて表示している。
【0023】
かくして、2本の防振継手を本発明の方法に従って配管系の適切な位置に挿入して実験を行った結果、本発明の方法を用いた場合には防振継手を使用しない場合よりも広い周波数(1/3オクターブ中心周波数、50〜500Hz、の10帯域)で振動低減効果が見られた。一方、本発明の方法を利用せずに任意の位置に2本の防振継手を挿入した場合には、防振継手を使用しない場合とほぼ同じ管壁振動が発生し、振動低減効果が得られていない周波数域が存在することが判明した。従って、管壁振動の低減を目的として、2本以上の防振継手を挿入設置するには、配管の管壁振動特性を解析して、適切な位置に防振継手を挿入設置する必要があり、本発明による方法は防振継手の挿入設置に適した方法であることが実証された。
【0024】
図11A,Bは、ポンプ送水稼働時の配管系に対しインパクトハンマーを用いて打撃による管壁振動特性を実測した結果と、配管系に伝達剛性係数法を適用して数値計算による振動解析を行った結果とが良好に合致した例を表している。図11Aは打撃による伝達関数の実測値、図11Bは数値解析による周波数応答を表している。
【実施例】
【0025】
図12は本発明による好適な防振継手設置位置決定方法の工程を表す流れ図である。
工程51:開始
工程52:数値計算又はインパクトハンマーや加振器もしくはポンプなどの加振源による実測により配管の振動特性の解析を行う。
工程53:卓越した周波数成分による配管振動が極大又は極小となる位置を1本目の防振継手設置位置とし、防振継手設置位置を決定する。
【0026】
工程54:1本目の防振継手だけでは所要の効果が得られない場合、1本目の防振継手設置位置決定後の配管の振動特性の解析を、数値計算又は実測により行う。
工程55:卓越した周波数成分による配管振動が極大又は極小となる位置を2本目の防振継手設置位置とし、防振継手設置位置を決定する。
工程56:所要の効果が得られない場合、上記手順を繰り返し、所要の効果を得るまで続行する。
工程57:防振継手の設置を完了する。
【産業上の利用可能性】
【0027】
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、防振継手による振動低減効果を最大にすることができ、さらに数値計算だけで防振継手の位置を割り出して第1と第2の防振継手を同時に施工することが可能になるから、作業工程の増加を最小限に抑えることができるなど、その技術的効果にはきわめて顕著なものがある。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明を適用する配管系の概略回路図(平面図)
【図2】配管振動測定の概略図(平面図)
【図3】配管管壁振動の周波数特性(水平方向)のグラフ
【図4】管壁振動154Hz成分の管軸方向分布(水平方向)
【図5】防振継手の概略図
【図6】防振継手1本目挿入時の配管振動測定の概略図
【図7】配管管壁振動の周波数特性(水平方向)のグラフ
【図8】管壁振動162Hz成分の管軸方向分布(水平方向)のグラフ
【図9】継手挿入位置と配管管壁振動評価位置の概略図
【図10】評価位置におけるポンプ送水稼働時の配管管壁振動(水平方向)のグラフ
【図11】打撃による伝達関数の実測値と数値解析による周波数応答とが合致する例を表すグラフ
【図12】本発明による防振継手設置位置決定方法の工程を表す流れ図
【符号の説明】
【0029】
10 振動測定基準位置
21 分析器
30 防振継手
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ等の振動発生源に接続された配管系に防振継手(フレキシブル継手)を挿入する際に、その設置位置を最適化するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
設備配管系の振動現象は、配管単独としてのみならず、躯体などへの振動伝搬、いわゆる固体伝搬音として問題となることが多い。このような問題を未然に防止するため、防振継手や防振支持など種々の方策がとられている。
【0003】
従来は、配管系の任意の位置、特に振動源であるポンプに近接した個所に防振継手を設置するのが普通であり、防振継手は1個だけの場合が多かった。しかしながら、防振継手は共振を伴う振動特性を有するので、単独の使用では、防振継手の挿入設置によりかえって管壁振動が増幅することがあった。また、その設置位置に関しては、配管系の管壁振動特性を考慮していないので、防振継手の振動低減効果は限定されたものにすぎなかった。
【0004】
本発明者等は、実験配管系を設置してインパクトハンマーによる打撃実験及び加振器による加振実験を行うと共に、伝達剛性係数法を適用した数値解析を行ってきた。これは、空気調和・衛生工学会の平成15年度学術講演会論文集(2003年9月発行)に「配管系の振動低減に関する研究」として発表された。その後の研究の結果、実際の配管系での振動特性と数値解析による振動特性とを利用すれば防振継手の設置位置を最適化できることが判明した。
【0005】
本発明と関連する配管防振技術の従来例として次のようなものがある。
【特許文献1】実公平4−49426「防振構造」では、配管の途中に複数の防振継手を直列に挿入している。しかしながら、その設置位置は保護すべき精密機器に近接した位置であり、配管系の振動防止を目的としたものではなく、また設置位置の決定方法を明確にしていないので最適な振動低減効果が得られない場合がある。
【特許文献2】特開平9−287691「配管用制振装置」には、配管支持部材のアームに重錘を取り付けて、配管の固有振動数とマッチングさせることにより、高周波から低周波までの振動の振幅を減少させ、建物に流体配管の振動が伝わらないようにする技術が記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の主たる目的は、配管系に防振継手を挿入設置する位置を最適化する方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、1個の防振継手だけでは不充分な場合に2番目の防振継手を最適な位置に設置することにより、振動吸収効果を最大限に発揮させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した課題を解決するため、本発明はその第1の態様において、ポンプ等の振動発生源に接続された配管系に防振継手を挿入設置する際にその位置を決定するために、配管系に対しインパクトハンマーによる打撃や加振器による加振もしくはポンプなどの加振源を用いて管壁振動特性を実測し、又は配管系に伝達剛性係数法などの数値解析手法を適用して数値計算による振動解析を行い、卓越周波数の管壁振動管軸方向の振動加速度レベルの分布が極大又は極小となる位置に防振継手を設置することを特徴とする配管系における防振継手の設置位置決定方法を提供する。
【0008】
本発明はその第2の態様において、さらに防振継手が設置された配管系に対しインパクトハンマーによる打撃や加振器による加振もしくはポンプなどの加振源を用いて管壁振動特性を実測し、卓越周波数の管壁振動管軸方向の振動加速度レベルの分布が極大又は極小となる位置に第2の防振継手を設置することを特徴とする設置方法を提供する。
【0009】
本発明はその第3の態様において、さらに防振継手を設置した配管系について伝達剛性係数法などの数値解析手法を適用して数値計算による振動解析を行い、卓越周波数の管壁振動管軸方向の振動加速度レベルの分布が極大又は極小となる位置に第2の防振継手を設置することを特徴とする設置方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
第1の態様により、インパクトハンマーや加振器もしくはポンプなどの加振源による振動特性の実測値、又は数値解析による振動特性から、卓越周波数の管壁振動管軸方向の振動加速度レベルの分布が極大又は極小となる位置に防振継手を設置すれば、振動低減効果を最大にすることができる。
【0011】
第2の態様により、さらに防振継手が設置された配管系に対しインパクトハンマーによる打撃や加振器による加振もしくはポンプなどの加振源を用いて管壁振動特性を実測し、卓越周波数の管壁振動管軸方向の振動加速度レベルの分布が極大又は極小となる位置に第2の防振継手を設置すれば、振動低減効果をさらに増大させることが可能になる。
【0012】
第3の態様により、さらに防振継手を設置した配管系について伝達剛性係数法などの数値解析手法を適用して数値計算による振動解析を行い、卓越周波数の管壁振動管軸方向の振動加速度レベルの分布が極大又は極小となる位置に第2の防振継手を設置すれば、振動低減効果をさらに増大させることが可能になる。第3の態様では、必ずしも実測を必要としないから、実際には1本目の防振継手を挿入する作業の前に数値計算だけで第2の防振継手の位置を割り出して第1と第2の防振継手を同時に挿入施工することが可能になるから、作業工程の増加を最小限に抑えることができるという著しい利点が得られる。以下、添付図面の実施態様を参照しながら、本発明による防振継手設置位置決定方法についてさらに説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明を検証するため、ポンプ送水稼働時の配管系を対象として、単独で挿入設置された防振継手の振動低減効果と、本発明による防振継手の設置位置決定方法を用いて2本設置した防振継手の振動低減効果とを比較した。一例として、ポンプ送水稼働時の配管系の管壁振動特性を実測し、防振継手の挿入位置を決定した。
【0014】
図1は配管系の概略回路図(平面図)であり、配管系の概要は次のようなものである。
配管:配管用炭素鋼鋼管(SGP)、呼び径100mmと65mm
ポンプ:片吸込渦巻型、3φ200V、5.5kW、4P
流量:0.2m3 /min
弁:弁1は玉形弁100A、弁2は仕切弁65A
支持:ボルト(10mm径)吊り
その他:開放型ポンプ循環系。
【0015】
図2は配管振動測定方法の概略図であり、配管の屈曲端部から管軸方向の距離Lsの位置を振動測定基準位置10とし、右側方向に設置した分析器21で解析した。
【0016】
図3は実測により得られた配管管壁振動の周波数特性−水平方向−を表している。
【0017】
図4は管壁振動154Hz成分の管軸方向分布−水平方向−(継手なし)を表している。
【0018】
本実施例では、実測による解析で得られた配管管壁振動特性の管軸方向分布(図4)を基にして防振継手の挿入位置を決定した。すなわち、図4の管壁振動管軸方向分布のうち、振動加速度レベル(卓越周波数)が最小(極小)となる位置に1本目の防振継手30を挿入した。この位置は図6において、振動測定基準位置から管軸方向にLi1の位置として図示されている。
【0019】
この防振継手30は、図5に示すように弾性体31の両側をフランジ32で挟んだ構造になっており、その概要は次のようなものである。用途:空調用、材質:合成ゴム、呼び径100mm、全長:135mm。
【0020】
さらに、防振継手を1本挿入した後に、再度配管系の管壁振動特性を実測し、2本目の防振継手の挿入位置を決定した。図6は1本目の防振継手を挿入した状態での配管振動の実測方法の概要を表している。
【0021】
図7は、図6の実測方法における配管管壁振動の周波数特性−水平方向−を表している。図8は振動加速度レベル(卓越周波数)である管壁振動162Hz成分の管軸方向分布−水平方向−(継手1本目挿入時)を表している。本実施例では、図8の管壁振動管軸方向分布のうち、振動加速度レベル(卓越周波数)が最大(極大)または最小(極小)となる位置に、適当な支持具を用いて2本目の防振継手を挿入した。図9は、1本目と2本目の防振継手を挿入する位置Li1,Li2a ,Li2b と配管管壁振動評価位置Le の関係を表している。
【0022】
図10は、2本目の防振継手を挿入した後でのポンプ送水稼働時の配管系の評価位置における配管管壁振動測定結果を表している。図10では、比較のため、防振継手なしの管壁振動測定結果と、本発明の方法を利用せずに任意の位置(Li1+100mm,Li2a +100mm)に防振継手を2本挿入した場合の管壁振動測定結果を併せて表示している。
【0023】
かくして、2本の防振継手を本発明の方法に従って配管系の適切な位置に挿入して実験を行った結果、本発明の方法を用いた場合には防振継手を使用しない場合よりも広い周波数(1/3オクターブ中心周波数、50〜500Hz、の10帯域)で振動低減効果が見られた。一方、本発明の方法を利用せずに任意の位置に2本の防振継手を挿入した場合には、防振継手を使用しない場合とほぼ同じ管壁振動が発生し、振動低減効果が得られていない周波数域が存在することが判明した。従って、管壁振動の低減を目的として、2本以上の防振継手を挿入設置するには、配管の管壁振動特性を解析して、適切な位置に防振継手を挿入設置する必要があり、本発明による方法は防振継手の挿入設置に適した方法であることが実証された。
【0024】
図11A,Bは、ポンプ送水稼働時の配管系に対しインパクトハンマーを用いて打撃による管壁振動特性を実測した結果と、配管系に伝達剛性係数法を適用して数値計算による振動解析を行った結果とが良好に合致した例を表している。図11Aは打撃による伝達関数の実測値、図11Bは数値解析による周波数応答を表している。
【実施例】
【0025】
図12は本発明による好適な防振継手設置位置決定方法の工程を表す流れ図である。
工程51:開始
工程52:数値計算又はインパクトハンマーや加振器もしくはポンプなどの加振源による実測により配管の振動特性の解析を行う。
工程53:卓越した周波数成分による配管振動が極大又は極小となる位置を1本目の防振継手設置位置とし、防振継手設置位置を決定する。
【0026】
工程54:1本目の防振継手だけでは所要の効果が得られない場合、1本目の防振継手設置位置決定後の配管の振動特性の解析を、数値計算又は実測により行う。
工程55:卓越した周波数成分による配管振動が極大又は極小となる位置を2本目の防振継手設置位置とし、防振継手設置位置を決定する。
工程56:所要の効果が得られない場合、上記手順を繰り返し、所要の効果を得るまで続行する。
工程57:防振継手の設置を完了する。
【産業上の利用可能性】
【0027】
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、防振継手による振動低減効果を最大にすることができ、さらに数値計算だけで防振継手の位置を割り出して第1と第2の防振継手を同時に施工することが可能になるから、作業工程の増加を最小限に抑えることができるなど、その技術的効果にはきわめて顕著なものがある。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明を適用する配管系の概略回路図(平面図)
【図2】配管振動測定の概略図(平面図)
【図3】配管管壁振動の周波数特性(水平方向)のグラフ
【図4】管壁振動154Hz成分の管軸方向分布(水平方向)
【図5】防振継手の概略図
【図6】防振継手1本目挿入時の配管振動測定の概略図
【図7】配管管壁振動の周波数特性(水平方向)のグラフ
【図8】管壁振動162Hz成分の管軸方向分布(水平方向)のグラフ
【図9】継手挿入位置と配管管壁振動評価位置の概略図
【図10】評価位置におけるポンプ送水稼働時の配管管壁振動(水平方向)のグラフ
【図11】打撃による伝達関数の実測値と数値解析による周波数応答とが合致する例を表すグラフ
【図12】本発明による防振継手設置位置決定方法の工程を表す流れ図
【符号の説明】
【0029】
10 振動測定基準位置
21 分析器
30 防振継手
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ等の振動発生源に接続された配管系に防振継手を挿入設置する際にその位置を決定する方法であって、
配管系に対しインパクトハンマーによる打撃や加振器による加振もしくはポンプなどの加振源を用いて管壁振動特性を実測し、
又は配管系に伝達剛性係数法などの数値解析手法を適用して数値計算による振動解析を行い、
卓越周波数の管壁振動管軸方向の振動加速度レベルの分布が極大又は極小となる位置に防振継手を設置することを特徴とする配管系における防振継手の設置位置決定方法。
【請求項2】
さらに防振継手が設置された配管系に対しインパクトハンマーによる打撃や加振器による加振もしくはポンプなどの加振源を用いて管壁振動特性を実測し、
卓越周波数の管壁振動管軸方向の振動加速度レベルの分布が極大又は極小となる位置に第2の防振継手を設置することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
さらに防振継手が設置された配管系について伝達剛性係数法などの数値解析手法を適用して数値計算による振動解析を行い、
卓越周波数の管壁振動管軸方向の振動加速度レベルの分布が極大又は極小となる位置に第2の防振継手を設置することを特徴とする請求項1記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ等の振動発生源に接続された配管系に防振継手を挿入設置する際にその位置を決定する方法であって、
配管系に対しインパクトハンマーによる打撃や加振器による加振もしくはポンプなどの加振源を用いて管壁振動特性を実測し、
又は配管系に伝達剛性係数法などの数値解析手法を適用して数値計算による振動解析を行い、
卓越周波数の管壁振動管軸方向の振動加速度レベルの分布を調べ、振動加速度レベルが極大又は極小となる位置に防振継手を設置することを特徴とする配管系における防振継手の設置位置決定方法。
【請求項2】
既に1個以上の防振継手が設置された配管系に対しインパクトハンマーによる打撃や加振器による加振もしくはポンプなどの加振源を用いて管壁振動特性を実測し、
卓越周波数の管壁振動管軸方向の振動加速度レベルの分布を調べ、振動加速度レベルが極大又は極小となる位置に追加の防振継手を設置することを特徴とする請求項1記載の配管系における防振継手の設置位置決定方法。
【請求項3】
既に1個以上の防振継手が設置された配管系について伝達剛性係数法などの数値解析手法を適用して数値計算による振動解析を行い、
卓越周波数の管壁振動管軸方向の振動加速度レベルの分布を調べ、振動加速度レベルが極大又は極小となる位置に第2の防振継手を設置することを特徴とする請求項1記載の配管系における防振継手の設置位置決定方法。
【請求項1】
ポンプ等の振動発生源に接続された配管系に防振継手を挿入設置する際にその位置を決定する方法であって、
配管系に対しインパクトハンマーによる打撃や加振器による加振もしくはポンプなどの加振源を用いて管壁振動特性を実測し、
又は配管系に伝達剛性係数法などの数値解析手法を適用して数値計算による振動解析を行い、
卓越周波数の管壁振動管軸方向の振動加速度レベルの分布が極大又は極小となる位置に防振継手を設置することを特徴とする配管系における防振継手の設置位置決定方法。
【請求項2】
さらに防振継手が設置された配管系に対しインパクトハンマーによる打撃や加振器による加振もしくはポンプなどの加振源を用いて管壁振動特性を実測し、
卓越周波数の管壁振動管軸方向の振動加速度レベルの分布が極大又は極小となる位置に第2の防振継手を設置することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
さらに防振継手が設置された配管系について伝達剛性係数法などの数値解析手法を適用して数値計算による振動解析を行い、
卓越周波数の管壁振動管軸方向の振動加速度レベルの分布が極大又は極小となる位置に第2の防振継手を設置することを特徴とする請求項1記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ等の振動発生源に接続された配管系に防振継手を挿入設置する際にその位置を決定する方法であって、
配管系に対しインパクトハンマーによる打撃や加振器による加振もしくはポンプなどの加振源を用いて管壁振動特性を実測し、
又は配管系に伝達剛性係数法などの数値解析手法を適用して数値計算による振動解析を行い、
卓越周波数の管壁振動管軸方向の振動加速度レベルの分布を調べ、振動加速度レベルが極大又は極小となる位置に防振継手を設置することを特徴とする配管系における防振継手の設置位置決定方法。
【請求項2】
既に1個以上の防振継手が設置された配管系に対しインパクトハンマーによる打撃や加振器による加振もしくはポンプなどの加振源を用いて管壁振動特性を実測し、
卓越周波数の管壁振動管軸方向の振動加速度レベルの分布を調べ、振動加速度レベルが極大又は極小となる位置に追加の防振継手を設置することを特徴とする請求項1記載の配管系における防振継手の設置位置決定方法。
【請求項3】
既に1個以上の防振継手が設置された配管系について伝達剛性係数法などの数値解析手法を適用して数値計算による振動解析を行い、
卓越周波数の管壁振動管軸方向の振動加速度レベルの分布を調べ、振動加速度レベルが極大又は極小となる位置に第2の防振継手を設置することを特徴とする請求項1記載の配管系における防振継手の設置位置決定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−118640(P2006−118640A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−308035(P2004−308035)
【出願日】平成16年10月22日(2004.10.22)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成16年8月20日 社団法人空気調和・衛生工学会発行の「平成16年度大会(名古屋)学術講演論文集2」に発表
【出願人】(000191319)新菱冷熱工業株式会社 (78)
【出願人】(504456813)
【出願人】(504456824)
【上記1名の代理人】
【識別番号】100082854
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 正孝
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月22日(2004.10.22)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成16年8月20日 社団法人空気調和・衛生工学会発行の「平成16年度大会(名古屋)学術講演論文集2」に発表
【出願人】(000191319)新菱冷熱工業株式会社 (78)
【出願人】(504456813)
【出願人】(504456824)
【上記1名の代理人】
【識別番号】100082854
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 正孝
【Fターム(参考)】
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